説明

計測システム

【課題】低コストで、しかもセンサの校正が容易な計測システムを提供する。
【解決手段】PH計測システムは、計測器本体1と、計測器本体1に対し着脱可能とされたセンサモジュール2Aと、センサモジュール2Aに接続されるPHセンサ3Aとから構成される。センサモジュール2Aには、PHセンサ3Aからのアナログ信号を増幅する増幅器21と、増幅器21で増幅されたアナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換器22と、センサモジュール2Aにおける計測動作に必要な制御を実行する制御部23と、PHセンサ3Aの校正情報を格納する不揮発性メモリ24とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサと、センサの校正情報を記憶する記憶媒体と、センサおよび記憶媒体が接続され、計測に必要な機能を備える計測器本体と、を備える計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工業用途で使用されるPH計測システムとして、ガラスPH変換器が一般的に用いられている。しかし、ガラスPH変換器は経時変化が大きく定期的に標準液を用いた校正を行う必要がある。
【特許文献1】実公平7−23737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、ガラスPH変換器の設置場所が危険な場所、あるいは屋外の場合等には、校正作業に大きな負担がかかる。
【0004】
校正作業の負担を軽減できるシステムとして、PHセンサ自体に校正情報を保持させるものも開発されている。このようなシステムでは、作業し易い環境下で校正作業を行うことができ、校正作業により得た校正情報をセンサ内部に格納することができる。しかし、PH電極の消耗によりPHセンサを交換する際にはPHセンサに内蔵された電子回路ごと廃棄するしかなく、コスト増を招く。また、一般的なPHセンサをシステムに適用することもできない。
【0005】
本発明の目的は、低コストで、しかもセンサの校正が容易な計測システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の計測システムは、センサと、前記センサの校正情報を記憶する記憶媒体と、前記センサおよび前記記憶媒体が接続され、計測に必要な機能を備える計測器本体と、を備える計測システムにおいて、前記センサおよび前記記憶媒体を、前記計測器本体に対して着脱可能としたことを特徴とする。
この計測システムによれば、センサおよび記憶媒体を、計測器本体に対して着脱可能としたので、センサの校正が容易でコスト上昇を回避できる。
【0007】
前記センサおよび前記記憶媒体は携帯可能であってもよい。
【0008】
前記記憶媒体は前記計測器本体に対して着脱可能とされたモジュールに設けられていてもよい。
【0009】
前記センサは、前記モジュールに対して着脱可能とされていてもよい。
【0010】
前記モジュールには、前記計測器本体からの電源供給を受けて計測に必要な制御を実行する制御部が設けられていてもよい。
【0011】
前記モジュールには、前記計測器本体からの電源供給を受けて前記センサからの信号を増幅する増幅器が設けられていてもよい。
【0012】
前記モジュールには、前記計測器本体からの電源供給を受けて前記センサからの信号をAD変換するAD変換器が設けられていてもよい。
【0013】
前記計測器本体には前記センサから得られた情報を表示する表示部が設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の計測システムによれば、センサおよび記憶媒体を、計測器本体に対して着脱可能としたので、センサの校正が容易でコスト上昇を回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図1〜図3を参照して、本発明による計測システムをPH計測システムに適用した実施形態について説明する。
【0016】
図1は、本実施形態の計測システムの構成を示すブロック図である。
【0017】
図1に示すように、このPH計測システムは、計測器本体1と、計測器本体1に対し着脱可能とされたセンサモジュール2Aと、センサモジュール2Aに接続されるPHセンサ3Aとから構成される。
【0018】
計測器本体1は、システム全体に電力を供給する電源部11と、センサモジュール2A等を収容する収容部12と、PH計測結果等の必要な情報を表示する表示部13と、センサモジュール2Aとの間での通信および表示部13の表示を制御する制御部14と、を備える。
【0019】
図1に示すように、収容部12には2つのセンサモジュールを同時に収容でき、同時に2組のPHセンサを使用することが可能とされている。図1には、PHセンサ3Aとセンサモジュール2Aと、およびPHセンサ3Bとセンサモジュール2Bとを、それぞれ組み合わせて使用する例を示している。
【0020】
図2はセンサモジュール2Aの構成を示すブロック図である。
【0021】
図2に示すように、センサモジュール2Aには、PHセンサ3Aからのアナログ信号を増幅する増幅器21と、増幅器21で増幅されたアナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換器22と、センサモジュール2Aにおける計測動作に必要な制御を実行する制御部23と、PHセンサ3Aの校正情報を格納する不揮発性メモリ24とを備える。
【0022】
センサモジュール2Aを計測器本体1の収容部12(図1)に差し込むことで、電源部11からセンサモジュール2Aへの電力供給およびセンサモジュール2Aと計測器本体1との間の通信が可能とされている。増幅器21、AD変換器22、制御部23および不揮発性メモリ24は、電源部11から供給された電力により動作する。また、計測器本体1およびセンサモジュール2A間の通信は、制御部14および制御部23の制御に従って行われる。
【0023】
なお、センサモジュール2Aとセンサモジュール2B(図1)の構成は同一であり、内部の校正情報のみが異なる。
【0024】
図3は、センサモジュール2AおよびPHセンサ3A間の接続状態を示す図である。
【0025】
図3に示すように、PHセンサ3Aから引き出されたケーブル31の先端にコネクタ32が接続されている。コネクタ32をセンサモジュール2Aに差し込むことで、センサモジュール2AおよびPHセンサ3Aが互いに接続される。予めコネクタ32をセンサモジュール2Aに差し込んだ状態で、センサモジュール2Aを計測器本体1の収容部12に差し込むことで、センサモジュール2AおよびPHセンサ3Aを計測器本体1に接続できる。PHセンサ3Aの移動時には、センサモジュール2Aを収容部12から抜き取ることで、センサモジュール2AをPHセンサ3Aとともに取り外すことができる。
【0026】
なお、コネクタ32を用いてセンサモジュール2AおよびPHセンサ3Aを接続する代わりに、ケーブル31の先端側をセンサモジュール2Aに着脱可能な状態でねじ止めしてもよい。
【0027】
このように、PHセンサ3Aをセンサモジュール2Aに対して着脱可能とすることにより、PHセンサ3Aとして一般的なガラス電極PHセンサを使用することが可能となる。また、PHセンサ3Aは消耗品であり交換が必要となる。しかし、PHセンサ3Aを交換する場合には、センサモジュール2A内の校正情報のみを更新すればよいため、センサモジュール2Aを恒久的に使用でき経済的である。
【0028】
PHセンサ3Aの校正は、PHセンサ3Aをセンサモジュール2Aとともに、例えば、安全で作業性のよい実験室等に配置された計測器本体1に接続した状態で行うことができる。校正情報は制御部14および制御部23との間の通信に基づく制御によって、自動的に取得される。そのときの当該PHセンサ3Aの校正情報、すなわち、計測対象物である標準液のPHと、PHセンサ3Aの信号値との関係は、不揮発性メモリ24に格納される。不揮発性メモリ24に格納された校正情報は、制御部23の制御に基づいてAD変換器22におけるAD変換動作に反映される。
【0029】
PHセンサ3Aの使用時には、PHセンサ3Aとともにセンサモジュール2Aを計測現場に持ち込み、センサモジュール2Aを計測現場に設置された計測器本体1に差し込む。計測現場で改めて校正作業を行わなくともPH計測が可能となる。なお、センサの校正はセンサ交換後のみならず、適時、実施できる。例えば、センサの校正を定期的に実施してもよい。
【0030】
PH計測時には、PHセンサ3Aからの信号は不揮発性メモリ24に格納された校正情報に基づいて正確なPH値に変換される。そのPH値が制御部23および制御部14の間の通信に基づいて表示部13に表示される。
【0031】
上記実施形態では、センサモジュールを計測器本体に対し着脱可能としているが、校正情報を格納する記憶媒体のみを計測器本体に対し着脱可能とし、センサモジュールの他の機能を計測器本体に設けてもよい。この場合、センサモジュールを携帯する代わりに、記憶媒体をセンサとともに携帯すればよい。また、この場合、記憶媒体の着脱部位とは別の部位においてセンサを計測器本体に対して直接着脱可能としてもよい。
【0032】
また、上記実施形態では、計測器本体に対してセンサモジュールを介してセンサを着脱可能としているが、センサモジュールの着脱部位(収容部12)とは別の部位においてセンサを計測器本体に対して直接着脱可能としてもよい。
【0033】
上記実施形態では、PH計測システムについて説明したが、本発明の計測システムにおける計測対象はこれに限定されない。例えば、本発明の計測システムを、DO(溶存酵素)計などに適用することもできる。本発明の計測システムは、センサの校正が必要な計測システムに広く適用できる。
【0034】
本発明の適用範囲は上記実施形態に限定されることはない。本発明は、センサと、センサの校正情報を記憶する記憶媒体と、センサおよび記憶媒体が接続され、計測に必要な機能を備える計測器本体と、を備える計測システムに対し、広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】一実施形態の計測システムの構成を示すブロック図。
【図2】センサモジュールの構成を示すブロック図。
【図3】センサモジュールおよびPHセンサ間の接続状態を示す図。
【符号の説明】
【0036】
1 計測器本体
2A センサモジュール(モジュール)
3 PHセンサ(センサ)
21 増幅器
22 AD変換器
23 制御部
24 不揮発性メモリ(記憶媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサと、前記センサの校正情報を記憶する記憶媒体と、前記センサおよび前記記憶媒体が接続され、計測に必要な機能を備える計測器本体と、を備える計測システムにおいて、
前記センサおよび前記記憶媒体を、前記計測器本体に対して着脱可能としたことを特徴とする計測システム。
【請求項2】
前記センサおよび前記記憶媒体は携帯可能であることを特徴とする請求項1に記載の計測システム。
【請求項3】
前記記憶媒体は前記計測器本体に対して着脱可能とされたモジュールに設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の計測システム。
【請求項4】
前記センサは、前記モジュールに対して着脱可能とされていることを特徴とする請求項3に記載の計測システム。
【請求項5】
前記モジュールには、前記計測器本体からの電源供給を受けて計測に必要な制御を実行する制御部が設けられていることを特徴とする請求項3または4に記載の計測システム。
【請求項6】
前記モジュールには、前記計測器本体からの電源供給を受けて前記センサからの信号を増幅する増幅器が設けられていることを特徴とする請求項3または4に記載の計測システム。
【請求項7】
前記モジュールには、前記計測器本体からの電源供給を受けて前記センサからの信号をAD変換するAD変換器が設けられていることを特徴とする請求項3または4に記載の計測システム。
【請求項8】
前記計測器本体には前記センサから得られた情報を表示する表示部が設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の計測システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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