説明

記録装置、記録制御プログラム

【課題】 ドットを形成することができないドット形成要素が存在する状態においても記録実行時間を増加させることなく記録を実行することができ、かつ高い記録品質を維持することが可能な記録装置を提供する。
【解決手段】 ノズルN11が故障してドットdを形成することができない状態になった場合には、5回目の主走査動作X5においてノズルN5にてドットdを形成する際に、1回目の主走査動作X1においてノズルN11にて形成すべきドットdを同時に代替形成する。それによって、ドット抜けが生じることなくオーバーラップドット形成パターンでラスタR31を構成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主走査方向に往復動可能に配設され、副走査方向に複数のドット形成要素が一定の間隔で配設されたドット形成要素アレイを有する記録ヘッドと、ドット形成要素を駆動するヘッド駆動手段と、記録ヘッドを被記録材に対して主走査方向に往復動させる主走査駆動手段と、被記録材を副走査方向に記録ヘッドに対して相対的に搬送する副走査駆動手段とを備えた記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な記録装置としてのインクジェット式記録装置では、インク滴を噴射する多数のノズル(ドット形成要素)を備えた記録ヘッドが主走査方向に移動しながら各ノズルからインク滴を噴射する動作(以下、主走査動作又は主走査パスと言う)と、主走査方向と直交する副走査方向に印刷用紙(被記録材)を記録ヘッドに対して相対的に搬送する動作とにより印刷(記録)が行われる。このようなインクジェット式記録装置においては、記録ヘッドのヘッド面に形成された多数のノズルの一部にインク詰まり等の故障が生じて、正常にインクが噴射できない状態になる場合がある。その際に、そのままの状態で記録を実行すると、そのノズルで形成すべき部分のドットが形成されないためドット抜けが生じて記録品質が低下してしまうことになる。
【0003】
このような故障ノズルによるドット抜けを防止するための従来技術の一例としては、記録実行中における記録ヘッドからのインクの噴射状態を、光ビームを発する発光素子及びその発光素子からの光ビームを受光する受光素子によって検出する手段を設けたものが公知である。記録ヘッドのノズルから噴射されるインクの噴射軌跡を横切るように発光素子から光りビームを順次照射し、受光素子における受光量を検知することによって、インクが噴射されていない故障ノズルを検出することができる(例えば、特許文献1を参照)。ワイピング等による記録ヘッドのクリーニングを実行した後、記録を実行する前に全ノズルからインクを噴射し(いわゆるフラッシング)、その際のインク噴射状態から光ビームを受光する受光素子によってインクが噴射されていない故障ノズルの有無を検出する。インクを噴射されない故障ノズルがある場合には、再度記録ヘッドのクリーニングを実行し、インク詰まり等によるノズルの故障状態を解消してから記録を実行する。それによって、故障ノズルが存在することによるドット抜けを防止することができる。(例えば、特許文献2を参照)。
【0004】
また、ドット形成要素として多数のドットインパクトワイヤを有する記録ヘッドを備えた記録装置においては、ワイヤ不良等によりドットを形成することができなくなったドットインパクトワイヤをワイヤセンサ等によって個々に検出することができる。ドットインパクトワイヤの場合には、ワイヤ不良が生じた場合には記録ヘッドを交換又は修理しなければならない。そのため、例えば、ドットインパクトワイヤのいずれかにワイヤ不良が生じた場合には、正常なドットインパクトワイヤのいずれかで代用して記録を実行するようにした記録装置、或いは、記録ヘッドに予備のドットインパクトワイヤをあらかじめ設けておき、ドットインパクトワイヤのいずれかにワイヤ不良が生じた場合には、その予備のドットインパクトワイヤで代用して記録を実行する記録装置が公知である(例えば、特許文献3を参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−172805号公報
【特許文献2】特開2002−187293号公報
【特許文献3】特開平11−42801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ノズル詰まり等によってインクが噴射されないノズルが生じる度にクリーニング動作及びフラッシングを実行すると、その度に一定量のインクを消費することになり、無駄に捨てられるインクが増加してしまうという課題が生じる。また、上述した特許文献3に開示されている記録装置においては、ドットインパクトワイヤにワイヤ不良が生じたためにドットを形成することができなかった部分に、ドットを形成するためだけの主走査動作を重複して実行しなければならないため、必要な主走査動作の回数が大幅に増加して記録実行時間が大幅に長くなってしまうという課題が生じる。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、その課題は、ドットを形成することができないドット形成要素が存在する状態においても記録実行時間を増加させることなく記録を実行することができ、かつ高い記録品質を維持することが可能な記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するため、本発明の第1の態様は、主走査方向に往復動可能に配設され、副走査方向に複数のドット形成要素が一定の間隔で配設されたドット形成要素アレイを有する記録ヘッドと、前記ドット形成要素を駆動するヘッド駆動手段と、前記記録ヘッドを被記録材に対して主走査方向に往復動させる主走査駆動手段と、前記被記録材を副走査方向に前記記録ヘッドに対して相対的に搬送する副走査駆動手段と、前記ヘッド駆動手段、前記主走査駆動手段、及び前記副走査駆動手段を制御して、前記記録ヘッドを主走査方向へ往復動させながら記録データに基づいて、前記被記録材にドットを形成するとともに、所定の搬送量にて前記被記録材を副走査方向へ搬送する記録制御装置とを備えた記録装置であって、前記記録制御装置は、同一主走査ラインの隣接したドットを異なる主走査パスで異なる前記ドット形成要素によって形成するオーバーラップドット形成パターンでドットを形成する際に、前記ドット形成要素アレイ内にドット形成不能な状態のドット形成要素が存在する場合には、ドット形成不能な状態のドット形成要素にて形成すべきドットが含まれる主走査ラインの他のドットを形成する同一ドット形成要素アレイ内の他のドット形成要素で、当該他のドット形成要素にて形成すべきドットを形成する際に、ドット形成不能な状態のドット形成要素にて形成すべきドットも同時に代替形成する、ことを特徴とした記録装置である。
【0009】
オーバーラップドット形成パターンでドットを形成する際には、同一主走査ラインの隣接したドットを異なる主走査パスで異なるドット形成要素によって形成するので、同一主走査ラインを形成するドット形成要素がドット形成要素アレイ内に常に複数存在することになる。そこで、ドット形成要素アレイ内にドット形成不能な状態のドット形成要素が存在する場合には、ドット形成不能な状態のドット形成要素にて形成すべきドットが含まれる主走査ラインの他のドットを形成する同一ドット形成要素アレイ内の他のドット形成要素で、当該他のドット形成要素にて形成すべきドットを形成する際に、ドット形成不能な状態のドット形成要素にて形成すべきドットも同時に代替形成する。
【0010】
つまり、オーバーラップドット形成パターンにおいては、同一主走査ラインを形成するドット形成要素が常に複数存在することになるので、その複数のドット形成要素のいずれかが故障等によりドット形成不能な状態となった場合には、残りの正常ないずれかのドット形成要素で、そのドット形成要素にて形成すべきドットを形成する際に、同時にドット形成不能な状態となったドット形成要素にて本来形成すべきドットも形成する。それによって、ドットを形成することができないドット形成要素が存在する状態においても記録実行時間を増加させることなく記録を実行することができ、かつオーバーラップ記録方式による高い記録品質を維持することができるという作用効果が得られる。
【0011】
本発明の第2の態様は、前述した第1の態様において、前記記録制御装置は、前記ドット形成要素アレイの総ドット形成要素数を総ドット形成要素数M、総ドット形成要素数Mのうち使用するドット形成要素数を使用ドット形成要素数N、被記録材の所定の搬送量を搬送量P、前記ドット形成要素アレイ内の単位距離当たりに存在する前記ドット形成要素の個数をドット形成要素分布密度D、前記ドット形成要素の中心点間距離を副走査方向のドット間隔の倍数で表した値を補間係数k、主走査方向にドットが連続したラインを形成するのに要する主走査動作の回数をスキャン回数sとし、スキャン回数sは、2以上N未満の整数に設定し、補間係数kとN/sとは、互いに素の関係を満たす2以上N未満の整数に設定し、かつ、P=N/(s・D・k)なる関係式を満たす値を選定して記録を実行する、ことを特徴とした記録装置である。
【0012】
P=N/(s・D・k)なる関係式を満たすインターレース記録方式において、スキャン回数sを2以上N未満に設定するFOL(フルオーバーラップ)インターレース記録方式は、全ての主走査ラインがオーバーラップドット形成パターンで形成される。つまり、全ての主走査ラインは、常にドット形成要素アレイ内の複数のドット形成要素によって形成される。したがって、ドット形成要素アレイ内の1つのドット形成要素がドット形成不能な状態となった場合には、記録開始から記録終了までの主走査動作及び副走査動作を一切変更することなく、ドット形成不能な状態となったドット形成要素にて本来形成すべきドットを他のドット形成要素にて必ず代替形成することができる。それによって、ドット形成不能な状態となったドット形成要素が存在する状態においても、FOLインターレース記録方式による高い記録品質を維持しつつ、かつ記録実行速度を低下させることなく記録を実行することができる。
【0013】
本発明の第3の態様は、前述した第2の態様において、前記記録制御装置は、同一ドット形成要素アレイ内にドット形成不能な状態のドット形成要素が2以上存在する場合には、同一主走査ラインを構成するドット形成要素の全てがドット形成不能な状態のドット形成要素とならない如くスキャン回数s又は使用ドット形成要素数Nを設定して記録を実行する、ことを特徴とした記録装置である。
FOLインターレース記録方式においては、スキャン回数s又は使用ドット形成要素数Nが異なると、ドット形成要素アレイ内の同一主走査ラインを構成するドット形成要素の組み合わせが異なってくる。そこで、同一ドット形成要素アレイ内にドット形成不能な状態のドット形成要素が2以上存在する場合には、同一主走査ラインを構成するドット形成要素の全てがドット形成不能な状態のドット形成要素とならないように、スキャン回数s又は使用ドット形成要素数Nを選択して設定することによって、ドットを形成することのできない主走査ラインが生じて記録品質が低下してしまうことを防止することができる。
【0014】
本発明の第4の態様は、前述した第2の態様又は第3の態様において、前記記録制御装置は、スキャン回数s=4以上である場合には、ドット形成不能な状態のドット形成要素にて形成すべきドットが含まれる主走査ラインにおいても可能な限りオーバーラップドット形成パターンにてドットが形成される如く、ドット形成不能な状態のドット形成要素にて形成すべきドットを代替形成するドット形成要素を選択する、ことを特徴とした記録装置である。
【0015】
FOLインターレース記録方式においてスキャン回数s=4以上である場合には、同一ドット形成要素アレイ内の4以上の異なるドット形成要素にて4以上の異なる主走査パスで同一の主走査ラインのドットがオーバーラップドット形成パターンで形成される。この4以上の異なるドット形成要素のいずれかがドット形成不能な状態となった場合には、ドット形成不能な状態のドット形成要素にて形成すべきドットを代替形成するドット形成要素を選択する際に、そのドット形成要素にて本来形成すべきドットと、同一主走査パスで代替形成するドット(ドット形成不能な状態のドット形成要素にて本来形成すべきドット)とが隣接しない関係となるドット形成要素を選択することができる場合がある。そこで、そのような場合には、そのドット形成要素にて形成すべきドットと、同一主走査パスで代替形成するドットとが隣接しないようなドット形成要素を選択する。それによって、同一主走査ラインの主走査方向に隣接するドットを異なるドット形成要素で形成するオーバーラップドット形成パターンを維持した記録を実行することができる。
【0016】
本発明の第5の態様は、前述した第1の態様〜第4の態様のいずれかにおいて、前記記録制御装置は、所定のドット形成精度が得られないドット形成要素をドット形成不能な状態のドット形成要素とみなして記録を実行する、ことを特徴とした記録装置である。
このように、所定のドット形成精度が得られないドット形成要素をドット形成不能な状態のドット形成要素とみなして記録を実行することによって、ドット形成精度が著しく低い特定のドット形成要素が存在することによる記録品質の低下を防止することができる。
【0017】
本発明の第6の態様は、前述した第1の態様〜第5の態様のいずれかにおいて、ドット形成不能な状態となったドット形成要素を記録実行中に検出することが可能な故障ドット形成要素検出手段を備えている、ことを特徴とした記録装置である。
このように、ドット形成不能な状態となったドット形成要素を記録実行中に検出することが可能な故障ドット形成要素検出手段を設けることによって、例えば、記録実行中に生じたドット形成要素の故障等にもいち早く対応して、故障したドット形成要素にて形成すべきドットを代替形成するドット形成要素を設定することができ、オーバーラップドット形成パターンによる高い記録品質を維持することができる。
【0018】
本発明の第7の態様は、主走査方向に往復動可能に配設され、副走査方向に複数のドット形成要素が一定の間隔で配設されたドット形成要素アレイを有する記録ヘッドと、前記ドット形成要素を駆動するヘッド駆動手段と、前記記録ヘッドを被記録材に対して主走査方向に往復動させる主走査駆動手段と、前記被記録材を副走査方向に前記記録ヘッドに対して相対的に搬送する副走査駆動手段と、前記ヘッド駆動手段、前記主走査駆動手段、及び前記副走査駆動手段を制御して、前記記録ヘッドを主走査方向へ往復動させながら記録データに基づいて、前記被記録材にドットを形成するとともに、所定の搬送量にて前記被記録材を副走査方向へ搬送する記録制御装置とを備えた記録装置において、前記ヘッド駆動手段、前記主走査駆動手段、及び前記副走査駆動手段を制御して、前記記録ヘッドを主走査方向へ往復動させながら記録データに基づいて、前記被記録材にドットを形成するとともに、所定の搬送量にて前記被記録材を副走査方向へ搬送する制御をコンピュータに実行させる記録制御プログラムであって、同一主走査ラインの隣接したドットを異なる主走査パスで異なる前記ドット形成要素によって形成するオーバーラップドット形成パターンでドットを形成する際に、前記ドット形成要素アレイ内にドット形成不能な状態のドット形成要素が存在する場合には、ドット形成不能な状態のドット形成要素にて形成すべきドットが含まれる主走査ラインの他のドットを形成する同一ドット形成要素アレイ内の他のドット形成要素で、当該他のドット形成要素にて形成すべきドットを形成する際に、ドット形成不能な状態のドット形成要素にて形成すべきドットも同時に代替形成する手順を有する、ことを特徴とした記録制御プログラムである。
【0019】
本願発明の第7の態様に記載の記録制御プログラムによれば、前述した第1の態様に記載の発明と同様の作用効果を得ることができるとともに、この記録制御プログラムを実行することができる任意の記録装置に、前述した第1の態様に記載の発明と同様の作用効果をもたらすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
まず、本発明に係る「記録装置」の一例としてのインクジェット式記録装置の概略構成について説明する。
【0021】
図1は、本発明に係るインクジェット式記録装置の概略の平面図であり、図2はその側面図である。
インクジェット式記録装置50には、記録紙PAにインクを噴射して記録を行う記録ヘッド62を記録紙PAに対して主走査方向Xに走査させる「主走査駆動手段」として、キャリッジガイド軸51に軸支され、主走査方向Xに移動するキャリッジ61が設けられている。キャリッジ61には、記録ヘッド62と、記録ヘッド62から噴射する各色のインクが充填されたインクカートリッジ611とが搭載されている。記録ヘッド62のヘッド面と対向する位置には、記録ヘッド62のヘッド面と記録紙PAとのギャップを規定するプラテン52が設けられている。また、インクジェット式記録装置50には、記録ヘッド62を記録紙PAに対して副走査方向Yに走査させる「副走査駆動手段」として、記録紙PAを副走査方向Yに搬送する搬送駆動ローラ53と搬送従動ローラ54が設けられている。搬送駆動ローラ53は、ステッピング・モータ等の回転駆動力により回転制御され、搬送駆動ローラ53の回転により、記録紙PAは副走査方向Yに搬送される。搬送従動ローラ54は、複数設けられており、それぞれ個々に搬送駆動ローラ53に付勢され、記録紙PAが搬送駆動ローラ53の回転により搬送される際に、記録紙PAに接しながら記録紙PAの搬送に従動して回転する。搬送駆動ローラ53の表面には、高摩擦抵抗を有する皮膜が施されている。搬送従動ローラ54によって、搬送駆動ローラ53の表面に押しつけられた記録紙PAは、その表面の摩擦抵抗によって搬送駆動ローラ53の表面に密着し、搬送駆動ローラ53の回転によって副走査方向に搬送される。キャリッジ61とプラテン52の間に記録紙PAを副走査方向Yに所定の搬送量で搬送する動作と、記録ヘッド62を主走査方向Xに一往復させる間に記録ヘッド62から記録紙PAにインクを噴射する動作とを交互に繰り返すことによって記録紙PAに記録が行われる。
【0022】
搬送駆動ローラ53の副走査方向Yの上流側には、給紙トレイ57が配設されている。給紙トレイ57は、例えば普通紙やフォト紙等の記録紙PAを給紙可能な構成となっている。給紙トレイ57の近傍には、記録紙PAを自動給紙する給紙手段としてのASF(オート・シート・フィーダー)が設けられている。ASFは、給紙トレイ57に設けられた2つの給紙ローラ57b及び図示してない分離パッドを有する自動給紙機構である。この2つの給紙ローラ57bの1つは、給紙トレイ57の一方側に配置され、もう1つの給紙ローラ57bは、記録紙ガイド57aに取り付けられており、記録紙ガイド57aは、記録紙PAの幅に合わせて幅方向に摺動可能に給紙トレイ57に設けられている。そして、給紙ローラ57bの回転駆動力と、分離パッドの摩擦抵抗により、給紙トレイ57に置かれた複数の記録紙PAを給紙する際に、複数の記録紙PAが一度に給紙されることなく1枚ずつ正確に分離されて自動給紙される。
【0023】
また、給紙ローラ57bと搬送駆動ローラ53との間には、公知の技術による紙検出器63が配設されている。紙検出器63は、立位姿勢への自己復帰習性が付与され、かつ記録紙搬送方向にのみ回動し得るよう記録紙PAの搬送経路内に突出する状態で枢支されたレバーを有し、このレバーの先端が記録紙PAに押されることでレバーが回動し、それによって記録紙PAが検出される構成を成す検出器である。紙検出器63は、給紙ローラ57bより給紙された記録紙PAの始端位置、及び終端位置を検出し、その検出位置に合わせて記録領域が決定され、記録が実行される。
【0024】
一方、記録実行後の記録紙PAを排紙する手段として、「排出駆動ローラ」としての排紙駆動ローラ55と排紙従動ローラ56とが設けられている。排紙駆動ローラ55は、ステッピング・モータ等の回転駆動力により回転制御され、排紙駆動ローラ55の回転により、記録実行後の記録紙PAは副走査方向Yに排紙される。排紙従動ローラ56は、周囲に複数の歯を有し、各歯の先端が記録紙PAの記録面に点接触するように鋭角的に尖っている歯付きローラになっている。複数の排紙従動ローラ56は、それぞれ個々に排紙駆動ローラ55に付勢され、記録紙PAが排紙駆動ローラ55の回転により排紙される際に記録紙PAに接して記録紙PAの排紙に従動して回転する。そして、給紙ローラ57bや搬送駆動ローラ53、及び排紙駆動ローラ55を回転駆動する図示していない搬送駆動用モータ、並びにキャリッジ61を主走査方向に駆動する図示していないキャリッジ駆動用モータは、「記録制御装置」としての記録制御部100により駆動制御される。また、記録ヘッド62も同様に、記録制御部100により駆動制御されて記録紙PAの表面にインクを噴射する。
【0025】
図3は、本発明に係るインクジェット記録装置50の概略のブロック図である。
記録制御部100は、システムバスSBを備えており、システムバスSBには、ROM21、RAM22、USBコントローラ23、メモリカードインタフェース24、MPU(マイクロプロセッサ)26、I/O27、及び記録ヘッド62のヘッド面に配設された後述する「ドット形成要素」としてのノズルN1〜NM(図4参照)を駆動する「ヘッド駆動手段」としてのヘッドドライバ28がデータ転送可能に接続されている。MPU26では各種処理の演算処理が行われる。ROM21には、MPU26の演算処理に必要なソフトウェア・プログラム及びデータがあらかじめ記憶されている。RAM22は、ソフトウェア・プログラムの一時的な記憶領域、MPU26の作業領域等として使用される。各種モータ制御部31は、インクジェット式記録装置50の各種モータを駆動制御する駆動制御回路である。各種センサー32は、インクジェット記録装置50の各種状態情報を検出してI/O27に出力する。I/O27は、MPU26における演算処理結果に基づいて、各種モータ制御部31に対して出力制御を行い、かつ各種センサー32からの入力情報等を入力する。
【0026】
USBコントローラ23は、デュアルロールUSBインタフェース機能を備えている。例えば、USBホストコントローラを搭載した情報処理装置200として、パーソナルコンピュータ等のUSBホスト装置が接続された場合には、インクジェット式記録装置50をUSBデバイスとして機能させる。記録実行時に画像データは、情報処理装置200においてRGBデータからYMCデータに色変換された後、2値化処理が行われて2値化されたYMCデータに変換されて記録データが生成される。生成された記録データは、インクジェット式記録装置50を制御するための制御データとともに記録制御データとして情報処理装置200からインクジェット式記録装置50へ送信される。情報処理装置200から送信された記録制御データは、USBコントローラ23が受信した後、RAM22へ格納される。RAM22へ格納された記録制御データは、MPU26にて実行されるプログラム処理によって、コマンド解析、及びデータ圧縮された記録データを展開する処理等が実行されて、制御データと記録データとに分離される。制御データはMPU26へ転送され、展開された記録データはヘッドドライバ28へ転送される。
【0027】
一方、USBコントローラ23は、USBバスインタフェースを搭載したデジタルカメラ等のUSBデバイスが接続された場合には、インクジェット式記録装置50をUSBホスト装置として機能させる。また、メモリカードインタフェース24は、メモリカードスロット25に挿入されたメモリカードに格納されている画像データの読み出しを実行する。USBコントローラ23を介してデジタルカメラ等のUSBデバイスから読み出された画像データ、或いはメモリカードインタフェース24を介してメモリカードから読み出された画像データは、MPU26にて実行されるプログラム処理によってRGBデータからYMCデータに色変換された後、2値化処理が行われて2値化されたYMCデータに変換されて記録データが生成される。生成された記録データは、情報処理装置200から記録データを受信した場合と同様にヘッドドライバ28へ転送される。ヘッドドライバ28は、その記録データに基づいて記録ヘッド62を駆動し、記録ヘッド62のヘッド面から各色のインクが記録紙PAの記録面に噴射されて記録紙PAへの記録が実行される。
【0028】
図4は、記録ヘッド62のヘッド面を模式的に示した平面図である。
記録ヘッド62のヘッド面には、副走査方向YにM個の「ドット形成要素」としてのノズルN1〜NMが一定のノズル分布密度Dで配設された「ドット形成要素アレイ」としてのノズル列62K、62C、62LC、62M、62LM、62Yが主走査方向Xに略平行に図示の如く配設されている。ノズル列62KのノズルN1〜NMからはブラックインクが噴射され、ノズル列62CのノズルN1〜NMからはシアンインクが噴射され、ノズル列62LCのノズルN1〜NMからはライトシアンインクが噴射され、ノズル列62MのノズルN1〜NMからはマゼンダインクが噴射され、ノズル列62LMのノズルN1〜NMからはライトマゼンダインクが噴射され、ノズル列62YのノズルN1〜NMからはイエローインクが噴射される。同じドット形成位置に異なる色のドットを重ねて形成することによって、多彩な色彩表現による記録が実現される。
【0029】
つづいて、本発明に係るインターレース記録方式について説明する。
図5は、インターレース記録方式により主走査動作毎に形成されるドット位置と、主走査動作間の副走査動作による記録紙PAの搬送方向(副走査方向Y)と反対方向へ遷移する記録ヘッド62のノズル位置との位置関係の第1実施例を模式的に示したものである。
【0030】
ここで、ノズル列62Yの総ノズル数を総ノズル数M、総ノズル数Mのうち使用するノズル数を使用ノズル数N、記録紙PAの搬送量を搬送量P、ノズル列62Y内の1インチ(単位距離)当たりに存在するノズル数をノズル分布密度D、ノズル間距離を副走査方向Yの記録解像度(ドット間隔)の倍数で表した値を補間係数k、主走査方向Xにドットが連続したラインを形成するのに要する主走査動作(主走査パス)の回数をスキャン回数sとする。スキャン回数sは、2以上N未満の整数に設定し、補間係数kとN/sとは、互いに素の関係を満たす2以上N未満の整数に設定し、かつ、P=N/(s・D・k)なる関係式を満たす値を設定して記録を実行する。スキャン回数sを2以上N未満の整数に設定することによって、FOL(フルオーバーラップ)インターレース記録方式となる。
【0031】
尚、記録ヘッド62のヘッド面には、6個のノズル列が配設されているが(図4)、ノズル列62Yを例に説明し、その他のノズル列についてはノズル列62Yと同様なので説明は省略することとする。また、一般的なインクジェット式記録装置50の記録ヘッド62は、本発明をより分かりやすく説明するために、総ノズル数Mを実際のノズル数(例えば180ノズル等)より少ない総ノズル数M=16とし、ノズル分布密度D=180dpi(dpiはドット/インチ)とし、以下同様とする。
【0032】
また、ノズルN1〜ノズルN16のうち、黒丸又は白丸で示したものは、インクが噴射されてドットdを形成することができる正常な状態のノズル(正常ノズル)であり、黒三角又は白三角で示したものは、インクが噴射されずドットdを形成することができない状態のノズル(故障ノズル)である。また、×で示したものは、使用しないノズル(不使用ノズル)であり、以下同様とする。さらに、形成されたドットの位置関係を分かりやすくするため便宜的に、1回目の主走査動作X1及び4回目の主走査動作X4において形成されるドットdを白丸で表し、2回目の主走査動作X2及び3回目の主走査動作X3において形成されるドットdを黒丸で表し、5回目の主走査動作X5以降も同様のパターンの繰り返しとなっており、以下同様とする。
【0033】
当該実施例は、補間係数k=2、スキャン回数s=2としたFOLインターレース記録方式であり、主走査方向X及び副走査方向Yにドットdが隙間無く形成されるのに必要な主走査動作の回数(補間係数kにスキャン回数sを乗じて得られる数)は4回である。また、使用ノズル数N=14、搬送量P=7/360inchとした定則送りのインターレース記録方式である。そして、当該実施例は、ノズルN11に故障が生じてインクが噴射できない状態(ドットdを形成することができない状態)になった場合について示してある。
【0034】
ノズルN11が故障しているため、そのまま記録を実行してしまうと、本来ノズルN11でドットdを形成すべき所にドットdが形成されずドット抜けが生じてしまう。そこで、故障しているノズルN11にて形成すべきドットdが含まれる主走査ラインの他のドットdを形成するノズルN4で、そのノズルN4にて形成すべきドットを形成する際に、同時にノズルN11にて形成すべきドットdも代替形成して記録を実行する。例えば、符号R1で示したラスタは、1回目の主走査動作X1においてノズルN11にて形成されるドットdと、3回目の主走査動作X3においてノズルN4にて形成されるドットdとが、主走査方向Xに交互に形成されて構成されるべきラスタであるが、ノズルN11が故障している場合には、ラスタR1は、3回目の主走査動作X3において、ノズルN4により全てのドットdが形成されて構成される。つまり、3回目の主走査動作X3においては、ノズルN4にて形成すべきドットdに加えて、本来は1回目の主走査動作X1の際にノズルN11にて形成すべきドットdも代替形成することによって、ノズルN11の故障によるドット抜けが生じることなくラスタR1が完全なラスタとして構成されることになる。
【0035】
同様に2回目の主走査動作X2においてノズルN11にて形成されるべきドットdは、4回目の主走査動作X4においてノズルN4にて代替形成される(ラスタR2)。3回目の主走査動作X3においてノズルN11にて形成されるべきドットdは、5回目の主走査動作X5においてノズルN4にて代替形成される(ラスタR3)。4回目の主走査動作X4においてノズルN11にて形成されるべきドットdは、6回目の主走査動作X6においてノズルN4にて代替形成される(ラスタR4)。以下、同様にして、ラスタR1〜ラスタR9、さらには、それ以降のラスタについても同様に、ノズルN11の故障によるドット抜けが生じることなく全てのラスタが構成されて記録が実行される。
【0036】
このようにして、故障ノズル(ノズルN11)にて形成すべきドットdで構成されるラスタの他のドットdを形成する正常なノズル(ノズルN4)によりドットdを形成する主走査動作時に同時に、その故障ノズル(ノズルN11)にて形成すべきドットdも代替形成するので、ノズルN11の故障が生じても主走査動作の回数は変わることがない。また、それ以外のラスタは、本来のオーバーラップドット形成パターンでドットdが形成されてラスタが構成されるので、故障ノズルN11によるフルオーバーラップドット形成パターンへの影響を最小限にすることができる。したがって、ドットdを形成することができないドット形成要素(故障ノズル)が存在する状態においても記録実行時間を増加させることなく記録を実行することができ、かつオーバーラップ記録方式による高い記録品質を維持することができる。
【0037】
図6は、インターレース記録方式により主走査動作毎に形成されるドット位置と、主走査動作間の副走査動作による記録紙PAの搬送方向(副走査方向Y)と反対方向へ遷移する記録ヘッド62のノズル位置との位置関係の第2実施例を模式的に示したものである。
当該実施例は、第1実施例と同様に、補間係数k=2、スキャン回数s=2としたFOLインターレース記録方式であり、使用ノズル数N及び搬送量Pも第1実施例と同様である。そして、当該実施例は、ノズルN4に故障が生じてインクが噴射できない状態(ドットdを形成することができない状態)になった場合について示してある。
【0038】
ノズルN4が故障した場合には、例えば、符号R11で示したラスタは、3回目の主走査動作X3においてノズルN4(故障ノズル)にて形成すべきドットdが、1回目の主走査動作X1において、ノズルN11にて形成すべきドットdと同時にノズル11によって形成されることにより構成される。つまり、1回目の主走査動作X1において、ノズルN11にて形成すべきドットdに加えて、本来は3回目の主走査動作X3の際にノズルN4にて形成すべきドットdもあらかじめ代替形成することによって、ノズルN4の故障によるドット抜けが生じることなくラスタR11が完全なラスタとして構成されることになる。
【0039】
同様に4回目の主走査動作X4においてノズルN4にて形成されるべきドットdは、2回目の主走査動作X2においてノズルN11にて代替形成される(ラスタR12)。5回目の主走査動作X5においてノズルN4にて形成されるべきドットdは、3回目の主走査動作X3においてノズルN11にて代替形成される(ラスタR13)。6回目の主走査動作X6においてノズルN4にて形成されるべきドットdは、4回目の主走査動作X4においてノズルN11にて代替形成される(ラスタR14)。以下、同様にして、ラスタR11〜ラスタR19、さらには、それ以降のラスタについても同様に、ノズルN4の故障によるドット抜けが生じることなく全てのラスタが構成されて記録が実行される。
【0040】
図7は、インターレース記録方式により主走査動作毎に形成されるドット位置と、主走査動作間の副走査動作による記録紙PAの搬送方向(副走査方向Y)と反対方向へ遷移する記録ヘッド62のノズル位置との位置関係の第3実施例を模式的に示したものである。
当該実施例は、第1実施例と同様に、補間係数k=2、スキャン回数s=2としたFOLインターレース記録方式である。また、使用ノズル数N=16、搬送量P1=7/360inch、搬送量P2=9/360inchとした変則送り(搬送量P1の搬送と搬送量P2の搬送とが交互に繰り返される)のインターレース記録方式である。そして、当該実施例は、ノズルN11に故障が生じてインクが噴射できない状態(ドットdを形成することができない状態)になった場合について示してある。
【0041】
当該実施例においては、第1実施例と異なり、故障しているノズルN11にて形成すべきドットdを代替形成するのはノズルN3である。そのノズルN3にて形成すべきドットdを形成する際に、同時にノズルN11にて形成すべきドットdも代替形成して記録を実行する。例えば、符号R21で示したラスタは、ノズルN11が故障している場合には、3回目の主走査動作X3において、ノズルN3にて形成すべきドットdに加えて、本来は1回目の主走査動作X1の際にノズルN11にて形成すべきドットdも代替形成することによって、完全なラスタとして構成される。
【0042】
同様に2回目の主走査動作X2においてノズルN11にて形成されるべきドットdは、4回目の主走査動作X4においてノズルN3にて代替形成される(ラスタR22)。3回目の主走査動作X3においてノズルN11にて形成されるべきドットdは、5回目の主走査動作X5においてノズルN3にて代替形成される(ラスタR23)。4回目の主走査動作X4においてノズルN11にて形成されるべきドットdは、6回目の主走査動作X6においてノズルN3にて代替形成される(ラスタR24)。以下、同様にして、ラスタR21〜ラスタR29、さらには、それ以降のラスタについても同様に、ノズルN11の故障によるドット抜けが生じることなく全てのラスタが構成されて記録が実行される。
【0043】
このように、同じ補間係数kとスキャン回数sによるFOLインターレース記録方式であっても、使用ノズル数N及び搬送量Pが異なると、フルオーバーラップドット形成パターンにおける同一ラスタを構成するドットdを形成するノズルの関係が異なってくる。したがって、例えば、第1実施例におけるFOLインターレース記録方式において、同一ラスタを構成するドットdを形成するノズルN11とノズルN4とがともに故障した場合には、そのまま記録を実行するとラスタ抜けが生じてしまうので、第3実施例に示した如く使用ノズル数Nと搬送量Pの設定を変更する。それによって、故障しているノズルN11にて形成すべきドットdは、正常な状態のノズルN3によって代替形成することができ、故障しているノズルN4にて形成すべきドットdは、正常な状態のノズルN12によって代替形成することができるので、FOLインターレース記録方式による記録を実行することができる。
【0044】
図8は、インターレース記録方式により主走査動作毎に形成されるドット位置と、主走査動作間の副走査動作による記録紙PAの搬送方向(副走査方向Y)と反対方向へ遷移する記録ヘッド62のノズル位置との位置関係の第4実施例を模式的に示したものである。
当該実施例は、補間係数k=2、スキャン回数s=4としたFOLインターレース記録方式であり、主走査方向X及び副走査方向Yにドットdが隙間無く形成されるのに必要な主走査動作の回数(補間係数kにスキャン回数sを乗じて得られる数)は8回である。また、使用ノズル数N=12、搬送量P=3/360inchとした定則送りのインターレース記録方式である。そして、当該実施例は、ノズルN11に故障が生じてインクが噴射できない状態(ドットdを形成することができない状態)になった場合について示してある。尚、図8においては、代替形成されたドットdと故障ノズルN11との対応関係をより分かりやすくするため便宜的に、代替形成されたドットdを黒三角又は白三角で表してある。
【0045】
当該実施例においては、同一ラスタが異なる4回の主走査動作(主走査パス)で異なる4つのノズルによってドットdが形成されて構成される。例えば、符号R31で示したラスタは、ノズルN11が故障している場合には、5回目の主走査動作X5において、ノズルN5にて形成すべきドットdに加えて、本来は1回目の主走査動作X1の際にノズルN11にて形成すべきドットdも代替形成することによって、完全なラスタとして構成される。同様に2回目の主走査動作X2においてノズルN11にて形成されるべきドットdは、6回目の主走査動作X6においてノズルN5にて代替形成される(ラスタR32)。3回目の主走査動作X3においてノズルN11にて形成されるべきドットdは、7回目の主走査動作X7においてノズルN5にて代替形成される(ラスタR33)。4回目の主走査動作X4においてノズルN11にて形成されるべきドットdは、8回目の主走査動作X8においてノズルN5にて代替形成される(ラスタR44)。以下、同様にして、ラスタR31〜ラスタR34、さらには、それ以降のラスタについても同様に、ノズルN11の故障によるドット抜けが生じることなく全てのラスタが構成されて記録が実行される。
【0046】
故障しているノズルN11にて形成すべきドットdは、当該ドットdを含むラスタ(R31、R32、R33、R34)の他のドットdを形成するノズルN2、ノズルN5、及びノズルN8の3つのノズルのいずれかで代替形成することが可能である。このように、本来は故障ノズル(ノズルN11)にて形成すべきドットdを代替形成可能なノズルが複数ある場合には、可能な限りにおいて、主走査方向Xに隣接するドットdが同一のノズルにて形成されないように、故障ノズル(ノズルN11)にて形成すべきドットdを代替形成するノズルを選択することによって、フルオーバーラップドット形成パターンを維持することができる。以下、図9を参照しながら、さらに説明する。
【0047】
図9は、第4実施例におけるFOLインターレース記録方式によって形成されたラスタ群の符号R31で示したラスタ(図8参照)を拡大して模式的に示したものである。
図9(a)は、故障ノズルがない場合、図9(b)は、ノズルN11が故障している状態で、故障ノズルN11にて形成すべきドットdを代替形成することなく、そのまま記録を実行した場合、図9(c)は、ノズルN11が故障している状態で、故障ノズルN11にて形成すべきドットdを他のノズルで代替形成して記録を実行した場合、のラスタR31をそれぞれ図示したものである。白丸示したドットdの中の符号は、そのドットdを形成したノズルの番号(N1〜N16)であり、各ドットdの上の符号は、そのドットdが何回目の主走査動作(X1〜)において形成されたものかを示している。
【0048】
故障ノズルがない場合にラスタR31は、図9(a)に示した如く、1回目の主走査動作X1においてノズルN11によってドットd(符号N11が付されているドットd)が形成され、3回目の主走査動作X3においてノズルN8によってドットd(符号N8が付されているドットd)が形成され、5回目の主走査動作X5においてノズルN5によってドットd(符号N5が付されているドットd)が形成され、7回目の主走査動作X7においてノズルN2によってドットd(符号N2が付されているドットd)が形成される。そのため、ノズルN11が故障してドットdを形成することができない状態になった場合、故障ノズルN11にて形成すべきドットdを代替形成することなく、そのまま記録を実行すると、図9(b)に示した如く、1回目の主走査動作X1においてノズルN11にてドットdを形成すべき部分にドットdが形成されずドット抜けが生じてしまう。
【0049】
このような場合には、図9(c)に示した如く、5回目の主走査動作X5においてノズルN5にてドットdを形成する際に、1回目の主走査動作X1においてノズルN11にて形成すべきドットdも同時に代替形成する。それによって、ドット抜けが生じることなくラスタR31を構成することができる。また、仮に、1回目の主走査動作X1においてノズルN11にて形成すべきドットdを、その部分に隣接するドットdを形成するノズルN2又はノズルN8にて代替形成すると、同一主走査時に同一ノズルで主走査方向Xに隣接するドットdが形成される部分が生じて、フルオーバーラップドット形成パターンが部分的に維持できなくなってしまう。そこで、図9(c)に示した如く、1回目の主走査動作X1においてノズルN11にて形成すべきドットdを、その部分に隣接しないドットdを形成するノズルN5で代替形成する。それによって、故障ノズル(ノズルN11)によるドット抜けを防止しつつ、主走査方向Xに隣接するドットdが必ず異なる主走査動作(主走査パス)で異なるノズルによって形成されるフルオーバーラップドット形成パターンを維持してFOLインターレース記録方式による記録を実行することができる。
【0050】
さらに、他の実施例としては、上述した第1実施例〜第4実施例のいずれかに加えて、所定のドット形成精度が得られないノズルもドット形成不能な状態のノズルとみなして記録を実行するようにしても良い。それによって、ドット形成精度が著しく低い特定のノズルが存在することによる記録品質の低下を防止することができる。
【0051】
さらに、インクジェット式記録装置50に、ドット形成不能な状態となったノズルを記録実行中に検出することが可能な検出装置(故障ドット形成要素検出手段)を設けることによって、例えば、記録実行中に生じたノズルの故障等にもいち早く対応して、故障したノズルにて形成すべきドットを代替形成するノズルを設定することができ、オーバーラップ記録方式による高い記録品質を維持することができる。
【0052】
尚、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係るインクジェット式記録装置の概略の平面図である。
【図2】本発明に係るインクジェット式記録装置の概略の側面図である。
【図3】本発明に係るインクジェット記録装置の概略のブロック図である。
【図4】記録ヘッドのヘッド面を模式的に示した平面図である。
【図5】本発明に係るインターレース記録の第1実施例を示したものである。
【図6】本発明に係るインターレース記録の第2実施例を示したものである。
【図7】本発明に係るインターレース記録の第3実施例を示したものである。
【図8】本発明に係るインターレース記録の第4実施例を示したものである。
【図9】第4実施例にて形成されるラスタを模式的に示した拡大図である。
【符号の説明】
【0054】
21 ROM、22 RAM、23 USBコントローラ、24 メモリカードインタフェース、25 メモリカードスロット、26 MPU、27 I/O、28 ヘッドドライバ、50 インクジェット式記録装置、51 キャリッジガイド軸、52 プラテン、53 搬送駆動ローラ、54 搬送従動ローラ、55 排紙駆動ローラ、56 排紙従動ローラ、57 給紙トレイ、57b 給紙ローラ、61 キャリッジ、62 記録ヘッド、62K、62C、62LC、62M、62LM、62Y ノズル列、63 紙検出器、100 記録制御部、200 情報処理装置、d ドット、N1〜NM ノズル、PA 記録紙、SB システムバス、X 主走査方向、Y 副走査方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主走査方向に往復動可能に配設され、副走査方向に複数のドット形成要素が一定の間隔で配設されたドット形成要素アレイを有する記録ヘッドと、前記ドット形成要素を駆動するヘッド駆動手段と、前記記録ヘッドを被記録材に対して主走査方向に往復動させる主走査駆動手段と、前記被記録材を副走査方向に前記記録ヘッドに対して相対的に搬送する副走査駆動手段と、
前記ヘッド駆動手段、前記主走査駆動手段、及び前記副走査駆動手段を制御して、前記記録ヘッドを主走査方向へ往復動させながら記録データに基づいて、前記被記録材にドットを形成するとともに、所定の搬送量にて前記被記録材を副走査方向へ搬送する記録制御装置とを備えた記録装置であって、
前記記録制御装置は、同一主走査ラインの隣接したドットを異なる主走査パスで異なる前記ドット形成要素によって形成するオーバーラップドット形成パターンでドットを形成する際に、前記ドット形成要素アレイ内にドット形成不能な状態のドット形成要素が存在する場合には、ドット形成不能な状態のドット形成要素にて形成すべきドットが含まれる主走査ラインの他のドットを形成する同一ドット形成要素アレイ内の他のドット形成要素で、当該他のドット形成要素にて形成すべきドットを形成する際に、ドット形成不能な状態のドット形成要素にて形成すべきドットも同時に代替形成する、ことを特徴とした記録装置。
【請求項2】
請求項1において、前記記録制御装置は、前記ドット形成要素アレイの総ドット形成要素数を総ドット形成要素数M、総ドット形成要素数Mのうち使用するドット形成要素数を使用ドット形成要素数N、被記録材の所定の搬送量を搬送量P、前記ドット形成要素アレイ内の単位距離当たりに存在する前記ドット形成要素の個数をドット形成要素分布密度D、前記ドット形成要素の中心点間距離を副走査方向のドット間隔の倍数で表した値を補間係数k、主走査方向にドットが連続したラインを形成するのに要する主走査動作の回数をスキャン回数sとし、
スキャン回数sは、2以上N未満の整数に設定し、
補間係数kとN/sとは、互いに素の関係を満たす2以上N未満の整数に設定し、かつ、P=N/(s・D・k)なる関係式を満たす値を選定して記録を実行する、ことを特徴とした記録装置。
【請求項3】
請求項2において、前記記録制御装置は、同一ドット形成要素アレイ内にドット形成不能な状態のドット形成要素が2以上存在する場合には、同一主走査ラインを構成するドット形成要素の全てがドット形成不能な状態のドット形成要素とならない如くスキャン回数s又は使用ドット形成要素数Nを設定して記録を実行する、ことを特徴とした記録装置。
【請求項4】
請求項2又は3において、前記記録制御装置は、スキャン回数s=4以上である場合には、ドット形成不能な状態のドット形成要素にて形成すべきドットが含まれる主走査ラインにおいても可能な限りオーバーラップドット形成パターンにてドットが形成される如く、ドット形成不能な状態のドット形成要素にて形成すべきドットを代替形成するドット形成要素を選択する、ことを特徴とした記録装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項において、前記記録制御装置は、所定のドット形成精度が得られないドット形成要素をドット形成不能な状態のドット形成要素とみなして記録を実行する、ことを特徴とした記録装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項において、ドット形成不能な状態となったドット形成要素を記録実行中に検出することが可能な故障ドット形成要素検出手段を備えている、ことを特徴とした記録装置。
【請求項7】
主走査方向に往復動可能に配設され、副走査方向に複数のドット形成要素が一定の間隔で配設されたドット形成要素アレイを有する記録ヘッドと、前記ドット形成要素を駆動するヘッド駆動手段と、前記記録ヘッドを被記録材に対して主走査方向に往復動させる主走査駆動手段と、前記被記録材を副走査方向に前記記録ヘッドに対して相対的に搬送する副走査駆動手段と、前記ヘッド駆動手段、前記主走査駆動手段、及び前記副走査駆動手段を制御して、前記記録ヘッドを主走査方向へ往復動させながら記録データに基づいて、前記被記録材にドットを形成するとともに、所定の搬送量にて前記被記録材を副走査方向へ搬送する記録制御装置とを備えた記録装置において、前記ヘッド駆動手段、前記主走査駆動手段、及び前記副走査駆動手段を制御して、前記記録ヘッドを主走査方向へ往復動させながら記録データに基づいて、前記被記録材にドットを形成するとともに、所定の搬送量にて前記被記録材を副走査方向へ搬送する制御をコンピュータに実行させる記録制御プログラムであって、
同一主走査ラインの隣接したドットを異なる主走査パスで異なる前記ドット形成要素によって形成するオーバーラップドット形成パターンでドットを形成する際に、前記ドット形成要素アレイ内にドット形成不能な状態のドット形成要素が存在する場合には、ドット形成不能な状態のドット形成要素にて形成すべきドットが含まれる主走査ラインの他のドットを形成する同一ドット形成要素アレイ内の他のドット形成要素で、当該他のドット形成要素にて形成すべきドットを形成する際に、ドット形成不能な状態のドット形成要素にて形成すべきドットも同時に代替形成する手順を有する、ことを特徴とした記録制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−27139(P2006−27139A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−210758(P2004−210758)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】