記録ヘッド及び記録装置
【課題】 定電流駆動方式の記録ヘッドにおいて、定電流駆動方式の定電流源としてのMOSトランジスタでの電圧吸収範囲を低減してサイズアップなどによるコストの上昇を抑え、かつ電力ロスを抑えて素子基板の温度上昇を抑える。
【解決手段】 本発明の記録ヘッドは、複数の記録素子と、前記複数の記録素子のそれぞれに対応して設けられた複数のスイッチング素子とを備える。また、前記複数の記録素子に定電流を供給するための定電流源と、前記定電流源を制御することにより前記複数の記録素子に供給される電流を調整する制御手段とを備える。さらに、外部から直接に直流電圧を入力し、前記複数の記録素子に印加するための電圧値に変換して前記複数の記録素子に出力するDC/DCコンバータを備える。また、前記複数の記録素子と、前記複数のスイッチング素子と、前記定電流源と、前記制御手段は、同一の素子基板に設けられており、前記DC/DCコンバータは、該素子基板と異なる素子基板に設けられている。
【解決手段】 本発明の記録ヘッドは、複数の記録素子と、前記複数の記録素子のそれぞれに対応して設けられた複数のスイッチング素子とを備える。また、前記複数の記録素子に定電流を供給するための定電流源と、前記定電流源を制御することにより前記複数の記録素子に供給される電流を調整する制御手段とを備える。さらに、外部から直接に直流電圧を入力し、前記複数の記録素子に印加するための電圧値に変換して前記複数の記録素子に出力するDC/DCコンバータを備える。また、前記複数の記録素子と、前記複数のスイッチング素子と、前記定電流源と、前記制御手段は、同一の素子基板に設けられており、前記DC/DCコンバータは、該素子基板と異なる素子基板に設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクを吐出するために必要な熱エネルギーを発生する発熱抵抗素子とそれを駆動するための駆動回路を同一の素子基板上に形成したインクジェット記録ヘッド及びそのインクジェット記録ヘッドを用いた記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のインクジェット記録装置に搭載される記録ヘッドの発熱抵抗素子とその駆動回路は、半導体プロセス技術を用いて同一の素子基板上に形成されている(例えば特許文献1参照)。その中でも、いわゆる定電流駆動方式と呼ばれる方式で発熱抵抗素子へ電力を供給する技術が開示されている(例えば特許文献2参照)。
【0003】
図5は、従来の定電流駆動方式を用いた記録ヘッドの素子基板に設けられている駆動制御回路の構成を説明する回路図である。
【0004】
図5において、101a1〜101mxは記録を行うための発熱抵抗素子を示し、各発熱抵抗素子が通電されて熱を発生することにより、対応する各ノズルからインク滴が吐出される。ここで、これら発熱抵抗素子101a1〜101mxは、グループa〜mに分割されており、各グループにはx個の発熱抵抗素子と、各発熱抵抗素子に対応して設けられたx個のMOSトランジスタが含まれている。102a1〜102mxは、それぞれ対応する発熱抵抗素子への通電をオン及びオフするためのMOSトランジスタである。103a〜103mは定電流源で、グループごとに1つずつ設けられている。104は記録データ供給回路で、記録すべき記録データに応じて各MOSトランジスタ102のオン及びオフを制御している。105は基準電流回路で、制御信号をライン110を介して定電流源103a〜103mに出力し、各定電流源により一定の値とされる定電流値を制御している。106及び107は素子基板外部の電源部(不図示)に接続される電源端子で、これら電源端子を介して発熱抵抗素子駆動用の電力が素子基板に供給される。108及び109は、それぞれ各電源端子106及び107からグループa〜mに、発熱抵抗素子駆動用の電力を供給している電源ラインである。
【0005】
グループaにおいて、MOSトランジスタ102a1〜102axのそれぞれは、発熱抵抗素子101a1〜101axの対応する各発熱抵抗素子に直列に接続され、その直列に接続されている各発熱抵抗素子への電流の通電及び非通電を制御している。即ち、MOSトランジスタ102a1〜102axの各ドレイン端子は対応する各発熱抵抗素子101a1〜101axとが接続され、MOSトランジスタ102a1〜102axの各ソース端子はそれぞれ共通に定電流源103aに接続されている。また、発熱抵抗素子101a1〜101axのそれぞれの一端も共通に電源ライン108に接続されている。ここで、MOSトランジスタ102a1〜102axは、発熱抵抗素子101a1〜101axの第1駆動用スイッチであり、また定電流源103aは、発熱抵抗素子101a1〜101axの第2駆動用スイッチである。このような構成は他のグループb〜mにおいても同様である。
【0006】
また、定電流源103a〜103mのそれぞれは、MOSトランジスタ102a1〜102mxと、発熱抵抗素子101a1〜101mxとに直列に接続されている。定電流源103a〜103mのそれぞれは、ここを流れる電流を所定の定電流値とし、この定電流値はライン110を介して基準電流回路105から制御信号を入力することで調節される。
【0007】
記録データ供給回路104は、MOSトランジスタ102a1〜102mxのそれぞれのゲート端子に、記録する画像に応じた記録データ信号を出力して、MOSトランジスタ102a1〜102mxのそれぞれのスイッチング制御をしている。
【0008】
図6は、図5の定電流源103a〜103mに相当する部分をMOSトランジスタ111a〜111mで構成した回路図である。
【0009】
これらMOSトランジスタ111a〜111mのドレイン端子は、MOSトランジスタ102a1〜102mxのソース端子にそれぞれ接続される。また、MOSトランジスタ111a〜111mのゲート端子は、基準電流回路105から出力される制御信号を入力するためにライン110に接続される。
【0010】
MOSトランジスタ111a〜111mのゲート端子は、基準電流回路105から出力される制御信号を入力するためにライン110と接続され、NMOSトランジスタ111a〜111mを流れる定電流が所定の定電流値にされる。この定電流値は、基準電流回路105が接続されるMOSトランジスタ111a〜111mのゲート電圧により制御される。
【0011】
例えば、同時に駆動される発熱抵抗素子数を増やすことで、素子基板内の配線抵抗とその配線抵抗のバラツキが増加し、各発熱抵抗素子に印加される電圧の変動割合が増加する場合がある。しかし、このような構成をとることで、各発熱抵抗素子への投入エネルギー量をほぼ一定にすることができる。また、素子基板外部の配線は、複数の発熱抵抗素子に対して共通となっているため、同時に駆動する発熱抵抗素子数によって共通の配線での電圧降下が異なった場合でも、各発熱抵抗素子への投入エネルギー量をほぼ一定にすることができる。さらに、記録ヘッドに電力を供給する外部電源装置に電圧変動が発生した場合においても、各発熱抵抗素子への投入エネルギー量をほぼ一定にすることができる。
【0012】
このように定電流駆動方式を用いることにより種々の要因により変動する各発熱抵抗素子への投入エネルギー量をほぼ一定にすることが可能になる。これは、定電流源としてのMOSトランジスタ111a〜111mのゲート端子に入力される電流が基準電流回路105により制御され、MOSトランジスタ111a〜111mのオン抵抗が変動することによる電圧変動分を吸収することができるためである。
【0013】
また、上述した電圧変動の他にも、例えば、記録ヘッドごとに発熱抵抗素子の抵抗値が異なる記録ヘッドを製造してしまうことにより、記録ヘッドごとに発熱抵抗素子で発生する電力が異なってしまう場合がある。この場合、常に一定の電流を発熱抵抗素子に供給する定電流駆動方式では、記録ヘッドごとに発熱抵抗素子の抵抗値の違いに伴って発生するエネルギーも異なってしまうことになる。このことを解決するために、図7に示すようにD/Aコンバータを設けて外部から信号を入力することにより定電流回路が流す電流値を設定できるようにした構成がある。即ち、図7において、端子702及び703からデジタル信号でシリアルに電流値設定データをD/Aコンバータ701に入力し、これに基づいてD/Aコンバータ701が発生する電圧を基準電流回路105へ供給する。この電圧がMOSトランジスタ111a〜111mのゲート電圧の反映されて、最終的に所望の電流値の電流が各発熱抵抗素子に供給される。こうして、予め取得しておいた発熱抵抗素子の抵抗値に基づいた最適な設定電流による定電流駆動が行なわれる。
【0014】
また、D/Aコンバータによる電流値の設定は全て同じ素子基板に形成された回路で行われるため、電流値の設定を高速に変えることができる。このため、何らかの要因で記録中に発熱抵抗素子への投入エネルギーを変えたいという場合においても、電流値の設定を変えることができる。例えば、記録中に記録ヘッドの温度が変化した場合、インクの吐出特性を一定に保つため発熱抵抗素子への通電時間を制御することが一般的に行われるが、その替わりに発熱抵抗素子に流れる電流値を変化させることでインクの吐出特性を一定に保つことができる。
【特許文献1】米国特許第6290334号公報
【特許文献2】特開2004−181679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上述したような種々の要因による電圧変動や発熱抵抗素子への投入エネルギーを変えたいという要求に対応するためには、定電流源としてのMOSトランジスタが吸収する電圧変動の範囲が非常に大きいものになってしまう。これに対応するために例えばMOSトランジスタのサイズを大きくする必要があるが、このことは回路サイズの増大を招きコストアップの要因となる。またこのMOSトランジスタが吸収する電圧はそのオン抵抗によって電力として消費されるため、無駄な電力を消費することになる。このことは電力のロスになるばかりではなく記録ヘッドの温度の上昇を招き安定したインク吐出の妨げとなる。
【0016】
また、変動する電圧の範囲が大きくなるとD/Aコンバータによる電流値の設定範囲も大きくなるため同じ分解能のD/Aコンバータでは最小変動幅が大きくなり設定電流の精度が粗くなってしまう。一方、最小変動幅を同じにするためには分解能を上げることが必要になるため、D/Aコンバータ自体のサイズが増大してしまう。
【0017】
さらに、MOSトランジスタが吸収する電圧変動の範囲が大きくなると、発熱抵抗素子にかかる電圧は常に一定であり発熱抵抗素子とMOSトランジスタは直列に接続されているので、電源とGND間にかかる電圧がそれに比例して大きくなることになる。この電圧があまり大きくなるとMOSトランジスタの耐圧を超えてしまう。MOSトランジスタの耐圧を上げるためには製造工程の複雑化やトランジスタサイズの増大を招きコストアップの要因となる。
【0018】
そこで、本発明の目的は、定電流駆動方式の定電流源としてのMOSトランジスタでの電圧吸収範囲を低減してサイズアップなどによるコストの上昇を抑え、かつ電力ロスを抑えて素子基板の温度上昇を抑える記録ヘッドを提供することである。また、その記録ヘッドを用いた記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するための本発明は、複数の記録素子と、前記複数の記録素子のそれぞれに対応して設けられた複数のスイッチング素子と、を備える記録ヘッドであって、
前記複数の記録素子に定電流を供給するための定電流源と、
前記定電流源を制御することにより前記複数の記録素子に供給される電流を調整する制御手段と、
外部から直接に直流電圧を入力し、前記複数の記録素子に印加するための電圧値に変換して前記複数の記録素子に出力するDC/DCコンバータと、
を備え、
前記複数の記録素子と、前記複数のスイッチング素子と、前記定電流源と、前記制御手段は、同一の素子基板に設けられており、前記DC/DCコンバータは、該素子基板と異なる素子基板に設けられていることを特徴とする。
【0020】
また、上記課題を解決するための別の本発明は、複数の記録素子と、前記複数の記録素子のそれぞれに対応して設けられた複数のスイッチング素子と、前記複数の記録素子に定電流を供給するための定電流源と、前記定電流源を制御することにより前記複数の記録素子に供給される電流を調整する制御手段と、を備える記録ヘッドを搭載したヘッドキャリッジを走査し、前記記録ヘッドにより記録媒体に記録を行う記録装置であって、
前記ヘッドキャリッジに直流電圧を出力する出力手段と、
前記ヘッドキャリッジに備えられ、前記出力手段から出力された直流電圧を入力し、前記複数の記録素子に印加するための電圧値に変換して前記複数の記録素子に出力するDC/DCコンバータと、
を備えることを特徴とする。
【0021】
さらに、上記課題を解決するための別の本発明は、複数の記録素子と、前記複数の記録素子のそれぞれに対応して設けられた複数のスイッチング素子と、前記複数の記録素子に定電流を供給するための定電流源と、前記定電流源を制御することにより前記複数の記録素子に供給される電流を調整する制御手段と、を備える記録ヘッドを有する記録装置であって、
前記記録装置の本体側に、電源部より入力された直流電圧を、前記複数の記録素子に印加するための電圧、前記複数のスイッチング素子に印加するための電圧及び前記記録ヘッドのロジック回路に印加するための電圧の電圧値に変換して、前記複数の記録素子、前記複数のスイッチング素子及び前記ロジック回路に出力するDC/DCコンバータを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、定電流駆動方式の定電流源としてのMOSトランジスタでの電圧吸収範囲を低減してサイズアップなどによるコストの上昇を抑え、かつ電力ロスを抑えて素子基板の温度上昇を抑えることで安定したインク吐出をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、図面を参照して本発明の好適な実施例について詳細に説明する。
【0024】
なお、この明細書において、「記録」(以下、「プリント」とも称する)とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、又は媒体の加工を行う場合も表すものとする。また、人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わない。
【0025】
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表すものとする。
【0026】
また、「インク」とは、上記「記録」の定義と同様広く解釈されるべきもので、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成又は記録媒体の加工、或いはインクの処理に供され得る液体を表すものとする。インクの処理としては、例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固又は不溶化させることが挙げられる。
【0027】
まず、本発明を適用可能なインクジェット記録ヘッドの概要について説明する。
【0028】
本実施例のインクジェット用の記録ヘッドIJHは、図8(a)及び図8(b)の斜視図でわかるように、記録ヘッドカートリッジIJCを構成する一構成要素となっている。この記録ヘッドカートリッジIJCは、記録ヘッドIJHと、該記録ヘッドIJHに着脱自在に設けられたインクタンクIT(H1901,H1902,H1903,H1904)とから構成されている。記録ヘッドIJHは、インクタンクITから供給されるインク(記録液)を、記録情報に応じて吐出口から吐出する。
【0029】
この記録ヘッドカートリッジIJCは、インクジェット記録装置本体に載置されているヘッドキャリッジ200の位置決め手段及び電気的接点によって固定支持されるとともに、ヘッドキャリッジ200に対して着脱可能となっている。
【0030】
また、図9の分解斜視図に示すように、記録ヘッドIJHは、記録素子としての発熱抵抗素子を複数備えた発熱抵抗素子ユニットH1002と、インク供給ユニット(記録液供給手段)H1003と、タンクホルダーH2000とから構成されている。なお、記録ヘッドIJHは、発熱抵抗素子ユニットH1002のインク連通口とインク供給ユニットH1003のインク連通口とをインクがリークしないように連通させる必要がある。このため、それぞれの部材を圧着するようジョイントシール部材H2300を介してビスH2400で固定している。
【0031】
また、図10の分解斜視図に示すように、素子基板H1100は、第1のプレートH1200に接着され固定されている。さらに、第1のプレートH1200は、開口部を有する第2のプレートH1400が接着され固定されている。そして、この第2のプレートH1400は、TAB方式によって、電気配線テープH1300が接着され固定されており、素子基板H1100に対しての位置が決められている。この電気配線テープH1300は、素子基板H1100にインクを吐出するための電気信号を印加するものであり、素子基板H1100に対応する電気配線を含む。そして、電気配線テープH1300は、インクジェット記録装置本体からの電気信号を受け取る外部信号入力端子H1301を有する電気コンタクト基板H2200と接続している。電気コンタクト基板H2200は、インク供給ユニットH1003に、端子位置決め穴H1309(2ヶ所)により位置が決められ、固定されている。
【0032】
次に、上述したようなカートリッジタイプの記録ヘッドを搭載可能な液体吐出記録装置について説明する。図11は、本発明のインクジェット記録ヘッドを搭載可能な記録装置の一例を示す説明図である。
【0033】
図11を参照すると、この記録装置は、図8に示した記録ヘッドIJHが、位置決めされて、交換可能に搭載されるヘッドキャリッジ200を有する。ヘッドキャリッジ200には、記録ヘッドIJH上の外部信号入力端子を介して各吐出部に駆動信号等を伝達するための電気接続部が設けられている。
【0034】
ヘッドキャリッジ200は、走査方向に延在して装置本体に設置されたガイドシャフト1103に沿って往復移動可能に支持されている。そして、ヘッドキャリッジ200は、走査モータ1104によりモータプーリ1105、従動プーリ1106及びタイミングベルト1107等の駆動機構を介して駆動されるとともに、その位置及び移動が制御される。また、ヘッドキャリッジ200にはホームポジションセンサ1130が設けられている。ヘッドキャリッジ200上のホームポジションセンサ1130が遮蔽板1136の位置を通過した際に、ホームポジションとなる位置が検出される。
【0035】
記録用紙やプラスチック薄板等の記録媒体1108は、給紙モータ1135がギアを介してピックアップローラ1131を回転させることにより、記録媒体1108がオートシートフィーダ(ASF)1132から一枚ずつ分離され、給紙される。さらに、記録媒体1108は、搬送ローラ1109の回転により、記録ヘッドIJHの吐出口面と対向する位置(プリント部)を通って搬送される。LFモータ1134による駆動は、ギアを介して搬送ローラ1109に伝達される。給紙されたかどうかの判定と給紙時の頭出し位置の確定は、記録媒体1108がペーパエンドセンサ1133を通過した時点で行われる。このペーパエンドセンサ1133は、記録媒体1108の後端が実際にどこに有り、実際の後端から現在の記録位置を最終的に割り出すためにも使用される。
【0036】
次に、上述したインクジェット記録装置の記録制御を実行するための制御構成について説明する。
【0037】
図12はインクジェット記録装置の制御回路の構成を示すブロック図である。
【0038】
図12において、1700は記録信号を入力するインタフェース、1701はMPU、1702はMPU1701が実行する制御プログラムを格納するROMである。また、1703は各種データ(記録ヘッドIJHに供給される記録信号等)を保存しておくDRAMである。1704は記録ヘッドIJHに対する記録データの供給制御を行うゲートアレイ(G.A.)であり、インタフェース1700、MPU1701、RAM1703間のデータ転送制御も行う。1710は記録ヘッドIJHを搬送するためのキャリアモータ、1134は記録媒体搬送のためのLFモータである。1705は記録ヘッドIJHを駆動するヘッドドライバ、1706は、搬送モータ1709を駆動するためのモータドライバ、1707は、キャリアモータ1710を駆動するためのモータドライバである。なお、記録ヘッドIJHには、記録ヘッドIJHの温度を検出する温度センサ1720が備えられている。
【0039】
上記制御構成の動作を説明すると、インタフェース1700に記録データが入力されるとゲートアレイ1704とMPU1701との間でこの記録データがプリント用の記録データに変換される。そして、モータドライバ1706、モータドライバ1707が駆動されると共に、ヘッドドライバ1705に送られた記録データに従って記録ヘッドIJHが駆動され、記録が行われる。
【実施例1】
【0040】
図1は、本実施例のインクジェット記録ヘッドの要部を説明するブロック図である。
【0041】
100は素子基板であり、図7の素子基板100と同じ構成であるため、詳しい説明は省略する。素子基板100は、電源端子106及び107によりD/Aコンバータ151により外部から直接に直流電圧を入力するDC/DCコンバータ150と接続されている。なお、152及び153はそれぞれDC/DCコンバータ150から出力されるVH電源及びGNDHの電源端子を示し、162及び163はこれらの電源ラインを示している。また、154及び155はD/Aコンバータ151にデータを供給するための端子を示している。
【0042】
図2(a)及び図2(b)は、本実施例をさらに説明するためのブロック図である。
【0043】
ヘッドキャリッジ200は素子基板100とDC/DCコンバータ150を備えており、210はこれらを駆動する記録装置本体側の本体メイン基板である。なお、DC/DCコンバータ150は、記録ヘッド上に設けられていても、記録ヘッドとは別にヘッドキャリッジ上に設けられていてもいずれでも良い。図2(a)は、DC/DCコンバータ150が記録ヘッドIJH上に設けられた記録装置を、図2(b)は、DC/DCコンバータ150が記録ヘッドIJHとは別にヘッドキャリッジ200上に設けられた記録装置を表している。下記の説明は、図2(a)についての説明であるが、図2(b)についても同様である。211は本体側に配設された電源であり212及び213の電源ラインを通じてDC/DCコンバータ150へ電圧を供給する。214は、DC/DCコンバータ150が所望の電圧値を得るためのデータを生成し、ライン216を介してD/Aコンバータ151にシリアルに入力するデータ生成部である。また、215は、基準電流回路105に接続されたD/Aコンバータ701が定電流駆動を行うための所望の電流値を得るためのデータを生成し、ライン217を介してD/Aコンバータ701にシリアルに入力するデータ生成部である。なお、ライン216は端子154及び155に接続される2本のラインであり、ライン217は端子702及び703に接続される2本のラインである。
【0044】
このような構成をとることで定電流駆動を行うための電流値の設定とDC/DCコンバータ150の電圧値の設定とを並行して行うことができるようになる。
【0045】
ここで、D/Aコンバータを用いての定電流駆動を行うための電流値の設定は、全て同じ素子基板に形成された回路により行なわれるため、異なる電流値に設定して駆動することを高速に行うことができるという特徴を有している。このため、刻々と変化する記録データに対応して変動する同時オンの発熱抵抗素子数に起因する発熱抵抗素子で消費する電力の変動を抑えることが可能になる。また、記録ヘッドの急激な温度変化によってインクの吐出特性に変動が生じた場合にも、瞬時に設定電流値を調整することにより安定したインクの吐出を継続することも可能になる。
【0046】
DC/DCコンバータの電圧値の設定は、素子基板外部のヘッドキャリッジ上に設けられた大容量のコンデンサを充放電するスイッチングレギュレータにより行なわれる。このため、DC/DCコンバータの電圧値の設定による電圧の変化は定電流回路の電流変化に比較すると長い時間がかかるという特徴を有している。定電流駆動を行う場合、発熱抵抗素子での電力消費を一定に保つために定電流源となるMOSトランジスタで電圧を吸収し電力を消費するため、このことにより発生する熱が大きいと記録ヘッド自体を昇温してしまう場合がある。しかし、DC/DCコンバータは同一基板上に設けられておらず、DC/DCコンバータは素子基板外部で電圧を変化させるため、記録ヘッドの昇温を起こすことはなく吐出特性に影響を与えにくいという特徴を有している。
【0047】
そこで本発明では、定電流源を用いて駆動することによって変動電圧を吸収することと、DC/DCコンバータによって電圧値を設定することとを併用し、それぞれの特徴を最大限に発揮する構成としている。即ち、例えば記録データによって刻々と変化する同時オンする発熱抵抗素子数による電圧変動や記録ヘッドの急激な温度変化によって生じる電圧変動などの比較的時間的な変動が速い要因に対しては、定電流駆動によってインクの吐出特性の変動を抑制する。また、例えば記録ヘッド間での発熱抵抗素子の抵抗の違いによって生じる記録ヘッド間での電圧変動などの比較的時間的な変動が遅い要因に対しては、DC/DCコンバータによる電圧値の設定によってインクの吐出特性の変動を抑制する。加えて、本体メイン基板から供給される電源電圧の変動に対しては、DC/DCコンバータで安定した電圧に変換することでインクの吐出特性の変動を抑制する。
【0048】
なお、本実施例では、定電流源としてのMOSトランジスタは、複数の発熱抵抗素子を複数のグループに分割したグループごとに設けられているが、このような構成に限定されない。
【実施例2】
【0049】
図3は、本実施例のインクジェット記録ヘッドの要部を説明するブロック図である。
【0050】
図3は、実施例1の本体メイン基板210からD/Aコンバータ151及びD/Aコンバータ701にデータを供給するためのライン216及び217を共通化してライン301及び302とした例である。このこと以外は実施例1と共通する。
【0051】
D/Aコンバータ151及びD/Aコンバータ701にデータを供給するためのラインを共通化することで、個別にラインを設けた実施例1の記録ヘッドよりもライン数を低減することができる。
【実施例3】
【0052】
図4は、DC/DCコンバータをインクジェット記録装置本体側に備えたインクジェット記録装置を示す図である。
【0053】
本実施例のインクジェット記録装置の記録ヘッドIJHは、メモリを備えている。このメモリには、定電流駆動させるための記録データ供給回路104の各ロジック回路のロジック電圧より高く発熱抵抗素子の駆動電圧より低いスイッチング素子(発熱抵抗素子を駆動するMOSトランジスタ)の駆動電圧についての情報が格納されている。また、このメモリには発熱抵抗素子の駆動時間に関する情報が格納されている。また、記録ヘッドIJHは、素子基板の温度を測定できる温度センサを備え、この温度センサで測定された温度に基づいて記録ヘッドの駆動を制御することが可能な構成となっている。
【0054】
前述のとおり、記録ヘッドごとに発熱抵抗素子の抵抗値が異なる記録ヘッドを製造してしまう場合がある。具体的には、20%〜30%の抵抗値の違いが生じる場合がある。このような抵抗値の違いに起因して、所定の電流値による定電流駆動を行うとスイッチング素子で大きな電力のロスが発生する場合がある。発熱抵抗素子の抵抗値が小さい場合に余分な電圧を記録ヘッドに供給することになるためであり、記録ヘッドのパフォーマンスにも影響を及ぼす。
【0055】
本実施例では、DC/DCコンバータ150から発熱抵抗素子101に供給する駆動電圧VHを制御することにより電力のロスを低減し、省エネルギーを達成している。また、DC/DCコンバータ150により、電源部から入力した直流電圧を変換して、スイッチング素子の駆動電圧、各ロジック回路の駆動電圧も同時に制御している。ここで、定電流値をIcst、同時に駆動される発熱抵抗素子の最大数をn、各発熱抵抗素子において共通する電源ラインの配線抵抗をRC、各発熱抵抗素子において共通しない電源ラインの配線抵抗をRL、発熱抵抗素子の抵抗値をRHとする。また、同時に駆動される発熱抵抗素子が最大数である場合において発熱抵抗素子を駆動するMOSトランジスタが飽和領域で動作するために必要な電圧をV、予め定められたマージンとしての電圧をVaとする。そして、発熱抵抗素子の駆動電圧VHを、Icst×(n×RC+RH+RL)+V+Vaとしている。なお、ここでは、Vaは1V程度の電圧としている。また、発熱抵抗素子の抵抗値RHは、各発熱抵抗素子の平均の抵抗値とすることができる。
【0056】
また本実施例では、記録ヘッドの温度もモニタできることから記録ヘッドの温度に応じて、DC/DCコンバータ150及びDC/DCコンバータ・記録ヘッド制御部などにて、記録ヘッドIJHへの投入エネルギー及び発熱抵抗素子の駆動時間を最適化できる。そのため、高速で高画質な記録が可能なインクジェット記録装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】実施例1のインクジェット記録ヘッドのブロック図である。
【図2】実施例1のインクジェット記録ヘッドのブロック図である。
【図3】実施例2のインクジェット記録ヘッドのブロック図である。
【図4】本発明の記録ヘッドを搭載した実施例3のインクジェット記録装置のブロック図である。
【図5】本発明の従来例を示すインクジェット記録ヘッドのブロック図
【図6】本発明の従来例を示すインクジェット記録ヘッドのブロック図
【図7】本発明の従来例を示すインクジェット記録ヘッドのブロック図
【図8】一般的なインクジェット記録ヘッドの斜視図である。
【図9】一般的なインクジェット記録ヘッドの斜視図である。
【図10】一般的なインクジェット記録ヘッドの斜視図である。
【図11】本発明のインクジェット記録装置の一例を示す模式図である。
【図12】本発明のインクジェット記録装置の制御構成を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
101 発熱抵抗素子
102 MOSトランジスタ
105 基準電流回路
111 MOSトランジスタ
150 DC/DCコンバータ
151 D/Aコンバータ
701 D/Aコンバータ
IJH 記録ヘッド
【技術分野】
【0001】
本発明はインクを吐出するために必要な熱エネルギーを発生する発熱抵抗素子とそれを駆動するための駆動回路を同一の素子基板上に形成したインクジェット記録ヘッド及びそのインクジェット記録ヘッドを用いた記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のインクジェット記録装置に搭載される記録ヘッドの発熱抵抗素子とその駆動回路は、半導体プロセス技術を用いて同一の素子基板上に形成されている(例えば特許文献1参照)。その中でも、いわゆる定電流駆動方式と呼ばれる方式で発熱抵抗素子へ電力を供給する技術が開示されている(例えば特許文献2参照)。
【0003】
図5は、従来の定電流駆動方式を用いた記録ヘッドの素子基板に設けられている駆動制御回路の構成を説明する回路図である。
【0004】
図5において、101a1〜101mxは記録を行うための発熱抵抗素子を示し、各発熱抵抗素子が通電されて熱を発生することにより、対応する各ノズルからインク滴が吐出される。ここで、これら発熱抵抗素子101a1〜101mxは、グループa〜mに分割されており、各グループにはx個の発熱抵抗素子と、各発熱抵抗素子に対応して設けられたx個のMOSトランジスタが含まれている。102a1〜102mxは、それぞれ対応する発熱抵抗素子への通電をオン及びオフするためのMOSトランジスタである。103a〜103mは定電流源で、グループごとに1つずつ設けられている。104は記録データ供給回路で、記録すべき記録データに応じて各MOSトランジスタ102のオン及びオフを制御している。105は基準電流回路で、制御信号をライン110を介して定電流源103a〜103mに出力し、各定電流源により一定の値とされる定電流値を制御している。106及び107は素子基板外部の電源部(不図示)に接続される電源端子で、これら電源端子を介して発熱抵抗素子駆動用の電力が素子基板に供給される。108及び109は、それぞれ各電源端子106及び107からグループa〜mに、発熱抵抗素子駆動用の電力を供給している電源ラインである。
【0005】
グループaにおいて、MOSトランジスタ102a1〜102axのそれぞれは、発熱抵抗素子101a1〜101axの対応する各発熱抵抗素子に直列に接続され、その直列に接続されている各発熱抵抗素子への電流の通電及び非通電を制御している。即ち、MOSトランジスタ102a1〜102axの各ドレイン端子は対応する各発熱抵抗素子101a1〜101axとが接続され、MOSトランジスタ102a1〜102axの各ソース端子はそれぞれ共通に定電流源103aに接続されている。また、発熱抵抗素子101a1〜101axのそれぞれの一端も共通に電源ライン108に接続されている。ここで、MOSトランジスタ102a1〜102axは、発熱抵抗素子101a1〜101axの第1駆動用スイッチであり、また定電流源103aは、発熱抵抗素子101a1〜101axの第2駆動用スイッチである。このような構成は他のグループb〜mにおいても同様である。
【0006】
また、定電流源103a〜103mのそれぞれは、MOSトランジスタ102a1〜102mxと、発熱抵抗素子101a1〜101mxとに直列に接続されている。定電流源103a〜103mのそれぞれは、ここを流れる電流を所定の定電流値とし、この定電流値はライン110を介して基準電流回路105から制御信号を入力することで調節される。
【0007】
記録データ供給回路104は、MOSトランジスタ102a1〜102mxのそれぞれのゲート端子に、記録する画像に応じた記録データ信号を出力して、MOSトランジスタ102a1〜102mxのそれぞれのスイッチング制御をしている。
【0008】
図6は、図5の定電流源103a〜103mに相当する部分をMOSトランジスタ111a〜111mで構成した回路図である。
【0009】
これらMOSトランジスタ111a〜111mのドレイン端子は、MOSトランジスタ102a1〜102mxのソース端子にそれぞれ接続される。また、MOSトランジスタ111a〜111mのゲート端子は、基準電流回路105から出力される制御信号を入力するためにライン110に接続される。
【0010】
MOSトランジスタ111a〜111mのゲート端子は、基準電流回路105から出力される制御信号を入力するためにライン110と接続され、NMOSトランジスタ111a〜111mを流れる定電流が所定の定電流値にされる。この定電流値は、基準電流回路105が接続されるMOSトランジスタ111a〜111mのゲート電圧により制御される。
【0011】
例えば、同時に駆動される発熱抵抗素子数を増やすことで、素子基板内の配線抵抗とその配線抵抗のバラツキが増加し、各発熱抵抗素子に印加される電圧の変動割合が増加する場合がある。しかし、このような構成をとることで、各発熱抵抗素子への投入エネルギー量をほぼ一定にすることができる。また、素子基板外部の配線は、複数の発熱抵抗素子に対して共通となっているため、同時に駆動する発熱抵抗素子数によって共通の配線での電圧降下が異なった場合でも、各発熱抵抗素子への投入エネルギー量をほぼ一定にすることができる。さらに、記録ヘッドに電力を供給する外部電源装置に電圧変動が発生した場合においても、各発熱抵抗素子への投入エネルギー量をほぼ一定にすることができる。
【0012】
このように定電流駆動方式を用いることにより種々の要因により変動する各発熱抵抗素子への投入エネルギー量をほぼ一定にすることが可能になる。これは、定電流源としてのMOSトランジスタ111a〜111mのゲート端子に入力される電流が基準電流回路105により制御され、MOSトランジスタ111a〜111mのオン抵抗が変動することによる電圧変動分を吸収することができるためである。
【0013】
また、上述した電圧変動の他にも、例えば、記録ヘッドごとに発熱抵抗素子の抵抗値が異なる記録ヘッドを製造してしまうことにより、記録ヘッドごとに発熱抵抗素子で発生する電力が異なってしまう場合がある。この場合、常に一定の電流を発熱抵抗素子に供給する定電流駆動方式では、記録ヘッドごとに発熱抵抗素子の抵抗値の違いに伴って発生するエネルギーも異なってしまうことになる。このことを解決するために、図7に示すようにD/Aコンバータを設けて外部から信号を入力することにより定電流回路が流す電流値を設定できるようにした構成がある。即ち、図7において、端子702及び703からデジタル信号でシリアルに電流値設定データをD/Aコンバータ701に入力し、これに基づいてD/Aコンバータ701が発生する電圧を基準電流回路105へ供給する。この電圧がMOSトランジスタ111a〜111mのゲート電圧の反映されて、最終的に所望の電流値の電流が各発熱抵抗素子に供給される。こうして、予め取得しておいた発熱抵抗素子の抵抗値に基づいた最適な設定電流による定電流駆動が行なわれる。
【0014】
また、D/Aコンバータによる電流値の設定は全て同じ素子基板に形成された回路で行われるため、電流値の設定を高速に変えることができる。このため、何らかの要因で記録中に発熱抵抗素子への投入エネルギーを変えたいという場合においても、電流値の設定を変えることができる。例えば、記録中に記録ヘッドの温度が変化した場合、インクの吐出特性を一定に保つため発熱抵抗素子への通電時間を制御することが一般的に行われるが、その替わりに発熱抵抗素子に流れる電流値を変化させることでインクの吐出特性を一定に保つことができる。
【特許文献1】米国特許第6290334号公報
【特許文献2】特開2004−181679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上述したような種々の要因による電圧変動や発熱抵抗素子への投入エネルギーを変えたいという要求に対応するためには、定電流源としてのMOSトランジスタが吸収する電圧変動の範囲が非常に大きいものになってしまう。これに対応するために例えばMOSトランジスタのサイズを大きくする必要があるが、このことは回路サイズの増大を招きコストアップの要因となる。またこのMOSトランジスタが吸収する電圧はそのオン抵抗によって電力として消費されるため、無駄な電力を消費することになる。このことは電力のロスになるばかりではなく記録ヘッドの温度の上昇を招き安定したインク吐出の妨げとなる。
【0016】
また、変動する電圧の範囲が大きくなるとD/Aコンバータによる電流値の設定範囲も大きくなるため同じ分解能のD/Aコンバータでは最小変動幅が大きくなり設定電流の精度が粗くなってしまう。一方、最小変動幅を同じにするためには分解能を上げることが必要になるため、D/Aコンバータ自体のサイズが増大してしまう。
【0017】
さらに、MOSトランジスタが吸収する電圧変動の範囲が大きくなると、発熱抵抗素子にかかる電圧は常に一定であり発熱抵抗素子とMOSトランジスタは直列に接続されているので、電源とGND間にかかる電圧がそれに比例して大きくなることになる。この電圧があまり大きくなるとMOSトランジスタの耐圧を超えてしまう。MOSトランジスタの耐圧を上げるためには製造工程の複雑化やトランジスタサイズの増大を招きコストアップの要因となる。
【0018】
そこで、本発明の目的は、定電流駆動方式の定電流源としてのMOSトランジスタでの電圧吸収範囲を低減してサイズアップなどによるコストの上昇を抑え、かつ電力ロスを抑えて素子基板の温度上昇を抑える記録ヘッドを提供することである。また、その記録ヘッドを用いた記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するための本発明は、複数の記録素子と、前記複数の記録素子のそれぞれに対応して設けられた複数のスイッチング素子と、を備える記録ヘッドであって、
前記複数の記録素子に定電流を供給するための定電流源と、
前記定電流源を制御することにより前記複数の記録素子に供給される電流を調整する制御手段と、
外部から直接に直流電圧を入力し、前記複数の記録素子に印加するための電圧値に変換して前記複数の記録素子に出力するDC/DCコンバータと、
を備え、
前記複数の記録素子と、前記複数のスイッチング素子と、前記定電流源と、前記制御手段は、同一の素子基板に設けられており、前記DC/DCコンバータは、該素子基板と異なる素子基板に設けられていることを特徴とする。
【0020】
また、上記課題を解決するための別の本発明は、複数の記録素子と、前記複数の記録素子のそれぞれに対応して設けられた複数のスイッチング素子と、前記複数の記録素子に定電流を供給するための定電流源と、前記定電流源を制御することにより前記複数の記録素子に供給される電流を調整する制御手段と、を備える記録ヘッドを搭載したヘッドキャリッジを走査し、前記記録ヘッドにより記録媒体に記録を行う記録装置であって、
前記ヘッドキャリッジに直流電圧を出力する出力手段と、
前記ヘッドキャリッジに備えられ、前記出力手段から出力された直流電圧を入力し、前記複数の記録素子に印加するための電圧値に変換して前記複数の記録素子に出力するDC/DCコンバータと、
を備えることを特徴とする。
【0021】
さらに、上記課題を解決するための別の本発明は、複数の記録素子と、前記複数の記録素子のそれぞれに対応して設けられた複数のスイッチング素子と、前記複数の記録素子に定電流を供給するための定電流源と、前記定電流源を制御することにより前記複数の記録素子に供給される電流を調整する制御手段と、を備える記録ヘッドを有する記録装置であって、
前記記録装置の本体側に、電源部より入力された直流電圧を、前記複数の記録素子に印加するための電圧、前記複数のスイッチング素子に印加するための電圧及び前記記録ヘッドのロジック回路に印加するための電圧の電圧値に変換して、前記複数の記録素子、前記複数のスイッチング素子及び前記ロジック回路に出力するDC/DCコンバータを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、定電流駆動方式の定電流源としてのMOSトランジスタでの電圧吸収範囲を低減してサイズアップなどによるコストの上昇を抑え、かつ電力ロスを抑えて素子基板の温度上昇を抑えることで安定したインク吐出をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、図面を参照して本発明の好適な実施例について詳細に説明する。
【0024】
なお、この明細書において、「記録」(以下、「プリント」とも称する)とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、又は媒体の加工を行う場合も表すものとする。また、人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わない。
【0025】
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表すものとする。
【0026】
また、「インク」とは、上記「記録」の定義と同様広く解釈されるべきもので、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成又は記録媒体の加工、或いはインクの処理に供され得る液体を表すものとする。インクの処理としては、例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固又は不溶化させることが挙げられる。
【0027】
まず、本発明を適用可能なインクジェット記録ヘッドの概要について説明する。
【0028】
本実施例のインクジェット用の記録ヘッドIJHは、図8(a)及び図8(b)の斜視図でわかるように、記録ヘッドカートリッジIJCを構成する一構成要素となっている。この記録ヘッドカートリッジIJCは、記録ヘッドIJHと、該記録ヘッドIJHに着脱自在に設けられたインクタンクIT(H1901,H1902,H1903,H1904)とから構成されている。記録ヘッドIJHは、インクタンクITから供給されるインク(記録液)を、記録情報に応じて吐出口から吐出する。
【0029】
この記録ヘッドカートリッジIJCは、インクジェット記録装置本体に載置されているヘッドキャリッジ200の位置決め手段及び電気的接点によって固定支持されるとともに、ヘッドキャリッジ200に対して着脱可能となっている。
【0030】
また、図9の分解斜視図に示すように、記録ヘッドIJHは、記録素子としての発熱抵抗素子を複数備えた発熱抵抗素子ユニットH1002と、インク供給ユニット(記録液供給手段)H1003と、タンクホルダーH2000とから構成されている。なお、記録ヘッドIJHは、発熱抵抗素子ユニットH1002のインク連通口とインク供給ユニットH1003のインク連通口とをインクがリークしないように連通させる必要がある。このため、それぞれの部材を圧着するようジョイントシール部材H2300を介してビスH2400で固定している。
【0031】
また、図10の分解斜視図に示すように、素子基板H1100は、第1のプレートH1200に接着され固定されている。さらに、第1のプレートH1200は、開口部を有する第2のプレートH1400が接着され固定されている。そして、この第2のプレートH1400は、TAB方式によって、電気配線テープH1300が接着され固定されており、素子基板H1100に対しての位置が決められている。この電気配線テープH1300は、素子基板H1100にインクを吐出するための電気信号を印加するものであり、素子基板H1100に対応する電気配線を含む。そして、電気配線テープH1300は、インクジェット記録装置本体からの電気信号を受け取る外部信号入力端子H1301を有する電気コンタクト基板H2200と接続している。電気コンタクト基板H2200は、インク供給ユニットH1003に、端子位置決め穴H1309(2ヶ所)により位置が決められ、固定されている。
【0032】
次に、上述したようなカートリッジタイプの記録ヘッドを搭載可能な液体吐出記録装置について説明する。図11は、本発明のインクジェット記録ヘッドを搭載可能な記録装置の一例を示す説明図である。
【0033】
図11を参照すると、この記録装置は、図8に示した記録ヘッドIJHが、位置決めされて、交換可能に搭載されるヘッドキャリッジ200を有する。ヘッドキャリッジ200には、記録ヘッドIJH上の外部信号入力端子を介して各吐出部に駆動信号等を伝達するための電気接続部が設けられている。
【0034】
ヘッドキャリッジ200は、走査方向に延在して装置本体に設置されたガイドシャフト1103に沿って往復移動可能に支持されている。そして、ヘッドキャリッジ200は、走査モータ1104によりモータプーリ1105、従動プーリ1106及びタイミングベルト1107等の駆動機構を介して駆動されるとともに、その位置及び移動が制御される。また、ヘッドキャリッジ200にはホームポジションセンサ1130が設けられている。ヘッドキャリッジ200上のホームポジションセンサ1130が遮蔽板1136の位置を通過した際に、ホームポジションとなる位置が検出される。
【0035】
記録用紙やプラスチック薄板等の記録媒体1108は、給紙モータ1135がギアを介してピックアップローラ1131を回転させることにより、記録媒体1108がオートシートフィーダ(ASF)1132から一枚ずつ分離され、給紙される。さらに、記録媒体1108は、搬送ローラ1109の回転により、記録ヘッドIJHの吐出口面と対向する位置(プリント部)を通って搬送される。LFモータ1134による駆動は、ギアを介して搬送ローラ1109に伝達される。給紙されたかどうかの判定と給紙時の頭出し位置の確定は、記録媒体1108がペーパエンドセンサ1133を通過した時点で行われる。このペーパエンドセンサ1133は、記録媒体1108の後端が実際にどこに有り、実際の後端から現在の記録位置を最終的に割り出すためにも使用される。
【0036】
次に、上述したインクジェット記録装置の記録制御を実行するための制御構成について説明する。
【0037】
図12はインクジェット記録装置の制御回路の構成を示すブロック図である。
【0038】
図12において、1700は記録信号を入力するインタフェース、1701はMPU、1702はMPU1701が実行する制御プログラムを格納するROMである。また、1703は各種データ(記録ヘッドIJHに供給される記録信号等)を保存しておくDRAMである。1704は記録ヘッドIJHに対する記録データの供給制御を行うゲートアレイ(G.A.)であり、インタフェース1700、MPU1701、RAM1703間のデータ転送制御も行う。1710は記録ヘッドIJHを搬送するためのキャリアモータ、1134は記録媒体搬送のためのLFモータである。1705は記録ヘッドIJHを駆動するヘッドドライバ、1706は、搬送モータ1709を駆動するためのモータドライバ、1707は、キャリアモータ1710を駆動するためのモータドライバである。なお、記録ヘッドIJHには、記録ヘッドIJHの温度を検出する温度センサ1720が備えられている。
【0039】
上記制御構成の動作を説明すると、インタフェース1700に記録データが入力されるとゲートアレイ1704とMPU1701との間でこの記録データがプリント用の記録データに変換される。そして、モータドライバ1706、モータドライバ1707が駆動されると共に、ヘッドドライバ1705に送られた記録データに従って記録ヘッドIJHが駆動され、記録が行われる。
【実施例1】
【0040】
図1は、本実施例のインクジェット記録ヘッドの要部を説明するブロック図である。
【0041】
100は素子基板であり、図7の素子基板100と同じ構成であるため、詳しい説明は省略する。素子基板100は、電源端子106及び107によりD/Aコンバータ151により外部から直接に直流電圧を入力するDC/DCコンバータ150と接続されている。なお、152及び153はそれぞれDC/DCコンバータ150から出力されるVH電源及びGNDHの電源端子を示し、162及び163はこれらの電源ラインを示している。また、154及び155はD/Aコンバータ151にデータを供給するための端子を示している。
【0042】
図2(a)及び図2(b)は、本実施例をさらに説明するためのブロック図である。
【0043】
ヘッドキャリッジ200は素子基板100とDC/DCコンバータ150を備えており、210はこれらを駆動する記録装置本体側の本体メイン基板である。なお、DC/DCコンバータ150は、記録ヘッド上に設けられていても、記録ヘッドとは別にヘッドキャリッジ上に設けられていてもいずれでも良い。図2(a)は、DC/DCコンバータ150が記録ヘッドIJH上に設けられた記録装置を、図2(b)は、DC/DCコンバータ150が記録ヘッドIJHとは別にヘッドキャリッジ200上に設けられた記録装置を表している。下記の説明は、図2(a)についての説明であるが、図2(b)についても同様である。211は本体側に配設された電源であり212及び213の電源ラインを通じてDC/DCコンバータ150へ電圧を供給する。214は、DC/DCコンバータ150が所望の電圧値を得るためのデータを生成し、ライン216を介してD/Aコンバータ151にシリアルに入力するデータ生成部である。また、215は、基準電流回路105に接続されたD/Aコンバータ701が定電流駆動を行うための所望の電流値を得るためのデータを生成し、ライン217を介してD/Aコンバータ701にシリアルに入力するデータ生成部である。なお、ライン216は端子154及び155に接続される2本のラインであり、ライン217は端子702及び703に接続される2本のラインである。
【0044】
このような構成をとることで定電流駆動を行うための電流値の設定とDC/DCコンバータ150の電圧値の設定とを並行して行うことができるようになる。
【0045】
ここで、D/Aコンバータを用いての定電流駆動を行うための電流値の設定は、全て同じ素子基板に形成された回路により行なわれるため、異なる電流値に設定して駆動することを高速に行うことができるという特徴を有している。このため、刻々と変化する記録データに対応して変動する同時オンの発熱抵抗素子数に起因する発熱抵抗素子で消費する電力の変動を抑えることが可能になる。また、記録ヘッドの急激な温度変化によってインクの吐出特性に変動が生じた場合にも、瞬時に設定電流値を調整することにより安定したインクの吐出を継続することも可能になる。
【0046】
DC/DCコンバータの電圧値の設定は、素子基板外部のヘッドキャリッジ上に設けられた大容量のコンデンサを充放電するスイッチングレギュレータにより行なわれる。このため、DC/DCコンバータの電圧値の設定による電圧の変化は定電流回路の電流変化に比較すると長い時間がかかるという特徴を有している。定電流駆動を行う場合、発熱抵抗素子での電力消費を一定に保つために定電流源となるMOSトランジスタで電圧を吸収し電力を消費するため、このことにより発生する熱が大きいと記録ヘッド自体を昇温してしまう場合がある。しかし、DC/DCコンバータは同一基板上に設けられておらず、DC/DCコンバータは素子基板外部で電圧を変化させるため、記録ヘッドの昇温を起こすことはなく吐出特性に影響を与えにくいという特徴を有している。
【0047】
そこで本発明では、定電流源を用いて駆動することによって変動電圧を吸収することと、DC/DCコンバータによって電圧値を設定することとを併用し、それぞれの特徴を最大限に発揮する構成としている。即ち、例えば記録データによって刻々と変化する同時オンする発熱抵抗素子数による電圧変動や記録ヘッドの急激な温度変化によって生じる電圧変動などの比較的時間的な変動が速い要因に対しては、定電流駆動によってインクの吐出特性の変動を抑制する。また、例えば記録ヘッド間での発熱抵抗素子の抵抗の違いによって生じる記録ヘッド間での電圧変動などの比較的時間的な変動が遅い要因に対しては、DC/DCコンバータによる電圧値の設定によってインクの吐出特性の変動を抑制する。加えて、本体メイン基板から供給される電源電圧の変動に対しては、DC/DCコンバータで安定した電圧に変換することでインクの吐出特性の変動を抑制する。
【0048】
なお、本実施例では、定電流源としてのMOSトランジスタは、複数の発熱抵抗素子を複数のグループに分割したグループごとに設けられているが、このような構成に限定されない。
【実施例2】
【0049】
図3は、本実施例のインクジェット記録ヘッドの要部を説明するブロック図である。
【0050】
図3は、実施例1の本体メイン基板210からD/Aコンバータ151及びD/Aコンバータ701にデータを供給するためのライン216及び217を共通化してライン301及び302とした例である。このこと以外は実施例1と共通する。
【0051】
D/Aコンバータ151及びD/Aコンバータ701にデータを供給するためのラインを共通化することで、個別にラインを設けた実施例1の記録ヘッドよりもライン数を低減することができる。
【実施例3】
【0052】
図4は、DC/DCコンバータをインクジェット記録装置本体側に備えたインクジェット記録装置を示す図である。
【0053】
本実施例のインクジェット記録装置の記録ヘッドIJHは、メモリを備えている。このメモリには、定電流駆動させるための記録データ供給回路104の各ロジック回路のロジック電圧より高く発熱抵抗素子の駆動電圧より低いスイッチング素子(発熱抵抗素子を駆動するMOSトランジスタ)の駆動電圧についての情報が格納されている。また、このメモリには発熱抵抗素子の駆動時間に関する情報が格納されている。また、記録ヘッドIJHは、素子基板の温度を測定できる温度センサを備え、この温度センサで測定された温度に基づいて記録ヘッドの駆動を制御することが可能な構成となっている。
【0054】
前述のとおり、記録ヘッドごとに発熱抵抗素子の抵抗値が異なる記録ヘッドを製造してしまう場合がある。具体的には、20%〜30%の抵抗値の違いが生じる場合がある。このような抵抗値の違いに起因して、所定の電流値による定電流駆動を行うとスイッチング素子で大きな電力のロスが発生する場合がある。発熱抵抗素子の抵抗値が小さい場合に余分な電圧を記録ヘッドに供給することになるためであり、記録ヘッドのパフォーマンスにも影響を及ぼす。
【0055】
本実施例では、DC/DCコンバータ150から発熱抵抗素子101に供給する駆動電圧VHを制御することにより電力のロスを低減し、省エネルギーを達成している。また、DC/DCコンバータ150により、電源部から入力した直流電圧を変換して、スイッチング素子の駆動電圧、各ロジック回路の駆動電圧も同時に制御している。ここで、定電流値をIcst、同時に駆動される発熱抵抗素子の最大数をn、各発熱抵抗素子において共通する電源ラインの配線抵抗をRC、各発熱抵抗素子において共通しない電源ラインの配線抵抗をRL、発熱抵抗素子の抵抗値をRHとする。また、同時に駆動される発熱抵抗素子が最大数である場合において発熱抵抗素子を駆動するMOSトランジスタが飽和領域で動作するために必要な電圧をV、予め定められたマージンとしての電圧をVaとする。そして、発熱抵抗素子の駆動電圧VHを、Icst×(n×RC+RH+RL)+V+Vaとしている。なお、ここでは、Vaは1V程度の電圧としている。また、発熱抵抗素子の抵抗値RHは、各発熱抵抗素子の平均の抵抗値とすることができる。
【0056】
また本実施例では、記録ヘッドの温度もモニタできることから記録ヘッドの温度に応じて、DC/DCコンバータ150及びDC/DCコンバータ・記録ヘッド制御部などにて、記録ヘッドIJHへの投入エネルギー及び発熱抵抗素子の駆動時間を最適化できる。そのため、高速で高画質な記録が可能なインクジェット記録装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】実施例1のインクジェット記録ヘッドのブロック図である。
【図2】実施例1のインクジェット記録ヘッドのブロック図である。
【図3】実施例2のインクジェット記録ヘッドのブロック図である。
【図4】本発明の記録ヘッドを搭載した実施例3のインクジェット記録装置のブロック図である。
【図5】本発明の従来例を示すインクジェット記録ヘッドのブロック図
【図6】本発明の従来例を示すインクジェット記録ヘッドのブロック図
【図7】本発明の従来例を示すインクジェット記録ヘッドのブロック図
【図8】一般的なインクジェット記録ヘッドの斜視図である。
【図9】一般的なインクジェット記録ヘッドの斜視図である。
【図10】一般的なインクジェット記録ヘッドの斜視図である。
【図11】本発明のインクジェット記録装置の一例を示す模式図である。
【図12】本発明のインクジェット記録装置の制御構成を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
101 発熱抵抗素子
102 MOSトランジスタ
105 基準電流回路
111 MOSトランジスタ
150 DC/DCコンバータ
151 D/Aコンバータ
701 D/Aコンバータ
IJH 記録ヘッド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の記録素子と、前記複数の記録素子のそれぞれに対応して設けられた複数のスイッチング素子と、を備える記録ヘッドであって、
前記複数の記録素子に定電流を供給するための定電流源と、
前記定電流源を制御することにより前記複数の記録素子に供給される電流を調整する制御手段と、
外部から直接に直流電圧を入力し、前記複数の記録素子に印加するための電圧値に変換して前記複数の記録素子に出力するDC/DCコンバータと、
を備え、
前記複数の記録素子と、前記複数のスイッチング素子と、前記定電流源と、前記制御手段は、同一の素子基板に設けられており、前記DC/DCコンバータは、該素子基板と異なる素子基板に設けられていることを特徴とする記録ヘッド。
【請求項2】
前記記録素子は、インクを吐出するために熱エネルギーを発生する発熱抵抗素子であることを特徴とする請求項1に記載の記録ヘッド。
【請求項3】
前記定電流源は、MOSトランジスタであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の記録ヘッド。
【請求項4】
前記定電流源は、前記複数の発熱抵抗素子を複数のグループに分割したグループごとに設けられることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の記録ヘッド。
【請求項5】
前記記録ヘッドの温度を検出する温度センサをさらに備え、
前記制御手段は、前記温度センサにより検出された温度に応じて前記複数の記録素子に供給される電流を調整し、
前記DC/DCコンバータは、前記複数の記録素子それぞれの抵抗値に基づいた電圧値の電圧を出力することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の記録ヘッド。
【請求項6】
前記制御手段は、D/Aコンバータを有し、該D/Aコンバータにより前記複数の記録素子に供給される電流を調整するためのデータを入力し、
前記DC/DCコンバータは、D/Aコンバータを有し、該D/Aコンバータにより前記複数の記録素子に印加するための電圧値に変換するためのデータを入力することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の記録ヘッド。
【請求項7】
前記制御手段が前記複数の記録素子に供給される電流を調整するためのデータを入力するためのラインと、前記DC/DCコンバータが前記複数の記録素子に印加するための電圧値に変換するためのデータを入力するためのラインとは、共通であることを特徴とする請求項6に記載の記録ヘッド。
【請求項8】
複数の記録素子と、前記複数の記録素子のそれぞれに対応して設けられた複数のスイッチング素子と、前記複数の記録素子に定電流を供給するための定電流源と、前記定電流源を制御することにより前記複数の記録素子に供給される電流を調整する制御手段と、を備える記録ヘッドを搭載したヘッドキャリッジを走査し、前記記録ヘッドにより記録媒体に記録を行う記録装置であって、
前記ヘッドキャリッジに直流電圧を出力する出力手段と、
前記ヘッドキャリッジに備えられ、前記出力手段から出力された直流電圧を入力し、前記複数の記録素子に印加するための電圧値に変換して前記複数の記録素子に出力するDC/DCコンバータと、
を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項9】
複数の記録素子と、前記複数の記録素子のそれぞれに対応して設けられた複数のスイッチング素子と、前記複数の記録素子に定電流を供給するための定電流源と、前記定電流源を制御することにより前記複数の記録素子に供給される電流を調整する制御手段と、を備える記録ヘッドを有する記録装置であって、
前記記録装置の本体側に、電源部より入力された直流電圧を、前記複数の記録素子に印加するための電圧、前記複数のスイッチング素子に印加するための電圧及び前記記録ヘッドのロジック回路に印加するための電圧の電圧値に変換して、前記複数の記録素子、前記複数のスイッチング素子及び前記ロジック回路に出力するDC/DCコンバータを備えることを特徴とする記録装置。
【請求項10】
前記複数の記録素子に出力される電圧は、前記複数の記録素子に供給される定電流値をIcst、同時に駆動される記録素子の最大数をn、各記録素子において共通する電源ラインの配線抵抗をRC、各記録素子において共通しない電源ラインの配線抵抗をRL、各記録素子の平均の抵抗値をRHとし、同時に駆動される記録素子が最大数である場合において前記複数のスイッチング素子が飽和領域で動作するために必要な電圧をV、予め定められたマージンとしての電圧をVaとした場合に、Icst×(n×RC+RH+RL)+V+Vaとなるように前記DC/DCコンバータにより変換されることを特徴とする請求項9に記載の記録装置。
【請求項1】
複数の記録素子と、前記複数の記録素子のそれぞれに対応して設けられた複数のスイッチング素子と、を備える記録ヘッドであって、
前記複数の記録素子に定電流を供給するための定電流源と、
前記定電流源を制御することにより前記複数の記録素子に供給される電流を調整する制御手段と、
外部から直接に直流電圧を入力し、前記複数の記録素子に印加するための電圧値に変換して前記複数の記録素子に出力するDC/DCコンバータと、
を備え、
前記複数の記録素子と、前記複数のスイッチング素子と、前記定電流源と、前記制御手段は、同一の素子基板に設けられており、前記DC/DCコンバータは、該素子基板と異なる素子基板に設けられていることを特徴とする記録ヘッド。
【請求項2】
前記記録素子は、インクを吐出するために熱エネルギーを発生する発熱抵抗素子であることを特徴とする請求項1に記載の記録ヘッド。
【請求項3】
前記定電流源は、MOSトランジスタであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の記録ヘッド。
【請求項4】
前記定電流源は、前記複数の発熱抵抗素子を複数のグループに分割したグループごとに設けられることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の記録ヘッド。
【請求項5】
前記記録ヘッドの温度を検出する温度センサをさらに備え、
前記制御手段は、前記温度センサにより検出された温度に応じて前記複数の記録素子に供給される電流を調整し、
前記DC/DCコンバータは、前記複数の記録素子それぞれの抵抗値に基づいた電圧値の電圧を出力することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の記録ヘッド。
【請求項6】
前記制御手段は、D/Aコンバータを有し、該D/Aコンバータにより前記複数の記録素子に供給される電流を調整するためのデータを入力し、
前記DC/DCコンバータは、D/Aコンバータを有し、該D/Aコンバータにより前記複数の記録素子に印加するための電圧値に変換するためのデータを入力することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の記録ヘッド。
【請求項7】
前記制御手段が前記複数の記録素子に供給される電流を調整するためのデータを入力するためのラインと、前記DC/DCコンバータが前記複数の記録素子に印加するための電圧値に変換するためのデータを入力するためのラインとは、共通であることを特徴とする請求項6に記載の記録ヘッド。
【請求項8】
複数の記録素子と、前記複数の記録素子のそれぞれに対応して設けられた複数のスイッチング素子と、前記複数の記録素子に定電流を供給するための定電流源と、前記定電流源を制御することにより前記複数の記録素子に供給される電流を調整する制御手段と、を備える記録ヘッドを搭載したヘッドキャリッジを走査し、前記記録ヘッドにより記録媒体に記録を行う記録装置であって、
前記ヘッドキャリッジに直流電圧を出力する出力手段と、
前記ヘッドキャリッジに備えられ、前記出力手段から出力された直流電圧を入力し、前記複数の記録素子に印加するための電圧値に変換して前記複数の記録素子に出力するDC/DCコンバータと、
を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項9】
複数の記録素子と、前記複数の記録素子のそれぞれに対応して設けられた複数のスイッチング素子と、前記複数の記録素子に定電流を供給するための定電流源と、前記定電流源を制御することにより前記複数の記録素子に供給される電流を調整する制御手段と、を備える記録ヘッドを有する記録装置であって、
前記記録装置の本体側に、電源部より入力された直流電圧を、前記複数の記録素子に印加するための電圧、前記複数のスイッチング素子に印加するための電圧及び前記記録ヘッドのロジック回路に印加するための電圧の電圧値に変換して、前記複数の記録素子、前記複数のスイッチング素子及び前記ロジック回路に出力するDC/DCコンバータを備えることを特徴とする記録装置。
【請求項10】
前記複数の記録素子に出力される電圧は、前記複数の記録素子に供給される定電流値をIcst、同時に駆動される記録素子の最大数をn、各記録素子において共通する電源ラインの配線抵抗をRC、各記録素子において共通しない電源ラインの配線抵抗をRL、各記録素子の平均の抵抗値をRHとし、同時に駆動される記録素子が最大数である場合において前記複数のスイッチング素子が飽和領域で動作するために必要な電圧をV、予め定められたマージンとしての電圧をVaとした場合に、Icst×(n×RC+RH+RL)+V+Vaとなるように前記DC/DCコンバータにより変換されることを特徴とする請求項9に記載の記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−119714(P2009−119714A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−296032(P2007−296032)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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