説明

記録装置、及び、記録装置におけるヘッド検査方法

【課題】ラインサーマルヘッドが有する発熱素子を効率よく速やかに検査することが可能な記録装置、及び、記録装置におけるヘッド検査方法を提供する。
【解決手段】複数の発熱素子#1〜#nをライン状に並べて構成される記録ヘッド31によって記録媒体に記録を行うプリンター1において、記録ヘッド31の各発熱素子#1〜#nに通電するヘッドドライバー回路33により、発熱素子#1〜#nを選択するためのデータをヘッド駆動回路135から出力し、ヘッド駆動回路135から出力されたデータを順次シフトさせることにより各々の発熱素子#1〜#nを順に選択し、選択された発熱素子#1〜#nに、記録媒体への記録時より低い電圧または短い通電時間で電源供給部131から電力を供給し、各発熱素子#1〜#nの通電時の電気抵抗値に基づいて、各々の前記発熱素子を検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラインサーマルヘッドにより記録を行う記録装置、及び、記録装置におけるヘッド検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の発熱素子を有するラインサーマルヘッドによって記録媒体に文字や画像を記録する記録装置が知られている。この種の記録装置においては、ラインサーマルヘッドの発熱素子に断線等の不良が発生した場合、不良の素子によるドットが記録できなくなる。そこで、ヘッドの素子の不良を検出するための手法は提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−169706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ラインサーマルヘッドの検査においては、通常の記録動作時と同様に発熱素子が通電されて発熱するので、単純に各発熱素子に通電するだけでは過熱が懸念されるので、通常の記録動作時と同様の過熱防止制御を行う必要がある。また、発熱素子に通電することで記録媒体を発色させてしまうため、検査のために記録媒体が発色され消費されてしまい、非効率であった。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、ラインサーマルヘッドが有する発熱素子を効率よく速やかに検査することが可能な記録装置、及び、記録装置におけるヘッド検査方法を提供することを目的とする。
また、不良の発熱素子がバーコードを印刷する場合、ピケットフェンス型(ラインサーマルヘッドの発熱素子の並び方向と直交する方向(記録媒体の搬送方向)にバーコードのバーが並ぶもの)のバーコードを印刷すると、バーが規定の幅とならないおそれがある。本発明は、不良の発熱素子を検出した場合でも、印刷したバーコードがスキャナなどで判読可能とする記録装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、複数の発熱素子をライン状に並べて構成されるラインサーマルヘッドによって、記録媒体に記録を行う記録装置であって、前記ラインサーマルヘッドの各発熱素子に通電するヘッド駆動部と、前記ヘッド駆動部により各々の前記発熱素子に通電させた際の前記発熱素子の抵抗値(電気抵抗値)に基づいて、各々の前記発熱素子を検査し、所定の抵抗値以上となった前記発熱素子を不良発熱素子と判断する制御部と、を備え、前記ヘッド駆動部は、前記発熱素子に電力を供給する電源供給部と、通電する前記発熱素子を選択するための選択データを出力するデータ出力部と、前記データ出力部から出力された選択データを順次シフトさせることにより、各々の前記発熱素子を順に選択する選択回路部と、を備え、前記選択回路部により選択された前記発熱素子に、前記記録媒体への記録時より低い電圧または短い通電時間で前記電源供給部から電力が供給されること、を特徴とする。
本発明によれば、選択データをシフトさせることによりラインサーマルヘッドの各発熱素子を順次選択して、記録媒体への記録時より低い電圧または短い通電時間で通電し、通電した発熱素子の電気抵抗値に基づいて各発熱素子を検査するので、選択データを発熱素子の分だけ出力する必要なく全ての発熱素子を順次検査することができ、また、発熱素子の温度を記録媒体に記録する場合よりも低く抑えることができる。従って、発熱素子を選択する動作を効率よく行うとともに、発熱素子の発熱を抑えることで検査における記録媒体の消費量を減らすことができ、発熱素子を効率よく速やかに検査できる。さらに、サーマルヘッドの発熱素子は、静電気などによる破壊や、経時変化により劣化する場合、抵抗値が上昇する。すなわち、不良素子は抵抗値が高い傾向にある。例えば、初期の抵抗値から10%を越えると印刷が薄くなり始め、20%を超えると画像の品質の劣化が顕著になり、30%を超えると文字などの判別が難しくなることを利用して、印刷の目的物により所定の抵抗値を超えたものを不良発熱素子とすることが好ましい。また、抵抗値の低い方を検出することがなく、短時間で検査することもできる。
【0006】
また、本発明は、上記記録装置において、前記データ出力部は、一つの前記発熱素子を選択するための選択データを出力し、前記発熱素子への通電時間を制御するストローブ信号を出力し、前記選択回路部は、各々の前記発熱素子に接続された複数のスイッチング素子と、前記データ出力部から出力される選択データを入力して順次シフトさせることで各スイッチング素子を順にオンに切り替えさせるシフトレジスターとを備え、前記ストローブ信号の出力タイミングで前記オンに切り替わったスイッチング素子が導通して前記発熱素子に前記電源供給部からの電力が供給されること、を特徴とする。
本発明によれば、ラインサーマルヘッドの各発熱素子を、一つの選択データをシフトレジスターによってシフトさせることで順次選択して通電させることができるので、各発熱素子を選択するための回路構成が単純なもので済み、発熱素子を効率よく検査できる。
【0007】
また、本発明は、上記記録装置において、外部の装置に接続可能に構成され、前記外部の装置から入力される所定のコマンドに従って、前記ヘッド駆動部により前記ラインサーマルヘッドの各発熱素子に通電して、前記制御部により、前記発熱素子に通電させた際の抵抗値に基づいて各々の前記発熱素子を検査すること、を特徴とする。
本発明によれば、外部の装置から入力される所定のコマンドに従ってラインサーマルヘッドの発熱素子の検査を行えるので、任意のタイミングで発熱素子を検査できる。また、この検査では発熱素子を速やかに選択して、記録媒体への記録時より低い電圧または短い通電時間で通電させるため短時間で完了でき、手軽に検査を行える。
【0008】
また、本発明は、上記記録装置において、前記制御部は、前記不良素子が含まれていると判断されたラインサーマルヘッドによってピケットフェンス型のバーコードを前記記録媒体に記録する際に、前記ピケットフェンス型のバーコードを倒立させたラダー型のバーコードを生成すること、を特徴とする。
また、本発明は、上記記録装置において、前記制御部は、前記ピケットフェンス型のバーコードを前記記録媒体に記録する際に、前記不良素子が使用されると判断した場合、前記ピケットフェンス型のバーコードを倒立させたラダー型のバーコードを生成し印刷すること、を特徴とする。
本発明によれば、不良の発熱素子が検出されたラインサーマルヘッドによりバーコードを記録する場合に、ピケットフェンス型のバーコードをラダー型のバーコード(バーティカルバーコード)にして記録できるので、バーの幅を減少させるおそれがなく、バーコードを記録できる。これにより、不良の発熱素子が検出されたラインサーマルヘッドを交換する前であっても、バーコードを、読み取り不良等を招かないような高い記録品質で記録できる。
【0009】
また、上記課題を解決するため、本発明は、複数の発熱素子をライン状に並べて構成されるラインサーマルヘッドによって記録媒体に記録を行う記録装置におけるヘッド検査方法であって、前記ラインサーマルヘッドの各発熱素子に通電するヘッド駆動部により、前記発熱素子を選択するための選択データをデータ出力部から出力し、前記データ出力部から出力された前記選択データを順次シフトさせることにより各々の前記発熱素子を順に選択し、選択された前記発熱素子に、前記記録媒体への記録時より低い電圧または短い通電時間で電源供給部から電力を供給し、各々の前記発熱素子の通電時の抵抗値に基づいて、各々の前記発熱素子を検査し、所定の抵抗値以上となった前記発熱素子を不良発熱素子と判断すること、を特徴とする。
本発明によれば、選択データをシフトさせることによりラインサーマルヘッドの各発熱素子を順次選択して、記録媒体への記録時より低い電圧または短い通電時間で通電し、通電した発熱素子の電気抵抗値に基づいて各発熱素子を検査するので、選択データを発熱素子の分だけ出力する必要なく全ての発熱素子を順次検査することができ、また、発熱素子の温度を記録媒体に記録する場合よりも低く抑えることができる。従って、発熱素子を選択する動作を効率よく行うとともに、発熱素子の発熱を抑えることで検査における記録媒体の消費量を減らすことができ、発熱素子を効率よく速やかに検査できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、発熱素子を選択する動作を効率よく行うとともに、発熱素子の発熱を抑えることで検査における記録媒体の消費量を減らすことができ、不良発熱素子の抵抗値が高いことを利用して効率よく速やかに検査できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係るプリンターの斜視図である。
【図2】プリンターの設置状態における断面図である。
【図3】プリンターを含む印刷システムの構成を示すブロック図である。
【図4】プリンターの機能ブロック図である。
【図5】ヘッドドライバー回路の構成を詳細に示す回路図である。
【図6】プリンターの動作を示すフローチャートである。
【図7】プリンターの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明を適用した実施形態に係るプリンター1の斜視図である。また、図2は、プリンター1を備えた印刷システム100において、プリンター1及びその近傍の断面図である。
印刷システム100は、プリンター1と、プリンター1を内蔵したホスト装置105(外部装置)とを含んだ全体を指す。
ホスト装置105は、プリンター1、及び、プリンター1により印刷(記録)される記録媒体としての感熱ロール紙Sの供給機構を内蔵し、上記供給機構からプリンター1に感熱ロール紙Sを供給して印刷を行わせ、印刷された感熱ロール紙Sを排出する。印刷システム100は、具体的には、発券機、券売機、レシートを発行する自動販売機、ATM等、自動処理を行って帳票を出力する装置である。
プリンター1は、本体10の後方に設けられた供給機構から供給される感熱ロール紙Sに熱エネルギーを与えて文字、記号或いは画像等を印刷する記録装置であり、記録後の感熱ロール紙Sを本体10の前面に設けられた排出口11から排出する。
【0013】
図2に示すように、プリンター1は、ホスト装置105の筐体を構成する外装パネル101の内側に設置され、プリンター1が排出口11から排出した感熱ロール紙Sは、外装パネル101に形成された排出口102から外部に排出される。
プリンター1は、ホスト装置105の内部に感熱ロール紙Sとともに固定され、右サイドフレーム15の制御基板であるホスト基板110(図3)にフレキシブルケーブル103を介して接続されている。このフレキシブルケーブル103を介して、プリンター1には、ホスト装置105から感熱ロール紙Sに印刷する文字や画像のデータやプリンター1の動作を指示するコマンド等の制御情報が入力され、プリンター1の各部を動作させるための電源が供給される。
【0014】
図1及び図2に示すように、プリンター1の本体10は、ベースフレーム13、右サイドフレーム15及び左サイドフレーム17からなる本体フレームに各部を設けて構成される。本体10の前面上部には、前部フレーム19が、左右サイドフレーム15、17に掛け渡された丸棒形状の軸61によって回動自在に取り付けられ、この前部フレーム19にはカッターユニット47の固定刃41が取り付けられ、固定刃41の前面を覆うように上部カバー20が配置されている。本体10の前面下部にはカッターユニットケース21が設けられている。
【0015】
図2に示すように、本体10の背面には感熱ロール紙Sを取り込む差入口23が開口し、本体10の後部には、差入口23から入った感熱ロール紙Sを斜め下方に案内する下紙案内27及び上紙案内29が設けられ、上紙案内29には用紙センサー25が設けられている。用紙センサー25は、下紙案内27に光を照射して反射光を検出する反射型光センサーであり、用紙センサー25の受光部の検出状態に基づいて下紙案内27上に位置する感熱ロール紙Sの有無を検出する。
下紙案内27及び上紙案内29の前端は、略水平に配置された記録ヘッド31に臨んでいる。記録ヘッド31は、感熱ロール紙Sの記録面(図2中の下面に相当)に接する複数の発熱素子が直線上に配置されたラインサーマルヘッドであり、ラインサーマルヘッドに駆動電力を供給するヘッドドライバー回路33(ヘッド駆動部)と一体に構成されている。また、記録ヘッド31に対向してプラテン35が配置され、プラテン35と記録ヘッド31との間に感熱ロール紙Sが挟まれる。
【0016】
プラテン35は、本体10の幅方向に延設され、前部フレーム19に回動自在に支持されたローラープラテンである。プラテン35は、搬送モーター37によって駆動されて回転し、記録ヘッド31との間に感熱ロール紙Sを挟んで搬送する。プラテン35は、搬送モーター37の回転方向により、図中符号Aで示す方向に回る正転動作と、符号Bで示す方向に回る逆転動作とを切り替えて行う。プラテン35が正転動作すると感熱ロール紙Sは排出口11に向けて正送りされ、プラテン35が逆転動作すると感熱ロール紙Sは差入口23側に向けて逆送りされる。差入口23から本体10に入った感熱ロール紙Sは、下紙案内27と上紙案内29との間を通って記録ヘッド31とプラテン35との間に導かれ、プラテン35の回転力により排出口11に搬送される。この感熱ロール紙Sの搬送路を、図中に符号Pで示す。
プラテン35のニップ部より下流側には、搬送路Pから上方に外れた位置にジャム検出センサー39が設けられている。ジャム検出センサー39は、プラテン35の周面に対向する検知面39aを有する反射型光センサーであり、プラテン35に巻き込まれて搬送路Pから逸脱した感熱ロール紙Sを検出するセンサーである。このジャム検出センサー39の検出状態に基づき、制御部70は、紙ジャムの発生を検出できる。
【0017】
記録ヘッド31及びプラテン35の前方には、感熱ロール紙Sを切断する固定刃41と可動刃43とが搬送路Pを挟んで上下に対向して配置されている。可動刃43は前部フレーム19の下方に位置するカッターユニットケース21に内蔵され、固定刃41、可動刃43、搬送モーター37と可動刃43とを連結する駆動機構44、及び、カッター駆動モーター45により、カッターユニット47が構成される。可動刃43はカッター駆動モーター45の動作により上下に駆動され、可動刃43が上昇して固定刃41とかみ合うことにより感熱ロール紙Sが切断される。
【0018】
上部カバー20の前端は、排出口11の上方に張り出す前部上紙案内20aとなっている。一方、カッターユニットケース21の上部には、水平よりやや上方に伸びる前部下紙案内板49が取り付けられ、これらの前部下紙案内板49及び前部上紙案内20aによって、排出口11を出た感熱ロール紙Sが外装パネル101の排出口102に案内される。
記録ヘッド31により印刷された感熱ロール紙Sは、プラテン35により排出口11に搬送され、感熱ロール紙Sの先端が排出口11の前方に位置する排出口102からはみ出した位置で、カッターユニット47により切断される。切断された感熱ロール紙Sは排出口102の外に出て利用者により掴まれて取り出される。
【0019】
また、本体10は、記録ヘッド31をプラテン35に向けて付勢する付勢機構55を備えている。略平板状の記録ヘッド31にはヘッド支持板51が下方から接し、付勢機構55は左右の右サイドフレーム15、17に固定された板ばねの弾性により、ヘッド支持板51を記録ヘッド31もろとも押し上げて、記録ヘッド31とプラテン35とを密接させる。付勢機構55の付勢力によって記録ヘッド31はプラテン35に押し付けられ、記録ヘッド31とプラテン35とのニップ部には感熱ロール紙Sを挟む押圧力が作用する。この押圧力により、記録ヘッド31と感熱ロール紙Sとが密着して高品位の印刷が可能となり、また、プラテン35と感熱ロール紙Sの滑りが抑制され、正確な搬送が可能になる。
【0020】
前部フレーム19は、上記のように軸61を中心として前方に開くことができ、この前部フレーム19を開くとプラテン35が前部フレーム19とともに移動して、記録ヘッド31に対向する通常位置から離脱する。これにより、プラテン35と記録ヘッド31との密着が解けるので、感熱ロール紙Sの交換や補充を行える。前部フレーム19を閉じてもとの位置に戻す場合には、プラテン35が通常位置に戻る過程で付勢機構55の付勢力に抗して記録ヘッド31を押し下げる必要があるが、記録ヘッド31に直接プラテン35が接触して記録ヘッド31を押圧することは好ましくないので、ヘッド支持板51の前端に設けられた山状の突起部51aが、プラテン35に最初に接触する構成となっている。この構成により、記録ヘッド31はヘッド支持板51とともに押し下げられ、記録ヘッド31の発熱素子に強い力が加わらずに、プラテン35を通常位置に戻すことができる。
右サイドフレーム15には、前部フレーム19を通常位置に固定する固定レバー63が軸61によって回動可能に設けられ、この固定レバー63を回動させることにより、前部フレーム19の固定を解除して、前部フレーム19を開くことができる。
【0021】
また、図2に示すように、本体10の下部には、プリンター1の制御系を構成する各種回路が実装された制御基板7が収容されている。
以下、この制御基板7に実装されるプリンター1の制御系と、ホスト装置105のホスト基板110との機能について説明する。
【0022】
図3は、プリンター1を含む印刷システムのブロック図であり、プリンター1の制御系の構成を示している。
プリンター1は、プリンター1の各部を制御して印刷動作を実行させる制御部70を有し、この制御部70は、所定のプログラムを実行して各種データを処理するCPU71と、CPU71が実行する基本制御プログラムを記憶したROM73と、CPU71が実行するプログラムや処理対象のデータ等を一時的に記憶するワークエリアを形成するRAM74と、CPU71が実行するプログラムや処理対象のデータ、設定値等を記憶する不揮発性メモリー75とを備えている。
【0023】
また、プリンター1は、各センサーや入力部78から入力されるアナログ信号をデジタル化してCPU71に出力するとともに、CPU71から入力される制御信号に従ってLEDを点灯させるゲートアレイ(G/A)76と、CPU71の制御に従ってモーター等を駆動するモータードライバー77と、CPU71の制御に従って上記のように記録ヘッド31を駆動するヘッドドライバー回路33とを備え、ゲートアレイ76、モータードライバー77及びヘッドドライバー回路33は制御部70のCPU71に接続されている。
【0024】
CPU71には、プリンター1を収容するホスト装置105の制御部を構成するホスト基板110に対し、フレキシブルケーブル103を介して接続されたインターフェース(I/F)72が接続されている。インターフェース72は、フレキシブルケーブル103を接続するためのコネクター等を備え、ホスト基板110とCPU71との間の通信を仲介する。具体的には、インターフェース72は、ホスト基板110から送信される印刷指示のコマンド、印刷データ、リアルタイム制御コマンド等を受信してCPU71に出力するとともに、CPU71がホスト基板110に対して送信するステータス通知等を、フレキシブルケーブル103を介して送信する。
なお、プリンター1はホスト装置105の外装パネル101に収容されるものであるが、図3に示すようにプリンター1の制御系は、ホスト装置105のホスト基板110とは独立して動作可能なものである。従って、プリンター1にとってホスト基板110は、外部の装置として機能する。
【0025】
ゲートアレイ76には、各種スイッチ類を有し、これらスイッチの操作に応じて操作信号を出力する入力部78、1または複数のLEDを備えるLED表示部79、上述した反射型光センサーとして構成される用紙センサー25及びジャム検出センサー39が接続されている。ゲートアレイ76は、入力部78が出力する操作信号と、用紙センサー25及びジャム検出センサー39が受光量に応じて出力する検出電圧の値とを検出し、これらのアナログ値を量子化してデジタルデータに変換し、CPU71に出力する。CPU71は、ゲートアレイ76から入力されるデータをもとに、入力部78における操作を検出し、また、用紙センサー25及びジャム検出センサー39の検出電圧に基づいて、これらのセンサーによる感熱ロール紙Sの検出状態を判別する。また、ゲートアレイ76は、CPU71の制御に従って、LED表示部79が有する複数のLEDの各々に駆動電圧を印加して、各LEDを点灯または点滅(発光)させる。
【0026】
モータードライバー77には、搬送モーター37及びカッター駆動モーター45が接続されている。モータードライバー77は、また、モータードライバー77は、例えばステッピングモーターで構成されるカッター駆動モーター45及び搬送モーター37に対し、駆動電源を供給するとともに必要数の駆動パルスを出力して、可動刃43を移動させて感熱ロール紙Sの切断を行わせ、搬送モーター37を駆動してプラテン35を正転または逆転させる。また、ヘッドドライバー回路33は、上述したように記録ヘッド31と一体に構成され、記録ヘッド31が備える各発熱素子(図示略)に対して個別に駆動電流を供給するとともに電圧を制御し、感熱ロール紙Sへの印刷を行わせる。
【0027】
図4は、プリンター1の機能的構成を示す機能ブロック図である。
この図4には、図3に示したCPU71、ROM73、RAM74、及び不揮発性メモリー75により構成される制御部70は、受信バッファー70a、コマンド判定部70b、コマンド処理部70c、イメージバッファー70d、印刷制御部70e、及び、ヘッド素子検査部70iの各機能を実現する。
【0028】
受信バッファー70aはインターフェース72を介してホスト基板110からコマンド及びデータを一時的に格納するFIFO形式のバッファーメモリーであり、RAM74(図3)のワークエリアにより構成される。コマンド判定部70bは、受信バッファー70aに格納されたコマンドが通常のコマンドであるかリアルタイム制御コマンドであるかを判定する機能部であり、CPU71により実現される。
コマンド処理部70cは、受信バッファー70aに格納されたコマンド及びデータを処理する機能部であり、CPU71により実現される。コマンド処理部70cは、プリンター1がオフラインになっている間は、コマンド判定部70bにより判定されたリアルタイム制御コマンドのみを実行する。イメージバッファー70dは、コマンド処理部70cが印刷実行を指示するコマンドを処理して、印刷を行う場合に、印刷データを展開して感熱ロール紙Sに記録する画像を生成・展開するためのバッファーメモリーであり、RAM74(図3)のワークエリアにより構成される。印刷制御部70eは、プリンター1の各部を駆動させてイメージバッファー70dに展開された画像を感熱ロール紙Sに印刷させる機能部であり、CPU71により実現される。
【0029】
制御部70は、ホスト基板110から送信されたコマンド及びデータを受信バッファー70aに格納し、コマンド判定部70bの機能によって格納したコマンドを判定し、オンライン状態では受信バッファー70aのコマンドを受信順にコマンド処理部70cによって処理する。そして、ホスト基板110から印刷実行を指示するコマンドと印刷データとを含む印刷ジョブを受信した場合には、コマンド処理部70cの機能により受信したデータをイメージバッファー70dに展開して印刷用の画像データを生成し、この画像データを、印刷制御部70eの機能によって感熱ロール紙Sに印刷する。印刷制御部70eは、用紙センサー25による感熱ロール紙Sの検出状態に基づいて、感熱ロール紙Sの有無を監視しながら、イメージバッファー70dに展開された画像データに基づいて、ヘッドドライバー回路33を制御して記録ヘッド31の発熱素子に通電して発熱させ、感熱ロール紙Sへの印刷を実行する。その後、印刷制御部70eは、搬送モーター37を動作させて、印刷後の感熱ロール紙Sをカッターユニット47の位置まで搬送させ、モータードライバー77によりカッター駆動モーター45を動作させて感熱ロール紙Sを切断する。
【0030】
ヘッド素子検査部70iは、ヘッドドライバー回路33を制御して、記録ヘッド31が備える各発熱素子の検査を行う機能部であり、CPU71により実現される。ヘッド素子検査部70iは、ホスト基板110からヘッドの発熱素子の検査を指示するコマンドが送信された場合に、発熱素子の検査を行わせる。なお、ヘッド素子検査部70iが発熱素子の検査を行うタイミングは、コマンドを受信した場合に限らず、プリンター1の印刷行数が予め設定された行数(例えば、数千〜1万行)になる毎、プリンター1の使用期間が予め設定された期間に達する毎、プリンター1の電源が投入される毎、プリンター1の電源がオフにされる毎、等のタイミングで定期的に行ってもよい。
【0031】
図5は、ヘッドドライバー回路33の構成を詳細に示す回路図である。
図5に示すように、ヘッドドライバー回路33は、記録ヘッド31の発熱素子に電流を供給する電源供給部131と、記録ヘッド31が有する各発熱素子に選択的に通電させるための信号を出力するヘッド駆動回路135(データ出力部)と、ヘッド駆動回路135が出力した信号に従って各発熱素子を選択して通電させるドライバーIC137(選択回路部)と、を備えて構成される。
【0032】
記録ヘッド31が有する発熱素子#1〜発熱素子#nは、それぞれ抵抗体R1〜Rnを備え、この抵抗体R1〜Rnが通電されて発熱することにより、感熱ロール紙Sに熱を与えて発色させ、各発熱素子♯1〜#nが一つのドットを形成する。
各抵抗体R1〜Rnの一端は、電源供給部131に繋がる共通電極132に接続される。電源供給部131は、予め設定された電圧で直流電流を出力し、共通電極132には、電源供給部131が出力した直流電流が抵抗133により電圧降下されて入力される。
さらに、記録ヘッド31の発熱素子(抵抗体)は、経時変化により劣化する場合、抵抗値が上昇していく。静電気などによる破壊や、断線した場合は、大きな抵抗値となる。すなわち、不良素子は抵抗値が高い傾向にある。例えば、初期の抵抗値700オームなどからプラス10%の値を越えると印刷が薄くなり始め、プラス20%を超えると画像の品質の劣化が顕著になり、プラス30%を超えると文字などの判別が難しくなる。このようなことを利用して、印刷の目的物により所定の抵抗値を超えたものを不良発熱素子とすることが好ましい。
【0033】
一方、各抵抗体R1〜Rnの他端は、ドライバーIC137に接続されている。ドライバーIC137は、各抵抗体R1〜Rnのうち一つの抵抗体Rを選択し、選択した抵抗体Rを通電させる回路であり、このドライバーIC137により選択された抵抗体Rには共通電極132から電流が流れ、発熱する。このとき、共通電極132に流れる電流値は、電流検出部134においてヘッド素子検査部70i(図4)により検出される。
ドライバーIC137は、各抵抗体R1〜Rnにそれぞれ接続されたスイッチング素子A1〜Anと、スイッチング素子A1〜Anの入力段に接続されたラッチ回路L1〜Lnと、ラッチ回路L1〜Lnの入力段に接続されたシフトレジスターセルS1〜Snとを備えている。
【0034】
シフトレジスターセルS1〜Snは直列に接続されてシフトレジスターを構成し、ヘッド駆動回路135のクロック端子(CLOCK)とデータ端子(DATA IN)に接続されている。また、各ラッチ回路L1〜Lnの入力段にはヘッド駆動回路135のラッチ端子(LATCH)が接続され、スイッチング素子A1〜Anの入力段にはヘッド駆動回路135のストローブ端子(STROBE)が接続されている。
【0035】
感熱ロール紙Sに記録を行う場合、イメージバッファー70d(図4)に展開されたイメージデータが印刷制御部70eの制御によって取得され、このイメージデータ中の1ドットライン分のデータが、ヘッド駆動回路135のデータ端子からドライバーIC137のシフトレジスターセルS1〜Snへシリアル出力される。シフトレジスターセルS1〜Snは、クロック端子から入力されるクロックに同期して、データ端子から入力されるシリアルデータを順次シフトさせてパラレルデータに変換し、ラッチ回路L1〜Lnに出力する。
【0036】
ラッチ回路L1〜Lnは、ヘッド駆動回路135のラッチ端子から入力されるパルス信号によって、シフトレジスターセルS1〜Snから入力される1ドットライン分のパラレルデータをラッチする。
スイッチング素子A1〜Anの入力段にはストローブ端子とともにラッチ回路L1〜Lnが接続され手居る。スイッチング素子A1〜Anのうち、ンのデータを保持しているラッチ回路Lが接続されたスイッチング素子Aは、ストローブ信号がHiになっている間はオンとなる。スイッチング素子Aがオンになると、そのスイッチング素子Aに接続された発熱素子の抵抗体Rには、共通電極132から電流が流れる。これにより、発熱素子#1〜#nのうちオンのデータに対応する発熱素子の抵抗体Rが発熱し、感熱ロール紙Sにドットが形成される。
【0037】
また、記録ヘッド31が備える発熱素子#1〜#nの検査を行う場合、まず、電源供給部131が共通電極132に出力する電圧が、感熱ロール紙Sへの記録時より低い検査用の電圧に切り替えられる。
ヘッド駆動回路135は、ヘッド素子検査部70iの制御に従って、検査用のデータとして1ビットのデータ「1」をデータ端子から出力し、次のクロックからはデータ「0」を出力する。シフトレジスターセルS1〜Snはデータ端子から出力されたデータを、クロック端子から入力されるクロック信号に同期して順次シフトさせ、データ「1」が順にシフトレジスターセルS1からシフトレジスターセルSnへ送られる。これにより、シフトレジスターセルS1〜Snにおいては、一つのシフトレジスターセルSがデータ「1」を出力し、他のシフトレジスターセルSはデータ「0」を出力する。
【0038】
ここで、ヘッド駆動回路135はラッチ端子からラッチ信号を出力せず、これによりシフトレジスターセルSがデータ「1」を出力する間だけ、対応するスイッチング素子Aがオンになる。スイッチング素子Aがオンになる時間はヘッド駆動回路135がストローブ端子から出力するパルスの幅に従う。ヘッド駆動回路135は、感熱ロール紙Sへの記録時よりも短いパルス幅のパルスを出力する。
これにより、スイッチング素子A1〜Anは、ヘッド駆動回路135が出力されるクロック信号に同期して、順にオンに切り替わり、ヘッド駆動回路135がストローブ端子からパルスを出力する間だけ発熱素子#1〜#nを順に通電させる。従って、発熱素子#1〜#nは、順に、一つずつ通電される。
そして、各発熱素子#1〜#nが通電される間に電流検出部134によって電流値を検出し、この電流値をヘッド素子検査部70iが取得して、発熱素子#1〜#nの電気抵抗値が求められる。ヘッド素子検査部70iは、電流検出部134が検出した電流値と電源供給部131の出力電圧とに基づいて、各発熱素子#1〜#nの抵抗体R1〜Rnの抵抗値を求める。そして、予め設定されたしきい値より高い抵抗値を示した発熱素子♯を、不良と判定する。
このように、ヘッドドライバー回路33は、一つのデータ「1」をヘッド駆動回路135のデータ端子から出力することで、このデータをシフトさせて各発熱素子#に順に通電させ、各発熱素子#1〜#nを検査できる。
【0039】
図6は、プリンター1の動作を示すフローチャートであり、記録ヘッド31の各発熱素子の検査に係る動作を示す。
制御部70は、ホスト基板110から送信されたコマンドにより、記録ヘッド31の検査が指示された場合に、このコマンドに従ってヘッド素子検査部70iの機能により検査を開始する。
この検査において、ヘッド素子検査部70iは、上述したようにヘッドドライバー回路33の電源供給部131、電流検出部134及びヘッド駆動回路135を制御して、ドライバーIC137によって各発熱素子の個別に通電させ(ステップS1)、通電された発熱素子の抵抗値を電流検出部134により検出させ、検出された抵抗値を取得する(ステップS2)。ヘッド素子検査部70iは取得した抵抗値をしきい値と比較し(ステップS3)、発熱素子の良否を判定する(ステップS4)。
【0040】
ヘッド素子検査部70iは、電流検出部134により検出された抵抗値がしきい値より大きい場合は、この発熱素子を不良と判定し(ステップS4;No)、この発熱素子の記録ヘッド31における位置、あるいは、この発熱素子に付されている番号や識別情報を記憶し(ステップS5)、後述するステップS6に移行する。
一方、ヘッド素子検査部70iは、電流検出部134により検出された抵抗値がしきい値以下である場合は、この発熱素子を正常と判定し(ステップS4;Yes)、ステップS6に移行する。
ステップS6で、ヘッド素子検査部70iは記録ヘッド31の全ての発熱素子について抵抗値に基づく判定が済んだか否かを判別し、まだ抵抗値に基づく判定がされていない発熱素子がある場合はステップS2に戻って次の発熱素子の抵抗値を取得して検査を行う。
【0041】
全ての発熱素子について抵抗値に基づく判定が済んだ場合(ステップS6;Yes)、ヘッド素子検査部70iは、不良であると判定された発熱素子の位置、番号あるいは識別情報をリスト化して出力し(ステップS7)、本処理を終了する。
ここでヘッド素子検査部70iが出力するリストは、例えば不揮発性メモリー75に検査を行った日時に対応付けて記憶され、新たに検査が行われる毎に蓄積され、或いは上書き更新される。
【0042】
プリンター1は、図6に示す動作により生成したリストに基づき、不良と判定した発熱素子を避けて印刷を行う機能を有する。不良と判定された発熱素子を使って印刷を行うと、不良の発熱素子は感熱ロール紙Sを発色させる温度まで発熱しない等の問題があり、ドットを形成することができないので、本来は感熱ロール紙Sを黒色等に発色させるべき箇所が白いままになってしまい、ドット抜け(ドット欠け)と呼ばれる未着色の(白い)点が発生する。ドット抜けの問題は、単に印刷物の見栄えを損なうだけでなく、例えば、プリンター1によりバーコードを印刷する場合に黒いバンド部分にドット抜けを生じると、バーコードの読み取り時に読み取り不良を起こす可能性がある。具体的には、バーコードは黒いバンド部分の最小幅等が規格により定められており、バンド部分に白いドットが発生すると、バンド部分の幅が規格上の最小幅より細くなってしまう可能性があり、規格に合わせて設計された読取装置が読み取れないおそれがある。しかしながら、記録ヘッド31の不良の発熱素子を無くすには記録ヘッド31を交換するしかないため、不良の発熱素子が発見された後も同じ記録ヘッド31を使用することもあり得る。
そこで、本実施形態のプリンター1は、記録ヘッド31において不良と判定された発熱素子がある状態で、バーコードを印刷する場合には、不良の発熱素子を避けてバーコードを印刷する。以下、この動作について図7を参照して説明する。
【0043】
図7はプリンター1の動作を示すフローチャートであり、特に、印刷に係る動作を示す。
制御部70は、ホスト基板110から送信された印刷指示のコマンド及び印刷データを取得し(ステップS11)、受信したコマンドをコマンド処理部70cにより実行して、印刷データをイメージバッファー70dに展開する。次いで、制御部70は、展開したデータにバーコードが含まれるか否かを判別する(ステップS12)。ここで、バーコードとは、感熱ロール紙Sの搬送方向に延びるバーを一方向に並べて構成される、いわゆるピケットフェンス型のバーコードを指す。
バーコードを含まないイメージを印刷する場合(ステップS12;No)、制御部70は、イメージバッファー70dからイメージデータを取得して、印刷制御部70eの機能により感熱ロール紙Sへの印刷を実行する(ステップS13)。
【0044】
一方、イメージバッファー70dに展開されたイメージデータにピケットフェンス型のバーコードが含まれる場合(ステップS14)、制御部70は、記録ヘッド31に不良の発熱素子があるか否かを判別する(ステップS14)。制御部70は、図6に示した検査の後に不揮発性メモリー75に記憶されるリストを参照して、ステップS14の判別を行う。記録ヘッド31に不良の発熱素子がない場合には(ステップS14;No)、制御部70はステップS13に移行して印刷を実行する。
【0045】
記録ヘッド31に不良の発熱素子がある場合(ステップS14;Yes)、制御部70は、不揮発性メモリー75に記憶されたリストに基づき、イメージバッファー70dのイメージを印刷する場合にバーコードのバーが不良の発熱素子の位置に重なるか否かを判別する(ステップS15)。イメージバッファー70dに展開されるイメージデータは、記録ヘッド31のドット数すなわち発熱素子の数に合わせて展開されているため、不良の発熱素子に重なるかどうかの判別は難しくない。
バーコードのバーが不良の発熱素子の位置に重ならない場合(ステップS15;No)、制御部70はステップS13に移行して印刷を実行する。
【0046】
また、バーコードのバーが不良の発熱素子の位置に重なる場合(ステップS15;Yes)、制御部70は、イメージデータからバーコードの部分を切り出し、90度回転(倒立)させてラダー型のバーコード(バーティカルバーコード)の画像データを生成し(ステップS16)、このラダー型のバーコードのバーが不良の発熱素子の位置に重ならないよう、バーコードの位置とバーコードの幅を決定する(ステップS17)。制御部70は、バーコードの位置及び幅を変更することで不良の発熱素子を回避できるか否かを判別し(ステップS18)、回避が可能な場合は(ステップS18;Yes)、ステップS17で決定したバーコードの位置と幅に基づいてイメージバッファー70dに展開したイメージデータを再構成し(ステップS19)、再構成したイメージデータをもとに、ステップS13で印刷を実行する。
【0047】
制御部70は、バーコードの位置及び幅を変更することで不良の発熱素子を回避できない場合(ステップS18;No)、ホスト基板110に対して不良の発熱素子により印刷できない旨を警告する制御データを生成して、インターフェース72を介して送信し(ステップS20)、本処理を終了する。
【0048】
以上のように、本発明を適用した実施形態によれば、複数の発熱素子をライン状に並べて構成されるラインサーマルヘッドである記録ヘッド31によって、感熱ロール紙Sに記録を行うプリンター1であって、記録ヘッド31の各発熱素子#1〜#nに通電するヘッドドライバー回路33と、ヘッドドライバー回路33により各々の発熱素子#に通電させた際の発熱素子#の電気抵抗値に基づいて、各々の発熱素子#を検査し、所定の抵抗値以上となった発熱素子♯を不良発熱素子と判断するヘッド素子検査部70iと、を備え、ヘッドドライバー回路33は、発熱素子#に電力を供給する電源供給部131と、通電する発熱素子#を選択するための選択データを出力するヘッド駆動回路135と、ヘッド駆動回路135から出力された選択データを順次シフトさせることにより、各々の発熱素子#を順に選択するドライバーIC137と、を備え、ドライバーIC137により選択された発熱素子#に、感熱ロール紙Sへの記録時より低い電圧または短い通電時間で電源供給部131から電力が供給されるので、選択データを発熱素子#の分だけ出力する必要なく全ての発熱素子#1〜#nを順次検査することができ、また、発熱素子#の温度を、感熱ロール紙Sに記録する場合よりも低く抑えることができる。従って、発熱素子#を選択する動作を効率よく速やかに検査できる。さらに、発熱素子#の発熱を抑えることで検査中に感熱ロール紙Sが発色しないので、検査中は搬送モーター37による搬送を行わず、感熱ロール紙Sを停止させたまま検査を行える。このため、感熱ロール紙Sの消費量を減らすことができ、発熱素子#1〜#nを効率よく検査できる。
【0049】
また、プリンター1のヘッド駆動回路135は一つの発熱素子#を選択するための選択データを出力し、通電時間を制御するストローブ信号を出力し、ドライバーIC137は、各々の発熱素子に接続されたスイッチング素子A1〜Anと、ヘッド駆動回路135から出力される選択データを入力して順次シフトさせることで各スイッチング素子A1〜Anを順にオンに切り替えるシフトレジスターセルS1〜Snで構成されるシフトレジスターとを備え、ストローブ信号の出力タイミングでオンに切り替わったスイッチング素子A1〜Anが導通して、発熱素子#1〜#nに電源供給部131からの電力が供給されるので、各発熱素子#を選択するための回路構成が単純なもので済み、発熱素子を効率よく検査できる。
【0050】
プリンター1は、インターフェース72を介して外部のホスト基板110に接続され、ホスト装置から入力されるコマンドに従って、ヘッドドライバー回路33により記録ヘッド31の各発熱素子に通電して、ヘッド素子検査部70iの制御により、発熱素子に通電させた際の電気抵抗値に基づいて各々の発熱素子を検査するので、任意のタイミングで発熱素子を検査できる。また、この検査では発熱素子を速やかに選択して、感熱ロール紙Sへの記録時より低い電圧または短い通電時間で通電させるため短時間で完了でき、手軽に検査を行える。
【0051】
また、プリンター1は、不良の発熱素子が検出された記録ヘッド31によりバーコードを記録する場合に、ピケットフェンス型のバーコードを倒立させたラダー型のバーコードを生成して記録できるので、不良の発熱素子を使わず、バーコードが欠けないように記録できる。これにより、不良の発熱素子が検出された記録ヘッド31を交換する前であっても、バーコードを、読み取り不良等を招かないような高い記録品質で記録できる。また、ピケットフェンス型のバーコードを記録する際に、不良素子が使用されると判断した場合に、ピケットフェンス型のバーコードを倒立させたラダー型のバーコードを生成し印刷するので、より確実にバーコードが欠けないように記録できる。
【0052】
なお、上記実施形態は本発明を適用した一具体例を示すものであり、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、記録ヘッド31の発熱素子の検査を行う場合に、電源供給部131から出力する電圧値を、感熱ロール紙Sに記録を行う場合に比べて低い電圧にし、かつ、ヘッド駆動回路135から出力するストローブ信号のパルス幅を、感熱ロール紙Sへの記録を行う場合よりも短くする構成を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、電源供給部131から出力する電圧値、及び、ヘッド駆動回路135から出力するストローブ信号のパルス幅のいずれか一方のみを、感熱ロール紙Sへの記録を行う場合と異ならせる構成としてもよい。この場合も発熱素子の発熱を通常の記録時に比べて抑えることができ、検査のたびに感熱ロール紙Sを消費してしまうことがない。また、上記実施形態では、記録ヘッド31が備える各発熱素子#1〜#nの抵抗値がしきい値を超えるか否かに基づいて発熱素子の良否を判定する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、正常な発熱素子の抵抗値の範囲を予め定めておき、この範囲から抵抗値が逸脱した発熱素子を、不良と判定してもよい。また、上記実施形態では、感熱ロール紙Sの搬送方向に直交して並ぶバーで構成されるピケットフェンス型のバーコードを、感熱ロール紙Sの搬送方向にバーを並べたラダー型のバーコードに変換して、不良の発熱素子を回避して印刷する例を挙げて説明したが、ラダー型のバーコードをピケットフェンス型のバーコードに変換してもよく、ピケットフェンス型のバーコードのままサイズを変更してもよい。
さらに、本実施形態では、ホスト装置105の外装パネル101の内側に配置されるプリンター1に本発明を適用した構成を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、独立した筐体を有するスタンドアローン型のサーマルプリンターに、本発明を適用することも勿論可能である。この種のプリンターは、USB、IEEE1284、RS−232C、LAN等の有線または無線の各種のインターフェースを介して、パーソナルコンピューターやPOSシステム等の外部の装置に接続され、これら外部の装置から痩身されるコマンド等を受信して動作する構成とすることができ、その他の細部構成や適用範囲については任意に変更可能である。
【符号の説明】
【0053】
1…プリンター(記録装置)、31…記録ヘッド(ラインサーマルヘッド)、33…ヘッドドライバー回路(ヘッド駆動部)、35…プラテン、70…制御部、71…CPU、100…印刷システム、101…外装パネル、105…ホスト装置(外部の装置)、131…電源供給部、135…ヘッド駆動回路(データ出力部)、137…ドライバーIC(選択回路部)、S…感熱ロール紙(記録媒体)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発熱素子をライン状に並べて構成されるラインサーマルヘッドによって、記録媒体に記録を行う記録装置であって、
前記ラインサーマルヘッドの各発熱素子に通電するヘッド駆動部と、
前記ヘッド駆動部により各々の前記発熱素子に通電させた際の前記発熱素子の抵抗値に基づいて、各々の前記発熱素子を検査し、所定の抵抗値以上となった前記発熱素子を不良発熱素子と判断する制御部と、を備え、
前記ヘッド駆動部は、
前記発熱素子に電力を供給する電源供給部と、
通電する前記発熱素子を選択するための選択データを出力するデータ出力部と、
前記データ出力部から出力された選択データを順次シフトさせることにより、各々の前記発熱素子を順に選択する選択回路部と、を備え、
前記選択回路部により選択された前記発熱素子に、前記記録媒体への記録時より低い電圧または短い通電時間で前記電源供給部から電力が供給されること、
を特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記データ出力部は、一つの前記発熱素子を選択するための選択データを出力し、前記発熱素子への通電時間を制御するストローブ信号を出力し、
前記選択回路部は、各々の前記発熱素子に接続された複数のスイッチング素子と、前記データ出力部から出力される選択データを入力して順次シフトさせることで各スイッチング素子を順にオンに切り替えさせるシフトレジスターとを備え、前記ストローブ信号の出力タイミングで前記オンに切り替わったスイッチング素子が導通して、前記発熱素子に前記電源供給部からの電力が供給されること、
を特徴とする請求項1記載の記録装置。
【請求項3】
外部の装置に接続可能に構成され、前記外部の装置から入力される所定のコマンドに従って、前記ヘッド駆動部により前記ラインサーマルヘッドの各発熱素子に通電して、前記制御部により、前記発熱素子に通電させた際の抵抗値に基づいて各々の前記発熱素子を検査すること、
を特徴とする請求項1または2記載の記録装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記不良素子が含まれていると判断されたラインサーマルヘッドによってピケットフェンス型のバーコードを前記記録媒体に記録する際に、前記ピケットフェンス型のバーコードを倒立させたラダー型のバーコードを生成すること、
を特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の記録装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記ピケットフェンス型のバーコードを前記記録媒体に記録する際に、前記不良素子が使用されると判断した場合、前記ピケットフェンス型のバーコードを倒立させたラダー型のバーコードを生成し印刷すること、
を特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の記録装置。
【請求項6】
複数の発熱素子をライン状に並べて構成されるラインサーマルヘッドによって記録媒体に記録を行う記録装置におけるヘッド検査方法であって、
前記ラインサーマルヘッドの各発熱素子に通電するヘッド駆動部により、前記発熱素子を選択するための選択データをデータ出力部から出力し、前記データ出力部から出力された前記選択データを順次シフトさせることにより各々の前記発熱素子を順に選択し、選択された前記発熱素子に、前記記録媒体への記録時より低い電圧または短い通電時間で電源供給部から電力を供給し、各々の前記発熱素子の通電時の抵抗値に基づいて、各々の前記発熱素子を検査し、所定の抵抗値以上となった前記発熱素子を不良発熱素子と判断すること、
を特徴とする記録装置におけるヘッド検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−207075(P2011−207075A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77511(P2010−77511)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】