説明

触媒反応器コーティングを使用するシステムおよび方法

【課題】燃焼器(30)内の触媒(56)を保護する方法および装置を提供すること。
【解決手段】一実施形態では、触媒反応器(14)が、触媒反応器(14)が燃焼器(30)内にある間に化学的または機械的に除去することができる保護コーティング(58)を含む。第1の実施形態では、触媒反応器は、燃焼中に触媒が汚れることを阻止する保護コーティングを備える。第2の実施形態では、燃焼器を作動させること、および触媒反応器が燃焼器内にある間に保護コーティングを除去して、燃焼器の触媒反応器内の触媒を露出させることを含む方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される主題は触媒反応器に関し、より詳細には、触媒反応器内で使用することができる犠牲コーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
触媒反応器は一般に、燃焼中に発生する排出物を減らすために、燃焼プロセス内、例えばガスタービンエンジンまたは接触改質装置内で使用することができる。燃焼中、高温、例えば約1430℃超の温度で、一酸化窒素および二酸化窒素(集合的にNOxとして知られている)などの化合物が形成されることがある。触媒反応器は、燃焼のための反応温度を低下させ、それによってこれらの化合物の形成を低減させる触媒を使用することができる。ある種の燃焼運転の間、触媒反応器内の触媒を保護することが望ましいことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4,534,165号公報
【特許文献2】米国特許第4,794,753号公報
【特許文献3】米国特許第4,966,001号公報
【特許文献4】米国特許第5,235,804号公報
【特許文献5】米国特許第5,355,668号公報
【特許文献6】米国特許第5,891,584号公報
【特許文献7】米国特許第6,155,819号公報
【特許文献8】米国特許第6,174,159号公報
【特許文献9】米国特許第6,286,298号公報
【特許文献10】米国特許第6,358,040号公報
【特許文献11】米国特許第6,394,791号公報
【特許文献12】米国特許第6,460,345号公報
【特許文献13】米国特許第6,748,745号公報
【特許文献14】米国特許第6,752,623号公報
【特許文献15】米国特許第6,925,811号公報
【特許文献16】米国特許第7,003,958号公報
【特許文献17】米国特許第7,003,959号公報
【特許文献18】米国特許第7,007,478号公報
【特許文献19】米国特許第7,093,438号公報
【特許文献20】米国特許第7,093,445号公報
【特許文献21】米国特許第7,208,230号公報
【特許文献22】米国特許第2007/0037105号公報
【特許文献23】欧州特許第1519116号公報
【特許文献24】欧州特許第1320705号公報
【特許文献25】国際公開第2003/072919号パンフレット
【特許文献26】国際公開第2004/099668号パンフレット
【特許文献27】国際公開第2005/026675号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このため、燃焼器(30)内の触媒(56)を保護することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
新規に請求する本発明と範囲が同等のいくつかの実施形態を下に要約する。これらの実施形態が特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を限定することは意図されておらず、これらの実施形態は、本発明の可能な形態の短い概要だけを提供することが意図されている。実際、本発明は、以下に記載する実施形態と同様の、または以下に記載する実施形態とは異なるさまざまな形態を包含することができる。
【0006】
第1の実施形態では、システムが、燃焼器と、燃焼中に触媒が汚れることを阻止する保護コーティングを備える触媒反応器とを含む。この保護コーティングは、触媒反応器が燃焼器内にある間に化学的または機械的に除去することができる。
【0007】
第2の実施形態では、方法が、燃焼器を作動させること、および触媒反応器が燃焼器内にある間に保護コーティングを除去して、燃焼器の触媒反応器内の触媒を露出させることを含む。
【0008】
第3の実施形態では、方法が、触媒反応器内の触媒コーティングを覆う保護コーティングを塗布することを含み、この保護コーティングは、触媒反応器が燃焼器内にある間に除去されるように構成される。
【0009】
本発明のこれらの特徴、態様および利点、ならびにその他の特徴、態様および利点は、添付図面を参照して以下の詳細な説明を読んだときに、よりいっそう理解される。図面全体を通じて同様の符号は同様の部分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】犠牲コーティングを使用することができる触媒反応器を有するガスタービンエンジンの一実施形態の概略流れ図である。
【図2】縦軸に沿って切った図1のガスタービンエンジンの一実施形態の断面図である。
【図3】触媒反応器を有する燃焼器を示す、図2のガスタービンエンジンの一部分の詳細図である。
【図4】ある実施形態に基づく図3に示された触媒反応器の一部分の断面図である。
【図5】犠牲コーティングを使用する例示的な1つの方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の1つまたは複数の具体的な実施形態を説明する。これらの実施形態の説明を簡潔にするため、本明細書では、実際の実施態様の特徴が完全には説明されないことがある。このような実際の実施態様の開発においては、工学または設計プロジェクトの場合と同様に、実施態様ごとに異なるシステム関連および事業関連の制約の順守など、開発者の特定の目標を達成するために、その実施態様に固有の数多くの判断を下さなければならないことを理解されたい。さらに、このような開発努力は複雑であり、時間がかかることがあるが、それにもかかわらず、この開示の恩恵に浴した技術者には、このような開発努力が、ルーチンの設計、製作および製造作業となることを理解されたい。
【0012】
本発明のさまざまな実施形態の要素を提示するとき、冠詞「a」、「an」、「the」および「said」は、その要素が1つまたは複数あることを意味することが意図されている。用語「備える」、「含む」および「有する」は包括的であり、記載された要素以外の追加の要素が存在する可能性があることを意味することが意図されている。
【0013】
本開示は、触媒を保護するために触媒反応器内で使用することができる犠牲コーティングを対象とする。ある種の運転期間の間、例えばガスタービンエンジン内の燃焼器の起動または立上げの間、あるいは新しい圧縮機を設置した後、より高い濃度の汚染物質および/または微粒子が燃焼器の下流に運ばれることがある。これらの汚染物質および/または微粒子は触媒反応器に流入し、反応器内の触媒を汚し、または他の方法で劣化させることがある。例えば、ある種の微粒子は触媒に付着し、燃焼中の触媒相互作用に使用可能な表面積を低減させることがある。したがって、これらの運転期間中に触媒を保護するため、触媒に犠牲コーティングを塗布することが望ましいことがある。
【0014】
犠牲コーティングは、触媒反応器の製造中または触媒反応器の設置後に塗布することができる。新しいガスタービンエンジンの最初の約10時間から1000時間の運転時間が経過した後など、所望の触媒保護が終了した運転期間の後に、犠牲コーティングを除去することができる。しかしながら、犠牲コーティングを保持する期間は変更することができ、用途に依存すると考えられる。具体的には、犠牲コーティングは、触媒反応器が燃焼器内に設置されている間に化学的または機械的に除去することができる、もろい、すなわち容易に破壊されるコーティングを含むことができる。例えば、犠牲コーティングは、圧縮機の洗浄中に除去することができる水溶性のコーティングを含むことができる。触媒が保護されている間、触媒特性を提供するため、ある種の実施形態では、犠牲コーティングを触媒として活性とすることができる。例えば、触媒を覆って犠牲コーティングが配置されている間、触媒の表面が隠れることがあり、それによって触媒としての利点が低下することがある。犠牲コーティングが反応器内に存在する間、一時的に触媒に代わり、または触媒を補って、反応温度を低下させ、排出物を減らすために、犠牲コーティングの触媒特性を使用することができる。
【0015】
一般に、犠牲コーティングは、ガスタービン、エンジン、改質装置などのある範囲の燃焼装置内の触媒反応器に塗布することができる。図1は、犠牲コーティングの例示的な用途を示し、犠牲コーティングを有する触媒反応器14を使用することができるガスタービンエンジン12を示す。ある種の実施形態では、システム10が、航空機、船舶、機関車、発電システムまたはこれらの組合せを含むことができる。示されたガスタービンエンジン12は、空気取入口セクション16、圧縮機18、燃焼器セクション20、タービン22および排気セクション24を含む。タービン22は、シャフト26を介して圧縮機18に、圧縮機18を駆動するように結合されている。
【0016】
矢印によって示されているように、空気は、取入口セクション16を通ってガスタービンエンジン12に入り、圧縮機18に流入することができる。圧縮機18は、燃焼器セクション20に入る前に空気を圧縮する。示された燃焼器セクション20は、圧縮機18とタービン22の間のシャフト26の周りに同心にまたは環状に配置された燃焼器ハウジング28を含む。圧縮機18からの圧縮空気は燃焼器30に入り、燃焼器30で、圧縮空気は燃料と混合し、触媒反応器14内で燃焼することができる。触媒反応器14内では燃焼の一部または全部が起こることができ、上で論じたとおり、触媒反応器14は、反応温度を低下させて排出物を減らすことができる。
【0017】
燃焼器セクション20からの高温の燃焼ガスはタービン22を通り抜け、タービン22はシャフト26を介して圧縮機18を駆動する。例えば、燃焼ガスは、タービン22内のタービン動翼に、シャフト26を回転させる原動力を加えることができる。タービン22を通り抜けた後、高温の燃焼ガスは、排気セクション24を通ってガスタービンエンジン12を出ることができる。
【0018】
図2は、縦軸29に沿って切った図1のガスタービンエンジン12の一実施形態の側断面図である。ガスタービンエンジン12は、燃焼器セクション20内に位置する1つまたは複数の燃料ノズル32を含む。ある種の実施形態では、ガスタービンエンジン12が、環状に配置された複数の燃焼器30を含むことができる。さらに、それぞれの燃焼器30は、それぞれの燃焼器30のベースに環状にまたは他の配置で取り付けられた複数の燃料ノズル32を含むことができる。
【0019】
図1に関して上で説明したとおり、空気は、空気取入口セクション16を通ってエンジン12に入ることができ、この空気を、圧縮機18によって圧縮することができる。次いで、圧縮機18からの圧縮空気を燃焼器セクション20に導き入れることができ、燃焼器セクション20で、この圧縮空気を燃料と混合することができる。例えば、燃料ノズル32は、燃料−空気混合物を、燃焼、排出物、燃料消費およびパワー出力を最適化するのに適した比率で燃焼器30内へ噴射することができる。燃焼器30内において、燃料−空気混合物は触媒反応器14内で燃焼して、加圧された高温の排気ガスを発生させることができる。触媒反応器14は一般に、反応温度を低下させ、それによってNOx、一酸化炭素などの望ましくない副生物の発生を低減させ、かつ/または火炎安定性を向上させる、1種または数種の触媒を含むことができる。燃焼は、触媒反応器14の外側の燃焼器30内で起こることもある。燃焼によって発生した加圧された高温の排気ガスは燃焼器セクション20を出、移行セクション36を通ってタービン22へと流れることができる。タービン22内で、この加圧された排気ガスは、タービン22内において放射状に延びる翼38を回して、排気セクション24を通って出る前にシャフト26(図1)を回転させることができる。
【0020】
図3に、燃焼器セクション20の一実施形態の詳細図を示す。予混合燃料ノズル32は、燃焼器30の頭端近くのエンドカバー42に取り付けられている。エンドカバー42を通してそれぞれの燃料ノズル32に圧縮された燃料が導入され、燃料ノズル32は、予混合された燃料−空気混合物を燃焼器30内へ分配する。燃焼器30は一般に、ケーシング46、ライナ48および流れスリーブ50によって画定された燃焼室44を含む。矢印によって大まかに示されているように、圧縮機からの空気を、ライナ予混合セクション45の穿孔または他の開口を通して燃焼室44内へ導き入れるため、ある種の実施形態では、フロースリーブ50を、ライナ48の周りに同軸に配置することができる。
【0021】
触媒反応器14よりも前で燃料と空気を予混合させるため、燃料ノズル32は、加圧された燃料を触媒反応器14よりも前で分配することができる。燃焼室44内では、燃料−空気混合物が触媒反応器14を通り抜けることができる。触媒反応器14は一般に、燃焼反応を促進して排出物を減らす触媒を含むことができる。触媒は一般に、燃焼排気ガス52を発生させる、燃料と空気の安定した低温反応を促進することができる。触媒反応器14からの燃焼排気ガス52は、燃焼室44の主セクションおよび移行セクション36を通り抜けることができ、そこでさらなる燃焼が起こることもある。例えば、部分的に燃焼した排気ガス52が、燃焼室44および/または移行セクション36内で熱燃焼を受けることがある。
【0022】
触媒反応器14は一般に、触媒床を形成するために触媒で被覆されたセラミックまたは金属担体(substrate)を含むことができる。触媒床は、ハニカムセル、充填床、網状発泡体、長管、モノリス、円筒形、板状構造など適当な任意の構造を含むことができる。担体は、金属合金、セラミック、金属酸化物、金属間化合物材料、炭化物、窒化物などの高温材料からなり、またはこのような高温材料から形成することができる。一般に、この触媒床の構造を、燃焼反応を促進する反応触媒で覆うことができる。例えば、触媒床は、反応触媒で被覆されたハニカムセルを含む断面を有する円筒体を含むことができる。触媒のタイプは、その燃焼用途に特化したものとすることができ、使用する燃料のタイプに基づいて変更することができる。例えば、炭化水素ベースの燃料では、触媒が、ジルコニウム、バナジウム、クロム、マンガン、銅、白金、オスミウム、イリジウム、ロジウム、セリウム、ランタンおよび他のランタノイド元素、銅、ニッケル、鉄、マグネシウム、白金および白金族金属(PGM)などの元素を含むことができる。触媒はさらに、貴金属、VIII族貴金属、卑金属、金属酸化物またはこれらの任意の組合せからなる他の活性成分を含むことができる。
【0023】
他の実施形態では、燃焼器セクション20内の触媒反応器14の位置を変更することができる。例えば、反応器は一般に、主燃焼室44の上流側または下流側に配置することができる。さらに、濃厚または希薄燃焼環境で触媒反応器を使用することができる。さらに、プレバーナ(pre−burner)、プレミキサ(pre−mixer)、複数のステージ、1つまたは複数の触媒パイロットまたはパイロットバーナなどの追加の構成要素を、燃焼器セクション20内に含めることもできる。ある種の実施形態では、触媒反応器14を、これらの追加の構成要素のうちの1つの構成要素内に配置することができる。例えば、濃厚触媒反応器、希薄触媒反応器、予混合燃焼器、触媒パイロットまたはプレバーナ内に、触媒反応器を配置することができる。さらに、ある種の燃焼器30は複数の触媒反応器を含むことができる。
【0024】
図4は、ある種の実施形態に基づく触媒反応器14の一部分の断面図である。この反応器は一般に、担体54の表面に配置された触媒コーティング56を含むことができる。図3に関して上で説明したとおり、触媒コーティング56は一般に燃焼反応を促進することができる。例えば、炭化水素ベースの燃料に対しては、触媒コーティング56が、一酸化炭素および炭化水素の反応を促進して、この反応に必要な温度を低下させることができる。反応に必要な温度を低下させると排出物を少なくすることができる。反応器14を通過するときに、燃料−空気混合物59は触媒コーティング56の上を通過し、燃焼して、排気ガスを発生させることができる。燃料−空気混合物59は、炭化水素燃料、非炭化水素燃料(すなわちプロセスガス、精油所ガス、合成ガスなど)およびこれらの混合物など、さまざまなタイプの燃料を含むことができる。
【0025】
設置後の起動などある燃焼期間中には、触媒反応器14に、より高い濃度の微粒子および/または汚染物質が輸送される可能性がある。これらの汚染物質は、触媒56の表面に付着または接着する可能性があり、これにより触媒反応器が汚れ、それによって触媒反応器の効率が低下する可能性がある。これに対応して、このような運転期間の間、触媒56を覆う保護コーティングとして犠牲コーティング58を配置することができる。例えば、タービンエンジンの最初の起動の間、または空気圧縮機、燃料供給系統などのある種の装置部品の交換後に、触媒56を覆う犠牲コーティング58を配置することができる。ある種の実施形態では、燃焼器の起動時に利用することができるように犠牲コーティング58が所定の位置に配置された触媒反応器14を、製造業者が提供することができる。しかし、他の実施形態では、燃焼器内に触媒反応器14を設置した後に、犠牲コーティング58を塗布することができる。さらに、触媒コーティング56を覆う1つまたは複数のコーティングまたは層として犠牲コーティング58を塗布することができ、将来希望するときに保護することを可能にするため、触媒反応器14を取り外すことなく補充できるようにすることができる。
【0026】
犠牲コーティング58は一般に、触媒56を覆う保護層を提供することにより触媒56の損傷を阻止することができる。ある種の実施形態では、犠牲コーティング58が触媒56と物理的な結合を形成することができる。犠牲コーティング58は、反応器が燃焼器内に設置されている間に化学的または機械的に除去することができる、もろい、すなわち容易に破壊される適当な任意のコーティングを含むことができる。例えば、コーティングは、水、アルコール、エタノール、エチレングリコール、脱脂剤、洗剤などの単純な溶媒を使用して化学的に除去することができる。コーティングは、超音波振動、機械的な衝撃などの機械力を加えることによって機械的に除去することもできる。例えば、触媒反応器14の中にクルミの殻を導入して、犠牲コーティング58を破壊することができる。次いで、例えば圧縮機の洗浄サイクル中に、犠牲コーティング58の破片を反応器14から洗い流すことができる。除去方法に関わりなく、犠牲コーティング58は一般に、その下の触媒56を傷つけることなく除去可能とすることができる。犠牲コーティング58はさらに、燃焼器の構成要素を取り外すことなく除去可能とすることができる。
【0027】
ある種の実施形態では、触媒56の表面に加えて、触媒反応器14の他のセクションの表面にも犠牲コーティング58を配置することができる。例えば、犠牲コーティング58をライナ48の部分に塗布することができ、これによって、起動または他の運転期間の間、熱障壁を提供することができる。触媒56から犠牲コーティング58を除去する間に、反応器14の他のセクションから犠牲コーティングを除去することができる。
【0028】
犠牲コーティング58は、金属酸化物コーティング、有機コーティング、あるいは化学的または機械的に除去することができる他のもろいコーティングなど、適当な任意のタイプのコーティングを含むことができる。例えば、金属酸化物コーティングは、油性溶媒を使用して除去することができるスルホン酸マグネシウム、水性溶媒を使用して除去することができる硫酸マグネシウムなど、マグネシウムと酸素の組合せを含むことができる。他の例では、有機コーティングを使用して、酸化中に除去し、または熱によって揮発させることができる酸素障壁を形成することができる。ある種の実施形態では、犠牲コーティング58が、米オハイオ州CincinnatiのProctor and Gamble社から販売されているPepto−Bismol(登録商標)、米デラウェア州WilmingtonのDuPont社から販売されているTeflon(登録商標)などの市販コーティングを含むことができる。他の実施形態では、コーティングが、マグネシア乳、水酸化マグネシアまたは次サリチル酸ビスマス溶液を含むことができる。犠牲コーティング58を除去する際の環境に対する懸念を緩和するため、ある種の実施形態では、犠牲コーティング58を、比較的に安定で環境にやさしい化合物から形成することができる。
【0029】
ある種の実施形態では、マグネシウムベースのコーティングを使用することによって、犠牲コーティング58に触媒特性を追加することができる。これらの触媒特性は、触媒56の表面に配置されたときに、犠牲コーティング58が燃焼反応を促進することを可能にすることができる。例えば、犠牲コーティング58は、ガスタービンエンジン12(図1)の最初の起動中に触媒56の表面に配置することができる。図4に示されているように、犠牲コーティング58は、燃焼ガス52が触媒56に接触することができないように、触媒を覆って配置することができる。しかしながら、燃焼ガス52は犠牲コーティング58と接触することができ、犠牲コーティング58の触媒特性は、犠牲コーティング58が反応器14内に配置されたときに燃焼反応を促進し、それによって排出物を減らすように機能することができる。他の実施形態では、コーティングに触媒をドープすることができる。例えば、コーティングに、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金などの白金族金属をドープすることができる。ある種の実施形態では、Pepto−Bismol(登録商標)に触媒をドープして、犠牲コーティング58の触媒特性を増強させることができる。他の実施形態では、鉄、コバルト、ニッケルなど触媒特性を有する他のドーピングエージェントを使用することができる。
【0030】
前述のとおり、犠牲コーティング58は、汚染物質および/または微粒子によって触媒が損傷する恐れがある運転期間の間、触媒を保護するために、触媒を覆って一時的に配置することができる。図5は、触媒反応器内で犠牲コーティングを使用する例示的な方法60を示す。この方法は、犠牲コーティングを触媒に塗布する(ブロック62)ことから開始することができる。ある種の実施形態では、触媒反応器14(図4)の組立中に製造業者が犠牲コーティング58(図4)を塗布することができる。例えば、あるタイプのマスキングを使用して、触媒の表面に犠牲コーティング58を吹き付けることができ、または吹付け塗り、刷毛塗り、浸し塗りなどの他の方法によって犠牲コーティング58を塗布することができる。他の実施形態では、反応器を燃焼器内に設置した後に、犠牲コーティング58を塗布することができる。例えば、ガスタービンエンジンのオーバホールまたは新しい圧縮機の設置後に、触媒反応器14の開口を通して犠牲コーティング58を(例えば吹付け塗り、刷毛塗りなどによって)塗布することができる。ある種の実施形態では、燃焼器30のハウジング28(図1)が、犠牲コーティングを塗布するためのアクセス開口を含むことができる。他の実施形態では、燃料系統または上流の圧縮機洗浄システムに加えることによって、犠牲コーティング58を塗布することができる。塗布中に、触媒56の表面、および燃焼ライナ48(図3)などの燃焼器30(図3)の他の領域に、犠牲コーティング58を配置することができる。塗布した後、乾燥期間を設けることができ、この乾燥工程を容易にするため、ある種の実施形態では、ガスタービンエンジンを作動させて熱を供給することができる。
【0031】
犠牲コーティングを塗布した後、設定されたある期間の間、燃焼器を作動させる(ブロック64)ことにより、この方法を続けることができる。この期間は、製造業者の推奨、設置のタイプ、製造上の考慮事項など、さまざまな因子に基づくことができる。例えば、ガスタービンエンジンの起動中、約10時間から250時間の間の任意の時間、燃焼器を作動させることができる。より具体的には、燃焼器を、約50から150時間、作動させることができる。この期間の間、遊離した微粒子および汚染がガスタービンエンジンの中を流れることがある。他の例では、圧縮機の交換後、約200時間の間、燃焼器を作動させることができる。
【0032】
この期間が経過した後、犠牲コーティング58を除去することができる(ブロック66)。この除去工程は、触媒反応器および燃焼器がガスタービンエンジン内に収容されている間に実施することができる。例えば、犠牲コーティングが水溶性である場合、圧縮機洗浄システムの試験中に、エンジンの水洗を使用して犠牲コーティングを溶解することができる。他の例では、洗剤または他の単純な溶媒を燃焼器に導入して犠牲コーティングを除去することができる。ある種の実施形態では、水以外の単純な溶媒を使用した後に、水洗を実行して、残った溶媒を燃焼器から洗い流すことができる。他の例では、超音波振動またはガス圧力パルス(すなわち衝撃波など)を燃焼器に加えて、犠牲コーティングを破壊することができる。振動除去または他の機械的な除去の後に、水洗を実施して、燃焼器およびエンジンから犠牲コーティングの破片を洗い流すことができる。
【0033】
上記の説明は、本発明を、最良の形態を含めて開示するため、ならびに任意の装置またはシステムを製作、使用すること、および組み込まれた任意の方法を実行することを含めて当業者が本発明を実施することを可能にするために、いくつかの例を使用している。特許を受けることができる本発明の範囲は、下記の特許請求の範囲によって定義され、当業者が思いつく他の例を含むことがある。このような他の例は、それらが特許請求の範囲の文言に違わない構造要素を有する場合、または特許請求の範囲の文言とはほとんど差のない等価の構造要素を含む場合に、特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0034】
10 システム
12 ガスタービンエンジン
14 触媒反応器
16 空気取入口セクション
18 圧縮機
20 燃焼器セクション
22 タービン
24 排気セクション
26 シャフト
28 燃焼器ハウジング
30 燃焼器
32 燃料ノズル
36 移行セクション
38 翼
42 エンドカバー
44 燃焼室
45 ライナ予混合セクション
46 ケーシング
48 ライナ
50 フロースリーブ
52 燃焼排気ガス
54 担体
56 触媒コーティング
58 犠牲コーティング
59 燃料−空気混合物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼器(30)と、
燃焼中に触媒が汚れることを阻止する保護コーティング(58)を備える触媒反応器(14)と
を備え、
前記触媒反応器(14)が前記燃焼器(30)内にある間に、化学的除去と機械的除去のうちの少なくとも一方によって、前記保護コーティング(58)を除去することができる
システム(10)。
【請求項2】
前記保護コーティング(58)が、圧縮機の洗浄中に除去することができる水溶性コーティングを含む、請求項1記載のシステム(10)。
【請求項3】
前記保護コーティング(58)が触媒として活性である、請求項1記載のシステム(10)。
【請求項4】
前記保護コーティング(58)が、水酸化マグネシウム懸濁液または次サリチル酸ビスマスを含む、請求項1記載のシステム(10)。
【請求項5】
前記触媒(56)が、前記触媒反応器(14)内のハニカムセルと管状構造物のうちの少なくとも一方の触媒床(54)の表面に配置され、前記保護コーティング(58)が、前記触媒(56)を覆う層として配置された、請求項1記載のシステム(10)。
【請求項6】
前記触媒(56)が、燃焼中のNOx排出物を低減させるように構成された、請求項1記載のシステム(10)。
【請求項7】
タービン(22)、圧縮機(18)、タービンエンジン(12)またはこれらの組合せを備える、請求項1記載のシステム(10)。
【請求項8】
前記触媒反応器(14)が、前記燃焼器(30)のプレバーナ内、前記燃焼器(30)のパイロットバーナ内、前記燃焼器(30)のプレミキサ内、または前記燃焼器(30)の主燃焼室内に配置された、請求項1記載のシステム(10)。
【請求項9】
触媒反応器(14)内の触媒コーティング(56)を覆う保護コーティング(58)を塗布するステップ(62)を含み、前記保護コーティング(58)が、前記触媒反応器(14)が燃焼器(30)内にある間に除去されるように構成された方法(60)。
【請求項10】
前記保護コーティング(58)を除去して、前記触媒コーティング(56)を露出させるステップ(66)を含む、請求項9記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−164300(P2010−164300A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5409(P2010−5409)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】