説明

記録再生装置

【課題】非線形系の記録再生装置において、再生信号の非線形歪みを抑制する。
【解決手段】記録再生装置は、光ディスク100へのデータの記録の際、そのデータの一部を記録しては追ってそれを再生する。当該記録再生装置は、光ディスク100に記録するデータに挿入するDC制御ビットの値を決定するDC制御ビット決定回路11を備えている。当該DC制御ビット決定回路11は、光ディスク100への記録前のデータから算出したDSV値だけでなく、光ディスク100から再生した信号の波形の歪み量とを考慮して、DC制御ビットの値を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に対しデータの記録および再生を行う記録再生装置に関するものであり、特に、再生データの信号波形に非線形歪みを伴うシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば光ディスク等の記録媒体に対してディジタルデータの記録(書き込み)および再生(読み出し)を行う記録再生装置が広く知られている。その記録および再生システムが共に線形系であると仮定すると、再生信号の低周波数成分(直流成分)の制御は、DSV(Digiatal Sum Value)制御することによって、正しく行うことが可能と考えられている。
【0003】
一般的なDSV制御は、データを記録媒体に記録する際に、その記録データのビット「1」を「+1」に、ビット「0」を「−1」として累積加算を行い、その総和であるDSV値が0に近づくように、所定の情報単位ごとに「1」又は「0」のDC(Direct Current)制御ビットを挿入するものである。
【0004】
ところが、現実の光ディスクの記録再生系は非線形系である。例えば光ディスクの再生の際には、当該ディスク上のデータはまず光ピックアップを通して光信号として読み出され、その光信号が光検出回路によって電気信号を変換される。この光検出回路が非線形系であるために、光ディスクから再生されたデータの電気信号波形には、非線形歪みが発生することが知られている。
【0005】
このような非線形歪みを考慮に入れると、上記のような従来のDSV制御のみによる低周波数成分の制御では、完全に直流成分を押圧することができない。つまり、従来のDSV制御によって直流成分の補正を行っても、再生信号には低周波数の変動が発生する。
【0006】
そのため従来の光ディスク記録再生装置では、再生信号における「ジッタ」と呼ばれる妨害成分(信号の揺らぎ)が大きくなり、読みとりエラーを発生する原因となっていた。例えば下記の特許文献1には、非線形成分を考慮したデータの変調を行うことにより、ジッタを抑制することが提案されている。
【0007】
【特許文献1】特開2003−168217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、光ディスク記録再生装置などの非線形系では、記録媒体から再生された信号(再生信号)の波形に非線形歪みが発生する。そのため従来のDSV制御では、再生信号に低周波数の変動が発生していた。この変動は、再生信号のジッタ成分を大きくするため、読みとりエラーを発生させる原因となっていた。
【0009】
本発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、記録再生装置において再生信号の非線形歪みを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る記録再生装置は、データを記録媒体に記録する記録部と、前記記録媒体に記録する前のデータに対し、所定の情報単位ごとにDC(Direct Current)制御ビットを挿入する制御ビット挿入部と、前記記録媒体に記録する前のデータのDSV(Digiatal Sum Value)値を算出するDSV演算部と、前記記録媒体に記録されたデータを再生する再生部と、前記再生部が再生したデータの信号波形から、その非線形歪みの程度を表す歪み量を算出する歪み量演算部とを備え、前記記録部が前記記録媒体にデータを記録するとき、前記再生部が、前記記録媒体に記録されたデータを追って再生し、前記歪み量演算部が、その再生されたデータの信号波形から前記歪み量を算出し、前記制御ビット挿入部が、その次に挿入する前記DC制御ビットの値を前記歪み量および前記DSV値に基づいて決定するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、記録媒体へ記録前のデータを用いた従来のDSV制御だけでなく、当該記録媒体から再生した信号の非線形歪みをも考慮して制御ビットが決定され、記録動作が行われる。従って、従来よりも再生信号の非線形歪みが抑制されるように、記録媒体へデータを記録することが可能になる。その結果、記録媒体を再生する際に、記録再生装置の誤動作の発生が抑制されるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は本実施の形態に係る光ディスク記録再生装置の構成を示す図である。光ディスク100は、当該記録再生装置に着脱可能な記録媒体である。当該記録再生装置は、光ディスク100にコンテンツ(データ)を書き込む記録動作、並びに光ディスク100に記録されているデータを読み出す再生動作を行うことが可能である。
【0013】
入力端子1は、光ディスク100に記録するデータ(記録データ)を入力するための端子である。DC制御ビット挿入回路2は、記録データに対し、所定の情報単位ごとにその直流成分を補正するためのDC制御ビットを挿入する回路である。DC制御ビット挿入回路2が挿入するDC制御ビットは「0」または「1」の値をとるが、それをどちらの値にするかは後述するDC制御ビット決定回路11によって決定される。
【0014】
変調回路3は、DC制御ビット挿入回路2が出力した記録データに対し、所定の変調処理を行う回路である。本実施の形態では、変調回路3は、(1,7)PP(Parity preserve/Prohibit RMTR(Repeated Minimum Transition Runlength))変調を行うものと仮定する。(1,7)PP変調方式は、従来の(1,7)RLL(Run Length Limited)変調方式をさらに改善したものであり、Blu−rayディスク等の高密度光ディスクのフォーマットに採用されている。
【0015】
NRZI化回路4は、変調回路3により変調処理された記録データをNRZI(Non Return to Zero Inversion)データに変換する回路である。ドライブ回路5は、NRZI化された記録データに基づいて、光ヘッド6の駆動信号を生成する回路である。光ヘッド6は、ドライブ回路5からの駆動信号に基づいて動作するものであり、光ディスク100へレーザ光を照射してデータの記録する機能を備えると共に、光ディスク100へレーザ光を照射しつつその反射光を受光してそれに記録されているデータを読み出す機能を備えている。この光ヘッド6は、光ディスク100からの反射光である光信号を電気信号に変換するフォトディテクタ(不図示)を含んでいる。RF信号処理部7は、光ヘッド6が光ディスク100から読み出したデータ(再生データ)であるRF信号に対し、ディジタル化等の信号処理を行うものである。
【0016】
波形解析回路8は、ディジタル化されたRF信号の波形を解析し、その波形における非線形歪みの程度を表す値(以下「歪み量」と称す)を算出する回路である。復調回路9は、ディジタル化されたRF信号に対して所定の復調処理を行う回路である。上記のとおり本実施の形態では変調回路3が(1,7)PP復調を行うので、復調回路9は(1,7)PP復調を行う。復調回路9により復調された再生データは出力端子12から出力される。
【0017】
またDSV演算回路10は、NRZI化回路4によりNRZI化された記録データに対し、所定の情報区間ごとのDSV値(ビット「1」を「+1」、ビット「0」を「−1」として累積加算した総和)を計算する回路である。DC制御ビット決定回路11は、DSV演算回路10が算出したDSV値、並びに波形解析回路8が算出した歪み量に基づいて、DC制御ビット挿入回路2が記録データに挿入するDC制御ビットを「1」にするか「0」にするか決定する回路である。
【0018】
以下、この記録再生装置の記録動作について説明する。光ディスク100に記録する記録データが入力端子1に入力されると、DC制御ビット挿入回路2に送られる。DC制御ビット挿入回路2では、記録データに対し、DC制御ビット決定回路11によって決定された値をとるDC制御ビットが挿入される(DC制御ビット決定回路11がDC制御ビットの値を決定する際の動作については後述する)。
【0019】
DC制御ビットが挿入された記録データは変調回路3に送られ、そこで(1,7)PP変調処理が施される。変調された記録データは、NRZI化回路4へ送られ、そこでNRZI化処理が施される。NRZI化された記録データは、光ディスク100への書き込みのためにドライブ回路5へと送られると共に、DSV演算のためにDSV演算回路10へと入力される。
【0020】
ドライブ回路5は、NRZI化された記録データに基づいた駆動信号を生成し、それを用いて光ヘッド6を駆動する。光ヘッド6は、当該駆動信号に基づいて光ディスク100にレーザ光を照射する。その結果、光ディスク100に記録データが書き込まれる。
【0021】
一方、DSV演算回路10は、NRZI化された記録データについてのDSV値を計算し、得られたDSV値をDC制御ビット決定回路11へと送る。当該DSV値は、DC制御ビット決定回路11において、DC制御ビットの決定に用いられる。
【0022】
本実施の形態に係る記録再生装置の記録動作では、全ての記録データが一括して光ディスク100に記録されるのではなく、記録処理と再生処理をと繰り返しながら、数回に分けて記録される。つまり光ヘッド6は、記録データの一部を光ディスク100へ書き込むと、次いでその書き込んだデータを読み出して、再生データの電気信号(再生信号)へと変換する。ここで得られる再生信号はRF(Radio-friquency)信号である。光ヘッド6により再生されたRF信号は、RF信号処理部7に送られ、そこで波形等化などの前処理の後、AD変換処理によってディジタル化される。このとき、ディジタル化されたRF信号は波形解析回路8へ入力される。
【0023】
波形解析回路8では、ディジタル化されたRF信号の波形特性の解析、特に直流成分の変動となる非線形歪みついての解析を行い、当該RF信号の非線形歪みの程度を表す歪み量を算出する。波形解析回路8により得られた歪み量は、DC制御ビット決定回路11へと入力され、上記のDSV値と共に、DC制御ビットの決定に用いられる。
【0024】
上記したように従来の記録再生装置では、単純にDSV値が0に近づくようにDC制御ビットが決定されていた。それに対し本実施の形態のDC制御ビット決定回路11では、記録データ(光ディスク100に書き込む前のデータ)のDSV値だけでなく、再生データ(光ディスク100から読み出されたデータ)の歪みの程度も考慮されて、DC制御ビットが決定される。
【0025】
図2は、光ディスク100から読み出された再生信号の波形(RF信号の波形)の一例であり、同図にはそれに含まれる非線形歪みに起因する直流成分(誤差成分)が示されている。同図の如く、正の直流成分d1を有する区間S1では、再生信号の負方向への振幅が小さくなると共に、当該再生信号が負のレベルになる期間が短くなる。逆に負の直流成分d2を有する区間S2では、再生信号の正方向への振幅が小さくなると共に、当該再生信号が正のレベルになる期間が短くなる。
【0026】
再生信号の波形がこのような歪みを含んでいると、再生動作時に信号の誤検出が発生して、記録再生装置の誤動作を引き起こす要因となるため問題となる。そこで本実施の形態では、このような再生信号の歪み(非線形歪み)も考慮して、記録データに挿入するDC制御ビットを決定することで、その問題の解決を図っている。
【0027】
以降は、上記の記録/再生処理を繰り返しながら、記録データが光ディスク100へ記録される。その流れを図3に示す。即ち本実施の形態では、記録データの一部について光ディスク100への書き込みを行うごとに、それを光ディスク100から読み出し、その再生信号から歪み量を算出すると共にDSV値を算出し、次に挿入するDC制御ビットの値を決定して記録データの次の一部の書き込みを行う、というフローを繰り返し行う。歪み量の算出およびDSV値の算出は互いに並列して行ってもよい。
【0028】
なお、完全にデータが記録済みの光ディスク100を再生する通常の再生動作の場合には、光ヘッド6によって光ディスク100から読み取られ、RF信号処理部7によってディジタル化された再生信号(RF信号)は、復調回路9へと送られる。復調回路9は、ディジタル化されたRF信号をPRML(Partial Response Maximum Likelihood)等の軟判定処理によって2値化処理し、さらに(1,7)PP復調を行う。復調された再生データは、誤り訂正符号(ECC:Error Correcting Code)処理など他の信号処理を行うために出力端子12から出力される。本発明は主に光ディスク100への記録動作に関するものであるため、この通常の再生動作により出力端子12から出力された信号の処理についての詳細な説明は省略する。
【0029】
以下、波形解析回路8の構成および動作について具体的に説明する。図4は、波形解析回路8の構成を示すブロック図である。波形解析回路8の入力端子14には、RF信号処理部7によりディジタル化されたRF信号が入力される。マーク/スペース検出回路15は、当該RF信号のマーク部分およびスペース部分を区別して検出する。パターン判定回路16は、当該RF信号に含まれる、例えば2T〜9T等のTパターンの判定を行う回路である。振幅レベル測定回路17は、当該RF信号に含まれるぞれぞれのTパターンの振幅レベルを、各マーク/スペースごとに測定する。パターン幅測定回路18は、当該RF信号に含まれるそれぞれのTパターンの正確な幅(長さ)を測定する。
【0030】
累積加算回路19は、上記のマーク/スペース検出回路15、パターン判定回路16、振幅レベル測定回路17およびパターン幅測定回路18で得られた情報から、各Tパターンごとの振幅レベルやパターン幅を累積加算して平均化処理する。歪み量算出回路20は、平均化された振幅レベルやパターン幅から、当該RF信号の線形歪みの程度を表す歪み量を算出する。算出された歪み量は、波形解析回路8の出力端子21から出力されて、DC制御ビット決定回路11へと送られる。
【0031】
図4に示した波形解析回路8の動作を説明する。RF信号処理部7によりディジタル化されたRF信号は、波形解析回路8の入力端子14に入力されると、マーク/スペース検出回路15、パターン判定回路16、振幅レベル測定回路17およびパターン幅測定回路18へと送られる。例えば入力端子14に図5のような波形のRF信号が入力されたとする。
【0032】
ここで、本実施の形態における光ディスク100をBlu−rayディスクと仮定する。Blu−rayディスクの規格の場合、再生信号に含まれるTパターンは、2T〜9Tの8種類が出現する可能性がある。また非線形歪みを考えなければ、各Tパターンにおけるマーク部分は再生信号においてゼロレベルよりも小さい負のレベルの部分として現れ、スペース部分はゼロレベルよりも大きい正のレベルの部分として現れる。
【0033】
マーク/スペース検出回路15は、RF信号のレベルの正負を検出することにより、マーク部分およびスペース部分を区別して検出する。図5の例であれば、RF信号が正レベルになる区間A,C,E・・・はスペース部分として検出され、負のレベルになる区間B,D,F,・・・はマーク部分として検出される。マーク/スペース検出回路15から累積加算回路19へは、そのマークまたはスペースの検出結果が入力される。
【0034】
パターン判定回路16は、RF信号の各マーク/スペースの幅(長さ)から、そのTパターンを判定する。例えば図5において広い幅WAを有する区間Aを6Tパターン、狭い幅WFを有する区間Fを3Tパターンと判定するといった具合である。パターン判定回路16から累積加算回路19へは、そのTパターンの判定結果が入力される。
【0035】
振幅レベル測定回路17は、各パターンにおける振幅レベルを測定する。図5の例であれば、各区間A,C,E・・・の最大振幅レベルであるLA,LB,LC・・・の値を測定する。振幅レベル測定回路17から累積加算回路19へは、各Tパターンの振幅レベルの測定値が入力される。
【0036】
またパターン幅測定回路18は、RF信号の各マーク/スペースの幅を測定する点では上記のパターン判定回路16と同様であるが、それとは異なり、パターン幅の正確な値を得るものである。図5の例であれば、各マーク/スペースの幅WA,WB,WC,・・・の正確な値が得られる。マーク/スペースの幅は、そのTパターンの正確な長さに相当する。パターン幅測定回路18から累積加算回路19へは、各マーク/スペースの幅(Tパターンの長さ)測定値が入力される。
【0037】
振幅レベル測定回路17およびパターン幅測定回路18は、基本的にRF信号のすべてのTパターンの振幅レベルおよびパターン幅を測定してもよいが、一定周期でサンプルを抽出するなど、一部の期間のTパターンに対して測定を行ってもよい。
【0038】
累積加算回路19は、マーク/スペース検出回路15、パターン判定回路16、振幅レベル測定回路17およびパターン幅測定回路18のそれぞれから入力される情報に基づいて、各Tパターンのマーク、スペースごとに振幅レベルおよびパターン幅を累積加算し、各種類ごとに平均値算出の計算を行う。
【0039】
本実施の形態のように光ディスク100がBlu−Rayディスクであれば、累積加算回路19においては、2Tマークの幅および振幅レベル、2Tスペースの幅および振幅レベル、3Tマークの幅および振幅レベル、3Tスペースの幅および振幅レベル、・・・、9Tマークの幅および振幅レベル、9Tスペースの幅および振幅レベルの各々の平均値(平均振幅レベル)が得られる。累積加算回路19はそれらの値を歪み量算出回路20へと送る。
【0040】
補正量算出回路20はそれらの値に基づいて、再生信号(RF信号)の非線形歪みの程度を表す歪み量を算出する。歪み量の定義としては幾つか考えられるが、例えば、再生信号波形のマーク部とスペース部との非対称性の度合いを表すものが考えられる。その一例としては、再生信号におけるマーク部分およびスペース部分それぞれの平均振幅レベルの差が挙げられる。
【0041】
RF信号が直流成分を有さなければ、同じ幅のTパターンのマーク部分とスペース部分とではそれぞれ正負で同じ振幅レベルになるので、基本的にマーク部分とスペース部分とでは平均振幅レベルが同じになるはずである。一方、RF信号が正の直流成分を有していれば、図2の区間S1のように、マーク部分(負レベルの部分)の振幅レベルが小さくなり、スペース部分(正レベルの部分)の振幅レベルが大きくなる。逆に、RF信号が負の直流成分を有していれば、図2の区間S2のように、マーク部分の振幅レベルが大きくなり、スペース部分の振幅レベルが小さくなる。つまり、マーク部分およびスペース部分それぞれの平均振幅レベルの大小関係(差)によって、直流成分の正負および大きさが分かる。
【0042】
また他の一例としては、再生データ信号におけるマーク部分およびスペース部分それぞれの長さ(幅)の平均値(平均幅)の差が挙げられる。同じTパターンのマークとスペースは、互いに同じ長さに規定されているため、RF信号が直流成分を有さなければ、基本的に同じTパターンのマーク部分とスペース部分とではそれぞれ同じ長さになるはずである。一方、RF信号が正の直流成分を有していれば、図2の区間S1のように、マーク部分(負の部分)の幅は小さくなり、スペース部分(正の部分)の幅が大きくなる。逆に、RF信号が負の直流成分を有していれば、図2の区間S2のように、マーク部分の幅が大きくなり、スペース部分の幅が小さくなる。つまり、マーク部分およびスペース部分それぞれの平均幅の大小関係(差)によって、それによって直流成分の正負および大きさが分かる。
【0043】
先に述べたように、本実施の形態の本実施の形態の記録再生装置においては、記録データ(即ち光ディスク100に書き込む前のデータ)のDSV値だけでなく、再生データ(即ち光ディスク100から読み出されたデータ)の歪み量も考慮されて、DC制御ビット挿入回路2が記録データに挿入するDC制御ビットが決定される。その決定を行う回路がDC制御ビット決定回路11である。
【0044】
DC制御ビット決定回路11におけるDC制御ビットの決定の手法も、幾つか考えられる。従来のDSV制御による決定手法では、単純にDSV値がゼロに近くなるようにDC制御ビットの値を決定していたが、それを「0」にしても「1」にしても直流成分の補正結果に大きな差ができない場合もある。そこで本実施の形態では、そのような場合には記録データのDSV値よりも優先的に、再生信号の歪み量を小さくするように(歪み量をゼロに近づけるように)、DC制御ビットの値を決定する。
【0045】
例えば、波形解析回路8が算出する歪み量が、再生信号(RF信号)の2Tスペースの平均振幅レベルと2Tマークの平均振幅レベルとの差として定義されるものとし、仮に、2Tスペースの平均振幅レベルが100、2Tマークの平均振幅レベルが80であったとする。つまり、再生信号が正の(スペース側の)直流成分を有していることが分かる。一方、DSV演算回路10が行ったDSV演算の結果、DC制御ビット「1」にすればDSV値が+10になり、DC制御ビット「0」をすれば−20になるという判定が得られたとする。従来のDSV制御では、DSV値のみに着目していたため、このようなケースではDSV値がよりゼロに近くなるようにDC制御ビットは「1」に決定されていた。
【0046】
それに対し本実施の形態では、DC制御ビット決定回路11が、「DSV値が+10、−20であっても充分にゼロに近い」と判断すれば、DSV値よりも歪み量を小さくすることを優先させる。即ち、この例にあっては、歪み量(正の直流成分)がより小さくなるように、DC制御ビットをあえて「0」に決定する。この結果、DSV値は−20になるが、再生信号における非線形歪みの発生は小さくなる。
【0047】
上記の判定手法はあくまで一例であり、本発明の適用はそれに限定されるものではない。例えば、歪み量の定義は、2Tスペースの平均振幅レベルと2Tマークの平均振幅レベルとの差に限られず、他のTパターンの平均振幅レベルを基準にしてもよい。また平均振幅レベルでなく、パターン幅を用いてもよいし、それらを組み合わせにより歪み量を定義してもよい。またDSV値がどの程度の大きさ以下であれば充分にゼロに近いと判断するかも、任意である。
【0048】
以上のように本実施の形態によれば、記録前のデータを用いた従来のDSV制御だけでなく、光ディスク100から再生した信号の非線形歪みをも考慮してDC制御ビットが決定され、記録動作が行われる。従って、従来よりも再生信号の非線形歪みが抑制されるように、光ディスク100へデータを記録することが可能になる。その結果、光ディスク100を再生する際に、記録再生装置の誤動作の発生が抑制されるという効果が得られる。
【0049】
またBlu−Rayディスクのような光ディスクは、その内周部と外周部とで再生時の光学的な特性(非線形性)が異なるため、内周部および外周部の両方で良好なDC制御(直流成分の制御)を行うことが困難であった。しかし本実施の形態によれば、実際に光ディスク100から読み出した再生信号に基づいたDC制御が行われるため、光ディスク100におけるデータの記録位置に応じた制御が行われ、内周部および外周部の両方で良好なDC制御を行うことができる。即ち、本発明を光ディスクに適用する場合には、少なくとも内周部と外周部とで、個別にDC制御ビットの決定を行うとよい。
【0050】
なお、波形解析回路8における歪み量の計算およびDSV演算回路10におけるDSV値の計算を互いに並行して行うことが可能なことは先にも述べたが、さらに、RF信号処理部7と波形解析回路8とを互いに並列な回路とし、例えば振幅レベルの累積加算などの計算を、RF信号の再生処理と並行して行うことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の形態に係る記録再生装置の構成を示す図である。
【図2】波形解析回路に入力される再生信号(RF信号)の波形の一例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る記録再生装置の動作を示すフロー図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る波形解析回路の構成の具体例を示す図である。
【図5】波形解析回路の動作を説明するための図である。
【符号の説明】
【0052】
1 入力端子、2 DC制御ビット挿入回路、3 変調回路、4 NRZI化回路、5 ドライブ回路、6 光ヘッド、7 RF信号処理部、8 波形解析回路、9 復調回路、10 DSV演算回路、11 DC制御ビット決定回路、12 出力端子、15 マーク/スペース検出回路、16 パターン判定回路、17 振幅レベル測定回路、18 パターン幅測定回路、19 累積加算回路、20 歪み量算出回路、100 光ディスク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを記録媒体に記録する記録部と、
前記記録媒体に記録する前のデータに対し、所定の情報単位ごとにDC(Direct Current)制御ビットを挿入する制御ビット挿入部と、
前記記録媒体に記録する前のデータのDSV(Digiatal Sum Value)値を算出するDSV演算部と、
前記記録媒体に記録されたデータを再生する再生部と、
前記再生部が再生したデータの信号波形から、その非線形歪みの程度を表す歪み量を算出する歪み量演算部とを備え、
前記記録部が前記記録媒体にデータを記録するとき、
前記再生部が、前記記録媒体に記録されたデータを追って再生し、
前記歪み量演算部が、その再生されたデータの信号波形から前記歪み量を算出し、
前記制御ビット挿入部が、その次に挿入する前記DC制御ビットの値を前記歪み量および前記DSV値に基づいて決定する
ことを特徴とする記録再生装置。
【請求項2】
請求項1記載の記録再生装置であって、
前記歪み量演算部は、
前記歪み量および前記DSV値の少なくともどちらかがゼロに近くなるように、前記DC制御ビットの値を決定する
ことを特徴とする記録再生装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の記録再生装置であって、
前記歪み量演算部は、
前記信号波形のマーク部およびスペース部それぞれの振幅の平均値と、マーク部およびスペース部それぞれの幅の平均値との少なくとも片方を用いて前記歪み量を算出する
ことを特徴とする記録再生装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか記載の記録再生装置であって、
前記記録媒体は、光ディスクであり、
前記制御ビット挿入部は、少なくとも前記光ディスクの内周部への記録の際と外周部への記録の際とで、前記DC制御ビットの値を個別に決定する
ことを特徴とする記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−269661(P2008−269661A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106723(P2007−106723)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】