説明

計器

【課題】発光体の形状を簡素化し、その配置位置に自由度を持たせて発光体の輝度一定を図り、表示品位を向上させた計器を提供する。
【解決手段】計器10は、複数の計器類20と、見返し30と、表硝子31と、ケース32と、裏カバー33と、から概略構成されている。見返し30には、計器類20を取り囲むように環状の発光部50が設けられている。発光部50は、導光リング51と、光源52と、プリズム53と、から成る。導光リング51は、見返し30の先端部近傍に設けられた取付部30Tに固定されている。導光リング51は、導光体51Sと遮光体51Tとから基本的に構成されているが、拡散体51Uを含む構成としても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等の速度計やタコメータ等の計器類を備える計器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の計器に類するものとして、車両や船舶や飛行機等(以後まとめて車両等と言う)の乗り物に搭載される計器は知られている。この種の計器の一例を図4に示す(特許文献1参照)。
【0003】
図4(A)は従来の計器の要部の拡大断面図、図4(B)はその計器の斜視図である。従来の計器100の発光部500は、光源520と、光源520から文字板210間に位置する、一つの導光部材から成る導光体510Sと、導光体510Sの両側に隣接してハウジング部からなる見返し300と、から成る。そして、導光体510Sと見返し300とにより発光体510を形成している。また、導光体510Sの先端は、文字板210の外周を覆うように配置されている。
【0004】
図4(B)に示される、計器類200は、図面左側からタコメータ200c、スピードメータ200a、燃料計200dであり、各計器類200の外周に発光体510が設けられている。そして、夜間等、光源520を点灯させると、この光源520からの照光が、導光体510Sの後端部から入光して、この導光体510Sを介して、前端部から照射されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−257749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載される計器100においては、発光体510は、導光体510Sによる発光を提供しているが、見返し300の先端部に挟持されるように導光体510Sが配置されている。このため、見返し300の外観形状等に制約されて図4(B)に示される通り、各計器類200の周辺のみに配置され、単なる略円形状にすぎず設計自由度が少なく、計器100全体の外観意匠に対応困難である。特に、車両用の計器100は、その用途以外に、ドライバーの目に触れる位置にあるため、表示品位を向上させる要求があるが、その要求に追従できない欠点がある。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、発光体の形状を簡素化し、その配置位置に自由度を持たせて発光体の輝度一定を図り、表示品位を向上させた計器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、本発明に係る計器は、下記(1)〜(4)を特徴としている。
(1) 少なくとも一つ以上の計器類を備え、前記計器類の周辺に配置される見返しと、ケースと、裏カバーと、を含む計器であって、
導光リングと、光源と、前記導光リングと前記光源との間に配置されたプリズムと、から成る発光部をさらに備え、
前記発光部は、前記計器類の文字板外周を覆うように環状に配置され、
前記導光リングは、導光体と遮光体とから成り、
前記遮光体は、前記導光体を覆うように前記導光体と一体的に形成され、
前記導光リングは、前記見返しの先端部近傍に設けられた取付部に固定されたこと。
(2) 上記(1)の構成の計器において、
前記導光体は、先端に向かって漸次または段階的に細幅に形成され、前記導光体の先端が前記遮光体に比べ突出するように配置されたこと。
(3) 上記(1)または(2)の構成の計器において、
前記導光リングは、前記導光体の後部に配置された拡散体を備えること。
(4) 上記(1)〜(3)のいずれか一つの構成の計器において、
前記プリズムは、前記見返しに形成された脚内に配置され、前記導光リングと離間して配置されていること。
【0009】
上記(1)の構成の計器によれば、光源の光が確実にプリズムを介して導光リングの導光体に導かれ、導光体に入射した光は、遮光体により外部に漏れることなく導光体先端で一定の輝度を保って発光し、立体感のある導光リングを備える計器を提供できる。
上記(2)の構成の計器によれば、導光体の先端での発光効率が向上し安定した発光が得られる。
上記(3)の構成の計器によれば、プリズムを透過してきた光源光を拡散体内で拡散させ、導光体からムラのない発光をさせることができる。
上記(4)の構成の計器によれば、プリズム内で一定方向に導光した光を導光体に導かせることができ、プリズム内での光の減衰を極力抑えることできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、計器類の配置に合わせて導光リングを自由に配置でき、また、見返しの奥行き形状に追従して光源光を確実に導光体に導くことができ、特に夜間等の計器類の外観品質を向上させた計器を提供できる。
【0011】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る計器の一実施形態を示す断面図である
【図2】図1に係る導光リングを示し、図2(A)は図1のII(A)部の拡大図であり、図2(B)は図1のII(B)部の拡大図である。
【図3】図1に係る計器の正面図である。
【図4】図4(A)は従来の計器の要部の拡大断面図、図4(B)はその計器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る好適な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
図1に基づいて、本発明の一実施形態である計器10を説明する。
【0015】
図1は、計器10の要部を示す断面図である。計器10は、概略的には、計器10の略中央部に配置された複数の計器類20と、計器類20の文字板21と指針22を取り囲むように計器10の外周に配置された見返し30と、見返し30の前端を覆う表硝子31と、見返し30の後端に配置されたケース32と、ケース32の後端を覆う裏カバー33と、から構成されている。ケース32の前部(見返し30側)には文字板21が取り付けられ、ケース32の後部(裏カバー33側)には配線板40が取り付けられている。配線板40の後部には、指針22を回動自在に駆動するモーター等が設けられた内機41が取り付けられている。
【0016】
見返し30には、計器類20を取り囲むように環状の発光部50が設けられている。発光部50は、見返し30の前端に位置する先端近傍で表硝子31に近接して配置される計器用導光リング51(以下、導光リング51と言う)と、配線板40に実装されるLED等から成る光源52と、光源52の光を導光リング51に導くためのアクリル等の光透過性合成樹脂材料から成るプリズム53と、から成る。また、光源52は、環状に配置されるプリズム53に沿って複数設けられている。なお、導光リング51の配置例は図3にて詳述する。
【0017】
また、プリズム53の配置状態は、見返し30の上部(図1の上方向)と下部(図1の下方向)とでは異なっている。即ち、見返し30の上部では、プリズム53は見返し30の脚30Sの内部に配置され、同時に、光源52(光源52aとして図示してある)とリング照明用配線板40Sも脚30S内に配置されている。一方、見返し30の下部では、プリズム53の前部は脚30S内に配置されているが、プリズム53の後部はケース32を貫通し、その後端は、配線板40に実装されている光源52(光源52bとして図示してある)に近接して配置されている。
【0018】
そして、光源52から発光した光は、プリズム53を透過して一定の方向性を持って導光し、プリズム53の光の出射面と離間した位置にある導光リング51に入射する。プリズム53の長さを調整することによりプリズム53内の光の減衰を極力抑えることが可能となる。同時に、導光リング51内に入射する光量調整が可能となり、導光リング51の所望の発光が可能となる。
【0019】
図2を用いて、導光リング51を詳述する。図2(A)は図1のII(A)部の拡大図であり、図2(B)は図1のII(B)部の拡大図である。
【0020】
導光リング51は、ポリカーボネイトやアクリル等の光透過性樹脂から成る導光体51Sと、導光体51Sの外面を覆い隠すように配置されるABS樹脂等の不透過性樹脂から成る遮光体51Tと、から基本的に構成されている。遮光体51Tは、導光体51S内を透過する光の外部への漏れを防止し、導光体51Sの発光効率を向上させることができる。
【0021】
また、導光体51Sは、先端に向かって漸次または段階的に細幅となり、先端が遮光体51Tの先端よりもやや突出している。即ち、遮光体51Tの中央部に導光体51Sの先端が露出している状態になる。先端細幅の導光体51Sと遮光体51Tとにより、導光体51Sの発光輝度を調整することができ、所望の明るさを得ることができる。
【0022】
更に、遮光体51Tの表面を光沢性のある成形または塗装等を施すことにより、導光体の51Sの先端側方に広がる光を利用して、遮光体51T表面を光らせることができる。また、遮光体51Tの材料色を変えたりすることにより意匠的な効果をもたらすこともできる。
【0023】
導光リング51は、基本的に導光体51Sと遮光体51Tとから構成されていることを上述したが、ポリカーボネイトやアクリル等の光透過性樹脂から成る拡散体51Uを導光体51Sの後部に配置し、この拡散体51Uを含む構成としても良い。拡散体51Uには、光源52の光が拡散体51U内を通過する際に拡散するよう、シボ加工等が施される。または、金属等の粉末を混合してもよい。
【0024】
光源52から出射した光は、プリズム53を透過して拡散体51Uに入射し、拡散体51U内で拡散し、導光体51Sに入射する。一般的に光源52に対応した導光体51Sの出射面では、他の部分に比較してやや強い光の出光が見られる傾向にあり、光のムラとして観測されることがある。拡散光を用いることにより、導光体51Sの発光ムラを解消できる。
【0025】
導光体51Sと遮光体51Tとは、インサート成形や2色成形法により一体成形しても良く、2部材を成形後、一体的に接合しても良い。導光体51Sと遮光体51Tとから成る導光リング51は、見返し30の先端部近傍に設けられた取付部30Tに組み付けられて固定される。拡散体51Uが導光体51Sに一体的に形成されている場合は、導光リング51の一構成部品として取付部30Tに取り付けられるが、見返し30の脚30Sに一体的に形成されている場合は、導光体51Sの後部に離間して配置される。
【0026】
導光リング51の断面形状は、図2(A)、図2(B)を比較しても明らかなように、見返し30の上部と下部とでは異なっている。上部の導光リング51の導光体51Sでは、遮光体51Tから突出する形状は略平坦状を成しているが、下部の導光体51Sでは、傾斜している。また、上部の遮光体51Tは、導光体51Sを挟んで略同形状であるが、下部では、長さが異なっている。
【0027】
一方、導光リング51の取付位置も、図1より明らかなように、見返し30の上部と下部の前後位置が異なっているばかりでなく、その中間部が湾曲して立体的に形成されている。即ち、導光リング51の取付位置が変位している。
【0028】
このように導光リング51の形状及び取付位置を場所によって異ならせるとともにその中間部を湾曲させることにより立体感のある導光リング51を提供できる。また、導光リング51の位置関係も同様である。従って、立体感ある導光リング51を提供できる。
【0029】
図3に基づいて、導光リング51の配置の一形態を説明する。図3は、本発明に係る計器の一実施形態を示す正面図である。
【0030】
計器10には、複数の計器類20が配列されている。シフトインジケータ60の左側(図面左側)には速度計20aと水温計20bが配置され、右側(図面右側)にはタコメータ20cと燃料計20dが配置されている。本発明に係る導光リング51は、シフトインジケータ60の左側では速度計20aと水温計20bとを取り囲むように設けられ、右側ではタコメータ20cと燃料計20dとを取り囲むように設けられている。即ち、単一の計器類20の周辺に導光リング51を設けるばかりでなく、本発明の一実施形態で示されるように、複数の計器類20を取り囲むことも可能であり、デザインの要求に合わせて配置が適宜可能である。
【0031】
見返し30は、計器10の外観形状を構成する部品であり、その外観形状は、車両室内のデザイン等の制約により限定されている。本発明に係る導光リング51であれば見返し30の外観形状や奥行き形状に制約される必要が無く、計器10に要求される表示品位の向上に基づいて計器類20の周辺に自由に配置することができる。
【0032】
以上、本発明の一実施形態に係る計器10は、少なくとも一つ以上の計器類20を備え、計器類20の周辺に配置される見返し30とケース32と裏カバー33とを含み、発光部50は、導光リング51と、光源52と、導光リング51と光源52との間に配置されたプリズム53とから成る。また、発光部50は、計器類20の文字板21の外周を覆うように環状に配置され、導光体51Sと遮光体51Tとから成る導光リング51が、見返し30の先端部近傍に設けられた取付部30Tに固定されたことを特徴としている。
【0033】
この構成により、光源52の光が確実にプリズム53を介して導光リング51の導光体51Sに導かれ、導光体51Sに入射した光は、遮光体51Tにより外部に漏れることなく導光体51S先端で一定の輝度を保って発光し、立体感のある導光リング51を備える計器10を提供できる。
【0034】
また、本発明の一実施形態に係る計器10は、導光体51Sが、先端に向かって漸次または段階的に細幅に形成され、導光体51Sの先端が遮光体51Tに比べ突出するように配置されたこと特徴としている。この構成により、導光体51Sの先端での発光効率が向上し安定した発光が得られる。
【0035】
更に、本発明の一実施形態に係る計器10は、導光リング51が、導光体51Sの後部に配置された拡散体51Uを備えていることを特徴としている。この構成により、プリズム53を透過してきた光源光を拡散体51U内で拡散させ、導光体51Sからムラのない発光をさせることができる。
【0036】
そして、本発明の一実施形態に係る計器10は、プリズム53が、見返し30に形成された脚30S内に配置され、導光リング51と離間して配置されていることを特徴としている。この構成により、プリズム53内で一定方向に導光した光を導光体51Sに導かせることができ、プリズム53内での光の減衰を極力抑えることできる。
【0037】
本発明の一実施形態に係る計器用導光リング51は、計器10の見返し30に配置され、導光リング51は、導光体51Sと遮光体51Tとから成り、遮光体51Tは、導光体51Sを覆うように導光体51Sと一体的に形成され、導光リング51は、見返し30の先端部近傍に設けられた取付部30Tに固定され、計器10の計器類20の文字板21外周を覆うように環状に配置されていることを特徴としている。この構成により、導光リング51は単一体として扱うことができ、見返し30の形状に合わせて自由に配置することが可能であり、遮光体51Tにより導光体51Sの先端のみの光をコントロールすることができ、計器類20の外観品質を向上させることができる。
【0038】
また、本発明の一実施形態に係る計器用導光リング51は、導光体51Sが、先端に向かって漸次または段階的に細幅に形成され、導光体51Sの先端が遮光体51Tに比べ突出するように配置されたことを特徴としている。この構成により、導光体51Sの先端での発光効率が向上し所望の輝度が確保された安定した発光が得られる。
【0039】
更に、本発明の一実施形態に係る計器用導光リング51は、導光体51Sの後部に配置された拡散体51Uを備えることを特徴としている。この構成により、導光体51Sに入射する光の強弱を緩和させ、よりムラのない光が導光体51Sから発光させることができる。
【0040】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0041】
導光リング51が見返し30の取付部30Tに固定されていることを上述したが、取付部30Tは見返し30の全周に設けても良く、部分的であっても良い。導光リング51が、計器10内の所定の位置に安定して固定されていれば良く、導光リング51の配置される場所等により、取付部30Tを自由に設定できる。
【0042】
見返し30も導光リング51と同様に導光材料と遮光材料の組合せによる成形品とすることにより、見返し30からの発光も可能となる。また、透過材料を拡散材料とすることにより、発光の均一性を向上させることも可能である。
【符号の説明】
【0043】
10 計器
20 計器類
21 文字板
30 見返し
30S 脚
30T 取付部
31 表硝子
32 ケース
33 裏カバー
50 発光部
51 計器用導光リング
51S 導光体
51T 遮光体
51U 拡散体
52 光源
53 プリズム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つ以上の計器類を備え、前記計器類の周辺に配置される見返しと、ケースと、裏カバーと、を含む計器であって、
導光リングと、光源と、前記導光リングと前記光源との間に配置されたプリズムと、から成る発光部をさらに備え、
前記発光部は、前記計器類の文字板外周を覆うように環状に配置され、
前記導光リングは、導光体と遮光体とから成り、
前記遮光体は、前記導光体を覆うように前記導光体と一体的に形成され、
前記導光リングは、前記見返しの先端部近傍に設けられた取付部に固定されたことを特徴とする計器。
【請求項2】
前記導光体は、先端に向かって漸次または段階的に細幅に形成され、前記導光体の先端が前記遮光体に比べ突出するように配置されたことを特徴とする請求項1に記載した計器。
【請求項3】
前記導光リングは、前記導光体の後部に配置された拡散体を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載した計器。
【請求項4】
前記プリズムは、前記見返しに形成された脚内に配置され、前記導光リングと離間して配置されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載した計器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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