説明

記録媒体搬送方法

【課題】記録媒体をセットする時間を短縮することができる記録媒体搬送方法を提供すること。
【解決手段】第1ローラと第2ローラとを用いて記録媒体の外径を推定し、第3ローラと第4ローラとを用いてスキュー取りを行うことができるので、記録媒体の外系の推定とスキュー取りとを連続して1回の動作で行うことができる。これにより、記録媒体をセットする時間を短縮することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体搬送方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下、記録装置の一例であるインクジェットプリンタを例に採って説明する。インクジェットプリンタの中にはA1プラス(ノビ)サイズやB0プラス(ノビ)サイズといった大判サイズの被記録材に対してインクを吐出して記録を実行することができる大型のインクジェットプリンタが存在する。この種の大型のインクジェットプリンタではロール幅が24インチ(約610mm)、36インチ(約914mm)、44インチ(約1118mm)、ロール長が10m〜45mのロール状に巻かれたロール状被記録材が主に使用されている。また、ロール状被記録材の種類も多岐に及んでおり、用紙やフィルム等、材質の違うものから剛性の高い例えばレジンコート系の写真用紙や剛性の低い普通紙等、多くの種類のものが使用されている。
【0003】
そして、このようなロール状被記録材(以下ロール紙ともいう)は、スピンドルによってロール部が水平に支持されており、該ロール部から引き出されたロール紙の始端部はプラテンに搬送され、所定の姿勢を維持するようにスキュー取りが行われるようになっている。スキュー取りは、例えば特許文献1に示すように、ユーザが一旦ロール紙を引き出した後、スピンドルモータによってロール紙を巻き取る工程を経ることによって行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−290866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記手法によっては、ロール紙をプラテンにセットするまでの時間が長くなってしまうという問題があった。
上記のような事情に鑑み、本発明は、記録媒体をセットする時間を短縮することができる記録媒体搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る記録媒体搬送方法は、支持軸に巻かれた記録媒体を第1ローラと第2ローラとで挟持し、前記第1ローラを回転させて前記記録媒体を搬送方向の前方に搬送すると共に、前記第1ローラの回転量と前記支持軸の回転量とを比較して前記支持軸に巻かれた前記記録媒体の外径を推定する第1工程と、前記第1工程により前記搬送方向の前方に搬送された前記記録媒体を前記第1ローラ及び前記第2ローラの前記搬送方向の前方に配置される第3ローラと第4ローラとで挟持すると共に前記第1ローラと前記第2ローラとを離間させて前記記録媒体を解放し、前記記録媒体を前記搬送方向の後方に巻き取るように前記支持軸を回転させることにより前記記録媒体のスキュー取りを実行する第2工程とを連続して有する。
【0007】
本発明によれば、第1ローラと第2ローラとを用いて記録媒体の外径を推定し、第3ローラと第4ローラとを用いてスキュー取りを行うことができるので、記録媒体の外系の推定とスキュー取りとを連続して1回の動作で行うことができる。これにより、記録媒体をセットする時間を短縮することができる。
【0008】
上記の記録媒体搬送方法は、前記第2工程は、前記記録媒体の下方を支持部に吸着させながら行うことが好ましい。
本発明によれば、第2工程について記録媒体の下方を支持部に吸着させながら行うこととしたので、記録媒体を確実にセットすることができる。
【0009】
上記の記録媒体搬送方法は、前記第2工程は、前記支持軸の回転と共に前記第3ローラを回転させることが好ましい。
本発明によれば、第2工程について支持軸の回転と共に第3ローラを回転させることとしたので、記録媒体のスキュー取りを確実に行うことができる。
【0010】
上記の記録媒体搬送方法は、前記第2工程の後、前記記録媒体を挟持している前記第3ローラと前記第4ローラとで前記記録媒体を前記搬送方向の前方に搬送する第3工程を更に有することが好ましい。
本発明によれば、第2工程の後、第3ローラ及び第4ローラは記録媒体を保持したままの状態になっているため、この状態を活用してそのまま第3工程において記録媒体を搬送することができる。これにより、無駄な動作を行うことなく記録媒体を搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例に係るインクジェットプリンタの外観を示す斜視図。
【図2】本体カバーを取り外した状態の同インクジェットプリンタの側断面図。
【図3】同インクジェットプリンタの内部構造の概略を示す側断面図。
【図4】本発明の実施例に係り、ロール紙とロール巻戻し機構を示す分解斜視図。
【図5】本発明の実施例に係り、ロール状被記録材の搬送装置を示す側断面図。
【図6】本実施形態に係るロール紙の搬送工程を示す図。
【図7】同、工程図。
【図8】同、工程図。
【図9】同、工程図。
【図10】同、工程図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本願発明に係るロール状被記録材の搬送装置、該ロール状被記録材の搬送装置を使用することによって実行されるスピンドルモータのトルク設定方法及び該ロール状被記録材の搬送装置を備えた記録装置について説明する。最初に、本発明の記録装置を実施するための最良の形態としてインクジェットプリンタ100を採り上げて、その全体構成の概略を図面に基づいて説明する。尚、ここで説明するインクジェットプリンタ100は、例えばA3プラス(ノビ)サイズ以上のシート状の大判の被記録材(以下単票紙ともいう)や上述したA1プラス(ノビ)サイズやB0プラス(ノビ)サイズといったロール状に巻かれた大判のロール状被記録材(ロール紙ともいう)Pの被記録面に対して所望の記録を実行することができる大型のインクジェットプリンタである。
【0013】
図1は本体カバーを装着した状態のインクジェットプリンタの外観を示す斜視図、図2は本体カバーを取り外した状態のインクジェットプリンタを示す側断面図である。また図3はインクジェットプリンタの内部構造の概略を示す側断面図である。
【0014】
図示のインクジェットプリンタ100は、記録装置本体の一例であるプリンタ本体3を備えており、該プリンタ本体3は図1に示すように本体カバー2によって覆われている。プリンタ本体3の後部寄りの上部には、ロール紙Pを水平に保持することのできる左右一対のスピンドル4L、4Rが設けられており、左右一対のフランジを有するロール紙押さえ5L、5Rによって保持された上記ロール紙Pが上記スピンドル4L、4Rと一体になって回転し得るようになっている。また、プリンタ本体3の前面の一例として左端寄りの部分には、各色のインクカートリッジを個別に収容することができる複数のカートリッジスロットを備えたカートリッジホルダ8が設けられている。インクジェットプリンタ100は、各部を制御する制御装置CONTを有している。
【0015】
また、インクジェットプリンタ100の前面の一例として右端寄りの部分には各種の操作指令を司る操作パネル9が設けられている。また、プリンタ本体3には、約60°の前下がり傾斜姿勢で搬送案内板11が設けられており、上記スピンドル4L、4Rによって水平に保持されているロール紙Pをロール紙Pの引出し方向Aとなる前部下方に向けて搬送できるように案内している。また、プリンタ本体3には、上記ロール紙Pを引き出しながら下流の記録ポジション26に向けて搬送する本発明のロール状被記録材の搬送装置1と、記録ポジション26に搬送されたロール紙Pの被記録面にインクを吐出して所望の記録を実行する記録実行装置12とが設けられている。
【0016】
記録実行装置12は、記録ポジション26の上方に設けられており、直接、インクを吐出させて記録を実行する記録ヘッド13と、該記録ヘッド13を搭載して走査方向となるロール幅方向Cに往復移動するキャリッジ10とを備えている。また、記録ポジション26の下方には、ロール紙Pの裏面を支持して上記記録ヘッド13の下面とのギャップPGを規定するプラテン28が設けられている。
【0017】
図4はロール紙とロール巻戻し機構を示す分解斜視図、図5は本発明のロール状被記録材の搬送装置を示す概略構成図である。ロール状被記録材の搬送装置1は、ロール状に巻かれたロール紙Pのロール部31を支持するスピンドル4L、4Rと、上記スピンドル4L、4Rを正転方向である引出し方向Aと逆転方向である巻取り方向Bとに回転させるスピンドルモータ30と、上記ロール部31からロール紙Pを教示して供給する給紙用駆動ローラ16及び給紙用従動ローラ17によって構成される給紙用ローラ18と、給紙されたロール紙Pを挟持して搬送する搬送用駆動ローラ19及び搬送用従動ローラ20によって構成される搬送用ローラ21と、上記ロール部31のロール径Dに影響されることなく、上記搬送用ローラ21とロール部31間のロール紙Pに一定の設定テンションFを発生させるテンション発生部29とを備えることによって基本的に構成されている。
【0018】
そして、本実施例では、上記テンション発生部29としてスピンドルモータ30を使用しており、スピンドルモータ30の設定トルクTをロール紙Pのロール部31におけるロール径Dないしロール半径Rの変化に対応して制御することによって上記ロール紙Pの設定テンションFが一定になるようにしている。また、上記スピンドル4L、4Rとスピンドルモータ30は、ロール巻戻し機構32の構成部材になっている。ロール巻戻し機構32は、記録の実行等に伴って引出し方向Aに引き出されたロール紙Pの始端33を原点位置まで戻す等のために使用され、搬送用ローラ21とロール部31間のロール紙Pにテンションを付与する役割も有している。
【0019】
ロール巻戻し機構32は、支持ブラケット34と、該支持ブラケット34の上部において軸受35を介して回転自在に水平に支持されている上述したスピンドル4L、4Rと、一例として向かって右側の支持ブラケット34の下部に取り付けられている上述したスピンドルモータ30と、上記スピンドル4Rとスピンドルモータ30の出力軸との間に設けられ、上記スピンドルモータ30の出力軸の回転を減速して上記スピンドル4Rに伝えるギヤ輪列36とを備えることによって基本的に構成されている。
【0020】
また、本実施例にあっては、スピンドルモータ30の後面にはスピンドルモータ30と一体になって回転する軸部37が突出状態で設けられている。そして、この軸部37には多数のスリット38が放射状に等ピッチで形成されている円板状の検出板39が取り付けられており、該検出板39の近傍には上記スリット38によってスピンドルモータ30の回転角度θ2を検出する検出器40が非接触状態で設けられている。尚、上記検出板39と検出器40とによってロータリーエンコーダ41が構成されている。該ロータリーエンコーダ41は間接的に前記ロール部31の回転量を検出する第1検出部を成している。
【0021】
また、上記給紙用駆動ローラ16のローラ軸42にも多数のスリット43が放射状に等ピッチで形成されている円板状の検出板44が取り付けられており、該検出板44の近傍には上記スリット43によって給紙用駆動ローラ16の回転角度θ1を検出する検出器45が非接触状態で設けられている。そして上記検出板44と検出器45とによってロータリーエンコーダ46が構成されている。該ロータリーエンコーダ46は前記給紙用ローラ18の回転量を検出する第2の検出部を成している。
【0022】
本実施例では、給紙用駆動ローラ16の近傍に、給紙用駆動ローラ16の動作トルクTrを測定するトルク測定部47が設けられている。これにより、給紙用駆動ローラ16の動作トルクTrを変えることが可能になっている。尚、給紙用駆動ローラ16の動作トルクTrは一定であってもよく、この場合は前記トルク測定部47は不要である。
【0023】
また、本実施例に係るロール状被記録材の搬送装置1には、上記ロール部31のロール径Dの変化に拘らず、給紙用ローラ18とロール部31間のロール紙Pに常に一定の設定テンションFが作用するように、上記スピンドルモータ30の設定トルクTを上記ロール部31のロール径Dの変化に対応させて制御するトルク制御装置48が設けられている。
【0024】
そして、上記トルク制御装置48は、スピンドルモータ30の静負荷時のオフセットトルクT0を測定する静メジャメント測定部49と、上記搬送用駆動ローラ19の動作トルクTrと上記給紙用駆動ローラ16のローラ半径rとによってロール紙Pの設定テンションFを設定するテンション設定部50と、上記2つのロータリーエンコーダ41、46によって検出したスピンドルモータ30の回転角度θ2と、給紙用駆動ローラ16の回転角度θ1と、上記給紙用駆動ローラ16のローラ半径rと、上記ギヤ輪列36の減速比1/Nとに基づいてロール紙Pのロール半径Rを推定するロール半径推定部51と、上記スピンドルモータ30の静負荷時のオフセットトルクT0と、上記テンション設定部50によって設定した設定テンションFと、上記ロール半径推定部51によって推定したロール半径Rと、上記ギヤ輪列36の減速比1/Nとによって、前記設定テンションFが一定になるようにスピンドルモータ30の設定トルクTを設定するトルク設定部52とを備えることによって構成されている。
【0025】
次に、このようにして構成される本実施例のロール状被記録材の搬送装置1を使用する際には、まず、図6に示すようにロール紙Pをセットし、図7に示すようにスピンドルモータ30によってスピンドル4L及び4Rを回転させてロール紙Pを送出する。
【0026】
次に、図8に示すように、給紙用駆動ローラ16と給紙用従動ローラ17とでロール紙Pを挟持し、給紙用駆動ローラ16を回転させてロール紙Pを搬送方向の前方に搬送する。また、この動作と同時に、給紙用駆動ローラ16の回転量とスピンドルモータ30の回転量とを比較してスピンドル4L及び4Rに巻かれたロール紙Pの外径を推定する(第1工程)。外径の推定は、給紙用ローラ18とロール部31との間で弛みのない状態にし、スピンドルモータ30はOFF状態にして給紙用駆動ローラ16を引出し方向Aに回転させて、その時の給紙用駆動ローラ16の回転角度θ1からロール紙Pの送り量Lを求め、当該送り量Lとスピンドルモータ30の回転角度θ2からロール部31のロール半径Rを推定する。この工程では、例えばロール紙Pの先端がプラテン28を越える位置に到達するまでロール紙Pを給紙する。
【0027】
次に、図9に示すように、搬送用駆動ローラ19と搬送用従動ローラ20とでロール紙Pを挟持すると共に、給紙用駆動ローラ16と給紙用従動ローラ17とを離間させる。この場合、搬送用従動ローラ20及び給紙用従動ローラ17がロール紙Pに対して移動することになる。
【0028】
次に、図10に示すように、スピンドルモータ30によってロール紙Pを搬送方向の後方に巻き取るようにスピンドル4L及び4Rを回転させることにより、ロール紙Pのスキュー取りを行う。このとき、プラテン28においてロール紙Pを吸着させながら行う。また、スピンドルモータ30の回転と共に搬送用駆動ローラ19を回転させながら行うようにする。
【0029】
スキュー取りを行った直後においては、搬送用駆動ローラ19及び搬送用従動ローラ20によってロール紙Pが挟持された状態になっている。したがって、この状態から直ちに搬送用駆動ローラ19を駆動させることにより、ロール紙Pを搬送方向に搬送することができる。
【0030】
以上のように、本実施形態によれば、給紙用駆動ローラ16と給紙用従動ローラ17とを用いて記録媒体の外径を推定し、搬送用駆動ローラ19と搬送用従動ローラ20とを用いてスキュー取りを行うことができるので、ロール紙Pの外系の推定とスキュー取りとを連続して1回の動作で行うことができる。これにより、ロール紙Pをプラテン28にセットするまでの時間を短縮することができる。
【0031】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、上記実施形態では、給紙用ローラ18を用いてロール紙Pの外径推定を行い、搬送用ローラ21を用いてスキュー取りを行う構成としたが、これに限られることは無く、逆に給紙用ローラ18を用いてスキュー取りを行い、搬送用ローラ21を用いてロール紙Pの外径推定を行うようにしても構わない。
【符号の説明】
【0032】
1…搬送装置、3…プリンタ本体、4L、4R…スピンドル、12…記録実行装置、13…記録ヘッド、16…給紙用駆動ローラ(第1ローラ)、17…給紙用従動ローラ(第2ローラ)、19…搬送用駆動ローラ(第3ローラ)、20…搬送用従動ローラ(第4ローラ)、28…プラテン(支持部)、CONT…制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持軸に巻かれた記録媒体を第1ローラと第2ローラとで挟持し、前記第1ローラを回転させて前記記録媒体を搬送方向の前方に搬送すると共に、前記第1ローラの回転量と前記支持軸の回転量とを比較して前記支持軸に巻かれた前記記録媒体の外径を推定する第1工程と、
前記第1工程により前記搬送方向の前方に搬送された前記記録媒体を前記第1ローラ及び前記第2ローラの前記搬送方向の前方に配置される第3ローラと第4ローラとで挟持すると共に前記第1ローラと前記第2ローラとを離間させて前記記録媒体を解放し、前記記録媒体を前記搬送方向の後方に巻き取るように前記支持軸を回転させることにより前記記録媒体のスキュー取りを実行する第2工程と
を連続して有する記録媒体搬送方法。
【請求項2】
前記第2工程は、前記記録媒体の下方を支持部に吸着させながら行う
請求項1に記載の記録媒体搬送方法。
【請求項3】
前記第2工程は、前記支持軸の回転と共に前記第3ローラを回転させる
請求項1又は請求項2に記載の記録媒体搬送方法。
【請求項4】
前記第2工程の後、前記記録媒体を挟持している前記第3ローラと前記第4ローラとで前記記録媒体を前記搬送方向の前方に搬送する第3工程を更に有する
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の記録媒体搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−57353(P2011−57353A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207839(P2009−207839)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】