触媒酸化処理装置および触媒酸化処理方法
【課題】軽量、コンパクトでランニングコストも安く、しかも触媒毒に対しての劣化を抑制することができる触媒酸化処理装置および触媒酸化処理方法を提供する。
【解決手段】排ガス中に含まれる揮発性有機化合物を酸化触媒により酸化分解する処理装置において、上記排ガス中に微量含まれる触媒毒を除去するための前処理触媒3aが排ガス処理方向上流側に設けられるとともに、上記前処理触媒3aと上記酸化触媒2aとを結ぶガス流路に、上記前処理触媒からの排ガス温度を下げる冷却手段5が介設されていることを特徴とする。
【解決手段】排ガス中に含まれる揮発性有機化合物を酸化触媒により酸化分解する処理装置において、上記排ガス中に微量含まれる触媒毒を除去するための前処理触媒3aが排ガス処理方向上流側に設けられるとともに、上記前処理触媒3aと上記酸化触媒2aとを結ぶガス流路に、上記前処理触媒からの排ガス温度を下げる冷却手段5が介設されていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性有機化合物の処理装置に関し、特に、排ガス中に触媒毒が微量含まれる場合においても触媒の劣化を抑制することができ、経済的且つ低コストで処理可能な触媒酸化処理装置および触媒酸化処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な産業において、製造工程から排出されるガス中には有害成分や悪臭成分が含まれている場合がある。
【0003】
例えば、塗装工場、印刷工場、フィルムのラミネート工場などではトルエン、イソプロピルアルコール(IPA)、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸エチルなどの揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compound)を使用しており、製造装置や設備などからVOC含有ガスを排出している。
【0004】
大気汚染防止の観点から、VOCを使用する工程においては、環境に与える負荷を低減するため、工程から発生するVOCガスをできる限り分解または除去して排出しなければならない。
【0005】
このようなVOCガス成分を分解または除去するガスの浄化方法としては、ガスを直接、バーナーなどで燃焼する直接燃焼方式、触媒により燃焼を行う触媒燃焼方式、蓄熱材で予熱して燃焼させる蓄熱燃焼方式などが知られている。
【0006】
上記触媒燃焼方式の装置概略を図12に示す。
【0007】
同図に示す触媒燃焼装置は、中温(250〜350℃程度)で用いられるものであり、排ガス導入口50から導入された排ガスEGは、炉室51内に配置されたヒータ52によって加熱された後、触媒53に導入されて酸化分解され、排ガス排出口54から放出されるようになっている。
【0008】
触媒53で排ガスEGを酸化分解するのに用いられた熱は直接燃焼方式に比べて低温である。
【0009】
直接燃焼方式または触媒燃焼方式において、希薄な可燃成分を処理する場合に望まれることは、放出される排ガス温度を低下させると共に、消費エネルギー量を抑制してランニングコストを低減させることである。
【0010】
一方、蓄熱燃焼方式は上記した他の燃焼方式と比較してイニシャルコストは高いものの、高い熱回収率を得ることができ(一般に85%以上)、上記触媒燃焼方式に比べ消費エネルギーを半分程度に抑制できるという利点がある。
【0011】
図13は従来の蓄熱燃焼方式の装置概略を示したものである。
【0012】
同図において、蓄熱燃焼方式では炉室55に対して二塔のガス流路を設けており、バーナー56で排ガスを燃焼浄化した後、浄化部の下流側にセラミックハニカムなどの蓄熱材57を設置することで排熱を吸収するように構成されている。そして、ガス供給方向を反転させる(実線矢印で示すA方向から破線矢印で示すB方向)ことで、蓄熱材57に保持された熱を再び炉室55で利用し、反対側に設けられた蓄熱材58で排熱を回収する操作を繰り返す(例えば特許文献1参照)。
【0013】
なお、図中、59は排ガス導入口(または排ガス排出口)、60は排ガス排出口(または排ガス導入口)である。
【0014】
また、上記触媒燃焼方式に用いられる接触酸化分解反応用触媒としては、低温で高い酸化分解活性を有するもの、具体的には、白金などの貴金属を活性成分とし、これをアルミナなどの触媒担体に担持させたものが使用されている。
【0015】
これらのいわゆる貴金属系触媒は、有機シリコン等の被毒物質に影響されやすく、排ガス中にこれらの被毒物質が微量に混入するだけでも酸化活性が大きく低下するという欠点を有している。しかし、有機シリコン化合物に対し、充分に優れた耐久性を有する触媒の開発はなされていないのが現状である。
【0016】
そこで触媒劣化防止のため、触媒前段に吸着材を設置することにより有機シリコン化合物を吸着除去する方法が広く採用されている。
【特許文献1】特開平11―44416号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、一般に、吸着材によって有機シリコン化合物を除去する方法は、吸着材における吸着量が飽和に達すると吸着材の交換、または再生による吸着物の除去が必要となるため、浄化システムの必要性能を維持するには吸着材を定期的に交換しなければならずランニングコストが高くつくという問題があった。
【0018】
一方、酸化分解過程において昇温されたガスの熱を回収し未処理排ガスの予熱源として再利用する、蓄熱燃焼方式によるガス浄化処理方法は、ランニングコストの面では他のガス浄化処理方法よりも有利であるが、省エネルギーに有効な上記蓄熱燃焼方式も、下記に示す課題を有している。
【0019】
すなわち、排ガスが保持している熱を蓄熱燃焼方式で有効に吸収しようとしても、顕熱蓄熱材の熱容量が限られているため、高い熱効率を得るためには多量の顕熱蓄熱材が必要となり、結果として装置重量や大きさが拡大してしまい設置場所が限られてしまうこと。加えて、大きな熱容量を有するため、装置が安定するまでに時間がかかるということである。
【0020】
本発明は、上述した従来の燃焼式ガス浄化装置に係る課題を考慮してなされたものであり、軽量、コンパクトに構成することができてイニシャルコスト、ランニングコストを抑制することができ、しかも有機シリコン化合物等の触媒被毒物質を含有する排ガスに対しても、より長時間、高い浄化率を維持することのできる触媒酸化処理装置および触媒酸化処理方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
(a)触媒酸化処理装置
本発明の触媒酸化処理装置は、排ガス中に含まれる揮発性有機化合物を酸化触媒により酸化分解する触媒酸化処理装置において、前記排ガス中に微量含まれる触媒毒を除去するための前処理触媒が、排ガス処理方向上流側に設けられるとともに、前記前処理触媒と前記酸化触媒とを結ぶガス流路に、前記前処理触媒からの排ガス温度を下げる冷却手段が介設されていることを要旨とする(図1(請求項1の対応図)参照)。
【0022】
前記触媒酸化処理装置では、前記前処理触媒の上流側ガス流路に、加熱手段を設けることができる(図2(請求項2の対応図)参照)。
【0023】
また、前記冷却手段として、前記前処理触媒の出口排ガスと未処理排ガスとで熱交換を行なう第一熱交換器を備え、未処理排ガスの第一熱交換器出口と前処理触媒入口とをガス流路で接続することができる。(図3(請求項3の対応図)参照)。
【0024】
この構成に従えば、未処理排ガスとの熱交換で前処理触媒からの排ガスを冷却することにより、冷却手段における冷媒(冷却水)が不要になる。
【0025】
また、未処理排ガスと前記酸化触媒からの浄化ガスとを熱交換することにより未処理排ガスを加熱する第二熱交換器を有し、未処理排ガスの第二熱交換器出口と前処理触媒入口とをガス流路で接続することができる(図4(請求項4の対応図)参照)。
【0026】
この構成に従えば、未処理排ガスと酸化触媒出口ガス(清浄排気ガス)を熱交換することにより、前処理触媒の加熱手段が不要、または加熱に要するエネルギーを少なくすることができる。また、酸化触媒出口ガスの温度を下げることができる。
【0027】
また、前記冷却手段として、前記前処理触媒の出口排ガスと未処理排ガスとで熱交換を行なう第一熱交換器を備えた場合、未処理排ガスの第一熱交換器出口と未処理排ガスの第二熱交換器入口とをガス流路で接続することができる(図5(a)(請求項5の対応図)参照)。
【0028】
この構成に従えば、冷却手段における冷媒(冷却水)を不要にすることができるとともに、前処理触媒の加熱手段が不要、または加熱に要するエネルギーを少なくすることができる。
【0029】
或いは、未処理排ガスと前記酸化触媒からの浄化ガスとを熱交換する第二熱交換器出口ガスを、前記前処理触媒出口ガスの冷却手段として備えた第一熱交換器入口に導入するためのガス流路で接続し、さらに、第一熱交換器出口の未処理排ガスを前処理触媒入口に導入するガス流路で接続することができる(図5(b)(請求項6の対応図)参照)。
【0030】
この構成に従えば、冷却手段における冷媒(冷却水)を不要にすることができる。
【0031】
また、前記第一熱交換器は直交型熱交換器により構成することが好ましい。
【0032】
また、前記第二熱交換器は直交型熱交換器により構成することが好ましい。
【0033】
また、未処理排ガスの第一熱交換器出口と前処理触媒入口とを接続しているガス流路に前記加熱手段を設けることができる(図6(a)(請求項3に従属する請求項9の対応図)参照)。
【0034】
或いは、第二熱交換器出口ガスを、前記前処理触媒出口ガスの冷却手段として備えた第一熱交換器入口に導入するためのガス流路で接続し、第一熱交換器出口の未処理排ガスを前処理触媒入口に導入するガス流路に加熱手段を設けることもできる(図6(b)(請求項6に従属する請求項9の対応図)参照)。
【0035】
この構成に従えば、冷却手段(第一熱交換器)における冷却水を不要にするとともに、前処理触媒の加熱に要するエネルギーを少なくすることができる。
【0036】
また、未処理排ガスの第二熱交換器出口と前記前処理触媒入口とを接続しているガス流路に前記加熱手段を設けることもできる(図7(請求項4に従属する請求項10の対応図)、および図8(請求項5に従属する請求項10の対応図)参照)。
【0037】
また、前記第二熱交換器の出口排ガス温度または前記酸化触媒入口側の排ガス温度を測定する温度センサを有し、この温度センサによって測定されるガス温度に基づいて前記加熱手段の加熱動作を制御することにより、ガス温度が400〜700℃に加熱維持された排ガスを前記前処理触媒に導入するように構成することができる。
【0038】
(b)触媒酸化処理方法
本発明の触媒酸化処理方法は、排ガス中に含まれる揮発性有機化合物を酸化触媒により酸化分解する処理方法において、前記排ガス中に微量含まれる触媒毒を分解あるいは除去するため、マンガン、アルミニウム、パラジウム、鉄、銅、銀、カルシウム、ナトリウム、コバルト、ニッケル、セリウム、インジウム、タングステン、マグネシウム、錫等の金属または金属酸化物の群から選択される1種以上のものからなる前処理触媒を用い、400〜700℃に加熱して、被毒物質の分解あるいは除去を行なった後、引き続き揮発性有機化合物を酸化分解することを要旨とする。
【0039】
前記触媒酸化処理方法では、前記金属または金属酸化物に代えてゼオライト、活性アルミナ、粘土鉱物等の無機系吸着剤を前処理触媒として用い、微量の触媒毒と揮発性有機化合物を含む排ガスを処理した後の排ガスを、PdまたはPt触媒を用いて酸化処理することができる。上記無機系吸着剤の中でもゼオライトは、比表面積が大きいことから吸着力に優れ、しかも耐熱性に優れているため好ましい。
【0040】
また、本発明の触媒酸化処理方法は、排ガス中に微量含まれる触媒毒を除去するための前処理触媒に未処理排ガスを導入し、前記前処理触媒から排出される排ガスを所定の温度まで冷却し、冷却した排ガスをさらに酸化触媒に導入して排ガス中に含まれる揮発性有機化合物を酸化分解することを要旨とする。
【0041】
前記触媒酸化処理方法において、前記所定の温度を200〜500℃とすることが好ましい。
【0042】
また、前記前処理触媒から排出される排ガスと未処理排ガスとを熱交換することによって前記未処理排ガスを加熱し、上記前処理触媒に導入することができる。
【0043】
また、前記前処理触媒から排出される排ガスの冷却に供せられて加熱した未処理排ガスを、さらに前記酸化触媒から排出される排ガスとの熱交換に使用して、未処理排ガスを予熱し、前記前処理触媒に導入することができる。
【0044】
また、前記酸化触媒から排出される排ガスと未処理排ガスとを熱交換することによって前記未処理排ガスを加熱し、前記前処理触媒に導入することができる。
【0045】
また、前記酸化触媒から排出される排ガスと熱交換して加熱された未処理排ガスを、さらに前記前処理触媒から排出される排ガスとの熱交換に使用し、未処理ガスを十分予熱して、前記前処理触媒に導入することができる。
【0046】
また、前記前処理触媒に導入する未処理排ガスを加熱手段によって加熱した後、前記前処理触媒に導入することができる。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、軽量、コンパクトでランニングコストも安く、しかも触媒毒に対しての劣化を抑制することができるという長所を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下、本発明に係る触媒酸化処理装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0049】
a. 処理装置の基本構成
図9は、本発明に係る触媒酸化処理装置の構成を示したブロック図である。
【0050】
同図において、触媒酸化処理装置1は、有機シリコン化合物を微量含むVOC排ガスを酸化分解するための金属担持した酸化分解触媒(酸化触媒)2aを充填した触媒層2と、排ガス処理方向においてその触媒層2の上流側に設けられ、排ガス中に含有される有機シリコン化合物を吸着・分解するための前処理触媒3aを充填した前処理層3と、この前処理層3の上流側に設けられ、前処理触媒3aの温度を、有機シリコン化合物を分解するのに充分な温度まで加熱する加熱手段4と、前処理層3と触媒層2との間に設けられ、前処理層3で有機シリコン化合物を吸着・分解した後の排ガス温度を、後段の酸化分解触媒2aにてVOCを酸化分解するのに適した温度まで下げる冷却手段5から主として構成されている。なお、図中、6は排ガス導入口であり、7は排ガス排出口である。
【0051】
上記触媒層2に充填される酸化分解触媒2aおよび上記前処理層3に充填される前処理触媒3aとしては、排ガス中のVOCを酸化分解することができる、例えば、白金、チタン、マンガン、アルミニウム、パラジウム、鉄、銅、銀、カルシウム、ナトリウム、コバルト、ニッケル、セリウム、インジウム、タングステン、マグネシウム、錫等の金属または金属酸化物からなる一般の酸化分解触媒を適用することができる。
【0052】
また、前記前処理触媒として、ゼオライト、活性アルミナ、粘土鉱物等の無機系吸着剤を用いることもできる。
【0053】
VOC排ガスを触媒で酸化分解させる場合の温度は、触媒の耐久性を考慮して、250〜350℃の温度(中温)で制御するのが一般的である。しかしながら、排ガス中に微量でも有機シリコン化合物等の触媒毒を含む場合には、上記した温度では、触媒の酸化活性が顕著に低下する。
【0054】
そこで、有機シリコン化合物については、酸化分解触媒2aとは別に設けられた前処理触媒3aで除去するように構成している。有機シリコン化合物をその前処理触媒3aで有効に除去するためには、400〜600℃(高温)で処理することが望ましい。400℃より低い温度では有機シリコン化合物の酸化分解効率が低下し、また、600℃を超えると有機シリコンの前処理触媒3aへの吸着性が低下したり、耐熱性、経済性が低下する等の問題が生じる。
【0055】
したがって、前処理触媒3aとしては、高温領域で耐久性に優れる、パラジウム系およびマンガンや銅の酸化物を使用することが好ましい。
【0056】
また、上記加熱手段4としては、ガス、電気によるヒータを用いることができ、上記冷却手段5としては、冷却水によるガスクーラ(第一熱交換器)を用いることができる。
【0057】
a-1. 処理動作
上記構成を有する触媒酸化処理装置1によれば、排ガス導入口6から導入された有機シリコン化合物含有VOC排ガスGは、加熱手段4にてその有機シリコン化合物を有効に分解できる温度まで昇温された後、前処理触媒3aが充填された前処理層3に導入され、有機シリコン化合物が分解処理される。
【0058】
次いで、前処理層3の前処理触媒3aの出口排ガスG′を冷却手段5に導入することにより、酸化分解触媒2aでVOCを酸化分解するのに適した温度まで下げ、温度の下げられた排ガスを、酸化分解触媒2aが充填された触媒層2に導入することにより、VOCを酸化分解し、処理後の浄化ガスを排ガス排出口7から排出する。
【0059】
b.処理装置の全体構成
図10は、触媒酸化処理装置の全体構成を示したブロック図である。
【0060】
同図に示す全体構成において、触媒酸化処理装置10は、有機シリコン化合物を微量含むVOC排ガスを酸化分解するための金属担持した酸化分解触媒2aを充填した触媒層2と、排ガスの処理方向において上記触媒層2の上流側に設けられ、排ガス中に含有される有機シリコン化合物を吸着・分解するための前処理触媒3aを充填した前処理層3と、この前処理層3と上記触媒層2の間に介設された第一熱交換器11と、触媒層2の下流側に配置された第二熱交換器12と、前処理層3の上流側に設けられ有機シリコン化合物が分解するのに充分な温度に排ガスを加熱するための加熱手段4とを有している。
【0061】
なお、上記第一および第二熱交換器11,12は直交型熱交換器が用いられ、第一熱交換器11は図9に示した冷却手段5に対応している。
【0062】
また、図中、6は排ガス導入口であり、7は排ガス排出口である。
【0063】
また、上記触媒層2に充填される酸化分解触媒2aおよび上記前処理層3に充填される前処理触媒3aは、図9で説明したものと同じ若しくは同種の触媒が用いられる。
【0064】
また、加熱手段4についても図9で説明した加熱手段と同様に、ガス、電気によるヒータで構成することができる。
【0065】
b-1. 処理動作
排ガス導入口6から導入された、有機シリコン化合物を含有する未処理のVOC排ガスGは、前処理触媒3aを充填した前処理層3の下流であって、酸化分解触媒2aを充填した触媒層2の上流に設けられた第一熱交換器11を通過させられる。
【0066】
第一熱交換器11を通過した排ガスGは、次いで、ガス流路13を介し触媒層2の下流側に設けられた第二熱交換器12を通過させられた後、ガス流路14を介して前処理触媒3aを充填した前処理層3に導入される。
【0067】
前処理層3に導入された有機シリコン化合物は前処理触媒3aによって分解処理され、次いで、前処理層3の出口ガスはガス流路15を介して第一熱交換器11に導入され、排ガス導入口6から供給される未処理の排ガスGと熱交換される。
【0068】
ガス流路14には加熱手段4が設けられており、有機シリコン化合物を分解処理するのに充分な温度(400〜700℃)まで昇温された排ガスが前処理層3に導入されるため、その前処理触媒3aにおける有機シリコン化合物の吸着・分解により、前処理層3の出口排ガス温度(ガス流路15における)は、前処理層3の入口排ガス温度よりも高くなる。
【0069】
工場の生産プロセス等から排出される排ガスGの温度は、通常30〜60℃程度であるため、前処理層3の出口排ガスは、上記第一熱交換器11にて未処理排ガスGと熱交換されることにより冷却され、一方、排ガス導入口6から導入された未処理排ガスは昇温される。
【0070】
このように、第一熱交換器11で熱交換された有機シリコン化合物分解後のVOCガスは、酸化分解触媒2aでVOCを分解するのに適した250〜350℃に冷却され、ガス流路16を介し触媒層2の酸化分解触媒2aに導入される。それにより、VOCが酸化分解されて浄化ガスとなる。
【0071】
触媒層2における酸化分解にともなう分解熱によって、温度が上昇した浄化ガスは、ガス流路17を介して触媒層2の下流側に設けられた第二熱交換器12に導入され、その第二熱交換器12で熱交換(冷却)され、排気ガスとして大気に放出される。
【0072】
一方、第二熱交換器12で熱交換に供せされるもう一方の排ガス(ガス流路13から供給される)は昇温され、加熱手段4に供給される。加熱手段4では前処理触媒3aで有機シリコン化合物を十分に吸着・分解処理し得る温度(400〜700℃)に排ガスを加熱維持し、前処理層3に導入する。
【0073】
なお、第一熱交換器11にて熱交換されることにより昇温した未処理排ガスの温度が、前処理触媒3aで処理するのに適した温度である場合には、直接、前処理層3に導入することができ(図3参照)、前処理触媒3aが処理し得る温度に満たない場合には、加熱手段4を介して未処理排ガスの温度を加熱することができる(図6(a)参照)。
【0074】
触媒酸化処理装置10の各部の処理温度は、VOC排ガスの濃度によって変化するが一例を挙げると以下の通りである。
【0075】
例えば、加熱手段4によって加熱され、前処理層3に導入される排ガス温度が500℃である場合、前処理層3の出口温度は約550℃となる。
【0076】
次いで排ガスは第一熱交換器11に導入され、その第一熱交換器11によって未処理の排ガスGと熱交換されることにより約300℃まで冷却される。
【0077】
冷却された排ガスは次いで、触媒層2に導入され、酸化分解触媒2aによってVOCが酸化分解され、触媒層2から浄化ガスとして排出される。約700℃の浄化ガスは、次いで第二熱交換器12に導入され、約510℃まで冷却された後、放出される。
【0078】
一方、ガス流路13を介して供給され第二熱交換器12によって500℃まで昇温された排ガスは、ガス流路14を介して加熱手段4に供給され、前処理層3の前処理触媒3aに供せられる。
【0079】
なお、第二熱交換器12によって昇温された排ガス温度が上記したように500℃であれば、既に、有機シリコン化合物を十分に吸着・分解し得る処理温度に到達しているため、この場合、加熱手段4による加熱動作は必要がない。
【0080】
すなわち、本実施形態の触媒酸化処理装置10は、酸化分解後の排ガス温度に応じて加熱手段4を制御するように構成されており、例えば、第二熱交換器12からの排ガス温度、もしくは前処理触媒3aに導入する排ガス温度を検知する温度センサを設け、この温度センサから出力される温度信号に基づいて、加熱手段4をON−OFF制御するように構成されている。
【0081】
詳しくは、第一熱交換器11の受熱側のガス流路6−13間、若しくは放熱側のガス流路15−16間に第一熱交換器11のバイパス流路18を設け(図では受熱側のガス流路6−13をバイパスするバイパス流路18を示している)、バイパス流路18内に自動制御ダンパ19を設置するとともに、触媒層2への排ガス導入流路16の温度を検知する温度センサ20を設け、この温度センサ20から出力される温度信号に基づいて、自動制御ダンパ19の開度を制御することで、ガス流路16の排ガス温度を制御することができる。
【0082】
また、第二熱交換器12の受熱側のガス流路13−14間、もしくは放熱側のガス流路17−7間に第二熱交換器12のバイパス流路21を設け(図では受熱側のガス流路6−13をバイパスするバイパス流路21を示している)、このバイパス流路21内に自動制御ダンパ22を設置すると共に、前処理層3への排ガスを導入するガス流路14の温度を検知する温度センサ23を設け、この温度センサ23から出力される温度信号に基づいて、この自動制御ダンパ22の開度を制御することで、ガス流路14の排ガス温度を制御することもできる。
【0083】
なお、図10では便宜上、選択的に設けられるバイパス流路18またはバイパス流路21を同一図面上に記載している。
【0084】
なお、上記加熱手段はON−OFF制御に限らず、温度センサによって検出される測定温度と予めメモリに設定されている設定温度と比較し、制御量と設定温度と差に比例して加熱手段4を制御するいわゆる比例制御を行なうものであってもよい。
【0085】
このように、バイパス流路18、21を設けてガス流路16、ガス流路14を流れる排ガス温度を制御できるように構成すれば、加熱手段4のON動作を必要最小限にすることができ、それにより、エネルギーを節約することができる。
【0086】
以上、説明したように、図10に示す触媒酸化処理装置10は、VOCの酸化分解にともなって発生する分解熱を第二熱交換器12で回収し、補助的な加熱手段4との併用で、前処理触媒3aでの有機シリコン化合物の分解を行うように構成されている(図8参照)。
【0087】
また、図10では、第一熱交換器11からの排ガスをガス流路13を通じて第二熱交換器12に導入したが、第二熱交換器12を独立して設け未処理排ガスを取り込むように構成することもでき(図4参照)、また、第二熱交換器12からの排ガスを加熱手段4で加熱した後、前処理層3に導入することもできる(図7参照)。
【0088】
また、上記した触媒酸化処理装置10は、基本的にガスの流れがワンパスであって、ガスの流路を切り替えるダンパ類が不要であることから、装置を非常にシンプルに構成することができる。したがって、従来の蓄熱燃焼システムと比較して、コスト的にも有利となる。
【0089】
さらに、触媒毒に対抗させるための前処理触媒3aとVOC分解用の酸化分解触媒2aとを別々の層に充填するように構成しているため、触媒の充填量が任意に設定でき、触媒交換にかかる労力も少なくて済むという利点がある。
【実施例】
【0090】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、本発明の評価は、図10に示す触媒酸化処理装置にて行った。
【0091】
前処理触媒3aには活性アルミナを担持した、充填比重0.45g/ccのセラミックハニカムを適用し、酸化分解触媒2aにパラジウムを0.4wt担持した充填比重0.65g/ccのコージライトハニカムを適応した。
【0092】
次に、有機シリコン化合物含有VOCガスGとしてトルエン3000ppm、ヘキサメチルジシラザン2ppmを含有した60℃の空気を排ガス導入口6から10m3/minの風量で導入し、その際の排ガス導入口6と排ガス排出口7のガス濃度を総炭化水素計により連続して測定し、装置の除去率η(%)の経時変化を確認した。
【0093】
ここで、除去率η(%)=(排ガス導入口ガス濃度−排ガス排出口ガス濃度)/排ガス導入口ガス濃度×100により求まる。
【0094】
前処理触媒3aの空間速度SVは40000(1/hr)、酸化分解触媒2aの空間速度は40000(1/hr)とし、加熱手段4として電気ヒータを適応し500℃まで加熱して前処理層3へ導入した。
【0095】
図11は除去率の経時変化をグラフに表したものである。
【0096】
同グラフにおいて、運転開始直後の初期除去率ηは99.9%と極めて高い性能を示している。このときのガス流路15の温度は550℃となり、第一熱交換器11へ導入されて熱交換された後のガス流路16の温度は300℃となり、このガス温度の排ガスが触媒槽2へ導入される。酸化分解処理後のガス流路17では700℃となる。
【0097】
このように、前処理触媒3aと酸化分解触媒2aとに分割し、両者の間で一旦、冷却する事で、酸化分解触媒2aの入口と出口の温度差を多くすることができる。それにより、VOCの酸化分解時の昇温が大きくても酸化分解触媒を耐熱温度以下で処理させることが可能となり、排ガスに有機シリコン化合物が含まれていても寿命を延長させる効果が高くなる。また、前処理触媒3aの温度を500℃と高くしても、高濃度のVOCの処理が可能となる。
【0098】
また、第二熱交換器12へ導入され熱交換後に排ガス排出口7の温度は510℃となる。排ガス導入口6より第一熱交換器11へ導入され熱交換された後、ガス流路13の排ガス温度は300℃であり、第二熱交換器12へ導入され熱交換された後、ガス流路14の温度は500℃となる。この段階で熱回収が充分になされているので電気ヒータ(加熱手段)4をフルに使用する必要がなく、電力を大幅に削減することできる。
【0099】
また、前処理触媒3aを高温化していることで、除去率が99%まで低下するのに前処理触媒温度が300℃では100min(グラフ中、C点の処理時間)であったのに対して、500℃にすることで400min(グラフ中、D点の処理時間)と約4倍の有機シリコン化合物による酸化分解触媒の寿命を保つことができた。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の触媒酸化処理装置の基本構成を示す模式図である。
【図2】図1の構成に加熱手段を加えた構成を示す模式図である。
【図3】図1の冷却手段として第一熱交換器を備えた構成を示す模式図である。
【図4】図1の構成に第二熱交換器を備えた構成を示す模式図である。
【図5】(a)および(b)は、冷却手段として第一熱交換器を備えた構成を示す模式図である。
【図6】(a)は図3のガス流路に加熱手段を、(b)は図5(b)のガス流路に加熱手段をそれぞれ設けた構成を示す模式図である。
【図7】図4のガス流路に加熱手段を設けた構成を示す模式図である。
【図8】図5(a)のガス流路に加熱手段を設けた構成を示す模式図である。
【図9】本発明に係る触媒酸化処理装置の基本構成を示すブロック図である。
【図10】本発明に係る触媒酸化処理装置の全体構成を示すブロック図である。
【図11】本発明による除去率の経時変化を示すグラフである。
【図12】従来の触媒燃焼方式の概略構成を示す説明図である。
【図13】従来の蓄熱燃焼方式の概略構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0101】
1 触媒酸化処理装置
2 触媒層
2a 酸化分解触媒(酸化触媒)
3 前処理層
3a 前処理触媒
4 加熱手段
5 冷却手段
6 排ガス導入口
7 排ガス排出口
10 触媒酸化処理装置
11 第一熱交換器
12 第二熱交換器
13 ガス流路
14 ガス流路
15〜17 ガス流路
18 バイパス流路
19 自動制御ダンパ
20 温度センサ
21 バイパス流路
22 自動制御ダンパ
23 温度センサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性有機化合物の処理装置に関し、特に、排ガス中に触媒毒が微量含まれる場合においても触媒の劣化を抑制することができ、経済的且つ低コストで処理可能な触媒酸化処理装置および触媒酸化処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な産業において、製造工程から排出されるガス中には有害成分や悪臭成分が含まれている場合がある。
【0003】
例えば、塗装工場、印刷工場、フィルムのラミネート工場などではトルエン、イソプロピルアルコール(IPA)、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸エチルなどの揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compound)を使用しており、製造装置や設備などからVOC含有ガスを排出している。
【0004】
大気汚染防止の観点から、VOCを使用する工程においては、環境に与える負荷を低減するため、工程から発生するVOCガスをできる限り分解または除去して排出しなければならない。
【0005】
このようなVOCガス成分を分解または除去するガスの浄化方法としては、ガスを直接、バーナーなどで燃焼する直接燃焼方式、触媒により燃焼を行う触媒燃焼方式、蓄熱材で予熱して燃焼させる蓄熱燃焼方式などが知られている。
【0006】
上記触媒燃焼方式の装置概略を図12に示す。
【0007】
同図に示す触媒燃焼装置は、中温(250〜350℃程度)で用いられるものであり、排ガス導入口50から導入された排ガスEGは、炉室51内に配置されたヒータ52によって加熱された後、触媒53に導入されて酸化分解され、排ガス排出口54から放出されるようになっている。
【0008】
触媒53で排ガスEGを酸化分解するのに用いられた熱は直接燃焼方式に比べて低温である。
【0009】
直接燃焼方式または触媒燃焼方式において、希薄な可燃成分を処理する場合に望まれることは、放出される排ガス温度を低下させると共に、消費エネルギー量を抑制してランニングコストを低減させることである。
【0010】
一方、蓄熱燃焼方式は上記した他の燃焼方式と比較してイニシャルコストは高いものの、高い熱回収率を得ることができ(一般に85%以上)、上記触媒燃焼方式に比べ消費エネルギーを半分程度に抑制できるという利点がある。
【0011】
図13は従来の蓄熱燃焼方式の装置概略を示したものである。
【0012】
同図において、蓄熱燃焼方式では炉室55に対して二塔のガス流路を設けており、バーナー56で排ガスを燃焼浄化した後、浄化部の下流側にセラミックハニカムなどの蓄熱材57を設置することで排熱を吸収するように構成されている。そして、ガス供給方向を反転させる(実線矢印で示すA方向から破線矢印で示すB方向)ことで、蓄熱材57に保持された熱を再び炉室55で利用し、反対側に設けられた蓄熱材58で排熱を回収する操作を繰り返す(例えば特許文献1参照)。
【0013】
なお、図中、59は排ガス導入口(または排ガス排出口)、60は排ガス排出口(または排ガス導入口)である。
【0014】
また、上記触媒燃焼方式に用いられる接触酸化分解反応用触媒としては、低温で高い酸化分解活性を有するもの、具体的には、白金などの貴金属を活性成分とし、これをアルミナなどの触媒担体に担持させたものが使用されている。
【0015】
これらのいわゆる貴金属系触媒は、有機シリコン等の被毒物質に影響されやすく、排ガス中にこれらの被毒物質が微量に混入するだけでも酸化活性が大きく低下するという欠点を有している。しかし、有機シリコン化合物に対し、充分に優れた耐久性を有する触媒の開発はなされていないのが現状である。
【0016】
そこで触媒劣化防止のため、触媒前段に吸着材を設置することにより有機シリコン化合物を吸着除去する方法が広く採用されている。
【特許文献1】特開平11―44416号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、一般に、吸着材によって有機シリコン化合物を除去する方法は、吸着材における吸着量が飽和に達すると吸着材の交換、または再生による吸着物の除去が必要となるため、浄化システムの必要性能を維持するには吸着材を定期的に交換しなければならずランニングコストが高くつくという問題があった。
【0018】
一方、酸化分解過程において昇温されたガスの熱を回収し未処理排ガスの予熱源として再利用する、蓄熱燃焼方式によるガス浄化処理方法は、ランニングコストの面では他のガス浄化処理方法よりも有利であるが、省エネルギーに有効な上記蓄熱燃焼方式も、下記に示す課題を有している。
【0019】
すなわち、排ガスが保持している熱を蓄熱燃焼方式で有効に吸収しようとしても、顕熱蓄熱材の熱容量が限られているため、高い熱効率を得るためには多量の顕熱蓄熱材が必要となり、結果として装置重量や大きさが拡大してしまい設置場所が限られてしまうこと。加えて、大きな熱容量を有するため、装置が安定するまでに時間がかかるということである。
【0020】
本発明は、上述した従来の燃焼式ガス浄化装置に係る課題を考慮してなされたものであり、軽量、コンパクトに構成することができてイニシャルコスト、ランニングコストを抑制することができ、しかも有機シリコン化合物等の触媒被毒物質を含有する排ガスに対しても、より長時間、高い浄化率を維持することのできる触媒酸化処理装置および触媒酸化処理方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
(a)触媒酸化処理装置
本発明の触媒酸化処理装置は、排ガス中に含まれる揮発性有機化合物を酸化触媒により酸化分解する触媒酸化処理装置において、前記排ガス中に微量含まれる触媒毒を除去するための前処理触媒が、排ガス処理方向上流側に設けられるとともに、前記前処理触媒と前記酸化触媒とを結ぶガス流路に、前記前処理触媒からの排ガス温度を下げる冷却手段が介設されていることを要旨とする(図1(請求項1の対応図)参照)。
【0022】
前記触媒酸化処理装置では、前記前処理触媒の上流側ガス流路に、加熱手段を設けることができる(図2(請求項2の対応図)参照)。
【0023】
また、前記冷却手段として、前記前処理触媒の出口排ガスと未処理排ガスとで熱交換を行なう第一熱交換器を備え、未処理排ガスの第一熱交換器出口と前処理触媒入口とをガス流路で接続することができる。(図3(請求項3の対応図)参照)。
【0024】
この構成に従えば、未処理排ガスとの熱交換で前処理触媒からの排ガスを冷却することにより、冷却手段における冷媒(冷却水)が不要になる。
【0025】
また、未処理排ガスと前記酸化触媒からの浄化ガスとを熱交換することにより未処理排ガスを加熱する第二熱交換器を有し、未処理排ガスの第二熱交換器出口と前処理触媒入口とをガス流路で接続することができる(図4(請求項4の対応図)参照)。
【0026】
この構成に従えば、未処理排ガスと酸化触媒出口ガス(清浄排気ガス)を熱交換することにより、前処理触媒の加熱手段が不要、または加熱に要するエネルギーを少なくすることができる。また、酸化触媒出口ガスの温度を下げることができる。
【0027】
また、前記冷却手段として、前記前処理触媒の出口排ガスと未処理排ガスとで熱交換を行なう第一熱交換器を備えた場合、未処理排ガスの第一熱交換器出口と未処理排ガスの第二熱交換器入口とをガス流路で接続することができる(図5(a)(請求項5の対応図)参照)。
【0028】
この構成に従えば、冷却手段における冷媒(冷却水)を不要にすることができるとともに、前処理触媒の加熱手段が不要、または加熱に要するエネルギーを少なくすることができる。
【0029】
或いは、未処理排ガスと前記酸化触媒からの浄化ガスとを熱交換する第二熱交換器出口ガスを、前記前処理触媒出口ガスの冷却手段として備えた第一熱交換器入口に導入するためのガス流路で接続し、さらに、第一熱交換器出口の未処理排ガスを前処理触媒入口に導入するガス流路で接続することができる(図5(b)(請求項6の対応図)参照)。
【0030】
この構成に従えば、冷却手段における冷媒(冷却水)を不要にすることができる。
【0031】
また、前記第一熱交換器は直交型熱交換器により構成することが好ましい。
【0032】
また、前記第二熱交換器は直交型熱交換器により構成することが好ましい。
【0033】
また、未処理排ガスの第一熱交換器出口と前処理触媒入口とを接続しているガス流路に前記加熱手段を設けることができる(図6(a)(請求項3に従属する請求項9の対応図)参照)。
【0034】
或いは、第二熱交換器出口ガスを、前記前処理触媒出口ガスの冷却手段として備えた第一熱交換器入口に導入するためのガス流路で接続し、第一熱交換器出口の未処理排ガスを前処理触媒入口に導入するガス流路に加熱手段を設けることもできる(図6(b)(請求項6に従属する請求項9の対応図)参照)。
【0035】
この構成に従えば、冷却手段(第一熱交換器)における冷却水を不要にするとともに、前処理触媒の加熱に要するエネルギーを少なくすることができる。
【0036】
また、未処理排ガスの第二熱交換器出口と前記前処理触媒入口とを接続しているガス流路に前記加熱手段を設けることもできる(図7(請求項4に従属する請求項10の対応図)、および図8(請求項5に従属する請求項10の対応図)参照)。
【0037】
また、前記第二熱交換器の出口排ガス温度または前記酸化触媒入口側の排ガス温度を測定する温度センサを有し、この温度センサによって測定されるガス温度に基づいて前記加熱手段の加熱動作を制御することにより、ガス温度が400〜700℃に加熱維持された排ガスを前記前処理触媒に導入するように構成することができる。
【0038】
(b)触媒酸化処理方法
本発明の触媒酸化処理方法は、排ガス中に含まれる揮発性有機化合物を酸化触媒により酸化分解する処理方法において、前記排ガス中に微量含まれる触媒毒を分解あるいは除去するため、マンガン、アルミニウム、パラジウム、鉄、銅、銀、カルシウム、ナトリウム、コバルト、ニッケル、セリウム、インジウム、タングステン、マグネシウム、錫等の金属または金属酸化物の群から選択される1種以上のものからなる前処理触媒を用い、400〜700℃に加熱して、被毒物質の分解あるいは除去を行なった後、引き続き揮発性有機化合物を酸化分解することを要旨とする。
【0039】
前記触媒酸化処理方法では、前記金属または金属酸化物に代えてゼオライト、活性アルミナ、粘土鉱物等の無機系吸着剤を前処理触媒として用い、微量の触媒毒と揮発性有機化合物を含む排ガスを処理した後の排ガスを、PdまたはPt触媒を用いて酸化処理することができる。上記無機系吸着剤の中でもゼオライトは、比表面積が大きいことから吸着力に優れ、しかも耐熱性に優れているため好ましい。
【0040】
また、本発明の触媒酸化処理方法は、排ガス中に微量含まれる触媒毒を除去するための前処理触媒に未処理排ガスを導入し、前記前処理触媒から排出される排ガスを所定の温度まで冷却し、冷却した排ガスをさらに酸化触媒に導入して排ガス中に含まれる揮発性有機化合物を酸化分解することを要旨とする。
【0041】
前記触媒酸化処理方法において、前記所定の温度を200〜500℃とすることが好ましい。
【0042】
また、前記前処理触媒から排出される排ガスと未処理排ガスとを熱交換することによって前記未処理排ガスを加熱し、上記前処理触媒に導入することができる。
【0043】
また、前記前処理触媒から排出される排ガスの冷却に供せられて加熱した未処理排ガスを、さらに前記酸化触媒から排出される排ガスとの熱交換に使用して、未処理排ガスを予熱し、前記前処理触媒に導入することができる。
【0044】
また、前記酸化触媒から排出される排ガスと未処理排ガスとを熱交換することによって前記未処理排ガスを加熱し、前記前処理触媒に導入することができる。
【0045】
また、前記酸化触媒から排出される排ガスと熱交換して加熱された未処理排ガスを、さらに前記前処理触媒から排出される排ガスとの熱交換に使用し、未処理ガスを十分予熱して、前記前処理触媒に導入することができる。
【0046】
また、前記前処理触媒に導入する未処理排ガスを加熱手段によって加熱した後、前記前処理触媒に導入することができる。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、軽量、コンパクトでランニングコストも安く、しかも触媒毒に対しての劣化を抑制することができるという長所を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下、本発明に係る触媒酸化処理装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0049】
a. 処理装置の基本構成
図9は、本発明に係る触媒酸化処理装置の構成を示したブロック図である。
【0050】
同図において、触媒酸化処理装置1は、有機シリコン化合物を微量含むVOC排ガスを酸化分解するための金属担持した酸化分解触媒(酸化触媒)2aを充填した触媒層2と、排ガス処理方向においてその触媒層2の上流側に設けられ、排ガス中に含有される有機シリコン化合物を吸着・分解するための前処理触媒3aを充填した前処理層3と、この前処理層3の上流側に設けられ、前処理触媒3aの温度を、有機シリコン化合物を分解するのに充分な温度まで加熱する加熱手段4と、前処理層3と触媒層2との間に設けられ、前処理層3で有機シリコン化合物を吸着・分解した後の排ガス温度を、後段の酸化分解触媒2aにてVOCを酸化分解するのに適した温度まで下げる冷却手段5から主として構成されている。なお、図中、6は排ガス導入口であり、7は排ガス排出口である。
【0051】
上記触媒層2に充填される酸化分解触媒2aおよび上記前処理層3に充填される前処理触媒3aとしては、排ガス中のVOCを酸化分解することができる、例えば、白金、チタン、マンガン、アルミニウム、パラジウム、鉄、銅、銀、カルシウム、ナトリウム、コバルト、ニッケル、セリウム、インジウム、タングステン、マグネシウム、錫等の金属または金属酸化物からなる一般の酸化分解触媒を適用することができる。
【0052】
また、前記前処理触媒として、ゼオライト、活性アルミナ、粘土鉱物等の無機系吸着剤を用いることもできる。
【0053】
VOC排ガスを触媒で酸化分解させる場合の温度は、触媒の耐久性を考慮して、250〜350℃の温度(中温)で制御するのが一般的である。しかしながら、排ガス中に微量でも有機シリコン化合物等の触媒毒を含む場合には、上記した温度では、触媒の酸化活性が顕著に低下する。
【0054】
そこで、有機シリコン化合物については、酸化分解触媒2aとは別に設けられた前処理触媒3aで除去するように構成している。有機シリコン化合物をその前処理触媒3aで有効に除去するためには、400〜600℃(高温)で処理することが望ましい。400℃より低い温度では有機シリコン化合物の酸化分解効率が低下し、また、600℃を超えると有機シリコンの前処理触媒3aへの吸着性が低下したり、耐熱性、経済性が低下する等の問題が生じる。
【0055】
したがって、前処理触媒3aとしては、高温領域で耐久性に優れる、パラジウム系およびマンガンや銅の酸化物を使用することが好ましい。
【0056】
また、上記加熱手段4としては、ガス、電気によるヒータを用いることができ、上記冷却手段5としては、冷却水によるガスクーラ(第一熱交換器)を用いることができる。
【0057】
a-1. 処理動作
上記構成を有する触媒酸化処理装置1によれば、排ガス導入口6から導入された有機シリコン化合物含有VOC排ガスGは、加熱手段4にてその有機シリコン化合物を有効に分解できる温度まで昇温された後、前処理触媒3aが充填された前処理層3に導入され、有機シリコン化合物が分解処理される。
【0058】
次いで、前処理層3の前処理触媒3aの出口排ガスG′を冷却手段5に導入することにより、酸化分解触媒2aでVOCを酸化分解するのに適した温度まで下げ、温度の下げられた排ガスを、酸化分解触媒2aが充填された触媒層2に導入することにより、VOCを酸化分解し、処理後の浄化ガスを排ガス排出口7から排出する。
【0059】
b.処理装置の全体構成
図10は、触媒酸化処理装置の全体構成を示したブロック図である。
【0060】
同図に示す全体構成において、触媒酸化処理装置10は、有機シリコン化合物を微量含むVOC排ガスを酸化分解するための金属担持した酸化分解触媒2aを充填した触媒層2と、排ガスの処理方向において上記触媒層2の上流側に設けられ、排ガス中に含有される有機シリコン化合物を吸着・分解するための前処理触媒3aを充填した前処理層3と、この前処理層3と上記触媒層2の間に介設された第一熱交換器11と、触媒層2の下流側に配置された第二熱交換器12と、前処理層3の上流側に設けられ有機シリコン化合物が分解するのに充分な温度に排ガスを加熱するための加熱手段4とを有している。
【0061】
なお、上記第一および第二熱交換器11,12は直交型熱交換器が用いられ、第一熱交換器11は図9に示した冷却手段5に対応している。
【0062】
また、図中、6は排ガス導入口であり、7は排ガス排出口である。
【0063】
また、上記触媒層2に充填される酸化分解触媒2aおよび上記前処理層3に充填される前処理触媒3aは、図9で説明したものと同じ若しくは同種の触媒が用いられる。
【0064】
また、加熱手段4についても図9で説明した加熱手段と同様に、ガス、電気によるヒータで構成することができる。
【0065】
b-1. 処理動作
排ガス導入口6から導入された、有機シリコン化合物を含有する未処理のVOC排ガスGは、前処理触媒3aを充填した前処理層3の下流であって、酸化分解触媒2aを充填した触媒層2の上流に設けられた第一熱交換器11を通過させられる。
【0066】
第一熱交換器11を通過した排ガスGは、次いで、ガス流路13を介し触媒層2の下流側に設けられた第二熱交換器12を通過させられた後、ガス流路14を介して前処理触媒3aを充填した前処理層3に導入される。
【0067】
前処理層3に導入された有機シリコン化合物は前処理触媒3aによって分解処理され、次いで、前処理層3の出口ガスはガス流路15を介して第一熱交換器11に導入され、排ガス導入口6から供給される未処理の排ガスGと熱交換される。
【0068】
ガス流路14には加熱手段4が設けられており、有機シリコン化合物を分解処理するのに充分な温度(400〜700℃)まで昇温された排ガスが前処理層3に導入されるため、その前処理触媒3aにおける有機シリコン化合物の吸着・分解により、前処理層3の出口排ガス温度(ガス流路15における)は、前処理層3の入口排ガス温度よりも高くなる。
【0069】
工場の生産プロセス等から排出される排ガスGの温度は、通常30〜60℃程度であるため、前処理層3の出口排ガスは、上記第一熱交換器11にて未処理排ガスGと熱交換されることにより冷却され、一方、排ガス導入口6から導入された未処理排ガスは昇温される。
【0070】
このように、第一熱交換器11で熱交換された有機シリコン化合物分解後のVOCガスは、酸化分解触媒2aでVOCを分解するのに適した250〜350℃に冷却され、ガス流路16を介し触媒層2の酸化分解触媒2aに導入される。それにより、VOCが酸化分解されて浄化ガスとなる。
【0071】
触媒層2における酸化分解にともなう分解熱によって、温度が上昇した浄化ガスは、ガス流路17を介して触媒層2の下流側に設けられた第二熱交換器12に導入され、その第二熱交換器12で熱交換(冷却)され、排気ガスとして大気に放出される。
【0072】
一方、第二熱交換器12で熱交換に供せされるもう一方の排ガス(ガス流路13から供給される)は昇温され、加熱手段4に供給される。加熱手段4では前処理触媒3aで有機シリコン化合物を十分に吸着・分解処理し得る温度(400〜700℃)に排ガスを加熱維持し、前処理層3に導入する。
【0073】
なお、第一熱交換器11にて熱交換されることにより昇温した未処理排ガスの温度が、前処理触媒3aで処理するのに適した温度である場合には、直接、前処理層3に導入することができ(図3参照)、前処理触媒3aが処理し得る温度に満たない場合には、加熱手段4を介して未処理排ガスの温度を加熱することができる(図6(a)参照)。
【0074】
触媒酸化処理装置10の各部の処理温度は、VOC排ガスの濃度によって変化するが一例を挙げると以下の通りである。
【0075】
例えば、加熱手段4によって加熱され、前処理層3に導入される排ガス温度が500℃である場合、前処理層3の出口温度は約550℃となる。
【0076】
次いで排ガスは第一熱交換器11に導入され、その第一熱交換器11によって未処理の排ガスGと熱交換されることにより約300℃まで冷却される。
【0077】
冷却された排ガスは次いで、触媒層2に導入され、酸化分解触媒2aによってVOCが酸化分解され、触媒層2から浄化ガスとして排出される。約700℃の浄化ガスは、次いで第二熱交換器12に導入され、約510℃まで冷却された後、放出される。
【0078】
一方、ガス流路13を介して供給され第二熱交換器12によって500℃まで昇温された排ガスは、ガス流路14を介して加熱手段4に供給され、前処理層3の前処理触媒3aに供せられる。
【0079】
なお、第二熱交換器12によって昇温された排ガス温度が上記したように500℃であれば、既に、有機シリコン化合物を十分に吸着・分解し得る処理温度に到達しているため、この場合、加熱手段4による加熱動作は必要がない。
【0080】
すなわち、本実施形態の触媒酸化処理装置10は、酸化分解後の排ガス温度に応じて加熱手段4を制御するように構成されており、例えば、第二熱交換器12からの排ガス温度、もしくは前処理触媒3aに導入する排ガス温度を検知する温度センサを設け、この温度センサから出力される温度信号に基づいて、加熱手段4をON−OFF制御するように構成されている。
【0081】
詳しくは、第一熱交換器11の受熱側のガス流路6−13間、若しくは放熱側のガス流路15−16間に第一熱交換器11のバイパス流路18を設け(図では受熱側のガス流路6−13をバイパスするバイパス流路18を示している)、バイパス流路18内に自動制御ダンパ19を設置するとともに、触媒層2への排ガス導入流路16の温度を検知する温度センサ20を設け、この温度センサ20から出力される温度信号に基づいて、自動制御ダンパ19の開度を制御することで、ガス流路16の排ガス温度を制御することができる。
【0082】
また、第二熱交換器12の受熱側のガス流路13−14間、もしくは放熱側のガス流路17−7間に第二熱交換器12のバイパス流路21を設け(図では受熱側のガス流路6−13をバイパスするバイパス流路21を示している)、このバイパス流路21内に自動制御ダンパ22を設置すると共に、前処理層3への排ガスを導入するガス流路14の温度を検知する温度センサ23を設け、この温度センサ23から出力される温度信号に基づいて、この自動制御ダンパ22の開度を制御することで、ガス流路14の排ガス温度を制御することもできる。
【0083】
なお、図10では便宜上、選択的に設けられるバイパス流路18またはバイパス流路21を同一図面上に記載している。
【0084】
なお、上記加熱手段はON−OFF制御に限らず、温度センサによって検出される測定温度と予めメモリに設定されている設定温度と比較し、制御量と設定温度と差に比例して加熱手段4を制御するいわゆる比例制御を行なうものであってもよい。
【0085】
このように、バイパス流路18、21を設けてガス流路16、ガス流路14を流れる排ガス温度を制御できるように構成すれば、加熱手段4のON動作を必要最小限にすることができ、それにより、エネルギーを節約することができる。
【0086】
以上、説明したように、図10に示す触媒酸化処理装置10は、VOCの酸化分解にともなって発生する分解熱を第二熱交換器12で回収し、補助的な加熱手段4との併用で、前処理触媒3aでの有機シリコン化合物の分解を行うように構成されている(図8参照)。
【0087】
また、図10では、第一熱交換器11からの排ガスをガス流路13を通じて第二熱交換器12に導入したが、第二熱交換器12を独立して設け未処理排ガスを取り込むように構成することもでき(図4参照)、また、第二熱交換器12からの排ガスを加熱手段4で加熱した後、前処理層3に導入することもできる(図7参照)。
【0088】
また、上記した触媒酸化処理装置10は、基本的にガスの流れがワンパスであって、ガスの流路を切り替えるダンパ類が不要であることから、装置を非常にシンプルに構成することができる。したがって、従来の蓄熱燃焼システムと比較して、コスト的にも有利となる。
【0089】
さらに、触媒毒に対抗させるための前処理触媒3aとVOC分解用の酸化分解触媒2aとを別々の層に充填するように構成しているため、触媒の充填量が任意に設定でき、触媒交換にかかる労力も少なくて済むという利点がある。
【実施例】
【0090】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、本発明の評価は、図10に示す触媒酸化処理装置にて行った。
【0091】
前処理触媒3aには活性アルミナを担持した、充填比重0.45g/ccのセラミックハニカムを適用し、酸化分解触媒2aにパラジウムを0.4wt担持した充填比重0.65g/ccのコージライトハニカムを適応した。
【0092】
次に、有機シリコン化合物含有VOCガスGとしてトルエン3000ppm、ヘキサメチルジシラザン2ppmを含有した60℃の空気を排ガス導入口6から10m3/minの風量で導入し、その際の排ガス導入口6と排ガス排出口7のガス濃度を総炭化水素計により連続して測定し、装置の除去率η(%)の経時変化を確認した。
【0093】
ここで、除去率η(%)=(排ガス導入口ガス濃度−排ガス排出口ガス濃度)/排ガス導入口ガス濃度×100により求まる。
【0094】
前処理触媒3aの空間速度SVは40000(1/hr)、酸化分解触媒2aの空間速度は40000(1/hr)とし、加熱手段4として電気ヒータを適応し500℃まで加熱して前処理層3へ導入した。
【0095】
図11は除去率の経時変化をグラフに表したものである。
【0096】
同グラフにおいて、運転開始直後の初期除去率ηは99.9%と極めて高い性能を示している。このときのガス流路15の温度は550℃となり、第一熱交換器11へ導入されて熱交換された後のガス流路16の温度は300℃となり、このガス温度の排ガスが触媒槽2へ導入される。酸化分解処理後のガス流路17では700℃となる。
【0097】
このように、前処理触媒3aと酸化分解触媒2aとに分割し、両者の間で一旦、冷却する事で、酸化分解触媒2aの入口と出口の温度差を多くすることができる。それにより、VOCの酸化分解時の昇温が大きくても酸化分解触媒を耐熱温度以下で処理させることが可能となり、排ガスに有機シリコン化合物が含まれていても寿命を延長させる効果が高くなる。また、前処理触媒3aの温度を500℃と高くしても、高濃度のVOCの処理が可能となる。
【0098】
また、第二熱交換器12へ導入され熱交換後に排ガス排出口7の温度は510℃となる。排ガス導入口6より第一熱交換器11へ導入され熱交換された後、ガス流路13の排ガス温度は300℃であり、第二熱交換器12へ導入され熱交換された後、ガス流路14の温度は500℃となる。この段階で熱回収が充分になされているので電気ヒータ(加熱手段)4をフルに使用する必要がなく、電力を大幅に削減することできる。
【0099】
また、前処理触媒3aを高温化していることで、除去率が99%まで低下するのに前処理触媒温度が300℃では100min(グラフ中、C点の処理時間)であったのに対して、500℃にすることで400min(グラフ中、D点の処理時間)と約4倍の有機シリコン化合物による酸化分解触媒の寿命を保つことができた。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の触媒酸化処理装置の基本構成を示す模式図である。
【図2】図1の構成に加熱手段を加えた構成を示す模式図である。
【図3】図1の冷却手段として第一熱交換器を備えた構成を示す模式図である。
【図4】図1の構成に第二熱交換器を備えた構成を示す模式図である。
【図5】(a)および(b)は、冷却手段として第一熱交換器を備えた構成を示す模式図である。
【図6】(a)は図3のガス流路に加熱手段を、(b)は図5(b)のガス流路に加熱手段をそれぞれ設けた構成を示す模式図である。
【図7】図4のガス流路に加熱手段を設けた構成を示す模式図である。
【図8】図5(a)のガス流路に加熱手段を設けた構成を示す模式図である。
【図9】本発明に係る触媒酸化処理装置の基本構成を示すブロック図である。
【図10】本発明に係る触媒酸化処理装置の全体構成を示すブロック図である。
【図11】本発明による除去率の経時変化を示すグラフである。
【図12】従来の触媒燃焼方式の概略構成を示す説明図である。
【図13】従来の蓄熱燃焼方式の概略構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0101】
1 触媒酸化処理装置
2 触媒層
2a 酸化分解触媒(酸化触媒)
3 前処理層
3a 前処理触媒
4 加熱手段
5 冷却手段
6 排ガス導入口
7 排ガス排出口
10 触媒酸化処理装置
11 第一熱交換器
12 第二熱交換器
13 ガス流路
14 ガス流路
15〜17 ガス流路
18 バイパス流路
19 自動制御ダンパ
20 温度センサ
21 バイパス流路
22 自動制御ダンパ
23 温度センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス中に含まれる揮発性有機化合物を酸化触媒により酸化分解する触媒酸化処理装置において、
前記排ガス中に微量含まれる触媒毒を除去するための前処理触媒が、排ガス処理方向上流側に設けられるとともに、前記前処理触媒と前記酸化触媒とを結ぶガス流路に、前記前処理触媒からの排ガス温度を下げる冷却手段が介設されていることを特徴とする触媒酸化処理装置。
【請求項2】
前記前処理触媒の上流側ガス流路に、加熱手段が設けられている請求項1記載の触媒酸化処理装置。
【請求項3】
前記冷却手段として、前記前処理触媒の出口排ガスと未処理排ガスとで熱交換を行なう第一熱交換器を備え、未処理排ガスの第一熱交換器出口と前処理触媒入口とがガス流路で接続されている請求項1記載の触媒酸化処理装置。
【請求項4】
未処理排ガスと前記酸化触媒からの浄化ガスとを熱交換することにより未処理排ガスを加熱する第二熱交換器を有し、未処理排ガスの第二熱交換器出口と前処理触媒入口とがガス流路で接続されている請求項1記載の触媒酸化処理装置。
【請求項5】
前記冷却手段として、前記前処理触媒の出口排ガスと未処理排ガスとで熱交換を行なう第一熱交換器を備え、未処理排ガスの第一熱交換器出口と未処理排ガスの第二熱交換器入口とがガス流路で接続されている請求項4記載の触媒酸化処理装置。
【請求項6】
未処理排ガスと前記酸化触媒からの浄化ガスとを熱交換することにより未処理排ガスを加熱する第二熱交換器を有し、未処理排ガスの前記第二熱交換器出口と前記第一熱交換器入口がガス流路で接続されている請求項3記載の触媒酸化処理装置。
【請求項7】
前記第一熱交換器が直交型熱交換器により構成されている請求項3〜6のいずれか1項に記載の触媒酸化処理装置。
【請求項8】
前記第二熱交換器が直交型熱交換器により構成されている請求項4〜7のいずれか1項に記載の触媒酸化処理装置。
【請求項9】
未処理排ガスの第一熱交換器出口と前処理触媒入口とを接続しているガス流路に前記加熱手段が設けられている請求項3または6記載の触媒酸化処理装置。
【請求項10】
未処理排ガスの第二熱交換器出口と前記前処理触媒入口とを接続しているガス流路に前記加熱手段が設けられている請求項4または5に記載の触媒酸化処理装置。
【請求項11】
前記第二熱交換器の出口排ガス温度または前記酸化触媒入口側の排ガス温度を測定する温度センサを有し、この温度センサによって測定されるガス温度に基づいて前記加熱手段の加熱動作を制御することにより、ガス温度が400〜700℃に加熱維持された排ガスを前記前処理触媒に導入するように構成されている請求項2、9または10に記載の触媒酸化処理装置。
【請求項12】
排ガス中に含まれる揮発性有機化合物を酸化触媒により酸化分解する処理方法において、
前記排ガス中に微量含まれる触媒毒を分解あるいは除去するため、マンガン、アルミニウム、パラジウム、鉄、銅、銀、カルシウム、ナトリウム、コバルト、ニッケル、セリウム、インジウム、タングステン、マグネシウム、錫等の金属または金属酸化物の群から選択される1種以上のものからなる前処理触媒を用い、400〜700℃に加熱して、被毒物質の分解あるいは除去を行なった後、引き続き揮発性有機化合物を酸化分解することを特徴とする揮発性有機化合物の触媒酸化処理方法。
【請求項13】
前記金属または金属酸化物に代えてゼオライト、活性アルミナ、粘土鉱物等の無機系吸着剤を前処理触媒として用い、微量の触媒毒と揮発性有機化合物を含む排ガスを処理した後の排ガスを、PdまたはPt触媒を用いて酸化処理する請求項12記載の揮発性有機化合物の触媒酸化処理方法。
【請求項14】
排ガス中に微量含まれる触媒毒を除去するための前処理触媒に未処理排ガスを導入し、前記前処理触媒から排出される排ガスを所定の温度まで冷却し、冷却した排ガスをさらに酸化触媒に導入して排ガス中に含まれる揮発性有機化合物を酸化分解することを特徴とする触媒酸化処理方法。
【請求項15】
前記所定の温度を200〜500℃とする請求項14記載の触媒酸化処理方法。
【請求項16】
前記前処理触媒から排出される排ガスと未処理排ガスとを熱交換することによって前記未処理排ガスを加熱し、前記前処理触媒に導入する請求項14または15に記載の触媒酸化処理方法。
【請求項17】
前記前処理触媒から排出される排ガスの冷却に供せられて加熱した未処理排ガスを、さらに前記酸化触媒から排出される排ガスとの熱交換に使用して、未処理排ガスを予熱し、前記前処理触媒に導入する請求項16記載の触媒酸化処理方法。
【請求項18】
前記酸化触媒から排出される排ガスと未処理排ガスとを熱交換することによって前記未処理排ガスを加熱し、前記前処理触媒に導入する請求項14または15記載の触媒酸化処理方法。
【請求項19】
前記酸化触媒から排出される排ガスと熱交換して加熱された未処理排ガスを、さらに前記前処理触媒から排出される排ガスとの熱交換に使用し、未処理排ガスを十分予熱して前記前処理触媒に導入する請求項16記載の触媒酸化処理方法。
【請求項20】
前記前処理触媒に導入する未処理排ガスを加熱手段によって加熱した後、前記前処理触媒に導入する請求項14〜19のいずれか1項に記載の触媒酸化処理方法。
【請求項1】
排ガス中に含まれる揮発性有機化合物を酸化触媒により酸化分解する触媒酸化処理装置において、
前記排ガス中に微量含まれる触媒毒を除去するための前処理触媒が、排ガス処理方向上流側に設けられるとともに、前記前処理触媒と前記酸化触媒とを結ぶガス流路に、前記前処理触媒からの排ガス温度を下げる冷却手段が介設されていることを特徴とする触媒酸化処理装置。
【請求項2】
前記前処理触媒の上流側ガス流路に、加熱手段が設けられている請求項1記載の触媒酸化処理装置。
【請求項3】
前記冷却手段として、前記前処理触媒の出口排ガスと未処理排ガスとで熱交換を行なう第一熱交換器を備え、未処理排ガスの第一熱交換器出口と前処理触媒入口とがガス流路で接続されている請求項1記載の触媒酸化処理装置。
【請求項4】
未処理排ガスと前記酸化触媒からの浄化ガスとを熱交換することにより未処理排ガスを加熱する第二熱交換器を有し、未処理排ガスの第二熱交換器出口と前処理触媒入口とがガス流路で接続されている請求項1記載の触媒酸化処理装置。
【請求項5】
前記冷却手段として、前記前処理触媒の出口排ガスと未処理排ガスとで熱交換を行なう第一熱交換器を備え、未処理排ガスの第一熱交換器出口と未処理排ガスの第二熱交換器入口とがガス流路で接続されている請求項4記載の触媒酸化処理装置。
【請求項6】
未処理排ガスと前記酸化触媒からの浄化ガスとを熱交換することにより未処理排ガスを加熱する第二熱交換器を有し、未処理排ガスの前記第二熱交換器出口と前記第一熱交換器入口がガス流路で接続されている請求項3記載の触媒酸化処理装置。
【請求項7】
前記第一熱交換器が直交型熱交換器により構成されている請求項3〜6のいずれか1項に記載の触媒酸化処理装置。
【請求項8】
前記第二熱交換器が直交型熱交換器により構成されている請求項4〜7のいずれか1項に記載の触媒酸化処理装置。
【請求項9】
未処理排ガスの第一熱交換器出口と前処理触媒入口とを接続しているガス流路に前記加熱手段が設けられている請求項3または6記載の触媒酸化処理装置。
【請求項10】
未処理排ガスの第二熱交換器出口と前記前処理触媒入口とを接続しているガス流路に前記加熱手段が設けられている請求項4または5に記載の触媒酸化処理装置。
【請求項11】
前記第二熱交換器の出口排ガス温度または前記酸化触媒入口側の排ガス温度を測定する温度センサを有し、この温度センサによって測定されるガス温度に基づいて前記加熱手段の加熱動作を制御することにより、ガス温度が400〜700℃に加熱維持された排ガスを前記前処理触媒に導入するように構成されている請求項2、9または10に記載の触媒酸化処理装置。
【請求項12】
排ガス中に含まれる揮発性有機化合物を酸化触媒により酸化分解する処理方法において、
前記排ガス中に微量含まれる触媒毒を分解あるいは除去するため、マンガン、アルミニウム、パラジウム、鉄、銅、銀、カルシウム、ナトリウム、コバルト、ニッケル、セリウム、インジウム、タングステン、マグネシウム、錫等の金属または金属酸化物の群から選択される1種以上のものからなる前処理触媒を用い、400〜700℃に加熱して、被毒物質の分解あるいは除去を行なった後、引き続き揮発性有機化合物を酸化分解することを特徴とする揮発性有機化合物の触媒酸化処理方法。
【請求項13】
前記金属または金属酸化物に代えてゼオライト、活性アルミナ、粘土鉱物等の無機系吸着剤を前処理触媒として用い、微量の触媒毒と揮発性有機化合物を含む排ガスを処理した後の排ガスを、PdまたはPt触媒を用いて酸化処理する請求項12記載の揮発性有機化合物の触媒酸化処理方法。
【請求項14】
排ガス中に微量含まれる触媒毒を除去するための前処理触媒に未処理排ガスを導入し、前記前処理触媒から排出される排ガスを所定の温度まで冷却し、冷却した排ガスをさらに酸化触媒に導入して排ガス中に含まれる揮発性有機化合物を酸化分解することを特徴とする触媒酸化処理方法。
【請求項15】
前記所定の温度を200〜500℃とする請求項14記載の触媒酸化処理方法。
【請求項16】
前記前処理触媒から排出される排ガスと未処理排ガスとを熱交換することによって前記未処理排ガスを加熱し、前記前処理触媒に導入する請求項14または15に記載の触媒酸化処理方法。
【請求項17】
前記前処理触媒から排出される排ガスの冷却に供せられて加熱した未処理排ガスを、さらに前記酸化触媒から排出される排ガスとの熱交換に使用して、未処理排ガスを予熱し、前記前処理触媒に導入する請求項16記載の触媒酸化処理方法。
【請求項18】
前記酸化触媒から排出される排ガスと未処理排ガスとを熱交換することによって前記未処理排ガスを加熱し、前記前処理触媒に導入する請求項14または15記載の触媒酸化処理方法。
【請求項19】
前記酸化触媒から排出される排ガスと熱交換して加熱された未処理排ガスを、さらに前記前処理触媒から排出される排ガスとの熱交換に使用し、未処理排ガスを十分予熱して前記前処理触媒に導入する請求項16記載の触媒酸化処理方法。
【請求項20】
前記前処理触媒に導入する未処理排ガスを加熱手段によって加熱した後、前記前処理触媒に導入する請求項14〜19のいずれか1項に記載の触媒酸化処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−136841(P2009−136841A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−318737(P2007−318737)
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】
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