説明

記録媒体収納ケース

【課題】
良好な音質及び音圧でディスクケースから音が出力されるようにする。
【解決手段】
ディスクケース10の蓋13を開けてスイッチ34をONとすると、電池32から音声回路36に電力が供給され、音声回路36でメモリから音声データが読み出されて音声信号が合成され、増幅されて圧電スピーカ38から音声が出力される。圧電スピーカ38の前側の気室38Gがスリット20Dを介して外部に通じているため、圧電スピーカ38から出力された音は、スリット20Dから外部に放出される。圧電スピーカ38の後側の気室38Hは、シール材40によって密閉されているため、圧電スピーカ38の後側からの音によって前側から出力された音が弱められ音圧が低下する恐れがない。また、圧電スピーカ38の振動がシール材38Dや振動抑制パッド38Eによって吸収され、ケース本体12やディスクトレイ14への振動伝達が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile DiscないしDigital Video Disc)などを収納する記録媒体収納ケースに関し、より具体的には、該ケースに対する発音体の実装技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
CDなどのディスクケースにスピーカを取り付けたものとしては、下記特許文献に記載された「記録媒体収納ケース」がある。これは、ディスクに収納された音楽の歌手や映画の出演者などのメッセージを生の声で聞けるようにするために、ICメモリから音声メッセージを読出して音声メッセージ再生部で再生し、この再生された音声メッセージをスピーカから出力するようにしたものである。スピーカはトレイに取り付けられており、トレイが共鳴板として機能する。
【特許文献1】特開平2001−88885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、最近は、ケースも薄型化の傾向にあり、ダイナミックスピーカのような厚みのあるものを実装するほどの空間的余裕がないのが実情である。また、トレイは、本来スピーカの共鳴板として作製されているわけではないので、上記背景技術のような使い方をしても良好な音質は望めない。更に、振動時にトレイがケース本体などと接触すると、音質悪化を招く可能性もある。
【0004】
本発明は、以上の点に着目したもので、良好な音質及び音圧で記録媒体の収納ケースから音が出力されるようにすることをその目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、本発明は、記録媒体に嵌め込まれるクランパを有するトレイを、蓋を有するケース本体内に嵌め込んだ記録媒体収納ケースにおいて、前記ケース本体と前記トレイとの間に形成された空間内であって、前記クランパの後側に設けられた発音体,
該発音体と前記クランパとの間に設けられており、前記発音体の前気室を形成する第1の仕切り手段,前記空間内に設けられており、前記発音体の後気室を形成する第2の仕切り手段,を備えたことを特徴とする。
【0006】
主要な形態の一つは、前記前気室から前記クランプを経て外部に至る空気抵抗を調整するためのシール手段を、前記クランプに設けたことを特徴とする。他の形態は、前記ケース本体及び前記トレイに対する前記発音体の振動の伝達を抑制する振動抑制手段を設けたことを特徴とする。更に他の形態は、前記振動抑制手段が、前記第1及び第2の仕切り手段を兼用したことを特徴とする。更に他の形態は、 前記ケース本体と前記トレイとの間に形成された空間内であって、前記ケース本体と前記トレイとの間に、吸音手段を設けたことを特徴とする。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、記録媒体収納トレイのクランパ側に発音体を設けるとともに、発音体前後に気室を形成することにより、音質及び音圧が向上するという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0009】
最初に、図1〜図3を参照しながら本発明の実施例1を説明する。本実施例は、DVDを収納するケースに本発明を提供したものである。図2(A)に示すように、DVDを収納するディスクケース10は、適宜の2つ折のケース本体12にディスクトレイ14を貼り合わせた構造となっており、ケース本体12の蓋13はディスクトレイ14に対して開閉自在となっている。ディスクトレイ14には、ディスク(図示せず)を収納する凹部16が設けられており、該収納凹部16の周囲には、ディスクを取り出すときに指をディスク周囲に掛けるための指用凹部18が4箇所設けられている。更に、ディスクトレイ14の収納凹部16の中央には、DVDのセンターホールに嵌まり込むクランパ20が設けられている。
【0010】
図1には、上述したディスクケース10に音声出力装置30を取り付けた状態が示されている。音声出力装置30は、電池32,スイッチ34,音声回路36,スピーカ38によって構成されている。これらのうち、電源である電池32は、ケース本体12とディスクトレイ14との間に形成される隙間の適宜位置に収納されており、本例では3つのボタン電池を含んでいる。そして、スライド型のスイッチ34を操作することによって、電池32から音声回路36に電力が供給される構成となっている。
【0011】
音声回路36は、音声データを記録するためのメモリ,音声データから音声信号を合成するための合成回路,音声信号を増幅して出力するためのアンプを含んだ集積回路によって構成されており、前記スイッチ34がONとなって電池32から電力が供給されたときに動作する。音声回路36には、ディスクケース10に収納されるDVDの内容を試聴するための音声データ,BGM,効果音などが適宜記録される。
【0012】
スピーカ38は、前記音声回路36から出力された音声信号を再生するためのもので、前記ディスクトレイ14のクランパ20内に設けられている。図1の#A−#A線に沿って矢印方向に見た端面を図3に示す。同図のように、クランパ20は、中央の凸部20Aと、その周辺の台座部20Bによって構成されている。また、凸部20Aには、開口20Cやスリット20Dが設けられている。そして、前記台座部20B内には、圧電スピーカ38が設けられている。圧電スピーカ38は、図2(B)に示すように、径方向断面が略L字状であって全体がリング状のフレーム38Aに振動板38Bの周囲が固定されており、この振動板38Bの表裏に圧電素子38Cがそれぞれ貼り付けられた構成となっている。圧電素子38Cは、圧電シートを電極で挟んだ積層構造となっている。振動板38Bが一方の電極を兼ねることもある。電極に駆動電圧を印加すると、圧電シートが面方向に伸縮する。すなわち、振動板38Bは、一方の面が伸び、他方の面が縮むようになり、図2(B)に矢印で示す方向に振動するようになる。
【0013】
このような圧電スピーカ38のフレーム38Aの上側は、図3に示すように、リング状のシール材38Dを介して、クランパ20の台座部20B内側に、接着剤や両面粘着テープなどによって取り付けられている。また、フレーム38Aの下側とケース本体12との間には、振動抑制パッド38Eが設けられている。振動抑制パッド38Eは、例えば、フレーム38Aの全周のうちの3箇所に設けられている。更に、圧電スピーカ38の外側であって、ケース本体12とディスクトレイ14との間には、リング状のシール材40が設けられており、接着剤や両面粘着テープによって固定されている。加えて、上述したクランパ20の中央凸部20A上には、開口20Cを塞ぐように、調整フィルム42が両面粘着テープなどによって貼り付けられている。
【0014】
前記シール材38Dとしては、圧電スピーカ38の前後に気室38G,38Hをそれぞれ形成する関係から、機密性に優れており、かつ、圧電スピーカ38の振動をディスクトレイ14に伝達しにくい材料,例えば、イノアック・コーポレーション社製の発泡ウレタンシート(品名;SRF−40)の一方の主面側に、例えば、ソニーケミカル社製の両面粘着テープ(品名;NP203)を貼り付けたものたものなどが好適である。振動抑制パッド38Eは、機密性は必要とされないが、圧電スピーカ38の振動をケース本体12に伝達しにくい材料,例えば、上記シール材38Dと同様に発泡ウレタンシートの一方の主面側に両面粘着テープを貼り付けたものが好適である。シール材40としては、圧電スピーカ38の後側に気室38Hを形成する関係から、機密性に優れていることが要求され、例えば、上記シール材38Dと同様に発泡ウレタンシートの一方の主面側に両面粘着テープを貼り付けたものが好適である。更に、調整フィルム42としては、圧電スピーカ38から出力された音が、クランパ20の開口20Cやスリット20Dから外部に出るときの抵抗を調整するためのもので、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等の可撓性フィルムの一方の主面側に両面粘着テープを貼り付けたものが好適である。
【0015】
以上のうち、シール材38D及び調整フィルム42によって圧電スピーカ38の前側に気室38Gが形成され、シール材38D,40によって圧電スピーカ38の後側に気室38Hが形成される。前側の気室38Gは、クランパ20のスリット20Dによって外部と通じているが、後側の気室38Hは、外部から遮断された密室となっている。なお、音声回路36から圧電スピーカ38に音声信号を供給するリード線36Bは、シール材40を貫通して圧電スピーカ38の端子38Pに接続されている。
【0016】
次に、本実施例の動作を説明すると、ディスクケース10のディスクトレイ14には、DVDが収納凹部16に収納される。そして、蓋13が閉じている状態では、スイッチ34がOFFとなっており、電池32から音声回路36に電力が供給されない。従って、圧電スピーカ38から音声が出力されることはない。蓋13を開けてスイッチ34をONとすると、電池32から音声回路36に電力が供給される。すると、音声回路36では、メモリに記録されている音声データが読み出されて音声信号が合成され、これが増幅されて圧電スピーカ38に供給される。これにより、圧電スピーカ38から音声が出力されるようになる。
【0017】
この場合において、本実施例では、図3に示すように、圧電スピーカ38の前側の気室38Gがスリット20Dを介して外部に通じている。このため、圧電スピーカ38から出力された音は、スリット20Dから外部に放出されるようになる。一方、圧電スピーカ38の後側の気室38Hは、シール材40によって密閉されている。従って、圧電スピーカ38の後側からの音によって前側から出力された音が弱められ音圧が低下する恐れがない。加えて、圧電スピーカ38の振動がシール材38Dや振動抑制パッド38Eによって吸収され、ケース本体12やディスクトレイ14に振動が伝わるのも抑制される。従って、雑音の発生に伴う不要な音質悪化も良好に低減されるようになる。
【0018】
図4には、圧電スピーカ38自身の音圧周波数特性と、ケース実装時の音圧周波数特性が示されている。同図中、横軸は周波数(対数),縦軸は音圧を表す。同図に示すように、低域の周波数領域RAで両者を比較すると、本実施例は900Hzで90dBの音圧が確保されていることが分かる。また、中域ないし高域の周波数領域RBで両者を比較すると、本実施例のほうが圧電スピーカ単体よりも音圧特性が平坦化されていることが分かる。
【0019】
以上のように、本実施例によれば、次のような効果がある。
(1)圧電スピーカを使用しているので、ケースの薄型化にも十分対応できる。
(2)後側の気室の機密性を高めているので、良好な音圧が得られる。
(3)前側の気室と外部との空気抵抗を調整しているので、音圧特性が平坦化される。
(4)圧電スピーカの振動に基づくケース本体やトレイの振動が抑制されるので、良好な音質が得られる。
【実施例2】
【0020】
次に、本発明の実施例2について説明する。図2(A)に点線で示すように、ケース本体12とディスクトレイ14との間に、商品内容を説明したり、デザイン性を高めるためにインデックスカード100を挿入することがある。このような場合は、図5(A)に主要断面を示すように、振動抑制パッド38Eやシール材40とケース本体12との間にインデックスカード100が挿入された構造となる。また、インデックスカード100の存在によって圧電スピーカ38の取り付けスペースを十分に確保できないときは、図2(A)や図5(B)に示すように、インデックスカード100に開口ないし凹部102を形成して、必要な設置空間を確保する。
【実施例3】
【0021】
次に、本発明の実施例3について説明する。本例は、図5(C)に示すように、前記実施例2のインデックスカード100に重ねて、吸音材110を設けた例である。このように、吸音材110を設けることで、圧電スピーカ38の後側から出た音が吸収され、音圧レベルの低下がより効果的に抑制されるようになる。
【実施例4】
【0022】
次に、本発明の実施例4について説明する。本例は、図5(D)に示すように、ケース本体12であって、圧電スピーカ38の後側適宜位置に、放音孔120を形成した例である。いわゆるバスレフタイプ(位相反転形)と考えることができ、所定の周波数の音を強調することができる。
【0023】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)圧電スピーカとしては、上記実施例に示したバイモルフ型のみならず、振動板の一方にのみ圧電素子を設けたユニモルフ型であってもよい。また、圧電素子は、圧電シートを電極を挟んで複数積層した積層型の圧電素子でもよい。
(2)前記実施例では、スピーカをディスクトレイのクランパに設けたが、ディスクケースの他の部位に他のスピーカを設けることを妨げるものではない。
(3)前記実施例では、DVD用のケースに対して本発明を提供したが、CDなど、クランパを必要とする他の記録媒体に対しても同様に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明によれば、良好な音質・音圧による音声再生を行うことができ、付加価値のあるディスクケースを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例1の全体構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施例1を示す図である。(A)はディスクケースを示す分解斜視図,(B)は圧電スピーカの構成を示す斜視図である。
【図3】図1の#A−#A線に沿って矢印方向に見た端面図である。
【図4】前記実施例1における音圧特性を、スピーカ自身の特性と比較して示すグラフである。
【図5】本発明の他の実施例の主要部を示す端面図である。
【符号の説明】
【0026】
10:ディスクケース
12:ケース本体
13:蓋
14:ディスクトレイ
16:収納凹部
18:指用凹部
20:クランパ
20A:凸部
20B:台座部
20C:開口
20D:スリット
30:音声出力装置
32:電池
34:スイッチ
36:音声回路
36B:リード線
38:圧電スピーカ
38A:フレーム
38B:振動板
38C:圧電素子
38D:シール材
38E:振動抑制パッド
38G,38H:気室
38P:端子
40:シール材
42:調整フィルム
100:インデックスカード
102:凹部
110:吸音材
120:放音孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に嵌め込まれるクランパを有するトレイを、蓋を有するケース本体内に嵌め込んだ記録媒体収納ケースにおいて、
前記ケース本体と前記トレイとの間に形成された空間内であって、前記クランパの後側に設けられた発音体,
該発音体と前記クランパとの間に設けられており、前記発音体の前気室を形成する第1の仕切り手段,
前記空間内に設けられており、前記発音体の後気室を形成する第2の仕切り手段,
を備えたことを特徴とする記録媒体収納ケース。
【請求項2】
前記前気室から前記クランプを経て外部に至る空気抵抗を調整するためのシール手段を、前記クランプに設けたことを特徴とする請求項1記載の記録媒体収納ケース。
【請求項3】
前記ケース本体及び前記トレイに対する前記発音体の振動の伝達を抑制する振動抑制手段を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の記録媒体収納ケース。
【請求項4】
前記振動抑制手段が、前記第1及び第2の仕切り手段を兼用したことを特徴とする請求項3記載の記録媒体収納ケース。
【請求項5】
前記ケース本体と前記トレイとの間に形成された空間内であって、前記ケース本体と前記トレイとの間に、吸音手段を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の記録媒体収納ケース。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−101261(P2006−101261A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−285741(P2004−285741)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】