説明

触媒の調製方法及び当該調製方法により得られた触媒によるアセチレン化合物の製造方法

【課題】多量の原料が接触しても触媒性能を維持し得る触媒の調製方法が求められている。
【解決手段】担体と塩基性溶液とを混合し、固液分離する第1工程、
アルカリ金属、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属及びアルカリ土類金属化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種と、第1工程で得られた固体とを混合する第2工程、並びに、
第2工程で得られた混合物を加熱する第3工程を含むことを特徴とする触媒の調製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒の調製方法及び当該調製方法により得られた触媒によるアセチレン化合物の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
メチルアセチレンなどのアセチレン化合物は、メタクリレート化合物などの様々な化合物の原料もしくは合成中間体として有用であることが知られている。アセチレン化合物の製造方法としては、例えば、プロパジエンからメチルアセチレンを得る反応が特許文献1に記載されており、当該反応に用いられる触媒は、アルミナと炭酸カリウム水溶液とを混合し、乾燥させた後、575℃で加熱して得られことが記載されている。
一般に、アルミナなどの担体を含む触媒は、原料との接触量が多くなると触媒性能が低下する傾向がある。特許文献1には、触媒に原料が接触する量と触媒性能との関係については、何ら記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平02−290831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような状況下、原料が多量に接触しても触媒性能を維持し得る触媒の調製方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる課題を解決するために、本発明者は、鋭意検討した結果、以下の本発明に至った。
<1> 担体と塩基性溶液とを混合し、固液分離する第1工程、
アルカリ金属、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属及びアルカリ土類金属化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種と、第1工程で得られた固体とを混合する第2工程、並びに、第2工程で得られた混合物を加熱する第3工程を含むことを特徴とする触媒の調製方法。
<2> 前記担体が、反応に供される前に有する当該反応における触媒能力よりも低い当該反応における触媒能力を有する触媒に含まれる担体であることを特徴とする<1>記載の調製方法。
<3> 前記反応が、アレン化合物を接触させてアセチレン化合物を得るための反応であることを特徴とする<1>又は<2>記載の調製方法。
<4> アレン化合物がプロパジエンであり、アセチレン化合物がメチルアセチレンであることを特徴とする<1>〜<3>のいずれか記載の調製方法。
【0006】
<5> 担体がアルミナであることを特徴とする<1>〜<4>のいずれか記載の調製方法。
<6> 第1工程が、担体と塩基性溶液とを混合し、固液分離した後、さらに、固液分離して得られた固体と水とを混合し、固液分離する工程を含むことを特徴とする<1>〜<5>のいずれか記載の調製方法。
<7> 第3工程の加熱温度が500〜750℃の範囲内であることを特徴とする<1>〜<6>のいずれか記載の調製方法。
<8> 第3工程が、10分〜48時間の範囲内で加熱する工程であることを特徴とする<7>記載の調製方法。
<9> 塩基性溶液が、カリウムを含む塩基の水溶液であることを特徴とする<1>〜<8>のいずれか記載の調製方法。
<10> 塩基性溶液が、アルカリ金属炭酸塩であることを特徴とする<1>〜<9>のいずれか記載の調製方法。
<11> <1>〜<10>のいずれか記載の調製方法により得られた触媒にアレン化合物を接触させる工程を含むことを特徴とするアセチレン化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の調製方法によれば、原料が多量に接触しても触媒性能を維持し得る触媒が提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】触媒の重量あたり流通した原料の量(横軸)と触媒性能(縦軸)との関係
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1工程>
本発明の第1工程は、担体と塩基性溶液とを混合し、固液分離する工程である。
第1工程に用いられる担体は、アレン化合物及びアセチレン化合物に対し不活性な無機化合物であり、例えば、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化ストロンチウムなどのアルカリ土類金属酸化物;ハイドロタルサイト、ゼオライトなどの複合酸化物;活性炭、グラファイトなどの炭素;シリカ;アルミナなどを挙げることができる。担体としてはアルミナが好ましい。
アルミナとしては、例えば、α−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、δ−アルミナ、ε−アルミナ、κ−アルミナ、ρ−アルミナ、χ−アルミナ等の各種アルミナを挙げることができ、表面積の大きさの点で、γ−アルミナ、ρ−アルミナ、χ−アルミナ等が好ましく、γ−アルミナがより好ましい。アルミナの形状としては、例えば、球状、破砕状などの非球状等を挙げることができる。
【0010】
本発明に用いられる担体は、市販の無機化合物をそのまま使用してもよいが、反応に供される前に有する当該反応における触媒能力よりも低い当該反応における触媒能力を有する触媒に含まれる担体であってもよい。
当該反応としては、例えば、アレン化合物を接触させてアセチレン化合物を得るための反応等を挙げることができる。この反応は、本発明の調製方法により得られた触媒にアレン化合物を接触させることによりアセチレン化合物を製造する方法と同じであることから、当該製造方法の項で詳述する。
本発明の調製方法に用いられる担体としては、当該反応により触媒性能が低下した触媒の担体であっても、再び本発明の調製方法により、当該反応の触媒として使用可能である。つまり、当該反応の触媒性能が低下した触媒をそのまま本発明の調製方法に担体として供することができる。
【0011】
塩基性溶液に含まれる塩基としては、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩等が挙げられる。具体的には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属炭酸水素塩等挙げることができ、アルカリ金属炭酸塩が好ましい。好ましい塩基は、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のカリウムを含む塩基であり、炭酸カリウムがより好ましい。
【0012】
塩基性溶液に含まれる溶媒としては、例えば、水、メタノールなどのアルコール溶媒等を挙げることができ、水が好ましい。
塩基性溶液における塩基の濃度としては、例えば、0.1重量%から飽和濃度の範囲を挙げることができる。
【0013】
第1工程における担体と塩基性溶液とを混合する方法としては、例えば、(I)前記に例示された溶媒に担体を混合し、次に、得られた混合物に塩基性溶液を混合する方法、(II)前記に例示された溶媒に担体を混合し、次に、前記に例示された塩基を混合する方法、(III)塩基性溶液に担体を加える方法、(IV)担体に塩基性溶液を加える方法、(V)担体を塩基性溶液でリンスする方法、(VI)カラムなどに担体を充填しておき、得られた充填層に塩基性溶液を流通させる方法等を挙げることができる。
【0014】
塩基性溶液の使用量としては、例えば、担体1gに対して0.5〜10mlの範囲を挙げることができる。
担体と塩基性溶液とを混合する温度としては、例えば、後述する第3工程の加熱温度よりも低い温度、好ましくは塩基性溶液に用いられる溶媒の沸点と融点との間の温度(具体的には0〜100℃)、より好ましくは、5〜50℃の温度範囲を挙げることができる。
担体と塩基性溶液との混合時間としては、例えば、5分〜24時間の範囲を挙げることができる。
【0015】
第1工程における固液分離としては、前記混合方法が(I)〜(IV)の場合には、得られる混合物を、自然濾過、加圧濾過、減圧濾過、遠心濾過等で濾過する方法、又は、得られる混合物をデカンテーションする方法等を例示することができる。前記混合方法が(V)又は(VI)の場合、混合及び濾過が行われている。
固液分離における温度としては、前記の混合する温度と同程度の温度を挙げることができる。
固液分離の終点としては、当該固液分離によって、固体から塩基性溶液が分離されなくなるまで行うことが好ましい。
【0016】
担体と塩基性溶液とを混合し、固液分離して得られた固体は、そのまま第2工程に供してもよいが、さらに水と混合し、固液分離することが好ましい。該固体と水との混合方法及び得られる混合物の固液分離は、前記した混合方法及び固液分離と同様に行えばよい。ここで、水の使用量としては、該固体1gに対して0.5〜10mlの範囲を挙げることができる。
【0017】
このようにして得られた固体は、必要に応じて乾燥してもよい。乾燥方法としては、例えば、通風乾燥、減圧(真空)乾燥などを挙げることができ、乾燥温度としては、50℃〜200℃の範囲を挙げることができる。
【0018】
<第2工程>
第2工程は、アルカリ金属、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属及びアルカリ土類金属化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種(以下、総称して添加物と記すことがある)と、第1工程で得られた固体とを混合する工程である。
ここで、アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等を挙げることができる。アルカリ金属化合物としては、例えば、前記に例示されたアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩およびアルカリ金属炭酸水素塩等を挙げることができる。また、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウムなどのアルカリ金属水素化物、及び、硝酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウムなどのアルカリ金属硝酸塩も第2工程で用いられるアルカリ金属化合物の1種である。アルカリ土類金属としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、バリウム等を挙げることができる。アルカリ土類金属化合物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどのアルカリ土類金属水酸化物、例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等のアルカリ土類金属炭酸塩、炭酸水素カルシウム(重炭酸カルシウム)等のアルカリ土類金属炭酸塩、例えば、水素化カルシウム等のアルカリ土類金属水素化物、例えば、硝酸カルシウム等のアルカリ土類金属硝酸塩等を挙げることができる。
添加物としては、アルカリ金属及びアルカリ金属化合物が好ましく、カリウム又は炭酸カリウム、水酸化カリウム、硝酸カリウム等のカリウムを含む化合物がより好ましく、とりわけ、炭酸カリウムが好ましい。
【0019】
添加物がアルカリ金属、アルカリ金属水素化物、アルカリ土類金属などの水と反応して水素を発生させる金属又は化合物である場合、添加物は第2工程において固形状であることが好ましい。この際、第1工程で得られる固体は前記したように乾燥しておくことが好ましい。
添加物がアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属硝酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ土類金属硝酸塩、アルカリ土類金属炭酸水素塩などの水と反応しても水素を発生させない化合物である場合、添加物は固形状であってもよいし、水又はアルコール溶媒に溶解して溶液状であってもよい。溶液状である場合の添加物の濃度としては、例えば、0.1重量%から飽和濃度の範囲を挙げることができる。
【0020】
第2工程における添加物の使用量としては、例えば、第3工程で得られる触媒における添加物の含有量が担体100重量部に対し、1〜35重量部の範囲となるように、第2工程において、適宜、調整すればよい。具体的には、添加物が固形状の場合には、添加物と第1工程で得られた固体との混合量を所望の含有量となるように調整すればよい。添加物が溶液状の場合には、添加物の溶液の濃度を調整したり、添加物と第1工程で得られた固体との混合、濾過及び乾燥の操作を所望の含有量となるまで繰り返して行えばよい。また、添加物の溶液と担体との混合物から、水やアルコール溶媒を乾燥又は濃縮等により除去する場合には、混合に供する添加物の溶液の量を適宜、調整すればよい。
【0021】
添加物が溶液状である場合、添加物と第1工程で得られた固体との混合方法は、第1工程における担体と塩基性溶液との混合方法と同様に行えばよい。溶液状の添加物と第1工程で得られた固体とを混合した後、固液分離して水又はアルコールを低減しておくことが好ましく、得られた固体は乾燥してもよい。添加物が溶液状である場合の好ましい第2工程としては、添加物と水と担体とを攪拌等により混合し、得られた混合物から、水を乾燥又は濃縮等により除去する方法である。
添加物が固形状である場合、添加物と第1工程で得られた固体との混合方法としては、例えば、回分式回転混合機、連続式回転混合機、回分式攪拌機付混合機、連続式攪拌機付混合機、振動混合機、揺動混合機などの混合機を用いる方法等を挙げることができる。
【0022】
<第3工程>
第3工程は、第2工程で得られた混合物を加熱する工程である。
加熱温度としては、得られる触媒に供する反応の種類によっても異なるが、例えば、500〜750℃の範囲を挙げることができる。
加熱時間としては、昇温速度によっても異なるが、例えば、上記温度範囲内にて1〜48時間の範囲を挙げることができ、好ましくは、4〜24時間の範囲が挙げられる。
第3工程の加熱方法としては、例えば、マッフル炉、管状炉、雰囲気炉などのバッチ式炉、例えば、ロータリーキルン、スクリューコンベヤ炉、トンネル炉、ベルト炉、プッシャー炉、竪形連続炉などの連続式炉などの焼成炉による加熱方法を挙げることができる。
第3工程は、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましく、不活性ガスを上記焼成炉中に連続流通させ、発生する水蒸気等を除去しながら加熱することが好ましい。
【0023】
上記調製方法により得られた触媒(以下、本触媒と記すことがある)は、反応の触媒に供することができる。具体的な反応としては、例えば、本触媒にアレン化合物を接触させる工程(以下、異性化工程と記すことがある)を含むアセチレン化合物の製造方法等を挙げることができる。
以下、異性化工程について説明する。
【0024】
<異性化工程>
異性化工程に用いられるアレン化合物としては、例えば、式(1)

(式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。)
で表される化合物(以下、化合物(1)と記すことがある)等を挙げることができる。
【0025】
前記炭化水素基は、炭素数1〜10であることが好ましい。前記炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等の炭素数1〜10のアルキル基、例えば、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜10のアリール基、例えば、ベンジル基等の炭素数7〜10のアラルキル基等を挙げることができる。
化合物(1)としては、例えば、プロパジエン、1,2−ブタジエン、1,2−ペンタジエン、1,2−ヘキサジエン、1,2−ヘプタジエン、1,2−オクタジエン、1,2−ノナジエン、1,2−デカジエン及びフェニルプロパジエン等を挙げることができ、好ましくは、R=R=Hであるプロパジエンである。
【0026】
異性化工程に用いられるアレン化合物には、不純物が含まれていてもよい。不純物としては、例えば、メタン、エタン、プロパン、シクロプロパン及びブタンなどのアルカン;エチレン、プロピレン及びブテンなどのアルケン;メチルアセチレン及びエチルアセチレンなどのアルキン;1,3−ブタジエンなどのジエン化合物等を挙げることができる。
また、アレン化合物が第3工程においてガスである場合、第3工程には、アレン化合物、アセチレン化合物及び本触媒に対し不活性なガス、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガス、窒素、水素、一酸化炭素等が共存していてもよい。
【0027】
異性化工程は、用いるアレン化合物の種類に応じて適宜、最適な圧力条件を調節すればよく、例えば、常圧下〜5MPaの加圧下の範囲等を挙げることができる。
異性化工程に用いられる反応装置の気相部は、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴンなどの希ガス、メタン、エタン、プロパン、シクロプロパン、プロピレン、ブタン、ブテン等の炭化水素ガス、窒素、一酸化炭素等で充填されていることが好ましい。
【0028】
異性化工程における本触媒とアレン化合物との接触温度(混合温度)としては、例えば、−10〜60℃、好ましくは10〜40℃の温度範囲内を挙げることができる。
【0029】
異性化工程における接触方法を具体的に説明すると、例えば、(i)有機溶媒及びアレン化合物を含む溶液と本触媒とを混合させる工程(以下、工程(i)と記すことがある)、(ii)本触媒を充填した層に、アレン化合物を含む流体を流通させる工程(以下、工程(ii)と記すことがある)等を挙げることができる。
【0030】
まず、工程(i)について説明する。
工程(i)に用いられる有機溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN−メチルピロリドン(NMP)などのアミド溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、メチルt−ブチルエーテル(MTBE)、テトラヒドロフラン(THF)、ジグライム及びジオキサンなどのエーテル溶媒;エタン、プロパン、シクロプロパン、プロピレン、ブタン、ブテン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘキセン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン及び石油エーテルなどの炭化水素溶媒又はこれら溶媒の混合溶媒等を挙げることができる。
尚、有機溶媒及びアレン化合物と含む溶液100重量部に対し、アレン化合物の含有量は、例えば、0.1〜95重量部の範囲内を挙げることができ、好ましくは、1〜50重量部の範囲内である。
【0031】
工程(i)に用いられる本触媒の使用量としては、例えば、アレン化合物100重量部に対し、0.01〜200重量部の範囲内を挙げることができ、好ましくは、0.1〜50重量部の範囲内である。
【0032】
工程(i)における接触時間、すなわち、有機溶媒及びアレン化合物を含む溶液と本触媒との混合時間としては、アレン化合物の使用量によっても異なるが、例えば、0.1〜24時間の範囲を挙げることができる。
工程(i)の反応装置としては、例えば、回分式反応装置、流動床式反応装置、固定床式反応装置等を挙げることができる。また、複数の上記反応装置を設けて異性化工程を連続的に行ってもよい。
【0033】
次に、工程(ii)について説明する。
アレン化合物を含む流体とは、アレン化合物及び有機溶媒を含む混合溶液、又は、アレン化合物及びガスを含む混合ガスを意味する。有機溶媒としては工程(i)で例示された有機溶媒を挙げることができる。上記ガスとは、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴンなどの希ガス、メタン、エタン、プロパン、シクロプロパン、プロピレン、ブタン、ブテン等の炭化水素ガス、窒素、一酸化炭素等を挙げることができる。
該流体におけるアレン化合物の含有量としては、該流体100重量部に対し、例えば、0.1〜95重量部の範囲等を挙げることができ、好ましくは、0.1〜80重量部の範囲である。
【0034】
工程(ii)において、本触媒を充填した層の容量(m)に対して、単位時間当たりのアレン化合物を含む混合ガスの流通量(m/h)としては、例えば、0.01〜100h−1の範囲を挙げることができ、好ましくは、1〜200h−1の範囲等を挙げることができる。
工程(ii)は、例えば、本触媒を充填した層を含む固定床式反応装置にて連続的に行う方法等を挙げることができる。
【0035】
<アセチレン化合物>
異性化工程によって得られるアセチレン化合物としては、アレン化合物が化合物(1)である場合、式(2)

(式中、R及びRは前記と同じ意味を表す。)
で表される化合物(以下、化合物(2)と記すことがある)を挙げることができる。
異性化工程で得られた反応混合物を蒸留等により、アセチレン化合物を取得することができる。
本触媒は従来の触媒と同等程度の触媒性能でアセチレン化合物を製造することができる。また、本触媒を用いることにより、長時間、アセチレン化合物が製造可能である。さらに、本触媒は、アレン化合物などの原料が多量に接触しても、触媒性能を維持することができる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例により本発明を説明する。
【0037】
[比較例]
<触媒の調製例1>
炭酸カリウム(25g)を水(70ml)に溶解させた。得られた溶解液を攪拌させながらSTREM社製γ−アルミナ(100g)と水(80ml)との混合物を加えた。得られたスラリーを130℃で乾燥し、140gの固形物を得た。固形物の一部(56g)を窒素雰囲気下575℃で5時間焼成し、触媒(32g)を得た。
【0038】
<異性化工程例1>
直径1/2インチのステンレスチューブに<触媒の調製例1>で得られた触媒(1.51g)を充填した。プロパジエン(以下、PDと記すことがある。Synquest社製)を脱水n−ヘキサン(和光純薬製)に溶解させたフィード溶液(PD濃度2.9重量%)を、プランジャーポンプ(島津LC−20AD)にて、該充填層に連続的に供給した。充填層容量に対する該フィード液の1時間あたりの供給容量は1.7h−1であった。該充填層を通過した反応液を反応の1時間ごとにサンプリングし、サンプリング液に含まれるメチルアセチレン(以下、メチルアセチレンと記すことがある)とプロパジエンとの比(MA/PD)を、n−ヘプタンを内標準物質に用いたガスクロマトグラフィー分析(カラム:バリアン CP−SilicaPlot 0.53mm×30m)によって求めた。結果を表1に示した。表1によれば、4時間後のサンプリング液は1時間後のサンプリング液と比べて、MA/PDが低下している、すなわち、メチルアセチレンへの触媒性能が4時間目以降に低下していることがわかる。
【0039】
【表1】

【0040】
[実施例]
<触媒の調製例2>
比較例の<触媒の調製例1>で得られた触媒(4.01g)について、PD濃度2.9重量%のフィード溶液に代えて、飽和濃度までPDを溶解させたフィード溶液を用いる以外は、比較例の<異性化工程例1>と同様の操作を行い、メチルアセチレンの生成が認められなくなるまで反応させた。次に、反応終了後の触媒を充填層から取り出し、真空乾燥し、担体とした。
該担体を入れた容器に炭酸カリウム(1.00g)とイオン交換水(20ml)とを加え、室温(約25℃)にて攪拌した。容器の内容物を濾過し、濾上物をイオン交換水でリンスして3.44gの白色固体を得た(以上、第1工程)。
該固体を入れた容器炭酸カリウム(1.00g)とイオン交換水(20ml)とを加え、室温(約25℃)にて攪拌した。得られた混合液から、ロータリーエバポレーターにより水を減圧留去した(以上、第2工程)。
得られた固体を窒素雰囲気下500℃で5時間焼成し、触媒(3.01g)を得た(以上、第3工程)。
【0041】
<異性化工程例2>
<触媒の調製例2>で得られた触媒を用い、充填層容量に対する該フィード液の1時間あたりの供給容量は1.3h−1とする以外、比較例の<異性化工程例1>と同様に行った。反応が1時間経過するごとにサンプリングし、得られたサンプリング液について前記と同様にしてMA/PDを求め、比較例の<異性化工程例1>とともに結果を表1に示した。表1によれば、6時間後のサンプリング液は、1時間後のサンプリング液と比べてもMA/PDがほとんど変わらない、すなわち触媒性能を維持していることがわかる。
【0042】
図1は、上記の比較例の<異性化工程例1>及び実施例の<異性化工程例2>について、触媒の重量あたり流通した原料(PD)の量に対する触媒性能の関係を示した。縦軸は触媒性能、すなわち、MAとPDとの和に対するMAの比(MA/(MA+PD))を表し、横軸は触媒1gあたりの流通したPDの量(g)を表す。図が上に行くほど触媒性能が優れることを表し、図が横に行くほど原料であるPDが多量に触媒に接触することを表す。比較例の<異性化工程例1>(図の△)と実施例の<異性化工程例2>(図の○)の結果についてプロットした。実施例の<異性化工程例2>の結果は、比較例の<異性化工程例1>の結果に比べ、多量のPDが流通しても触媒性能が維持されていることがわかる。
また、左端の点(反応初期)において、比較例の<異性化工程例1>と実施例の<異性化工程例2>とで結果が同等程度であることから、本発明の調製方法で得られた触媒は、反応初期において、従来の方法で得られた触媒と同等程度の触媒性能を有することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の調製方法によれば、原料が多量に接触しても触媒性能を維持し得る触媒が提供可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体と塩基性溶液とを混合し、固液分離する第1工程、
アルカリ金属、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属及びアルカリ土類金属化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種と、第1工程で得られた固体とを混合する第2工程、並びに、
第2工程で得られた混合物を加熱する第3工程を含むことを特徴とする触媒の調製方法。
【請求項2】
前記担体が、反応に供される前に有する当該反応における触媒能力よりも低い当該反応における触媒能力を有する触媒に含まれる担体であることを特徴とする請求項1記載の調製方法。
【請求項3】
前記反応が、アレン化合物を接触させてアセチレン化合物を得るための反応であることを特徴とする請求項1又は2記載の調製方法。
【請求項4】
アレン化合物がプロパジエンであり、アセチレン化合物がメチルアセチレンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の調製方法。
【請求項5】
担体がアルミナであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の調製方法。
【請求項6】
第1工程が、担体と塩基性溶液とを混合し、固液分離した後、さらに、固液分離して得られた固体と水とを混合し、固液分離する工程を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の調製方法。
【請求項7】
第3工程の加熱温度が500〜750℃の範囲内であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の調製方法。
【請求項8】
第3工程が、10分〜48時間の範囲内で加熱する工程であることを特徴とする請求項7記載の調製方法。
【請求項9】
塩基性溶液が、カリウムを含む塩基の水溶液であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか記載の調製方法。
【請求項10】
塩基性溶液が、アルカリ金属炭酸塩であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか記載の調製方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか記載の調製方法により得られた触媒にアレン化合物を接触させる工程を含むことを特徴とするアセチレン化合物の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−206037(P2012−206037A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74565(P2011−74565)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】