説明

記憶媒体処理装置

【課題】 所定の消去部位だけを消去し、所定の印刷部位により高精細な印刷をすることができる記録媒体処理装置を提供する。
【解決手段】 第1サーマルヘッド18と、この第1サーマルヘッド18よりもドット密度の高い第2サーマルヘッド19とを備え、第1サーマルヘッド18により、任意の消去部位に対して選択的に消去処理を施し、第2サーマルヘッド19により、高精細な感熱印刷をする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばICカード等の記憶媒体を処理する記憶媒体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道等の駅においては、料金決済に関する処理効率の向上を図るために、定期券、切符、SFカード(ストアドフェアカード)等、決済情報が磁気記録された券媒体を処理する自動改札システムが利用されている。近年では、自動改札機側との間で非接触で決済情報をやり取りする非接触ICカードを用いた自動改札システムの実用が開始されている。
【0003】
この非接触式のICカードを利用した自動改札システムは、カードを自動改札機にかざすだけで改札を通過できるため、ユーザ側にとっては利便性がさらに向上し、一方、自動改札機による券媒体の搬送機構が不要となることから、鉄道職員側にとっても、券詰まりや機構部分のメンテナンス等の問題が解消され、保守費用等が削減できるというメリットがある。
【0004】
ところで、このような非接触ICカードを、例えば定期券等に適用する場合において、カード表面に感熱方法等で印刷されている印刷情報及びICチップ内の記憶装置に記憶された決済情報を更新しICカードを再利用することが検討されている。
【0005】
例えば、ヒートローラを用いてカード表面の印刷を印刷消去および印刷処理するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−108948号公報(段落0097、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述のように、ヒートローラを用いる場合、カード表面の全域に熱を提供して印刷消去している。このため、カード表面に磁気ストライプやサインプレート等が設けられているカードに対してヒートローラにより印刷消去を施すと、磁気記録、記入文字に物理的な影響が発生し、それら機能に影響を与える問題がある。
【0007】
また、印刷消去と印刷処理の両方を実行するオーバーライト方式においては、印刷する部位および消去する部位に対して十分な温度差を確保することができないため、印刷の消え残りが生じる虞があり、印刷品質が低下する問題がある。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためのものであって、その目的は、選択的に所定の消去部位だけを消去し、印刷部位に、より高精細な印刷をすることができる記録媒体処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によると、記憶媒体処理装置は、印刷パターンを書き換え可能な被印刷面を有する記憶媒体を搬送する搬送手段と、複数の第1発熱素子を備え、前記搬送手段により搬送されている前記記録媒体に前記第1発熱素子の熱を提供し、前記被印刷面の所定の位置の印刷パターンを消去する消去手段と、複数の第2発熱素子を備え、前記搬送手段により搬送されている前記記録媒体に前記第2発熱素子の熱を提供し、前記被印刷面の所定の位置に印刷パターンを印刷する印刷手段と、を備えたことを特徴としている。
【0010】
また、本発明の一態様によると、記憶媒体処理装置は、印刷パターンを書き換え可能な被印刷面を有する記憶媒体を搬送する搬送手段と、個々の発熱が制御される複数の発熱素子を含み、前記搬送手段により搬送されている前記記録媒体の所定箇所に熱を提供する第1サーマルヘッドと、前記第1サーマルヘッドのドット密度より高いドット密度を有し、個々の発熱が制御される複数の発熱素子を含み、前記搬送手段により搬送されている前記記録媒体の所定箇所に熱を提供する第2サーマルヘッドと、を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、選択的に所定の消去部位だけを消去し、印刷部位に、より高精細な印刷をすることができる記録媒体処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、この発明の一実施の例に係るカード処理装置1によって処理されるカード媒体2の表(おもて)面を示す。図2は、図1に示したカード媒体2の裏面(内部構造を含む)を示す。図3は、カード処理装置1の正面図を示す。図4は、このカード処理装置1の構成を説明するためのブロック図を示す。図5は、カード処理装置1の内部構造を示す概略図である。本実施の形態において、カード処理装置1は、例えば鉄道等の駅に設けられ、カード記録媒体として例えば非接触式のICカードを適用した定期券(カード媒体)2の被印刷面に対して書き換え印刷ができる装置である。しかし、本発明はこれに限られず、被印刷面に対して書き換え印刷ができる記録媒体処理装置全般に適用可能である。
【0013】
図1に示す通り、カード媒体2は、表面に被印刷面21を備え、付加した熱を冷却させたものと除冷させたものに発色・消色の実施をする書き換え可能なリライト(再印刷)層が形成されている。この被印刷面21には、有効期限、利用区間、利用者の名前、年齢、及び性別等の印刷パターン(印刷された文字等)が感熱方式で印刷されている。また、図2に示す通り、カード媒体2の裏面には、予め決められたコーナ部に、カード処理装置1へのカード媒体2の挿入向きの判定に用いられる反射マーク22が設けられている。カード媒体2の内部には、コイル状のアンテナ23と、このアンテナ23と電気的に接続されているICチップ24が設けられている。このICチップ24は、例えば、被印刷面21上に印刷された印刷パターンの内容と被印刷面21上の印刷位置に関する位置情報等とからなる印刷情報を記憶する例えばフラッシュメモリやEEPROM等で構成された電源バックアップ不要な記憶部(図示せず)と、アンテナ23を介しての情報のやり取りを制御する制御部(図示せず)と備えている。ICチップ24は、カード処理装置1側との間で例えば磁気、誘導電磁界、マイクロ波(電波)等の伝送媒体を介し非接触で情報を送受信することができる。
【0014】
カード処理装置1は、図3に示す通り、鉄道利用者がカード媒体2の発行/更新に関する情報を入力するためのタッチパネル(操作盤)3と、カード媒体2が挿入/放出されるカード挿入出口4と、紙幣が挿入される紙幣挿入口5と、コインが投入されるコイン投入口6と、利用明細書が発行される利用明細発行口7と、釣銭が返却される釣銭返却口8とを備えている。
【0015】
また、カード処理装置1は、図4および図5に示す通り、カード搬送路11、挿入向き検知センサ12,13、カード供給ホッパ14、第1位置検知センサ15、第2位置検知センサ16、無線リーダ・ライタ部17、第1サーマルヘッド18、プラテンローラ18A、第2サーマルヘッド19、プラテンローラ19A、駆動モータ20、主制御部100を含む。
【0016】
カード搬送路11では、装置内部のカード挿入出口4からカード供給ホッパ14まで、カード媒体2が搬送される。このカード搬送路11では、カード挿入出口4から挿入されたカード媒体2が無線リーダ・ライタ部17との対向位置まで搬送された後、無線リーダ・ライタ部17からカード挿入出口4の方に戻りながら被印刷面21に所定の印刷が施される。
【0017】
挿入向き検知センサ12,13は、カード媒体2の反射マーク22を光学的に検知することで、カード媒体2が被印刷面(おもて面)21を上にして正しく挿入されたか否かを検知するとともに、カード媒体2の挿入向き(挿入向きが図1中の左側Lであるか右側Rであるか)を検知する。
【0018】
カード供給ホッパ14は、未使用の複数のカード媒体2を収容し、カード媒体2の発行が指示されると、カード搬送路11にカード媒体2を送り込む。
【0019】
第1位置検知センサ15は、カード搬送路11によって搬送されてきたカード媒体2の例えば後端部を検知し、カード媒体2が無線リーダ・ライタ部17との対向位置に配置されているか否かを検知する。第2位置検知センサ16は、カード搬送路11によって搬送されてきたカード媒体2の例えば後端部を検知し、カード媒体2が第1サーマルヘッド18および第2サーマルヘッド19との対向位置に配置されているか否かを検知する。
【0020】
無線リーダ・ライタ部17は、カード搬送路11によって搬送されてきたカード媒体2のICチップ24に対し被印刷面21上に印刷された印刷パターンの内容と被印刷面21上の印刷位置に関する位置情報の読み出しあるいは書き込みを行う。
【0021】
第1サーマルヘッド(消去手段)18は、カード進行方向に対して垂直な方向にカード全面と対向するように配置されている複数の発熱素子を備え、カード搬送路11によって搬送されてきたカード媒体2の被印刷面21の所定の領域を加熱し、被印刷面21上に有効期限等の印刷情報を消去する。また、第1サーマルヘッド18は、カード搬送路11によって搬送されてきたカード媒体2の被印刷面21の所定の領域の印刷パターンを消去し、且つ被印刷面21の所定の領域に印刷パターンを印刷することができる。
【0022】
第2サーマルヘッド(印刷手段)19は、第1サーマルヘッド18と同様に、カード進行方向に対して垂直な方向にカード全面と対向するように配置されている複数の発熱素子を備え、カード搬送路11によって第1サーマルヘッド18を通過してきたカード媒体2の被印刷面21の所定の領域を加熱し、被印刷面21上に有効期限等の印刷情報を印刷する。第2サーマルヘッド19は、第1サーマルヘッド18のドット密度よりも高いドット密度で配置されている。本実施の形態において、第1サーマルヘッド18は、1mmの幅に6個の発熱素子が存在する6ドット/mmのドット密度を有し、第2サーマルヘッド19は、1mmの幅に12個の発熱素子が存在する12ドット/mmのドット密度を有する。このように、第2サーマルヘッド19のドット密度は、第1サーマルヘッド18のドット密度の倍数であることが好ましい。
【0023】
プラテンローラ18A,19Aは、それぞれ、カード搬送路11を介して第1サーマルヘッド18、第2サーマルヘッド19と対向する位置に配置されており、これらの間を通過するカード媒体2を搬送する。なお、図示しないが、カード搬送路11でカード媒体2を搬送する手段として、カード媒体2を両面から挟持してカード搬送路11を搬送する複数の搬送ローラが、所定の位置に配置されていてもよい。
【0024】
駆動モータ20は、プラテンローラ18A,19Aと駆動力伝達機構で接続されており、プラテンローラ18A,19Aに動力を提供している。
【0025】
主制御部100は、図4に示した通り、操作盤3、第1位置検知センサ15、第2位置検知センサ16、無線リーダ・ライタ部17、第1サーマルヘッド18、第2サーマルヘッド19、駆動モータ20と電気的に接続されており、カード処理装置1を統括的に制御している。なお、図示していないが、主制御部100は、挿入向き検知センサ12,13とも電気的に接続されている。
【0026】
タッチパネル3は、利用者が入力操作した情報、つまり被印刷面21上に可視的な印刷パターンとして表示される有効期限、利用区間、利用者の名前、年齢、及び性別等といった更新情報を主制御部100へ入力する。
【0027】
主制御部100は、利用者の操作によりタッチパネル3を介して入力された情報に基づいて、カード媒体2を発行・更新を指示する。
【0028】
また、主制御部100は、タッチパネル3から入力された更新すべき印刷パターンと無線リーダ・ライタ部17により読み出された全印刷パターンの被印刷面21上の印刷位置に関する位置情報とに基づいて、更新すべき印刷パターンに対応する被印刷面21上の更新対象領域を判別する。
【0029】
さらに、主制御部100は、カード媒体2の搬送位置を検知する第1位置検知センサ15および第2位置検知センサ16からの検出出力に基づいて、カード媒体2の搬送速度の変更及びカード媒体2の搬送を停止させる。
【0030】
次に、カード処理装置1におけるカード媒体2の第1更新モードの動作を説明する。この第1更新モードとは、図1に示したカード媒体2の被印刷面21のうち更新対象領域25を、第1サーマルヘッド18および第2サーマルヘッド19を利用して更新する更新モードである。なお、本実施の形態において更新対象領域25には、有効期限を更新すべき印刷パターンが表示されている。
【0031】
利用者により、カード媒体2の更新情報(有効期限)がタッチパネル3から入力され、カード媒体2がカード挿入出口4から装置内部へ挿入されると、挿入向き検知センサ12,13により、通過するカード媒体2が、カード挿入出口4から装置内部へ正しい向き(表裏)で取り込まれたか否かが検知される。カード媒体2が正しい方向で挿入されていた場合、主制御部100は、カード搬送路11を介してカード媒体2を無線リード・ライタ部17と対向する位置まで搬送する。
【0032】
第1位置検知センサ15により、カード媒体2が無線リード・ライタ部17により読み取り/書き込み可能な所定の位置に位置されたことが検知されると、主制御部100は、カード媒体2のICチップ24に対し、ユーザによりタッチパネル3を介して入力される更新情報に基づき、無線リーダ・ライタ部17によるリード/ライトを実行させる。これにより、無線リード・ライタ部17は、カード媒体2のICチップ24から現時点で被印刷面21上に印刷されている印刷パターンの内容および被印刷面21上の印刷位置に関する位置情報を読み出し、主制御部100に通知する。そして、主制御部100は、ユーザにより指示された更新情報に基づき、これから被印刷面21上にリライト印刷される全印刷パターンの内容およびこの全印刷パターンの印刷位置に対応する位置情報を、無線リード・ライタ部17によりICチップ24に書き込ませる。これにより、更新されるべき情報がICチップ24に書き込まれる。
【0033】
主制御部100は、タッチパネル3より入力した被印刷面21上にリライト印刷後に可視的に印刷されるべき全印刷パターンに対応する情報と、無線リーダ・ライタ部17によりICチップ24から読み出された被印刷面21上に現時点で印刷されている全印刷パターンに関する印刷情報の内容とを比較し、一致しなかった更新すべき印刷パターンに関する情報を抽出する。さらに、主制御部100は、検出した更新すべき印刷パターンに関する情報と無線リーダ・ライタ部17により読み出された全印刷パターンの被印刷面21上の印刷位置に関する位置情報とに基づいて、更新すべき印刷パターンに対応する被印刷面21上の更新対象領域25を判別する。
【0034】
継いで、主制御部100は、カード媒体2が第1サーマルヘッド18および第2サーマルヘッド19によるリライト印刷可能な(消去及び再印刷に適する)搬送速度で第1サーマルヘッド18、第2サーマルヘッド19のそれぞれと対向する位置を通過するように駆動モータ20を制御し、プラテンローラ18A,19Aを回転させる。第2位置検知センサ16により、カード媒体2が第1サーマルヘッド18により加熱可能な位置に到達したことが検知されると、主制御部100は、カード媒体2の被印刷面21の更新対象領域25を加熱し、印刷されていた印刷パターンを消去する。
【0035】
第2サーマルヘッド19は、更新対象領域25の印刷バターンが消去されたカード媒体2がカード搬送路11を搬送されてくると、更新対象領域25を加熱し、更新すべき印刷パターンを印刷する。
【0036】
そして、全ての更新処理を終えたカード媒体2はカード挿入出口4から装置外部へ搬出される。
【0037】
このように、本実施の形態のカード処理装置1によれば、第1サーマルヘッド18は、任意の更新領域25に対応する部分の発熱素子を選択的に発熱させることできるため、カード媒体2の被印刷面21上に印刷される全印刷パターンのうち、更新対象領域25内の印刷パターンだけを選択的に消去することができる。このため、更新対象領域25以外の非加熱領域が加熱処理される事態を回避することができ、例えば、更新対象領域25以外に設けられている磁気ストライプやサインプレート等の熱劣化を防止し、これらの機能を確保し、カード媒体2の耐久性を向上させることができる。従って、本実施の形態のカード処理装置1によると、全面に印刷できるタイプのカード媒体、および磁気ストライプやサインプレート等を備えているため一部に感熱印刷できない部位を含むタイプのカード媒体の両方を扱うことができる。
【0038】
なお、上述の通り、本実施の形態のカード処理装置1に適用されている第1サーマルヘッド18は、任意の更新領域15に対して選択的に熱を提供することができるが、従来のヒートローラやサーマルバーでは、媒体全面に熱をかけて消去処理を施しているため、このような選択的な加熱はできなかった。このように、本発明に係る第1サーマルヘッド18は、任意の更新領域15に対応する発熱素子だけを発熱させればよいため、従来のヒートローラやサーマルバーに比べて、消去処理の効率が図られ、加熱のための電力を低減することができる。
【0039】
また、本実施の形態の通り、第1サーマルヘッド18として、6ドット/mmのドット密度のサーマルヘッドを利用することで、カード媒体2に対して消去するために十分な熱を提供することができる。さらに、第2サーマルヘッド19として、12ドット/mmのドット密度のサーマルヘッドを利用することで、高精細な印刷が実現できる。このため、消去に必要な十分な熱を得られないことに起因した消え残りが発生する事態を防止し、印字品質の劣化を防止することができる。
【0040】
次に、上述したカード処理装置1における第2更新モードの動作を説明する。第2の更新モードとは、第1サーマルヘッド18は利用することなく、第2サーマルヘッド19を利用して、消去および印刷の両方を実行することにより印刷パターンを更新する更新モードである。このように、ひとつのサーマルヘッドで消去と印刷を実行する方式をオーバーライト方式と呼称する。ここでは、上述の第1の更新モード同様に有効期限を示す更新対象領域25に対する更新モードについて説明する。
【0041】
利用者により、カード媒体2の更新情報(有効期限)がタッチパネル3から入力され、カード媒体2がカード挿入出口4から装置内部へ挿入されると、挿入向き検知センサ12,13により、通過するカード媒体2が、カード挿入出口4から装置内部へ正しい向き(表裏)で取り込まれたか否かが検知される。カード媒体2が正しい方向で挿入されていた場合、主制御部100は、カード搬送路11を介してカード媒体2を無線リード・ライタ部17と対向する位置まで搬送する。
【0042】
主制御部100は、第1位置検知センサ15により、カード媒体2が無線リード・ライタ部17により読み取り/書き込み可能な所定の位置に位置されたことが検知されると、カード媒体2のICチップ24に対し、無線リーダ・ライタ部17によるリードを実行させる。これにより、無線リード・ライタ部17は、カード媒体2のICチップ24から現時点で被印刷面21上に印刷されている印刷パターンの内容と被印刷面21上の印刷位置に関する位置情報とを読み出し、主制御部100に通知する。
【0043】
主制御部100は、タッチパネル3より入力した被印刷面21上にオーバーライト印刷後に可視的に印刷されるべき全印刷パターンに対応する情報と、無線リーダ・ライタ部17によりICチップ24から読み出された被印刷面21上に現時点で印刷されている全印刷パターンに関する印刷情報の内容とを比較し、一致しなかった更新すべき印刷パターンに関する情報を抽出する。さらに、主制御部100は、検出した更新すべき印刷パターンに関する情報と無線リーダ・ライタ部17により読み出された全印刷パターンの被印刷面21上の印刷位置に関する位置情報とに基づいて、更新すべき印刷パターンに対応する被印刷面21上の更新対象領域25を判別する。
【0044】
継いで、主制御部100は、カード媒体2が第1サーマルヘッド18によるオーバーライト印刷可能な搬送速度で第1サーマルヘッド18と対向する位置を通過するように駆動モータ20を制御し、プラテンローラ18Aを回転させる。第2位置検知センサ16により、カード媒体2が第1サーマルヘッド18によりオーバーライト可能な位置に到達したことが検知されると、主制御部100は、カード媒体2の被印刷面21の更新対象領域25を加熱し、消去を実行する。消去と並行して、第1サーマルヘッド18は、印刷パターンが消去された更新対象領域25に対して、更新すべき印刷パターンをに応じて印字させる部分のみの冷却速度を発色させるモードに変更し、更新すべき印刷パターンを印刷する。
【0045】
カード媒体2へのこのようなオーバーライト印刷処理が完了すると、主制御部100は、カード搬送路11を介して、カード媒体2を無線リーダ・ライタ部17に向けて高速で搬送する。そして、オーバーライト印刷されたカード媒体2が無線リーダ・ライタ部17に到達すると、主制御部100は、被印刷面21上にオーバーライト印刷された全印刷パターンの内容とこの全印刷パターンの印刷位置に対応する位置情報を、無線リード・ライタ部17によりICチップ24に書き込ませる。すなわち、更新されるべき情報がICチップ24に書き込まれる。全ての更新処理を終えたカード媒体2はカード挿入出口4から装置外部へ搬出される。
【0046】
このように、上記第2更新モードを適用したカード処理装置1によれば、カード媒体2の被印刷面21上に印刷される全印刷パターンのうち、更新対象領域25内の印刷パターンだけを選択的に、第1サーマルヘッド18だけでオーバーライト印刷することができる。すなわち、ひとつのサーマルヘッドにより任意の部位を選択的に加熱することで、印字と消去を短時間で実施することができる。
【0047】
また、本実施の形態のように、ドット密度が6ドット/mmの第1サーマルヘッド18を利用することにより、カード媒体2に対して消去するために十分な熱を提供することができる。なお、6ドット/mmのドット密度よりも高い密度のサーマルヘッドでは、消去に必要な十分な熱を得ることが困難であるため、消え残りが発生する虞がある。従って、オーバーライトに適用可能な第1サーマルヘッド18は、6ドット/mm付近あるいはそれよりも粗い密度であることが好ましい。
【0048】
さらに、本実施の形態において、第2サーマルヘッド19のドット密度を第1サーマルヘッド18のドット密度の2倍数としている。これにより、上述のオーバーライト方式のように、印字データをドット密度の異なるヘッドに利用する場合において、複雑な関数による変換を必要とせず、第2サーマルヘッド19に利用する印字データから、第1サーマルヘッド18に利用する印字データへの変換を容易にすることができ、処理時間を短縮することができる。
【0049】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0050】
例えば、本実施形態では、非接触式のICカードで構成されたカード媒体2を処理するカード処理装置1を本発明に適用していたが、本発明を、接触式のICカードを処理する装置に適用してもよいし、また、被印刷面を有し磁気情報等を書き換えできる磁気カード等を処理する装置に適用してもよい。
【0051】
また、本実施形態では、カード処理装置1が鉄道の利用者(ユーザ)が操作するタイプの装置であったが、鉄道職員のみが操作するタイプの装置に本発明を適用してもよい。
【0052】
さらに、オーバーライト方式は、上記方法に限定されず、被印刷面21に形成されているリライト層の性質に応じた温度制御により、印字と消去を同時に実施するものが適用可能であって、第1サーマルヘッド18および第2サーマルヘッド19は、このリライト層の性質に応じて、発熱する発熱素子が制御可能である。その場合、例えば、印加した熱エネルギーを急冷して印字発色させ、除冷することで消去する方法が適用可能である。
【0053】
また、第1更新モードと第2更新モードにおいては、第1更新モードは第1サーマルヘッド18および第サーマルヘッド19を利用し、第2更新モードは第1サーマルヘッド18だけを利用している点が異なるだけであって、それ以外の構成・動作順番等はこれに限定されない。例えば、第1更新モードにおいて、第2更新モードにおいて説明した、第1サーマルヘッド18によるカード媒体2へのリライト印刷前において、カード媒体2のICチップ24から被印刷面21上に印刷された印刷パターンの内容と被印刷面21上の印刷位置に関する位置情報を読み出すとともに、リライト印刷後において、被印刷面21上に印刷された印刷パターンの内容と位置情報とからなる印刷情報を更新する方法が採用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一例に係るカード処理装置によって処理されるカード媒体の表(おもて)面を示す概略図。
【図2】図1に示したカード媒体の裏面(内部構造を含む)を示す概略図。
【図3】本発明の一例に係るカード処理装置を示す概略図。
【図4】図3に示したカード処理装置の構成を概略的に示すブロック図。
【図5】図3に示したカード処理装置の内部構造を示す概略図。
【符号の説明】
【0055】
1・・・カード処理装置、2・・・カード媒体、3・・・タッチパネル、4・・・カード挿入出口、5・・・紙幣挿入口、6・・・コイン投入口、7・・・利用明細発行口、8・・・釣銭返却口、11・・・カード搬送路、12・・・挿入向き検知センサ、13・・・挿入向き検知センサ、14・・・カード供給ホッパ、15・・・第1位置検知センサ、16・・・第2位置検知センサ、17・・・無線リーダ・ライタ部、18・・・第1サーマルヘッド、19・・・第2サーマルヘッド、20・・・駆動モータ、21・・・被印刷面、25・・・更新対象領域、100・・・主制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷パターンを書き換え可能な被印刷面を有する記憶媒体を搬送する搬送手段と、
複数の第1発熱素子を備え、前記搬送手段により搬送されている前記記録媒体に前記第1発熱素子の熱を提供し、前記被印刷面の所定の位置の印刷パターンを消去する消去手段と、
複数の第2発熱素子を備え、前記搬送手段により搬送されている前記記録媒体に前記第2発熱素子の熱を提供し、前記被印刷面の所定の位置に印刷パターンを印刷する印刷手段と、
を備えることを特徴とする記憶媒体処理装置。
【請求項2】
前記印刷手段の前記第2発熱素子は、前記消去手段に備えられている前記第1発熱素子のドット密度よりも高いドット密度で配置されていることを特徴とする請求項1に記載に記憶媒体処理装置。
【請求項3】
前記第2発熱素子のドット密度は、前記第1発熱素子のドット密度の倍数であることを特徴とする請求項2に記載の記憶媒体処理装置。
【請求項4】
前記消去手段および前記印刷手段は、サーマルヘッドであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の記憶媒体処理装置。
【請求項5】
前記消去手段は、ドット密度が6ドット/mmのサーマルヘッドであって、前記印刷手段は、ドット密度が12ドット/mmのサーマルヘッドであることを特徴とする請求項4に記載の記憶媒体処理装置。
【請求項6】
印刷パターンを書き換え可能な被印刷面を有する記憶媒体を搬送する搬送手段と、
個々の発熱が制御される複数の発熱素子を含み、前記搬送手段により搬送されている前記記録媒体の所定箇所に熱を提供する第1サーマルヘッドと、
前記第1サーマルヘッドのドット密度より高いドット密度を有し、個々の発熱が制御される複数の発熱素子を含み、前記搬送手段により搬送されている前記記録媒体の所定箇所に熱を提供する第2サーマルヘッドと、
を備えることを特徴とする記憶媒体処理装置。
【請求項7】
前記第1サーマルヘッドは、前記被印刷面の所定の位置の印刷パターンを消去し、
前記第2サーマルヘッドは、前記被印刷面の所定の位置に印刷パターンを印刷することを特徴とする請求項6に記載の記録媒体処理装置。
【請求項8】
前記第1サーマルヘッドは、前記被印刷面の所定の位置の印刷パターンを消去し、且つ、前記被印刷面の所定の位置に印刷パターンを印刷することを特徴とする請求項6に記載の記録媒体処理装置。
【請求項9】
前記第2サーマルヘッドのドット密度は、前記第1サーマルヘッドのドット密度の倍数であることを特徴とする請求項6ないし8のいずれか1項に記載の記憶媒体処理装置。
【請求項10】
前記第1サーマルヘッドのドット密度は6ドット/mmであって、前記第2サーマルヘッドのドット密度は12ドット/mmであることを特徴とする請求項6ないし9のいずれか1項に記載の記憶媒体処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−237429(P2007−237429A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−59294(P2006−59294)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】