記録媒体処理装置、記録媒体処理装置の制御方法、及びプログラム
【課題】磁気インク文字の認識に際し、認識率を向上する。
【解決手段】磁気ヘッド54と記憶部78と制御部71とを備えた小切手読取装置1は、記憶部78に記憶された複数の文字種類の基準波形における、第1ピークP1と第2ピークP2との間の伸縮点E1、及び第3ピークP3と第4ピークP4との間の伸縮点E2の直前にデータを挿入するか、又は、第1ピークP1と第2ピークP2との間の伸縮点E1、及び第3ピークP3と第4ピークP4との間の伸縮点E2のデータを削除して、伸縮補正波形を形成し、小切手4に記録された磁気インク文字を磁気ヘッド54により読み取って得られる検出信号波形と、伸縮補正波形とを比較して磁気インク文字認識を実行する。
【解決手段】磁気ヘッド54と記憶部78と制御部71とを備えた小切手読取装置1は、記憶部78に記憶された複数の文字種類の基準波形における、第1ピークP1と第2ピークP2との間の伸縮点E1、及び第3ピークP3と第4ピークP4との間の伸縮点E2の直前にデータを挿入するか、又は、第1ピークP1と第2ピークP2との間の伸縮点E1、及び第3ピークP3と第4ピークP4との間の伸縮点E2のデータを削除して、伸縮補正波形を形成し、小切手4に記録された磁気インク文字を磁気ヘッド54により読み取って得られる検出信号波形と、伸縮補正波形とを比較して磁気インク文字認識を実行する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体処理装置、記録媒体処理装置の制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
小切手等の記録媒体に記録された磁気インク文字を読み取る磁気ヘッドを備え、搬送路を搬送される記録媒体の磁気インク文字を読み取って、磁気インク文字を認識する記録媒体処理装置(小切手類読取装置)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような記録媒体処理装置では、磁気インク文字を読み取って得られる信号波形データから、1つの磁気インク文字に対応する範囲で文字波形データを切り出して、切り出した文字波形データの波形と規格で定められた文字種類の基準波形とを比較して磁気インク文字認識を行い、磁気インク文字の文字種類を判別している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−206362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、市場に流通している記録媒体の中には、磁気インク文字の印刷のばらつき等により、文字の線幅が標準値よりも太いものや細いものが存在する。文字の線幅が異なると、磁気インク文字を読み取って得られる信号波形データの波形において、線幅に対応するプラスピーク(値が正側の変曲点)とマイナスピーク(値が負側の変曲点)との間隔も異なってくる。そのため、このような信号波形データの波形と基準波形とを比較すると、両者の間の差異量が大きくなってしまい、磁気インク文字認識において認識率が低下するという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例に係る記録媒体処理装置は、記録媒体に記録された磁気インク文字を磁気的に読み取る読取部と、規格で定められた複数の文字種類の基準波形を記憶する記憶部と、前記読取部と前記記憶部とを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記記憶部に記憶された複数の文字種類の基準波形における、プラス側のプラスピークと、前記プラスピークの次に位置するマイナス側のマイナスピークとの間にデータを挿入するか、又は、前記プラスピークと前記マイナスピークとの間のデータを削除して、伸縮補正波形を形成し、前記記録媒体の前記磁気インク文字を前記読取部により読み取って得られる検出信号波形と、前記伸縮補正波形とを比較して磁気インク文字認識を実行することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、プラスピークとその次に位置するマイナスピークとの間にデータを挿入することで、プラスピークとマイナスピークとの間隔が広がるので、磁気インク文字の線幅が通常よりも太い場合に対応して基準波形を補正した伸縮補正波形が得られる。また、プラスピークとその次に位置するマイナスピークとの間のデータを削除することでプラスピークとマイナスピークとの間隔が狭まるので、磁気インク文字の線幅が通常よりも細い場合に対応して基準波形を補正した伸縮補正波形が得られる。複数の文字種類のそれぞれについて形成されたこれらの伸縮補正波形と、検出信号波形とを比較して磁気インク文字認識を実行するので、文字の線幅が通常よりも太い場合や細い場合でも文字種類を判別することが可能となる。これにより、磁気インク文字の印刷のばらつき等により、文字の線幅が印刷規格の標準値よりも太い場合や細い場合でも、磁気インク文字認識における認識率を向上させることができる。
【0009】
[適用例2]上記適用例に係る記録媒体処理装置であって、前記制御部は、前記伸縮補正波形を形成する際、前記プラスピークと前記マイナスピークとの間にデータを挿入する場合は、前記マイナスピークと、前記マイナスピークの次に位置するプラスピークとの間のデータを削除し、前記プラスピークと前記マイナスピークとの間のデータを削除する場合は、前記マイナスピークと、前記マイナスピークの次に位置する前記プラスピークとの間にデータを挿入することが好ましい。
【0010】
この構成によれば、プラスピークとマイナスピークとの間にデータを挿入する場合に、マイナスピークとその次に位置するプラスピークとの間のデータを削除するので、磁気インク文字の線幅が通常よりも太いことで線同士の間隔が狭くなることに対応して補正した伸縮補正波形が得られる。また、プラスピークとマイナスピークとの間のデータを削除する場合に、マイナスピークとその次に位置するプラスピークとの間にデータを挿入するので、磁気インク文字の線幅が通常よりも細いことで線同士の間隔が広くなることに対応して補正した伸縮補正波形が得られる。複数の文字種類のそれぞれについて形成されたこれらの伸縮補正波形と、検出信号波形とを比較して磁気インク文字認識を実行するので、文字の線幅が通常よりも太い場合や細い場合における認識率をより向上させることができる。
【0011】
[適用例3]上記適用例に係る記録媒体処理装置であって、前記制御部は、前記伸縮補正波形を形成する際、前記基準波形の最後のプラスピークと最後のマイナスピークとの間にデータを挿入する場合は、前記最後のマイナスピークと、前記最後のマイナスピークの次に位置する終端部との間のデータを削除し、前記最後のプラスピークと前記最後のマイナスピークとの間のデータを削除する場合は、前記最後のマイナスピークと、前記最後のマイナスピークの次に位置する前記終端部との間にデータを挿入することが好ましい。
【0012】
この構成によれば、基準波形の最後のプラスピークと最後のマイナスピークとの間にデータを挿入する場合に、最後のマイナスピークとその次に位置する終端部との間のデータを削除するので、磁気インク文字の線幅が通常よりも太いことで線同士の間隔が狭くなることに対応して補正した伸縮補正波形が得られる。また、最後のプラスピークと最後のマイナスピークとの間のデータを削除する場合に、最後のマイナスピークとその次に位置する終端部との間にデータを挿入するので、磁気インク文字の線幅が通常よりも細いことで線同士の間隔が広くなることに対応して補正した伸縮補正波形が得られる。波形の終端部に係る部分においても、複数の文字種類のそれぞれについて形成されたこれらの伸縮補正波形と、検出信号波形とを比較して磁気インク文字認識を実行するので、文字の線幅が通常よりも太い場合や細い場合における認識率をより向上させることができる。
【0013】
[適用例4]上記適用例に係る記録媒体処理装置であって、前記制御部は、前記伸縮補正波形を形成する際、前記基準波形における前記プラスピークと前記マイナスピークとの中央位置の近傍、又は、波形の値がゼロとなる位置の近傍において、前記データの挿入又は削除を行うことが好ましい。
【0014】
この構成によれば、磁気インク文字の線幅が通常よりも太い場合や細い場合に影響を受けるプラスピークとマイナスピークとの中央位置の近傍や、波形の値がゼロとなる位置の近傍においてデータの挿入又は削除を行うので、文字の線幅が通常よりも太い場合や細い場合に対応して、基準波形をより効果的に補正することができる。
【0015】
[適用例5]上記適用例に係る記録媒体処理装置であって、前記制御部は、前記磁気インク文字認識を実行する際、前記検出信号波形に対して前記伸縮補正波形を所定の距離スライドさせて比較することが好ましい。
【0016】
この構成によれば、磁気インク文字認識を実行する際、検出信号波形に対して伸縮補正波形を所定の距離スライドさせて比較するので、磁気的な読み取り等の処理に起因して読み取った波形にズレが発生した場合でも、文字種類を判別することが可能となる。これにより、磁気インク文字の線幅のばらつきと波形のズレとが複合して発生した場合でも、認識率を向上させることができる。
【0017】
[適用例6]本適用例に係る記録媒体処理装置の制御方法は、記録媒体に記録された磁気インク文字を磁気的に読み取る読取部と、規格で定められた複数の文字種類の基準波形を記憶する記憶部と、を備えた記録媒体処理装置の制御方法であって、前記記憶部に記憶された複数の文字種類の基準波形における、プラス側のプラスピークと、前記プラスピークの次に位置するマイナス側のマイナスピークとの間にデータを挿入するか、又は、前記プラスピークと前記マイナスピークとの間のデータを削除して、伸縮補正波形を形成し、前記記録媒体の前記磁気インク文字を前記読取部により読み取って得られる検出信号波形と、前記伸縮補正波形とを比較して磁気インク文字認識を実行することを特徴とする。
【0018】
この方法によれば、プラスピークとその次に位置するマイナスピークとの間にデータを挿入することで、プラスピークとマイナスピークとの間隔が広がるので、磁気インク文字の線幅が通常よりも太い場合に対応して基準波形を補正した伸縮補正波形が得られる。また、プラスピークとその次に位置するマイナスピークとの間のデータを削除することでプラスピークとマイナスピークとの間隔が狭まるので、磁気インク文字の線幅が通常よりも細い場合に対応して基準波形を補正した伸縮補正波形が得られる。複数の文字種類のそれぞれについて形成されたこれらの伸縮補正波形と、検出信号波形とを比較して磁気インク文字認識を実行するので、文字の線幅が通常よりも太い場合や細い場合でも文字種類を判別することが可能となる。これにより、磁気インク文字の印刷のばらつき等により、文字の線幅が印刷規格の標準値よりも太い場合や細い場合でも、磁気インク文字認識における認識率を向上させることができる。
【0019】
[適用例7]本適用例に係るプログラムは、記録媒体に記録された磁気インク文字を磁気的に読み取る読取部と、規格で定められた複数の文字種類の基準波形を記憶する記憶部と、を備えた記録媒体処理装置の各部を制御する制御部により実行されるプログラムであって、前記制御部を、前記記憶部に記憶された複数の文字種類の基準波形における、プラス側のプラスピークと、前記プラスピークの次に位置するマイナス側のマイナスピークとの間にデータを挿入するか、又は、前記プラスピークと前記マイナスピークとの間のデータを削除して、伸縮補正波形を形成し、前記記録媒体の前記磁気インク文字を前記読取部により読み取って得られる検出信号波形と、前記伸縮補正波形とを比較して磁気インク文字認識を実行する手段として機能させることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、プラスピークとその次に位置するマイナスピークとの間にデータを挿入することで、プラスピークとマイナスピークとの間隔が広がるので、磁気インク文字の線幅が通常よりも太い場合に対応して基準波形を補正した伸縮補正波形が得られる。また、プラスピークとその次に位置するマイナスピークとの間のデータを削除することでプラスピークとマイナスピークとの間隔が狭まるので、磁気インク文字の線幅が通常よりも細い場合に対応して基準波形を補正した伸縮補正波形が得られる。複数の文字種類のそれぞれについて形成されたこれらの伸縮補正波形と、検出信号波形とを比較して磁気インク文字認識を実行するので、文字の線幅が通常よりも太い場合や細い場合でも文字種類を判別することが可能となる。これにより、磁気インク文字の印刷のばらつき等により、文字の線幅が印刷規格の標準値よりも太い場合や細い場合でも、磁気インク文字認識における認識率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態に係る小切手読取装置の外観斜視図である。
【図2】小切手読取装置の内部構造を示す図である。
【図3】小切手読取装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図4】(A)は小切手の表面側の概略図であり、(B),(C),(D)は磁気インク文字列の一例を示す図である。
【図5】(A)は磁気インク文字の一例を示す図であり、(B)は文字波形データの一例を示す図である。
【図6】文字認識部の動作を示すフローチャートである。
【図7】差異量を説明する図である。
【図8】(A)は伸縮補正波形データの一例を示す図であり、(B)は文字波形データと伸縮補正波形データとを比較して示す図である。
【図9】文字種類「8」の基準波形データを示す図である。
【図10】(A)は文字波形データと基準波形データとを比較して示す図であり、(B)は文字波形データと伸縮補正波形データとを比較して示す図である。
【図11】文字波形データとスライドさせた伸縮補正波形データとを比較して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の一実施形態である記録媒体処理装置、記録媒体処理装置の制御方法、及び、プログラムについて図面を参照して説明する。なお、参照する各図面において、構成をわかりやすく示すため、各構成要素の寸法の比率、角度等が異なる場合がある。
【0023】
(第1の実施形態)
<記録媒体処理装置>
本実施形態に係る記録媒体処理装置を説明する。本実施形態に係る記録媒体処理装置は、小切手読取装置1とホストコンピューター70とで構成される。
【0024】
まず、本実施形態に係る小切手読取装置1の概略構成を説明する。図1は、本実施形態に係る小切手読取装置1の外観斜視図である。
小切手読取装置1は、シート状の記録媒体である小切手4に対し、小切手4に記録された磁気インク文字(MICR文字)の読み取り、小切手4の両面の画像の読み取り、小切手4に対する裏書きに係る所定の画像の記録等の処理を行う装置である。
【0025】
小切手読取装置1は、本体ケース2と、本体ケース2の上側に被せた蓋ケース3とを備えており、この内部に各部品が組み込まれた構成となっている。
蓋ケース3には、上から見た場合にU形状をした細幅の垂直溝からなる小切手4の搬送路5が形成されている。搬送路5の一端は広幅の垂直溝からなる小切手供給部6に連通しており、搬送路5の他端は左右に分岐して、それぞれ広幅の垂直溝からなる第1小切手排出部7及び第2小切手排出部8に繋がっている。
【0026】
小切手4の表面4aには、所定の模様が形成された背景に、金額、振出人、番号、サインなどが記載されており、その下端部分には、図1に示すように、長辺方向に延びる磁気インク文字列4Aが記録されている。磁気インク文字列4Aは、複数の磁気インク文字が横方向に並んで形成されている。
また、小切手4の裏面4bには、裏書き欄が形成されている。この裏書き欄には、後述する記録装置56によって、裏書きに係る所定の画像が記録される。
【0027】
小切手4は、上端4eが上方に位置し下端4fが下方に位置するように上下方向が揃えられ、かつ、表面4aがU形状の搬送路5の外側を向くように表裏が揃えられた状態(図1に示す状態)で、小切手供給部6に挿入される。小切手供給部6に挿入された小切手4は、後端4dを最初として搬送路5に送り出される。
【0028】
小切手供給部6から送り出された小切手4は、搬送路5に沿って搬送されながら、表面4aの画像である表面画像、及び、裏面4bの画像である裏面画像が読み取られ、さらに、表面4aに記録されている磁気インク文字列4Aが磁気的に読み取られる。そして、磁気インク文字列4Aの読み取りが成功した小切手4については、裏書きに係る所定の画像の記録が行われた後に、第1小切手排出部7に排出される。
【0029】
一方、磁気インク文字列4Aの読み取りが失敗した小切手4については、裏書きに係る所定の画像が記録されることなく、第2小切手排出部8に排出される。第2小切手排出部8に排出された小切手4は、読み取りが失敗した原因の究明や、再読み取り等の処理が行われる。
【0030】
図2は小切手読取装置1の内部構造を示す図である。
小切手供給部6には、小切手4を搬送路5に送り出すための小切手送り出し機構10が配置されている。小切手送り出し機構10は、繰り出しローラー11、送り出しローラー12、送り出しローラー12に押し付けられているリタードローラー13、送り出し用モーター14、及び小切手押し付け用のホッパー15を備えている。
【0031】
送り出し用モーター14が駆動すると、小切手供給部6に入れた小切手4がホッパー15によって繰り出しローラー11の側に押し付けられ、この状態で、繰り出しローラー11及び送り出しローラー12が同期回転する。
【0032】
繰り出しローラー11によって小切手4は送り出しローラー12とリタードローラー13との間に送り込まれる。リタードローラー13には所定の回転負荷が与えられており、送り出しローラー12に直接接触している一枚の小切手4のみが他の小切手4から分離されて搬送路5に送り出される。
【0033】
搬送路5は上述したようにU形状をしており、小切手供給部6に繋がっている直線状の上流側搬送路部分21と、第1小切手排出部7、第2小切手排出部8に繋がっており、僅かに折れ曲がった状態で延びている下流側搬送路部分23と、これらの間を繋ぐ湾曲搬送路部分22とを備えている。
【0034】
小切手供給部6から搬送路5に送り出された小切手4を当該搬送路5に沿って搬送する小切手搬送機構30は、第1搬送ローラー31〜第6搬送ローラー36と、これらに押し付けられて連れ回りする第1押圧ローラー41〜第6押圧ローラー46と、第1搬送ローラー31〜第6搬送ローラー36を回転駆動するための搬送用モーター37とを備えている。第1搬送ローラー31〜第6搬送ローラー36は同期して回転するようになっている。搬送用モーター37として、例えばステッピングモーターが用いられている。このため、ステッピングモーターを駆動するステップ数により、小切手4の搬送量を知ることができる。
【0035】
第1搬送ローラー31〜第3搬送ローラー33は、上流側搬送路部分21における上流端、その中程の位置、及び湾曲搬送路部分22との境界位置にそれぞれ配置されている。第4搬送ローラー34は湾曲搬送路部分22における下流側の位置に配置されている。第5搬送ローラー35及び第6搬送ローラー36は、下流側搬送路部分23における中程の位置及び下流端にそれぞれ配置されている。
【0036】
上流側搬送路部分21における第1搬送ローラー31及び第2搬送ローラー32の間には、その上流側から磁気インク文字着磁用の磁石51、表面側コンタクトイメージセンサー52、及び、裏面側コンタクトイメージセンサー53が配置されている。表面側コンタクトイメージセンサー52は、搬送路5を搬送される小切手4の表面4aに対向し、表面4aの画像である表面画像を読み取る。裏面側コンタクトイメージセンサー53は、搬送路5を搬送される小切手4の裏面4bに対向し、裏面4bの画像である裏面画像を読み取る。
【0037】
また、第2搬送ローラー32及び第3搬送ローラー33の間には、磁気インク文字を読み取る読取部としての磁気ヘッド54が配置されており、磁気ヘッド54には、当該ヘッドに小切手4を押し付けるための押圧ローラー55が対峙している。
下流側搬送路部分23における第5搬送ローラー35及び第6搬送ローラー36の間には、裏書きに係る所定の画像の記録用の記録装置56が配置されている。記録装置56は、搬送路5を搬送される小切手4の裏面4bの適切な位置に、適切な方向で所定の画像を記録可能な、印刷ヘッドやスタンプ等を備えている。
【0038】
搬送路5には、小切手搬送制御のための各種センサーが配置されている。磁石51の手前側の位置には、送り出される小切手4の長さを検出するための用紙長検出器61が配置されている。裏面側コンタクトイメージセンサー53と第2搬送ローラー32との間には、小切手4が重なった状態で搬送されていることを検出するための重送検出器62が配置されている。第4搬送ローラー34の手前側の位置にはジャム検出器63が配置されており、ジャム検出器63によって所定時間以上に亘って継続して小切手4が検出されている場合には、搬送路5に小切手4が詰まった紙詰まり状態になったことが分かる。
【0039】
第5搬送ローラー35の手前側の位置には、記録装置56によって裏書きされる小切手4の有無を検出するための印刷検出器64が配置されている。さらに、第6搬送ローラー36の下流側の位置、すなわち、搬送路5から第1小切手排出部7、第2小切手排出部8に分岐している分岐路9の位置には、これらに排出される小切手4を検出するための排出検出器65が配置されている。
【0040】
分岐路9には、駆動モーター67(図3参照)によって切り替え操作される切り替え板66が配置されている。切り替え板66は、第1小切手排出部7、第2小切手排出部8に対して、搬送路5の下流端を選択的に切り替え、小切手4を選択された排出部に導くための部材である。
【0041】
図3は小切手読取装置1の機能的構成を示すブロック図である。
制御部71は、後述するホストコンピューター70のホスト側制御部73の制御の下、小切手読取装置1の各部を中枢的に制御するものであり、CPUや、ROM、RAM、その他の周辺回路等を備えている。
【0042】
制御部71は、ホスト側制御部73の制御の下、送り出し用モーター14、搬送用モーター37を駆動して小切手4(図1参照)を一枚ずつ搬送路5に送り出させ、送り出された小切手4を搬送路5に沿って搬送させる。制御部71による小切手4の搬送制御は、搬送路5に配置されている用紙長検出器61、重送検出器62、ジャム検出器63、印刷検出器64及び排出検出器65からの検出信号に基づいて行われる。
【0043】
小切手4の搬送に伴って、表面側コンタクトイメージセンサー52、及び、裏面側コンタクトイメージセンサー53は、搬送路5を搬送される小切手4の表面の画像、裏面の画像をそれぞれ読み取り、読み取った画像を示す画像データを制御部71に出力する。制御部71は、これら画像データを、ホスト側制御部73に出力する。
また、磁気ヘッド54は、制御部71の制御の下、通過する磁気インク文字列4A(図1参照)によって形成される磁界の変化によって発生する起電力を検出し、検出信号として信号処理回路74に出力する。
【0044】
信号処理回路74は、増幅器や、ノイズ除去用のフィルター回路、A/D変換器等を備え、磁気ヘッド54から入力された検出信号を、増幅し、波形整形し、データとして制御部71に出力する。制御部71は、信号処理回路74から入力された検出信号を示すデータを、ホスト側制御部73に送信する。
操作部75は、本体ケース2(図1参照)に形成された電源スイッチや、操作スイッチ等の各種スイッチを備え、これらスイッチに対するユーザーの操作を検出し、制御部71に出力する。
【0045】
小切手読取装置1には、通信ケーブル72を介してホストコンピューター70が接続されている。
ホストコンピューター70は、CPUや、ROM、RAM、その他の周辺回路等を備えて構成されたホスト側制御部73を備えている。ホスト側制御部73は、後述する文字認識部80を備えている。
【0046】
ホスト側制御部73には、各種情報を表示可能な表示器76と、キーボード、マウス等の入力デバイスが接続された操作部77と、EEPROMやハードディスク等の書き換え可能に各種データを記憶する記憶部78と、が接続されている。
記憶部78は、小切手読取装置1から入力された小切手4の表面画像や、裏面画像を示すデータや、検出信号を示すデータを記憶する。
【0047】
本実施形態では、ホストコンピューター70のホスト側制御部73の制御の下、小切手読取装置1の制御部71が小切手読取装置1の各部を制御する。具体的には、ホスト側制御部73は、そのCPUがROMに記憶されたプログラムを実行して、制御部71を制御するための制御データを生成し、生成した制御データを小切手読取装置1の制御部71に対して出力することにより、小切手読取装置1の各部を制御する。すなわち、本実施形態では、ホストコンピューター70と、小切手読取装置1とが協働して、記録媒体たる小切手4に対して各種処理を実行する記録媒体処理装置として機能する。
【0048】
<文字認識部>
次いで、ホスト側制御部73が備える文字認識部80について説明する。
文字認識部80は、磁気インク文字列4Aを構成する磁気インク文字のそれぞれについて、文字認識を行う。磁気インク文字とは、所定のフォント(例えば、E−13Bフォント)に準拠して、小切手4に磁気印刷された文字のことであり、1つの磁気インク文字は、予め定められた複数の文字種類のうちのいずれか1つの文字種類に対応している。そして、磁気インク文字の認識とは、読み取った磁気インク文字のそれぞれについて、各磁気インク文字の文字種類を確定し、又は、当該磁気インク文字の文字種類を確定できないことを検出することである。
【0049】
なお、E−13Bフォントでは、磁気インク文字の形状として、「0」〜「9」、トランジット記号(TRANSIT SYMBOL)、アマウント記号(AMOUNT SYMBOL)、オン−アス記号(ON−US SYMBOL)、及び、ダッシュ記号(DASH SYMBOL)の14個の文字種類に対応する形状が用意されている。
【0050】
図4(A)は小切手4の表面4a側の概略図であり、図4(B),(C),(D)は磁気インク文字列4Aの一例を示す図である。図5(A)は磁気インク文字の一例を示す図であり、図5(B)は文字波形データの一例を示す図である。詳しくは、図5(A)は、E−13Bフォントの文字種類「2」の磁気インク文字を拡大して示す図である。また、図5(B)は、図5(A)に示す磁気インク文字について後述するステップSA1における処理により生成された文字波形データの内容の一例を模式的に示す図である。
【0051】
図4(A)に示すように、小切手4の表面4a側の下端部分には、小切手情報を示す磁気インク文字列4Aが印刷されている。磁気ヘッド54による磁気インク文字列4Aの読み取りは、小切手4の後端4d側から前端4g側へ向かって磁束を測定することにより実行される。
【0052】
図4(B),(C),(D)に示すように、磁気インク文字列4Aは、1つの磁気インク文字の右端から次の磁気インク文字の右端までの距離である文字間隔が等しくなるように、横方向に並んで形成された複数の磁気インク文字で構成されている。また、各磁気インク文字の線の幅(以下、単に「線幅」という)は、印刷規格により、例えば、0.013±0.003inchと規定されている。
【0053】
図4(B)に示す磁気インク文字列4Aは線幅がほぼ印刷規格の標準値のものであるが、市場に流通している小切手4等の記録媒体の中には、磁気インク文字の印刷のばらつき等により、印刷規格の標準値に比べて、図4(C)に示すように線幅が太いものや、図4(D)に示すように線幅が細いものが存在する。
【0054】
図5(A)に示す磁気インク文字の例では、線幅が印刷規格の標準値である場合、右側の縦の線4hの線幅W1および左側の縦の線4iの線幅W3は、0.013inchであり、線4hと線4iとの横方向における間隔(線4hの左端から線4iの右端までの距離)W2は、例えば、0.026inchである。
【0055】
ここで、線幅W1及び線幅W3が印刷規格の公差の範囲で変動した場合でも、W1+W2はほぼ同じ値となる。すなわち、間隔W2は、線幅W1が0.013inchに対して大きくなればその差分だけ小さくなり、線幅W1が0.013inchに対して小さくなればその差分だけ大きくなる。また、この文字の左側の線4iの左端と左隣の文字(図示省略)の右端との間隔は、線幅W3が0.013inchに対して大きくなればその差分だけ小さくなり、線幅W3が0.013inchに対して小さくなればその差分だけ大きくなる。
【0056】
次に、文字認識部80の動作を説明する。図6は、文字認識部80の動作を示すフローチャートである。図6のフローチャートは、ある1つの小切手4について、当該小切手4に記録された磁気インク文字列4Aの認識を実行する際の文字認識部80の動作を示している。そして、当該小切手4に記録された磁気インク文字列4Aについて、磁気ヘッド54による読み取りが行われ、信号処理回路74によって、増幅処理や、フィルター処理、波形整形処理等の各種処理が実行されて検出信号を示すデータ(以下、「検出信号波形データ」という)が生成され、制御部71により、検出信号波形データが、ホスト側制御部73に出力される。
【0057】
さらに、表面側コンタクトイメージセンサー52により、当該小切手4の表面の画像が読み取られ、画像データとして制御部71からホスト側制御部73に出力される。文字認識部80の機能は、ホスト側制御部73のCPUがROMに記憶されたプログラムを実行する等、ハードウェアとソフトウェアとの協働により実現される。
【0058】
本実施形態では、磁気インク文字列4Aに含まれる全ての磁気インク文字について文字種類を確定できれば、磁気インク文字列4Aの読み取りが成功したものと判別される。一方、1つでも文字種類が確定できない磁気インク文字があれば、磁気インク文字列4Aの読み取りが失敗したものと判別される。
【0059】
<磁気インク文字の切り出し>
図6に示すように、まず、ホスト側制御部73は、制御部71から入力された検出信号波形データから、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字のうち1つの磁気インク文字について、文字の切り出しおよび正規化を行う(ステップSA1)。文字の切り出しとは、検出信号波形データに基づいて、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字のうち1つの磁気インク文字について、当該磁気インク文字の波形を示す文字波形データを生成することである。
【0060】
上述したように、本実施形態では、搬送路5内で小切手4を搬送しつつ、当該小切手4に記録された磁気インク文字列4Aを磁気ヘッド54により読み取る。その際、磁気ヘッド54では、搬送される小切手4の磁気インク文字列4Aを、後端4d側から前端4g側へ向かって所定のサンプリング周期で磁束を測定することにより、磁気インク文字列4Aの読み取りを実行する。
【0061】
この結果、図5(B)に示すような波形を一文字分として、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字数分の波形が連続して現れる検出信号波形データが得られる。なお、以下の説明では、サンプリング周期の最小単位の間隔を1サンプリング単位といい、7サンプリング単位を1メッシュという。本実施形態では、1メッシュ=0.013inchであるものとする。
【0062】
図5(B)において、X軸(横軸)には、時間の経過(サンプリング周期の経過)が規定され(原点からX軸右方に向かうに従って、1サンプリング単位が順次経過したことを示す)、Y軸(縦軸)には、時間の経過に伴う磁荷の変化量の相対値が規定されている。Y軸においては、検出信号波形データの振幅(Y軸方向における変化量)が256段階に分割され、その128段階がゼロ(0)レベルに設定されている。
【0063】
図5(B)では、磁気インク文字列4Aにおいて、小切手4の後端4d側から前端4g側に向かって、所定のサンプリング周期毎に磁荷の変化量の相対値がどのように変化したかが示されており、磁気インク文字列4Aに含まれる各磁気インク文字の磁荷の変化量に対応してY軸方向の値が上下すると共に、磁荷の変化量がプラスであるのかマイナスであるのかに応じてY軸方向の値の正負が変化する。
【0064】
図5(B)の例に示すように、検出信号波形データのX軸方向において1つの磁気インク文字に対応する波形が占める範囲S5は、所定の数のサンプリング単位と規定されており、この規定に準じるように、各種搬送制御が実行されると共に、1サンプリング単位の長さが規定されている。また、1つの磁気インク文字に対応する波形においては、文字切り出し開始位置から所定の間隔S0を空けて、最初に現出するプラス側のピーク(以下、「プラスピーク」という)である第1ピークP1が位置するように規定されている。本実施形態では、1文字分の波形が占める範囲S5は、例えば70サンプリング単位(10メッシュ)であり、所定の間隔S0は、例えば11サンプリング単位である。
【0065】
これを踏まえ、ステップSA1では、文字認識部80は、検出信号波形データを解析し、所定の値を超える当該波形の各ピークのうち、波形の終端位置側(X軸右方)に向かって最初に現出するプラスピークである第1ピークP1を最初のピークとして検出する。
【0066】
ここで、ピークとは、検出信号波形データにおける極大値、極小値に対応する部分のことであり、これらピークはX軸方向において所定の周期で現出するよう規定されている。各ピークに対応するX軸の値をピークの位置という。
【0067】
文字認識部80は、検出した第1ピークP1の位置に基づいて、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字のそれぞれについて、文字切り出し開始位置を決定する。そして、検出信号波形データが示す波形を、決定した文字切り出し開始位置から、1つの磁気インク文字の波形が占める範囲S5に対応する70サンプリング単位(10メッシュ)で切り出す。
その際、図5(B)の例に示すように、文字認識部80は、切り出した波形において第1ピークP1の位置が、X軸における所定の間隔S0を空けた11サンプリング単位目となるように文字切り出し開始位置を決定して、検出信号波形データの波形の切り出しを行う。
【0068】
ステップSA1における文字の切り出しにより、磁気インク文字列4Aに含まれる1つの磁気インク文字について、当該磁気インク文字の検出信号波形データから、図5(B)に示すような文字波形データが生成される。以下、ステップSA1において、切り出された1つの磁気インク文字のことを「処理対象文字」という。
【0069】
続いて、文字認識部80は、生成した処理対象文字の文字波形データについて、各データが示す波形のY軸方向における振幅レベルが、パターンマッチング用の基準波形データのY軸方向における振幅レベルと同等となるよう、データの正規化を行う。パターンマッチング用の基準波形データとは、上述した14の文字種類のうち1つの文字種類に対応する磁気インク文字を磁気ヘッド54によって読み取ったときの検出信号の理想的な波形を示すデータであり、いわゆる磁気インク文字認識におけるパターンマッチング処理で供されるテンプレートデータに該当するデータである。
【0070】
ステップSA1において、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字のそれぞれについて、小切手4の後端4d側に配置された磁気インク文字から前端4g側に配置された磁気インク文字へ向かって順番に切り出され、正規化された後、磁気インク文字毎にステップSA2以下の磁気インク文字認識処理が実行される。
【0071】
ところで、図5(B)に示す文字波形データでは、第1ピークP1の位置からX軸右方に間隔S1を空けた位置に、最初のマイナス側のピーク(以下、「マイナスピーク」という)である第2ピークP2が位置している。また、第2ピークP2の位置からX軸右方に間隔S2を空けた位置に、2番目のプラスピークである第3ピークP3が位置しており、第3ピークP3の位置からX軸右方に間隔S3を空けた位置に、2番目のマイナスピークである第4ピークP4が位置している。
【0072】
図5(B)において、第1ピークP1は図5(A)に示す右側の縦の線4hの右端に対応し、第2ピークP2は線4hの左端に対応している。また、第3ピークP3は図5(A)に示す左側の縦の線4iの右端に対応し、第4ピークP4は線4iの左端に対応している。すなわち、図5(B)に示す間隔S1,S2,S3は、図5(A)に示す線幅W1、間隔W2、線幅W3にそれぞれ対応している。
【0073】
したがって、磁気インク文字の線幅が太くなると、間隔S1,S3は大きくなり、間隔S2は小さくなる。一方、磁気インク文字の線幅が細くなると、間隔S1,S3は小さくなり、間隔S2は大きくなる。また、第4ピークP4の位置と波形の終端位置(X軸右方)との間隔S4は、磁気インク文字の線幅が太くなると小さくなり、磁気インク文字の線幅が細くなると、大きくなる。
【0074】
ここで、磁気ヘッド54による読み取りの際、磁束の変化がない区間における検出信号波形データの振幅(Y軸方向における変化量)はほぼゼロレベル(128段階)となる。線幅が太い場合、間隔S1,S3のそれぞれにおけるゼロレベル近傍の区間が広くなり、間隔S2,S4のそれぞれにおけるゼロレベル近傍の区間が狭くなる。一方、線幅が細い場合、間隔S1,S3のそれぞれにおけるゼロレベル近傍の区間が狭くなり、間隔S2,S4のそれぞれにおけるゼロレベル近傍の区間が広くなる。
【0075】
<磁気インク文字認識処理>
図6に示すステップSA2以下の処理は、いわゆる磁気インク文字認識に係る処理であり、ステップSA1において切り出された磁気インク文字(処理対象文字)に対して、順次実行され、これにより、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字のそれぞれに対して1回ずつ実行される。
【0076】
ステップSA2以下には、第1認識フェーズ(ステップSA2)〜第5認識フェーズ(ステップSA12)の5つの認識フェーズが含まれている。これら5つの認識フェーズは、それぞれ異なる方法により処理対象文字の磁気インク文字認識を行い、当該処理対象文字の文字種類を確定し、又は、確定できないことを検出するフェーズである。本実施形態は、磁気インク文字の線幅のばらつきに対応して認識を行う第4認識フェーズを備えていることを特徴とする。
【0077】
第1認識フェーズ〜第4認識フェーズのいずれかのフェーズにおいて、処理対象文字の文字種類を確定できた場合は、次のフェーズを実行することなく、当該処理対象文字の次の磁気インク文字を処理対象文字とした上で、新たな処理対象文字に対して磁気インク文字認識を実行する。
【0078】
ステップSA2以下の文字認識に係る処理を順を追って説明する。第1認識フェーズ(ステップSA2)では、文字認識部80は、処理対象文字の文字波形データのそれぞれと、14の文字種類に対応する基準波形データのそれぞれとの間の差異量を検出する。
【0079】
処理対象文字の文字波形データと基準波形データとの間の差異量の検出について説明する。図7は、第1認識フェーズで検出される差異量を説明する図である。図7において、文字波形データが示す波形は細線で示され、基準波形データが示す波形は太線で示されている。なお、図7に示す文字波形データの文字種類は、図5(B)示す文字波形データの文字種類と異なっている。
【0080】
差異量とは、図7中、斜線で示す領域の大きさのことであり、より具体的には、X軸上に規定された各サンプリング単位における、文字波形データが示す波形のY軸方向の値と、基準波形データが示す波形のY軸方向の値(波形の値)との差の絶対値の総和のことである。
【0081】
1つの文字波形データが示す波形と、1つの基準波形データが示す波形との間の差異量が小さければ小さいほど、当該1つの文字波形データが示す波形と、当該1つの基準波形データが示す波形とが近似しているということであり、当該1つの文字波形データに対応する磁気インク文字の文字種別が、当該1つの基準波形データに対応する文字種類である蓋然性が高いということである。
【0082】
第1認識フェーズにおける波形データの差異量の検出は、14個の文字種類のそれぞれを比較対象として、例えば、単純比較とスライド比較との2通りの比較により行われる。単純比較とは、処理対象文字の文字波形データが示す波形と、比較対象文字種類に対応する基準波形データの波形とを単純に比較することである。スライド比較とは、処理対象文字の文字波形データが示す波形と、比較対象文字種類に対応する基準波形データの波形とを、所定の範囲内で所定の距離だけスライドさせて比較することである。
【0083】
なお、スライド比較は、単純比較により処理対象文字の文字種類を確定できなかった場合に、実行される。すなわち、単純比較の結果、処理対処文字の文字種類を確定できた場合は、スライド比較を実行することなく、第1認識フェーズを終了する。
【0084】
スライド比較について説明する。文字波形データにおいて、小切手4の搬送の状況、磁気ヘッド54による磁気インク文字列4Aの読み取りの状況、ステップSA1の文字の切り出しの処理の状況等に起因して、実際の波形のX軸方向における位置が、波形の理想的な位置から数サンプリング単位分ずれることがある。そこで、本実施形態では、単純比較だけでなく、スライド比較を行って処理対象文字の文字波形データの波形との間で差異量を検出することにより、上述した「ずれ」を反映して、適切に差異量を算出するようにしている。
【0085】
図示を省略するが、スライド比較において、文字認識部80は、14個の文字種類の中から比較対象とされる文字種類(以下、「比較対象文字種類」という)を特定する。そして、文字認識部80は、比較対象文字種類に対応する基準波形データの波形全体を、X軸方向右側及びX軸方向左側のそれぞれへ、例えば、7、6、5、4、3、2、1、0サンプリング単位分だけスライドした計15通りの波形のそれぞれと、処理対象文字の文字波形データの波形との間の差異量を算出する。
【0086】
このように、14個の文字種類のそれぞれについて、順番に、差異量の算出が15回行われ、15回分の差異量が算出される。そして、文字認識部80は、算出した15回分の差異量のうち、その値が最も小さいものを、比較対象文字種類の差異量として特定する。
【0087】
単純比較及びスライド比較のそれぞれにおいて、14個の文字種類の全てについて差異量の算出が終了した後、文字認識部80は、差異量の検出結果に基づいて、差異量が最も小さかった基準波形データに対応する文字種類を第1候補とし、次に差異量が小さかった基準波形データに対応する文字種類を第2候補とする。
【0088】
そして、文字認識部80は、第1候補および第2候補とされた文字種類に対応する基準波形データと処理対象文字の文字波形データとの差異量を所定の閾値と比較する。その結果、第1候補に対応する基準波形データと処理対象文字の文字波形データとの差異量が閾値以下となり、かつ、第2候補に対応する基準波形データと処理対象文字の文字波形データとの差異量が閾値を上回る場合に、第1候補とされた文字種類を処理対象文字の文字種類として確定する。なお、第1候補との差異量が閾値を上回る場合は、処理対象文字の文字種類を確定することなく、第1認識フェーズを終了する。
【0089】
一方、第1候補とされた文字種類に対応する基準波形データと処理対象文字の文字波形データとの差異量が閾値以下であり、かつ、第2候補とされた文字種類に対応する基準波形データと処理対象文字の文字波形データとの差異量が閾値以下である場合は、文字認識部80は、処理対象文字の文字種類を確定しない。
【0090】
ここで、上述の閾値は、処理対象文字の文字波形データと当該処理対象文字の正しい文字種類に対応する基準波形データとの間の差異量のみが閾値以下となり、かつ、当該文字波形データと他の文字種類に対応する基準波形データとの間の差異量が閾値を上回るように適宜設定される。このように閾値を設定することで、正常に小切手4が搬送され磁気ヘッド54により正常に磁気インク文字列4Aが読み取られれば閾値以下となる差異量に係る文字種類は1つに限定される。
【0091】
一方、閾値以下となる差異量に係る文字種類が複数存在している状況のときは、磁気ヘッド54による読み取りエラーや、小切手4の搬送エラー、その他の何らかの原因により、当該状況が現出している可能性がある。したがって、このような状況のときに処理対象文字の文字種類を確定すると、誤認識を招くおそれがある。
【0092】
なお、磁気インク文字列4Aの各磁気インク文字は、小切手4にオフセット印刷により印刷される場合と、レーザー印刷により印刷される場合とがある。そして、それぞれの印刷によって印刷される磁気インク文字は、その形状が互いに相違している。これを踏まえ、第1認識フェーズではオフセット印刷用の基準波形データが利用されて各種処理が実行され、第3認識フェーズではレーザー印刷用の基準波形データが利用されて各種処理が実行される。
【0093】
図6に示すように、第1認識フェーズ(ステップSA2)の実行後、文字認識部80は、第1認識フェーズにおいて、処理対象文字の文字種類が確定できたか否かを判別する(ステップSA3)。
処理対象文字の文字種類が確定できた場合(ステップSA3:YES)、文字認識部80は、第2認識フェーズを行うことなく、処理手順をステップSA4へ移行する。
処理対象文字の文字種類が確定できなかった場合(ステップSA3:NO)、文字認識部80は、第2認識フェーズを実行する(ステップSA6)。
【0094】
第2認識フェーズ(ステップSA6)は、磁気インク文字の印刷状態や小切手4の搬送状況等により文字波形データの波形がX軸方向に伸び、又は、縮んだ場合に対応する認識フェーズである。
【0095】
第2認識フェーズでは、検出信号波形データにおける処理対象文字の文字間隔に基づいて磁気インク文字の伸びや縮みを検出し、検出された伸びや縮みを反映して、比較対象文字種類に対応する基準波形データの波形を、例えば、文字間隔の両側又は片側に伸縮させて補正する。そして、補正された基準波形データのそれぞれの波形と、処理対象文字に対応する文字波形データの波形との間の差異量を検出する。
【0096】
第2認識フェーズにおいても、文字認識部80は、検出された差異量が小さかった順に文字種類の第1候補及び第2候補を選別し、第1候補に対応する基準波形データと処理対象文字の文字波形データとの差異量が閾値以下となり、かつ、第2候補に対応する基準波形データと処理対象文字の文字波形データとの差異量が閾値を上回る場合に、第1候補とされた文字種類を処理対象文字の文字種類として確定する。
【0097】
また、第1候補とされた文字種類に対応する基準波形データと処理対象文字の文字波形データとの差異量が閾値以下であり、かつ、第2候補とされた文字種類に対応する基準波形データと処理対象文字の文字波形データとの差異量が閾値以下であっても、その差異量が上述の第1候補との差異量に所定の係数を乗じたもの以上である場合は、第1候補とされた文字種類を処理対象文字の文字種類として確定する。これら以外の場合は、処理対象文字の文字種類を確定しない。
【0098】
この第2認識フェーズでは、上述のように、文字波形データの波形の伸びや縮みを反映した上で、第1候補、及び、第2候補となる文字種類を選別する。そのため、第2認識フェーズで選別された第1候補及び第2候補は、本実施形態における他の認識フェーズにおいて選別された第1候補や第2候補と比較し、最も信頼性が高いといえる。
【0099】
第2認識フェーズ(ステップSA6)の実行後、文字認識部80は、第2認識フェーズにおいて処理対象文字の文字種類が確定したか否かを判別し(ステップSA7)、確定できた場合は(ステップSA7:YES)、処理手順をステップSA4へ移行し、確定できなかった場合は(ステップSA7:NO)、第3認識フェーズを実行する(ステップSA8)。
【0100】
第3認識フェーズ(ステップSA8)では、レーザー印刷用の基準波形データが利用されて、第1認識フェーズと同様の各種処理が実行されるので、説明を省略する。
【0101】
第3認識フェーズの実行後、文字認識部80は、第3認識フェーズにおいて処理対象文字の文字種類が確定したか否かを判別し(ステップSA9)、確定できた場合は(ステップSA9:YES)、処理手順をステップSA4へ移行し、確定できなかった場合は(ステップSA9:NO)、第4認識フェーズを実行する(ステップSA10)。
【0102】
第4認識フェーズ(ステップSA10)は、磁気インク文字の印刷状態等により図5(A)に示す線幅W1,W3が太い場合、又は、細い場合、すなわち、図5(B)に示す文字波形データにおいて、間隔S1,S3が大きい場合、又は、小さい場合に対応する認識フェーズである。
【0103】
第4認識フェーズでは、処理対象文字の波形における間隔S1,S3が大きい場合、及び、小さい場合に対応して、比較対象文字種類に対応する基準波形データの波形において、例えば、間隔S1,S3に対応する波形部分を伸縮させて補正する。そして、伸縮補正された基準波形データ(以下、「伸縮補正波形データ」という)のそれぞれの波形と、処理対象文字に対応する文字波形データの波形とを比較して(以下、「線幅伸縮比較」という)、差異量を検出する。
【0104】
伸縮補正波形データの形成方法及び差異量の検出について、図8(A)及び(B)を参照して説明する。図8(A)は伸縮補正波形データの一例を示す図であり、図8(B)は文字波形データと伸縮補正波形データとを比較して示す図である。なお、図8(A)及び(B)における点線は、X軸方向を1メッシュ毎に区切るとともに、Y軸方向のプラス側及びマイナス側を32段階毎に区切っている。
【0105】
図8(A)において、文字種類「2」の基準波形データを太い実線で示す。この基準波形データに対し、線幅が太い場合及び細い場合に対応して、例えば、X軸方向に±2サンプリング単位の範囲で伸縮を行い、伸縮補正波形データを形成する。
【0106】
ここで、上述した通り、線幅の公差は0.013±0.003inchであるが、1メッシュ(7サンプリング単位)=0.013inchより、1サンプリング単位=0.013/7inchであるので、線幅の公差範囲はおおよそ±1.6サンプリング単位に相当する。したがって、X軸方向に±2サンプリング単位の範囲で基準波形の伸縮を行えば、印刷規格の線幅の上限から下限までの範囲に対応できることとなる。
【0107】
また、上述した通り、線幅が太い場合、間隔S1,S3におけるゼロレベル近傍の区間が広くなり、間隔S2,S4におけるゼロレベル近傍の区間が狭くなる。一方、線幅が細い場合、間隔S1,S3におけるゼロレベル近傍の区間が狭くなり、間隔S2,S4におけるゼロレベル近傍の区間が広くなる。そこで、間隔S1,S3のそれぞれ(ピーク同士の間)に波形の伸縮を行う伸縮点E1,E2を設定する。そして、間隔S2,S4のそれぞれに、波形の伸縮に伴う補完を行う補完点C1,C2を設定する。
【0108】
伸縮点E1,E2は、線幅がばらついた場合に、文字波形データにおいて波形が伸縮する影響を受ける位置の近傍に設定することが好ましい。線幅がばらついた場合に影響を受ける位置は、間隔S1,S3においてサンプリング単位当たりの変化量が小さい点であり、例えば、間隔S1,S3の中央位置や、波形の値がゼロレベルとなる位置である。また、補完点C1,C2は、波形の値がゼロレベルとなる点の近傍に設定することが好ましい。
【0109】
伸縮補正波形データは、例えば、以下の方法で形成する。まず、基準波形データの間隔S1,S3のそれぞれを1サンプリング単位大きくする場合は、伸縮点E1,E2のそれぞれの位置の直前の位置に、(伸縮点の値+伸縮点の直前の値)/2のデータを挿入する。そして、補完点C1,C2のそれぞれの位置のデータを削除する。
【0110】
この結果、データが挿入されたことにより、第1ピークP1の位置に対して第2ピークP2の位置がX軸右方に1サンプリング単位だけ移動し、第3ピークP3の位置に対して第4ピークP4の位置がX軸右方に1サンプリング単位だけ移動する。一方、補完点C1,C2のデータが削除されることにより、第1ピークP1の位置に対する第3ピークP3の位置、及び、波形の終端位置に対する第3ピークP3の位置は変わらない。
【0111】
基準波形データの間隔S1,S3のそれぞれを2サンプリング単位大きくする場合は、伸縮点E1,E2のそれぞれの位置の直前の位置に、(伸縮点の値+伸縮点の直前の値)/2のデータを挿入し、伸縮点E1,E2のそれぞれの位置とデータを挿入した位置との間に、(伸縮点の値+挿入したデータの値)/2のデータを挿入する。そして、補完点C1,C2のそれぞれの位置のデータ、及び補完点C1,C2の次の位置のデータを削除する。
【0112】
基準波形データの間隔S1,S3のそれぞれを1サンプリング単位小さくする場合は、伸縮点E1,E2のそれぞれの位置のデータを削除し、補完点C1,C2のそれぞれの位置の直前の位置に、(補完点の値+補完点の直前の値)/2のデータを挿入する。
【0113】
基準波形データの間隔S1,S3のそれぞれを2サンプリング単位小さくする場合は、伸縮点E1,E2のそれぞれの位置のデータ、及び伸縮点E1,E2の次の位置のデータを削除する。そして、補完点C1,C2のそれぞれの位置の直前の位置に、(補完点の値+補完点の直前の値)/2のデータを挿入し、補完点C1,C2のそれぞれの位置とデータを挿入した位置との間に、(補完点の値+挿入したデータの値)/2のデータを挿入する。
【0114】
以上の結果、図8(A)に太い実線で示す基準波形データを基にして、磁気インク文字の線幅が標準値よりも太い場合に対応して、間隔S1,S3のそれぞれを、1サンプリング単位大きくした伸縮補正波形データ「伸縮補正波形(+1)」(破線で示す)と、2サンプリング単位大きくした伸縮補正波形データ「伸縮補正波形(+2)」(2点鎖線で示す)とが形成される。
【0115】
また、磁気インク文字の線幅が標準値よりも細い場合に対応して、間隔S1,S3のそれぞれを、1サンプリング単位小さくした伸縮補正波形データ「伸縮補正波形(−1)」(細い実線で示す)と、2サンプリング単位小さくした伸縮補正波形データ「伸縮補正波形(−2)」(1点鎖線で示す)とが形成される。したがって、合計4つの伸縮補正波形データが形成される。
【0116】
図8(B)には、文字種類「4」の場合の処理対象文字の文字波形データ(細い実線で示す)と、伸縮補正を行う前の基準波形データ(破線で示す)と、基準波形データから2サンプリング単位小さくした「伸縮補正波形(−2)」の伸縮補正波形データ(太い実線で示す)とを比較して示している。
【0117】
図8(B)に示すように、第2ピークP2及び第4ピークP4の位置が、破線で示す基準波形データでは文字波形データに対してX軸右方側に大きくずれているが、太い実線で示す「基準波形−2」の伸縮補正波形データでは文字波形データに近付いている。したがって、基準波形データの伸縮補正を行うことにより、文字波形データとの差異量が小さくなり、パターンマッチング度が向上するので、認識率を向上させることができる。
【0118】
第4認識フェーズにおける波形データの差異量の検出は、例えば、基準波形データ及び上述の4つの伸縮補正波形データの波形を予め用意しておき、これらの波形と処理対象文字の文字波形データが示す波形との比較を順次行う。なお、文字波形データとの比較の都度、伸縮補正波形データを形成するようにしてもよいが、予め伸縮補正波形データを形成しておくようにすれば、第4認識フェーズにおける処理速度を速くすることができる。
【0119】
第4認識フェーズにおいても、文字認識部80は、検出された差異量が小さかった順に文字種類の第1候補及び第2候補を選別し、第1候補に対応する基準波形データと処理対象文字の文字波形データとの差異量が閾値以下となり、かつ、第2候補に対応する基準波形データと処理対象文字の文字波形データとの差異量が閾値を上回る場合に、第1候補とされた文字種類を処理対象文字の文字種類として確定する。
一方、第1候補との差異量が閾値を上回る場合、第1候補との差異量及び第2候補との差異量が閾値以下である場合は、文字認識部80は、処理対象文字の文字種類を確定しない。
【0120】
本実施形態では、第1認識フェーズにおける波形のスライド比較、及び、第2認識フェーズにおける波形全体の伸び縮みを反映した比較に加えて、この第4認識フェーズにおいて、磁気インク文字の線幅のばらつきに起因する波形の一部の伸び縮みを反映した比較を行っている。これにより、磁気インク文字認識における認識率を向上させることができる。
【0121】
ところで、文字種類によって、磁気インク文字を構成する線の数や配置が異なるため、生成された文字波形データにおけるピークの数や位置関係が上記と異なる場合がある。そのため、伸縮点及び補完点を設定する位置及び箇所数は上記に限定されるものではない。以下に、ピークの数や位置関係が異なる場合の一例を説明する。図9は、文字種類「8」の基準波形データを示す図である。
【0122】
図9に示すように、文字種類「8」の基準波形データには、第1ピークP1から第6ピークP6までの6つのピークが存在する。これら6つのピークのうち、第1ピークP1、第2ピークP2、及び第4ピークP4はプラスピークであり、第3ピークP3、第5ピークP5、及び第6ピークP6はマイナスピークである。
【0123】
文字種類「8」の場合、プラスピークである第2ピークP2とその次に位置するマイナスピークである第3ピークP3との間に伸縮点E1を設定し、プラスピークである第4ピークP4とその次に位置するマイナスピークである第5ピークP5との間に伸縮点E2を設定する。また、マイナスピークである第3ピークP3とその次に位置するプラスピークである第4ピークP4との間に補完点C1を設定し、最後のマイナスピークである第6ピークP6と波形の終端との間に補完点C2を設定する。
【0124】
このように、磁気インク文字の文字種類、すなわち生成された文字波形におけるピークの数や位置関係に関わらず、プラスピークとその次に位置するマイナスピークとの間に伸縮点を設置し、マイナスピークとその次に位置するプラスピークとの間、及び最後のマイナスピークと波形の終端との間に補完点を設定すればよい。
【0125】
図6に戻り、第4認識フェーズ(ステップSA10)の実行後、文字認識部80は、第4認識フェーズにおいて処理対象文字の文字種類が確定したか否かを判別し(ステップSA11)、確定できた場合は(ステップSA11:YES)、処理手順をステップSA4へ移行し、確定できなかった場合は(ステップSA11:NO)、第5認識フェーズを実行する(ステップSA12)。
【0126】
第5認識フェーズ(ステップSA12)では、全てのサンプリング単位ではなく、基準波形データのピークの位置やその前後のサンプリング単位目における基準波形データの波形と処理対象文字の文字波形データの波形とを比較する。これにより、処理対象文字の文字波形データの波形において、乱れがあった場合にその影響を排し、部分的な伸びや、縮み、ずれ、が生じた場合にこれらを反映して、適切に処理対象文字の文字認識を実行する。
【0127】
第5認識フェーズでは、処理対象文字の文字種類の最終的な確定を行わず、後述する所定の条件が成立した場合にのみ、処理対象文字の文字種類が確定される。これを踏まえ、第5認識フェーズにおける処理対象文字の文字種類の確定については、「仮確定」と表現し、他の認識フェーズにおける文字種類の確定と区別するものとする。
【0128】
第5認識フェーズの終了後、文字認識部80は、第5認識フェーズにおいて処理対象文字の文字種類を仮確定できたか否かを判別する(ステップSA13)。
第5認識フェーズにおいて処理対象文字の文字種類を仮確定できなかった場合(ステップSA13:NO)、すなわち、第1認識フェーズ〜第5認識フェーズのいずれにおいても処理対象文字の文字種類を確定できなかった場合、文字認識部80は、磁気インク文字認識では処理対象文字の文字種類を確定できないものと判別し(ステップSA21)、処理手順をステップSA4へ移行する。
【0129】
第5認識フェーズにおいて処理対象文字の文字種類を仮確定できた場合(ステップSA13:YES)、文字認識部80は、第5認識フェーズにおいて仮確定した文字種類と、第2認識フェーズにおいて第1候補とされた文字種類、及び、第2候補とされた文字種類のいずれかと、が一致するか否かを判別する(ステップSA14)。
【0130】
一致しない場合(ステップSA14:NO)、文字認識部80は、磁気インク文字認識では処理対象文字の文字種類を確定できないものと判別し(ステップSA21)、処理手順をステップSA4へ移行する。
一方、一致する場合(ステップSA14:YES)、文字認識部80は、第5認識フェーズにおいて仮確定した文字を、処理対象文字の文字種類として確定し(ステップSA15)、処理手順をステップSA4へ移行する。
【0131】
ステップSA4では、磁気インク文字列4Aに含まれる全ての磁気インク文字が処理対象文字となり、文字認識に係る処理が実行されたか否かが判別される。
磁気インク文字列4Aに含まれる全ての磁気インク文字が処理対象文字となっていない場合(ステップSA4:NO)、文字認識部80は、処理手順をステップSA1へ戻して、次の磁気インク文字について文字の切り出し及び正規化を実行する。
【0132】
一方、磁気インク文字列4Aに含まれる全ての磁気インク文字が処理対象文字となったと判別された場合(ステップSA4:YES)、文字認識部80は、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字の文字数を検出する(ステップSA5)。
【0133】
ステップSA5に次いで、文字認識部80は、磁気インク文字列4Aに含まれる全ての磁気インク文字について、文字種類が確定したか否かを判別する(ステップSA16)。
【0134】
全ての磁気インク文字について文字種類が確定した場合(ステップSA16:YES)、ホスト側制御部73は、磁気インク文字列4Aの読み取りが成功したものとして、磁気インク文字列4Aの読み取りが成功した場合に行うべき処理を行う(ステップSA17)。磁気インク文字列4Aの読み取りが成功した場合に行うべき処理には、例えば、磁気インク文字列4Aが示す情報を記憶部78に記憶し、また、制御部71に記録装置56を制御させて、小切手4の裏面に裏書きに係る所定の画像を記録し、また、第1小切手排出部7に小切手4を排出する等の処理が含まれる。
【0135】
一方、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字について、1つでも文字種類が確定しなかったものが存在した場合(ステップSA16:NO)、文字認識部80は、文字種類が確定しなかった磁気インク文字に対して光学的な文字の認識を行う光学認識処理(ステップSA18)を実行する。
【0136】
ステップSA18の光学認識処理では、文字認識部80は、表面側コンタクトイメージセンサー52の読み取り結果に基づいて生成された小切手4の表面の画像を示すデータにおいて、磁気インク文字列4Aの画像に対応するデータの範囲を特定し、磁気インク文字毎に画像データを切り出す。そして、14種類の文字種類のそれぞれに対応するビットマップパターンと切り出した画像データとを比較することにより、光学文字認識を実行し、磁気インク文字のそれぞれの文字種類を仮確定する。
【0137】
次いで、文字認識部80は、光学文字認識の結果に基づいて磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字の文字数を検出し、ステップSA5で検出された文字数と一致するか否かを判別する。文字数が一致しない場合、文字認識部80は、磁気インク文字列4Aの読み取りに失敗したと判別し、ステップSA18の光学認識処理を終了する。
【0138】
文字数が一致する場合、文字認識部80は、ステップSA21において文字種類を確定できないと判別された磁気インク文字ついて、1文字ずつ順番に、光学文字認識で仮確定された文字種類と、第2認識フェーズ(ステップSA6)において第1候補とされた文字種類、及び、第2候補とされた文字種類のいずれかと、が一致するか否かを判別する。
【0139】
判別の結果、一致する場合、文字認識部80は、仮確定した文字を、処理対象文字の文字種類として確定する。一方、一致しない場合、文字認識部80は、処理対象文字について、光学文字認識を利用した文字認識によっても文字種類を確定できないと判別する。これらの処理を、ステップSA21において文字種類を確定できないと判別された全ての磁気インク文字が処理対象文字となるまで行う。
【0140】
次いで、文字認識部80は、光学認識処理により、文字種類が確定していなかった全ての磁気インク文字について、文字種類が確定したか否かを判別し(ステップSA19)、全ての磁気インク文字について、文字種類が確定した場合は(ステップSA19:YES)、磁気インク文字列4Aの読み取りが成功した場合に行うべき処理を行う(ステップSA17)。
【0141】
一方、1つでも文字種類が確定しなかった磁気インク文字が存在する場合(ステップSA19:NO)、ホスト側制御部73は、磁気インク文字列4Aの読み取りが失敗した場合に行うべき処理を行う(ステップSA20)。
磁気インク文字列4Aの読み取りが失敗した場合に行うべき処理として、ホスト側制御部73は、制御部71を制御して、裏書きに係る画像の印刷等を行うことなく、第2小切手排出部8に小切手4を搬送する処理を行う。第2小切手排出部8に排出された小切手4は、読み取りが失敗した原因の究明や、再読み取り等の処理が行われる。
【0142】
以上説明したように、本実施形態に係る記録媒体処理装置、記録媒体処理装置の制御方法、及び、プログラムによれば、以下の効果が得られる。
【0143】
第4認識フェーズにおいて、磁気インク文字の線幅が印刷規格の標準値よりも太い場合及び細い場合に対応して、基準波形データを伸縮補正して形成した伸縮補正波形データと文字波形データとを比較して、磁気インク文字認識を行う。これにより、磁気インク文字の印刷のばらつき等により、磁気インク文字の線幅が印刷規格の標準値よりも太い場合及び細い場合においても、文字波形データとの差異量を小さくできるので、パターンマッチング度が向上し、認識率を向上させることができる。
【0144】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る記録媒体処理装置、記録媒体処理装置の制御方法、及び、プログラムを説明する。
【0145】
第2の実施形態に係る記録媒体処理装置、記録媒体処理装置の制御方法、及び、プログラムは、第1の実施形態に係る記録媒体処理装置、記録媒体処理装置の制御方法、及び、プログラムに対して、ステップSA10の第4認識フェーズにおいて線幅伸縮スライド比較をさらに実行する点が異なっているが、その他の構成はほぼ同じである。したがって、ここでは、第1の実施形態と異なる点について説明する。
【0146】
第1の実施形態において、第1認識フェーズのスライド比較で説明したように、実際の波形のX軸方向における位置が、波形の理想的な位置から数サンプリング単位分ずれることがある。このような波形のズレが磁気インク文字の線幅のばらつきと複合して発生した場合、第1の実施形態の第4認識フェーズでは文字種類の確定が困難となり、認識率が低下することとなる。
【0147】
そこで、第2の実施形態では、第4認識フェーズにおいて、まず、第1の実施形態と同様に線幅伸縮比較を行う。そして、線幅伸縮比較の結果、処理対象文字の文字種類を確定できなかった場合に、文字波形データに対して伸縮補正波形データを所定の範囲内で所定の距離だけスライドさせて、両者の比較を行う(以下、「線幅伸縮スライド比較」という)。
【0148】
線幅伸縮スライド比較について、図10及び図11を参照して説明する。図10(A)は文字波形データと基準波形データとを比較して示す図であり、図10(B)は文字波形データと伸縮補正波形データとを比較して示す図である。図11は、文字波形データとスライドさせた伸縮補正波形データとを比較して示す図である。
【0149】
図10(A)において、文字波形データが示す波形は細線で示され、基準波形データが示す波形は太線で示されている。図10(A)に示すように、文字波形データにおける第1ピークP1の位置と第2ピークP2の位置との間隔、及び、第3ピークP3の位置と第4ピークP4位置との間隔は、基準波形データにおけるそれぞれの間隔よりも狭くなっている。すなわち、この文字波形データは、線幅が印刷規格の標準値よりも細い磁気インク文字から生成されたものと考えられる。
【0150】
次に、図10(B)に示すように、基準波形データを基に、第1ピークP1の位置と第2ピークP2の位置との間隔、及び、第3ピークP3の位置と第4ピークP4位置との間隔を小さくして伸縮補正波形データを形成し、線幅伸縮比較を行う。この線幅伸縮比較では、各ピークの位置がずれているため、すなわち、波形全体がX軸方向にずれているため、両者の波形の間の差異量は大きくなり、文字種類を確定することは困難である。
【0151】
そこで、図11に示すように、伸縮補正波形データをX軸左方にスライドさせて、線幅伸縮スライド比較を行う。この線幅伸縮スライド比較によれば、文字波形データと伸縮補正波形データとで、各ピークの位置がほぼ一致し、両者の波形の間の差異量が小さくなって、文字種類を確定することが可能となる。
【0152】
線幅伸縮スライド比較における伸縮補正波形データの波形のスライド量は、第1認識フェーズのスライド比較におけるスライド量よりも小さい範囲とし、例えば、X軸方向右側及びX軸方向左側のそれぞれへ、3、2、1、0サンプリング単位分だけスライドした計7通りとする。これは、以下の理由による。
すなわち、第2の実施形態に係る第4認識フェーズの線幅伸縮スライド比較では、磁気インク文字の線幅のばらつきに対応して基準波形データの波形を伸縮させた上に、波形全体をスライドさせる。そのため、スライド量が大きいと、本来の文字種類とは別の文字種類の波形に近くなってしまう可能性があり、誤認識を招くリスクが大きくなる。したがって、スライド量を第1認識フェーズよりも小さく設定することで、誤認識のリスクを低減している。
【0153】
以上説明したように、第2の実施形態に係る記録媒体処理装置、記録媒体処理装置の制御方法、及び、プログラムによれば、以下の効果が得られる。
【0154】
第4認識フェーズにおいて、文字波形データと伸縮補正波形データとの線幅伸縮比較により処理対象文字の文字種類を確定できなかった場合に、文字波形データに対して伸縮補正波形データを所定の範囲内で所定の距離だけスライドさせて線幅伸縮スライド比較を行うので、磁気インク文字の線幅のばらつきと波形のズレとが複合して発生した場合でも、認識率を向上させることができる。
【0155】
なお、上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形及び応用が可能である。変形例を以下に述べる。なお、上述した実施形態と同一の構成については、同一の符号を使用し、重複する説明は省略する。
【0156】
(変形例)
例えば、上述した実施形態では、第5認識フェーズ(ステップSA12)及び光学認識処理(ステップSA18)において仮確定した文字種類が、第2認識フェーズ(ステップSA6)において第1候補とされた文字種類、及び、第2候補とされた文字種類のいずれかと一致する場合に、文字種類を確定する構成であったが、このような構成に限定されない。第5認識フェーズ及び光学認識処理において仮確定した文字種類が、第4認識フェーズ(ステップSA10)において第1候補とされた文字種類、及び、第2候補とされた文字種類のいずれかと一致する場合に、文字種類を確定する構成としてもよい。
【0157】
また、上述した実施形態では、ホストコンピューター70が文字認識部80を備え、磁気インク文字の認識を実行する構成であったが、この文字認識部80の機能を、小切手読取装置1に持たせるようにし、小切手読取装置1が単独で、磁気インク文字の認識に係る各種処理を実行する構成としてもよい。この場合、小切手読取装置1が、記録媒体処理装置として機能する。
【符号の説明】
【0158】
1…小切手読取装置(記録媒体処理装置)、4…小切手(記録媒体)、4A…磁気インク文字列、30…小切手搬送機構(搬送部)、54…磁気ヘッド(読取部)、70…ホストコンピューター(記録媒体処理装置)、71…制御部、73…ホスト側制御部、78…記憶部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体処理装置、記録媒体処理装置の制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
小切手等の記録媒体に記録された磁気インク文字を読み取る磁気ヘッドを備え、搬送路を搬送される記録媒体の磁気インク文字を読み取って、磁気インク文字を認識する記録媒体処理装置(小切手類読取装置)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような記録媒体処理装置では、磁気インク文字を読み取って得られる信号波形データから、1つの磁気インク文字に対応する範囲で文字波形データを切り出して、切り出した文字波形データの波形と規格で定められた文字種類の基準波形とを比較して磁気インク文字認識を行い、磁気インク文字の文字種類を判別している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−206362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、市場に流通している記録媒体の中には、磁気インク文字の印刷のばらつき等により、文字の線幅が標準値よりも太いものや細いものが存在する。文字の線幅が異なると、磁気インク文字を読み取って得られる信号波形データの波形において、線幅に対応するプラスピーク(値が正側の変曲点)とマイナスピーク(値が負側の変曲点)との間隔も異なってくる。そのため、このような信号波形データの波形と基準波形とを比較すると、両者の間の差異量が大きくなってしまい、磁気インク文字認識において認識率が低下するという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例に係る記録媒体処理装置は、記録媒体に記録された磁気インク文字を磁気的に読み取る読取部と、規格で定められた複数の文字種類の基準波形を記憶する記憶部と、前記読取部と前記記憶部とを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記記憶部に記憶された複数の文字種類の基準波形における、プラス側のプラスピークと、前記プラスピークの次に位置するマイナス側のマイナスピークとの間にデータを挿入するか、又は、前記プラスピークと前記マイナスピークとの間のデータを削除して、伸縮補正波形を形成し、前記記録媒体の前記磁気インク文字を前記読取部により読み取って得られる検出信号波形と、前記伸縮補正波形とを比較して磁気インク文字認識を実行することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、プラスピークとその次に位置するマイナスピークとの間にデータを挿入することで、プラスピークとマイナスピークとの間隔が広がるので、磁気インク文字の線幅が通常よりも太い場合に対応して基準波形を補正した伸縮補正波形が得られる。また、プラスピークとその次に位置するマイナスピークとの間のデータを削除することでプラスピークとマイナスピークとの間隔が狭まるので、磁気インク文字の線幅が通常よりも細い場合に対応して基準波形を補正した伸縮補正波形が得られる。複数の文字種類のそれぞれについて形成されたこれらの伸縮補正波形と、検出信号波形とを比較して磁気インク文字認識を実行するので、文字の線幅が通常よりも太い場合や細い場合でも文字種類を判別することが可能となる。これにより、磁気インク文字の印刷のばらつき等により、文字の線幅が印刷規格の標準値よりも太い場合や細い場合でも、磁気インク文字認識における認識率を向上させることができる。
【0009】
[適用例2]上記適用例に係る記録媒体処理装置であって、前記制御部は、前記伸縮補正波形を形成する際、前記プラスピークと前記マイナスピークとの間にデータを挿入する場合は、前記マイナスピークと、前記マイナスピークの次に位置するプラスピークとの間のデータを削除し、前記プラスピークと前記マイナスピークとの間のデータを削除する場合は、前記マイナスピークと、前記マイナスピークの次に位置する前記プラスピークとの間にデータを挿入することが好ましい。
【0010】
この構成によれば、プラスピークとマイナスピークとの間にデータを挿入する場合に、マイナスピークとその次に位置するプラスピークとの間のデータを削除するので、磁気インク文字の線幅が通常よりも太いことで線同士の間隔が狭くなることに対応して補正した伸縮補正波形が得られる。また、プラスピークとマイナスピークとの間のデータを削除する場合に、マイナスピークとその次に位置するプラスピークとの間にデータを挿入するので、磁気インク文字の線幅が通常よりも細いことで線同士の間隔が広くなることに対応して補正した伸縮補正波形が得られる。複数の文字種類のそれぞれについて形成されたこれらの伸縮補正波形と、検出信号波形とを比較して磁気インク文字認識を実行するので、文字の線幅が通常よりも太い場合や細い場合における認識率をより向上させることができる。
【0011】
[適用例3]上記適用例に係る記録媒体処理装置であって、前記制御部は、前記伸縮補正波形を形成する際、前記基準波形の最後のプラスピークと最後のマイナスピークとの間にデータを挿入する場合は、前記最後のマイナスピークと、前記最後のマイナスピークの次に位置する終端部との間のデータを削除し、前記最後のプラスピークと前記最後のマイナスピークとの間のデータを削除する場合は、前記最後のマイナスピークと、前記最後のマイナスピークの次に位置する前記終端部との間にデータを挿入することが好ましい。
【0012】
この構成によれば、基準波形の最後のプラスピークと最後のマイナスピークとの間にデータを挿入する場合に、最後のマイナスピークとその次に位置する終端部との間のデータを削除するので、磁気インク文字の線幅が通常よりも太いことで線同士の間隔が狭くなることに対応して補正した伸縮補正波形が得られる。また、最後のプラスピークと最後のマイナスピークとの間のデータを削除する場合に、最後のマイナスピークとその次に位置する終端部との間にデータを挿入するので、磁気インク文字の線幅が通常よりも細いことで線同士の間隔が広くなることに対応して補正した伸縮補正波形が得られる。波形の終端部に係る部分においても、複数の文字種類のそれぞれについて形成されたこれらの伸縮補正波形と、検出信号波形とを比較して磁気インク文字認識を実行するので、文字の線幅が通常よりも太い場合や細い場合における認識率をより向上させることができる。
【0013】
[適用例4]上記適用例に係る記録媒体処理装置であって、前記制御部は、前記伸縮補正波形を形成する際、前記基準波形における前記プラスピークと前記マイナスピークとの中央位置の近傍、又は、波形の値がゼロとなる位置の近傍において、前記データの挿入又は削除を行うことが好ましい。
【0014】
この構成によれば、磁気インク文字の線幅が通常よりも太い場合や細い場合に影響を受けるプラスピークとマイナスピークとの中央位置の近傍や、波形の値がゼロとなる位置の近傍においてデータの挿入又は削除を行うので、文字の線幅が通常よりも太い場合や細い場合に対応して、基準波形をより効果的に補正することができる。
【0015】
[適用例5]上記適用例に係る記録媒体処理装置であって、前記制御部は、前記磁気インク文字認識を実行する際、前記検出信号波形に対して前記伸縮補正波形を所定の距離スライドさせて比較することが好ましい。
【0016】
この構成によれば、磁気インク文字認識を実行する際、検出信号波形に対して伸縮補正波形を所定の距離スライドさせて比較するので、磁気的な読み取り等の処理に起因して読み取った波形にズレが発生した場合でも、文字種類を判別することが可能となる。これにより、磁気インク文字の線幅のばらつきと波形のズレとが複合して発生した場合でも、認識率を向上させることができる。
【0017】
[適用例6]本適用例に係る記録媒体処理装置の制御方法は、記録媒体に記録された磁気インク文字を磁気的に読み取る読取部と、規格で定められた複数の文字種類の基準波形を記憶する記憶部と、を備えた記録媒体処理装置の制御方法であって、前記記憶部に記憶された複数の文字種類の基準波形における、プラス側のプラスピークと、前記プラスピークの次に位置するマイナス側のマイナスピークとの間にデータを挿入するか、又は、前記プラスピークと前記マイナスピークとの間のデータを削除して、伸縮補正波形を形成し、前記記録媒体の前記磁気インク文字を前記読取部により読み取って得られる検出信号波形と、前記伸縮補正波形とを比較して磁気インク文字認識を実行することを特徴とする。
【0018】
この方法によれば、プラスピークとその次に位置するマイナスピークとの間にデータを挿入することで、プラスピークとマイナスピークとの間隔が広がるので、磁気インク文字の線幅が通常よりも太い場合に対応して基準波形を補正した伸縮補正波形が得られる。また、プラスピークとその次に位置するマイナスピークとの間のデータを削除することでプラスピークとマイナスピークとの間隔が狭まるので、磁気インク文字の線幅が通常よりも細い場合に対応して基準波形を補正した伸縮補正波形が得られる。複数の文字種類のそれぞれについて形成されたこれらの伸縮補正波形と、検出信号波形とを比較して磁気インク文字認識を実行するので、文字の線幅が通常よりも太い場合や細い場合でも文字種類を判別することが可能となる。これにより、磁気インク文字の印刷のばらつき等により、文字の線幅が印刷規格の標準値よりも太い場合や細い場合でも、磁気インク文字認識における認識率を向上させることができる。
【0019】
[適用例7]本適用例に係るプログラムは、記録媒体に記録された磁気インク文字を磁気的に読み取る読取部と、規格で定められた複数の文字種類の基準波形を記憶する記憶部と、を備えた記録媒体処理装置の各部を制御する制御部により実行されるプログラムであって、前記制御部を、前記記憶部に記憶された複数の文字種類の基準波形における、プラス側のプラスピークと、前記プラスピークの次に位置するマイナス側のマイナスピークとの間にデータを挿入するか、又は、前記プラスピークと前記マイナスピークとの間のデータを削除して、伸縮補正波形を形成し、前記記録媒体の前記磁気インク文字を前記読取部により読み取って得られる検出信号波形と、前記伸縮補正波形とを比較して磁気インク文字認識を実行する手段として機能させることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、プラスピークとその次に位置するマイナスピークとの間にデータを挿入することで、プラスピークとマイナスピークとの間隔が広がるので、磁気インク文字の線幅が通常よりも太い場合に対応して基準波形を補正した伸縮補正波形が得られる。また、プラスピークとその次に位置するマイナスピークとの間のデータを削除することでプラスピークとマイナスピークとの間隔が狭まるので、磁気インク文字の線幅が通常よりも細い場合に対応して基準波形を補正した伸縮補正波形が得られる。複数の文字種類のそれぞれについて形成されたこれらの伸縮補正波形と、検出信号波形とを比較して磁気インク文字認識を実行するので、文字の線幅が通常よりも太い場合や細い場合でも文字種類を判別することが可能となる。これにより、磁気インク文字の印刷のばらつき等により、文字の線幅が印刷規格の標準値よりも太い場合や細い場合でも、磁気インク文字認識における認識率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態に係る小切手読取装置の外観斜視図である。
【図2】小切手読取装置の内部構造を示す図である。
【図3】小切手読取装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図4】(A)は小切手の表面側の概略図であり、(B),(C),(D)は磁気インク文字列の一例を示す図である。
【図5】(A)は磁気インク文字の一例を示す図であり、(B)は文字波形データの一例を示す図である。
【図6】文字認識部の動作を示すフローチャートである。
【図7】差異量を説明する図である。
【図8】(A)は伸縮補正波形データの一例を示す図であり、(B)は文字波形データと伸縮補正波形データとを比較して示す図である。
【図9】文字種類「8」の基準波形データを示す図である。
【図10】(A)は文字波形データと基準波形データとを比較して示す図であり、(B)は文字波形データと伸縮補正波形データとを比較して示す図である。
【図11】文字波形データとスライドさせた伸縮補正波形データとを比較して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の一実施形態である記録媒体処理装置、記録媒体処理装置の制御方法、及び、プログラムについて図面を参照して説明する。なお、参照する各図面において、構成をわかりやすく示すため、各構成要素の寸法の比率、角度等が異なる場合がある。
【0023】
(第1の実施形態)
<記録媒体処理装置>
本実施形態に係る記録媒体処理装置を説明する。本実施形態に係る記録媒体処理装置は、小切手読取装置1とホストコンピューター70とで構成される。
【0024】
まず、本実施形態に係る小切手読取装置1の概略構成を説明する。図1は、本実施形態に係る小切手読取装置1の外観斜視図である。
小切手読取装置1は、シート状の記録媒体である小切手4に対し、小切手4に記録された磁気インク文字(MICR文字)の読み取り、小切手4の両面の画像の読み取り、小切手4に対する裏書きに係る所定の画像の記録等の処理を行う装置である。
【0025】
小切手読取装置1は、本体ケース2と、本体ケース2の上側に被せた蓋ケース3とを備えており、この内部に各部品が組み込まれた構成となっている。
蓋ケース3には、上から見た場合にU形状をした細幅の垂直溝からなる小切手4の搬送路5が形成されている。搬送路5の一端は広幅の垂直溝からなる小切手供給部6に連通しており、搬送路5の他端は左右に分岐して、それぞれ広幅の垂直溝からなる第1小切手排出部7及び第2小切手排出部8に繋がっている。
【0026】
小切手4の表面4aには、所定の模様が形成された背景に、金額、振出人、番号、サインなどが記載されており、その下端部分には、図1に示すように、長辺方向に延びる磁気インク文字列4Aが記録されている。磁気インク文字列4Aは、複数の磁気インク文字が横方向に並んで形成されている。
また、小切手4の裏面4bには、裏書き欄が形成されている。この裏書き欄には、後述する記録装置56によって、裏書きに係る所定の画像が記録される。
【0027】
小切手4は、上端4eが上方に位置し下端4fが下方に位置するように上下方向が揃えられ、かつ、表面4aがU形状の搬送路5の外側を向くように表裏が揃えられた状態(図1に示す状態)で、小切手供給部6に挿入される。小切手供給部6に挿入された小切手4は、後端4dを最初として搬送路5に送り出される。
【0028】
小切手供給部6から送り出された小切手4は、搬送路5に沿って搬送されながら、表面4aの画像である表面画像、及び、裏面4bの画像である裏面画像が読み取られ、さらに、表面4aに記録されている磁気インク文字列4Aが磁気的に読み取られる。そして、磁気インク文字列4Aの読み取りが成功した小切手4については、裏書きに係る所定の画像の記録が行われた後に、第1小切手排出部7に排出される。
【0029】
一方、磁気インク文字列4Aの読み取りが失敗した小切手4については、裏書きに係る所定の画像が記録されることなく、第2小切手排出部8に排出される。第2小切手排出部8に排出された小切手4は、読み取りが失敗した原因の究明や、再読み取り等の処理が行われる。
【0030】
図2は小切手読取装置1の内部構造を示す図である。
小切手供給部6には、小切手4を搬送路5に送り出すための小切手送り出し機構10が配置されている。小切手送り出し機構10は、繰り出しローラー11、送り出しローラー12、送り出しローラー12に押し付けられているリタードローラー13、送り出し用モーター14、及び小切手押し付け用のホッパー15を備えている。
【0031】
送り出し用モーター14が駆動すると、小切手供給部6に入れた小切手4がホッパー15によって繰り出しローラー11の側に押し付けられ、この状態で、繰り出しローラー11及び送り出しローラー12が同期回転する。
【0032】
繰り出しローラー11によって小切手4は送り出しローラー12とリタードローラー13との間に送り込まれる。リタードローラー13には所定の回転負荷が与えられており、送り出しローラー12に直接接触している一枚の小切手4のみが他の小切手4から分離されて搬送路5に送り出される。
【0033】
搬送路5は上述したようにU形状をしており、小切手供給部6に繋がっている直線状の上流側搬送路部分21と、第1小切手排出部7、第2小切手排出部8に繋がっており、僅かに折れ曲がった状態で延びている下流側搬送路部分23と、これらの間を繋ぐ湾曲搬送路部分22とを備えている。
【0034】
小切手供給部6から搬送路5に送り出された小切手4を当該搬送路5に沿って搬送する小切手搬送機構30は、第1搬送ローラー31〜第6搬送ローラー36と、これらに押し付けられて連れ回りする第1押圧ローラー41〜第6押圧ローラー46と、第1搬送ローラー31〜第6搬送ローラー36を回転駆動するための搬送用モーター37とを備えている。第1搬送ローラー31〜第6搬送ローラー36は同期して回転するようになっている。搬送用モーター37として、例えばステッピングモーターが用いられている。このため、ステッピングモーターを駆動するステップ数により、小切手4の搬送量を知ることができる。
【0035】
第1搬送ローラー31〜第3搬送ローラー33は、上流側搬送路部分21における上流端、その中程の位置、及び湾曲搬送路部分22との境界位置にそれぞれ配置されている。第4搬送ローラー34は湾曲搬送路部分22における下流側の位置に配置されている。第5搬送ローラー35及び第6搬送ローラー36は、下流側搬送路部分23における中程の位置及び下流端にそれぞれ配置されている。
【0036】
上流側搬送路部分21における第1搬送ローラー31及び第2搬送ローラー32の間には、その上流側から磁気インク文字着磁用の磁石51、表面側コンタクトイメージセンサー52、及び、裏面側コンタクトイメージセンサー53が配置されている。表面側コンタクトイメージセンサー52は、搬送路5を搬送される小切手4の表面4aに対向し、表面4aの画像である表面画像を読み取る。裏面側コンタクトイメージセンサー53は、搬送路5を搬送される小切手4の裏面4bに対向し、裏面4bの画像である裏面画像を読み取る。
【0037】
また、第2搬送ローラー32及び第3搬送ローラー33の間には、磁気インク文字を読み取る読取部としての磁気ヘッド54が配置されており、磁気ヘッド54には、当該ヘッドに小切手4を押し付けるための押圧ローラー55が対峙している。
下流側搬送路部分23における第5搬送ローラー35及び第6搬送ローラー36の間には、裏書きに係る所定の画像の記録用の記録装置56が配置されている。記録装置56は、搬送路5を搬送される小切手4の裏面4bの適切な位置に、適切な方向で所定の画像を記録可能な、印刷ヘッドやスタンプ等を備えている。
【0038】
搬送路5には、小切手搬送制御のための各種センサーが配置されている。磁石51の手前側の位置には、送り出される小切手4の長さを検出するための用紙長検出器61が配置されている。裏面側コンタクトイメージセンサー53と第2搬送ローラー32との間には、小切手4が重なった状態で搬送されていることを検出するための重送検出器62が配置されている。第4搬送ローラー34の手前側の位置にはジャム検出器63が配置されており、ジャム検出器63によって所定時間以上に亘って継続して小切手4が検出されている場合には、搬送路5に小切手4が詰まった紙詰まり状態になったことが分かる。
【0039】
第5搬送ローラー35の手前側の位置には、記録装置56によって裏書きされる小切手4の有無を検出するための印刷検出器64が配置されている。さらに、第6搬送ローラー36の下流側の位置、すなわち、搬送路5から第1小切手排出部7、第2小切手排出部8に分岐している分岐路9の位置には、これらに排出される小切手4を検出するための排出検出器65が配置されている。
【0040】
分岐路9には、駆動モーター67(図3参照)によって切り替え操作される切り替え板66が配置されている。切り替え板66は、第1小切手排出部7、第2小切手排出部8に対して、搬送路5の下流端を選択的に切り替え、小切手4を選択された排出部に導くための部材である。
【0041】
図3は小切手読取装置1の機能的構成を示すブロック図である。
制御部71は、後述するホストコンピューター70のホスト側制御部73の制御の下、小切手読取装置1の各部を中枢的に制御するものであり、CPUや、ROM、RAM、その他の周辺回路等を備えている。
【0042】
制御部71は、ホスト側制御部73の制御の下、送り出し用モーター14、搬送用モーター37を駆動して小切手4(図1参照)を一枚ずつ搬送路5に送り出させ、送り出された小切手4を搬送路5に沿って搬送させる。制御部71による小切手4の搬送制御は、搬送路5に配置されている用紙長検出器61、重送検出器62、ジャム検出器63、印刷検出器64及び排出検出器65からの検出信号に基づいて行われる。
【0043】
小切手4の搬送に伴って、表面側コンタクトイメージセンサー52、及び、裏面側コンタクトイメージセンサー53は、搬送路5を搬送される小切手4の表面の画像、裏面の画像をそれぞれ読み取り、読み取った画像を示す画像データを制御部71に出力する。制御部71は、これら画像データを、ホスト側制御部73に出力する。
また、磁気ヘッド54は、制御部71の制御の下、通過する磁気インク文字列4A(図1参照)によって形成される磁界の変化によって発生する起電力を検出し、検出信号として信号処理回路74に出力する。
【0044】
信号処理回路74は、増幅器や、ノイズ除去用のフィルター回路、A/D変換器等を備え、磁気ヘッド54から入力された検出信号を、増幅し、波形整形し、データとして制御部71に出力する。制御部71は、信号処理回路74から入力された検出信号を示すデータを、ホスト側制御部73に送信する。
操作部75は、本体ケース2(図1参照)に形成された電源スイッチや、操作スイッチ等の各種スイッチを備え、これらスイッチに対するユーザーの操作を検出し、制御部71に出力する。
【0045】
小切手読取装置1には、通信ケーブル72を介してホストコンピューター70が接続されている。
ホストコンピューター70は、CPUや、ROM、RAM、その他の周辺回路等を備えて構成されたホスト側制御部73を備えている。ホスト側制御部73は、後述する文字認識部80を備えている。
【0046】
ホスト側制御部73には、各種情報を表示可能な表示器76と、キーボード、マウス等の入力デバイスが接続された操作部77と、EEPROMやハードディスク等の書き換え可能に各種データを記憶する記憶部78と、が接続されている。
記憶部78は、小切手読取装置1から入力された小切手4の表面画像や、裏面画像を示すデータや、検出信号を示すデータを記憶する。
【0047】
本実施形態では、ホストコンピューター70のホスト側制御部73の制御の下、小切手読取装置1の制御部71が小切手読取装置1の各部を制御する。具体的には、ホスト側制御部73は、そのCPUがROMに記憶されたプログラムを実行して、制御部71を制御するための制御データを生成し、生成した制御データを小切手読取装置1の制御部71に対して出力することにより、小切手読取装置1の各部を制御する。すなわち、本実施形態では、ホストコンピューター70と、小切手読取装置1とが協働して、記録媒体たる小切手4に対して各種処理を実行する記録媒体処理装置として機能する。
【0048】
<文字認識部>
次いで、ホスト側制御部73が備える文字認識部80について説明する。
文字認識部80は、磁気インク文字列4Aを構成する磁気インク文字のそれぞれについて、文字認識を行う。磁気インク文字とは、所定のフォント(例えば、E−13Bフォント)に準拠して、小切手4に磁気印刷された文字のことであり、1つの磁気インク文字は、予め定められた複数の文字種類のうちのいずれか1つの文字種類に対応している。そして、磁気インク文字の認識とは、読み取った磁気インク文字のそれぞれについて、各磁気インク文字の文字種類を確定し、又は、当該磁気インク文字の文字種類を確定できないことを検出することである。
【0049】
なお、E−13Bフォントでは、磁気インク文字の形状として、「0」〜「9」、トランジット記号(TRANSIT SYMBOL)、アマウント記号(AMOUNT SYMBOL)、オン−アス記号(ON−US SYMBOL)、及び、ダッシュ記号(DASH SYMBOL)の14個の文字種類に対応する形状が用意されている。
【0050】
図4(A)は小切手4の表面4a側の概略図であり、図4(B),(C),(D)は磁気インク文字列4Aの一例を示す図である。図5(A)は磁気インク文字の一例を示す図であり、図5(B)は文字波形データの一例を示す図である。詳しくは、図5(A)は、E−13Bフォントの文字種類「2」の磁気インク文字を拡大して示す図である。また、図5(B)は、図5(A)に示す磁気インク文字について後述するステップSA1における処理により生成された文字波形データの内容の一例を模式的に示す図である。
【0051】
図4(A)に示すように、小切手4の表面4a側の下端部分には、小切手情報を示す磁気インク文字列4Aが印刷されている。磁気ヘッド54による磁気インク文字列4Aの読み取りは、小切手4の後端4d側から前端4g側へ向かって磁束を測定することにより実行される。
【0052】
図4(B),(C),(D)に示すように、磁気インク文字列4Aは、1つの磁気インク文字の右端から次の磁気インク文字の右端までの距離である文字間隔が等しくなるように、横方向に並んで形成された複数の磁気インク文字で構成されている。また、各磁気インク文字の線の幅(以下、単に「線幅」という)は、印刷規格により、例えば、0.013±0.003inchと規定されている。
【0053】
図4(B)に示す磁気インク文字列4Aは線幅がほぼ印刷規格の標準値のものであるが、市場に流通している小切手4等の記録媒体の中には、磁気インク文字の印刷のばらつき等により、印刷規格の標準値に比べて、図4(C)に示すように線幅が太いものや、図4(D)に示すように線幅が細いものが存在する。
【0054】
図5(A)に示す磁気インク文字の例では、線幅が印刷規格の標準値である場合、右側の縦の線4hの線幅W1および左側の縦の線4iの線幅W3は、0.013inchであり、線4hと線4iとの横方向における間隔(線4hの左端から線4iの右端までの距離)W2は、例えば、0.026inchである。
【0055】
ここで、線幅W1及び線幅W3が印刷規格の公差の範囲で変動した場合でも、W1+W2はほぼ同じ値となる。すなわち、間隔W2は、線幅W1が0.013inchに対して大きくなればその差分だけ小さくなり、線幅W1が0.013inchに対して小さくなればその差分だけ大きくなる。また、この文字の左側の線4iの左端と左隣の文字(図示省略)の右端との間隔は、線幅W3が0.013inchに対して大きくなればその差分だけ小さくなり、線幅W3が0.013inchに対して小さくなればその差分だけ大きくなる。
【0056】
次に、文字認識部80の動作を説明する。図6は、文字認識部80の動作を示すフローチャートである。図6のフローチャートは、ある1つの小切手4について、当該小切手4に記録された磁気インク文字列4Aの認識を実行する際の文字認識部80の動作を示している。そして、当該小切手4に記録された磁気インク文字列4Aについて、磁気ヘッド54による読み取りが行われ、信号処理回路74によって、増幅処理や、フィルター処理、波形整形処理等の各種処理が実行されて検出信号を示すデータ(以下、「検出信号波形データ」という)が生成され、制御部71により、検出信号波形データが、ホスト側制御部73に出力される。
【0057】
さらに、表面側コンタクトイメージセンサー52により、当該小切手4の表面の画像が読み取られ、画像データとして制御部71からホスト側制御部73に出力される。文字認識部80の機能は、ホスト側制御部73のCPUがROMに記憶されたプログラムを実行する等、ハードウェアとソフトウェアとの協働により実現される。
【0058】
本実施形態では、磁気インク文字列4Aに含まれる全ての磁気インク文字について文字種類を確定できれば、磁気インク文字列4Aの読み取りが成功したものと判別される。一方、1つでも文字種類が確定できない磁気インク文字があれば、磁気インク文字列4Aの読み取りが失敗したものと判別される。
【0059】
<磁気インク文字の切り出し>
図6に示すように、まず、ホスト側制御部73は、制御部71から入力された検出信号波形データから、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字のうち1つの磁気インク文字について、文字の切り出しおよび正規化を行う(ステップSA1)。文字の切り出しとは、検出信号波形データに基づいて、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字のうち1つの磁気インク文字について、当該磁気インク文字の波形を示す文字波形データを生成することである。
【0060】
上述したように、本実施形態では、搬送路5内で小切手4を搬送しつつ、当該小切手4に記録された磁気インク文字列4Aを磁気ヘッド54により読み取る。その際、磁気ヘッド54では、搬送される小切手4の磁気インク文字列4Aを、後端4d側から前端4g側へ向かって所定のサンプリング周期で磁束を測定することにより、磁気インク文字列4Aの読み取りを実行する。
【0061】
この結果、図5(B)に示すような波形を一文字分として、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字数分の波形が連続して現れる検出信号波形データが得られる。なお、以下の説明では、サンプリング周期の最小単位の間隔を1サンプリング単位といい、7サンプリング単位を1メッシュという。本実施形態では、1メッシュ=0.013inchであるものとする。
【0062】
図5(B)において、X軸(横軸)には、時間の経過(サンプリング周期の経過)が規定され(原点からX軸右方に向かうに従って、1サンプリング単位が順次経過したことを示す)、Y軸(縦軸)には、時間の経過に伴う磁荷の変化量の相対値が規定されている。Y軸においては、検出信号波形データの振幅(Y軸方向における変化量)が256段階に分割され、その128段階がゼロ(0)レベルに設定されている。
【0063】
図5(B)では、磁気インク文字列4Aにおいて、小切手4の後端4d側から前端4g側に向かって、所定のサンプリング周期毎に磁荷の変化量の相対値がどのように変化したかが示されており、磁気インク文字列4Aに含まれる各磁気インク文字の磁荷の変化量に対応してY軸方向の値が上下すると共に、磁荷の変化量がプラスであるのかマイナスであるのかに応じてY軸方向の値の正負が変化する。
【0064】
図5(B)の例に示すように、検出信号波形データのX軸方向において1つの磁気インク文字に対応する波形が占める範囲S5は、所定の数のサンプリング単位と規定されており、この規定に準じるように、各種搬送制御が実行されると共に、1サンプリング単位の長さが規定されている。また、1つの磁気インク文字に対応する波形においては、文字切り出し開始位置から所定の間隔S0を空けて、最初に現出するプラス側のピーク(以下、「プラスピーク」という)である第1ピークP1が位置するように規定されている。本実施形態では、1文字分の波形が占める範囲S5は、例えば70サンプリング単位(10メッシュ)であり、所定の間隔S0は、例えば11サンプリング単位である。
【0065】
これを踏まえ、ステップSA1では、文字認識部80は、検出信号波形データを解析し、所定の値を超える当該波形の各ピークのうち、波形の終端位置側(X軸右方)に向かって最初に現出するプラスピークである第1ピークP1を最初のピークとして検出する。
【0066】
ここで、ピークとは、検出信号波形データにおける極大値、極小値に対応する部分のことであり、これらピークはX軸方向において所定の周期で現出するよう規定されている。各ピークに対応するX軸の値をピークの位置という。
【0067】
文字認識部80は、検出した第1ピークP1の位置に基づいて、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字のそれぞれについて、文字切り出し開始位置を決定する。そして、検出信号波形データが示す波形を、決定した文字切り出し開始位置から、1つの磁気インク文字の波形が占める範囲S5に対応する70サンプリング単位(10メッシュ)で切り出す。
その際、図5(B)の例に示すように、文字認識部80は、切り出した波形において第1ピークP1の位置が、X軸における所定の間隔S0を空けた11サンプリング単位目となるように文字切り出し開始位置を決定して、検出信号波形データの波形の切り出しを行う。
【0068】
ステップSA1における文字の切り出しにより、磁気インク文字列4Aに含まれる1つの磁気インク文字について、当該磁気インク文字の検出信号波形データから、図5(B)に示すような文字波形データが生成される。以下、ステップSA1において、切り出された1つの磁気インク文字のことを「処理対象文字」という。
【0069】
続いて、文字認識部80は、生成した処理対象文字の文字波形データについて、各データが示す波形のY軸方向における振幅レベルが、パターンマッチング用の基準波形データのY軸方向における振幅レベルと同等となるよう、データの正規化を行う。パターンマッチング用の基準波形データとは、上述した14の文字種類のうち1つの文字種類に対応する磁気インク文字を磁気ヘッド54によって読み取ったときの検出信号の理想的な波形を示すデータであり、いわゆる磁気インク文字認識におけるパターンマッチング処理で供されるテンプレートデータに該当するデータである。
【0070】
ステップSA1において、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字のそれぞれについて、小切手4の後端4d側に配置された磁気インク文字から前端4g側に配置された磁気インク文字へ向かって順番に切り出され、正規化された後、磁気インク文字毎にステップSA2以下の磁気インク文字認識処理が実行される。
【0071】
ところで、図5(B)に示す文字波形データでは、第1ピークP1の位置からX軸右方に間隔S1を空けた位置に、最初のマイナス側のピーク(以下、「マイナスピーク」という)である第2ピークP2が位置している。また、第2ピークP2の位置からX軸右方に間隔S2を空けた位置に、2番目のプラスピークである第3ピークP3が位置しており、第3ピークP3の位置からX軸右方に間隔S3を空けた位置に、2番目のマイナスピークである第4ピークP4が位置している。
【0072】
図5(B)において、第1ピークP1は図5(A)に示す右側の縦の線4hの右端に対応し、第2ピークP2は線4hの左端に対応している。また、第3ピークP3は図5(A)に示す左側の縦の線4iの右端に対応し、第4ピークP4は線4iの左端に対応している。すなわち、図5(B)に示す間隔S1,S2,S3は、図5(A)に示す線幅W1、間隔W2、線幅W3にそれぞれ対応している。
【0073】
したがって、磁気インク文字の線幅が太くなると、間隔S1,S3は大きくなり、間隔S2は小さくなる。一方、磁気インク文字の線幅が細くなると、間隔S1,S3は小さくなり、間隔S2は大きくなる。また、第4ピークP4の位置と波形の終端位置(X軸右方)との間隔S4は、磁気インク文字の線幅が太くなると小さくなり、磁気インク文字の線幅が細くなると、大きくなる。
【0074】
ここで、磁気ヘッド54による読み取りの際、磁束の変化がない区間における検出信号波形データの振幅(Y軸方向における変化量)はほぼゼロレベル(128段階)となる。線幅が太い場合、間隔S1,S3のそれぞれにおけるゼロレベル近傍の区間が広くなり、間隔S2,S4のそれぞれにおけるゼロレベル近傍の区間が狭くなる。一方、線幅が細い場合、間隔S1,S3のそれぞれにおけるゼロレベル近傍の区間が狭くなり、間隔S2,S4のそれぞれにおけるゼロレベル近傍の区間が広くなる。
【0075】
<磁気インク文字認識処理>
図6に示すステップSA2以下の処理は、いわゆる磁気インク文字認識に係る処理であり、ステップSA1において切り出された磁気インク文字(処理対象文字)に対して、順次実行され、これにより、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字のそれぞれに対して1回ずつ実行される。
【0076】
ステップSA2以下には、第1認識フェーズ(ステップSA2)〜第5認識フェーズ(ステップSA12)の5つの認識フェーズが含まれている。これら5つの認識フェーズは、それぞれ異なる方法により処理対象文字の磁気インク文字認識を行い、当該処理対象文字の文字種類を確定し、又は、確定できないことを検出するフェーズである。本実施形態は、磁気インク文字の線幅のばらつきに対応して認識を行う第4認識フェーズを備えていることを特徴とする。
【0077】
第1認識フェーズ〜第4認識フェーズのいずれかのフェーズにおいて、処理対象文字の文字種類を確定できた場合は、次のフェーズを実行することなく、当該処理対象文字の次の磁気インク文字を処理対象文字とした上で、新たな処理対象文字に対して磁気インク文字認識を実行する。
【0078】
ステップSA2以下の文字認識に係る処理を順を追って説明する。第1認識フェーズ(ステップSA2)では、文字認識部80は、処理対象文字の文字波形データのそれぞれと、14の文字種類に対応する基準波形データのそれぞれとの間の差異量を検出する。
【0079】
処理対象文字の文字波形データと基準波形データとの間の差異量の検出について説明する。図7は、第1認識フェーズで検出される差異量を説明する図である。図7において、文字波形データが示す波形は細線で示され、基準波形データが示す波形は太線で示されている。なお、図7に示す文字波形データの文字種類は、図5(B)示す文字波形データの文字種類と異なっている。
【0080】
差異量とは、図7中、斜線で示す領域の大きさのことであり、より具体的には、X軸上に規定された各サンプリング単位における、文字波形データが示す波形のY軸方向の値と、基準波形データが示す波形のY軸方向の値(波形の値)との差の絶対値の総和のことである。
【0081】
1つの文字波形データが示す波形と、1つの基準波形データが示す波形との間の差異量が小さければ小さいほど、当該1つの文字波形データが示す波形と、当該1つの基準波形データが示す波形とが近似しているということであり、当該1つの文字波形データに対応する磁気インク文字の文字種別が、当該1つの基準波形データに対応する文字種類である蓋然性が高いということである。
【0082】
第1認識フェーズにおける波形データの差異量の検出は、14個の文字種類のそれぞれを比較対象として、例えば、単純比較とスライド比較との2通りの比較により行われる。単純比較とは、処理対象文字の文字波形データが示す波形と、比較対象文字種類に対応する基準波形データの波形とを単純に比較することである。スライド比較とは、処理対象文字の文字波形データが示す波形と、比較対象文字種類に対応する基準波形データの波形とを、所定の範囲内で所定の距離だけスライドさせて比較することである。
【0083】
なお、スライド比較は、単純比較により処理対象文字の文字種類を確定できなかった場合に、実行される。すなわち、単純比較の結果、処理対処文字の文字種類を確定できた場合は、スライド比較を実行することなく、第1認識フェーズを終了する。
【0084】
スライド比較について説明する。文字波形データにおいて、小切手4の搬送の状況、磁気ヘッド54による磁気インク文字列4Aの読み取りの状況、ステップSA1の文字の切り出しの処理の状況等に起因して、実際の波形のX軸方向における位置が、波形の理想的な位置から数サンプリング単位分ずれることがある。そこで、本実施形態では、単純比較だけでなく、スライド比較を行って処理対象文字の文字波形データの波形との間で差異量を検出することにより、上述した「ずれ」を反映して、適切に差異量を算出するようにしている。
【0085】
図示を省略するが、スライド比較において、文字認識部80は、14個の文字種類の中から比較対象とされる文字種類(以下、「比較対象文字種類」という)を特定する。そして、文字認識部80は、比較対象文字種類に対応する基準波形データの波形全体を、X軸方向右側及びX軸方向左側のそれぞれへ、例えば、7、6、5、4、3、2、1、0サンプリング単位分だけスライドした計15通りの波形のそれぞれと、処理対象文字の文字波形データの波形との間の差異量を算出する。
【0086】
このように、14個の文字種類のそれぞれについて、順番に、差異量の算出が15回行われ、15回分の差異量が算出される。そして、文字認識部80は、算出した15回分の差異量のうち、その値が最も小さいものを、比較対象文字種類の差異量として特定する。
【0087】
単純比較及びスライド比較のそれぞれにおいて、14個の文字種類の全てについて差異量の算出が終了した後、文字認識部80は、差異量の検出結果に基づいて、差異量が最も小さかった基準波形データに対応する文字種類を第1候補とし、次に差異量が小さかった基準波形データに対応する文字種類を第2候補とする。
【0088】
そして、文字認識部80は、第1候補および第2候補とされた文字種類に対応する基準波形データと処理対象文字の文字波形データとの差異量を所定の閾値と比較する。その結果、第1候補に対応する基準波形データと処理対象文字の文字波形データとの差異量が閾値以下となり、かつ、第2候補に対応する基準波形データと処理対象文字の文字波形データとの差異量が閾値を上回る場合に、第1候補とされた文字種類を処理対象文字の文字種類として確定する。なお、第1候補との差異量が閾値を上回る場合は、処理対象文字の文字種類を確定することなく、第1認識フェーズを終了する。
【0089】
一方、第1候補とされた文字種類に対応する基準波形データと処理対象文字の文字波形データとの差異量が閾値以下であり、かつ、第2候補とされた文字種類に対応する基準波形データと処理対象文字の文字波形データとの差異量が閾値以下である場合は、文字認識部80は、処理対象文字の文字種類を確定しない。
【0090】
ここで、上述の閾値は、処理対象文字の文字波形データと当該処理対象文字の正しい文字種類に対応する基準波形データとの間の差異量のみが閾値以下となり、かつ、当該文字波形データと他の文字種類に対応する基準波形データとの間の差異量が閾値を上回るように適宜設定される。このように閾値を設定することで、正常に小切手4が搬送され磁気ヘッド54により正常に磁気インク文字列4Aが読み取られれば閾値以下となる差異量に係る文字種類は1つに限定される。
【0091】
一方、閾値以下となる差異量に係る文字種類が複数存在している状況のときは、磁気ヘッド54による読み取りエラーや、小切手4の搬送エラー、その他の何らかの原因により、当該状況が現出している可能性がある。したがって、このような状況のときに処理対象文字の文字種類を確定すると、誤認識を招くおそれがある。
【0092】
なお、磁気インク文字列4Aの各磁気インク文字は、小切手4にオフセット印刷により印刷される場合と、レーザー印刷により印刷される場合とがある。そして、それぞれの印刷によって印刷される磁気インク文字は、その形状が互いに相違している。これを踏まえ、第1認識フェーズではオフセット印刷用の基準波形データが利用されて各種処理が実行され、第3認識フェーズではレーザー印刷用の基準波形データが利用されて各種処理が実行される。
【0093】
図6に示すように、第1認識フェーズ(ステップSA2)の実行後、文字認識部80は、第1認識フェーズにおいて、処理対象文字の文字種類が確定できたか否かを判別する(ステップSA3)。
処理対象文字の文字種類が確定できた場合(ステップSA3:YES)、文字認識部80は、第2認識フェーズを行うことなく、処理手順をステップSA4へ移行する。
処理対象文字の文字種類が確定できなかった場合(ステップSA3:NO)、文字認識部80は、第2認識フェーズを実行する(ステップSA6)。
【0094】
第2認識フェーズ(ステップSA6)は、磁気インク文字の印刷状態や小切手4の搬送状況等により文字波形データの波形がX軸方向に伸び、又は、縮んだ場合に対応する認識フェーズである。
【0095】
第2認識フェーズでは、検出信号波形データにおける処理対象文字の文字間隔に基づいて磁気インク文字の伸びや縮みを検出し、検出された伸びや縮みを反映して、比較対象文字種類に対応する基準波形データの波形を、例えば、文字間隔の両側又は片側に伸縮させて補正する。そして、補正された基準波形データのそれぞれの波形と、処理対象文字に対応する文字波形データの波形との間の差異量を検出する。
【0096】
第2認識フェーズにおいても、文字認識部80は、検出された差異量が小さかった順に文字種類の第1候補及び第2候補を選別し、第1候補に対応する基準波形データと処理対象文字の文字波形データとの差異量が閾値以下となり、かつ、第2候補に対応する基準波形データと処理対象文字の文字波形データとの差異量が閾値を上回る場合に、第1候補とされた文字種類を処理対象文字の文字種類として確定する。
【0097】
また、第1候補とされた文字種類に対応する基準波形データと処理対象文字の文字波形データとの差異量が閾値以下であり、かつ、第2候補とされた文字種類に対応する基準波形データと処理対象文字の文字波形データとの差異量が閾値以下であっても、その差異量が上述の第1候補との差異量に所定の係数を乗じたもの以上である場合は、第1候補とされた文字種類を処理対象文字の文字種類として確定する。これら以外の場合は、処理対象文字の文字種類を確定しない。
【0098】
この第2認識フェーズでは、上述のように、文字波形データの波形の伸びや縮みを反映した上で、第1候補、及び、第2候補となる文字種類を選別する。そのため、第2認識フェーズで選別された第1候補及び第2候補は、本実施形態における他の認識フェーズにおいて選別された第1候補や第2候補と比較し、最も信頼性が高いといえる。
【0099】
第2認識フェーズ(ステップSA6)の実行後、文字認識部80は、第2認識フェーズにおいて処理対象文字の文字種類が確定したか否かを判別し(ステップSA7)、確定できた場合は(ステップSA7:YES)、処理手順をステップSA4へ移行し、確定できなかった場合は(ステップSA7:NO)、第3認識フェーズを実行する(ステップSA8)。
【0100】
第3認識フェーズ(ステップSA8)では、レーザー印刷用の基準波形データが利用されて、第1認識フェーズと同様の各種処理が実行されるので、説明を省略する。
【0101】
第3認識フェーズの実行後、文字認識部80は、第3認識フェーズにおいて処理対象文字の文字種類が確定したか否かを判別し(ステップSA9)、確定できた場合は(ステップSA9:YES)、処理手順をステップSA4へ移行し、確定できなかった場合は(ステップSA9:NO)、第4認識フェーズを実行する(ステップSA10)。
【0102】
第4認識フェーズ(ステップSA10)は、磁気インク文字の印刷状態等により図5(A)に示す線幅W1,W3が太い場合、又は、細い場合、すなわち、図5(B)に示す文字波形データにおいて、間隔S1,S3が大きい場合、又は、小さい場合に対応する認識フェーズである。
【0103】
第4認識フェーズでは、処理対象文字の波形における間隔S1,S3が大きい場合、及び、小さい場合に対応して、比較対象文字種類に対応する基準波形データの波形において、例えば、間隔S1,S3に対応する波形部分を伸縮させて補正する。そして、伸縮補正された基準波形データ(以下、「伸縮補正波形データ」という)のそれぞれの波形と、処理対象文字に対応する文字波形データの波形とを比較して(以下、「線幅伸縮比較」という)、差異量を検出する。
【0104】
伸縮補正波形データの形成方法及び差異量の検出について、図8(A)及び(B)を参照して説明する。図8(A)は伸縮補正波形データの一例を示す図であり、図8(B)は文字波形データと伸縮補正波形データとを比較して示す図である。なお、図8(A)及び(B)における点線は、X軸方向を1メッシュ毎に区切るとともに、Y軸方向のプラス側及びマイナス側を32段階毎に区切っている。
【0105】
図8(A)において、文字種類「2」の基準波形データを太い実線で示す。この基準波形データに対し、線幅が太い場合及び細い場合に対応して、例えば、X軸方向に±2サンプリング単位の範囲で伸縮を行い、伸縮補正波形データを形成する。
【0106】
ここで、上述した通り、線幅の公差は0.013±0.003inchであるが、1メッシュ(7サンプリング単位)=0.013inchより、1サンプリング単位=0.013/7inchであるので、線幅の公差範囲はおおよそ±1.6サンプリング単位に相当する。したがって、X軸方向に±2サンプリング単位の範囲で基準波形の伸縮を行えば、印刷規格の線幅の上限から下限までの範囲に対応できることとなる。
【0107】
また、上述した通り、線幅が太い場合、間隔S1,S3におけるゼロレベル近傍の区間が広くなり、間隔S2,S4におけるゼロレベル近傍の区間が狭くなる。一方、線幅が細い場合、間隔S1,S3におけるゼロレベル近傍の区間が狭くなり、間隔S2,S4におけるゼロレベル近傍の区間が広くなる。そこで、間隔S1,S3のそれぞれ(ピーク同士の間)に波形の伸縮を行う伸縮点E1,E2を設定する。そして、間隔S2,S4のそれぞれに、波形の伸縮に伴う補完を行う補完点C1,C2を設定する。
【0108】
伸縮点E1,E2は、線幅がばらついた場合に、文字波形データにおいて波形が伸縮する影響を受ける位置の近傍に設定することが好ましい。線幅がばらついた場合に影響を受ける位置は、間隔S1,S3においてサンプリング単位当たりの変化量が小さい点であり、例えば、間隔S1,S3の中央位置や、波形の値がゼロレベルとなる位置である。また、補完点C1,C2は、波形の値がゼロレベルとなる点の近傍に設定することが好ましい。
【0109】
伸縮補正波形データは、例えば、以下の方法で形成する。まず、基準波形データの間隔S1,S3のそれぞれを1サンプリング単位大きくする場合は、伸縮点E1,E2のそれぞれの位置の直前の位置に、(伸縮点の値+伸縮点の直前の値)/2のデータを挿入する。そして、補完点C1,C2のそれぞれの位置のデータを削除する。
【0110】
この結果、データが挿入されたことにより、第1ピークP1の位置に対して第2ピークP2の位置がX軸右方に1サンプリング単位だけ移動し、第3ピークP3の位置に対して第4ピークP4の位置がX軸右方に1サンプリング単位だけ移動する。一方、補完点C1,C2のデータが削除されることにより、第1ピークP1の位置に対する第3ピークP3の位置、及び、波形の終端位置に対する第3ピークP3の位置は変わらない。
【0111】
基準波形データの間隔S1,S3のそれぞれを2サンプリング単位大きくする場合は、伸縮点E1,E2のそれぞれの位置の直前の位置に、(伸縮点の値+伸縮点の直前の値)/2のデータを挿入し、伸縮点E1,E2のそれぞれの位置とデータを挿入した位置との間に、(伸縮点の値+挿入したデータの値)/2のデータを挿入する。そして、補完点C1,C2のそれぞれの位置のデータ、及び補完点C1,C2の次の位置のデータを削除する。
【0112】
基準波形データの間隔S1,S3のそれぞれを1サンプリング単位小さくする場合は、伸縮点E1,E2のそれぞれの位置のデータを削除し、補完点C1,C2のそれぞれの位置の直前の位置に、(補完点の値+補完点の直前の値)/2のデータを挿入する。
【0113】
基準波形データの間隔S1,S3のそれぞれを2サンプリング単位小さくする場合は、伸縮点E1,E2のそれぞれの位置のデータ、及び伸縮点E1,E2の次の位置のデータを削除する。そして、補完点C1,C2のそれぞれの位置の直前の位置に、(補完点の値+補完点の直前の値)/2のデータを挿入し、補完点C1,C2のそれぞれの位置とデータを挿入した位置との間に、(補完点の値+挿入したデータの値)/2のデータを挿入する。
【0114】
以上の結果、図8(A)に太い実線で示す基準波形データを基にして、磁気インク文字の線幅が標準値よりも太い場合に対応して、間隔S1,S3のそれぞれを、1サンプリング単位大きくした伸縮補正波形データ「伸縮補正波形(+1)」(破線で示す)と、2サンプリング単位大きくした伸縮補正波形データ「伸縮補正波形(+2)」(2点鎖線で示す)とが形成される。
【0115】
また、磁気インク文字の線幅が標準値よりも細い場合に対応して、間隔S1,S3のそれぞれを、1サンプリング単位小さくした伸縮補正波形データ「伸縮補正波形(−1)」(細い実線で示す)と、2サンプリング単位小さくした伸縮補正波形データ「伸縮補正波形(−2)」(1点鎖線で示す)とが形成される。したがって、合計4つの伸縮補正波形データが形成される。
【0116】
図8(B)には、文字種類「4」の場合の処理対象文字の文字波形データ(細い実線で示す)と、伸縮補正を行う前の基準波形データ(破線で示す)と、基準波形データから2サンプリング単位小さくした「伸縮補正波形(−2)」の伸縮補正波形データ(太い実線で示す)とを比較して示している。
【0117】
図8(B)に示すように、第2ピークP2及び第4ピークP4の位置が、破線で示す基準波形データでは文字波形データに対してX軸右方側に大きくずれているが、太い実線で示す「基準波形−2」の伸縮補正波形データでは文字波形データに近付いている。したがって、基準波形データの伸縮補正を行うことにより、文字波形データとの差異量が小さくなり、パターンマッチング度が向上するので、認識率を向上させることができる。
【0118】
第4認識フェーズにおける波形データの差異量の検出は、例えば、基準波形データ及び上述の4つの伸縮補正波形データの波形を予め用意しておき、これらの波形と処理対象文字の文字波形データが示す波形との比較を順次行う。なお、文字波形データとの比較の都度、伸縮補正波形データを形成するようにしてもよいが、予め伸縮補正波形データを形成しておくようにすれば、第4認識フェーズにおける処理速度を速くすることができる。
【0119】
第4認識フェーズにおいても、文字認識部80は、検出された差異量が小さかった順に文字種類の第1候補及び第2候補を選別し、第1候補に対応する基準波形データと処理対象文字の文字波形データとの差異量が閾値以下となり、かつ、第2候補に対応する基準波形データと処理対象文字の文字波形データとの差異量が閾値を上回る場合に、第1候補とされた文字種類を処理対象文字の文字種類として確定する。
一方、第1候補との差異量が閾値を上回る場合、第1候補との差異量及び第2候補との差異量が閾値以下である場合は、文字認識部80は、処理対象文字の文字種類を確定しない。
【0120】
本実施形態では、第1認識フェーズにおける波形のスライド比較、及び、第2認識フェーズにおける波形全体の伸び縮みを反映した比較に加えて、この第4認識フェーズにおいて、磁気インク文字の線幅のばらつきに起因する波形の一部の伸び縮みを反映した比較を行っている。これにより、磁気インク文字認識における認識率を向上させることができる。
【0121】
ところで、文字種類によって、磁気インク文字を構成する線の数や配置が異なるため、生成された文字波形データにおけるピークの数や位置関係が上記と異なる場合がある。そのため、伸縮点及び補完点を設定する位置及び箇所数は上記に限定されるものではない。以下に、ピークの数や位置関係が異なる場合の一例を説明する。図9は、文字種類「8」の基準波形データを示す図である。
【0122】
図9に示すように、文字種類「8」の基準波形データには、第1ピークP1から第6ピークP6までの6つのピークが存在する。これら6つのピークのうち、第1ピークP1、第2ピークP2、及び第4ピークP4はプラスピークであり、第3ピークP3、第5ピークP5、及び第6ピークP6はマイナスピークである。
【0123】
文字種類「8」の場合、プラスピークである第2ピークP2とその次に位置するマイナスピークである第3ピークP3との間に伸縮点E1を設定し、プラスピークである第4ピークP4とその次に位置するマイナスピークである第5ピークP5との間に伸縮点E2を設定する。また、マイナスピークである第3ピークP3とその次に位置するプラスピークである第4ピークP4との間に補完点C1を設定し、最後のマイナスピークである第6ピークP6と波形の終端との間に補完点C2を設定する。
【0124】
このように、磁気インク文字の文字種類、すなわち生成された文字波形におけるピークの数や位置関係に関わらず、プラスピークとその次に位置するマイナスピークとの間に伸縮点を設置し、マイナスピークとその次に位置するプラスピークとの間、及び最後のマイナスピークと波形の終端との間に補完点を設定すればよい。
【0125】
図6に戻り、第4認識フェーズ(ステップSA10)の実行後、文字認識部80は、第4認識フェーズにおいて処理対象文字の文字種類が確定したか否かを判別し(ステップSA11)、確定できた場合は(ステップSA11:YES)、処理手順をステップSA4へ移行し、確定できなかった場合は(ステップSA11:NO)、第5認識フェーズを実行する(ステップSA12)。
【0126】
第5認識フェーズ(ステップSA12)では、全てのサンプリング単位ではなく、基準波形データのピークの位置やその前後のサンプリング単位目における基準波形データの波形と処理対象文字の文字波形データの波形とを比較する。これにより、処理対象文字の文字波形データの波形において、乱れがあった場合にその影響を排し、部分的な伸びや、縮み、ずれ、が生じた場合にこれらを反映して、適切に処理対象文字の文字認識を実行する。
【0127】
第5認識フェーズでは、処理対象文字の文字種類の最終的な確定を行わず、後述する所定の条件が成立した場合にのみ、処理対象文字の文字種類が確定される。これを踏まえ、第5認識フェーズにおける処理対象文字の文字種類の確定については、「仮確定」と表現し、他の認識フェーズにおける文字種類の確定と区別するものとする。
【0128】
第5認識フェーズの終了後、文字認識部80は、第5認識フェーズにおいて処理対象文字の文字種類を仮確定できたか否かを判別する(ステップSA13)。
第5認識フェーズにおいて処理対象文字の文字種類を仮確定できなかった場合(ステップSA13:NO)、すなわち、第1認識フェーズ〜第5認識フェーズのいずれにおいても処理対象文字の文字種類を確定できなかった場合、文字認識部80は、磁気インク文字認識では処理対象文字の文字種類を確定できないものと判別し(ステップSA21)、処理手順をステップSA4へ移行する。
【0129】
第5認識フェーズにおいて処理対象文字の文字種類を仮確定できた場合(ステップSA13:YES)、文字認識部80は、第5認識フェーズにおいて仮確定した文字種類と、第2認識フェーズにおいて第1候補とされた文字種類、及び、第2候補とされた文字種類のいずれかと、が一致するか否かを判別する(ステップSA14)。
【0130】
一致しない場合(ステップSA14:NO)、文字認識部80は、磁気インク文字認識では処理対象文字の文字種類を確定できないものと判別し(ステップSA21)、処理手順をステップSA4へ移行する。
一方、一致する場合(ステップSA14:YES)、文字認識部80は、第5認識フェーズにおいて仮確定した文字を、処理対象文字の文字種類として確定し(ステップSA15)、処理手順をステップSA4へ移行する。
【0131】
ステップSA4では、磁気インク文字列4Aに含まれる全ての磁気インク文字が処理対象文字となり、文字認識に係る処理が実行されたか否かが判別される。
磁気インク文字列4Aに含まれる全ての磁気インク文字が処理対象文字となっていない場合(ステップSA4:NO)、文字認識部80は、処理手順をステップSA1へ戻して、次の磁気インク文字について文字の切り出し及び正規化を実行する。
【0132】
一方、磁気インク文字列4Aに含まれる全ての磁気インク文字が処理対象文字となったと判別された場合(ステップSA4:YES)、文字認識部80は、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字の文字数を検出する(ステップSA5)。
【0133】
ステップSA5に次いで、文字認識部80は、磁気インク文字列4Aに含まれる全ての磁気インク文字について、文字種類が確定したか否かを判別する(ステップSA16)。
【0134】
全ての磁気インク文字について文字種類が確定した場合(ステップSA16:YES)、ホスト側制御部73は、磁気インク文字列4Aの読み取りが成功したものとして、磁気インク文字列4Aの読み取りが成功した場合に行うべき処理を行う(ステップSA17)。磁気インク文字列4Aの読み取りが成功した場合に行うべき処理には、例えば、磁気インク文字列4Aが示す情報を記憶部78に記憶し、また、制御部71に記録装置56を制御させて、小切手4の裏面に裏書きに係る所定の画像を記録し、また、第1小切手排出部7に小切手4を排出する等の処理が含まれる。
【0135】
一方、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字について、1つでも文字種類が確定しなかったものが存在した場合(ステップSA16:NO)、文字認識部80は、文字種類が確定しなかった磁気インク文字に対して光学的な文字の認識を行う光学認識処理(ステップSA18)を実行する。
【0136】
ステップSA18の光学認識処理では、文字認識部80は、表面側コンタクトイメージセンサー52の読み取り結果に基づいて生成された小切手4の表面の画像を示すデータにおいて、磁気インク文字列4Aの画像に対応するデータの範囲を特定し、磁気インク文字毎に画像データを切り出す。そして、14種類の文字種類のそれぞれに対応するビットマップパターンと切り出した画像データとを比較することにより、光学文字認識を実行し、磁気インク文字のそれぞれの文字種類を仮確定する。
【0137】
次いで、文字認識部80は、光学文字認識の結果に基づいて磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字の文字数を検出し、ステップSA5で検出された文字数と一致するか否かを判別する。文字数が一致しない場合、文字認識部80は、磁気インク文字列4Aの読み取りに失敗したと判別し、ステップSA18の光学認識処理を終了する。
【0138】
文字数が一致する場合、文字認識部80は、ステップSA21において文字種類を確定できないと判別された磁気インク文字ついて、1文字ずつ順番に、光学文字認識で仮確定された文字種類と、第2認識フェーズ(ステップSA6)において第1候補とされた文字種類、及び、第2候補とされた文字種類のいずれかと、が一致するか否かを判別する。
【0139】
判別の結果、一致する場合、文字認識部80は、仮確定した文字を、処理対象文字の文字種類として確定する。一方、一致しない場合、文字認識部80は、処理対象文字について、光学文字認識を利用した文字認識によっても文字種類を確定できないと判別する。これらの処理を、ステップSA21において文字種類を確定できないと判別された全ての磁気インク文字が処理対象文字となるまで行う。
【0140】
次いで、文字認識部80は、光学認識処理により、文字種類が確定していなかった全ての磁気インク文字について、文字種類が確定したか否かを判別し(ステップSA19)、全ての磁気インク文字について、文字種類が確定した場合は(ステップSA19:YES)、磁気インク文字列4Aの読み取りが成功した場合に行うべき処理を行う(ステップSA17)。
【0141】
一方、1つでも文字種類が確定しなかった磁気インク文字が存在する場合(ステップSA19:NO)、ホスト側制御部73は、磁気インク文字列4Aの読み取りが失敗した場合に行うべき処理を行う(ステップSA20)。
磁気インク文字列4Aの読み取りが失敗した場合に行うべき処理として、ホスト側制御部73は、制御部71を制御して、裏書きに係る画像の印刷等を行うことなく、第2小切手排出部8に小切手4を搬送する処理を行う。第2小切手排出部8に排出された小切手4は、読み取りが失敗した原因の究明や、再読み取り等の処理が行われる。
【0142】
以上説明したように、本実施形態に係る記録媒体処理装置、記録媒体処理装置の制御方法、及び、プログラムによれば、以下の効果が得られる。
【0143】
第4認識フェーズにおいて、磁気インク文字の線幅が印刷規格の標準値よりも太い場合及び細い場合に対応して、基準波形データを伸縮補正して形成した伸縮補正波形データと文字波形データとを比較して、磁気インク文字認識を行う。これにより、磁気インク文字の印刷のばらつき等により、磁気インク文字の線幅が印刷規格の標準値よりも太い場合及び細い場合においても、文字波形データとの差異量を小さくできるので、パターンマッチング度が向上し、認識率を向上させることができる。
【0144】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る記録媒体処理装置、記録媒体処理装置の制御方法、及び、プログラムを説明する。
【0145】
第2の実施形態に係る記録媒体処理装置、記録媒体処理装置の制御方法、及び、プログラムは、第1の実施形態に係る記録媒体処理装置、記録媒体処理装置の制御方法、及び、プログラムに対して、ステップSA10の第4認識フェーズにおいて線幅伸縮スライド比較をさらに実行する点が異なっているが、その他の構成はほぼ同じである。したがって、ここでは、第1の実施形態と異なる点について説明する。
【0146】
第1の実施形態において、第1認識フェーズのスライド比較で説明したように、実際の波形のX軸方向における位置が、波形の理想的な位置から数サンプリング単位分ずれることがある。このような波形のズレが磁気インク文字の線幅のばらつきと複合して発生した場合、第1の実施形態の第4認識フェーズでは文字種類の確定が困難となり、認識率が低下することとなる。
【0147】
そこで、第2の実施形態では、第4認識フェーズにおいて、まず、第1の実施形態と同様に線幅伸縮比較を行う。そして、線幅伸縮比較の結果、処理対象文字の文字種類を確定できなかった場合に、文字波形データに対して伸縮補正波形データを所定の範囲内で所定の距離だけスライドさせて、両者の比較を行う(以下、「線幅伸縮スライド比較」という)。
【0148】
線幅伸縮スライド比較について、図10及び図11を参照して説明する。図10(A)は文字波形データと基準波形データとを比較して示す図であり、図10(B)は文字波形データと伸縮補正波形データとを比較して示す図である。図11は、文字波形データとスライドさせた伸縮補正波形データとを比較して示す図である。
【0149】
図10(A)において、文字波形データが示す波形は細線で示され、基準波形データが示す波形は太線で示されている。図10(A)に示すように、文字波形データにおける第1ピークP1の位置と第2ピークP2の位置との間隔、及び、第3ピークP3の位置と第4ピークP4位置との間隔は、基準波形データにおけるそれぞれの間隔よりも狭くなっている。すなわち、この文字波形データは、線幅が印刷規格の標準値よりも細い磁気インク文字から生成されたものと考えられる。
【0150】
次に、図10(B)に示すように、基準波形データを基に、第1ピークP1の位置と第2ピークP2の位置との間隔、及び、第3ピークP3の位置と第4ピークP4位置との間隔を小さくして伸縮補正波形データを形成し、線幅伸縮比較を行う。この線幅伸縮比較では、各ピークの位置がずれているため、すなわち、波形全体がX軸方向にずれているため、両者の波形の間の差異量は大きくなり、文字種類を確定することは困難である。
【0151】
そこで、図11に示すように、伸縮補正波形データをX軸左方にスライドさせて、線幅伸縮スライド比較を行う。この線幅伸縮スライド比較によれば、文字波形データと伸縮補正波形データとで、各ピークの位置がほぼ一致し、両者の波形の間の差異量が小さくなって、文字種類を確定することが可能となる。
【0152】
線幅伸縮スライド比較における伸縮補正波形データの波形のスライド量は、第1認識フェーズのスライド比較におけるスライド量よりも小さい範囲とし、例えば、X軸方向右側及びX軸方向左側のそれぞれへ、3、2、1、0サンプリング単位分だけスライドした計7通りとする。これは、以下の理由による。
すなわち、第2の実施形態に係る第4認識フェーズの線幅伸縮スライド比較では、磁気インク文字の線幅のばらつきに対応して基準波形データの波形を伸縮させた上に、波形全体をスライドさせる。そのため、スライド量が大きいと、本来の文字種類とは別の文字種類の波形に近くなってしまう可能性があり、誤認識を招くリスクが大きくなる。したがって、スライド量を第1認識フェーズよりも小さく設定することで、誤認識のリスクを低減している。
【0153】
以上説明したように、第2の実施形態に係る記録媒体処理装置、記録媒体処理装置の制御方法、及び、プログラムによれば、以下の効果が得られる。
【0154】
第4認識フェーズにおいて、文字波形データと伸縮補正波形データとの線幅伸縮比較により処理対象文字の文字種類を確定できなかった場合に、文字波形データに対して伸縮補正波形データを所定の範囲内で所定の距離だけスライドさせて線幅伸縮スライド比較を行うので、磁気インク文字の線幅のばらつきと波形のズレとが複合して発生した場合でも、認識率を向上させることができる。
【0155】
なお、上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形及び応用が可能である。変形例を以下に述べる。なお、上述した実施形態と同一の構成については、同一の符号を使用し、重複する説明は省略する。
【0156】
(変形例)
例えば、上述した実施形態では、第5認識フェーズ(ステップSA12)及び光学認識処理(ステップSA18)において仮確定した文字種類が、第2認識フェーズ(ステップSA6)において第1候補とされた文字種類、及び、第2候補とされた文字種類のいずれかと一致する場合に、文字種類を確定する構成であったが、このような構成に限定されない。第5認識フェーズ及び光学認識処理において仮確定した文字種類が、第4認識フェーズ(ステップSA10)において第1候補とされた文字種類、及び、第2候補とされた文字種類のいずれかと一致する場合に、文字種類を確定する構成としてもよい。
【0157】
また、上述した実施形態では、ホストコンピューター70が文字認識部80を備え、磁気インク文字の認識を実行する構成であったが、この文字認識部80の機能を、小切手読取装置1に持たせるようにし、小切手読取装置1が単独で、磁気インク文字の認識に係る各種処理を実行する構成としてもよい。この場合、小切手読取装置1が、記録媒体処理装置として機能する。
【符号の説明】
【0158】
1…小切手読取装置(記録媒体処理装置)、4…小切手(記録媒体)、4A…磁気インク文字列、30…小切手搬送機構(搬送部)、54…磁気ヘッド(読取部)、70…ホストコンピューター(記録媒体処理装置)、71…制御部、73…ホスト側制御部、78…記憶部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に記録された磁気インク文字を磁気的に読み取る読取部と、
規格で定められた複数の文字種類の基準波形を記憶する記憶部と、
前記読取部と前記記憶部とを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記記憶部に記憶された複数の文字種類の基準波形における、プラス側のプラスピークと、前記プラスピークの次に位置するマイナス側のマイナスピークとの間にデータを挿入するか、又は、前記プラスピークと前記マイナスピークとの間のデータを削除して、伸縮補正波形を形成し、
前記記録媒体の前記磁気インク文字を前記読取部により読み取って得られる検出信号波形と、前記伸縮補正波形とを比較して磁気インク文字認識を実行することを特徴とする記録媒体処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記伸縮補正波形を形成する際、前記プラスピークと前記マイナスピークとの間にデータを挿入する場合は、前記マイナスピークと、前記マイナスピークの次に位置するプラスピークとの間のデータを削除し、前記プラスピークと前記マイナスピークとの間のデータを削除する場合は、前記マイナスピークと、前記マイナスピークの次に位置する前記プラスピークとの間にデータを挿入することを特徴とする請求項1に記載の記録媒体処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記伸縮補正波形を形成する際、前記基準波形の最後のプラスピークと最後のマイナスピークとの間にデータを挿入する場合は、前記最後のマイナスピークと、前記最後のマイナスピークの次に位置する終端部との間のデータを削除し、前記最後のプラスピークと前記最後のマイナスピークとの間のデータを削除する場合は、前記最後のマイナスピークと、前記最後のマイナスピークの次に位置する前記終端部との間にデータを挿入することを特徴とする請求項2に記載の記録媒体処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記伸縮補正波形を形成する際、前記基準波形における前記プラスピークと前記マイナスピークとの中央位置の近傍、又は、波形の値がゼロとなる位置の近傍において、前記データの挿入又は削除を行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の記録媒体処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記磁気インク文字認識を実行する際、前記検出信号波形に対して前記伸縮補正波形を所定の距離スライドさせて比較することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の記録媒体処理装置。
【請求項6】
記録媒体に記録された磁気インク文字を磁気的に読み取る読取部と、規格で定められた複数の文字種類の基準波形を記憶する記憶部と、を備えた記録媒体処理装置の制御方法であって、
前記記憶部に記憶された複数の文字種類の基準波形における、プラス側のプラスピークと、前記プラスピークの次に位置するマイナス側のマイナスピークとの間にデータを挿入するか、又は、前記プラスピークと前記マイナスピークとの間のデータを削除して、伸縮補正波形を形成し、
前記記録媒体の前記磁気インク文字を前記読取部により読み取って得られる検出信号波形と、前記伸縮補正波形とを比較して磁気インク文字認識を実行することを特徴とする記録媒体処理装置の制御方法。
【請求項7】
記録媒体に記録された磁気インク文字を磁気的に読み取る読取部と、規格で定められた複数の文字種類の基準波形を記憶する記憶部と、を備えた記録媒体処理装置の各部を制御する制御部により実行されるプログラムであって、
前記制御部を、
前記記憶部に記憶された複数の文字種類の基準波形における、プラス側のプラスピークと、前記プラスピークの次に位置するマイナス側のマイナスピークとの間にデータを挿入するか、又は、前記プラスピークと前記マイナスピークとの間のデータを削除して、伸縮補正波形を形成し、
前記記録媒体の前記磁気インク文字を前記読取部により読み取って得られる検出信号波形と、前記伸縮補正波形とを比較して磁気インク文字認識を実行する手段として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項1】
記録媒体に記録された磁気インク文字を磁気的に読み取る読取部と、
規格で定められた複数の文字種類の基準波形を記憶する記憶部と、
前記読取部と前記記憶部とを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記記憶部に記憶された複数の文字種類の基準波形における、プラス側のプラスピークと、前記プラスピークの次に位置するマイナス側のマイナスピークとの間にデータを挿入するか、又は、前記プラスピークと前記マイナスピークとの間のデータを削除して、伸縮補正波形を形成し、
前記記録媒体の前記磁気インク文字を前記読取部により読み取って得られる検出信号波形と、前記伸縮補正波形とを比較して磁気インク文字認識を実行することを特徴とする記録媒体処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記伸縮補正波形を形成する際、前記プラスピークと前記マイナスピークとの間にデータを挿入する場合は、前記マイナスピークと、前記マイナスピークの次に位置するプラスピークとの間のデータを削除し、前記プラスピークと前記マイナスピークとの間のデータを削除する場合は、前記マイナスピークと、前記マイナスピークの次に位置する前記プラスピークとの間にデータを挿入することを特徴とする請求項1に記載の記録媒体処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記伸縮補正波形を形成する際、前記基準波形の最後のプラスピークと最後のマイナスピークとの間にデータを挿入する場合は、前記最後のマイナスピークと、前記最後のマイナスピークの次に位置する終端部との間のデータを削除し、前記最後のプラスピークと前記最後のマイナスピークとの間のデータを削除する場合は、前記最後のマイナスピークと、前記最後のマイナスピークの次に位置する前記終端部との間にデータを挿入することを特徴とする請求項2に記載の記録媒体処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記伸縮補正波形を形成する際、前記基準波形における前記プラスピークと前記マイナスピークとの中央位置の近傍、又は、波形の値がゼロとなる位置の近傍において、前記データの挿入又は削除を行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の記録媒体処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記磁気インク文字認識を実行する際、前記検出信号波形に対して前記伸縮補正波形を所定の距離スライドさせて比較することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の記録媒体処理装置。
【請求項6】
記録媒体に記録された磁気インク文字を磁気的に読み取る読取部と、規格で定められた複数の文字種類の基準波形を記憶する記憶部と、を備えた記録媒体処理装置の制御方法であって、
前記記憶部に記憶された複数の文字種類の基準波形における、プラス側のプラスピークと、前記プラスピークの次に位置するマイナス側のマイナスピークとの間にデータを挿入するか、又は、前記プラスピークと前記マイナスピークとの間のデータを削除して、伸縮補正波形を形成し、
前記記録媒体の前記磁気インク文字を前記読取部により読み取って得られる検出信号波形と、前記伸縮補正波形とを比較して磁気インク文字認識を実行することを特徴とする記録媒体処理装置の制御方法。
【請求項7】
記録媒体に記録された磁気インク文字を磁気的に読み取る読取部と、規格で定められた複数の文字種類の基準波形を記憶する記憶部と、を備えた記録媒体処理装置の各部を制御する制御部により実行されるプログラムであって、
前記制御部を、
前記記憶部に記憶された複数の文字種類の基準波形における、プラス側のプラスピークと、前記プラスピークの次に位置するマイナス側のマイナスピークとの間にデータを挿入するか、又は、前記プラスピークと前記マイナスピークとの間のデータを削除して、伸縮補正波形を形成し、
前記記録媒体の前記磁気インク文字を前記読取部により読み取って得られる検出信号波形と、前記伸縮補正波形とを比較して磁気インク文字認識を実行する手段として機能させることを特徴とするプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−20414(P2013−20414A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152743(P2011−152743)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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