説明

記録映像データ再生システム

【課題】記録映像データ再生システムにおいて、簡易なハードウェア機構で処理付加も増加させることなく、映像データに対する付加情報を送受信する。
【解決手段】記録映像データ再生システムは、少なくとも、映像データを作成する映像データ作成装置と、再生する映像データ再生装置とを有する。映像データ作成装置の映像データ符号化部は、撮影した映像データをJPEGフォーマットにより符号化する。その際に、JPEGフォーマットのアプリケーションマーカに、付加情報を埋め込むことにより、映像データの各区間をマーキングする。映像データ再生装置の映像データ復号化部は、映像データを復号化して再生する際に、取り出された付加情報を参照し、マーキングされた映像データ区間を通常再生し、マーキングされない映像区間をN倍速再生(Nは、自然数)する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録映像データ再生システムに係り、特に、JPEGフォーマットの映像を記録し再生システムであって、データ量を増やすことなく記録データの再生速度の制御を可変にして、特定の場面の映像を目視確認する用途に用いて好適な記録映像データ再生システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、監視用に用いられる記録映像データ再生システムにおいては、ユーザが監視目的で記録された映像データの再生をおこなう場合、映像データ再生装置を使用して外部デバイスに再生された映像データを目視により確認することによっておこなう。例えば、特許文献1には、監視カメラによって取得した映像データを、蓄積配信サーバに記録しておき、それをIPネットワークを介して配信するシステムが開示されている。
【0003】
映像の画像フォーマットとしては、例えば、モーションJPEG(Motion-JPEG)といわれる動画の記録方式が用いられる。これは、各フレームごとの映像をJPEG圧縮したものを連続して記録したものである。
【0004】
このときに、再生速度が実時間と同じ時間による再生(等速再生)であると、ユーザの目視による確認作業に掛かる時間は記録に要した時間と等しくなり、映像データ記録装置が常時記録(24時間365日記録が継続的におこなわれる)の場合には、確認作業に時間が掛かりすぎるという問題がある。
【0005】
また、映像データ再生装置による外部デバイスヘの映像データの再生の再生速度が短縮時間による再生(N倍速再生、Nは自然数)の場合には映像データ記録装置が記録に要した時間の1/Nの時間で確認作業が終了するが、ユーザの目視による確認作業の精度が低下するために、監視のために必要な情報がユーザに読み取れないことも起こりうる。
【0006】
このために、映像データ作成装置から映像データ記録装置に、監視に必要となる特定の場面をゆっくり再生するなどの制御をするために、映像データに関する付加情報を別に送信し、その付加情報により映像データ再生装置が映像の再生を制御するシステムが知られている。
【0007】
以下、図4を用いて従来技術に係る映像データの付加情報を用いた記録映像データ再生システムについて説明する。
図4は、従来技術に係る映像データの付加情報を用いた記録映像データ再生システムの構成図である。
【0008】
この従来技術に係る記録映像データ再生システムは、映像データ作成装置100、映像データ記録装置200、映像データ再生装置300からなる。
【0009】
映像データ作成装置100は、カメラデバイスなどの映像データ撮影部101により撮像した映像データを、映像データ符号化部102により符号化し、映像データ送信部103により、映像データ記録装置200に送信する。
【0010】
映像データ符号化部102では、映像データを、例えば、JPEGフォーマットにより符号化する。
【0011】
また、映像データとは別に、付加情報読込部111などにより、メモリなどから付加情報を読込み、付加情報送信部112により、映像データ記録装置200に送信する。
【0012】
映像データ記録装置200では、映像データ受信部201により、映像データを受信する。受信した映像データは、映像データ書込部202により、ハードディスクドライブなどの映像データ保存部203に書き込まれる。
【0013】
そして、映像データ読込部204は、映像データ保存部203に格納された映像データを読込み、読み込まれた映像データは、映像データ送信部205により、映像データ再生装置300に送信される。
【0014】
また、この映像データとは別に、映像データ記録装置200では、付加情報受信部211により、付加情報を受信する。受信した付加情報は、付加情報書込部212により、ハードディスクドライブなどの付加情報保存部213に書き込まれる。
【0015】
そして、付加情報読込部214は、付加情報保存部213に格納された付加情報を読込み、読み込まれた付加情報は、付加情報送信部215により、映像データ再生装置300に送信される。
【0016】
映像データ再生装置300では、映像データ受信部301により、映像データを受信し、受信した映像データを映像データ復号化部302により、復号化する。
【0017】
また、付加情報受信部311により、付加情報を受信する。
【0018】
映像データ再生装置300の映像データ再生部303は、映像データを再生する際に、受信した付加情報を参照して、再生をおこなう。
【0019】
この記録映像データ再生システムは、映像データとは別に、付加情報を映像データ作成装置100が、映像データ記録装置200から、映像データ再生装置300に送り、映像データ再生装置300は、その情報を制御情報として参照して、映像データを再生することに特徴がある。
【0020】
ここで、付加情報は、映像データ作成装置での外部センサや内蔵するセンサ情報であり、特定の場面の映像データを意味付けするものである。例えば、セキュリティシステムの人体感知センサが、ある時刻からある時刻まで反応しているなどの情報である。
【0021】
したがって、映像データ再生装置300の映像データ再生部303は、この付加情報により、映像の変換点を知ることができる。そのため、付加情報より変換点を認識するまでは、スピード再生をおこない、付加情報より変換点を認識したときには、等速再生、あるいは、それ以上のスロー再生をおこなう。
【0022】
このように、付加情報により、映像データの意味付けをすることにより、全体としての作業時間をそれほど増加させることなく、監視の必要な場面で注意して観察することにより、効率的な映像による監視をおこなうことができる。
【0023】
【特許文献1】特開2003−274383号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
しかしながら、上記従来技術では、付加情報を処理するためのハードウェア機構が、各装置で大掛かりなものになるという問題点がある。
【0025】
また、映像データ記録装置では、付加情報というリソースを、映像データとは、別途に保存リソースとして管理しなければならないという問題点がある。
【0026】
さらに、各装置で、付加情報を送受信するための処理の負荷も増大するという問題点がある。
【0027】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、その目的は、記録映像データ再生システムにおいて、簡易なハードウェア機構で処理負荷も増加させることなく、付加情報を送受信することのできる記録映像データ再生システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明の記録映像データ再生システムの構成は、映像データ作成装置と、映像データ記録装置と、映像データ再生装置とを有するようにする。映像データ作成装置で作成された映像データは、いったん、映像データ記録装置に格納され、再生するために、映像データ再生装置に送られる。
【0029】
映像データ作成装置の映像データ符号化部は、撮影した映像データをJPEGフォーマットにより符号化する。その際に、JPEGフォーマットのアプリケーションマーカに、付加情報を埋め込むことにより、映像データの各区間をマーキングする。これは、監視のために特に必要な個所を、注意して見るために、マーキングされた映像をゆっくりと再生する意図である。
【0030】
映像データ再生装置の映像データ復号化部は、映像データを復号化して再生する際に、映像データ取出部により取り出された付加情報を参照し、マーキングされた映像区間を通常再生し、マーキングされない映像区間をN倍速再生(Nは、自然数)する。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、記録映像データ再生システムにおいて、簡易なハードウェア機構で処理付加も増加させることなく、付加情報を送受信することのできる記録映像データ再生システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明に係る一実施形態を、図1ないし図3を用いて説明する。
【0033】
先ず、図1を用いて本発明の一実施形態に係る記録映像データ再生システムのシステム構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る記録映像データ再生システムのシステム構成図である。
【0034】
本実施形態に係る記録映像データ再生システムは、図1に示されるように、映像データ作成装置100、映像データ記録装置200、映像データ再生装置300からなる。
【0035】
映像データ作成装置100は、カメラデバイスなどの撮像機器により撮像した映像データを符号化して、映像データ記録装置200に送信する装置である。
【0036】
また、映像データ作成装置100は、映像データに対する付加情報を映像データ記録装置200に送信する機能を有する。
【0037】
本実施形態の映像の画像フォーマットとしては、モーションJPEGを用いるものとする。
【0038】
映像データと付加情報の詳細については、後に説明する。
【0039】
映像データ作成装置100は、図1に示されるように、映像データ撮影部101、映像データ符号化部102、映像データ送信部103、付加情報読込部111からなる。
【0040】
映像データ撮影部101は、カメラデバイスなどの外部映像撮影デバイスまたは外部映像入力された映像を取り込む。
【0041】
映像データ符号化部102は、映像データ撮影部101が撮影した映像データと、付加情報読込部111から送られる付加情報をJPEGフォーマットのデータに符号化する。
【0042】
映像データ送信部103は、映像データ符号化部102が符号化した映像データを、映像データ記録装置200からの要求に従い映像データ記録装置200に送信する。
【0043】
付加情報読込部111は、映像データに対する付加情報を読み込んで、映像データ符号化部102に送る。
【0044】
映像データ記録装置200は、映像データ作成装置100が作成し、送信してくる映像データを受信し、保存して置き、しかる後に、映像データ再生装置300に送信するための装置である。
【0045】
映像データ記録装置200は、図1に示されるように、映像データ受信部201、映像データ書込部202、映像データ保存部203、映像データ読込部204、映像データ送信部205からなる。
【0046】
映像データ受信部201は、ユーザ要求または外部定義に従い映像データ作成装置100に対して、映像データを送信するように要求をおこない、その映像データを受信する。
【0047】
映像データ書込部202は、映像データ受信部201が受信した映像データを、映像データ保存部203に書き込む。
【0048】
映像データ保存部203は、映像データを保存するための補助記憶装置であり、例えば、ハードディスクドライブ、半導体メモリなどが用いられる。
【0049】
映像データ読込部204は、映像データ保存部203に格納された映像データを読込み、映像データ送信部205に送る。
【0050】
映像データ送信部205は、映像データ読込部204から送られた映像データを、映像データ再生装置300からの要求に従い映像データ再生装置300に送信する。
【0051】
映像データ再生装置300は、映像データ記録装置200から送信されてくる映像データを受信し、再生するための装置である。
【0052】
映像データ再生装置300は、図1に示されるように、映像データ受信部301映像データ復号化部302、映像データ再生部303、付加情報取出装置321からなる。
【0053】
映像データ受信部301は、ユーザ要求に従い映像データ記録装置200に対して特定の映像データを送信するように要求をおこない、送信されてくる映像データを受信する。
【0054】
映像データ復号化装置302は、映像データ受信部301が受信した映像データをJPEGフォーマットから復号化する。
【0055】
映像データ再生部303、映像データ復号化部302が復号化した映像データを、映像データの中に埋め込まれた付加情報を参照しながら、モニタなどの外部デバイスに再生する。
【0056】
付加情報を使用した映像データの再生処理については、後に詳細に説明する。
【0057】
付加情報取出部321は、映像データの中に埋め込まれた付加情報を取出し、映像データ再生部303に渡す。
【0058】
本実施形態は、後に詳細に説明するように、映像データの中に付加情報を埋め込んで送信するものである。そのために、本実施形態のシステム構成では、図4に示した従来技術の記録映像データ再生システムと比較し、付加情報のみを各装置間で送受信する機構、映像データ記録装置200においては、付加情報のみを格納する機構を必要とせず、ハードウェアの構成が簡易なものになっていることがわかる。
【0059】
すなわち、本実施形態の記録映像データ再生装置システムでは、付加情報を使用しない記録映像データ再生装置システムに比べて、映像データ作成装置100の付加情報読込部111と、映像データ再生装置300の付加情報取出部321の追加のみで付加情報の使用を可能としている。
【0060】
次に、図2および図3を用いて本発明の一実施形態に係る記録映像データ再生システムの映像データの再生方法と、映像データのデータ構造について説明する。
図2は、付加情報付き映像データの再生方法を説明する図である。
図3は、付加情報付き映像データのフォーマットとして用いられるJPEGフォーマットを説明する図である。
【0061】
本実施形態に用いられる付加情報付き映像データでは、ある映像の場面をマーキングして、マーキングされた部分の再生速度を、マーキングされていない部分とは別の速度により再生できるようにしたものである。
【0062】
例えば、セキュリティシステム場合には、人体感知センサが、ある時刻からある時刻まで反応している部分の映像データをマーキングする。
【0063】
そして、マーキングされていない映像データに対しては、スピード再生をおこない、マーキング再生されている映像データに対しては、等速再生、あるいは、それ以上のスロー再生をおこなうものである。
【0064】
ここで、図2(b)に示されるように、映像データ20を全区間にわたり等速再生をおこなった場合に掛かる再生の所要時間がTになるものとする。
【0065】
この映像データデータに対して、図2(a)に示されるように、50%がマーキング情報のある映像データ区間であり、マーキング情報のある映像データ区間は、全体の1/4に相当する連続した区間が映像区間10b,10dとして、二箇所あるようにマーキングするものとする。このときに、マーキング情報のある映像データ区間10b,10dを等速再生、マーキング情報の無い映像データ区間10a,10bをN倍速再生(Nは、自然数)したときに、上記の所要時間Tを使用して(T/2+T/2N)と表現可能であり、Tに対して(50%<T≦100%)の範囲になる。
【0066】
Nが2である(マーキングなし映像データ区間を2倍速で再生)とすれば、映像区間10に示す再生に掛かる時間は3T/4になる。したがって、映像区間20に示す再生に掛かる所要時間に比べて25%ほど、ユーザの目視による確認作業に掛かる作業時間の短縮が可能になる。
【0067】
本実施形態では、以上のように映像データをマーキングするため、JPEGファイルの特殊な構造を用いる。
【0068】
JPEGファイルフォーマットは、図3に示されるように、マーカと呼ばれる区切り子で区切られたフォーマットを有し、必ず先頭にSOI(Start of Image)マーカFFD8(16進数表示、以下同じ)と末尾にEOI(End of Image)マーカFFD9を有する。マーカのうちFFE0〜FFEFまでの範囲はアプリケーションマーカ(APPマーカ)と呼ばれてJPEGの復号化処理には無関係に、それぞれのアプリケーションが自由使うことのできる領域として定められている。
【0069】
したがって、JPEGデータ30に対して、本実施形態の記録映像データ再生システムでは、このアプリケーションマーカ領域を使用してJPEGフォーマットに、マーキングのための付加情報を書き込むものとする。
【0070】
付加情報は、映像データ作成装置100の外部センサや内蔵するセンサ情報であったり、再生速度であってもよい。
【0071】
また、以上の説明では、マーキングのない映像データ区間は、N倍速としたが、必ずしも、整数倍にかかわらず、1.5倍速などの再生速度であってもよい。マーキングのある映像データ区間は、等速再生よりももっとゆっくりと再生(例えば、0.8倍速再生)するようにしてもよい。
【0072】
このように、JPEGのフォーマットのアプリケーションマーカに、映像データに対する付加情報を書き込むことにより、JPEGフォーマットの汎用性を損なうことなく付加情報の送受信が可能となる。したがって、上記のように、各装置がハードウェアを簡易化できることに加えて、付加情報をJPEGフォーマット内へのマーキング情報として取り込んでいるので、送受信データ量の増加を最小限とすることを可能にしている。
【0073】
以上説明したように、本実施形態の記録映像データ再生システムでは、従来技術の付加情報を使用した記録映像データ再生システムと比較して、大幅なハードウェアの簡易化が可能となり、送受信のデータ量も削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の一実施形態に係る記録映像データ再生システムのシステム構成図である。
【図2】付加情報付き映像データの再生方法を説明する図である。
【図3】付加情報付き映像データのフォーマットとして用いられるJPEGフォーマットを説明する図である。
【図4】従来技術に係る映像データの付加情報を用いた記録映像データ再生システムの構成図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像データ作成装置と、映像データ再生装置とを有し、前記映像データ作成装置した映像データを、前記映像データ再生装置で再生する記録映像データ再生システムにおいて、
前記映像データ作成装置は、撮影した映像データをJPEGフォーマットにより符号化し、前記JPEGフォーマットのアプリケーションマーカに、付加情報を埋め込むことにより、前記映像データの各区間をマーキングし、
前記映像データ再生装置は、前記映像データを復号化して再生する際に、前記付加情報を参照して、マーキングされた映像区間を第一の速度により再生し、マーキングされない映像区間を第二の速度により再生することを特徴とする記録映像データ再生システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−253370(P2009−253370A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−95291(P2008−95291)
【出願日】平成20年4月1日(2008.4.1)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】