記録装置および記録位置ずれ量の検出方法
【課題】パターンを2つ重ねて記録したときの記録位置ずれ量に対する反射率変化から着弾ずれを検知する際に、反射率の変化が小さいと精度良く着弾ずれ量を算出できない。
【解決手段】走査方向にドット領域と空白領域を周期的に繰り返す周期パターンで、理想とする光学特性曲線に近付くように選択された複数の異なる周期のパターンを1組として記録媒体の副走査方向に並べて配列し、その記録位置ずれ量に対する光学反射率の変化から着弾ずれを得る。
【解決手段】走査方向にドット領域と空白領域を周期的に繰り返す周期パターンで、理想とする光学特性曲線に近付くように選択された複数の異なる周期のパターンを1組として記録媒体の副走査方向に並べて配列し、その記録位置ずれ量に対する光学反射率の変化から着弾ずれを得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、インクジェット記録などの記録装置およびその記録位置ずれ量の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、インクジェット記録装置における記録位置調整方法について開示している。具体的には、基準となるノズル列により記録された「基準パターン」に別のノズル列で記録された基準パターンと記録位置が少しずつ異なる複数の「ずらしパターン」を重ねて記録する。そして、そのパターンの記録位置をずらした量と、光学反射率の変極点の位置に基づいて、着弾位置ずれ量を算出し、記録ヘッドのインクの吐出タイミングを補正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3554184号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示の方法では、高精度に着弾位置を合わせるためには、近似曲線と光学特性を良く合わせて計算誤差を低減させる必要がある。この為、変極点付近のより狭いずらし範囲の光学反射率から近似式を算出することが望ましい。しかし、より狭い範囲のずらし量の変化では、光学反射率の変化量も小さくなる。結果として、ノイズなどの外乱の影響を無視できなくなり、十分な精度が得ることができなくなってしまう。
【0005】
本発明は、上記従来に課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、インクジェット記録におけるインクの着弾位置ずれ量をより高精度に検知することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る記録装置は、記録媒体にドットを記録することにより画像を記録する記録手段と、前記記録手段により記録される画像の相対的な記録位置のずれ量を検出するために、前記ずれ量を検出する所定の方向に周期性を有する第1のパターンと、前記第1のパターンと同じ周期性を有する第2のパターンとを、前記第1のパターンと第2のパターンの前記所定の方向のずれ量を異ならせて複数記録することにより、前記ずれ量に応じて光学反射特性が変化する複数の第3のパターンを記録するパターン記録手段と、を有し、前記第1および第2のパターンは、複数の異なる周期性をもつパターンをそれぞれ含む、ことを特徴とする記録装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、2つのパターンの記録位置が一致するずらし量付近で光学反射率の変化量を増大させることができるので、十分に大きな光学反射率の変化を得ることが可能となり、着弾位置ずれ量の検出精度も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明が適用されるインクジェット記録装置の一例の斜視図。
【図2】本発明に用いられる光学センサの一例を説明する図。
【図3】図1の装置に用いられる記録ヘッドのノズル配置を表す図。
【図4】本発明におけるレジ調整パターンの構成を説明する図。
【図5】ずらし量を変化させて記録されるレジ調整パターンを説明する図。
【図6】ずらし量に対する光学反射率とその近似曲線を表すグラフ。
【図7】本発明におけるレジ調整方法の流れを示すフローチャート。
【図8】ずらし量に対する光学反射率と直線近似した結果を比較するグラフ。
【図9】記録画素とドットの大きさを比較する図。
【図10】光学反射率と三角関数による近似曲線を表すグラフ。
【図11】本発明における理想的な光学特性を説明するグラフ。
【図12】本発明における最大記録位置ずれ量を説明するグラフ。
【図13】実施形態1の複数の周期パターンで構成される調整パターンの図。
【図14】実施形態2の調整パターンと光学センサの受光領域を比較する図。
【図15】実施形態1の調整パターンと単一周期パターンの光学特性の周期性を比較するグラフ。
【図16】実施形態1の調整パターンと単一周期パターンの最大点近傍の光学特性を比較するグラフ。
【図17】実施形態2のドットゲインによる光学特性の変化を説明するグラフ。
【図18】実施形態3の調整パターンの図。
【図19】実施形態3の調整パターンで走査方向にも着弾がずれたときの図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本実施形態におけるレジ調整処理の詳細を説明する。
(基本構成)
図1〜図3は、本発明を適用可能なインクジェット記録装置(以下、単に記録装置とも記す)の基本的な構成例を説明するための図である。
【0010】
図1は、本実施形態のインクジェット記録装置の要部構成を模式的に示す斜視図である。図1において、記録ヘッド301は矢印Xの走査方向に往復移動し、一般の記録紙、特殊紙、およびOHPフィルム等の記録媒体Sは、所定ピッチ毎に走査方向と交差(本例では直交)する矢印Yの搬送方向(副走査方向)に搬送される。記録データに基づいて記録ヘッド301の吐出口からインクを吐出させつつ、記録ヘッド301を往復移動させる走査動作と、記録媒体Sを搬送させる搬送動作とを繰り返すことにより、記録媒体Sにインク滴を着弾させて文字や記号などを含む画像を記録する。
【0011】
記録ヘッド301は熱エネルギーを利用してインクを吐出するインクジェット方式の記録手段であって、熱エネルギーを発生するための電気熱変換体を備えたものである。また記録ヘッド301は電気熱変換体によって印加される熱エネルギーにより生じる膜沸騰による気泡の成長、収縮によって生じる圧力変化を利用してインク吐出口(ノズル)よりインクを吐出させ、記録を行うものである。
【0012】
記録ヘッド301はキャリッジ202に着脱可能に搭載されている。キャリッジ202は、ガイドレール204に摺動自在に支持されており、不図示のモータ等の駆動手段によりガイドレール204に沿って往復移動される。記録媒体Sは、記録ヘッド301の吐出口面(インク吐出口の形成面)と一定の対向間隔が維持されたまま、搬送ローラ203によって矢印Yの搬送方向に搬送される。
【0013】
記録ヘッド301は、異なるインクを吐出するための複数のノズル列(吐出口列)が形成されている。本例の場合は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインクを吐出可能なノズル列が形成されている。記録ヘッド301に対しては、それから吐出されるインク(ブラック、シアン、マゼンタ、イエローのインク)を供給するためのインクカートリッジ401(401K,401C,401M,401Y)が独立して着脱可能に装着される。
【0014】
記録ヘッド301の往復移動範囲内で、かつ記録媒体Sの通過範囲外の領域である非記録領域には、その非記録領域に記録ヘッド301が移動したときに、記録ヘッド301のインク吐出口面と対向する回復ユニット207が配備されている。回復ユニット207には、記録ヘッド301の吐出口のキャッピングが可能なキャップ208(208K,208C,208M,208Y)が備えられている。キャップ208K,208C,208M,208Yは、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローのインクを吐出する吐出口それぞれをキャッピング可能である。キャップ208の内部には吸引ポンプ(負圧発生手段)が接続されている。キャップ208が記録ヘッド301の吐出口をキャッピングしたときに、そのキャップ208の内部に負圧を導入することによって、記録ヘッド301の吐出口からインクをキャップ208内に吸引排出(吸引回復動作)させることができる。このような吸引回復動作により、記録ヘッド301におけるインクの吐出性能を維持することができる。
【0015】
また、回復ユニット207には、記録ヘッド301の吐出口面をワイピングするためのゴムブレードなどのワイパー209が備えられている。また、記録ヘッド301からキャップ208内に向かって、インクを吐出することによって、記録ヘッド301におけるインクの吐出性能を維持する回復処理(「予備吐出」ともいう)をすることができる。
【0016】
キャリッジユニット2には、図2にて示される反射型光学センサ500が設けられている。発光部501にはLEDが取り付けられており、LEDによって発せられた光510は記録媒体Sに照射される。記録媒体Sによって反射された光520は、受光部502に入射し、フォトダイオードによって電気信号に変換される。
【0017】
図3は記録ヘッド301に設けられた吐出ノズル310の配列を示す。CMYKの各インクを吐出するノズル列(302K、302C、302M、302Y)は、搬送方向に2列に分かれて合計1280個配置される。それぞれのノズル列には600dpi間隔でノズルが配置され、2つのノズル列は1200dpiだけ搬送方向にずらされる。これにより、搬送方向に1200dpiの解像度での記録が可能となる。
【0018】
(記録位置調整方法)
以下に、本実施形態における記録位置調整方法について説明する。
【0019】
図4は記録装置に取り付けられた光学センサ500を使用して調整パターンの光学反射特性である光学反射率を測定した結果に基づいて調整値を決定する記録位置調整方法で使用される調整パターンの構成を示す。
【0020】
図4に示す調整パターンは、1画素×n画素の長方形に配列されるドットパターンがm画素の空白領域ごと走査方向に周期的に繰り返されるような構成になっている。また、この調整パターン(第3のパターン)は基準パターン(第1のパターン)601とずらしパターン(第2のパターン)602の2つのパターンにより構成され、基準パターン601に対してずらしパターン602はある画素数aだけ走査方向に記録位置がずらされるように設定される。すなわち、繰り返し周期性をもつ基準パターン601に対して同じ繰り返し周期性をもつずらしパターン602の位相を変化させる。以下では、この量を単にずらし量と言う。また、調整パターンで記録されるドットの配置の間隔や、ずらし量の変化単位は記録装置の記録解像度により決まる。本実施形態では、調整パターンの記録解像度は1200dpiとする。
【0021】
図5は、図4の調整パターンのずらし量を変えて複数並べたものであり、ずらし量aを−3画素から+3画素まで変えて記録している。2つのパターンの相対的な記録位置のずれ量が変わると、ドットの重なり具合が変化し、記録媒体上に占めるインクの面積率(以下、エリアファクタとも言う)が変わる。エリアファクタが大きくなると、センサから照射されるLEDの光の反射率は低下し、光学濃度は上昇する。逆にエリアファクタが小さくなると、反射率は高くなり、光学濃度は低くなる。
【0022】
例えば、パターン形成時に走査方向に着弾ずれ無くドットが置かれる場合、パターンのずらし量に対する反射光強度の関係は図6に示すようになる。基準パターンとずらしパターンのドット配置は同じになるように設定されているため、記録する2つのパターン間の位置ずれが無い図5のずらし量0の状態で、2つのパターンのドットの重なり量が最も増え、エリアファクタが最小となる。よって、この位置で光学反射率が最も大きくなる。一方、パターンのずらし量が大きくなると基準パターンとずらしパターンのドットの重なり量が減り、エリアファクタは増大する。その結果、ずらし量が増えるに従って光学反射率は下がっていく。
【0023】
ずらしパターン記録時に、基準パターン記録時に対して元々のパターンの記録位置を予めずらした量とは異なる走査方向の着弾位置ずれが生じた場合、その着弾位置ずれ量に応じてエリアファクタが変わるので、反射率が最大となるずらし量も変化する。この時に反射率が最大となるパターンのずらし量は着弾位置ずれ量に一致する。
【0024】
以上のことから、ずらし量を変えて記録した複数のパターンの中で最も反射率が大きくなる変極点を検知することで、その状態のずらし量から基準パターンに対するずらしパターンの記録位置ずれ量の検出ができる。
【0025】
図7は上記の調整パターンから記録位置調整値を算出する手順を示すフローチャートである。図4に示したように、ステップS1101で基準ノズル列を使用して基準パターン601を記録媒体上に記録し、ステップS1102で調整するノズル列を使用してずらしパターン602を記録する。双方向記録位置調整時は、1つのノズル列を選択し、往路又は復路で基準パターン601を記録し、もう一方でずらしパターン602を記録する。その後、ステップS1103で光学センサを使用して調整パターン610の光学反射率を得る。光学センサで読み取った結果は図6に示すようにずらし量aに対する光学反射率として得られ、その最大反射率付近の変化から近似曲線620を算出する。その近似曲線を基にステップS1104で基準パターンとずらしパターンの位置ずれが最も少なくなるずらし量aを決定し、記録位置調整値(レジ調整値)を算出する。ここで、レジ調整解像度は4800dpiとし、レジ調整値は4800dpi単位で算出される。また、プラス側は往路方向に吐出タイミングをずらし、マイナス側は復路方向に吐出タイミングをずらすとする。
【0026】
このように各ノズル列でレジ調整値が算出されるまでステップS1105で繰り返しを行い、得られたレジ調整値はステップS1106で記録装置の記憶領域に保存される。
【0027】
(パターンの光学特性)
まず、本発明で使用する調整パターンのドット配置の決定方法について説明する。
【0028】
調整パターンの光学反射率は、すでに説明したように、エリアファクタと相関がある。しかし、エリアファクタと光学反射率が比例関係にあるかというと、そうはならない。図5の調整パターンの構成において、図6で示したずらし量に対する光学反射率に対して、エリアファクタの変化を基に近似したとする。すると、図8の点線630のようになる。エリアファクタは単純にインクが占める面積で定義されるので、ずらし量に対して1次的に変化する。一方、センサで検知される光学反射率は最大となる位置付近に近づくほど変化がなだらかになっている点で特性が異なり、1次近似では合わない。
【0029】
その要因は光学的ドットゲインであると考えられる。光学的ドットゲインは、記録媒体に入射してきた光が記録媒体の表面や内部で散乱されて記録媒体から出て行く時、ドット部分を透過、あるいは、ドット部分で反射されることで白地部分から出てくる時の強度が低下し、白地部分の濃度が上昇しているようにみえる現象である。光学的ドットゲインの影響範囲や濃度上昇の大きさは記録媒体や入射光の波長特性、インク物性などによって変わるが、単純にエリアファクタに比例するのではなく、ドットパターンの間隔などの要因によって影響度が変わる。よって、光学的ドットゲインによりパターンのずらし量に対する光学反射率が非線形な振る舞いをすると考えられる。
【0030】
以上のことから、基準パターンとずらしパターンの着弾位置ずらし量を変えていった時の光学反射率は非線形な曲線になると考えられるが、単純なモデルで表現することは難しい。しかしながら、図4に示したようなドットと空白が繰り返す周期的なパターンの重ね合わせであれば、比較的ずらし量に対する光学反射率を単純な曲線に近付けることはできる。
【0031】
例えば、図10は図6に示した調整パターン構成で、記録解像度が1200dpi、n=m=8である場合のずらしパターンの記録位置ずらし量に対する光学反射率の変化を表している。図10のグラフ中に黒丸で示したものが実際に測定される反射率で、実線で示されるのが測定値を三角関数で近似した曲線である。この調整パターンは、8画素ごとにドットと空白を繰り返す構成であるため、ずらしパターンのずらし量が16画素分変化するごとに基準パターンとの重なり状態が同じになる。また、パターンの重なり量が最大、最小となるずらし量の付近では、エリアファクタの変化に加えて前述の光学的ドットゲインの影響が大きくなるため、光学反射率の変化は緩やかになる。このため、図10に示すようにパターンのずらし量に対する光学反射率の変化は三角関数に近い挙動を示す。当然ながら、ドットと空白の比率が同じにならないような調整パターンを用いた場合、ずらし量の変化に対してエリアファクタが変化しない領域が存在するため、この例のように単純な関数では表すことができない。また、空白領域が狭くなりすぎても、ドットゲインの寄与率が大きくなり、実質的にドットの比率が大きくなるような振る舞いをする。その場合は、ドットゲインに依る光学反射率の低下を考慮してドット比率を下げ、三角関数的な振る舞いに近付けることは可能である。
【0032】
以下に、上記のような周期関数的な光学特性を持つパターンを用いて、基準パターンとずらしパターンが重なる位置付近での光学特性の変化を大きくするようなパターンを構成する方法について説明する。
【0033】
上記したように、ドットゲインの影響も含めてドットと空白の画素数比が1:1に近いパターンは、単純な三角関数に近い光学特性を示す。実際に調整パターンの光学反射率を測定して着弾位置ずれ量を導出する場合は、センサから照射したLED光の反射率によって測定するので、反射光強度を以下のように記述する。
【0034】
I(x) = I0−I×cos{2π(x−x0)/k} ・・・(式1)
I0:調整パターンの最大反射率
I:ずらし量に対する反射光強度の振幅
x:入力画像による記録位置ずらし量
x0:着弾位置ずれ量
k:パターンの繰り返し周期
もし、上式が当てはまる光学特性を持ち、繰り返し周期の異なる複数のパターンが混在する場合、光学反射率は反射光がセンサに受光される領域に含まれるパターン全てに依存するので、それぞれの周期のパターンの占める面積によって振幅が異なる波形の重ね合わせになる。すなわち、以下のような式で表される。
【0035】
I(x) = I0−Σ[ Im×cos{2π(x−x0)/km} ] ・・・(式2)
添え字mは含まれる周期の異なるパターンそれぞれを示す。Imは各周期パターンの面積比率に依存する。
【0036】
この式から、Imはフーリエ級数として表すことが可能である。つまり、
Im = 2/T × ∫-T/2T/2 I(x)cos{2π(x−x0)/km} dx ・・・(式3)
となる。Tは調整パターンの光学特性I(x)の繰り返し周期を表す量であるが、実際にはずらし量を変えて調整パターンを記録した範囲でしか光学特性は取得できない。すなわち、記録位置ずらし量の変動範囲外では(式3)が成り立つ必要はない。複数の周期パターンの場合、光学特性の繰り返し周期は含まれるパターンそれぞれの周期の最小公倍数となる。このことを考慮すると、選択する周期kmの組み合わせによっては、単一周期パターンの場合と比較して繰り返し周期Tが非常に長くなる可能性がある。よって、此処ではTを検知したい着弾位置ずれ量の最大範囲として設定し、その範囲内で光学特性I(x)を再現するように係数Imを決める。
【0037】
以上より、ある光学特性I(x)となるような調整パターンを得るためには、繰り返し周期kmの周期性の異なるパターンを上記(式3)の関係に近くなるようにImの比率で混合すれば良いことになる。
【0038】
(実施形態1)
本実施形態の記録位置調整方法では、走査方向に一定領域ごとにドットと空白を繰り返す周期パターンで、その繰り返す周期の異なる複数のパターンを搬送方向に配置した調整パターンを用いて着弾位置ずれ量を算出する。このような複数の周期性を持つパターンにおいてその周期性と構成比率を最適化することで、検知したい2つのパターンの着弾ずれ量が一致するずらし量近傍で光学反射率の変化量を増大させることができる。その結果、センサ検知時に生じるノイズやインク滴の着弾ばらつきによる検出値の変動影響を低減する効果を得られる。また、複数の周期パターンで構成することで、光学特性の繰り返し周期が長くなり、着弾位置ずれ量を一義的に検知可能なずらし量の範囲を広げることができる。
【0039】
この方法において、着弾位置ずれ量をより精度良く検知するための最も効果的な調整パターンの周期性の設定や混合比率を以下に説明する。
【0040】
まず、複数の周期パターンを組み合わせて得られるずらし量に対する光学反射率の理想曲線を考える。これにより、(式3)のI(x)の形状を決定することができる。
【0041】
本発明に係る記録位置調整方法における理想的な光学特性を図11のグラフで示す。図11のグラフに示される黒点は、それぞれ1200dpiずつずらし量を変化させながら記録した調整パターンの光学反射率を示すものである。また、光学反射率が最大となる変極点の算出時に使用される測定点の範囲を(a)近似領域、それ以外を(b)未使用領域として示す。
【0042】
本実施形態の調整パターンでは、(式2)で示した、ずらし量に対する光学反射率の関係から、最大反射率となるずらし量近傍では、2次関数で近似することができる。2次関数で近似する場合、最小3点あれば近似曲線を決定することが可能である。しかしながら、ノイズなどの影響を除外し、より近似曲線の信頼性を高めるためには、近似式と光学特性が良く一致する範囲でより多くの測定結果を用いて近似する方が好ましい。図11では7個の測定点を(a)近似領域として設定し、その範囲内において、光学特性は2次関数的に変化するものとする。
【0043】
また、(b)未使用領域についても理想的な光学特性を規定しておく。未使用領域では誤判定防止の観点から、未使用領域の光学反射率は最大点よりも十分低くなるべきである。ここでは理想条件として、図11に示すように未使用領域では近似領域よりも低い一定の反射率となるように設定する。
【0044】
以上の条件を満たす光学特性の形状を持つようにしつつ、近似範囲における光学反射率の変化ΔIの大きさがより大きくなるようにパターンを構成する。
【0045】
続いて、理想曲線を再現させる範囲を考える。これにより、(式3)のTを決定する。
【0046】
(式3)のTは前述の通り検知したい着弾ずれ量の大きさに依存する。ある2つのノズル列間や往復走査間の最大着弾ずれ量は、ノズル列の機械的な位置ずれ公差や吐出されるインク滴の速度差などから想定される。その最大着弾ずれがある場合の図11のような理想光学特性を持つ調整パターンの光学反射率分布を図12に示す。仮に最大着弾ずれ量が32/4800dpi=8画素であるとすると、その近傍のずらし量範囲は近似領域として測定した結果が必要となる。そのため、7点で近似する場合はずらし量が12画素分の調整パターンまで記録し、光学特性を測定しなければならない。この時、逆方向にも同様に着弾ずれが発生し得るとすると、最大着弾ずれ量まで検知するには±12画素のずらし量の範囲のパターンを記録する。そして、最大着弾ずれがあり、+8画素のずらし量で最大光学反射率となる時、そのずらし量でパターンの記録位置ずれ量が0となり、反対側に最もずらした−12画素のずらし量のパターンでは、記録位置ずれ量が−20画素となる。
【0047】
以上のことから、基準パターンとずらしパターンの最大記録位置ずれ量は±20画素であり、その範囲内において、光学反射率が繰り返し最大点とならないようにTの大きさを設定する。このようにTを設定することで、想定される着弾ずれ量の範囲内であれば、調整パターンのずらし量に対する光学特性から一義的に着弾ずれ量を決定することができるようにIm、kmを選択することができる。
【0048】
上述の方法により(式3)に記載のI(x)の形状とTの値を決めることができる。それにより、調整パターンの周期kmに対してImの大きさを算出し、その比率を周期kmごとに求めることで、最適なパターンの周期とその混合比率を得る。
【0049】
以上のような条件を満たす調整パターン構成の一例として、図13に12dot、20dot、24dot、32dotの4つの周期パターンから成る調整パターンの例を示す。それぞれのパターンのドット比率は50%となるように設定する。ここでは、それぞれのパターンの面積比率は同じで、搬送方向に8画素ずつ並べられ、その組み合わせが繰り返すような配置となっている。
【0050】
また、図13においては、ずらしパターンを基準パターンに対して、+3、+6、+9画素ずらして記録した場合のドットの重なり状態も合わせて示す。図13で示す調整パターンにおいて徐々にずらし量を増やしていくと、それぞれの周期パターンでエリアファクタが増大し、光学反射率は下がっていく。そして、最も周期の短い12dot周期のパターンの空白領域が急激に減少し、6画素ずらした段階で、最もエリアファクタが大きくなる。さらにずらし量を大きくしていくと、12dot周期のパターンでは再び空白領域が現れエリアファクタが減少に転じるが、それ以外の周期のパターンはエリアファクタが増加していく。
【0051】
このようにして各周期ごとにずらし量に対して反射率が変動していくが、測定される反射率は光学センサの受光素子(測定装置)に入射した光の総和により決まることに注意しなければならない。図14に示すようにセンサの受光領域(測定範囲)521のサイズを直径4mmとした場合、周期パターンの搬送方向の繰り返し周期、すなわち8画素×4種類=32画素よりも十分大きい。すなわち、受光領域521の範囲内、すなわち、測定範囲内に、繰返し周期性の異なる複数のパターンの少なくとも一周期が含まれる。このため、LEDから照射された光は均等に4種類の周期パターンに当たり、全体の反射率も各周期パターンの平均値とみなすことができる。しかし、受光領域のサイズに対して周期パターンの搬送方向の繰り返し周期が比較的長い場合には、受光領域の位置によって各周期パターンの寄与率が変わってしまう。そのため、周期パターンの搬送方向の繰り返しは周期が受光領域と比べて短くなるように設定する。
【0052】
そして、図13の調整パターンのずらし量に対してセンサにより測定される光学反射率は図15の実線で描かれる曲線のようになる。また、従来の調整パターンの例として、図15の点線は、32dotの単一周期パターンで構成する場合、鎖線は20dotの単一周期パターンで構成する場合の光学特性を表している。なお、図15のグラフの横軸は基準パターンとずらしパターンの着弾位置のずれ量であり、パターンのずらし量ではないことに注意する。図13の調整パターンは、12,20,24,32の最小公倍数480画素で光学特性が一巡するパターンであり、その間で基準パターンとずらしパターンが完全に一致するのは1ヶ所のみである。そのため、元々の着弾ずれが無い場合に、ずらし量を振って記録されるパターンの光学反射率分布の取得範囲Aであっても、最大着弾ずれ量が8画素分である場合の光学反射率分布の取得範囲Bであっても、着弾ずれ量が0となるある1ヶ所で最大反射率となる。つまり、レジ調整前の着弾ずれ量によらず、一義的に調整値を得ることができる。
【0053】
それに対して、鎖線で描かれる20dot周期パターンを比較してみる。20dot周期パターンは繰り返し周期が短いため、着弾位置ずれ量が0の近傍で反射率の変化が図13のパターンと同程度となる。しかし、取得範囲Bの場合には、調整パターンのずらし量を振る範囲がパターンの繰り返し周期よりも長いため、ずらし量0、+20画素の2ヶ所で最大反射率となり得る。よって、本来、2つの調整パターンの記録位置が一致するのとは1周期分ずれた位置を着弾位置ずれ量として誤検知してしまう可能性がある。
【0054】
また、繰り返し周期を長くした点線で描かれる32dot周期のパターンでは、取得範囲Bで最大反射率となるのは1ヶ所のみであるが、反射率の変化が緩やかになってしまう。一見、32dot周期パターンの反射率の振れ幅が図13のパターンよりも大きくなっているように見えるが、近似範囲内での比較ではそうではない。図16に実線で図13のパターン、点線で32dotパターンを比較して示す。ここでは、ある着弾ずれ量xがあり、パターンずらし量が−xとなるときに2つのパターンの記録位置ずれがなくなり、最大反射率となるとする。その近傍±bを近似範囲とすると、その範囲での光学反射率の変化は図13のパターンがΔI1、32dotパターンがΔI2となり、前者のパターンの方が反射率変化が大きい。結局のところ、近似範囲外の反射率変化の大きさに関係なく、近似範囲の反射率変化の大きさが大きくなるほど、ノイズなどの外乱の影響を受け難く検出精度の向上に繋がる。
【0055】
このように、単一周期パターンでは、最大反射率近傍の反射率変化の大きさと繰り返し周期の両立が難しいことが分かる。
【0056】
これに対して、本実施形態の調整パターンは、複数の異なる周期性をもつパターンから構成されるため、最大反射率となる周期を広くとることができ、しかも最大反射率近傍の反射率変化を大きくすることができる。
【0057】
特に、上述したように、理想的な光学特性に近づくように(式3)を基に複数の周期パターンを上手く組み合わせることで、光学反射率の変極点の近傍での光学反射率の変化を大きくすることができ、着弾ずれ量を精度良く算出することができるようになる。加えて、大きな着弾ずれがある場合であっても広範囲にずらし量を振ることで一義的にパターンが一致する位置を検知することができるようになる。
【0058】
尚、本実施形態の調整パターンは、基準パターン、ずらしパターンの周期が全て異なっているが、一部に同一の周期を有するパターンが含まれていてもよい。言い換えれば、本実施形態の調整パターンは、周期性の異なる複数の基準パターン、ずらしパターンを含むようにしていればよい。
【0059】
(実施形態2)
本実施形態では、実施形態1の調整パターンと構成は同じである。本実施形態では、基準パターンとずらしパターンの記録位置が一致する付近での光学反射率の変化を低下させないために、比較的周期の短いパターンにおける空白領域に対するドット領域の比率を下げる。すなわち、ドットゲインの影響により比較的周期の短いパターンの光学反射率が低くなる場合に、このパターンにおけるドット比率を下げる。これにより、記録媒体、インクなどによってドットゲインが大きくなるような記録条件となる場合おいても、実施例1と同様の効果を得る。
【0060】
上述したように、調整パターンの光学反射率は物理的ドットゲイン、及び光学的ドットゲインの影響を大きく受けている。本実施形態の調整パターンでは、どちらの現象もドット領域と空白領域の境界部分が多いほど影響度が増大するので、ドット領域と空白領域の繰り返し周期によってドットゲインの寄与率が異なる。また、物理的ドットゲインの寄与は記録解像度とドットの直径の関係により変わり、光学的ドットゲインの寄与は記録媒体の内部散乱の大きさや照射するLED光の波長特性により変わる。以上のことから、物理的、及び光学的ドットゲインの影響度を考慮して調整パターンを構成する複数の周期パターンのドット比率を決定する必要がある。
【0061】
図17はドットゲインにより光学反射率の最大点近傍の変化を比較したグラフである。実線がドットゲインの影響の小さい場合の図13で示した調整パターンの光学特性を表し、点線がドットゲインの影響が大きい場合を表している。ドットゲインの影響が大きくなると、基準パターンとずらしパターンを重ねて記録した状態で白地部分が残っているときに反射率が低下する。このため、最大反射率も低下する。一方、基準パターンとずらしパターンが互いの空白領域を埋め合うと、ドットゲインの影響は空白領域がある場合よりも小さい。すると、反射率の最大値が下がる量に対して、反射率の最小値が下がる量は比較的小さく、反射率の変化がΔI1からΔI1´に低下してしまう。また、光学特性の曲線形状も歪むため、三角関数のような振る舞いをするとした前提から離れてしまい、前述の(式2)に基づく理想光学特性の再現性が悪くなる。
【0062】
このような現象は、比較的周期の短いパターンのドット比率を下げることで回避することができる。例えば、図13に示したパターンのように、12,20,24,32dot周期パターンがドット比率50%で構成されていたとする。このとき、比較的ドットゲインの影響が大きいのが12dot周期パターンであったとすると、12dot周期パターンのみn=5,m=7とし、ドット比率を下げる。これにより、ドットゲインによる反射率の低下分は空白領域が拡大したことで補われ、ドットが埋まりきらなくなった分は、ドットゲインにより埋まりきった状態に近い反射率まで下がる。結果、図17の実線に近い光学特性が得られるようになる。
【0063】
上述したように、ドットゲインによる高周期パターンの光学特性の変化は、ドット比率を調整することで、ドットゲインの影響が小さい時の光学特性に近付けることができる。ドット比率の選択は、ドットゲインに影響する因子である、パターンの繰り返し周期、ドットのサイズ、記録解像度、インクの色、LEDの波長特性、記録媒体の種類に合わせて変更すれば良い。このようにしてドットゲインの寄与を相殺することで、光学反射率の最大点近傍のずらし量に対する反射率の変化を低下させることなく、最大点の検知精度の改善効果を維持することが可能となる。
【0064】
(実施形態3)
本実施形態では、前述の調整パターンを用いて搬送方向の着弾ずれを検知する場合について説明する。
【0065】
図18はノズル列間の搬送方向(副走査方向)の着弾ずれを検知するためのパターン構成の一例である。本実施形態では、基準パターンに対してずらしパターンの記録位置を搬送方向に動かして、光学特性を得る。そのため、複数の周期パターンを配列するには、主走査方向の位置に応じてパターンの周期を変えるようにする。
【0066】
また、前述の走査方向の時に選択したパターンの周期とは異なる周期のものを選択して良い。もし、2つのノズル列間の搬送方向の最大ずれ量が走査方向の最大ずれ量よりも小さいのであれば、パターンのずらし量を変化させる範囲も小さくできる。その場合、光学特性の繰り返し周期はずらし量を振る範囲に合わせて短くして良く、パターンの周期もそれに合わせてより短めに選択することができる。図18に示す例では、周期が6dot、10dot、16dotと、実施形態1、2で示した調整パターンより周期の短いパターンを用いている。逆に、広範囲で着弾ずれを検知する必要がある場合は、比較的周期の長いパターンを用いて、光学特性の繰り返し周期を長くする。
【0067】
以上のように、搬送方向の着弾ずれを検知する場合においても、周期パターンの配列方向を変えることで、走査方向のずれ量を検知する場合と同様の光学特性を持つ調整パターンを形成することが可能となる。
【0068】
(実施形態4)
本実施形態では、ある2つのノズル列間の走査方向と搬送方向の両方について着弾ずれがあり、その着弾ずれを前述の複数の周期パターンで調整パターンを構成し、そのノズル列間の着弾ずれを検知する場合について説明する。
【0069】
2つのノズル列間の着弾位置が走査方向と搬送方向の両方向にずれている条件では、上述の複数周期パターンを用いる際に注意が必要となる。例えば、走査方向に+2画素ずれた状態で2つのノズル列間の搬送方向の着弾ずれを調整するパターンを記録する場合を考えてみる。その場合のパターンで、搬送方向の着弾ずれ量が2画素の時のドット配置を図19に示す。黒丸で描かれる基準パターンのドットに対して、白丸で描かれるずらしパターンのドットが搬送方向だけでなく、走査方向にもずれるため、同じ周期のパターンが同じ走査位置に記録されなくなる。その結果、光学反射率は各周期パターンの光学反射率を平均したものとは異なるものになり、基準パターンとずらしパターンが一致するずらし量を正確に検知できなくなってしまう。
【0070】
この問題を回避するため、予め搬送方向のずれ量を検知する2つのノズル列間の走査方向の着弾ずれを検知し、着弾ずれを補正した状態で搬送方向ずれを検知するパターンを記録しなければならない。これは、走査方向の着弾ずれを検知する場合であっても、搬送方向に着弾ずれがある場合には同様の対策が必要となる。その方法は、まず始めに検知したい着弾ずれの方向に対して垂直な方向の着弾ずれを、単一周期のパターンを用いて検出する。単一周期パターンは図5に示すように検知する方向の着弾ずれのみに依存して光学反射率が変化する。例え垂直方向にずれたとしても、重なるドットパターンは同じであるため、光学反射率にほとんど影響を与えない。よって、両方向の着弾ずれがある場合でも、ある程度の精度で着弾ずれを検知することができる。そして、着弾ずれを検知する方向に対して垂直な方向の着弾ずれをレジ調整により補正した状態で、複数の周期パターンを用いて精度良く検知したい方向の調整パターンを記録する。
【0071】
以上、説明したように、主走査方向(第1の方向)とこれに交差する搬送方向(第2の方向)の両方に着弾ずれがある場合においても、検出したい方向の着弾ずれを複数周期パターンを用いて検出することが可能となる。
【0072】
(その他の実施形態)
上述の説明では、走査方向のある2つのノズル列間の着弾ずれ、あるいは双方向記録時の着弾ずれを検知するための調整パターンの構成方法について示した。ただし、本発明は位置ずれを検知するパターンとして広く適応することができるものであり、ノズル列の配置やインク色構成、マルチセンサの構成によって限定されるものではない。また、インクジェットプリンタに限らず、2つの記録素子間でパターンを記録媒体上に形成し、その光学特性を測定することができる記録装置であれば、形態は問わない。例えば、レーザープリンタ等にも適用可能である。
【0073】
また、基準パターンとずらしパターンを記録するノズル位置を変るため、2つのパターンを記録する間に記録媒体の搬送を行っても良い。
【0074】
また、実施形態1及び実施形態2では、ずらし量ごとにセンサで反射率を測定し、反射率が最大となるずらし量を近似曲線の変極点を基に着弾ずれの補正値を算出したが、ユーザーの目視によって補正値を選択するようにしてもよい。この場合には、反射率が最大となるずらし量を最適なものとしてユーザーが判断し、記録装置及びホストコンピュータから補正値を入力する。
【0075】
上記実施形態では、第1および第2のパターンは、所定画素数のドット領域と、所定画素数の空白領域とが繰り返す場合について例示したが、これに限定されるわけではなく、繰返し周期性をもつパターンであればよい。
【0076】
上記実施形態では、同じノズル列からインクを吐出させつつ往方向走査および復方向走査し、および、異なるノズル列からインクを吐出しつつ同じ走査方向に走査して同じ目標位置に記録する場合について説明した。しかし、本発明の第1の記録手段および第2の記録手段は、これに限定されるわけではない。異なるノズル列からインクを吐出させつつ往復走査する場合にも適用できる。
【0077】
上記実施形態では、いわゆるシリアルタイプのインクジェットプリンタの場合について説明したが、いわゆるラインタイプのインクジェットプリンタにも本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0078】
202 キャリッジユニット
301 記録ヘッド
302 ノズル列
310 吐出ノズル
500 光学センサ
601、602 レジ調整パターン
S 記録媒体
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、インクジェット記録などの記録装置およびその記録位置ずれ量の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、インクジェット記録装置における記録位置調整方法について開示している。具体的には、基準となるノズル列により記録された「基準パターン」に別のノズル列で記録された基準パターンと記録位置が少しずつ異なる複数の「ずらしパターン」を重ねて記録する。そして、そのパターンの記録位置をずらした量と、光学反射率の変極点の位置に基づいて、着弾位置ずれ量を算出し、記録ヘッドのインクの吐出タイミングを補正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3554184号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示の方法では、高精度に着弾位置を合わせるためには、近似曲線と光学特性を良く合わせて計算誤差を低減させる必要がある。この為、変極点付近のより狭いずらし範囲の光学反射率から近似式を算出することが望ましい。しかし、より狭い範囲のずらし量の変化では、光学反射率の変化量も小さくなる。結果として、ノイズなどの外乱の影響を無視できなくなり、十分な精度が得ることができなくなってしまう。
【0005】
本発明は、上記従来に課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、インクジェット記録におけるインクの着弾位置ずれ量をより高精度に検知することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る記録装置は、記録媒体にドットを記録することにより画像を記録する記録手段と、前記記録手段により記録される画像の相対的な記録位置のずれ量を検出するために、前記ずれ量を検出する所定の方向に周期性を有する第1のパターンと、前記第1のパターンと同じ周期性を有する第2のパターンとを、前記第1のパターンと第2のパターンの前記所定の方向のずれ量を異ならせて複数記録することにより、前記ずれ量に応じて光学反射特性が変化する複数の第3のパターンを記録するパターン記録手段と、を有し、前記第1および第2のパターンは、複数の異なる周期性をもつパターンをそれぞれ含む、ことを特徴とする記録装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、2つのパターンの記録位置が一致するずらし量付近で光学反射率の変化量を増大させることができるので、十分に大きな光学反射率の変化を得ることが可能となり、着弾位置ずれ量の検出精度も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明が適用されるインクジェット記録装置の一例の斜視図。
【図2】本発明に用いられる光学センサの一例を説明する図。
【図3】図1の装置に用いられる記録ヘッドのノズル配置を表す図。
【図4】本発明におけるレジ調整パターンの構成を説明する図。
【図5】ずらし量を変化させて記録されるレジ調整パターンを説明する図。
【図6】ずらし量に対する光学反射率とその近似曲線を表すグラフ。
【図7】本発明におけるレジ調整方法の流れを示すフローチャート。
【図8】ずらし量に対する光学反射率と直線近似した結果を比較するグラフ。
【図9】記録画素とドットの大きさを比較する図。
【図10】光学反射率と三角関数による近似曲線を表すグラフ。
【図11】本発明における理想的な光学特性を説明するグラフ。
【図12】本発明における最大記録位置ずれ量を説明するグラフ。
【図13】実施形態1の複数の周期パターンで構成される調整パターンの図。
【図14】実施形態2の調整パターンと光学センサの受光領域を比較する図。
【図15】実施形態1の調整パターンと単一周期パターンの光学特性の周期性を比較するグラフ。
【図16】実施形態1の調整パターンと単一周期パターンの最大点近傍の光学特性を比較するグラフ。
【図17】実施形態2のドットゲインによる光学特性の変化を説明するグラフ。
【図18】実施形態3の調整パターンの図。
【図19】実施形態3の調整パターンで走査方向にも着弾がずれたときの図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本実施形態におけるレジ調整処理の詳細を説明する。
(基本構成)
図1〜図3は、本発明を適用可能なインクジェット記録装置(以下、単に記録装置とも記す)の基本的な構成例を説明するための図である。
【0010】
図1は、本実施形態のインクジェット記録装置の要部構成を模式的に示す斜視図である。図1において、記録ヘッド301は矢印Xの走査方向に往復移動し、一般の記録紙、特殊紙、およびOHPフィルム等の記録媒体Sは、所定ピッチ毎に走査方向と交差(本例では直交)する矢印Yの搬送方向(副走査方向)に搬送される。記録データに基づいて記録ヘッド301の吐出口からインクを吐出させつつ、記録ヘッド301を往復移動させる走査動作と、記録媒体Sを搬送させる搬送動作とを繰り返すことにより、記録媒体Sにインク滴を着弾させて文字や記号などを含む画像を記録する。
【0011】
記録ヘッド301は熱エネルギーを利用してインクを吐出するインクジェット方式の記録手段であって、熱エネルギーを発生するための電気熱変換体を備えたものである。また記録ヘッド301は電気熱変換体によって印加される熱エネルギーにより生じる膜沸騰による気泡の成長、収縮によって生じる圧力変化を利用してインク吐出口(ノズル)よりインクを吐出させ、記録を行うものである。
【0012】
記録ヘッド301はキャリッジ202に着脱可能に搭載されている。キャリッジ202は、ガイドレール204に摺動自在に支持されており、不図示のモータ等の駆動手段によりガイドレール204に沿って往復移動される。記録媒体Sは、記録ヘッド301の吐出口面(インク吐出口の形成面)と一定の対向間隔が維持されたまま、搬送ローラ203によって矢印Yの搬送方向に搬送される。
【0013】
記録ヘッド301は、異なるインクを吐出するための複数のノズル列(吐出口列)が形成されている。本例の場合は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインクを吐出可能なノズル列が形成されている。記録ヘッド301に対しては、それから吐出されるインク(ブラック、シアン、マゼンタ、イエローのインク)を供給するためのインクカートリッジ401(401K,401C,401M,401Y)が独立して着脱可能に装着される。
【0014】
記録ヘッド301の往復移動範囲内で、かつ記録媒体Sの通過範囲外の領域である非記録領域には、その非記録領域に記録ヘッド301が移動したときに、記録ヘッド301のインク吐出口面と対向する回復ユニット207が配備されている。回復ユニット207には、記録ヘッド301の吐出口のキャッピングが可能なキャップ208(208K,208C,208M,208Y)が備えられている。キャップ208K,208C,208M,208Yは、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローのインクを吐出する吐出口それぞれをキャッピング可能である。キャップ208の内部には吸引ポンプ(負圧発生手段)が接続されている。キャップ208が記録ヘッド301の吐出口をキャッピングしたときに、そのキャップ208の内部に負圧を導入することによって、記録ヘッド301の吐出口からインクをキャップ208内に吸引排出(吸引回復動作)させることができる。このような吸引回復動作により、記録ヘッド301におけるインクの吐出性能を維持することができる。
【0015】
また、回復ユニット207には、記録ヘッド301の吐出口面をワイピングするためのゴムブレードなどのワイパー209が備えられている。また、記録ヘッド301からキャップ208内に向かって、インクを吐出することによって、記録ヘッド301におけるインクの吐出性能を維持する回復処理(「予備吐出」ともいう)をすることができる。
【0016】
キャリッジユニット2には、図2にて示される反射型光学センサ500が設けられている。発光部501にはLEDが取り付けられており、LEDによって発せられた光510は記録媒体Sに照射される。記録媒体Sによって反射された光520は、受光部502に入射し、フォトダイオードによって電気信号に変換される。
【0017】
図3は記録ヘッド301に設けられた吐出ノズル310の配列を示す。CMYKの各インクを吐出するノズル列(302K、302C、302M、302Y)は、搬送方向に2列に分かれて合計1280個配置される。それぞれのノズル列には600dpi間隔でノズルが配置され、2つのノズル列は1200dpiだけ搬送方向にずらされる。これにより、搬送方向に1200dpiの解像度での記録が可能となる。
【0018】
(記録位置調整方法)
以下に、本実施形態における記録位置調整方法について説明する。
【0019】
図4は記録装置に取り付けられた光学センサ500を使用して調整パターンの光学反射特性である光学反射率を測定した結果に基づいて調整値を決定する記録位置調整方法で使用される調整パターンの構成を示す。
【0020】
図4に示す調整パターンは、1画素×n画素の長方形に配列されるドットパターンがm画素の空白領域ごと走査方向に周期的に繰り返されるような構成になっている。また、この調整パターン(第3のパターン)は基準パターン(第1のパターン)601とずらしパターン(第2のパターン)602の2つのパターンにより構成され、基準パターン601に対してずらしパターン602はある画素数aだけ走査方向に記録位置がずらされるように設定される。すなわち、繰り返し周期性をもつ基準パターン601に対して同じ繰り返し周期性をもつずらしパターン602の位相を変化させる。以下では、この量を単にずらし量と言う。また、調整パターンで記録されるドットの配置の間隔や、ずらし量の変化単位は記録装置の記録解像度により決まる。本実施形態では、調整パターンの記録解像度は1200dpiとする。
【0021】
図5は、図4の調整パターンのずらし量を変えて複数並べたものであり、ずらし量aを−3画素から+3画素まで変えて記録している。2つのパターンの相対的な記録位置のずれ量が変わると、ドットの重なり具合が変化し、記録媒体上に占めるインクの面積率(以下、エリアファクタとも言う)が変わる。エリアファクタが大きくなると、センサから照射されるLEDの光の反射率は低下し、光学濃度は上昇する。逆にエリアファクタが小さくなると、反射率は高くなり、光学濃度は低くなる。
【0022】
例えば、パターン形成時に走査方向に着弾ずれ無くドットが置かれる場合、パターンのずらし量に対する反射光強度の関係は図6に示すようになる。基準パターンとずらしパターンのドット配置は同じになるように設定されているため、記録する2つのパターン間の位置ずれが無い図5のずらし量0の状態で、2つのパターンのドットの重なり量が最も増え、エリアファクタが最小となる。よって、この位置で光学反射率が最も大きくなる。一方、パターンのずらし量が大きくなると基準パターンとずらしパターンのドットの重なり量が減り、エリアファクタは増大する。その結果、ずらし量が増えるに従って光学反射率は下がっていく。
【0023】
ずらしパターン記録時に、基準パターン記録時に対して元々のパターンの記録位置を予めずらした量とは異なる走査方向の着弾位置ずれが生じた場合、その着弾位置ずれ量に応じてエリアファクタが変わるので、反射率が最大となるずらし量も変化する。この時に反射率が最大となるパターンのずらし量は着弾位置ずれ量に一致する。
【0024】
以上のことから、ずらし量を変えて記録した複数のパターンの中で最も反射率が大きくなる変極点を検知することで、その状態のずらし量から基準パターンに対するずらしパターンの記録位置ずれ量の検出ができる。
【0025】
図7は上記の調整パターンから記録位置調整値を算出する手順を示すフローチャートである。図4に示したように、ステップS1101で基準ノズル列を使用して基準パターン601を記録媒体上に記録し、ステップS1102で調整するノズル列を使用してずらしパターン602を記録する。双方向記録位置調整時は、1つのノズル列を選択し、往路又は復路で基準パターン601を記録し、もう一方でずらしパターン602を記録する。その後、ステップS1103で光学センサを使用して調整パターン610の光学反射率を得る。光学センサで読み取った結果は図6に示すようにずらし量aに対する光学反射率として得られ、その最大反射率付近の変化から近似曲線620を算出する。その近似曲線を基にステップS1104で基準パターンとずらしパターンの位置ずれが最も少なくなるずらし量aを決定し、記録位置調整値(レジ調整値)を算出する。ここで、レジ調整解像度は4800dpiとし、レジ調整値は4800dpi単位で算出される。また、プラス側は往路方向に吐出タイミングをずらし、マイナス側は復路方向に吐出タイミングをずらすとする。
【0026】
このように各ノズル列でレジ調整値が算出されるまでステップS1105で繰り返しを行い、得られたレジ調整値はステップS1106で記録装置の記憶領域に保存される。
【0027】
(パターンの光学特性)
まず、本発明で使用する調整パターンのドット配置の決定方法について説明する。
【0028】
調整パターンの光学反射率は、すでに説明したように、エリアファクタと相関がある。しかし、エリアファクタと光学反射率が比例関係にあるかというと、そうはならない。図5の調整パターンの構成において、図6で示したずらし量に対する光学反射率に対して、エリアファクタの変化を基に近似したとする。すると、図8の点線630のようになる。エリアファクタは単純にインクが占める面積で定義されるので、ずらし量に対して1次的に変化する。一方、センサで検知される光学反射率は最大となる位置付近に近づくほど変化がなだらかになっている点で特性が異なり、1次近似では合わない。
【0029】
その要因は光学的ドットゲインであると考えられる。光学的ドットゲインは、記録媒体に入射してきた光が記録媒体の表面や内部で散乱されて記録媒体から出て行く時、ドット部分を透過、あるいは、ドット部分で反射されることで白地部分から出てくる時の強度が低下し、白地部分の濃度が上昇しているようにみえる現象である。光学的ドットゲインの影響範囲や濃度上昇の大きさは記録媒体や入射光の波長特性、インク物性などによって変わるが、単純にエリアファクタに比例するのではなく、ドットパターンの間隔などの要因によって影響度が変わる。よって、光学的ドットゲインによりパターンのずらし量に対する光学反射率が非線形な振る舞いをすると考えられる。
【0030】
以上のことから、基準パターンとずらしパターンの着弾位置ずらし量を変えていった時の光学反射率は非線形な曲線になると考えられるが、単純なモデルで表現することは難しい。しかしながら、図4に示したようなドットと空白が繰り返す周期的なパターンの重ね合わせであれば、比較的ずらし量に対する光学反射率を単純な曲線に近付けることはできる。
【0031】
例えば、図10は図6に示した調整パターン構成で、記録解像度が1200dpi、n=m=8である場合のずらしパターンの記録位置ずらし量に対する光学反射率の変化を表している。図10のグラフ中に黒丸で示したものが実際に測定される反射率で、実線で示されるのが測定値を三角関数で近似した曲線である。この調整パターンは、8画素ごとにドットと空白を繰り返す構成であるため、ずらしパターンのずらし量が16画素分変化するごとに基準パターンとの重なり状態が同じになる。また、パターンの重なり量が最大、最小となるずらし量の付近では、エリアファクタの変化に加えて前述の光学的ドットゲインの影響が大きくなるため、光学反射率の変化は緩やかになる。このため、図10に示すようにパターンのずらし量に対する光学反射率の変化は三角関数に近い挙動を示す。当然ながら、ドットと空白の比率が同じにならないような調整パターンを用いた場合、ずらし量の変化に対してエリアファクタが変化しない領域が存在するため、この例のように単純な関数では表すことができない。また、空白領域が狭くなりすぎても、ドットゲインの寄与率が大きくなり、実質的にドットの比率が大きくなるような振る舞いをする。その場合は、ドットゲインに依る光学反射率の低下を考慮してドット比率を下げ、三角関数的な振る舞いに近付けることは可能である。
【0032】
以下に、上記のような周期関数的な光学特性を持つパターンを用いて、基準パターンとずらしパターンが重なる位置付近での光学特性の変化を大きくするようなパターンを構成する方法について説明する。
【0033】
上記したように、ドットゲインの影響も含めてドットと空白の画素数比が1:1に近いパターンは、単純な三角関数に近い光学特性を示す。実際に調整パターンの光学反射率を測定して着弾位置ずれ量を導出する場合は、センサから照射したLED光の反射率によって測定するので、反射光強度を以下のように記述する。
【0034】
I(x) = I0−I×cos{2π(x−x0)/k} ・・・(式1)
I0:調整パターンの最大反射率
I:ずらし量に対する反射光強度の振幅
x:入力画像による記録位置ずらし量
x0:着弾位置ずれ量
k:パターンの繰り返し周期
もし、上式が当てはまる光学特性を持ち、繰り返し周期の異なる複数のパターンが混在する場合、光学反射率は反射光がセンサに受光される領域に含まれるパターン全てに依存するので、それぞれの周期のパターンの占める面積によって振幅が異なる波形の重ね合わせになる。すなわち、以下のような式で表される。
【0035】
I(x) = I0−Σ[ Im×cos{2π(x−x0)/km} ] ・・・(式2)
添え字mは含まれる周期の異なるパターンそれぞれを示す。Imは各周期パターンの面積比率に依存する。
【0036】
この式から、Imはフーリエ級数として表すことが可能である。つまり、
Im = 2/T × ∫-T/2T/2 I(x)cos{2π(x−x0)/km} dx ・・・(式3)
となる。Tは調整パターンの光学特性I(x)の繰り返し周期を表す量であるが、実際にはずらし量を変えて調整パターンを記録した範囲でしか光学特性は取得できない。すなわち、記録位置ずらし量の変動範囲外では(式3)が成り立つ必要はない。複数の周期パターンの場合、光学特性の繰り返し周期は含まれるパターンそれぞれの周期の最小公倍数となる。このことを考慮すると、選択する周期kmの組み合わせによっては、単一周期パターンの場合と比較して繰り返し周期Tが非常に長くなる可能性がある。よって、此処ではTを検知したい着弾位置ずれ量の最大範囲として設定し、その範囲内で光学特性I(x)を再現するように係数Imを決める。
【0037】
以上より、ある光学特性I(x)となるような調整パターンを得るためには、繰り返し周期kmの周期性の異なるパターンを上記(式3)の関係に近くなるようにImの比率で混合すれば良いことになる。
【0038】
(実施形態1)
本実施形態の記録位置調整方法では、走査方向に一定領域ごとにドットと空白を繰り返す周期パターンで、その繰り返す周期の異なる複数のパターンを搬送方向に配置した調整パターンを用いて着弾位置ずれ量を算出する。このような複数の周期性を持つパターンにおいてその周期性と構成比率を最適化することで、検知したい2つのパターンの着弾ずれ量が一致するずらし量近傍で光学反射率の変化量を増大させることができる。その結果、センサ検知時に生じるノイズやインク滴の着弾ばらつきによる検出値の変動影響を低減する効果を得られる。また、複数の周期パターンで構成することで、光学特性の繰り返し周期が長くなり、着弾位置ずれ量を一義的に検知可能なずらし量の範囲を広げることができる。
【0039】
この方法において、着弾位置ずれ量をより精度良く検知するための最も効果的な調整パターンの周期性の設定や混合比率を以下に説明する。
【0040】
まず、複数の周期パターンを組み合わせて得られるずらし量に対する光学反射率の理想曲線を考える。これにより、(式3)のI(x)の形状を決定することができる。
【0041】
本発明に係る記録位置調整方法における理想的な光学特性を図11のグラフで示す。図11のグラフに示される黒点は、それぞれ1200dpiずつずらし量を変化させながら記録した調整パターンの光学反射率を示すものである。また、光学反射率が最大となる変極点の算出時に使用される測定点の範囲を(a)近似領域、それ以外を(b)未使用領域として示す。
【0042】
本実施形態の調整パターンでは、(式2)で示した、ずらし量に対する光学反射率の関係から、最大反射率となるずらし量近傍では、2次関数で近似することができる。2次関数で近似する場合、最小3点あれば近似曲線を決定することが可能である。しかしながら、ノイズなどの影響を除外し、より近似曲線の信頼性を高めるためには、近似式と光学特性が良く一致する範囲でより多くの測定結果を用いて近似する方が好ましい。図11では7個の測定点を(a)近似領域として設定し、その範囲内において、光学特性は2次関数的に変化するものとする。
【0043】
また、(b)未使用領域についても理想的な光学特性を規定しておく。未使用領域では誤判定防止の観点から、未使用領域の光学反射率は最大点よりも十分低くなるべきである。ここでは理想条件として、図11に示すように未使用領域では近似領域よりも低い一定の反射率となるように設定する。
【0044】
以上の条件を満たす光学特性の形状を持つようにしつつ、近似範囲における光学反射率の変化ΔIの大きさがより大きくなるようにパターンを構成する。
【0045】
続いて、理想曲線を再現させる範囲を考える。これにより、(式3)のTを決定する。
【0046】
(式3)のTは前述の通り検知したい着弾ずれ量の大きさに依存する。ある2つのノズル列間や往復走査間の最大着弾ずれ量は、ノズル列の機械的な位置ずれ公差や吐出されるインク滴の速度差などから想定される。その最大着弾ずれがある場合の図11のような理想光学特性を持つ調整パターンの光学反射率分布を図12に示す。仮に最大着弾ずれ量が32/4800dpi=8画素であるとすると、その近傍のずらし量範囲は近似領域として測定した結果が必要となる。そのため、7点で近似する場合はずらし量が12画素分の調整パターンまで記録し、光学特性を測定しなければならない。この時、逆方向にも同様に着弾ずれが発生し得るとすると、最大着弾ずれ量まで検知するには±12画素のずらし量の範囲のパターンを記録する。そして、最大着弾ずれがあり、+8画素のずらし量で最大光学反射率となる時、そのずらし量でパターンの記録位置ずれ量が0となり、反対側に最もずらした−12画素のずらし量のパターンでは、記録位置ずれ量が−20画素となる。
【0047】
以上のことから、基準パターンとずらしパターンの最大記録位置ずれ量は±20画素であり、その範囲内において、光学反射率が繰り返し最大点とならないようにTの大きさを設定する。このようにTを設定することで、想定される着弾ずれ量の範囲内であれば、調整パターンのずらし量に対する光学特性から一義的に着弾ずれ量を決定することができるようにIm、kmを選択することができる。
【0048】
上述の方法により(式3)に記載のI(x)の形状とTの値を決めることができる。それにより、調整パターンの周期kmに対してImの大きさを算出し、その比率を周期kmごとに求めることで、最適なパターンの周期とその混合比率を得る。
【0049】
以上のような条件を満たす調整パターン構成の一例として、図13に12dot、20dot、24dot、32dotの4つの周期パターンから成る調整パターンの例を示す。それぞれのパターンのドット比率は50%となるように設定する。ここでは、それぞれのパターンの面積比率は同じで、搬送方向に8画素ずつ並べられ、その組み合わせが繰り返すような配置となっている。
【0050】
また、図13においては、ずらしパターンを基準パターンに対して、+3、+6、+9画素ずらして記録した場合のドットの重なり状態も合わせて示す。図13で示す調整パターンにおいて徐々にずらし量を増やしていくと、それぞれの周期パターンでエリアファクタが増大し、光学反射率は下がっていく。そして、最も周期の短い12dot周期のパターンの空白領域が急激に減少し、6画素ずらした段階で、最もエリアファクタが大きくなる。さらにずらし量を大きくしていくと、12dot周期のパターンでは再び空白領域が現れエリアファクタが減少に転じるが、それ以外の周期のパターンはエリアファクタが増加していく。
【0051】
このようにして各周期ごとにずらし量に対して反射率が変動していくが、測定される反射率は光学センサの受光素子(測定装置)に入射した光の総和により決まることに注意しなければならない。図14に示すようにセンサの受光領域(測定範囲)521のサイズを直径4mmとした場合、周期パターンの搬送方向の繰り返し周期、すなわち8画素×4種類=32画素よりも十分大きい。すなわち、受光領域521の範囲内、すなわち、測定範囲内に、繰返し周期性の異なる複数のパターンの少なくとも一周期が含まれる。このため、LEDから照射された光は均等に4種類の周期パターンに当たり、全体の反射率も各周期パターンの平均値とみなすことができる。しかし、受光領域のサイズに対して周期パターンの搬送方向の繰り返し周期が比較的長い場合には、受光領域の位置によって各周期パターンの寄与率が変わってしまう。そのため、周期パターンの搬送方向の繰り返しは周期が受光領域と比べて短くなるように設定する。
【0052】
そして、図13の調整パターンのずらし量に対してセンサにより測定される光学反射率は図15の実線で描かれる曲線のようになる。また、従来の調整パターンの例として、図15の点線は、32dotの単一周期パターンで構成する場合、鎖線は20dotの単一周期パターンで構成する場合の光学特性を表している。なお、図15のグラフの横軸は基準パターンとずらしパターンの着弾位置のずれ量であり、パターンのずらし量ではないことに注意する。図13の調整パターンは、12,20,24,32の最小公倍数480画素で光学特性が一巡するパターンであり、その間で基準パターンとずらしパターンが完全に一致するのは1ヶ所のみである。そのため、元々の着弾ずれが無い場合に、ずらし量を振って記録されるパターンの光学反射率分布の取得範囲Aであっても、最大着弾ずれ量が8画素分である場合の光学反射率分布の取得範囲Bであっても、着弾ずれ量が0となるある1ヶ所で最大反射率となる。つまり、レジ調整前の着弾ずれ量によらず、一義的に調整値を得ることができる。
【0053】
それに対して、鎖線で描かれる20dot周期パターンを比較してみる。20dot周期パターンは繰り返し周期が短いため、着弾位置ずれ量が0の近傍で反射率の変化が図13のパターンと同程度となる。しかし、取得範囲Bの場合には、調整パターンのずらし量を振る範囲がパターンの繰り返し周期よりも長いため、ずらし量0、+20画素の2ヶ所で最大反射率となり得る。よって、本来、2つの調整パターンの記録位置が一致するのとは1周期分ずれた位置を着弾位置ずれ量として誤検知してしまう可能性がある。
【0054】
また、繰り返し周期を長くした点線で描かれる32dot周期のパターンでは、取得範囲Bで最大反射率となるのは1ヶ所のみであるが、反射率の変化が緩やかになってしまう。一見、32dot周期パターンの反射率の振れ幅が図13のパターンよりも大きくなっているように見えるが、近似範囲内での比較ではそうではない。図16に実線で図13のパターン、点線で32dotパターンを比較して示す。ここでは、ある着弾ずれ量xがあり、パターンずらし量が−xとなるときに2つのパターンの記録位置ずれがなくなり、最大反射率となるとする。その近傍±bを近似範囲とすると、その範囲での光学反射率の変化は図13のパターンがΔI1、32dotパターンがΔI2となり、前者のパターンの方が反射率変化が大きい。結局のところ、近似範囲外の反射率変化の大きさに関係なく、近似範囲の反射率変化の大きさが大きくなるほど、ノイズなどの外乱の影響を受け難く検出精度の向上に繋がる。
【0055】
このように、単一周期パターンでは、最大反射率近傍の反射率変化の大きさと繰り返し周期の両立が難しいことが分かる。
【0056】
これに対して、本実施形態の調整パターンは、複数の異なる周期性をもつパターンから構成されるため、最大反射率となる周期を広くとることができ、しかも最大反射率近傍の反射率変化を大きくすることができる。
【0057】
特に、上述したように、理想的な光学特性に近づくように(式3)を基に複数の周期パターンを上手く組み合わせることで、光学反射率の変極点の近傍での光学反射率の変化を大きくすることができ、着弾ずれ量を精度良く算出することができるようになる。加えて、大きな着弾ずれがある場合であっても広範囲にずらし量を振ることで一義的にパターンが一致する位置を検知することができるようになる。
【0058】
尚、本実施形態の調整パターンは、基準パターン、ずらしパターンの周期が全て異なっているが、一部に同一の周期を有するパターンが含まれていてもよい。言い換えれば、本実施形態の調整パターンは、周期性の異なる複数の基準パターン、ずらしパターンを含むようにしていればよい。
【0059】
(実施形態2)
本実施形態では、実施形態1の調整パターンと構成は同じである。本実施形態では、基準パターンとずらしパターンの記録位置が一致する付近での光学反射率の変化を低下させないために、比較的周期の短いパターンにおける空白領域に対するドット領域の比率を下げる。すなわち、ドットゲインの影響により比較的周期の短いパターンの光学反射率が低くなる場合に、このパターンにおけるドット比率を下げる。これにより、記録媒体、インクなどによってドットゲインが大きくなるような記録条件となる場合おいても、実施例1と同様の効果を得る。
【0060】
上述したように、調整パターンの光学反射率は物理的ドットゲイン、及び光学的ドットゲインの影響を大きく受けている。本実施形態の調整パターンでは、どちらの現象もドット領域と空白領域の境界部分が多いほど影響度が増大するので、ドット領域と空白領域の繰り返し周期によってドットゲインの寄与率が異なる。また、物理的ドットゲインの寄与は記録解像度とドットの直径の関係により変わり、光学的ドットゲインの寄与は記録媒体の内部散乱の大きさや照射するLED光の波長特性により変わる。以上のことから、物理的、及び光学的ドットゲインの影響度を考慮して調整パターンを構成する複数の周期パターンのドット比率を決定する必要がある。
【0061】
図17はドットゲインにより光学反射率の最大点近傍の変化を比較したグラフである。実線がドットゲインの影響の小さい場合の図13で示した調整パターンの光学特性を表し、点線がドットゲインの影響が大きい場合を表している。ドットゲインの影響が大きくなると、基準パターンとずらしパターンを重ねて記録した状態で白地部分が残っているときに反射率が低下する。このため、最大反射率も低下する。一方、基準パターンとずらしパターンが互いの空白領域を埋め合うと、ドットゲインの影響は空白領域がある場合よりも小さい。すると、反射率の最大値が下がる量に対して、反射率の最小値が下がる量は比較的小さく、反射率の変化がΔI1からΔI1´に低下してしまう。また、光学特性の曲線形状も歪むため、三角関数のような振る舞いをするとした前提から離れてしまい、前述の(式2)に基づく理想光学特性の再現性が悪くなる。
【0062】
このような現象は、比較的周期の短いパターンのドット比率を下げることで回避することができる。例えば、図13に示したパターンのように、12,20,24,32dot周期パターンがドット比率50%で構成されていたとする。このとき、比較的ドットゲインの影響が大きいのが12dot周期パターンであったとすると、12dot周期パターンのみn=5,m=7とし、ドット比率を下げる。これにより、ドットゲインによる反射率の低下分は空白領域が拡大したことで補われ、ドットが埋まりきらなくなった分は、ドットゲインにより埋まりきった状態に近い反射率まで下がる。結果、図17の実線に近い光学特性が得られるようになる。
【0063】
上述したように、ドットゲインによる高周期パターンの光学特性の変化は、ドット比率を調整することで、ドットゲインの影響が小さい時の光学特性に近付けることができる。ドット比率の選択は、ドットゲインに影響する因子である、パターンの繰り返し周期、ドットのサイズ、記録解像度、インクの色、LEDの波長特性、記録媒体の種類に合わせて変更すれば良い。このようにしてドットゲインの寄与を相殺することで、光学反射率の最大点近傍のずらし量に対する反射率の変化を低下させることなく、最大点の検知精度の改善効果を維持することが可能となる。
【0064】
(実施形態3)
本実施形態では、前述の調整パターンを用いて搬送方向の着弾ずれを検知する場合について説明する。
【0065】
図18はノズル列間の搬送方向(副走査方向)の着弾ずれを検知するためのパターン構成の一例である。本実施形態では、基準パターンに対してずらしパターンの記録位置を搬送方向に動かして、光学特性を得る。そのため、複数の周期パターンを配列するには、主走査方向の位置に応じてパターンの周期を変えるようにする。
【0066】
また、前述の走査方向の時に選択したパターンの周期とは異なる周期のものを選択して良い。もし、2つのノズル列間の搬送方向の最大ずれ量が走査方向の最大ずれ量よりも小さいのであれば、パターンのずらし量を変化させる範囲も小さくできる。その場合、光学特性の繰り返し周期はずらし量を振る範囲に合わせて短くして良く、パターンの周期もそれに合わせてより短めに選択することができる。図18に示す例では、周期が6dot、10dot、16dotと、実施形態1、2で示した調整パターンより周期の短いパターンを用いている。逆に、広範囲で着弾ずれを検知する必要がある場合は、比較的周期の長いパターンを用いて、光学特性の繰り返し周期を長くする。
【0067】
以上のように、搬送方向の着弾ずれを検知する場合においても、周期パターンの配列方向を変えることで、走査方向のずれ量を検知する場合と同様の光学特性を持つ調整パターンを形成することが可能となる。
【0068】
(実施形態4)
本実施形態では、ある2つのノズル列間の走査方向と搬送方向の両方について着弾ずれがあり、その着弾ずれを前述の複数の周期パターンで調整パターンを構成し、そのノズル列間の着弾ずれを検知する場合について説明する。
【0069】
2つのノズル列間の着弾位置が走査方向と搬送方向の両方向にずれている条件では、上述の複数周期パターンを用いる際に注意が必要となる。例えば、走査方向に+2画素ずれた状態で2つのノズル列間の搬送方向の着弾ずれを調整するパターンを記録する場合を考えてみる。その場合のパターンで、搬送方向の着弾ずれ量が2画素の時のドット配置を図19に示す。黒丸で描かれる基準パターンのドットに対して、白丸で描かれるずらしパターンのドットが搬送方向だけでなく、走査方向にもずれるため、同じ周期のパターンが同じ走査位置に記録されなくなる。その結果、光学反射率は各周期パターンの光学反射率を平均したものとは異なるものになり、基準パターンとずらしパターンが一致するずらし量を正確に検知できなくなってしまう。
【0070】
この問題を回避するため、予め搬送方向のずれ量を検知する2つのノズル列間の走査方向の着弾ずれを検知し、着弾ずれを補正した状態で搬送方向ずれを検知するパターンを記録しなければならない。これは、走査方向の着弾ずれを検知する場合であっても、搬送方向に着弾ずれがある場合には同様の対策が必要となる。その方法は、まず始めに検知したい着弾ずれの方向に対して垂直な方向の着弾ずれを、単一周期のパターンを用いて検出する。単一周期パターンは図5に示すように検知する方向の着弾ずれのみに依存して光学反射率が変化する。例え垂直方向にずれたとしても、重なるドットパターンは同じであるため、光学反射率にほとんど影響を与えない。よって、両方向の着弾ずれがある場合でも、ある程度の精度で着弾ずれを検知することができる。そして、着弾ずれを検知する方向に対して垂直な方向の着弾ずれをレジ調整により補正した状態で、複数の周期パターンを用いて精度良く検知したい方向の調整パターンを記録する。
【0071】
以上、説明したように、主走査方向(第1の方向)とこれに交差する搬送方向(第2の方向)の両方に着弾ずれがある場合においても、検出したい方向の着弾ずれを複数周期パターンを用いて検出することが可能となる。
【0072】
(その他の実施形態)
上述の説明では、走査方向のある2つのノズル列間の着弾ずれ、あるいは双方向記録時の着弾ずれを検知するための調整パターンの構成方法について示した。ただし、本発明は位置ずれを検知するパターンとして広く適応することができるものであり、ノズル列の配置やインク色構成、マルチセンサの構成によって限定されるものではない。また、インクジェットプリンタに限らず、2つの記録素子間でパターンを記録媒体上に形成し、その光学特性を測定することができる記録装置であれば、形態は問わない。例えば、レーザープリンタ等にも適用可能である。
【0073】
また、基準パターンとずらしパターンを記録するノズル位置を変るため、2つのパターンを記録する間に記録媒体の搬送を行っても良い。
【0074】
また、実施形態1及び実施形態2では、ずらし量ごとにセンサで反射率を測定し、反射率が最大となるずらし量を近似曲線の変極点を基に着弾ずれの補正値を算出したが、ユーザーの目視によって補正値を選択するようにしてもよい。この場合には、反射率が最大となるずらし量を最適なものとしてユーザーが判断し、記録装置及びホストコンピュータから補正値を入力する。
【0075】
上記実施形態では、第1および第2のパターンは、所定画素数のドット領域と、所定画素数の空白領域とが繰り返す場合について例示したが、これに限定されるわけではなく、繰返し周期性をもつパターンであればよい。
【0076】
上記実施形態では、同じノズル列からインクを吐出させつつ往方向走査および復方向走査し、および、異なるノズル列からインクを吐出しつつ同じ走査方向に走査して同じ目標位置に記録する場合について説明した。しかし、本発明の第1の記録手段および第2の記録手段は、これに限定されるわけではない。異なるノズル列からインクを吐出させつつ往復走査する場合にも適用できる。
【0077】
上記実施形態では、いわゆるシリアルタイプのインクジェットプリンタの場合について説明したが、いわゆるラインタイプのインクジェットプリンタにも本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0078】
202 キャリッジユニット
301 記録ヘッド
302 ノズル列
310 吐出ノズル
500 光学センサ
601、602 レジ調整パターン
S 記録媒体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を記録するための記録装置であって、
記録媒体にドットを記録することにより画像を記録する記録手段と、
前記記録手段により記録される画像の相対的な記録位置のずれ量を検出するために、前記ずれ量を検出する所定の方向に周期性を有する第1のパターンと、前記第1のパターンと同じ周期性を有する第2のパターンとを、前記第1のパターンと第2のパターンの前記所定の方向のずれ量を異ならせて複数記録することにより、前記ずれ量に応じて光学反射特性が変化する複数の第3のパターンを記録するパターン記録手段と、を有し、
前記第1および第2のパターンは、複数の異なる周期性をもつパターンをそれぞれ含む、ことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記第1および第2のパターンは、所定画素数のドット領域と、所定画素数の空白領域とが前記所定の方向に繰り返すパターンを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記パターン記録手段は、前記第1および第2のパターンの、複数の異なる周期性をもつパターンうち、繰り返し周期が相対的に短いパターンにおける、前記ドット領域と前記空白領域の画素数比であるドット比率は、繰り返し周期が相対的に長いパターンにおけるドット比率よりも低くなるように設定されている、ことを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記記録手段は、インクを吐出することにより記録媒体にドットを記録する手段であって、
前記パターン記録手段は、インク滴の量、インク滴の色および記録媒体の少なくともいずれかに応じて、前記ドット比率を選択する、ことを特徴とする請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記第1および第2のパターンは、前記所定の方向とそれに交差する方向に異なる周期性を有する、ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の記録装置。
【請求項6】
前記記録手段は、インクを吐出することにより記録媒体にドットを記録するためのノズル列を前記所定の方向に複数備える手段であって、
前記第3のパターンは、前記所定の方向における前記複数のノズル列間の前記ずれ量を検出するためのパターンであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の記録装置。
【請求項7】
前記記録位置のずれ量と、前記第1のパターンと第2のパターンのずれ量とが一致する位置において、前記複数の第3のパターンの光学反射率が最も高くなる又は低くなることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の記録装置。
【請求項8】
前記複数の第3のパターンの光学反射率を測定するための測定手段をさらに有することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の記録装置。
【請求項9】
前記測定手段の測定範囲内に、前記周期性の異なる複数のパターンの少なくとも一周期が含まれることを特徴とする請求項8に記載の記録装置。
【請求項10】
前記複数の第3のパターンの位相および測定された光学反射率に基づいて、前記ずれ量を算出する算出手段をさらに有することを特徴とする請求項9に記載の記録装置。
【請求項11】
前記複数の第3のパターンのうち、目視により選択された第3のパターンにおける前記第1のパターンと第2のパターンのずれ量に基づいて、前記ずれ量を算出する算出手段をさらに有することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の記録装置。
【請求項12】
画像を記録するための記録装置における記録位置のずれ量を検出する記録位置ずれ検出方法であって、
記録媒体にドットを記録することにより画像を記録する記録手段により記録される画像の相対的な記録位置のずれ量を検出するために、前記ずれ量を検出する所定の方向に周期性を有する第1のパターンと、前記第1のパターンと同じ周期性を有する第2のパターンとを、前記第1のパターンと第2のパターンの前記所定の方向のずれ量を異ならせて複数記録することにより、前記ずれ量に応じて光学反射特性が変化する複数の第3のパターンを記録する工程を有し、
前記第1および第2のパターンは、複数の異なる周期性をもつパターンをそれぞれ含む、ことを特徴とする記録位置ずれ検出方法。
【請求項1】
画像を記録するための記録装置であって、
記録媒体にドットを記録することにより画像を記録する記録手段と、
前記記録手段により記録される画像の相対的な記録位置のずれ量を検出するために、前記ずれ量を検出する所定の方向に周期性を有する第1のパターンと、前記第1のパターンと同じ周期性を有する第2のパターンとを、前記第1のパターンと第2のパターンの前記所定の方向のずれ量を異ならせて複数記録することにより、前記ずれ量に応じて光学反射特性が変化する複数の第3のパターンを記録するパターン記録手段と、を有し、
前記第1および第2のパターンは、複数の異なる周期性をもつパターンをそれぞれ含む、ことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記第1および第2のパターンは、所定画素数のドット領域と、所定画素数の空白領域とが前記所定の方向に繰り返すパターンを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記パターン記録手段は、前記第1および第2のパターンの、複数の異なる周期性をもつパターンうち、繰り返し周期が相対的に短いパターンにおける、前記ドット領域と前記空白領域の画素数比であるドット比率は、繰り返し周期が相対的に長いパターンにおけるドット比率よりも低くなるように設定されている、ことを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記記録手段は、インクを吐出することにより記録媒体にドットを記録する手段であって、
前記パターン記録手段は、インク滴の量、インク滴の色および記録媒体の少なくともいずれかに応じて、前記ドット比率を選択する、ことを特徴とする請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記第1および第2のパターンは、前記所定の方向とそれに交差する方向に異なる周期性を有する、ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の記録装置。
【請求項6】
前記記録手段は、インクを吐出することにより記録媒体にドットを記録するためのノズル列を前記所定の方向に複数備える手段であって、
前記第3のパターンは、前記所定の方向における前記複数のノズル列間の前記ずれ量を検出するためのパターンであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の記録装置。
【請求項7】
前記記録位置のずれ量と、前記第1のパターンと第2のパターンのずれ量とが一致する位置において、前記複数の第3のパターンの光学反射率が最も高くなる又は低くなることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の記録装置。
【請求項8】
前記複数の第3のパターンの光学反射率を測定するための測定手段をさらに有することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の記録装置。
【請求項9】
前記測定手段の測定範囲内に、前記周期性の異なる複数のパターンの少なくとも一周期が含まれることを特徴とする請求項8に記載の記録装置。
【請求項10】
前記複数の第3のパターンの位相および測定された光学反射率に基づいて、前記ずれ量を算出する算出手段をさらに有することを特徴とする請求項9に記載の記録装置。
【請求項11】
前記複数の第3のパターンのうち、目視により選択された第3のパターンにおける前記第1のパターンと第2のパターンのずれ量に基づいて、前記ずれ量を算出する算出手段をさらに有することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の記録装置。
【請求項12】
画像を記録するための記録装置における記録位置のずれ量を検出する記録位置ずれ検出方法であって、
記録媒体にドットを記録することにより画像を記録する記録手段により記録される画像の相対的な記録位置のずれ量を検出するために、前記ずれ量を検出する所定の方向に周期性を有する第1のパターンと、前記第1のパターンと同じ周期性を有する第2のパターンとを、前記第1のパターンと第2のパターンの前記所定の方向のずれ量を異ならせて複数記録することにより、前記ずれ量に応じて光学反射特性が変化する複数の第3のパターンを記録する工程を有し、
前記第1および第2のパターンは、複数の異なる周期性をもつパターンをそれぞれ含む、ことを特徴とする記録位置ずれ検出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−153021(P2012−153021A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14313(P2011−14313)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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