説明

記録媒体駆動装置

【課題】 記録媒体駆動装置において、ディスクのローディング・アンローディング動作及びチャッキング動作を安定して確実に行えるようにする。
【解決手段】 ディスクDを挿入する挿入口3を備えた外筐体1と、ディスクDの挿入時又は排出時にディスクDを保持するディスクホルダ36,37と、そのディスクホルダ36,37を支持するホルダプレート34,35と、ディスクDを装置内に挿入又は排出するための駆動力を供給するローディング用モータ42と、そのローディング用モータから供給される駆動力によって、ディスクDの装置内への挿入又は排出を行う機構と、を備えて構成されている。ディスクホルダ36,37は、支点軸64a,64bによって、回動自在に支持されていると共に、その支点軸には、ディスクホルダを挿入口3方向に付勢する捩りばね65a,65bが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報記録媒体として光ディスクや光磁気ディスク等のディスク状記録媒体を用いて情報の記録(書き込み)及び/又は再生(読み取り)を行うディスクプレーヤ装置等の記録媒体駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般に、ディスク状記録媒体としての光ディスクには、CD(コンパクトディスク)やCD−ROM等のようなリードオンリー型、一度だけ書けるライトワンス型、及び再度の書き込みができるリライタブル型の3種類のタイプがある。これらの光ディスクを情報記録媒体として情報の記録及び/又は再生を行うディスクプレーヤ装置では、スピンドルモータの回転軸に取り付けられたターンテーブル上に光ディスクを水平に装着して回転駆動する一方、光学ピックアップの対物レンズによってレーザビーム等を光ディスクの情報記録面に垂直に照射し、その対物レンズを光ディスクの中心から半径方向外側に水平に移動させながら情報記録面に情報を記録したり当該情報記録面に記録されている情報を再生するようにしている。
【0003】
上記光ディスクは、例えばポリカーボネートのような合成樹脂材料によって円盤状に形成されたディスク基板と、このディスク基板の一主面部に形成された信号記録面部とを有して構成されている。そして、光ディスクの信号記録面部には、アルミニウムのような金属材料よりなる薄膜が反射層として被着形成されている。
【0004】
このような構成を有する光ディスクは、上記光学ピックアップを備えたディスクプレーヤ装置に装着されることによって情報信号の記録及び/又は再生に供されている。このディスクプレーヤ装置は、光ディスクをディスク装着部に装着させるディスクローディング機構と、装着された光ディスクを光学ピックアップに対向させた状態に保持して回転操作する回転操作機構とを備えている。この回転操作機構は、光ディスクが装着されるディスク装着部を構成しており、ディスクプレーヤ装置の外筐体に対して外部から挿入操作された光ディスクをディスクローディング機構が搬送してディスク装着部に装着させる構成となっている。
【0005】
このディスクローディング機構としては、いわゆるスロットイン方式のものが提案されている。このスロットイン方式のディスクローディング機構は、外筐体に形成されたスロットより挿入された光ディスクを、この光ディスクの主面部に沿ってディスク装着部まで搬送し、このディスク装着部に対する位置決めを行うための位置決め部材を動作させて光ディスクを装着するとともに、この光ディスクの装着後には、上記位置決め部材を光ディスクより離間させる機構を設けている。
【0006】
また、この種のディスクプレーヤ装置は、光ディスクを外部からディスク装着部まで搬送する手段によって分類すると、トレー方式によるものとローラ方式によるものの2つに大別できる。
【0007】
トレー方式とは、光ディスクを水平に載置するためのトレーという部材が外筐体に対して出し入れ可能に構成されており、光ディスクが水平に載置されたトレーを外筐体内に引き込むことにより、当該光ディスクがトレーによってディスクチャッキング位置まで搬送され、回転操作機構の一部をなすターンテーブルにチャッキングされるようになっている。一方、ローラ方式は、一対のローラで光ディスクを主面部両側より挟持し、そのローラを回転させることにより、装置前面のスロットより挿入された光ディスクを装置内に引き込むようにしたものである。
【特許文献1】特開昭63−175260号公報
【0008】
しかしながら、このような従来のディスク記録再生装置のディスクローディング機構においては、光ディスクの位置決め部材及び、この位置決め部材を移動操作する機構を設ける必要があった。そのため、従来のディスクローディング機構では、装置構成が複雑化されているという課題があった。
【0009】
また、トレー方式のディスクプレーヤ装置は、機構が比較的簡単なものとなり安価に実現できるため、現在では、このトレー方式が主流をなしているが、トレーという部材の厚みが大であることから、装置全体が大型になる。しかも、トレーが装置外に突出するため、使用者はトレーの突出する空間を常に確保しておく必要がある。これらは特に、装置がコンピュータに搭載される場合において、使用者の不満となっていた。
【0010】
一方、ローラ方式は、ローラの回転とディスクのチャッキング動作とにそれぞれ動力が必要となり、装置が高価なものとなってしまう。更に、ローラ部の挟持摩擦によって光ディスクを搬送するため、ローラのスリップ等による動作不良や情報記録面部に対する傷等の悪影響の可能性など耐久性、信頼性上の問題が指摘されており、ローラ等の部品に対して厳しい品質管理が要求されていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたもので簡単な構成で、ディスクのローディング及びアンローディングを安定して確実に行える記録媒体駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述目的を達成するために、本発明による記録媒体駆動装置は、記録媒体を挿入する挿入口を備えた装置本体と、上記記録媒体の挿入時又は排出時に該記録媒体を保持するディスクホルダと、上記ディスクホルダを支持する支持手段と、上記記録媒体を装置内に挿入又は排出するための駆動力を供給する駆動手段と、上記駆動手段から供給される上記駆動力によって、上記記録媒体の上記装置内への挿入又は排出を行う機構と、を備え、上記ディスクホルダは、支点軸によって、回動自在に支持されていると共に、上記支点軸には、該ディスクホルダを上記挿入口方向に付勢する付勢手段が設けられていることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
装置本体とディスクホルダと支持手段と駆動手段と記録媒体の装置内への挿入又は排出を行う機構とを備え、支点軸によって回動自在に支持されているディスクホルダを付勢手段で挿入口方向に付勢する構成としたことにより、ディスク装着部に対するディスク(記録媒体)の移動及び挟持・挟持解除動作を安定して確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
記録媒体の移動及び挟持・挟持解除動作を安定して確実に行うことができる記録媒体駆動装置を、簡単な構成によって実現した。
【0015】
以下、本発明の記録媒体駆動装置の実施の形態例を図面を参照して説明する。この実施例に係る記録媒体駆動装置は、ディスク状記録媒体の一具体例を示す光ディスクに記録された情報信号を再生するディスクプレーヤ装置に適用したもので、以下の順序により説明する。
【0016】
〔1〕 光ディスクの構成(図1)
〔2〕ディスクプレーヤ装置の外観構成(図1)
〔3〕ディスクプレーヤ装置の内部構成
(3−1) ディスク駆動、読取り機構(図6)
(3−2) ディスクローディング機構(図2〜図4、図7〜図10)
〔4〕 ディスクプレーヤ装置の動作
(4−1) 光ディスクのローディング初期状態(図11R>1)
(4−2) 光ディスクのローディング操作(図12〜図14)
(4−3) 光ディスクのチャッキング(図5、15)
(4−4) 光ディスクのイジェクト操作(図16〜図1818)
(4−5) 光ディスクの手動取出し操作(図19)
【0017】
〔1〕光ディスクの構成(図1)
光ディスクDは、例えばポリカーボネートのような合成樹脂材料により、直径が例えば120mm程度の円盤状に形成されたディスク基板を有し、このディスク基板の中央部には、直径が例えば15mm程度のチャッキング孔dが穿設されている。このディスク基板の一方の面である主面部は、信号記録面となされており、このディスク基板が射出成形手段によって成形されるときに、微細な凹凸からなるピットが形成される。このピットは、この光ディスクDに記録されるディジタル信号化された情報信号に対応したものとなっている。そして、この信号記録面上には、アルミニウムのような金属材料からなる反射層が被着形成されている。
【0018】
この光ディスクDは、光学ピックアップ装置を用いて、他方の主面部である信号読取り面側よりディスク基板を透して信号記録面に集光させた光束を照射し、この光束の信号記録面よりの反射光を検出することにより、情報信号の読取りが行えるように構成されている。
【0019】
〔2〕 ディスクプレーヤ装置の外観構成(図1)
本例のディスクプレーヤ装置は、光ディスクDのスロットイン方式であって、装置外観を図1に示す。このディスクプレーヤ装置は、後述するディスク駆動、読取り機構及びディスクローディング機構を内蔵できる大きさで前面側が開放された外筐体1と、この外筐体1の前面側開放部に取り付けられるフロントパネル2とから構成されている。
【0020】
装置本体である外筐体1は、上面部に対して両側面部及び後面部を一体に形成した覆板部と底面板部とから形成されている。また、フロントパネル2には、横幅寸法が光ディスクDの直径寸法よりもやや大で、水平方向に細長く開口する挿入口であるディスク挿入スロット3が設けられており、このディスク挿入スロット3から光ディスクDが外筐体1の内外に出し入れされる。更に、フロントパネル2には、光ディスクDを自動的に排出するためにイジェクト操作する操作釦4が設けられている。
【0021】
尚、外筐体2の材質としては鋼板、フロントパネル3の材質としてはABS樹脂等の合成樹脂が好適であるが、外筐体2を合成樹脂材料によって形成してもよく、またフロントパネル3を板金によって形成してもよい。
【0022】
〔3〕 ディスクプレーヤ装置の内部構成
(3−1) ディスク駆動、読取り機構(図6)
このディスクプレーヤ装置は、図6に示すように構成されるディスク駆動、読取り機構5を備えている。このディスク駆動、読取り機構5は、ベースシャーシ6に俯仰可能に支持されるサブシャーシ7に取り付けられており、ベースシャーシ6を介して外筐体1の内部に収容されている。ベースシャーシ6は、底の浅い四辺形の筐体からなり、その上面に開放された開口部6aの奥側両側部には、サブシャーシ7の後部両端を位置決めして俯仰可能に支持するための左右一対の位置決め突起6bが設けられている(図7を参照)。
【0023】
このベースシャーシ6の位置決め突起6bに対応させて、サブシャーシ7の後部両側部にはインシュレータ取付部7a,7aが設けられ、また前部の中央にはインシュレータ取付部7bが設けられている。これらインシュレータ取付部7a,7bには、ゴム等の弾性部材によって形成された振動の伝達を防止するダンピング部材であるインシュレータ8が取り付けられている。そして、サブシャーシ7の後部に取り付けられた各インシュレータ8が位置決め突起6bに係合され、前部に取り付けられたインシュレータ8が昇降駆動レバー9に取り付けられている。
【0024】
尚、ベースシャーシ6及びサブシャーシ7の材質としては、例えばポリアセタール等の機械的強度が高いエンジニアリングプラスチック等が好適であるが、その他の合成樹脂材料を適用できることは勿論のこと、アルミニウム合金や鋼板等を用いることもできる。
【0025】
このサブシャーシ7には、光学ピックアップ装置10とターンテーブル11が搭載されている。ターンテーブル11はスピンドルモータ12の回転軸の先端側に取り付けられていて、そのスピンドルモータ12はサブシャーシ7の前部側に位置されている。このターンテーブル11の上部中央には、光ディスクDのチャッキング孔dが嵌合されるセンタリングガイド11aが設けられている。そして、センタリングガイド11aの中央部にはチャッキング用のマグネット14が取り付けられており、このセンタリングガイド11aによって光ディスクDの位置決めがなされる。
【0026】
一方、光学ピックアップ装置10は、ターンテーブル11の後方側において、サブシャーシ7に配設された左右一対のガイド軸15a,15bに沿って前後方向、即ち、ターンテーブル11に対して接近・離反可能に構成されている。2本のガイド軸15a,15bは、互いに平行とされて両端がサブシャーシ7に支持固定されている。
【0027】
この光学ピックアップ装置10は、対物レンズ16とスキューセンサ17とが上向きに取り付けられたキャリッジ18を有し、このキャリッジ18の両端に設けられた軸受部18a,18bに一対のガイド軸15a,15bがそれぞれ摺動可能に挿通されている。更に、キャリッジ18の側面には、対物レンズ16に対してレーザビームを送受信する光学ブロック19が取り付けられている。尚、スキューセンサ17は、光ディスクDの主面部の傾斜を検出してこれに対物レンズ16を追従させるための検出器である。
【0028】
このような光学ピックアップ装置10をターンテーブル11に対して進退動作させるために、サブシャーシ7にはキャリッジ移動機構20が設けられている。このキャリッジ移動機構20は、図6に示すように、サブシャーシ7に固定されたキャリッジ駆動モータ21と、このキャリッジ駆動モータ21によって正逆方向に回転駆動される駆動ギア22と、この駆動ギア22とキャリッジ駆動モータ21の回転軸に取り付けられた出力ギア23との間を動力伝達可能に連結するギアトレイン24と、キャリッジ18の一側面に取り付けられ且つ駆動ギア22に噛合されるラック25等を有している。
【0029】
かくして、複数個のギアの組み合わせからなるギアトレイン24を介して正逆回転される駆動ギア22がラック25を直線駆動することにより、キャリッジ18が一対のガイド軸15a,15bにガイドされて進退動作される。
【0030】
(3−2) ディスクローディング機構(図2〜図4、図7〜図10)
また、ディスクプレーヤ装置には、前述したディスク駆動、読取り機構5に対応して、このディスク駆動、読取り機構5に光ディスクDをローディング及びアンローディングさせるためのディスクローディング機構30が備えられている。このディスクローディング機構30は、ベースシャーシ6の上面側に取り付けられるトップシャーシ31の内面側に配設されており、その一部をなす後述するカムレバー32及びギアレバー33は、ベースシャーシ6の上面にそれぞれ回動可能に取り付けられている。このディスクローディング機構30により、駆動手段から供給される駆動力によって記録媒体の装置内への挿入又は排出が行われる。
【0031】
トップシャーシ31は、本例では板金により形成されているが、ベースシャーシ6と同様にポリアセタール等の機械的強度が大きなエンジニアリングプラスチックによって成形することができる。このトップシャーシ31は、図2〜図4に示すように、平面から見てベースシャーシ6とほぼ同大の平板状に形成されており、ベースシャーシ6の上面に設けた複数個の取付脚部6cにねじ止めすることによってベースシャーシ6に固定されている。
【0032】
このトップシャーシ31の内面側に備えられるディスクローディング機構30は、左右一対のホルダプレート34,35と、同じく左右一対のディスクホルダ36,37と、イジェクトアーム38とイジェクトレバー69とラックプレート40とカムレバー41と、ローディング用モータ42とローディングギア列80とアンローディングギア列79等を有している。ホルダプレート34,35が、ディスクホルダ36,37を支持する支持手段を構成している。また、ローディング用モータ42が、記録媒体を装置内に挿入又は排出するための駆動力を供給する駆動手段をなしている。
【0033】
左右一対のホルダプレート34,35は、図3に示すように、前後方向であるディスク挿入方向に延びる垂直辺部34a,35aと、各垂直辺部34a,35aの奥側において互いに対向するように内側に突出する水平辺部34b,35bと、前側の先端部から若干後方よりの位置において内面側に突出する断面L字状の支持部34c,35cと、これら支持部34c,35cとの間に上下方向に所定の隙間をあけて折曲形成された支持片34d,35dとがそれぞれ設けられており、垂直辺部34a,35a及び水平辺部34b,35bと支持片34d,35dとの間にトップシャーシ31が挿通されている。
【0034】
一方のホルダプレート34の水平辺部34bは、他方のホルダプレート35の水平辺部35bの内側に形成されており、一方のホルダプレート34の垂直辺部34aの後端部には、他方のホルダプレート35の水平辺部35bの先端部に設けた前向凸部35eとの干渉を避けるための切欠き34fが設けられ、また、他方のホルダプレート35の垂直辺部35aの後部には、一方のホルダプレート34の水平辺部34bの先端が係合される切欠き35fが設けられている。そして、両水平辺部34b,35bの互いに対向する辺には、それぞればね受け片34g,35gが設けられている。これらばね受け片34g,35g間には付勢部材の一具体例を示すコイルばね45が架設されており、このコイルばね45のばね力によって一対のホルダプレート34,35がトップシャーシ31を左右方向から挟むように互いに内側に付勢されている。
【0035】
更に、一方のホルダプレート34の水平辺部34bの両端部と、他方のホルダプレート35の前向凸部35eには、トップシャーシ31側に突出するガイドピン46a,46b及び47がそれぞれ固定されている。そして、各ガイドピン46a,46b及び47の先端部は、トップシャーシ31に設けた前後方向に延びる互いに平行とされたガイド溝48a,48b,48cにそれぞれ摺動可能に係合されている。
【0036】
また、一方のホルダプレート34の水平辺部34bの基部は前側に張り出しており、この張出部の他方のホルダプレート35側の端縁には前後方向に延びるラック部49が設けられている。このラック部49はガイド溝48a等と平行とされており、このラック部49と平行になって前後方向に延びるガイド溝50が一方のホルダプレート34の垂直辺部34aの中途部に設けられている。そのガイド溝50には、付勢部材の一具体例を示す板ばね51が取り付けられている。
【0037】
板ばね51は、断面L字状に形成された固定部51aと、この固定部51aの一側に連続する操作部51bとを有し、固定部51aをガイド溝50の一方の側縁に沿わせた状態で止ねじ52によってホルダプレート34に締付固定されている。板ばね51の操作部51bはガイド溝50の上方に張り出していると共に、その前縁部には、ガイド溝50内を摺動する操作ピン53を押圧して後述するカムレバー32を揺動させるための傾斜面からなるピン操作部51cが形成されている。そして、このピン操作部51cによる操作ピン53の左右方向への移動を確保するためにガイド溝50の前部には、内側に連続する逃げ部50aが設けられている。
【0038】
更に又、両ホルダプレート34,35の垂直辺部34a,35aの先端部から若干後方よりの位置には、後側に突出するL字状のフック部34h,35hが設けられている。これらのフック部34h,35hは、両ホルダプレート34,35がローディングのために後退動作したときに一対のプーリキャッチ54,55のキャッチ溝54a,55aにそれぞれ係合し、次の動作による両ホルダプレート34,35の外側への移動によって各プーリキャッチ54,55を、図5において実線で示す状態から二点鎖線で示すように、それぞれ外側に移動させてチャッキング部材56の保持を開放する。
【0039】
チャッキング部材56は、トップシャーシ31の下面側前部中央部に取り付けられたプーリカバー57のプーリ収容部58に回転自在に支持されている。このプーリカバー57は、前部が長方形で後部が半円形をなすと共に一面側に開放した薄い筐体からなり、後部の内側を円形に仕切ることによってその内部にプーリ収容部58が形成されている。このプーリ収容部58の開放側と反対側には円形の開口部が設けられており、これによって内向きのフランジ部57aが形成されている。
【0040】
このプーリカバー57のプーリ収容部58のディスク挿入方向と直交する左右方向の両側部には、それぞれ外側に膨出する膨出部57bが設けられていると共に、各膨出部57bの内側に位置するフランジ部57aには切欠き57cがそれぞれ形成されている。このようなプーリ収容部58にチャッキング部材56が、直径方向及び上下方向にある程度の隙間をあけて収容されている。そして、プーリカバー57の左右の膨出部57bに対応させて、この膨出部57bの中心と中心部が一致するようにトップシャーシ31には、左右方向に延びるガイド溝60が設けられている。
【0041】
このガイド溝60は、左右方向の両外側に設けられたキャッチ摺動部60a,60aと、両キャッチ摺動部60a間を連通する連通部60bとを有し、各キャッチ摺動部60aにはプーリキャッチ54,55の抜け止め用フランジ部54b,55bを通過させるための通過孔60cが形成されている。このようなガイド溝60に、図2〜図5に示すように、チャッキング部材56を挟んで支持するための同一部材からなる左右一対のプーリキャッチ54,55が左右方向へ摺動可能に係合されている。
【0042】
一対のプーリキャッチ54,55は、ガイド溝60のキャッチ摺動部60aに係合される長方形のブロック体からなり、その内外両側上部には、下面側への抜け出しを防止するための上記フランジ部54b,54c及び55b,55cが設けられ、また、下面側中央部にはチャッキング部材56を挟むための爪部54d,55dがそれぞれ設けられている。各プーリキャッチ54,55の爪部54d,55dは、チャッキング部材56を挟むために内側にくの字状に折曲形成されていて、上面側への抜け出しを防止すると共にチャッキング部材56を安定よく挟持するためにガイド溝60の通過孔60cの寸法よりも幅広に形成されている。
【0043】
更に、各プーリキャッチ54,55の内端部には、互いに対向するようにばね受け部54e,55eが設けられている。これらばね受け部54e,55e間には付勢部材の一具体例を示すコイルばね61が架設されており、このコイルばね61のばね力によって一対のプーリキャッチ54,55がチャッキング部材56を左右方向から挟むように互いに内側に付勢されている。そして、各プーリキャッチ54,55の内側への移動を、ガイド溝60のキャッチ摺動部60aの内端縁によって規制している。
【0044】
尚、プーリキャッチ54,55及びプーリカバー57の材質としては、例えばABS樹脂が好適であるが、その他の合成樹脂材料を適用できることは勿論のこと、アルミニウム合金等の金属材料等を用いることもできる。
【0045】
また、プーリキャッチ54,55に挟持されるチャッキング部材56は、図5に示すように、中央部において下方に突出する位置決め軸部56aを有する円盤状の部材からなり、中央部を上方へ膨出させることによって位置決め軸部56aの周囲にリング状の空間部を設けている。この空間部にはリング状の前述したマグネット14が嵌合固定されており、このマグネット14の磁力によってチャッキング部材56がターンテーブル11側に吸引される。
【0046】
このチャッキング部材56の空間部には、ローディング時にターンテーブル11のセンタリングガイド11aが嵌合され、これによりターンテーブル11に対する光ディスクDの位置決めがなされる。このチャッキング部材56のマグネット14の磁力をターンテーブル11に確実に作用させるために、ターンテーブル11の中央部にはリング状の凹陥部を設けて磁性体の一具体例を示す鉄製のチャッキングリング62が固着されている。
【0047】
上記一方のホルダプレート34の支持部34cの内側には、一対のディスク挟持部材の一具体例を示す一方のディスクホルダ(第1のディスクホルダ)36が、その前部を支点軸64aによって水平方向へ旋回可能に支持されている。これに対して、他方のホルダプレート35の支持部35cの内側には、一対のディスク挟持部材の一具体例を示す他方のディスクホルダ(第2のディスクホルダ)37が、その前部を支点軸64bによって水平方向へ旋回可能に支持されている。そして、両ディスクホルダ36,37は、各支点軸64a,64bに緩く嵌合される付勢部材としての一具体例を示す捩りばね65a,65bによってそれぞれ外側、即ち図11において、第1のディスクホルダ36は挿入口のある反時計方向に、また、第2のディスクホルダ37は第1のディスクホルダ36の付勢方向と逆の反時計方向に付勢されている。
【0048】
一対のディスクホルダ36,37の内面側には、光ディスクDの外周である周縁部を保持するための凹側に湾曲された円弧状の保持溝66,67がそれぞれ設けられている。これら保持溝66,67は、光ディスクDの外周縁とほぼ同一の曲率半径を有すると共に、図5に示すように、各保持溝66,67の溝幅方向の両側には、光ディスクDの外周縁を中央の保持溝66,67に案内するための内側に傾斜されたテーパ面66a,66b及び67a,67bが設けられている。これらテーパ面66a,66b及び67a,67bの傾斜角度は、光ディスクDの平面方向に対してほぼ60度に設定することが好ましいが、光ディスクDの外周縁を案内できる傾斜面であれば、この傾斜角度に限定されるものではない。
【0049】
このようなディスクホルダ36,37の支点軸64a,64bによる旋回中心は、保持溝66,67の光ディスクDの直径が最大となる保持溝中心Cよりも前側に設定されている(図12参照)。これにより、一方のディスクホルダ36の支点軸64aの前側には、光ディスクDの飛び出しを規制する顎状の規制部36aが設定され、他方のディスクホルダ37の支点軸64bの前側には、光ディスクDの挿入力により捩りばね65bの付勢力に抗してディスクホルダ37を旋回動作させるための顎状の入力部37aが設定されている。
【0050】
更に、一方のディスクホルダ36には、支点軸64bをギア中心とした扇形ギア68が一体に設けられている。この扇形ギア68は、保持溝66の上部に位置するテーパ面66a側の上部に設けられており、そのギア部は後部側に配置されている。この扇形ギア68は、イジェクトレバー69の中央部に回転自在に支持されたホルダ駆動ギア70に噛合可能とされており、通常状態では扇形ギア68とホルダ駆動ギア70とは噛み合わない状態に保持されている。
【0051】
このホルダ駆動ギア70を支持しているイジェクトレバー69は、図15に示すように、その基端部が回動軸71によってトップシャーシ31に回動自在に支持されており、ホルダ駆動ギア70を挟んで反対側に突出する先端部にはカムピン69aが固定されている。このイジェクトレバー69とトップシャーシ31との間には付勢部材としてのコイルばね72が架設されており、このコイルばね72のばね力によってホルダ駆動ギア70が扇形ギア68から離れる方向に付勢されている。そして、コイルばね72のばね力によってカムピン69aがラックプレート40のカム部40aに摺動可能に当接されている。
【0052】
このラックプレート40は前後方向に延びるガイド溝40bを有し、このガイド溝40bに摺動可能に係合された複数個の段付きピン73を介してトップシャーシ31に前後方向へ摺動可能に支持されている。このラックプレート40の外側端縁前部にはカム部40aが形成されていると共に、内側端縁前後には前後方向に歯を連続させて設けた前後のラック部40c,40dが形成されている。このラックプレート40のカム部40aをカムピン69aが摺動することによってイジェクトレバー69が回動軸71を中心に回動され、ホルダ駆動ギア70がラックプレート40の前ラック部40cとディスクホルダ36の扇形ギア68とに噛合される。
【0053】
ラックプレート40の後ラック部40dには、トップシャーシ31に支持軸74aによって回動自在に支持されたラック駆動ギア75が常時噛合されている。このラック駆動ギア75にはカムレバー41が一体的に設けられており、このカムレバー41のラックプレート40側の先端部には前述した操作ピン53が固定されている。そして、カムレバー41のラックプレート40側と反対側の先端部にはカムピン41aが固定されており、このカムピン41aは、トップシャーシ31に支持軸74bによって回動自在に支持されたカムギア76のカム部77に係合されている。
【0054】
このカムギア76は、図4及び図15等に示すように、一面側の径方向内側を凹ませて設けた2箇所のカム部77と、外周面に設けた2箇所のギア部78とを有し、回転中心を点対称の中心として180度回転した対称形状とされている。カム部77は、半径方向外側に設けられた径方向外側に凹む係合凹部77aと、この係合凹部77aに対応させて半径方向内側に設けられた係合凸部77bとを有し、これら係合凹部77aと係合凸部77bとの間にカムピン41aが着脱可能に保持される。
【0055】
カムギア76のギア部78には、周方向の連続をたつ切欠き部78aが設けられていると共に、この切欠き部78aの周方向の一方には歯幅を他の部分よりも薄くした薄肉歯部78bが設けられ、また、切欠き部78aの周方向の他方には周方向に延びる溝を設けることによって全体に弾性を持たせた弾性歯部78cが設けられている。このカムギア76のギア部78には、ラック駆動ギア75とアンローディング用ギア列79の終端の中間ギア79dが噛合されている。
【0056】
アンローディングギア列79は、上記ラック駆動ギア75とカムギア76と4枚の中間ギア79a〜79dとを備えている。そして、中間ギア79aと中間ギア79b、及び中間ギア79cと中間ギア79dとはそれぞれ一体に形成されていて、それぞれ支持軸74c及び74dを介してトップシャーシ31に回転自在に支持されている。
【0057】
また、アンローディングギア列79の始端の中間ギア79aには、ローディングギア列80の中間ギア80bが噛合されている。このローディングギア列80は、トップシャーシ31に固定されたローディング用モータ42の回転軸に取り付けられた出力ギア42aと、2枚の中間ギア80a及び80bと、遊星歯車装置81とを備えている。2枚の中間ギア80a,80bは一体に形成されていて、支持軸74eを介してトップシャーシ31に回転自在に支持されている。そして、出力ギア42aには中間ギア80aが噛合され、中間ギア80bには遊星歯車装置81の外大歯車82aが噛合されている。
【0058】
この遊星歯車装置81は、外周に設けられた段違いの2段歯からなる外大歯車82a及び外小歯車82bと、両外歯車82a,82bと回転中心を同一にして一体に形成された太陽歯車83と、この太陽歯車83に噛合された遊星歯車84と、この遊星歯車84を回転自在に軸支する回転板85とを備えている。外歯車82a,82b及び太陽歯車83と回転板85とは、これらの中心部を貫通する支持軸86によってトップシャーシ31に回転自在に支持されている。
【0059】
遊星歯車84は、回転板85の中心部から一側に張り出された支持部85aにカシメ止めされた支持軸85cによって回転自在に軸支されている。この遊星歯車84の上部は、トップシャーシ31に設けた円弧状に連続する円弧溝部87aを貫通してトップシャーシ31の上方に突出し、一方のホルダプレート34の前述したラック部49の後端部より若干後方に位置されている。また、回転板85の中心部から他側に張り出された支持部85bには、同じくはトップシャーシ31に設けた開口部87bを貫通してトップシャーシ31の上方に突出する作動ピン88がカシメ止めされている。この作動ピン88には、前述したコイルばね45によって他方のホルダプレート35の内端縁が付勢されている。
【0060】
また、他方のホルダプレート35の下面側には、ディスクホルダ37より若干後側へ位置するようにイジェクトアーム38が取り付けられている。このため、ホルダプレート35には内側へ折り出された支持片35iが設けられており、この支持片35iに略L字状をなすイジェクトアーム38の基部が支持ピン38aによって回動自在に支持されている。
【0061】
このイジェクトアーム38は、短片側を前方に向け且つ長片側を内側に突き出した状態に保持されていて、付勢部材としてのコイルばね89によって前側に付勢されている。このイジェクトアーム38の短片側には、これを上下方向に貫通する操作ピン38bが固定されており、この操作ピン38bの上端部はホルダプレート35に設けた左右方向に延びるガイド溝35jに摺動可能に係合され、また、操作ピン38bの下端部はトップシャーシ31に設けた前後方向に延びるガイド溝48dに摺動可能に係合されている。
【0062】
このイジェクトアーム38の長片側の先端部には、ローディングされる光ディスクDの移動軌跡上に突出する操作片38cが設けられている。この操作片38cは、図12に示すように、左右一対のディスクホルダ36,37で光ディスクDを挟持したときに、コイルばね89の付勢力に抗して若干後方へ旋回した状態で光ディスクDの外周縁に付勢されて両ディスクホルダ36,37と共に光ディスクDを挟持するようになされている。
【0063】
また、前述したサブシャーシ7を上下方向へ俯仰動作させるために、図7及び図11等に示すように、ベースシャーシ6の前部上面には、カムレバー32とギアレバー33とがそれぞれ回動自在に取り付けられている。カムレバー32は、ベースシャーシ6に立設された支点軸90によって首振り運動可能とされていると共に、サブシャーシ7に臨む後面側にはカム溝91が設けられている。
【0064】
このカム溝91は、支点軸90を中心として円弧状に湾曲されていると共に、上下方向に所定の段差を設定し、その上段部91aと下段部91bとの間を適当な傾斜角度の溝で連結することによって形成されている。このカム溝91には、サブシャーシ7の先端部に連結された昇降駆動レバー9のカムピン92が摺動可能に係合されている。このカム溝91の段差の大きさだけカムピン92が昇降し、このカムピン92の上下動作によってサブシャーシ7の姿勢が、図7に示す前下がりのアンローディング状態と図8に示すほぼ水平のローディング状態とに切り換えられる。
【0065】
このカムレバー32の上部には、その歯を後部側に設けた扇形の扇形ギア32aが一体に設けられており、この扇形ギア32aにはギアレバー33に設けられた扇形の扇形ギア33aが噛合されている。このギアレバー33は、ベースシャーシ6に立設された支点軸93によって首振り運動可能とされており、他方のディスクホルダ37の動作に連動してギアレバー33が回動され、これによってカムレバー32が首振り運動されることになる。
【0066】
尚、図12等において、94はディスク挿入スロット3の開閉装置であり、ローディング時においてディスク挿入スロット3の内側中央部にストップレバーを突出させて光ディスクDの二重挿入を防止するものである。また、95は、光ディスクDの挿入状態を検出するディスク挿入検出器、96は、光ディスクDの排出状態を検出するディスク排出検出器、97は、ディスクチャッキングが開放された状態を検出するチャック開放検出器である。
【0067】
このように構成されてトップシャーシ31に軸支されているカムギア76を停電や故障等の非常時に手動により回転操作できるように、トップシャーシ31には手動操作機構100が備えられている。この手動操作機構100は、図19に示すように、カムギア76に噛み合い可能に設けられたスイングレバー101と、このスイングレバー101のギア部101aをカムギア76の外小歯車82bに着脱可能に噛合させるテコレバー102と、このテコレバー102を揺動させるスライドレバー103とから構成されている。
【0068】
スイングレバー101は弓形に形成されており、その外側円弧部分にギア部101aが設けられている。このスイングレバー101には、ギア部101aとほぼ平行をなすように円弧状のガイド溝101bが設けられていると共に、そのガイド溝101bの一端には半径方向外側に延びるギア噛合部101cが設けられている。そして、ガイド溝101b及びギア噛合部101cにはトップシャーシ31に固定された2本のガイドピン104a,104bがそれぞれ摺動可能に係合されており、ギア噛合部101cによる半径方向外側の段差によってスイングレバー101にスイング動作が生じるように構成されている。
【0069】
テコレバー102は平面形状がくの字状をなしていて、その中途部が支点軸105によってトップシャーシ31に回動自在に軸支されており、その一側には、スイングレバー101に設けられたガイドピン101dが摺動可能に係合されるガイド溝102aが設けられ、他側にはガイドピン102bが設けられている。そして、付勢部材としてのコイルばね106によってテコレバー102が、スイングレバー101のギア部101aをカムギア76の外小歯車82bから離反させる方向に付勢されている。
【0070】
また、スライドレバー103は短冊状の長い部材からなり、その長手方向の一端にはテコレバー102のガイドピン102bが摺動自在に係合される横ガイド溝103aが設けられ、また、中央部には長手方向に連続する縦ガイド溝103bが設けられている。この縦ガイド溝103bにはトップシャーシ31に固定された2本のガイドピン107が摺動可能に係合されており、これにより前後方向への直進性が確保されている。このスライドレバー103とトップシャーシ31との間には付勢部材としてのコイルばね108が架設されており、このコイルばね108のばね力によってスライドレバー103は前側に常時付勢されている。
【0071】
以上のように構成されるディスク駆動、読取り機構5とディスクローディング機構30とを合体する。即ち、図2に示すように、ディスク駆動、読取り機構5のベースシャーシ6上にディスクローディング機構30のトップシャーシ31を重ね、ベースシャーシ6側の取付脚部6cとトップシャーシ31の所定位置を合わせて結合する。これにより、トップシャーシ31に保持されたチャッキング部材56のチャッキングリング62がベースシャーシ6に組み込まれるサブシャーシ7に支持されたターンテーブル11の上方に対応される。
【0072】
このようにベースシャーシ6とトップシャーシ31を合体した状態で前述した外筐体1内に嵌合して固定し、この外筐体1の全面側開放部にフロントパネル2を嵌着することにより、このフロントパネル2のディスク挿入スロット3がベースシャーシ6とトップシャーシ31の前端間に対応される。以上のようにして、本例のディスクプレーヤ装置が構成される。
【0073】
〔4〕 ディスクプレーヤ装置の動作
以上のように構成されるディスクプレーヤ装置の動作を説明する。
【0074】
(4−1) 光ディスクのローディング初期状態
図18に示すように、先の光ディスクDの排出完了状態では、ディスクローディング機構30の一方のディスクホルダ36は、扇形ギア68に噛合するホルダ駆動ギア70の係合力により捩りばね65aの付勢力に抗して光ディスクDの移動軌跡上に突出されている。一方、ディスクローディング機構30の他方のディスクホルダ37は、捩りばね65bの付勢力によって外側へ後退した位置にある。
【0075】
(4−2) 光ディスクのローディング操作
この状態で図1に示すように、フロントパネル2のディスク挿入スロット3より、光ディスクDを手で押して挿入すると、光ディスクDは図11に示すように、まず、一方のディスクホルダ36の保持溝66に当接する。更に、所要の力をもって光ディスクDを挿入し続けると、捩りばね65aの付勢力に抗して一方のディスクホルダ36が、支点軸64aを回動中心として時計方向に回動されると共に、このディスクホルダ36からの反力によって光ディスクDが他方のディスクホルダ37側に押されて移動する。
【0076】
これにより、光ディスクDが他方のディスクホルダ37の入力部37aに当接し、光ディスクDの押圧力による時計方向の作用力が入力部37aに作用する。そのため、他方のディスクホルダ37が、捩りばね65bの付勢力に抗して支点軸64bを回動中心として同じく時計方向に回動される。その結果、左右のディスクホルダ36,37の姿勢が、図12に示すような状態に変化して、両ディスクホルダ36,37の保持溝66,67で光ディスクDの前側両側部が保持されるようになる。
【0077】
さらに光ディスクDに挿入力が加わると、一方のディスクホルダ36が時計方向に回動され、このディスクホルダ36が所定角度まで回転変位すると、扇形ギア68とホルダ駆動ギア70との噛み合いが解除される。この扇形ギア68とホルダ駆動ギア70との噛み合いが解除されると、一方のディスクホルダ36は捩りばね65aの付勢力によって時計方向へ回動される。これに対して、他方のディスクホルダ37では、光ディスクDの挿入量に応じてディスクの幅が徐々に大きくなるため、ディスクホルダ37が光ディスクDにより押圧されると共に、捩りばね65bの付勢力によって反時計方向へ回動され、図13に示すような状態になる。
【0078】
そして、図13に示すように、光ディスクDが一対のディスクホルダ36,37の保持溝66,67の保持溝中心Cに達すると、光ディスクDの幅が最大の直径部分となるため、光ディスクDが両ディスクホルダ36,37によって両側から挟持される。この場合、光ディスクDは、その中心部分を両側からディスクホルダ36,37によって挟持されるため、光ディスクDがガタつくことなく、確実に保持することができる。また、この際には、光ディスクDの斜め側縁がイジェクトアーム38の操作片38cに当接し、コイルばね89の付勢力に抗してイジェクトアーム38が反時計方向へ回動される。
【0079】
次に、光ディスクDが図13に示すような状態まで挿入されると、この挿入状態がディスク挿入検出器95によって検出される。これにより、ローディング用モータ42が回転駆動され、その回転軸に取り付けられた出力ギア42aから駆動力がローディングギア列80とアンローディングギア列79とに伝達される。この出力ギア42aから出力されるトルクにより、ローディングギア列80では2枚の中間ギア80a,80bを介して遊星歯車装置81の太陽歯車83が回転駆動され、遊星歯車84が反時計方向に回転駆動される。
【0080】
これにより、遊星歯車84にラック部49が噛合する一方のホルダプレート34がディスク挿入方向へ搬送されると共に、このホルダプレート34とディスク挿入方向に一体的に移動可能とされた他方のホルダプレート35が一体に搬送される。その結果、図13及び図14の状態から図15の状態に変化して、光ディスクDがターンテーブル11の上方に対応される。
【0081】
(4−3) 光ディスクのチャッキング
図15に示す状態において、光ディスクDのチャッキング動作が行われる。
【0082】
図15に示すように、ディスク駆動、読取り機構5のベースシャーシ6上においては、チャック開放検出器97によって光ディスクDが所定のローディング位置にあることが検出され、これによりギアレバー33が時計方向に回転駆動されると共に、このギアレバー33によってカムレバー32が反時計方向に回転駆動される。その結果、カムレバー32のカム溝91が回転駆動され、このカム溝91に係合されたカムピン92が下端の下段部91bから傾斜面に沿って上昇して上端の上段部91aまで移動する。これにより、サブシャーシ7が、図7に示す斜め下方に傾斜された下降位置から図8に示すほぼ水平となる上昇位置まで上昇駆動される。
【0083】
その結果、図5に示すようにサブシャーシ7に搭載されているターンテーブル11のディスク載置面の高さと、トップシャーシ31に取り付けられているチャッキング部材56の下面側の高さとが等しくなり、光ディスクDの上面側に位置するチャッキングリング62に埋設されたマグネット14の吸引力によって光ディスクDがターンテーブル11上にチャッキングされる。
【0084】
この際、一対のホルダプレート34,35の後退動作によってトップシャーシ31の上方に位置するフック部34h,35hが、トップシャーシ31に摺動可能に保持された一対のプーリキャッチ54,55のキャッチ溝54a,55aに係合される。そして、遊星歯車装置81の遊星歯車84が太陽歯車83の前側に移動して円弧溝部87aの前端縁に当接するため、この遊星歯車84の後端側の位置と前端側の位置との差の分だけ一方のホルダプレート34が外側、即ち、チャッキング部材56から離れる方向に移動する。これと同時に、回転板85を介して遊星歯車84と一体に回動される作動ピン88が太陽歯車83の後側に移動するため、この作動ピン88の後端側の位置と前端側の位置との差の分だけ他方のホルダプレート35が外側、即ち、チャッキング部材56から離れる方向に移動する。
【0085】
これにより、図5に二点鎖線で示すように、プーリキャッチ54,55の爪部54d,55dがチャッキングリング62から離れ、チャッキング部材56が回転フリーの状態になる。この状態で光学ピックアップ装置10によって光ディスクDの読取りが行われる。
【0086】
尚、ローディング時、アンローディングギア列79に伝達されたトルクは、4枚の中間ギア79a〜79cを経て4枚目の中間ギア79dまで伝達されるが、この中間ギア79dに対してカムギア76は、そのギア部78の切欠き部78aが位置して中間ギア79dとは噛み合わないため、これよりも下流側にモータトルクが伝達されることがない。
【0087】
(4−4) 光ディスクのイジェクト操作
光ディスクDの読取り終了後の光ディスクDの排出は、次のようにして行われる。
【0088】
イジェクト用の操作釦4の操作によって駆動回路にディスク排出の命令が指示されると、ローディング用モータ42が逆方向に回転駆動され、遊星歯車装置81がディスクローディング時とは逆の回転を始める。これにより、図16に示すように、遊星歯車84及び作動ピン88が前述とは逆方向に移動して、一対のホルダプレート34,35が共に内側、即ち、チャッキング部材56に近づく方向に移動する。この際、カムレバー32及びギアレバー33の作動を介してサブシャーシ7が下げられて前下がりの状態になるため、ターンテーブル11がチャッキング部材56から外れて、光ディスクDの排出が可能になる。
【0089】
前述した遊星歯車装置81の作動により、左右のホルダプレート34,35が前側に搬送されて図1616の状態から図17の状態になる。このとき、左右のホルダプレート34,35が所定位置まで前進すると、板ばね51の操作部51bがラック駆動ギア75と一体のカムレバー41に設けた操作ピン53を押圧する。これにより、カムレバー41が支持軸74aを中心として時計方向に回動するため、それまでカムギア76のカム部77の係合凹部77aに係合されていたカムピン41aが係合凹部77aから外れることになる。従って、カムギア76の回動が可能となり、モータトルクがカムギア76を介してラック駆動ギア75に伝達される。
【0090】
その結果、ラック駆動ギア75の回動によってラック部40dに噛合するラックプレート40が装置前方へ移動される。これにより、光ディスクDが図17R>7に示すローディング位置から図18に示す当初の排出位置まで排出される。
【0091】
さらにラックプレート40が前方へ移動すると、このラックプレート40の前端部に設けたカム部40aに沿ってイジェクトレバー69のカムピン69aが外側へ押されるため、イジェクトレバー69が回動軸71を回動中心として時計方向に回動される。これにより、ラックプレート40の前ラック部40cがホルダ駆動ギア70に噛合されるとともに、このホルダ駆動ギア70が一方のディスクホルダ36と一体の扇形ギア68に噛合される。
【0092】
そのため、ホルダ駆動ギア70の回転力によって一方のディスクホルダ36が内側に旋回動作され、図11に示すように、光ディスクDがディスク挿入スロット3から半分以上排出される。従って、このような光ディスクDの排出状態によれば、その中央部のチャッキング孔dがディスク挿入スロット3の外側まで露出されるため、ディスク中央部を持って取り出すことができ、光ディスクDの信号記録面を汚すようなおそれがない。
【0093】
(4−5) 光ディスクの手動取出し操作
トップシャーシ31に軸支されているカムギア76が停電や故障等によって回動できなくなった場合には、手動操作機構100を操作することにより手動で光ディスクDを排出することができる。即ち、スライドレバー103を押圧すると、テコレバー102の揺動動作を介してスイングレバー101が後方へ旋回しながら内側へ移動することになる。このとき、スイングレバー101のギア部101aが遊星歯車装置81の外小歯車82bに螺合されることにより、遊星歯車装置81の回動が可能となり、光ディスクDが手動操作によって排出される。
【0094】
以上説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、例えば、上記実施例においてはCDやCD−ROM等の光ディスクをディスク状記録媒体とした例について説明したが、MO等の光磁気ディスクをディスク状記録媒体として記録及び/又は再生する各種の記録媒体駆動装置に適用することができる。更に、上記実施例では、光学ディスクDに記録された情報の再生(読み取り)を行うスロットイン方式のディスク記録再生装置について説明したが、情報の記録のみを行う記録専用装置に適用できることは勿論のこと、情報の記録及び再生の両方を行うことができるディスク記録再生装置に適用することもできる。このように、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明による記録媒体駆動装置の一例の外観斜視図である。
【図2】図1に示す記録媒体駆動装置のベースシャーシとトップシャーシを合体した状態の斜視図である。
【図3】図1に示す記録媒体駆動装置のトップシャーシの一例の上面側斜視図である。
【図4】図1に示す記録媒体駆動装置のトップシャーシの一例の下面側斜視図である。
【図5】図1に示す記録媒体駆動装置のディスク駆動、読取り機構とディスクローディング機構とによる光ディスクのチャッキング動作状態の断面図である。
【図6】図1に示す記録媒体駆動装置のディスク駆動、読取り機構の一例の平面図である。
【図7】図1に示す記録媒体駆動装置のディスクイジェクト状態を示した側面断面図である。
【図8】図1に示す記録媒体駆動装置のディスクローディング状態を示した側面断面図である。
【図9】図1に示す記録媒体駆動装置のローディングギア列の断面図である。
【図10】図1に示す記録媒体駆動装置のアンローディングギア列の断面図である。
【図11】図1に示す記録媒体駆動装置のディスクローディング機構部の初期状態を示す平面図である。
【図12】図1に示す記録媒体駆動装置のディスクローディング機構部において光ディスクの挿入操作が開始された状態を示す平面図である。
【図13】図1に示す記録媒体駆動装置のディスクローディング機構部において光ディスクの挿入操作の途中の状態を示す平面図である。
【図14】図1に示す記録媒体駆動装置のディスクローディング機構部と手動操作機構部とを重ねた状態を示す平面図である。
【図15】図1に示す記録媒体駆動装置のディスクローディング機構部において光ディスクがチャッキング位置に移動された状態を示す平面図である。
【図16】図1に示す記録媒体駆動装置のディスクローディング機構部において光ディスクの排出操作が開始された状態を示す平面図である。
【図17】図1に示す記録媒体駆動装置のディスクローディング機構部において光ディスクの排出操作の途中の状態を示す平面図である。
【図18】図1に示す記録媒体駆動装置のディスクローディング機構部において光ディスクが排出された状態を示す平面図である。
【図19】図1に示す記録媒体駆動装置の手動操作機構部を示す平面図である。
【符号の説明】
【0096】
1‥外筐体(装置本体)、 3‥ディスク挿入スロット(挿入口)、 5‥ディスク駆動、読取り機構、 6‥ベースシャーシ、 7‥サブシャーシ、 10‥光学ピックアップ装置、 11‥ターンテーブル、 12‥スピンドルモータ、 20‥キャリッジ移動機構、 30‥ディスクローディング機構、 31‥トップシャーシ、 34,35‥ホルダプレート(支持手段)、 36,37‥ディスクホルダ(ディスク挟持部材)、 42‥ローディング用モータ(駆動手段)、 54,55‥プーリキャッチ、 56‥チャッキング部材、 61‥コイルばね(付勢部材)、 64a,64b‥支点軸、 65a,65b‥捩りばね(付勢部材)、 66,67‥保持部材、 ‥76カムギア、 79‥アンローディングギア列、 80‥ローディングギア列、 81‥遊星歯車装置、 100‥手動操作機構、 D‥光ディスク(記録媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を挿入する挿入口を備えた装置本体と、
上記記録媒体の挿入時又は排出時に該記録媒体を保持するディスクホルダと、
上記ディスクホルダを支持する支持手段と、
上記記録媒体を装置内に挿入又は排出するための駆動力を供給する駆動手段と、
上記駆動手段から供給される上記駆動力によって、上記記録媒体の上記装置内への挿入又は排出を行う機構と、を備え、
上記ディスクホルダは、支点軸によって、回動自在に支持されていると共に、上記支点軸には、該ディスクホルダを上記挿入口方向に付勢する付勢手段が設けられていることを特徴とする記録媒体駆動装置。
【請求項2】
上記ディスクホルダには、上記記録媒体の外周を支持する保持溝が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の記録媒体駆動装置。
【請求項3】
上記保持溝は、円弧状に形成されていることを特徴とする請求項2記載の記録媒体駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2006−31934(P2006−31934A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−256980(P2005−256980)
【出願日】平成17年9月5日(2005.9.5)
【分割の表示】特願平8−198207の分割
【原出願日】平成8年7月26日(1996.7.26)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】