説明

記録再生装置、制御装置およびフォーマット方法

【課題】ビットスリップ箇所を迅速に検出かつ訂正することを課題とする。
【解決手段】データセクタを構成する各ブロックのインデックスが1〜81へ向かう後半ほど、ブロックサイズが小さくなるようにブロックサイズを変更する。そして、各ブロックの誤り検出訂正能力として、パリティビットを各ブロックに対して1ビットずつ割り当て、パリティビットを統合したパリティ部をデータセクタの先頭に配置する。このように、データセクタを構成する各ブロックの後半ほどブロックサイズが小さくなるので、割り当てられる誤り検出訂正能力の比率が大きくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、記録再生装置、制御装置およびフォーマット方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気ディスク装置や光ディスク装置など、記録媒体に情報を記録する情報記録装置が存在し、例えば、磁気ディスク装置では、磁気ヘッドによって“1”、“0”の2値データを磁気媒体の円周方向に連続的に記録する。
【0003】
そして、次世代型の磁気ディスク装置などに採用する情報記録方式として、ビットパターンド記録(BPR:Bit Patterned Recording)方式の検討が進められている。このBPR方式では、磁気ディスク装置などの情報記録装置が、媒体上に物理的に配置されたドット、および記録クロックを高精度に制御して、1ドットに1ビットの情報を記録する。ここで、もし記録されたデータが1ビットずれてしまった場合、ずれた位置以降のデータは全て誤りとなってしまう。このことをビットスリップと呼ぶ。
【0004】
ビットスリップは、ドットと記録クロックとのずれを原因として生じるが、ドットと記録クロックとのずれの主な要因は、媒体の偏芯である。偏芯は、媒体が装置に組み込まれた段階で概ね把握することができ、それに追従した記録クロックを生成することができる。また、データはセクタごとに記録され、セクタの先頭には記録周波数及び位相を調整するプリアンブルやシンクが埋め込まれる。そのため、データセクタ内において大きな周波数や位相ずれはないが、データセクタ内の後半に行くほど位相ずれが積算されビットスリップが発生しやすくなる。
【0005】
このように、ビットスリップは、磁気ディスク装置や光ディスク装置、テープ装置などの情報記録装置において致命的な問題であったため、多くの対策案が検討されてきた。
【0006】
例えば、特許文献1では、ビットスリップが発生した後のデータブロックを全て消失誤り訂正することにより、ビットスリップに対応する技術が提案されている。また、特許文献2では、再生データに1ビットを挿入あるいは削除し、繰り返し正しいデータとなるまで挿入あるいは削除位置をずらすことにより、ビットスリップに対応する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭62−158282号公報
【特許文献2】特開昭63−157371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の特許文献に提案の技術は、ビットスリップを検出し、ビットスリップによる誤りを訂正するために多くの付加情報あるいは処理時間を必要とするため、高密度・高速転送を必要とする磁気ディスク装置などに適用することは難しい。
【0009】
また、ビットスリップを検出し、ビットスリップによる誤りを訂正するために、強力な誤り訂正符号を用いると、付加情報が増加して記録密度が低下してしまう。
【0010】
そこで、この発明は、上述した従来技術の課題を解決するためになされたものであり、ビットスリップを検出するとともに、検出された誤り箇所を訂正する検出訂正能力の配分を調整することで、ビットスリップ箇所を迅速に検出かつ訂正することが可能な記録再生装置、制御装置およびフォーマット方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、開示の装置は、記録媒体上に設けられたデータセクタを構成する各ブロックの後半ほど、データセクタ内で割り当てられる誤り検出訂正能力の比率が大きくなるように、ブロックサイズを小さくするフォーマット部を有する。
【発明の効果】
【0012】
開示の装置によれば、ビットスリップ箇所を迅速に検出かつ訂正できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、実施例1に係る磁気ディスク装置を説明するための図である。
【図2】図2は、実施例1に係る磁気ディスク装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図3】図3は、実施例1に係るHDCおよびRDCの構成を示す機能ブロック図である。
【図4】図4は、実施例1に係る記録クロック周波数測定処理の概念を説明するための図である。
【図5】図5は、実施例1に係るデータセクタ内での記録クロック周波数の一例を示す概念図である。
【図6】図6は、実施例1に係るパリティを付加するブロックインデックスとデータビット位置の関係を示す概念図である。
【図7】図7は、実施例1に係るデータセクタ内のブロックサイズ算出処理を説明するための図である。
【図8】図8は、実施例1に係るパリティ付加器の構成を示す機能ブロック図である。
【図9】図9は、実施例1に係るポストプロセッサの構成を示す機能ブロック図である。
【図10】図10は、実施例1に係るビットスリップ検出を説明するための図である。
【図11】図11は、実施例1に係るビットスリップ補正器の構成を示す機能ブロック図である。
【図12】図12は、実施例1に係る記録クロック周波数測定処理の流れを示す図である。
【図13】図13は、実施例1に係るブロックサイズ可変量初期値計算処理の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、記録再生装置、制御装置およびフォーマット方法の一実施形態を詳細に説明する。なお、情報記録再生装置の一例として磁気ディスク装置を取り上げる。
【実施例1】
【0015】
図1は、実施例1に係る磁気ディスク装置を説明するための図である。実施例1に係る磁気ディスク装置は、ビットパターンド記録(BPR:Bit Patterned Recording)方式を用いた情報記録の際に発生するビットスリップに対応することを概要とする。そして、実施例1に係る磁気ディスク装置の骨子は、記録媒体上に設けられたデータセクタを構成する各ブロックの後半ほど、各ブロック内で割り当てられる誤り検出訂正能力の比率が大きくなるようにブロックサイズを小さくする点にある。
【0016】
すなわち、図1に示すように、データセクタを構成する各ブロックのインデックスが1〜81へ向かう後半ほど、ブロックサイズが小さくなるようにブロックサイズを変更する。そして、各ブロックの誤り検出訂正能力として、パリティビットを各ブロックに対して1ビットずつ割り当て、パリティビットを統合したパリティ部をデータセクタの先頭に配置する。このように、データセクタを構成する各ブロックの後半ほどブロックサイズが小さくなるので、割り当てられる誤り検出訂正能力(パリティ)の比率が大きくなる。以下、実施例1に係る磁気ディスク装置について詳細に説明する。
【0017】
[磁気ディスク装置の構成(実施例1)]
図2は、実施例1に係る磁気ディスク装置の構成を示す機能ブロック図である。同図に示すように、磁気ディスク装置100は、媒体110、ヘッド120、ヘッドアンプ130、SPM(スピンドルモータ)140、VCM(ボイスコイルモーター)150、サーボ制御部160、MPU(マイクロプロセッサ)170、メモリ(不揮発性)180、HDC(ハードディスクコントローラ)200およびRDC(リードライトチャネル)300を有する。ヘッドアンプ130、サーボ制御部160、MPU170、HDC200、RDC300は、データバスを解して互いに接続されている。
【0018】
媒体110は、アルミニウムあるいはガラスの薄い円盤に磁性体を塗った記録媒体である。ヘッド120は、媒体110からのデータ読み出し及び媒体110へのデータ書き込みを行う。ヘッドアンプ130は、ヘッド120からの信号の増幅および変換を行うとともに、ヘッドへの信号の増幅および変換を行う。SPM140は、サーボ制御部160からの制御電圧に基づいて媒体110を回転させる。VCM150は、サーボ制御部160からの制御電圧に基づいて、ヘッド120が搭載されたヘッドアンプ130を移動させる。
【0019】
サーボ制御部160は、所定の制御電圧で動作するように、SPM140あるいはVCM150を制御する。MPU170は、サーボ制御部160に制御信号を送出してサーボ制御を実行するとともに、後述するHDC200およびRDC300の制御を実行する。メモリ(不揮発性)180は、後述するHDC200により用いられる設定値などのデータを記録する。
【0020】
図3は、実施例1に係るHDCおよびRDCの構成を示す機能ブロック図である。
【0021】
同図に示すように、HDC200は、CRC符号器210、RLL符号器220、誤り訂正符号器230、誤り訂正復号器240、RLL復号器250およびCRC復号器260を有する。HDC200は、ホストコンピュータとの間でユーザデータをやり取りするI/F制御、バッファ制御、フォーマット制御および誤り訂正の機能を実現する。
【0022】
RDC300は、図3に示すように、パリティ付加器310、記録補償器320、CTF/ADC330、等化器340、ビタビ復号器350およびポストプロセッサ360を有する。そして、RDC300は、記録同期、PRML(Partial Response Maximum Likelihood)、データ符号化およびデータ復号化の機能を実現する。
【0023】
そして、HDC200は、特に、RDC300により測定されたサーボマーク間隔を用いて、媒体110に偏芯量によりデータセクタごとに変化する記録クロック周波数を算出し、記録クロック周波数に応じたブロックサイズを算出する。
【0024】
[記録クロック周波数の測定]
まず、工場出荷時あるいは初回ライト時に、HDC200とRDC300との間で実施される記録クロック周波数の測定について説明する。なお、記録クロック周波数とは、BPR記録方式において、対象のデータセクタに設けられたドットに正確にデータを記録するためのクロック周波数である。
【0025】
図4は、実施例1に係る記録クロック周波数測定処理の概念を説明するための図である。同図の上段は、媒体110におけるデータエリアとサーボエリアの配置を示す。サーボエリアは、放射状に配置され、予めサーボマーク(媒体上のアドレス)が記録される。データエリアは、サーボエリアの間に配置され、円周(トラック)方向にデータが記録される。また、同図の下段は、ヘッド120及びヘッドアンプ130から出力される再生信号と固定クロック(Nクロック)とのタイミングチャートを示す。再生信号は、サーボマークと、サーボマーク間のデータ部であるデータセクタ(データ領域)とで構成される。そして、HDC200およびRDC300は、協働して、サーボマーク間のデータ部であるデータセクタにおいて発振されるクロック数を記録クロック数として測定する。
【0026】
以下、記録クロック周波数の測定について具体的に説明する。まず、HDC200は、対象のデータセクタへのシークを行う。次にRDC300は、再生信号から、予め媒体110に記録されているサーボマークを検出し、サーボマーク間隔を測定する。次に、HDC200はサーボマーク間の規定値と、RDC300により測定されたサーボマーク間の測定値から、対象のデータセクタの記録クロック周波数を下記に示す数式を用いて算出し、その記録クロック周波数をプリセット値としてメモリ(不揮発性)180に格納する。なお、プリセット値は、媒体110上のシステム領域に書き込んでもよい。
【数1】

【0027】
なお、fは、記録クロック周波数を表し、fは、固定クロック周波数を表し、Nは、サーボマーク間に配置されたドット数(記録ビット数)を表し、nは、RDC300により計測されたサーボマーク間のカウント数を表す。
【0028】
そして、HDC200は、対象となる全てのデータセクタについて測定が終了したか否かの判定を行う。判定の結果、対象となる全てのセクタについて測定が終了していなければ、シーク処理へ戻り次の対象のデータセクタの測定を行う。対象となる全てのセクタについて測定が終了していれば、記録クロック周波数の測定を終了する。
【0029】
[ブロックサイズの算出]
続いて、HDC200によるブロックサイズの算出について説明する。
【0030】
図5は、実施例1に係るデータセクタ内での記録クロック周波数の一例を示す概念図である。記録クロックは、上述した記録クロック周波数の測定により、データセクタごとの偏芯に追従した最適な記録クロック周波数を設定できる。しかしながら、同図に示すように、記録クロック周波数の調整はデータセクタごとになるため、データセクタ内の後半では記録クロックの位相誤差が大きくなる。この位相誤差が、ビットスリップの原因となる。
【0031】
次に、ブロックサイズの変更を概念について説明する。図6は、実施例1に係るパリティを付加するブロックインデックスとデータビット位置(データセクタの先頭からのビット積算値)の関係を示す概念図である。
【0032】
仮に、データセクタ間で記録クロック周波数が一定であれば、誤り訂正符号化されたデータセクタを81ブロックに等分割し、60ビットごとに1ビットのパリティを付加すればよい。このとき、図6の(a)に示すように、ブロックインデックスとデータビット位置との関係は1次関数となる。しかしながら、媒体110の偏心により、記録クロックの位相誤差がデータセクタ内の後半で大きくことが考えられる場合には、図6の(b)に示すように、例えば、最大100ビットから最小20ビットまで、データセクタのインデックス後半ほど、ブロックサイズが小さくなるように、ブロックサイズを変更する。
【0033】
HDC200において実行されるブロックサイズの算出について説明する。図7は、実施例1に係るデータセクタ内のブロックサイズ算出処理を説明するための図である。同図の上段は、パリティを付加するブロックインデックスとデータビット位置の関係を示し、同図下段は、ブロックインデックスとブロックサイズの関係を示す。
【0034】
図7に示す破線は、ブロックサイズが60ビット一定とした場合(ブロックサイズ基準値)を示しており、同図の下段の破線で示されるブロックサイズも60ビットで一定となる。これに対して、同図に示す実線は、例えば、ブロックサイズ基準値を60、ブロックサイズ可変量初期値を40、最終値を−40として、ブロックサイズが100となるデータセクタの先頭から、データセクタの後半に向けて徐々にブロックサイズを小さくし、最終ブロックではブロックサイズを20とする場合を示している。また、同図に示す一点鎖線及び2点鎖線は、ブロックサイズ可変量初期値を50及び30とした例である。以下に、ブロックサイズを算出する計算方法の一例を示す。
【0035】
(ブロックサイズ)=(ブロックサイズ基準値)+(ブロックサイズ可変量初期値)
+(ブロックサイズ可変量)×(ブロックインデックス−1)
ここで、ブロックサイズ可変量は、
(ブロックサイズ可変量)=−(ブロックサイズ可変量初期値)×2
÷(総ブロック数−1)
ただし、(ブロックサイズ可変量初期値)<(ブロックサイズ基準値)、ブロックインデックスは1〜mとし、ブロックサイズは小数点以下を四捨五入した整数値とする。なお、ここで得られた全てのブロックの総和と、記録ビット数に差がある場合、先頭のブロック(ブロックインデックス“1”)で調整する。
(ブロック1の補正サイズ)= (ブロック1のサイズ)+ (記録ビット数)
−Σ(ブロックサイズ)
【0036】
ここで、上述した計算方法を用いて、ブロックサイズ基準値を60、ブロックサイズ可変量初期値を40、最終値を−40とした場合(図7の実線参照)のブロックインデックス21のブロックサイズの計算例を説明する。
【0037】
まず、ブロックサイズ可変量は、ブロックサイズ可変量初期値“40”、総ブロック数“81”より“−1”と計算できる。よって、ブロックインデックス21のブロックサイズは、上記計算方法を用いて、ブロックサイズ基準値(60)+ブロックサイズ可変量初期値(40)+ブロックサイズ可変量(−1)×(21−1)=80となる。
【0038】
[ブロックサイズ可変量初期値の決定]
上述してきたブロックサイズ算出処理において用いられるブロックサイズ可変量初期値の決定について、以下に具体的に説明する。HDC200は、隣接データセクタ間の記録クロックの周波数差により、予めブロックサイズ可変量初期値を決定することで、ブロックサイズを決定する。
【0039】
例えば、隣接するデータセクタAとデータセクタBとの間の記録クロックの周波数差が0.02%である場合、データセクタの記録ビット数が5000ビットであれば、データセクタAの最終ビットにおいて1ビットの誤差が生じることになる。そこで、記録クロックの周波数差による最終ビットの誤差ビット数に応じて、ブロックサイズ可変量初期値を決定する。例えば、最終ビットの誤差ビット数が1ビット以上生じる場合には、最終ブロックインデックスでのブロックサイズが1となるようにする。つまり、上記の図7に示すように、ブロックサイズ基準値が60の場合には、ブロックサイズ可変量初期値は59とする。以下に、ブロックサイズ可変量初期値の計算方法の一例を示す。
【0040】
(ブロックサイズ可変量初期値)=(ブロックサイズ基準値)
−1/{(記録ビット数)×(周波数差)}
ただし、ブロックサイズ可変量初期値は0〜(ブロックサイズ基準値―1)を満たす整数とし、小数点以下は四捨五入とする。
【0041】
以下、HDC200によるブロックサイズ可変量初期値の計算動作について説明する。HDC200は、工場出荷時あるいは初回ライト時に記録クロック周波数測定処理が終了した後に、ブロックサイズ可変量初期値の演算を行う。まず、HDC200は、所望データセクタ及び隣接データセクタの記録クロック周波数を参照して、データセクタ間の周波数差を計算する。周波数差の算出後、HDC200は、上述した計算方法を用いて、ブロックサイズ可変量初期値を算出し、算出されたブロックサイズ可変量初期値を記録クロック周波数のプリセット値と共にメモリ(不揮発性)180に記録する。HDC200は、記録クロック周波数がプリセットされるデータセクタについて、ブロックサイズ可変量初期値の全ての計算が終了したか判断し、未終了であれば、未終了の計算を行い、終了であれば、ブロックサイズ可変量初期値の計算について処理を終了する。
【0042】
[データ記録]
HDC200により計算されたブロックサイズごとに、RDC300で記録データのパリティを生成して、記録データとパリティとを媒体110に記録してフォーマットする磁気ディスク装置100のデータ記録処理について、以下に簡単に説明する。
【0043】
まず、磁気ディスク装置100におけるデータの記録過程について簡単に説明する。HDC200は、図3に示すように、セクタ単位で入力されるユーザデータについて、CRC符号器210により巡回検査(CRC)符号化を行う。次に、HDC200は、RLL符号器220より、巡回検査符号化後のデータをラン長制約(RLL)符号化し、誤り訂正符号器230により、ラン長制約符号化後のデータを誤り訂正符号化した符号化データをRDCに出力する。
【0044】
RDC300は、HDC200から入力した符号化データに対して、パリティ付加器310によりブロック毎にパリティを付加し、記録補償器320により記録位置を調整した後、「Write Amp(ライトアンプ)」131を介して、媒体110に記録する。
【0045】
上述してきたように、HDC200により求められたブロックサイズを用いた記録再生過程(データセクタのフォーマット)におけるHDC200およびRDC300の動作について、以下に具体的に説明する。図8は、実施例1に係るパリティ付加器の構成を示す機能ブロック図を示す。同図に示すように、パリティ付加器310は、ブロックサイズフォーマッタ311、パリティ生成器312、メモリ313およびマルチプレクサ314を有する。
【0046】
HDC200は、データ記録時、記録対象のデータセクタにシークを行う。このとき、RDC300のパリティ付加器310が有するブロックサイズフォーマッタ311は、メモリ(不揮発性)180から記録するゾーン・トラックのブロックサイズ可変量初期値を読み出す。そして、ブロックサイズフォーマッタ311は、メモリ(不揮発性)180から読み出したブロックサイズ可変量初期値を用いて、上述した計算方法によりブロックサイズを計算し、データ位置に応じたブロックサイズをパリティ生成器312に送る。
【0047】
上記の磁気ディスク装置100におけるデータの記録過程で説明したように、RDC310のパリティ生成器312は、HDC200から、HDC200によりユーザデータが誤り訂正符号化された符号化データ(記録データ)を受け付ける。
【0048】
そして、パリティ生成器312は、HDC200から受けた符号化データ(記録データ)の先頭から順に、ブロックサイズフォーマッタ311から送られた所定のブロックサイズで区切り、各ブロックサイズごとに誤り検出用のパリティをそれぞれ計算する。例えば、所定のブロックサイズで区切られたブロック内の“1”の個数が奇数であれば“1”、偶数であれば“0”とする奇偶パリティを付加するパリティとして計算する。パリティ生成器312は、符号化データを所定のブロックサイズで区切った全てのブロックについてパリティの生成が完了するまで、データとパリティとを対応付けてメモリ313に記録する。
【0049】
マルチプレクサ314は、メモリ313からパリティデータ、記録データを読込んで、パリティデータ、記録データの順に記録補償器320に送る。記録補償器320は、パリティデータ、記録データの順に媒体110に記録する。媒体110に記録される記録データは、図1に示すようなフォーマット構成をとり、ブロック1のパリティはパリティ部の1に対応し、ブロック81のパリティはパリティ部の81に対応する。なお、誤り検出用のパリティは巡回検査(CRC)符号やBCH符号を用いることで、より確実に誤りを検出でき、かつランダム誤りとバースト誤りの区別を容易にすることができる。
【0050】
[データ再生]
媒体110からデータを再生する磁気ディスク装置100のデータ再生処理について、以下に簡単に説明する。
【0051】
HDC200は、データ再生時、再生対象のデータセクタにシークを行う。このとき、RDC300は、メモリ(不揮発性)180より再生するゾーン・トラックのブロックサイズ可変量初期値を読み出す。RDC300は、図3に示すように、「Read Amp(リードアンプ)」132を介して、媒体110に記録されたデータを再生ヘッドにより読み出し、アナログフィルタ(CTF)330、アナログ・ディジタル変換器(ADC)330、等化器340を経由して、ビタビ復号器350により2値データに判定する。
【0052】
そして、RDC300は、ポストプロセッサ360により、ビタビ復号器350により判定された2値データについて、データブロックと、データブロックに対応するパリティに基づいて誤り検出及び訂正を行う。次に、RDC300は、HDC200にデータと消失フラグを出力する。HDC200は、RDC300からのデータおよび消失フラグを用いて、誤り訂正復号、RLL復号、CRC復号を行い、ユーザデータを出力する。
【0053】
以下、ポストプロセッサ360内部の動作について説明する。図9は、実施例1に係るポストプロセッサの構成を示す機能ブロック図である。同図に示すように、ポストプロセッサ360は、デマルチプレクサ361、ブロックサイズフォーマッタ362、パリティ再生成器363、誤り検出器364、ビットスリップ検出器365、ビットスリップ補正器366、セレクタ367およびパリティ誤り訂正器368を有する。
【0054】
デマルチプレクサ361は、ビタビ復号器出力データをデータ部とパリティ部に分割し、データ部をパリティ再生成器363へ送るとともに、パリティ部を誤り検出器364に送る。パリティ再生成器363は、ビタビ復号器出力データのデータ部に関し、ブロックサイズフォーマッタ362により不揮発メモリ180から読込んだブロックサイズに従って、パリティ付加器310のパリティ生成器312と同様の操作でパリティを生成し、誤り検出器364に送る。
【0055】
誤り検出器364は、パリティ再生成器363から送られてきたパリティと、ビタビ復号器出力データから分割されたパリティ部のデータとを用いて誤り検出を行い、誤り検出された検出情報をビットスリップ検出器365およびセレクタ367にそれぞれ送る。
【0056】
後述するビットスリップ検出器365において、ビットスリップの発生が検出されない場合は、セレクタ367は、ビタビ復号器出力データのデータ部とともに、誤り検出器364から送られてくる誤り検出情報をパリティ誤り訂正器368に出力する。パリティ誤り訂正器368は、誤り検出情報から誤り有りとされるブロックに関し、等化器出力データを用いて誤り訂正を行う。このパリティ誤り検出及びパリティ誤り訂正の方法として、例えば、参考文献(IEEE Trans.Magn.VOL.31,NO.6,Nov.1995)で示す方法、あるいは、等化器出力データの代わりにビタビ復号において得られる尤度情報を用いる方法(特開2008−136166号公報)を用いることができる。
【0057】
[ビットスリップ検出]
以下、ポストプロセッサ360におけるビットスリップ検出について説明する。図10は、実施例1に係るビットスリップ検出を説明するための図である。同図に示すように、ポストプロセッサ360における誤り検出の際、誤りブロックの連続性からビットスリップ検出を行う。HDC200の誤り訂正復号器240において誤り訂正不可となった場合、ビットスリップ検出結果と照らし合わせて、ブロック77以降ではパリティ誤りが連続していることから、ブロック77においてビットスリップが発生していると仮定できる。
【0058】
ポストプロセッサ360におけるビットスリップ検出動作について説明する。ビットスリップ検出器365は、図10に示すように、誤り検出器364から受け取ったブロックごとの誤り検出結果から、誤りがバースト状態(バースト誤り)になっている場合には、バースト開始ブロックのインデックス情報(例えば、ブロック77)をビットスリップ補正器366に送る。ビットスリップ検出器365は、誤りの発生したブロックが所定数(例えば、3ブロック)連続する場合、連続する5ブロック中3ブロックを超える誤りが発生している場合、あるいは、誤りが発生したブロックから上述した条件を下回る最後の誤りブロックまでをバースト状態(バースト誤り)として検出する。
【0059】
[ビットスリップ補正]
図11は、実施例1に係るビットスリップ補正器の構成を示す機能ブロック図である。同図に示すように、ビットスリップ補正器366は、ビット挿入/削除器366a、パリティ再生成器366b、誤り検出器366cおよびビットスリップ検出器366dを有する。
【0060】
ビットスリップ補正器366は、ビットスリップ検出器365から送られてきたバースト開始ブロックのインデックス情報から、ブロック77においてビットスリップが発生したと仮定する。そして、ビット挿入/削除器366aは、ブロック78に1ビットの“1”を挿入する。パリティ再生成器366bは、ブロック78以降についてパリティ再生成を行い、誤り検出器366cは、パリティ再生成器366bにより再生成されたパリティを用いて誤り検出を行う。誤り検出の結果、連続誤りがなければ、ビットスリップ検出器366dは、ブロック77のみに消失フラグを与えて、ビタビ復号器出力データのデータ部、および誤り検出器366cの誤り検出情報とともに、セレクタ367に送る。
【0061】
セレクタ367、パリティ誤り訂正器368を介して、誤り訂正結果を受けたHDC200は、誤り訂正復号を行った後、ユーザデータを出力する。
【0062】
なお、ビットスリップ方向は、隣接トラックとの記録クロック周波数の差によって予め判断可能である。例えば、次のデータセクタの周波数が高い場合は、ビット削除の可能性が高く、逆であればビット挿入の可能性が高い。上述したビット挿入/削除器366aにおけるビットの挿入、削除は、記録クロック周波数の差を勘案して実施する。また、もし挿入または削除によってもパリティ誤りが検出される場合、バースト誤りブロックについて消失訂正フラグを与え(例えばブロック77〜81)、誤り訂正復号器240に出力し、消失誤り訂正を行う。なお、誤り訂正復号器240として、リードソロモンのような10ビット単位(シンボルと呼ぶ)で処理を行う場合、消失訂正フラグはシンボルに整形(シンボル内に1ビットでも消失フラグがあれば、シンボルを消失)する。
【0063】
[磁気ディスク装置による処理(実施例1)]
以下、磁気ディスク装置による処理を説明する。図12は、実施例1に係る記録クロック周波数測定処理の流れを示す図である。図13は、実施例1に係るブロックサイズ可変量初期値計算処理の流れを示す図である。
【0064】
[記録クロック周波数測定処理]
まず、図12を用いて、記録クロック周波数測定処理の流れを説明する。同図に示すように、HDC200は、対象のデータセクタへのシークを行う(ステップS1)。RDC300は、再生信号から、予め媒体110に記録されているサーボマークを検出し、サーボマーク間隔を測定する(ステップS2)。HDC200は、サーボマーク間の規定値と、RDC300により測定されたサーボマーク間の測定値から、対象のデータセクタの記録クロック周波数を計算し(ステップS3)、その記録クロック周波数をプリセット値としてメモリ(不揮発性)180に格納する(ステップS4)。
【0065】
そして、HDC200は、対象となる全てのデータセクタについて測定が終了したか否かの判定を行う(ステップS5)。判定の結果、対象となる全てのセクタについて測定が終了していなければ(ステップS5否定)、上述したステップS1のシーク処理へ戻り、次の対象のデータセクタの測定を行う。対象となる全てのセクタについて測定が終了していれば(ステップS5肯定)、記録クロック周波数の測定を終了する。
【0066】
[ブロックサイズ可変量初期値計算処理]
続いて、図13を用いて、ブロックサイズ可変量初期値計算処理の流れを説明する。同図に示すように、HDC200は、所望データセクタ及び隣接データセクタの記録クロック周波数を参照して(ステップS1)、データセクタ間の周波数差を計算する(ステップS2)。周波数差の算出後、HDC200は、ブロックサイズ可変量初期値を算出し(ステップS3)、算出されたブロックサイズ可変量初期値を記録クロック周波数のプリセット値と共にメモリ(不揮発性)180に記録する(ステップS4)。そして、HDC200は、記録クロック周波数がプリセットされるデータセクタについて、ブロックサイズ可変量初期値の全ての計算が終了したか判断する(ステップS5)。判断の結果、未終了であれば(ステップS5否定)、上述したステップS1に戻り、未終了の計算を行う。一方、判断の結果、終了であれば(ステップS5肯定)、ブロックサイズ可変量初期値の計算について処理を終了する。
【0067】
[実施例1による効果]
上述してきたように、実施例1によれば、図1に示すように、データセクタを構成する各ブロックのインデックスが1〜81へ向かう後半ほど、ブロックサイズが小さくなるようにブロックサイズを変更して、各ブロックに対して同数のパリティを割り当てる。すなわち、データセクタを構成する各ブロックの後半ほど、割り当てられる誤り検出訂正能力の比率が多くなるようにデータセクタをフォーマットする。このようなことから、ビットスリップの発生確率が高い、ブロック後半ほど誤り検出訂正能力の比率が大きくするので、結果として、ビットスリップ箇所を迅速に検出かつ訂正できる。
【0068】
また、実施例1によれば、ブロックサイズを変更するためのブロックサイズ可変量を、データセクタ間の記録周波数の差に応じて設定するので、ブロックサイズを適切に調整できる。
【0069】
また、実施例1によれば、データセクタを構成する各ブロックに対応するパリティ部をデータセクタの先頭に配置するので、パリティ部のエラーを防止でき、誤り検出訂正能力を維持できる。
【実施例2】
【0070】
以下、記録再生装置、制御装置およびフォーマット方法の他の実施形態について説明する。
【0071】
(1)装置構成等
例えば、図2に示した磁気ディスク装置100の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、磁気ディスク装置100の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、例えば、HDC200とメモリ(不揮発性)180とを統合する。このように、磁気ディスク装置100の全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。さらに、磁気ディスク装置100にて行なわれる各処理機能(例えば、図11および図12等参照)は、その全部または任意の一部が、MPUやMCUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0072】
(2)フォーマット方法
上記の実施例で説明した磁気ディスク装置100により、以下のようなフォーマット方法が実現される。
【0073】
すなわち、媒体110上に設けられたデータセクタを構成する各ブロックの後半ほど、割り当てられる誤り検出訂正能力の比率が大きくなるようにデータセクタをフォーマットするステップ(例えば、図12のステップS1〜ステップS4参照)を含んだフォーマット方法が実現される。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上のように、開示の記録再生装置、制御装置およびフォーマット方法は、ビットパターンド記録(BPR:Bit Patterned Recording)方式を用いた情報記録の際に発生するビットスリップに対応することに有用であり、特に、ビットスリップ箇所を迅速に検出かつ訂正することに適する。
【符号の説明】
【0075】
100 磁気ディスク装置
110 媒体
120 ヘッド
130 ヘッドアンプ
140 SPM(スピンドルモータ)
150 VCM(ボイスコイルモーター)
160 サーボ制御部
170 MPU(マイクロプロセッサ)
180 メモリ
200 HDC(ハードディスクコントローラ)
210 CRC符号器
220 RLL符号器
230 誤り訂正符号器
240 誤り訂正復号器
250 RLL復号器
260 CRC復号器
300 RDC(リードライトチャネル)
310 パリティ付加器
320 記録補償器
330 CTF/ADC
340 等化器
350 ビタビ復号器
360 ポストプロセッサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体上に設けられたデータセクタを構成する各ブロックの後半ほど、データセクタ内で割り当てられる誤り検出訂正能力の比率が大きくなるように、ブロックサイズを小さくするフォーマット部を有することを特徴とする記録再生装置。
【請求項2】
前記フォーマット部は、データセクタを構成するブロックのインデックスの後半ほど、ブロックサイズが小さくなるようにブロックサイズを変更するためのブロックサイズ可変量を、データセクタ間の記録周波数の差に応じて設定することを特徴とする請求項1に記載の記録再生装置。
【請求項3】
前記フォーマット部は、前記各ブロックに対して割り当てられる誤り訂正能力に対応したビット列をデータセクタの先頭に配置することを特徴とする請求項1または2に記載の記録再生装置。
【請求項4】
記録再生装置に適用され、
記録媒体上に設けられたデータセクタを構成する各ブロックの後半ほど、データセクタ内で割り当てられる誤り検出訂正能力の比率が大きくなるように、ブロックサイズを小さくするフォーマット部を有することを特徴とする制御装置。
【請求項5】
記録再生装置に適用され、
記録媒体上に設けられたデータセクタを構成する各ブロックの後半ほど、データセクタ内で割り当てられる誤り検出訂正能力の比率が大きくなるように、ブロックサイズを小さくするフォーマットステップを含んだことを特徴とするフォーマット方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−218661(P2010−218661A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66909(P2009−66909)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(309033264)東芝ストレージデバイス株式会社 (255)
【Fターム(参考)】