説明

記録媒体搬送装置及びそれを備えた画像形成装置

【課題】安価でかつ安定した搬送力を得つつも、搬送装置に進入する際の挙動が安定し、搬送スキューを抑制して安定し記録媒体の搬送が行える記録媒体搬送装置を提供する。
【解決手段】トナー像を担持したシート状の記録媒体Pをその表面402aに吸着して搬送する搬送部材402を備えた記録媒体搬送装置400は、記録媒体の搬送方向Xと交差する幅方向Wにおける、中央部の搬送部材402Bを、同搬送部材の両端側に位置する搬送部材401A、401Cよりも、搬送部材402の表面に吸着される記録媒体の接触面Pdに近接するように配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体を搬送する搬送装置及びそれを備えた複写機、プリンタ、ファクシミリ、これらの複数の機能を備えた複合機などの画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トナー像を転写した記録媒体を定着装置まで搬送する記録媒体搬送装置を備えた画像形成装置においては、記録媒体上の未定着トナー像を安定保持するという観点から、トナー像を保持した記録媒体の記録面に搬送部材を接触することができない。このため、搬送部材となる搬送ベルトを用い、記録媒体の記録面と反対側の裏側をこの搬送ベルトの表面に吸着させながら搬送する吸引方式の記録媒体搬送装置が提案されている。
例えば、特許文献1には、搬送ベルトの外側から内側に吸気を通過させることのできる吸気孔を設けた搬送ベルトを用いて、記録媒体をベルト表面に吸着させながら搬送するとともに、用紙サイズに応じて吸気が作用する領域を選択的に切替可能とした記録媒体搬送装置が開示されている。
特許文献2には、記録媒体が搬送装置に進入する際の記録媒体の浮きをセンサにより検知し、その検知結果に応じて吸引ファンの風量を切替え可能とした記録媒体搬送装置が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
記録媒体の片面(裏面)側を搬送ベルトに吸着しながら搬送する吸引方式の場合、記録媒体の表側と裏面をローラ等で挟持しながら搬送するローラ方式に比べて、用紙進入側における搬送方向と直交する幅方向への記録媒体の位置精度にバラツキがある点や、記録媒体の波打ち状態などにより記録媒体が蛇行やシフト等の所謂、搬送スキューを引き起こしてしまうことがある。このような搬送スキューは、ジャムを発生させる可能性が高まるばかりか、定着装置への記録媒体の進入姿勢が不安定となり、定着装置での記録媒体のシワの発生要因にも成りかねない。
【0004】
特許文献1では、用紙サイズに応じて吸気が作用する領域を選択的に切替えるので、用紙サイズに関わらず、安定した搬送力を記録媒体に作用させることができるが、用紙進入側における幅方向への記録媒体の位置精度にバラツキや用紙の波打ち状態によって引き起こされる搬送スキューを解消することは考慮されていない。
特許文献2では、記録媒体の浮きに応じて吸引ファンの風量を変化させることで、吸引不足がなく、安定した搬送力で記録媒体を搬送可能としているので、記録媒体が搬送装置に進入する際の挙動を安定させることはできるが、記録媒体が搬送ベルト上に吸着されている状態での記録媒体の搬送スキューを抑制することは考慮されていない。また記録媒体の浮きを検知させるためのセンサを備える必要があり、装置の小型化・低コスト化の観点では改良の余地が残されている。
本発明は、上記問題点に着目し、搬送部材上での挙動が安定し、搬送スキューを抑制して安定した記録媒体の搬送が行える記録媒体搬送装置を提供することを、その目的とする。
本発明は、ジャムの発生や定着装置でのシワの発生を抑制して良質なプリント物が得られる画像形成装置を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係る、トナー像を担持したシート状の記録媒体をその表面に吸着して搬送する搬送部材を備えた記録媒体搬送装置では、記録媒体の搬送方向と交差する幅方向における、搬送部材の中央部を、同搬送部材の両端側よりも表面に吸着される記記録媒体の接触面に近接するように配置したことを基本構成としている。
【0006】
具体的には、本発明に係る記録媒体搬送装置において、搬送部材は、複数のローラ部材で張架されて前記幅方向に複数配置されていて、これら複数の搬送部材のうち、記録媒体の中央部と対向する位置に配置された搬送部材が巻き掛けられたローラ部材の外径を、他の搬送部材を巻き掛けられているローラ部材の外径よりも大径にして記録媒体の接触面に近接して配置した。
本発明に係る記録媒体搬送装置において、各搬送部材が巻き掛けられた複数のローラ部材は、駆動ローラと従動ローラを有し、少なくとも駆動ローラを、同一の外径で共通の駆動源で回転駆動し、記録媒体の中央部と対向する位置に配置された搬送部材が巻き掛けられた従動ローラを、他の駆動ローラ及び従動ローラよりもその外径を大径とした。
本発明に係る記録媒体搬送装置において、大径のローラ部材は、媒体搬送方向の下流側に配置した。
本発明に係る記録媒体搬送装置において、搬送部材は、複数のローラ部材で張架されて前記幅方向に複数配置されていて、これら複数の搬送部材のうち、記録媒体の中央部と対向する位置に配置された搬送部材が巻き掛けられたローラ部材を、他の搬送部材が巻き掛けられているローラ部材より記録媒体の接触面に近接して配置した。
本発明に係る記録媒体搬送装置において、各搬送部材が巻き掛けられた複数のローラ部材は、駆動ローラと従動ローラを有し、これら駆動ローラと従動ローラとを同一の外径とした。
本発明に係る記録媒体搬送装置においては、記録媒体の中央部と対向する位置に配置された搬送部材が巻き掛けられた従動ローラを、記録媒体の接触面に近接して配置した。
本発明に係る記録媒体搬送装置においては、従動ローラを媒体搬送方向の下流側に配置した。
本発明に係る記録媒体搬送装置において、搬送部材は、複数の同一外径のローラ部材で張架されて前記幅方向に複数配置されていて、各搬送部材は、その表面に同表面から外方に延びる複数の凸部を有し、記録媒体の中央部と対向する位置に配置された搬送部材の凸部を、他の搬送部材の凸部よりも高く設定した。
像担持体と、像担持体上に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写部と、転写部でトナー像が転写された記録媒体に、当該トナー像を定着する定着装置と、転写部でトナー像が転写された記録媒体を定着装置に吸着搬送する搬送手段とを備えた、本発明に係る画像形成装置は、搬送手段として、上記何れかに記載の記録媒体搬送装置を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、記録媒体を搬送部材の中央部に位置する表面で吸着搬送するので、両端部の搬送部材の搬送力のばらつきによる記録媒体の回転モーメントが抑制され、記録媒体進入時や搬送中の搬送スキューを抑制することができる。
本発明によれば、記録媒体を定着装置に吸着搬送する搬送手段として、記録媒体進入時や搬送中の搬送スキューを抑制する記録媒体搬送装置を用いるので、ジャムの発生や定着装置でのシワの発生を抑制して良質なプリント物を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一形態を示す概略構成図。
【図2】記録媒体搬送装置の基本構成を説明する側面図。
【図3】記録媒体搬送装置の第1の実施形態を示す斜視図。
【図4】第1の実施形態に係る記録媒体搬送装置の特徴的構成を示す側面図。
【図5】第1の実施形態に係る記録媒体搬送装置の作用を説明する搬送方向下流側から見た断面図。
【図6】記録媒体搬送装置の第2の実施形態を示す斜視図。
【図7】第2の実施形態に係る記録媒体搬送装置の特徴的構成を示す側面図。
【図8】第2の実施形態に係る記録媒体搬送装置の作用を説明する搬送方向下流側から見た断面図。
【図9】記録媒体搬送装置の第3の実施形態の特的構成を示す図であり、(a)は中央に配置される搬送部材の特徴分部の断面図、(b)は両側に配置される搬送部材の特徴分部の断面図。
【図10】第3の実施形態に係る記録媒体搬送装置の作用を説明する搬送方向下流側から見た断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
図1に示す画像形成装置は、フルカラー印刷が可能なプリンタである。プリンタは、その画像形成部100の内部に、中間転写体としての無端ベルト状の中間転写ベルト11を備えている。中間転写ベルト11は、側方からの眺めが逆三角形状の形状になる姿勢で、駆動ローラ14、従動ローラ15、15’及び2次転写対向ローラ16に掛け回されており、駆動ローラ14の回転駆動によって図中時計回り方向に無端移動せしめられる。従動ローラ15’と2次転写対向ローラ16の間には、中間転写ベルト11を外側から内側に押圧して張力を与えているテンショウローラ18が配置されている。中間転写ベルト11の上方には、Y(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン),K(黒)のトナー像を形成するための4つの画像形成ユニット18Y,18M,18C,18Kが、ベルト移動方向に沿って並ぶように配設されている。
【0010】
画像形成ユニット18Y,18M,18C,18Kは、像担持体としてのドラム状の感光体20Y,20M,20C,20Kと、現像ユニット4Y,4M,4C,4Kと、感光体クリーニング装置7Y,7M,7C,7Kを備えている。感光体20Y,20M,20C,20Kは、それぞれ中間転写ベルト11に当接してY,M,C,K用の1次転写ニップを形成しながら、図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動せしめられる。現像ユニット4Y,4M,4C,4Kは、感光体20Y,20M,20C,20Kに形成された静電潜像をY,M,C,Kのトナーによって現像するものである。感光体クリーニング装置7Y,7M,7C,7Kは、1次転写ニップを通過した後の感光体20Y,20M,20C,20Kに付着している転写残トナーをクリーニングするものである。本プリンタでは、ベルト移動方向に沿って並べられた4つの画像形成ユニット18Y,18M,18C,18Kにより、タンデム画像形成部が構成されている。
【0011】
プリンタ部100内において、タンデム画像形成部の上方には、光書込ユニット21A、21Bが配設されている。これら光書込ユニット21A、21Bは、図中反時計回り方向に回転駆動される感光体20Y,20M,20C,20Kの表面に対し、光走査による光書込処理を施して静電潜像を形成するものである。感光体20Y,20M,20C,20Kの表面は、それぞれその光書込処理に先立って、画像形成ユニット18Y,18M,18C,18Kが備えている一様帯電手段3Y,3M,3C,3Kによって一様帯電せしめられる。
【0012】
中間転写ベルト11等を具備する中間転写ユニット10は、中間転写ベルト11のループ内側に、1次転写ローラ6Y,6M,6C,6Kを有している。これら1次転写ローラ6Y,6M,6C,6Kは、Y,M,C,K用の1次転写ニップの裏側で中間転写ベルト11を感光体20Y,20M,20C,20Kに向けて押圧している。
【0013】
中間転写ベルト11の下方には、2次転写ローラ22が配設されている。この2次転写ローラ22は、中間転写ベルト11のループ内の2次転写対向ローラ16に対する掛け回し箇所にベルトおもて面側から当接して2次転写ニップ29を形成している。2次転写ニップ29には、シート状の記録媒体P(以下、「記録シートP」という)が所定のタイミングで送り込まれる。そして、中間転写ベルト11上の4色重ね合わせトナー像がこの2次転写ニップ29で記録シートPに一括2次転写される。
【0014】
プリンタには、図示しないパソコンなどの出力装置が、プリンタケーブルやネットワークケーブルなどの信号線で接続されていて、この出力装置から出力された画像情報を制御部300で受け付ける。この画像形成装置がプリンタではなく、複写機の場合、例えばコンタクトガラス上に載置された原稿の画像情報を読取センサで読み取り、読み取った画像情報をプリンタ部100の制御部300に送る周知のスキャナ部を備えた構成としても良い。
【0015】
制御部300は、受け取った画像情報に基づき、プリンタ部100の光書込ユニット21A、21BにおけるレーザーダイオードやLED等の光源を制御して、Y,M,C,K用のレーザー書込光を出射して、感光体20Y,20M,20C,20Kを光走査する。この光走査により、感光体20Y,20M,20C,20Kの表面に静電潜像が形成され、この潜像は所定の現像プロセスを経てY,M,C,Kトナー像に現像される。
【0016】
プリンタ部100の下方に位置する給紙部200は、ペーパーバンク43内に多段に配設された給紙カセット44から記録シートPを送り出す給紙ローラ42、送り出された記録シートPを分離して給紙路46に導く分離ローラ45、プリンタ部100内に形成されている給紙路48に記録シートPを搬送する搬送ローラ47等を備えている。
【0017】
給紙については、給紙部200以外に、手差し給紙も可能となっており、手差しのための手差しトレイ51、手差しトレイ51上の記録シートPを手差し給紙路53に向けて一枚ずつ分離して給紙する給紙分離ローラ50も設けられている。プリンタ部100内において、手差し給紙路53は給紙路48に合流している。
【0018】
給紙路48の末端付近には、レジストローラ対49が配設されている。レジストローラ対49は、給紙路48内を搬送されてくる記録シートPをローラ間に挟み込んだ後、所定のタイミングで2次転写ニップ29に向けて送り込む機能を備えた周知のものである。
【0019】
本実施形態に係るプリンタにおいて、カラー画像をプリントする場合、制御部300がカラーの画像情報を受け取ると、画像情報に応じたサイズの記録シートPを給紙路48に給紙する。また、これに伴って、不図示の駆動モータで駆動ローラ14を回転駆動して中間転写ベルト11を図中時計回り方向に無端移動させる。同時に、画像形成ユニット18Y,18M,18C,18Kの感光体20Y,20M,20C,20Kの回転駆動を開始した後、感光体20Y,20M,20C,20Kに対する一様帯電処理、光書込処理、現像処理などを行う。これらの処理によって感光体20Y,20M,20C,20Kの表面上に形成されたY,M,C,Kのトナー像は、Y,M,C,K用の1次転写ニップで順次重ね合わせて中間転写ベルト11上に1次転写されて、4色重ね合わせトナー像になる。
【0020】
給紙部200では、給紙ローラ42の1つが記録シートのサイズに応じて選択的に回転され、3つの給紙カセット44のうちの1つから記録シートPが送り出される。送り出された記録シートPは、分離ローラ45で1枚ずつ分離されてから給紙路46に導入された後、搬送ローラ47を経由してプリンタ部100内の給紙路48に送られる。また、手差しトレイ51を用いる場合には、手差しトレイ51の給紙分離ローラ50が回転駆動して、同トレイ上の記録シートを分離しながら手差し給紙路53に送り込まれて給紙路48の末端付近に至る。給紙路48の末端付近では、記録シートPが先端をレジストローラ対49に突き当てて止まる。その後、中間転写ベルト11上の4色重ね合わせトナー像に同期し得るタイミングでレジストローラ対49が回転駆動すると、記録シートPが2次転写ニップ29内に送り込まれて中間転写ベルト11上の4色重ね合わせトナー像に密着する。そして、ニップ圧や転写用電界などの作用によって記録シートP上に一括で2次転写される。
【0021】
2次転写ニップ29で4色重ね合わせトナー像が転写された記録シートPは、記録媒体搬送手段400によって定着装置25内に送り込まれる。そして、定着装置25で加圧ローラ27と定着ベルト26との間の定着ニップに挟み込まれることで、加圧や加熱処理によって4色重ね合わせトナー像が記録シートPの表面に定着せしめられる。このようにしてカラー画像が形成された記録シートPは、排出ローラ対56を経由して機外の排紙トレイ57上に片面のプリント物としてスタックされる。
【0022】
なお、記録シートPのもう一方の面(裏面)側にも画像が形成される場合には、記録シートPは定着装置25から排出された後、図示しない切替爪による進路切り換えによって定着装置25及び記録媒体搬送手段400の下方に配置されたシート反転装置58に送られる。そして、上下反転された後、再びレジストローラ対49に戻されてから、2次転写ニップ29及び定着装置25を再経由し、排出ローラ対56を経由して機外の排紙トレイ57上に両面のプリント物としてスタックされる。
【0023】
2次転写ニップ29を通過した後、4色のうちで1次転写工程が最も上流となるY用の1次転写ニップに進入する前の中間転写ベルト11の表面には、ベルトクリーニング装置17のクリーニング部材が当接しており、これらクリーニング部材によってベルト表面に付着している転写残トナーがクリーニングされる。
【0024】
次に本発明の主要部となる記録媒体搬送装置400の実施形態について説明する。 記録シートPは2次転写ニップ29を通過することでトナー像を担持し、定着装置25まで搬送されるが、2次転写ニップ29から定着装置25までの間を、記録媒体搬送装置400によって搬送される。記録媒体搬送装置400によって搬送されている記録シートP上のトナー像は未定着であるので、トナー像が転写されている記録シートPの表面PAに記録媒体搬送装置400が備える搬送部材が接触するとトナー像が乱れてしまう。このため、記録媒体搬送装置400には吸着方式が採用されている。記録媒体搬送装置400は、図2に示すように、複数の吸気孔401が形成された搬送部材としての搬送ベルト402と、搬送ベルト402が巻き掛けられるローラ部材としての駆動ローラ403及び従動ローラ404と、駆動ローラ403と従動ローラ404に巻きかけられた搬送ベルト402のループ内に配置された吸引手段405とを備えている。
【0025】
搬送ベルト402は、その全面に複数の吸気孔401が形成されていて、駆動ローラ403と従動ローラ404に巻きかけられた時に、ベルト表面402aが2次転写ニップ29と定着装置25を結ぶ搬送経路60の搬送面を形成するように配置されている。本形態において、駆動ローラ403は記録シートPの搬送方向Xの上流側となる2次転写ニップ29寄りに配置され、従動ローラ404は、搬送方向Xの下流側となる定着装置25寄りに配置されている。
【0026】
吸引手段405は、搬送ベルト402のループ内に配置されていて、複数の孔406aが形成された支持板406と、図示しない駆動モータによって回転駆動されることで、ベルト表面402aに吸引力を発生させる吸引ファン407と、支持板406と吸引ファン407のケーシング407aとにその両端がそれぞれ接続されたダクト408を備えている。そして、図示しない駆動モータが制御部300の駆動指令で回転駆動されると、吸引ファン407が回転してダクト408内の空気を下方へと排出することで、ベルト表面402aに吸引力を発生させる。つまり、ベルト表面402aは、同ベルト表面と接触する記録シートPの接触面となる裏面Pdを吸着する吸着面を構成している。
【0027】
このような記録媒体搬送装置400は、1つのユニットとして構成されていて、従来の吸引方式の場合、記録媒体搬送方向と直交する幅方向Wに対して、1つのユニットを配置し、搬送ベルト402のベルト表面402aの高さが幅方向Wにおいて同一とされていた。また、複数の搬送ベルトが存在する場合でも、各搬送ベルトのベルト表面の高さは取り付け誤差を除いては、ほぼ同一の高さとされていた。
【0028】
2次転写ニップ29を通過した記録シートPは、記録媒体搬送装置400に対して駆動ローラ403側から搬送ベルト402のベルト表面402Aに案内されるため、駆動ローラ403側が記録媒体搬送装置400への記録媒体の進入側となる。このような吸引方式の記録媒体搬送装置400の場合、駆動ローラ403側での記録媒体進入位置に対する位置精度や記録シートPの波打ち等によって、搬送ベルト402のベルト表面402A上で記録シートPが斜行(搬送スキュー)する場合がある。
(第1の実施形態)
このような搬送不良を抑制するために、本形態では、図2に示した記録媒体搬送装置400を、図3に示すように、幅方向Wに対して3つの搬送ユニット400A、400B、400Cとして配置して搬送手段を構成するとともに、各搬送ユニットの搬送ベルト402A、402B、403Cのベルト表面402Aa、402Ba、402Caの高さを異なるようにした。なお、各搬送ユニットを構成する構成部材には、A〜Cの符号を付して区別する。
【0029】
搬送ユニットの設置数は、プリンタで使用する記録シートPの最大幅に合わせて適宜変更すけば良い。本形態では、3つの搬送ユニット400A〜400Cを配置したが、ユニット数は3つに限定されるものではなく、搬送ベルト402A、402B、402Cを備えた1つの搬送ユニットとして構成したものであっても良く、要は、複数の搬送ベルト402を備えていて、その吸着面となるベルト表面の高さが幅方向Wで異なって配置されていれば良い。
【0030】
本形態では、複数の搬送ユニット400A〜400Cのうち、幅方向Wの中央に配置した搬送ユニット400Bの搬送ベルト402Bのベルト表面402Baの高さを、両側に位置する搬送ベルト402A、402Cのベルト表面402Aa、402Caの位置よりも上方に配置し、記録シートPの中央部Paが搬送ベルト402Bに優先的に密着するよう構成している。なお、第1の実施形態において、各搬送ユニットの各駆動ローラ及び各従動ローラの外径(直径)はすべて同一寸法としている。
【0031】
各搬送ユニットが備える搬送方向Xの上流側に位置する駆動ローラ403A、403B、403Cは、共通の駆動軸410上に配置されていて、この駆動軸410が共通の駆動モータ411によって回転駆動されることで、駆動軸410と一体回転するように構成されている。
【0032】
各搬送ユニットが備える従動ローラ404A、404B、404Cは、それぞれ各ユニットの図示しないフレームに個別に支持された支持軸412A、412B、412Cによって回転自在に支持されている。本形態では、駆動ローラ403A〜403C側でのベルト表面402Aa、402Ba、402Caの高さは同一とされ、従動ローラ404A、404B、404C側でのベルト表面402Aa、402Ba、402Caの高さを異にしている。具体的には、図4,図5に示すように、支持軸412A、412Cを同一軸線上に配置して、ベルト表面402Aa、402Caの高さを同一とし、支持軸412Bを支持軸412A、412Cよりも上方に配置してベルト表面402Baの高さをベルト表面402Aa、402Caよりも上方に位置させている。
【0033】
このような構成とすることで、記録媒体搬送装置400へ向かって搬送移動している記録シートPの中央部Paが記録媒体搬送装置400上に到達すると、搬送ベルト402Bに中央部の裏面Pdが吸着されるため、記録シートPの中央部Paに搬送力を支配的に作用させることができ、記録シートPの両端部Pb,Pcに作用する搬送力ばらつきによる回転モーメントの発生を抑制することができ、記録媒体進入時や搬送中に記録シートPを斜行させることなく安定して定着装置25まで搬送することができる。
【0034】
なお、図3〜図5は、搬送ベルト402の配置と高さを主に説明するために、搬送ユニット400A、400B、400Cの駆動ローラ403A〜402C、従動ローラ404A〜404C及び搬送ベルト402A〜402Cのみを示した概略図としている。
【0035】
このように搬送ベルト402を幅方向Wに複数本配置した構成することによって、1本の搬送ベルトを用いる場合よりも、搬送ベルト402を成型する金型の大型化を避けられるため、安価に記録媒体搬送装置400を構成することができる。また、搬送部材を複数本の搬送ベルト402A〜402Cで構成することで、中央部に位置する搬送ベル402Bの表面性や形状、位置などを他のベルトと異なるよう構成することが容易に行える。
【0036】
本形態では、搬送ベルト402A〜402Cが巻き掛けられるローラ部材となる駆動ローラ403A〜403Cと従動ローラ404A〜404Cの外径を同一寸法としているので、ローラ部材の仕様を共通化することができ、部品構成を簡略化することができ、低コスト化を図ることができる。
【0037】
本形態によると、記録シートPの中央部Paと対向する位置に配置された搬送ベルト402Bが巻き掛けられた従動ローラ404Bだけを、他の従動ローラ404A、404Cよりも高くすることで、記録シートPの裏面Pdに近接して配置したので、駆動ローラ403A〜403Cを回転駆動する駆動軸410を同一駆動軸とすることができる。また、他の従動ローラ404A、404Cよりも、その高さが高い従動ローラ404Bを搬送方向Xの下流側に配置したので、2次転写ニップ29から記録シートPが抜けた後の搬送不良を抑制することができる。
(第2の実施形態)
図6〜図8を用いて第2の実施形態を説明する。この形態では、第1の実施形態で説明した幅方向Wの中央に配置した搬送ユニット400Bのベルト表面402Aaを、他の搬送ユニット400A、400Cのベルト表面402Aa、402Caよりも高くするために、搬送ベルト402Bを張架する従動ローラ404Bの外径(直径)D1を従動ローラ404A、404Cの外径(直径)D2よりも大径としたものである。本形態においても、従動ローラ404B以外の駆動ローラ403A〜403Cと、従動ローラ404A、404Cの外径(直径)は同一寸法としている。
【0038】
このため、本形態では、第1の実施形態のように支持軸の位置を変更しなくてよいので、従動ローラ404A〜404Cを同一の支持軸413で回転自在に支持している。この支持軸413は、図示しないユニットのフレームに装着されている。
【0039】
本形態では、複数の搬送ベルト402A、402B、402Cを同一駆動軸410で駆動しているため、直径を大きくしたローラ部材に巻き掛けられた搬送ベルト402Bの表面速度は他の搬送ベルト402A、402Cよりも速くなってしまうため、従動ローラ404Bの直径だけを従動ローラ404A、404Cよりも大径とした。
【0040】
このような構成とすることで、記録媒体搬送装置400へ向かって搬送移動している記録シートPの中央部Paが記録媒体搬送装置400上に到達すると、搬送ベルト402Bに中央部の裏面Pdが吸着されるため、記録シートPの中央部Paに搬送力を支配的に作用させることができ、記録シートPの両端部Pb,Pcに作用する搬送力ばらつきによる回転モーメントの発生を抑制することができ、記録媒体進入時や搬送中に記録シートPを斜行させることなく安定して定着装置25まで搬送することができる。
【0041】
このように、従動ローラ404Bの外径(直径)D1を,他の従動ローラ404A、404Cの外径(直径)D2よりも大径にすることで、中央の搬送ベルト402Bのベルト表面402Aaを記録シートPの裏面Pdに対して近接しているので、複数の従動ローラ404A〜404Cの全てを単一の支持軸413で支持し、駆動ローラ403A〜402Cも単一の駆動軸410で支持することができるので、装置構成を簡略化することができる。
【0042】
2次転写ニップ29から記録シートPが抜けた後の記録シートPの搬送は、2次転写ニップ29に記録シートPが挟持されている状態よりも不安定になりがちであるため、直径を大きくした従動ローラ404Bを搬送方向Xの下流側に配置している。なお、図6〜図8は、従動ローラ402Bの外径を他のローラ部材よりも大径として搬送ベルト402の高さ他の搬送ベルト402A、402Cよりも高くしたことを主に説明するために、搬送ユニット400A、400B、400Cの駆動ローラ403A〜402C、従動ローラ404A〜404C及び搬送ベルト402A〜402Cのみを示した概略図としている。
【0043】
両側と中央部の記録シートPの表面PAの高さの差としては1mm〜3mm程度が望ましい。従動ローラ404Bと従動ローラ404A、404Cの外径の差が大きすぎると記録シートPが搬送装置で反ってしまい、定着時のシワの発生の原因となることがあるためである。
【0044】
前述のように中央部の搬送ベルト402Bを記録シートPに近接させる構成においては、搬送方向の下流側で記録シートPの裏面Pdに近接させることが望ましい。各搬送ベルトに記録シートPが搬送される過程において、2次転写ニップ29に記録シートPが挟持されている状態では記録シートPの搬送が乱れることは少なく、むしろ、記録シートPの後端が2次転写ニップ29を通過した後の方が、記録シートPの挙動は不安定になりがちである。
【0045】
以上のような理由から、少なくとも搬送ユニット400Bの下流側は、上流側に比べて搬送ベルト402Bのベルト表面402Aaの位置が記録シートPに近接する位置を占める構成とするのが望ましい。
【0046】
本形態によると、支持軸413上に配置される中央部の従動ローラ404Bのみが、他の従動ローラ404A、404C及び駆動ローラ403A〜403Cの外径よりも大径に形成し、同一駆動軸410により駆動される駆動ローラ403A〜403Cの外径を同一としているので、複数の搬送ベルト402A〜402Cの駆動速度を同一に設定することができ、中央の搬送ベルト402Bと、その両側に位置する搬送ベルト402A、402Cとの速度差による搬送不良を抑制することができる。
【0047】
本形態では、大径とした従動ローラ404Bを搬送方向Xの下流側に配置しているので、2次転写ニップ29から記録シートPが抜けた後の搬送不良を抑制することができる。
(第3の実施形態)
上記2つの形態では、搬送ベルト402Bの吸着面となるベルト表面402Baの位置を従動ローラ404Bの位置や、従動ローラ404Bの外径を変更することで、他の搬送ベルト402A、402Cよりも高い位置にして記録シートPの裏面Pdに対して近接する位置を占めるように構成したが、本形態は搬送ベルト402B自身により他の搬送ベルト402A、402Cよりも高い位置に吸着面を位置させたものである。
【0048】
搬送ベルトのベルト表面には、吸気孔の有無領域によって記録シートの温度差が生じ、定着ムラが発生するのを防ぐ目的で複数の凸部となるリブを形成し、搬送ベルトと記録シートとの間を一定距離の空間を設けて記録シートを吸着搬送する場合がある。
【0049】
そこで、本形態では、図9(a)に示す中央に位置する搬送ベルト402Bのベルト表面402Baに同ベルト表面から外方に延びる複数のリブ420Bを形成し、隣接するリブ420Bの間に空間421Bを形成し、図9(b)に示す搬送ベルト402Bの両側に位置する搬送ベルト402A、402Cのベルト表面402Aa、402Caに同ベルト表面から外方に延びる複数のリブ420A、420Cをそれぞれ形成、隣接するリブ420A、420Cの間に空間421A、421Cをそれぞれ形成した。そして、搬送ベルト402Bのリブ420Bの高さh1を、搬送ベルト402A、402Cのリブ420A、420Cの高さh2よりも高く設定した。本形態において、記録シートPは、搬送ベルト402A〜402Cのリブ420A〜420Cの上部420Aa〜420Caに吸着されることになる。本形態において、各搬送ベルト402A〜402Cを巻き掛けるローラ部材としての駆動ローラ403A〜403Cと従動ローラ404A〜404Cは、第2の実施形態の構成のものを用いる。
【0050】
このように搬送ベルト自身を構成しても、図10に示すように、記録シートPは中央部に位置する搬送ベルト402Bに最も強く吸着されて接触し、前記した第1、第2の実施形態同様に、中央に位置する搬送ベルト402Bの高さを高くした場合と同様の搬送安定の効果を得ることができる。
【0051】
また、同一の駆動軸410と従動軸413及び、同一サイズのローラ部材を使用して、中央に配置された搬送ベルト402Bの吸着面(接触位置)を他の搬送ベルト402A、402Cよりも記録シートPに対して近接させているので、上記の実施形態と同様に、複数の搬送ベルト402A〜402Cの駆動速度を同一に設定することができ、中央の搬送ベルト402Bと、その両側に位置する搬送ベルト402A、402Cとの速度差による搬送不良を抑制することができるとともに、装置構成を簡略化することができる。
【0052】
本形態において、中央に配置された搬送ベルト402Bのリブ420Bの高さh1は、搬送ベルト402Bの両側に位置する搬送ベルト402A、401Cのリブ420A、420Cの2倍となるように設定した。具体的には中央部のリブ420Bの高さを1mmとし、搬送ベルト402A、402Cのリブ420A、420Cの高さh2を0.5mm程度に設定すると良い。
【0053】
上記各実施形態では、搬送部材として3つの搬送ベルト402A、402B、402Cを用いた場合を説明したが、本発明の適用形態としては、3つ搬送ベルトに限定されるものではなく、例えば5本でもよい。あるいは、1つの搬送ベルトの場合であっても、その中央を両端側よりも厚く形成して記録シートPの裏面Pdに近接するように配置してもよい。
【符号の説明】
【0054】
25 定着装置
29 転写部
40(Y、M、C、K)像担持体
400(A〜C) 記録媒体搬送装置(搬送手段)
402(A〜C) 搬送部材
402(Aa〜Ca)表面
403(A〜C) 駆動ローラ(ローラ部材)
404(A〜C) 従動ローラ(ローラ部材)
410 共通の駆動源
420(A〜C) 複数の凸部
D1、D2 ローラ部材の外径
h1、h2 凸部の高さ
P シート状の記録媒体
Pd 記記録媒体の接触面
X 搬送方向
W 幅方向
【先行技術文献】
【特許文献】
【0055】
【特許文献1】特開2006−1686号公報
【特許文献2】特開2006−176265号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持したシート状の記録媒体をその表面に吸着して搬送する搬送部材を備えた記録媒体搬送装置において、
前記記録媒体の搬送方向と交差する幅方向における、前記搬送部材の中央部が、同搬送部材の両端側よりも前記表面に吸着される前記記録媒体の接触面に近接するように配置されていることを特徴とする記録媒体搬送装置。
【請求項2】
請求項1記載の記録媒体搬送装置において、
前記搬送部材は、複数のローラ部材で張架されて前記幅方向に複数配置されていて、
これら複数の搬送部材のうち、記録媒体の中央部と対向する位置に配置された搬送部材が巻き掛けられたローラ部材の外径を、他の搬送部材を巻き掛けられているローラ部材の外径よりも大径にして前記記録媒体の接触面に近接して配置したことを特徴とする記録媒体搬送装置。
【請求項3】
請求項2記載の記録媒体搬送装置において、
前記各搬送部材が巻き掛けられた複数のローラ部材は、駆動ローラと従動ローラを有し、
少なくとも駆動ローラは、同一の外径で共通の駆動源で回転駆動され、
前記記録媒体の中央部と対向する位置に配置された搬送部材が巻き掛けられた従動ローラは、前記駆動ローラ及び従動ローラよりもその外径が大径とされていることを特徴とする記録媒体搬送装置。
【請求項4】
請求項2または3記載の録媒体搬送装置において、
前記大径のローラ部材は、媒体搬送方向の下流側に配置されていることを特徴とする録媒体搬送装置。
【請求項5】
請求項1記載の記録媒体搬送装置において、
前記搬送部材は、複数のローラ部材で張架されて前記幅方向に複数配置されていて、
これら複数の搬送部材のうち、記録媒体の中央部と対向する位置に配置された搬送部材が巻き掛けられたローラ部材を、他の搬送部材が巻き掛けられているローラ部材より前記記録媒体の接触面に近接して配置したことを特徴とする記録媒体搬送装置。
【請求項6】
請求項5記載の記録媒体搬送装置において、
前記各搬送部材が巻き掛けられた複数のローラ部材は、駆動ローラと従動ローラを有し、これら駆動ローラと従動ローラが、同一外径であることを特徴とする記録媒体搬送装置。
【請求項7】
請求項6記載の記録媒体搬送装置において、
前記記録媒体の中央部と対向する位置に配置された搬送部材が巻き掛けられた従動ローラが、前記記録媒体の接触面に近接して配置されていることを特徴とする記録媒体搬送装置。
【請求項8】
請求項7記載の記録媒体搬送装置において、
前記従動ローラは、媒体搬送方向の下流側に配置されていることを特徴とする録媒体搬送装置。
【請求項9】
請求項1記載の記録媒体搬送装置において、
前記搬送部材は、複数の同一外径のローラ部材で張架されて前記幅方向に複数配置されていて、
各搬送部材は、その表面に同表面から外方に延びる複数の凸部を有し
前記記録媒体の中央部と対向する位置に配置された搬送部材の凸部は、他の搬送部材の凸部よりも高く設定されていることを特徴とする記録媒体搬送装置。
【請求項10】
像担持体と、像担持体上に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写部と、前記転写部でトナー像が転写された記録媒体に、当該トナー像を定着する定着装置と、前記転写部でトナー像が転写された記録媒体を前記定着装置に吸着搬送する搬送手段とを備え、
前記搬送手段として、請求項1ないし9の何れか1項に記載の記録媒体搬送装置を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−233999(P2012−233999A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101516(P2011−101516)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】