記録材冷却加湿装置、画像形成装置及び画像加熱システム
【課題】加熱された記録材の波打ちまたはカールを抑制する。
【解決手段】熱及び圧力をトナー及びシートに加えることでシートにトナーを定着させる定着装置を有する電子写真装置においてシート搬送途中に、シートを冷却する機構を有し、さらにシートを冷却する機構に水分を塗布する手段を備え、シートの坪量と環境湿度に応じ水分塗布量を変更し、各シートに適した水分量を維持し波打ちおよびカールを低減させる。
【解決手段】熱及び圧力をトナー及びシートに加えることでシートにトナーを定着させる定着装置を有する電子写真装置においてシート搬送途中に、シートを冷却する機構を有し、さらにシートを冷却する機構に水分を塗布する手段を備え、シートの坪量と環境湿度に応じ水分塗布量を変更し、各シートに適した水分量を維持し波打ちおよびカールを低減させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録材冷却加湿装置、画像形成装置及び画像加熱システムに関する。記録材冷却加湿装置は、例えば電子写真装置において画像加熱定着装置を出た、画像を担持して加熱された状態の記録材を冷却すると共に水分または水溶液を付加して記録材の波打ちまたはカールを抑制する装置として有効である。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば電子写真方式を用いたプリンタ,複写機,ファクシミリ等の一般的な画像形成装置は、像担持体としての感光体ドラム上に形成された潜像を現像剤(トナー)により現像して可視画像化する。この可視画像(トナー像)を記録材(以下、シートと記す)に静電気力を用いて転写させる。次いで転写画像を熱により固着画像として定着させることによってシート上に画像が記録形成されるようになっている。
【0003】
定着装置としては、熱ローラ方式の定着装置を用いる例が多い。この定着装置は、ハロゲンヒータ等の内蔵熱源により加熱されて所定の温度に維持させた定着ローラと、これに圧接させた弾性を有する加圧ローラとの圧接ニップ部(定着ニップ部)に未定着トナー像を担持したシートを導入して挟持搬送する。これにより、シート表面の未定着トナー像を熱定着させるものである。この定着工程では熱をトナー及びシートに付加するので、シート内部の水分が圧接ニップ部および圧接ニップ後に蒸発する。
【0004】
シートの水分量変化とシートにかかるストレスでシートには波打ち及びカールが発生する。シートを繊維のレベルで見ると、シートは短い繊維どうしが絡み合って構成されており、繊維内部または繊維どうしの間には水分が含まれ、繊維と水は水素結合を生じる。定着工程においてシートに熱が加わると、シート内部の水分が蒸発し繊維どうしで水素結合が生じ変形する。シートを放置していると環境から吸湿し、繊維どうしの水素結合が再び切り離される。だが、一部の繊維間には水分が入っていかず、それにより変形が維持される。
【0005】
変形のパターンはシートの表裏の伸縮差で変形するもの(カール)とシートの中央部と端部での伸縮差で起きるものがあり、これらの変形によりシートに波打ちまたはカールが生じる。
【0006】
この問題に対する解決策が特許文献1、2に開示されている。特許文献1は、効率良く、かつカール癖がつかないように定着装置後のシートを冷却する装置およびシステムである。一対の冷却部に設けた密着したベルトの間にシートを挟みこんだ。また、ベルトの内側には、金属部材を配置し、ベルトがシートから受けた熱を迅速に吸収し、放熱する。また、このシートを挟み込んだベルトを平面搬送する。定着装置を通過したシートを迅速に密着冷却することで、シートの水分蒸発そのものを防止し、波打ちおよびカールが軽減する。
【0007】
特許文献2は、静電複写又はプリントの定着工程で、シートから水分が失われることによるカール及びエッジの波打ちを防ぐ静電複写装置で使用される装置及びシステムである。シートの片面又は両面に制御された量の水分を付加する装置であって、シートの両面に配置され、液体を貯蔵するためのリザーバを有するウォータージェットと、ほぼ円筒形外表面を有する一対の圧力ロールとを備える。円筒形外表面の間にニップを定めるようにこの一対の圧力ロールはその軸に沿って互いに位置合わせされている。
【0008】
この装置は、更に、シートが円筒形外表面の間に形成されるニップに入る前に、通過する各シートの選択された部分にウォータージェットから付加される水分を制御する制御装置も備える。
【0009】
シートに水分を付加することにより、定着工程での熱と圧力により奪われた水分を補充し、波打ち及びカールが良化する。シートの水分が増えるとシート自体のヤング率が低下しこわさが小さくなり波打ちが軽減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−112102号公報
【特許文献2】特開平11−167317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1では、定着装置を通過するとシートの水分が減少しカール及び波打ちが起こる現象に対して、定着装置後のシートを急速に冷却し、水分の蒸発を抑えることで繊維どうしの水素結合の乖離を抑制し、カールおよび波打ちを軽減することができる。
【0012】
しかし、高湿度の環境などにシートを積載放置した場合、外気に面しているシート端部はさらに水分を吸収しシートが膨張する。一方、外気に面していないシートの内部はシートの端部に比べ水分の吸収量が少なく、シート端部に比べ、シートの膨張量が小さくなる。その結果、相対的にシート端部と内部に水分量によるシートの膨張量の差が生じ、波打ちが顕著化してしまう。
【0013】
一方、特許文献2では、定着装置を通過するとシートの水分が減少しカール及び波打ちが起こる現象に対して、定着装置通過後に水分を付加することで失った水分を補充しカール及び波打ちを低減させたとしている。しかし、本手法では、加熱によりシートが一度大量に水分を失い、水素結合の乖離が起きてしまうため、水分を付加したとしても十分には元に戻らない水素結合の乖離量が多く存在してしまう。また、シートを水分付加と同時に冷却する機構を持たないため、高温で水分を付加されたシートは水分の蒸発を続け、結露などにより搬送性や積載性が不安定になってしまう。
【0014】
本発明は、かかる従来技術の課題を解決するためになされたものである。その目的とするところは、画像加熱部で加熱された状態の記録材の水分蒸発を効果的に防ぎ、また記録材繊維の水素結合の乖離を抑制して記録材のカールおよび波打ちを効果的に軽減することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するための本発明に係る記録材冷却加湿装置の代表的な構成は、画像加熱部で加熱された記録材をニップ部において密封冷却する密閉層を有する回転可能な回転部材と、前記回転部材を冷却する冷却手段と、前記回転部材に水分を付加する水分付加手段と、を備えることを特徴とする。
【0016】
また、上記の目的を達成するための本発明に係る画像形成装置の代表的な構成は、記録材に未定着画像を形成する画像形成部と、前記未定着画像を担持した記録材を加熱して画像定着する画像加熱部と、前記画像加熱部から搬送された加熱された状態の記録材を冷却すると共に加湿する冷却加湿部と、を有する画像形成装置であって、前記冷却加湿部が前記記録材冷却加湿装置であることを特徴とする。
【0017】
また、上記の目的を達成するための本発明に係る画像加熱システムの代表的な構成は、画像を担持した記録材を加熱する画像加熱部と、前記画像加熱部から搬送された加熱された状態の記録材を冷却すると共に加湿する冷却加湿部であって、前記記録材をニップ部において密封冷却する密閉層を有する回転可能な回転部材と、前記回転部材を冷却する冷却手段と、前記回転部材に水分を付加する水分付加手段と、を備える冷却加湿部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の記録材冷却加湿装置、画像形成装置及び画像加熱システムによれば、画像加熱部で加熱された状態の記録材の水分蒸発を効果的に防ぎ、また記録材繊維の水素結合の乖離を抑制して記録材のカールおよび波打ちを効果的に軽減することができる。
【0019】
記録材の密閉冷却と水分付加を同時的に行うことで、記録材が高温・高湿のヤング率が低く、こわさが低下している状態で記録材を矯正することができるため、効果的にカール及び波打ちの軽減が可能となる。密閉空間において記録材に水分付加および冷却を行うため、記録材が密閉空間から解放された時には、記録材は冷却されて水分を蒸発しない状態となり、結露などの問題が生じず、搬送性や積載性が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る記録材冷却加湿装置もしくは画像加熱システムを搭載した画像形成装置の一例(実施例1)の概略構成図である。
【図2】定着装置と記録材冷却加湿装置の部分の概略図である。
【図3】回転部材としてのベルトの層構成模型図である。
【図4】記録材(シート)の冷却加湿プロセスに関するフローチャートである。
【図5】制御系統のブロック図である。
【図6】シート坪量に対する水分蒸発量を表したグラフである。
【図7】定着装置通過前のシート水分量に対する定着装置通過後のシート水分量を表したグラフである。
【図8】噴霧水分量の算出法を表したグラフである。
【図9】実施例2における定着装置と記録材冷却加湿装置の部分の概略図である。
【図10】実施例2におけるベルトへの水分噴霧機構の概略構成図である。
【図11】実施例2における冷却加湿プロセスのフローチャートである。
【図12】実施例3におけるベルトへの水分噴霧機構の概略構成図である。
【図13】実施例3における冷却加湿プロセスのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[実施例1]
(1)画像形成装置例
図1は本発明に係る記録材冷却加湿装置もしくは画像加熱システムを搭載した画像形成装置の一例の概略構成図である。この装置Aはタンデム方式−中間転写方式の電子写真フルカラー(天然色、多色)レーザビームプリンタである。パソコン等のホスト装置Dから制御回路部(制御手段)Cに入力する画像信号に基づいて記録材Sに4色フルカラー画像を形成することができる。
【0022】
制御回路部Cは各種の操作キーや表示器などを含む操作部(コントロールパネル)Bやホスト装置Dとの間で各種の電気的情報の授受をする。そして、装置A内の各種機器の動作を監視及び制御し、装置Aの画像形成動作を所定の制御プログラムや参照テーブルに従って統括的に制御する。記録材Sは現像剤像を形成することができるシート状の記録媒体であり、普通紙、光沢紙、封筒、はがき、ラベル、OHPシートなどである。
【0023】
装置A内には、図面上、左側から右側に水平方向に順に第1乃至第4の画像形成部U(UY,UM,UC,UK)が直列に配置されており、並列処理により各色の現像剤像を形成する。各画像形成部Uはそれぞれ現像装置に収容させた現像剤(以下、トナーと記す)の色が本実施例においてはイエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)と異なるだけで互いに同様の構成の電子写真画像形成機構である。
【0024】
各画像形成部UY,UM,UC,UKの構成及び動作は共通である部分が多い。そこで、以下の説明においては、特に区別を要しない場合は、いずれかの色用に設けられた要素であることを示すために符号に与えた添え字Y,M,C,Kは省略して総括的に説明する。
【0025】
各画像形成部Uは、それぞれ、表面に静電潜像を形成するための回転可能な像担持体としての感光体ドラム1を有する。ドラム1は矢印の反時計方向に所定の速度で回転駆動される。ドラム1の周囲には回転方向に沿って、一次帯電ローラ2,レーザスキャナユニット3,現像装置4,一次転写ローラ5,クリーニング装置6が配設されている。
【0026】
一次帯電ローラ2は回転するドラム1の表面を所定の極性・電位に一様に帯電する。ユニット3は、ホスト装置Dから制御回路部Cに入力した画像情報に応じて変調されたレーザビームLを出力してドラム1の帯電処理面を走査露光する。これによりドラム1の表面に画像露光に対応した静電潜像が形成される。その静電潜像が現像装置4によりトナー像として現像される。
【0027】
上記のような帯電、露光、現像の画像形成プロセスにより、第1の画像形成部UYのドラム1Yにはフルカラー画像のY色成分像に対応するY色トナー像が形成される。第2の画像形成部UMのドラム1Mにはフルカラー画像のM色成分像に対応するM色トナー像が形成される。第3の画像形成部UCのドラム1Cにはフルカラー画像のC色成分像に対応するC色トナー像が形成される。第4の画像形成部UKのドラム1Kにはフルカラー画像のK色成分像に対応するK色トナー像が形成される。
【0028】
第1乃至第4の画像形成部Uの下方に配設された中間転写ベルトユニット7は、循環して移動して各画像形成部Uのドラム1からトナー像の転写を順次に受ける中間転写体としての可撓性を有する無端状の中間転写ベルト8を有する。ベルト8は駆動ローラ9,二次転写対向ローラ10,テンションローラ11の3本のローラ間に張架されている。ベルト8はローラ9により矢印の時計方向にドラム1とほぼ同じ速度で回転駆動される。
【0029】
各画像形成部Uの一次転写ローラ5はベルト8を挟んでドラム1の下面に圧接している。ドラム1とベルト8との当接部が一次転写ニップ部である。ローラ5に所定のバイアスが印加されることで、ドラム1側のトナー像が一次転写ニップ部においてベルト8の表面に一次転写される。ドラム1側の残トナーはクリーニング装置6でドラム面から除去される。各画像形成部Uのドラム1に対するトナー像の形成は、各画像形成部Uのドラム1からベルト8へのトナー像の一次転写が順次に所定に重ね合わされた状態でなされるように制御される。
【0030】
かくして、第4の画像形成部UKの一次転写ニップ部を通ったベルト8の表面には、Y色+M色+C色+K色の4色重ね合わせのフルカラーの未定着トナー像が合成形成される。ローラ10にはベルト8を挟んで二次転写ローラ17が圧接している。ローラ17とベルト8との当接部が二次転写ニップ部である。ベルト8に形成されたトナー像は引き続くベルト8の移動で二次転写ニップ部に搬送される。
【0031】
一方、所定の制御タイミングにて、第1または第2の給紙カセット12,13の給紙ユニット14が駆動されてカセット12または13に積載収納されている記録材(以下、シートと記す)Sが一枚分離給送される。シートSは第1のシートパス15を通り、レジストローラ対16により二次転写ニップ部に対して所定の制御タイミングで導入される。これによりシートSは二次転写ニップ部を挟持搬送されるとともに、ローラ17に印加される所定のバイアスにより、シートSに対してベルト8側のトナー像が順次に一括して二次転写される。
【0032】
二次転写ニップ部を通ったシートSはベルト8から分離されて搬送ベルト装置19により定着装置(定着器:未定着画像を担持した記録材を加熱して画像定着する画像加熱部)20に導入される。ベルト8側の残トナーはローラ11のベルト懸回部に配設されているクリーニング装置18でベルト面から除去される。シートSは定着装置20により加熱加圧される。これにより未定着トナー像が固着画像としてシート面に熱圧定着される。
【0033】
定着装置20を出たシートSは定着装置20に隣接して配設された記録材冷却加湿装置(冷却加湿部)21に導入されて冷却および加湿処理を受ける。装置20と装置21については次の(2)項と(3)項で詳述する。
【0034】
装置21を出たシートSは片面画像形成モードが選択されている場合には、フラッパ22の切換え制御により第2のシートパス23側に進路案内されて排出ローラ24により機外の排出トレイ25上に排出される。
【0035】
両面画像形成モードが選択されている場合には、装置21を出た第1面側画像形成済みのシートSがフラッパ22の切換え制御により第3のシートパス26側に導入される。さらにスイッチバックシートパス27内に入り、次いで該シートパス27から引き出し搬送されてフラッパ28の切換え制御により再搬送シートパス29に誘導される。そして、該シートパス29から第1のシートパス15に戻されて、レジストローラ対16により二次転写ニップ部に対して表裏反転状態で所定のタイミングで再導入される。
【0036】
これにより、シートSの第2面側に対して、ベルト8上のトナー像の二次転写がなされる。二次転写ニップ部にて第2面に対するトナー像の二次転写を受けたシートSはベルト8から分離されて定着装置20と冷却・加湿装置21へ再導入され、画像の定着処理とシートSの冷却および加湿処理を受ける。そして、第2のシートパス23を通って両面画像形成物としてトレイ25に排出される。
【0037】
モノクロなどモノカラーモードは指定された色の画像形成部が画像形成動作することでなされる。他の画像形成部はドラムの回転はなされるが画像形成動作はなされない。
【0038】
なお、各色の画像形成部の配列順序は上記実施例のY色→M色→C色→K色に限られるものではなく任意の色順とすることができる。また、フルカラー画像形成装置において画像形成部の数は上記実施例の4つに限られるものではない。画像形成装置は画像形成部が一つのモノクロなどの単色画像形成装置であってもよい。
【0039】
(2)定着装置20
図2は定着装置20と記録材冷却加湿装置21の部分の概略図である。定着装置20は本実施例においては熱ローラ方式の装置であり、上下に並行に配列して圧接させた定着ローラ23と加圧ローラ24を有する。
【0040】
定着ローラ23はシートSの未定着トナー像(未定着画像)を担持した面に接触する熱ローラとして、ハロゲンヒータ等の内蔵熱源25により内側から加熱されて表面温度が温調制御系(不図示)により所定の定着温度に維持される中空ローラである。加圧ローラ24は耐熱ゴム層を有する弾性ローラであり、定着ローラ23との圧接でシート搬送方向(記録材搬送方向)aにおいて所定幅の定着ニップ部N1を形成する。
【0041】
定着ローラ23は定着モータ(不図示)により矢印の時計方向に所定のプロセススピード(シート搬送速度)に対応した速度で回転駆動される。加圧ローラ24はニップ部N1における定着ローラ23との摩擦力で定着ローラ23の回転に従動して矢印の反時計方向に回転する。定着ローラ23が回転駆動され、そして熱源25により加熱されて表面温度が所定の定着温度に温調維持された状態において、画像形成機構部側から上面に未定着トナー像を担持したシートSが定着装置20に送り込まれて定着ニップ部Nで挟持搬送される。
【0042】
これによりシートSがニップ部N1で加熱加圧されてシート表面の未定着トナー像が固着画像として熱圧定着される。加圧ローラ24も熱源により所定の表面温度に加熱する装置構成にすることもできる。
【0043】
ここで、本実施例の画像形成装置Aにおいて大小各種幅サイズのシートSの通紙はシート幅中心を基線とする中央基準搬送でなされる。シート幅はシート搬送方向に直交する方向のシート寸法である。また、装置を構成する回転ベルトに関してベルト幅とはベルト回転方向に直交する方向のベルト寸法である。
【0044】
(3)記録材冷却加湿装置21
装置21は定着装置20よりもシート搬送方向aの下流側(記録材搬送方向下流側)で定着装置20のシート出口部に近接させて配設されている。定着装置20では熱をトナー及びシートに付加するので、シート内部の水分が定着ニップ部N及び定着ニップ部通過後に蒸発する。装置21は定着装置20を出た直後のシートSを冷却する同時に加湿する装置であり、定着後のシートSのカール及び波打ちを効果的に軽減することが可能となる。
【0045】
本実施例における装置21は、定着装置20を出たシートSを挟持搬送するニップ部N2を形成する上側の第1の冷却加湿ユニット21Aと下側の第2の冷却加湿ユニット21Bとを有する。ユニット21Aと21Bはニップ部N2を折り線として互いにほぼ対称的な機構構造としてある。
【0046】
ユニット21Aと21Bは、それぞれ、回転部材としての可撓性を有する無端状のベルト部材31a,31bを有する。ベルト31a,31bのベルト幅は装置Aに対するシートSの最大通紙幅よりも大きい。本実施例におけるベルト31a,31bは図3の層構成模型図のように、2層構造で、基層31a−1,31b−1と、表面層31a−2,31b−2との積層体ベルトである。
【0047】
基層31a−1,31b−1はシートSをニップ部N2内で密封冷却するための密閉層であり、PIフィルム(ポリイミド樹脂層)など優れた熱伝導性を有し、かつ微細な空孔の少ない材料層である。表面層31a−2,31b−2は水分保持層であり、吸水して水分を保持することが可能なスポンジや不織布などからなる多孔質の材料層(スポンジ層)である。水分保持層は密閉層のシートSとの対向面側に形成されている。
【0048】
また、ユニット21Aと21Bは、それぞれ、ベルト31a,31bを側面から見て横にほぼ長四角形状に懸回して支持する支持部材としての4本の張架ローラ32a〜35a,32b〜35bを有する。また、それぞれ、ベルト31a,31bに対して表面から押し付けられてベルト31a,31bに張力を付加するテンションローラ(テンション付加部材)36a,36bを有する。
【0049】
また、ユニット21Aと21Bは、それぞれ、ベルト31a,31bの内側に配置された、ベルト31a,31bを冷却するための冷却手段としての冷却平板49a,49bを有する。冷却平板49a,49bはベルト31a,31bから奪熱した熱を移動させる熱移動手段としてのヒートシンク37a,37bを有する。熱移動手段はヒートパイプとすることもできる。その他の部材にすることもできる。
【0050】
また、ユニット21Aと21Bは、それぞれ、ベルト31a,31bのニップ部N2側とは反対側においてベルト31a,31bの外面を押圧して水分保持層31a−2,31b−2を圧迫して水分を押し出す押付部材としての押付ローラ38a,38bを有する。また、ローラ38a,38bよりもベルト回転方向上流側(回転部材回転方向上流側)に配置されていてローラ38a,38bで水分保持層31a−2,31b−2から押し出された水分を回収する水分回収部材としての多孔質スポンジローラ39a,39bを有する。
【0051】
また、ユニット21Aと21Bは、それぞれ、ベルト31a,31bに水分(加湿用の水溶液)を付加する水分付加手段としてベルト31a,31bの外面に水分を噴霧するための噴霧ノズル(噴霧器)39a,39bを有する。ノズル39a,39bは、それぞれ、ベルト31a,31bのニップ部N2側とは反対側においてベルト31a,31bの外面に所定の距離をあけて対向させて固定器具(不図示)を用いて定置配設されている。そして、それぞれ、その位置においてベルト31a,31bの外面に対して水分を噴霧する。
【0052】
ノズル39a,39bはベルト31a,31bのベルト幅方向の全域に渡って均一に水分を噴霧することができる単一のモノノズル構成にすることもできるし、ベルト幅方向に間隔をあけて複数個配設されたマルチノズル構成にすることもできる。また、水分付加手段はウォータージェット機構とすることもできる。
【0053】
また、ユニット21Aと21Bは、それらのノズル39a,39bに圧縮空気を供給するための共通のコンプレッサ40を有する。また、それぞれ、ノズル39a,39bに水分を供給するための水タンク41a,41bを有する。また、それぞれ、ノズル39a,39bに対して、コンプレッサ40からの圧縮空気を、タンク41a,41bからの水分を供給するためのチューブ(配管)42a,42bを有する。
【0054】
チューブ42a,42bには、それぞれ、ノズル39a,39bに対する圧縮空気と水分の供給の開閉を行うバルブ43a,44a、43b,44bが配設されている。45はコンプレッサ40の開閉を行うメインバルブである。バルブ43a,44a、43b,44b、45は、それぞれ、制御回路部Cで制御されるドライバー46a,47a、46b,47b、48により開閉制御される。
【0055】
ユニット21Aと21Bにおいて、ローラ33aと33b、およびローラ34aと34bはそれぞれベルト31a,31bを挟んで所定の押圧力で当接している。ユニット21Aにおいてベルト31aのローラ33aと34aの間のベルト部分の内面とヒートシンク37aの冷却平板49aとがほぼ全面的に接している。ユニット21Bにおいてベルト31bのローラ33bと34bの間のベルト部分の内面とヒートシンク37bの冷却平板49bとがほぼ全面的に接している。そして、冷却平板49aと49bとがベルト31a,31bを挟んで所定の押圧力で当接している。
【0056】
これにより、ユニット21Aにおけるローラ33aと34aの間のベルト部分と、ユニット21Bにおけるローラ33bと34bの間のベルト部分と、が所定の押圧力で腹当てに密着してシート搬送方向aにおいて幅広のニップ部N2が形成されている。
【0057】
ユニット21Aにおけるベルト31aはローラ32aを駆動ローラとし、このローラ32aが装置モータ(不図示)により駆動されることで矢印の時計方向に所定のプロセススピードに対応した速度で回転駆動される。ユニット21Bにおけるベルト31bはニップ部N2におけるベルト31aとの摩擦力でベルト31aの回転に従動して矢印の反時計方向に回転する。ベルト31aと31bはニップ部N2においてそれぞれ内面がヒートシンク37aの冷却平板49aの面とヒートシンク37bの冷却平板49bの面に密着して摺動移動する。これによりベルト31aと31bとがニップ部N2において冷却される。
【0058】
定着装置20を通過したシートSは搬送ガイド50に案内されて冷却加湿装置21に導入され、ベルト31a,31bで形成されるニップ部N2に進入して挟持搬送される。シートSはその挟持搬送過程で密閉されたニップ部N2内で、ヒートシンク37a,37bで冷却されるベルト31a,31bにより冷却される。ベルト31a,31bは、シートSがニップ部N2に挿入されたと同時に冷却が開始されるように、ベルト31a,31bの密着が始まる位置と、ヒートシンク37a,37bによる冷却が開始する位置をほぼ一致させている。
【0059】
また、ベルト31a,31bの表面層である水分保持層31a−2,31b−2にはノズル39a,39bで噴霧された水分が含まれている。そして、シートSは密閉されたニップ部N2内をベルト31a,31bの水分保持層31a−2,31b−2に接触したまま搬送されるので、トナーが載ったシート材や、表面コーティングされて水分を吸収しにくいシート材にも水分を吸収させることができる。ニップ部N2におけるシートSとベルト31a,31bとの接触時は、水分保持層31a−2,31b−2がシートSに直接接触し、その上から密閉層31a−1,31b−1が覆いかぶさる様に密着する。
【0060】
そして、シートSはニップ部N2を出るまでには十分に冷却されると共に、十分量の水分を吸収させた状態にすることができる。これにより、定着後のシートSのカール及び波打ちを効果的に軽減することが可能となる。
【0061】
押付ローラ38a,38b、及び多孔質スポンジローラ39a,39bは、ベルト回転方向に関して、ニップ部N2のシート出口部よりも下流側で、ノズル39a,39bよりも上流側に配設されている。押付ローラ38a,38bは水分を吸収しない金属などからなるローラであり、ベルト31a,31bに対する押付力は、例えば1kgf程度としている。これにより、ベルト31a,31bの水分保持層31a−2,31b−2を押しつぶして変形させることで、水分保持層31a−2,31b−2に保持された残留水分を押し出す。
【0062】
スポンジローラ39a,39bは水分を吸収するローラであり、押付ローラ38a,38bの近傍でかつ押付ローラ38a,38bよりもベルト回転方向上流側に配設されている。ベルト31a,31bの水分保持層31a−2,31b−2に残留した水分は押付ローラ38a,38bにより水分保持層31a−2,31b−2から押し出されてスポンジローラ39a,39bによって回収される。スポンジローラ39a,39bは、ベルト31a,31bと押付ローラ38a,38bとの圧接ニップ付近に押し出された不要な水分に接触して水分を吸収するため、押付ローラ38a,38bに直接接触する必要はない。
【0063】
(4)シートSの搬送プロセスおよび水分噴霧量の制御システム
図4はシートSの冷却加湿プロセスに関するフローチャートである。図5は制御系統のブロック図である。定着装置20よりもシート搬送方向上流側(記録材搬送方向上流側)のシートパスにはシート搬送方向に沿って、所定の間隔をあけて順番に、第1のシート検知センサ61、水分量計62、第2のシート検知センサ63が配設されている。また、画像形成装置本体には環境センサ64が配設されている。
【0064】
1)画像形成装置Aに通紙して使用するシートSのサイズや坪量は操作部B或いは外部ホスト装置Dによりユーザ操作にて設定されて、その設定情報が制御回路部Cに入力されて記憶されている(ステップ1)。
【0065】
2)環境の温度湿度が環境センサ64によりリアルタイムで検知され、その検知情報が制御回路部Cに入力されている記憶される(ステップ2)。
【0066】
3)この状態において画像形成ジョブ要求信号が制御回路部Cに入力すると(ステップ3)、制御回路部Cは装置Aを画像形成動作させる。
【0067】
4)二次転写ニップ部でトナー像の二次転写を受けた1枚目のシートSが搬送ベルト装置19により定着装置20に搬送される過程において第1のセンサ61によりそのシート検知(シート検知Sの先端検知)がなされる(ステップ4)。
【0068】
5)そのシート検知信号が制御回路部Cに入力する。制御回路部Cはそのシート検知信号をトリガとして水分量計62を作動させている。水分量計62は、シートS上に赤外光を照射し、シートSから反射する赤外光のエネルギーを検出することで、シートSの水分量を検知する。これにより水分量計62の位置を通過していくシートSの水分量、即ち定着装置20に導入される前状態のシートSの水分量が検知される(ステップ5)。
【0069】
6)その検知した水分量に関する情報が制御回路部Cに入力する。制御回路部Cは、その検知した水分量に関する情報に基づいて、予めメモリされている参照テーブル1,2から定着装置20による画像加熱定着後のシートSの水分量を算出する(ステップ6)。
【0070】
図6は、定着装置通過前に約5%の水分量を有するシートSが定着装置通過直後に損失した水分量を示したテーブル1である。このテーブル1とステップ1においてユーザが設定したシートSの坪量から基本となるシートSの水分蒸発量を算出する。また、同じ坪量のシートであっても、定着装置20に導入する前状態における水分量によって必要な水分量が異なる。図7は、例として坪量80gsmのシートSの定着装置通過前の水分量に対する定着装置通過後の水分量を示すテーブル2を表す。
【0071】
テーブル1とテーブル2を利用して、[検知したある坪量のシートSの定着装置通過前水分量から算出される定着装置通過後の水分量]を算出する。また環境センサ64の値から、[ある坪量のシートSの放置環境における水分量]を算出する。
【0072】
7)ノズル39a,39bからベルト31a,31bに供給する水分量は次ぎのように算出される。即ち、図8に示すように、[噴霧水分量]=[ある坪量のシートSの放置環境における水分量]−[検知したある坪量のシートSの定着装置通過前水分量から算出される定着装置通過後の水分量]とする(ステップ7)。
【0073】
8)噴霧量が決定したら、制御回路部Cは噴霧器39a,39bのバルブ43a,44a、43b,44bの開閉量を変える。もしくはバルブ45によりコンプレッサ40の圧力を変えて、ノズル39a,39bからベルト31a,31bに噴霧する水分の流量を調整する(ステップ8)。
【0074】
9)制御回路部Cは、定着装置20に向って搬送されるシートSの先端が第1のセンサ41で検知されてから第2のセンサ43で検知されるまでの間において、上記ステップ5から8までの演算と制御を行う。
【0075】
そして、制御回路部Cは、第2のセンサ43によりシートSの先端が検知された時(ステップ9)、その検知時点からt1秒後にノズル39a,39bからベルト31a,31bへの水分噴霧を開始する(ステップ10)。
【0076】
噴霧開始タイミングt1秒は、第2のセンサ43からニップ部N2のシート入口部に至るシート搬送距離およびシートSの搬送速度によって決定する値である。シートSの先端が定着装置20を通って冷却加湿装置21のニップ部Nに進入する際に、シートSの先端が接触するベルト31a,31bに水分が噴霧されている状態となる時間とする。
【0077】
10)ノズル39a,39bからベルト31a,31bへの水分噴霧の停止は、第2のセンサ43によりシートSの後端が検知された時(ステップ11)、その検知時点からt2秒後に停止する(ステップ12)。
【0078】
噴霧停止タイミングt2秒も第2のセンサ43からニップ部N2のシート入口部に至るシート搬送距離およびシートSの搬送速度によって決定する値である。シートSの後端がニップ部N2に進入した位置以降、ベルト31a,31bに水分が噴霧されないようにする。
【0079】
11)ジョブがモノプリントである場合は、その1枚のシートSが排出されることでジョウブ終了となる(ステップ13,14)。
【0080】
12)マルチプリント(複数枚連続プリント)である場合は、最後のシートSに対する画像形成が終了するまでステップ4〜13が繰り返えされてシート毎に冷却およびベルト31a,31bに対する水分噴霧が実行される。そして、最後のシートSが排出されることでジョウブ終了となる(ステップ14)。即ち、複数枚のジョブが要求されて、次のシートSをセンサ61により検知した場合、次のシートSの水分量計62による水分量検知のプロセスに戻り、ジョブが終了して次のシートSを検知しなくなるまで同一の動作を繰り返す。
【0081】
上記のように、定着装置20を通過したシートSは引き続いて冷却加湿装置21を通過する。定着装置20を通過して温度が上がったシートSは、シートSの先端が冷却加湿装置21のニップ部N2内に進入すると同時に順次、ベルト31a,31bの水分保持層31a−2,32b−2から適切な水分を供給され同時に冷却される。
【0082】
水分保持層31a−2,32b−2に適切な水分を吸収させることで、水分を均一に付加することができる。また、水分保持層31a−2,32b−2の外側(シートSとの接触面側とは反対面側)に密閉層31a−1,32b−1を設けることで、水分保持層31a−2,32b−2に蓄えられた水分がシートSの熱などにより蒸発することを防止することができる。シートSは冷却加湿装置21を排出後、ほぼ常温(例えば25〜30℃)となり、水分の変化はそれ以降ない。
【0083】
シートSへの水分付加が終了し、通紙されたシートSの幅サイズを超えた水分保持層31a−2,32b−2の部分(非通紙部領域部分)に保持された不要な水分は押付ローラ38a,38bにより押し出される。そして、多孔質スポンジローラ39a,39bにより回収される。これにより、ベルト31a,31bの、押付ローラ38a,38bより回転方向下流側への不要な水分の進入を低減することができる。
【0084】
低湿度環境から高湿度環境に積載されたシート束を移動した場合、全てのシート全体が高湿度環境になじむためには長時間を要する。したがって、積載されている全てのシートが高湿度になじむ前に画像形成装置に導入される場合、それぞれのシート毎に最適な水分噴霧量が異なる。本実施例のように、定着装置20に導入される前のシートSの水分量を計測する水分量計62を配置し、その計測値に基づいて1枚1枚のシートSの最適水分噴霧量を決定し、ベルト31a,31bに対する水分噴霧をする。これによりシート毎に最適な水分量を維持することができ、波打ちを軽減することができる。
【0085】
比較例として、本実施例の画像形成装置において、冷却加湿装置21を無しにして、例えば、6.0%の水分量を有するシートSを250枚通紙し、積載したところ、シートSの最大波打ち高さは1.8mmであった。
【0086】
これに対して、冷却加湿装置21を利用するが、ベルト31a,31bに対する水分付加はせずにシートSの冷却だけをする構成とした場合の最大波打ち高さは1.0mmとなり、44%低減させることができた。
【0087】
さらに、本実施例のように、ベルト31a,31bに水分を付加し、シートSを冷却すると同時に水分を付加することで、最大波打ち高さは0.6mmとなり、冷却加湿装置21を無しにした場合の最大波打ち高さに対して67%の低減効果を得られる。
【0088】
また、ベルト31a,31bに対する水分付加はせずにシートSの冷却だけをする構成とした場合、通紙したシートSの中央部の水分量は5.6%となる。例えば、積載したシートSをシートSの放置水分量が6.3%となる環境に約1日放置すると、シートSの端部から吸湿を行い、最大波打ち高さが2.1mmに増加する。
【0089】
本実施例に示すように、環境に応じて水分付加量を変化させることで(本例の場合、0.7%分水分を付加する)、経時変化による波打ちの顕著化を抑制することができる。
【0090】
以上説明したように、定着装置で加熱された状態のシートSの水分蒸発を効果的に防ぎ、また記録材繊維の水素結合の乖離を抑制してシートSのカールおよび波打ちを効果的に軽減することができる。
【0091】
また、定着装置を通過したシートに付加する水分の付加量を環境湿度およびシートの坪量によって変更することで、シート坪量に応じ最適な水分量を維持でき、放置環境や積載条件によらず適切なカールおよび波打ち軽減を実現できる。
【0092】
さらに、シートの密閉冷却と水分付加を同時に行うことで、シートが高温・高湿のヤング率が低く、こわさが低下している状態でシートを矯正することができるため、効果的にカール及び波打ちの軽減が可能となる。密閉空間においてシートに水分付加および冷却を行うため、シートが密閉空間から解放された時には、シートは冷却されて水分を蒸発しない状態となり、結露などの問題が生じず、搬送性や積載性が安定する。
【0093】
[実施例2]
本実施例2は、水分付加手段39a,39bによるベルト31a,31bの水分付加領域を通紙されるシートSの幅サイズに応じて限定するように移動制御される開閉シャッタ機構70a,70bを有することを特徴とする。
【0094】
図9乃至図11により本実施例2の装置構成を説明する。図9は実施例1の図2と同様に定着装置20と冷却加湿装置21の部分の概略図である。図2との相違は、図2の冷却加湿装置21における押付ローラ38a,38b、及び多孔質スポンジローラ39a,39bに代えて、ノズル39a,39bとベルト31a,31bの間に開閉可能なシャッタ機構70a,70bを配設していることである。これ以外の画像形成装置Aの構成、定着装置20の構成、冷却加湿装置21の構成は実施例1と共通であるため再度の説明は省略する。
【0095】
上側の第1の冷却加湿ユニット21A側のシャッタ機構70aと下側の第2の冷却加湿ユニット21B側のシャッタ機構70bは対称な構造である。そして、同じように制御されて同じように動作するので、図10において、ユニット21A側のシャッタ機構70aを代表して説明する。
【0096】
シャッタ機構70aは、ノズル39bとベルト31aとの間においてベルト幅方向の両側で互いに中央基準で開閉動作可能な一方側と他方側の2枚のシャッタ板71,72を有する。この両シャッタ板71,72はそれぞれギアラック73,74を有し、それぞれ共通のピニオンギア75に対して当該ギア75を挟むように噛合している。ギア75は制御回路部Cで制御される正逆転モータ76により正転駆動または逆転駆動される。
【0097】
モータ76が正転駆動されることでシャッタ板71,72が互いに中央基準で閉じ方向に移動する。モータ76が逆転駆動されることでシャッタ板71,72が互いに中央基準で開き方向に移動する。これにより、シャッタ板71,72の開き幅(開閉量)をベルト31aの幅に対して中央基準で狭広調節することができる。
【0098】
制御回路部Cは装置に通紙されるシートSの幅サイズに応じて正逆転モータ76を制御してシャッタ板71,72の開き幅を変更する。図10の(a)はシート幅が比較的狭いシートの幅に合わせてシャッタ板71,72の開き幅が調節された状態、(b)はシート幅が比較的広いシートの幅に合わせてシャッタ板71,72の開き幅が調節された状態を示している。このようなシャッタ板71,72の開閉調節によって、ベルト31aの非通紙部領域(ベルト幅方向においてシート通紙部の外側のベルト部分)部分にはノズル39aからの噴霧水分がシャッタ板71,72で遮蔽されることで付加されない。
【0099】
上記のようなシャッタ板71,72の開閉調節はユニット21B側のシャッタ機構70bについても同様である。
【0100】
図11は本実施例2におけるシートSの冷却加湿プロセスに関するフローチャートである。実施例1の図4のフローチャートにおいてステップ3と4との間に、ステップ15と16を加入したものである。
【0101】
即ち、ステップ1でユーザが設定したシートSのサイズに応じてシャッタ71,72の開閉量を決定する。制御回路部Cは、プリントのジョブが開始されたら、前回行われたジョブからシートSのサイズ変更があった場合、決定したシャッタ71,72の開閉位置にギアラック75を駆動させてシャッタ71,72を開閉する。付加する水分量の算出法およびベルト31a,31bに水分を付加するプロセス、冷却プロセスは、実施例1と共通であるため省略する。
【0102】
本実施例では、ベルト31a,31bに水分を付加する範囲を通紙されるシートSの幅に合わせてあらかじめ限定することで、回転ベルト31a,31bに不要な水分が付加されることを抑制することができる。
【0103】
[実施例3]
本実施例3は、水分付加手段39a,39bによるベルト31a,31bの水分付加領域を通紙されるシートSの幅サイズに応じて限定するように水分付加手段をベルトの幅方向に移動する水分付加手段移動機構80a,80bを有することを特徴とする。
【0104】
図11と図12により本実施例3の装置構成を説明する。本実施例は実施例2におけるシャッタ機構70a,70bの代わりに、ノズル39a,39bを31a,31bの幅方向に通紙するシートSの幅サイズに応じた幅範囲で往復移動駆動することが可能なノズル移動機構80a,80bを配設している。これ以外の画像形成装置Aの構成、定着装置20の構成、冷却加湿装置21の構成は実施例1,2と共通であるため再度の説明は省略する。
【0105】
上側の第1の冷却加湿ユニット21A側のノズル移動機構80aと下側の第2の冷却加湿ユニット21B側のノズル移動機構80bは対称な構造である。そして、同じように制御されて同じように動作するので、図12において、ユニット21A側のノズル移動機構80aを代表して説明する。
【0106】
ノズル移動機構80aは、軸線方向をベルト31aの幅方向にしてベルト面に並行に配列され、軸受け部材(不図示)により回転可能に支持されているリードスクリュ81aを有する。リードスクリュ81aにはスクリュの螺旋溝82aに係合していてスクリュ81aの正逆転駆動によりスクリュ81aの長手に沿って一端側または他端側に移動するブロック83aが配設されている。このブロック83aにノズル39aが支持されている。スクリュ81aの端部にはギア84aが固着されている。このギア84aに対して制御回路部Cで制御される正逆転モータ85a側のドライブギア86aが噛合している。
【0107】
モータ85aが正転駆動されることでスクリュ81aが正転してブロック83aがスクリュ81aに沿って一端側に移動する。即ち、ノズル39aがベルト31aの幅方向の一方側に移動する。モータ85aが逆転駆動されることでスクリュ81aが逆転してブロック83aがスクリュ81aに沿って他端側に移動する。即ち、ノズル39aがベルト31aの幅方向の他方側に移動する。本実施例において、ノズル39aのベルト31aの面に対する水分の噴霧範囲は実施例2の場合よりもかなり狭くしてある。
【0108】
制御回路部Cはベルト31aの幅方向における往復移動範囲が通紙するシートSの幅サイズに対応した範囲(ベルト31aの通紙部領域の幅範囲)となるようにモータ85aの正転駆動を制御する。図12の(a)はシート幅が比較的狭いシートの幅に合わせてノズル39aがベルト幅方向に往復移動制御されている状態、(b)はシート幅が比較的広いシートの幅に合わせてノズル39aがベルト幅方向に往復移動制御されている状態を示している。
【0109】
このように、ノズル39aがベルト31aの幅方向において通紙されるシートSの幅サイズに応じて水分を噴霧しながら往復することでベルト31aの所望の範囲にのみ水分を噴霧することができる。ノズル39aが往復する範囲を通紙するシートSの幅サイズに応じて変更することによって、ベルト31aの非通紙部領域には水分が付加されない。
【0110】
上記のようなノズル移動機構80aのノズル移動調節はユニット21B側のシャッタ機構70bについても同様である。
【0111】
図13は本実施例3におけるシートSの冷却加湿プロセスに関するフローチャートである。実施例1の図4のフローチャートにおいてステップ3と4との間に、ステップ17と18を加入したものである。
【0112】
即ち、ステップ1でユーザが設定したシートSのサイズに応じて噴霧ノズル39a,39bの往復移動範囲を決定する。プリントのジョブが開始されたら、前回行われたジョブからシートSのサイズ変更があった場合、ノズル39a,39bの往復移動範囲を決定した範囲に変更する。付加する水分量の算出法およびベルト31a,31bに水分を付加するプロセス、冷却プロセスは、実施例1と共通であるため省略する。
【0113】
本実施例では、ベルト31a,31bに水分を付加する範囲を通紙されるシートSの幅に合わせてあらかじめ限定することで、回転ベルト31a,31bに不要な水分が付加されることを抑制することができる。
【0114】
本実施例では、ノズル39a,39bの往復移動範囲によりベルト31a,31bに水分を付加する範囲を限定することで、ベルト31a,31bに不要な水分が付加されることを抑制することができる。
【0115】
トナーをシートに加熱加圧定着する電子写真方式の画像形成装置において、シートを加熱加圧することにより発生する波打ちを効果的に抑制し、印刷機と同等な成果物品位を得ることができる。
【0116】
[その他の装置構成]
1)画像加熱部としての画像加熱定着装置は実施例の熱ローラ方式に限られない。熱チャンバー方式、赤外線照射方式、電磁加熱方式など従来公知の各種構成の加熱方式の定着装置を使用することができる。
【0117】
2)また画像加熱部は画像加熱定着装置に限られない。記録材に定着された画像を加熱することにより画像の光沢を増大させる光沢増大装置(画像改質装置)であってもよい。
【0118】
3)記録材冷却加湿部の回転体はベルト体に限られない。ドラム体やローラ体とすることもできる。ベルト体と、ドラム体またはローラ体との組み合わせでニップ部を形成する構成とすることもできる。
【0119】
4)画像形成装置の画像形成部は電子写真方式に限られない。静電記録方式や磁気記録方式の画像形成部であってもよい。また、転写方式に限られず、記録材に対して直接方式で未定着画像を形成する構成のものであってもよい。
【符号の説明】
【0120】
20・・画像加熱部(定着装置)、S・・記録材、N2・・ニップ部、31a,31b・・回転部材、31a−1,31b−1・・密閉層、37a,37b・・冷却手段、39a,39b・・水分付加手段、21・・記録材冷却加湿装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録材冷却加湿装置、画像形成装置及び画像加熱システムに関する。記録材冷却加湿装置は、例えば電子写真装置において画像加熱定着装置を出た、画像を担持して加熱された状態の記録材を冷却すると共に水分または水溶液を付加して記録材の波打ちまたはカールを抑制する装置として有効である。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば電子写真方式を用いたプリンタ,複写機,ファクシミリ等の一般的な画像形成装置は、像担持体としての感光体ドラム上に形成された潜像を現像剤(トナー)により現像して可視画像化する。この可視画像(トナー像)を記録材(以下、シートと記す)に静電気力を用いて転写させる。次いで転写画像を熱により固着画像として定着させることによってシート上に画像が記録形成されるようになっている。
【0003】
定着装置としては、熱ローラ方式の定着装置を用いる例が多い。この定着装置は、ハロゲンヒータ等の内蔵熱源により加熱されて所定の温度に維持させた定着ローラと、これに圧接させた弾性を有する加圧ローラとの圧接ニップ部(定着ニップ部)に未定着トナー像を担持したシートを導入して挟持搬送する。これにより、シート表面の未定着トナー像を熱定着させるものである。この定着工程では熱をトナー及びシートに付加するので、シート内部の水分が圧接ニップ部および圧接ニップ後に蒸発する。
【0004】
シートの水分量変化とシートにかかるストレスでシートには波打ち及びカールが発生する。シートを繊維のレベルで見ると、シートは短い繊維どうしが絡み合って構成されており、繊維内部または繊維どうしの間には水分が含まれ、繊維と水は水素結合を生じる。定着工程においてシートに熱が加わると、シート内部の水分が蒸発し繊維どうしで水素結合が生じ変形する。シートを放置していると環境から吸湿し、繊維どうしの水素結合が再び切り離される。だが、一部の繊維間には水分が入っていかず、それにより変形が維持される。
【0005】
変形のパターンはシートの表裏の伸縮差で変形するもの(カール)とシートの中央部と端部での伸縮差で起きるものがあり、これらの変形によりシートに波打ちまたはカールが生じる。
【0006】
この問題に対する解決策が特許文献1、2に開示されている。特許文献1は、効率良く、かつカール癖がつかないように定着装置後のシートを冷却する装置およびシステムである。一対の冷却部に設けた密着したベルトの間にシートを挟みこんだ。また、ベルトの内側には、金属部材を配置し、ベルトがシートから受けた熱を迅速に吸収し、放熱する。また、このシートを挟み込んだベルトを平面搬送する。定着装置を通過したシートを迅速に密着冷却することで、シートの水分蒸発そのものを防止し、波打ちおよびカールが軽減する。
【0007】
特許文献2は、静電複写又はプリントの定着工程で、シートから水分が失われることによるカール及びエッジの波打ちを防ぐ静電複写装置で使用される装置及びシステムである。シートの片面又は両面に制御された量の水分を付加する装置であって、シートの両面に配置され、液体を貯蔵するためのリザーバを有するウォータージェットと、ほぼ円筒形外表面を有する一対の圧力ロールとを備える。円筒形外表面の間にニップを定めるようにこの一対の圧力ロールはその軸に沿って互いに位置合わせされている。
【0008】
この装置は、更に、シートが円筒形外表面の間に形成されるニップに入る前に、通過する各シートの選択された部分にウォータージェットから付加される水分を制御する制御装置も備える。
【0009】
シートに水分を付加することにより、定着工程での熱と圧力により奪われた水分を補充し、波打ち及びカールが良化する。シートの水分が増えるとシート自体のヤング率が低下しこわさが小さくなり波打ちが軽減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−112102号公報
【特許文献2】特開平11−167317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1では、定着装置を通過するとシートの水分が減少しカール及び波打ちが起こる現象に対して、定着装置後のシートを急速に冷却し、水分の蒸発を抑えることで繊維どうしの水素結合の乖離を抑制し、カールおよび波打ちを軽減することができる。
【0012】
しかし、高湿度の環境などにシートを積載放置した場合、外気に面しているシート端部はさらに水分を吸収しシートが膨張する。一方、外気に面していないシートの内部はシートの端部に比べ水分の吸収量が少なく、シート端部に比べ、シートの膨張量が小さくなる。その結果、相対的にシート端部と内部に水分量によるシートの膨張量の差が生じ、波打ちが顕著化してしまう。
【0013】
一方、特許文献2では、定着装置を通過するとシートの水分が減少しカール及び波打ちが起こる現象に対して、定着装置通過後に水分を付加することで失った水分を補充しカール及び波打ちを低減させたとしている。しかし、本手法では、加熱によりシートが一度大量に水分を失い、水素結合の乖離が起きてしまうため、水分を付加したとしても十分には元に戻らない水素結合の乖離量が多く存在してしまう。また、シートを水分付加と同時に冷却する機構を持たないため、高温で水分を付加されたシートは水分の蒸発を続け、結露などにより搬送性や積載性が不安定になってしまう。
【0014】
本発明は、かかる従来技術の課題を解決するためになされたものである。その目的とするところは、画像加熱部で加熱された状態の記録材の水分蒸発を効果的に防ぎ、また記録材繊維の水素結合の乖離を抑制して記録材のカールおよび波打ちを効果的に軽減することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するための本発明に係る記録材冷却加湿装置の代表的な構成は、画像加熱部で加熱された記録材をニップ部において密封冷却する密閉層を有する回転可能な回転部材と、前記回転部材を冷却する冷却手段と、前記回転部材に水分を付加する水分付加手段と、を備えることを特徴とする。
【0016】
また、上記の目的を達成するための本発明に係る画像形成装置の代表的な構成は、記録材に未定着画像を形成する画像形成部と、前記未定着画像を担持した記録材を加熱して画像定着する画像加熱部と、前記画像加熱部から搬送された加熱された状態の記録材を冷却すると共に加湿する冷却加湿部と、を有する画像形成装置であって、前記冷却加湿部が前記記録材冷却加湿装置であることを特徴とする。
【0017】
また、上記の目的を達成するための本発明に係る画像加熱システムの代表的な構成は、画像を担持した記録材を加熱する画像加熱部と、前記画像加熱部から搬送された加熱された状態の記録材を冷却すると共に加湿する冷却加湿部であって、前記記録材をニップ部において密封冷却する密閉層を有する回転可能な回転部材と、前記回転部材を冷却する冷却手段と、前記回転部材に水分を付加する水分付加手段と、を備える冷却加湿部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の記録材冷却加湿装置、画像形成装置及び画像加熱システムによれば、画像加熱部で加熱された状態の記録材の水分蒸発を効果的に防ぎ、また記録材繊維の水素結合の乖離を抑制して記録材のカールおよび波打ちを効果的に軽減することができる。
【0019】
記録材の密閉冷却と水分付加を同時的に行うことで、記録材が高温・高湿のヤング率が低く、こわさが低下している状態で記録材を矯正することができるため、効果的にカール及び波打ちの軽減が可能となる。密閉空間において記録材に水分付加および冷却を行うため、記録材が密閉空間から解放された時には、記録材は冷却されて水分を蒸発しない状態となり、結露などの問題が生じず、搬送性や積載性が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る記録材冷却加湿装置もしくは画像加熱システムを搭載した画像形成装置の一例(実施例1)の概略構成図である。
【図2】定着装置と記録材冷却加湿装置の部分の概略図である。
【図3】回転部材としてのベルトの層構成模型図である。
【図4】記録材(シート)の冷却加湿プロセスに関するフローチャートである。
【図5】制御系統のブロック図である。
【図6】シート坪量に対する水分蒸発量を表したグラフである。
【図7】定着装置通過前のシート水分量に対する定着装置通過後のシート水分量を表したグラフである。
【図8】噴霧水分量の算出法を表したグラフである。
【図9】実施例2における定着装置と記録材冷却加湿装置の部分の概略図である。
【図10】実施例2におけるベルトへの水分噴霧機構の概略構成図である。
【図11】実施例2における冷却加湿プロセスのフローチャートである。
【図12】実施例3におけるベルトへの水分噴霧機構の概略構成図である。
【図13】実施例3における冷却加湿プロセスのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[実施例1]
(1)画像形成装置例
図1は本発明に係る記録材冷却加湿装置もしくは画像加熱システムを搭載した画像形成装置の一例の概略構成図である。この装置Aはタンデム方式−中間転写方式の電子写真フルカラー(天然色、多色)レーザビームプリンタである。パソコン等のホスト装置Dから制御回路部(制御手段)Cに入力する画像信号に基づいて記録材Sに4色フルカラー画像を形成することができる。
【0022】
制御回路部Cは各種の操作キーや表示器などを含む操作部(コントロールパネル)Bやホスト装置Dとの間で各種の電気的情報の授受をする。そして、装置A内の各種機器の動作を監視及び制御し、装置Aの画像形成動作を所定の制御プログラムや参照テーブルに従って統括的に制御する。記録材Sは現像剤像を形成することができるシート状の記録媒体であり、普通紙、光沢紙、封筒、はがき、ラベル、OHPシートなどである。
【0023】
装置A内には、図面上、左側から右側に水平方向に順に第1乃至第4の画像形成部U(UY,UM,UC,UK)が直列に配置されており、並列処理により各色の現像剤像を形成する。各画像形成部Uはそれぞれ現像装置に収容させた現像剤(以下、トナーと記す)の色が本実施例においてはイエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)と異なるだけで互いに同様の構成の電子写真画像形成機構である。
【0024】
各画像形成部UY,UM,UC,UKの構成及び動作は共通である部分が多い。そこで、以下の説明においては、特に区別を要しない場合は、いずれかの色用に設けられた要素であることを示すために符号に与えた添え字Y,M,C,Kは省略して総括的に説明する。
【0025】
各画像形成部Uは、それぞれ、表面に静電潜像を形成するための回転可能な像担持体としての感光体ドラム1を有する。ドラム1は矢印の反時計方向に所定の速度で回転駆動される。ドラム1の周囲には回転方向に沿って、一次帯電ローラ2,レーザスキャナユニット3,現像装置4,一次転写ローラ5,クリーニング装置6が配設されている。
【0026】
一次帯電ローラ2は回転するドラム1の表面を所定の極性・電位に一様に帯電する。ユニット3は、ホスト装置Dから制御回路部Cに入力した画像情報に応じて変調されたレーザビームLを出力してドラム1の帯電処理面を走査露光する。これによりドラム1の表面に画像露光に対応した静電潜像が形成される。その静電潜像が現像装置4によりトナー像として現像される。
【0027】
上記のような帯電、露光、現像の画像形成プロセスにより、第1の画像形成部UYのドラム1Yにはフルカラー画像のY色成分像に対応するY色トナー像が形成される。第2の画像形成部UMのドラム1Mにはフルカラー画像のM色成分像に対応するM色トナー像が形成される。第3の画像形成部UCのドラム1Cにはフルカラー画像のC色成分像に対応するC色トナー像が形成される。第4の画像形成部UKのドラム1Kにはフルカラー画像のK色成分像に対応するK色トナー像が形成される。
【0028】
第1乃至第4の画像形成部Uの下方に配設された中間転写ベルトユニット7は、循環して移動して各画像形成部Uのドラム1からトナー像の転写を順次に受ける中間転写体としての可撓性を有する無端状の中間転写ベルト8を有する。ベルト8は駆動ローラ9,二次転写対向ローラ10,テンションローラ11の3本のローラ間に張架されている。ベルト8はローラ9により矢印の時計方向にドラム1とほぼ同じ速度で回転駆動される。
【0029】
各画像形成部Uの一次転写ローラ5はベルト8を挟んでドラム1の下面に圧接している。ドラム1とベルト8との当接部が一次転写ニップ部である。ローラ5に所定のバイアスが印加されることで、ドラム1側のトナー像が一次転写ニップ部においてベルト8の表面に一次転写される。ドラム1側の残トナーはクリーニング装置6でドラム面から除去される。各画像形成部Uのドラム1に対するトナー像の形成は、各画像形成部Uのドラム1からベルト8へのトナー像の一次転写が順次に所定に重ね合わされた状態でなされるように制御される。
【0030】
かくして、第4の画像形成部UKの一次転写ニップ部を通ったベルト8の表面には、Y色+M色+C色+K色の4色重ね合わせのフルカラーの未定着トナー像が合成形成される。ローラ10にはベルト8を挟んで二次転写ローラ17が圧接している。ローラ17とベルト8との当接部が二次転写ニップ部である。ベルト8に形成されたトナー像は引き続くベルト8の移動で二次転写ニップ部に搬送される。
【0031】
一方、所定の制御タイミングにて、第1または第2の給紙カセット12,13の給紙ユニット14が駆動されてカセット12または13に積載収納されている記録材(以下、シートと記す)Sが一枚分離給送される。シートSは第1のシートパス15を通り、レジストローラ対16により二次転写ニップ部に対して所定の制御タイミングで導入される。これによりシートSは二次転写ニップ部を挟持搬送されるとともに、ローラ17に印加される所定のバイアスにより、シートSに対してベルト8側のトナー像が順次に一括して二次転写される。
【0032】
二次転写ニップ部を通ったシートSはベルト8から分離されて搬送ベルト装置19により定着装置(定着器:未定着画像を担持した記録材を加熱して画像定着する画像加熱部)20に導入される。ベルト8側の残トナーはローラ11のベルト懸回部に配設されているクリーニング装置18でベルト面から除去される。シートSは定着装置20により加熱加圧される。これにより未定着トナー像が固着画像としてシート面に熱圧定着される。
【0033】
定着装置20を出たシートSは定着装置20に隣接して配設された記録材冷却加湿装置(冷却加湿部)21に導入されて冷却および加湿処理を受ける。装置20と装置21については次の(2)項と(3)項で詳述する。
【0034】
装置21を出たシートSは片面画像形成モードが選択されている場合には、フラッパ22の切換え制御により第2のシートパス23側に進路案内されて排出ローラ24により機外の排出トレイ25上に排出される。
【0035】
両面画像形成モードが選択されている場合には、装置21を出た第1面側画像形成済みのシートSがフラッパ22の切換え制御により第3のシートパス26側に導入される。さらにスイッチバックシートパス27内に入り、次いで該シートパス27から引き出し搬送されてフラッパ28の切換え制御により再搬送シートパス29に誘導される。そして、該シートパス29から第1のシートパス15に戻されて、レジストローラ対16により二次転写ニップ部に対して表裏反転状態で所定のタイミングで再導入される。
【0036】
これにより、シートSの第2面側に対して、ベルト8上のトナー像の二次転写がなされる。二次転写ニップ部にて第2面に対するトナー像の二次転写を受けたシートSはベルト8から分離されて定着装置20と冷却・加湿装置21へ再導入され、画像の定着処理とシートSの冷却および加湿処理を受ける。そして、第2のシートパス23を通って両面画像形成物としてトレイ25に排出される。
【0037】
モノクロなどモノカラーモードは指定された色の画像形成部が画像形成動作することでなされる。他の画像形成部はドラムの回転はなされるが画像形成動作はなされない。
【0038】
なお、各色の画像形成部の配列順序は上記実施例のY色→M色→C色→K色に限られるものではなく任意の色順とすることができる。また、フルカラー画像形成装置において画像形成部の数は上記実施例の4つに限られるものではない。画像形成装置は画像形成部が一つのモノクロなどの単色画像形成装置であってもよい。
【0039】
(2)定着装置20
図2は定着装置20と記録材冷却加湿装置21の部分の概略図である。定着装置20は本実施例においては熱ローラ方式の装置であり、上下に並行に配列して圧接させた定着ローラ23と加圧ローラ24を有する。
【0040】
定着ローラ23はシートSの未定着トナー像(未定着画像)を担持した面に接触する熱ローラとして、ハロゲンヒータ等の内蔵熱源25により内側から加熱されて表面温度が温調制御系(不図示)により所定の定着温度に維持される中空ローラである。加圧ローラ24は耐熱ゴム層を有する弾性ローラであり、定着ローラ23との圧接でシート搬送方向(記録材搬送方向)aにおいて所定幅の定着ニップ部N1を形成する。
【0041】
定着ローラ23は定着モータ(不図示)により矢印の時計方向に所定のプロセススピード(シート搬送速度)に対応した速度で回転駆動される。加圧ローラ24はニップ部N1における定着ローラ23との摩擦力で定着ローラ23の回転に従動して矢印の反時計方向に回転する。定着ローラ23が回転駆動され、そして熱源25により加熱されて表面温度が所定の定着温度に温調維持された状態において、画像形成機構部側から上面に未定着トナー像を担持したシートSが定着装置20に送り込まれて定着ニップ部Nで挟持搬送される。
【0042】
これによりシートSがニップ部N1で加熱加圧されてシート表面の未定着トナー像が固着画像として熱圧定着される。加圧ローラ24も熱源により所定の表面温度に加熱する装置構成にすることもできる。
【0043】
ここで、本実施例の画像形成装置Aにおいて大小各種幅サイズのシートSの通紙はシート幅中心を基線とする中央基準搬送でなされる。シート幅はシート搬送方向に直交する方向のシート寸法である。また、装置を構成する回転ベルトに関してベルト幅とはベルト回転方向に直交する方向のベルト寸法である。
【0044】
(3)記録材冷却加湿装置21
装置21は定着装置20よりもシート搬送方向aの下流側(記録材搬送方向下流側)で定着装置20のシート出口部に近接させて配設されている。定着装置20では熱をトナー及びシートに付加するので、シート内部の水分が定着ニップ部N及び定着ニップ部通過後に蒸発する。装置21は定着装置20を出た直後のシートSを冷却する同時に加湿する装置であり、定着後のシートSのカール及び波打ちを効果的に軽減することが可能となる。
【0045】
本実施例における装置21は、定着装置20を出たシートSを挟持搬送するニップ部N2を形成する上側の第1の冷却加湿ユニット21Aと下側の第2の冷却加湿ユニット21Bとを有する。ユニット21Aと21Bはニップ部N2を折り線として互いにほぼ対称的な機構構造としてある。
【0046】
ユニット21Aと21Bは、それぞれ、回転部材としての可撓性を有する無端状のベルト部材31a,31bを有する。ベルト31a,31bのベルト幅は装置Aに対するシートSの最大通紙幅よりも大きい。本実施例におけるベルト31a,31bは図3の層構成模型図のように、2層構造で、基層31a−1,31b−1と、表面層31a−2,31b−2との積層体ベルトである。
【0047】
基層31a−1,31b−1はシートSをニップ部N2内で密封冷却するための密閉層であり、PIフィルム(ポリイミド樹脂層)など優れた熱伝導性を有し、かつ微細な空孔の少ない材料層である。表面層31a−2,31b−2は水分保持層であり、吸水して水分を保持することが可能なスポンジや不織布などからなる多孔質の材料層(スポンジ層)である。水分保持層は密閉層のシートSとの対向面側に形成されている。
【0048】
また、ユニット21Aと21Bは、それぞれ、ベルト31a,31bを側面から見て横にほぼ長四角形状に懸回して支持する支持部材としての4本の張架ローラ32a〜35a,32b〜35bを有する。また、それぞれ、ベルト31a,31bに対して表面から押し付けられてベルト31a,31bに張力を付加するテンションローラ(テンション付加部材)36a,36bを有する。
【0049】
また、ユニット21Aと21Bは、それぞれ、ベルト31a,31bの内側に配置された、ベルト31a,31bを冷却するための冷却手段としての冷却平板49a,49bを有する。冷却平板49a,49bはベルト31a,31bから奪熱した熱を移動させる熱移動手段としてのヒートシンク37a,37bを有する。熱移動手段はヒートパイプとすることもできる。その他の部材にすることもできる。
【0050】
また、ユニット21Aと21Bは、それぞれ、ベルト31a,31bのニップ部N2側とは反対側においてベルト31a,31bの外面を押圧して水分保持層31a−2,31b−2を圧迫して水分を押し出す押付部材としての押付ローラ38a,38bを有する。また、ローラ38a,38bよりもベルト回転方向上流側(回転部材回転方向上流側)に配置されていてローラ38a,38bで水分保持層31a−2,31b−2から押し出された水分を回収する水分回収部材としての多孔質スポンジローラ39a,39bを有する。
【0051】
また、ユニット21Aと21Bは、それぞれ、ベルト31a,31bに水分(加湿用の水溶液)を付加する水分付加手段としてベルト31a,31bの外面に水分を噴霧するための噴霧ノズル(噴霧器)39a,39bを有する。ノズル39a,39bは、それぞれ、ベルト31a,31bのニップ部N2側とは反対側においてベルト31a,31bの外面に所定の距離をあけて対向させて固定器具(不図示)を用いて定置配設されている。そして、それぞれ、その位置においてベルト31a,31bの外面に対して水分を噴霧する。
【0052】
ノズル39a,39bはベルト31a,31bのベルト幅方向の全域に渡って均一に水分を噴霧することができる単一のモノノズル構成にすることもできるし、ベルト幅方向に間隔をあけて複数個配設されたマルチノズル構成にすることもできる。また、水分付加手段はウォータージェット機構とすることもできる。
【0053】
また、ユニット21Aと21Bは、それらのノズル39a,39bに圧縮空気を供給するための共通のコンプレッサ40を有する。また、それぞれ、ノズル39a,39bに水分を供給するための水タンク41a,41bを有する。また、それぞれ、ノズル39a,39bに対して、コンプレッサ40からの圧縮空気を、タンク41a,41bからの水分を供給するためのチューブ(配管)42a,42bを有する。
【0054】
チューブ42a,42bには、それぞれ、ノズル39a,39bに対する圧縮空気と水分の供給の開閉を行うバルブ43a,44a、43b,44bが配設されている。45はコンプレッサ40の開閉を行うメインバルブである。バルブ43a,44a、43b,44b、45は、それぞれ、制御回路部Cで制御されるドライバー46a,47a、46b,47b、48により開閉制御される。
【0055】
ユニット21Aと21Bにおいて、ローラ33aと33b、およびローラ34aと34bはそれぞれベルト31a,31bを挟んで所定の押圧力で当接している。ユニット21Aにおいてベルト31aのローラ33aと34aの間のベルト部分の内面とヒートシンク37aの冷却平板49aとがほぼ全面的に接している。ユニット21Bにおいてベルト31bのローラ33bと34bの間のベルト部分の内面とヒートシンク37bの冷却平板49bとがほぼ全面的に接している。そして、冷却平板49aと49bとがベルト31a,31bを挟んで所定の押圧力で当接している。
【0056】
これにより、ユニット21Aにおけるローラ33aと34aの間のベルト部分と、ユニット21Bにおけるローラ33bと34bの間のベルト部分と、が所定の押圧力で腹当てに密着してシート搬送方向aにおいて幅広のニップ部N2が形成されている。
【0057】
ユニット21Aにおけるベルト31aはローラ32aを駆動ローラとし、このローラ32aが装置モータ(不図示)により駆動されることで矢印の時計方向に所定のプロセススピードに対応した速度で回転駆動される。ユニット21Bにおけるベルト31bはニップ部N2におけるベルト31aとの摩擦力でベルト31aの回転に従動して矢印の反時計方向に回転する。ベルト31aと31bはニップ部N2においてそれぞれ内面がヒートシンク37aの冷却平板49aの面とヒートシンク37bの冷却平板49bの面に密着して摺動移動する。これによりベルト31aと31bとがニップ部N2において冷却される。
【0058】
定着装置20を通過したシートSは搬送ガイド50に案内されて冷却加湿装置21に導入され、ベルト31a,31bで形成されるニップ部N2に進入して挟持搬送される。シートSはその挟持搬送過程で密閉されたニップ部N2内で、ヒートシンク37a,37bで冷却されるベルト31a,31bにより冷却される。ベルト31a,31bは、シートSがニップ部N2に挿入されたと同時に冷却が開始されるように、ベルト31a,31bの密着が始まる位置と、ヒートシンク37a,37bによる冷却が開始する位置をほぼ一致させている。
【0059】
また、ベルト31a,31bの表面層である水分保持層31a−2,31b−2にはノズル39a,39bで噴霧された水分が含まれている。そして、シートSは密閉されたニップ部N2内をベルト31a,31bの水分保持層31a−2,31b−2に接触したまま搬送されるので、トナーが載ったシート材や、表面コーティングされて水分を吸収しにくいシート材にも水分を吸収させることができる。ニップ部N2におけるシートSとベルト31a,31bとの接触時は、水分保持層31a−2,31b−2がシートSに直接接触し、その上から密閉層31a−1,31b−1が覆いかぶさる様に密着する。
【0060】
そして、シートSはニップ部N2を出るまでには十分に冷却されると共に、十分量の水分を吸収させた状態にすることができる。これにより、定着後のシートSのカール及び波打ちを効果的に軽減することが可能となる。
【0061】
押付ローラ38a,38b、及び多孔質スポンジローラ39a,39bは、ベルト回転方向に関して、ニップ部N2のシート出口部よりも下流側で、ノズル39a,39bよりも上流側に配設されている。押付ローラ38a,38bは水分を吸収しない金属などからなるローラであり、ベルト31a,31bに対する押付力は、例えば1kgf程度としている。これにより、ベルト31a,31bの水分保持層31a−2,31b−2を押しつぶして変形させることで、水分保持層31a−2,31b−2に保持された残留水分を押し出す。
【0062】
スポンジローラ39a,39bは水分を吸収するローラであり、押付ローラ38a,38bの近傍でかつ押付ローラ38a,38bよりもベルト回転方向上流側に配設されている。ベルト31a,31bの水分保持層31a−2,31b−2に残留した水分は押付ローラ38a,38bにより水分保持層31a−2,31b−2から押し出されてスポンジローラ39a,39bによって回収される。スポンジローラ39a,39bは、ベルト31a,31bと押付ローラ38a,38bとの圧接ニップ付近に押し出された不要な水分に接触して水分を吸収するため、押付ローラ38a,38bに直接接触する必要はない。
【0063】
(4)シートSの搬送プロセスおよび水分噴霧量の制御システム
図4はシートSの冷却加湿プロセスに関するフローチャートである。図5は制御系統のブロック図である。定着装置20よりもシート搬送方向上流側(記録材搬送方向上流側)のシートパスにはシート搬送方向に沿って、所定の間隔をあけて順番に、第1のシート検知センサ61、水分量計62、第2のシート検知センサ63が配設されている。また、画像形成装置本体には環境センサ64が配設されている。
【0064】
1)画像形成装置Aに通紙して使用するシートSのサイズや坪量は操作部B或いは外部ホスト装置Dによりユーザ操作にて設定されて、その設定情報が制御回路部Cに入力されて記憶されている(ステップ1)。
【0065】
2)環境の温度湿度が環境センサ64によりリアルタイムで検知され、その検知情報が制御回路部Cに入力されている記憶される(ステップ2)。
【0066】
3)この状態において画像形成ジョブ要求信号が制御回路部Cに入力すると(ステップ3)、制御回路部Cは装置Aを画像形成動作させる。
【0067】
4)二次転写ニップ部でトナー像の二次転写を受けた1枚目のシートSが搬送ベルト装置19により定着装置20に搬送される過程において第1のセンサ61によりそのシート検知(シート検知Sの先端検知)がなされる(ステップ4)。
【0068】
5)そのシート検知信号が制御回路部Cに入力する。制御回路部Cはそのシート検知信号をトリガとして水分量計62を作動させている。水分量計62は、シートS上に赤外光を照射し、シートSから反射する赤外光のエネルギーを検出することで、シートSの水分量を検知する。これにより水分量計62の位置を通過していくシートSの水分量、即ち定着装置20に導入される前状態のシートSの水分量が検知される(ステップ5)。
【0069】
6)その検知した水分量に関する情報が制御回路部Cに入力する。制御回路部Cは、その検知した水分量に関する情報に基づいて、予めメモリされている参照テーブル1,2から定着装置20による画像加熱定着後のシートSの水分量を算出する(ステップ6)。
【0070】
図6は、定着装置通過前に約5%の水分量を有するシートSが定着装置通過直後に損失した水分量を示したテーブル1である。このテーブル1とステップ1においてユーザが設定したシートSの坪量から基本となるシートSの水分蒸発量を算出する。また、同じ坪量のシートであっても、定着装置20に導入する前状態における水分量によって必要な水分量が異なる。図7は、例として坪量80gsmのシートSの定着装置通過前の水分量に対する定着装置通過後の水分量を示すテーブル2を表す。
【0071】
テーブル1とテーブル2を利用して、[検知したある坪量のシートSの定着装置通過前水分量から算出される定着装置通過後の水分量]を算出する。また環境センサ64の値から、[ある坪量のシートSの放置環境における水分量]を算出する。
【0072】
7)ノズル39a,39bからベルト31a,31bに供給する水分量は次ぎのように算出される。即ち、図8に示すように、[噴霧水分量]=[ある坪量のシートSの放置環境における水分量]−[検知したある坪量のシートSの定着装置通過前水分量から算出される定着装置通過後の水分量]とする(ステップ7)。
【0073】
8)噴霧量が決定したら、制御回路部Cは噴霧器39a,39bのバルブ43a,44a、43b,44bの開閉量を変える。もしくはバルブ45によりコンプレッサ40の圧力を変えて、ノズル39a,39bからベルト31a,31bに噴霧する水分の流量を調整する(ステップ8)。
【0074】
9)制御回路部Cは、定着装置20に向って搬送されるシートSの先端が第1のセンサ41で検知されてから第2のセンサ43で検知されるまでの間において、上記ステップ5から8までの演算と制御を行う。
【0075】
そして、制御回路部Cは、第2のセンサ43によりシートSの先端が検知された時(ステップ9)、その検知時点からt1秒後にノズル39a,39bからベルト31a,31bへの水分噴霧を開始する(ステップ10)。
【0076】
噴霧開始タイミングt1秒は、第2のセンサ43からニップ部N2のシート入口部に至るシート搬送距離およびシートSの搬送速度によって決定する値である。シートSの先端が定着装置20を通って冷却加湿装置21のニップ部Nに進入する際に、シートSの先端が接触するベルト31a,31bに水分が噴霧されている状態となる時間とする。
【0077】
10)ノズル39a,39bからベルト31a,31bへの水分噴霧の停止は、第2のセンサ43によりシートSの後端が検知された時(ステップ11)、その検知時点からt2秒後に停止する(ステップ12)。
【0078】
噴霧停止タイミングt2秒も第2のセンサ43からニップ部N2のシート入口部に至るシート搬送距離およびシートSの搬送速度によって決定する値である。シートSの後端がニップ部N2に進入した位置以降、ベルト31a,31bに水分が噴霧されないようにする。
【0079】
11)ジョブがモノプリントである場合は、その1枚のシートSが排出されることでジョウブ終了となる(ステップ13,14)。
【0080】
12)マルチプリント(複数枚連続プリント)である場合は、最後のシートSに対する画像形成が終了するまでステップ4〜13が繰り返えされてシート毎に冷却およびベルト31a,31bに対する水分噴霧が実行される。そして、最後のシートSが排出されることでジョウブ終了となる(ステップ14)。即ち、複数枚のジョブが要求されて、次のシートSをセンサ61により検知した場合、次のシートSの水分量計62による水分量検知のプロセスに戻り、ジョブが終了して次のシートSを検知しなくなるまで同一の動作を繰り返す。
【0081】
上記のように、定着装置20を通過したシートSは引き続いて冷却加湿装置21を通過する。定着装置20を通過して温度が上がったシートSは、シートSの先端が冷却加湿装置21のニップ部N2内に進入すると同時に順次、ベルト31a,31bの水分保持層31a−2,32b−2から適切な水分を供給され同時に冷却される。
【0082】
水分保持層31a−2,32b−2に適切な水分を吸収させることで、水分を均一に付加することができる。また、水分保持層31a−2,32b−2の外側(シートSとの接触面側とは反対面側)に密閉層31a−1,32b−1を設けることで、水分保持層31a−2,32b−2に蓄えられた水分がシートSの熱などにより蒸発することを防止することができる。シートSは冷却加湿装置21を排出後、ほぼ常温(例えば25〜30℃)となり、水分の変化はそれ以降ない。
【0083】
シートSへの水分付加が終了し、通紙されたシートSの幅サイズを超えた水分保持層31a−2,32b−2の部分(非通紙部領域部分)に保持された不要な水分は押付ローラ38a,38bにより押し出される。そして、多孔質スポンジローラ39a,39bにより回収される。これにより、ベルト31a,31bの、押付ローラ38a,38bより回転方向下流側への不要な水分の進入を低減することができる。
【0084】
低湿度環境から高湿度環境に積載されたシート束を移動した場合、全てのシート全体が高湿度環境になじむためには長時間を要する。したがって、積載されている全てのシートが高湿度になじむ前に画像形成装置に導入される場合、それぞれのシート毎に最適な水分噴霧量が異なる。本実施例のように、定着装置20に導入される前のシートSの水分量を計測する水分量計62を配置し、その計測値に基づいて1枚1枚のシートSの最適水分噴霧量を決定し、ベルト31a,31bに対する水分噴霧をする。これによりシート毎に最適な水分量を維持することができ、波打ちを軽減することができる。
【0085】
比較例として、本実施例の画像形成装置において、冷却加湿装置21を無しにして、例えば、6.0%の水分量を有するシートSを250枚通紙し、積載したところ、シートSの最大波打ち高さは1.8mmであった。
【0086】
これに対して、冷却加湿装置21を利用するが、ベルト31a,31bに対する水分付加はせずにシートSの冷却だけをする構成とした場合の最大波打ち高さは1.0mmとなり、44%低減させることができた。
【0087】
さらに、本実施例のように、ベルト31a,31bに水分を付加し、シートSを冷却すると同時に水分を付加することで、最大波打ち高さは0.6mmとなり、冷却加湿装置21を無しにした場合の最大波打ち高さに対して67%の低減効果を得られる。
【0088】
また、ベルト31a,31bに対する水分付加はせずにシートSの冷却だけをする構成とした場合、通紙したシートSの中央部の水分量は5.6%となる。例えば、積載したシートSをシートSの放置水分量が6.3%となる環境に約1日放置すると、シートSの端部から吸湿を行い、最大波打ち高さが2.1mmに増加する。
【0089】
本実施例に示すように、環境に応じて水分付加量を変化させることで(本例の場合、0.7%分水分を付加する)、経時変化による波打ちの顕著化を抑制することができる。
【0090】
以上説明したように、定着装置で加熱された状態のシートSの水分蒸発を効果的に防ぎ、また記録材繊維の水素結合の乖離を抑制してシートSのカールおよび波打ちを効果的に軽減することができる。
【0091】
また、定着装置を通過したシートに付加する水分の付加量を環境湿度およびシートの坪量によって変更することで、シート坪量に応じ最適な水分量を維持でき、放置環境や積載条件によらず適切なカールおよび波打ち軽減を実現できる。
【0092】
さらに、シートの密閉冷却と水分付加を同時に行うことで、シートが高温・高湿のヤング率が低く、こわさが低下している状態でシートを矯正することができるため、効果的にカール及び波打ちの軽減が可能となる。密閉空間においてシートに水分付加および冷却を行うため、シートが密閉空間から解放された時には、シートは冷却されて水分を蒸発しない状態となり、結露などの問題が生じず、搬送性や積載性が安定する。
【0093】
[実施例2]
本実施例2は、水分付加手段39a,39bによるベルト31a,31bの水分付加領域を通紙されるシートSの幅サイズに応じて限定するように移動制御される開閉シャッタ機構70a,70bを有することを特徴とする。
【0094】
図9乃至図11により本実施例2の装置構成を説明する。図9は実施例1の図2と同様に定着装置20と冷却加湿装置21の部分の概略図である。図2との相違は、図2の冷却加湿装置21における押付ローラ38a,38b、及び多孔質スポンジローラ39a,39bに代えて、ノズル39a,39bとベルト31a,31bの間に開閉可能なシャッタ機構70a,70bを配設していることである。これ以外の画像形成装置Aの構成、定着装置20の構成、冷却加湿装置21の構成は実施例1と共通であるため再度の説明は省略する。
【0095】
上側の第1の冷却加湿ユニット21A側のシャッタ機構70aと下側の第2の冷却加湿ユニット21B側のシャッタ機構70bは対称な構造である。そして、同じように制御されて同じように動作するので、図10において、ユニット21A側のシャッタ機構70aを代表して説明する。
【0096】
シャッタ機構70aは、ノズル39bとベルト31aとの間においてベルト幅方向の両側で互いに中央基準で開閉動作可能な一方側と他方側の2枚のシャッタ板71,72を有する。この両シャッタ板71,72はそれぞれギアラック73,74を有し、それぞれ共通のピニオンギア75に対して当該ギア75を挟むように噛合している。ギア75は制御回路部Cで制御される正逆転モータ76により正転駆動または逆転駆動される。
【0097】
モータ76が正転駆動されることでシャッタ板71,72が互いに中央基準で閉じ方向に移動する。モータ76が逆転駆動されることでシャッタ板71,72が互いに中央基準で開き方向に移動する。これにより、シャッタ板71,72の開き幅(開閉量)をベルト31aの幅に対して中央基準で狭広調節することができる。
【0098】
制御回路部Cは装置に通紙されるシートSの幅サイズに応じて正逆転モータ76を制御してシャッタ板71,72の開き幅を変更する。図10の(a)はシート幅が比較的狭いシートの幅に合わせてシャッタ板71,72の開き幅が調節された状態、(b)はシート幅が比較的広いシートの幅に合わせてシャッタ板71,72の開き幅が調節された状態を示している。このようなシャッタ板71,72の開閉調節によって、ベルト31aの非通紙部領域(ベルト幅方向においてシート通紙部の外側のベルト部分)部分にはノズル39aからの噴霧水分がシャッタ板71,72で遮蔽されることで付加されない。
【0099】
上記のようなシャッタ板71,72の開閉調節はユニット21B側のシャッタ機構70bについても同様である。
【0100】
図11は本実施例2におけるシートSの冷却加湿プロセスに関するフローチャートである。実施例1の図4のフローチャートにおいてステップ3と4との間に、ステップ15と16を加入したものである。
【0101】
即ち、ステップ1でユーザが設定したシートSのサイズに応じてシャッタ71,72の開閉量を決定する。制御回路部Cは、プリントのジョブが開始されたら、前回行われたジョブからシートSのサイズ変更があった場合、決定したシャッタ71,72の開閉位置にギアラック75を駆動させてシャッタ71,72を開閉する。付加する水分量の算出法およびベルト31a,31bに水分を付加するプロセス、冷却プロセスは、実施例1と共通であるため省略する。
【0102】
本実施例では、ベルト31a,31bに水分を付加する範囲を通紙されるシートSの幅に合わせてあらかじめ限定することで、回転ベルト31a,31bに不要な水分が付加されることを抑制することができる。
【0103】
[実施例3]
本実施例3は、水分付加手段39a,39bによるベルト31a,31bの水分付加領域を通紙されるシートSの幅サイズに応じて限定するように水分付加手段をベルトの幅方向に移動する水分付加手段移動機構80a,80bを有することを特徴とする。
【0104】
図11と図12により本実施例3の装置構成を説明する。本実施例は実施例2におけるシャッタ機構70a,70bの代わりに、ノズル39a,39bを31a,31bの幅方向に通紙するシートSの幅サイズに応じた幅範囲で往復移動駆動することが可能なノズル移動機構80a,80bを配設している。これ以外の画像形成装置Aの構成、定着装置20の構成、冷却加湿装置21の構成は実施例1,2と共通であるため再度の説明は省略する。
【0105】
上側の第1の冷却加湿ユニット21A側のノズル移動機構80aと下側の第2の冷却加湿ユニット21B側のノズル移動機構80bは対称な構造である。そして、同じように制御されて同じように動作するので、図12において、ユニット21A側のノズル移動機構80aを代表して説明する。
【0106】
ノズル移動機構80aは、軸線方向をベルト31aの幅方向にしてベルト面に並行に配列され、軸受け部材(不図示)により回転可能に支持されているリードスクリュ81aを有する。リードスクリュ81aにはスクリュの螺旋溝82aに係合していてスクリュ81aの正逆転駆動によりスクリュ81aの長手に沿って一端側または他端側に移動するブロック83aが配設されている。このブロック83aにノズル39aが支持されている。スクリュ81aの端部にはギア84aが固着されている。このギア84aに対して制御回路部Cで制御される正逆転モータ85a側のドライブギア86aが噛合している。
【0107】
モータ85aが正転駆動されることでスクリュ81aが正転してブロック83aがスクリュ81aに沿って一端側に移動する。即ち、ノズル39aがベルト31aの幅方向の一方側に移動する。モータ85aが逆転駆動されることでスクリュ81aが逆転してブロック83aがスクリュ81aに沿って他端側に移動する。即ち、ノズル39aがベルト31aの幅方向の他方側に移動する。本実施例において、ノズル39aのベルト31aの面に対する水分の噴霧範囲は実施例2の場合よりもかなり狭くしてある。
【0108】
制御回路部Cはベルト31aの幅方向における往復移動範囲が通紙するシートSの幅サイズに対応した範囲(ベルト31aの通紙部領域の幅範囲)となるようにモータ85aの正転駆動を制御する。図12の(a)はシート幅が比較的狭いシートの幅に合わせてノズル39aがベルト幅方向に往復移動制御されている状態、(b)はシート幅が比較的広いシートの幅に合わせてノズル39aがベルト幅方向に往復移動制御されている状態を示している。
【0109】
このように、ノズル39aがベルト31aの幅方向において通紙されるシートSの幅サイズに応じて水分を噴霧しながら往復することでベルト31aの所望の範囲にのみ水分を噴霧することができる。ノズル39aが往復する範囲を通紙するシートSの幅サイズに応じて変更することによって、ベルト31aの非通紙部領域には水分が付加されない。
【0110】
上記のようなノズル移動機構80aのノズル移動調節はユニット21B側のシャッタ機構70bについても同様である。
【0111】
図13は本実施例3におけるシートSの冷却加湿プロセスに関するフローチャートである。実施例1の図4のフローチャートにおいてステップ3と4との間に、ステップ17と18を加入したものである。
【0112】
即ち、ステップ1でユーザが設定したシートSのサイズに応じて噴霧ノズル39a,39bの往復移動範囲を決定する。プリントのジョブが開始されたら、前回行われたジョブからシートSのサイズ変更があった場合、ノズル39a,39bの往復移動範囲を決定した範囲に変更する。付加する水分量の算出法およびベルト31a,31bに水分を付加するプロセス、冷却プロセスは、実施例1と共通であるため省略する。
【0113】
本実施例では、ベルト31a,31bに水分を付加する範囲を通紙されるシートSの幅に合わせてあらかじめ限定することで、回転ベルト31a,31bに不要な水分が付加されることを抑制することができる。
【0114】
本実施例では、ノズル39a,39bの往復移動範囲によりベルト31a,31bに水分を付加する範囲を限定することで、ベルト31a,31bに不要な水分が付加されることを抑制することができる。
【0115】
トナーをシートに加熱加圧定着する電子写真方式の画像形成装置において、シートを加熱加圧することにより発生する波打ちを効果的に抑制し、印刷機と同等な成果物品位を得ることができる。
【0116】
[その他の装置構成]
1)画像加熱部としての画像加熱定着装置は実施例の熱ローラ方式に限られない。熱チャンバー方式、赤外線照射方式、電磁加熱方式など従来公知の各種構成の加熱方式の定着装置を使用することができる。
【0117】
2)また画像加熱部は画像加熱定着装置に限られない。記録材に定着された画像を加熱することにより画像の光沢を増大させる光沢増大装置(画像改質装置)であってもよい。
【0118】
3)記録材冷却加湿部の回転体はベルト体に限られない。ドラム体やローラ体とすることもできる。ベルト体と、ドラム体またはローラ体との組み合わせでニップ部を形成する構成とすることもできる。
【0119】
4)画像形成装置の画像形成部は電子写真方式に限られない。静電記録方式や磁気記録方式の画像形成部であってもよい。また、転写方式に限られず、記録材に対して直接方式で未定着画像を形成する構成のものであってもよい。
【符号の説明】
【0120】
20・・画像加熱部(定着装置)、S・・記録材、N2・・ニップ部、31a,31b・・回転部材、31a−1,31b−1・・密閉層、37a,37b・・冷却手段、39a,39b・・水分付加手段、21・・記録材冷却加湿装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像加熱部で加熱された記録材をニップ部において密封冷却する密閉層を有する回転可能な回転部材と、前記回転部材を冷却する冷却手段と、前記回転部材に水分を付加する水分付加手段と、を備えることを特徴とする記録材冷却加湿装置。
【請求項2】
環境センサと、前記画像加熱部よりも記録材搬送方向上流側に配設され、前記画像加熱部に導入される前の記録材の水分を計測する水分量計と、を備え、通紙される記録材の坪量と前記環境センサの湿度から、通紙される記録材ごとに前記水分付加手段による水分付加量を決定する制御手段を有することを特徴とする請求項1に記載の記録材冷却加湿装置。
【請求項3】
前記密閉層の記録材との対向面側に水分保持層が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の記録材冷却加湿装置。
【請求項4】
前記密閉層はポリイミド樹脂層であり、前記水分保持層はスポンジ層であることを特徴とする請求項3に記載の記録材冷却加湿装置。
【請求項5】
前記回転部材は複数の支持部材に懸回されて支持された可撓性を有する無端状のベルト部材であり、前記ベルト部材に対して表面から押し付けられて前記ベルト部材に張力を付加するためのテンション付加部材を有することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の記録材冷却加湿装置。
【請求項6】
前記冷却手段は前記回転部材から奪熱した熱を移動させる熱移動手段を有することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の記録材冷却加湿装置。
【請求項7】
前記熱移動手段はヒートシンクあるいはヒートパイプであることを特徴とする請求項6に記載の記録材冷却加湿装置。
【請求項8】
前記水分付加手段は、噴霧ノズルまたはウォータージェット機構を有することを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の記録材冷却加湿装置。
【請求項9】
前記水分保持層を圧迫して水分を押し出す押付部材と、前記押付部材よりも回転部材回転方向上流側に配置されていて前記押付部材により前記水分保持層から押し出された水分を回収する水分回収部材を有することを特徴とする請求項3乃至8の何れか一項に記載の記録材冷却加湿装置。
【請求項10】
前記水分付加手段による前記回転部材の水分付加領域を通紙される記録材の幅サイズに応じて限定するように移動制御される開閉シャッタ機構を有することを特徴とする請求項1乃至9の何れか一項に記載の記録材冷却加湿装置。
【請求項11】
前記水分付加手段による前記回転部材の水分付加領域を通紙される記録材の幅サイズに応じて限定するように前記水分付加手段を前記回転部材の幅方向に移動する水分付加手段移動機構を有することを特徴とする請求項1乃至9の何れか一項に記載の画像加熱システム。
【請求項12】
記録材に未定着画像を形成する画像形成部と、前記未定着画像を担持した記録材を加熱して画像定着する画像加熱部と、前記画像加熱部から搬送された加熱された状態の記録材を冷却すると共に加湿する冷却加湿部と、を有する画像形成装置であって、前記冷却加湿部が請求項1乃至11の何れか一項に記載の記録材冷却加湿装置であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
画像を担持した記録材を加熱する画像加熱部と、
前記画像加熱部から搬送された加熱された状態の記録材を冷却すると共に加湿する冷却加湿部であって、前記記録材をニップ部において密封冷却する密閉層を有する回転可能な回転部材と、前記回転部材を冷却する冷却手段と、前記回転部材に水分を付加する水分付加手段と、を備える冷却加湿部と、
を有することを特徴とする画像加熱システム。
【請求項14】
環境センサと、前記画像加熱部よりも記録材搬送方向上流側に画像加熱部に導入される前の記録材の水分を計測する水分量計と、を備え、通紙される記録材の坪量と前記環境センサの湿度から、通紙される記録材ごとに前記水分付加手段による水分付加量を決定する制御手段を有することを特徴とする請求項13に記載の画像加熱システム。
【請求項15】
前記密閉層の記録材との対向面側に水分保持層が形成されていることを特徴とする請求項13または14に記載の画像加熱システム。
【請求項16】
前記密閉層はポリイミド樹脂層であり、前記水分保持層はスポンジ層であることを特徴とする請求項15に記載の画像加熱システム。
【請求項17】
前記回転部材は複数の支持部材に懸回されて支持された可撓性を有する無端状のベルト部材であり、前記ベルト部材に対して表面から押し付けられて前記ベルト部材に張力を付加するためのテンション付加部材を有することを特徴とする請求項13乃至16の何れか一項に記載の画像加熱システム。
【請求項18】
前記冷却手段は前記回転部材から奪熱した熱を移動させる熱移動手段を有することを特徴とする請求項13乃至17の何れか一項に記載の画像加熱システム。
【請求項19】
前記熱移動手段はヒートシンクあるいはヒートパイプであることを特徴とする請求項18に記載の画像加熱システム。
【請求項20】
前記水分付加手段は、噴霧ノズルまたはウォータージェット機構を有することを特徴とする請求項13乃至19の何れか一項に記載の画像加熱システム。
【請求項21】
前記水分保持層を圧迫して水分を押し出す押付部材と、前記押付部材よりも回転部材回転方向上流側に配置されていて前記押付部材により前記水分保持層から押し出された水分を回収する水分回収部材を有することを特徴とする請求項15乃至20の何れか一項に記載の画像加熱システム。
【請求項22】
前記水分付加手段による前記回転部材の水分付加領域を通紙される記録材の幅サイズに応じて限定するように移動制御される開閉シャッタ機構を有することを特徴とする請求項13乃至21の何れか一項に記載の画像加熱システム。
【請求項23】
前記水分付加手段による前記回転部材の水分付加領域を通紙される記録材の幅サイズに応じて限定するように前記水分付加手段を前記回転部材の幅方向に移動する水分付加手段移動機構を有することを特徴とする請求項13乃至21の何れか一項に記載の画像加熱システム。
【請求項1】
画像加熱部で加熱された記録材をニップ部において密封冷却する密閉層を有する回転可能な回転部材と、前記回転部材を冷却する冷却手段と、前記回転部材に水分を付加する水分付加手段と、を備えることを特徴とする記録材冷却加湿装置。
【請求項2】
環境センサと、前記画像加熱部よりも記録材搬送方向上流側に配設され、前記画像加熱部に導入される前の記録材の水分を計測する水分量計と、を備え、通紙される記録材の坪量と前記環境センサの湿度から、通紙される記録材ごとに前記水分付加手段による水分付加量を決定する制御手段を有することを特徴とする請求項1に記載の記録材冷却加湿装置。
【請求項3】
前記密閉層の記録材との対向面側に水分保持層が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の記録材冷却加湿装置。
【請求項4】
前記密閉層はポリイミド樹脂層であり、前記水分保持層はスポンジ層であることを特徴とする請求項3に記載の記録材冷却加湿装置。
【請求項5】
前記回転部材は複数の支持部材に懸回されて支持された可撓性を有する無端状のベルト部材であり、前記ベルト部材に対して表面から押し付けられて前記ベルト部材に張力を付加するためのテンション付加部材を有することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の記録材冷却加湿装置。
【請求項6】
前記冷却手段は前記回転部材から奪熱した熱を移動させる熱移動手段を有することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の記録材冷却加湿装置。
【請求項7】
前記熱移動手段はヒートシンクあるいはヒートパイプであることを特徴とする請求項6に記載の記録材冷却加湿装置。
【請求項8】
前記水分付加手段は、噴霧ノズルまたはウォータージェット機構を有することを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の記録材冷却加湿装置。
【請求項9】
前記水分保持層を圧迫して水分を押し出す押付部材と、前記押付部材よりも回転部材回転方向上流側に配置されていて前記押付部材により前記水分保持層から押し出された水分を回収する水分回収部材を有することを特徴とする請求項3乃至8の何れか一項に記載の記録材冷却加湿装置。
【請求項10】
前記水分付加手段による前記回転部材の水分付加領域を通紙される記録材の幅サイズに応じて限定するように移動制御される開閉シャッタ機構を有することを特徴とする請求項1乃至9の何れか一項に記載の記録材冷却加湿装置。
【請求項11】
前記水分付加手段による前記回転部材の水分付加領域を通紙される記録材の幅サイズに応じて限定するように前記水分付加手段を前記回転部材の幅方向に移動する水分付加手段移動機構を有することを特徴とする請求項1乃至9の何れか一項に記載の画像加熱システム。
【請求項12】
記録材に未定着画像を形成する画像形成部と、前記未定着画像を担持した記録材を加熱して画像定着する画像加熱部と、前記画像加熱部から搬送された加熱された状態の記録材を冷却すると共に加湿する冷却加湿部と、を有する画像形成装置であって、前記冷却加湿部が請求項1乃至11の何れか一項に記載の記録材冷却加湿装置であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
画像を担持した記録材を加熱する画像加熱部と、
前記画像加熱部から搬送された加熱された状態の記録材を冷却すると共に加湿する冷却加湿部であって、前記記録材をニップ部において密封冷却する密閉層を有する回転可能な回転部材と、前記回転部材を冷却する冷却手段と、前記回転部材に水分を付加する水分付加手段と、を備える冷却加湿部と、
を有することを特徴とする画像加熱システム。
【請求項14】
環境センサと、前記画像加熱部よりも記録材搬送方向上流側に画像加熱部に導入される前の記録材の水分を計測する水分量計と、を備え、通紙される記録材の坪量と前記環境センサの湿度から、通紙される記録材ごとに前記水分付加手段による水分付加量を決定する制御手段を有することを特徴とする請求項13に記載の画像加熱システム。
【請求項15】
前記密閉層の記録材との対向面側に水分保持層が形成されていることを特徴とする請求項13または14に記載の画像加熱システム。
【請求項16】
前記密閉層はポリイミド樹脂層であり、前記水分保持層はスポンジ層であることを特徴とする請求項15に記載の画像加熱システム。
【請求項17】
前記回転部材は複数の支持部材に懸回されて支持された可撓性を有する無端状のベルト部材であり、前記ベルト部材に対して表面から押し付けられて前記ベルト部材に張力を付加するためのテンション付加部材を有することを特徴とする請求項13乃至16の何れか一項に記載の画像加熱システム。
【請求項18】
前記冷却手段は前記回転部材から奪熱した熱を移動させる熱移動手段を有することを特徴とする請求項13乃至17の何れか一項に記載の画像加熱システム。
【請求項19】
前記熱移動手段はヒートシンクあるいはヒートパイプであることを特徴とする請求項18に記載の画像加熱システム。
【請求項20】
前記水分付加手段は、噴霧ノズルまたはウォータージェット機構を有することを特徴とする請求項13乃至19の何れか一項に記載の画像加熱システム。
【請求項21】
前記水分保持層を圧迫して水分を押し出す押付部材と、前記押付部材よりも回転部材回転方向上流側に配置されていて前記押付部材により前記水分保持層から押し出された水分を回収する水分回収部材を有することを特徴とする請求項15乃至20の何れか一項に記載の画像加熱システム。
【請求項22】
前記水分付加手段による前記回転部材の水分付加領域を通紙される記録材の幅サイズに応じて限定するように移動制御される開閉シャッタ機構を有することを特徴とする請求項13乃至21の何れか一項に記載の画像加熱システム。
【請求項23】
前記水分付加手段による前記回転部材の水分付加領域を通紙される記録材の幅サイズに応じて限定するように前記水分付加手段を前記回転部材の幅方向に移動する水分付加手段移動機構を有することを特徴とする請求項13乃至21の何れか一項に記載の画像加熱システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−24912(P2013−24912A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156584(P2011−156584)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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