説明

触媒組成物、その製造及び使用

a)シリカ、ジルコニア及びチタニアから選ばれたバインダーを、担体全体に対し30重量%以上、シリカ対アルミナの嵩比が20〜150の範囲にあり、かつH形態であるペンタシルゼオライトを20重量%以上、及び他の成分を10重量%未満含有する担体、b)白金を、触媒全体に対し0.001〜0.1重量%の範囲の量、c)錫を、触媒全体に対し0.01〜0.5重量%の範囲の量、含有する触媒組成物、その製造法及び用途。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は触媒組成物、その製造及びエチルベンゼンのジアルキル化への使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
エチルベンゼンはナフサの熱分解又は改質ガソリン(reformate)で得られる。改質ガソリンは、直留ナフサのような、沸点範囲が70〜190℃の範囲の直留炭化水素の接触転化により得られる芳香族生成物である。このような炭化水素自体は、原油の精留又蒸留により得られ、その組成は原油源により変化するが、一般に芳香族含有量は少ない。改質ガソリンに転化すると、芳香族成分がかなり増加し、得られる炭化水素混合物は有価の貴重な化学薬品中間体源として、またガソリンの成分として非常に望ましくなる。主成分は、多くの場合、BTXと言われる一群の芳香族、即ち、ベンゼン、トルエン、及びエチルベンゼン含有キシレンである。水素化同族体、例えばシクロヘキサンのような他の成分も存在してよい。
【0003】
BTX群のうち、最も貴重な成分はベンゼン及び前記キシレンなので、BTXに対しては、これら2種の芳香族の割合を増大させるための処理、即ち、トルエンのベンゼンへの水素化脱アルキル、及びトルエンのベンゼン及びキシレンへの不均化を行うことが多い。得られるキシレン中ではp−キシレンが最も有用な商品で、p−キシレンの割合を増大させるため、キシレンの異性化又はトランスアルキル化方法が開発されてきた。
更にガソリン生産者が利用できる別の方法は、エチルベンゼンのベンゼンへの水素化脱アルキルである。
【0004】
一般にガソリン生産者は、改質ガソリン流からBTXを単離し、次いで、p−キシレン成分を最大化する目的で、このBTX流に対しキシレン異性化を行っている。キシレンの異性化は接触法である。この方法に使用される幾つかの触媒は、キシレンを異性化するばかりでなく、同時にエチルベンゼン成分を脱アルキル化する能力を有する。次にこのp−キシレンは分離して、ベンゼン、トルエン(トルエンの転化法を適用していない限り)及び残りのエチルベンゼン含有混合キシレンを残存させるのが普通である。このBTX流は、キシレンを平衡濃度に到達させながら、キシレンの収率を向上するため、重質炭化水素流との接触によるトランスアルキル化により、或いはエチルベンゼンを除去すると共にベンゼンの収率を向上するため、脱アルキル化により転化できる。後者の方法は本発明の主題である。
【0005】
このようなBTX処理の後者の段階でのエチルベンゼンの脱アルキル化において、第一の関心事は、ベンゼンへの高度の転化率を保証するばかりでなく、キシレンの損失も防止することである。キシレンは、通常、例えばベンゼンとキシレン間のトランスアルキル化によりトルエンを生じるか、或いは水素の付加により例えばアルケン又はアルカンを形成して、損失する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的はキシレンの損失もなく高選択率でエチルベンゼンをベンゼンに転化する触媒を提供することである。キシレンの平衡濃度への同時異性化も望ましい。
【0007】
改質ガソリンの製造に使用される触媒は、多くの場合、アルミナ上に白金を担持した触媒である。密接に配列した分子の割合を増加させるためのBTX流の転化には、ゼオライト系触媒を利用する広範な提案がなされている。ゼオライト系触媒としては、EP−A−0018498、EP−A−0425712及びWO 00/38834に記載のものが挙げられる。
【0008】
ヨーロッパ特許明細書No.0018498A1は、キシレンの異性化及びエチルベンゼンの同時脱アルキル化に好適な触媒に関し、白金ZSM−シリーズゼオライト系触媒を使用することについて先行する多数の提案を批評している。一般にこの種の触媒は、キシレンの異性化及びエチルベンゼンの脱アルキル化に優れた活性を示すが、白金ではベンゼン環を水素化し、またキシレンの異性化には好ましい低温では不均化及びトランスアルキル化のような他の望ましくない副反応を起こす傾向があるので、高温で使用する必要がある。EP−A−0018498の提案は、白金、及び耐火性無機酸化物(全ての実施例ではアルミナ)と結合した高シリカゼオライトに、第二金属として好ましくは錫、バリウム、チタン、インジウム及びカドミウムを組合わせ使用するものである。
【0009】
EP−A−0425712には、キシレンの異性化及びエチルベンゼンの脱アルキル化を同時に行う改良触媒が記載されている。この触媒は、ペンタシルゼオライト及び無機酸化物バインダー、好ましくはアルミナからなる担体上で第VIII族金属、好ましくは白金を、鉛成分及びハロゲン成分と、特定の鉛対第VIII族金属成分比となり、かつ第VIII族成分及び鉛成分からなる本体(bulk)がバインダー材料と結合されるように、結合させて、形成される。
【0010】
WO 00/38834には、芳香族炭化水素の不均化及びトランスアルキル化用の混合ゼオライト系触媒が記載されている。この触媒は、モルデナイト及び/又はゼオライトβ10〜80重量%とZSM−5 0〜70重量%と無機バインダー5〜90重量%とからなる担体に、白金と錫又は鉛とからなる金属成分を加えて構成される。バインダーは、アルミナ又はシリカが最も好ましいと述べているが、例示されているのはアルミナ結合触媒だけである。
【0011】
Journal of Catalysis 210,431−444(2002)においてToppi等は、シリカ担持白金触媒及び白金−錫触媒をアルミナ自体及び塩素化アルミナの酸性触媒と比較して使用した場合のn−プロピルベンゼンの水素化脱アルキル化について研究し、ベンゼンの形成速度は酸性触媒で最大であることを発見している。
【0012】
US−A−3,992,468は、アルキル芳香族炭化水素の水素化脱アルキル化用の2種の触媒として、a)担体、b)第VIII族の金属よりなる群から選ばれた少なくとも1種の金属及びc)亜鉛、カドミウム、ガリウム、インジウム、タリウム、銅、銀、金、イットリウム、チタン、ニオブ、タンタル、及びマンガンよりなる群から選ばれた少なくとも1種の金属を必須成分とする触媒A;及びa)担体、b)クロム、モリブデン、タングステン、レニウム、及びマンガンよりなる第一群から選ばれた少なくとも1種の金属、及びc)第一郡の金属+銅、銀、金、亜鉛、カドミウム、ガリウム、インジウム、タリウム、ゲルマニウム、錫及び鉛(但し、各金属は0.05〜20重量%の量である)から選ばれる、第一群の金属とは異なる少なくとも1種の追加の金属を必須成分とする触媒Bを提案している。担体は、既知の担体、例えばアルミナ、マグネシア、マグネシア−シリカ、酸性アルミナ、塩素化及び/又は弗素化アルミナ、及びモレキュラシーブ又はゼオライト、好ましくはアルミナから選ばれる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の概要
本発明は、
a)シリカ、ジルコニア及びチタニアから選ばれたバインダーを、担体全体に対し30重量%以上、シリカ対アルミナの嵩(bulk)比が20〜150の範囲にあり、かつH形態であるペンタシルゼオライトを20重量%以上、及び他の成分を10重量%未満含有する担体、
b)白金を、触媒全体に対し0.001〜0.1重量%の範囲の量、
c)錫を、触媒全体に対し0.01〜0.5重量%の範囲の量、
含有する触媒組成物を提供する。
【0014】
また本発明は、シリカ、ジルコニア及びチタニアから選ばれたバインダー30重量%以上、ペンタシルゼオライト20重量%以上、及び他の任意成分10重量%未満を配合する工程、所望ならば得られた混合物を造形する工程、及び0.001〜0.1重量%の範囲の量の白金及び0.01〜0.5重量%の範囲の量の錫と混合、構成する(compositing)工程を含む、該触媒組成物の製造方法を提供する。
【0015】
また本発明は、エチルベンゼン含有供給原料、好ましくは、キシレン及びエチルベンゼンを含むC〜C芳香族を有する供給原料を水素の存在下、本発明の触媒組成物と接触させる工程を含む、エチルベンゼンのジアルキル化方法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
発明の詳細な説明
本発明の触媒組成物は、従来の触媒では好ましいバインダーであるアルミナを含むアルミナ結合ゼオライトを用いた類似の触媒と比較して、同等の活性及びベンゼン純度でキシレンの損失減量を減少させると共に、高度のベンゼン選択性を示すことが見出された。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の触媒組成物において、シリカはバインダーとして使用され、天然産のシリカでもよいし、或いはゼラチン状沈殿、ゾル又はゲルの形態であってもよい。シリカの形態は限定されず、各種形態、即ち、結晶質シリカ、ガラス質シリカ又は非晶質シリカのいずれであってもよい。用語“非晶質シリカ”は、沈降シリカ及びシリカゲル、或いは熱分解法又はヒュームドシリカを含む湿式法タイプを意味する。シリカゾル又はコロイド状シリカは、非晶質シリカの、一般にアニオン、カチオン又はノニオン材料で安定化された非沈降性分散液で、液体は、通常、水である。
【0018】
シリカバインダーは、好ましくは2種類のシリカの混合物、最も好ましくは粉末形シリカとシリカゾルとの混合物である。粉末形シリカは、B.E.T.表面積が50〜1000m/gの範囲、平均粒度が2〜200μm、好ましくは2〜100μm、更に好ましくは2〜60μm、特に2〜10μmの範囲(いずれもASTM C690−1992又はISO 8130−1で測定)が都合良い。極めて好適な粉末形シリカ材料は、Degussaから得られる、主として球形粒子である白色シリカ粉末からなるSipernat(商品名)50である。極めて好適なシリカゾルは、Eka Chemicalsから商品名Bindzilで販売されているものである。混合物が粉末形シリカ及びシリカゾルを含む場合、これら2成分は、粉末形対ゾル形の重量比が1:1〜10:1、好ましくは2:1〜5:1、更に好ましくは2:1〜3:1の範囲で存在してよい。バインダーも粉末形シリカだけで本質的に構成してよい。
【0019】
本発明の触媒組成物にバインダーとして粉末形のシリカを用いる場合、平均粒径がASTM C690−1992で測定して2〜10μmの範囲の小粒状形を用いるのが好ましい。このような材料により、更に担体強度が向上することが見出された。極めて好適な小粒状形は、デグサから商品名Sipernat 500LSとして得られるものである。
【0020】
シリカ成分は他の無機酸化物中の一成分としてではなく、純粋なシリカとして使用することが好ましい。シリカ、実際には担体は、他の無機酸化物バインダーを本質的に含まず、特にアルミナを含まないことが最も好ましい。アルミナは、担体全体に対し、多くとも最大2重量%存在するにすぎない。
【0021】
表面改質脱アルミ化処理を利用する好ましい実施態様では、アルミナ担体により、表面改質が担体の物理的保全性に悪影響を与えるので、アルミナの存在は特に有害である可能性がある。
【0022】
ペンタシルゼオライトは当業者に周知である。“ペンタシル”とは、通常、シリカ対アルミナ比(SAR)が12以上であることを特徴とし、5員環(その骨組は5−1副建造(secondary building)単位から組立てられる)で構成される1組の形状選択性ゼオライトを説明するのに使用される用語である。本発明で使用されるペンタシルゼオライトのSARは、20〜150の範囲である。このSARは、ゼオライトが自由な形態又は触媒の形態で受けた何らかの処理に従って、骨組SARと異なっていても或いは同一でもよい見かけの(bulk)又は全体のシリカ/アルミナ比である。
【0023】
ペンタシルゼオライトのうち、好ましいゼオライトは、ZSM−5、ZSM−8、ZSM−11、ZSM−12、TON、例えばZSM−22、ZSM−23、ZSM−35、例えばフェリエライト、及びZSM−48であり、MFI構造を有するもの、特にZSM−5が最も好ましい。これらのゼオライトはいずれも周知であり、文献、例えばゼオライト構造のデータベース:http://www.iza−structure.org/databases/又はBaerlocher等“Atlas of zeolite framework types(ゼオライトの骨組型の図解書)”,第5改訂版(2001),International Zeolite Association(国際ゼオライト協会)のStructure Commission(構造委員会)の代理として出版、Eisevierによる、に記載されている。ペンタシルゼオライトは、http://www.iza−structure.org/databases/Catalog/Pentasils.pdf.のデータベースで論評されている。
【0024】
このようなゼオライトは、ゼオライト構造のカチオン部位に存在するイオンに応じて種々の形態で存在する。一般に利用可能な形態は、カチオン部位にアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、或いは水素又は水素前駆体イオンを含む。本発明の触媒組成物ではゼオライトは、水素又は水素前駆体を有する形態で存在し、この形態は一般にH形態として知られている。ゼオライトは、原型(template)を含まないか、又は含む形態のいずれも使用できる。製造中、原型含有形態を用いると、キシレンの損失低下に若干有利であることが見出された。
【0025】
このようなゼオライトのSARは、好ましくは25以上、最も好ましくは30以上、好ましくは100以下、最も好ましくは90以下、特に50以下である。ゼオライト原料は多くの粒度範囲で存在し得る。ゼオライトの主要の粒径は、20nm〜10μmの範囲である。有用な触媒は、平均微結晶サイズが1〜10μmの範囲の大結晶サイズのZSM−5ゼオライト及び更に主要粒径が200mm未満の小粒度ZSM−5を用いて製造された。一般に粒度分布についてはZSM−5は、粒子の50%の直径D(v、0.5)が2μmよりも大きく、かつ粒子の90%の直径D(v、0.9)が30μmよりも小さい粒度分布を持っていてよい。
【0026】
好適なZSM−5材料は、Atlas,or Databese of Zeolite Structures(ゼオライト構造の図解書)又はデータベースに挙げられた文献、例えば米国特許第3,702,886号、その他、Yu等によるMicroporous and Mesoporous Materials 95(2006)234〜240及びIwayama等のUS−A−4,511,547のような文献に記載されている。
好適なZSM−5のグレードとしては、Zeolyst Internationalから市販されているCBV 3014E、CBV 8014及びCBV 3020Eがある。
【0027】
ゼオライトは、本発明の触媒組成物により示される活性及び選択特性の重要な要因となる。所望の活性と選択性との間にはバランスがあり、このバランスによっては、使用されるゼオライト及びこのゼオライトのSARに応じて、担体中の最適ゼオライト含有量が異なってくるかも知れない。一般にゼオライト含有量が多いと、幾つかの場合、触媒組成物から高活性を得るのに有利かも知れず、一方、ゼオライト含有量が少ないと、高活性が得られるかも知れない。
【0028】
SARが40のZSM−5ゼオライトを使用すると、ゼオライト含有量の減少によりベンゼン選択率が向上し、またキシレンの損失が減少するが、エチルベンゼンについて同じ転化率を達成するのに高温が必要であることから、活性低下の不利を招く。SARの高いゼオライトを使用する場合、最適性能を得るには、触媒担体中のゼオライトの割合を増大させる必要がある。
【0029】
このバランスは、エチルベンゼンの脱アルキル化方法で使用される条件に応じて、最適量を変えるが、触媒担体中のゼオライト量が多いと、強度低下のような触媒担体の物性に悪影響を与える可能性があるので、触媒担体中に使用されるゼオライト量は、最小にすることが好ましい。一般に担体は、好ましくは30〜80重量%、最も好ましくは50〜70重量%の範囲のシリカ及び好ましくは20〜70重量%、最も好ましくは30〜50重量%の範囲のゼオライトで構成される。
【0030】
本発明にとって極めて好適な触媒担体は、SARが20〜50、特に30〜40の範囲のペンタシルゼオライト、特にZSM−5を20〜50重量%、特に25〜40重量%の範囲の量で含有する。
【0031】
担体中にはバインダー、好ましくはシリカ、及びペンタシルゼオライト以外の他の成分はないことが好ましい。しかし、本発明の利点を得ながら、他の成分を10重量%以下含有することは可能である。このような他の成分は、他の耐火性無機酸化物バインダー材料及び他のゼオライトから選択してよい。他のバインダー材料はアルミナ及びマグネシアであってよい。他のゼオライトの例は、8、10又は12員環ゼオライト、例えばモルデナイト、ゼオライトβ、及びMCMシリーズのゼオライト、例えばMCM−22及びMCM−41のような酸性中間細孔材料である。
【0032】
担体は造形担体が都合良く、ゼオライト成分の活性を高めるため、処理してよい。US−B2−6,949,181に記載されるような表面改質を行うのが有利であることが見出された。
【0033】
モレキュラシーブの改質は、アルミナのモル%を減少させるもので、これは基本的に酸部位の数が減少することを意味する。この改質は種々の方法で実施できる。第一の方法は、モレキュラシーブの微結晶の表面に低酸性度無機耐火性酸化物のコーティングを施すことである。この目的に好適な無機酸化物はシリカ、ジルコニア又はチタニア、好ましくはシリカである。微結晶表面にこのようなコーティングを施すと、改質モレキュラシーブ(即ち、元のモレキュラシーブ+コーティング)中の酸化物部分の総数は増加するが、アルミナ部分の数は同じのままであり、こうしてアルミナのモル%は低下する。この方法の大きな利点は、モレキュラシーブ微結晶表面上の酸部位の数が劇的に減少し、本質的にゼロになることである。
【0034】
モレキュラシーブの他の極めて有用な方法は、脱アルミ化処理を施すことである。一般にモレキュラシーブ微結晶の脱アルミ化は処理と言う。これにより、アルミニウム原子は、モレキュラシーブの骨組から欠陥を残して引抜かれるか、或いは珪素、チタン、ホウ素、ゲルマニウム又はジルコニウムのような他の元素により引抜かれるか置換される。脱アルミ化は、当該技術分野に公知の方法で達成できる。特に有用な方法は、モレキュラシーブの微結晶表面で脱アルミ化が選択的に起こるか、選択的に起こることを要求する方法である。即ち、この方法では、コートしたモレキュラシーブと同じ効果が得られ、微結晶表面の酸部位の数は減少する。
【0035】
米国特許第5,157,191号にはアルミノシリケートゼオライトの表面を脱アルミ化する極めて好適な方法が記載されている。この方法ではゼオライトを、ヘキサフルオロシリケートの水溶液、最も有利にはアンモニウムヘキサフルオロシリケート(AHS)と接触させて、ゼオライトの表面に位置するアルミニウム原子を抽出し、これを珪素原子と置換する。この米国特許には、オレフィンの形状選択的オリゴマー化による高粘度潤滑油の製造を含む幾つかの炭化水素転化反応、分解、キシレンの異性化、トルエンの不均化及び芳香族のアルキル化と共に、表面改質ゼオライトは、触媒として有効に使用できることが記載されている。
【0036】
米国特許第5,242,676号にはゼオライト微結晶の表面を脱アルミ化する他の方法が開示されている。この方法では、ゼオライトを、ジカルボン酸と、好適には水溶液状のジカルボン酸と、50%未満の全脱アルミ化により表面酸性度が40%以上低下するのに充分な時間接触させる。極めて好適なジカルボン酸は蓚酸であり、一方、好適なゼオライトは拘束指数が1を超えることが必要で、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−23及びZSM−35を挙げている。
【0037】
更に米国特許第4,088,605号には脱アルミ化外表面を有するゼオライトを得る他の方法が開示されている。この“現場脱アルミ化”法によれば、アルミニウムを含まないシリカ外殻を有するゼオライトは、(i)結晶化媒体中で結晶化を開始してゼオライトを形成する段階及び(ii)結晶媒体を変えて内部のアルミニウムを実質的に除去する段階であって、好適には結晶化混合物に錯化剤を加えて、存在するアルミニウムイオンと錯体を形成し、形成された錯体を実質的に除去する該段階を含む2段階法により製造される。好適な錯化剤の例は、グルコン酸、酒石酸及びエチレンジアミン四酢酸(EDTA)である。この方法で製造できるアルミニウムを含まない外殻を有するゼオライトとしてはZSM−5及びZSM−35がある。
【0038】
前述の(表面)脱アルミ化法のうち、ヘキサフルオロシリケート、最も好適にはアンモニウムヘキサフルオロシリケートによる処理を含む方法は、更に利点のあることが見出された。ゼオライトをバインダーと一緒に又はバインダーなしで押出して得られるアルミノシリケートゼオライト押出物をAHSで処理すると、予想した脱アルミ化外表面の他に、機械強度が向上した押出物も得られることが見出された。この機械強度の向上は、特にゼオライトをシリカバインダーと一緒に押出して得られた押出物に顕著である。
【0039】
アルミノシリケートゼオライトの脱アルミ化すると、ゼオライトに存在するアルミナ部分の数が減少するので、アルミナのモル%が低下する。アルミナのモル%低下に極めて良好な尺度は、脱アルミ化の結果としてのゼオライトのシリカ対アルミナ(SiO/Al)モル比の増加である。本発明目的には、表面脱アルミ化ゼオライト(即ち、脱アルミ化後)のSiO/Alモル比対出発ゼオライト(即ち、脱アルミ化前)のSiO/Al)モル比として定義される脱アルミニウム比が、好適には1.1〜3.0、好ましくは1.3〜2.5、なお更に好ましくは1.5〜2.2の範囲である。したがって、ゼオライト微結晶表面の選択的脱アルミ化は、ゼオライト微結晶の内部構造に影響を与えることなく、ゼオライト微結晶の表面酸部位の数も減少させる。微結晶表面の脱アルミ化の程度は、脱アルミ化処理の厳密性による。ゼオライト表面の酸部位の数は、好適には70%以上、好ましくは80%以上、なお更に好ましくは90%以上減少する。最も好ましい実施態様では表面酸部位の数は、選択的脱アルミ化により本質的に100%減少し、こうして本質的に全く表面酸部位は残存しない。
【0040】
担体に対する表面改質は、ただ1回だけ適用してもよいし、或いは2回以上適用してもよい。しかし、我々は繰り返し適用に何らの利点も見出せなかった。しかし、AHSの濃度は影響を与えるものと思われる。活性成分(AHS)の濃度は好ましくは0.005〜0.5Mの範囲である。この濃度は好ましくは0.01〜0.2M、更に好ましくは0.01〜0.05M、特に0.01〜0.03Mの範囲であり、以上の範囲で活性が向上した触媒組成物が得られることが見出された。
【0041】
疑問を避けるため、表面改質処理が担体表面上に珪素を残して起きた場合、及びシリカをバインダーとして使用した場合、通常、この珪素含有量は僅かな量であるが、本発明による担体のシリカ含有量の一部を形成しない。
【0042】
例えば押出物のような造形の形態では、担体は一般にB.E.T.表面積が100〜400m/g、好ましくは130〜300m/g、更に好ましくは150〜250m/gの範囲内であり、水銀浸出法による細孔容積は0.2〜1.2ml/g、好ましくは0.4〜1.0ml/g、更に好ましくは0.5〜0.9ml/gの範囲である。平板圧潰強度は、一般に50N.cm−1以上、好ましくは70N.cm−1以上、更に好ましくは80N.cm−1以上である。一般には例えば50〜300N.cm−1、好ましくは70〜250N.cm−1、更に好ましくは80〜200N.cm−1のオーダーである。
【0043】
本発明の触媒組成物は、白金及び錫の形態で金属成分も含有する。白金成分は触媒全体に対し0.001〜0.1重量%の範囲の量で存在し、錫成分は触媒全体に対し0.01〜0.5重量%の範囲の量で存在する。白金成分は最も好適には0.01〜0.1重量%、好ましくは0.01〜0.05重量%の範囲の量で存在する。錫成分は最も好適には0.1〜0.5重量%、好ましくは0.2〜0.5重量%の範囲の量で存在する。
【0044】
本発明の触媒組成物のB.E.T.表面積、細孔容積及び平板圧潰強度については、担体と同様な特性を有する。
【0045】
本発明の触媒組成物は、ゼオライト、シリカのようなバインダー、及び任意の他の担体成分を配合し、金属成分を混合し、次いで乾燥、焼成及び還元のような任意の有用な工程段階を含む標準的な技術を用いて製造してよい。
【0046】
造形は、粉末、押出物、ピル、粒状体のようないかなる都合の良い形態であってもよい。押出による造形が優先的である。押出物を作るには、通常、ペンタシルゼオライトをバインダー、好ましくはシリカと配合し、必要ならば解膠剤と混合し、ドウ又は厚いペーストを形成する。解膠剤は、混合物のpHを固体粒子の脱アルミ化を誘引するのに充分に変化させるいかなる材料であってもよい。解膠剤は周知で、硝酸のような有機及び無機酸、アンモニア、水酸化アンモニウム、アルカリ金属水酸化物、好ましくは水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム、アルカリ土類水酸化物及び有機アミン、例えばメチルアミン及びエチルアミンが挙げられる。アンモニアは好ましい解膠剤で、いかなる好適な形状、例えばアンモニア前駆体経由で供給してよい。アンモニア前駆体の例は、水酸化アンモニウム及び尿素である。適切なpH変化に関与するため、追加のアンモニアをなお使用してよいが、特にシリカゾルを使用した場合、アンモニアをシリカ成分の一部として存在させることも可能である。押出し中存在するアンモニアの量は、有利な特性を付与できる押出物の細孔構造に影響を与えることが判明した。好適には押出し中に存在するアンモニアの量は、乾燥混合物全体に対し、乾燥基準で好適には0〜5重量%、好ましくは0〜3重量%、更に好ましくは0〜1.9重量%の範囲である。
【0047】
形成された担体上に金属を設ける(emplacement)のは当該技術分野で有用な方法で行い得る。金属は造形前に担体材料に沈着できるが、造形担体上に沈着させることが好ましい。
【0048】
金属塩溶液からの金属の細孔容積含浸は、造形担体に金属を設けるのに極めて好適な方法である。金属塩溶液のpHは、1〜12の範囲であってよい。都合よく使用できる白金塩は、クロル白金酸及びアンモニウム安定化白金塩である。使用される好適な錫塩の例は、塩化第一錫(II)、塩化第二錫(IV)、硫酸第一錫、及び酢酸第一錫である。これらの金属は、造形担体上に連続的に又は同時に含浸してよい。同時含浸を使用する場合は、使用する金属塩は、相溶性が必要で、金属の沈着を妨害してはならない。望ましくない金属の沈殿を防止するため、白金/錫配合溶液中に錯化剤又はキレート化剤を用いるのが有利であることが見出された。好適な錯化剤の例は、EDTA(エチレンジアミンテトラ酢酸)及びその誘導体、HEDTA(N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン−N,N‘,N’−テトラ酢酸)、EGTA(エチレングリコール−ビス(2−アミノエチルエーテル−N,N,N‘,N’−テトラ酢酸)、DTPA(ジエチレントリジアミンペンタ酢酸)、及びNTA(ニトリロトリ酢酸)である。EDTAを使用する場合、錫に対するモル比で0.1〜3、特に1〜2の範囲で使用するのが都合よい。
【0049】
触媒の造形後、また金属の含浸後、担体/触媒組成物は、好適には乾燥焼成する。乾燥温度は好適には50〜200℃、乾燥時間は好適には0.5〜5時間である。焼成温度は極めて好適には200〜800℃、好ましくは300〜600℃の範囲である。担体の焼成には比較的短時間、例えば0.5〜3時間必要である。触媒組成物の焼成には、金属の最適分散を確保するため、低加熱速度で制御された温度傾斜を使用する必要があるかもしれない。このような焼成は5〜20時間必要としてよい。
【0050】
使用前に触媒組成物の金属が金属の形態(また酸化物の形態ではない)ことを確保する必要がある。したがって、組成物に対し還元条件を施すのが有利である。このような還元条件は例えば任意に不活性ガス又は不活性ガス混合物、例えば窒素及び二酸化炭素で希釈した水素のような還元雰囲気中、150〜600℃の範囲の温度で0.5〜5時間加熱する。
本発明の触媒組成物は、特にエチルベンゼンの選択的脱アルキル化用である。
【0051】
エチルベンゼン供給原料は、最も好適には改質ユニット又はナフサ熱分解ユニットに直接由来するか、或いはキシレン異性化ユニットの流出流である。このような供給原料は、通常、C〜C炭化水素、特にエチルベンゼンの他、キシレン、m−キシレン、p−キシレン、トルエン、及びベンゼンを含有する。一般に供給原料中のエチルベンゼンの量は、0.1〜50重量%の範囲であり、合計キシレン含有量は通常、20重量%以上である。通常、キシレンは熱力学的平衡状態ではなく、したがってp−キシレンの含有量は、他の異性体よりも少ない。
【0052】
供給原料は水素の存在下で触媒組成物と接触する。この接触は固定床システム、移動床システム、又は流動床システムで行ってよい。このようなシステムは、連続又はバッチ方式で操作してよい。好ましくは固定床システムでの連続操作である。触媒は、1つの反応器又は直列の幾つかの別の反応器でもよいし、或いは触媒の取替え(change out)中、連続操作を確保するため、スイング(予備接触反応)システムを使用してよい。
【0053】
本方法は好適には300〜500℃の範囲の温度、0.1〜50バール(10〜5,000kPa)の範囲の圧力、液体の時間当たり空間速度0.5〜20h−1を用いて行われる。水素の分圧は一般に0.05〜30バール(5〜3,000kPa)の範囲で使用される。原料対水素のモル比は、0.5〜100、一般には1〜10モル/モルの範囲である。
本発明を以下の実施例により説明する。
【実施例】
【0054】
実施例、その他で述べる試験は以下の試験法が適用できる。
平板圧壊強度:ASTM D6175
多孔度:測定前にサンプルを300℃で60分乾燥し、水銀侵入法を用いるASTM D4284
【0055】
B.E.T.表面積測定:測定前にサンプルを300℃で60分乾燥し、吸着質として窒素を用いる、ISO 9277で改訂されたASTM D3663−99
水細孔容積:サンプルを300℃で1時間乾燥し、秤量後、サンプルに水を添加する。水の添加は、細孔を充填し、サンプル粒子は濡れるが、なお自由に流動するまでとする。サンプルを再び秤量し、2つの秤量した重量から単位質量当たり吸収された水の量を計算する。
以下の実施例では特に注記しない限り、ゼオライトはH形態で使用し、また型板(template)材料は含有しない。
【0056】
例1(実施例)
触媒1
Iwayama等のUS−A−4,511,547の方法に従って製造した、平均微結晶サイズが1〜10μmでシリカ対アルミナ嵩比が40のZSM−5構造を有する大微結晶サイズゼオライトから担体を製造した。このゼオライト粉末を低ナトリウムグレードのシリカ(DegussaからSipernat 50)及び市販のアンモニウム安定化シリカゾル(Eka Chemicalsから商品名Bindzilで販売)と混合し、次いで乾燥基準で1.5重量%水酸化アンモニウム溶液(アンモニア25重量%含有)を用いて押出し、乾燥基準で40重量%ゼオライト、40重量%Sipernat 50及び20重量%シリカゾルよりなる担体を得た。
【0057】
生の押出物を乾燥し、600℃より高温で1時間焼成し、工業的利用に充分な強度を持たせた。
得られた担体の水細孔容積は0.65ml.g−1であった。この触媒は、水銀細孔法で測定して、細孔容積0.55ml.g−1、B.E.T.表面積198m.g−1を示した。平板圧壊強度は109N.cm−1であった。
【0058】
担体をpH2未満のPt/Sn溶液で細孔容積含浸した。この溶液はHPtCl及びSnCl.2HOから製造した。両金属の濃度は、触媒全体に対し、Pt/Sn濃度が0.025/0.4重量%の最終触媒が得られるような濃度とした。含浸終了後、125℃で3時間半乾燥し、次いで480℃を目標とする2段階焼成計画、即ち、300℃で中間停止し、その後は金属相の充分な分散を行うのに充分低い傾斜速度で焼成した。全体の焼成方法は17時間で終了した。
【0059】
例2(比較例)
触媒2
シリカ及びシリカゾルをSasol製アルミナ粉末(商品名Pural SB1)と置換した代りの担体製造法に従って例1と同じゼオライトを製造した。ゼオライトの量は変えずそのままなので、得られた担体(乾燥及び焼成後)のゼオライト含有量は40重量%で、残部はアルミナであった。担体を細孔容積含浸(例1で製造した白金及び錫塩溶液を使用)後、乾燥し、例1に記載の方法で焼成して、触媒全体に対し、Pt/Sn濃度が0.025/0.4重量%の最終触媒を得た。
【0060】
例3(比較例)
触媒3
例2と同様な方法で、同じゼオライトと、Pural SB1よりも表面積及び細孔容積の大きい、代わりの工業グレードのアルミナとを用いて、40重量%ゼオライト及び残部アルミナを含有する担体を製造した。この担体を細孔容積含浸し、乾燥し、例2と同じ方法を用いて焼成して、例1及び2と同じ金属荷重を有する触媒組成物を製造した。
【0061】
例4
触媒1、触媒2及び触媒3に、エチルベンゼンの脱アルキル化用の通常の工業的利用条件を模倣する接触試験を行った。この活性試験は、ヨーロッパ源の工業原料を使用する。ここで使用した原料の組成は表1に示すとおりである。
【0062】
【表1】

【0063】
活性試験は触媒を還元した状態で測定した。還元は乾燥焼成した触媒を450℃で1時間水素雰囲気(純度>99%)に曝して行った。
還元後、反応器を冷却工程なしで加圧し、原料を導入する。この工程は、触媒寿命の増進に寄与し、したがって、安定な操作で触媒の性能を比較できる。
【0064】
潜在的な負の操作効果を誇張する条件で接触データポイントを集める。したがって、性能は理想的な工業的操作条件ではなく、本発明で触媒を評価するために使用する種々の性能パラメーターを一層良好に区分する条件で測定される。
【0065】
この場合、条件は原料重量の時間当たり空間速度=4.6h−1、水素対原料比=2.5モル.モル−1、システム全体の圧力=1.3MPaを用いた。温度は、所要転化率に達するのを容易に比較できるように、360〜410℃に変化させた。
【0066】
性能特性は次のように評価した。
【数1】

【0067】
式中、EBはエチルベンゼン、Bはベンゼン、Tolはトルエン、cHxはシクロヘキサン、McPはメチルシクロペンタン、Xylは一般のキシレン(全ての異性体)、pXはp−キシレン、Ciprは生成物中のC〜Cからの全ての軽質炭化水素、fは原料、及びprは生成物を表す。
【0068】
エチルベンゼン転化率については、2℃を超える温度差が活性の顕著な向上を示し、ベンゼン選択率については、1モル%を超えるのが顕著であり、キシレンの損失減量は0.5以上の低下が顕著な向上である。ベンゼンの純度については、99.8重量%未満ならば更に精製工程を受けなければならないが、99.8重量%以上ならばそのまま純製品として販売できる。
【0069】
【表2】

【0070】
全ての試験中、キシレンの異性化も起こり、各ケースともp−キシレンの含有量はその平衡値の最小の98%(a minimum of 98% of)に達した。
表2は、同じ金属荷重でシリカ−及びアルミナ−結合担体を有する触媒の使用間に劇的な相違を示す。ベンゼン選択率はシリカ結合担体版では非常に高く、キシレン損失減量は著しく低い。
【0071】
全ての触媒について、ベンゼン純度は非常に高く、100重量%付近であり、芳香族環含有分子の飽和の代わりに、オレフィンの水素化に対するPt/Sn金属相の非常に良好な選択性を示している。エチルベンゼン転化率75重量%に必要な温度は、これら触媒の全体の脱アルキル化活性が全く同等であることを同様に示している。
【0072】
例5
触媒4
ゼオライトの含有量を変えた他は例1に記載の製造法に従って担体を製造した。この場合、ゼオライトの含有量は担体中に25重量%になるように設定した。担体のシリカ含有量は75重量%で、重量比2:1のシリカ(Sipernat 50)対シリカゾル(Bindzil)で構成した。担体の平板圧壊強度は152N/cmであった。
金属の含浸、乾燥及び焼成は例1と同じ方法で行った。
【0073】
例6(比較例)
触媒5
例5と同じゼオライト及びシリカ出発原料を用いて例5の方法に従って担体を製造した。得られた担体を、中性に近いpHを有するPt含有溶液で細孔容積含浸した。この溶液はPt(NH(OH)から作り、例5の場合と同等になるように溶液のイオン強度を増大させるのに充分なアンモニアを添加含有する。これは、例5で使用したPt/Sn含浸溶液に相当する塩含有量が存在したことを保証するために必要と考えられる。溶液の濃度は、最終触媒のPt含有量が200ppmw(重量ppm)(0.02重量%)となるように調整した。
細孔容積含浸触媒の乾燥及び焼成は例1と同様にして行った。
【0074】
例7
触媒1、4及び5のサンプルに対し、同じ原料を用いる例4に記載の活性試験を行った。表3に重要な性能パラメーターを示し、エチルベンゼン転化率レベル75重量%で比較した。
【0075】
【表3】

【0076】
各試験において、p−キシレンはその平衡値の最小の98%である量で生成した。
表3のデータは、明らかに担体中のゼオライト含有量を40重量%から25重量%(触媒1を触媒4と比較)に減少させる利点を示している。ベンゼン選択率及びキシレン損失減量は、同じエチルベンゼン転化率では著しく向上するが、エチルベンゼン転化率75重量%に必要な温度は上昇する。
【0077】
更に触媒4及び触媒5を比較すると、金属相が異なる場合、これら2つの25重量%ゼオライト含有システム間で同様な効果を示している。Pt/Sn配合物を有する触媒4は活性が低いが、これを非常に良好なベンゼン選択性、ベンゼン純度及び低いキシレン損失減量で補償している。Pt単独の触媒である触媒5は、触媒1と殆ど同様な高い活性を有するが、そのPt/Sn対応物に比べて選択率が低く、純度が低く、またキシレン損失減量が大きい。触媒5の白金は触媒1の白金に比較して僅かに減少しているが、その差(0.005重量%)は無視し得るもので、得られた結果に影響を与えるものではないことが注目される。
【0078】
例8
触媒6
例1の方法に従って担体を製造した。シリカ成分を除いて使用成分は全て同じである。シリカ成分はDegussaからSipernat 500LSとして市販されているSipernat 50の改訂版と置換した。このシリカ粉末は、粒子の大きな凝集物を除去するため、平均粒度2〜10μmに混練したものである。ゼオライト含有量は25重量%に減少させた。担体のシリカ/シリカゾル含有量は75重量%である。またシリカ/シリカゾルは、2:1の重量比で使用した。
【0079】
得られた担体の平板圧壊強度は191N.cm−1と著しく向上し、一方、他の物理的パラメーターは触媒1の測定値と近接していた。水細孔容量は0.65ml.g−1のままであり、水銀細孔法で測定した細孔容積は0.55ml.g−1であったが、B.E.T.表面積は253m.g−1に増大した。
【0080】
例9
触媒7
ゼオライトを、主粒径が200nm未満で、シリカ対アルミナ嵩比が30であるZSM−5(Zeolyst Internationalの商品名CBV 3020E)の小粒度版と置換した他は例5に記載の方法に従って担体を製造した。得られた担体は、ゼオライト25重量%及びシリカ75重量%で構成され、平板圧壊強度は123N/cmであった。
この担体を例1の製造処方に従って白金及び錫で含浸し、Ptを0.025重量%、Snを0.4重量%含有する触媒を製造した。
【0081】
例10
触媒8
例9に記載したようにして得た触媒の一部に対し、US 6,949,181 B2の実施例1に記載の表面改質法を行った。アンモニウムヘキサフルオロシリケートの濃度を0.02モルに設定した。次いで担体を洗浄し、500℃で乾燥した。
次に担体を例1に記載したようにPt/Sn溶液に含浸、乾燥、焼成して、Ptを0.025重量%、Snを0.4重量%含有する触媒を得た。
【0082】
例11
例9及び例10で製造した触媒サンプルを例4に記載した方法及び試験条件で試験した。重要な性能パラメーターを表4に示し、エチルベンゼン転化率75重量%のレベルで比較した。
【0083】
【表4】

【0084】
各試験において、p−キシレンはその平衡値の最小の98%である量で生成した。
表面改質がベンゼン選択率及びキシレン損失減量を劇的に変化させることは明らかである。しかし、エチルベンゼン転化率75重量%に必要な温度も僅かに上昇する。処理触媒の選択性パターンは、非常に魅力的であり、キシレンの損失減量は殆ど半分となる一方、ベンゼン純度は保持されている。ベンゼン純度は100モル%近くまで増大した。
【0085】
例12
触媒9
ゼオライトを例9の代わりのZSM−5ゼオライトで置換した他は例1に記載の方法に従って触媒担体を製造した。このゼオライトグレードは、アンモニウム形態で使用し、いかなる原型材料も含有しない。ゼオライト含有量は40重量%で、また合計シリカ含有量(w/wシリカ:シリカゾル、2:1)は60重量%であった。担体の平板圧壊強度は117N/cmを示した。
【0086】
この担体に対しUS 6,949,181 B2の実施例1に従って表面改質工程を行った。アンモニウムヘキサフルオロシリケートの濃度は0.02モルに設定した。
金属含浸工程、及び引き続く乾燥及び焼成工程は例1に記載した工程と同じである。最終触媒のPt含有量は0.025重量%、Sn含有量は0.4重量%であった。焼成により、アンモニウム形態のゼオライトはH形態に転化した。
【0087】
例13
触媒10
ZSM−5グレードをその原型含有版で使用した他は、例12に従って担体を製造した。他の製造工程は全て同じである。担体は、ゼオライトを40重量%及びシリカを60重量%(w/wシリカ:シリカゾル、2:1)含有していた。最終触媒の金属荷重は、Pt0.025重量%、Sn0.4重量%であった。表面改質処理前の担体の平板圧壊強度は82N/cmで、処理後、該強度は104N/cmに増大した。
【0088】
触媒11
この触媒は、触媒10で使用した方法に従ったが、金属含浸工程前に担体(原型含有ZSM−5を有する)に対し第二の表面改質工程を行った。他の製造工程は、例12に記載した工程と全て同じである。次の金属含浸工程は、触媒10で行った場合と同じである。担体は、ゼオライトを40重量%及びシリカを60重量%(w/wシリカ:シリカゾル、2:1)含有していた。最終触媒の金属荷重は、Pt0.025重量%、Sn0.4重量%であった。
【0089】
触媒12
更にこの担体の第三の変形を製造した。この場合、表面改質工程での活性剤の濃度は2倍にした。他の製造工程は全て同一である。得られた担体はゼオライトを40重量%及びシリカを60重量%(w/wシリカ:シリカゾル、2:1)含有していた。最終触媒の金属荷重は、Pt0.025重量%、Sn0.4重量%であった。
【0090】
例14
触媒13
ゼオライトをシリカ対アルミナ嵩比が80で主粒度が30〜100nmのZSM−5で置換した他は、表面改質処理を含めて例12に記載の方法に従って担体を製造した。担体のゼオライト含有量は60重量%に増加した。その他の製造工程は全て例12に記載したとおりに行った。担体のゼオライト含有量は60重量%、シリカ含有量は40重量%(w/wシリカ:シリカゾル、3:1)含有していた。最終触媒の金属荷重は、Pt0.025重量%、Sn0.4重量%であった。表面改質処理前の担体の平板圧壊強度は53N/cmで工業的利用には充分ではない。表面改質処理後、平板圧壊強度は69N/cmに増大した。これは商業用に受入れ可能である。
【0091】
例15
触媒9、10、11、12及び13を例4に記載の触媒活性試験で試験した。その結果をエチルベンゼン転化率50重量%のレベルで比較して表5に示す。
【0092】

【表5】

【0093】
各試験において、p−キシレンはその平衡値の最小の98%である量で生成した。
表5は、エチルベンゼンの脱アルキル化において、原型を含有しないか又は含有するゼオライトから製造した最終触媒のベンゼン選択性に対する活性又は性能に殆ど差が見られないことを示している。しかし、原型含有ゼオライト触媒は、キシレン損失減量が少ない。
【0094】
プロセスを繰り返して表面改質工程の厳密性を増大させると(触媒11)、全体の選択性に著しい向上が見られない上、触媒の活性に悪影響を与える(同じ転化レベルを得るのに必要な温度として示すように)。表面改質処理中、活性剤の濃度を高めると、キシレンの損失減量は触媒10に比べて向上しなかったが、一層活性な触媒が得られた。
【0095】
シリカ対アルミナ比の高いゼオライト(触媒13)は、非常に魅力的な性能を示したが、良好な選択性を確保するにはゼオライト量を増加する必要がある上、表面改質しない触媒の強度は、商業用に不満足であることに注目しなければならない。
【0096】
例16
触媒14
Pt/Sn溶液を中和し、金属の沈殿を防止するため、錯化剤EDTAを該溶液に加えた他は、同じゼオライト及びシリカを同じ量用いて例1に記載の方法に従って担体を製造した。EDTA/Snモル比2で安定な溶液が得られた。この溶液を用いて、例1と同じ金属荷重を得るため、担体を白金及び錫で含浸した。
【0097】
例17
押出中、解膠助剤としてアンモニア量を変化させた他は例1に従って2種の触媒を製造した。得られた担体の細孔構造に劇的な差が観察された。担体押出物は、例1に記載したとおり最終触媒に転換した。
【0098】
例1の方法に従って2種のサンプル担体を製造した。サンプルNo.1については、乾燥基準で1.6重量%NHOH溶液(アンモニアを25重量%含有)を押出物に添加した。サンプルNo.2については、同じNHOH溶液2.0重量%を固形物に添加した。各サンプル触媒は、例1と同じ金属を同量用いて製造した。
同じ原料を用いる例4に記載の活性試験に従って接触試験を行った。表6に多孔度データ及び接触結果を示す。
【0099】

【表6】

【0100】
各試験において、p−キシレンはその平衡値の最小の98%である量で生成した。担体の表面積は変化しなかったが、細孔容積(水又は水銀多孔度計で測定)は高NH押出後、実質的に増大し、また中間細孔径は殆ど2倍になり、いずれも多孔度の劇的シフトを示している。
【0101】
エチルベンゼン転化率75重量%に必要な温度は“高NH”から得られる触媒(サンプルNo.2)ではサンプルNo.1から製造した触媒より−5℃高かった。これは、キシレンの損失減量が1重量%を超える程度、増大するので、活性が低く、ベンゼン選択率も低いことを示す。適用した金属相に関連するベンゼン純度は、それほど低下しなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0102】
【特許文献1】EP−A−0018498
【特許文献2】EP−A−0425712
【特許文献3】WO 00/38834
【特許文献4】US−A−3,992,468
【特許文献5】米国特許第3,702,886号
【特許文献6】US−A−4,511,547
【特許文献7】US−B2−6,949,181又はUS 6,949,181 B2
【特許文献8】米国特許第5,157,191号
【特許文献9】米国特許第4,088,605号
【0103】
【非特許文献1】Toppi等,Journal of Catalysis 210,431−444(2002)
【非特許文献2】http://www.iza−structure.org/databases
【非特許文献3】Baerlocher等“Atlas of zeolite framework types(ゼオライトの骨組型の図解書)”,第5改訂版(2001),Inteernational Zeolite Association(国際ゼオライト協会)のStructure Commision(構造委員会)の代理として出版、Eisevierによる
【非特許文献4】http://www.iza−structure.org/databases/Catalog/Pentasils.pdf.
【非特許文献5】Yu等によるMicroporous and Mesoporous Materials 95(2006)234〜240

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)シリカ、ジルコニア及びチタニアから選ばれたバインダーを、担体全体に対し30重量%以上、シリカ対アルミナの嵩比が20〜150の範囲にあり、かつH形態であるペンタシルゼオライトを20重量%以上、及び他の成分を10重量%未満含有する担体、
b)白金を、触媒全体に対し0.001〜0.1重量%の範囲の量、
c)錫を、触媒全体に対し0.01〜0.5重量%の範囲の量、
含有する触媒組成物。
【請求項2】
前記担体が、30〜80重量%の範囲のシリカ及び20〜70重量%の範囲のゼオライトからなる請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項3】
前記担体は、アンモニウムヘキサフルオロシリケートによる脱アルミ化処理が施されている請求項1又は2に記載の触媒組成物。
【請求項4】
前記ペンタシルゼオライトがMFI構造を有するものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の触媒組成物。
【請求項5】
前記MFI構造を有するペンタシルゼオライトがZSM−5である請求項4に記載の触媒組成物。
【請求項6】
前記ZSM−5が20〜50の範囲のシリカ対アルミナ比(SAR)を有し、かつ担体中に20〜50重量%の範囲の量で存在する請求項5に記載の触媒組成物。
【請求項7】
前記シリカが、2〜60μmの範囲の平均粒度を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の触媒組成物。
【請求項8】
シリカ、ジルコニア及びチタニアから選ばれたバインダー30重量%以上、ペンタシルゼオライト20重量%以上、及び他の任意成分10重量%未満を配合する工程、所望ならば得られた混合物を造形する工程、及び0.001〜0.1重量%の範囲の量の白金及び0.01〜0.5重量%の範囲の量の錫と混合、構成する工程を含む、請求項1に記載の触媒組成物の製造方法。
【請求項9】
エチルベンゼン含有供給原料を水素の存在下、請求項1〜7のいずれか1項に記載の触媒組成物又は請求項8に記載の方法で製造した触媒組成物と接触させる工程を含む、エチルベンゼンのジアルキル化方法。



【公表番号】特表2010−534567(P2010−534567A)
【公表日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518641(P2010−518641)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【国際出願番号】PCT/EP2008/059850
【国際公開番号】WO2009/016143
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(390023685)シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ (411)
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
【Fターム(参考)】