説明

触媒層−電解質膜積層体、転写シート及びそれらの製造方法

【課題】実用に適した無加湿形燃料電池用触媒層−電解質膜積層体を提供する。
【解決手段】強酸を含む電解質膜の一方面又は両面上に導電層が形成され、該導電層上に触媒層が形成された無加湿形燃料電池用の触媒層−電解質膜積層体。前記導電層は、フッ化ピッチ、フッ化カーボン、フッ化黒鉛およびフッ化グラファイトからなる群から選ばれた非ポリマー性フッ化物を含むポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、パーフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライドおよびパーフルオロスルフォン酸樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種のフッ素樹脂と炭素粉末とから形成されており、前記導電層の層厚は、電解質膜の膜厚の1/200〜1/20である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒層−電解質膜積層体、転写シート及びそれらの製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、無加湿形燃料電池用の触媒層−電解質膜積層体、該積層体を製造するための転写シート及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子形燃料電池は、他の燃料電池と比して、軽量化、高出力密度等を達成できる観点から、さまざまな研究がなされている。固体高分子形燃料電池は、電解質膜としてイオン伝導性高分子電解質膜を用い、その両面に触媒層及び電極基材を順に配置し、更にこれをセパレータで挟んだ構造をしている。
【0003】
固体高分子形燃料電池は、通常、カチオン(H+)を通過させるカチオン伝導性高分子電解質膜を使用しており、一般的に、フッ素化アルキレンで構成された主鎖と末端にスルホン酸基を有するフッ素化ビニルエーテルで構成された側鎖とを有するパーフルオロスルホン酸樹脂が用いられている。この種の高分子電解質膜は、適度な水を含浸することにより、発電に十分なイオン伝導性を発揮する。
【0004】
このため、従来の固体高分子形燃料電池では、高分子電解質膜の水分管理が必要とされ、燃料電池システムの複雑化及び大型化を招く難点を有している。
【0005】
このような高分子電解質膜の水分管理に起因する問題を回避するために、従来の高分子電解質膜を代替する手段として、無加湿状態でプロトン伝導が可能な無加湿電解質膜が提案されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、無加湿形高分子電解質膜として、リン酸がドープされたポリベンズイミダゾール等の材料が開示されている。しかしながら、このような無加湿形高分子電解質膜では、動作時間が長くなるに伴い、リン酸等の強酸が流出し、開回路電圧が低下すると共に、セル抵抗が増大し、燃料電池の安定動作に支障が生じる問題点を有している。
【0007】
かかる問題点を解決するために、電解質膜と触媒層との間にカーボン層を形成し、電解質の保持機能と反応ガスの透過防止機能により、開回路電圧及びセル抵抗を安定的に推移させる技術が提案されている(特許文献2)。
【0008】
特許文献2の技術では、セル抵抗を上昇させずに固体高分子電解質膜を安定させるためにカーボン層の厚みは電解質膜よりも厚くしている(特許文献2の0031段落)。また、固体高分子電解質膜のイオン伝導度を長時間に亘って維持するために、カーボン層に強酸を更に含浸させている(特許文献2の0030段落)。しかしながら、カーボン層の厚みを電解質膜よりも厚くすると、プロトン伝導性が悪くなり、またカーボン層に強酸を更に含浸させることで、余分な酸によりガス拡散性が阻害される欠点が生じる。そのため、特許文献2の技術は、未だ実用化のレベルに至っていない。
【特許文献1】特開平11−503262号公報
【特許文献2】特開2006−32275号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、実用に適した無加湿形燃料電池用触媒層−電解質膜積層体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特許文献2に開示されている技術とは異なり、カーボン層の厚みを電解質膜の厚みよりも格段に薄くし、しかもカーボン層に強酸を強制的に含浸させないことにより、実用に適した無加湿形燃料電池用触媒層−電解質膜積層体が得られることを見い出した。本発明は、このような知見に基づき完成されたものである。
【0011】
本発明は、下記項1〜14に示す無加湿形燃料電池用の触媒層−電解質膜積層体、該積層体の製造方法、該積層体を製造するための転写シート及び該転写シートの製造方法を提供する。
項1.強酸を含む電解質膜の一方面又は両面上に導電層が形成され、該導電層上に触媒層が形成された無加湿型燃料電池用の触媒層−電解質膜積層体であって、
前記導電層は、フッ素樹脂と炭素粉末とから形成されており、
前記導電層の層厚は、電解質膜の膜厚よりも薄い、
触媒層−電解質膜積層体。
項2.導電層の層厚は、電解質膜の膜厚の1/200〜1/20である、項1に記載の触媒層−電解質膜積層体。
項3.触媒層の層厚は、電解質膜の膜厚の1/20〜1/4である、項1に記載の触媒層−電解質膜積層体。
項4.導電層を形成するフッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、パーフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド及びパーフルオロスルホン酸樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種である、項1に記載の触媒層−電解質膜積層体。
項5.導電層は、さらに非ポリマー性フッ化物を含有している、項1に記載の触媒層−電解質膜積層体。
項6.非ポリマー性フッ化物が、フッ化ピッチ、フッ化カーボン、フッ化黒鉛及びフッ化グラファイトからなる群から選ばれた少なくとも1種である、項5に記載の触媒層−電解質膜積層体。
項7.触媒層は触媒とバインダーとから形成され、該バインダーがフッ素樹脂である、項1に記載の触媒層−電解質膜積層体。
項8.フッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、パーフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド及びパーフルオロスルホン酸樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種である、項7に記載の触媒層−電解質膜積層体。
項9.触媒層は、さらに非ポリマー性フッ化物を含有している、項7に記載の触媒層−電解質膜積層体。
項10.非ポリマー性フッ化物が、フッ化ピッチ、フッ化カーボン、フッ化黒鉛及びフッ化グラファイトからなる群から選ばれた少なくとも1種である、項9に記載の触媒層−電解質膜積層体。
項11.フッ素樹脂と炭素粉末とを混合して導電層形成用インクを調製する工程、
前記導電層形成用インクを基材に塗工し、導電層形成シートを作成する工程、
バインダーと触媒とを混合して触媒層形成用インクを調製する工程、
前記触媒層形成用インクを基材に塗工し、触媒層形成シートを作成する工程、
強酸を含む電解質膜の一方面又は両面に、導電層形成シートを熱プレスして導電層を転写する工程、及び
強酸を含む電解質膜の一方面又は両面に形成された導電層に、触媒層形成シートを熱プレスして触媒層を転写する工程
を備えた、項1に記載の触媒層−電解質膜積層体を製造する方法。
項12.バインダーと触媒とを混合して触媒層形成用インクを調製する工程、
前記触媒層形成用インクを基材に塗工し、触媒層形成シートを作成する工程、
フッ素樹脂と炭素粉末とを混合して導電層形成用インクを調製する工程、
前記導電層形成用インクを前記基材に形成した触媒層上に塗工し、導電層付き触媒層形成シートを作成する工程、及び
強酸を含む電解質膜の一方面又は両面に、導電層付き触媒層形成シートを熱プレスし、導電層及び触媒層を転写する工程
を備えた、項1に記載の触媒層−電解質膜積層体を製造する方法。
項13.項1に記載の無加湿型燃料電池用触媒層−電解質膜積層体を製造するための転写シートであって、
基材上に触媒層及び導電層が、基材/触媒層/導電層の順に形成されており、
前記触媒層は、バインダーと触媒とから形成され、
前記導電層は、フッ素樹脂と炭素粉末とから形成されている、
転写シート。
項14.項1に記載の無加湿型燃料電池用触媒層−電解質膜積層体を製造するための転写シートを製造する方法であって、
バインダーと触媒とを混合して触媒層形成インクを調製する工程、
前記触媒層形成用インクを基材に塗工し、触媒層形成シートを作成する工程、
フッ素樹脂と炭素粉末とを混合して導電層形成用インクを調製する工程、及び
前記導電層形成用インクを前記基材に形成した触媒層上に塗工し、導電層付き触媒層形成シートを作成する工程
を備えた、転写シートの製造方法。
【0012】
本発明の触媒層−電解質膜積層体は、無加湿形燃料電池用の触媒層−電解質膜積層体であって、強酸を含む電解質膜の一方面又は両面上に導電層が形成され、該導電層上に触媒層が形成されている。
【0013】
導電層
導電層は、強酸を含む電解質膜の一方面又は両面に形成されており、フッ素樹脂及び炭素粉末からなる。
【0014】
炭素粉末としては、この分野で公知の炭素粉末を広く使用でき、例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンワイヤー等を挙げることができる。
【0015】
カーボンブラックの一次粒子の平均径は、通常5〜100nm程度、好ましくは10〜85nm程度である。また、カーボンナノチューブ及びカーボンワイヤーのアスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)は通常10〜100程度、好ましくは30〜80程度である。平均繊維長は、通常5〜200μm程度、好ましくは10〜100μm程度、平均繊維径は通常50〜500nm程度、好ましくは100〜300nm程度である。これら平均粒子径、平均繊維長及び平均繊維径は、例えば、電子顕微鏡等の拡大観察による目視により測定される。
【0016】
フッ素樹脂としては、この分野で公知のフッ素樹脂を広く使用でき、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、パーフルオロエチレン(PFA)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、パーフルオロスルホン酸樹脂等を挙げることができる。これらは、1種単独で又は2種以上混合して使用される。
【0017】
これらフッ素樹脂の重量平均分子量は、500〜500,000の範囲が好ましく、1000〜400,000の範囲がより好ましい。フッ素樹脂の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)等の公知の手法により測定可能である。
【0018】
導電層中のフッ素樹脂の配合量は、導電層に含まれる炭素粉末1重量部に対し、通常0.1〜5重量部であり、好ましくは0.3〜3重量部である。
【0019】
フッ素樹脂が上記範囲内であると、導電層の形成が容易になる、燃料電池反応時における発生水によるフラッディングが起こり難くなる、電池の発電性能が低下しない等の利点がある。
【0020】
上記導電層には、さらに非ポリマー性フッ化物が含有されているのが好ましい。非ポリマー性フッ化物としては、公知の非ポリマー性フッ化物を広く使用することができ、例えば、フッ化ピッチ、フッ化カーボン、フッ化黒鉛、フッ化グラファイト等を挙げることができる。これら非ポリマー性フッ化物は、1種単独で又は2種以上混合して使用される。これら非ポリマー性フッ化物の中でも、フッ化ピッチが好適である。
【0021】
これらの非ポリマー性フッ化物を配合することにより、導電層に優れた導電性及び撥水性を賦与することができる。非ポリマー性フッ化物は、フッ素樹脂よりも導電性が高く、かつ撥水性が高いため、結着性の賦与にはフッ素樹脂、撥水性の賦与には非ポリマー性フッ化物というように、所望される機能を考慮して各々の成分を配合することが可能になる。導電層に非ポリマー性フッ化物を含有させることによってフッ素樹脂の使用量を相対的に減少させることができる。
【0022】
導電層に含まれる非ポリマー性フッ化物の配合量は、導電層に含まれる炭素粉末1重量部に対し、通常0.05〜1重量部であり、好ましくは0.1〜0.5重量部である。
【0023】
導電層に非ポリマー性フッ化物を配合する場合、導電層中のフッ素樹脂の配合量は、導電層に含まれる炭素粉末1重量部に対し、通常0.09〜4重量部であり、好ましくは0.25〜2.5重量部である。
【0024】
本発明では、導電層の層厚は、電解質膜の膜厚よりも薄いことが重要である。導電層の層厚は、電解質膜の膜厚の1/200〜1/20であるのが好ましく、1/100〜1/10であるのがより好ましい。導電層の層厚と電解質膜の膜厚との割合が上記範囲にあると、本発明の触媒層−電解質膜積層体を用いて得られる無加湿形燃料電池の電池性能を殆ど低下させることなく長期間に亘って安定化させることができる。
【0025】
導電層の層厚は、通常1〜50μmであり、好ましくは3〜30μmである。
【0026】
触媒層
触媒層は、導電層上に形成されている。該触媒層は、触媒とバインダーとから構成される。
【0027】
触媒としては、この分野で公知のものを広く使用でき、例えば、白金、白金化合物等が炭素粉上に担持されている触媒が挙げられる。ここで、白金化合物としては、例えば、白金と、ルテニウム、パラジウム、ニッケル、モリブデン、イリジウム、鉄、コバルト等からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属との合金等を挙げることができる。
【0028】
バインダーとしては、例えば、フッ素樹脂等を挙げることができる。
【0029】
フッ素樹脂としては、この分野で公知のフッ素樹脂を広く使用でき、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、パーフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、パーフルオロスルホン酸樹脂等を挙げることができる。これらは、1種単独で又は2種以上混合して使用される。
【0030】
これらフッ素樹脂の重量平均分子量は、500〜500,000の範囲が好ましく、1000〜400,000の範囲がより好ましい。フッ素樹脂の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)等の公知の手法により測定可能である。
【0031】
触媒層に含まれるフッ素樹脂の割合は、触媒層の全重量に対し、通常5〜60wt%、好ましくは10〜40wt%である。残りは触媒である。また、触媒層中のフッ素樹脂の配合量は、触媒層に含まれる炭素粉末1重量部に対し、通常0.1〜5重量部であり、好ましくは0.3〜3重量部である。
【0032】
フッ素樹脂が上記範囲内であると、触媒層の形成が容易になる、燃料電池反応時における発生水によるフラッディングが起こり難くなる、電池の発電性能が低下しない等の利点がある。
【0033】
触媒層には、さらに非ポリマー性フッ化物が含有されているのが好ましい。非ポリマー性フッ化物としては、公知の非ポリマー性フッ化物を広く使用することができ、例えば、フッ化ピッチ、フッ化カーボン、フッ化黒鉛、フッ化グラファイト等を挙げることができる。これら非ポリマー性フッ化物は、1種単独で又は2種以上混合して使用される。これら非ポリマー性フッ化物の中でも、フッ化ピッチが好適である。
【0034】
これらの非ポリマー性フッ化物を配合することにより、触媒層に優れた導電性及び撥水性を賦与することができる。非ポリマー性フッ化物は、フッ素樹脂よりも導電性が高く、かつ撥水性が高いため、結着性の賦与にはフッ素樹脂、撥水性の賦与には非ポリマー性フッ化物というように、所望される機能を考慮して各々の成分を配合することが可能になる。触媒層に非ポリマー性フッ化物を含有させることによってフッ素樹脂の使用量を相対的に減少させることができる。
【0035】
触媒層に含まれる非ポリマー性フッ化物の割合は、触媒層に含まれる触媒粉末1重量部に対し、通常0.05〜1重量部であり、好ましくは0.1〜0.5重量部である。
【0036】
触媒層に非ポリマー性フッ化物を配合する場合、触媒層中のフッ素樹脂の配合量は、触媒層に含まれる触媒粉末1重量部に対し、通常0.09〜4重量部、好ましくは0.25〜2.5重量部である。
【0037】
触媒層の層厚は、電解質膜の膜厚の1/20〜1/4であるのが好ましく、1/16〜1/3であるのがより好ましい。触媒層の層厚と電解質膜の膜厚との割合が上記範囲にあると、本発明の触媒層−電解質膜積層体を用いて得られる無加湿形燃料電池の電池性能を殆ど低下させることなく長期間に亘って安定化させることができる。
【0038】
触媒層の層厚は、通常10〜50μmであり、好ましくは15〜30μmである。
【0039】
本発明においては、導電層の層厚を電解質膜の膜厚の1/200〜1/20とし且つ触媒層の層厚を電解質膜の膜厚の1/20〜1/4とするのがより一層好ましく、導電層の層厚を電解質膜の膜厚の1/100〜1/10とし且つ触媒層の層厚を電解質膜の膜厚の1/16〜1/3とするのが特に好ましい。
【0040】
電解質膜
本発明の高分子電解質膜は、塩基性ポリマーと強酸とを含んでいる。
【0041】
塩基性ポリマーとしては、この分野で公知のものを広く使用でき、好ましい塩基性ポリマーとして、例えば、ポリベンズイミダゾール類、ポリ(ピリジン類)、ポリ(ピリミジン類)、ポリイミダゾール類、ポリベンゾチアゾール類、ポリベンゾオキサゾール類、ポリオキサジアゾール類、ポリキノリン類、ポリキノキサリン類、ポリチアジアゾール類、ポリ(テトラザピレン類)、ポリオキサゾール類、ポリチアゾール類、ポリビニルピリジン類、ポリビニルイミダゾール類等が挙げられる。これらの中でも、ポリベンズイミダゾール類がより好ましい。
【0042】
塩基性ポリマーの重量平均分子量は、機械的強度、粘度等の高分子特性、成形の容易性等の観点から、1,000〜1000,000の範囲が好ましく、200,000〜500,000の範囲がより好ましい。塩基性ポリマーの重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)等の公知の手法により測定可能である。
【0043】
塩基性ポリマーは、強酸と複合体を形成できることが好ましく、この複合体は粉体であることがより好ましい。塩基性ポリマーと酸との複合体粉体の体積平均粒径は、成形の容易性、耐久性及び製造コストの観点から、10〜100μmが好ましく、15〜75μmがより好ましい。
【0044】
強酸としては、リン酸、硫酸等の無機酸が挙げられる。なお、強酸としてリン酸を使用する場合には、イオン伝導度及び製造容易性の見地から、濃度が約85〜122%(H3PO4)であることが好ましく、約95〜110%(H3PO4)であることが好ましい。
【0045】
強酸の重量は、塩基性ポリマー及び強酸の総重量の5〜99.9%であることが好ましく、30〜75%であることが好ましい。強酸の重量が、上記範囲であると、イオン伝導性が一段と良好になり、固体高分子電解質膜として優れた機能が発揮される。
【0046】
電解質膜の膜厚は、通常10〜400μmであり、好ましくは200〜350μmである。
【0047】
触媒層−電解質膜積層体
本発明の触媒層−電解質膜積層体は、上記電解質膜の一方面又は両面に、導電層が形成され、該導電層の上に触媒層が形成されている。
【0048】
触媒層−電解質膜積層体における導電層の厚さは、電解質膜の厚さに比べて格段に薄いために、導電層には、電解質膜に含まれる強酸の一部が侵入していてもよい。この場合、電解質膜に含まれる強酸は、導電層の厚さの三分の一以上に侵入しており、場合によっては二分の一以上に侵入している。更に、電解質膜に含まれる強酸は、触媒層にも侵入する場合があり、その場合、強酸の侵入の程度は、触媒層の厚さの四分の三以下、好ましくは三分の一以下である。
【0049】
触媒層−電解質膜積層体の製造方法
本発明の触媒層−電解質膜積層体は、例えば、下記A法又はB法により製造される。
【0050】
(1) A法:
A法は、
フッ素樹脂と炭素粉末とを混合して導電層形成用インクを調製する工程、
前記導電層形成用インクを基材に塗工し、導電層形成シートを作成する工程、
バインダーと触媒とを混合して触媒層形成用インクを調製する工程、
前記触媒層形成用インクを基材に塗工し、触媒層形成シートを作成する工程、
強酸を含む電解質膜の一方面又は両面に、導電層形成シートを熱プレスして導電層を転写する工程、及び
強酸を含む電解質膜の一方面又は両面に形成された導電層に、触媒層形成シートを熱プレスして触媒層を転写する工程
を備えている。
【0051】
フッ素樹脂と炭素粉末とを混合して導電層形成用インクを調製するに当たっては、公知の方法を広く適用することができる。
【0052】
また、バインダーと触媒とを混合して触媒層形成用インクを調製するに当たっても、公知の方法を広く適用することができる。
【0053】
前記導電層形成用インク又は触媒層形成用インクの基材への塗工手段としては、公知の方法を広く適用でき、例えば、ナイフコーター、バーコーター、スプレー、ディップコーター、スピンコーター、ロールコーター、ダイコーター、カーテンコーター、スクリーン印刷等の一般的な方法を適用できる。
【0054】
基材としては、この分野で公知のものを広く使用でき、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリパルバン酸アラミド、ポリアミド(ナイロン)、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテル・エーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート等の高分子フィルムを挙げることができる。
【0055】
また、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の耐熱性フッ素樹脂を用いることもできる。
【0056】
更に、基材は、高分子フィルム以外に、アート紙、コート紙、軽量コート紙等の塗工紙、ノート用紙、コピー用紙等の非塗工紙等の紙であってもよい。また、基材は、カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素繊維からなるシートであってもよい。
【0057】
基材の厚さは、取り扱い性及び経済性の観点から、通常20〜150μm程度、好ましくは25〜50μm程度とするのがよい。
【0058】
従って、基材としては、安価で入手が容易な高分子フィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレート等がより好ましい。
【0059】
電解質膜の一方面又は両面への導電層の転写及び該導電層への触媒層の転写には、熱プレスによる転写法を採用するのが好ましい。転写温度は、転写を十分に行い且つ電解質膜及び触媒層の劣化を防止する観点から、120〜200℃が好ましく、130〜180℃がより好ましい。
【0060】
転写の際のプレス圧は、転写を十分に行い、電解質膜及び触媒層の形状を保持し且つ電池の発電性能低下を防止する観点から、0.1〜10Mpaが好ましく、0.3〜5Mpaがより好ましい。
【0061】
(2) B法:
B法は、
バインダーと触媒とを混合して触媒層形成用インクを調製する工程、
前記触媒層形成用インクを基材に塗工し、触媒層形成シートを作成する工程、
フッ素樹脂と炭素粉末とを混合して導電層形成用インクを調製する工程、
前記導電層形成用インクを前記基材に形成した触媒層上に塗工し、導電層付き触媒層形成シートを作成する工程、及び
強酸を含む電解質膜の一方面又は両面に、導電層付き触媒層形成シートを熱プレスし、導電層及び触媒層を転写する工程、
を備えている。
【0062】
これら一連の工程での作業は、上記A法と同様の条件下に行うことができる。
【0063】
導電層付き触媒層形成シート
B法において導電層付き触媒層形成シートにつき、詳述する。
【0064】
導電層付き触媒層形成シートは、無加湿型燃料電池用触媒層−電解質膜積層体を製造するための転写シートとして使用される。
【0065】
導電層付き触媒層形成シートは、
基材上に触媒層及び導電層が、基材/触媒層/導電層の順に形成されており、
前記触媒層は、バインダーと触媒とから形成され、
前記導電層は、フッ素樹脂と炭素粉末とから形成されている。
【0066】
導電層付き触媒層形成シートは、例えば、上記B法による触媒層−電解質膜積層体の製造途中で製造される。即ち、導電層付き触媒層形成シートは、
バインダーと触媒とを混合して触媒層形成用インクを調製する工程、
前記触媒層形成用インクを基材に塗工し、触媒層形成シートを作成する工程、及び
フッ素樹脂と炭素粉末とを混合して導電層形成用インクを調製する工程
を経て製造される。
【発明の効果】
【0067】
本発明によれば、実用に適した無加湿形燃料電池用触媒層−電解質膜積層体を提供できる。
【0068】
本発明の触媒層−電解質膜積層体によれば、無加湿状態でイオン伝導する電解質膜を用いた燃料電池の開回路電圧を長時間に亘って安定化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0069】
以下に実施例を掲げて、本発明をより一層明らかにする。
【0070】
実施例1
(1)転写用導電層フィルムの作製
カーボンブラック(ケッチェンEC、花王製)10gに1−ブタノール25g、3−ブタノール25g及び60wt%PTFE水分散液(アルドリッチ社製、溶剤:水)8.3gを加え、分散機にて攪拌混合することにより、導電層形成用インクを調製した。
【0071】
次いで、該インクをポリエステルフィルム(東洋紡績製、E5100、厚さ:25μm)の一方面に、乾燥後の導電層重量が0.3mg/cm2となるように導電層形成用インクを塗工し、転写用導電層フィルムを作製した。このときの導電層の膜厚は5μmであった。
【0072】
(2)転写用触媒層フィルムの作製
白金触媒担持カーボン(Pt:46.5wt%、田中貴金属工業製のTEC10E50E)10gに1−ブタノール25g、3−ブタノール25g及び60wt%PTFE水分散液(アルドリッチ社製、溶剤:水)8.3gを加え、分散機にて攪拌混合することにより、触媒層形成用インクを調製した。
【0073】
次いで、該インクをポリエステルフィルム(東洋紡績製、E5100、厚さ:25μm)の一方面に、乾燥後の白金重量が0.8mg/cm2となるように触媒層形成用インクを塗工し、転写用触媒層フィルムを作製した。このときの触媒層の膜厚は20μmであった。
【0074】
(3)電解質膜の作製
90gのN,N’−ジメチルアセトアミドに、10gのPBI(重量平均分子量:約70,000)を加え、10重量%のPBI溶液を作製した。室温にて、200mlビーカー中の115%リン酸90gに10重量%PBI溶液100gを撹拌しながら徐々に添加した。得られた混合物を、170℃の温度で2〜3日乾燥して、残存しているN,N’−ジメチルアセトアミドを除去した。続いて、PBI及びリン酸を含む固形物を、ジェットミルにて粉体状にした。粒径分布測定装置を用いて、得られた粉体の体積平均粒径を測定したところ、50μmであった。
【0075】
次に、上記工程によって得られたPBI及びリン酸を含む粉体15gとPTFE 3gを室温で湿式混合した。得られた混合物を、圧延機を用いて圧延し、厚みが320μmのシートを作製した。このシートを120℃の温度で2時間乾燥して、残存している溶媒を除去することにより、固体高分子電解質膜を得た。
【0076】
(4)触媒層−電解質膜積層体
上記で作製した電解質膜を35×35mmに切断後、電解質膜の両面に30×30mmに切断した二枚の転写用導電層フィルムの導電層が対面するように配置し、熱プレスすることにより、電解質膜の両面に導電層を形成した。このときの熱プレスは130℃、0.2MPa、60秒で行った。
【0077】
次いで、電解質膜の両面に形成された導電層に、30×30mmに切断した二枚の転写用触媒層フィルムの触媒層が対面するように配置し、熱プレスすることにより、電解質膜の両面に触媒層を形成した。この時の層構成は、触媒層(20μm)/導電層(5μm)/電解質膜(320μm)/導電層(5μm)/触媒層(20μm)である。
【0078】
熱プレスは130℃、0.2MPaで60秒間行い、本発明の触媒層−電解質膜積層体を作製した。
【0079】
実施例2
(1)導電層付き転写用触媒層フィルムの作製
白金触媒担持カーボン(Pt:46.5wt%、田中貴金属工業製のTEC10E50E)10gに1−ブタノール25g、3−ブタノール25g及び60wt%PTFE水分散液(アルドリッチ社製、溶剤:水)8.3gを加え、分散機にて攪拌混合することにより、触媒層形成用インクを調製した。
【0080】
次いで、該インクをポリエステルフィルム(東洋紡績製、E5100、25μm)の一方面に、乾燥後の白金重量が0.8mg/cm2となるように触媒層形成用インクを塗工し、転写用触媒層フィルムを作製した。このときの触媒層の膜厚は20μmであった。
【0081】
次いで、カーボンブラック(ケッチェンEC、花王製)10gに1−ブタノール25g、3−ブタノール25g及び60wt%PTFE水分散液(アルドリッチ社製、溶剤:水)8.3gを加え、分散機にて攪拌混合することにより、導電層形成用インクを調製した。
【0082】
次いで、該インクをポリエステルフィルム(東洋紡績製、E5100、25μm)の一方面に形成された触媒層の上に、乾燥後の導電層重量が0.3mg/cm2となるように導電層形成用インクを塗工し、導電層付き転写用触媒層フィルムを作製した。このときの膜厚は25μm(触媒層が20μm、導電層が5μm)であった。
【0083】
(2)触媒層−電解質膜積層体
実施例1で作製した電解質膜を35×35mmに切断後、電解質膜の両面に30×30mmに切断した二枚の導電層付き転写用触媒層フィルムの導電層が対面するように配置し、130℃、0.2MPaで60秒間熱プレスすることにより、電解質膜の両面に導電層及び触媒層を形成し、本発明の触媒層−電解質膜積層体を作製した。この時の層構成は、触媒層(20μm)/導電層(5μm)/電解質膜(320μm)/導電層(5μm)/触媒層(20μm)である。
【0084】
実施例3
(1)導電層付き転写用触媒層フィルムの作製
白金触媒担持カーボン(Pt:46.5wt%、田中貴金属工業製のTEC10E50E)10gに蒸留水30g、1−ブタノール25g、3−ブタノール25g、5wt%ナフィオン溶液(Dupont社製、溶剤:イソプロピルアルコール、水)50g及びフッ化ピッチ3.5gを加え、分散機にて攪拌混合することにより、触媒層形成用インクを調製した。
【0085】
次いで、該インクをポリエステルフィルム(東洋紡績製、E5100、25μm)の一方面に、乾燥後の白金重量が0.8mg/cm2となるように触媒層形成用インクを塗工し、転写用触媒層フィルムを作製した。このときの触媒層の膜厚は18μmであった。
【0086】
次いで、カーボンブラック(ケッチェンEC、花王製)10gに1−ブタノール25g、3−ブタノール25g、60wt%PTFE水分散液(アルドリッチ社製、溶剤:水)8.3g及びフッ化ピッチ1gを加え、分散機にて攪拌混合することにより、導電層形成用インクを調製した。
【0087】
次いで、該インクをポリエステルフィルム(東洋紡績製、E5100、25μm)の一方面に形成された触媒層の上に、乾燥後の導電層重量が0.3mg/cm2となるように導電層形成用インクを塗工し、導電層付き転写用触媒層フィルムを作製した。このときの膜厚は22μm(触媒層が18μm、導電層が4μm)であった。
【0088】
(2)触媒層−電解質膜積層体
実施例1で作製した電解質膜を35×35mmに切断後、電解質膜の両面に30×30mmに切断した二枚の導電層付き転写用触媒層フィルムの導電層が対面するように配置し、130℃、0.2MPaで60秒間熱プレスすることにより、電解質膜の両面に導電層及び触媒層を形成し、本発明の触媒層−電解質膜積層体を作製した。この時の層構成は、触媒層(18μm)/導電層(2μm)/電解質膜(320μm)/導電層(2μm)/触媒層(18μm)である。
【0089】
比較例1(導電層がない場合)
実施例1で作製した電解質膜の両面に、実施例1で作製した転写用触媒層フィルムを130℃、0.2MPaで60秒間熱プレスすることにより、触媒層−電解質膜積層体を作製した。
【0090】
比較例2(導電層の層厚が電解質膜の膜厚よりも厚い場合)
(1)転写用導電層フィルムの作製
カーボンブラック(ケッチェンEC、花王製)10gに水10g、エタノール10g及び60wt%PTFE水分散液(アルドリッチ社製、溶剤:水)8.3gを加え、分散機にて攪拌混合することにより、導電層形成用インクを調製した。
【0091】
次いで、該インクをポリエステルフィルム(東洋紡績製、E5100、厚さ:25μm)の一方面に塗工し、ハンドロール機にて導電層の膜厚が300μmとなるようにプレスした。 その後、実施例1(2)で作成した転写用触媒層フィルムと実施例1(3)に準じて作成した電解質膜(厚さ300μm)を用い、実施例1と同様にして触媒層−電解質膜積層体を作製した。
【0092】
試験例1
実施例1〜2及び比較例1〜2で得られた触媒層−電解質膜積層体を燃料電池セルに組み込み、それぞれ開回路電圧(OCV)を測定した。
【0093】
このときの測定条件は、セル温度160℃、無加湿でドライガスを空気利用率40%、燃料利用率70%となるようにし、セルに供給した。燃料電池セルを連続運転し、300時間後及び500時間後の開回路電圧(OCV)を測定した。
【0094】
結果を次表に示す。
【0095】
【表1】

【0096】
表1から明らかなように、実施例1及び2で得られた触媒層−電解質膜積層体を燃料電池セルに組み込んだ場合、開回路電圧(OCV)は長時間に亘って安定していた。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】図1は、導電層形成シートの一例を示す断面図である。
【図2】図2は、触媒層形成シートの一例を示す断面図である。
【図3】図3は、導電層付き触媒層形成シートの一例を示す断面図である。
【図4】図4は、本発明の触媒層−電解質膜積層体の一例を示す断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強酸を含む電解質膜の一方面又は両面上に導電層が形成され、該導電層上に触媒層が形成された無加湿型燃料電池用の触媒層−電解質膜積層体であって、
前記導電層は、フッ素樹脂と炭素粉末とから形成されており、
前記導電層の層厚は、電解質膜の膜厚よりも薄い、
触媒層−電解質膜積層体。
【請求項2】
導電層の層厚は、電解質膜の膜厚の1/200〜1/20である、請求項1に記載の触媒層−電解質膜積層体。
【請求項3】
触媒層の層厚は、電解質膜の膜厚の1/20〜1/4である、請求項1に記載の触媒層−電解質膜積層体。
【請求項4】
導電層を形成するフッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、パーフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド及びパーフルオロスルホン酸樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種である、請求項1に記載の触媒層−電解質膜積層体。
【請求項5】
導電層は、さらに非ポリマー性フッ化物を含有している、請求項1に記載の触媒層−電解質膜積層体。
【請求項6】
非ポリマー性フッ化物が、フッ化ピッチ、フッ化カーボン、フッ化黒鉛及びフッ化グラファイトからなる群から選ばれた少なくとも1種である、請求項5に記載の触媒層−電解質膜積層体。
【請求項7】
触媒層は触媒とバインダーとから形成され、該バインダーがフッ素樹脂である、請求項1に記載の触媒層−電解質膜積層体。
【請求項8】
フッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、パーフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド及びパーフルオロスルホン酸樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種である、請求項7に記載の触媒層−電解質膜積層体。
【請求項9】
触媒層は、さらに非ポリマー性フッ化物を含有している、請求項7に記載の触媒層−電解質膜積層体。
【請求項10】
非ポリマー性フッ化物が、フッ化ピッチ、フッ化カーボン、フッ化黒鉛及びフッ化グラファイトからなる群から選ばれた少なくとも1種である、請求項9に記載の触媒層−電解質膜積層体。
【請求項11】
フッ素樹脂と炭素粉末とを混合して導電層形成用インクを調製する工程、
前記導電層形成用インクを基材に塗工し、導電層形成シートを作成する工程、
バインダーと触媒とを混合して触媒層形成用インクを調製する工程、
前記触媒層形成用インクを基材に塗工し、触媒層形成シートを作成する工程、
強酸を含む電解質膜の一方面又は両面に、導電層形成シートを熱プレスして導電層を転写する工程、及び
強酸を含む電解質膜の一方面又は両面に形成された導電層に、触媒層形成シートを熱プレスして触媒層を転写する工程
を備えた、請求項1に記載の触媒層−電解質膜積層体を製造する方法。
【請求項12】
バインダーと触媒とを混合して触媒層形成用インクを調製する工程、
前記触媒層形成用インクを基材に塗工し、触媒層形成シートを作成する工程、
フッ素樹脂と炭素粉末とを混合して導電層形成用インクを調製する工程、
前記導電層形成用インクを前記基材に形成した触媒層上に塗工し、導電層付き触媒層形成シートを作成する工程、及び
強酸を含む電解質膜の一方面又は両面に、導電層付き触媒層形成シートを熱プレスし、導電層及び触媒層を転写する工程
を備えた、請求項1に記載の触媒層−電解質膜積層体を製造する方法。
【請求項13】
請求項1に記載の無加湿型燃料電池用触媒層−電解質膜積層体を製造するための転写シートであって、
基材上に触媒層及び導電層が、基材/触媒層/導電層の順に形成されており、
前記触媒層は、バインダーと触媒とから形成され、
前記導電層は、フッ素樹脂と炭素粉末とから形成されている、
転写シート。
【請求項14】
請求項1に記載の無加湿型燃料電池用触媒層−電解質膜積層体を製造するための転写シートを製造する方法であって、
バインダーと触媒とを混合して触媒層形成インクを調製する工程、
前記触媒層形成用インクを基材に塗工し、触媒層形成シートを作成する工程、
フッ素樹脂と炭素粉末とを混合して導電層形成用インクを調製する工程、及び
前記導電層形成用インクを前記基材に形成した触媒層上に塗工し、導電層付き触媒層形成シートを作成する工程
を備えた、転写シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−198599(P2008−198599A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−6415(P2008−6415)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】