説明

計画修正支援装置、方法及びプログラム

【課題】生産計画、搬送計画、配置計画等の各種計画に修正を加えるに際して、どのような修正候補があるのかがわかりやすく、その中でもどの修正候補が良い修正候補であるのかがわかるようにする。
【解決手段】山が配置されるヤードの配置計画に修正を加えることができるように支援する配置計画修正支援装置1は、修正対象の配置計画をディスプレイ17に表示するとともに、各山のヤードにおける位置及び時間推移を一つのジョブとして表示する計画表示部5と、ユーザにジョブを指定させる修正ジョブ指定部6と、修正ジョブ指定部6で指定されたジョブについて、予め定められた制約条件を満たす移動先候補を抽出して表示する候補抽出部7と、候補抽出部7で抽出した各移動先候補について、予め定められた評価基準に基づいて評価点を算出して表示する評価部8とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産計画、搬送計画、配置計画等の各種計画に修正を加えることができるように支援する好適な計画修正支援装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動立案或いは人が作成した生産計画、搬送計画、配置計画等は、実操業に適した計画とするためには、人の持っている知識やノウハウを活かしながら修正を加えることが必要となる場合が多い。
【0003】
しかしながら、計画に修正を加える場合には、1)修正候補が多数ある筈であるが、どのような修正候補があるのかがわかり難い、2)修正候補がわかったとしても、どの修正候補が良い修正候補であるのかがわからない、3)良い修正候補がわかったとしても、1箇所を修正すれば計画の他の箇所にも影響を及ぼすため、その影響を考慮する必要がある、4)修正した結果のどれが最終的に良いのかを選ぶのが容易ではない等の問題があるため、熟練者であっても、修正には非常に時間が掛かることが常であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−30686号公報
【特許文献2】特開2003−323206号公報
【特許文献3】特開2008−262486号公報
【特許文献4】特開2004−303176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の技術として、例えば特許文献1には、バッチプロセスにおける生産スケジューリングシステムにおいて、ガントチャート上のスケジュールバーを、マウスドラッグ操作により移動させる手動修正機能に、(1)工程に組み込まれる装置の占有時間を表すスケジュールバーの操作に、時刻/代替移動モード、ジョブ/工程移動モード、優先/普通移動モードを設けて、これらの組み合わせ操作を可能にした3モード修正機能と、(2)移動させるスケジュールバーについて、ジョブ間で整合をとるジョブ間スケジュール調整機能と、(3)ユーザの意図により、移動したくないスケジュールバーを固定するジョブ固定機能、の三つの操作機能を備えたコンピュータを援用したスケジューリングシステムが記載されている。
【0006】
また、例えば特許文献2には、サイクルカレンダー作成手段でサイクルカレンダーを作成してから、このサイクルカレンダーと製品データ入力手段で入力された製品データとに基づいて工程割付手段で工程割付けを行い、その後工程調整手段で山積み及び山崩しを行った後に、サイクルカレンダーを手動変更による微調整する場合に、サイクルカレンダー編集手段で、製品の通過を許容するサイクルチャンス表示を移動、複写、削除等の機能を使用して変更し、その後編集結果反映手段で編集後のサイクルカレンダーをサイクルカレンダー作成手段で作成したサイクルカレンダーに反映する生産計画編集システムが記載されている。これにより、編集結果反映手段で編集結果を反映させるまでの間は、サイクルカレンダー編集手段で自由にサイクルカレンダーの編集を行うことができる。
【0007】
しかしながら、特許文献1、2に開示された手法では、どのような修正候補があるのかがわかり難く、どの修正候補が良い修正候補であるのかがわからない、といった問題を解決するものではない。また、修正した後に、修正途中の結果が良かったとわかったとしても、その状態に戻ることができないという問題があった。
【0008】
また、例えば特許文献3には、次のような生産計画改善装置が記載されている。すなわち、計画入力手段を用いて外部機器から初期計画を取込み、初期計画を改善前計画とし、改善前計画の一部分を変更した改善後計画を計画改善手段を用いて複数算出する。差異表示手段にて、改善前計画と改善後計画との違いを確認し、装置利用者が納得できる改善後計画があれば、その計画を改めて、改善前計画として指定し、再び計画改善手段を用いて複数の改善後計画を算出する。納得できる改善後計画が算出されない場合には、制約変更手段や評価関数変更手段を用いて、計画改善手段の改善ロジックを修正する。以上の処理を複数回繰り返し、算出された改善後計画のなかで、最も良い改善後計画を、計画出力手段を用いて外部機器へ出力する。
【0009】
しかしながら、特許文献3に開示された手法では、制約や評価関数への入力値をユーザが変更することにより、その結果として改善前計画を変更した複数の改善後計画が提示されるものである。この場合、複数の結果を比較、検討して良し悪しを確かめなければならず労力が掛かり、また、予めどのような修正が良いのかがわからない、といった問題を解決するものではない。また、変更を繰り返した際に、その際の評価はどうであったかを一括で確認することはできるが、どのような変更を加えていったかを一括で確認できない問題があった。また、制約や評価関数への入力値を一部変更して、その結果がどうなるかを比較、検討することが行われるが、入力値とその結果を対応付ける必要がある。しかしながら、特許文献3では、入力値とその結果を対応付けて管理することは明示されていない。
【0010】
本発明は上記のような点に鑑みてなされたものであり、計画に修正を加えるに際して、どのような修正候補があるのかがわかりやすく、その中でもどの修正候補が良い修正候補であるのかがわかるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の計画修正支援装置は、生産工程における作業について作成された計画の修正を支援する計画改善支援装置であって、修正対象の計画を、当該計画を構成する複数のジョブがそれぞれ指定可能なように表示装置に表示する計画表示手段と、前記計画表示手段で表示したジョブからユーザに修正対象のジョブを選択して指定させる修正ジョブ指定手段と、前記修正ジョブ指定手段で指定されたジョブについて、予め定められた制約条件を満たす修正候補を抽出して前記表示装置に表示する候補抽出手段と、前記候補抽出手段で抽出した各修正候補について、予め定められた評価基準に基づいて評価点を算出して前記表示装置に表示する評価手段とを備えたことを特徴とする。
また、本発明の計画修正支援装置の他の特徴とするところは、前記修正ジョブに対して前記候補抽出手段により抽出された修正候補からユーザに確定修正案を選択させる候補選択手段と、前記候補選択手段で選択された確定修正案と、当該確定修正案よりも時間的に上流側に位置するジョブを固定して、当該確定修正案よりも時間的に下流側に位置するジョブについて、前記制約条件を満たす修正計画を作成する計画作成手段とを備えた点にある。
また、本発明の計画修正支援装置の他の特徴とするところは、前記計画作成手段で作成した修正計画の履歴を管理し、そのいずれの修正計画も更なる修正の対象とできる計画管理手段を備えた点にある。
また、本発明の計画修正支援装置の他の特徴とするところは、前記計画管理手段は、前記計画作成手段で作成した修正計画に、当該修正計画を作成する際の前提条件と、前記候補選択手段で選択された修正候補とを対応付けて管理する点にある。
また、本発明の計画修正支援装置の他の特徴とするところは、前記生産工程の原材料が山として配置されるヤードの配置計画に適用され、前記計画表示手段は、前記各山の前記ヤードにおける位置及び時間推移を一つのジョブとして表示する点にある。
本発明の計画修正支援方法は、生産工程における作業について作成された計画の修正を支援する計画改善支援方法であって、計画修正支援装置が、修正対象の計画を、当該計画を構成する複数のジョブがそれぞれ指定可能なように表示装置に表示する手順と、前記計画修正支援装置が、前記表示したジョブからユーザに修正対象のジョブを選択して指定させる手順と、前記計画修正支援装置が、前記指定されたジョブについて、予め定められた制約条件を満たす修正候補を抽出して前記表示装置に表示する手順と、前記計画修正支援装置が、前記抽出した各修正候補について、予め定められた評価基準に基づいて評価点を算出して前記表示装置に表示する手順とを実行することを特徴とする。
本発明のプログラムは、生産工程における作業について作成された計画の修正を支援するためのプログラムであって、修正対象の計画を、当該計画を構成する複数のジョブがそれぞれ指定可能なように表示装置に表示する処理と、前記表示したジョブからユーザに修正対象のジョブを選択して指定させる処理と、前記指定されたジョブについて、予め定められた制約条件を満たす修正候補を抽出して前記表示装置に表示する処理と、前記抽出した各修正候補について、予め定められた評価基準に基づいて評価点を算出して前記表示装置に表示する処理とをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ユーザにより指定されたジョブについて、予め定められた制約条件を満たす修正候補を抽出し、評価点と共に表示装置に表示するようにしたので、どのような修正候補があるのかがわかりやすく、その中でもどの修正候補が良い修正候補であるのかがわかる、といった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係る配置計画修正支援装置の概略構成を示す図である。
【図2】原材料を貯蔵するヤードを説明するための図である。
【図3】修正対象の配置計画の表示画面の例を示す図である。
【図4】図3の画面上でジョブが指定されたことにより、当該ジョブの移動先候補が評価点と共に表示された状態を示す図である。
【図5】本実施形態に係る配置計画修正支援装置の候補抽出部及び評価部が実行する処理例を示すフローチャートである。
【図6】図4の画面上でジョブが移動先候補に移動させられている状態を示す図である。
【図7】図6の画面上でジョブを移動先候補に移動させたことを受けて、配置計画が再作成された状態を示す図である。
【図8】本実施形態に係る配置計画修正支援装置の計画管理部による配置計画の管理構造の例を示す図である。
【図9】修正の内容の一覧画面の例を示す図である。
【図10】評価点の詳細であるレーダチャートの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
まず、図2を参照して、各種製造業界や物流業界において原材料を貯蔵するヤードの概要について説明する。図2は、原材料を貯蔵するヤードを説明するための図である。複数面のヤード1、2、・・・があり、各ヤードには、原材料が複数の山として配置され、各山が、受け入れ側から払い出し側に一方向に並べて配置される。2次元に山が配置されるヤードであれば、受け入れ側から払い出し側に一列に山が配置される範囲を一つのヤードの単位とし、各ヤードには幅方向(図2でいう奥行き方向)に1山だけが配置されるようにする。但し、配置される順序は、受け入れ側から払い出し側に順番ではなく、空きを見て適切な場所に受け入れ、或いは払い出しが行われる。一つの山には、原則として同一の原材料銘柄(銘柄A,B,・・・)が積み付けられる。
【0015】
各ヤードに受け入れができるようにスタッカーが、また各ヤードから払い出しができるようにリクレーマが軌道上に配置されている。スタッカーは軌道上を移動して、山状に原材料を受け入れる。また、リクレーマは軌道上を移動して、山状に配置された原材料を払い出す。
【0016】
ヤードへ積み付けるべき日々の原材料銘柄と量、及びヤードから払い出されるべき日々の原材料銘柄と量が与えられている条件下で、限りあるヤードの面積内で効率的に操業するために、ヤードの配置計画に修正を加えることがある。例えば小山をなるべく削減することで、大きい山を作成でき、山高さを高くして、同一スペースでも大量に受け入れることができる。
【0017】
本実施形態に係る配置計画修正支援装置は、自動立案或いは人が作成したヤードの配置計画に対して、人が持っている知識やノウハウを活かしながら修正を加えることができるように支援する。図1は、本実施形態に係る配置計画修正支援装置1の概略構成を示す図である。図1において、入力データ取込み部2は、修正対象の配置計画として、入力データベース14で管理されている初期配置計画や、計画管理部11で管理されている修正済み配置計画を取込む。
【0018】
また、入力データ取込み部2は、入力データベース14で管理されている情報、例えば原材料受入計画、原材料払出計画、ヤード現況、受入用機械使用・払出用機械の能力情報等を取込む。ここで、受入計画及び払出計画とは、原材料の日毎、銘柄毎の受け入れ及び払い出しの計画である。すなわち、原材料受入計画とは、何日にどの銘柄の原材料を何トン受け入れる必要があるのかが計画されたものである。原材料払出計画とは、何日にどの銘柄の原材料を何トン払い出す必要があるのかが計画されたものである。また、ヤード現況とは、計画作成期間の初日における原材料ヤード上の銘柄毎の配置位置と配置量の情報である原材料配置現況である。すなわち、原材料ヤード現況とは、計画作成期間の初日、つまり立案を行おうとしている日のヤード上のどの位置にどの銘柄の原材料が、何トン存在しているかの状況が示されたものである。また、受入用機械・払出用機械の能力情報とは、受入用機械であるスタッカー及び払出用機械であるリクレーマそれぞれの、例えば移動速度、俯仰時間、旋回時間、単位時間当たりの受入可能量である正味受入能力、単位時間当たりの払出可能量である正味払出能力等を含む。入力データベース14で管理されているこれらの情報は、プロコン又はビジコンよりオンラインにて、常に最新の情報に更新されている。
【0019】
条件設定部3は、入力データ取込み部2で取込んだ初期配置計画や修正済み配置計画に修正を加える際に、ユーザの指示に応じて、入力データ取込み部2で取込んだ原材料受入計画、原材料払出計画、ヤード現況、受入用機械使用・払出用機械の能力情報等を変更、設定する。
【0020】
計画作成部4は、後述するように計画固定部10で配置計画を固定したことを受けて、それより後の日付の配置計画を再作成する。配置計画の作成手法は既知のものを利用すればよい。例えば特許文献4には、製品受入計画、製品出荷計画、在庫計画、設備使用計画、設備修理計画、設備能力、設備現況、工程現況、設備現況、在庫現況、設備稼働・故障現況、及び、操業者からの操業前提条件に関する全て或いは一部のデータを入力する入力データ取込み処理と、上記入力デ−タに基づいて、ユーザの意図に応じてのヤードを小区分毎に分ける空間分割精度を設定する処理と、画立案者の意図に応じての配置計画の時刻精度を設定する処理と、上記空間分割精度に基づいて分割された空間の小区分毎に番地付けをし、上記番地を使用して空間内の配置状態の推移を上記時刻精度で管理する処理と、ユーザの意図に応じて製品、移動体、設備の処理に伴う作業群の関係、制約に対して上記設定された精度に基づいて数式モデルを構築する処理と、記構築した数式モデルを、あらかじめ設定した評価関数を用いて最適化或いは準最適化問題として解くことにより配置計画を求めることで、所望する期間分の配置計画を作成する処理とを行う手法が開示されている。
【0021】
計画表示部5は、修正対象の配置計画、すなわち入力データ取込み部2で取込んだ初期配置計画や修正済み配置計画をディスプレイ17に表示する。図3に、修正対象の配置計画の表示画面の例を示す。計画表示部5は、複数面のヤード(図3の例では2面のヤード1、2)それぞれについて、横軸が受け入れ側から払い出し側までの距離、縦軸が日付を表わすヤード推移マップをディスプレイ17に表示する。図示例では、計画作成期間を4日間としたヤード推移マップとなっている。例えばヤード1において、縦軸の0で表わされる初日(1日目)の始まりには、受け入れ側から山No.1(銘柄D)、山No.2(銘柄B)、山No.3(銘柄A)、山No.4(銘柄B)、山No.5(銘柄D)の順で配置されている。また、縦軸の1で表わされる1日目の終わり、すなわち2日目の始まりには、受け入れ側から山No.1(銘柄D)、山No.6(銘柄A)、山No.2(銘柄B)、山No.7(銘柄D)、山No.3(銘柄A)、山No.8(銘柄B)、山No.4(銘柄B)、山No.5(銘柄D)の順で配置されている。また、縦軸の2で表わされる2日目の終わり、すなわち3日目の始まりには、受け入れ側から山No.1(銘柄D)、山No.6(銘柄A)、山No.2(銘柄B)、山No.7(銘柄D)、山No.3(銘柄A)、山No.8(銘柄B)、山No.4(銘柄B)、山No.9(銘柄C)、山No.5(銘柄D)の順で配置されている。また、縦軸の3で表わされる3日目の終わり、すなわち4日目の始まりには、受け入れ側から山No.6(銘柄A)、山No.7(銘柄D)、山No.8(銘柄B)、山No.9(銘柄C)、山No.5(銘柄D)の順で配置されている。また、縦軸の4で表わされる4日目の終わりには、受け入れ側から山No.6(銘柄A)、山No.7(銘柄D)、山No.8(銘柄B)、山No.9(銘柄C)、山No.5(銘柄D)の順で配置されている。
【0022】
そして、初日の始まり、2日目の始まり、3日目の始まり、4日目の始まり、4日目の終わりでの各山の受け入れ側の位置及び払い出し側の位置をそれぞれ直線でつなぎ、各山のヤードにおける位置及び時間推移を一つのジョブとして、所望のジョブを指定できるようになっている。例えばヤード1において、山No.1(銘柄D)は、初日の始まりで受け入れ側の位置x1、払い出し側の位置x2であるが、2日目の始まり及び3日目の始まりで受け入れ側の位置x1、払い出し側の位置x3となり、4日目の始まりにはすべて払い出されてなくなっていることがわかる。なお、本実施形態では、各日の始まり及び最終日の終わりでの各山の受け入れ側の位置及び払い出し側の位置をそれぞれ単に直線でつなぎ、1日単位で各山の受け入れ側の位置及び払い出し側の位置の変化を表わすようにしたが、より細かな時間精度で各山の受け入れ側の位置及び払い出し側の位置の変化を表わすようにしてもよい。
【0023】
修正ジョブ指定部6は、計画表示部5が表示する修正対象の配置計画の表示画面上(図3を参照)で、ユーザに、修正したいジョブ(修正対象のジョブ)を指定させる。ユーザは、ポインティング入力装置16を用いて、修正したいジョブを選択、指定することができる。図4には、図3の画面上で山No.7(銘柄D)のジョブ101が指定された状態を示す。
【0024】
候補抽出部7は、修正ジョブ指定部6で指定されたジョブについて、予め定められた制約条件を満たす当該ジョブの移動先候補(当該ジョブを移動させることのできる位置の候補)を抽出して表示する。山すなわちジョブは、同一のヤード内だけでなく、他のヤードに移動させることも可能である。制約条件とは、ヤードに山を配置するに際して必ず守らなければならない条件であり、例えばヤードの排水ピットの上には山を配置しない、細粒の原材料は海の近くには配置しない、最小の積み付けの長さの確保、スタッカーが故障している期間はヤードに受け入れできない、或いは、リクレーマが故障している期間はヤードの払い出しができない、等がある。図4には、図3の画面上で山No.7(銘柄D)のジョブ101が指定されたことを受けて、制約条件を満たす当該ジョブ101の移動先候補102a〜102dを表示した状態を示す。
【0025】
評価部8は、候補抽出部7で抽出した各移動先候補(修正候補)102a〜102dについて、予め定められた評価基準に基づいて評価点を算出して表示する。図4には、ジョブ101の移動先候補102a〜102dそれぞれの評価点を算出し、移動先候補102a〜102dと共に表示した状態を示す。図示例では、ヤード2にある移動先候補102cの評価点が「110」と最大点で、ヤード2にある移動先候補102dの評価点が「−40」と最小点となっている。ここでは、評価点は、小さい点数程良い場合を例示しているため、移動先候補102dが最も良い移動候補となる。
【0026】
評価点を求める評価基準は予め設定しておく。例えば、下式(1)に示すように、評価点fが、受入、払出、山数、受入・払出用機械稼働率バラツキ、受入時間から算出されるようにする。
【0027】
【数1】

【0028】
ここで、f受入は、下式(2)に示すように、連続積付ペナルティー及び少量積付ペナルティーで表わされる。連続積付ペナルティーは、1/山積付量で表わされる。山積付量とは、荷降ろして山ができた際に、その山の大きさを表わす。少量の荷降ろしであっても、元あった山と同一銘柄の場合、上被せをして積付可能であり、大きな山とすることも可能である。また、少量積付ペナルティーは、1/荷卸ろし量で表わされ、荷降ろし量が少量である場合のペナルティーである。
【0029】
【数2】

【0030】
また、f払出は、下式(3)に示すように、非連続払出ペナルティー及び大山払出ペナルティーで表わされる。非連続払出ペナルティーは、同一払出の払出山数で表わされ、同じ山から連続的に払出すことがヤード効率上有効であるが、そうしない場合のペナルティーである。また、大山払出ペナルティーは、山積付量で表わされ、小山から払出すことがヤード効率上有効であるが、そうしない場合のペナルティーである。
【0031】
【数3】

【0032】
また、f山数は、下式(4)に示すように、各ヤード上に存在する山数で表わされる。また、fハ゛ラツキは、下式(5)に示すように、スタッカーでの受入量及びリクレーマでの払出量で表わされる。また、f受入時間は、下式(6)に示すように、スタッカーでの受入量及び受入能力で表わされる。
【0033】
【数4】

【0034】
評価点を算出するに際して、ジョブの移動先候補に対して、実際にその候補にジョブを移動させた場合に、厳密な将来の配置状況まで立案せずに、ジョブ移動させた移動先候補と周辺の状況から、簡易的に評価点を計算するようにしてもよい。本実施形態では、簡易的な評価点を計算する場合の一例を示した。或いは、移動先候補の情報をより厳密に計算させたい場合には、ジョブの移動先候補に対して、実際にその候補にジョブを移動させた場合に、厳密な将来の配置状況まで立案させて評価点を計算するようにしてもよい。
【0035】
図5には、候補抽出部7及び評価部8が実行する処理例のフローチャートを示す。候補抽出部7は、修正ジョブ指定部6で指定されたジョブを確認し(ステップS101)、その移動可能先を抽出する(ステップS102)。移動可能先としては、当該ジョブの最初の日付において他の山が存在しないヤード上の位置が抽出される。次に、候補抽出部7は、各移動可能先が制約条件を満たすか否かを確認し(ステップS103)、制約条件を満たす移動可能先だけを当該ジョブの移動先候補として抽出する(ステップS104)。続いて、評価部8は、ステップS104で抽出した各移動先候補の評価点を算出する。そして、候補抽出部7及び評価部8は、移動先候補及びその評価点を、修正対象の配置計画の表示画面上に表示する(ステップS106)。
【0036】
候補選択部9は、計画表示部5が表示する修正対象の配置計画の表示画面上(図3を参照)で、ユーザに、ジョブ101を移動させる移動先候補102a〜102dを選択させる。ユーザは、ポインティング入力装置16を用いて、修正したいジョブ101をドラッグ&ドロップ操作することで、移動先候補102a〜102dのいずれかに移動させることができる。図6には、図4の画面上で山No.7(銘柄D)のジョブ101が移動先候補102aに確定修正案として、移動させられている状態を示す。
【0037】
計画固定部10は、候補選択部9でジョブ101を移動先候補102a〜102dのいずれかに移動させた場合、当該ジョブ101の最初の日付を取得し、その取得日付以前の日付の配置計画を固定する。図6に示したように、山No.7(銘柄D)のジョブ101を移動先候補102aに移動させた場合、当該ジョブ101の最初の日付である2日目を取得し、図7に示すように、2日目以前の日付、すなわち1日目及び2日目の配置計画を固定する。上述した計画作成部4は、計画固定部10で配置計画を固定したことを受けて、ユーザによる修正を遵守、すなわちジョブ101を移動先候補102aに固定した上で、整合性を合わせながら、それより後の日付の配置計画を再作成する、すなわち修正計画を作成する。図7には、山No.7(銘柄D)のジョブ101を移動先候補102aに移動させたことを受けて、1日目及び2日目の配置計画を固定し、3日目及び4日目の配置計画が再作成された状態を示す。図示例では、3日目及び4日目においてヤード1の山No.8(銘柄B)の一部を切り出して、ヤード2に新たに配置する配置計画が作成されている。再立案する部分に関しては、前回立案結果を優先し、できるだけ前回と同じ位置となる立案をするようにしてもかまわない。
【0038】
ここまで説明したように、ヤード推移マップ上において、所望の山すなわちジョブを指定すれば、移動先候補が評価点と共に表示され、ドラッグ&ドロップ操作により所望の移動先候補に移動させると、再作成された配置計画が表示されるというGUIを提供する。これにより、各種入力値を介して間接的に配置計画を変更するのではなく、視覚的に操作を行って、配置計画そのものに対してユーザが直接的に修正を加えていくことができる。
【0039】
計画管理部11は、以上のようにしてユーザにより修正が加えられ、計画作成部4で再作成した配置計画を、出力部12を介して出力データベース15に蓄えて、その履歴を管理する。図8に、計画管理部11による配置計画の管理構造の例を示す。ある初期計画を修正、再作成した配置計画1が管理されている。配置計画は、当該配置計画を修正、再作成する際の条件(前提条件)及び結果が対応付けられて、一つのまとまりとして保存される。ここで、前提条件とは、条件設定部3で設定した条件、制約条件、及び修正の内容(どのジョブをどの移動先候補に移動させたかや、その移動先候補の評価点)を含む。また、結果とは、条件に従って再作成された配置計画そのものである。そして、配置計画1を修正、再作成した配置計画2、配置計画2を修正、再作成した配置計画3、というように木構造のデータとして管理されていく。また、配置計画を木構造のデータとして管理し、そのいずれの配置計画も修正対象の計画とすることができ、例えば配置計画2を修正して配置計画3を再作成した後でも、配置計画2を修正して新たに配置計画4を再作成することが可能である。
【0040】
履歴表示部13は、図9に示すように、計画管理部11で管理する配置計画の履歴に基づいて、修正の内容、すなわちどのジョブをどの移動先候補に移動させたかや、その移動先候補の評価点の情報の一覧をディスプレイ17に表示する。例えばNo.1は図8における配置計画1、No.2は図8における配置計画2、・・・に対応している。所望のNo.を選択すると、それに対応する配置計画がディスプレイ17に表示されるので、その配置計画を修正対象の配置計画として修正を加えることが可能である。また、評価点を選択すると、図10に示すように、評価点の詳細であるレーダチャートがディスプレイ17に表示される。
【0041】
以上述べたように、ユーザにより指定されたジョブについて、予め定められた制約条件を満たす移動先候補を抽出し、評価点と共にディスプレイ17に表示するようにしたので、1)どのような修正候補があるのかがわかりやすく、2)どの修正候補が良い修正候補であるのかがわかる、といった効果を奏する。
【0042】
また、ユーザにより移動先候補が選択されたことを受けて、配置計画を再作成してディスプレイ17に表示するようにしたので、3)1箇所を修正することにより計画の他の箇所に及ぼす影響を容易に把握することができる、といった効果を奏する。
【0043】
また、計画作成部4で再作成した配置計画の履歴を条件と共に管理するようにしたので、4)修正した結果のどれが最終的に良いのかを容易に選ぶことができる、といった効果を奏する。
【0044】
本発明を適用した配置計画修正支援装置は、専用のハードウェアにより実行させてもよいが、コンピュータ上に実装して、ソフトウェアにより実行させても良い。一連の処理をソフトウェアにより行う場合、汎用又は専用のコンピュータにプログラムを実行させることにより、上述した一連の処理を実現することができる。コンピュータは、CPU(Central Processing Unit)と、HDD(Hard Disk Drive)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の記録装置と、LAN(Local Area Network)、インターネット等のネットワークに接続された通信装置と、マウス、キーボード等の入力装置と、フレキシブルディスク等の磁気ディスク、CD(Compact Disk)やMO(Magneto Optical)ディスクやDVD(Digital Versatile Disk)等の各種光ディスク、半導体メモリ等のリムーバブル記憶媒体等を読み書きするドライブと、モニタ等のディスプレイ、スピーカやヘッドホン等の音声出力装置等の出力装置等と、を有してもよい。そして、コンピュータは、記録装置、リムーバブル記憶媒体に記録されたプログラム、又はネットワークを介して取得したプログラムを実行することにより、一連の処理を実行してもよい。また、このプログラムを記録した上記リムーバブル記憶媒体や記録装置等の記録媒体で、上記コンピュータが読み取り可能なものとして実施することも、もちろん可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、ヤードの配置計画に限られず、その他の生産工程(工程間や工程内の移動や配置等を含む)における作業について作成された計画、例えば生産計画、搬送計画、配置計画等の各種計画に修正を加えることができるように支援するのに利用される。
【符号の説明】
【0046】
1:配置計画修正支援装置、2:入力データ取込み部、3:条件設定部、4:計画作成部、5:計画表示部、6:修正ジョブ指定部、7:候補抽出部、8:評価部、9:候補選択部、10:計画固定部、11:計画管理部、12:出力部、13:履歴表示部、14:入力データベース、15:出力データベース、16:ポインティング入力装置、17:ディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産工程における作業について作成された計画の修正を支援する計画改善支援装置であって、
修正対象の計画を、当該計画を構成する複数のジョブがそれぞれ指定可能なように表示装置に表示する計画表示手段と、
前記計画表示手段で表示したジョブからユーザに修正対象のジョブを選択して指定させる修正ジョブ指定手段と、
前記修正ジョブ指定手段で指定されたジョブについて、予め定められた制約条件を満たす修正候補を抽出して前記表示装置に表示する候補抽出手段と、
前記候補抽出手段で抽出した各修正候補について、予め定められた評価基準に基づいて評価点を算出して前記表示装置に表示する評価手段とを備えたことを特徴とする計画修正支援装置。
【請求項2】
前記修正ジョブに対して前記候補抽出手段により抽出された修正候補からユーザに確定修正案を選択させる候補選択手段と、
前記候補選択手段で選択された確定修正案と、当該確定修正案よりも時間的に上流側に位置するジョブを固定して、当該確定修正案よりも時間的に下流側に位置するジョブについて、前記制約条件を満たす修正計画を作成する計画作成手段とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の計画修正支援装置。
【請求項3】
前記計画作成手段で作成した修正計画の履歴を管理し、そのいずれの修正計画も更なる修正の対象とできる計画管理手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の計画修正支援装置。
【請求項4】
前記計画管理手段は、前記計画作成手段で作成した修正計画に、当該修正計画を作成する際の前提条件と、前記候補選択手段で選択された修正候補とを対応付けて管理することを特徴とする請求項3に記載の計画修正支援装置。
【請求項5】
前記生産工程の原材料が山として配置されるヤードの配置計画に適用され、
前記計画表示手段は、前記各山の前記ヤードにおける位置及び時間推移を一つのジョブとして表示することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の計画修正支援装置。
【請求項6】
生産工程における作業について作成された計画の修正を支援する計画改善支援方法であって、
計画修正支援装置が、修正対象の計画を、当該計画を構成する複数のジョブがそれぞれ指定可能なように表示装置に表示する手順と、
前記計画修正支援装置が、前記表示したジョブからユーザに修正対象のジョブを選択して指定させる手順と、
前記計画修正支援装置が、前記指定されたジョブについて、予め定められた制約条件を満たす修正候補を抽出して前記表示装置に表示する手順と、
前記計画修正支援装置が、前記抽出した各修正候補について、予め定められた評価基準に基づいて評価点を算出して前記表示装置に表示する手順とを実行することを特徴とする計画修正支援方法。
【請求項7】
生産工程における作業について作成された計画の修正を支援するためのプログラムであって、
修正対象の計画を、当該計画を構成する複数のジョブがそれぞれ指定可能なように表示装置に表示する処理と、
前記表示したジョブからユーザに修正対象のジョブを選択して指定させる処理と、
前記指定されたジョブについて、予め定められた制約条件を満たす修正候補を抽出して前記表示装置に表示する処理と、
前記抽出した各修正候補について、予め定められた評価基準に基づいて評価点を算出して前記表示装置に表示する処理とをコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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