記録装置、記録方法
【課題】隣接トラックサーボにおいて記録光と隣接サーボ光の円周方向位置の違いによる回転周波数の取れ残りを低減し、適切なサーボ状態で記録を行う。
【解決手段】隣接トラックサーボのため、記録層へのマーク記録を行うための記録光と、照射位置が記録光のディスク円周方向位置とは異なる位置とされた状態で上記光と一定のディスク半径方向の距離を保つ隣接トラックサーボ用の隣接サーボ光(ATS光)を照射する。この場合に、隣接サーボ光についての受光信号に基づくサーボエラー信号として、隣接サーボ光が記録光と同じディスク円周方向位置で照射とされたとした場合に得られるべき補正サーボエラー信号を求める。そして補正サーボエラー信号を用いて、トラッキングサーボ信号を生成し、トラッキングサーボを行う。
【解決手段】隣接トラックサーボのため、記録層へのマーク記録を行うための記録光と、照射位置が記録光のディスク円周方向位置とは異なる位置とされた状態で上記光と一定のディスク半径方向の距離を保つ隣接トラックサーボ用の隣接サーボ光(ATS光)を照射する。この場合に、隣接サーボ光についての受光信号に基づくサーボエラー信号として、隣接サーボ光が記録光と同じディスク円周方向位置で照射とされたとした場合に得られるべき補正サーボエラー信号を求める。そして補正サーボエラー信号を用いて、トラッキングサーボ信号を生成し、トラッキングサーボを行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光ディスク記録媒体に対して隣接トラックサーボを実行して記録を行う記録装置、記録方法に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特開2008−135144号公報
【特許文献2】特開2008−176902号公報
【背景技術】
【0003】
光の照射により信号の記録/再生が行われる光ディスク記録媒体(光ディスク)として、例えばCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray Disc:登録商標)などが普及している。
【0004】
これらCD、DVD、BDなど現状において普及している光ディスクの次世代を担うべき光ディスクに関して、先に本出願人は、上記特許文献1や上記特許文献2に記載されるようないわゆるバルク記録型のものを提案している。
ここで、バルク記録とは、少なくともカバー層とバルク層(記録層)とを有する光記録媒体(バルク型記録媒体)に対し、逐次焦点位置を変えてレーザ光照射を行ってバルク層内に多層記録を行うことで、大記録容量化を図る技術である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示では、例えばバルク記録型等の光ディスクの大容量化の促進のために、大容量記録に好適なトラッキングサーボ動作を実現することを目的とする。
特には、光ディスクに対して記録光と共に、隣接トラックサーボ用の隣接サーボ光を照射して、隣接トラックサーボを利用するトラッキング方式において好適な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の記録装置は、記録層を有する光ディスク記録媒体に対して、上記記録層へのマーク記録を行うための記録光と、照射位置が上記記録光のディスク円周方向位置とは異なる位置とされた状態で上記記録光と一定のディスク半径方向の距離を保つ隣接トラックサーボ用の隣接サーボ光とを共通の対物レンズを介して照射するように構成されると共に、上記隣接サーボ光の上記記録層からの反射光を受光するように構成された光照射・受光部と、上記対物レンズをディスク半径方向であるトラッキング方向に駆動するトラッキング機構と、上記隣接サーボ光についての受光信号に基づくサーボエラー信号として、上記隣接サーボ光が上記記録光と同じディスク円周方向位置で照射とされたとした場合に得られるべき補正サーボエラー信号を求め、該補正サーボエラー信号を用いて、トラッキングサーボ信号を生成するトラッキングサーボ信号生成部と、上記トラッキングサーボ信号に基づき上記トラッキング機構を駆動するトラッキング駆動部とを備える。
【0007】
本開示の記録方法は、記録層を有する光ディスク記録媒体に対して、上記記録層へのマーク記録を行うための記録光と、照射位置が上記記録光のディスク円周方向位置とは異なる位置とされた状態で上記記録光と一定のディスク半径方向の距離を保つ隣接トラックサーボ用の隣接サーボ光とを共通の対物レンズを介して照射して、上記隣接サーボ光の上記記録層からの反射光を受光し、上記隣接サーボ光についての受光信号に基づくサーボエラー信号として、上記隣接サーボ光が上記記録光と同じディスク円周方向位置で照射とされたとした場合に得られるべき補正サーボエラー信号を求め、該補正サーボエラー信号を用いて、トラッキングサーボ信号を生成し、上記トラッキングサーボ信号に基づき上記対物レンズをディスク半径方向であるトラッキング方向に駆動するトラッキングサーボを行いながら、上記記録光による上記記録層へのマーク記録を行う。
【0008】
このような本開示では、光ディスクに対する記録時のトラッキングサーボ方式として、隣接トラックサーボを利用したトラッキングサーボ動作を行う。
隣接トラックサーボとは、既に記録されたトラックに隣接サーボ光をトラッキングさせた状態で、隣接サーボ光に隣接した位置に照射される記録光で記録を行う方式である。これにより、予めトラックが存在しない記録媒体に対して、既に記録されたトラックに沿って新たなトラックの形成、即ちマーク記録によるマーク列の形成を行うことができる。
なお隣接トラックサーボのことをATS(Adjacent Track Servo)ともいう。
上記の隣接サーボ光とは隣接トラックサーボ(ATS)動作において既に形成されたトラックをトレースする再生パワーの光のことである。隣接サーボ光は「ATS光」ともいうこととする。
この隣接トラックサーボにおいては、記録光と隣接サーボ光(再生光)を照射するが、記録光と隣接サーボ光を半径方向に並べると、その両スポット間の距離がトラックピッチとなり、狭トラックピッチ化に限界がある。そこで大容量化のための狭トラックピッチ化を進めるには、記録光と隣接サーボ光の各スポットが、ディスク円周方向位置(ディスク中心から見た角度位置)として、異なる位置に配置されるように照射する。ところがこの場合、記録光と隣接サーボ光の円周方向位置の違いにより発生するサーボエラー成分の取れ残りによって、トラッキングサーボが不安定となる。
そこで本開示では、隣接サーボ光の受光信号に基づくサーボエラー信号として、隣接サーボ光が記録光と同じディスク円周方向位置で照射とされたとした場合に得られるべき補正サーボエラー信号を求め、該補正サーボエラー信号を用いて、トラッキングサーボ信号を生成し、トラッキングサーボ制御を行う。これにより、狭トラックピッチ化を実現しつつ、トラッキングサーボの安定化を図る。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、隣接トラックサーボ動作において記録光と隣接サーボ光(ATS光)の円周方向位置の違いによるトラッキングエラー成分の取れ残りを低減することができ、安定したトラッキングサーボが可能となる。これによってディスク記録媒体の大容量化に好適となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の形態のディスク記録媒体の構造の説明図である。
【図2】実施の形態のディスク記録媒体に対するフォーカス制御の説明図である。
【図3】実施の形態の記録装置の光学系の説明図である。
【図4】実施の形態の記録装置の内部構成のブロック図である。
【図5】隣接トラックサーボの説明図である。
【図6】トラッキングサーボ特性例の説明図である。
【図7】隣接トラックサーボによる取れ残り量の発散の様子の説明図である。
【図8】基準面サーボによるサーボでのスポット位置ずれの説明図である。
【図9】ATS+サーボの制御系のブロック図である。
【図10】隣接トラックサーボにおける記録光とATS光の円周方向位置の違いとその影響の説明図である。
【図11】記録光とATS光の円周方向位置の違いと偏芯の関係の説明図である。
【図12】第1の実施の形態のスポット位置の説明図である。
【図13】第1の実施の形態のサーボ制御系と取れ残り量の説明図である。
【図14】第2の実施の形態の補正方式の考え方の説明図である。
【図15】第2の実施の形態のサーボ制御系と取れ残り量の説明図である。
【図16】第2の実施の形態の変形例のサーボ制御系のブロック図である。
【図17】第3の実施の形態の補正方式の考え方の説明図である。
【図18】第3の実施の形態のサーボ制御系のブロック図である。
【図19】第3の実施の形態の変形例のサーボ制御系のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態を次の順序で説明する。
<1.記録対象とする光ディスクの構造>
<2.実施の形態の記録装置の構成>
<3.実施の形態のサーボ方式に至る過程>
[3−1:隣接トラックサーボ(ATS)]
[3−2:基準面サーボ]
[3−3:ATS+方式]
<4.第1の実施の形態のサーボ方式>
<5.第2の実施の形態のサーボ方式>
<6.第3の実施の形態のサーボ方式>
<7.変形例>
なお説明上、隣接トラックサーボのことを「ATS」(Adjacent Track Servo)ともいう。
また「ATS+」とは、ATSと基準面サーボを併用したサーボ方式を指すものとする。第1〜第3の実施の形態は、隣接トラックサーボを利用したトラッキングサーボ方式としてのATS+方式に本開示の技術を適用した例である。
【0012】
<1.記録対象とする光ディスクの構造>
図1は、実施の形態の記録装置が記録対象とする光ディスク記録媒体の断面構造図を示している。
実施の形態で記録対象とする光ディスク記録媒体は、いわゆるバルク記録型の光ディスク記録媒体とされ、以下、バルク型記録媒体1と称する。
光ディスク記録媒体としてのバルク型記録媒体1は、記録装置により回転駆動された状態にてレーザ光照射が行われてマーク記録(情報記録)が行われる。
なお、光ディスク記録媒体とは、光の照射により情報の記録(及び再生)が行われる円盤状の記録媒体を総称したものである。
【0013】
図1に示されるように、バルク型記録媒体1には、上層側から順にカバー層2、選択反射膜3、中間層4、バルク層5が形成されている。
ここで、本明細書において「上層側」とは、後述する実施の形態としての記録装置(記録装置10)側からのレーザ光が入射する面を上面としたときの上層側を指す。
また、本明細書においては「深さ方向」という語を用いるが、この「深さ方向」とは、上記の「上層側」の定義に従った上下方向(縦方向)と一致する方向(すなわち記録装置側からのレーザ光の入射方向に平行な方向:フォーカス方向)を指すものである。
【0014】
バルク型記録媒体1において、カバー層2は、例えばポリカーボネートやアクリルなどの樹脂で構成され、図示するようにその下面側には、記録位置を案内するための位置案内子が形成されている。
この場合、上記位置案内子としては、連続溝(グルーブ)又はピット列による案内溝が形成され、図のように凹凸の断面形状が与えられる。本例の場合、位置案内子としての案内溝はスパイラル状に形成されているとする。
カバー層2は、このような案内溝(凹凸形状パターン)が形成されたスタンパを用いた射出成形などにより生成される。
【0015】
また、案内溝が形成されたカバー層2の下面側には、選択反射膜3が成膜される。
バルク記録方式では、記録層としてのバルク層5に対してマーク記録を行うための記録光(記録光)とは別に、上記のような案内溝に基づきトラッキングやフォーカスのエラー信号を得るためのサーボ光を別途に照射する場合がある。なお、このサーボ光のことは、後述の隣接トラックサーボに用いる隣接サーボ光(ATS光)と区別するため「基準面サーボ光」ということとする。
このとき、仮に、基準面サーボ光がバルク層5に到達してしまうと、バルク層5内におけるマーク記録に悪影響を与える虞がある。このため、基準面サーボ光は反射し、記録光は透過するという選択性を有する反射膜が必要とされている。
従来よりバルク記録方式では、記録光と基準面サーボ光とはそれぞれ波長帯の異なるレーザ光を用いるようにされており、これに対応すべく、選択反射膜3としては、基準面サーボ光と同一の波長帯の光は反射し、それ以外の波長帯による光は透過するという、波長選択性を有する選択反射膜が用いられる。
【0016】
選択反射膜3の下層側には、例えばUV硬化樹脂などの接着材料で構成された中間層4を介して、記録層としてのバルク層5が形成(接着)されている。
本実施の形態で対象とする光ディスク記録媒体に対するマーク記録方式は特に限定されるものではなく、バルク記録方式の範疇において任意の方式が採用されればよい。
例えばバルク層5に対するマーク形成方式としては、干渉縞の変化・消失等によるマークを形成する方式や、空孔(ボイド)マークを形成する方式、屈折率変化によるマークを形成する方式など、多様な方式が考えられているが、特に本実施の形態においてマーク形成方式が限定されるものではない。
また従って、バルク層5の材料(記録材料)としては、採用するバルク記録の方式に応じて適宜最適なものが採用されればよい。
【0017】
ここで、上記のような構成を有するバルク型記録媒体1において、上述の案内溝の形成に伴い凹凸断面形状パターンの与えられた選択反射膜3は、サーボ光に基づく記録光の位置制御を行うにあたっての基準となる反射面となる。この意味で、選択反射膜3が形成された面を以下、基準面Refと称する。
【0018】
バルク型記録媒体1を対象とした記録時のフォーカスサーボ制御について図2を参照して説明する。
バルク型記録媒体1に対し、記録装置がバルク層5内に多層記録を行うために、予め情報記録を行うべき各層位置(情報記録層位置)が設定される。
図2に示すように、情報記録層位置は、基準面Refからそれぞれ深さ方向にオフセットof−L0、of−L1、of−L2・・・オフセットof−L(n)だけ離間した位置とされ、これらの各位置に記録層L0〜L(n)が形成される。なお図2ではL(n)=L4とした5層構造の例を示している。但し実際には20層構造、30層構造などの多層化が検討されている。
基準面Refからの各記録層L0〜L(n)へのオフセットof−L0〜of−L(n)の情報は、予め記録装置側に設定される。なお、オフセットof−L0〜of−L(n)は「オフセットof−L」と総称する。
【0019】
上述のように、バルク型記録媒体1に対しては、記録マークを形成するための記録光LZ1と共に、これとは波長の異なる基準面サーボ光LZ2を照射する。これら記録光LZ1と基準面サーボ光LZ2は、共通の対物レンズ20を介してバルク型記録媒体1に照射されることになる。
なお、本実施の形態では、さらに隣接トラックサーボのための隣接サーボ光(ATS光)も照射するが、図示及び説明の簡略化のため、ここではATS光は省略している。ATS光は記録光LZ1と同波長帯の再生パワーのレーザ光であり、この図2においては記録光LZ1と同様に考えれば良い。
【0020】
ここで図1に示したように、バルク型記録媒体1におけるバルク層5には、例えばDVDやブルーレイディスクなどの現状の光ディスクについての多層ディスクとは異なり、記録対象とする各層位置にはピットやグルーブなどによる案内溝を有する反射面が形成されていない。このため、未だマークの形成されていない記録時においては、記録光LZ1についてのフォーカスサーボやトラッキングサーボは、記録光LZ1自身の反射光を用いて行うことはできないことになる。
このためバルク型記録媒体1に対する記録時において、記録光LZ1についてのフォーカスサーボは、基準面サーボ光LZ2の反射光を利用して行うことになる。
なお、記録光LZ1についてのトラッキングサーボは、後に詳しく述べるが、基準面サーボ光LZ2の反射光、及びATS光の反射光を利用したATS+方式で行う。
【0021】
記録時における記録光LZ1(及びATS光)のフォーカスサーボのために、記録装置では、記録光LZ1の合焦位置を、基準面サーボ光からは独立して変化させることのできるフォーカス機構(後述の図3におけるレンズ14,15、及びレンズ駆動部16によるエキスパンダ)を設けている。そして、基準面Refを基準とした図2のようなオフセットof-Lに基づき、記録光用のフォーカス機構(エキスパンダ)を制御することで行う。
【0022】
一方、基準面サーボ光LZ2のフォーカスサーボは、基準面サーボ光LZ2の基準面3からの反射光(戻り光)を用いて、対物レンズ20を制御することで行われる。
記録光LZ1と基準面サーボ光LZ2とが共通の対物レンズ20を介して照射され、且つ基準面サーボ光LZ2のフォーカスサーボが、その基準面Refからの反射光に基づき対物レンズ20を制御することで行われることより、記録光LZ1の合焦位置は、基本的には基準面Ref上に追従する。
換言すれば、基準面サーボ光LZ2の基準面Refからの反射光に基づく対物レンズ20のフォーカスサーボにより、記録光LZ1の合焦位置についてのバルク型記録媒体1の面変動に対する追従機能が与えられていることになる。
その上で、上記のような記録光LZ1用のフォーカス機構によって、記録光LZ1の合焦位置をオフセットof−Lの値の分だけオフセットさせる。これにより、バルク層5内の所要の深さ位置に記録光LZ1の合焦位置を追従させることができる。
例えば記録層L0に対する記録を行う場合、記録光LZ1用のフォーカス機構によって、記録光LZ1の合焦位置をオフセットof−L1の値の分だけオフセットさせる。
【0023】
このようにオフセットof−Lの値を用いて記録光LZ1のフォーカス機構を駆動することで、深さ方向におけるマークの形成位置(記録層の位置)を、記録層L0〜L(n)のうちで適宜選択することができる。
【0024】
なお、記録時のアドレス情報の取得は、基準面Refにアドレス情報を記録した凹凸パターン(ピット列やウォブリンググルーブ)が形成されていることを利用できる。即ち基準面Refからの基準面サーボ光LZ2の反射光情報から取得することができる。
また、バルク型記録媒体1としては、図1とは異なり、カバー層2側からみて、基準面Refがバルク層5よりも深い位置に形成されるものもある。
【0025】
<2.実施の形態の記録装置の構成>
上記のようなバルク型記録媒体1に対して情報記録を行う実施の形態の記録装置の構成について説明する。
図3は、図1に示したバルク型記録媒体1に対する記録を行う記録装置が備える光学系の構成を示している。具体的には、記録装置が備える光学ピックアップOPの内部構成を主に示している。
【0026】
図3において、記録装置に装填されたバルク型記録媒体1は、当該記録装置における所定位置においてそのセンターホールがクランプされるようにしてセットされ、図示を省略したスピンドルモータによる回転駆動が可能な状態に保持される。
光学ピックアップOPは、スピンドルモータにより回転駆動されるバルク型記録媒体1に対して記録光、基準面サーボ光、及び隣接トラックサーボ用のスポットを形成するためのATS光を照射するために設けられる。
なお本例の場合、ATS光は、再生時においてはマークにより記録された信号の再生を行うための再生光として用いられることになる。
【0027】
光学ピックアップOP内には、マークによる信号記録を行うための記録光の光源となる記録用レーザ11rと、基準面Refに形成された位置案内子を利用した位置制御を行うための基準面サーボ光の光源であるサーボ用レーザ24とが設けられる。さらに、記録時におけるATS光の照射及び再生時における記録信号の読み出しを行うためのレーザ光を照射するための光源であるATS・再生時用レーザ11apが設けられる。
【0028】
ここで、先に述べたように、記録光と基準面サーボ光とはそれぞれ波長帯の異なる光を用いる。本例の場合、記録光の波長はおよそ405nm程度(いわゆる青紫色レーザ光)、基準面サーボ光の波長はおよそ650nm程度(赤色レーザ光)とされているとする。
また、ATS光や信号読み出しのための再生光として機能すべきATS・再生時用レーザ11apを光源とするレーザ光(記録時に関しては「ATS光」、再生時に関しては「再生光」ともいう)は、選択反射膜3を透過してバルク層5内に到達させる必要があり、なお且つ記録再生波長は同等とすべきことから、その波長は記録光と同波長とする。
【0029】
なお、図2においてはATS・再生時用レーザ11apを1つのみ示しているが、後述する第1の実施の形態に関しては、2つのATS光(主ATS光と副ATS光)を照射する。このため、ATS・再生時用レーザ11apを2単位設ける場合もある。或いはATS・再生時用レーザ11apをマルチビームレーザダイオードとして構成したり、さらに或いは、ATS・再生時用レーザ11apからのATS光についてグレーティング等で主ATS光と副ATS光となる複数のATS光を形成するようにする。
【0030】
光学ピックアップOP内には、記録光、基準面サーボ光、及びATS光のバルク型記録媒体1への共通の出力端となる対物レンズ20が設けられる。
さらには、ATS光のバルク型記録媒体1からの反射光を受光するための第1受光部23と、基準面サーボ光のバルク型記録媒体1からの反射光を受光するための第2受光部29とが設けられる。
【0031】
その上で、光学ピックアップOP内においては、記録用レーザ11rより出射された記録光及びATS・再生時用レーザ11apから出射されたATS光を対物レンズ20に導くと共に、当該対物レンズ20に入射した上記バルク型記録媒体1からのATS光の反射光を第1受光部23に導くための光学系が形成される。
【0032】
具体的に、記録用レーザ11rより出射された記録光、及びATS・再生時用レーザ11apから出射されたATS光は、共にコリメーションレンズ12を介して平行光となるようにされた後、偏光ビームスプリッタ13に入射する。偏光ビームスプリッタ13は、このように光源側から入射した記録光、ATS光については透過するように構成されている。
【0033】
上記偏光ビームスプリッタ13を透過した記録光、ATS光は、固定レンズ14、可動レンズ15、及びレンズ駆動部16から成るエキスパンダに入射する。このエキスパンダは、光源に近い側が固定レンズ14とされ、光源に遠い側に可動レンズ15が配置され、レンズ駆動部16によって上記可動レンズ15が入射光の光軸に平行な方向に駆動されることで、記録光、ATS光について基準面サーボ光とは独立したフォーカス制御を行う。このエキスパンダは、図2の説明で述べた記録光用フォーカス機構に相当するものである。
当該記録光用フォーカス機構におけるレンズ駆動部16は、後述の図4に示すコントローラ44によって、記録対象とする情報記録層位置に対応して設定されたオフセットof-Lの値に応じて駆動される。
【0034】
記録光用フォーカス機構を構成する固定レンズ14及び可動レンズ15を介した各レーザ光は、図のようにミラー17にて反射された後、1/4波長板18を介してダイクロイックプリズム19に入射する。
ダイクロイックプリズム19は、その選択反射面が、記録光、ATS光と同波長帯の光は反射し、それ以外の波長による光は透過するように構成されている。従って上記のようにして入射した記録光、ATS光は、ダイクロイックプリズム19にて反射される。
ダイクロイックプリズム19で反射された各レーザ光は、対物レンズ20を介してバルク型記録媒体1に対して照射される。
【0035】
ここで、このように記録光、ATS光が対物レンズ20を介して照射されることによっては、バルク層5内の対象とする情報記録層位置において、後述する図10A或いは図12Aのように、記録スポットSPbr、隣接トラックサーボ用スポット(ATSスポット)SPbsが形成される。(第1の実施の形態に関しては、図12AのようにATSスポットは2つのスポットSPbs、SPbhとなる)
この場合の光学系は、これら記録スポットSPbrとATSスポットSPbs(及びSPbh)との位置関係が、予め設定された位置関係で固定となるように設計されている。
即ちATSスポットSPbs(及びSPbh)を形成するATS光は、照射位置が、記録スポットSPbrを形成する記録光のディスク円周方向位置(ディスク中心から見た角度位置)とは異なる位置とされた状態で、記録光と一定のディスク半径方向の距離を保つようにされている。
【0036】
対物レンズ20に対しては、対物レンズ20をフォーカス方向(バルク型記録媒体1に対して接離する方向)、及びトラッキング方向(フォーカス方向に直交する方向:バルク型記録媒体1の半径方向に平行な方向)に変位可能に保持する2軸アクチュエータ21が設けられる。
2軸アクチュエータ21には、フォーカスコイル、トラッキングコイルが備えられ、それぞれに駆動信号(後述する駆動信号FD、TD)が与えられることで、対物レンズ20をフォーカス方向、トラッキング方向にそれぞれ変位させる。
【0037】
ここで、記録時や再生時においては、上記のようにバルク型記録媒体1に対してATS光(再生光)が照射されることに応じて、バルク層5内のマーク列からの当該ATS光(再生光)の反射光が得られる。
ATS光の反射光は、対物レンズ20を介してダイクロイックプリズム19に導かれ、当該ダイクロイックプリズム19にて反射される。
ダイクロイックプリズム19で反射されたATS光の反射光は、1/4波長板18→ミラー17→記録光用フォーカス機構(可動レンズ15→固定レンズ14)を介した後、偏光ビームスプリッタ13に入射する。
【0038】
このように偏光ビームスプリッタ13に入射するATS光の反射光(復路光)は、1/4波長板18による作用とバルク型記録媒体1での反射時の作用とにより、ATS・再生時用レーザ11ap側から偏光ビームスプリッタ13に入射した光(往路光)とはその偏光方向が90度異なるようにされる。この結果、ATS光の反射光は、偏光ビームスプリッタ13にて反射される。
そして偏光ビームスプリッタ13にて反射されたATS光の反射光は、集光レンズ22を介して第1受光部23の受光面上に集光する。
【0039】
ここで、図示による説明は省略するが、第1受光部23は複数の受光素子(この場合は4つであるとする)を備えて構成される。以下、第1受光部23としての複数の受光素子で得られる受光信号については、これらを総括して受光信号DT−apと表記する。
なお、第1の実施の形態に関しては、2つのATSスポットSPbs、SPbhについて2つの反射光が得られ、これに応じて第1受光部23には、2つのATS光の反射光をそれぞれ受光する受光素子が形成されている。
【0040】
また、光学ピックアップOP内には、以上の記録光、ATS光についての光学系の構成に加えて、サーボ用レーザ24より出射された基準面サーボ光を対物レンズ20に導き、且つ、バルク型記録媒体1からの基準面サーボ光の反射光を第2受光部29に導くための光学系が形成される。
サーボ用レーザ24より出射された基準面サーボ光は、コリメーションレンズ25を介して平行光とされた後、偏光ビームスプリッタ26に入射する。偏光ビームスプリッタ26は、このようにサーボ用レーザ24側から入射した基準面サーボ光(往路光)は透過するように構成される。
【0041】
偏光ビームスプリッタ26を透過した基準面サーボ光は、1/4波長板27を介してダイクロイックプリズム19に入射する。
先に述べたように、ダイクロイックプリズム19は、記録光、ATS光と同波長帯の光は反射し、それ以外の波長による光は透過するように構成されているため、基準面サーボ光はダイクロイックプリズム19を透過し、対物レンズ20を介してバルク型記録媒体1に照射される。
【0042】
また、このようにバルク型記録媒体1に基準面サーボ光が照射されたことに応じて得られる当該基準面サーボ光の反射光(基準面Refからの反射光)は、対物レンズ20を介した後ダイクロイックプリズム19を透過し、1/4波長板27を介して偏光ビームスプリッタ26に入射する。
このようにバルク型記録媒体1側から入射した基準面サーボ光の反射光(復路光)は、1/4波長板27の作用とバルク型記録媒体1での反射時の作用とにより、往路光とはその偏光方向が90度異なるものとされ、従って復路光としての基準面サーボ光の反射光は偏光ビームスプリッタ26にて反射される。
【0043】
偏光ビームスプリッタ26にて反射された基準面サーボ光の反射光は、集光レンズ28を介して第2受光部29の受光面上に集光する。
この第2受光部29としても複数の受光素子(例えば4つ)を備え、以下、第2受光部29としての複数の受光素子で得られる受光信号を総括して受光信号DT−svと表記する。
【0044】
ここで図示による説明は省略するが、記録装置には、光学ピックアップOP全体をトラッキング方向にスライド駆動するスライド駆動部が設けられ、当該スライド駆動部による光学ピックアップOPの駆動により、レーザ光の照射位置を広範囲に変位させることができるようにされている。
【0045】
図4は、実施の形態の記録装置の全体的な内部構成を示している。
なお図4において、光学ピックアップOPの内部構成については、図2に示した構成のうち記録用レーザ11r、レンズ駆動部16、2軸アクチュエータ21のみを抽出して示している。
なお、後述する第2、第3の実施の形態の場合、対物レンズ20の位置を検出するレンズ位置センサを設ける場合があるため、これをレンズ位置センサ45として示している。
【0046】
図4において、記録装置には、記録光、ATS光に係る信号処理系として、図中の記録処理部31、マトリクス回路32、再生処理部33、再生時用サーボ回路34、及びATS側フィルタ35が設けられている。
【0047】
記録処理部31には、バルク型記録媒体1に対して記録すべきデータ(記録データ)が入力される。
記録処理部31は、入力された記録データに対してエラー訂正符号の付加や所定の記録変調符号化、アドレス情報の付加を行うなどして、バルク型記録媒体1に実際に記録される例えば「0」「1」の2値データ列である記録変調データ列を得る。
そして、当該記録変調データ列に基づき生成した記録パルス信号RCPにより、光学ピックアップOP内の記録用レーザ11rを発光駆動する。
【0048】
マトリクス回路32には、前述した第1受光部23からの受光信号DT−apが入力される。
マトリクス回路32は、受光信号DT−apに基づき、マトリクス演算処理により必要な各種の信号を生成する。
【0049】
上述のように本例の場合、バルク層5にマーク列により記録された信号の再生時(ユーザデータの再生時)には、ATS光を、再生用のレーザ光(再生光)として使用する。なお且つ再生時には、ATS光の反射光に基づき既記録マーク列を対象としたフォーカスサーボ制御及びトラッキングサーボ制御を行うものとしている。
【0050】
このことに対応してマトリクス回路32では、受光信号DT−apに基づき、上述した記録変調データ列の再生信号に相当する高周波信号(和信号:以下、再生信号RFとする)、フォーカスサーボ制御のためのフォーカスエラー信号FE−ap(マーク列に対するフォーカス誤差を表す信号)、トラッキングサーボ制御のためのトラッキングエラー信号TE−ap(隣接トラックサーボ用スポットSPbsの既記録マーク列に対する半径方向における位置誤差を表す信号)を生成するように構成される。
【0051】
マトリクス回路32にて生成された再生信号RFは、再生処理部33に供給される。
また、フォーカスエラー信号FE−apは、再生時用サーボ回路34に供給される。
また、トラッキングエラー信号TE−apは、再生時用サーボ回路34に対して供給されると共に、後述する記録時における位置制御に用いられるべく、ATS側フィルタ35に対しても供給される。
【0052】
再生処理部33は、再生信号RFについて2値化処理や記録変調符号の復号化・エラー訂正処理など、上述した記録データを復元するための再生処理を行い、記録データを再生した再生データを得る。
また再生処理部33はマーク列により記録されたデータ中に埋め込まれたアドレス情報の検出も行う。図示は省略しているが、検出されたアドレス情報はコントローラ44に供給される。
【0053】
再生時用サーボ回路34は、コントローラ44からの指示に応じて、フォーカスエラー信号FE−ap、トラッキングエラー信号TE−apのそれぞれに基づき、フォーカスサーボ信号FS−ap、トラッキングサーボ信号TS−apを生成する。
ここでフォーカスサーボ信号FS−apは、ATS光の合焦位置を再生対象とする情報記録層位置(マーク形成層位置)に追従させる(フォーカス誤差をキャンセルする)ための信号となる。
またトラッキングサーボ信号TS−apは、ATS光のスポット位置をマーク列に追従させる(トラッキング誤差をキャンセルする)ための信号となる。
これらフォーカスサーボ信号FS−ap、トラッキングエラー信号TS−apは、再生時において使用されるものである。
図示するようにフォーカスサーボ信号FS−apはセレクタ40に供給され、トラッキングエラー信号TS−apはセレクタ41に対して供給される。
【0054】
ATS側フィルタ35は、コントローラ44からの指示に応じて、トラッキングエラー信号TE−apに基づきトラッキングサーボ信号TS−atsを生成する。
具体的に、ATS側フィルタ35は、トラッキングエラー信号TE−apに対し位相補償等のトラッキングサーボのためのフィルタ処理を施して、トラッキングエラー信号TE−apが表すトラッキング誤差をキャンセルするためのトラッキングサーボ信号TS−atsを生成する。
このとき、ATS側フィルタ35としては、例えば全積分や一次のLPF(ローパスフィルタ)など、ATSのループにピークを生じさせない構成とする。
図示するようにトラッキングサーボ信号TS−atsは、基準面側サーボフィルタ37に供給される。
【0055】
記録装置には、基準面サーボ光の反射光についての信号処理系として、信号生成部36、基準面側サーボフィルタ37、及び記録時用フォーカスサーボ回路38が設けられる。
【0056】
信号生成部36は、図3に示した第2受光部29における複数の受光素子からの受光信号DT−svに基づき、必要な信号を生成する。
具体的に信号生成部36は、受光信号DT−svに基づき、基準面Refに形成された位置案内子(トラック)に対する基準面サーボ光の照射スポット位置の半径方向における位置誤差を表すトラッキングエラー信号TE−svを生成する。
また信号生成部36は、記録時におけるフォーカスサーボ制御を行うための信号として、基準面Ref(選択反射膜3)に対する基準面サーボ光のフォーカス誤差を表すフォーカスエラー信号FE−svを生成する。
【0057】
信号生成部36により生成されたフォーカスエラー信号FE−svは、記録時用フォーカスサーボ回路38に対して供給される。
記録時用フォーカスサーボ回路38は、コントローラ44からの指示に応じ、フォーカスエラー信号FE−svに基づいてフォーカスサーボ信号FS−svを生成し、これをセレクタ40に対して出力する。
【0058】
セレクタ40は、コントローラ44から指示に応じて、記録時には記録時用フォーカスサーボ回路38からのフォーカスサーボ信号FS−sv(つまり基準面サーボ光の焦点位置を基準面Refに追従させるためのサーボ制御信号)を選択し、再生時には、再生時用サーボ回路35からのフォーカスサーボ信号FS−ap(再生光の焦点位置を再生対象とする情報記録層位置に追従させるためのサーボ制御信号)を選択する。
【0059】
セレクタ40により選択されたフォーカスサーボ信号FSは、フォーカスドライバ42に供給される。
フォーカスドライバ42は、供給されたフォーカスサーボ信号FSに基づき生成したフォーカス駆動信号FDにより2軸アクチュエータ21のフォーカスコイルを駆動する。
これにより、記録時には、対物レンズ20が、基準面サーボ光の焦点位置を基準面Refに追従させるようにして駆動される。また再生時には、対物レンズ20がATS光(つまり再生光)の焦点位置を再生対象とする情報記録層位置に追従させるようにして駆動される。
なお、後述もするように、記録時におけるATS光(及び記録光)についてのフォーカス制御(記録対象とする情報記録層位置に合焦させるためのフォーカス制御)は、レンズ駆動部16(エキスパンダ)の制御により実現されるものである。
【0060】
また、信号生成部36により生成されたトラッキングエラー信号TE−svは、基準面側サーボフィルタ37に供給される。
ここで基準面側サーボフィルタ37には、上述のようにATS側フィルタ35からトラッキングサーボ信号TS−atsも供給される。
第1〜第3の実施の形態では、記録時のトラッキングサーボ方式として、ATS+方式を採用する。第1〜第3の実施の形態のトラッキングサーボ方式についてはそれぞれ後に詳しく述べるが、ATS+方式は、ATSと基準面サーボを併用したサーボ方式である。
基準面側サーボフィルタ37は、基準面サーボループにATS側のトラッキングサーボ信号TS−atsを注入して記録時のトラッキングサーボ信号TS−arfを生成する。
【0061】
基準面側サーボフィルタ37により生成されたトラッキングサーボ信号TS−atfはセレクタ41に供給される。
セレクタ41は、コントローラ44からの指示に応じ、記録時にはトラッキングサーボ信号TS−arfを選択し、再生時には再生時用サーボ回路35からのトラッキングサーボ信号TS−apを選択する。
【0062】
セレクタ41により選択されたトラッキングサーボ信号TSは、トラッキングドライバ43に供給される。
トラッキングドライバ43は、供給されたトラッキングサーボ信号TSに基づき生成したトラッキング駆動信号TDにより、2軸アクチュエータ21のトラッキングコイルを駆動する。
これにより、再生時には、対物レンズ20がトラッキングサーボ信号TS−apに基づき、ATS光のスポット位置がマーク列に追従するように駆動されることとなる。また記録時には、対物レンズ20が、トラッキングサーボ信号TS−arfとしての、ATS光のトラッキング誤差成分と基準面サーボ光のトラッキング誤差成分との双方を反映したATS+方式のサーボ制御信号に基づき駆動されることになる。
【0063】
コントローラ44は、例えばCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などのメモリ(記憶装置)を備えたマイクロコンピュータで構成され、例えばROM等に記憶されたプログラムに従った制御・処理を実行することで、記録装置の全体制御を行う。
例えばコントローラ44は、前述したように予め各情報記録層位置に対応して設定されたオフセットof−Lの値に基づいて、記録時における記録光、ATS光の合焦位置の制御(設定)を行う。具体的には、記録対象とする情報記録層位置に対応して設定されたオフセットof−Lの値に基づき、光学ピックアップOP内のレンズ駆動部16を駆動することで、深さ方向における記録位置及びATS光の合焦位置の選択を行う。
【0064】
また、コントローラ44は、記録時と再生時とで、それぞれ対応する手法でのフォーカスサーボ、トラッキングサーボが行われるようにするための制御を行う。
具体的に、フォーカスサーボ側については、記録時において、基準面サーボ光の反射光に基づき対物レンズ20のフォーカスサーボ制御が実行されるように、記録時用フォーカスサーボ回路38にフォーカスサーボ信号FS−svを生成させ且つ、セレクタ40により当該フォーカスサーボ信号FS−svを選択させる。
また再生時には、ATS光のマーク列からの反射光に基づき対物レンズ20のフォーカスサーボ制御を実行させるべく、再生時用サーボ回路34にフォーカスサーボ信号FS−apを生成させ且つ、セレクタ40により当該フォーカスサーボ信号FS−apを選択させる。
【0065】
また、トラッキングサーボについては、記録時には、基準面サーボ光の反射光とATS光の反射光とに基づく対物レンズ20のトラッキングサーボ制御が実行されるように、基準面側サーボフィルタ37、ATS側フィルタ35の処理をそれぞれ実行させ且つ、セレクタ41に、トラッキングエラーTS−arfを選択させる。
また再生時には、ATS光の反射光に基づく対物レンズ20のトラッキングサーボ制御が実行させるべく、再生時用サーボ回路34にトラッキングサーボ信号TS−apを生成させ且つ、セレクタ41に当該トラッキングサーボ信号TS−apを選択させる。
【0066】
なお、第2,第3の実施の形態においては、レンズ位置センサ45が設けられる場合がある。レンズ位置センサ45は対物レンズ20の位置情報を検出し、コントローラ44に供給する。コントローラ44は、レンズ位置センサ45の情報に基づき、基準面側サーボフィルタ37に、ATS+方式の演算に用いる偏芯に応じた基準値(オフセット量)OFSの情報を与える。
或いは信号生成部36が、基準面Refの情報から偏芯に応じた基準値OFSを生成する場合もある。その場合、レンズ位置センサ45は不要となる。
【0067】
<3.実施の形態のサーボ方式に至る過程>
[3−1:隣接トラックサーボ(ATS)]
ここで後述する実施の形態の理解のため、実施の形態における記録時のトラッキングサーボ方式を開発するに至った技術的な過程を説明しておく。具体的にはATS方式、基準面側サーボ方式、ATS+方式について述べる。
【0068】
まずATS方式について説明する。
光ディスク記録媒体の容量を増やす1つの手法として、ディスクの厚み方向に情報記録層の数を増やしていくという方法がある。
従来の光ディスクでは、情報記録層にグルーブと呼ばれる溝が形成されており、このグルーブにより記録光・再生光のスポット位置を検出し、記録光・再生光のスポットが所定の位置に来るように制御される。
【0069】
ところが、グルーブの形成は手間がかかる工程であり、各記録層の全面にグルーブを形成する場合、記録層数を増やすとディスクの製造コストが上がるという問題がある。
そこで、ATS方式が考えられた。
これはグルーブを全面に形成するのではなく、記録層の一部にのみ形成する。そしてサーボ光(ATS光)でその形成されたグルーブをなぞるように制御を行ない、ATS光から所定の距離を置いて配置される記録光によって、グルーブのない箇所に信号を記録する。以降、ATS光は記録光によって記録された信号をなぞるように制御することで、グルーブの形成に関するコストを下げるものである。
【0070】
図5に概略動作を示す。図5Aのように予め形成されたトラックTKpが例えばグルーブとして形成されている。
この光ディスクの記録層に対し、記録光とATS光を照射する。記録光のスポット(記録スポットSPbr)とATS光のスポット(ATSスポットSPbs)は、半径方向にはトラックピッチ分離間した状態に固定される。
まず予め形成されたトラックTKpに対してATSスポットSPbsがオントラッキング状態でトレースするように制御する。これにより、トラックピッチ分だけ離れた記録スポットSPbrによりデータ記録が行われ、図のようにトラックTKrが形成されていく。
以降は、図5Bのように、ATSスポットSPbsが、既に記録スポットSPbrにより記録されたトラックをトレースするようにし、それによって、その外周側に新たに記録スポットSPbrによりデータ記録が行われ、トラックTKrが形成されていく。
【0071】
このようなATSによれば、トラックピッチは各スポットSPbs、SPbr間の半径方向での距離として一定とでき、全面にグルーブが形成されていなくとも、所定のトラックピッチを保ったスパイラル状のトラックを形成していくことができる。
【0072】
ところがATSの場合、サーボ特性により特定の周波数帯におけるノイズが強調されてしまい、サーボが発散してしまうという問題がある。
図6は光ディスクのトラッキングサーボにおける一般的なサーボ特性の例である。図6Aでは開ループ特性を、図6Bでは閉ループ特性を示している。
この例では、1kHz〜5kHzの間にゲインが0より大きくなる傾向が見られる。
【0073】
この場合、この周波数の外乱に対してはトラッキングサーボ動作が過度に応答し、その様子が形成されるトラック(マーク列)に表れる。ディスクが1回転し、ATS光が外乱に応答した箇所に差し掛かると、その箇所のマーク列には、上記の周波数の成分が含まれているため、この周波数成分にさらに過度に応答してしまう。このため、記録されたマーク列に含まれる上記周波数成分が徐々に大きくなっていき、その結果、トラッキングサーボの追従性能を越えてしまい、トラッキング制御が行なえなくなってしまう。
図7は通常サーボ(目的のトラックやグルーブに追従させるサーボ)と、ATS(隣接トラックサーボ)の場合のトラッキングエラー成分の取れ残り量を示している。
図からわかるようにATSの場合、取れ残り量が徐々に発散していく。
【0074】
[3−2:基準面サーボ]
一方、記録層にグルーブを形成せずに、記録層とは別に基準面を設け、基準面にのみ制御信号(グルーブ等)を形成することも提案された。本例でいう図1のような構造である。
サーボ光(基準面サーボ光)を基準面に形成された制御信号により制御を行ない、記録光により記録層に信号を記録するようにすることで、各記録層にグルーブを形成するコストを削減するものである。
【0075】
ところがこの基準面サーボの場合、対物レンズからの参照面と記録面が異なるため、ディスクの偏芯によるトラックの位置ずれに追従するために対物レンズが動いた場合や、ディスクのチルトなどが発生した場合には、基準面でのスポット位置と記録層のスポット位置にずれが生じる。
図8にスポット位置ずれの様子を示す。図8の各符号は図1,図2で用いた符号を用いる。図8Aは、ディスクチルトや対物レンズシフトが無い状態を示している。この場合、基準面Refに対して基準面サーボ光LZ2を照射し、記録層L0に記録光LZ1を照射している状態を示している。基準面Refと記録層L0では、ディスク厚み方向に距離があるが、基準面サーボ光LZ2と記録光LZ1のスポット位置は、ディスクの垂直線(一点鎖線)上で一致している。この状態であれば、基準面Refを用いたトラッキングサーボで、記録層L0に、記録光LZ1により、正確なトラッキング状態でマーク列(トラック)を形成していくことができる。
【0076】
ところが例えば図8Bにディスクチルトが生じている状態を示しているが、この場合は図示のように、基準面サーボ光LZ2と記録光LZ1のスポット位置は、ディスクの垂直線(一点鎖線)上で一致しない。つまり、記録光LZ1は本来図中の位置P1に照射したいところ、位置P2となってしまう。
このようなスポット位置のずれは、基準面Refと記録層の距離が離れるほど大きくなる。つまり記録層L1,L2・・・と、より深い位置の記録層に行くほど大きくなる。
これを許容するためにはトラック間隔を狭くすることが出来ず、結果としてディスクの記録容量を効果的に増やすことが出来ないという問題が生ずる。
【0077】
[3−3:ATS+方式]
そこで隣接トラックサーボ(ATS)と基準面サーボを併用するATS+方式が開発された。
即ち、基準面サーボに用いる基準面サーボ光と記録光のスポットずれを隣接トラックサーボで補正し、隣接トラックサーボには所定のフィルタ処理を施すことでサーボ特性による発散を防ぎ、それによるサーボ特性の悪化は基準面サーボにて補完するという方式である。
【0078】
上記の図3,図4で述べた本実施の形態の記録装置の構成は、基本的に、このATS+方式で記録時のトラッキングサーボを実行するものとなる。
実施の形態の記録装置では、図4のように、信号生成部36と、基準面側サーボフィルタ37と、トラッキングドライバ43とを有することで、基準面Refに形成された位置案内子に基づき対物レンズ20のトラッキングサーボ制御を行うサーボ制御系(基準面サーボ系)が構成されている。
つまり、基準面Refの位置案内子に基づくトラッキングサーボ制御の行われるトラッキングサーボループが形成されているものである。
【0079】
そして記録時におけるトラッキングサーボ制御系として、このような基準面サーボ系と共に、ATSによるサーボ制御系が構成されている。
具体的には、ATS光の反射光に基づき当該ATS光のマーク列に対するトラッキング誤差を表すトラッキングエラー信号TE−apを生成するマトリクス回路32と、トラッキングエラー信号TE−apを用いてトラッキングサーボ信号TS−atsを生成するATS側フィルタ35とを設けた上で、当該ATS側フィルタ35により生成されたトラッキングサーボ信号TS−atsを、基準面側サーボフィルタ37に供給し、基準面サーボ系のトラッキングサーボループに対して与えるようにしている。
【0080】
これは、トラッキングサーボ信号TS−atsを、基準面サーボ系の制御目標値として与えるように構成しているものである。或いは、基準面サーボ系としてのトラッキングサーボループをマイナーループとして、トラッキングサーボ信号TS−atsを当該マイナーループの制御目標値として入力していると換言することもできる。
【0081】
このような構成とした場合、ATS制御系のトラッキング誤差は、主に、対物レンズ20のレンズシフト等によって生じる先の図8にて説明したようなスポット位置ずれ(この場合は基準面サーボ光とATS光との間のスポット位置ずれとなる)に起因して生じることになる。
そして、このようなATS側のトラッキング誤差情報が、基準面サーボ系の制御目標値として与えられることで、ATS光のスポット位置が、マーク列に追従するように対物レンズ20が駆動されることになる。
【0082】
この場合、基準面側サーボフィルタ37を含む基準面サーボ系は、主に、通常の外乱成分(つまり上記のようなレンズシフト等に伴うスポット位置ずれの要因となるディスク偏芯成分等よりも高い周波数の外乱成分)に追従する機能を担わせるべきとなる。
この意味で、基準面サーボ系の制御帯域は、通常のサーボ制御系とする場合と同等の制御帯域に設定する。具体的に本例の場合、基準面サーボ系の制御帯域は10kHz程度に設定するものとしている。
【0083】
一方、ATS側フィルタ35を含むATS制御系については、通常の外乱成分への追従はさせるべきではないので、その制御帯域は、少なくとも基準面サーボ系の制御帯域よりも低い周波数帯域に設定する。例えばATS制御系の制御帯域(ATS側フィルタ35のカットオフ周波数)としては1kHz程度に設定している。
【0084】
上記のように基準面サーボ系としてのトラッキングサーボループ(マイナーループ)に対してATS制御系の制御信号としてのトラッキングサーボ信号TS−atsを付与するようにした実施の形態のトラッキングサーボ制御系によれば、従来のATS制御系単体とした場合に生じていた、先の図6に示したような伝達特性ゲインのピークの発生を防止することができる。
伝達特性ゲインのピークの発生が防止されることで、トラッキング誤差信号が時間と共に増大して発散してしまうといった事態の発生を防止でき、その結果、記録マーク列の重なりや交差の発生を防止することのできるトラッキングサーボ制御を、従来のATS単体とする場合よりも安定なものとして実現することができる。
【0085】
図9にATS+方式のサーボ制御系を伝達関数ブロックで示している。
図9の各伝達関数ブロックは、説明上、レンズブロック200、基準面サーボブロック201、演算ブロック202、演算ブロック203、ATS制御ブロック204、演算ブロック205、遅延ブロック206、演算ブロック207と呼ぶこととする。
【0086】
K(s)と示す基準面サーボブロック201は、基準面サーボ系における制御器としてのサーボ演算器(基準面側サーボフィルタ37に相当)の離散系伝達関数を表す。
Ki/sと示すATS制御ブロック204は、ATS制御系における制御器としてのサーボ演算器(ATS側フィルタ35に相当)の離散系伝達関数を表す。
またP(s)と示すレンズブロック200は、対物レンズ20を駆動するアクチュエータの離散系伝達関数を表している。
遅延ブロック206のZ-kは、ディスク一回転に相当する時間、信号を遅延させることを表している。
【0087】
また、図ではATS制御系の制御目標位置r、ATS制御系のトラッキングエラー信号ebを、基準面サーボ系のトラッキングエラー信号erを示している。
「ybs」はATSスポットSPbsの位置を表す。「yr」は基準面サーボ光のスポットの位置を表す。
「dtp」は、記録スポットSPbrとATSスポットSPbsとの間のディスク半径方向の距離である。つまりATS方式で形成されるトラックのトラックピッチに相当する。
【0088】
図示するように、ATSスポットSPbsの位置ybsと目標位置rとの差がエラー信号ebである。一般的なトラッキングサーボ制御系と同様に、この場合のATS制御系においてもエラー信号ebをゼロとするようにATS制御ブロック204(Ki/s)が動作する。
ここで目標位置rについては、演算ブロック207で、ATSスポットSPbsの位置ybsに、距離dtpを加算し、これを遅延ブロック206で遅延させて得るようにしている。ATSスポットSPbsの位置ybsに距離dtpを加算することで、その時点の記録スポットSPbrの位置を示す値が得られる。なお、ここでは、ATSスポットSPbsと記録スポットSPbrが同一の円周方向位置(つまりディスク半径方向に並ぶ位置)にあると仮定している。
この加算値としての記録スポットSPbrの位置について、遅延ブロック206で遅延Z-kを与えることで、1周回前の記録スポットSPbrの位置が得られる。即ちこれは現在のATSスポットSPbsの目標位置rとなる。
【0089】
基準面サーボ系では、基準面サーボ光のスポット位置yrに対し、演算ブロック203で偏芯に応じた基準値OFSを加算する。基準値OFSは、偏芯等により生ずる、基準面サーボ光のスポット位置yrとATS光のスポット位置ybsのトラッキング方向のずれ量に相当する。
この演算ブロック203の出力とATS制御ブロック204の出力についての演算ブロック202での加算結果をトラッキングエラー信号erとする。これは、例えば上述のようにカットオフ周波数が例えば1kHz程度とされているATS制御系のサーボ制御信号に、基準面サーボ系で得られる高周波(10kHz程度)の外乱成分を、基準値OFSによってスポット位置ズレの誤差を解消した上で、付加するものと言える。
基準面サーボブロック201は、このトラッキングエラー信号erをゼロとするように動作し、対物レンズ20を駆動するアクチュエータ(レンズブロック200)の駆動制御を行う。
【0090】
このようなATS+方式において、以下のように問題が生じた。
そもそも高密度記録を行おうとすると、隣接トラックサーボ(ATS)において記録光とATS光の照射位置は、ディスク円周方向位置に違いが生じてしまう。
図10Aで説明する。
最も単純にATSを行おうとする場合、ATSスポットSPbsに対して記録スポットは、図中記録スポットSPbr’として示すように、ディスク半径方向に並ぶ(ディスク円周方向位置が同じ)ようにすればよい。
通常、記録光とATS光の間隔は、たとえば5μmほどであって、それほど小さい値にはできない。すると、ディスク半径方向に並ばせた場合、ATSで形成されるトラックのトラックピッチTP2は、5μm程度が限度となる。ところが、トラックピッチは、例えばなるべく光学限界に近い程度にまで狭くすることで、高密度化を図りたい。
そこで、記録光とATS光の距離を保ったまま、記録光とATS光の円周方向位置をずらすことで、半径方向の間隔(=トラックピッチ)を狭くする。即ち図示のように、ATSスポットSPbsと記録スポットSPbrを異なる円周方向位置として、トラックピッチTP1を実現する。
【0091】
ところがこのように記録光とATS光の円周方向位置が異なっていると、予め記録されているトラックに偏芯がある場合、トラックピッチが偏芯によって変動してしまうという事象が生じてしまう。
これを図11で説明する。
図11では、ディスク上でスパイラル状に形成されるトラックを直線で示している。破線で示すトラックTKqは、偏芯が無いとした場合のトラック軌道である。
一方、実線で示すトラックTKs、TKrは、偏芯が有る場合に形成されるトラック軌道の一部を示している。
トラックTKsは、ATSにおいてATS光がトレースするトラックであり、トラックTKrはその際に記録光によってマーク列が形成されていくトラックである。
一点鎖線で示すトラックTKrCは、本来形成したいトラックピッチTPc(=TP1)のトラックである。
つまりこの図は、偏芯の影響によって、本来の目的とするトラックピッチTPcのトラックとは、異なるトラックピッチTPwでトラックTKrが形成されている状態を示している。
なお、ATSスポットSPbsのスポット位置(ybs等)、記録スポットSPbrのスポット位置(ybr等)の位置関係は、それぞれ位置RCがディスク中心(回転)と想定した状態で示している。
【0092】
偏芯が生じていると、形成されるトラック軌道(TKs、TKr)は、偏芯が無い場合の理想的なトラック軌道(TKq)に対して、形成される円の中心がずれた軌道と成り、円周上の或る一部では、図示のように角度θだけ傾いた状態となる。
ここで、或る時点のATSスポットSPbsの位置Ybs(−1)に注目すると、その時点の記録スポットSPbrは、位置Ybr(−1)となる。図10Aのように、記録光とATS光の円周方向位置をずらしているためである。
同様に、次の時点のATSスポットSPbsの位置Ybsに注目すると、その時点の記録スポットSPbrは、位置Ybrとなる。
【0093】
ここで、ATSスポットSPbsが位置Ybsにある時点を考える。ATS制御系では、ATSスポットSPbsがトラックTKsに追従するように制御する。
記録光とATS光は、半径方向にはトラックピッチTPc(=TP1)だけ離間して照射されているため、このATSにより、トラックピッチTPcのトラックが形成されるはずである。しかしこの場合、ATS制御により対物レンズ20がディスク半径方向に制御される動作によれば、記録光を、ディスク半径方向にみて位置ybrCに制御する動作となる。ところがこの時点で記録スポットSPbrは、円周位置方向にずれた位置ybrに存在する。
結果として、記録光はトラックTKrを形成する軌道で照射されることになり、本来とは異なるトラックピッチTPwのトラックが形成されてしまう。
【0094】
この図11は、形成されるトラックが、広いトラックピッチとなった箇所を示したものであるが、偏芯がある場合は、理想のトラックとは中心点がずれた円が重なるような状況であるため、円周方向位置によっては、形成されるトラックのトラックピッチが本来のピッチより狭くなる箇所も生ずる。
つまり偏芯によって、1周回内で、トラックピッチが広くなったり狭くなったり変動してしまう。
そして、この変動によりサーボエラーの取れ残り量が大きくなってしまう。
図10に、記録光とATS光の円周方向位置の違いによる取れ残りの例を示す。
図10Bは、記録光がATS光と円周方向位置が同じである場合(例えば図10Aに示した記録スポットSPbr’のような場合)の取れ残り量であり、一定の振幅以下の取れ残り量となっている。
一方図10Cは、記録光がATS光と円周方向位置が異なる場合(例えば図10Aに示した記録スポットSPbrのような場合)の取れ残り量であり、取れ残り量が大きくなっていることがわかる。
【0095】
以上のように、トラックピッチを狭くするためには、記録光とATS光を異なる円周方向位置に照射することが必要であるが、その場合、偏芯によってトラックピッチの周内変動が発生し、トラッキングエラー信号の取れ残りが拡大し、トラッキングサーボが不安定になる。
【0096】
<4.第1の実施の形態のサーボ方式>
そこで本実施の形態では、記録光とATS光を異なる円周方向位置に照射する場合に、トラッキングエラー信号の取れ残りを低減し、トラッキングサーボ動作の安定化を図る。
以下説明する各実施の形態では、ATS光についての受光信号に基づくサーボエラー信号として、ATS光が記録光と同じディスク円周方向位置で照射とされたとした場合に得られるべき補正サーボエラー信号を求め、該補正サーボエラー信号を用いて、トラッキングサーボ信号を生成することを基本とする。
そして第1〜第3の実施の形態は、ATS+方式を採用するものである。つまり上記の補正サーボエラー信号と、基準面サーボ光についての受光信号に基づいて得られる基準面サーボエラー信号とを用いて、トラッキングサーボ信号を生成する。
このため、図4に示したATS側フィルタ35では、トラッキングエラー信号TE−apについて補正サーボエラー信号を生成し、補正サーボエラー信号からトラッキングサーボ信号TS−atsを生成し、これを基準面側サーボフィルタ37に供給するものとなる。
つまり補正サーボエラー信号に基づくサーボ制御信号を、基準面サーボ系のトラッキングエラー信号TE−svに基づいてトラッキングサーボ信号を生成するトラッキングサーボループに対して与える構成となる。
【0097】
第1の実施の形態について説明する。
図12Aは、第1の実施の形態におけるATS光と記録光のスポット位置を示している。トラックTKsは既に形成済みのトラックであり、このトラックTKsにATS光をトレースさせた状態で、記録光により新たなトラックTKrを形成していく様子を示している。
ここで、ATSスポットSPbsに対して、記録スポットSPbrは円周方向位置が異なるようにすることで、狭トラックピッチ化を図っている。
この場合に第1の実施の形態では、ATSスポットSPbsを主ATSスポットとし、もう1つの副ATSスポットSPbhが形成されるようにしている。図3の説明の際に簡単に触れたが、この場合、ATS光として主副2系統のATS光がバルク型記録媒体1の記録層に照射されるようにする。
このため、図3の構成において、ATS・再生時用レーザ11apを2単位設けたり、或いはATS・再生時用レーザ11apをマルチビームレーザダイオードとして構成したり、さらに或いは、ATS・再生時用レーザ11apからのATS光についてグレーティング等で主ATS光と副ATS光を形成するなどの手法を採る。
【0098】
主ATS光と副ATS光は、それらのディスク円周方向位置が、記録光のディスク円周方向位置を挟んで対称の位置となるように照射される。
図12Aに示す例では、主ATS光(主ATSスポットSPbs)は、記録光(記録スポットSPbr)に対して円周方向位置がトラック進行方向に先行するように照射するものとしている。この場合、副ATS光(副ATSスポットSPbh)の円周方向位置は、記録光(記録スポットSPbr)より後行する位置となる。
この主ATSスポットSPbsと副ATSスポットSPbhの中間点(破線の円で示す位置ybx)が、記録スポットSPbrと半径方向に並ぶ状態となる。
【0099】
つまり第1の実施の形態では、ATS光を2つとし、記録光の円周方向位置が2つのATS光の中間点になるようにする。そして上記図11で述べた偏芯によるトラックピッチの変動を解消(低減)するため、二つのATS光の受光信号から演算して導き出した補正トラッキングエラー信号を用い、結果として記録光が補正された位置状態、例えば図11のトラックTKrCを形成する位置状態となるトラッキングサーボを実現するものである。
【0100】
ATS+方式における隣接トラックサーボについて、記録光の位置の補正に用いる隣接トラックの位置信号は、記録光に対して円周方向位置が同じである(半径方向に並ぶ)ATS光の位置信号が必要となる。
そこで、記録光とディスク回転中心を結ぶ半径に対して、主ATS光の線対称となる位置に、補間用の副ATS光を照射するようにする。
このとき、記録光に対して円周方向の位置が同じである位置ybxのATS光の位置信号は、主ATS光と副ATS光の位置信号の相加平均として近似的に求めることが出来る。
【0101】
図13Aに、第1の実施の形態のサーボ制御系を示している。これは、上述の図9のATS+サーボ系の構成に、第1の実施の形態の特徴となる要素を追加したものである。図9と同一部分は同一符号を付し、説明を省略する。
図9には示されていなかった伝達関数ブロックとしては、演算ブロック211、212、213、214、216、217、遅延ブロック210,215、除算ブロック218となる。
【0102】
この場合、ybsは主ATSスポットSPbsの位置を表す。ybhは副ATSスポットSPbhの位置を表す。
Z-kは信号をディスク一回転に相当する間、遅延させることを意味する。同様に、Z-nも遅延であるが、こちらは記録光と主ATS光の円周方向位置のずれに相当する間だけ、信号を遅延させることを意味する。
よって、遅延ブロック210として示すZ-(k-n)は、所定の信号をディスク一回転から記録光と主ATS光の円周方向の位置のずれに相当する分を差し引いた間だけ、遅延させるものである。
また遅延ブロック215として示すZ-(k+n)は、所定の信号をディスク一回転に記録光と副ATS光の円周方向の位置のずれに相当する分を加えた間だけ、遅延させるものである。
【0103】
主ATSスポットSPbsの位置ybsについては、演算ブロック213で距離dtp(トラックピッチに相当)が加算される。そして遅延ブロック210を経て目標位置rsが得られる。そして演算ブロック211で得られる位置ybsと目標位置rsの差分が主ATS光についてのエラー信号ebsである。
【0104】
副ATSスポットSPbhの位置ybhについては、演算ブロック214で距離dtpが加算され、遅延ブロック215を経て目標位置rhが得られる。そして演算ブロック216で得られる位置ybhと目標位置rhの差分が副ATS光についてのエラー信号ebhとなる。
【0105】
演算ブロック217では、エラー信号ebsとエラー信号ebhの差分をとり、除算ブロックで差分値を1/2とする。そして除算された値を演算ブロック212でエラー信号ebsに加算する。この加算結果が、補正サーボエラー信号eb’となる。
つまりこれは、主ATS光についてのエラー信号ebsに、副ATS光のエラー信号ebhとの差分の1/2を加算することで、図12の位置ybxのスポットについて得られるエラー信号を導き出すものとなる。
【0106】
ATS制御ブロック204(Ki/s)は、この補正サーボエラー信号eb’をゼロとするように動作し、トラッキング制御信号を演算ブロック202に供給する。即ちATS系の制御信号を基準面サーボ系に注入する。
【0107】
基準面サーボ系では、基準面サーボ光のスポット位置yrに対し、演算ブロック203で偏芯に応じた基準値OFSを加算する。この演算ブロック203の出力とATS制御ブロック204の出力についての演算ブロック202での加算結果をトラッキングエラー信号erとする。
基準面サーボブロック201は、このトラッキングエラー信号erをゼロとするように動作し、対物レンズ20を駆動するアクチュエータ(レンズブロック200)の駆動制御を行う。
【0108】
なお以上の各ブロックの処理を図4の実際の構成に照らしていえば、基準面サーボブロック201、演算ブロック202,203は基準面側サーボフィルタ37の処理となる。
またATS制御ブロック204、演算ブロック211、212、213、214、216、217、遅延ブロック210,215、除算ブロック218が、ATS側フィルタ35の処理となる。
【0109】
以上のように第1の実施の形態では、記録光を挟んで円周方向に対称な2点のATS光により、記録光と円周方向位置が同じである位置の仮想的なATS光によるエラー信号の近似値としての補正サーボエラー信号を用いることになる。
これによって、記録光とATS光が仮想的に同じ円周方向位置(ディスク回転中心に向かう半径線上に並ぶ状態)で隣接トラックサーボが実現され、図11で述べたような偏芯に起因するトラックピッチの変動を解消できる。
結果、記録光とATS光の円周方向位置の違いによるトラッキングエラー成分の取れ残りを低減し、トラッキングサーボを安定化させることが出来る。
図13Bに第1の実施の形態の場合の取れ残り量を示すが、上述の図10B、図10Cを参照すると、ほぼ図10B(記録光とATS光の円周方向位置が同じ場合)と同等にまで、取れ残りが低減されていることがわかる。
【0110】
なお、図12Aは、主ATS光が記録光より先行している場合に、記録光より後行する対称位置に副ATS光を照射する場合として述べたが、逆でもよい。
つまり図12Bのように主ATS光が記録光より後行している場合には、記録光より先行する対称位置に副ATS光を照射するようにすればよい。
【0111】
<5.第2の実施の形態のサーボ方式>
第2の実施の形態も、補正サーボエラー信号を用いるものである。この場合、ATS光の現在のスポット位置と、ATS光が現在の記録光と同じディスク円周方向位置である時点のスポット位置とのディスク半径方向の位置差分を、ATS光についての受光信号に基づくサーボエラー信号に与えることで、補正サーボエラー信号を求めるものである。
なお、第2の実施の形態では、ATS光は1つである。そしてATS光が、記録光に対して、円周方向位置がトラック進行方向に先行するように照射されるものとする。
この場合に、上記の位置差分を、ATS光が現在の記録光と同じディスク円周方向位置である時点のサーボエラー信号に加算することで、補正サーボエラー信号を求めるようにする。
【0112】
図14で考え方を説明する。図14は図11と同様に理想的なトラックTKqと、偏芯がある場合に形成されるトラックTKs,TKrを示している。
本来、トラックTKrCを形成したいが、偏芯の影響でトラックTKrが形成されてしまうことは上述のとおりである。
ここで、記録光の位置ybrは、トラックTKsよりトラックピッチTPwだけ離間した状態となるが、これをトラックピッチTPcの位置となるように補正したい。このためには、図中Δで示す位置差分を、ATS光が現在の記録光の位置Ybrと同じ円周方向位置である位置ybs(−1)の時点のサーボエラー信号に加算すればよい。
図からわかるように、位置差分Δは、ATS光の現在のスポット位置ybsと、ATS光が現在の記録光の位置ybrと同じディスク円周方向位置である時点のスポット位置ybs(−1)とのディスク半径方向の位置差分である。詳しくいえば、位置ybs(−1)を、ATS光の現在のスポット位置ybsと同一円周位置として半径方向に並べた位置ybs(−1)’としたときの位置ybsと位置ybs(−1)’の差分である。
【0113】
現在の記録光(位置ybr)についてのサーボ制御を、位置ybs(−1)のATS光にかかるエラー信号に位置差分Δを加算した補正サーボエラー信号を用いて実行することで、記録光の軌跡をトラックTKrCを描く状態に制御できることとなる。
【0114】
記録光とATS光の円周方向位置の違いによるトラックピッチの変動は、ディスクの偏芯によって生じる。これは、ディスクの偏芯があると、ATS光の回転中心からの距離と、記録光の回転中心からの距離が異なることに起因する。
ATS光の回転中心からの距離から、半径方向にトラックピッチ分離れた位置に記録光によりトラック(マーク列)が形成されるが、その記録光の位置においてはディスクの偏芯のために隣のトラックの回転中心からの距離が異なっている。そのため、トラックが形成されたときの回転中心からの距離との差分だけ、トラックピッチが変動することになる。
そこで、ATS光の位置をこの差に相当する分補正すれば、記録光の位置における隣接トラックとのトラックピッチを所望の値に保つことができる。
【0115】
図15Aに、第2の実施の形態のサーボ制御系を示している。上述の図9、図13Aと同一部分は同一符号を付す。
この場合、破線で囲った演算ブロック221、223、遅延ブロック220,222、ゲインブロック224の部分が位置差分Δを求める部分となる。
図13Aと同様、Z-kは信号をディスク一回転に相当する間、遅延させることを意味する。Z-nは記録光と主ATS光の円周方向位置のずれに相当する間だけ、信号を遅延させることを意味する。よってZ-(k-n)は、所定の信号をディスク一回転から記録光とATS光の円周方向の位置のずれに相当する分を差し引いた間だけ、遅延させるものである。
【0116】
ATSスポットSPbsの位置ybsについては、演算ブロック234で距離dtp(トラックピッチに相当)が加算され、遅延ブロック235を経て目標位置rが得られる。そして演算ブロック236で得られる位置ybsと目標位置rの差分がATS光についてのエラー信号ebである。
【0117】
演算ブロック203では、基準面サーボ光のスポット位置yrに対し、基準値OFSを加算する。基準値OFSは、偏芯による基準面サーボ光とATS光のずれ量に相当する。(図8B参照。図8Bでは記録光と基準面サーボ光の関係で示したP1,P2のずれ量を示しているが、ここでいう「ずれ量」は、P1,P2を基準面サーボ光とATS光に置き換えたものである)。
この演算ブロック203の出力は、現在のATS光のスポット位置ybsに相当する。
遅延ブロック220では、位置ybsにZ-nの遅延を与えることで、現在の記録光と同じ円周方向位置となった時点のATS光のスポット位置ybs(−1)を得る。
演算ブロック221で、位置ybs(−1)−位置ybsを求め、上記の位置差分Δを得る。位置差分Δはゲインブロック224で調整用のゲインを与えられて、演算ブロック223に供給される。
【0118】
一方、エラー信号ebについては、遅延ブロック222でZ-nの遅延を与えることで、現在の記録光と同じ円周方向位置となった時点のATS光のスポットybs(−1)についてのエラー信号が演算ブロック223に供給されるようにする。そして演算ブロック223では、遅延されたエラー信号ebに位置差分Δを加算して補正サーボエラー信号eb’を求める。
つまり、これはATS光の現在のスポット位置と、ATS光が現在の記録光と同じディスク円周方向位置である時点のスポット位置とのディスク半径方向の位置差分Δを、ATS光が現在の記録光と同じディスク円周方向位置である時点のサーボエラー信号に加算することで、補正サーボエラー信号を求めるものとなる。
【0119】
ATS制御ブロック204(Ki/s)は、この補正サーボエラー信号eb’をゼロとするように動作し、トラッキング制御信号を演算ブロック202に供給する。即ちATS系の制御信号を基準面サーボ系に注入する。
【0120】
基準面サーボ系では、演算ブロック203の出力とATS制御ブロック204の出力についての演算ブロック202での加算結果をトラッキングエラー信号erとする。
基準面サーボブロック201は、このトラッキングエラー信号erをゼロとするように動作し、対物レンズ20を駆動するアクチュエータ(レンズブロック200)の駆動制御を行う。
【0121】
なお以上の各ブロックの処理を図4の実際の構成に照らしていえば、基準面サーボブロック201、演算ブロック202,203は基準面側サーボフィルタ37の処理となる。
またATS制御ブロック204、演算ブロック234、236、221、222、遅延ブロック235,222、220、ゲインブロック224が、ATS側フィルタ35の処理となる。
【0122】
このサーボ制御系では、ATS+方式において、破線部分のビームずれ補間項(位置差分Δ算出項)が制御ループの中に構成されているものといえる。
即ちこのビームずれ補間項は、基準面Ref(基準値OFS)により得られるATS光の位置信号とそのATS光からZ-nに相当する分だけ円周方向に遅れた位置にあるATS光の位置信号の差分を、記録光に対して先行するATS光が既に通過したところの、現在の記録光の位置に隣接するトラックに対するエラー信号に加算し、これを補正値としてサーボ制御系に渡すものと言える。
【0123】
この第2の実施の形態によれば、ATS光の位置信号と、記録層でのATS光のエラー信号より演算した値によって、記録光とATS光の円周方向位置の違い補正するため、記録光とATS光の円周方向位置の違いにより発生するトラッキングエラー成分の取れ残りを低減し、トラッキングサーボを安定化させることが出来る。
図15Bに第2の実施の形態の場合の取れ残り量を示すが、上述の図10Bとほぼ同等にまで、取れ残りが低減されていることがわかる。
またこの第2の実施の形態の場合、第1の実施の形態にくらべ、ATS光は1つで良いため、光学系の構成の簡略化の点で有利である。
【0124】
図16に第2の実施の形態の変形例を示す。なお、図15と同一部分は同一符号を付し、説明を省略する。
上記図15の例では、現在のATS光のスポット位置ybsの情報を基準値OFSを用いて求めたが、図4に示したレンズ位置センサ45を利用してもよい。レンズ位置センサ45からの偏芯に応じたレンズシフトの情報から、ATS光の位置情報を求めることができる。
図16では、このレンズ位置センサ45から得られる位置yojを補正に用いる現在のATS光のスポット位置ybsとし、遅延ブロック220、演算ブロック221に供給するようにした例である。他の動作は図15と同様である。
【0125】
<6.第3の実施の形態のサーボ方式>
第3の実施の形態は、基本的には第2の実施の形態と同様の考え方であるが、ATS光が、記録光に対して、円周方向位置がトラック進行方向に後行するように照射される場合の例である。
この場合、ATS光の現在のスポット位置と、ATS光が現在の記録光と同じディスク円周方向位置である時点のスポット位置とのディスク半径方向の位置差分を、現在のATS光についてのサーボエラー信号に加算することで、補正サーボエラー信号を求めるようにする。
【0126】
図17は図14等と同様に理想的なトラックTKqと、偏芯がある場合に形成されるトラックTKs,TKrを示している。
トラックTKs、TKrが図14と同じような状況で理想的なトラックTKqに対して角度θを持つことになる円周内の或る部分で示すと、記録光が先行する場合、図のようにトラックピッチTPnとして、本来のトラックピッチTPc(=TP1)よりも狭いピッチでトラックTKrが形成されてしまう。
【0127】
ここで、記録光の位置ybrは、トラックTKsよりトラックピッチTPnだけ離間した状態となるが、これをトラックピッチTPcの位置となるように補正したい。このためには、図示する位置差分Δを、現在のATS光についてのサーボエラー信号に加算する。すると、現在の記録光の位置を位置ybrCに制御することができる。
位置差分Δは、図ではATS光の現在のスポット位置ybsと、前回のスポット位置ybs(−1)の半径方向の差分として示しているが、これは、ATS光の現在のスポット位置ybsと、ATS光が現在の記録光と同じディスク円周方向位置である(未来の)時点のスポット位置ybs(+1)との半径方向の位置差分Δ’と同等である。従って位置ybs、位置ybs(−1)の情報から、位置差分Δ=Δ’を求めることができる。
そして現在の記録光(位置ybr)についてのサーボ制御を、現在の位置ybsのATS光にかかるエラー信号に位置差分Δを加算した補正サーボエラー信号を用いて実行することで、記録光の軌跡をトラックTKrCを描く状態に制御できることとなる。
【0128】
図18に、第3の実施の形態のサーボ制御系を示している。上述の図9、図15Aと同一部分は同一符号を付す。この場合、破線で囲った演算ブロック221A、223、遅延ブロック220、ゲインブロック224の部分が位置差分Δを求める部分となる。
なお、現在の位置ybsのATS光にかかるエラー信号に位置差分Δを加算することになるため、図15における遅延ブロック222に相当する遅延ブロックは設けられない。
【0129】
これまでと同様、Z-kは信号をディスク一回転に相当する間の遅延、Z-nは記録光と主ATS光の円周方向位置のずれに相当する間の遅延であるが、記録光がATS光より先行するため、遅延ブロック235Aでは、信号をディスク一回転分に記録光とATS光の円周方向の位置のずれに相当する分を加えた遅延Z-(k+n)を与えるものとなる。
【0130】
ATSスポットSPbsの位置ybsについては、演算ブロック234で距離dtp(トラックピッチに相当)が加算され、遅延ブロック235Aを経て目標位置rが得られる。そして演算ブロック236で得られる位置ybsと目標位置rの差分がATS光についてのエラー信号ebである。
【0131】
図15と同様に、演算ブロック203の出力は、現在のATS光のスポット位置ybsに相当する。遅延ブロック220では、位置ybsにZ-nの遅延を与えることで、前回の円周方向位置のATS光のスポット位置ybs(−1)を得る。
演算ブロック221Aで、位置ybs−位置ybs(−1)を求めることで、上記の位置差分Δを得る。上述のようにこの位置差分Δ=Δ’である。
位置差分Δはゲインブロック224で調整用のゲインを与えられて、演算ブロック223に供給される。
【0132】
そして演算ブロック223では、エラー信号ebに位置差分Δを加算して補正サーボエラー信号eb’を求める。
つまり、これはATS光の現在のスポット位置と、ATS光が現在の記録光と同じディスク円周方向位置である時点のスポット位置とのディスク半径方向の位置差分Δ’(=Δ)を、現在のATS光についてのサーボエラー信号に加算することで、補正サーボエラー信号を求めるものとなる。
【0133】
ATS制御ブロック204(Ki/s)は、この補正サーボエラー信号eb’をゼロとするように動作し、トラッキング制御信号を演算ブロック202に供給する。即ちATS系の制御信号を基準面サーボ系に注入する。
【0134】
基準面サーボ系では、演算ブロック203の出力とATS制御ブロック204の出力についての演算ブロック202での加算結果をトラッキングエラー信号erとする。
基準面サーボブロック201は、このトラッキングエラー信号erをゼロとするように動作し、対物レンズ20を駆動するアクチュエータ(レンズブロック200)の駆動制御を行う。
【0135】
なお以上の各ブロックの処理を図4の実際の構成に照らしていえば、基準面サーボブロック201、演算ブロック202,203は基準面側サーボフィルタ37の処理となる。
またATS制御ブロック204、演算ブロック234、236、221A、222、遅延ブロック235A,220、ゲインブロック224が、ATS側フィルタ35の処理となる。
【0136】
このサーボ制御系も、第2の実施の形態と同様、ATS+方式において、破線部分のビームずれ補間項(位置差分Δ算出項)が制御ループの中に構成されている。
即ちこのビームずれ補間項は、基準面Ref(基準値OFS)により得られるATS光の位置信号とそのATS光からZ+nに相当する分だけ円周方向に進んだ位置にあるATS光の位置信号の差分Δ’を、現在の記録光の位置に隣接するトラックに対するエラー信号に加算し、これを補正値としてサーボ制御系に渡すものと言える。
この第3の実施の形態によっても、第2の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0137】
図19に第3の実施の形態の変形例を示す。なお、図18と同一部分は同一符号を付し、説明を省略する。
これは、先に図16で述べた例と同様、図4に示したレンズ位置センサ45を利用してATS光の位置情報を求める例である。
図19では、レンズ位置センサ45から得られる位置yojを補正に用いる現在のATS光のスポット位置ybsとし、遅延ブロック220、演算ブロック221に供給するようにしている。
【0138】
<7.変形例>
以上、実施の形態について説明してきたが、本開示の技術は上記の例に限定されるものではない。
実施の形態ではATS+方式を基本としたが、上記のように補正サーボエラー信号を用いる技術はATS方式でも適用可能性はある。
また記録装置が記録対象とする記録媒体はバルク型記録媒体1に限られず、他の種の光ディスクであってもよい。
また記録装置の構成やサーボ制御系の構成は多様に考えられることは言うまでもない。
【0139】
なお本技術は以下のような構成も採ることができる。
(1)記録層を有する光ディスク記録媒体に対して、上記記録層へのマーク記録を行うための記録光と、照射位置が上記記録光のディスク円周方向位置とは異なる位置とされた状態で上記記録光と一定のディスク半径方向の距離を保つ隣接トラックサーボ用の隣接サーボ光とを共通の対物レンズを介して照射するように構成されると共に、上記隣接サーボ光の上記記録層からの反射光を受光するように構成された光照射・受光部と、
上記対物レンズをディスク半径方向であるトラッキング方向に駆動するトラッキング機構と、
上記隣接サーボ光についての受光信号に基づくサーボエラー信号として、上記隣接サーボ光が上記記録光と同じディスク円周方向位置で照射とされたとした場合に得られるべき補正サーボエラー信号を求め、該補正サーボエラー信号を用いて、トラッキングサーボ信号を生成するトラッキングサーボ信号生成部と、
上記トラッキングサーボ信号に基づき上記トラッキング機構を駆動するトラッキング駆動部と、
を備えた記録装置。
(2)上記光ディスク記録媒体は、上記記録層とは異なる深さ位置に位置案内子が形成された基準面を有し、
上記光照射・受光部は、上記光ディスク記録媒体に対して、上記記録光と、上記隣接サーボ光と、上記基準面に形成された上記位置案内子に基づく位置制御を行うための基準面サーボ光とを共通の対物レンズを介して照射するように構成されると共に、上記隣接サーボ光の上記記録層からの反射光と、上記基準面サーボ光の上記基準面からの反射光とを個別に受光するように構成されており、
上記トラッキングサーボ信号生成部は、上記補正サーボエラー信号と、上記光照射・受光部により得られる上記基準面サーボ光についての受光信号に基づいて得られる基準面サーボエラー信号とを用いて、トラッキングサーボ信号を生成する上記(1)に記載の記録装置。
(3)上記トラッキングサーボ信号生成部は、上記補正サーボエラー信号に基づくサーボ制御信号を、上記基準面サーボエラー信号に基づいてトラッキングサーボ信号を生成するトラッキングサーボループに対して与える上記(2)に記載の記録装置。
(4)上記光照射・受光部は、上記隣接サーボ光として、主隣接サーボ光と、ディスク円周方向位置が上記主隣接サーボ光とは上記記録光のディスク円周方向位置を挟んで対称の位置となる副隣接サーボ光を照射するとともに、上記主隣接サーボ光及び上記副隣接サーボ光についての上記記録層からの反射光を個別に受光する構成とされ、
上記トラッキングサーボ信号生成部は、上記主隣接サーボ光についての受光信号と、上記副隣接サーボ光についての受光信号の演算により、上記補正サーボエラー信号を求める上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の記録装置。
(5)上記トラッキングサーボ信号生成部は、上記主隣接サーボ光についての受光信号から得られる第1のサーボエラー信号に対し、該第1のサーボエラー信号と上記副隣接サーボ光についての受光信号から得られる第2のサーボエラー信号との差分の1/2を与える演算により、上記補正サーボエラー信号を求める上記(4)に記載の記録装置。
(6)上記トラッキングサーボ信号生成部は、上記隣接サーボ光の現在のスポット位置と、上記隣接サーボ光が現在の上記記録光と同じディスク円周方向位置である時点のスポット位置とのディスク半径方向の位置差分を、上記隣接サーボ光についての受光信号に基づくサーボエラー信号に与えることで、上記補正サーボエラー信号を求める上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の記録装置。
(7)上記光照射・受光部は、上記隣接サーボ光が、上記記録光に対して、円周方向位置がトラック進行方向に先行するように照射するとともに、
上記トラッキングサーボ信号生成部は、上記位置差分を、上記隣接サーボ光が現在の記録光と同じディスク円周方向位置である時点のサーボエラー信号に加算することで、上記補正サーボエラー信号を求める上記(6)に記載の記録装置。
(8)上記光照射・受光部は、上記隣接サーボ光が、上記記録光に対して、円周方向位置がトラック進行方向に後行するように照射するとともに、
上記トラッキングサーボ信号生成部は、上記位置差分を、現在の上記隣接サーボ光についてのサーボエラー信号に加算することで、上記補正サーボエラー信号を求める上記(6)に記載の記録装置。
【符号の説明】
【0140】
1 バルク型記録媒体、2 カバー層、3 選択反射膜、Ref 基準面、4 中間層、5 バルク層、OP 光学ピックアップ、11r 記録用レーザ、11ap ATS・再生時用レーザ、12,25 コリメーションレンズ、13,26 偏光ビームスプリッタ、14 固定レンズ、15 可動レンズ、16 レンズ駆動部、17 ミラー、18,27 1/4波長板、19 ダイクロイックプリズム、20 対物レンズ、21 2軸アクチュエータ、22,28 集光レンズ、23 第1受光部、24 サーボ用レーザ、29 第2受光部、31 記録処理部、32,50 マトリクス回路、33 再生処理部、34 再生時用サーボ回路、35 ATS側フィルタ、36 信号生成部、37 基準面側サーボフィルタ、38 記録時用フォーカスサーボ回路、40,41 セレクタ、42 フォーカスドライバ、43 トラッキングドライバ、44 コントローラ
【技術分野】
【0001】
本開示は、光ディスク記録媒体に対して隣接トラックサーボを実行して記録を行う記録装置、記録方法に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特開2008−135144号公報
【特許文献2】特開2008−176902号公報
【背景技術】
【0003】
光の照射により信号の記録/再生が行われる光ディスク記録媒体(光ディスク)として、例えばCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray Disc:登録商標)などが普及している。
【0004】
これらCD、DVD、BDなど現状において普及している光ディスクの次世代を担うべき光ディスクに関して、先に本出願人は、上記特許文献1や上記特許文献2に記載されるようないわゆるバルク記録型のものを提案している。
ここで、バルク記録とは、少なくともカバー層とバルク層(記録層)とを有する光記録媒体(バルク型記録媒体)に対し、逐次焦点位置を変えてレーザ光照射を行ってバルク層内に多層記録を行うことで、大記録容量化を図る技術である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示では、例えばバルク記録型等の光ディスクの大容量化の促進のために、大容量記録に好適なトラッキングサーボ動作を実現することを目的とする。
特には、光ディスクに対して記録光と共に、隣接トラックサーボ用の隣接サーボ光を照射して、隣接トラックサーボを利用するトラッキング方式において好適な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の記録装置は、記録層を有する光ディスク記録媒体に対して、上記記録層へのマーク記録を行うための記録光と、照射位置が上記記録光のディスク円周方向位置とは異なる位置とされた状態で上記記録光と一定のディスク半径方向の距離を保つ隣接トラックサーボ用の隣接サーボ光とを共通の対物レンズを介して照射するように構成されると共に、上記隣接サーボ光の上記記録層からの反射光を受光するように構成された光照射・受光部と、上記対物レンズをディスク半径方向であるトラッキング方向に駆動するトラッキング機構と、上記隣接サーボ光についての受光信号に基づくサーボエラー信号として、上記隣接サーボ光が上記記録光と同じディスク円周方向位置で照射とされたとした場合に得られるべき補正サーボエラー信号を求め、該補正サーボエラー信号を用いて、トラッキングサーボ信号を生成するトラッキングサーボ信号生成部と、上記トラッキングサーボ信号に基づき上記トラッキング機構を駆動するトラッキング駆動部とを備える。
【0007】
本開示の記録方法は、記録層を有する光ディスク記録媒体に対して、上記記録層へのマーク記録を行うための記録光と、照射位置が上記記録光のディスク円周方向位置とは異なる位置とされた状態で上記記録光と一定のディスク半径方向の距離を保つ隣接トラックサーボ用の隣接サーボ光とを共通の対物レンズを介して照射して、上記隣接サーボ光の上記記録層からの反射光を受光し、上記隣接サーボ光についての受光信号に基づくサーボエラー信号として、上記隣接サーボ光が上記記録光と同じディスク円周方向位置で照射とされたとした場合に得られるべき補正サーボエラー信号を求め、該補正サーボエラー信号を用いて、トラッキングサーボ信号を生成し、上記トラッキングサーボ信号に基づき上記対物レンズをディスク半径方向であるトラッキング方向に駆動するトラッキングサーボを行いながら、上記記録光による上記記録層へのマーク記録を行う。
【0008】
このような本開示では、光ディスクに対する記録時のトラッキングサーボ方式として、隣接トラックサーボを利用したトラッキングサーボ動作を行う。
隣接トラックサーボとは、既に記録されたトラックに隣接サーボ光をトラッキングさせた状態で、隣接サーボ光に隣接した位置に照射される記録光で記録を行う方式である。これにより、予めトラックが存在しない記録媒体に対して、既に記録されたトラックに沿って新たなトラックの形成、即ちマーク記録によるマーク列の形成を行うことができる。
なお隣接トラックサーボのことをATS(Adjacent Track Servo)ともいう。
上記の隣接サーボ光とは隣接トラックサーボ(ATS)動作において既に形成されたトラックをトレースする再生パワーの光のことである。隣接サーボ光は「ATS光」ともいうこととする。
この隣接トラックサーボにおいては、記録光と隣接サーボ光(再生光)を照射するが、記録光と隣接サーボ光を半径方向に並べると、その両スポット間の距離がトラックピッチとなり、狭トラックピッチ化に限界がある。そこで大容量化のための狭トラックピッチ化を進めるには、記録光と隣接サーボ光の各スポットが、ディスク円周方向位置(ディスク中心から見た角度位置)として、異なる位置に配置されるように照射する。ところがこの場合、記録光と隣接サーボ光の円周方向位置の違いにより発生するサーボエラー成分の取れ残りによって、トラッキングサーボが不安定となる。
そこで本開示では、隣接サーボ光の受光信号に基づくサーボエラー信号として、隣接サーボ光が記録光と同じディスク円周方向位置で照射とされたとした場合に得られるべき補正サーボエラー信号を求め、該補正サーボエラー信号を用いて、トラッキングサーボ信号を生成し、トラッキングサーボ制御を行う。これにより、狭トラックピッチ化を実現しつつ、トラッキングサーボの安定化を図る。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、隣接トラックサーボ動作において記録光と隣接サーボ光(ATS光)の円周方向位置の違いによるトラッキングエラー成分の取れ残りを低減することができ、安定したトラッキングサーボが可能となる。これによってディスク記録媒体の大容量化に好適となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の形態のディスク記録媒体の構造の説明図である。
【図2】実施の形態のディスク記録媒体に対するフォーカス制御の説明図である。
【図3】実施の形態の記録装置の光学系の説明図である。
【図4】実施の形態の記録装置の内部構成のブロック図である。
【図5】隣接トラックサーボの説明図である。
【図6】トラッキングサーボ特性例の説明図である。
【図7】隣接トラックサーボによる取れ残り量の発散の様子の説明図である。
【図8】基準面サーボによるサーボでのスポット位置ずれの説明図である。
【図9】ATS+サーボの制御系のブロック図である。
【図10】隣接トラックサーボにおける記録光とATS光の円周方向位置の違いとその影響の説明図である。
【図11】記録光とATS光の円周方向位置の違いと偏芯の関係の説明図である。
【図12】第1の実施の形態のスポット位置の説明図である。
【図13】第1の実施の形態のサーボ制御系と取れ残り量の説明図である。
【図14】第2の実施の形態の補正方式の考え方の説明図である。
【図15】第2の実施の形態のサーボ制御系と取れ残り量の説明図である。
【図16】第2の実施の形態の変形例のサーボ制御系のブロック図である。
【図17】第3の実施の形態の補正方式の考え方の説明図である。
【図18】第3の実施の形態のサーボ制御系のブロック図である。
【図19】第3の実施の形態の変形例のサーボ制御系のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態を次の順序で説明する。
<1.記録対象とする光ディスクの構造>
<2.実施の形態の記録装置の構成>
<3.実施の形態のサーボ方式に至る過程>
[3−1:隣接トラックサーボ(ATS)]
[3−2:基準面サーボ]
[3−3:ATS+方式]
<4.第1の実施の形態のサーボ方式>
<5.第2の実施の形態のサーボ方式>
<6.第3の実施の形態のサーボ方式>
<7.変形例>
なお説明上、隣接トラックサーボのことを「ATS」(Adjacent Track Servo)ともいう。
また「ATS+」とは、ATSと基準面サーボを併用したサーボ方式を指すものとする。第1〜第3の実施の形態は、隣接トラックサーボを利用したトラッキングサーボ方式としてのATS+方式に本開示の技術を適用した例である。
【0012】
<1.記録対象とする光ディスクの構造>
図1は、実施の形態の記録装置が記録対象とする光ディスク記録媒体の断面構造図を示している。
実施の形態で記録対象とする光ディスク記録媒体は、いわゆるバルク記録型の光ディスク記録媒体とされ、以下、バルク型記録媒体1と称する。
光ディスク記録媒体としてのバルク型記録媒体1は、記録装置により回転駆動された状態にてレーザ光照射が行われてマーク記録(情報記録)が行われる。
なお、光ディスク記録媒体とは、光の照射により情報の記録(及び再生)が行われる円盤状の記録媒体を総称したものである。
【0013】
図1に示されるように、バルク型記録媒体1には、上層側から順にカバー層2、選択反射膜3、中間層4、バルク層5が形成されている。
ここで、本明細書において「上層側」とは、後述する実施の形態としての記録装置(記録装置10)側からのレーザ光が入射する面を上面としたときの上層側を指す。
また、本明細書においては「深さ方向」という語を用いるが、この「深さ方向」とは、上記の「上層側」の定義に従った上下方向(縦方向)と一致する方向(すなわち記録装置側からのレーザ光の入射方向に平行な方向:フォーカス方向)を指すものである。
【0014】
バルク型記録媒体1において、カバー層2は、例えばポリカーボネートやアクリルなどの樹脂で構成され、図示するようにその下面側には、記録位置を案内するための位置案内子が形成されている。
この場合、上記位置案内子としては、連続溝(グルーブ)又はピット列による案内溝が形成され、図のように凹凸の断面形状が与えられる。本例の場合、位置案内子としての案内溝はスパイラル状に形成されているとする。
カバー層2は、このような案内溝(凹凸形状パターン)が形成されたスタンパを用いた射出成形などにより生成される。
【0015】
また、案内溝が形成されたカバー層2の下面側には、選択反射膜3が成膜される。
バルク記録方式では、記録層としてのバルク層5に対してマーク記録を行うための記録光(記録光)とは別に、上記のような案内溝に基づきトラッキングやフォーカスのエラー信号を得るためのサーボ光を別途に照射する場合がある。なお、このサーボ光のことは、後述の隣接トラックサーボに用いる隣接サーボ光(ATS光)と区別するため「基準面サーボ光」ということとする。
このとき、仮に、基準面サーボ光がバルク層5に到達してしまうと、バルク層5内におけるマーク記録に悪影響を与える虞がある。このため、基準面サーボ光は反射し、記録光は透過するという選択性を有する反射膜が必要とされている。
従来よりバルク記録方式では、記録光と基準面サーボ光とはそれぞれ波長帯の異なるレーザ光を用いるようにされており、これに対応すべく、選択反射膜3としては、基準面サーボ光と同一の波長帯の光は反射し、それ以外の波長帯による光は透過するという、波長選択性を有する選択反射膜が用いられる。
【0016】
選択反射膜3の下層側には、例えばUV硬化樹脂などの接着材料で構成された中間層4を介して、記録層としてのバルク層5が形成(接着)されている。
本実施の形態で対象とする光ディスク記録媒体に対するマーク記録方式は特に限定されるものではなく、バルク記録方式の範疇において任意の方式が採用されればよい。
例えばバルク層5に対するマーク形成方式としては、干渉縞の変化・消失等によるマークを形成する方式や、空孔(ボイド)マークを形成する方式、屈折率変化によるマークを形成する方式など、多様な方式が考えられているが、特に本実施の形態においてマーク形成方式が限定されるものではない。
また従って、バルク層5の材料(記録材料)としては、採用するバルク記録の方式に応じて適宜最適なものが採用されればよい。
【0017】
ここで、上記のような構成を有するバルク型記録媒体1において、上述の案内溝の形成に伴い凹凸断面形状パターンの与えられた選択反射膜3は、サーボ光に基づく記録光の位置制御を行うにあたっての基準となる反射面となる。この意味で、選択反射膜3が形成された面を以下、基準面Refと称する。
【0018】
バルク型記録媒体1を対象とした記録時のフォーカスサーボ制御について図2を参照して説明する。
バルク型記録媒体1に対し、記録装置がバルク層5内に多層記録を行うために、予め情報記録を行うべき各層位置(情報記録層位置)が設定される。
図2に示すように、情報記録層位置は、基準面Refからそれぞれ深さ方向にオフセットof−L0、of−L1、of−L2・・・オフセットof−L(n)だけ離間した位置とされ、これらの各位置に記録層L0〜L(n)が形成される。なお図2ではL(n)=L4とした5層構造の例を示している。但し実際には20層構造、30層構造などの多層化が検討されている。
基準面Refからの各記録層L0〜L(n)へのオフセットof−L0〜of−L(n)の情報は、予め記録装置側に設定される。なお、オフセットof−L0〜of−L(n)は「オフセットof−L」と総称する。
【0019】
上述のように、バルク型記録媒体1に対しては、記録マークを形成するための記録光LZ1と共に、これとは波長の異なる基準面サーボ光LZ2を照射する。これら記録光LZ1と基準面サーボ光LZ2は、共通の対物レンズ20を介してバルク型記録媒体1に照射されることになる。
なお、本実施の形態では、さらに隣接トラックサーボのための隣接サーボ光(ATS光)も照射するが、図示及び説明の簡略化のため、ここではATS光は省略している。ATS光は記録光LZ1と同波長帯の再生パワーのレーザ光であり、この図2においては記録光LZ1と同様に考えれば良い。
【0020】
ここで図1に示したように、バルク型記録媒体1におけるバルク層5には、例えばDVDやブルーレイディスクなどの現状の光ディスクについての多層ディスクとは異なり、記録対象とする各層位置にはピットやグルーブなどによる案内溝を有する反射面が形成されていない。このため、未だマークの形成されていない記録時においては、記録光LZ1についてのフォーカスサーボやトラッキングサーボは、記録光LZ1自身の反射光を用いて行うことはできないことになる。
このためバルク型記録媒体1に対する記録時において、記録光LZ1についてのフォーカスサーボは、基準面サーボ光LZ2の反射光を利用して行うことになる。
なお、記録光LZ1についてのトラッキングサーボは、後に詳しく述べるが、基準面サーボ光LZ2の反射光、及びATS光の反射光を利用したATS+方式で行う。
【0021】
記録時における記録光LZ1(及びATS光)のフォーカスサーボのために、記録装置では、記録光LZ1の合焦位置を、基準面サーボ光からは独立して変化させることのできるフォーカス機構(後述の図3におけるレンズ14,15、及びレンズ駆動部16によるエキスパンダ)を設けている。そして、基準面Refを基準とした図2のようなオフセットof-Lに基づき、記録光用のフォーカス機構(エキスパンダ)を制御することで行う。
【0022】
一方、基準面サーボ光LZ2のフォーカスサーボは、基準面サーボ光LZ2の基準面3からの反射光(戻り光)を用いて、対物レンズ20を制御することで行われる。
記録光LZ1と基準面サーボ光LZ2とが共通の対物レンズ20を介して照射され、且つ基準面サーボ光LZ2のフォーカスサーボが、その基準面Refからの反射光に基づき対物レンズ20を制御することで行われることより、記録光LZ1の合焦位置は、基本的には基準面Ref上に追従する。
換言すれば、基準面サーボ光LZ2の基準面Refからの反射光に基づく対物レンズ20のフォーカスサーボにより、記録光LZ1の合焦位置についてのバルク型記録媒体1の面変動に対する追従機能が与えられていることになる。
その上で、上記のような記録光LZ1用のフォーカス機構によって、記録光LZ1の合焦位置をオフセットof−Lの値の分だけオフセットさせる。これにより、バルク層5内の所要の深さ位置に記録光LZ1の合焦位置を追従させることができる。
例えば記録層L0に対する記録を行う場合、記録光LZ1用のフォーカス機構によって、記録光LZ1の合焦位置をオフセットof−L1の値の分だけオフセットさせる。
【0023】
このようにオフセットof−Lの値を用いて記録光LZ1のフォーカス機構を駆動することで、深さ方向におけるマークの形成位置(記録層の位置)を、記録層L0〜L(n)のうちで適宜選択することができる。
【0024】
なお、記録時のアドレス情報の取得は、基準面Refにアドレス情報を記録した凹凸パターン(ピット列やウォブリンググルーブ)が形成されていることを利用できる。即ち基準面Refからの基準面サーボ光LZ2の反射光情報から取得することができる。
また、バルク型記録媒体1としては、図1とは異なり、カバー層2側からみて、基準面Refがバルク層5よりも深い位置に形成されるものもある。
【0025】
<2.実施の形態の記録装置の構成>
上記のようなバルク型記録媒体1に対して情報記録を行う実施の形態の記録装置の構成について説明する。
図3は、図1に示したバルク型記録媒体1に対する記録を行う記録装置が備える光学系の構成を示している。具体的には、記録装置が備える光学ピックアップOPの内部構成を主に示している。
【0026】
図3において、記録装置に装填されたバルク型記録媒体1は、当該記録装置における所定位置においてそのセンターホールがクランプされるようにしてセットされ、図示を省略したスピンドルモータによる回転駆動が可能な状態に保持される。
光学ピックアップOPは、スピンドルモータにより回転駆動されるバルク型記録媒体1に対して記録光、基準面サーボ光、及び隣接トラックサーボ用のスポットを形成するためのATS光を照射するために設けられる。
なお本例の場合、ATS光は、再生時においてはマークにより記録された信号の再生を行うための再生光として用いられることになる。
【0027】
光学ピックアップOP内には、マークによる信号記録を行うための記録光の光源となる記録用レーザ11rと、基準面Refに形成された位置案内子を利用した位置制御を行うための基準面サーボ光の光源であるサーボ用レーザ24とが設けられる。さらに、記録時におけるATS光の照射及び再生時における記録信号の読み出しを行うためのレーザ光を照射するための光源であるATS・再生時用レーザ11apが設けられる。
【0028】
ここで、先に述べたように、記録光と基準面サーボ光とはそれぞれ波長帯の異なる光を用いる。本例の場合、記録光の波長はおよそ405nm程度(いわゆる青紫色レーザ光)、基準面サーボ光の波長はおよそ650nm程度(赤色レーザ光)とされているとする。
また、ATS光や信号読み出しのための再生光として機能すべきATS・再生時用レーザ11apを光源とするレーザ光(記録時に関しては「ATS光」、再生時に関しては「再生光」ともいう)は、選択反射膜3を透過してバルク層5内に到達させる必要があり、なお且つ記録再生波長は同等とすべきことから、その波長は記録光と同波長とする。
【0029】
なお、図2においてはATS・再生時用レーザ11apを1つのみ示しているが、後述する第1の実施の形態に関しては、2つのATS光(主ATS光と副ATS光)を照射する。このため、ATS・再生時用レーザ11apを2単位設ける場合もある。或いはATS・再生時用レーザ11apをマルチビームレーザダイオードとして構成したり、さらに或いは、ATS・再生時用レーザ11apからのATS光についてグレーティング等で主ATS光と副ATS光となる複数のATS光を形成するようにする。
【0030】
光学ピックアップOP内には、記録光、基準面サーボ光、及びATS光のバルク型記録媒体1への共通の出力端となる対物レンズ20が設けられる。
さらには、ATS光のバルク型記録媒体1からの反射光を受光するための第1受光部23と、基準面サーボ光のバルク型記録媒体1からの反射光を受光するための第2受光部29とが設けられる。
【0031】
その上で、光学ピックアップOP内においては、記録用レーザ11rより出射された記録光及びATS・再生時用レーザ11apから出射されたATS光を対物レンズ20に導くと共に、当該対物レンズ20に入射した上記バルク型記録媒体1からのATS光の反射光を第1受光部23に導くための光学系が形成される。
【0032】
具体的に、記録用レーザ11rより出射された記録光、及びATS・再生時用レーザ11apから出射されたATS光は、共にコリメーションレンズ12を介して平行光となるようにされた後、偏光ビームスプリッタ13に入射する。偏光ビームスプリッタ13は、このように光源側から入射した記録光、ATS光については透過するように構成されている。
【0033】
上記偏光ビームスプリッタ13を透過した記録光、ATS光は、固定レンズ14、可動レンズ15、及びレンズ駆動部16から成るエキスパンダに入射する。このエキスパンダは、光源に近い側が固定レンズ14とされ、光源に遠い側に可動レンズ15が配置され、レンズ駆動部16によって上記可動レンズ15が入射光の光軸に平行な方向に駆動されることで、記録光、ATS光について基準面サーボ光とは独立したフォーカス制御を行う。このエキスパンダは、図2の説明で述べた記録光用フォーカス機構に相当するものである。
当該記録光用フォーカス機構におけるレンズ駆動部16は、後述の図4に示すコントローラ44によって、記録対象とする情報記録層位置に対応して設定されたオフセットof-Lの値に応じて駆動される。
【0034】
記録光用フォーカス機構を構成する固定レンズ14及び可動レンズ15を介した各レーザ光は、図のようにミラー17にて反射された後、1/4波長板18を介してダイクロイックプリズム19に入射する。
ダイクロイックプリズム19は、その選択反射面が、記録光、ATS光と同波長帯の光は反射し、それ以外の波長による光は透過するように構成されている。従って上記のようにして入射した記録光、ATS光は、ダイクロイックプリズム19にて反射される。
ダイクロイックプリズム19で反射された各レーザ光は、対物レンズ20を介してバルク型記録媒体1に対して照射される。
【0035】
ここで、このように記録光、ATS光が対物レンズ20を介して照射されることによっては、バルク層5内の対象とする情報記録層位置において、後述する図10A或いは図12Aのように、記録スポットSPbr、隣接トラックサーボ用スポット(ATSスポット)SPbsが形成される。(第1の実施の形態に関しては、図12AのようにATSスポットは2つのスポットSPbs、SPbhとなる)
この場合の光学系は、これら記録スポットSPbrとATSスポットSPbs(及びSPbh)との位置関係が、予め設定された位置関係で固定となるように設計されている。
即ちATSスポットSPbs(及びSPbh)を形成するATS光は、照射位置が、記録スポットSPbrを形成する記録光のディスク円周方向位置(ディスク中心から見た角度位置)とは異なる位置とされた状態で、記録光と一定のディスク半径方向の距離を保つようにされている。
【0036】
対物レンズ20に対しては、対物レンズ20をフォーカス方向(バルク型記録媒体1に対して接離する方向)、及びトラッキング方向(フォーカス方向に直交する方向:バルク型記録媒体1の半径方向に平行な方向)に変位可能に保持する2軸アクチュエータ21が設けられる。
2軸アクチュエータ21には、フォーカスコイル、トラッキングコイルが備えられ、それぞれに駆動信号(後述する駆動信号FD、TD)が与えられることで、対物レンズ20をフォーカス方向、トラッキング方向にそれぞれ変位させる。
【0037】
ここで、記録時や再生時においては、上記のようにバルク型記録媒体1に対してATS光(再生光)が照射されることに応じて、バルク層5内のマーク列からの当該ATS光(再生光)の反射光が得られる。
ATS光の反射光は、対物レンズ20を介してダイクロイックプリズム19に導かれ、当該ダイクロイックプリズム19にて反射される。
ダイクロイックプリズム19で反射されたATS光の反射光は、1/4波長板18→ミラー17→記録光用フォーカス機構(可動レンズ15→固定レンズ14)を介した後、偏光ビームスプリッタ13に入射する。
【0038】
このように偏光ビームスプリッタ13に入射するATS光の反射光(復路光)は、1/4波長板18による作用とバルク型記録媒体1での反射時の作用とにより、ATS・再生時用レーザ11ap側から偏光ビームスプリッタ13に入射した光(往路光)とはその偏光方向が90度異なるようにされる。この結果、ATS光の反射光は、偏光ビームスプリッタ13にて反射される。
そして偏光ビームスプリッタ13にて反射されたATS光の反射光は、集光レンズ22を介して第1受光部23の受光面上に集光する。
【0039】
ここで、図示による説明は省略するが、第1受光部23は複数の受光素子(この場合は4つであるとする)を備えて構成される。以下、第1受光部23としての複数の受光素子で得られる受光信号については、これらを総括して受光信号DT−apと表記する。
なお、第1の実施の形態に関しては、2つのATSスポットSPbs、SPbhについて2つの反射光が得られ、これに応じて第1受光部23には、2つのATS光の反射光をそれぞれ受光する受光素子が形成されている。
【0040】
また、光学ピックアップOP内には、以上の記録光、ATS光についての光学系の構成に加えて、サーボ用レーザ24より出射された基準面サーボ光を対物レンズ20に導き、且つ、バルク型記録媒体1からの基準面サーボ光の反射光を第2受光部29に導くための光学系が形成される。
サーボ用レーザ24より出射された基準面サーボ光は、コリメーションレンズ25を介して平行光とされた後、偏光ビームスプリッタ26に入射する。偏光ビームスプリッタ26は、このようにサーボ用レーザ24側から入射した基準面サーボ光(往路光)は透過するように構成される。
【0041】
偏光ビームスプリッタ26を透過した基準面サーボ光は、1/4波長板27を介してダイクロイックプリズム19に入射する。
先に述べたように、ダイクロイックプリズム19は、記録光、ATS光と同波長帯の光は反射し、それ以外の波長による光は透過するように構成されているため、基準面サーボ光はダイクロイックプリズム19を透過し、対物レンズ20を介してバルク型記録媒体1に照射される。
【0042】
また、このようにバルク型記録媒体1に基準面サーボ光が照射されたことに応じて得られる当該基準面サーボ光の反射光(基準面Refからの反射光)は、対物レンズ20を介した後ダイクロイックプリズム19を透過し、1/4波長板27を介して偏光ビームスプリッタ26に入射する。
このようにバルク型記録媒体1側から入射した基準面サーボ光の反射光(復路光)は、1/4波長板27の作用とバルク型記録媒体1での反射時の作用とにより、往路光とはその偏光方向が90度異なるものとされ、従って復路光としての基準面サーボ光の反射光は偏光ビームスプリッタ26にて反射される。
【0043】
偏光ビームスプリッタ26にて反射された基準面サーボ光の反射光は、集光レンズ28を介して第2受光部29の受光面上に集光する。
この第2受光部29としても複数の受光素子(例えば4つ)を備え、以下、第2受光部29としての複数の受光素子で得られる受光信号を総括して受光信号DT−svと表記する。
【0044】
ここで図示による説明は省略するが、記録装置には、光学ピックアップOP全体をトラッキング方向にスライド駆動するスライド駆動部が設けられ、当該スライド駆動部による光学ピックアップOPの駆動により、レーザ光の照射位置を広範囲に変位させることができるようにされている。
【0045】
図4は、実施の形態の記録装置の全体的な内部構成を示している。
なお図4において、光学ピックアップOPの内部構成については、図2に示した構成のうち記録用レーザ11r、レンズ駆動部16、2軸アクチュエータ21のみを抽出して示している。
なお、後述する第2、第3の実施の形態の場合、対物レンズ20の位置を検出するレンズ位置センサを設ける場合があるため、これをレンズ位置センサ45として示している。
【0046】
図4において、記録装置には、記録光、ATS光に係る信号処理系として、図中の記録処理部31、マトリクス回路32、再生処理部33、再生時用サーボ回路34、及びATS側フィルタ35が設けられている。
【0047】
記録処理部31には、バルク型記録媒体1に対して記録すべきデータ(記録データ)が入力される。
記録処理部31は、入力された記録データに対してエラー訂正符号の付加や所定の記録変調符号化、アドレス情報の付加を行うなどして、バルク型記録媒体1に実際に記録される例えば「0」「1」の2値データ列である記録変調データ列を得る。
そして、当該記録変調データ列に基づき生成した記録パルス信号RCPにより、光学ピックアップOP内の記録用レーザ11rを発光駆動する。
【0048】
マトリクス回路32には、前述した第1受光部23からの受光信号DT−apが入力される。
マトリクス回路32は、受光信号DT−apに基づき、マトリクス演算処理により必要な各種の信号を生成する。
【0049】
上述のように本例の場合、バルク層5にマーク列により記録された信号の再生時(ユーザデータの再生時)には、ATS光を、再生用のレーザ光(再生光)として使用する。なお且つ再生時には、ATS光の反射光に基づき既記録マーク列を対象としたフォーカスサーボ制御及びトラッキングサーボ制御を行うものとしている。
【0050】
このことに対応してマトリクス回路32では、受光信号DT−apに基づき、上述した記録変調データ列の再生信号に相当する高周波信号(和信号:以下、再生信号RFとする)、フォーカスサーボ制御のためのフォーカスエラー信号FE−ap(マーク列に対するフォーカス誤差を表す信号)、トラッキングサーボ制御のためのトラッキングエラー信号TE−ap(隣接トラックサーボ用スポットSPbsの既記録マーク列に対する半径方向における位置誤差を表す信号)を生成するように構成される。
【0051】
マトリクス回路32にて生成された再生信号RFは、再生処理部33に供給される。
また、フォーカスエラー信号FE−apは、再生時用サーボ回路34に供給される。
また、トラッキングエラー信号TE−apは、再生時用サーボ回路34に対して供給されると共に、後述する記録時における位置制御に用いられるべく、ATS側フィルタ35に対しても供給される。
【0052】
再生処理部33は、再生信号RFについて2値化処理や記録変調符号の復号化・エラー訂正処理など、上述した記録データを復元するための再生処理を行い、記録データを再生した再生データを得る。
また再生処理部33はマーク列により記録されたデータ中に埋め込まれたアドレス情報の検出も行う。図示は省略しているが、検出されたアドレス情報はコントローラ44に供給される。
【0053】
再生時用サーボ回路34は、コントローラ44からの指示に応じて、フォーカスエラー信号FE−ap、トラッキングエラー信号TE−apのそれぞれに基づき、フォーカスサーボ信号FS−ap、トラッキングサーボ信号TS−apを生成する。
ここでフォーカスサーボ信号FS−apは、ATS光の合焦位置を再生対象とする情報記録層位置(マーク形成層位置)に追従させる(フォーカス誤差をキャンセルする)ための信号となる。
またトラッキングサーボ信号TS−apは、ATS光のスポット位置をマーク列に追従させる(トラッキング誤差をキャンセルする)ための信号となる。
これらフォーカスサーボ信号FS−ap、トラッキングエラー信号TS−apは、再生時において使用されるものである。
図示するようにフォーカスサーボ信号FS−apはセレクタ40に供給され、トラッキングエラー信号TS−apはセレクタ41に対して供給される。
【0054】
ATS側フィルタ35は、コントローラ44からの指示に応じて、トラッキングエラー信号TE−apに基づきトラッキングサーボ信号TS−atsを生成する。
具体的に、ATS側フィルタ35は、トラッキングエラー信号TE−apに対し位相補償等のトラッキングサーボのためのフィルタ処理を施して、トラッキングエラー信号TE−apが表すトラッキング誤差をキャンセルするためのトラッキングサーボ信号TS−atsを生成する。
このとき、ATS側フィルタ35としては、例えば全積分や一次のLPF(ローパスフィルタ)など、ATSのループにピークを生じさせない構成とする。
図示するようにトラッキングサーボ信号TS−atsは、基準面側サーボフィルタ37に供給される。
【0055】
記録装置には、基準面サーボ光の反射光についての信号処理系として、信号生成部36、基準面側サーボフィルタ37、及び記録時用フォーカスサーボ回路38が設けられる。
【0056】
信号生成部36は、図3に示した第2受光部29における複数の受光素子からの受光信号DT−svに基づき、必要な信号を生成する。
具体的に信号生成部36は、受光信号DT−svに基づき、基準面Refに形成された位置案内子(トラック)に対する基準面サーボ光の照射スポット位置の半径方向における位置誤差を表すトラッキングエラー信号TE−svを生成する。
また信号生成部36は、記録時におけるフォーカスサーボ制御を行うための信号として、基準面Ref(選択反射膜3)に対する基準面サーボ光のフォーカス誤差を表すフォーカスエラー信号FE−svを生成する。
【0057】
信号生成部36により生成されたフォーカスエラー信号FE−svは、記録時用フォーカスサーボ回路38に対して供給される。
記録時用フォーカスサーボ回路38は、コントローラ44からの指示に応じ、フォーカスエラー信号FE−svに基づいてフォーカスサーボ信号FS−svを生成し、これをセレクタ40に対して出力する。
【0058】
セレクタ40は、コントローラ44から指示に応じて、記録時には記録時用フォーカスサーボ回路38からのフォーカスサーボ信号FS−sv(つまり基準面サーボ光の焦点位置を基準面Refに追従させるためのサーボ制御信号)を選択し、再生時には、再生時用サーボ回路35からのフォーカスサーボ信号FS−ap(再生光の焦点位置を再生対象とする情報記録層位置に追従させるためのサーボ制御信号)を選択する。
【0059】
セレクタ40により選択されたフォーカスサーボ信号FSは、フォーカスドライバ42に供給される。
フォーカスドライバ42は、供給されたフォーカスサーボ信号FSに基づき生成したフォーカス駆動信号FDにより2軸アクチュエータ21のフォーカスコイルを駆動する。
これにより、記録時には、対物レンズ20が、基準面サーボ光の焦点位置を基準面Refに追従させるようにして駆動される。また再生時には、対物レンズ20がATS光(つまり再生光)の焦点位置を再生対象とする情報記録層位置に追従させるようにして駆動される。
なお、後述もするように、記録時におけるATS光(及び記録光)についてのフォーカス制御(記録対象とする情報記録層位置に合焦させるためのフォーカス制御)は、レンズ駆動部16(エキスパンダ)の制御により実現されるものである。
【0060】
また、信号生成部36により生成されたトラッキングエラー信号TE−svは、基準面側サーボフィルタ37に供給される。
ここで基準面側サーボフィルタ37には、上述のようにATS側フィルタ35からトラッキングサーボ信号TS−atsも供給される。
第1〜第3の実施の形態では、記録時のトラッキングサーボ方式として、ATS+方式を採用する。第1〜第3の実施の形態のトラッキングサーボ方式についてはそれぞれ後に詳しく述べるが、ATS+方式は、ATSと基準面サーボを併用したサーボ方式である。
基準面側サーボフィルタ37は、基準面サーボループにATS側のトラッキングサーボ信号TS−atsを注入して記録時のトラッキングサーボ信号TS−arfを生成する。
【0061】
基準面側サーボフィルタ37により生成されたトラッキングサーボ信号TS−atfはセレクタ41に供給される。
セレクタ41は、コントローラ44からの指示に応じ、記録時にはトラッキングサーボ信号TS−arfを選択し、再生時には再生時用サーボ回路35からのトラッキングサーボ信号TS−apを選択する。
【0062】
セレクタ41により選択されたトラッキングサーボ信号TSは、トラッキングドライバ43に供給される。
トラッキングドライバ43は、供給されたトラッキングサーボ信号TSに基づき生成したトラッキング駆動信号TDにより、2軸アクチュエータ21のトラッキングコイルを駆動する。
これにより、再生時には、対物レンズ20がトラッキングサーボ信号TS−apに基づき、ATS光のスポット位置がマーク列に追従するように駆動されることとなる。また記録時には、対物レンズ20が、トラッキングサーボ信号TS−arfとしての、ATS光のトラッキング誤差成分と基準面サーボ光のトラッキング誤差成分との双方を反映したATS+方式のサーボ制御信号に基づき駆動されることになる。
【0063】
コントローラ44は、例えばCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などのメモリ(記憶装置)を備えたマイクロコンピュータで構成され、例えばROM等に記憶されたプログラムに従った制御・処理を実行することで、記録装置の全体制御を行う。
例えばコントローラ44は、前述したように予め各情報記録層位置に対応して設定されたオフセットof−Lの値に基づいて、記録時における記録光、ATS光の合焦位置の制御(設定)を行う。具体的には、記録対象とする情報記録層位置に対応して設定されたオフセットof−Lの値に基づき、光学ピックアップOP内のレンズ駆動部16を駆動することで、深さ方向における記録位置及びATS光の合焦位置の選択を行う。
【0064】
また、コントローラ44は、記録時と再生時とで、それぞれ対応する手法でのフォーカスサーボ、トラッキングサーボが行われるようにするための制御を行う。
具体的に、フォーカスサーボ側については、記録時において、基準面サーボ光の反射光に基づき対物レンズ20のフォーカスサーボ制御が実行されるように、記録時用フォーカスサーボ回路38にフォーカスサーボ信号FS−svを生成させ且つ、セレクタ40により当該フォーカスサーボ信号FS−svを選択させる。
また再生時には、ATS光のマーク列からの反射光に基づき対物レンズ20のフォーカスサーボ制御を実行させるべく、再生時用サーボ回路34にフォーカスサーボ信号FS−apを生成させ且つ、セレクタ40により当該フォーカスサーボ信号FS−apを選択させる。
【0065】
また、トラッキングサーボについては、記録時には、基準面サーボ光の反射光とATS光の反射光とに基づく対物レンズ20のトラッキングサーボ制御が実行されるように、基準面側サーボフィルタ37、ATS側フィルタ35の処理をそれぞれ実行させ且つ、セレクタ41に、トラッキングエラーTS−arfを選択させる。
また再生時には、ATS光の反射光に基づく対物レンズ20のトラッキングサーボ制御が実行させるべく、再生時用サーボ回路34にトラッキングサーボ信号TS−apを生成させ且つ、セレクタ41に当該トラッキングサーボ信号TS−apを選択させる。
【0066】
なお、第2,第3の実施の形態においては、レンズ位置センサ45が設けられる場合がある。レンズ位置センサ45は対物レンズ20の位置情報を検出し、コントローラ44に供給する。コントローラ44は、レンズ位置センサ45の情報に基づき、基準面側サーボフィルタ37に、ATS+方式の演算に用いる偏芯に応じた基準値(オフセット量)OFSの情報を与える。
或いは信号生成部36が、基準面Refの情報から偏芯に応じた基準値OFSを生成する場合もある。その場合、レンズ位置センサ45は不要となる。
【0067】
<3.実施の形態のサーボ方式に至る過程>
[3−1:隣接トラックサーボ(ATS)]
ここで後述する実施の形態の理解のため、実施の形態における記録時のトラッキングサーボ方式を開発するに至った技術的な過程を説明しておく。具体的にはATS方式、基準面側サーボ方式、ATS+方式について述べる。
【0068】
まずATS方式について説明する。
光ディスク記録媒体の容量を増やす1つの手法として、ディスクの厚み方向に情報記録層の数を増やしていくという方法がある。
従来の光ディスクでは、情報記録層にグルーブと呼ばれる溝が形成されており、このグルーブにより記録光・再生光のスポット位置を検出し、記録光・再生光のスポットが所定の位置に来るように制御される。
【0069】
ところが、グルーブの形成は手間がかかる工程であり、各記録層の全面にグルーブを形成する場合、記録層数を増やすとディスクの製造コストが上がるという問題がある。
そこで、ATS方式が考えられた。
これはグルーブを全面に形成するのではなく、記録層の一部にのみ形成する。そしてサーボ光(ATS光)でその形成されたグルーブをなぞるように制御を行ない、ATS光から所定の距離を置いて配置される記録光によって、グルーブのない箇所に信号を記録する。以降、ATS光は記録光によって記録された信号をなぞるように制御することで、グルーブの形成に関するコストを下げるものである。
【0070】
図5に概略動作を示す。図5Aのように予め形成されたトラックTKpが例えばグルーブとして形成されている。
この光ディスクの記録層に対し、記録光とATS光を照射する。記録光のスポット(記録スポットSPbr)とATS光のスポット(ATSスポットSPbs)は、半径方向にはトラックピッチ分離間した状態に固定される。
まず予め形成されたトラックTKpに対してATSスポットSPbsがオントラッキング状態でトレースするように制御する。これにより、トラックピッチ分だけ離れた記録スポットSPbrによりデータ記録が行われ、図のようにトラックTKrが形成されていく。
以降は、図5Bのように、ATSスポットSPbsが、既に記録スポットSPbrにより記録されたトラックをトレースするようにし、それによって、その外周側に新たに記録スポットSPbrによりデータ記録が行われ、トラックTKrが形成されていく。
【0071】
このようなATSによれば、トラックピッチは各スポットSPbs、SPbr間の半径方向での距離として一定とでき、全面にグルーブが形成されていなくとも、所定のトラックピッチを保ったスパイラル状のトラックを形成していくことができる。
【0072】
ところがATSの場合、サーボ特性により特定の周波数帯におけるノイズが強調されてしまい、サーボが発散してしまうという問題がある。
図6は光ディスクのトラッキングサーボにおける一般的なサーボ特性の例である。図6Aでは開ループ特性を、図6Bでは閉ループ特性を示している。
この例では、1kHz〜5kHzの間にゲインが0より大きくなる傾向が見られる。
【0073】
この場合、この周波数の外乱に対してはトラッキングサーボ動作が過度に応答し、その様子が形成されるトラック(マーク列)に表れる。ディスクが1回転し、ATS光が外乱に応答した箇所に差し掛かると、その箇所のマーク列には、上記の周波数の成分が含まれているため、この周波数成分にさらに過度に応答してしまう。このため、記録されたマーク列に含まれる上記周波数成分が徐々に大きくなっていき、その結果、トラッキングサーボの追従性能を越えてしまい、トラッキング制御が行なえなくなってしまう。
図7は通常サーボ(目的のトラックやグルーブに追従させるサーボ)と、ATS(隣接トラックサーボ)の場合のトラッキングエラー成分の取れ残り量を示している。
図からわかるようにATSの場合、取れ残り量が徐々に発散していく。
【0074】
[3−2:基準面サーボ]
一方、記録層にグルーブを形成せずに、記録層とは別に基準面を設け、基準面にのみ制御信号(グルーブ等)を形成することも提案された。本例でいう図1のような構造である。
サーボ光(基準面サーボ光)を基準面に形成された制御信号により制御を行ない、記録光により記録層に信号を記録するようにすることで、各記録層にグルーブを形成するコストを削減するものである。
【0075】
ところがこの基準面サーボの場合、対物レンズからの参照面と記録面が異なるため、ディスクの偏芯によるトラックの位置ずれに追従するために対物レンズが動いた場合や、ディスクのチルトなどが発生した場合には、基準面でのスポット位置と記録層のスポット位置にずれが生じる。
図8にスポット位置ずれの様子を示す。図8の各符号は図1,図2で用いた符号を用いる。図8Aは、ディスクチルトや対物レンズシフトが無い状態を示している。この場合、基準面Refに対して基準面サーボ光LZ2を照射し、記録層L0に記録光LZ1を照射している状態を示している。基準面Refと記録層L0では、ディスク厚み方向に距離があるが、基準面サーボ光LZ2と記録光LZ1のスポット位置は、ディスクの垂直線(一点鎖線)上で一致している。この状態であれば、基準面Refを用いたトラッキングサーボで、記録層L0に、記録光LZ1により、正確なトラッキング状態でマーク列(トラック)を形成していくことができる。
【0076】
ところが例えば図8Bにディスクチルトが生じている状態を示しているが、この場合は図示のように、基準面サーボ光LZ2と記録光LZ1のスポット位置は、ディスクの垂直線(一点鎖線)上で一致しない。つまり、記録光LZ1は本来図中の位置P1に照射したいところ、位置P2となってしまう。
このようなスポット位置のずれは、基準面Refと記録層の距離が離れるほど大きくなる。つまり記録層L1,L2・・・と、より深い位置の記録層に行くほど大きくなる。
これを許容するためにはトラック間隔を狭くすることが出来ず、結果としてディスクの記録容量を効果的に増やすことが出来ないという問題が生ずる。
【0077】
[3−3:ATS+方式]
そこで隣接トラックサーボ(ATS)と基準面サーボを併用するATS+方式が開発された。
即ち、基準面サーボに用いる基準面サーボ光と記録光のスポットずれを隣接トラックサーボで補正し、隣接トラックサーボには所定のフィルタ処理を施すことでサーボ特性による発散を防ぎ、それによるサーボ特性の悪化は基準面サーボにて補完するという方式である。
【0078】
上記の図3,図4で述べた本実施の形態の記録装置の構成は、基本的に、このATS+方式で記録時のトラッキングサーボを実行するものとなる。
実施の形態の記録装置では、図4のように、信号生成部36と、基準面側サーボフィルタ37と、トラッキングドライバ43とを有することで、基準面Refに形成された位置案内子に基づき対物レンズ20のトラッキングサーボ制御を行うサーボ制御系(基準面サーボ系)が構成されている。
つまり、基準面Refの位置案内子に基づくトラッキングサーボ制御の行われるトラッキングサーボループが形成されているものである。
【0079】
そして記録時におけるトラッキングサーボ制御系として、このような基準面サーボ系と共に、ATSによるサーボ制御系が構成されている。
具体的には、ATS光の反射光に基づき当該ATS光のマーク列に対するトラッキング誤差を表すトラッキングエラー信号TE−apを生成するマトリクス回路32と、トラッキングエラー信号TE−apを用いてトラッキングサーボ信号TS−atsを生成するATS側フィルタ35とを設けた上で、当該ATS側フィルタ35により生成されたトラッキングサーボ信号TS−atsを、基準面側サーボフィルタ37に供給し、基準面サーボ系のトラッキングサーボループに対して与えるようにしている。
【0080】
これは、トラッキングサーボ信号TS−atsを、基準面サーボ系の制御目標値として与えるように構成しているものである。或いは、基準面サーボ系としてのトラッキングサーボループをマイナーループとして、トラッキングサーボ信号TS−atsを当該マイナーループの制御目標値として入力していると換言することもできる。
【0081】
このような構成とした場合、ATS制御系のトラッキング誤差は、主に、対物レンズ20のレンズシフト等によって生じる先の図8にて説明したようなスポット位置ずれ(この場合は基準面サーボ光とATS光との間のスポット位置ずれとなる)に起因して生じることになる。
そして、このようなATS側のトラッキング誤差情報が、基準面サーボ系の制御目標値として与えられることで、ATS光のスポット位置が、マーク列に追従するように対物レンズ20が駆動されることになる。
【0082】
この場合、基準面側サーボフィルタ37を含む基準面サーボ系は、主に、通常の外乱成分(つまり上記のようなレンズシフト等に伴うスポット位置ずれの要因となるディスク偏芯成分等よりも高い周波数の外乱成分)に追従する機能を担わせるべきとなる。
この意味で、基準面サーボ系の制御帯域は、通常のサーボ制御系とする場合と同等の制御帯域に設定する。具体的に本例の場合、基準面サーボ系の制御帯域は10kHz程度に設定するものとしている。
【0083】
一方、ATS側フィルタ35を含むATS制御系については、通常の外乱成分への追従はさせるべきではないので、その制御帯域は、少なくとも基準面サーボ系の制御帯域よりも低い周波数帯域に設定する。例えばATS制御系の制御帯域(ATS側フィルタ35のカットオフ周波数)としては1kHz程度に設定している。
【0084】
上記のように基準面サーボ系としてのトラッキングサーボループ(マイナーループ)に対してATS制御系の制御信号としてのトラッキングサーボ信号TS−atsを付与するようにした実施の形態のトラッキングサーボ制御系によれば、従来のATS制御系単体とした場合に生じていた、先の図6に示したような伝達特性ゲインのピークの発生を防止することができる。
伝達特性ゲインのピークの発生が防止されることで、トラッキング誤差信号が時間と共に増大して発散してしまうといった事態の発生を防止でき、その結果、記録マーク列の重なりや交差の発生を防止することのできるトラッキングサーボ制御を、従来のATS単体とする場合よりも安定なものとして実現することができる。
【0085】
図9にATS+方式のサーボ制御系を伝達関数ブロックで示している。
図9の各伝達関数ブロックは、説明上、レンズブロック200、基準面サーボブロック201、演算ブロック202、演算ブロック203、ATS制御ブロック204、演算ブロック205、遅延ブロック206、演算ブロック207と呼ぶこととする。
【0086】
K(s)と示す基準面サーボブロック201は、基準面サーボ系における制御器としてのサーボ演算器(基準面側サーボフィルタ37に相当)の離散系伝達関数を表す。
Ki/sと示すATS制御ブロック204は、ATS制御系における制御器としてのサーボ演算器(ATS側フィルタ35に相当)の離散系伝達関数を表す。
またP(s)と示すレンズブロック200は、対物レンズ20を駆動するアクチュエータの離散系伝達関数を表している。
遅延ブロック206のZ-kは、ディスク一回転に相当する時間、信号を遅延させることを表している。
【0087】
また、図ではATS制御系の制御目標位置r、ATS制御系のトラッキングエラー信号ebを、基準面サーボ系のトラッキングエラー信号erを示している。
「ybs」はATSスポットSPbsの位置を表す。「yr」は基準面サーボ光のスポットの位置を表す。
「dtp」は、記録スポットSPbrとATSスポットSPbsとの間のディスク半径方向の距離である。つまりATS方式で形成されるトラックのトラックピッチに相当する。
【0088】
図示するように、ATSスポットSPbsの位置ybsと目標位置rとの差がエラー信号ebである。一般的なトラッキングサーボ制御系と同様に、この場合のATS制御系においてもエラー信号ebをゼロとするようにATS制御ブロック204(Ki/s)が動作する。
ここで目標位置rについては、演算ブロック207で、ATSスポットSPbsの位置ybsに、距離dtpを加算し、これを遅延ブロック206で遅延させて得るようにしている。ATSスポットSPbsの位置ybsに距離dtpを加算することで、その時点の記録スポットSPbrの位置を示す値が得られる。なお、ここでは、ATSスポットSPbsと記録スポットSPbrが同一の円周方向位置(つまりディスク半径方向に並ぶ位置)にあると仮定している。
この加算値としての記録スポットSPbrの位置について、遅延ブロック206で遅延Z-kを与えることで、1周回前の記録スポットSPbrの位置が得られる。即ちこれは現在のATSスポットSPbsの目標位置rとなる。
【0089】
基準面サーボ系では、基準面サーボ光のスポット位置yrに対し、演算ブロック203で偏芯に応じた基準値OFSを加算する。基準値OFSは、偏芯等により生ずる、基準面サーボ光のスポット位置yrとATS光のスポット位置ybsのトラッキング方向のずれ量に相当する。
この演算ブロック203の出力とATS制御ブロック204の出力についての演算ブロック202での加算結果をトラッキングエラー信号erとする。これは、例えば上述のようにカットオフ周波数が例えば1kHz程度とされているATS制御系のサーボ制御信号に、基準面サーボ系で得られる高周波(10kHz程度)の外乱成分を、基準値OFSによってスポット位置ズレの誤差を解消した上で、付加するものと言える。
基準面サーボブロック201は、このトラッキングエラー信号erをゼロとするように動作し、対物レンズ20を駆動するアクチュエータ(レンズブロック200)の駆動制御を行う。
【0090】
このようなATS+方式において、以下のように問題が生じた。
そもそも高密度記録を行おうとすると、隣接トラックサーボ(ATS)において記録光とATS光の照射位置は、ディスク円周方向位置に違いが生じてしまう。
図10Aで説明する。
最も単純にATSを行おうとする場合、ATSスポットSPbsに対して記録スポットは、図中記録スポットSPbr’として示すように、ディスク半径方向に並ぶ(ディスク円周方向位置が同じ)ようにすればよい。
通常、記録光とATS光の間隔は、たとえば5μmほどであって、それほど小さい値にはできない。すると、ディスク半径方向に並ばせた場合、ATSで形成されるトラックのトラックピッチTP2は、5μm程度が限度となる。ところが、トラックピッチは、例えばなるべく光学限界に近い程度にまで狭くすることで、高密度化を図りたい。
そこで、記録光とATS光の距離を保ったまま、記録光とATS光の円周方向位置をずらすことで、半径方向の間隔(=トラックピッチ)を狭くする。即ち図示のように、ATSスポットSPbsと記録スポットSPbrを異なる円周方向位置として、トラックピッチTP1を実現する。
【0091】
ところがこのように記録光とATS光の円周方向位置が異なっていると、予め記録されているトラックに偏芯がある場合、トラックピッチが偏芯によって変動してしまうという事象が生じてしまう。
これを図11で説明する。
図11では、ディスク上でスパイラル状に形成されるトラックを直線で示している。破線で示すトラックTKqは、偏芯が無いとした場合のトラック軌道である。
一方、実線で示すトラックTKs、TKrは、偏芯が有る場合に形成されるトラック軌道の一部を示している。
トラックTKsは、ATSにおいてATS光がトレースするトラックであり、トラックTKrはその際に記録光によってマーク列が形成されていくトラックである。
一点鎖線で示すトラックTKrCは、本来形成したいトラックピッチTPc(=TP1)のトラックである。
つまりこの図は、偏芯の影響によって、本来の目的とするトラックピッチTPcのトラックとは、異なるトラックピッチTPwでトラックTKrが形成されている状態を示している。
なお、ATSスポットSPbsのスポット位置(ybs等)、記録スポットSPbrのスポット位置(ybr等)の位置関係は、それぞれ位置RCがディスク中心(回転)と想定した状態で示している。
【0092】
偏芯が生じていると、形成されるトラック軌道(TKs、TKr)は、偏芯が無い場合の理想的なトラック軌道(TKq)に対して、形成される円の中心がずれた軌道と成り、円周上の或る一部では、図示のように角度θだけ傾いた状態となる。
ここで、或る時点のATSスポットSPbsの位置Ybs(−1)に注目すると、その時点の記録スポットSPbrは、位置Ybr(−1)となる。図10Aのように、記録光とATS光の円周方向位置をずらしているためである。
同様に、次の時点のATSスポットSPbsの位置Ybsに注目すると、その時点の記録スポットSPbrは、位置Ybrとなる。
【0093】
ここで、ATSスポットSPbsが位置Ybsにある時点を考える。ATS制御系では、ATSスポットSPbsがトラックTKsに追従するように制御する。
記録光とATS光は、半径方向にはトラックピッチTPc(=TP1)だけ離間して照射されているため、このATSにより、トラックピッチTPcのトラックが形成されるはずである。しかしこの場合、ATS制御により対物レンズ20がディスク半径方向に制御される動作によれば、記録光を、ディスク半径方向にみて位置ybrCに制御する動作となる。ところがこの時点で記録スポットSPbrは、円周位置方向にずれた位置ybrに存在する。
結果として、記録光はトラックTKrを形成する軌道で照射されることになり、本来とは異なるトラックピッチTPwのトラックが形成されてしまう。
【0094】
この図11は、形成されるトラックが、広いトラックピッチとなった箇所を示したものであるが、偏芯がある場合は、理想のトラックとは中心点がずれた円が重なるような状況であるため、円周方向位置によっては、形成されるトラックのトラックピッチが本来のピッチより狭くなる箇所も生ずる。
つまり偏芯によって、1周回内で、トラックピッチが広くなったり狭くなったり変動してしまう。
そして、この変動によりサーボエラーの取れ残り量が大きくなってしまう。
図10に、記録光とATS光の円周方向位置の違いによる取れ残りの例を示す。
図10Bは、記録光がATS光と円周方向位置が同じである場合(例えば図10Aに示した記録スポットSPbr’のような場合)の取れ残り量であり、一定の振幅以下の取れ残り量となっている。
一方図10Cは、記録光がATS光と円周方向位置が異なる場合(例えば図10Aに示した記録スポットSPbrのような場合)の取れ残り量であり、取れ残り量が大きくなっていることがわかる。
【0095】
以上のように、トラックピッチを狭くするためには、記録光とATS光を異なる円周方向位置に照射することが必要であるが、その場合、偏芯によってトラックピッチの周内変動が発生し、トラッキングエラー信号の取れ残りが拡大し、トラッキングサーボが不安定になる。
【0096】
<4.第1の実施の形態のサーボ方式>
そこで本実施の形態では、記録光とATS光を異なる円周方向位置に照射する場合に、トラッキングエラー信号の取れ残りを低減し、トラッキングサーボ動作の安定化を図る。
以下説明する各実施の形態では、ATS光についての受光信号に基づくサーボエラー信号として、ATS光が記録光と同じディスク円周方向位置で照射とされたとした場合に得られるべき補正サーボエラー信号を求め、該補正サーボエラー信号を用いて、トラッキングサーボ信号を生成することを基本とする。
そして第1〜第3の実施の形態は、ATS+方式を採用するものである。つまり上記の補正サーボエラー信号と、基準面サーボ光についての受光信号に基づいて得られる基準面サーボエラー信号とを用いて、トラッキングサーボ信号を生成する。
このため、図4に示したATS側フィルタ35では、トラッキングエラー信号TE−apについて補正サーボエラー信号を生成し、補正サーボエラー信号からトラッキングサーボ信号TS−atsを生成し、これを基準面側サーボフィルタ37に供給するものとなる。
つまり補正サーボエラー信号に基づくサーボ制御信号を、基準面サーボ系のトラッキングエラー信号TE−svに基づいてトラッキングサーボ信号を生成するトラッキングサーボループに対して与える構成となる。
【0097】
第1の実施の形態について説明する。
図12Aは、第1の実施の形態におけるATS光と記録光のスポット位置を示している。トラックTKsは既に形成済みのトラックであり、このトラックTKsにATS光をトレースさせた状態で、記録光により新たなトラックTKrを形成していく様子を示している。
ここで、ATSスポットSPbsに対して、記録スポットSPbrは円周方向位置が異なるようにすることで、狭トラックピッチ化を図っている。
この場合に第1の実施の形態では、ATSスポットSPbsを主ATSスポットとし、もう1つの副ATSスポットSPbhが形成されるようにしている。図3の説明の際に簡単に触れたが、この場合、ATS光として主副2系統のATS光がバルク型記録媒体1の記録層に照射されるようにする。
このため、図3の構成において、ATS・再生時用レーザ11apを2単位設けたり、或いはATS・再生時用レーザ11apをマルチビームレーザダイオードとして構成したり、さらに或いは、ATS・再生時用レーザ11apからのATS光についてグレーティング等で主ATS光と副ATS光を形成するなどの手法を採る。
【0098】
主ATS光と副ATS光は、それらのディスク円周方向位置が、記録光のディスク円周方向位置を挟んで対称の位置となるように照射される。
図12Aに示す例では、主ATS光(主ATSスポットSPbs)は、記録光(記録スポットSPbr)に対して円周方向位置がトラック進行方向に先行するように照射するものとしている。この場合、副ATS光(副ATSスポットSPbh)の円周方向位置は、記録光(記録スポットSPbr)より後行する位置となる。
この主ATSスポットSPbsと副ATSスポットSPbhの中間点(破線の円で示す位置ybx)が、記録スポットSPbrと半径方向に並ぶ状態となる。
【0099】
つまり第1の実施の形態では、ATS光を2つとし、記録光の円周方向位置が2つのATS光の中間点になるようにする。そして上記図11で述べた偏芯によるトラックピッチの変動を解消(低減)するため、二つのATS光の受光信号から演算して導き出した補正トラッキングエラー信号を用い、結果として記録光が補正された位置状態、例えば図11のトラックTKrCを形成する位置状態となるトラッキングサーボを実現するものである。
【0100】
ATS+方式における隣接トラックサーボについて、記録光の位置の補正に用いる隣接トラックの位置信号は、記録光に対して円周方向位置が同じである(半径方向に並ぶ)ATS光の位置信号が必要となる。
そこで、記録光とディスク回転中心を結ぶ半径に対して、主ATS光の線対称となる位置に、補間用の副ATS光を照射するようにする。
このとき、記録光に対して円周方向の位置が同じである位置ybxのATS光の位置信号は、主ATS光と副ATS光の位置信号の相加平均として近似的に求めることが出来る。
【0101】
図13Aに、第1の実施の形態のサーボ制御系を示している。これは、上述の図9のATS+サーボ系の構成に、第1の実施の形態の特徴となる要素を追加したものである。図9と同一部分は同一符号を付し、説明を省略する。
図9には示されていなかった伝達関数ブロックとしては、演算ブロック211、212、213、214、216、217、遅延ブロック210,215、除算ブロック218となる。
【0102】
この場合、ybsは主ATSスポットSPbsの位置を表す。ybhは副ATSスポットSPbhの位置を表す。
Z-kは信号をディスク一回転に相当する間、遅延させることを意味する。同様に、Z-nも遅延であるが、こちらは記録光と主ATS光の円周方向位置のずれに相当する間だけ、信号を遅延させることを意味する。
よって、遅延ブロック210として示すZ-(k-n)は、所定の信号をディスク一回転から記録光と主ATS光の円周方向の位置のずれに相当する分を差し引いた間だけ、遅延させるものである。
また遅延ブロック215として示すZ-(k+n)は、所定の信号をディスク一回転に記録光と副ATS光の円周方向の位置のずれに相当する分を加えた間だけ、遅延させるものである。
【0103】
主ATSスポットSPbsの位置ybsについては、演算ブロック213で距離dtp(トラックピッチに相当)が加算される。そして遅延ブロック210を経て目標位置rsが得られる。そして演算ブロック211で得られる位置ybsと目標位置rsの差分が主ATS光についてのエラー信号ebsである。
【0104】
副ATSスポットSPbhの位置ybhについては、演算ブロック214で距離dtpが加算され、遅延ブロック215を経て目標位置rhが得られる。そして演算ブロック216で得られる位置ybhと目標位置rhの差分が副ATS光についてのエラー信号ebhとなる。
【0105】
演算ブロック217では、エラー信号ebsとエラー信号ebhの差分をとり、除算ブロックで差分値を1/2とする。そして除算された値を演算ブロック212でエラー信号ebsに加算する。この加算結果が、補正サーボエラー信号eb’となる。
つまりこれは、主ATS光についてのエラー信号ebsに、副ATS光のエラー信号ebhとの差分の1/2を加算することで、図12の位置ybxのスポットについて得られるエラー信号を導き出すものとなる。
【0106】
ATS制御ブロック204(Ki/s)は、この補正サーボエラー信号eb’をゼロとするように動作し、トラッキング制御信号を演算ブロック202に供給する。即ちATS系の制御信号を基準面サーボ系に注入する。
【0107】
基準面サーボ系では、基準面サーボ光のスポット位置yrに対し、演算ブロック203で偏芯に応じた基準値OFSを加算する。この演算ブロック203の出力とATS制御ブロック204の出力についての演算ブロック202での加算結果をトラッキングエラー信号erとする。
基準面サーボブロック201は、このトラッキングエラー信号erをゼロとするように動作し、対物レンズ20を駆動するアクチュエータ(レンズブロック200)の駆動制御を行う。
【0108】
なお以上の各ブロックの処理を図4の実際の構成に照らしていえば、基準面サーボブロック201、演算ブロック202,203は基準面側サーボフィルタ37の処理となる。
またATS制御ブロック204、演算ブロック211、212、213、214、216、217、遅延ブロック210,215、除算ブロック218が、ATS側フィルタ35の処理となる。
【0109】
以上のように第1の実施の形態では、記録光を挟んで円周方向に対称な2点のATS光により、記録光と円周方向位置が同じである位置の仮想的なATS光によるエラー信号の近似値としての補正サーボエラー信号を用いることになる。
これによって、記録光とATS光が仮想的に同じ円周方向位置(ディスク回転中心に向かう半径線上に並ぶ状態)で隣接トラックサーボが実現され、図11で述べたような偏芯に起因するトラックピッチの変動を解消できる。
結果、記録光とATS光の円周方向位置の違いによるトラッキングエラー成分の取れ残りを低減し、トラッキングサーボを安定化させることが出来る。
図13Bに第1の実施の形態の場合の取れ残り量を示すが、上述の図10B、図10Cを参照すると、ほぼ図10B(記録光とATS光の円周方向位置が同じ場合)と同等にまで、取れ残りが低減されていることがわかる。
【0110】
なお、図12Aは、主ATS光が記録光より先行している場合に、記録光より後行する対称位置に副ATS光を照射する場合として述べたが、逆でもよい。
つまり図12Bのように主ATS光が記録光より後行している場合には、記録光より先行する対称位置に副ATS光を照射するようにすればよい。
【0111】
<5.第2の実施の形態のサーボ方式>
第2の実施の形態も、補正サーボエラー信号を用いるものである。この場合、ATS光の現在のスポット位置と、ATS光が現在の記録光と同じディスク円周方向位置である時点のスポット位置とのディスク半径方向の位置差分を、ATS光についての受光信号に基づくサーボエラー信号に与えることで、補正サーボエラー信号を求めるものである。
なお、第2の実施の形態では、ATS光は1つである。そしてATS光が、記録光に対して、円周方向位置がトラック進行方向に先行するように照射されるものとする。
この場合に、上記の位置差分を、ATS光が現在の記録光と同じディスク円周方向位置である時点のサーボエラー信号に加算することで、補正サーボエラー信号を求めるようにする。
【0112】
図14で考え方を説明する。図14は図11と同様に理想的なトラックTKqと、偏芯がある場合に形成されるトラックTKs,TKrを示している。
本来、トラックTKrCを形成したいが、偏芯の影響でトラックTKrが形成されてしまうことは上述のとおりである。
ここで、記録光の位置ybrは、トラックTKsよりトラックピッチTPwだけ離間した状態となるが、これをトラックピッチTPcの位置となるように補正したい。このためには、図中Δで示す位置差分を、ATS光が現在の記録光の位置Ybrと同じ円周方向位置である位置ybs(−1)の時点のサーボエラー信号に加算すればよい。
図からわかるように、位置差分Δは、ATS光の現在のスポット位置ybsと、ATS光が現在の記録光の位置ybrと同じディスク円周方向位置である時点のスポット位置ybs(−1)とのディスク半径方向の位置差分である。詳しくいえば、位置ybs(−1)を、ATS光の現在のスポット位置ybsと同一円周位置として半径方向に並べた位置ybs(−1)’としたときの位置ybsと位置ybs(−1)’の差分である。
【0113】
現在の記録光(位置ybr)についてのサーボ制御を、位置ybs(−1)のATS光にかかるエラー信号に位置差分Δを加算した補正サーボエラー信号を用いて実行することで、記録光の軌跡をトラックTKrCを描く状態に制御できることとなる。
【0114】
記録光とATS光の円周方向位置の違いによるトラックピッチの変動は、ディスクの偏芯によって生じる。これは、ディスクの偏芯があると、ATS光の回転中心からの距離と、記録光の回転中心からの距離が異なることに起因する。
ATS光の回転中心からの距離から、半径方向にトラックピッチ分離れた位置に記録光によりトラック(マーク列)が形成されるが、その記録光の位置においてはディスクの偏芯のために隣のトラックの回転中心からの距離が異なっている。そのため、トラックが形成されたときの回転中心からの距離との差分だけ、トラックピッチが変動することになる。
そこで、ATS光の位置をこの差に相当する分補正すれば、記録光の位置における隣接トラックとのトラックピッチを所望の値に保つことができる。
【0115】
図15Aに、第2の実施の形態のサーボ制御系を示している。上述の図9、図13Aと同一部分は同一符号を付す。
この場合、破線で囲った演算ブロック221、223、遅延ブロック220,222、ゲインブロック224の部分が位置差分Δを求める部分となる。
図13Aと同様、Z-kは信号をディスク一回転に相当する間、遅延させることを意味する。Z-nは記録光と主ATS光の円周方向位置のずれに相当する間だけ、信号を遅延させることを意味する。よってZ-(k-n)は、所定の信号をディスク一回転から記録光とATS光の円周方向の位置のずれに相当する分を差し引いた間だけ、遅延させるものである。
【0116】
ATSスポットSPbsの位置ybsについては、演算ブロック234で距離dtp(トラックピッチに相当)が加算され、遅延ブロック235を経て目標位置rが得られる。そして演算ブロック236で得られる位置ybsと目標位置rの差分がATS光についてのエラー信号ebである。
【0117】
演算ブロック203では、基準面サーボ光のスポット位置yrに対し、基準値OFSを加算する。基準値OFSは、偏芯による基準面サーボ光とATS光のずれ量に相当する。(図8B参照。図8Bでは記録光と基準面サーボ光の関係で示したP1,P2のずれ量を示しているが、ここでいう「ずれ量」は、P1,P2を基準面サーボ光とATS光に置き換えたものである)。
この演算ブロック203の出力は、現在のATS光のスポット位置ybsに相当する。
遅延ブロック220では、位置ybsにZ-nの遅延を与えることで、現在の記録光と同じ円周方向位置となった時点のATS光のスポット位置ybs(−1)を得る。
演算ブロック221で、位置ybs(−1)−位置ybsを求め、上記の位置差分Δを得る。位置差分Δはゲインブロック224で調整用のゲインを与えられて、演算ブロック223に供給される。
【0118】
一方、エラー信号ebについては、遅延ブロック222でZ-nの遅延を与えることで、現在の記録光と同じ円周方向位置となった時点のATS光のスポットybs(−1)についてのエラー信号が演算ブロック223に供給されるようにする。そして演算ブロック223では、遅延されたエラー信号ebに位置差分Δを加算して補正サーボエラー信号eb’を求める。
つまり、これはATS光の現在のスポット位置と、ATS光が現在の記録光と同じディスク円周方向位置である時点のスポット位置とのディスク半径方向の位置差分Δを、ATS光が現在の記録光と同じディスク円周方向位置である時点のサーボエラー信号に加算することで、補正サーボエラー信号を求めるものとなる。
【0119】
ATS制御ブロック204(Ki/s)は、この補正サーボエラー信号eb’をゼロとするように動作し、トラッキング制御信号を演算ブロック202に供給する。即ちATS系の制御信号を基準面サーボ系に注入する。
【0120】
基準面サーボ系では、演算ブロック203の出力とATS制御ブロック204の出力についての演算ブロック202での加算結果をトラッキングエラー信号erとする。
基準面サーボブロック201は、このトラッキングエラー信号erをゼロとするように動作し、対物レンズ20を駆動するアクチュエータ(レンズブロック200)の駆動制御を行う。
【0121】
なお以上の各ブロックの処理を図4の実際の構成に照らしていえば、基準面サーボブロック201、演算ブロック202,203は基準面側サーボフィルタ37の処理となる。
またATS制御ブロック204、演算ブロック234、236、221、222、遅延ブロック235,222、220、ゲインブロック224が、ATS側フィルタ35の処理となる。
【0122】
このサーボ制御系では、ATS+方式において、破線部分のビームずれ補間項(位置差分Δ算出項)が制御ループの中に構成されているものといえる。
即ちこのビームずれ補間項は、基準面Ref(基準値OFS)により得られるATS光の位置信号とそのATS光からZ-nに相当する分だけ円周方向に遅れた位置にあるATS光の位置信号の差分を、記録光に対して先行するATS光が既に通過したところの、現在の記録光の位置に隣接するトラックに対するエラー信号に加算し、これを補正値としてサーボ制御系に渡すものと言える。
【0123】
この第2の実施の形態によれば、ATS光の位置信号と、記録層でのATS光のエラー信号より演算した値によって、記録光とATS光の円周方向位置の違い補正するため、記録光とATS光の円周方向位置の違いにより発生するトラッキングエラー成分の取れ残りを低減し、トラッキングサーボを安定化させることが出来る。
図15Bに第2の実施の形態の場合の取れ残り量を示すが、上述の図10Bとほぼ同等にまで、取れ残りが低減されていることがわかる。
またこの第2の実施の形態の場合、第1の実施の形態にくらべ、ATS光は1つで良いため、光学系の構成の簡略化の点で有利である。
【0124】
図16に第2の実施の形態の変形例を示す。なお、図15と同一部分は同一符号を付し、説明を省略する。
上記図15の例では、現在のATS光のスポット位置ybsの情報を基準値OFSを用いて求めたが、図4に示したレンズ位置センサ45を利用してもよい。レンズ位置センサ45からの偏芯に応じたレンズシフトの情報から、ATS光の位置情報を求めることができる。
図16では、このレンズ位置センサ45から得られる位置yojを補正に用いる現在のATS光のスポット位置ybsとし、遅延ブロック220、演算ブロック221に供給するようにした例である。他の動作は図15と同様である。
【0125】
<6.第3の実施の形態のサーボ方式>
第3の実施の形態は、基本的には第2の実施の形態と同様の考え方であるが、ATS光が、記録光に対して、円周方向位置がトラック進行方向に後行するように照射される場合の例である。
この場合、ATS光の現在のスポット位置と、ATS光が現在の記録光と同じディスク円周方向位置である時点のスポット位置とのディスク半径方向の位置差分を、現在のATS光についてのサーボエラー信号に加算することで、補正サーボエラー信号を求めるようにする。
【0126】
図17は図14等と同様に理想的なトラックTKqと、偏芯がある場合に形成されるトラックTKs,TKrを示している。
トラックTKs、TKrが図14と同じような状況で理想的なトラックTKqに対して角度θを持つことになる円周内の或る部分で示すと、記録光が先行する場合、図のようにトラックピッチTPnとして、本来のトラックピッチTPc(=TP1)よりも狭いピッチでトラックTKrが形成されてしまう。
【0127】
ここで、記録光の位置ybrは、トラックTKsよりトラックピッチTPnだけ離間した状態となるが、これをトラックピッチTPcの位置となるように補正したい。このためには、図示する位置差分Δを、現在のATS光についてのサーボエラー信号に加算する。すると、現在の記録光の位置を位置ybrCに制御することができる。
位置差分Δは、図ではATS光の現在のスポット位置ybsと、前回のスポット位置ybs(−1)の半径方向の差分として示しているが、これは、ATS光の現在のスポット位置ybsと、ATS光が現在の記録光と同じディスク円周方向位置である(未来の)時点のスポット位置ybs(+1)との半径方向の位置差分Δ’と同等である。従って位置ybs、位置ybs(−1)の情報から、位置差分Δ=Δ’を求めることができる。
そして現在の記録光(位置ybr)についてのサーボ制御を、現在の位置ybsのATS光にかかるエラー信号に位置差分Δを加算した補正サーボエラー信号を用いて実行することで、記録光の軌跡をトラックTKrCを描く状態に制御できることとなる。
【0128】
図18に、第3の実施の形態のサーボ制御系を示している。上述の図9、図15Aと同一部分は同一符号を付す。この場合、破線で囲った演算ブロック221A、223、遅延ブロック220、ゲインブロック224の部分が位置差分Δを求める部分となる。
なお、現在の位置ybsのATS光にかかるエラー信号に位置差分Δを加算することになるため、図15における遅延ブロック222に相当する遅延ブロックは設けられない。
【0129】
これまでと同様、Z-kは信号をディスク一回転に相当する間の遅延、Z-nは記録光と主ATS光の円周方向位置のずれに相当する間の遅延であるが、記録光がATS光より先行するため、遅延ブロック235Aでは、信号をディスク一回転分に記録光とATS光の円周方向の位置のずれに相当する分を加えた遅延Z-(k+n)を与えるものとなる。
【0130】
ATSスポットSPbsの位置ybsについては、演算ブロック234で距離dtp(トラックピッチに相当)が加算され、遅延ブロック235Aを経て目標位置rが得られる。そして演算ブロック236で得られる位置ybsと目標位置rの差分がATS光についてのエラー信号ebである。
【0131】
図15と同様に、演算ブロック203の出力は、現在のATS光のスポット位置ybsに相当する。遅延ブロック220では、位置ybsにZ-nの遅延を与えることで、前回の円周方向位置のATS光のスポット位置ybs(−1)を得る。
演算ブロック221Aで、位置ybs−位置ybs(−1)を求めることで、上記の位置差分Δを得る。上述のようにこの位置差分Δ=Δ’である。
位置差分Δはゲインブロック224で調整用のゲインを与えられて、演算ブロック223に供給される。
【0132】
そして演算ブロック223では、エラー信号ebに位置差分Δを加算して補正サーボエラー信号eb’を求める。
つまり、これはATS光の現在のスポット位置と、ATS光が現在の記録光と同じディスク円周方向位置である時点のスポット位置とのディスク半径方向の位置差分Δ’(=Δ)を、現在のATS光についてのサーボエラー信号に加算することで、補正サーボエラー信号を求めるものとなる。
【0133】
ATS制御ブロック204(Ki/s)は、この補正サーボエラー信号eb’をゼロとするように動作し、トラッキング制御信号を演算ブロック202に供給する。即ちATS系の制御信号を基準面サーボ系に注入する。
【0134】
基準面サーボ系では、演算ブロック203の出力とATS制御ブロック204の出力についての演算ブロック202での加算結果をトラッキングエラー信号erとする。
基準面サーボブロック201は、このトラッキングエラー信号erをゼロとするように動作し、対物レンズ20を駆動するアクチュエータ(レンズブロック200)の駆動制御を行う。
【0135】
なお以上の各ブロックの処理を図4の実際の構成に照らしていえば、基準面サーボブロック201、演算ブロック202,203は基準面側サーボフィルタ37の処理となる。
またATS制御ブロック204、演算ブロック234、236、221A、222、遅延ブロック235A,220、ゲインブロック224が、ATS側フィルタ35の処理となる。
【0136】
このサーボ制御系も、第2の実施の形態と同様、ATS+方式において、破線部分のビームずれ補間項(位置差分Δ算出項)が制御ループの中に構成されている。
即ちこのビームずれ補間項は、基準面Ref(基準値OFS)により得られるATS光の位置信号とそのATS光からZ+nに相当する分だけ円周方向に進んだ位置にあるATS光の位置信号の差分Δ’を、現在の記録光の位置に隣接するトラックに対するエラー信号に加算し、これを補正値としてサーボ制御系に渡すものと言える。
この第3の実施の形態によっても、第2の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0137】
図19に第3の実施の形態の変形例を示す。なお、図18と同一部分は同一符号を付し、説明を省略する。
これは、先に図16で述べた例と同様、図4に示したレンズ位置センサ45を利用してATS光の位置情報を求める例である。
図19では、レンズ位置センサ45から得られる位置yojを補正に用いる現在のATS光のスポット位置ybsとし、遅延ブロック220、演算ブロック221に供給するようにしている。
【0138】
<7.変形例>
以上、実施の形態について説明してきたが、本開示の技術は上記の例に限定されるものではない。
実施の形態ではATS+方式を基本としたが、上記のように補正サーボエラー信号を用いる技術はATS方式でも適用可能性はある。
また記録装置が記録対象とする記録媒体はバルク型記録媒体1に限られず、他の種の光ディスクであってもよい。
また記録装置の構成やサーボ制御系の構成は多様に考えられることは言うまでもない。
【0139】
なお本技術は以下のような構成も採ることができる。
(1)記録層を有する光ディスク記録媒体に対して、上記記録層へのマーク記録を行うための記録光と、照射位置が上記記録光のディスク円周方向位置とは異なる位置とされた状態で上記記録光と一定のディスク半径方向の距離を保つ隣接トラックサーボ用の隣接サーボ光とを共通の対物レンズを介して照射するように構成されると共に、上記隣接サーボ光の上記記録層からの反射光を受光するように構成された光照射・受光部と、
上記対物レンズをディスク半径方向であるトラッキング方向に駆動するトラッキング機構と、
上記隣接サーボ光についての受光信号に基づくサーボエラー信号として、上記隣接サーボ光が上記記録光と同じディスク円周方向位置で照射とされたとした場合に得られるべき補正サーボエラー信号を求め、該補正サーボエラー信号を用いて、トラッキングサーボ信号を生成するトラッキングサーボ信号生成部と、
上記トラッキングサーボ信号に基づき上記トラッキング機構を駆動するトラッキング駆動部と、
を備えた記録装置。
(2)上記光ディスク記録媒体は、上記記録層とは異なる深さ位置に位置案内子が形成された基準面を有し、
上記光照射・受光部は、上記光ディスク記録媒体に対して、上記記録光と、上記隣接サーボ光と、上記基準面に形成された上記位置案内子に基づく位置制御を行うための基準面サーボ光とを共通の対物レンズを介して照射するように構成されると共に、上記隣接サーボ光の上記記録層からの反射光と、上記基準面サーボ光の上記基準面からの反射光とを個別に受光するように構成されており、
上記トラッキングサーボ信号生成部は、上記補正サーボエラー信号と、上記光照射・受光部により得られる上記基準面サーボ光についての受光信号に基づいて得られる基準面サーボエラー信号とを用いて、トラッキングサーボ信号を生成する上記(1)に記載の記録装置。
(3)上記トラッキングサーボ信号生成部は、上記補正サーボエラー信号に基づくサーボ制御信号を、上記基準面サーボエラー信号に基づいてトラッキングサーボ信号を生成するトラッキングサーボループに対して与える上記(2)に記載の記録装置。
(4)上記光照射・受光部は、上記隣接サーボ光として、主隣接サーボ光と、ディスク円周方向位置が上記主隣接サーボ光とは上記記録光のディスク円周方向位置を挟んで対称の位置となる副隣接サーボ光を照射するとともに、上記主隣接サーボ光及び上記副隣接サーボ光についての上記記録層からの反射光を個別に受光する構成とされ、
上記トラッキングサーボ信号生成部は、上記主隣接サーボ光についての受光信号と、上記副隣接サーボ光についての受光信号の演算により、上記補正サーボエラー信号を求める上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の記録装置。
(5)上記トラッキングサーボ信号生成部は、上記主隣接サーボ光についての受光信号から得られる第1のサーボエラー信号に対し、該第1のサーボエラー信号と上記副隣接サーボ光についての受光信号から得られる第2のサーボエラー信号との差分の1/2を与える演算により、上記補正サーボエラー信号を求める上記(4)に記載の記録装置。
(6)上記トラッキングサーボ信号生成部は、上記隣接サーボ光の現在のスポット位置と、上記隣接サーボ光が現在の上記記録光と同じディスク円周方向位置である時点のスポット位置とのディスク半径方向の位置差分を、上記隣接サーボ光についての受光信号に基づくサーボエラー信号に与えることで、上記補正サーボエラー信号を求める上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の記録装置。
(7)上記光照射・受光部は、上記隣接サーボ光が、上記記録光に対して、円周方向位置がトラック進行方向に先行するように照射するとともに、
上記トラッキングサーボ信号生成部は、上記位置差分を、上記隣接サーボ光が現在の記録光と同じディスク円周方向位置である時点のサーボエラー信号に加算することで、上記補正サーボエラー信号を求める上記(6)に記載の記録装置。
(8)上記光照射・受光部は、上記隣接サーボ光が、上記記録光に対して、円周方向位置がトラック進行方向に後行するように照射するとともに、
上記トラッキングサーボ信号生成部は、上記位置差分を、現在の上記隣接サーボ光についてのサーボエラー信号に加算することで、上記補正サーボエラー信号を求める上記(6)に記載の記録装置。
【符号の説明】
【0140】
1 バルク型記録媒体、2 カバー層、3 選択反射膜、Ref 基準面、4 中間層、5 バルク層、OP 光学ピックアップ、11r 記録用レーザ、11ap ATS・再生時用レーザ、12,25 コリメーションレンズ、13,26 偏光ビームスプリッタ、14 固定レンズ、15 可動レンズ、16 レンズ駆動部、17 ミラー、18,27 1/4波長板、19 ダイクロイックプリズム、20 対物レンズ、21 2軸アクチュエータ、22,28 集光レンズ、23 第1受光部、24 サーボ用レーザ、29 第2受光部、31 記録処理部、32,50 マトリクス回路、33 再生処理部、34 再生時用サーボ回路、35 ATS側フィルタ、36 信号生成部、37 基準面側サーボフィルタ、38 記録時用フォーカスサーボ回路、40,41 セレクタ、42 フォーカスドライバ、43 トラッキングドライバ、44 コントローラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録層を有する光ディスク記録媒体に対して、上記記録層へのマーク記録を行うための記録光と、照射位置が上記記録光のディスク円周方向位置とは異なる位置とされた状態で上記記録光と一定のディスク半径方向の距離を保つ隣接トラックサーボ用の隣接サーボ光とを共通の対物レンズを介して照射するように構成されると共に、上記隣接サーボ光の上記記録層からの反射光を受光するように構成された光照射・受光部と、
上記対物レンズをディスク半径方向であるトラッキング方向に駆動するトラッキング機構と、
上記隣接サーボ光についての受光信号に基づくサーボエラー信号として、上記隣接サーボ光が上記記録光と同じディスク円周方向位置で照射とされたとした場合に得られるべき補正サーボエラー信号を求め、該補正サーボエラー信号を用いて、トラッキングサーボ信号を生成するトラッキングサーボ信号生成部と、
上記トラッキングサーボ信号に基づき上記トラッキング機構を駆動するトラッキング駆動部と、
を備えた記録装置。
【請求項2】
上記光ディスク記録媒体は、上記記録層とは異なる深さ位置に位置案内子が形成された基準面を有し、
上記光照射・受光部は、上記光ディスク記録媒体に対して、上記記録光と、上記隣接サーボ光と、上記基準面に形成された上記位置案内子に基づく位置制御を行うための基準面サーボ光とを共通の対物レンズを介して照射するように構成されると共に、上記隣接サーボ光の上記記録層からの反射光と、上記基準面サーボ光の上記基準面からの反射光とを個別に受光するように構成されており、
上記トラッキングサーボ信号生成部は、上記補正サーボエラー信号と、上記光照射・受光部により得られる上記基準面サーボ光についての受光信号に基づいて得られる基準面サーボエラー信号とを用いて、トラッキングサーボ信号を生成する請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
上記トラッキングサーボ信号生成部は、上記補正サーボエラー信号に基づくサーボ制御信号を、上記基準面サーボエラー信号に基づいてトラッキングサーボ信号を生成するトラッキングサーボループに対して与える請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
上記光照射・受光部は、上記隣接サーボ光として、主隣接サーボ光と、ディスク円周方向位置が上記主隣接サーボ光とは上記記録光のディスク円周方向位置を挟んで対称の位置となる副隣接サーボ光を照射するとともに、上記主隣接サーボ光及び上記副隣接サーボ光についての上記記録層からの反射光を個別に受光する構成とされ、
上記トラッキングサーボ信号生成部は、上記主隣接サーボ光についての受光信号と、上記副隣接サーボ光についての受光信号の演算により、上記補正サーボエラー信号を求める請求項1に記載の記録装置。
【請求項5】
上記トラッキングサーボ信号生成部は、上記主隣接サーボ光についての受光信号から得られる第1のサーボエラー信号に対し、該第1のサーボエラー信号と上記副隣接サーボ光についての受光信号から得られる第2のサーボエラー信号との差分の1/2を与える演算により、上記補正サーボエラー信号を求める請求項4に記載の記録装置。
【請求項6】
上記トラッキングサーボ信号生成部は、上記隣接サーボ光の現在のスポット位置と、上記隣接サーボ光が現在の上記記録光と同じディスク円周方向位置である時点のスポット位置とのディスク半径方向の位置差分を、上記隣接サーボ光についての受光信号に基づくサーボエラー信号に与えることで、上記補正サーボエラー信号を求める請求項1に記載の記録装置。
【請求項7】
上記光照射・受光部は、上記隣接サーボ光が、上記記録光に対して、円周方向位置がトラック進行方向に先行するように照射するとともに、
上記トラッキングサーボ信号生成部は、上記位置差分を、上記隣接サーボ光が現在の記録光と同じディスク円周方向位置である時点のサーボエラー信号に加算することで、上記補正サーボエラー信号を求める請求項6に記載の記録装置。
【請求項8】
上記光照射・受光部は、上記隣接サーボ光が、上記記録光に対して、円周方向位置がトラック進行方向に後行するように照射するとともに、
上記トラッキングサーボ信号生成部は、上記位置差分を、現在の上記隣接サーボ光についてのサーボエラー信号に加算することで、上記補正サーボエラー信号を求める請求項6に記載の記録装置。
【請求項9】
記録層を有する光ディスク記録媒体に対して、上記記録層へのマーク記録を行うための記録光と、照射位置が上記記録光のディスク円周方向位置とは異なる位置とされた状態で上記記録光と一定のディスク半径方向の距離を保つ隣接トラックサーボ用の隣接サーボ光とを共通の対物レンズを介して照射して、上記隣接サーボ光の上記記録層からの反射光を受光し、
上記隣接サーボ光についての受光信号に基づくサーボエラー信号として、上記隣接サーボ光が上記記録光と同じディスク円周方向位置で照射とされたとした場合に得られるべき補正サーボエラー信号を求め、該補正サーボエラー信号を用いて、トラッキングサーボ信号を生成し、
上記トラッキングサーボ信号に基づき上記対物レンズをディスク半径方向であるトラッキング方向に駆動するトラッキングサーボを行いながら、上記記録光による上記記録層へのマーク記録を行う記録方法。
【請求項1】
記録層を有する光ディスク記録媒体に対して、上記記録層へのマーク記録を行うための記録光と、照射位置が上記記録光のディスク円周方向位置とは異なる位置とされた状態で上記記録光と一定のディスク半径方向の距離を保つ隣接トラックサーボ用の隣接サーボ光とを共通の対物レンズを介して照射するように構成されると共に、上記隣接サーボ光の上記記録層からの反射光を受光するように構成された光照射・受光部と、
上記対物レンズをディスク半径方向であるトラッキング方向に駆動するトラッキング機構と、
上記隣接サーボ光についての受光信号に基づくサーボエラー信号として、上記隣接サーボ光が上記記録光と同じディスク円周方向位置で照射とされたとした場合に得られるべき補正サーボエラー信号を求め、該補正サーボエラー信号を用いて、トラッキングサーボ信号を生成するトラッキングサーボ信号生成部と、
上記トラッキングサーボ信号に基づき上記トラッキング機構を駆動するトラッキング駆動部と、
を備えた記録装置。
【請求項2】
上記光ディスク記録媒体は、上記記録層とは異なる深さ位置に位置案内子が形成された基準面を有し、
上記光照射・受光部は、上記光ディスク記録媒体に対して、上記記録光と、上記隣接サーボ光と、上記基準面に形成された上記位置案内子に基づく位置制御を行うための基準面サーボ光とを共通の対物レンズを介して照射するように構成されると共に、上記隣接サーボ光の上記記録層からの反射光と、上記基準面サーボ光の上記基準面からの反射光とを個別に受光するように構成されており、
上記トラッキングサーボ信号生成部は、上記補正サーボエラー信号と、上記光照射・受光部により得られる上記基準面サーボ光についての受光信号に基づいて得られる基準面サーボエラー信号とを用いて、トラッキングサーボ信号を生成する請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
上記トラッキングサーボ信号生成部は、上記補正サーボエラー信号に基づくサーボ制御信号を、上記基準面サーボエラー信号に基づいてトラッキングサーボ信号を生成するトラッキングサーボループに対して与える請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
上記光照射・受光部は、上記隣接サーボ光として、主隣接サーボ光と、ディスク円周方向位置が上記主隣接サーボ光とは上記記録光のディスク円周方向位置を挟んで対称の位置となる副隣接サーボ光を照射するとともに、上記主隣接サーボ光及び上記副隣接サーボ光についての上記記録層からの反射光を個別に受光する構成とされ、
上記トラッキングサーボ信号生成部は、上記主隣接サーボ光についての受光信号と、上記副隣接サーボ光についての受光信号の演算により、上記補正サーボエラー信号を求める請求項1に記載の記録装置。
【請求項5】
上記トラッキングサーボ信号生成部は、上記主隣接サーボ光についての受光信号から得られる第1のサーボエラー信号に対し、該第1のサーボエラー信号と上記副隣接サーボ光についての受光信号から得られる第2のサーボエラー信号との差分の1/2を与える演算により、上記補正サーボエラー信号を求める請求項4に記載の記録装置。
【請求項6】
上記トラッキングサーボ信号生成部は、上記隣接サーボ光の現在のスポット位置と、上記隣接サーボ光が現在の上記記録光と同じディスク円周方向位置である時点のスポット位置とのディスク半径方向の位置差分を、上記隣接サーボ光についての受光信号に基づくサーボエラー信号に与えることで、上記補正サーボエラー信号を求める請求項1に記載の記録装置。
【請求項7】
上記光照射・受光部は、上記隣接サーボ光が、上記記録光に対して、円周方向位置がトラック進行方向に先行するように照射するとともに、
上記トラッキングサーボ信号生成部は、上記位置差分を、上記隣接サーボ光が現在の記録光と同じディスク円周方向位置である時点のサーボエラー信号に加算することで、上記補正サーボエラー信号を求める請求項6に記載の記録装置。
【請求項8】
上記光照射・受光部は、上記隣接サーボ光が、上記記録光に対して、円周方向位置がトラック進行方向に後行するように照射するとともに、
上記トラッキングサーボ信号生成部は、上記位置差分を、現在の上記隣接サーボ光についてのサーボエラー信号に加算することで、上記補正サーボエラー信号を求める請求項6に記載の記録装置。
【請求項9】
記録層を有する光ディスク記録媒体に対して、上記記録層へのマーク記録を行うための記録光と、照射位置が上記記録光のディスク円周方向位置とは異なる位置とされた状態で上記記録光と一定のディスク半径方向の距離を保つ隣接トラックサーボ用の隣接サーボ光とを共通の対物レンズを介して照射して、上記隣接サーボ光の上記記録層からの反射光を受光し、
上記隣接サーボ光についての受光信号に基づくサーボエラー信号として、上記隣接サーボ光が上記記録光と同じディスク円周方向位置で照射とされたとした場合に得られるべき補正サーボエラー信号を求め、該補正サーボエラー信号を用いて、トラッキングサーボ信号を生成し、
上記トラッキングサーボ信号に基づき上記対物レンズをディスク半径方向であるトラッキング方向に駆動するトラッキングサーボを行いながら、上記記録光による上記記録層へのマーク記録を行う記録方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2013−16227(P2013−16227A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148056(P2011−148056)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]