説明

記憶装置及びその制御装置、ヘッド振動測定方法

【課題】周波数の高いヘッドの振動の測定を可能にする記憶装置及びその制御装置、ヘッド振動測定方法を提供する。
【解決手段】ヘッドの振動を測定することができる記憶装置であって、再生信号レベルの測定用波形を有するサーボ情報が所定の間隔で書き込まれ、少なくとも1つの所定のトラックである第1トラックに再生信号レベルの測定用波形である第1波形が書き込まれた記憶媒体から、ヘッドがサーボ情報を読み取るタイミングを示す複数の第1ゲート信号と第1ゲート信号間における少なくとも1つのタイミングを示す第2ゲート信号とを測定用ゲート信号として発生させるゲート発生部と、測定用ゲート信号のタイミングでヘッドにより再生される測定用波形の再生信号レベルの測定を行う測定部とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記憶装置におけるヘッドの振動を測定する記憶装置及びその制御装置、ヘッド振動測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク装置における記録密度の向上を実現するために、より高TPI(Track Per Inch)での記録が求められる。そのためには、より精度の高いヘッドの位置制御が必要となる。トラック間隔が縮まるほど、ヘッドがわずかな振動でオフセットライトし、隣接トラックのデータをイレーズしたり、極端な場合には隣接トラックへデータを書き込んだりする危険性が増す。
【0003】
この振動の対策として、VCM(Voice Coil Motor)駆動電流にノッチフィルタ(Notch Filter)を適用するなどして振動の発生しやすい特定周波数成分を抑圧することにより、振動を軽減することができる。
【0004】
また、セクタサーボ方式では、媒体においてヘッド位置を知るためのサーボ情報が、STW(Servo Track Writer)により離散的に書き込まれている。ヘッドがサーボ情報を読み出すことにより、ヘッドの位置制御が行われる。
【0005】
なお、本発明の関連ある従来技術として、衝撃や振動が発生したときに隣接トラックへの誤書き込みを抑制できるディスク装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−338146号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
媒体面に対して水平方向(面内方向)の振動の場合、振動の発生により隣接トラックのデータをイレーズする前に、媒体へのライト動作を禁止する必要がある。サーボゲートに従って読み取られるサーボ情報により、ヘッドのTrack Followingが実現されるが、サンプリング定理により、サーボ情報のサンプリング周波数の(1/2)倍であるナイキスト周波数より大きい振動やナイキスト周波数近くの振動は、正確に測定することができない。
【0007】
媒体面に対して垂直方向(上下方向)の振動の場合、ヘッドと媒体の間の距離が遠くなることにより、書き込み電流によりライトヘッド(ライトギャップ)で発生した磁界が、書き込みに十分な強度でなくなり、書き込んだ波形のピークがつぶれたり、最悪の場合、書き込みが十分に行えずにすでに書き込まれているデータがそのまま残ったりしてしまう。上下振動の周波数は、一般的に100kHzを超えており、サーボのサンプリング周波数(40〜50kHz)に対して高いため、上下振動を測定することは困難である。
【0008】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、周波数の高いヘッドの振動の測定を可能にする記憶装置及びその制御装置、ヘッド振動測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため、本発明は、ヘッドの振動を測定することができる記憶装置であって、再生信号レベルの測定用波形を有するサーボ情報が所定の間隔で書き込まれた記憶媒体と、前記記憶媒体における少なくとも1つの所定のトラックである第1トラックに、前記測定用波形である第1波形を書き込む書き込み部と、前記ヘッドが前記記憶媒体から前記サーボ情報を読み取るタイミングを示す複数の第1ゲート信号と前記第1ゲート信号間における少なくとも1つのタイミングを示す第2ゲート信号とを測定用ゲート信号として発生させ、前記測定用ゲート信号のタイミングで前記ヘッドにより再生される前記測定用波形の再生信号レベルの測定を行う測定部とを備える。
【0010】
また、本発明は、記憶装置におけるヘッドの振動の測定を行うヘッド振動測定方法であって、再生信号レベルの測定用波形を有するサーボ情報が所定の間隔で書き込まれた記憶媒体における少なくとも1つの所定のトラックである第1トラックに、前記測定用波形である第1波形を書き込む第1波形書き込みステップと、前記ヘッドが前記記憶媒体から前記サーボ情報を読み取るタイミングを示す複数の第1ゲート信号と前記第1ゲート信号間における少なくとも1つのタイミングを示す第2ゲート信号とを測定用ゲート信号として発生させ、前記測定用ゲート信号のタイミングで前記ヘッドにより再生される前記測定用波形の再生信号レベルの測定を行う測定ステップとを実行する。
【0011】
また、本発明は、ヘッドの振動を測定することができる記憶装置の制御装置であって、再生信号レベルの測定用波形を有するサーボ情報が所定の間隔で書き込まれ、少なくとも1つの所定のトラックである第1トラックに再生信号レベルの測定用波形である第1波形が書き込まれた記憶媒体から前記ヘッドが前記サーボ情報を読み取るタイミングを示す複数の第1ゲート信号と、前記第1ゲート信号における少なくとも1つのタイミングを示す第2ゲート信号とを測定用ゲート信号として発生させる制御を行うゲート発生制御部と、前記測定用ゲート信号のタイミングで前記ヘッドにより再生される前記測定用波形の再生信号レベルの測定の制御を行う測定制御部とを備えた。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、周波数の高いヘッドの振動の測定が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0014】
本実施の形態においては、本発明の記憶装置を適用した磁気ディスク装置について説明する。
【0015】
まず、本実施の形態に係る磁気ディスク装置の構成について説明する。
【0016】
図1は、本実施の形態に係る磁気ディスク装置の構成の一例を示すブロック図である。この磁気ディスク装置は、信号処理基板1とHDA(Head Disk Assembly)2とで構成される。
【0017】
信号処理基板1は、HDC(ハードディスクコントローラ)11、DDR(Double Data Rate) SDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)12、MCU(Micro Control Unit)13、DSP(Digital Signal Processor)14、RDC(リードチャネル)15、SVC(モータドライバ)16を備える。HDA2は、HDIC(Head IC:プリアンプ)21、VCM22、SPM(Spindle Motor)23、サスペンション24、ヘッド25、媒体26(記憶媒体)を備える。
【0018】
HDC11は、Hostとの通信を行い、Hostからの命令を受信し、MCU13への指示を行う。MCU13及びDSP14は、HDC11からの指示に従ってRDC15及びSVC16の制御を行う。RDC15は、MCU13及びDSP14からの指示に従ってHDIC21の制御を行う。SVC16は、MCU13及びDSP14からの指示に従ってVCM22及びSPM23の制御を行う。MCU(CPUやMPUであっても良い)は、各種プログラムに従って各回路の制御を行う制御装置であるが、MCU、DSP、HDCなどの制御回路を含めて制御装置として構成しても良い。
【0019】
HDIC(プリアンプIC)21は、RDC15からの指示に従って、ヘッド25への記録信号の転送またはヘッド25からの再生信号の増幅などを行う。VCM22は、SVC16からの指示に従ってサスペンション24及びヘッド25を移動させる。SPM23は、SVC16からの指示に従って媒体26を回転させる。サスペンション24は、ヘッド25を支持する。ヘッド25は、HDIC21からの信号を媒体26へ書き込み、媒体26から読み取った信号をHDIC21へ出力する。媒体26は、磁気ディスクであり面内記録方式であっても垂直記録方式であっても良い。
【0020】
図2は、通常のサーボゲート及びサーボ情報の一例を示すタイムチャートである。この図において、上段は、通常のサーボゲートを表し、下段は、サーボゲートの発生時にヘッド25により読み込まれるサーボ情報のフォーマットを表す。サーボ情報は、Preamble部、ServoMark部、GrayCode部、Position部、PostCode部、GAP部を有する。
【0021】
RDC15は、サーボ情報を正確に読み出すために、再生信号の強弱に応じて動的に再生信号の増幅率を決定する機能AGC(Auto Gain Control)を有する。増幅率(ServoGain値)は、サーボ情報内のPreamble部(測定用波形)の再生信号により調整される。増幅率は、ヘッド−媒体間距離や、Preamble部の有無(例えば、イレーズされているか否か、ServoMarkLockされているか否か)、HDICから出力される再生信号周波数に応じて変化する。例えば、ヘッド−媒体間距離が正常値よりも離れている場合、再生信号が小さくなるため、AGCは、ServoGain値を増加させ、再生信号を増加させるように動作する。また、再生信号周波数が高くなるということは媒体の磁化領域が小さくなるということであるため、再生信号振幅が小さくなる。従ってこの場合もServoGain値を増加させるように動作する。
【0022】
次に、本実施の形態に係るヘッド振動測定方法について説明する。
【0023】
本実施の形態においては、ヘッドの振動を、媒体面に対して垂直成分と水平成分に分離して測定する。
【0024】
図3は、本実施の形態に係るヘッド振動測定方法の動作の一例を示すフローチャートである。まず、STWは、所定の垂直成分測定用トラックの近傍の複数のシリンダに垂直成分測定用のパターンを書き込む垂直成分測定用書き込み処理を行う(S11)。次に、媒体26は、磁気ディスク装置に取り付けられる(S12)。
【0025】
次に、磁気ディスク装置のMCU13は、ヘッド振動の垂直成分を測定する垂直成分測定処理を行う(S21)。次に、MCU13は、所定の水平成分測定用トラックに水平成分測定用のパターンを書き込む水平成分測定用書き込み処理を行う(S22)。次に、MCU13は、ヘッド振動の水平成分を測定する水平成分測定処理を行い(S23)、このフローは終了する。
【0026】
なお、ヘッド振動の垂直成分の測定を行う必要がない場合、水平成分測定用書き込み処理及び水平成分測定処理のみを行う。
【0027】
垂直成分測定処理及び水平成分測定処理において、RDC15は、上述したAGCを利用して次の動作を行う。
【0028】
MCU13は、通常のサーボゲート(第1ゲート信号)間に、擬似サーボゲート(第2ゲート信号)を発生させ、通常のサーボゲートと擬似サーボゲートにおける再生信号を用いてAGCによりServoGain値を取得する。次に、RDC15は、ServoGain値の変動により、ヘッドの振動を測定する。この動作により、サーボゲートの周波数の(1/2)倍より高い周波数の振動を測定することが可能になる。また、垂直成分測定処理及び水平成分測定処理においては、再生信号振幅が小さいことによるServoGain値の飽和を防ぐため、HDIC21の再生ゲイン値を、通常使用時よりも大きくしておいても良い。
【0029】
ここで、通常のサーボゲートと擬似サーボゲートを測定用ゲートとする。図4は、本実施の形態に係る測定用ゲート及び測定用パターンの一例を示すタイムチャートである。この図において、上段は、測定用ゲートを表し、下段は、測定用ゲートのタイミングでヘッドにより読み取られる測定用パターンを表す。ここでは、サーボゲート間に等間隔で3回の擬似サーボゲートを発生させることにより、測定用ゲート周期をサーボゲート周期の(1/4)倍とし、この測定用ゲート周期でServoGainの測定を行う。従って、(サーボゲートのサンプリング周波数)×(1/2)×4倍の周波数までのヘッド振動を測定することができる。

【0030】
図5は、本実施の形態に係る測定用ゲートによるServoGain値サンプリングの一例を示すタイムチャートである。この図は、通常のサーボゲートのサンプリング周波数の(1/2)倍の正弦波である第1振動波形と、通常のサーボゲートのサンプリング周波数に等しい正弦波である第2振動波形とを示す。第1振動波形及び第2振動波形における黒丸は、ServoGain値サンプリングポイントを表す。従来、通常のサーボゲートのみでサンプリングを行うため、第1振動波形が振動周波数の上限であり、第2振動波形は測定不可能であった。本実施の形態の測定用ゲートでサンプリングを行うと第2振動波形も測定することが可能になる。
【0031】
MCU13は、ファームウェアプログラムにより各回路を制御し、測定を実行する。ファームウェアは、測定用ゲートに同期してServoGain値を測定するために、測定用ゲートに同期した割り込みをMCU13に発生させ、その割り込み処理を次の測定用ゲートの同期までに終了させる必要がある。また、通常のサーボゲートによる割り込みにおいて、ファームウェアは、位置情報を復調し、その値からヘッドの位置を算出するが、擬似サーボゲートによる割り込みにおいて、ファームウェアは、その処理をスキップし、ServoGain値のみを取得する。
【0032】
次に、垂直成分測定用書き込み処理について説明する。
【0033】
予め垂直成分測定用のトラックである垂直成分測定用トラックが指定される。STWは、垂直成分測定用トラック(シリンダ)の近傍(±1シリンダ以上)の複数のシリンダに対して、例えば(1/3)トラック単位でAC Eraseを行う。AC Eraseとは、サーボ情報間を一定周波数の波形であるACパターン(第1波形)を書き込む処理である。ACパターンは、Preamble部の波形(周波数)と同一である。
【0034】
(1/3)トラック単位でAC Eraseを行うことにより、トラック間の領域もACパターンで埋めることができる。また、複数のシリンダに亘ってAC Eraseを行うことにより、垂直成分の測定において水平成分の影響を受けないようにすることができる。
【0035】
また、STWがAC Eraseを行うのは、次の2つの理由からである。
【0036】
1.磁気ディスク装置でAC Eraseを行うとすると、AC Erase時にヘッドの振動があった場合、ACパターンにヘッドの信号が現れてしまい、測定時のヘッドの振動を測定することが困難になってしまう。
【0037】
2.STWでAC Eraseを行うと、(1/3)トラック単位で書き込まれたACパターンの位相を揃えることができる。
【0038】
図6は、本実施の形態に係る垂直成分測定用書き込み処理により媒体に書き込まれたパターンの一例を示す平面図である。この図において、縦方向は、媒体半径方向であり、横方向は、媒体円周方向である。また、この図において、サーボ情報(Servo Frame)以外のユーザデータ領域のうち、3シリンダ(トラック)にわたる斜線の領域は、AC Eraseされた領域(AC Erase Area)であり、AC Erase Areaの中心のトラックは、垂直成分測定用トラックである。AC Erase Area以外のユーザデータ領域は、DC Eraseされた領域(DC Erase Area)である。DC Eraseとは、サーボ情報間を周波数0の(振幅変化がない)波形であるDCパターンで埋める処理である。
【0039】
次に、垂直成分測定処理について説明する。
【0040】
MCU13は、リードコアを垂直成分測定用トラックにオントラックさせ、RDC15から測定用ゲート毎に出力されるServoGain値の変動を調べることにより、ヘッド振動の垂直成分を測定する。ここで、図6に示すように、ヘッドがサーボ情報の上を通過するときにMCU13は通常のサーボゲートを発生させ、ヘッドがユーザデータ領域の上を通過するときにMCU13は擬似サーボゲートを発生させる。AC Erase Areaが複数トラックに亘っており、媒体半径方向で位相が揃っていることから、ヘッド振動の水平成分はServoGain値の変動に現れない。
【0041】
次に、水平成分測定用書き込み処理及び水平成分測定処理の2つの例について説明する。
【0042】
まず、第1の水平成分測定用書き込み処理について説明する。
【0043】
予め水平成分測定用のトラックである水平成分測定用トラックが指定される。磁気ディスク装置は、水平成分測定用トラックに対してAC Eraseを行う。AC Eraseにより書き込まれるACパターン(第2波形)は、Preamble部の波形(周波数)と同一である。
【0044】
図7は、本実施の形態に係る第1の水平成分測定用書き込み処理により媒体に書き込まれたパターンの一例を示す平面図である。この図において、縦方向は、媒体半径方向であり、横方向は、媒体円周方向である。また、この図において、サーボ情報(Servo Frame)以外のユーザデータ領域のうち、1シリンダ(トラック)分の斜線の領域は、AC Eraseされた領域(AC Erase Area)であり、水平成分測定用トラックである。AC Erase Area以外のユーザデータ領域は、DC Eraseされた領域(DC Erase Area)である。
【0045】
次に、第1の水平成分測定処理について説明する。
【0046】
MCU13は、リードコアを水平成分測定用トラックにオントラックさせ、RDC15から出力されるServoGain値の変動を調べる。ここで、図7に示すように、ヘッドがサーボ情報の上を通過するときにMCU13は通常のサーボゲートを発生させ、ヘッドがユーザデータ領域の上を通過するときにMCU13は擬似サーボゲートを発生させる。なお、MCU13は、リードコアを水平成分測定用トラックのTrack Centerからオフセットさせ、ServoGain値の変動を調べても良い。この場合、水平成分でリードコアがAC Erase AreaとDC Erase Areaの境目を動くことにより、ServoGain値の変動が大きくなり、水平成分を測定しやすくなる。
【0047】
次に、第2の水平成分測定用書き込み処理について説明する。
【0048】
まず、第1の水平成分測定用書き込み処理と同様にして、MCU13は、水平成分測定用トラックに対してAC Eraseを行う。次に、MCU13は、水平成分測定用トラックのTrack Centerの両側において、ライトコアに所定のオフセットを与えてDC Eraseを行うことにより、第1の水平成分測定用書き込み処理よりAC Erase Areaを狭くする。
【0049】
図8は、本実施の形態に係る第2の水平成分測定用書き込み処理により媒体に書き込まれたパターンの一例を示す平面図である。この図におけるパターンは、第1の水平成分測定用書き込み処理により媒体に書き込まれたパターンと同様の配置であるが、AC Erase Areaの幅が狭くなっている。
【0050】
次に、第2の水平成分測定処理について説明する。
【0051】
MCU13は、リードコアを水平成分測定用トラックにオントラックさせ、RDC15から出力されるServoGain値の変動を調べる。ここで、図8に示すように、ヘッドがサーボ情報の上を通過するときにMCU13は通常のサーボゲートを発生させ、ヘッドがユーザデータ領域の上を通過するときにMCU13は擬似サーボゲートを発生させる。第1の水平成分測定処理よりAC Erase Areaの幅が狭いため、水平成分が小さい場合でも、第1の水平成分測定処理よりServoGain値の変動が大きくなり、水平成分を測定しやすくなる、第1の水平成分測定処理より信号出力が減少し、ServoGain値が飽和しやすくなる。
【0052】
上述したDC Eraseは、周波数0のDCパターンで埋める処理であるが、DCパターンによる磁界のために、Preamble部の振幅が変化してしまうことが考えられる。この場合、通常のサーボゲートで再生した信号振幅と測定用サーボゲートで再生した信号振幅とが違って見えるため、ServoGain値の比較が困難となる。そのため、DC EraseではなくPreamble部よりも高い周波数信号(例えばPreamble部が100MHzだとすると、その5倍の500MHz)を書き込むことにより、DC Eraseと同様の効果が期待できる。上述したように高い周波数信号を書き込むことにより再生信号振幅が小さくなりServoGain値が飽和しやすくなるためである。Preamble部よりも高い周波数信号を媒体に書き込む装置は、STWであっても、磁気ディスク装置であっても構わない(再生信号振幅を小さくし、ServoGain値を飽和させることが目的であるため)。
【0053】
媒体における垂直成分測定用トラック及び水平成分測定用トラックの位置について説明する。
【0054】
図9は、本実施の形態に係る媒体における測定用領域の一例を示す平面図である。ここで、測定用領域には、垂直成分測定用トラックの近傍の複数トラックと水平成分測定用トラックの近傍の複数トラックとが含まれる。サーボ情報は、従来と同様、放射状に配置されている。測定用領域は、例えば、最外周付近(Outer部)、最内周付近(Inner部)、中間部付近(Center部)に配置される。なお、測定用領域の位置は、3箇所でなくても良い。
【0055】
本実施の形態によれば、サーボゲートより周期の短い測定用ゲートを用いることにより、従来より高い周波数の振動を測定することができる。また、本実施の形態によれば、媒体面に対して、水平方向及び垂直方向の変動を測定することができる。サーボ情報間のユーザデータ領域を読み出すためにはHDC11による制御が必要となるが、本実施の形態によれば、擬似サーボゲートを発生させるだけで良く、実装が容易である。また、予めヘッド位置変動とServoGain値変動との相関を測定すれば、本実施の形態により測定されたServoGain値変動からヘッド位置変動を算出することができる。
【0056】
また、サーボ情報内のPosition部を構成するデータには、面積サーボ方式と位相サーボ方式の2種類が存在するが、本実施の形態は、Preamble部と同一のACパターンをユーザデータ領域に書き込むため、いずれの方式にも適用することができる。
【0057】
ここで、面積サーボ方式と位相サーボ方式について説明する。サーボ情報におけるPosition部は、いくつかの領域に分かれている。ここでは、その領域を領域A,B,C,Dとする。
【0058】
図10は、面積サーボ方式により書き込まれるPosition部の一例を示す平面図である。面積サーボ方式において、領域A,B,C,Dは、媒体半径方向において互いに異なる位置に書き込まれる。それぞれの領域で再生された信号の振幅により、媒体半径方向のヘッド位置が検出される。この図において、領域Aで再生された信号との振幅と領域Bで再生された信号の振幅とが等しい場合、ヘッドがTrackCenterを通ったと判断することができる。また、領域Aで再生された信号との振幅と領域Bで再生された信号の振幅との比により、媒体半径方向のヘッド位置のオフセットを検出することができる。
【0059】
位相サーボ方式では、Position部の全てに信号を書き込むが、領域毎に位相を変えた信号を書き込む。それぞれの領域で再生された信号の位相により、媒体半径方向のヘッド位置が検出される。
【0060】
なお、ゲート発生部及び測定部及び測定制御部は、実施の形態におけるMCU13による垂直成分測定処理及び水平成分測定処理に対応する。また、書き込み部は、実施の形態におけるMCU13による水平成分測定用書き込み処理に対応する。
【0061】
(付記1) ヘッドの振動を測定することができる記憶装置であって、
再生信号レベルの測定用波形を有するサーボ情報が所定の間隔で書き込まれ、少なくとも1つの所定のトラックである第1トラックに再生信号レベルの測定用波形である第1波形が書き込まれた記憶媒体から前記ヘッドが前記サーボ情報を読み取るタイミングを示す複数の第1ゲート信号と、前記第1ゲート信号間における少なくとも1つのタイミングを示す第2ゲート信号とを測定用ゲート信号として発生させるゲート発生部と、
前記測定用ゲート信号のタイミングで前記ヘッドにより再生される前記測定用波形の再生信号レベルの測定を行う測定部と、
を備える記憶装置。
(付記2) 付記1に記載の記憶装置において、
更に、前記測定用波形を書き込む書き込み部を備え、
前記書き込み部は、前記第1波形を書き込んだ後、前記第1トラックの両側において前記第1トラック中心から所定の距離だけ離れた経路におけるイレーズを行うことにより、前記第1波形の領域の幅を狭める処理を行う記憶装置。
(付記3) 付記1または付記2に記載の記憶装置において、
前記測定部は、前記第1トラック中心から所定の距離だけ離れた経路を前記ヘッドの経路として、前記測定用波形の再生信号レベルの測定を行う記憶装置。
(付記4) 付記1乃至付記3のいずれかに記載の記憶装置において、
前記記憶媒体における前記サーボ情報以外の領域であるユーザデータ領域に、前記測定用波形である第2波形が書き込まれており、
前記測定部は、前記ヘッドを前記記憶媒体における第2波形の領域に移動させ、前記ヘッドにより前記測定用ゲート信号のタイミングで再生される前記第2波形の再生信号レベルに基づいて前記振動のうち前記記憶媒体面に対する垂直成分を測定し、前記ヘッドを前記記憶媒体における第1波形の領域に移動させ、前記ヘッドにより前記測定用ゲート信号のタイミングで再生される前記第1波形の再生信号レベルに基づいて前記振動のうち前記記憶媒体面に対する水平成分を測定する記憶装置。
(付記5) 付記4に記載の記憶装置において、
前記測定部は、前記垂直成分を測定した後、前記第1波形の再生信号レベルから前記垂直成分を除去したものを前記水平成分とする記憶装置。
(付記6) 付記4または付記5に記載の記憶装置において、
前記第2波形は、前記ユーザデータ領域のうち、少なくとも1つの所定のトラックである第2トラック中心から所定の距離以内の領域に書き込まれてなる記憶装置。
(付記7) 付記6に記載の記憶装置において、
前記所定の距離は、隣接するトラック間の距離以上である記憶装置。
(付記8) 付記6または付記7に記載の記憶装置において、
前記第2波形は、前記第2トラックに垂直な方向において位相が揃うように書き込まれてなる記憶装置。
(付記9) 記憶装置におけるヘッドの振動の測定を行うヘッド振動測定方法であって、
再生信号レベルの測定用波形を有するサーボ情報が所定の間隔で書き込まれ、少なくとも1つの所定のトラックである第1トラックに再生信号レベルの測定用波形である第1波形を書き込む第1波形書き込みステップと、
前記ヘッドが前記記憶媒体から前記サーボ情報を読み取るタイミングを示す複数の第1ゲート信号と、前記第1ゲート信号間における少なくとも1つのタイミングを示す第2ゲート信号とを測定用ゲート信号として発生させ、前記測定用ゲート信号のタイミングで前記ヘッドにより再生される前記測定用波形の再生信号レベルの測定を行う測定ステップと
を実行するヘッド振動測定方法。
(付記10) 付記9に記載のヘッド振動測定方法において、
前記第1波形書き込みステップは、前記第1波形を書き込んだ後、前記第1トラックの両側において前記第1トラック中心から所定の距離だけ離れた経路におけるイレーズを行うことにより、前記第1波形の領域の幅を狭める処理を行うヘッド振動測定方法。
(付記11) 付記9または付記10に記載のヘッド振動測定方法において、
前記測定ステップは、前記第1トラック中心から所定の距離だけ離れた経路を前記ヘッドの経路として、前記測定用波形の再生信号レベルの測定を行うヘッド振動測定方法。
(付記12) 付記9乃至付記11のいずれかに記載のヘッド振動測定方法において、
前記第1波形書き込みステップの前に、前記記憶媒体における前記サーボ情報以外の領域であるユーザデータ領域に、前記測定用波形である第2波形を書き込む第2波形書き込みステップと、
前記測定ステップは、前記ヘッドを前記記憶媒体における第2波形の領域に移動させ、前記ヘッドにより前記測定用ゲート信号のタイミングで再生される前記第2波形の再生信号レベルに基づいて前記振動のうち前記記憶媒体面に対する垂直成分を測定し、前記ヘッドを前記記憶媒体における第1波形の領域に移動させ、前記ヘッドにより前記測定用ゲート信号のタイミングで再生される前記第1波形の再生信号レベルに基づいて前記振動のうち前記記憶媒体面に対する水平成分を測定するヘッド振動測定方法。
(付記13) 付記12に記載のヘッド振動測定方法において、
前記測定ステップは、前記垂直成分を測定した後、前記第1波形の再生信号レベルから前記垂直成分を除去したものを前記水平成分とするヘッド振動測定方法。
(付記14) 付記12または付記13に記載のヘッド振動測定方法において、
前記第2波形は、前記ユーザデータ領域のうち、少なくとも1つの所定のトラックである第2トラック中心から所定の距離以内の領域に書き込まれるヘッド振動測定方法。
(付記15) 付記14に記載のヘッド振動測定方法において、
前記所定の距離は、トラック間の距離以上であるヘッド振動測定方法。
(付記16) 付記14または付記15に記載のヘッド振動測定方法において、
前記第2波形は、前記第2トラックに垂直な方向において位相が揃うように書き込まれるヘッド振動測定方法。
(付記17) ヘッドの振動を測定することができる記憶装置の制御装置であって、
再生信号レベルの測定用波形を有するサーボ情報が所定の間隔で書き込まれ、少なくとも1つの所定のトラックである第1トラックに再生信号レベルの測定用波形である第1波形が書き込まれた記憶媒体から前記ヘッドが前記サーボ情報を読み取るタイミングを示す複数の第1ゲート信号と、前記第1ゲート信号における少なくとも1つのタイミングを示す第2ゲート信号とを測定用ゲート信号として発生させる制御を行うゲート発生制御部と、
前記測定用ゲート信号のタイミングで前記ヘッドにより再生される前記測定用波形の再生信号レベルの測定の制御を行う測定制御部と、
を備える制御装置。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本実施の形態に係る磁気ディスク装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図2】通常のサーボゲート及びサーボ情報の一例を示すタイムチャートである。
【図3】本実施の形態に係るヘッド振動測定方法の動作の一例を示すフローチャートである。
【図4】本実施の形態に係る測定用ゲートの一例を示すタイムチャートである。
【図5】本実施の形態に係る測定用ゲートによるServoGain値サンプリングの一例を示すタイムチャートである。
【図6】本実施の形態に係る垂直成分測定用書き込み処理により媒体に書き込まれたパターンの一例を示す平面図である。
【図7】本実施の形態に係る第1の水平成分測定用書き込み処理により媒体に書き込まれたパターンの一例を示す平面図である。
【図8】本実施の形態に係る第2の水平成分測定用書き込み処理により媒体に書き込まれたパターンの一例を示す平面図である。
【図9】本実施の形態に係る媒体における測定用領域の一例を示す平面図である。
【図10】面積サーボ方式により書き込まれるPosition部の一例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0063】
1 信号処理基板、2 HDA、11 HDC、12 DDR SDRAM、13 MCU、14 DSP、15 RDC、16 SVC、21 HDIC、22 VCM、23 SPM、24 サスペンション、25 ヘッド、26 媒体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドの振動を測定することができる記憶装置であって、
再生信号レベルの測定用波形を有するサーボ情報が所定の間隔で書き込まれ、少なくとも1つの所定のトラックである第1トラックに再生信号レベルの測定用波形である第1波形が書き込まれた記憶媒体から前記ヘッドが前記サーボ情報を読み取るタイミングを示す複数の第1ゲート信号と、前記第1ゲート信号間における少なくとも1つのタイミングを示す第2ゲート信号とを測定用ゲート信号として発生させるゲート発生部と、
前記測定用ゲート信号のタイミングで前記ヘッドにより再生される前記測定用波形の再生信号レベルの測定を行う測定部と、
を備える記憶装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記憶装置において、
前記記憶媒体における前記サーボ情報以外の領域であるユーザデータ領域に、前記測定用波形である第2波形が書き込まれており、
前記測定部は、前記ヘッドを前記記憶媒体における第2波形の領域に移動させ、前記ヘッドにより前記測定用ゲート信号のタイミングで再生される前記第2波形の再生信号レベルに基づいて前記振動のうち前記記憶媒体面に対する垂直成分を測定し、前記ヘッドを前記記憶媒体における第1波形の領域に移動させ、前記ヘッドにより前記測定用ゲート信号のタイミングで再生される前記第1波形の再生信号レベルに基づいて前記振動のうち前記記憶媒体面に対する水平成分を測定する記憶装置。
【請求項3】
請求項2に記載の記憶装置において、
前記測定部は、前記垂直成分を測定した後、前記第1波形の再生信号レベルから前記垂直成分を除去したものを前記水平成分とする記憶装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の記憶装置において、
前記第2波形は、前記ユーザデータ領域のうち、少なくとも1つの所定のトラックである第2トラック中心から所定の距離以内の領域に書き込まれてなる記憶装置。
【請求項5】
記憶装置におけるヘッドの振動の測定を行うヘッド振動測定方法であって、
再生信号レベルの測定用波形を有するサーボ情報が所定の間隔で書き込まれ、少なくとも1つの所定のトラックである第1トラックに再生信号レベルの測定用波形である第1波形を書き込む第1波形書き込みステップと、
前記ヘッドが前記記憶媒体から前記サーボ情報を読み取るタイミングを示す複数の第1ゲート信号と、前記第1ゲート信号間における少なくとも1つのタイミングを示す第2ゲート信号とを測定用ゲート信号として発生させ、前記測定用ゲート信号のタイミングで前記ヘッドにより再生される前記測定用波形の再生信号レベルの測定を行う測定ステップと
を実行するヘッド振動測定方法。
【請求項6】
請求項5に記載のヘッド振動測定方法において、
前記第1波形書き込みステップの前に、前記記憶媒体における前記サーボ情報以外の領域であるユーザデータ領域に、前記測定用波形である第2波形を書き込む第2波形書き込みステップと、
前記測定ステップは、前記ヘッドを前記記憶媒体における第2波形の領域に移動させ、前記ヘッドにより前記測定用ゲート信号のタイミングで再生される前記第2波形の再生信号レベルに基づいて前記振動のうち前記記憶媒体面に対する垂直成分を測定し、前記ヘッドを前記記憶媒体における第1波形の領域に移動させ、前記ヘッドにより前記測定用ゲート信号のタイミングで再生される前記第1波形の再生信号レベルに基づいて前記振動のうち前記記憶媒体面に対する水平成分を測定するヘッド振動測定方法。
【請求項7】
ヘッドの振動を測定することができる記憶装置の制御装置であって、
再生信号レベルの測定用波形を有するサーボ情報が所定の間隔で書き込まれ、少なくとも1つの所定のトラックである第1トラックに再生信号レベルの測定用波形である第1波形が書き込まれた記憶媒体から前記ヘッドが前記サーボ情報を読み取るタイミングを示す複数の第1ゲート信号と、前記第1ゲート信号における少なくとも1つのタイミングを示す第2ゲート信号とを測定用ゲート信号として発生させる制御を行うゲート発生制御部と、
前記測定用ゲート信号のタイミングで前記ヘッドにより再生される前記測定用波形の再生信号レベルの測定の制御を行う測定制御部と、
を備える制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−9648(P2009−9648A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−170279(P2007−170279)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】