計測方法および装置
【課題】超音波センサ計測を高精度化させたい。
【解決手段】第1取得部52は、送信用センサ14から送信すべきパルス状のチャープ信号を参照信号206として取得する。第2取得部54は、送信用センサ14から送信された後、送信用センサ14と受信用センサ18との間に設置された測定物16を経由して、受信用センサ18において受信されたパルス状のチャープ信号を受信信号204として取得する。測定部56は、第1取得部52において取得したパルス状のチャープ信号のピーク位置と、第2取得部54において取得したパルス状のチャープ信号のピーク位置との差異をもとに、送信用センサ14から受信用センサ18へ至る測定物16の距離を測定する。
【解決手段】第1取得部52は、送信用センサ14から送信すべきパルス状のチャープ信号を参照信号206として取得する。第2取得部54は、送信用センサ14から送信された後、送信用センサ14と受信用センサ18との間に設置された測定物16を経由して、受信用センサ18において受信されたパルス状のチャープ信号を受信信号204として取得する。測定部56は、第1取得部52において取得したパルス状のチャープ信号のピーク位置と、第2取得部54において取得したパルス状のチャープ信号のピーク位置との差異をもとに、送信用センサ14から受信用センサ18へ至る測定物16の距離を測定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測技術に関し、特に測定物の距離を測定する計測方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動化が進んだ工業製品に代表される様々な分野で超音波センサが用いられている。例を挙げれば、ガラス等の透明体検出、ポンプ等の監視診断装置、超音波距離計、AE(Acoustic Emission)エネルギーの検出によるバイト・ドリルの損傷事前検知と、その応用は活発であり、適用範囲も広い(例えば、非特許文献1、2参照)。このように、AEを含めた広義での超音波センサ計測技術は今後の発展と適用範囲のさらなる拡大が期待されている。中でも、構造物等に対する厚さ計測は、製造時や保守検査時ともに極めて重要な項目である(例えば、非特許文献1参照)。また、高度経済成長期に建設された多くの構造物に対する寿命予測や保守検査の必要性が高まってきており、厚さ計測技術は今後ますますその重要性を増してくるものと考えられる(例えば、非特許文献3参照)。
【0003】
そのような中にあって、現在、超音波センサを用いた厚さ計測は、矩形パルス波を送信しそのエコーを受信するとともに、送受信信号間での伝播遅延時間を測定するというような原理に基づいた計測方式(以後、一般方式と称する)が主流として用いられている(例えば、非特許文献4、5参照)。しかしながら、一般方式においては、計測に使用するための送受信信号から得る情報量が少ないことに起因して、雑音の影響による誤差や閾値設定等の問題から高い計測精度が得られないことが指摘されている(例えば、非特許文献1、5参照)。一方、周波数の異なる2つのバースト波を送信し、これに対応する2つの受信信号の位相検出に基づいた超音波距離計測法が一部で提案され、その有効性が報告されている例えば、非特許文献5参照)。
【0004】
ところで、精密計測レーダ技術の分野に視点を向けると、レーダ計測における目標距離計測の精度向上を目的にチャープパルス方式が広く用いられてきている(例えば、非特許文献6参照)。このチャープパルス方式とはチャープ波、すなわち周波数掃引波として特徴を持たせたパルス信号を送受信し、送受信信号それぞれに対してパルス圧縮処理を適用することによって計測分解能を向上させるものである(例えば、非特許文献6参照)。さらには、時間領域MUSIC法を適用することで距離計測精度をさらに向上させようとする試みも一部において、実機レベルでの検討が行われている(例えば、非特許文献7参照)。
【0005】
【非特許文献1】谷腰欣司、超音波とその使い方、日刊工業新聞社、92-102、1995
【非特許文献2】尾崎健司、渡部幸夫、兼本 茂、日隈幸治、荒川勝廣、山田益久、海水ポンプ監視診断装置の実機適用研究、日本機械学会第3回評価・診断に関するシンポジウム講演論文集、68-70、2004
【非特許文献3】島川正憲、超音波工学―理論と実際―、工業調査会、1-6、12-19、1975
【非特許文献4】JIS Z 2355、超音波パルス反射法による厚さ測定方法
【非特許文献5】木村友則、和高修三、三須幸一郎、永塚勉、田治米徹、小池光裕、2周波数位相検出による高分解能超音波距離計測法、日本音響学会誌、52、3、179-185、1996
【非特許文献6】吉田孝、改訂レーダ技術、電子情報通信学会、19、274-279、1996
【非特許文献7】Michio UNEDA, Hirokazu HOKAZONO: DOA Estimation Characteristics of the MUSIC Algorithm for the Actual Extended Targets of the Tracking Radar, Proceedings of IEEE RadarConference 2002, CD-ROM, (2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のような、超音波センサ計測について、高精度化が要求される。特に、チャープバースト波の送受信による計測技術を超音波センサ計測に適用することが要求される。本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、超音波センサ計測を高精度化させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の計測装置は、送信センサから送信すべきパルス状のチャープ信号を取得する第1取得部と、送信センサから送信された後、送信センサと受信センサとの間に設置された測定物を経由して、受信センサにおいて受信されたパルス状のチャープ信号を取得する第2取得部と、第1取得部において取得したパルス状のチャープ信号のピーク位置と、第2取得部において取得したパルス状のチャープ信号のピーク位置との差異をもとに、送信センサから受信センサへ至る測定物の距離を測定する測定部と、を備える。
【0008】
この態様によると、送信センサと受信センサとの間に測定物を設置するように、送信センサと受信センサとを別々に設置し、パルス状のチャープ信号を送信センサから受信センサへ送信するので、測定物の厚さを高精度に測定できる。
【0009】
第1取得部において取得したパルス状のチャープ信号には、振幅変調がなされていてもよい。この場合、パルス状のチャープ信号に振幅変調がなされているので、波形の立ち上がりと立ち下がりを安定させることができる。
【0010】
本発明の別の態様は、計測方法である。この方法は、送信センサから送信すべきパルス状のチャープ信号を取得するステップと、送信センサから送信された後、送信センサと受信センサとの間に設置された測定物を経由して、受信センサにおいて受信されたパルス状のチャープ信号を取得するステップと、取得したふたつのパルス状のチャープ信号のピーク位置間の差異をもとに、送信センサから受信センサへ至る測定物の距離を測定するステップと、を備える。
【0011】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
1. 実験検討及びパルス圧縮処理の概要
1.1 実験概要
図1は、実施例に係る厚さ計測実験系100の構成を示す。厚さ計測実験系100は、PC10、信号発生器12、送信用センサ14、測定物16、受信用センサ18、デジタルオシロスコープ20を含む。また、厚さ計測実験系100は、信号として、変調信号200、送信信号202、受信信号204、参照信号206を含む。すなわち、2つのAEセンサを用いて、一方のセンサである送信用センサ14から超音波の送信を行い、もう一方のセンサである受信用センサ18により受信するという方法である。
【0013】
送信用センサ14あるいは受信用センサ18と測定物16間、あるいは送信用センサ14と受信用センサ18とを直接接触させる際におけるセンサ間には、表面粗さの影響による空気の介在を防ぐ目的でワセリンを塗布した。なお、本実施例において用いた測定物16の表面粗さRzは約2.1mmであり、超音波計測における規格で定められたものとなっている。また、超音波を送信する際は、PC10にインストールされた専用ソフトウェアによって、チャープバースト波形あるいは矩形パルス波形を変調信号200として実験条件に合わせて作成し、信号発生器12を送信用センサ14に接続して行った。
【0014】
このとき、信号発生器12からの出力を分岐し、一方を送信信号202として送信用センサ14に接続するとともに、もう一方を参照信号206としてデジタルオシロスコープ20に入力した。そして、測定物16を挟んで対向させた受信用センサ18で信号を受信し、その受信信号204も同一のデジタルオシロスコープ20に入力することによって、参照信号206との比較を行った。測定物16は本実施例において特に断りがない限り全て同一のものとし、直径300mm、厚さ10mmのSS400鋼製円板を用いた。
【0015】
1.2 パルス圧縮処理の概要
超音波を用いた厚さ計測においてはパルス幅を狭めることによって、計測分解能を向上させることが可能であると考えられる。しかしながら、パルス幅を狭めることはパルスエネルギーを減少させることになり、その結果、信号が受信用センサ18にまで伝搬されないことがあると推測される。このことから、比較的長いパルス状チャープバースト波形を送受信し、そこで得られる送受信信号に対して、それぞれパルス圧縮処理に基づく信号増幅処理を行うことが効果的であると考えられる。すなわち、広いパルス幅で送受信を行い、得られた信号を圧縮することで等価的にパルス幅が狭まり、計測分解能の向上を図ることができると言える。
【0016】
ここで、パルス圧縮処理の理論概要を簡単に述べると次のようになる。いま、チャープバースト波形におけるベース信号がsinφ(t)で与えられると仮定する。また、最小周波数がfmin[Hz]、チャープゲインがk[rad/s2]、パルス幅はT(t=0〜T)[s]であると仮定し、チャープ波形は超音波が発振している間、送信周波数を一次関数的に変化(リニアアップチャープ)させているものとする。このとき、チャープバースト波形における位相変化を与えるφ(t)[rad]を
【数1】
と仮定すると、周波数帯域幅をB[Hz]とすれば、リニアアップチャープにおけるゲインkは
【数2】
として与えられる。
【0017】
このことから、最大周波数をfmax[Hz](すなわち、帯域幅B =fmax - fmin)とすると、チャープバースト波における位相変調φ(t)は
【数3】
となる。したがって、ベース信号sinφ(t)に対して、チャープバースト波の送受信によって得られる受信信号204をR(t)とすれば、これらの相関演算から得られる係数P(t)は、サンプリング数をNsmpとすると
【数4】
として与えられる。このことから、パルス圧縮処理は式(4)で与えられるデジタル信号処理であると言える。すなわち、式(4)はベース信号と送受信信号の相関が高いほど、大きな値が得られることを示すものである。
【0018】
AEセンサは発振する周波数によって通過振幅及び位相特性が変化する。すなわち、送信するチャープバースト波形がsinφ(t)であり、各信号の通過振幅比をA(f)、通過位相差をj(f)[rad]としたとき、センサの特性を考慮した受信信号204は、
【数5】
として与えられるものと考える。なお、Ampは送信信号202の振幅である。また、位相差j(f)は、伝搬遅延時間τ(f)[s]をラジアンで表したものであり、
【数6】
として与えられる。
【0019】
1.3 厚さ計測の原理と方法
ここでは超音波センサ計測における厚さ計測の原理と方法について簡単に述べる。測定物16の伝播音速をV[m/s]、送受信センサ間で得られる信号の時間差をΔt[s]とすると、測定物16の厚さL[m]は
【数7】
として求めることができる。ここで、縦弾性係数をE[Pa]、密度をρ[kg/m3]とすると、測定物16の伝播音速V[m/s]は
【数8】
として与えられる。本実施例においては、既述のとおりSS400鋼製円板を測定物16に用いたことから、E = 206GPa、ρ= 7.86×103kg/m3として、式(8)から測定物16の伝播音速Vを5120m/sとして求め、厚さ計測を行った。
【0020】
ところで、厚さ計測に用いる時間差Δtの値は、本実施例で検討するパルス圧縮方式と一般方式で求め方は当然ながら異なる。パルス圧縮方式においては、取得したチャープバースト波の送受信信号それぞれにパルス圧縮処理を行い、送信信号202及び受信信号204のそれぞれから得られるパルス圧縮波形のピーク位置の時間差分値をΔtとして用いる。一般方式においては、パルス幅が10msとなる矩形パルス波を送信し、送信信号202及び受信信号204の立ち上がり点の時間差分値をΔtとして用いる。なお、本実施例において、一般方式で得られる信号の立ち上がり点は、計測用に用いたデジタルオシロスコープ20に標準偏差値で0.003mVとなる雑音が含まれていることを考慮し、受信信号204としての出力電圧波形に対して0.08mVの閾値を設定して、立ち上がり点を判断した。
【0021】
2. AEセンサを用いた基礎検討
本実施例の計測及び信号処理において、このセンサ特性を考慮するため、またチャープバースト波に使用する周波数帯域を決定する目的で、センサの通過振幅及び位相特性の調査実験を行った。図2は、厚さ計測実験系100における送信用センサ14および受信用センサ18の特性を確認するための実験条件を示す。本実施例で用いるAEセンサの仕様として発振周波数帯域が70kHzから200kHzと定められているため、この範囲内において実験を行った。このとき、センサ間には測定物16を介さず、センサ同士を直接接触させて連続正弦波(CW)の送受信を行い、得られる送受信信号を比較することによって通過振幅比、並びに遅延時間を求めた。
【0022】
図3(a)−(b)は、厚さ計測実験系100における送信用センサ14および受信用センサ18の特性確認実験の結果を示す。図3(a)は通過振幅比を、図3(b)は遅延時間を表している。この結果より、周波数変化による通過振幅、及び遅延時間の特性を知ることができた。このことから、これらのセンサ特性に基づいてパルス圧縮処理に用いるためのベース理論信号を作成することとし、式(4)で与えられる相関処理に適用するものとした。また、図3(a)−(c)の結果から、周波数が160kHzから180kHzの帯域において振幅比、遅延時間ともに急激な変化の少ない安定した値となっていることがわかる。チャープ波を送受信する際は、センサ特性が安定した周波数帯域を選択することによって、安定した波形を送受信できると考えられる。一方、帯域幅が大きいほど計測分解能が向上することが知られているため、できる限り帯域幅を大きく取るとよい。これらのことから、帯域幅を160kHzから180kHzに設定して実験を行うことが望ましいと判断し、以後の実験に供するものとした。
【0023】
本実施例において、チャープバースト波を送受信したときにおける実験波形と理論波形の相関関係を確認するため、波形形状の確認実験を行った。図4は、厚さ計測実験系100におけるチャープバースト波形の形状確認実験の条件を示す。送受信するチャープバースト波形の中心周波数fcenterを170kHzと一定にし、帯域幅を変更させて実験を行い、それぞれについて理論波形との比較を行った。なお、使用しているAEセンサは、信号の急な発振や停止ができないという特徴を有している。そこで、波形の立ち上がりと立ち下がりを安定させるため、送信波形S(t)を
【数9】
として与えられる振幅変調を加えたものを用いることとした。
【0024】
図5は、厚さ計測実験系100におけるチャープバースト波形の形状確認実験の結果を示す。ここでは、一例として帯域幅が20kHzとなる、160kHz〜180kHzの場合における波形形状確認の実験結果を示す。なお、図5には理論波形、並びに受信波形をともに実線で示している。図5の結果から、理論波形と受信波形はほぼ重なっていることがわかる。図6は、受信波形と理論波形との相関関係を示す。つまり、それぞれの帯域幅において理論波形と受信波形の相関値を算出した結果を図6に示す。すなわち、図6は中心周波数fcenterを図5と同様170kHzと一定にし、帯域幅のみを変更させた結果を示している。この結果から、全体的に高い相関が得られていること、また帯域幅を広く取るほど相関値が低下していることがわかる。帯域幅が広いほど相関が低下した原因としては、センサの特性が影響していると考えられる。使用したAEセンサは発信周波数に対して通過振幅及び位相特性が変化することがわかっている。すなわち、本実施例においてはチャープ波を用いているため、使用した周波数帯域幅が広いほどセンサ特性の影響を強く受けたものと推察される。したがって、この結果を考慮し、以後はチャープバースト波のうち最も相関値の高い結果が得られた帯域幅20kHzにおいて検討を行うこととする。
【0025】
3. AEセンサを用いた板厚計測実験
3.1 実験方法
前章までの検討によって受信信号204が理論波形に対して高い相関を持った波形となっていることが確認された。したがって、本章では測定物16に対する厚さ計測実験を、パルス圧縮方式と一般方式の双方で行った。このとき、より正確な比較検討を行うため、まずは両方式でサンプリング周期を統一して実験を行った。図7は、厚さ計測実験系100における測定物16の厚さ計測の実験条件を示す。なお、厚さ計測は式(7)に基づいて行い、伝播音速は式(8)を用いて算出した値を用いた。
【0026】
図8(a)−(c)は、厚さ計測実験系100において、チャープバースト波を送受信した信号に対してパルス圧縮処理を行った結果の一例を示す。図8(a)は送信信号202のパルス圧縮処理の結果、図8(b)は受信信号204のパルス圧縮処理の結果である。また、図8(c)はパルス圧縮処理の理論結果である。なお、これらの図においては最大値を1とする正規化を行っている。このように、パルス圧縮処理を行うことによって、送受信信号ともにパルス圧縮処理の特徴である凸形状となる波形が得られているとともに、ピーク値があることがわかる。また、送受信信号ともに理論結果に近いパルス圧縮結果が得られていることから、実験においては正確に処理を行うことができていると考えられる。そして、厚さ計測において必要となる式(7)におけるΔtは、既述のとおり、送受信信号それぞれのパルス圧縮結果におけるピーク時間差として求めた。
【0027】
次に、一般方式の厚さ計測方法について述べる。図7の条件において実験を行い、取得した受信信号204に対して隣接平均処理を適用した。なお、隣接平均処理とは、全データに対し対象データの前後合わせてn個分のデータの平均をとるスムーシング処理のことを意味する。このとき隣接平均の範囲nに関して、本実施例では図7に示すように30としており、これはサンプリング周期25nsのとき750nsに相当し、1.25nsのとき37.5nsに相当するものである。
【0028】
3.2 実験結果
3.2.1 計測値分布に関する検討
図9(a)−(c)は、厚さ計測実験系100における計測結果を示す。ここでは、厚さ計測をそれぞれの条件で繰り返し50回行った際に得られた計測結果の分布を示している。なお、図9(a)−(c)におけるヒストグラムの階級幅はスタージェスの公式を参考にして求めていることを付記する。図9(a)はパルス圧縮方式における結果の分布、図9(b)はパルス圧縮方式とサンプリング周期を統一(25ns)した場合における一般方式での分布である。また、図9(c)はサンプリング周期を1.25nsと非常に小さくした場合の一般方式の結果である。なお、いずれの結果においても、平均値と標準偏差から得られる確率密度関数を実線で示している。図9(a)、(b)を比較すると、一般方式の分布はデータが広い範囲で散在しているのに対し、パルス圧縮方式の結果はデータが集中している。
【0029】
図10は、厚さ計測実験系100における別の計測結果を示す。ここでは、標準偏差の値を比較した結果を示す。図10を見ると、サンプリング周期が同一である場合には、標準偏差の値はパルス圧縮方式の方が明らかに小さいことがわかる。なお、パルス圧縮方式と一般方式での標準偏差の比率は12.5%であった。加えて、一般方式で1.25nsの場合においてはパルス圧縮処理とほぼ同等となる結果を示していることから、一般計測でパルス圧縮処理と同一レベルの計測精度を得ようとする場合にはサンプリング周期を約1/20にまで減少させる必要があることになる。これらのことから、パルス圧縮方式は一般方式に比較して、非常に精密な計測が可能であるものと考えられる。
【0030】
さらに、図9及び図10の結果から計測データの平均値を比較すると、パルス圧縮方式の方が真の値に近い結果が得られていることから、正確な計測ができていると考えられる。このように、パルス圧縮方式が一般方式と比較して精密且つ正確な計測ができる理由としては次のように考えられる。すなわち、一般方式が立ち上がり点の一点のみで計測していることに対し、パルス圧縮方式ではパルス信号全体を用いた多点計測であり、計測に用いる情報量が多いためであると考えられる。
【0031】
3.2.2 信号対雑音比の影響
超音波センサ計測を行う場合、雑音の影響によって計測精度が低下すると考えられる。そこで、送信信号202の振幅を減少させ、信号対雑音比が低下した状態における板厚計測精度に関する実験検討を行った。図11は、厚さ計測実験系100における送信信号振幅の影響を考察するための実験条件を示す。なお、本検討においては、送信信号振幅の減少に伴う精度の低下度合を明確にするため、一般方式におけるサンプリング周期は図9(c)で示した条件と同一として、パルス圧縮方式の場合よりも1/20と大幅に小さく設定している。
【0032】
図12は、厚さ計測実験系100における送信信号振幅を変更した実験結果を示す。これは、送信信号振幅を変更した実験で得られた結果であり、送信信号振幅の変化に対して板厚計測結果の分布における標準偏差の変化を示したものである。なお、図12は送信信号振幅を横軸としているが、受信信号振幅は送信信号振幅の約1/20となっていることを付記する。図12の結果より、一般計測においては送信信号振幅の減少とともに、標準偏差の値が増加していることがわかる。特に送信信号振幅が0.05Vのときに標準偏差の値は特に大きくなっていることがわかる。このことから、一般方式では送信信号振幅の減少とともに計測精度が大きく低下し、送信信号振幅が特に小さい状態においてその影響は顕著に現れると言える。一方、パルス圧縮方式においては、送信信号振幅の減少に対して標準偏差値は若干増加する傾向にあるが、一般方式と比較して精度低下傾向は弱いことがわかる。これらのことから、送信信号振幅が特に小さい状態においては、パルス圧縮方式の有効性を特に顕著に確認することができるということが言える。
【0033】
3.2.3 測定物厚さの影響
超音波センサを用いて厚さ計測を行う場合、測定物16が厚くなるほど計測精度は低下すると考えられる。そのため、測定物16を同一の材質として厚さを変更させたときの板厚計測精度に関する実験検討を行った。図13は、厚さ計測実験系100における測定物16の厚さの影響を考察するための実験条件を示す。これは、測定物16の板厚を変更した実験の条件を示す。実験はそれぞれの厚さの測定物16についてパルス圧縮方式と一般方式の双方を行った。
【0034】
図14は、厚さ計測実験系100における測定物16の厚さを変更した実験結果を示す。これは、厚さの変化に対する計測結果の分布における標準偏差の変化を示したものである。図14を見ると、パルス圧縮方式は一般方式と比較してどの厚さにおいても精度が高いことがわかる。このことから、厚さが変化した場合においてもパルス圧縮方式は一般方式と比較して高い計測精度が得られると考えられる。すなわち、パルス圧縮方式においては、いずれの厚さに対しても一般方式より高い精度で計測が可能であると推察される。
【0035】
3.2.4 周波数帯域の影響
超音波センサを用いたチャープバースト波による厚さ計測において、使用する周波数帯域幅の変更が計測精度にどのような影響を及ぼすか確認するために、周波数帯域幅を変更させた場合における計測精度の比較検討を行った。図15は、厚さ計測実験系100における帯域幅の影響を考察するための実験条件を示す。図15は、周波数帯域幅を変更させた実験の条件を示したものである。実験においては中心周波数fcenterを170kHzと一定にし、周波数帯域幅のみを変更して実験を行った。
【0036】
図16は、厚さ計測実験系100における帯域幅を変更した実験結果を示す。なお、図16における点線は一般方式での結果である。また、図16において帯域幅0kHzの実験はチャープ波ではなく振幅変調のみの正弦波バーストであるためプロットを変更して示している。図16の結果から、周波数帯域幅0kHzのときにおいては標準偏差の値が他の結果よりも大きく、20kHz、40kHz、60kHzのそれぞれについてはほぼ同等の値であることがわかる。この結果から、周波数帯域幅を広げることによって幾分の計測精度向上が得られることが分かる。
【0037】
4. 装置構成
図17は、厚さ計測実験系100の詳細な構成を示す。厚さ計測実験系100は、発振部50、第1取得部52、第2取得部54、測定部56、送信用センサ14、測定物16、受信用センサ18を含む。ここで、発振部50は、図1の信号発生器12に含まれ、第1取得部52、第2取得部54、測定部56は、図1のデジタルオシロスコープ20に含まれる。
【0038】
発振部50は、振幅変調がなされたパルス状のチャープ信号を出力する。ここで、パルス状のチャープ信号は、前述のチャープバースト波形に相当し、式(9)によって示される。発振部50からのチャープバースト波形は、送信信号202として送信用センサ14へ出力され、参照信号206として第1取得部52へ出力される。第1取得部52は、参照信号206、つまり送信用センサ14から送信すべきチャープバースト波形を取得する。前述のごとく、第1取得部52において受けつけた参照信号206にも、振幅変調がなされている。また、送信用センサ14は、測定物16を介して受信用センサ18へチャープバースト波形を出力する。
【0039】
受信用センサ18は、送信用センサ14から受けつけたチャープバースト波形を受信信号204として出力する。第2取得部54は、送信用センサ14からの受信信号204を取得する。受信信号204は、送信用センサ14から送信された後、送信用センサ14と受信用センサ18との間に設置された測定物16を経由して、受信用センサ18において受信されたチャープバースト波形といえる。
【0040】
測定部56は、第1取得部52から、参照信号206を受けつけるとともに、第2取得部54から、受信信号204を受けつける。測定部56は、参照信号206であるチャープバースト波形のピーク位置と、受信信号204であるチャープバースト波形のピーク位置との差異を検出する。つまり、測定部56は、信号の時間差Δtを検出する。測定部56は、式(7)にしたがって、測定物16の厚さLを測定する。ここで、測定物16の厚さは、送信用センサ14から受信用センサ18へ至る測定物16の距離に相当する。
【0041】
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0042】
本発明の実施例によれば、超音波センサ計測技術にチャープバースト波を適用できる。また、パルス圧縮方式による厚さ計測結果によって、一般方式による結果と比較して精密な計測を行うことができる。また、送信信号振幅が小さい状況下においても、チャープバースト波を用いた計測においては一般方式に比較して精度低下傾向を抑制することができる。また、チャープバースト波を用いて一般方式の計測と同等の計測精度を得ようとする場合にはサンプリング周期を遅くすることができる。また、サンプリング周期を遅くすることによって、計測機器の低コスト化を可能にできる。
【0043】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施例に係る厚さ計測実験系の構成を示す図である。
【図2】図1の厚さ計測実験系における送信用センサおよび受信用センサの特性を確認するための実験条件を示す図である。
【図3】図3(a)−(b)は、図1の厚さ計測実験系における送信用センサおよび受信用センサの特性確認実験の結果を示す図である。
【図4】図1の厚さ計測実験系におけるチャープバースト波形の形状確認実験の条件を示す図である。
【図5】図1の厚さ計測実験系におけるチャープバースト波形の形状確認実験の結果を示す図である。
【図6】図5の受信波形と理論波形との相関関係を示す図である。
【図7】図1の厚さ計測実験系における測定物の厚さ計測の実験条件を示す図である。
【図8】図8(a)−(c)は、図1の厚さ計測実験系において、チャープバースト波を送受信した信号に対してパルス圧縮処理を行った結果の一例を示す図である。
【図9】図9(a)−(c)は、図1の厚さ計測実験系における計測結果を示す図である。
【図10】図1の厚さ計測実験系における別の計測結果を示す図である。
【図11】図1の厚さ計測実験系における送信信号振幅の影響を考察するための実験条件を示す図である。
【図12】図1の厚さ計測実験系における送信信号振幅を変更した実験結果を示す図である。
【図13】図1の厚さ計測実験系における測定物の厚さの影響を考察するための実験条件を示す図である。
【図14】図1の厚さ計測実験系における測定物の厚さを変更した実験結果を示す図である。
【図15】図1の厚さ計測実験系における帯域幅の影響を考察するための実験条件を示す図である。
【図16】図1の厚さ計測実験系における帯域幅を変更した実験結果を示す図である。
【図17】図1の厚さ計測実験系の詳細な構成を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
10 PC、 12 信号発生器、 14 送信用センサ、 16 測定物、 18 受信用センサ、 20 デジタルオシロスコープ、 50 発振部、 52 第1取得部、 54 第2取得部、 56 測定部、 100 厚さ計測実験系。
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測技術に関し、特に測定物の距離を測定する計測方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動化が進んだ工業製品に代表される様々な分野で超音波センサが用いられている。例を挙げれば、ガラス等の透明体検出、ポンプ等の監視診断装置、超音波距離計、AE(Acoustic Emission)エネルギーの検出によるバイト・ドリルの損傷事前検知と、その応用は活発であり、適用範囲も広い(例えば、非特許文献1、2参照)。このように、AEを含めた広義での超音波センサ計測技術は今後の発展と適用範囲のさらなる拡大が期待されている。中でも、構造物等に対する厚さ計測は、製造時や保守検査時ともに極めて重要な項目である(例えば、非特許文献1参照)。また、高度経済成長期に建設された多くの構造物に対する寿命予測や保守検査の必要性が高まってきており、厚さ計測技術は今後ますますその重要性を増してくるものと考えられる(例えば、非特許文献3参照)。
【0003】
そのような中にあって、現在、超音波センサを用いた厚さ計測は、矩形パルス波を送信しそのエコーを受信するとともに、送受信信号間での伝播遅延時間を測定するというような原理に基づいた計測方式(以後、一般方式と称する)が主流として用いられている(例えば、非特許文献4、5参照)。しかしながら、一般方式においては、計測に使用するための送受信信号から得る情報量が少ないことに起因して、雑音の影響による誤差や閾値設定等の問題から高い計測精度が得られないことが指摘されている(例えば、非特許文献1、5参照)。一方、周波数の異なる2つのバースト波を送信し、これに対応する2つの受信信号の位相検出に基づいた超音波距離計測法が一部で提案され、その有効性が報告されている例えば、非特許文献5参照)。
【0004】
ところで、精密計測レーダ技術の分野に視点を向けると、レーダ計測における目標距離計測の精度向上を目的にチャープパルス方式が広く用いられてきている(例えば、非特許文献6参照)。このチャープパルス方式とはチャープ波、すなわち周波数掃引波として特徴を持たせたパルス信号を送受信し、送受信信号それぞれに対してパルス圧縮処理を適用することによって計測分解能を向上させるものである(例えば、非特許文献6参照)。さらには、時間領域MUSIC法を適用することで距離計測精度をさらに向上させようとする試みも一部において、実機レベルでの検討が行われている(例えば、非特許文献7参照)。
【0005】
【非特許文献1】谷腰欣司、超音波とその使い方、日刊工業新聞社、92-102、1995
【非特許文献2】尾崎健司、渡部幸夫、兼本 茂、日隈幸治、荒川勝廣、山田益久、海水ポンプ監視診断装置の実機適用研究、日本機械学会第3回評価・診断に関するシンポジウム講演論文集、68-70、2004
【非特許文献3】島川正憲、超音波工学―理論と実際―、工業調査会、1-6、12-19、1975
【非特許文献4】JIS Z 2355、超音波パルス反射法による厚さ測定方法
【非特許文献5】木村友則、和高修三、三須幸一郎、永塚勉、田治米徹、小池光裕、2周波数位相検出による高分解能超音波距離計測法、日本音響学会誌、52、3、179-185、1996
【非特許文献6】吉田孝、改訂レーダ技術、電子情報通信学会、19、274-279、1996
【非特許文献7】Michio UNEDA, Hirokazu HOKAZONO: DOA Estimation Characteristics of the MUSIC Algorithm for the Actual Extended Targets of the Tracking Radar, Proceedings of IEEE RadarConference 2002, CD-ROM, (2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のような、超音波センサ計測について、高精度化が要求される。特に、チャープバースト波の送受信による計測技術を超音波センサ計測に適用することが要求される。本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、超音波センサ計測を高精度化させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の計測装置は、送信センサから送信すべきパルス状のチャープ信号を取得する第1取得部と、送信センサから送信された後、送信センサと受信センサとの間に設置された測定物を経由して、受信センサにおいて受信されたパルス状のチャープ信号を取得する第2取得部と、第1取得部において取得したパルス状のチャープ信号のピーク位置と、第2取得部において取得したパルス状のチャープ信号のピーク位置との差異をもとに、送信センサから受信センサへ至る測定物の距離を測定する測定部と、を備える。
【0008】
この態様によると、送信センサと受信センサとの間に測定物を設置するように、送信センサと受信センサとを別々に設置し、パルス状のチャープ信号を送信センサから受信センサへ送信するので、測定物の厚さを高精度に測定できる。
【0009】
第1取得部において取得したパルス状のチャープ信号には、振幅変調がなされていてもよい。この場合、パルス状のチャープ信号に振幅変調がなされているので、波形の立ち上がりと立ち下がりを安定させることができる。
【0010】
本発明の別の態様は、計測方法である。この方法は、送信センサから送信すべきパルス状のチャープ信号を取得するステップと、送信センサから送信された後、送信センサと受信センサとの間に設置された測定物を経由して、受信センサにおいて受信されたパルス状のチャープ信号を取得するステップと、取得したふたつのパルス状のチャープ信号のピーク位置間の差異をもとに、送信センサから受信センサへ至る測定物の距離を測定するステップと、を備える。
【0011】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
1. 実験検討及びパルス圧縮処理の概要
1.1 実験概要
図1は、実施例に係る厚さ計測実験系100の構成を示す。厚さ計測実験系100は、PC10、信号発生器12、送信用センサ14、測定物16、受信用センサ18、デジタルオシロスコープ20を含む。また、厚さ計測実験系100は、信号として、変調信号200、送信信号202、受信信号204、参照信号206を含む。すなわち、2つのAEセンサを用いて、一方のセンサである送信用センサ14から超音波の送信を行い、もう一方のセンサである受信用センサ18により受信するという方法である。
【0013】
送信用センサ14あるいは受信用センサ18と測定物16間、あるいは送信用センサ14と受信用センサ18とを直接接触させる際におけるセンサ間には、表面粗さの影響による空気の介在を防ぐ目的でワセリンを塗布した。なお、本実施例において用いた測定物16の表面粗さRzは約2.1mmであり、超音波計測における規格で定められたものとなっている。また、超音波を送信する際は、PC10にインストールされた専用ソフトウェアによって、チャープバースト波形あるいは矩形パルス波形を変調信号200として実験条件に合わせて作成し、信号発生器12を送信用センサ14に接続して行った。
【0014】
このとき、信号発生器12からの出力を分岐し、一方を送信信号202として送信用センサ14に接続するとともに、もう一方を参照信号206としてデジタルオシロスコープ20に入力した。そして、測定物16を挟んで対向させた受信用センサ18で信号を受信し、その受信信号204も同一のデジタルオシロスコープ20に入力することによって、参照信号206との比較を行った。測定物16は本実施例において特に断りがない限り全て同一のものとし、直径300mm、厚さ10mmのSS400鋼製円板を用いた。
【0015】
1.2 パルス圧縮処理の概要
超音波を用いた厚さ計測においてはパルス幅を狭めることによって、計測分解能を向上させることが可能であると考えられる。しかしながら、パルス幅を狭めることはパルスエネルギーを減少させることになり、その結果、信号が受信用センサ18にまで伝搬されないことがあると推測される。このことから、比較的長いパルス状チャープバースト波形を送受信し、そこで得られる送受信信号に対して、それぞれパルス圧縮処理に基づく信号増幅処理を行うことが効果的であると考えられる。すなわち、広いパルス幅で送受信を行い、得られた信号を圧縮することで等価的にパルス幅が狭まり、計測分解能の向上を図ることができると言える。
【0016】
ここで、パルス圧縮処理の理論概要を簡単に述べると次のようになる。いま、チャープバースト波形におけるベース信号がsinφ(t)で与えられると仮定する。また、最小周波数がfmin[Hz]、チャープゲインがk[rad/s2]、パルス幅はT(t=0〜T)[s]であると仮定し、チャープ波形は超音波が発振している間、送信周波数を一次関数的に変化(リニアアップチャープ)させているものとする。このとき、チャープバースト波形における位相変化を与えるφ(t)[rad]を
【数1】
と仮定すると、周波数帯域幅をB[Hz]とすれば、リニアアップチャープにおけるゲインkは
【数2】
として与えられる。
【0017】
このことから、最大周波数をfmax[Hz](すなわち、帯域幅B =fmax - fmin)とすると、チャープバースト波における位相変調φ(t)は
【数3】
となる。したがって、ベース信号sinφ(t)に対して、チャープバースト波の送受信によって得られる受信信号204をR(t)とすれば、これらの相関演算から得られる係数P(t)は、サンプリング数をNsmpとすると
【数4】
として与えられる。このことから、パルス圧縮処理は式(4)で与えられるデジタル信号処理であると言える。すなわち、式(4)はベース信号と送受信信号の相関が高いほど、大きな値が得られることを示すものである。
【0018】
AEセンサは発振する周波数によって通過振幅及び位相特性が変化する。すなわち、送信するチャープバースト波形がsinφ(t)であり、各信号の通過振幅比をA(f)、通過位相差をj(f)[rad]としたとき、センサの特性を考慮した受信信号204は、
【数5】
として与えられるものと考える。なお、Ampは送信信号202の振幅である。また、位相差j(f)は、伝搬遅延時間τ(f)[s]をラジアンで表したものであり、
【数6】
として与えられる。
【0019】
1.3 厚さ計測の原理と方法
ここでは超音波センサ計測における厚さ計測の原理と方法について簡単に述べる。測定物16の伝播音速をV[m/s]、送受信センサ間で得られる信号の時間差をΔt[s]とすると、測定物16の厚さL[m]は
【数7】
として求めることができる。ここで、縦弾性係数をE[Pa]、密度をρ[kg/m3]とすると、測定物16の伝播音速V[m/s]は
【数8】
として与えられる。本実施例においては、既述のとおりSS400鋼製円板を測定物16に用いたことから、E = 206GPa、ρ= 7.86×103kg/m3として、式(8)から測定物16の伝播音速Vを5120m/sとして求め、厚さ計測を行った。
【0020】
ところで、厚さ計測に用いる時間差Δtの値は、本実施例で検討するパルス圧縮方式と一般方式で求め方は当然ながら異なる。パルス圧縮方式においては、取得したチャープバースト波の送受信信号それぞれにパルス圧縮処理を行い、送信信号202及び受信信号204のそれぞれから得られるパルス圧縮波形のピーク位置の時間差分値をΔtとして用いる。一般方式においては、パルス幅が10msとなる矩形パルス波を送信し、送信信号202及び受信信号204の立ち上がり点の時間差分値をΔtとして用いる。なお、本実施例において、一般方式で得られる信号の立ち上がり点は、計測用に用いたデジタルオシロスコープ20に標準偏差値で0.003mVとなる雑音が含まれていることを考慮し、受信信号204としての出力電圧波形に対して0.08mVの閾値を設定して、立ち上がり点を判断した。
【0021】
2. AEセンサを用いた基礎検討
本実施例の計測及び信号処理において、このセンサ特性を考慮するため、またチャープバースト波に使用する周波数帯域を決定する目的で、センサの通過振幅及び位相特性の調査実験を行った。図2は、厚さ計測実験系100における送信用センサ14および受信用センサ18の特性を確認するための実験条件を示す。本実施例で用いるAEセンサの仕様として発振周波数帯域が70kHzから200kHzと定められているため、この範囲内において実験を行った。このとき、センサ間には測定物16を介さず、センサ同士を直接接触させて連続正弦波(CW)の送受信を行い、得られる送受信信号を比較することによって通過振幅比、並びに遅延時間を求めた。
【0022】
図3(a)−(b)は、厚さ計測実験系100における送信用センサ14および受信用センサ18の特性確認実験の結果を示す。図3(a)は通過振幅比を、図3(b)は遅延時間を表している。この結果より、周波数変化による通過振幅、及び遅延時間の特性を知ることができた。このことから、これらのセンサ特性に基づいてパルス圧縮処理に用いるためのベース理論信号を作成することとし、式(4)で与えられる相関処理に適用するものとした。また、図3(a)−(c)の結果から、周波数が160kHzから180kHzの帯域において振幅比、遅延時間ともに急激な変化の少ない安定した値となっていることがわかる。チャープ波を送受信する際は、センサ特性が安定した周波数帯域を選択することによって、安定した波形を送受信できると考えられる。一方、帯域幅が大きいほど計測分解能が向上することが知られているため、できる限り帯域幅を大きく取るとよい。これらのことから、帯域幅を160kHzから180kHzに設定して実験を行うことが望ましいと判断し、以後の実験に供するものとした。
【0023】
本実施例において、チャープバースト波を送受信したときにおける実験波形と理論波形の相関関係を確認するため、波形形状の確認実験を行った。図4は、厚さ計測実験系100におけるチャープバースト波形の形状確認実験の条件を示す。送受信するチャープバースト波形の中心周波数fcenterを170kHzと一定にし、帯域幅を変更させて実験を行い、それぞれについて理論波形との比較を行った。なお、使用しているAEセンサは、信号の急な発振や停止ができないという特徴を有している。そこで、波形の立ち上がりと立ち下がりを安定させるため、送信波形S(t)を
【数9】
として与えられる振幅変調を加えたものを用いることとした。
【0024】
図5は、厚さ計測実験系100におけるチャープバースト波形の形状確認実験の結果を示す。ここでは、一例として帯域幅が20kHzとなる、160kHz〜180kHzの場合における波形形状確認の実験結果を示す。なお、図5には理論波形、並びに受信波形をともに実線で示している。図5の結果から、理論波形と受信波形はほぼ重なっていることがわかる。図6は、受信波形と理論波形との相関関係を示す。つまり、それぞれの帯域幅において理論波形と受信波形の相関値を算出した結果を図6に示す。すなわち、図6は中心周波数fcenterを図5と同様170kHzと一定にし、帯域幅のみを変更させた結果を示している。この結果から、全体的に高い相関が得られていること、また帯域幅を広く取るほど相関値が低下していることがわかる。帯域幅が広いほど相関が低下した原因としては、センサの特性が影響していると考えられる。使用したAEセンサは発信周波数に対して通過振幅及び位相特性が変化することがわかっている。すなわち、本実施例においてはチャープ波を用いているため、使用した周波数帯域幅が広いほどセンサ特性の影響を強く受けたものと推察される。したがって、この結果を考慮し、以後はチャープバースト波のうち最も相関値の高い結果が得られた帯域幅20kHzにおいて検討を行うこととする。
【0025】
3. AEセンサを用いた板厚計測実験
3.1 実験方法
前章までの検討によって受信信号204が理論波形に対して高い相関を持った波形となっていることが確認された。したがって、本章では測定物16に対する厚さ計測実験を、パルス圧縮方式と一般方式の双方で行った。このとき、より正確な比較検討を行うため、まずは両方式でサンプリング周期を統一して実験を行った。図7は、厚さ計測実験系100における測定物16の厚さ計測の実験条件を示す。なお、厚さ計測は式(7)に基づいて行い、伝播音速は式(8)を用いて算出した値を用いた。
【0026】
図8(a)−(c)は、厚さ計測実験系100において、チャープバースト波を送受信した信号に対してパルス圧縮処理を行った結果の一例を示す。図8(a)は送信信号202のパルス圧縮処理の結果、図8(b)は受信信号204のパルス圧縮処理の結果である。また、図8(c)はパルス圧縮処理の理論結果である。なお、これらの図においては最大値を1とする正規化を行っている。このように、パルス圧縮処理を行うことによって、送受信信号ともにパルス圧縮処理の特徴である凸形状となる波形が得られているとともに、ピーク値があることがわかる。また、送受信信号ともに理論結果に近いパルス圧縮結果が得られていることから、実験においては正確に処理を行うことができていると考えられる。そして、厚さ計測において必要となる式(7)におけるΔtは、既述のとおり、送受信信号それぞれのパルス圧縮結果におけるピーク時間差として求めた。
【0027】
次に、一般方式の厚さ計測方法について述べる。図7の条件において実験を行い、取得した受信信号204に対して隣接平均処理を適用した。なお、隣接平均処理とは、全データに対し対象データの前後合わせてn個分のデータの平均をとるスムーシング処理のことを意味する。このとき隣接平均の範囲nに関して、本実施例では図7に示すように30としており、これはサンプリング周期25nsのとき750nsに相当し、1.25nsのとき37.5nsに相当するものである。
【0028】
3.2 実験結果
3.2.1 計測値分布に関する検討
図9(a)−(c)は、厚さ計測実験系100における計測結果を示す。ここでは、厚さ計測をそれぞれの条件で繰り返し50回行った際に得られた計測結果の分布を示している。なお、図9(a)−(c)におけるヒストグラムの階級幅はスタージェスの公式を参考にして求めていることを付記する。図9(a)はパルス圧縮方式における結果の分布、図9(b)はパルス圧縮方式とサンプリング周期を統一(25ns)した場合における一般方式での分布である。また、図9(c)はサンプリング周期を1.25nsと非常に小さくした場合の一般方式の結果である。なお、いずれの結果においても、平均値と標準偏差から得られる確率密度関数を実線で示している。図9(a)、(b)を比較すると、一般方式の分布はデータが広い範囲で散在しているのに対し、パルス圧縮方式の結果はデータが集中している。
【0029】
図10は、厚さ計測実験系100における別の計測結果を示す。ここでは、標準偏差の値を比較した結果を示す。図10を見ると、サンプリング周期が同一である場合には、標準偏差の値はパルス圧縮方式の方が明らかに小さいことがわかる。なお、パルス圧縮方式と一般方式での標準偏差の比率は12.5%であった。加えて、一般方式で1.25nsの場合においてはパルス圧縮処理とほぼ同等となる結果を示していることから、一般計測でパルス圧縮処理と同一レベルの計測精度を得ようとする場合にはサンプリング周期を約1/20にまで減少させる必要があることになる。これらのことから、パルス圧縮方式は一般方式に比較して、非常に精密な計測が可能であるものと考えられる。
【0030】
さらに、図9及び図10の結果から計測データの平均値を比較すると、パルス圧縮方式の方が真の値に近い結果が得られていることから、正確な計測ができていると考えられる。このように、パルス圧縮方式が一般方式と比較して精密且つ正確な計測ができる理由としては次のように考えられる。すなわち、一般方式が立ち上がり点の一点のみで計測していることに対し、パルス圧縮方式ではパルス信号全体を用いた多点計測であり、計測に用いる情報量が多いためであると考えられる。
【0031】
3.2.2 信号対雑音比の影響
超音波センサ計測を行う場合、雑音の影響によって計測精度が低下すると考えられる。そこで、送信信号202の振幅を減少させ、信号対雑音比が低下した状態における板厚計測精度に関する実験検討を行った。図11は、厚さ計測実験系100における送信信号振幅の影響を考察するための実験条件を示す。なお、本検討においては、送信信号振幅の減少に伴う精度の低下度合を明確にするため、一般方式におけるサンプリング周期は図9(c)で示した条件と同一として、パルス圧縮方式の場合よりも1/20と大幅に小さく設定している。
【0032】
図12は、厚さ計測実験系100における送信信号振幅を変更した実験結果を示す。これは、送信信号振幅を変更した実験で得られた結果であり、送信信号振幅の変化に対して板厚計測結果の分布における標準偏差の変化を示したものである。なお、図12は送信信号振幅を横軸としているが、受信信号振幅は送信信号振幅の約1/20となっていることを付記する。図12の結果より、一般計測においては送信信号振幅の減少とともに、標準偏差の値が増加していることがわかる。特に送信信号振幅が0.05Vのときに標準偏差の値は特に大きくなっていることがわかる。このことから、一般方式では送信信号振幅の減少とともに計測精度が大きく低下し、送信信号振幅が特に小さい状態においてその影響は顕著に現れると言える。一方、パルス圧縮方式においては、送信信号振幅の減少に対して標準偏差値は若干増加する傾向にあるが、一般方式と比較して精度低下傾向は弱いことがわかる。これらのことから、送信信号振幅が特に小さい状態においては、パルス圧縮方式の有効性を特に顕著に確認することができるということが言える。
【0033】
3.2.3 測定物厚さの影響
超音波センサを用いて厚さ計測を行う場合、測定物16が厚くなるほど計測精度は低下すると考えられる。そのため、測定物16を同一の材質として厚さを変更させたときの板厚計測精度に関する実験検討を行った。図13は、厚さ計測実験系100における測定物16の厚さの影響を考察するための実験条件を示す。これは、測定物16の板厚を変更した実験の条件を示す。実験はそれぞれの厚さの測定物16についてパルス圧縮方式と一般方式の双方を行った。
【0034】
図14は、厚さ計測実験系100における測定物16の厚さを変更した実験結果を示す。これは、厚さの変化に対する計測結果の分布における標準偏差の変化を示したものである。図14を見ると、パルス圧縮方式は一般方式と比較してどの厚さにおいても精度が高いことがわかる。このことから、厚さが変化した場合においてもパルス圧縮方式は一般方式と比較して高い計測精度が得られると考えられる。すなわち、パルス圧縮方式においては、いずれの厚さに対しても一般方式より高い精度で計測が可能であると推察される。
【0035】
3.2.4 周波数帯域の影響
超音波センサを用いたチャープバースト波による厚さ計測において、使用する周波数帯域幅の変更が計測精度にどのような影響を及ぼすか確認するために、周波数帯域幅を変更させた場合における計測精度の比較検討を行った。図15は、厚さ計測実験系100における帯域幅の影響を考察するための実験条件を示す。図15は、周波数帯域幅を変更させた実験の条件を示したものである。実験においては中心周波数fcenterを170kHzと一定にし、周波数帯域幅のみを変更して実験を行った。
【0036】
図16は、厚さ計測実験系100における帯域幅を変更した実験結果を示す。なお、図16における点線は一般方式での結果である。また、図16において帯域幅0kHzの実験はチャープ波ではなく振幅変調のみの正弦波バーストであるためプロットを変更して示している。図16の結果から、周波数帯域幅0kHzのときにおいては標準偏差の値が他の結果よりも大きく、20kHz、40kHz、60kHzのそれぞれについてはほぼ同等の値であることがわかる。この結果から、周波数帯域幅を広げることによって幾分の計測精度向上が得られることが分かる。
【0037】
4. 装置構成
図17は、厚さ計測実験系100の詳細な構成を示す。厚さ計測実験系100は、発振部50、第1取得部52、第2取得部54、測定部56、送信用センサ14、測定物16、受信用センサ18を含む。ここで、発振部50は、図1の信号発生器12に含まれ、第1取得部52、第2取得部54、測定部56は、図1のデジタルオシロスコープ20に含まれる。
【0038】
発振部50は、振幅変調がなされたパルス状のチャープ信号を出力する。ここで、パルス状のチャープ信号は、前述のチャープバースト波形に相当し、式(9)によって示される。発振部50からのチャープバースト波形は、送信信号202として送信用センサ14へ出力され、参照信号206として第1取得部52へ出力される。第1取得部52は、参照信号206、つまり送信用センサ14から送信すべきチャープバースト波形を取得する。前述のごとく、第1取得部52において受けつけた参照信号206にも、振幅変調がなされている。また、送信用センサ14は、測定物16を介して受信用センサ18へチャープバースト波形を出力する。
【0039】
受信用センサ18は、送信用センサ14から受けつけたチャープバースト波形を受信信号204として出力する。第2取得部54は、送信用センサ14からの受信信号204を取得する。受信信号204は、送信用センサ14から送信された後、送信用センサ14と受信用センサ18との間に設置された測定物16を経由して、受信用センサ18において受信されたチャープバースト波形といえる。
【0040】
測定部56は、第1取得部52から、参照信号206を受けつけるとともに、第2取得部54から、受信信号204を受けつける。測定部56は、参照信号206であるチャープバースト波形のピーク位置と、受信信号204であるチャープバースト波形のピーク位置との差異を検出する。つまり、測定部56は、信号の時間差Δtを検出する。測定部56は、式(7)にしたがって、測定物16の厚さLを測定する。ここで、測定物16の厚さは、送信用センサ14から受信用センサ18へ至る測定物16の距離に相当する。
【0041】
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0042】
本発明の実施例によれば、超音波センサ計測技術にチャープバースト波を適用できる。また、パルス圧縮方式による厚さ計測結果によって、一般方式による結果と比較して精密な計測を行うことができる。また、送信信号振幅が小さい状況下においても、チャープバースト波を用いた計測においては一般方式に比較して精度低下傾向を抑制することができる。また、チャープバースト波を用いて一般方式の計測と同等の計測精度を得ようとする場合にはサンプリング周期を遅くすることができる。また、サンプリング周期を遅くすることによって、計測機器の低コスト化を可能にできる。
【0043】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施例に係る厚さ計測実験系の構成を示す図である。
【図2】図1の厚さ計測実験系における送信用センサおよび受信用センサの特性を確認するための実験条件を示す図である。
【図3】図3(a)−(b)は、図1の厚さ計測実験系における送信用センサおよび受信用センサの特性確認実験の結果を示す図である。
【図4】図1の厚さ計測実験系におけるチャープバースト波形の形状確認実験の条件を示す図である。
【図5】図1の厚さ計測実験系におけるチャープバースト波形の形状確認実験の結果を示す図である。
【図6】図5の受信波形と理論波形との相関関係を示す図である。
【図7】図1の厚さ計測実験系における測定物の厚さ計測の実験条件を示す図である。
【図8】図8(a)−(c)は、図1の厚さ計測実験系において、チャープバースト波を送受信した信号に対してパルス圧縮処理を行った結果の一例を示す図である。
【図9】図9(a)−(c)は、図1の厚さ計測実験系における計測結果を示す図である。
【図10】図1の厚さ計測実験系における別の計測結果を示す図である。
【図11】図1の厚さ計測実験系における送信信号振幅の影響を考察するための実験条件を示す図である。
【図12】図1の厚さ計測実験系における送信信号振幅を変更した実験結果を示す図である。
【図13】図1の厚さ計測実験系における測定物の厚さの影響を考察するための実験条件を示す図である。
【図14】図1の厚さ計測実験系における測定物の厚さを変更した実験結果を示す図である。
【図15】図1の厚さ計測実験系における帯域幅の影響を考察するための実験条件を示す図である。
【図16】図1の厚さ計測実験系における帯域幅を変更した実験結果を示す図である。
【図17】図1の厚さ計測実験系の詳細な構成を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
10 PC、 12 信号発生器、 14 送信用センサ、 16 測定物、 18 受信用センサ、 20 デジタルオシロスコープ、 50 発振部、 52 第1取得部、 54 第2取得部、 56 測定部、 100 厚さ計測実験系。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信センサから送信すべきパルス状のチャープ信号を取得する第1取得部と、
前記送信センサから送信された後、前記送信センサと受信センサとの間に設置された測定物を経由して、前記受信センサにおいて受信されたパルス状のチャープ信号を取得する第2取得部と、
前記第1取得部において取得したパルス状のチャープ信号のピーク位置と、前記第2取得部において取得したパルス状のチャープ信号のピーク位置との差異をもとに、前記送信センサから前記受信センサへ至る測定物の距離を測定する測定部と、
を備えることを特徴とする計測装置。
【請求項2】
前記第1取得部において取得したパルス状のチャープ信号には、振幅変調がなされていることを特徴とする請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
送信センサから送信すべきパルス状のチャープ信号を取得するステップと、
前記送信センサから送信された後、前記送信センサと受信センサとの間に設置された測定物を経由して、前記受信センサにおいて受信されたパルス状のチャープ信号を取得するステップと、
取得したふたつのパルス状のチャープ信号のピーク位置間の差異をもとに、前記送信センサから前記受信センサへ至る測定物の距離を測定するステップと、
を備えることを特徴とする計測方法。
【請求項1】
送信センサから送信すべきパルス状のチャープ信号を取得する第1取得部と、
前記送信センサから送信された後、前記送信センサと受信センサとの間に設置された測定物を経由して、前記受信センサにおいて受信されたパルス状のチャープ信号を取得する第2取得部と、
前記第1取得部において取得したパルス状のチャープ信号のピーク位置と、前記第2取得部において取得したパルス状のチャープ信号のピーク位置との差異をもとに、前記送信センサから前記受信センサへ至る測定物の距離を測定する測定部と、
を備えることを特徴とする計測装置。
【請求項2】
前記第1取得部において取得したパルス状のチャープ信号には、振幅変調がなされていることを特徴とする請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
送信センサから送信すべきパルス状のチャープ信号を取得するステップと、
前記送信センサから送信された後、前記送信センサと受信センサとの間に設置された測定物を経由して、前記受信センサにおいて受信されたパルス状のチャープ信号を取得するステップと、
取得したふたつのパルス状のチャープ信号のピーク位置間の差異をもとに、前記送信センサから前記受信センサへ至る測定物の距離を測定するステップと、
を備えることを特徴とする計測方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−156694(P2009−156694A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334589(P2007−334589)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年12月4日 社団法人 日本機械学会発行の「通計番号:No.07−28 第6回 評価・診断に関するシンポジウム講演論文集」に発表、平成19年6月30日 社団法人日本設計工学会北陸支部主催の「平成19年度研究発表会」において文書をもって発表
【出願人】(593165487)学校法人金沢工業大学 (202)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年12月4日 社団法人 日本機械学会発行の「通計番号:No.07−28 第6回 評価・診断に関するシンポジウム講演論文集」に発表、平成19年6月30日 社団法人日本設計工学会北陸支部主催の「平成19年度研究発表会」において文書をもって発表
【出願人】(593165487)学校法人金沢工業大学 (202)
【Fターム(参考)】
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