説明

記録方法および記録装置

【課題】 縁無し記録を行う場合のインクの消費量を抑え、また、ミストの増加を防ぐ
ことができる記録方法および記録装置を提供すること。
【解決手段】 記録媒体Pの主走査方向における全幅に渡って、副走査方向に所定の記録
幅で記録液を吐出する記録処理を繰り返すことで記録画像を形成する記録方法において、
記録用紙Pの主走査方向における端縁の検出誤差量を測定し、この誤差量を既定の打捨て
幅に加えた幅を打捨て幅として記録処理を行うこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録方法および記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録装置には、記録用紙を搬送させると共に、この搬送方向に対し直交し、かつ、記録
媒体の被記録面に平行な方向である主走査方向に記録ヘッドを往復移動させることで、記
録ヘッドと記録用紙との相対位置を変え、記録用紙の所望の位置に記録を行うことができ
るものがある。係る記録装置の中には、記録用紙の主走査方向において余白が生じないよ
うに記録用紙の全幅に渡って記録を行なう、いわゆる縁無し記録を行うことができるもの
がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
なお、以下の説明において、記録ヘッドが往復移動する方向を主走査方向と記載し、こ
れと直交する方向である記録用紙の搬送方向を副走査方向と記載する。また、記録用紙が
搬送される方向を前方(前側)、そしてその反対側を後方(後側)と記載する。
【0004】
記録ヘッドの主走査方向における位置検出は、記録ヘッドと一体的に移動する投光部お
よび光センサと主走査方向に沿って配設されるリニアスケールとにより構成されるリニア
エンコーダを用いて行われる。一方、記録ヘッドの側には、記録ヘッドが往復移動する際
に、記録用紙の端縁を検出する投光部と光センサを有する記録用紙検出装置が備えられて
いる。記録用紙は黒色のプラテン上を搬送され、記録用紙検出装置は、記録用紙と黒色の
プラテンとの光の反射量の差を検出することで、記録用紙の端縁を検出することができる
構成となっている。したがって、記録ヘッドを主走査方向に移動させ、記録用紙検出装置
により記録用紙の端縁が検出されたときの記録ヘッドの位置をリニアエンコーダにより検
出することで、記録ヘッドの記録用紙に対する位置を検出することができる。
【0005】
【特許文献1】特開2005−313602号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、縁無し記録を行う場合に、例えば、記録ヘッドの記録位置の誤差等の制御誤
差により記録用紙の端縁に記録されるべき画像が内側に記録されてしまい、記録画像と記
録用紙の端縁との間に余白が生じてしまうことがある。また、記録用紙の端縁の検出位置
が実際の端縁の位置よりも記録用紙の内側に誤検出される場合にも、記録用紙の端縁まで
記録を行うことができず、記録画像と記録用紙の端縁との間に余白が生じてしまうことが
ある。そのため、記録処理に続けて、さらに外側に向けてインクの吐出を継続する打ち捨
て処理を行うことで、制御誤差や記録用紙の端縁の位置が内側に誤検出された場合であっ
ても余白が生じることを防止することができる。記録用紙の端縁を越えて行われた打ち捨
て処理のインクは、記録用紙の下側に配置される吸収材に吸収される。
【0007】
一般に、記録用紙の端縁の位置が内側に誤検出される誤差量の方が、制御誤差に比べて
大きく、そのため、打ち捨て処理は、予想される誤検出分による誤差量を見越して打ち捨
てを行う幅(打捨て幅)が設定されている。しかしながら、予想される打捨て幅を超えて
記録用紙の端縁が内側方向に誤検出された場合には、記録用紙上に打ち捨てされて記録さ
れた画像の周囲に記録用紙の端縁との間に余白が発生することになる。そのため、予想さ
れる誤検出の最大値を見越して打捨て幅を設定する必要がある。
【0008】
上記の誤検出、すなわち、記録用紙の端縁が記録用紙の実際の端縁よりも内側にあると
検出される誤検出は、検出される端縁が、インクにより着色されている場合に発生し易く
、加えて、誤差量が大きくなる傾向がある。つまり、記録が行われ着色された記録用紙に
おいては、投光部から投光された光の記録用紙における反射量が小さくなり、その結果、
光センサにおける受光量も小さくなる。そのため、記録用紙とプラテンとの光の反射量の
差が小さくなり、記録用紙の端縁が実際の端縁よりも記録用紙の内側に在ると誤検出され
る際の誤差量が大きくなる傾向が高い。
【0009】
したがって、記録装置における記録用紙の端縁の検出を、記録ヘッドにより記録が行わ
れた後の記録用紙の部分に対して行う場合には、記録が行われる前の白色の記録用紙の端
縁を検出して、この端縁の位置に基づいて縁無し記録を行う場合よりも広い打捨て幅を設
定する必要がある。そのため、縁無し記録を行う場合のインクの消費量が増え、また、ミ
ストの増加を招くという問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、縁無し記録を行う場合のインクの消費量を抑え、また、ミストの増
加を防ぐことができる記録方法および記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決するため、記録媒体の主走査方向における全幅に渡って、副走査方向
に所定の記録幅で記録液を吐出する記録処理を繰り返すことで記録画像を形成する記録方
法において、光センサを利用して記録媒体の記録処理が行われていない非記録処理部分に
おける主走査方向の端縁の位置を検出する非記録部端縁位置検出ステップと、光センサを
利用して記録媒体の記録処理が行われた記録処理部分における主走査方向の端縁の位置を
検出する記録部端縁位置検出ステップと、非記録部端縁位置検出ステップにおいて検出さ
れた非記録処理部分における端縁の位置に基づいて非記録処理部分における主走査方向の
幅を算出する非記録処理部幅算出ステップと、記録部端縁位置検出ステップにおいて検出
された記録処理部分における端縁の位置に基づいて記録処理部分における主走査方向の幅
を算出する記録処理部幅算出ステップと、非記録処理部幅検出ステップにおいて検出され
た非記録処理部分における主走査方向の幅と、記録処理部幅検出ステップにおいて検出さ
れた記録処理部分における主走査方向の幅との差に基づいて、記録処理部分において検出
される記録媒体の主走査方向における端縁の位置についての検出誤差量を算出する誤差量
算出ステップと、記録処理の前後において行われ、記録媒体の主走査方向における記録媒
体の外側に記録液を吐出する打ち捨て処理を行う打捨てステップとを有し、打ち捨て処理
は、既定の打捨て幅に誤差量を加えた幅を打捨て幅とすることとする。
【0012】
記録方法をこのように行うことで、縁無し記録を行う場合におけるインクの消費量を抑
え、また、ミストの増加を防ぐことができる。
【0013】
また、他の発明は、上述の発明に加え、記録処理は、記録媒体に沿って主走査方向に往
復移動を繰り返し、往路または復路の少なくとも一方において記録処理を行う移動型記録
ヘッドにより行い、光センサは、移動型記録ヘッドと共に移動し、移動型記録ヘッドが記
録媒体の内側から記録媒体の外側に移動するときに光センサを利用して記録媒体の端縁の
位置を検出することとする。
【0014】
記録方法をこのように行うことで、記録用紙の主走査方向の端縁の位置検出の精度が向
上し、誤差量を小さくすることができ、打捨て幅をインクの消費量を抑え、また、ミスト
の増加を防ぐことができる。
【0015】
また、他の発明は、上述の発明に加え、記録処理部分における主走査方向の幅の算出は
、記録処理を行う前の直近に検出された記録媒体における主走査方向における両端縁の位
置に基づいて行われることとする。
【0016】
記録方法をこのように行うことで、記録処理を行う記録ラインの主走査方向における両
端縁に近い記録処理部分の幅を算出することができ、誤差量を小さくすることができ、打
捨て幅をインクの消費量を抑え、また、ミストの増加を防ぐことができる。
【0017】
上述の課題を解決するため、記録装置を上述の記録方法を実行可能なこととする。
【0018】
記録装置をこのように行うことで、縁無し記録を行う場合におけるインクの消費量を抑
え、また、ミストの増加を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係るインクジェットプリンタ(以下、単にプリンタと言う
。)1ついて、図面を参照しながら説明をする。なお、プリンタ1における記録方法につ
いては、プリンタ1の動作に併せて説明する。
【0020】
(プリンタ1の全体構成)
図1は、本発明の実施の形態に係る記録装置としてのプリンタ1の概略の構成を示す構
成図であり、プリンタ1を左方から見た側面図である。また、図2は、図1に示すプリン
タ1の電気的な構成の該略を説明する回路ブロック図である。本実施の形態では、プリン
タ1は、記録媒体として帯状の記録用紙Pが巻かれた用紙ロール2がセット可能であり、
用紙ロール2から引き出された帯状の記録用紙Pに対して記録を行うことができる、いわ
ゆるロール紙用プリンタとして構成されている。図1において、矢印X方向を前方(前側
)とし、その反対側を後方(後側)として、矢印Y方向を上方(上側)とし、その反対側
を下方(下側)とする。また、後方から見て右手側が右方(右側)、左手側を左方(左側
)とする。
【0021】
プリンタ1は、帯状の記録用紙Pが巻かれた用紙ロール2が収容されるロールセット部
3と、ロールセット部3に収容される用紙ロール2から引き出された記録用紙Pを前方に
搬送する搬送機構4と、記録用紙Pに対して記録を行う記録機構5と、記録用紙Pの端縁
を検出する記録媒体検出手段としての記録用紙検出装置6等を備え、これらの各機構部が
外装筐体7内に収容されている。
【0022】
ロールセット部3には、ロールを回転させるロールモータ8(図2参照)が備えられ、
用紙ロール2は、このロールモータ8により回転することができるようになっている。ロ
ールモータ8は、用紙ロール2に巻かれている記録用紙Pを前方に送り出す方向に回転す
る正転方向と、記録用紙Pを用紙ロール2に巻き取る方向に回転する逆転方向の2方向に
回転可能に構成されている。
【0023】
搬送機構4は、後方送りローラ9と前方送りローラ10を備え、それぞれ紙送りモータ
11(図2参照)により回転駆動させられる。後方送りローラ9と前方送りローラ10の
上側には各ローラ9,10に圧接して従動回転する従動ローラ12,13が備えられてい
る。
【0024】
紙送りモータ11にはその回転量を検出する光学式のロータリエンコーダ14(図2参
照)が備えられている。したがって、紙送りモータ11が回転駆動すると、回転に従って
Hi−Lowのパルス信号であるエンコーダ信号が出力され、このエンコーダ信号に基づ
いて紙送りモータ11の回転量(記録用紙Pの搬送量)と回転速度を検出することができ
る。つまり、ロータリエンコーダ14から出力されるエンコーダ信号に基づいて、記録用
紙Pの搬送量と搬送速度を検出することができる。
【0025】
ユーザにより記録用紙Pを後方送りローラ9と従動ローラ12との間、および前方送り
ローラ10と従動ローラ13との間に挟み込まれた状態にセットした後、紙送りモータ1
1により後方送りローラ9と前方送りローラ10を回転駆動すると共に、ロールモータ8
により用紙ロール2を正転方向に回転する。これにより、記録用紙Pは、記録機構5の下
側を通って前方に搬送され、外装筐体7に形成される排出口15から排紙させられる。
【0026】
記録機構5は、記録ヘッド16と、記録ヘッド16が取り付けられるキャリッジ17と
、キャリッジ17の主走査方向への移動をガイドするキャリッジガイド軸18と、キャリ
ッジ17を図示省略するタイミングベルトを介して主走査方向へ移動するキャリッジモー
タ19(図2参照)等を備えている。
【0027】
キャリッジ17は、キャリッジモータ19の駆動力を受けてキャリッジガイド軸18に
沿って主走査方向に往復移動させられ、記録ヘッド16もキャリッジ17と一体に主走査
方向に移動する。そして、記録ヘッド16の主走査方向への移動と、記録用紙Pの搬送機
構4による後方から前方への移動とにより、記録ヘッド16を記録用紙P上の所定位置に
移動し、記録用紙Pに対し記録を行う。つまり、記録ヘッド16は、記録用紙Pに沿って
主走査方向に往復移動を繰り返し、記録用紙Pに対して記録処理を行う移動型記録ヘッド
として構成されている。
【0028】
記録機構5には、キャリッジ17の位置と移動速度を検出する光学式のリニアエンコー
ダ20が備えられている。リニアエンコーダ20は、キャリッジガイド軸18に平行に配
設されるリニアスケール21と、リニアスケール21を読み取るためのエンコーダセンサ
22等を有している。エンコーダセンサ22は、キャリッジ17に取り付けられ、リニア
スケール21を挟んで配置される投光部23と光センサ24を備えている。
【0029】
キャリッジモータ19が駆動されキャリッジ17が主走査方向に移動すると、投光部2
3から光センサ24に投光された光は、リニアスケール21により遮光と通過とが交互に
行われる。したがって、エンコーダセンサ22の光センサ24からは、投光された光の遮
光と通過に対応したHi−Lowのパルス信号であるエンコーダ信号が出力され、このエ
ンコーダ信号に基づいて、キャリッジ17の移動位置と移動速度を検出することができる
。なお、エンコーダ信号のパルス数を所定の基準位置から計数することにより、キャリッ
ジ17の現在位置を所定の基準位置からの距離として知ることができる。つまり、リニア
エンコーダ20は、キャリッジ17すなわち記録ヘッド16の位置を検出する位置検出手
段および移動速度を検出する速度検出手段として構成されている。
【0030】
ロールセット部3から排出口15にかけて、記録用紙Pの下面を支持するガイド板25
が備えられている。ロールセット部3から引き出された記録用紙Pは、ガイド板25の上
面にガイドされながら後方から前方に送られ排出口15から排紙させられる。後方送りロ
ーラ9と前方送りローラ10の間のガイド板25は、記録用紙Pの記録ヘッド16により
記録が行われる範囲を下側から支持するいわゆるプラテン26として機能する。また、ガ
イド板25の前方送りローラ10の前側には、主走査方向に伸びる溝部27が形成されて
いる。溝部27の主走査方向の長さは、記録用紙Pの主走査方向の幅よりも長く構成され
ている。また、溝部27の後側の側面は上方から下方に傾斜する斜面28として構成され
ている。なお、ガイド板25上の搬送される記録用紙Pは、溝部27の開口29の上を搬
送されることになる。
【0031】
記録用紙検出装置6は、キャリッジ17の前側に取り付けられ、キャリッジ17と一体
に主走査方向に移動する。すなわち、記録用紙検出装置6は、記録ヘッド16と一体に主
走査方向に移動する。記録用紙検出装置6は、投光部30と光センサ31を有している。
投光部30と光センサ31は、図3に示すように、主走査方向に配設されている。図3は
、キャリッジ17の部分を前方から見た図である。図1においては、左側に配設される投
光部30が図示されている。この投光部30の右側(紙面裏側方向)に光センサ31が配
設されている。投光部30と光センサ31は、投光部30と光センサ31とに対して所定
の位置に物体があるときは、投光部30から投光された光(以下、検出光と記載する。)
が該物体で反射し、この反射された光が光センサ31に入射するように構成されている。
つまり、光センサ31における受光の有無を検出することで、該所定位置に記録用紙Pが
在るか否かを検出することができる。
【0032】
記録用紙Pの先端縁が所定の位置に位置しているか否かの検出を次のようにして行うこ
とができる。記録用紙Pの先端縁が位置すべき位置に検出光を投光し、記録用紙Pを前方
または後方に搬送すると、光センサ31において所定の受光量が得られる(得られない)
状態から得られない(得られる)状態に変化する。変化する状態のときは、記録用紙Pの
先端縁が検出光の投光域を通過する場合である。つまり、光センサ31において所定の受
光量が得られる(得られない)状態から得られない(得られる)状態に変化する状態を検
出することで、記録用紙Pの先端縁が検出光の投光域に位置しているかどうかを判断する
ことができる。
【0033】
また、キャリッジ17を主走査方向に移動することで検出光を主走査方向に走査し、記
録用紙Pの左右の縁部におけるガイド板25と記録用紙Pの光の反射率の差による検出光
の反射量の変化を光センサ31で検出することで、記録用紙Pの左右の端縁を検出するこ
とができる。そして、記録用紙Pの左右の端縁を検出したときのエンコーダセンサ22の
エンコーダ信号に基づいて、端縁の位置を検出することができる。例えば、該端縁が検出
されたときのエンコーダ信号のパルス数を所定の基準位置から計数することで該端縁の位
置を該基準位置からのパルス数あるいは距離として検出することができる。つまり、記録
用紙検出装置6とリニアエンコーダ22とにより記録用紙Pの主走査方向における端縁を
検出する端縁位置検出手段が構成される。
【0034】
プリンタ1においては、溝部27内を含めてガイド板25は例えば黒色等の有色で構成
され、また、記録用紙Pは記録がされる前は白色となっているものとする。この場合、ガ
イド板25の上側では、記録用紙Pが在る部分と無い部分とでは光の反射率が異なる。つ
まり、検出光がガイド板25の記録用紙Pが無い部分に投光されている場合には、光セン
サ31に入射する光の光量は少ない。一方、検出光がガイド板25の記録用紙Pが在る部
分に投光されている場合には、光センサ31に入射する光の光量は多くなる。したがって
、光センサ31における受光量を測定することで、検出光の投光域に記録用紙Pがあるか
どうかを知ることができる。
【0035】
本実施の形態におけるプリンタ1においては、特に、ガイド板25における検出光が投
光される部分は受光部としての斜面28となっている。したがって、溝部27の上に記録
用紙Pが無いときは、検出光はこの斜面28で前方斜め上方、すなわち光センサ31の無
い方向に反射され、光センサ31に入射し難いものとなっている。つまり、検出光の投光
域に記録用紙Pが無い場合の投光域を斜面28とすることで、検出光の投光域に記録用紙
Pが在る場合と無い場合とにおける光センサ31の受光量の差を大きなものとすることが
でき、記録用紙Pの有無の検出精度を向上させることができる。
【0036】
(回路ブロック図の構成)
次に図2を参照しながら図1に示すプリンタ1の電気的な構成の該略を説明する。
【0037】
プリンタ1は、ホストコンピュタHCから入力された画像形成データ等を受け取るイン
ターフェース32と、制御部33と、ロールモータ8と、このロールモータ8を駆動する
ロールモータドライバ8Dと、紙送りモータ11と、この紙送りモータ11を駆動する紙
送りモータドライバ11Dと、記録ヘッド16と、記録ヘッド16を駆動制御する記録ヘ
ッドドライバ16Dと、キャリッジモータ19と、このキャリッジモータ19を駆動する
キャリッジモータドライバ19Dと、ロータリエンコーダ14と、リニアエンコーダ20
と、記録用紙検出装置6等を有する。
【0038】
制御部33は、CPU(Central Processing Unit)34と、
プリンタ1の各種動作に係る処理プログラム等が記憶されているPROM(Progra
mmable Read−Only Memory)35と、ホストコンピュタHCから
インターフェース32を介して入力される画像形成データ等が格納・記憶される他、作業
用のメモリとして機能するRAM(Random Access Memory)36と
、プリンタ1に関する諸情報を記憶するEEPROM(Electrically Er
asable Programmable Read−Only Memory)37等
を備える。CPU34は、記録開始信号、ロータリエンコーダ14、リニアエンコーダ2
0および記録用紙検出装置6からの出力信号、および画像形成データ等に基づいて記録ヘ
ッド16の記録制御を行う記録ヘッド制御手段として機能し、また、ロールモータ8、紙
送りモータ11およびキャリッジモータ19等の駆動制御を行う制御手段として機能する
他、プリンタ1の様々な動作制御を司る。なお、制御部33あるいはCPU34について
は、ホストコンピュタHCを利用するように構成してもよい。
【0039】
(プリンタの動作)
続いて、上述の構成を有するプリンタ1において、記録用紙Pの主走査方向(左右方向
)の全幅に亘って記録を行うこうことで、記録画像の周囲に余白が形成されない、いわゆ
る縁無し記録を行う際に行われる打捨て処理の動作について説明する。先ず、図4および
図5を参照しながら打捨て処理の動作の概要を説明する。
【0040】
先ず、図4を参照しながら、本発明を適用することなく打ち捨て処理を行う場合につい
て説明する。縁無し記録を行う場合には、記録用紙Pの左右の端縁の位置として検出され
た左右端位置R’,L’に対して更に打捨て幅Aの範囲で打ち捨て処理を行う。この打捨
て処理を行うことにより、検出された左右端位置R’,L’が、記録用紙Pの実際の端縁
R,Lより内側に検出された場合であっても、記録画像と記録用紙の端縁との間に余白が
形成されてしまうことを防ぐことができる。
【0041】
しかしながら、検出される左右端位置R’,L’と記録用紙Pの実際の左右の端縁R,
Lとの距離(誤差量)が、打捨て幅Aを超えている場合には、記録画像の左右に余白が形
成されてしまうことになる。そのため、打捨て幅Aは、誤差量の最大量を見越して確保す
る必要があり、その結果、捨て量が多くなり、インクの消費量やミスト量の増加を招くこ
とになる。
【0042】
そこで、本実施の形態に係るプリンタ1では、記録用紙Pについて検出される端位置が
実際の端縁よりも内側に誤検出されたときの誤差量を検出し、この誤差量を既定の打捨て
幅に加算したものを、実際に打捨て処理を行う際の打捨て幅とするように構成したもので
ある。
【0043】
既定の打捨て幅は、例えば、記録ヘッドの記録位置の誤差等の制御誤差により記録用紙
の端縁に記録されるべき画像が内側に記録されてしまう場合に、記録画像と記録用紙Pの
端縁との間に余白が生じないようにするだけの必要最小限の狭い幅の打捨て幅とする。こ
のように打捨て幅を、狭い幅の既定の打捨て幅に誤差量を加算したものとすることで、打
捨て幅を誤差量に対応した幅の打捨て幅とすることができ、その結果、インクの消費量と
ミスト量の増加を抑えることができるというものである。
【0044】
誤差量の検出は次のようにして行う。先ず、記録処理が行われる前の記録用紙Pの左右
の端縁の位置を、記録用紙検出装置6およびリニアエンコーダ20により検出する。この
ようにして検出された左右の端位置は、記録処理が行われる前の記録用紙Pの白色の部分
について行われたものであるため、精度の高いものとして検出される。例えば、図5(a
)に示すように、記録処理が行われる前の記録用紙Pの左右の端縁の位置が、それぞれ、
右端位置R0、左端位置L0として検出されたとする。
【0045】
一方、記録処理が行われた部分の記録用紙Pの左右端縁は、例えば、図5(b)に示す
ように、記録用紙Pの端縁の位置が精度高く左右端位置R0,L0として検出されている
のに対し、それぞれ、右端位置Rn、左端位置Lnとして誤検出されたとする。この場合
の誤差量は、右端位置R0と右端位置Rnとの差、あるいは左端位置L0と左端位置Ln
との差である誤差量Enとなる。
【0046】
この誤差量Enに、記録ヘッド16の記録位置の誤差等の制御誤差に対応した狭い幅の
既定の打捨て幅Bを加算したものを打捨て幅Cとし、この打捨て幅Cの範囲で打ち捨て処
理を行う。つまり、打捨て幅Cを、誤差量Enに対応させたものとすることができ、誤差
量Enが少ない場合には打捨て幅Cを少なくすることができ、インクの消費やミストの発
生を少なく抑えることができる。
【0047】
なお、誤差量Enは、次の式(1)により求めることができる。

(W0−Wn)/2 (1)

W0は、右端位置R0、左端位置L0から算出されるもので、記録処理が行われていな
い部分、すなわち白色の記録用紙の幅である。Wnは、右端位置Rn、左端位置Lnから
算出されるもので、記録処理が行われた部分の記録用紙の幅である。
【0048】
次に、図6に示すフローチャートを参照しながら、プリンタ1において縁無し記録を行
う際に行われる打捨て処理の動作について説明する。なお、フローチャートに示される処
理は、PROM35に記憶されている処理プログラムに基づいて、CPU34により実現
される。
【0049】
プリンタ1においては、先ず、ユーザがロールセット部3にセットされている用紙ロー
ル2から記録用紙Pを引き出し、そして搬送機構4にセットする。すなわち、ユーザは、
記録用紙Pを後方送りローラ9と従動ローラ12との間、および前方送りローラ10と従
動ローラ13との間に通し、記録用紙Pの先端縁が溝部27よりも前方に位置するように
セットする。
【0050】
このように記録用紙Pがプリンタ1にセットされた状態で、例えば、図示を省略する記
録開始ボタン(縁無し記録)が押下されると、これを受けてCPU34は、キャリッジモ
ータ19を駆動し、キャリッジ17を主走査方向の移動範囲の中央位置に移動する(ステ
ップS10)。
【0051】
続いて、ロールモータ8を逆転方向に駆動し、記録用紙Pを後方に巻き戻す(ステップ
S20)。そして、記録用紙Pを後方に巻き戻しながら記録用紙検出装置6により記録用
紙Pの先端位置を検出する(ステップS30)。
【0052】
記録用紙Pの先端位置の検出(ステップS30)は次のように行われる。
【0053】
記録用紙検出装置6の投光部30は、記録用紙Pの先端縁がセットされるべき位置に検
出光を投光するように投光方向等が設定されている。また、溝部27はその斜面28が記
録用紙Pの先端縁がセットされるべき位置の下側に位置するよう形成されている。記録用
紙Pは記録前であるため白色であり、投光部30から投光された検出光が記録用紙P上に
投光されているときは、記録用紙Pで反射されて光センサ31に入射する光の光量は高い
ものとなっている。一方、記録用紙Pが巻き戻され(ステップS20)、記録用紙Pの先
端が投光部30の投光位置より後方になった場合には、検出光は斜面28に入射する。斜
面28は黒色であるため検出光の反射率は白色の記録用紙Pに比べて小さい。これに加え
て、検出光は斜面28により、光センサ31の方向とは異なる斜め前方に反射され、光セ
ンサ31に入射する光の光量はより小さなものとなる。したがって、光センサ31におけ
る受光量の変化を検出することで、記録用紙Pの先端縁が所定位置に位置しているかどう
かを判断することができる。
【0054】
続いて、記録用紙Pの主走査方向における端縁を検出するために、記録ヘッド16を主
走査方向右側の稼動領域一杯まで移動し、記録用紙Pの右端縁の位置検出を行い、ここで
の右端縁の位置を右端位置R0として、RAM36に記憶する(ステップS40)。
【0055】
このようにして、記録用紙Pの右端縁の位置検出を行った後、記録ヘッド16を主走査
方向左側に設定されるホームポジション位置まで移動し、この移動を行う際に記録用紙P
の左端縁の位置検出を行い、ここでの左端縁の位置を左端位置L0として、RAM36に
記憶する(ステップS50)。そして、右端位置R0と左端位置L0とに基づき、記録用
紙Pの記録処理が行われていない部分、すなわち非記録処理部分の主走査方向(左右方向
)の幅である非記録処理部幅W0を、非記録処理部幅算出手段としてのCPU34におい
て算出し、この非記録処理部幅W0をRAM36に記憶する(ステップS60)。左右端
位置R0,L0は、記録処理が行われていない白色の記録用紙Pの左右端縁を検出したも
のであり、精度の高いものとなっている。つまり、左右端位置R0,L0に基づいて求め
た非記録処理部幅W0も精度の高いものとなっている。
【0056】
ところで、記録用紙Pの左右の外側には、プラテン26やその他のプリンタ1の構造体
が存在する。そのため、投光部30から投光された検出光の反射状態が安定せず、光セン
サ31に外乱ノイズ等が入力し記録用紙Pの端縁の検出精度が低下する虞が高い。そのた
め、記録用紙Pの端縁の位置の検出は、記録ヘッド16が記録用紙Pの紙面上からその外
側に移動する際に行うようにすることで、光センサ31に入力する外乱ノイズ等を減らす
ことができ、記録用紙Pの端縁の位置の検出精度を向上させることができる。
【0057】
プリンタ1は、記録ヘッド16をホームポジションに移動した後、後述するように記録
用紙Pに対してインクを吐出して記録を行う記録画像の形成処理を行う。記録画像の形成
処理では、記録ヘッド16の主走査方向への往復移動と、記録用紙Pの幅走査方向の前方
への移動とが交互に繰り返される。そして、記録ヘッド16が主走査方向に一端から他端
(他端から一端)に移動する際に、記録ヘッド16からインクが吐出され、記録ヘッド1
6の副走査方向における記録幅の記録ラインで記録画像が形成される。この記録画像の形
成を記録用紙Pを幅走査方向の前方へ移動する都度行うことで、記録用紙Pの前方から後
方に向かって順に記録画像が形成されていく。なお、以下の説明において、記録ヘッド1
6が主走査方向に移動し順次形成される記録ラインを記録処理順に1、2、…、n番目の
記録ラインとして説明することとする。
【0058】
記録画像の形成処理では、先ず、これから記録処理を行う記録ラインについて行う打捨
て処理の打捨て幅Cの算出を行う(ステップS70からステップS90)。プリンタ1は
、後述するステップS120において説明するように、記録ラインを形成するために記録
ヘッド16が移動する際に、記録ヘッド16が記録用紙Pの内側から外側に移動するのに
併せて、記録用紙Pの端縁の位置の検出を行うように構成されている。記録用紙Pの端縁
の位置の検出を、記録ヘッド16が記録用紙Pの内側から外側に移動する際に行うのは、
上述したように、光センサ31に入射する外乱ノイズ等を減らし、検出精度を向上させる
ためである。
【0059】
先ず、ステップS70では、記録処理を行う前の直近に検出された記録用紙Pの左右端
位置に基づいて、記録用紙Pの記録処理部幅Wnを、記録処理部幅算出手段としてのCP
U34において算出する。そして、記録処理部幅WnとステップS60において算出した
非記録処理部幅W0とから、式(1)に基づいて、誤差量Enを、誤差量算出手段として
のCPU34において算出する(ステップS80)。そして、打捨て幅算出手段としての
CPU34において、既定の打捨て幅である打捨て幅Bに誤差量Enを加算したものを打
捨て幅Cとして算出する(ステップS90)。なお、打捨て幅Bは、上述したように、制
御誤差により記録用紙Pの端縁に記録されるべき画像が内側に記録されてしまう場合に、
記録画像と記録用紙Pの端縁との間に余白が生じてしまうことがないようにできれば足り
るだけの狭い打捨て幅である。
【0060】
例えば、1番目の記録ラインについての記録処理を行う場合の打捨て幅Cの算出(ステ
ップS70からステップS90)は次のように行われる。1番目の記録ラインについての
記録処理を行う場合の直近に検出された記録用紙Pの左右端位置は、ステップS40,S
50において検出された左右端位置R0,L0である。そのため、1番目の記録ラインに
ついての記録処理部幅W1は左右端位置R0,L0に基づいて算出され、非記録処理部幅
W0と等しくなる。したがって、ステップS80において算出される1番目の記録ライン
についての誤差量E1は式(1)より、誤差量E1=0となる。その結果、ステップS9
0において算出される1番目の記録ラインについての打捨て幅Cは、打捨て幅Bとして算
出される。
【0061】
このようにして、1番目の記録ラインについての打捨て幅C(=打捨て幅B)を算出し
た後、打捨て幅C(=打捨て幅B)で打捨て処理を行う(ステップS100)。ここでの
打捨て処理(ステップS100)は、ステップS50において検出した記録用紙Pの左端
位置L0に基づいて、左端位置L0から打捨て幅C(=打捨て幅B)離れた位置から左端
位置L0までの間、打捨て処理を実行する。この打捨て処理に続けて1番目の記録ライン
について記録処理が行われる(ステップS110)。
【0062】
打捨て幅Bは、プリンタ1における記録ヘッド16の記録位置の誤差等の制御誤差によ
る余白の発生を防止するためのものであり狭い幅に設定されている。左端位置L0は精度
の高いものであるため、端縁の誤検出を考慮する必要性は低く、制御誤差を考慮した打捨
て幅Bで打ち捨て処理を行うことで記録画像と記録用紙の端縁との間に余白が発生するこ
とを防止できる。
【0063】
続いて、記録用紙Pに対する記録画像を形成する記録処理が行われる(ステップS11
0)。ここでの記録処理(ステップS110)は、ステップS40,S50で検出した記
録用紙Pの左端位置L0から右端位置R0の範囲に対して行われる。
【0064】
この左端位置L0から右端位置R0の範囲への記録処理に併せて、記録ヘッド16が記
録用紙Pの内側から外側に移動する際に、記録用紙検出装置6にて記録用紙Pの右端位置
を右端位置R1として検出し、これを1番目の記録ラインを形成する際に検出した記録用
紙Pの右端位置としてRAM36に記憶する(ステップS120)。なお、記録用紙Pは
、ステップS40,S50において左右端位置R0,L0を検出した状態のまま搬送され
ていないため、右端位置R1は、右端位置R0と同様に、記録が未だ行われていない白色
の記録用紙Pの端縁の位置であり精度の高いものとなっている。
【0065】
次いで、上述の記録処理(スッテプS110)に続いて、ステップS40において検出
した記録用紙Pの右端位置R0に基づいて記録用紙Pの右端縁の外側に、ステップS70
において算出した打捨て幅(打捨て幅B)で打捨て処理を実行する(ステップS130)
。右端位置R0は精度の高いものであるため、端縁の誤検出を考慮する必要性は低く、制
御誤差を考慮した打捨て幅Bで打ち捨て処理を行うことで記録画像と記録用紙の端縁との
間に余白が発生することを防止できる。
【0066】
この打捨て処理(ステップS130)に続いて、洗い流し処理を行う(ステップS14
0)。洗い流し処理は、打ち捨て処理に続いて吸収材に対してインクを吐出する処理であ
り、打ち捨てられたインクが吸収材上に凝固して堆積してしまわないようにするために行
われるものである。この洗い流し処理は、打ち捨て処理が行われた外側の部分に予め設定
される所定幅に亘って行われる。洗い流し処理までを完了して、1本の記録ラインについ
ての記録画像を形成するための記録処理が完了する。記録用紙Pを副走査方向に搬送する
毎に、上述の打捨て処理、記録処理、打捨て処理、そして洗い流し処理という一連の動作
を繰り返しながら、記録用紙Pに記録画像を形成していく。
【0067】
1番目の記録ラインについて上述の一連の処理が完了した後、記録用紙Pが、1つの記
録画像分に対応する所定長を搬送されたかどうかを判断し(ステップS150)、搬送さ
れていない場合には記録用紙Pを記録ヘッド16の記録幅分だけ前方に搬送し(ステップ
S160)、再び、上述のステップS70からステップS140の処理を行い、次ぎのラ
イン(2番目の記録ライン)についての記録処理を行う。2番目の記録ラインについての
記録処理は、1番目の記録ラインが左方から右方に記録ヘッド16が移動する記録処理で
あったのに対し、右方から左方に記録ヘッド16が移動する記録処理となる。
【0068】
なお、2番目の記録ラインについての記録処理を行う場合の直近に検出された記録用紙
Pの左右端位置は、1番目の記録ラインの記録処理の際に検出した右端位置R1とステッ
プS50において検出した左端位置L0である。上述したように、右端位置R1は、ステ
ップS40,S50において左右端位置R0,L0を検出した状態のまま搬送されていな
い記録用紙Pの右側端縁の位置を検出したものである。そのため、右端位置R0と同様に
、記録が未だ行われていない白色の記録用紙Pの左右端縁の位置であり、精度の高いもの
となっている。
【0069】
したがって、2番目の記録ラインについて行われるステップS70で算出される記録処
理部幅W2は、非記録処理部幅W0と同一かあるいは非常に近い値となる。そして、ステ
ップS80において記録処理部幅W2と非記録処理部幅W0とから式(1)に基づいて2
番目の記録ラインについての誤差量E2を算出する。記録処理部幅W2は、非記録処理部
幅W0に等しいかあるいは非常に近い値であるため、誤差量E2は0か0に近い小さな値
となる。そして、この誤差量E2に少ない打捨て量Bを加算したものを打捨て幅Cとして
算出する。
【0070】
なお、記録処理(ステップS110)は、1番目の記録ラインについて記録処理を行う
際にステップS120で検出した記録用紙Pの右端位置R1とステップS50において検
出した左端位置L0の範囲に対して行われる。ステップS100,S130の打捨て処理
は、右端位置R1と左端位置L0の外側に打捨て幅Cにて行われる。
【0071】
また、ステップS120においては、右端位置R1から端縁位置L0の範囲への記録処
理に併せて、記録ヘッド16が、記録用紙Pの内側から左外側に移動する際に、記録用紙
検出装置6にて記録用紙Pの左端位置を左端位置L2として検出し、これを2番目の記録
ラインを形成する際に検出した記録用紙Pの左端位置としてRAM36に記憶する(S1
20)。この左端位置L2は、1番目の記録ラインが形成され着色された部分の縁部を検
出したものとなっている。したがって、左端位置L2は、記録用紙Pの実際の端縁より内
側に誤検出される可能性が高い。
【0072】
2番目の記録ラインについて上述の一連の処理(ステップS70からステップS140
)が完了した後、記録用紙Pをさらに記録ヘッド16の記録幅分だけ前方に搬送し(ステ
ップS160)、再び、上述のステップS70からステップS140の処理を行い、次ぎ
のライン(3番目の記録ライン)についての記録処理を行う。
【0073】
3番目の記録ラインについての記録処理は、2番目の記録ラインが右方から左方に記録
ヘッド16が移動する記録処理であったのに対し、左方から右方に記録ヘッド16が移動
する記録処理となる。
【0074】
なお、3番目の記録ラインについての記録処理を行う場合の直近に検出された記録用紙
Pの左右端位置は、1番目の記録ラインについての記録処理の際に検出(ステップS12
0)した右端位置R1と2番目の記録ラインについての記録処理の際に検出(ステップS
120)した左端位置L2である。3番目の記録ラインについて行われるステップS70
で算出される記録処理部幅W3は、右端位置R1と左端位置L2に基づいて算出される。
そして、記録処理部幅W3とステップS60において算出した非記録処理部幅W0とから
、式(1)に基づいて誤差量E3を算出し(ステップS80)、この誤差量E3に少ない
打捨て量Bを加算したものを打捨て幅Cとして算出する(ステップS90)。
【0075】
記録処理(ステップS110)は、1番目の記録ラインについて記録処理を行う際にス
テップS120で検出した記録用紙Pの右端位置R1と、2番目の記録ラインについて記
録処理を行う際にステップS120で検出した記録用紙Pの左端位置L2の範囲に対して
行われる。そして、ステップS100,S130の打捨て処理は、右端位置R1と左端位
置L2の外側に打捨て幅Cにて行われる。
【0076】
ところで、左端位置L2は、1番目の記録ラインが形成され着色された部分の縁部を検
出したものである。したがって、左端位置L2は、記録用紙Pの実際の端縁より内側に誤
検出される可能性が高い。このため、ステップS80において算出される誤差量E3は、
左端位置R2と記録用紙Pの実際の端縁との差分に対応した量となり、ステップS90に
おいて算出される打捨て幅Cも打捨て幅Bよりも大きな値となる。つまり、左端位置L2
が、記録用紙Pの実際の端縁より内側に誤検出されたものである場合でも、打捨て幅Cは
、打捨て幅Bよりも誤差量E3分だけ広いものとなっているため、記録画像の左右に余白
が形成されてしまうことを防ぐことができる。
【0077】
4番目の記録ライン以降についても、上述したのと同様に、ステップS70からステッ
プS160の処理を、ステップS150において、記録用紙Pが、1つの記録画像分に対
応する所定長を搬送されたと判断されるまで(ステップS150においてYes)繰り返
し記録処理と打捨て処理を行う。本実施の形態によれば、上述したように、打捨て幅を、
誤差量に対応した幅とすることができるため、打捨てに使用されるインク量を少なくする
ことができ、インクの消費とミストの量を少なく抑えることができる。
【0078】
上述の実施の形態では、記録用紙Pの左右の端縁の位置を、検出光を記録用紙Pの内側
から外側に走査する際に検出する構成としているが、検出光が外側から内側に走査する際
にも記録用紙Pの左右の端縁の位置を検出するようにしてもよい。また、上述の実施の形
態では、記録用紙Pを帯状の用紙であるいわゆるロール紙としたが、これに限らず、記録
用紙Pは、いわゆる単票紙であってもよい。
【0079】
また、上記の実施の形態では、記録ヘッド16が左右に往復移動する往路と復路におい
て記録処理を行う構成としているが、往路または復路のいずれか一方において記録処理を
行う構成としてもよい。
【0080】
また、上述の実施の形態では、本発明の記録装置をインクジェットプリンタとして説明
したが、インクジェットプリンタの他、機能材料の粒子が分散されている液状体、ジェル
のような流状体、流体として流して噴射できる固体を記録ヘッド(噴射ヘッド)から噴射
できる流体噴射装置としても具現化でき、また、インパクトプリンタにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施の形態に係るプリンタの全体的な概略の構成を示す概略構成図である。
【図2】図1に示すプリンタの電気的な構成を示す回路ブロック図である。
【図3】図1に示すプリンタの投光部と光センサの配置を示す図である。
【図4】従来の打捨て処理の動作の概念を説明する図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る打捨て処理の動作の概念を説明する図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る打捨て処理を説明する図である。
【符号の説明】
【0082】
P ・・・ 記録媒体 , 1 ・・・プリンタ(記録装置) ,
16・・・ 記録ヘッド(移動型記録ヘッド) , 31 ・・・光センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体の主走査方向における全幅に渡って、副走査方向に所定の記録幅で記録液を吐
出する記録処理を繰り返すことで記録画像を形成する記録方法において、
光センサを利用して上記記録媒体の記録処理が行われていない非記録処理部分における
主走査方向の端縁の位置を検出する非記録部端縁位置検出ステップと、
上記光センサを利用して上記記録媒体の記録処理が行われた記録処理部分における主走
査方向の端縁の位置を検出する記録部端縁位置検出ステップと、
上記非記録部端縁位置検出ステップにおいて検出された上記非記録処理部分における上
記端縁の位置に基づいて上記非記録処理部分における主走査方向の幅を算出する非記録処
理部幅算出ステップと、
上記記録部端縁位置検出ステップにおいて検出された上記記録処理部分における上記端
縁の位置に基づいて上記記録処理部分における主走査方向の幅を算出する記録処理部幅算
出ステップと、
上記非記録処理部幅検出ステップにおいて検出された上記非記録処理部分における主走
査方向の幅と、上記記録処理部幅検出ステップにおいて検出された上記記録処理部分にお
ける主走査方向の幅との差に基づいて、上記記録処理部分において検出される上記記録媒
体の主走査方向における端縁の位置についての検出誤差量を算出する誤差量算出ステップ
と、
上記記録処理の前後において行われ、上記記録媒体の主走査方向における上記記録媒体
の外側に上記記録液を吐出する打ち捨て処理を行う打捨てステップと、
を有し、
上記打ち捨て処理は、既定の打捨て幅に上記誤差量を加えた幅を打捨て幅とすることを
特徴とする記録方法。
【請求項2】
前記記録処理は、前記記録媒体に沿って主走査方向に往復移動を繰り返し、上記往路ま
たは復路の少なくとも一方において前記記録処理を行う移動型記録ヘッドにより行い、
前記光センサは、上記移動型記録ヘッドと共に移動し、
上記移動型記録ヘッドが前記記録媒体の内側から前記記録媒体の外側に移動するときに
前記光センサを利用して前記記録媒体の端縁の位置を検出することを特徴とする請求項1
に記載の記録方法。
【請求項3】
前記記録処理部分における主走査方向の幅の算出は、前記記録処理を行う前の直近に検
出された前記記録媒体における主走査方向における両端縁の位置に基づいて行われること
を特徴とする請求項1または2に記載の記録方法。
【請求項4】
請求項1から3の記録方法を実行可能なことを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−262413(P2009−262413A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−114917(P2008−114917)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】