説明

触媒担持フィルタ

【課題】PM捕集層にPMを除去するための触媒を担持又はコートして、パティキュレートと酸化触媒との接触度合いを向上させてPMを確実に除去すること、ガスの流出側及びその近傍にある隔壁で未燃ガスのみを浄化することにより、触媒浄化性能を向上させ、さらに、触媒劣化を防止でき、とりわけ、再生効率を向上させ、スート付圧損を減少させ、エミッション向上させる触媒担持フィルタを提供することにある。
【解決手段】ガスの流入側となる上流層10とガスの流出側となる下流層11を含む触媒担持フィルタであって、隔壁の上流層10は、平均細孔径を小さくしたPM捕集層9として構成されるとともに、酸化触媒が担持又はコートされたPM除去触媒層10として構成されてなり、隔壁の下流層15は、ガス浄化触媒が担持又はコートされたガス触媒層11として構成されている触媒担持フィルタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジン等の内燃機関、又は各種燃焼装置から排出される排ガス中に含まれるパティキュレートを捕集し、或いは浄化するために使用される触媒担持フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関、又は各種燃焼装置(以下、適宜「内燃機関等」という)から排出される排ガスにはスート(黒鉛)を主体とする粒子状物質(以下、適宜「パティキュレート・マター」、「パティキュレート」、或いは「PM」という)が多量に含まれている。このパティキュレートがそのまま大気中に放出されると環境汚染を引き起こすため、内燃機関等からの排ガス流路には、パティキュレートを捕集するためのフィルタが搭載されていることが一般的である。
【0003】
このような目的で使用されるフィルタとしては、例えば、多数の細孔を有する多孔質セラミックスからなる隔壁によって区画された、ガスの流路となる複数のセルを有するハニカム構造体からなり、複数のセルの一方の開口端部と他方の端部とが目封止部によって、互い違いに目封じされてなるハニカムフィルタが挙げられ、さらに、近年においては、パティキュレートの酸化(燃焼)を促進するための酸化触媒を備えたハニカムフィルタが使用されている(以下、適宜「触媒担持フィルタ」という)。
【0004】
たとえば、図6、7に示されるハニカムフィルタでは、多数の細孔25を有する多孔質セラミックスからなる隔壁24によって区画された、ガスの流路となる複数のセル23を有するハニカム構造体からなり、複数のセルの一方の開口端部Xと他方の端部Yとが目封止部22によって、互い違いに目封じされている。さらに、隔壁の入口側に形成される細孔の開口部には触媒がコートされ、ガスGがその細孔の開口部から流入し、隔壁の出口側に形成される、細孔の開口部を経て隣接するセルの流路に流出するように構成される。このように構成されることにより、従来のフィルタでは、排ガス流入セルから排ガスを流入させると、排ガスが隔壁を通過する際に排ガス中のパティキュレートが隔壁に捕集され、パティキュレートが除去された浄化ガスが流出セルから流出することになる。加えて、ハニカムフィルタの隔壁の表面及び隔壁に存在する細孔の内部表面に担持された酸化触媒により、パティキュレートの酸化(燃焼)が、促進されることによって、排ガス中のパティキュレートを減少させることができ、排ガスを効果的に浄化することが可能となる。
【0005】
ところで、排ガス中に含まれるパティキュレートを確実に捕集し得るような平均細孔径を有する多孔質セラミックから構成された触媒担持フィルタにおいては、排ガス中に含まれるパティキュレートの殆どがフィルタの隔壁の排ガス流入セル側の表面に堆積してしまい、隔壁に存在する細孔の内部にまでは侵入しない。即ち、隔壁に存在する細孔の内部表面に担持された酸化触媒はパティキュレートと接触しておらず、有効に活用されていないことになる。このような状態では、パティキュレートの酸化(燃焼)を十分に促進することができず、排ガス中のパティキュレートを減少させることができないため、隔壁の排ガス流入セル側の表面には比較的短期間の内にパティキュレートが堆積してしまい、フィルタの再生作業(逆洗や加熱等により堆積したパティキュレートを除去する作業)を頻繁に行わざるを得ないという問題がある。
【0006】
このような従来の問題に対して、次の特許文献1〜3がある。
【0007】
特許文献1では、微粒子の入口側に小細孔被膜が設けられた2層構造が開示されている。しかし、この2層構造では、触媒がコートされておらず、PMや未燃ガスの浄化には不適切であり、問題の解決に至っていない。
【0008】
特許文献2では、触媒だけの触媒層がその表層のみにコートされていることが開示されている。しかし、触媒層が触媒だけからなる構成では、耐久後触媒が下流基材の方へ流れていき、層の効果が減少するため、不十分である。
【0009】
特許文献3では、入口側表面に多孔質層を作るセラミックスフィルタの製法が開示されており、廃棄物焼却炉等での微細ダストを、その多孔質層により捕集するものである。しかし、触媒については何ら開示されておらず、さらに、再生効率を向上させながら、スート付圧損を減少させ、エミッションを向上するには不十分である。
【0010】
以上のように特許文献1〜3のいずれにおいても十分な対応はなされておらず、未だ解決に至っていない。この他、排ガス流入側にファイバー性の材料を設けることで問題の解決を図らんとするものもあるが、耐久性に課題があり、従前の問題についても不十分であり、更なる改良が求められている。
【0011】
【特許文献1】実用新案登録第2607898号公報
【特許文献2】特公平07−106290号公報
【特許文献3】特開2003−53121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上述のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、PM捕集層にPMを除去するための触媒を担持又はコートして、パティキュレートと酸化触媒との接触度合いを向上させてPMを確実に除去すること、ガスの流出側及びその近傍にある隔壁で未燃ガスのみを浄化することにより、触媒浄化性能を向上させ、さらに、触媒劣化を防止できる触媒担持フィルタを提供することにある。とりわけ、再生効率を向上させ、スート付圧損を減少させ、エミッション向上させる触媒担持フィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明により、以下のDPFが提供される。
【0014】
[1] 多数の細孔を有する多孔質のセラミックからなる隔壁によって区画された、排ガスの流路となる複数のセルを備えるハニカム構造の基材からなり、前記セルの隔壁が、ガスの流入側となる上流層とガスの流出側となる下流層を含む触媒担持フィルタであって、前記複数のセルの一方の開口端部と他方の開口端部には互い違いに目封じされてなる目封止部が形成されてなり、前記隔壁の上流層は、パティキュレートを捕集するために平均細孔径を小さくしたPM捕集層として構成されるとともに、前記排ガス中に含まれるパティキュレートの酸化を促進するための酸化触媒が担持又はコートされたPM除去触媒層として構成されてなり、前記隔壁の下流層は、未燃ガスの酸化を促進するガス浄化触媒が担持又はコートされたガス触媒層として構成されている触媒担持フィルタ。
【0015】
[2] 前記PM除去触媒層は、酸化触媒の担持量が前記ガス浄化触媒層よりも1.05〜10倍多い[1]に記載の触媒担持フィルタ。
【0016】
[3] 前記PM除去触媒層と前記ガス浄化触媒層とにコートされる酸化触媒の総量が、15〜180g/Lである[1]又は[2]に記載の触媒担持フィルタ。
【0017】
[4] 前記PM除去触媒層に含まれる貴金属量がガス浄化触媒層よりも少ない[1]〜[3]のいずれかに記載の触媒担持フィルタ。
【0018】
[5] 前記PM除去触媒層には貴金属が含まれない[1]〜[4]のいずれかに記載の触媒担持フィルタ。
【0019】
[6] PM除去触媒層のCe量はガス浄化触媒より1.2〜10倍多く添加されている[1]〜[5]のいずれかに記載の触媒担持フィルタ。
【0020】
[7] 前記PM除去触媒層は、アスペクト比が5以上のセラミック上に、PM除去触媒がコートされて形成されている[1]〜[6]のいずれかに記載の触媒担持フィルタ。
【0021】
[8] 前記PM除去触媒層の平均細孔径は、前記ガス浄化触媒層よりも小さくなるように形成されている[1]〜[7]のいずれかに記載の触媒担持フィルタ。
【0022】
[9] 前記PM除去触媒層の平均細孔径は1〜15μmである[1]〜[8]のいずれかに記載の触媒担持フィルタ。
【0023】
[10] PM除去触媒とガス浄化触媒を別々にコートして製造する[1]〜[9]のいずれかに記載の触媒担持フィルタの製造方法。
【0024】
[11] PM除去触媒を入口側、ガス浄化触媒を出口側からコートして製造する[1]〜[9]のいずれかに記載の触媒担持フィルタの製造方法。
【0025】
[12] PM除去触媒とガス浄化触媒を入口側からコートして製造する前記[1]〜[9]のいずれかに記載の触媒担持フィルタの製造方法。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、上流層としてのPM捕集層に排ガスに含まれるPMを除去するための触媒を担持又はコートして、パティキュレートと酸化触媒との接触度合いを向上させてPMを確実に除去させて、下流層としてのガス触媒層に、PMが除去された排ガスに含まれる未燃ガスを確実に浄化させることで、触媒浄化性能を向上させることができる触媒担持フィルタを提供できるという優れた効果を奏する。さらに、触媒劣化を防止でき、再生効率の向上を図ることができる。
【0027】
とりわけ、下流層としてのガス触媒層に担持又はコートされている触媒が酸化触媒の場合には、耐久試験後の同等浄化性能を維持するためのトータルの触媒コート量を減らすことができ、Ashが捕集層で捕捉されるため、大細孔層の触媒劣化を防ぐことかできる触媒担持フィルタを提供できる。
【0028】
また、下流層としてのガス触媒層に担持又はコートされている触媒がNO触媒の場合には、捕集層に堆積しているPMの再生によって、局所的なO濃度を下げられるため、下流大細孔層でのNO浄化効率が上昇し、さらに、AshやSulfur成分がNO触媒にいかないため、NO触媒の劣化を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明のセラミックフィルタを実施するための最良の形態について具体的に説明する。但し、本発明はその発明特定事項を備えるセラミックフィルタを広く包含するものであり、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0030】
[1]本発明の触媒担持フィルタ:
本発明の触媒担持フィルタ1は、図1〜5に示されるように、多数の細孔を有する多孔質のセラミックからなる隔壁4によって区画された、排ガスの流路となる複数のセル3を備えるハニカム構造の基材からなり、前記セル3の隔壁4が、ガスの流入側となる上流層とガスの流出側となる下流層とを含む触媒担持フィルタ1である。前記複数のセル3の一方の開口端部7aと他方の開口端部7bには互い違いに目封じされてなる目封止部が形成されてなり、前記隔壁の上流層13は、パティキュレートを捕集するために平均細孔径を小さくしたPM捕集層9として構成されるとともに、前記排ガス中に含まれるパティキュレートの酸化を促進するための酸化触媒が担持又はコートされたPM除去触媒層10として構成されてなる。前記隔壁の下流層15は、未燃ガスの酸化を促進するガス浄化触媒が担持又はコートされたガス触媒層11として構成されている。
【0031】
[1―1]PM捕集層:
本実施形態の触媒担持フィルタでは、触媒担持フィルタが備える隔壁の上流層は、排ガスのスート(黒鉛)を主体とする粒子状物質(PM)を捕集するために平均細孔径を小さくしたPM捕集層として構成されている。このように隔壁の上流層の平均細孔径を小さくすることで、このPM捕集層でAshを確実に捕捉し、後述のガス浄化触媒が担持又はコートされている下流層へ、Ashの流入(流出)を確実に防ぐことができる。その結果、下流層の触媒劣化を防ぐことができ、下流層にコート(担持)されるガス浄化触媒は、未燃ガスの酸化処理を促進することができるのである。
【0032】
ここで、「ガスの流入側となる上流層」とは、ハニカム構造の基材に備えられるガス流入側の隔壁であって、パティキュレートを捕集するために平均細孔径を小さく形成した(PM捕集層9としての)領域をいう。具体的には、図3に示されるように、セルの有する隔壁4(4a)におけるガスの流入路の入口及びその近傍領域をいう。なお、この領域には、後述のPM除去触媒が担持(コート)されPM除去触媒層(図4の符号10参照)としての役割を担うように構成される。なお、「ガスの流出側となる下流層」とは、ハニカム構造の基材に備えられるガス流出側の隔壁であって(符号15参照)、セルのガス流出側及びその近傍の隔壁に形成される領域をいう。この領域は、少なくとも「PM捕集層として形成されている領域」を除いた領域となる(符合4b参照)。より具体的には、図4に示されるように、セルの有する隔壁におけるガスの流出路(出口)およびその近傍をいう。なお、この領域には、後述のガス浄化触媒が担持(コート)され、ガス浄化触媒層11として構成されることになる。
【0033】
なお、基材の備える隔壁は「ガスの流入側となる上流層」及び「ガスの流出側となる下流層」の2層構造からなるものに限らず、上流層と下流層との間に、触媒がない中間層を設けて3層以上からなる隔壁として構成してもよい。
【0034】
図3、4を参照しながら説明する。図3に示されるように、セル3のガス流入側隔壁4aに、セルのガス流出側隔壁4b及びその近傍の隔壁よりも、図4で示されるように平均細孔径が小さいPM捕集層が形成される。さらに、このPM捕集層9には、PM除去触媒が所望領域に担持(コート)され、セルのガス流入側隔壁4aにPM除去触媒層10が担持(コート)され、セルのガス流出側及びその近傍の隔壁には、ガス浄化触媒が担持されガス触媒層11が形成される(図4参照)。なお、図3は、本実施形態における触媒担持フィルタの長さ方向断面を示した模式図であり、図4は、本実施形態における触媒担持フィルタの隔壁断面を一部省略して模式的に示した図である。
【0035】
[1−2]PM除去触媒層:
PM除去触媒層は、PM捕集層に、さらにPM除去触媒としての酸化触媒を担持(コート)して形成した層からなる。すなわち、本実施形態におけるハニカム基材が備える隔壁上流層は、前述のPM捕集層としての役割(機能)だけでなく、PMを酸化処理する役割(機能)をも担っている。
【0036】
換言すれば、このPM除去触媒層は、隔壁の上流層、つまり隔壁の表面、及び、隔壁に存在する細孔の内壁であってガスの流入口近傍等の領域に形成され、PMを捕集するPM捕集層としての機能と、PMを酸化処理する機能とが相俟って、隔壁の上流層で確実にPMを捕集するとともにPMを酸化処理する。その結果、後述のガス触媒層と相乗的に、触媒担持フィルタとしての再生効率を著しく向上させることができるのである。
【0037】
[1−2−1]酸化触媒:
酸化触媒は、PM捕集層に担持(コート)され、PM除去触媒層が形成される。このようにして、酸化触媒を担持(コート)することにより、PM除去触媒層で、PM除去触媒である酸化触媒とPMとが接触し、排ガス中に含まれるパティキュレートの酸化を促進することができる。
【0038】
酸化触媒としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の貴金属が好適に用いられる。
【0039】
なお、本発明の触媒担持フィルタにおいては、少なくとも酸化触媒がPM除去触媒層に担持されたものであることが必要であるが、他の触媒や浄化材が、さらに担持されていてもよい。例えば、アルカリ金属(Li、Na、K、Cs等)やアルカリ土類金属(Ca、Ba、Sr等)からなるNO吸蔵触媒、三元触媒、セリウム(Ce)及び/又はジルコニウム(Zr)の酸化物に代表される助触媒、HC(Hydro Carbon)吸着材等が担持されていてもよい。なお、後述のガス浄化触媒層に担持される場合もある。
【0040】
たとえば、PM除去触媒にはCeとそれ以外の少なくとも1種の希土類金属、アルカリ土類金属、または遷移金属を含んでもよい。
【0041】
ここで、希土類金属としては、たとえば、Sm,Gd,Nd,Y,Zr,Ca,La,Pr等から選択することができる。
【0042】
また、PM除去触媒に含まれるアルカリ土類金属としては、たとえば、Mg,Ca,Sr,Ba等から選択することができる。
【0043】
また、PM除去触媒に含まれる遷移金属としては、たとえば、Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Sc,Ti,V,Cr等から選択することができる。
【0044】
また、酸化触媒、NO吸蔵触媒等の触媒成分の担持方法は特に限定されないが、例えば、ハニカム構造体の隔壁に対して、触媒成分を含む触媒液をウォッシュコートした後、高温で熱処理して焼き付ける方法等が挙げられる。また、例えば、ディッピング法等の従来公知のセラミック膜形成方法を利用して、セラミックスラリーをハニカム構造の基材の隔壁の上流層に付着させ、乾燥、焼成する方法等により、薄膜状のPM除去触媒層を形成すればよい。この際、PM除去触媒層の平均細孔径はセラミックスラリー中の骨材粒子の粒度や配合比等、気孔率はセラミックスラリー中の骨材粒子の粒度や造孔材の量等、コート層厚みはセラミックスラリーの濃度や膜形成に要する時間等を制御することにより所望の値に調整することができる。なお、上記微細コート層については、「少なくとも1層」とあるように、2層以上形成してもよい。
【0045】
なお、酸化触媒、NO吸蔵触媒等の触媒成分は、高分散状態で担持させるため、予めアルミナのような比表面積の大きな耐熱性無機酸化物に一旦担持させた後、ハニカム構造体の隔壁等に担持させることが好ましい。
【0046】
また、上記PM除去触媒層は、例えば、吸引法等の従来公知の触媒担持方法を応用して、触媒スラリーをPM捕集層の細孔内に担持させ、乾燥、焼成する方法等により、PM除去触媒層を形成することができる。
【0047】
[1−3]ガス浄化触媒およびガス触媒層:
本実施形態におけるガス触媒層は、ガス浄化触媒からなる層であって、セルのガス流出側及びその近傍の隔壁に、ガス浄化触媒を担持(コート)して形成される。ここで、本実施形態において、「排ガス浄化触媒」というときは、排ガスを浄化する効果を有する触媒成分を意味し、排ガス中に含まれる窒素酸化物、炭化水素、或いは一酸化炭素といった有害成分の浄化を促進するための触媒の全てが含まれる。例えば、窒素酸化物を酸化するための酸化触媒、窒素酸化物の酸化と炭化水素や一酸化炭素の還元を同時に行う三元触媒の他、窒素酸化物(NO)吸蔵触媒も含まれる。
【0048】
ガス浄化触媒として酸化触媒を担持(コート)する場合には、ガス触媒層は、排ガス中に含まれるパティキュレートの酸化を促進するための層として隔壁の下流層に形成される。ガス浄化触媒として酸化触媒が担持されると、耐久後における同等の浄化性能を維持するために用いられる触媒コートのトータル量(以下、適宜「トータル触媒コート量」という)を減らすことができるため、好ましい。なお、AshはPM捕集層で捕捉されるため、前述のトータル触媒コート量の減量化と相俟って、ガス触媒層の触媒劣化をも防ぐことができるため、好ましい。
【0049】
このガス浄化触媒として用いられる酸化触媒としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の貴金属が好適に用いられる。
【0050】
なお、本発明の触媒担持フィルタにおいて、酸化触媒がガス触媒として担持される場合には、他の触媒や浄化材が、さらに担持されてもよい。例えば、アルカリ金属(Li、Na、K、Cs等)やアルカリ土類金属(Ca、Ba、Sr等)からなるNO吸蔵触媒、三元触媒、セリウム(Ce)及び/又はジルコニウム(Zr)の酸化物に代表される助触媒、HC(Hydro Carbon)吸着材等が担持されていてもよい。例えば、アルカリ金属(Li、Na、K、Cs等)やアルカリ土類金属(Ca、Ba、Sr等)からなるNO吸蔵触媒、三元触媒、セリウム(Ce)及び/又はジルコニウム(Zr)の酸化物に代表される助触媒、HC(Hydro Carbon)吸着材等が担持されていてもよい。
【0051】
また、酸化触媒、NO吸蔵触媒等の触媒成分の担持方法は特に限定されないが、例えば、ハニカム構造体の隔壁に対して、触媒成分を含む触媒液をウォッシュコートした後、高温で熱処理して焼き付ける方法等が挙げられる。また、酸化触媒、NO吸蔵触媒等の触媒成分は、高分散状態で担持させるため、予めアルミナのような比表面積の大きな耐熱性無機酸化物に一旦担持させた後、ハニカム構造体の隔壁等に担持させることが好ましい。
【0052】
また、ガス浄化触媒がNO浄化触媒である場合には、本実施形態におけるガス触媒層は、NOの浄化をする層として、隔壁の下流層に形成されることになる。具体的には、隔壁の下流層にある、セルのガス流出側及びその近傍の隔壁に、このガス浄化触媒を担持させてガス触媒層が形成される。このように、ガス浄化触媒としてNO浄化触媒が担持(コート)されガス触媒層が形成されると、隔壁上流のPM捕集層に堆積しているPMの再生処理(酸化処理)によって、局所的なO濃度を下げることができるとともに、隔壁の下流層に形成されるガス触媒層によって、NO浄化効率を上昇させることができるため好ましい。なお、AshやSulfur成分は、NO触媒からなるガス触媒層に流入しないため、NO触媒の触媒劣化を抑制できるという効果も奏することができる。
【0053】
また、このNO浄化触媒には、アルミナ、ジルコニア及びチタン、並びに、それらの組み合わせからなる群より選択される金属酸化物をコート材として含むことができる。
【0054】
NO浄化触媒としては、NO吸蔵還元触媒又はNO選択還元触媒が挙げられる。
【0055】
ここで、「NO吸蔵還元触媒」とは、空燃比がリーン状態のときにNOを吸蔵し、一定間隔でリッチスパイクを行った時に(排ガスを燃料リッチにした時に)、吸蔵したNOをNに還元する触媒をいう。たとえば、アルミナ、ジルコニア、チタニアのような金属酸化物のコート材に白金、パラジウム、ロジウムのような貴金属と、アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群より選択される少なくとも1種の金属とを担持させて得ることができる。
【0056】
また、「NO選択還元触媒」とは、リーン雰囲気において、NOを還元成分と選択的に反応させて浄化する触媒をいう。例えば、銅、コバルト、ニッケル、鉄、ガリウム、ランタン、セリウム、亜鉛、チタン、カルシウム、バリウム及び銀からなる群より選択される少なくとも1種の貴金属を、ゼオライト又はアルミナを含有するコート材に担持させて得ることができる。
【0057】
浄化触媒の担持方法は特に限定されないが、例えば、ハニカム構造体の隔壁に対して、触媒成分を含む触媒液をウォッシュコートした後、高温で熱処理して焼き付ける方法等が挙げられる。また、例えば、ディッピング法等の従来公知のセラミック膜形成方法を利用して、セラミックスラリーをハニカム構造の基材の隔壁の下流層に付着させ、乾燥、焼成する方法等により、薄膜状の浄化触媒層を形成することができる。この際、浄化触媒層の平均細孔径はセラミックスラリー中の骨材粒子の粒度や配合比等、気孔率はセラミックスラリー中の骨材粒子の粒度や造孔材の量等、コート層厚みはセラミックスラリーの濃度や膜形成に要する時間等を制御することにより所望の値に調整することができる。なお、上記微細コート層については、「少なくとも1層」とあるように、2層以上形成してもよい。
【0058】
また、三元触媒、酸化触媒、窒素酸化物吸蔵触媒等の触媒成分は、高分散状態で担持させるため、予めアルミナのような比表面積の大きい耐熱性無機酸化物に一旦担持させた後、ハニカム構造体の隔壁等に担持させることが好ましい。
【0059】
[1−4]PM除去触媒層とガス浄化触媒層との関係:
図5を参照しながら、PM除去触媒層とガス浄化触媒層が協同しながら、ガスの浄化処理が行われる様子を具体的に説明する。
【0060】
図5に示されるように、ガスGがセル流路内に入った後、流入側隔壁4aから隔壁内部に流入し、流出側隔壁4bに流出する様子が示されている。流入側隔壁4aの入口には、PM除去触媒層10がコートされ、流出側隔壁4bの出口には、ガス触媒層11がコートされている。このように形成されることで、セルのガス流入側隔壁で確実にAshと接触でき、Ashを捕集しセルのガス流出側及びその近傍の隔壁の触媒劣化を防ぐことができる。なお、図5は、本願のセラミックフィルタを示した模式図であって、セラミックフィルタの一部拡大断面図である。
【0061】
さらに、本実施形態におけるPM除去触媒層とガス浄化触媒層とは、以下のような関係であることが好ましい。
【0062】
PM除去触媒層には、ガス浄化触媒層よりも前記酸化触媒が多く担持(コート)されていることが好ましい。このように構成されることにより、触媒担持フィルタ全体としての触媒使用量を抑えながら、PM除去触媒層にて確実にPM除去を行うとともに、さらにガス浄化触媒層にてガスの未燃処理を確実に行うことができる。すなわち、PM除去触媒層で十分にPM処理が行われない程の酸化触媒量に留まると、そのガス浄化触媒層にAshが流入するおそれがあり、触媒劣化が生じ易くなるから好ましくなく、PM除去触媒層に担持される酸化触媒量が多すぎると上流層であるPM捕集層の細孔を閉塞しスート付圧損のおそれが高くなるため好ましくない。さらに、PM除去触媒層及びガス浄化触媒層に担持される触媒量をそれぞれ増やして、触媒担持フィルタ全体の触媒担持トータル量を大きくしすぎると、再生時にクラックなどが発生しやすくなるため、触媒担持フィルタ全体としての担持する触媒量の総量を調整することが好ましい。
【0063】
より好ましいのは、PM除去触媒層は、ガス浄化触媒層よりも1.05〜10倍多く、酸化触媒が担持されていることである。PM除去触媒層に担持される触媒量が、ガス浄化触媒層の10倍よりも大きいと、下流層に担持されるガス浄化触媒の量が非常に少なくなり、スート再生時の不完全燃焼によって生成されたCOの下流層(ガス浄化触媒層)での酸化が十分になされず、COエミッションが低減しやすくなり、COがスリップするため前述の所望数値範囲内に調整することが好ましい。すなわち、このような所望の数値範囲内で酸化触媒を担持させることにより、PM除去触媒層、ガス浄化触媒層が十分に機能し、再生効率を向上させることができるから好ましい。とりわけ、それぞれの触媒層が有する特性が相俟って相乗的に本願の効果を奏することができる。
【0064】
また、PM除去触媒層とガス浄化触媒層とに担持又はコートされる酸化触媒の総量が、15〜180g/Lであることが好ましい。15g/Lより少ないと、再生効率が低減し、下流層での触媒量も十分ではなくなり、ガスエミッションも100%に到達しないおそれがある。また、180g/Lより多いと触媒が上流捕集層の細孔を閉塞し、スート付圧損の弊害が生じやすい。スート付圧損が大きくなると、実走行において、車両加速時の出力が低下するため、実用性に乏しくなるため好ましくない。
【0065】
また、PM除去触媒層に含まれる貴金属量がガス浄化触媒層よりも少ないことが好ましい。スートの再生には貴金属の添加は寄与しないため、貴金属を減らすと、コスト削減できるため好ましい。
【0066】
また、PM除去触媒層には、貴金属が含まれないで触媒層を形成することも好ましい。スートの再生には貴金属の添加は寄与しないため、貴金属を減らすと、コスト削減できるため好ましい。
【0067】
また、PM除去触媒層のCe量はガス浄化触媒より、1.2〜10倍多く添加されていることが好ましい。セリア量比が1.2より小さいと、再生効率が低減するため好ましくなく、10倍よりも大きいと下流層での酸素吸蔵触媒の量が非常に少なくなるため、COの酸化時に局所的に酸素不足となり、HCのガスエミッションが十分に到達しなくなるため好ましくない。
【0068】
また、PM除去触媒層は、アスペクト比が5以上のセラミック上に、PM除去触媒がコートされて形成されていることが好ましい。アスペクト比が2以上のセラミック上に形成される場合には、除去触媒が担持或いはコーティングし易くなる。したがって、表層の厚さが均一になり易い歩か、捕集されたPM等が剥離し易くなるため好ましい。
【0069】
このPM捕集層の平均細孔径は、パティキュレートを捕集するために小さく形成されていることが好ましい。ただし、パティキュレートを捕集するという目的を果たすために、適度な大きさに形成されることが好ましい。すなわち、隔壁の上流層の平均細孔径が小さ過ぎると、PM捕集層でAshが捕集される際に、AshがPM捕集層の細孔上部(Ashの流入側入口又は入口付近)で、いわば蓋となって目詰まりし易くなり、隔壁の下流層にガスの流入を遮るおそれがある。ガスの流入が遮られると、下流層に担持されたガス浄化触媒の酸化処理を妨げることになり、触媒浄化性能を低減させることになるから、好ましくない。他方、隔壁の上流層の平均細孔径が大き過ぎると、PM除去触媒を担持させづらくなり、或いは、仮にPM除去触媒を担持させてPM除去触媒層を形成できても、AshがPM捕集層(或いはPM除去触媒)に十分に接触しづらくなる。その結果、十分に捕集されずに、下流層のガス触媒層に、いわば筒抜けとなって、ガス浄化を十分に出来なくなるおそれがある。したがって、触媒浄化性能を低減させることになるから、好ましくない。
【0070】
換言すれば、PM除去触媒としての酸化触媒が適量に担持(コート)されることが好ましい。PM除去触媒が適量に担持(コート)されることより、PMを十分に捕集でき、ガス浄化触媒層も十分に機能するからである。
【0071】
また、PM除去触媒層の平均細孔径は、ガス浄化触媒層よりも小さくなるように酸化触媒が担持されると、たとえば、隔壁の一部に欠陥(細孔径が大きい細孔)が存在していた場合でも、その欠陥に排ガスが集中的に流入することを抑制することができるとともに、その欠陥から浄化ガス流出セル側にパティキュレートが漏洩する事態を防止することが可能である。
【0072】
また、ガスの流入側(入口側)が狭く、ガスの流出側(出口側)が大きいと通気性が確保されるため、ガスの流入側に形成される触媒層と、排ガスG中に含まれる多数のパティキュレートが十分に接触しやすくなり、PM浄化性能を高めることができる上、PM浄化性が高めることができれば、セルの流出側に形成されるガス触媒層での未燃ガスの浄化効率が高められ、しかも、触媒劣化を防止できるといった相乗効果を奏することができる。
【0073】
例えば、図3〜5に示すように、ハニカム構造体の複数のセルを区画する隔壁4の浄化ガス流入側及びその近傍にある隔壁の表面に、ガスの流出側及びその近傍にある隔壁よりも平均細孔径の小さいPM捕集層が形成されてなるものである。なお、図3、4中では、細孔、及び酸化触媒の図示を省略してある。
【0074】
PM捕集層の平均細孔径としては、1〜15μmであることが好ましい。平均細孔径が1μm未満であるとパーミアビリティーが小さくなり細孔の透過抵抗が急上昇しやすくなるため好ましくなく、15μmより大きいと捕集性能が低下し、PMエミッションが欧州規制のユーロ5規制値をオーバーし易くなり好ましくない。したがって、PM捕集層の平均細孔径を、前述の所望範囲内に調整することにより、本願の効果を奏することができる。
【0075】
なお、本明細書にいう「パーミアビリティー」とは、下記式(1)により算出される物性値をいい、所定のガスがその物(隔壁)を通過する際の通過抵抗を表す指標となる値である。ここで、下記式(1)中、Cはパーミアビリティー(m)、Fはガス流量(cm3/s)、Tは試料厚み(cm)、Vはガス粘性(dynes・sec/cm)、Dは試料直径(cm)、Pはガス圧力(PSI)をそれぞれ示す。また、下記式(1)中の数値は、13.839(PSI)=1(atm)であり、68947.6(dynes・sec/cm)=1(PSI)である。
【0076】
【数1】

【0077】
パーミアビリティーの測定手順としては、ハニカム構造体、ハニカム触媒体いずれの場合も、図9に示すように、隔壁1枚を、リブ残り高さHが0.2mm以下となるように切り出した角板、又は円板状の試験片103の隔壁4に室温空気を通過させ、その際の通過抵抗を測定し、式1により求める。この際、リブ残り105によりできるシールとの隙間から空気が漏れないように、グリス等の流動性シールを併用することが望ましい。また、空気流量範囲としては、計算上の隔壁通過流速が0.1cm/sec以上、1cm/sec以下となる範囲での計測結果を用いる。ハニカム触媒体の場合には、セル内壁面とリブ切断面とで、触媒コート層のつき方が異なるが、本発明では隔壁内部細孔の内面に、多くの触媒がコートされる形態をとるため、リブ残りの影響は小さく、ハニカム構造体と同じ測定方法でハニカム触媒体の隔壁のパーミアビリティーを計測できる。
【0078】
また、本明細書において、「平均細孔径」、「気孔率」というときには、水銀圧入法により測定した平均細孔径、気孔率を意味するものとする。
【0079】
また、PM除去触媒層の気孔率は40〜90%であることが好ましく、より好ましいのは、気孔率が50〜80%である。PM除去触媒層の気孔率が、40%未満であると、圧力損失が大きくなるという問題が生じるおそれがあり、90%を超えると、PM除去触媒層の強度が不足するために、隔壁の表面からPM除去触媒層が剥離してしまうという問題が生じるおそれがあるため好ましくない。さらに、PM除去触媒層の気孔率が、上記範囲未満であると堆積するパティキュレートの量が多いため、フィルタの再生作業が困難となるという問題があり、上記範囲を超えると、触媒担持フィルタを構成するハニカム構造体の強度が低下し、キャニングが困難となるという問題があるため好ましくない。
【0080】
なお、PM除去触媒層の気孔率は、隔壁を構成する多孔質セラミックの気孔率よりも5%以上大きく形成すると、PM除去触媒層における圧力損失(透過圧損)を小さくすることができるという利点があるため、好ましい。
【0081】
また、ガス浄化触媒層の気孔率が30〜70%であることが好ましく、より好ましいのは、ガス浄化触媒層の気孔率が35〜60%である。30%未満であると、圧力損失が大きくなるという問題が生じるおそれがあるだけでなく、セルのガス流入口に形成されるPM除去触媒層で、PMが酸化触媒と十分に接触できないという問題が生じるおそれがあるからである。他方、70%を超えると、ガス浄化触媒層の強度が不足するために、隔壁の表面からPM除去触媒層が剥離してしまうという問題が生じるおそれがあるため好ましくない。
【0082】
[1−5]ハニカム構造体:
本実施形態におけるハニカム構造の基材は、図1〜3に示されるように、多数の細孔を有する多孔質のセラミックからなる隔壁4によって区画された、排ガスの流路となる複数のセルを備えるハニカム構造の基材からなる。このハニカム構造の基材は、その備えるセル3の隔壁4が、ガスの流入側となる上流層13とガスの流出側となる下流層15とからなる触媒担持フィルタとして構成されている。複数のセルの一方の開口端部7aと他方の開口端部7bには互い違いに目封じされてなる目封止部が形成されている。ただし、ハニカム構造の全体形状については特に限定されるものではなく、例えば、図1、2に示されるような円筒状の他、四角柱状、三角柱状等の形状を挙げることができる。
【0083】
また、ハニカム構造の基材が備えるセル形状(セルの形成方向に対して垂直な断面におけるセル形状)としては、例えば、図1に示されるような四角形セル、六角形セル、三角形セル等の形状を挙げることができる。ただし、このような形状に限られるものではなく、公知のセルの形状を広く包含することができる。より好ましいセル形状としては、円形セル又は四角形以上の多角形セルを挙げることができる。このような円形セル又は四角形以上の多角形セルがより好ましいのは、セル断面において、コーナー部の触媒の厚付きを軽減し、触媒層の厚さを均一にできるからである。とりわけ、セル密度、開口率等を考慮すると、六角形セルが好適である。
【0084】
ハニカム構造の基材が備えるセル密度も特に制限はないが、本実施形態のような触媒担持フィルタとして用いる場合には、6〜1500セル/平方インチ(0.9〜233セル/cm)の範囲であることが好ましい。また、隔壁の厚さは、20〜2000μmの範囲であることが好ましい。
【0085】
更に、本実施形態のような触媒担持フィルタとして用いる場合には、ハニカム構造の基材の、複数のセルの一方の開口端部と他方の開口端部とを互い違いに目封じした構造とすることが望ましい。例えば、図3に示されるように、多数の細孔を有する多孔質セラミックからなる隔壁4によって区画された、ガスの流路となる複数のセル3を有するハニカム構造体を、複数のセル3の一方の開口端部7aと他方の開口端部7bとを目封止部8によって互い違いに目封じした構造とするとよい。このようなハニカム構造体では、排ガス流入側端面7aに向かって開口する排ガス流入セル3から排ガスGを流入させると、排ガスGが隔壁4を通過する際に排ガスG中のパティキュレートが隔壁4に捕集され、パティキュレートが除去された浄化ガスGが、排ガス流出側端面7bに向かって開口する浄化ガス流出セル3から流出することになる。
【0086】
ハニカム構造の基材の材質は特に限定されないが、セラミックを好適に用いることができ、強度、耐熱性、耐食性等の観点から、コージェライト、炭化珪素、アルミナ、ムライト、又は窒化珪素のうちのいずれかであることが好ましい。
【0087】
また、上記のようなハニカム構造の基材は、例えば、セラミックからなる骨材粒子、水の他、所望により有機バインダ(ヒドロキシプロポキシルメチルセルロース、メチルセルロース等)、造孔材(グラファイト、澱粉、合成樹脂等)、界面活性剤(エチレングリコール、脂肪酸石鹸等)等を混合し、混練することによって坏土とし、その坏土を所望の形状に成形し、乾燥することによって成形体を得、その成形体を焼成することによって得ることができる。
【0088】
ハニカム構造体の作製方法としては、たとえば次のような方法が一例として挙げられる。ただし、このようなハニカム構造体の作製方法に限らず、公知のハニカム構造体の作製方法を用いることもできる。
【0089】
ハニカム構造体が、例えば、図8に示されるような、複数本のハニカムセグメント62からなるハニカムセグメント接合体63であって、セグメント同士が接合材64で接合され、外周面を所望形状に切削加工されて成型される場合には、次の手順で行うとよい。
【0090】
まず、ハニカムセグメントを作製する。このハニカムセグメント原料として、たとえば、SiC粉末及び金属Si粉末を80:20の質量割合で混合し、これにメチルセルロース及びヒドロキシプロポキシルメチルセルロース、界面活性剤及び水を添加して混練し、可塑性の坏土を得た。そして、所定の金型を用いて坏土を押出成形し、所望形状のハニカムセグメント成形体を成形する。次いで、得られたハニカムセグメント成形体をマイクロ波乾燥機で乾燥し、更に熱風乾燥機で完全に乾燥させた後、目封止をして焼成(仮焼き)する。
【0091】
この仮焼きは、脱脂のためにおこなわれるものであって、たとえば、酸化雰囲気において550℃で、3時間程度で行うものが挙げられるが、これに限られるものではなく、ハニカム成形体中の有機物(有機バインダ、分散剤、造孔材等)に応じて行われることが好ましい。一般に、有機バインダの燃焼温度は100〜300℃程度、造孔材の燃焼温度は200〜800℃程度であるので、仮焼温度は200〜1000℃程度とすればよい。仮焼時間としては特に制限はないが、通常は、3〜100時間程度である。
い。
【0092】
さらに、焼成(本焼成)を行う。この「本焼成」とは、仮焼体中の成形原料を焼結させて緻密化し、所定の強度を確保するための操作を意味する。焼成条件(温度・時間)は、成形原料の種類により異なるため、その種類に応じて適当な条件を選択すればよい。たとえば、Ar不活性雰囲気で焼成する場合の焼成温度は一般的には、約1400℃〜1500℃前後程度であるが、これに限られるものではない。
【0093】
次に、上流層であるガス流入側壁面にPM捕集層を形成する。このPM捕集層は、炭化珪素粉末を含有するスラリーを準備し、そのスラリー中に前述のハニカムセグメントを浸漬した後に焼成(PM捕集層を形成するための焼成工程)して形成する。スラリーに含有させる炭化珪素粉末の平均粒径は0.3〜5μm、有機高分子材料等からなる分散媒中に分散させて、その粘度を50,000c.p.程度に調整したものが好ましく、さらに、焼成温度は約1400℃〜1500℃前後程度であることが好ましい。このようにして、上流層のPM捕集層と下流層とが2層に形成され、後述の触媒担持工程でそれぞれの層に触媒をコートすることになる。
【0094】
前述のような工程を経て所望寸法の複数のハニカムセグメント(焼結体)を得た後、そのハニカムセグメントの周面に、アルミノシリケートファイバ、コロイダルシリカ、ポリビニルアルコール、及び炭化珪素を混練してなる接合用スラリーを塗布し、互いに組み付けて圧着した後、加熱乾燥して、全体形状が四角柱状のハニカムセグメント接合体を得る。そして、そのハニカムセグメント接合体を、円柱形状に研削加工した後、その周面を、ハニカムセグメント成形体と同材料からなる外周コート層で被覆し、乾燥により硬化させることにより、セグメント構造を有する円柱形状のハニカム構造体を得ることができる。
【0095】
目封止部の形成方法としては、目封止スラリーを、貯留容器に貯留しておく。そして、上記マスクを施した側の端部を、貯留容器中に浸漬して、マスクを施していないセルの開口部に目封止スラリーを充填して目封止部を形成する。他方の端部については、一方の端部において目封止されたセルについてマスクを施し、上記一方の端部に目封止部を形成したのと同様の方法で目封止部を形成する。これにより、上記一方の端部において目封止されていないセルについて、他方の端部において目封止され、他方の端部においても市松模様状にセルが交互に塞がれた構造となる。また、目封止は、ハニカム成形体を焼成してハニカム焼成体を形成した後に、施してもよい。
【0096】
なお、目封止材としては、ハニカムセグメント原料と同様な材料を用いると、ハニカムセグメントとの焼成時の膨張率を同じにでき、耐久性の向上につながるため好ましい。
【0097】
また、例えば、コージェライトを隔壁母材の材料とする場合には、コージェライト化原料に、水等の分散媒、及び造孔材を加えて、更に、有機バインダ及び分散剤を加えて混練し、粘土状の坏土を形成する。コージェライト化原料(成形原料)を混練して坏土を調製する手段は、特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることが出来る。コージェライト原料を焼成する場合には、1410〜1440℃で焼成することが好ましく、3〜10時間程度焼成することが好ましい。
【0098】
なお、成形方法としては、上述のように調製した坏土を、所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する口金を用いて押出成形する方法等を好適に用いることができる。
【0099】
[2−1]本実施形態の製造方法1:
本発明の触媒担持フィルタの一実施形態の製造方法として、PM除去触媒とガス浄化触媒を別々にコートすることにより製造することが好ましい。成型しやすく、製品ばらつきの少ないものができるからである。
【0100】
具体的には、まず、前述のように既に隔壁上流側(上流層)にPM捕集層が形成されているハニカム構造体(接合、加工済み)を準備する。
【0101】
また、ハニカム構造体の隔壁上流(上流層)にPM除去触媒として酸化触媒のスラリーを予め調製するとともに、ガス浄化触媒のスラリーを予め調製する。次に、ガス浄化触媒のスラリーにハニカム構造体の出口端面(PM捕集層が施されていない方)のセルより所定の高さまでを浸漬させ、入口端面(PM捕集層が施されている方)のセルより、所定の吸引圧力と吸引流量に調整しながら所定の時間のみ吸引し、下流層にガス浄化触媒を担持する。そして、120℃2時間で乾燥させ、550℃1時間で焼き付ける。さらに、PM除去触媒のスラリーにハニカム構造体の入口端面の所定の高さまで浸漬させ、出口端面より、所定の吸引圧力と吸引流量に調整しながら所定の時間吸引し、PM捕集層にPM除去触媒を担持する。そして、前述と同様に120℃2時間で乾燥させ、550℃1時間で焼き付ける。このようにして触媒担持フィルタを得ることができる。
【0102】
なお、本実施形態における触媒担持フィルタの一実施形態の製造方法では、PM除去触媒とガス浄化触媒を別々に担持して製造するものであるが、これらの触媒の担持方法は、特に限定されず、公知の方法で担持することができる。例えば、ディッピング或いは吸引法等の方法等が挙げられる。
【0103】
また、触媒の組成としては、たとえば、アルミナ:白金:セリア系材料=7:1:2であって、セリア系材料はCe:Zr:Pr:Y:Mn=60:20:10:5:5からなる触媒等が挙げられる。
【0104】
[2−2]本実施形態の製造方法2:
さらに、触媒担持フィルタの別の実施形態の製造方法として、PM除去触媒を入口側、ガス浄化触媒を出口側からコートして製造することがより好ましい。このような製造方法によれば、上流層にPM除去触媒を、下流層にガス浄化触媒を確実に担持させることができる。したがって、製品のばらつきを極力抑えることができるため好ましい製造方法である。
【0105】
以下では、本実施形態の製造方法2について具体的に説明するが、本実施形態の製造方法2と前述の製造方法1とは、触媒を担持する方法のみが相違し、ハニカム構造体の製造工程は同じであるため、触媒を担持する方法のみについて説明し、その他の製造工程については可能な限り重複部分の説明を省略した。したがって、その他の製造工程は、本実施形態の製造方法1、ハニカム構造体の作製方法を参照されたい。
【0106】
本実施形態の製造方法2では、製造方法1と同様に、既に隔壁上流側にPM捕集層が形成されているハニカム構造体(接合、加工済み)を準備し、次に、PM除去触媒として酸化触媒のスラリー、及びガス浄化触媒のスラリーのそれぞれを予め調製する。なお、触媒組成は、製造方法1と同様のものが挙げられる。
【0107】
次に、ガス浄化触媒のスラリーにハニカム構造体の出口端面(PM捕集層が施されていない方)のセルより所定の高さまでを浸漬させ、入口端面(PM捕集層が施されている方)のセルより、所定の吸引圧力と吸引流量に調整しながら所定の時間のみ吸引し、下流層にガス浄化触媒を担持する。そして、120℃2時間で乾燥させる。さらに、PM除去触媒のスラリーにハニカム構造体の入口端面の所定の高さまで浸漬させ、出口端面より、所定の吸引圧力と吸引流量に調整しながら所定の時間吸引し、PM捕集層にPM除去触媒を担持する。そして、前述と同様に120℃2時間で乾燥させ、550℃1時間で焼き付ける。このようにして触媒担持フィルタを得ることができる。
【0108】
[2−3]本実施形態の製造方法3:
さらに、触媒担持フィルタの別の実施形態の製造方法として、PM除去触媒とガス浄化触媒を入口側からコートして製造することがもっとも好ましい。このような製造方法によれば、成型工程を単純化でき、成型の製作スピードを上げることができる。したがって、生産コストを引き下げることができるため好ましい。
【0109】
以下では、本実施形態の製造方法3について具体的に説明するが、本実施形態の製造方法3と前述の製造方法1とは、触媒を担持する方法のみが相違し、ハニカム構造体の製造工程は同じであるため、触媒を担持する方法のみについて説明し、その他の製造工程については可能な限り重複部分の説明を省略した。したがって、その他の製造工程は、本実施形態の製造方法1を参照されたい。
【0110】
本実施形態の製造方法3では、PM除去触媒とガス浄化触媒が同じ酸化触媒で担持量が異なる場合のみ、下流層の酸化触媒量とPM捕集層との触媒量の関係をコントロールする製法である。具体的には、既に隔壁上流側にPM捕集層が形成されているハニカム構造体(接合、加工済み)を予め準備し、次に、PM除去触媒とガス浄化触媒に担持する(コートする)酸化触媒のスラリーを予め調製する。次に、ガス流入側の入口である基材の端部側から、PM除去触媒含有のスラリー中に除々に挿入し、ハニカム構造体全体をスラリー中に浸漬させた後、ガス流出口側からの吸引圧力を調節することで、スラリーが上流層と下流層の細孔内に均一に分布する。そして、120℃2時間で乾燥させた後、550℃1時間で焼付けする。このようにして触媒担持フィルタを得ることができる。
【実施例】
【0111】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例における「部」および「%」は特に断りのない限り質量部および質量%を意味する。また、実施例における各種の評価、測定は、下記方法により実施した。
【0112】
[1]DPF:
実施例、比較例とも以下に示すハニカム構造体を使用して、触媒担持フィルタを作製した。
【0113】
触媒担持フィルタの基材となるハニカム構造体は、原料として、SiC粉80質量%及び金属Si粉20質量%の混合粉末を使用し、これにメチルセルロース及びヒドロキシプロポキシルメチルセルロース、界面活性剤及び水を添加して、可塑性の坏土を作製し得られた坏土を押出成形機にて押出成形し、所望寸法のハニカムセグメント形状を4本x4本=計16本得た。次に、マイクロ波及び熱風で乾燥させた後、市松模様状を呈するように、セルの両端面を目封じして目封止をして、酸化雰囲気において550℃で3時間、脱脂のための仮焼をした。さらに、Ar不活性雰囲気で1700℃の焼成温度にて2時間焼成して、SiC結晶粒子をSiで結合させて複数のハニカムセグメント(焼結体)を得る。次に、ハニカムセグメント(焼結体)の周面に、接合用スラリーを塗布し、互いに組み付けて圧着した後、加熱乾燥して、全体形状が四角柱状のハニカムセグメント接合体を得、そのハニカムセグメント接合体を、円柱形状に研削加工した後、その周面を、ハニカムセグメント成形体と同材料からなる外周コート層で被覆し、乾燥により硬化させて、φ144×152mmL、12mil/300cpsiのハニカム構造体を得た。次に、上流PM捕集層としてセルのガス流入側隔壁では、厚さ=50μm、下流層としてセルのガス流出側及びその近傍の隔壁では、厚さ=305μm(=12mil)、からなり、下流層である305μm壁の上に50μmの捕集層を追加製膜して、120℃、2時間で乾燥させた後、550℃、1時間で触媒焼付けを行い、ハニカム構造の炭化珪素焼結体(SiC−DPF)を作製した。
【0114】
[2]触媒:
触媒としては、酸化触媒を用いた。すなわち、前述のSiC−DPFが備える、多数のセルを区画・形成する隔壁に対して、酸化触媒成分を含む触媒液を後述の実施例、比較例のコートする所望箇所、コート量に応じて、ウォッシュコートした後、高温で熱処理して焼き付ける方法により担持させ、浄化触媒フィルタを得た。
【0115】
酸化触媒の組成としては、触媒Aは、アルミナ:白金:セリア系材料=7:1:2であって、セリア系材料はCe:Zr:Pr:Y:Mn=60:20:10:5:5からなる触媒を用い、触媒B(触媒B−1〜触媒B−5)、触媒C(C−1〜C−5)は、表1に記載されるように、トータル触媒量は同じでセリア量比が異なるように調整したものを用い、触媒D(D−1〜D−3)、触媒E(E−1〜E−3)は表1に記載されるように、トータル触媒量は同じでPt量比が異なるように調整したものを用いた。具体的には、下記実施例1〜14、比較例1〜10に示されるとおりである。
【0116】
この触媒担持方法としては、ガス浄化層への触媒は出口端面側から触媒スラリーを吸引によって担持し、PM捕集層への触媒は入口端面側から触媒スラリーを吸引して、各層へ触媒コートを行った。その後、まず120℃、2時間で乾燥させた後、550℃、1時間で触媒焼付けを行った。
【0117】
(実施例1〜実施例6)
前述のSiC−DPFにおける、捕集層の「気孔径」を5μm、捕集層の「気孔率」を70%とし、下流層の「気孔径」を15μm、下流層の「気孔率」を40%とし、PM除去触媒として触媒Aを担持(コート)するとともに、ガス浄化触媒として触媒Aを担持(コート)して、実施例1〜実施例6の触媒担持フィルタを得た。なお、触媒量比、トータル触媒量等については表1に記載の数量を用いた。
【0118】
(実施例7)
前述のSiC−DPFにおける、捕集層の「気孔径」を1μm、捕集層の「気孔率」を70%とし、下流層の「気孔径」を15μm、下流層の「気孔率」を40%とし、PM除去触媒として触媒Aを担持(コート)するとともに、ガス浄化触媒として触媒Aを担持(コート)して、実施例7の触媒担持フィルタを得たなお、触媒量比、トータル触媒量等については表1に記載の数量を用いた。
【0119】
(実施例8)
前述のSiC−DPFにおける、捕集層の「気孔径」を15μm、捕集層の「気孔率」を70%とし、下流層の「気孔径」を15μm、下流層の「気孔率」を40%とし、PM除去触媒として触媒Aを担持(コート)するとともに、ガス浄化触媒として触媒Aを担持(コート)して実施例8の触媒担持フィルタを得た。なお、触媒量比、トータル触媒量等については表1に記載の数量を用いた。
【0120】
(実施例9)
前述のSiC−DPFにおける、捕集層の「気孔径」を3μm、捕集層の「気孔率」を90%とし、下流層の「気孔径」を15μm、下流層の「気孔率」を40%とし、PM除去触媒として触媒Aを担持(コート)するとともに、ガス浄化触媒として触媒Aを担持(コート)して実施例9の触媒担持フィルタを得た。なお、触媒量比、トータル触媒量等については表1に記載の数量を用いた。
【0121】
(実施例10〜12)
前述のSiC−DPFにおける、捕集層の「気孔径」を5μm、捕集層の「気孔率」を70%とし、下流層の「気孔径」を15μm、下流層の「気孔率」を40%とし、PM除去触媒として触媒B−2を担持(コート)するとともに、ガス浄化触媒として触媒C−2を担持(コート)して実施例10の触媒担持フィルタを得た。また、実施例10とコートする触媒の成分のみ相違する触媒担持フィルタであって、PM除去触媒として触媒B−3を担持(コート)するとともに、ガス浄化触媒として触媒C−3を担持(コート)して実施例11の触媒担持フィルタを得た。さらに、実施例10とコートする触媒の成分のみ相違する触媒担持フィルタであって、PM除去触媒として触媒B−4を担持(コート)するとともに、ガス浄化触媒として触媒C−4を担持(コート)して実施例12の触媒担持フィルタを得た。なお、実施例10〜12のいずれの触媒担持フィルタにおいても、触媒量比、トータル触媒量等については表1に記載のそれぞれの数量を用いた。
【0122】
(実施例13〜14)
前述のSiC−DPFにおける、捕集層の「気孔径」を5μm、捕集層の「気孔率」を70%とし、下流層の「気孔径」を15μm、下流層の「気孔率」を40%とし、PM除去触媒として触媒D−1を担持(コート)するとともに、ガス浄化触媒として触媒E−1を担持(コート)して実施例13の触媒担持フィルタを得た。また、実施例13とコートする触媒の成分のみ相違する触媒担持フィルタであって、PM除去触媒として触媒D−2を担持(コート)するとともに、ガス浄化触媒として触媒E−2を担持(コート)して実施例14の触媒担持フィルタを得た。なお、実施例13〜14のいずれの触媒担持フィルタにおいても、触媒量比、トータル触媒量等については表1に記載のそれぞれの数量を用いた。
【0123】
(比較例1〜5)
前述のSiC−DPFにおける、捕集層の「気孔径」を5μm、捕集層の「気孔率」を70%とし、下流層の「気孔径」を15μm、下流層の「気孔率」を40%とし、PM除去触媒として触媒Aを担持(コート)するとともに、ガス浄化触媒として触媒Aを担持(コート)して、比較例1〜比較例5の触媒担持フィルタを得た。なお、触媒量比、トータル触媒量等については表1に記載のそれぞれ数量を用いた。
【0124】
(比較例6、7)
前述のSiC−DPFにおける、捕集層の「気孔径」を0.5μm、捕集層の「気孔率」を70%とし、下流層の「気孔径」を15μm、下流層の「気孔率」を40%とし、PM除去触媒として触媒Aを担持(コート)するとともに、ガス浄化触媒として触媒Aを担持(コート)して、比較例6の触媒担持フィルタを得た。さらに、捕集層の「気孔径」を17μmにした以外には、比較例6と同様の、捕集層の「気孔率」、下流層の「気孔径」、下流層の「気孔率」を有し、PM除去触媒として触媒Aを担持(コート)するとともに、ガス浄化触媒として触媒Aを担持(コート)した、比較例7の触媒担持フィルタを得た。なお、触媒量比、トータル触媒量等については表1に記載の数量を用いた。
【0125】
(比較例8〜10)
前述のSiC−DPFにおける、捕集層の「気孔径」を17μm、捕集層の「気孔率」を70%とし、下流層の「気孔径」を15μm、下流層の「気孔率」を40%とし、PM除去触媒として触媒B−1を担持(コート)するとともに、ガス浄化触媒として触媒C−1を担持(コート)して、比較例8の触媒担持フィルタを得た。また、比較例8とコートする触媒の成分のみ相違する触媒担持フィルタであって、PM除去触媒として触媒B−5を担持(コート)するとともに、ガス浄化触媒として触媒C−5を担持(コート)して比較例9の触媒担持フィルタ、PM除去触媒として触媒D−3を担持(コート)するとともに、ガス浄化触媒として触媒E−3を担持(コート)して比較例10の触媒担持フィルタ
得た。なお、触媒量比、トータル触媒量等については表1に記載の数量を用いた。
【0126】
上述のようにして得られた実施例1〜14、及び比較例1〜10の触媒担持フィルタを用いて下記のような実験を行った。
【0127】
[1]再生効率試験:
2.0Lのディーゼルエンジンに触媒コートDPFを搭載し、2000rpmx50Nm一定状態でDPFに8g/LのPMを堆積させた。その後、ポストインジェクションにより排気ガス温度を上昇させ、DPF入口ガス温度を650℃一定に10分間制御。ポストインジェクションをやめてDPFを取り外し、DPFに堆積しているPM量を測定し、試験前後の重量からPMがどれだけ燃焼したかを示す再生効率を求めた。
【0128】
[2]スート付圧損:
PMを8g/L堆積させている間のDPF前後の圧損を測定し、6g/LPM堆積時の圧損を評価した。
【0129】
[3]ガスエミッション:
ポストインジェクションを入れている再生時のDPF前後でのCOの浄化効率を測定した。
【0130】
[4]PMエミッション:
DPFを2.0Lディーゼルエンジン搭載車両に取り付け、欧州規制モードに従いエミッション試験を実施。PMエミッションを測定し、DPFの捕集性能を評価した。
【0131】
[5]測定方法
実施例、比較例の触媒付きDPFの触媒分布についてSEM(走査型電子顕微鏡)観察を行い、EDX(エネルギー分散型蛍光X線分析)にて化学成分の定量分析をし、各測定位置において触媒成分の積算値をその位置での触媒担持量とした。具体的には、SEMの倍率を1000倍に拡大して観察した。次に、EDX(エネルギー分散型蛍光X線分析)にて観察した。次に、EDX(エネルギー分散型蛍光X線分析)にて分析を行った。EDX分析にて触媒成分の定量分析をした。また、試料採取箇所として、実施例1〜4、比較例1、2の触媒付きDPFにおいて、(1−1)DPF軸方向において上流及び下流では、それぞれ入口・出口より30mm付近を選定し、中流では軸方向の中心を選定し、上流、下流及び中流の3箇所の断面内中央にて試料採取した。さらに、(2)上流層では厚さ方向の中央、下流層では厚さ方向の上流(捕集層と下流層との界面より50um程度)、中流では下流界面より50um程度の箇所を測定し、それぞれ3箇所の平均値を各層の触媒担持量とした。
【0132】
以上の実験から求められた結果を、下記表1に示す。
【0133】
【表1】

【0134】
(試験結果考察1)
実施例1と比較例1のDPFを対比すると、実施例1のように2層構造をしているDPFにおいて、触媒量比を1(同じ触媒密度)から2倍にしたことで再生効率が上昇し良好な結果が得られた。具体的には、実施例1のDPFでは、上流捕集層が下流層よりも平均細孔径が小さく、且つ、平均細孔径15um以下の場合、スートは捕集層で捕捉され、下流層にはスートは堆積しない。この場合、捕集層にはスート燃焼を促進させるために触媒量を多くする事でスートの燃焼速度が向上するため再生効率が向上する。これに対して、触媒量比が小さい比較例1のDPFでは、再生効率が50%以下となった。したがって、比較例1のDPFでは、再生を繰り返し行っていくと再生するインターバルが再生を繰り返す毎に急速に短くなっていき、実使用では再生を非常に高頻度で行わないといけないため、燃費が著しく悪化するため、実用化できないものであることが裏づけられた。
【0135】
なお、前述の「触媒量比」とは、本願では触媒密度比の意味で用いており、以下でも、同様である。
【0136】
(試験結果考察2)
実施例2,3と比較例2,3のDPFを対比すると、比較例2のように触媒量比が1.1より少ないと再生効率が50%以下となり、比較例3のように10倍より大きいと下流側の触媒量が非常に少なくなり、スート再生時の不完全燃焼によって生成されたCOの下流層での酸化が十分になされず、再生中のCOエミッション(ガスエミッション)が100%にならずCOがスリップする。これに対して、実施例2,3では、再生効率が上昇するとともに、ガスエミッションが100%を維持でき良好な結果が得られた。
【0137】
(試験結果考察3)
実施例4,5と比較例4〜6のDPFを対比すると、比較例4のようにトータル触媒量が15g/Lより少ないと再生効率が50%を下回り、下流層での触媒量も十分ではないためガスエミッションも100%に到達しなかった。また、比較例5のように180g/Lより多いと触媒が上流捕集層の細孔を閉塞し、スート付圧損が急上昇した。さらに、比較例6のようにスート付圧損は6g/L堆積時の圧損が30kPaより大きくなると、実走行において車両加速時の出力が低下した。このように、比較例4〜6のいずれのDPFでも、実用化できないものであることが裏づけられた。これに対して、実施例4,5のDPFでは、再生効率が上昇し、ガスエミッションが100%を維持できるとともに、スート付圧損も低減化が維持できるといった良好な結果が得られた。
【0138】
(試験結果考察4)
実施例6,7と比較例4〜6のDPFを対比すると、比較例6のように捕集層の平均細孔径が1μmより小さいとパーミアビリティーが小さくなり細孔の透過抵抗が急上昇し、比較例7のようにスート付圧損が30kPa以上、15μmより大きいと捕集性能が低下し、PMエミッションが欧州規制のユーロ5規制値5mg/kmをオーバーした。すなわち、いずれのDPFでも、実用化できないものであることが裏づけられた。これに対して、実施例6,7のDPFでは、再生効率が上昇し、ガスエミッションが100%を維持できるとともに、スート付圧損も低減化が維持できるといった良好な結果が得られた。
【0139】
(試験結果考察5)
実施例9のDPFでは、捕集層を直径2−5μm、長さ20−100μmのガラスファイバーにしたところ、捕集性能が向上し、PMエミッション値が低下し、良好な結果が得られた。
【0140】
(試験結果考察6)
実施例10〜12と比較例8、9のDPFを対比すると、比較例8のようにセリア量比が1.2より小さいと再生効率40%を下回った。また、比較例9のように10倍よりも大きいと下流層での酸素吸蔵触媒の量が非常に少なくなるため、COの酸化時に局所的な酸素不足となりHCのガスエミッションが100%に到達しなかった。すなわち、いずれのDPFでも、実用化できないものであることが裏づけられた。これに対して、実施例10〜12のようにセリア量比が1.2以上であれば触媒量比を大きくしたときと同様に再生効率50%を上回った。したがって、良好な結果が得られた。
【0141】
(試験結果考察7)
実施例13、14と比較例10のDPFを対比すると、実施例13、14のように触媒量比が2倍で上流層でのPt量を減らす、または0にしても再生効率の低下は見られなかった。つまりスートの再生にはPtの添加は寄与していないことが実証付けられた。このことから、Ptを減らすとコストを削減でき、安価な製品を提供できるため良好な結果が得られた。これに対して、比較例10のDPFでは、Pt量比を1倍より大きくする、すなわち、上流層の方がPt量を多くしても再生効率は変わらないため、性能は変わらないが生産コストがアップし価格面での競争力低下が危惧されることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明の触媒担持フィルタは、ディーゼルエンジン、普通自動車用エンジン、トラックやバス等の大型自動車用エンジンをはじめとする内燃機関、各種燃焼装置から排出される排ガス中に含まれるパティキュレートを捕集し、或いは浄化するために好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】図1は、本発明の一実施形態が適用されるセラミックフィルタを示した模式図であって、セラミックフィルタの平面図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態が適用されるセラミックフィルタを示した模式図であって、セラミックフィルタの斜視図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態が適用されるセラミックフィルタを示した模式図であって、セラミックフィルタの断面図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態が適用されるセラミックフィルタを示した模式図であって、セラミックフィルタの断面図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態が適用されるセラミックフィルタを示した模式図であって、セラミックフィルタの断面図である。
【図6】図6は、従来のセラミックフィルタを示した模式図であって、セラミックフィルタの一部拡大断面図である。
【図7】図7は、従来のセラミックフィルタを示した模式図であって、セラミックフィルタの断面図である。
【図8】図8は、本発明の一実施形態が適用されるセラミックフィルタを示した模式図であって、セラミックフィルタの斜視図である。
【図9】図9は、パーミアビリティーの測定に用いる試験片について説明する模式図である。
【符号の説明】
【0144】
1、1A:触媒フィルタ、3:セル、4:隔壁、4a:流入側隔壁、4b:流出側隔壁、7:開口端部、7a:一方の開口端部、7b:他方の開口端部、8:目封止部、9:PM捕集層、10:PM除去触媒層、11:ガス触媒層(ガス浄化触媒層)、13:上流層、15:下流層、23:セル、24:隔壁、25:触媒、51:従来のハニカムフィルタ、62:ハニカムセグメント、63:ハニカムセグメント接合体、64:接合材、66:外周コート層、103:試験片、リブ残り:105、X:一方の開口端部、Y:他方の開口端部、G:排ガス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の細孔を有する多孔質のセラミックからなる隔壁によって区画された、排ガスの流路となる複数のセルを備えるハニカム構造の基材からなり、前記セルの隔壁が、ガスの流入側となる上流層とガスの流出側となる下流層を含む触媒担持フィルタであって、
前記複数のセルの一方の開口端部と他方の開口端部には互い違いに目封じされてなる目封止部が形成されてなり、
前記隔壁の上流層は、パティキュレートを捕集するために平均細孔径を小さくしたPM捕集層として構成されるとともに、前記排ガス中に含まれるパティキュレートの酸化を促進するための酸化触媒が担持又はコートされたPM除去触媒層として構成されてなり、
前記隔壁の下流層は、未燃ガスの酸化を促進するガス浄化触媒が担持又はコートされたガス触媒層として構成されている触媒担持フィルタ。
【請求項2】
前記PM除去触媒層は、酸化触媒の担持量が前記ガス浄化触媒層よりも1.05〜10倍多い請求項1に記載の触媒担持フィルタ。
【請求項3】
前記PM除去触媒層と前記ガス浄化触媒層とにコートされる酸化触媒の総量が、15〜180g/Lである請求項1又は2に記載の触媒担持フィルタ。
【請求項4】
前記PM除去触媒層に含まれる貴金属量がガス浄化触媒層よりも少ない請求項1〜3のいずれか1項に記載の触媒担持フィルタ。
【請求項5】
前記PM除去触媒層には貴金属が含まれない請求項1〜4のいずれか1項に記載の触媒担持フィルタ。
【請求項6】
PM除去触媒層のCe量はガス浄化触媒より1.2〜10倍多く添加されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の触媒担持フィルタ。
【請求項7】
前記PM除去触媒層は、アスペクト比が5以上のセラミック上に、PM除去触媒がコートされて形成されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の触媒担持フィルタ。
【請求項8】
前記PM除去触媒層の平均細孔径は、前記ガス浄化触媒層よりも小さくなるように形成されている請求項1〜7のいずれか1項に記載の触媒担持フィルタ。
【請求項9】
前記PM除去触媒層の平均細孔径は1〜15μmである請求項1〜8のいずれか1項に記載の触媒担持フィルタ。
【請求項10】
PM除去触媒とガス浄化触媒を別々にコートして製造する請求項1〜9のいずれか1項に記載の触媒担持フィルタの製造方法。
【請求項11】
PM除去触媒を入口側、ガス浄化触媒を出口側からコートして製造する請求項1〜9のいずれか1項に記載の触媒担持フィルタの製造方法。
【請求項12】
PM除去触媒とガス浄化触媒を入口側からコートして製造する請求項1〜9のいずれか1項に記載の触媒担持フィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−220029(P2009−220029A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−67654(P2008−67654)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】