説明

触媒反応装置

【課題】触媒を吸着保持することで触媒反応の効率を向上できる。
【解決手段】触媒反応装置1は、反応器2内に触媒保持部20を設ける。触媒保持部20は、反応器2の円筒管部分を2枚の仕切り板で仕切った内側領域4にアモルファス合金細線9を充填する。内側領域4内に磁力を作用させる永久磁石22を反応器2の外側に設けた。内側領域4に微粒状の触媒19を含む反応液10を充填した。触媒19は一部に強磁性体を含む。反応器2の下端部に原料ガスの供給管を設けて吐出口から液内に気泡を放出する。永久磁石22の磁力によって反応器2内で触媒19をアモルファス合金細線9で分散して吸着保持させた状態で、反応液10と反応ガス11とが触媒19によって反応させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば微粒状の触媒を使用して例えば液とガスを反応させるようにした触媒反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、触媒を用いて反応器内で液とガスを反応させて生成物として液やガスを生成するようにした触媒反応装置において、例えば反応器内に下方からガスを充填して反応器内に満たされた反応液及び触媒と反応させて、上方から反応生成物としての生成液と生成ガスを分離して排出するようにしたものがある。
例えば、図10に示す気液固三相を含む触媒反応装置100では、略カプセル状の反応器101内に微粉状の触媒102を分散させた反応液103を充填しており、液面の上方にルーバー式で飛散する液と触媒のミストを取り除くデミスター104と、飛散する液と触媒を遠心力によって捕捉するサイクロン105が設けられ、最終的に生成ガスと残りの未反応原料ガスだけが上端部から管路を通って排出されることになる。
【0003】
そして、反応器101の下側には原料ガスの供給管107が設けられ、ノズル107aから原料ガスの気泡108を反応液103内に吐出する。これによって反応器101内に気液固三相スラリーが形成される。
また、反応液103の液面近傍には触媒102の流出を防ぐ筒状の微細な金網フィルター109が設けられ、この金網フィルター109から反応生成物としての液110が触媒と分離されて反応器101の外部に排出される。排出された生成液110は管路を介して外部の気液分離装置112に搬送されて加熱器113によって生成液110に溶解した未反応原料を含むガスを分離して追い出し、未反応原料を含むガスを分離した生成液110は他へ排出されることになる。
【0004】
このような触媒反応装置100において、反応後の生成液110が反応器101から排出されると、金網フィルター109を通って液110中に分散する微細な触媒102も液と一体に流出してしまうという問題があった。また、反応器内110においては、触媒102は重力沈降するため反応器101の上方では液中での触媒102の濃度が薄く下方では濃度が濃くなる傾向があり、反応器101の上方での反応が進みにくかった。
【0005】
これらを解消するための1つの手段として、反応器101内から微粒状の触媒102が液110と共に流出しないようにあるいは沈降しないように保持する必要がある。反応器101内で触媒102を固定して保持する場合には、微粒状の触媒に代えて一定以上の大きさを持つ触媒ペレットを充填したり、触媒をハニカム状にして充填すること等が行われていた。
また、反応器101内で触媒102を固定しない場合には、均一で高効率な反応条件を達成するために、反応ガスを気泡状にして気液2相流を形成させ、反応器101内の反応液103が気泡浮力によって流動し、液の流れで触媒を流動させて均一な分散を図ったり、直接ガス流によって微粒状の触媒102を流動させる流動層を設けたり、或いはガスの力に依らずに液を攪拌機やポンプで混合流動させ触媒を均一分散させるようにしていた。
【0006】
一方、磁気分離フィルター装置として、下記特許文献1〜4に記載された技術が提案されている。これらの磁気分離フィルター装置では、例えば油圧機器などの作動油に混入した金属粉等は汚染物として作動不良や故障の原因になるために除去するようにしている。この作動油浄化装置は網状容器内に非晶質金属材料の線材からなるフィルター部材が充填されており、この網状容器の周囲に磁気発生手段を配設して磁場をかけた状態で網状容器内に金属粉を含む作動油を流通させることで、強磁性体である金属粉を磁化されたフィルター部材で吸着させて除去するようにしている。
これらの技術は単に、作動油等の流体中に含まれる強磁性体物質を磁化されたフィルター部材で吸着するというものにすぎない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭59−158421号公報
【特許文献2】実開昭56−121415号公報
【特許文献3】特開平4−281807号公報
【特許文献4】特開平10−5510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述した触媒反応装置100において、上述のように触媒102を反応器101で固定する場合には、微粒子状の触媒102を使用できず、反応器101への触媒の充填や交換は微粒子状の触媒と異なって、人手による作業が必要であり手間がかかる欠点がある。しかも、触媒が触媒ペレット状やハニカム状であるため、微粒状の触媒を用いたものと比較して反応効率が低かった。
他方、触媒を反応器101で固定しない場合には、いずれの場合であっても、微粒状の触媒が重力で沈降することを避けて液中に均一に分散させるために、ガスや液による触媒の流動と分散を反応中に継続させる必要があり、流体の流れが反重力方向になるように下方から上方へ流動させてその流速を一定流速以上に設定する必要があった。そのため、結果的に、流体の流通流量条件と反応器の水平断面積との関係で制約を受けることになるという欠点があった。
また、反応器101内の液の混合を促進する手段として、ポンプによる液循環を採用する場合は吸い込み側に微細金網フィルター等の触媒流出防止手段を設けない限り、触媒粒子がポンプに流入したときに高速で回転するポンプインペラーと触媒が衝突して両者の摩耗や損耗を招くため望ましくない。
【0009】
触媒反応装置では、高効率に反応させるために均一な反応を行う必要があり、そのためには、微粒状の触媒を用いて反応器内の流体にできるだけ均一に分散させる必要があるが、流体の流動条件は、偏流や流動パターンの変化によって大幅に変わりやすく、その結果として触媒の沈降を招き、反応率や容積効率等の低下につながり、触媒劣化につながるおそれもあった。特に、気液固3相からなる気泡塔の場合、ガス空塔速度とガスホールドアップ、フローパターンの関係が複雑であり、定量指標が得難く制御も容易ではなかった。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、触媒を吸着保持することで触媒反応の効率を向上できるようにした触媒反応装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による触媒反応装置は、反応器内で微粒状の触媒を用いて生成物を得るようにした触媒反応装置において、反応器内に触媒保持部を設け、触媒保持部は、反応器内に充填されたアモルファス合金細線と、反応器の外側に設けられていてアモルファス合金細線に磁力を作用させる着磁装置と、少なくとも一部に強磁性体を含んでいて着磁装置の磁力によってアモルファス合金細線に分散して吸着される触媒と、を備えたことを特徴とする。
本発明による触媒反応装置によれば、着磁装置によって磁場を反応器内に生じさせてアモルファス合金細線を磁化させることで強磁性体を含む触媒をアモルファス合金細線に均一に分散させて吸着保持させ、この状態において反応器内で流体を触媒と反応させることで反応生成物を得ることができる。
なお、流体として例えば液、ガス等を用いることができる。
【0012】
本発明による触媒反応装置は、反応器の上側に上述した触媒保持部を備えたことを特徴とする。
本発明による触媒反応装置によれば、反応器内で流体と触媒とによって反応を生じさせる際、例えば、触媒を流体と共に上下方向に流動させたとしても、重力沈降によって触媒は降下し易いので、反応器の下側では触媒の濃度が濃く、上側で触媒の濃度が薄くなる傾向があるが、反応器の上側に触媒保持部を設けることで、着磁装置によって磁場を触媒保持部に生じさせ、触媒保持部でアモルファス合金細線を磁化させることで強磁性体を含む触媒を反応器の上側で均一に分散させて吸着保持させ、この状態において触媒保持部で流体を触媒と反応させることで反応器の上側を下側と同様に均一な触媒濃度に保持することができるため、反応器全体に亘って均一に分散された触媒によって流体の反応を効率良く行うことができて反応生成物を得ることができる。
或いは、反応器の下側において、流体と触媒とで反応が行われ、反応生成ガスと残りの未反応原料が共に反応器の上方に流通するが、その際、反応器の上側に触媒保持部を設置することで、未反応原料は、触媒保持部で、着磁装置で生成する磁場によって磁化されたアモルファス合金細線によって分散して吸着保持された触媒によって、均一に反応が進行できるため、より多くの反応生成物を得つつも未反応原料の排出を抑制できる。
【0013】
また、本発明による触媒反応装置は、第一反応器と第二反応器で微粒状の触媒を用いて生成物を得るようにした触媒反応装置において、第一反応器の下流側に第二反応器を接続し、第二反応器に触媒保持部を設け、触媒保持部は、第二反応器内に充填されたアモルファス合金細線と、第二反応器の外側に設けられていてアモルファス合金細線に磁力を作用させる着磁装置と、少なくとも一部に強磁性体を含んでいて着磁装置の磁力によってアモルファス合金細線に分散して吸着される触媒と、を備えたことを特徴とする。
本発明による触媒反応装置によれば、第一反応器内で流体と触媒とによって反応を生じさせて、第一反応器の下流側から抜き出された流体を第二反応器へ供給させる。第一反応器から抜き出される流体には、未反応の原料成分が含まれており、例えば第一反応器で触媒が重力沈降によって降下し易い傾向があるため、反応器の下側では触媒の濃度が濃く上側で触媒の濃度が薄くなる傾向があるため、下流側では必ずしも十分な反応が行われず、未反応の原料成分が、反応生成物として抜き出される流体に多く随伴して流出することがあり得る。このような場合、抜き出し流体の経路上に設けた第二反応器に触媒保持部を設けておくことで、触媒保持部では着磁装置によって強磁性体を含む触媒がアモルファス合金細線に均一に分散して吸着保持されているから、反応生成物に随伴する液やガス及び液に溶解したガス等の原料成分が、第二反応器で均一分散された触媒と効率よく反応して反応生成物を得ることができる。これによって未反応の原料成分が排出されロスとなることを抑制できる。又、抜き出し流体の、液側には微粒状の触媒が液固スラリー状態として随伴し、ガス側にはミスト状の液飛沫と共に微粒状の触媒が随伴するが、抜き出し流体の経路上に設けた第二反応器に触媒保持部を設けておくことで、触媒が強磁性体を含むために触媒保持部の磁気吸着力によってアモルファス合金細線に捕集され、触媒の流出を防止できる。
又、ガス側では、触媒保持部に充填したアモルファス合金細線の充填層がミスト捕集作用をもたらすのでミスト状の液飛沫が流出することも防止できる。
なお、第二反応器だけでなく第一反応器にも触媒保持部を設けてもよく、この場合には反応効率が一層向上する。
【0014】
また、触媒保持部は、反応器または第二反応器の非磁性金属からなる筒状管と、筒状管の軸直交断面を仕切る2枚の仕切り板と、2枚の仕切り板で仕切られていてアモルファス合金細線が充填された第一領域と、第一領域における筒状管の外側部分に配置された着磁装置とを設けたことが好ましい。
触媒保持部では、第一領域の外側に配置された着磁装置によって仕切り板で仕切られた第一領域内に着磁装置による磁場が形成され、第一領域の外側にはほとんど磁束は生じないため、効率よくアモルファス合金細線を磁化できて触媒を分散状態で強く吸着保持できる。
【0015】
また、筒状管の第一領域と仕切り板で仕切られた第二領域に温度調節用熱媒体の流路が設けられ、仕切り板を伝熱部材として第一領域内の流体と触媒の反応温度を調整するようにしてもよい。
第一領域における触媒と流体との反応に好適な反応温度に応じて、第二領域に温度調節用熱媒体の流路を配置することで仕切り板を介して第一領域の流体と触媒の反応温度をより好適なものに昇温または冷却する等して調整できる。
【0016】
また、触媒保持部は、反応器または第二反応器の非磁性金属からなる筒状管と、該筒状管の軸直交断面を仕切る4枚以上の偶数枚の仕切り板と、各2枚の仕切り板で仕切られた複数の第一領域にアモルファス合金細線が収納され、第一領域の筒状管の外側部分に配置した着磁装置とを設け、仕切り板を介して第一領域と交互に第二領域が設けられ、第二領域に温度調節用熱媒体の流路が設けられて仕切り板を伝熱部材として第一領域の流体と触媒の反応温度を調整するようにしてもよい。
本発明によれば、触媒保持部を筒状管に設けた偶数枚の仕切り板によってアモルファス合金細線を充填して触媒を均等に分散保持させ、流通する流体が反応するようにした第一領域と温度調節用媒体の流路を配置した第二領域とを交互に設けることができるから、複数の第一領域内における流体と触媒の反応温度を全体に反応に好ましい温度に調整できる。
【0017】
また、着磁装置は磁力の発生と消滅を切り換えできるようにしてもよい。
触媒を均一に分散吸着する場合には着磁装置により触媒保持部に磁力を発生させ、触媒を除去する場合には着磁装置を離間する等して触媒保持部の磁力を消滅させる。着磁装置に永久磁石を用いた場合には開閉駆動手段によって永久磁石を触媒保持部に対して対向する位置と離間した位置とに切換移動させることができ、電磁石を用いた場合では電流のON,OFFで切換できる。
【0018】
また、第二反応器が複数並列に設けられ、第一反応器といずれか一方の第二反応器を選択的に連結し、他方の第二反応器の着磁装置による磁力を消磁させるようにしてもよい。
この場合、第一反応器からの抜き出し流体に未反応原料成分と微粒状の触媒が随伴して第二反応器へ供給されるが、その際、一方の第二反応器の触媒保持部で未反応原料成分を触媒と反応させ、その間に他方の第二反応器の触媒保持部の磁力を消滅させた状態で逆洗浄や補修等の処理を行うことができる。特に、第二反応器の触媒保持部に吸着捕集した触媒は磁力を消滅させた状態で逆洗浄によって第一反応器に返送すれば、交互にいずれかの第二反応器を使用して第一反応器から連続的に随伴流出する触媒の捕集と逆送が可能となり、目詰まりを防ぎつつ連続的に未反応原料成分の反応を促進して、原料成分及び触媒の流出ロスが防止できる。
【0019】
また、本発明による触媒反応装置は、第二反応器が複数直列に連結されると共に、最も上流側の第二反応器の連結を流路から外して、洗浄または処理後に最も下流側に連結するようにして用いてもよい。
第一反応器から抜き出される流体に未反応原料成分や微粒状触媒が随伴していても、その流体が、直列に連結された複数の第二反応器へ順次供給されて触媒保持部に保持された触媒と未反応原料成分との反応処理が順次行われ、且つ、強磁性体を含む触媒は磁気力によってアモルファス合金細線に吸着捕集される。その際、定期的に、最も上流側の第二反応器の連結を予め流路から外して逆洗処理後に最も下流側に直列に連結することで、第二反応器の触媒保持部に吸着捕集して蓄積する触媒を適宜、磁力を消滅させた状態で逆洗することによって除去し、目詰まりを防ぎつつ、連続して反応処理に使用できる。
【0020】
また、本発明による触媒反応装置は、触媒保持部を備えた上述したいずれかの反応器が複数直列に連結され、最も上流側の反応器の連結を流路から外して、磁力を消滅させた状態で洗浄または処理した後に最も下流側に連結するようにしてもよい。
この場合でも、最初の反応器から抜き出される流体に未反応原料成分や微粒状触媒が随伴していても、その流体が、直列に連結された次の反応器へ供給されて未反応原料成分は触媒保持部の触媒との反応処理が順次行われ、又、微粒状触媒は触媒保持部に吸着捕集されるが、その際、適宜、最も上流側の反応器の連結を外して磁力を消滅させた状態で洗浄または処理した後に再び磁力を発生させて最も下流側に直列に連結することで、触媒保持部を含む反応器を逆洗浄処理しながら目詰まりを防いで連続して反応処理に使用できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明による触媒反応装置によれば、着磁装置の磁力によって触媒を触媒保持部のアモルファス合金細線に吸着保持することができて、液やガス等の流体の流動に頼らなくても触媒の均一な分散保持を達成して反応効率を向上できる。
また、本発明の触媒保持部を有する反応器は、液やガス等の流体の流れ方向の混合状態に依存しないために例えばピストンフロー型反応器として設計でき、反応量の容積効率が向上して産出する反応生成物量を増大できると共に未反応原料のロスが減少する。
しかも、抜き出し流体に随伴する微粒状触媒が触媒保持部を通過する際に吸着捕集により分散して固定され、流出しないので、流体の流出経路に別の触媒の濾過装置と返送装置を設ける必要がなく、また、触媒は磁力で吸着保持するため触媒の空間濃度を高く設定できる。更に、触媒の吸着捕集・固定保持と離脱・逆洗除去を着磁装置による磁力のON、OFFを切り換えることで容易に行うことができる。
【0022】
また、本発明による触媒反応装置は、反応器の上側に上述した触媒保持部を備えているから、反応器の上側を含めて全体に亘って均一に分散された触媒によって、未反応原料と触媒との反応を効率良く行うことができて、高収率で反応生成物を得ることができ、ガス等の未反応原料成分及び微粒状触媒が反応器の上端部から排出してロスすることを抑制できる。
【0023】
また、本発明による触媒反応装置は、第一反応器の下流側に接続した第二反応器に触媒保持部を設けたから、第一反応器における反応生成物等の抜き出し流体に随伴する未反応原料成分及び微粒状触媒が、第二反応器の触媒保持部で均一分散された触媒と効率よく反応して反応生成物を得ることができ、且つ、微粒状触媒の吸着捕集も可能となり、未反応原料成分及び微粒状触媒が排出してロスすることを抑制できる。
【0024】
また、触媒保持部は、反応器または第二反応器の非磁性金属からなる筒状管内に、2枚の仕切り板で仕切られてアモルファス合金細線を充填した第一領域と着磁装置とを設けたから、触媒保持部では第一領域内に着磁装置による磁場が形成され、第一領域の外側にはほとんど磁束は生じないため、効率よくアモルファス合金細線を磁化できて触媒を分散状態で強力に吸着保持できる。
【0025】
また、筒状管の第二領域に温度調節用熱媒体の流路が設けられたから、仕切り板を介して第一領域の流体と触媒の反応温度をより好適なものに加熱または冷却をして調整できる。
【0026】
また、触媒保持部は、偶数枚の仕切り板を介して第一領域と温度調節用熱媒体の流路を配置した第二領域とを交互に複数設けて反応温度を調整するから、複数の第一領域内における流体と触媒の反応温度をより効率的に全体に反応に好ましい温度に調整できる。
【0027】
また、着磁装置は磁力の発生と消滅を切り換えできるから、触媒を均一に分散吸着する場合には着磁装置で磁力を発生させ、触媒を除去する場合には着磁装置による磁力を消滅させることができる。
【0028】
また、第二反応器が複数並列に設けられ、第一反応器といずれか一方の第二反応器を選択的に連結し、他方の第二反応器の着磁装置による磁力を消磁させるようにしたから、交互にいずれかの第二反応器を使用して目詰まりを防いで流体の反応を促進できる。
【0029】
また、本発明による触媒反応装置は、第二反応器が複数直列に連結されると共に、最も上流側の第二反応器の連結を適宜流路から外して、磁力を消滅させた状態で洗浄または処理した後に、再び磁力を発生させて最も下流側に連結するようにしたから、洗浄等しながら目詰まりを防いで連続して反応処理に使用できる。
【0030】
また、本発明による触媒反応装置は、触媒保持部を備えた反応器の最も上流側の反応器の連結を流路から外して、磁力を消滅させた状態で洗浄または処理した後に、再び磁力を発生させて最も下流側に連結するため、触媒保持部を含む反応器を洗浄等しながら目詰まりを防いで連続して反応処理に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第一実施形態による触媒反応装置の要部構成を示す説明図である。
【図2】図1に示す触媒反応装置のA−A線断面図である。
【図3】実施形態による触媒反応装置の着磁装置の開閉駆動手段を示すもので、着磁装置が近接対向配置となった着磁ON状態を示す水平断面図である。
【図4】第一実施形態の変形例による触媒反応装置の要部構成を示す図である。
【図5】第二実施形態による触媒反応装置の要部構成を示す説明図である。
【図6】第三実施形態による触媒反応装置の要部構成を示す説明図である。
【図7】第四実施形態による触媒反応装置の要部構成を示す説明図である。
【図8】第五実施形態による触媒反応装置の要部構成を示す模式図である。
【図9】(a)、(b)、(c)は図8に示す触媒反応装置の使用状態を示す模式図である。
【図10】従来の触媒反応装置の要部構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態による触媒反応装置について説明する。
図1乃至図3は本発明の第一実施形態による触媒反応装置1を示すものである。
図1及び図2に示す第一実施形態による触媒反応装置1は、上下方向に配設された略円筒状の第一反応器2の内部に例えば一対の略平行板からなる非磁性金属の仕切り板3が上側から下方向に向けて延びている。第一反応器2は例えば略カプセル状に形成されており、その下端面2aは仕切り板3の下方で略半球状の凹曲面を形成し、その上端面2bは仕切り板3の上方で略半球状の凹曲面を形成している。また、第一反応器2には触媒保持部20が設けられており、触媒保持部20については後述する。
第一反応器2は例えばSUS配管からなる非磁性金属で形成され、高圧に耐え得るように例えば略カプセル形状とされ、sch80等の肉厚管で形成されている。
なお、本実施形態の図1に示す第一反応器2において、原料ガス11によって反応液10は下側から上側に流れ、下側を上流側、上側を下流側という。他の実施形態においても同様とする。
【0033】
そして、第一反応器2において、その高さ方向中央領域に一対の仕切り板3が設けられている。図2に示す第一反応器2において、一対の仕切り板3と第一反応器2の周側面の円弧状部2cとで仕切られた第一領域が内側領域4とされ、内側領域4は水平断面で略小判型とされている。また、各仕切り板3を挟んで内側領域4の両側に設けられた略円弧状の一対の第二領域が外側領域5とされている。内側領域4と外側領域5は仕切り板3が設けられた範囲内で流体が互いに流通しないように仕切られている。2つの外側領域5の水平断面積の和と内側領域4の水平断面積との比は1:5〜1:100の範囲とされている。
第一反応器2の内側領域4には、その上下にステンレス等の非磁性金属で形成したグレーチングからなる一対の支持金具8a,8bが配設されている。支持金具8a,8b間における2枚の仕切り板3に挟まれた内側領域4には、高透磁率で残留磁気の少ないアモルファス合金細線9が充填されている。アモルファス合金細線9は例えば細長リボンを不規則にカールして、たわし状とされ、上下の支持金具8a,8bと一対の仕切り板3間で仕切られた容積全体に充填されている。
【0034】
また、第一反応器2内には一方の反応用の流体である反応液10が収容されており、反応液10内には他方の反応用の流体である原料ガス11が気泡として分散されている。そのため、反応液10と原料ガス11は気液二相流体となって、第一反応器2の内側領域4とその下端部2aまでの部分とに満たされており、液面は上側の支持金具8aの上側とされている。
また、一対の外側領域5は仕切り板3と上下の支持金具8a,8bとで反応液10と液密に仕切られており、例えば図示しない外部の管路から温度調節用熱媒体が循環することで、内側領域4の反応液10と液密に分離されている。例えば外側領域5に冷却水や温水を循環させることで仕切り板3を介して反応液10との間で除熱したり加熱したりして反応速度を調整できる。
【0035】
また、第一反応器2における内側領域4の下方には、原料ガス11を供給する供給管13が挿入されており、供給管13に設けた吐出口13aから原料ガス11が気泡となって第一反応器2内の内側領域4に吐出して、反応液10を撹拌するようになっている。
また、第一反応器2において、支持金具8aの上側には、反応液10と原料ガス11とが反応した後の生成物としての液14を外部に抜き出す排液管15が設けられている。この抜き出される液14には、未反応原料ガス11が溶解状態もしくは気泡として混入している。そして、第一反応器2の上端面2bには排出ガス16が外部に抜き出される排出管17が取り付けられている。この排出ガス16には未反応原料ガス11や反応によって生成されるガス等が混入している。
【0036】
そして、第一反応器2内の内側領域4内には、アモルファス合金細線9と共にその合金細線9に磁気によって吸着保持される微粒状の触媒19が分散状態で存在している。この触媒19中には触媒元素の少なくとも一部として、鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性体の元素が含まれている。なお、この触媒19は仕切り板3で仕切られた内側領域4内全域に存在し、反応液10と全体的に接触している。
【0037】
次に図3により着磁装置21について説明する。
第一反応器2において、着磁装置21には、内側領域4の外側の対向する位置に一対の永久磁石22が設けられており、これら一対の永久磁石22は第一反応器2の外側で帰磁路を構成するヨーク23によって接続されている。
着磁装置21において、内側領域4の両側にそれぞれ配設された永久磁石22によって、内側領域4内に均一で高い磁場が形成され、二つの永久磁石22とヨーク23と内側領域4との間で閉じた磁気回路が形成される。なお、仕切り板3で仕切られた外側領域5は磁気回路から外れるので、磁束はほとんど通過しない。第一反応器2の内側領域4内の磁場によってアモルファス合金細線9に磁気勾配が形成され、それによって強磁性体を含む触媒19がアモルファス合金細線9の表面上に吸着保持される。
ここで、第一反応器2において、第一反応器2の筒状管部分であって支持金具8a、8b及び仕切り板3に挟まれた内側にアモルファス合金細線9が充填された内側領域4と、内側領域4に対して第一の反応器2の外側に設けられた一対の永久磁石22とを含む構成を触媒保持部20という。
【0038】
そして、一対の永久磁石22とヨーク23は、第一反応器2に対向する着磁位置(図2参照)と永久磁石22とヨーク23が第一反応器2から離間する消磁位置とを選択的に取り得るように作動制御する開閉駆動手段24が設けられている。
この開閉駆動手段24は、永久磁石22とヨーク23の進退移動をガイドするガイドレール25と、各略半円状のヨーク23の例えば中央部に連結されたロッド26と、ロッド26を伸縮作動させるエアシリンダー27とが備えられている。エアシリンダー27のON、OFFによってロッド26が伸縮することでヨーク23に設けた永久磁石22を第一反応器2の内側領域4に対して対向する着磁位置と離間する消磁位置との間を移動可能とされている。
【0039】
本実施形態による触媒反応装置1は上述の構成を備えており、次に触媒反応装置1による反応液10と原料ガス11の反応方法について説明する。
図1及び図2において、開閉駆動手段24によってヨーク23に設けた一対の永久磁石22を第一反応器2の内側領域4に対向する位置に設けている。この状態で、第一の反応器2の長手方向中央領域に設けた触媒保持部20では、一対の永久磁石22間に位置する第一反応器2の内側領域4には強い磁場が均一に発生しており、内側領域4内に充填された例えばたわし状のアモルファス合金細線9が磁化される。
これによって、反応液10に分散混入された微粉状の触媒19はその強磁性体の部分がアモルファス合金細線9に発生した磁気勾配により吸着保持される。そのため、反応液10を撹拌したり反応液10の流動に頼らなくても微粉状の触媒19がアモルファス合金細線9に略均一に分散状態に吸着保持され、触媒19がその重力で沈降することを抑制できる。
【0040】
この状態で、原料ガス11を、第一反応器2の下端部2a側に挿入されている供給管13の吐出口13aから気泡として吐出する。反応液10内に吐出された気泡状の原料ガス11は上昇して内側領域4内に流動して反応液10を撹拌させることができる。図1及び図2において、触媒保持部20の内側領域4内に満たされた反応液10中には、上下の支持金具8a,8b間の全体にアモルファス合金細線9が充填され,原料ガス11の気泡が分散されており、更に微粒状の触媒19が分散状態でアモルファス合金細線9の表面に吸着保持されている。
そして、着磁装置21における永久磁石22の強い磁場によって内側領域4内のアモルファス合金細線9に触媒19が略均一に分散して吸着保持されているため、触媒19が反応液10と原料ガス11の反応を促進させる。
なお、外側領域5内には永久磁石15による磁場がほとんど発生しない。
【0041】
そして、内側領域4内で反応液10と原料ガス11が触媒反応されて反応生成物を含む液14が生成され、内側領域4の上側に設けられた排液管15によって外部に排出される。この液14内には未反応の原料ガス11が僅かに残存しているが、本実施形態による触媒保持部20を有しない場合と比べて未反応の原料ガス11の量は低減している。また、反応液10から第一反応器2内の上方に流出した未反応の原料ガス11は生成ガスと共に上端部2bの排出管17から排出ガス16として外部へ排出される。
このとき、触媒19はアモルファス合金細線9に吸着保持されているから、反応生成物を含む液14に随伴して触媒19が流出することを抑制できる。そのため、第一反応器2内の触媒19の減少を防いで反応効率の低下を防止できる。
【0042】
上述のように、本実施形態による触媒反応装置1によれば、第一の反応器2の中央領域に設けられた触媒保持部20において、触媒19を磁力によってアモルファス合金細線9に固定保持することができ、反応液10や原料ガス11等の流体の流動や撹拌手段等に頼らなくても微粒状の触媒19の均一な分散を達成して、反応液10や原料ガス11等の反応を十分促進できる。具体的には、反応液10の流動条件や触媒19の粒径・比重等の拘束を受けず、触媒19の粒径等の物性や流動条件の調整をしなくて済む。
また、反応液10や原料ガス11等の反応は、反応液10や原料ガス11等の流れ方向の混合状態に依存しないために例えばピストンフロー型反応器として設計でき、容積反応効率が向上し、産出する反応生成物の割合を増大できると共に未反応原料成分の流出ロスが減少する。
【0043】
しかも、液中において触媒19がアモルファス合金細線9に分散して吸着保持されており、触媒保持部20の下流側で、排液管15から反応生成物を含む液14と共に触媒19が流出しないので、第一反応器2内の触媒19の減少を抑制できて、触媒19はアモルファス合金細線9に吸着保持されるため触媒19の空間濃度を高く設定できる。しかも、触媒反応部20の下流側で、液14の流出経路に触媒19の濾過分離と返送等の装置を設けなくてもよい。
更に、開閉駆動手段24によって触媒19の吸着捕集・固定保持と離脱・逆洗除去を、着磁装置21の磁力のON、OFFを切り換えることで容易に行うことができる。
また、アモルファス合金細線9は熱伝導性が高く、吸着する触媒19上での発熱反応の熱を効率的に拡散できて温度ムラが起きにくい。また、触媒19がアモルファス合金細線9の表面に吸着保持されていることで、触媒19が反応液10等の流動不足で沈降したり、又、逆に流動によって排液管15から流出したりしないため、反応液10のポンプによる循環を容易に行え、触媒19を損傷するおそれは小さい。
また、外側領域5には例えば冷却水等の温度調節用熱媒体が循環することで、内側領域4の反応液10との間で熱交換して、除熱や加熱によって反応熱とバランスさせて吸着保持部の温度調節を行い、これによって反応速度を適正域に調節することができる。
【0044】
なお、本発明は上述の実施形態による触媒反応装置1の構成に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない限り適宜の変更や追加等が行える。
次に本発明の他の実施形態や変形例等について、上述の第一実施形態と同一または同様な部分、部材等には同一の符号を用いて説明する。
【0045】
まず、本発明の第一実施形態の変形例による触媒反応装置24について図4により説明する。
図4に示す触媒反応装置24において、第一の反応器23はカプセル型であり、第一実施形態における第一反応器2と概略同一構成を備えている。第一反応器2との相違点は、触媒保持部20が第一反応器23の下流側、即ち上端部2bに近い上方位置に設けられていることである。
そのため、触媒反応装置24における第一反応器23において、下端部2aと支持金具8aまでの領域は、着磁装置21等で構成する触媒保持部を備えず、原料ガス11のバブリングによる反応液10の流動で触媒19が流動して反応を起こす通常の反応区域として予備反応器25と規定する。予備反応器25の下流側に第一実施形態と同一構成の触媒保持部20が設けられた構成を備えている。
【0046】
予備反応器25では内部に反応液10が充填され、反応液10内に微粒状の触媒19が含まれている。そして、供給管13の吐出口13aから吐出される気泡状の原料ガス11が気泡流を生じさせて気液2相の流れを起こすことで、反応液10が上方に流動して触媒19を分散させて反応を促進させる。
この場合、第一反応器23における反応液10内の触媒19は、触媒19が重力沈降するから、触媒19は上側の触媒保持部20内の濃度が小さく下側の予備反応器25の濃度が濃くなり易い。しかしながら、本変形例によれば、第一反応器23における上側の触媒保持部20では着磁装置21によって触媒19をアモルファス合金細線9の表面上に吸着保持できるから、上側の触媒保持部20内においても触媒19の空間濃度を高く維持できる。
【0047】
従って、本変形例による触媒反応装置24によれば、第一の反応器23において、下側の予備反応器25と上側の触媒保持部20とで触媒19の濃度の希薄部分が無い状態を保持できるから、反応液10内で原料ガス11を触媒と反応させることで、全体に亘って均一で効率の良い反応を行うことができる。
【0048】
次に本発明の第二実施形態による触媒反応装置27について図5により説明する。
図5に示す第二実施形態による触媒反応装置27は、触媒保持部20を備えておらず、上述した予備反応器25と同様な構成を備えた第一反応器28と、この第一反応器28の排液管15に接続された第二反応器30とを備えた構成を有している。ここでは、第二反応器30は第一実施形態による触媒反応装置1の第一反応器2と概略同一構成を備えており、触媒保持器20を備えている。
第一反応器28は、略カプセル状に形成されていて、内部に反応液10が収容されていると共に触媒19が分散されている。この場合、この触媒19にも、少なくとも一部に強磁性体を含んでいる。第一反応器28の下側には原料ガス11の供給管13が設けられ、下端部2aの近傍で原料ガス11を気泡として反応液10内に吐出して上昇させる吐出口13aが設けられている。この原料ガス11の気泡によって反応液10の流動を起こさせて触媒19を分散させる。
第一反応器28の上側には、反応液10の液面より若干低い位置に反応後の液14を排出するための排液管15が取り付けられ、上端部2bには生成ガスと原料ガス11を排出する排出管17が設けられている。
そして、排液管15は、第二反応器30の下端部2aに接続され、この第二反応器30内に触媒保持部20が設けられている。
【0049】
本第二実施形態による触媒反応装置27は、第一反応器28では原料ガス11が供給管13から供給され、原料ガス11は気泡として微粒状の触媒19を分散して含む反応液10内に供給され、反応液11に流動性を持たせる。この状況で触媒19によって反応液10と原料ガス11が反応するが、上述の予備反応器25と同様に、触媒19が重力沈降するため、第一反応器28内の下端側では触媒19の濃度が高く上側では触媒19の濃度が低いという傾向を呈する。
【0050】
そのため、反応後の液14は未反応原料ガス11を比較的含んでいると共に触媒19も随伴して抜き出される。こうして、液14は排液管15から第二反応器30へ供給される。第二反応器30では触媒保持部20によって触媒19が着磁装置21により磁化されたアモルファス合金細線9表面に均一に分散された状態で吸着保持されている。
そのため、第一反応器28で反応した後の液14には未反応原料ガス11や反応液10が残存しているが、触媒保持部20における内側領域4内のアモルファス合金細線9表面に均一分散されて吸着された触媒19によって更に反応が促進され、液14中に残存する未反応原料成分を触媒反応で確実に反応処理して未反応原料成分の残量をより低減させ、或いは消滅させることができる。
さらに、内側領域4内のアモルファス合金細線9には磁気勾配が存在するから液に随伴する触媒19も、アモルファス合金細線9に吸着捕集され、後流への触媒19の流出を低減させ、或いは消滅させることができる。
【0051】
従って、本第二実施形態による触媒反応装置27によれば、前段で従来型の第一反応器28で反応液10と原料ガス11を触媒19で反応処理させ、生成された液14中に未反応原料成分と流出する触媒19が含まれていても、後段において第二反応器30に触媒19を分散して吸着する触媒保持部20を設けたから、液14に含まれる未反応原料成分を一層効率良く反応させかつ、触媒19を効率的に吸着捕集して再利用に供することができ、反応後の液14中の未反応原料成分及び流出する触媒19をより低減させ、或いは消滅させることができる。
【0052】
なお、上述の第二実施形態による触媒反応装置27では、後段に触媒保持部20を有する第二反応器30を1つ設けたが、図5に一点鎖線で示すように複数(図では2つ)の第二反応器30を例えば並列に設けてもよい。
この場合、複数の第二反応器30を、液14を供給する側の下端部2aに排液管14を接続すると共に切換弁31a、31bを設けて切り換えて反応後の液14をいずれかの第二反応器30に供給するようにしてもよい。この場合、排液管15が接続された一方の第二反応器30で着磁装置21を用いた触媒の保持によって触媒反応を行うと共に、他方の第二反応器30では排液管15を遮断し、着磁装置21の消磁によるアモルファス合金細線9からの触媒19の脱離と逆洗除去等を行うことができる。このように二つの第二反応器30について切換弁31a、31bを交互に切り換えて触媒反応と洗浄等を選択的に行ってもよい。或いは複数の第二反応器30で同時に着磁装置21を用いた触媒の保持によって触媒反応を行っても良い。
【0053】
次に本発明の第三実施形態による触媒反応装置32について図6により説明する。
図6に示す第三実施形態による触媒反応装置32は、触媒保持部20を備えていない第一反応器33と触媒保持部20を備えた第二反応器34とが一体に且つ直列に接続されている。
第一反応器33は、第二実施形態による第一反応器28と概略同一構成であり、その上端部にテーパ部35によって縮径されて内径の比較的小さい第二反応器34が連結して設けられている。第一反応器33と第二反応器34は、略カプセル状に形成されている。
【0054】
第一反応器33の下側部分には原料ガス11の供給管13が設けられ、下端部2aの近傍で原料ガス11を気泡として反応液10内に吐出して上昇させる吐出口13aが設けられている。この原料ガス11の気泡によって反応液10の流動を起こさせて触媒19を分散させて反応を促進させる。
第一反応器33の上側には、反応液10に液面より若干低い位置に例えば略円筒状等の筒状をなす金網フィルター37が1または複数(図では2つ)配設されている。これらの金網フィルター37の上端は反応後の液14を外部に排出するための排液管15に接続され、金網フィルター37によって触媒19が反応後の液14に随伴して外部に排出されることを防止している。
【0055】
そして、第一反応器33において、反応で生成されたガスと共に未反応原料ガス11が反応液10の液面から上方に流出した場合に、この未反応原料ガス11はテーパ部35を介して集合させられて第二反応器34に流入するように構成されている。また、反応液14の液ミスト及び微粒状触媒19も反応生成ガスや未反応原料ガス11と共に飛沫として飛散して、第二反応器34に同伴して導入される。
第二反応器34には、上述した触媒保持部20が設けられており、内側領域4内に充填されたアモルファス合金細線9は着磁装置21の一対の永久磁石22の磁場によって触媒19を均一に分散させた状態で吸着している。そして、第二反応器34の触媒保持部20内では、第一反応器33から流入した未反応原料ガス11と反応液10のミストとの反応が分散して吸着された触媒19によって促進され、且つ飛散する微粒触媒もアモルファス合金細線9の磁気勾配によってアモルファス合金細線9の表面上に吸着捕集され、又、飛沫として飛散する反応液14のミストは、アモルファス合金細線9の充填層に衝突して捕集され、重力によって反応器33に落下して返送される。更に、アモルファス合金細線9の表面上に吸着保持された触媒19は、適宜、触媒保持部20を消磁して上から液を流すことにより、離脱・逆洗浄され、第一反応器33に落下して返送できる。
【0056】
本第三実施形態による触媒反応装置32によれば、第一反応器33では原料ガス11が気泡として反応液10内に放出されて上昇流を起こすことで触媒19が反応液10や原料ガス11と共に流動することで拡散させられる。そして、第一反応器33で原料ガス11が反応液10と触媒19とで反応し、反応後の液14が金網フィルター37を介して排液管15から外部に排出される。
しかし、触媒19は重力沈降によって反応液10の上側の濃度が薄く下側の濃度が濃くなる傾向があるため、触媒19の濃度差によって反応しきれない未反応の原料成分が残るが、液面から上方には反応生成ガスと未反応原料ガスが流出する。また、ガスに随伴して反応液10の一部はミストとして、又、微粒状触媒も飛沫として飛び出して、流出ガスと共に上昇する。
第一反応器33を通過した原料ガス11等の未反応成分は、触媒保持部20の内側領域4内に導入され吸着保持された触媒19によって反応させられ、又、反応液10のミストはアモルファス合金細線9の充填層に衝突して捕集され、重力によって反応器33に落下して返送され、さらに、触媒19の粒子は、触媒保持部の磁気力によって吸着捕集される。こうして、未反応原料ガス11等の原料成分は触媒によって反応で低減処理され、又、液ミストや触媒はアモルファス合金細線9によって流出を防止される結果、第二反応器34の上端部34aからは、未反応原料や液ミスト及び触媒19が外部に流失してロスすることを抑制もしくは防止する。
【0057】
上述のように本実施形態による触媒反応装置32によれば、第一反応器33で原料ガス11が反応液10と触媒19とで反応し、反応後の液14が金網フィルター37を介して排液管14から外部に排出され、反応液14を通過した未反応原料ガス11と反応液10のミストは第二反応器34に設けた触媒保持部20で十分反応させられる。そのため、未反応原料成分のまま外部に排出されることを防止する。又、触媒保持部20の磁気勾配によって、原料ガス11に随伴する微粒状触媒を吸着捕集して、外部に飛散することを防止する。
【0058】
次に本発明の第四実施形態として、触媒保持部20の別の構成例について説明する。
図7に示す第四実施形態による触媒反応装置38の第一反応器39に設けた触媒保持部40は、略円筒状のハウジングである第一反応器39において、偶数からなる複数の仕切り板3、ここでは4枚の仕切り板3が設けられている。これにより、2つの対向する仕切り板3で仕切られた内側領域4が2組形成され、その間と両外側には3つの外側領域5が形成されている。
そして、2組の内側領域4にはそれぞれアモルファス合金細線9がそれぞれ充填されている。各内側領域4の外側には、着磁装置21として、それぞれ一対の永久磁石22が対向して配設されている。これら2組の永久磁石22にも、それぞれ第一反応器39に対して対向及び離間可能に永久磁石22を移動させる一対の開閉駆動手段24が設けられている(図示略)。
【0059】
また、各内側領域4にはそれぞれ触媒19を含む反応液10が充填され、下方の原料ガス11の供給管13の吐出口13aから原料ガス11が気泡として供給されることになる。一方、3つの外側領域5には、それぞれ外部の図示しないパイプを介して温度調節用媒体として例えば冷却水が流通するようになっている。
【0060】
触媒反応装置38を上述のような構成にすれば、着磁装置21として、比較的狭い内側領域4内に永久磁石22を対向配置してより強力な磁場を設定することができ、これによりアモルファス合金細線9をより強力に磁化させて触媒19を均一に分散固定できるので、反応液10と原料ガス11と触媒19との反応は内側領域4内でより均等に且つ強力に行われるので、未反応の原料液10や原料ガス11がより低減され、これらの排出を一層抑制して反応効率を向上できる。
なお、第一反応器39内に設ける内側領域4は2つに限定されることなく3つ以上でもよい。いずれの場合でも、内側領域4を仕切るために仕切り板3は偶数枚設けることが好ましい。
【0061】
次に本発明の第五実施形態として、触媒保持部20を備えた複数の反応器の配列組み合わせ構成例について説明する。
図8に示す触媒反応装置41について、第一実施形態による触媒反応装置1を例にとって説明する。触媒反応装置41では、触媒保持部20を備えた第一反応器2を3個並列になるように、下端部2aに原料ガス11の供給管13を接続し、反応後の液14を排出する排液管15を互いに接続する。ここで、各第一反応器2を符号2A、2B、2Cで区別するものとする。
そして、各第一反応器2に接続されたそれぞれの供給管13から分岐して排出管42をそれぞれ設けて反応後の液14を排出するように構成する。
そして、各管13,15、42には開閉用の切換バルブ43、44、45が設けられているものとする。触媒反応装置41の使用に際して、3つの第一反応器2のうち2つを直列に接続して使用するため、接続形態によって第一反応器2の向きが上下逆に設定される。
【0062】
このような構成を備えた触媒反応装置41の使用方法について図9により説明する。なお、図9(a)、(b)、(c)はそれぞれ切換バルブ43、44、45の開閉切換によりいずれか2つの第一反応器2が直列に接続され、残りの1つの第一反応器2が分離された状態を示している。
図9(a)では、第一反応器2Cを管路から遮断し、着磁装置21のOFFによって消磁し、アモルファス合金細線9から触媒19を除去したり洗浄したり修理等のメンテナンスがなされる。そのため、二つの第一反応器2A、2Bは直列に接続され、着磁装置21をONすることで各触媒保持部20では触媒19がアモルファス合金細線9に分散状態で吸着され、管13,15,43を経由して第一反応器2A、2Bで順次原料ガス11が反応液10と触媒19とで反応させられる。これによって殆ど未反応の原料ガス11がない状態で反応後の液14を排出できる。
【0063】
次に図9(b)では、第一反応器2Aが管路から遮断され、第一反応器2Bの下流側に先に洗浄や修理交換等のメンテナンスを終えた第一反応器2Cを接続した状態で、これら第一反応器2B,2Cに原料ガス11が供給され反応させられる。
次に図9(c)では、第一反応器2Bが管路から遮断され、第一反応器2Cの下流側に先に洗浄や修理交換等のメンテナンスを終えた第一反応器2Aを接続した状態で、これら第一反応器2C,2Aに原料ガス11が供給され反応させられる。
このようにして、複数の第一反応器2について、一部の第一反応器2を管路から遮断して触媒19の除去や洗浄等を行うと共に残りの第一反応器2で触媒保持部20を用いて触媒反応を行い、順次、洗浄や補修等のメンテナンスを終了した第一反応器2を最も後方に接続することで、触媒19の詰まりや故障等の心配のない状態で複数の第一反応器2を連続して使用できる。
【0064】
なお、上述した第五実施形態による触媒反応装置41では、第一実施形態による第一反応器2に代えて、変形例による触媒反応装置41の第一反応器23、第三実施形態による触媒保持部30の第一反応器33及び第二反応器34、第四実施形態による触媒保持部38の第一反応器39等について適用できる。また、第二実施形態における触媒保持部27においても、第二反応器30を図9に示すように複数配設して、同様に直列に使用することもできる。
【0065】
上述の各実施形態では、触媒保持部20を用いる第一反応器2、23、39や第二反応器30、34について略円筒形状に形成したことで、高圧や高温の反応液10や原料ガス11の反応にも用いることができる。
しかし、反応液10や原料ガス11が高圧や高温でなければ、略円筒形状に限定されるものではなく、従来技術で用いたような四角筒等の多角筒形状であってもよく、これらの場合には仕切り板3が必要なく外側領域5を設けなくてもよいから、第一反応器2、23、39や第二反応器30、34の全断面容積にアモルファス合金細線9を充填して着磁装置21によって触媒19を分散吸着できる。
なお、触媒保持部20において、略円筒状の第一反応器2、23、39や第二反応器30、34に仕切り板3を設けずに全断面容積にアモルファス合金細線9を充填して永久磁石22を対向配置させて着磁装置21を使用してもよい。
【0066】
また、上述の各実施形態等では、着磁装置21において磁場を形成する手段として永久磁石22を用いたが、これに代えて電磁石を用いてもよく、この場合には電流のON,OFFで着磁と消磁を切換できるから、開閉駆動手段24を設けなくてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1、24,27、32,38 触媒反応装置
2、2A,2B,2C,23、39 反応器
3 仕切り板
4 内側領域
5 外側領域
8a,8b 支持金具
9 アモルファス合金細線
10 反応液、液
11 原料ガス
13 供給管
15 排液管
17 排出管
20、40 触媒保持部
21 着磁装置
22 永久磁石
24 開閉駆動手段
25 予備反応器
28、33 第一反応器
30、34 第二反応器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器内で微粒状の触媒を用いて生成物を得るようにした触媒反応装置において、
前記反応器に触媒保持部を設け、
該触媒保持部は、前記反応器内に収納されたアモルファス合金細線と、前記反応器の外側に設けられていて前記アモルファス合金細線に磁力を作用させる着磁装置と、少なくとも一部に強磁性体を含んでいて前記着磁装置の磁力によって前記アモルファス合金細線に分散して吸着される触媒と、を備えたことを特徴とする触媒反応装置。
【請求項2】
前記反応器の上側に前記触媒保持部を備えたことを特徴とする請求項1に記載された触媒反応装置。
【請求項3】
第一反応器と第二反応器内で微粒状の触媒を用いて生成物を得るようにした触媒反応装置において、
前記第一反応器の下流側に前記第二反応器を接続し、
前記第二反応器に触媒保持部を設け、
該触媒保持部は、前記第二反応器内に収納されたアモルファス合金細線と、前記第二反応器の外側に設けられていて前記アモルファス合金細線に磁力を作用させる着磁装置と、少なくとも一部に強磁性体を含んでいて前記着磁装置の磁力によって前記アモルファス合金細線に分散して吸着される触媒と、を備えたことを特徴とする触媒反応装置。
【請求項4】
前記触媒保持部は、前記反応器または第二反応器の非磁性金属からなる筒状管と、該筒状管の軸直交断面を仕切る2枚の仕切り板と、該2枚の仕切り板で仕切られていて前記アモルファス合金細線が収納された第一領域と、該第一領域における前記筒状管の外側部分に配置した前記着磁装置とを設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載された触媒反応装置。
【請求項5】
前記筒状管の第一領域と仕切り板で仕切られた第二領域に温度調節用熱媒体の流路が設けられ、前記仕切り板を伝熱面として前記第一領域内の反応温度を調整するようにした請求項4に記載された触媒反応装置。
【請求項6】
前記触媒保持部は、非磁性金属からなる筒状管と、該筒状管の軸直交断面を仕切る4枚以上の偶数枚の仕切り板と、各2枚の前記仕切り板で仕切られた複数の第一領域に収納された前記アモルファス合金細線と、前記第一領域の筒状管の外側部分に配置した前記着磁装置とを設け、
前記仕切り板を介して第一領域と交互に第二領域が設けられ、該第二領域に温度調節用熱媒体の流路が設けられて前記仕切り板を伝熱面として前記第一領域の反応温度を調整するようにした請求項1乃至3のいずれか1項に記載された触媒反応装置。
【請求項7】
前記着磁装置は磁力の発生と消滅を切り換えできるようにした請求項1乃至6のいずれか1項に記載された触媒反応装置。
【請求項8】
前記第二反応器が複数並列に設けられ、前記第一反応器といずれか一方の前記第二反応器を選択的に連結し、他方の前記第二反応器の前記着磁装置による磁力を消磁させるようにした請求項3乃至7のいずれか1項に記載された触媒反応装置。
【請求項9】
請求項3乃至7のいずれかに記載された前記第二反応器が複数直列に連結されると共に、最も上流側の前記第二反応器の連結を前記流路から外して、洗浄または処理後に最も下流側に連結するように構成したことを特徴とする触媒反応装置。
【請求項10】
請求項1または2に記載された前記触媒保持部を備えた前記反応器が複数直列に連結され、最も上流側の前記反応器の連結を前記流路から外して、洗浄または処理後に最も下流側に連結するように構成したことを特徴とする触媒反応装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−217929(P2012−217929A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86317(P2011−86317)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】