説明

記録媒体および光情報記録再生装置

【課題】 近視野光を用いた光メモリにおいて、光の利用効率を高めるために近視野光ヘッドではなく、記録媒体の構造に特徴をもつ記録媒体とその製造方法および、この記録媒体を用いた光情報記録再生装置を提供すること。
【解決手段】 近視野光を利用して近視野光ヘッドにより情報を記録再生する記録媒体6は、近視野光を生成する為に照射される照射光の波長に対して透明な媒体基板31と、媒体基板表面上に情報を記録するデータ記録部33と、データ記録部33に照射光を集光するための集光構造とからなる構成とした。特に、集光構造は、反射膜が形成されたテーパー部32と遮光部34とから構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近視野光を利用して高密度な情報の再生及び記録を行うことができる記録媒体および光情報記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
試料表面においてナノメートルオーダの微小な領域を観察するために走査型トンネル顕微鏡(STM)や原子間力顕微鏡(AFM)に代表される走査型プローブ顕微鏡(SPM)が用いられている。SPMは、先端が先鋭化されたプローブを試料表面に走査させ、プローブと試料表面との間に生じるトンネル電流や原子間力などの相互作用を観察対象として、プローブ先端形状に依存した分解能の像を得ることができるが、比較的、観察する試料に対する制約が厳しい。
【0003】
そこでいま、試料表面に生成される近視野光とプローブとの間に生じる相互作用を観察対象とすることで、試料表面の微小な領域の観察を可能にした近視野光学顕微鏡が注目されている。
【0004】
近視野光学顕微鏡においては、伝搬光を試料の表面に照射して近視野光を生成し、生成された近視野光を先端が先鋭化されたプローブにより散乱させ、その散乱光を従来の伝搬光検出と同様に処理することで、従来の光学顕微鏡による観察分解能の限界を打破し、より微小な領域の観察を可能としている。また、試料表面に照射する光の波長を掃引することで、微小領域における試料の光学物性の観測をも可能としている。
【0005】
顕微鏡としての利用だけでなく、光ファイバープローブを通して試料に向けて比較的強度の大きな光を導入させることにより、光ファイバープローブの微小開口にエネルギー密度の高い近視野光を生成し、その近視野光によって試料表面の構造または物性を局所的に変更させる高密度な光メモリ記録としての応用も可能である。
【0006】
近視野光学顕微鏡に使用されるプローブとして、例えば米国特許第5,294,790号に開示されているように、フォトリソグラフィ等の半導体製造技術によってシリコン基板にこれを貫通する開口部を形成し、シリコン基板の一方の面には絶縁膜を形成して、開口部の反対側の絶縁膜の上に円錐形状の光導波層を形成したカンチレバー型光プローブが提案されている。このカンチレバー型光プローブにおいては、開口部に光ファイバーを挿入し、光導波層の先端部以外を金属膜でコーティングすることで形成された微小開口に光を透過させることができる。
【0007】
更に、上述したプローブのように先鋭化された先端をもたない平面プローブの使用が提案されている。平面プローブは、シリコン基板に異方性エッチングによって逆ピラミッド構造の開口を形成したものであり、特にその頂点が数十ナノメートルの径を有して貫通されている。そのような平面プローブは、半導体製造技術を用いて同一基板上に複数作成すること、すなわちアレイ化が容易であり、特に近視野光を利用した光メモリの再生及び記録に適した光メモリヘッドとして使用できる。この平面プローブを用いた光ヘッドとして、従来ハードディスクで用いられているフライングヘッドに平面プローブを有したものが提案されている。フライングヘッドは記録媒体から約50から100nm浮上するように空力設計される。このフライングヘッドの記録媒体側に微小開口を形成して、近視野光を発生させ光記録および再生を行うことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、近視野光を利用した光メモリは、近視野光を利用している為に、光の回折限界以下の超高密度な光メモリを実現できる反面、光の利用効率が低く、受光素子で受光される光量が非常に弱いという課題があった。
【0009】
そしてこの課題を解決するために、従来は、使用するレーザー光の強度を強くしたり、近視野光ヘッドである平面プローブの逆ピラミッド構造の中にボールレンズ等を充填したりしていた。
【0010】
しかし、レーザー光強度を高くすると発熱や消費電力等の新たな問題が出てしまうという課題ある。また、ボールレンズを使った場合には、そのボールレンズの位置合せが必要となり、コストアップの要因となる。さらにボールレンズの個々のばらつきにより、大量生産した際に、全ての近視野光ヘッドにおいて開口部に光の焦点を合わせることが困難であるという課題がある。
【0011】
そのため、近視野光を利用した超高密度メモリを実現する際に、小型低消費電力化、大量生産による低価格化が困難である。
【0012】
よって、本発明は、光の利用効率を高め、上述した従来の方法による問題点を解決するために、近視野光ヘッドではなく記録媒体の構造に特徴をもつ記録媒体、および、この記録媒体を用いた光情報記録再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで、上記の課題を解決するために、本発明に係る1番目の記録媒体は、近視野光を利用して近視野光ヘッドにより情報を記録再生する記録媒体において、近視野光を生成する為に照射される照射光の波長に対して透明な媒体基板と、媒体基板表面上に情報を記録するデータ記録部と、データ記録部に照射光を集光するための集光構造とから構成されていることを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、データ記録部に外部から照射される照射光を集光する集光構造を記録媒体中に持つため、その集光構造による集光効果により、データ記録部に照射される光量が増大し、より強い近視野光がデータ記録部に生成され、この近視野光と近視野光ヘッドを相互作用させて得られる伝播光の強度が増大する。
【0015】
また、本発明に係る2番目の記録媒体は、1番目の記録媒体において、集光構造は媒体基板の厚さ方向にテーパー形状を有する反射膜が形成されたテーパー部と、データ記録部を除く領域に照射光を遮光する遮光部とからなることを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、集光構造をテーパー形状とすることにより、記録媒体は転写により作成することができるので、記録媒体の大量生産が可能であり低コスト化が容易である。
【0017】
また、本発明に係る3番目の記録媒体は、1番目または2番目の記録媒体において、反射膜が遮光部をもかねていることを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、テーパー部に形成された反射膜と遮光部とが同一となり、記録媒体を製造する工程が1工程少なくなるので、より低コスト化ができる。
【0019】
また、本発明に係る4番目の記録媒体は、1番目の記録媒体において、データ記録部は媒体基板の両面に形成され、集光構造は媒体基板の厚さ方向にテーパー形状を有する反射膜が形成されたテーパー部であることを特徴とする。
【0020】
この発明によれば、記録媒体の両面にデータ記録部を形成することができるので、1枚の記録媒体あたりの容量を2倍に向上する事ができる。
【0021】
また、本発明に係る5番目の記録媒体は、2番目または4番目の記録媒体において、媒体基板の厚さ方向にテーパー形状を有する反射膜が形成されたテーパー部は反射膜が形成された逆錘状のテーパー部であることを特徴とする。
【0022】
この発明によれば、テーパー部の形状を逆四角錘形状としているので、反射膜が形成されたテーパー部の4つの斜面によりデータ記録部に照射光を効率良く集光させることができる。よって、光源からの光束をより効率よく利用できること
ができる。
【0023】
また、本発明に係る6番目の記録媒体は、2番目または4番目の記録媒体において、媒体基板の厚さ方向にテーパー形状を有する反射膜が形成されたテーパー部は反射膜が形成されたV溝状のテーパー部であることを特徴とする。
【0024】
この発明によれば、同心円状に作成されたデータ記録部を利用したトラッキング制御を行うことが可能であり、より安定した信号再生を行うことができる。
【0025】
また、本発明に係る1番目の記録媒体の製造方法は、近視野光を利用して近視野光ヘッドにより情報を記録再生する記録媒体において、凸形状を作成する凸形状作成工程と、凸形状を媒体基板に転写する転写工程と、転写工程により作成された凹形状に反射膜および遮光部を作成する反射膜・遮光部作成工程とからなることを特徴とする。
【0026】
この発明によれば、テーパー形状を有する媒体基板を転写により作成することができるので、一度型を作ってしまえば、あとは転写をすることで記録媒体の大量生産が可能であり低コスト化が容易である。
【0027】
また、本発明に係る2番目の記録媒体の製造方法は、近視野光を利用して近視野光ヘッドにより情報を記録再生する記録媒体において、凹形状を作成する凹形状作成工程と、凹形状に反射膜および遮光部を作成する反射膜・遮光部作成工程とからなることを特徴とする。
【0028】
この発明によれば、本発明に係る1番目の記録媒体の製造方法の効果に加え、さらに、型を作成する工程をなくすことができるので、その分のコストダウンが可能である。
【0029】
また、本発明に係る1番目の光情報記録再生装置は、近視野光を利用して近視野光ヘッドにより情報を再生する光情報再生装置において、光源とレンズから構成される前記近視野光を生成する為に照射される照射光学系と、照射光の波長に対して透明な媒体基板と記録再生される情報が形成される媒体基板表面上のデータ記録部とデータ記録部に照射光を集光するための集光構造とからなる記録媒体と、近視野光ヘッドとから構成されていることを特徴とする。
【0030】
この発明によれば、データ記録部に外部から照射される照射光を集光する集光構造を記録媒体中に持つため、その集光構造による集光効果により、データ記録部に照射される光量が増大し、より強い近視野光がデータ記録部に生成される。この近視野光と近視野光ヘッドを相互作用させて得られる伝播光の強度が増大する。
【0031】
また、本発明に係る2番目の光情報記録再生装置は、近視野光を利用して近視野光ヘッドにより情報を記録再生する光情報再生装置において、光源とレンズから構成される前記近視野光を生成する為に照射される照射光学系と、照射光の波長に対して透明な媒体基板と記録再生される情報が形成される媒体基板表面上のデータ記録部とデータ記録部に前記照射光を集光するための集光構造とからなる記録媒体と、記録媒体から情報を再生するための近視野光ヘッドと、記録媒体に情報を記録するための近視野光ヘッドから構成されていることを特徴とする。
【0032】
この発明によれば、記録媒体に記録された情報の再生だけでなく、記録媒体への情報の記録を実現することができる。さらに、情報の再生に用いる微小開口と情報の記録に用いる記録用微小開口との位置関係をデータ記録部と一致させることにより、データ記録部からのデータの再生と同時に、再生しているデータ記録部とは異なるデータ記録部にデータを記録することができる。
【0033】
また、本発明に係る3番目の光情報記録再生装置は、1番目または2番目の光情報記録再生装置において、集光構造は反射膜が形成されたテーパー部と、データ記録部を除く領域に前記照射光を遮光する遮光部とからなることを特徴とする。
【0034】
この発明によれば、集光構造をテーパー形状とすることにより、記録媒体は転写により作成することができるので、記録媒体の大量生産が可能であり、装置としての低コスト化ができる。
【0035】
また、本発明に係る4番目の光情報記録再生装置は、3番目の光情報記録再生装置において、反射膜が遮光部をもかねていることを特徴とする。
【0036】
この発明によれば、テーパー部に形成された反射膜と遮光部が同一となり、記録媒体を製造する工程が1工程少なくなるので記録媒体の大量生産・低コスト化が実現できる。
【0037】
また、本発明に係る5番目の光情報記録再生装置は、1番目または2番目の光情報記録再生装置において、データ記録部は媒体基板の両面に形成され、集光構造は反射膜が形成されたテーパー部であることを特徴とする。
【0038】
この発明によれば、記録媒体の両面にデータ記録部を形成することができるので、1枚の記録媒体あたりの容量を2倍に向上する事ができ、大容量の光情報記録再生装置を提供できる。
【0039】
また、本発明に係る6番目の光情報記録再生装置は、3番目あるいは5番目の光情報記録再生装置において、反射膜が形成されたテーパー部は反射膜が形成された逆錘状のテーパー部であることを特徴とする。
【0040】
この発明によれば、テーパー部の形状を逆錘形状とし、反射膜が形成されたテーパー部の複数の斜面によりデータ記録部に照射光を効率良く集光させることができる記録媒体を用いているので、光源からの光束をより効率よく利用できるために、光源の出力を大きくする必要が無く、光源の大出力化による消費電力の増大や発熱を抑える事ができ、装置の小型化・低消費電力化が容易となる。
【0041】
また、本発明に係る7番目の光情報記録再生装置は、3番目あるいは5番目の光情報記録再生装置において、反射膜が形成されたテーパー部は反射膜が形成されたV溝状のテーパー部であることを特徴とする。
【0042】
この発明によれば、同心円状に作成されたデータ記録部を利用したトラッキング制御を行うことが可能であり、より安定した信号再生を行うことができる。
【発明の効果】
【0043】
以上説明したように、本発明に係る1番目の記録媒体によれば、データ記録部に外部から照射される照射光を集光する集光構造を記録媒体中に持つため、その集光構造による集光効果により、データ記録部に照射される光量が増大し、より強い近視野光がデータ記録部に生成され、この近視野光と近視野光ヘッドを相互作用させて得られる伝播光の強度が増大する。
【0044】
よって、より小さなデータマークの再生が可能であり、より高密度なメモリを実現することができる。あるいは、伝播光強度の増大によりS/N比の向上が図れ、より高速なデータ再生が可能となる。
【0045】
さらに、光源からの光束をより効率よく利用できるために、光源の出力を大きくする必要が無く、光源の大出力化による消費電力の増大や発熱を抑える事ができ、装置の小型化・低消費電力化が容易となる。
【0046】
また、本発明に係る2番目の記録媒体によれば、1番目の記録媒体の効果に加え、集光構造をテーパー形状とすることにより、記録媒体は転写により作成することができるので、記録媒体の大量生産が可能であり低コスト化が容易である。
【0047】
また、本発明に係る3番目の記録媒体によれば、1番目或いは2番目の記録媒体の効果に加え、テーパー部に形成された反射膜と遮光部とが同一となり、記録媒体を製造する工程が1工程少なくなるので、より低コスト化ができる。
【0048】
また、本発明に係る4番目の記録媒体によれば、1番目の記録媒体の効果に加え、記録媒体の両面にデータ記録部を形成することができるので、1枚の記録媒体あたりの容量を2倍に向上する事ができる。記録媒体1枚あたりの容量が2倍に増えても、記録媒体製造コストが極端に増えることはないので、記録媒体の単位記録容量あたりの価格を安価にすることができる。
【0049】
また、本発明に係る5番目の記録媒体によれば、2番目あるいは4番目の記録媒体の効果に加え、テーパー部の形状を逆四角錘形状としているので、反射膜が形成されたテーパー部の4つの斜面によりデータ記録部に照射光を効率良く集光させることができる。よって、光源からの光束をより効率よく利用できるために、光源の出力を大きくする必要が無く、光源の大出力化による消費電力の増大や発熱を抑える事ができ、装置の小型化・低消費電力化が容易となる。
【0050】
また、本発明に係る6番目の記録媒体によれば、2番目あるいは4番目の記録媒体の効果に加え、同心円状に作成されたデータ記録部を利用したトラッキング制御を行うことが可能であり、より安定した信号再生を行うことができる。
【0051】
また、本発明に係る1番目の記録媒体の製造方法によれば、テーパー形状を有する媒体基板を転写により作成することができるので、一度型を作ってしまえば、あとは転写をすることで記録媒体の大量生産が可能であり低コスト化が容易である。
【0052】
また、転写に必要な型もシリコンプロセスで作成でき、波長以下のサイズのデータピットの作成も可能である。
【0053】
また、本発明に係る2番目の記録媒体の製造方法によれば、本発明に係る1番目の記録媒体の製造方法の効果に加え、さらに、型を作成する工程をなくすことができるので、その分のコストダウンが可能である。
【0054】
また、本発明に係る1番目の光情報記録再生装置によれば、データ記録部に外部から照射される照射光を集光する集光構造を記録媒体中に持つため、その集光構造による集光効果により、データ記録部に照射される光量が増大し、より強い近視野光がデータ記録部に生成される。この近視野光と近視野光ヘッドを相互作用させて得られる伝播光の強度が増大する。
【0055】
よって、より小さなデータマークの再生可能が可能であり、より高密度なメモリを実現することができる。あるいは、伝播光強度の増大によりS/N比の向上が図れ、より高速なデータ再生が可能となる。
【0056】
さらに、光源からの光束をより効率よく利用できるために、光源の出力を大きくする必要が無く、光源の大出力化による消費電力の増大や発熱を抑える事ができ、装置の小型化・低消費電力化が容易となる。
【0057】
その上、近視野光ヘッドは、従来の半導体製造プロセスによって形成できるため、大量生産可能で、低コスト化が容易である。また、近視野光ヘッドを同一シリコン基盤上に複数個配列させたマルチヘッドの作成が容易であり、データ記録部に記録されたデータを複数個並列に読み出す事が可能となり、さらなる高速データ再生が可能となる。
【0058】
また、本発明に係る2番目の光情報記録再生装置によれば、1番目の光情報記録再生装置の効果に加え、記録媒体に記録された情報の再生だけでなく、記録媒体への情報の記録を実現することができる。
【0059】
さらに、情報の再生に用いる微小開口と情報の記録に用いる記録用微小開口との位置関係をデータ記録部と一致させることにより、データ記録部からのデータの再生と同時に、再生しているデータ記録部とは異なるデータ記録部にデータを記録することができる。
【0060】
また、記録用と再生用が独立した近視野光ヘッドを用いる場合には、記録媒体への情報の記録と再生を同時に独立して行うことが可能となり、情報の記録再生がより高速にできる。
【0061】
また、本発明に係る3番目の光情報記録再生装置によれば、1番目或いは2番目の光情報記録再生装置の効果に加え、集光構造をテーパー形状とすることにより、記録媒体は転写により作成することができるので、記録媒体の大量生産が可能であり、装置としての低コスト化ができる。
【0062】
また、本発明に係る4番目の光情報記録再生装置によれば、3番目の光情報記録再生装置の効果に加え、テーパー部に形成された反射膜と遮光部が同一となり、記録媒体を製造する工程が1工程少なくなるので記録媒体の大量生産・低コスト化が実現でき、装置としてのさらなる低コスト化ができる。
【0063】
また、本発明に係る5番目の光情報記録再生装置によれば、1番目あるいは2番目の光情報記録再生装置の効果に加え、記録媒体の両面にデータ記録部を形成することができるので、1枚の記録媒体あたりの容量を2倍に向上する事ができる。記録媒体1枚あたりの容量が2倍に増えても、記録媒体製造コストが極端に増えることはないので、記録媒体の単位記録容量あたりの価格を安価にすることができる。
【0064】
また、本発明に係る6番目の記録媒体によれば、3番目あるいは5番目の光情報記録再生装置の効果に加え、テーパー部の形状を逆四角錘形状とし、反射膜が形成されたテーパー部の4つの斜面によりデータ記録部に照射光を効率良く集光させることができる記録媒体を用いているので、光源からの光束をより効率よく利用できるために、光源の出力を大きくする必要が無く、光源の大出力化による消費電力の増大や発熱を抑える事ができ、装置の小型化・低消費電力化が容易となる。
【0065】
また、本発明に係る7番目の記録媒体によれば、3番目あるいは5番目のいずづれかの光情報記録再生装置の効果に加え、同心円状に作成されたデータ記録部を利用したトラッキング制御を行うことが可能であり、より安定した信号再生を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施の形態1による光情報記録再生装置を示す構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1による他の光情報記録再生装置を示す構成図である。
【図3】本発明の実施の形態1による記録媒体を示す構造図である。
【図4】本発明の実施の形態1による記録媒体を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態1による記録媒体の製造方法を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態2による記録媒体を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態2による記録媒体の製造方法を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態3による光情報記録再生装置を示す構成図である。
【図9】本発明の実施の形態3による記録媒体を示す構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
以下、本発明の記録媒体および光情報記録再生装置について、添付の図面を参照して詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1による光情報記録再生装置の構成図を示している。図1の光情報記録再生装置において、近視野光ヘッド1は、シリコン基板2にこれを貫通するテーパー開口部3が微小開口4を有して形成されている。微小開口4は、微小開口4の近傍に生じている近視野光11と相互作用を起こし、かつその結果得られる伝播光12を取り出せるように、例えば数十ナノメートルの径を有している。
【0068】
テーパー開口部3は、例えば半導体製造プロセスにおけるフォトリソグラフィやシリコン異方性エッチングなどを用いた微細加工によって形成される。また、シリコン基板2が、照射光9の波長に対して十分な遮光性を有していない場合には、Au/Cr等の金属膜等の遮光膜が必要であり、スパッタリングや真空蒸着によって得られる。
【0069】
記録媒体6に記録されたデータを読み出すために照射される照射光9は、光源7(例えば半導体レーザー)とコリメートレンズ8から構成される照射光学系により得られる。
【0070】
図3は、実施の形態1による記録媒体の構造図を、図4は実施の形態1による記録媒体の斜視図を示している。
【0071】
記録媒体6は、照射光9の波長に対して透明な媒体基板31に反射膜が形成された逆四角錘状のテーパー部32が形成されている。媒体基板31の上面には、データ記録部33か形成されており、このデータ記録部33を除く領域に照射光9を遮光する遮光部34が形成されている。テーパー部32の反射膜は、データ記録部33に光を集光させることを目的としている。そして、遮光部34は、照射光9や集光光束10が反射膜が形成されているテーパー部32を透過し、データ記録部33に照射されないようにすることを目的としている。このデータ記録部33の大きさは、光の回折限界以下(例えば100nm程度)である。
【0072】
ここで、各々のデータ記録部33には、記録されているデータは1ビットである必要はなく、複数のビットを1つのデータ記録部33形成しておいてもよい。
【0073】
次に、記録媒体6の製造方法の1例について説明する。
【0074】
図5は、記録媒体の製造方法を説明する図を示している。この製造方法は、(1)凸形状を作成する凸形状作成工程と、(2)凸形状を媒体基板に転写する転写工程と、(3)転写工程により作成された凹形状に反射膜および遮光部を作成する反射膜・遮光部作成工程と、(4)記録再生される情報が形成される前記媒体基板表面上のデータデータ記録部作成工程からなる。
(1)凸形状作成工程
まず、Si基板51の上面にSiO252を熱酸化等により作成する。そしてこのSiO252膜上部にフォトレジスト53膜を成膜し、記録媒体6のテーパー部32に相当する部分のみを残すようにフォトレジスト53のパターンを作成する(図5−a)。その後、等方性エッチングを行い、錘状の凸形状54を作成し(図5−b)、不必要なフォトレジスト53を除去する(図5−c)。
(2)転写工程
図5−cを型としてPMMA等のプラスティックやガラス基板等の媒体基板に図5−cの形状を転写する(図5−d、図5−e)。
(3)反射膜・遮光部作成工程
形状が転写された媒体基板31に反射膜が形成された逆すい状のテーパー部32と遮光部34を作成するために、AuやCr等の金属膜を成膜し、テーパー部32にのみ金属膜が形成されるように、データ記録部33以外の部分の金属膜を除去する(図5−f)。
(4)データ記録部作成工程
その後、データ記録部に波長以下のサイズのデータマークを記録するためのデータ記録層や波長以下のサイズのデータマーク形状を形成し記録媒体6とする。
【0075】
次に、図1に示す光情報記録再生装置に、記録媒体6上を配置し、微小開口4において情報再生を行う方法を説明する。ここで記録媒体6は、例えば円盤状の平面基板であり、その上面に近視野光ヘッド1が配置される。円盤状の記録媒体は、図示していないスピンドルモータ等により高速に回転させられている。近視野光ヘッド1の微小開口4と微小開口4の近傍に生じている近視野光11とを相互作用させるために、微小開口4と記録媒体6との間を微小開口4の径程度まで近接させる必要がある。そこで、近視野光ヘッド1と記録媒体6との間に潤滑剤を充填し、近視野光ヘッド1を十分に薄く形成することで、潤滑剤の表面張力を利用して近視野光ヘッド1と記録媒体6との間隔を十分に小さく維持できる。更には、記録媒体6の撓みに対しても追従できる。また、図示しない近視野光ヘッド制御機構によって、微小開口4を記録媒体6上の所望の位置に配置できるように近視野光ヘッド1の位置を制御できる。
【0076】
なお、近視野光ヘッド1と記録媒体6との近接状態を、上記した潤滑剤によらずに、ハードディスク技術に用いられているフライングヘッドと同様にエアベアリングによって制御してもよいし、近視野光学顕微鏡に用いられるAFM制御を行ってもよい。
【0077】
記録媒体6に記録された情報の再生は、先ず、上記した制御により、微小開口4を記録媒体6上の所望の情報再生位置に移動させ、光源7とコリメートレンズ8によりデータ記録部33が形成されている面とは反対の面から照射光9を記録媒体6に照射する。記録媒体6に照射された光束は、反射膜が形成されたテーパー部32と隣り合うテーパー部との間に入射される。そして、これらテーパー部の2つの斜面による集光効果により照射光9
は集光光束10となり、データ記録部33に照射される。そして、再生位置となる微小開口4に近接した記録媒体6のデータ記録部において近視野光11が生成される。このような集光効果により、データ記録部33に照射される光量が増大し、より強い近視野光が生成される。
【0078】
この近視野光11と微小開口4との相互作用によって、そのデータ記録部の記録状態に依存した強度や位相等の特性を伴った伝播光12が、微小開口4を介してテーパー開口部3上方へと取り出される。テーパー部32による集光効果による近視野光強度の増大により、取り出された伝播光12の光強度も増大する。そしてこの伝播光12は、受光部5へと導かれて電気信号に変換され、図示しない信号処理部によってデータ記録部の記録状態が判断される。
【0079】
受光部5に入射される光強度が増大すると、より小さなデータマークサイズの再生可能が可能であり、より高密度なメモリを実現することができる。あるいは、伝播光強度の増大によりS/N比の向上が図れ、より高速なデータ再生が可能となる。
【0080】
本実施の形態では、このテーパー部32の形状を逆四角錘形状としているので、図4に示すようにデータ記録部33と遮光部34がチェッカーパターンのように配置されている。テーパー部32の形状を逆四角錐形状とすることで、反射膜が形成されたテーパー部32の4つの斜面によりデータ記録部33に照射光9を効率良く集光させることができる。
【0081】
更に、近視野光ヘッド1は、従来の半導体製造プロセスによって形成できるため、近視野光ヘッド1を同一シリコン基盤上に複数個配列させることが容易となる。このようなマルチヘッドを作成することで、データ記録部に記録されたデータを複数個並列に読み出す事が可能となり、さらなる高速データ再生が可能となる。
【0082】
また、図2は実施の形態1による他の光情報記録再生装置の構成図である。図1の実施の形態1による光情報記録再生装置の構成図において、照射光学系が異なっている。他の部分については図1の実施の形態と全く同じである。
【0083】
図2の実施の形態の照射光学系は、光源7(例えば半導体レーザー)と、コリメーターレンズ7および集光レンズ14から構成されている。光源7からの光束をコリメーターレンズ8で平行光束にしたのち、集光レンズ13により照射光9として記録媒体6に記録されたデータを読み出すために照射される。その際、データ記録部33に向かって集光された光束となるのでデータ記録部33に照射される光強度は、図1のような平行光束を照射する場合に比べ、増大する。さらに、テーパー部32の斜面に照射光が入射する角度がテーパー部32の斜面に対してより小さくなるので、反射膜が形成されたテーパー部32の斜面による集光効果が大きくなる。
【0084】
よって、図1の実施の形態に比べて、受光部5に入射される光強度がさらに増大し、より小さなデータマークサイズの再生可能が可能であり、より高密度なメモリを実現することができる。あるいは、伝播光強度がより増大することでさらなるS/N比の向上が図れ、より高速なデータ再生が可能となる。
【0085】
ここで、図1および図2の実施の形態において、テーパー部32に成膜された反射膜が、照射光に対して十分な遮光性を有している場合には、遮光部34を省略することもできる。
【0086】
また、本実施の形態ではデータ記録部33の大きさを光の回折限界以下(例えば100nm程度)としては、データ記録部33の大きさはこのサイズに限定されるものではなく、数μmといった大きなサイズでもよい。よって、集光構造としてテーパー状の形状について説明したが、データ記録部のサイズが数μmといった大きなサイズの場合には、集光構造として、集光機能を有すればテーパー形状以外にもレンズ等でも同様の効果が得られる。
【0087】
更に、本実施の形態では近視野光ヘッドとして微小開口を有するテーパー開口部を持つ場合について説明したが、近視野光と相互作用することにより伝播光を得られる構造であればよく、テーパー開口部を持たない微小開口上部に受光素子が位置している様な構造や、微小突起と受光素子の組み合わせたものでも良い。
【0088】
以上説明したように、実施の形態1によれば、近視野光を利用して近視野光ヘッドにより情報を記録再生する光情報再生装置において、照射光の波長に対して透明な媒体基板と媒体基板表面上に情報を記録するデータ記録部とデータ記録部に照射光を集光するための集光構造である反射膜が成膜された逆錘状のテーパー部とからなる記録媒体を用いることにより、受光部に入射される光強度が増大させることができ、より高密度なメモリやより高速なデータ再生が可能となる。さらに、光源からの光束をより効率よく利用できるために、光源の出力を大きくする必要が無く、光源の大出力化による消費電力の増大や発熱を抑える事ができる。それにより、装置の小型化・低消費電力化が容易となる。
【0089】
また、記録媒体は、転写により作成することができるので、記録媒体の大量生産が可能であり、低コスト化も容易である。
【0090】
更に、近視野光ヘッドは、半導体製造プロセスを用いて形成できるため、大量生産に適しており、近視野光ヘッドのアレイ化に対応でき、超高速なデータ再生を行うことができる。
(実施の形態2)
図6は、図1や図2の実施の形態1における記録媒体の他の構造を表す記録媒体の斜視図である。なお、実施の形態1と共通する部分には同一符号を付し、実施の形態1と同じ部分に付いては、説明を省略或いは一部簡単にする。
【0091】
図6は、実施の形態2による記録媒体の斜視図を示している。記録媒体の端面をしめす構造図は図3と全く同じである。実施の形態1での記録媒体との構造の違いは、反射膜が形成された逆すい状のテーパー部の代わりに、一方の長さが長いv溝状のテーパー部62となっている点である。また、データ記録部33の幅は、光の回折限界以下(例えば100nm程度)である。
【0092】
よって、実施の形態1の場合と同様に、記録媒体6は、照射光の波長に対して透明な媒体基板61に反射膜が形成されたv溝のテーパー部62が形成されている。媒体基板61の上面には、データ記録部63か形成されており、このデータ記録部33を除く領域に照射光9を遮光する遮光部64が形成されている。また、この1方向が長いデータ記録部63には、複数のビットのデータが記録されて
いる。
【0093】
次に、記録媒体6の製造方法の1例について説明する。実施の形態1で説明した記録媒体6の製造方法を用いても図6に示す記録媒体は製造可能である。ここでは、他の製造方法について説明する。この製造方法は、(1)凹形状を作成する凹形状作成工程と、(2)凹形状に反射膜および遮光部を作成する反射膜・遮光部作成工程と、(3)記録再生される情報が形成される前記媒体基板表面上のデータデータ記録部作成工程からなる。
(1)凹部形状作成工程
図7は、実施の形態2による記録媒体の製造方法を説明する図である。PMMA等のプラスティックやガラス基板等の平行平面基板形状の媒体基板61(図7−a)にグレーティング作成等で用いられる超精密切削技術により、凹部形状として、V溝状のテーパー部62を切削することにより作成する(図7−b)。
(2)反射膜・遮光部作成工程
テーパー部62の形状が切削された媒体基板61に反射膜が形成されたV溝状のテーパー部62と遮光部64を作成するために、AuやCr等の金属膜を成膜し、テーパー部62にのみ金属膜が形成されるように、データ記録部63以外の部分の金属膜を除去する(図7−c)。
(3)データ記録部作成工程
その後、データ記録部に波長以下のサイズのデータマークを記録するためのデータ記録層や波長以下のサイズのデータマーク形状を形成し記録媒体6とする。
【0094】
次に実施の形態1で説明した図1の光情報記録再生装置に、以上に説明した図6の記録媒体を配置し、微小開口4において情報再生を行う方法について説明する。もちろん、図2の光情報記録再生装置を用いることもできる。
【0095】
記録媒体6は、例えば円盤状の平面基板であり、その上面に近視野光メモリヘッド1が配置される。この円盤状の平面基板である記録媒体6は、図6に示すようなV溝状のテーパー部62を有しており、円盤状の基板の回転方向に対して、CDやアナログレコードのように、このV溝状のテーパー部62が作成されており、データ記録部63は記録媒体6の回転軸を中心として同心円状に作成されている。このような記録媒体6を用いた情報の再生方法は、実施の形態1と全く同様であるので、説明を省略する。
【0096】
また、近視野光ヘッド1をデータ記録部上に正確に追跡させるトラッキング信号検出方法として、3スポット型やウォブリング型等がある。ここでは、ウォブリング型のトラッキング信号検出方法について説明する。
【0097】
同心円状のデータ記録部63が形成された記録媒体6に対して、微小開口4を有する近視野光ヘッド1を微小に揺動し、データ記録部上のデータピットを微小開口4が通過する時に得られる各データピットからの信号の差を取ることでトラッキング信号を得ることができる。このようにして、同心円状に作成されたデータ記録部63と遮光部64を利用しトラッキング制御を行うことも可能である。
【0098】
また、実施の形態1と同様に、本実施の形態においてもデータ記録部33の幅を光の回折限界以下(例えば100nm程度)としているが、データ記録部33の大きさはこのサイズに限定されるものではなく、数μmといった大きなサイズでもよい。よって、集光構造としてテーパー状の形状について説明したが、データ記録部のサイズが数μmといった大きなサイズの場合には、集光構造として、集光機能を有すればテーパー形状以外にもレンズ等でも同様の効果が得られる。
【0099】
更に、本実施の形態では近視野光ヘッドとして微小開口を有するテーパー開口部を持つ場合について説明したが、近視野光と相互作用することにより伝播光を得られる構造であればよく、テーパー開口部を持たない微小開口上部に受光素子が位置している様な構造や、微小突起と受光素子の組み合わせたものでも良い。
【0100】
また、本実施の形態において、テーパー部62に成膜された反射膜が、照射光に対して十分な遮光性を有している場合には、遮光部64を省略することもできる。
【0101】
以上説明したように、実施の形態2によれば、近視野光を利用して近視野光ヘッドにより情報を記録再生する光情報再生装置において、照射光の波長に対して透明な媒体基板と媒体基板表面上に情報を記録するデータ記録部とデータ記録部に照射光を集光するための集光構造である反射膜が成膜されたV溝状のテーパー部とからなる記録媒体を用いることにより、受光部に入射される光強度が増大させることがでる。
【0102】
よって、実施の形態1と同様に、より高密度なメモリやより高速なデータ再生が可能となる。さらに、光源からの光束をより効率よく利用できるために、光源の出力を大きくする必要が無く、光源の大出力化による消費電力の増大や発熱を抑える事ができる。それにより、装置の小型化・低消費電力化が容易となる。
【0103】
また、近視野光ヘッドは、半導体製造プロセスを用いて形成できるため、大量生産に適しており、近視野光ヘッドのアレイ化に対応でき、超高速なデータ再生を行うことができる。
【0104】
更に実施の形態1の効果に加え、同心円状に作成されたデータ記録部63と遮光部64を利用したトラッキング制御を行うことも可能であり、より安定した信号再生を行うことができる。
(実施の形態3)
図8は、実施の形態3による光情報記録再生装置の構成図を示している。なお、実施の形態1や実施の形態2と共通する部分には同一符号を付し、実施の形態1や実施の形態2と同じ部分に付いては、説明を省略或いは一部簡単にする。
【0105】
図8の光情報記録再生装置において、近視野光ヘッド81は、シリコン基板82にこれを貫通するテーパー開口部3と記録用テーパー開口部83が微小開口4と記録用微小開口84をそれぞれ有して形成されている。
【0106】
微小開口4は記録媒体6に記録された情報を読みだすために用いられ、記録用微小開口84は、記録媒体6に情報を記録するために用いられている。
【0107】
記録媒体6に記録された情報を再生する為の微小開口4は、微小開口4の近傍に生じている近視野光1と相互作用を起こし、かつその結果得られる伝播光12を取り出せるように、例えば数十ナノメートルの径を有している。記録媒体6に記録されたデータを読み出すために照射される照射光9は、光源7(例えば半導体レーザー)とコリメートレンズ8から構成される照射光学系により得られる。
【0108】
また、記録用光源85は、記録レンズ86により記録用テーパー開口部83に光を照射する。そして記録媒体6に情報を記録する為の微小開口84は、記録用微小開口84近傍に近視野光が生成されるように、例えば数十ナノメートルの径を有している。この記録用微小開口84近傍の近視野光は、書き込み動作を行うことで、記録媒体6に情報を記録するための書き込み光となる。
【0109】
テーパー開口部3および記録用テーパー開口部83は、例えば半導体製造プロセスにおけるフォトリソグラフィやシリコン異方性エッチングなどを用いた微細加工によって形成される。また、シリコン基板82が、照射光9や記録用光源85の波長に対して十分な遮光性を有していない場合には、Au/Cr等の金属膜等の遮光膜が必要であり、スパッタリングや真空蒸着によって得られる。
【0110】
また、記録媒体の構造としては、図4の実施の形態1で用いた記録媒体6や図6の実施の形態2で用いた記録媒体6を用いることができる。ここで、情報の記録を行う為には、データ記録部64が情報の記録ができるデータ記録層を有している必要がある。
【0111】
ここでは、図6の記録媒体6を用いた場合の実施の形態について説明する。
【0112】
図8の光情報記録再生装置において、視野光メモリヘッド81を図6の記録媒体6上に配置し、微小開口4において情報再生を行う方法は、実施の形態2の場合と全く同じであるので、説明を省略する。
【0113】
次に、視野光メモリヘッド81を記録媒体6上に配置し、記録用微小開口84において情報の記録を行う方法を説明する。
【0114】
情報の再生時と同様に、円盤状の記録媒体は、図示していないスピンドルモータ等により高速に回転させられている。そして、近視野光ヘッド81の記録用微小開口84の近傍に生じている近視野光と記録媒体6とを相互作用させるために、記録用微小開口84と記録媒体6との間を記録用微小開口84の径程度まで近接させる必要がある。そして、記録媒体6から情報の再生をする時と同様な手法により、近視野光ヘッド81と記録媒体6との間隔を十分に小さく維持する。また、図示しない近視野光ヘッド制御機構によって、記録用微小開口84を記録媒体6上の所望の位置に配置できるように近視野光ヘッド81の位置を制御する。
【0115】
記録媒体6に情報を記録するには、先ず、上記した制御により、微小開口84を記録媒体6のデータ記録部63上の所望の情報記録位置に移動させる。そして、記録用光源85と記録用レンズ86を用いて、記録用テーパー開口部83に光を照射する。すると、記録用微小開口84近傍に近視野光が生成され、書き込み動作を行うことにより、この近視野と記録媒体6との相互作用により所望の位置に情報を記録する事ができる。
【0116】
さらに、情報の再生に用いる微小開口4と情報の記録に用いる記録用微小開口84との位置関係をデータ記録部と一致させることにより、データ記録部からのデータの再生と同時に、再生しているデータ記録部とは異なるデータ記録部にデータを記録することができる。
【0117】
ここで、本実施の形態では、情報の記録と再生を1つの近視野光ヘッドとして実現しているが、再生用の近視野光ヘッドと記録用の近視野光ヘッドというように分けることもできる。そうした場合には、情報の記録と再生を同時に独立して行うこともできる。
【0118】
以上説明したように、実施の形態2と同様に、近視野光を利用して近視野光ヘッドにより情報を記録再生する光情報再生装置において、照射光の波長に対して透明な媒体基板と媒体基板表面上に情報を記録するデータ記録部とデータ記録部に照射光を集光するための集光構造である反射膜が成膜されたV溝状のテーパー部とからなる記録媒体を用いることにより、受光部に入射される光強度が増大させることがでる。
【0119】
さらに、本実施の形態によれば、実施の形態1および実施の形態2における情報再生だけでなく、情報の記録も同時に行うことがきる。
(実施の形態4)
図9は、実施の形態4による光情報記録再生装置で用いる記録媒体の構造図を示している。本実施の形態の記録媒体は、図1や図2、図3の実施の形態の記録媒体6としても用いることができる。
【0120】
図9の記録媒体6は、実施の形態1での記録媒体(図3、図4)や実施の形態2での記録媒体(図6)において、データ記録部を記録媒体の両面に配置する場合の実施の形態である。
【0121】
情報を再生する為の照射光や情報を記録する為の記録光の波長に対して透明な媒体基板91に反射膜が形成されたテーパー部92が媒体基板91を貫き形成されている。この反射膜は、情報を再生する為の照射光や情報を記録する為の記録光の波長に対して十分な遮光性を有している。そして、媒体基板91の上面には上部データ記録部93が、媒体基板91の下面には下部データ記録部94が形成されている。この上部データ記録部93と下部データ記録部94のそれぞれの幅は用いる光の波長以下、例えば数十nm程度の大きさである。
【0122】
このように上部データ記録部93と下部データ記録部94の幅を用いる光の波長程度以下の大きさにすると、媒体基板91の下側から照射光を照射した場合、下部データ記録部94とその隣りの下部データ記録部との間に照射された光は、テーパー部92による集光効果により上部データ記録部93に照射され、この上部データ記録部近傍に近視野光を生成する。
【0123】
それに反し、下部データ記録部94に下側から照射光が照射された場合には、下部データ記録部94の大きさが波長以下、例えば数十nm程度であるために、光の回折限界を越えているので、下部データ記録部94を透過し、媒体基板91の上面まで光が伝播することができない。よって、媒体基板91の下側から照射光を照射すると、媒体基板91の上面では、上部データ記録部93近傍に近視野光が生成され、それ以外の近視野光や媒体基板を透過する伝播光はない。
【0124】
同様に、媒体基板91の上側から照射光を入射した場合には、下部データ記録部94近傍にのみに近視野光が生成されるだけとなる。
【0125】
よって、記録媒体表面に生成された近視野光と、近視野光ヘッドの微小開口との相互作用による伝播光を受光素子で受光することにより、記録媒体に記録されている情報を再生することが可能となる。よって、情報の記録面が両面となり、記録媒体1枚あたりの記録容量が2倍となる。
【0126】
図1や図2、図5の実施の形態において、説明した近視野光ヘッドと照射光学系を記録媒体の両側に配置することにより、両面を同時に再生、あるいは記録することが可能となる。
【0127】
以上説明したように、実施の形態1、実施の形態2および実施の形態3と同様に、近視野光を利用して近視野光ヘッドにより情報を記録再生する光情報再生装置において、照射光の波長に対して透明な媒体基板と媒体基板表面上に情報を記録するデータ記録部とデータ記録部に照射光を集光するための集光構造である反射膜が成膜されたテーパー部とからなる記録媒体を用いることにより、受光部に入射される光強度が増大させることがでる。そして実施の形態3で説明したように情報再生だけでなく、情報の記録も同時に行うことができる。
【0128】
さらにその上、記録媒体の両面にデータ記録部を形成することができるので、1枚の記録媒体あたりの容量を2倍に向上する事が可能である。
【符号の説明】
【0129】
1、81 近視野光ヘッド
2、82 シリコン基板
3 テーパー開口部
4 微小開口
5 受光素子
6 記録媒体
7 光源
8 コリメートレンズ
9、14 照射光
10、15 集光光束
11 近視野光
12 伝播光
13 集光レンズ
31、61、91 媒体基板
32、62、92 テーパー部
33、63 データ記録部
34、64 遮光部
51 Si基板
52 SiO2
53 フォトレジスト
54 凸形状
83 記録用テーパー開口部
84 記録用微小開口
85 記録用光源
86 記録用レンズ
93 上部データ記録部
94 下部データ記録部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近視野光を利用して近視野光ヘッドにより情報を記録再生する記録媒体において、
照射光の波長に対して透明な媒体及び前記近視野光を生成する為に照射光を集める集光構造を有する媒体基板を有し、
前記媒体基板の両面はそれぞれ、前記集光構造の一部と、記録再生される情報が形成されるとともに前記集光構造により集められた前記照射光が照射されるデータ記録部とを有し、
前記集光構造は、前記媒体基板の表面から厚さ方向に向かってテーパー形状を有する反射膜が形成されたテーパー部であり、
前記テーパー部は、逆錐状であり、
前記媒体基板の両面で情報を記録再生することを特徴とする記録媒体。
【請求項2】
近視野光を利用して近視野光ヘッドにより情報を記録再生する光情報記録再生装置において、
光源とレンズから構成され前記近視野光を生成する為の照射光を照射する照射光学系と、
前記照射光の波長に対して透明な媒体及び前記近視野光を生成する為に前記照射光を集める集光構造を有する媒体基板を有し、前記媒体基板の両面はそれぞれ、前記集光構造の一部と、記録再生される情報が形成されるとともに前記集光構造により集められた前記照射光が照射されるデータ記録部とを有し、前記媒体基板の両面で情報を記録再生する記録媒体と、
前記データ記録部に形成された情報を再生するための少なくとも1つの近視野光ヘッドとから構成され、
前記集光構造は、前記媒体基板の表面から厚さ方向に向かってテーパー形状を有する反射膜が形成されたテーパー部であり、
前記テーパー部は、逆錐状であることを特徴とする光情報記録再生装置。
【請求項3】
前記データ記録部に情報を記録するための少なくとも1つの近視野光ヘッドを有することを特徴とする請求項2に記載の光情報記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−18444(P2011−18444A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212455(P2010−212455)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【分割の表示】特願2008−207807(P2008−207807)の分割
【原出願日】平成11年10月6日(1999.10.6)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】