説明

記録装置

【課題】接触式のセンサにより被記録媒体を搬送する搬送ベルトの動作を検出するよう構成された記録装置において、前記センサの検出精度の低下を防止する。
【解決手段】記録用紙Pを搬送する搬送ベルト3の側端部には磁気記録層から成る被検出部16と磁気ヘッドから成る検出部17とを備えて構成された搬送量検出手段15が設けられている。搬送量検出手段15の上流側には、被検出部16に潤滑剤を供給する潤滑剤供給手段20が設けられている。潤滑剤供給手段20を構成する潤滑剤供給ローラ21は、被検出部16に対し進退可能に設けられ、搬送ベルト3の駆動時にのみ被検出部16に当接するよう制御される。また記録用紙Pへの記録実行時には被検出部16から離間するよう制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファクシミリやプリンタ等に代表される記録装置に関し、特に搬送ベルトによって被記録媒体を搬送する記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
以下、記録装置の一例としてのインクジェットプリンタを例に説明する。インクジェットプリンタにおいて、被記録媒体としての記録用紙を搬送する構成としては、特許文献1に示される様に搬送ベルトを用いるものがある(以下「搬送ベルト方式」と言う)。
【0003】
また搬送ベルト方式を用いるインクジェットプリンタにおいて、特許文献2、3に示される様に、搬送ベルトにエンコーダスケールを一体的に設け、当該エンコーダスケールを読み取るセンサにより搬送ベルトの動作量や動作速度、即ち記録用紙の搬送量や搬送速度を検出し、その検出結果に同期させて記録ヘッドを動作させ、ドット位置ずれのない高品位な画像を得るように構成されたものもある。
【特許文献1】特開2000−272110号公報
【特許文献2】特開2004−17458号公報
【特許文献3】特開2006−96429号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
搬送ベルトの動作量や動作速度を検出する為のセンサ方式としては、光学式のほか、磁気式のものがある。磁気式のものは、例えば搬送ベルトの動作方向に被検出要素として異なる磁極(S極とN極)を交互に配置して被検出部(磁気記録層)を構成し、検出部(磁気ヘッド)により前記被検出部の磁極の変化を検出することにより、搬送ベルトの動作量や動作速度、即ち記録用紙の搬送量や搬送速度を検出する。この様な磁気式のセンサは、異なる磁極を高密度に配置することができ、極めて高い分解能が得られ、もって記録品質の向上を図ることができる。
【0005】
しかしながらこのような磁気式のセンサは、磁気記録層と磁気ヘッドとが接触する為、搬送ベルトの動作に伴って磁気ヘッドが摩耗し、これにより検出精度が低下し、ひいては検出不能となる虞がある。また摩耗粉が磁気ヘッドと磁気記録層との間に堆積すると、これが摩耗材となり作用し、両者の摩耗をより一層加速させる虞がある。
【0006】
またインクジェットプリンタにおいては、記録ヘッドからインクが吐出される際に細かなミストが発生する。このミストが磁気記録層に付着すると、磁気ヘッドに磁気記録層が貼り付く虞があり、このよう磁気ヘッドに磁気記録層が貼り付いた状態から搬送ベルトが動くことにより磁気ヘッド或いは磁気記録層が破損する虞もある。
【0007】
またインクが磁気記録層上で硬化し、磁気記録層上に凹凸が形成されることによって、磁気ヘッドを損傷させたり、磁気ヘッドと磁気記録層との距離が不均一となって磁気ヘッドからの信号出力が低下したり、或いは磁気ヘッドと磁気記録層との間で振動が発生して信号出力の変動を招く虞もある。
【0008】
そこで本発明はこの様な状況に鑑み成されたものであり、その目的は、接触式のセンサにより被記録媒体を搬送する搬送ベルトの動作を検出するよう構成された記録装置において、前記センサの検出精度の低下を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る記録装置は、被記録媒体に記録を行う記録手段と、搬送ベルトにより被記録媒体を搬送する搬送手段と、前記搬送ベルト上において被記録媒体の搬送方向に沿って被検出要素が配列されて成る被検出部、及び当該被検出部と接触し、前記搬送ベルトの動作に伴い前記被検出要素を検出する検出部、を備えて構成された検出手段と、前記被検出部と前記検出部との間の摩擦を低減させる潤滑剤を前記検出手段に供給する潤滑剤供給手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、記録装置は、被検出部と検出部との間の摩擦を低減させる潤滑剤を供給する潤滑剤供給手段を備えているので、潤滑剤による潤滑作用によって前記被検出部と前記検出部との間の摩耗が軽減或いは防止され、また破損等も防止される。その結果、前記検出部による前記被検出部の検出精度の低下が防止され、ひいては記録品質の低下を防止することができる。
【0011】
本発明の第2の態様に係る記録装置は、第1の態様に係る記録装置において、前記被検出部に対して進退可能に設けられ、前記被検出部と接触する位置において前記被検出部に潤滑剤を供給する、前記潤滑剤供給手段を構成する潤滑剤供給用接触部と、前記潤滑剤供給用接触部の前記被検出部に対する進退動作を制御する制御部とを備えたことを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、前記被検出部と接して潤滑剤を供給する潤滑剤供給用接触部が、前記被検出部に対して進退可能に設けられているので、必要時以外には前記潤滑剤供給用接触部を前記被検出部から離間させることにより、前記搬送ベルトへ不要な負荷を与えることを回避できる。
【0013】
本発明の第3の態様に係る記録装置は、第2の態様に係る記録装置において、前記制御部が、前記搬送ベルトの駆動時にのみ前記潤滑剤供給用接触部を前記被検出部に接触させることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、前記制御部が、前記搬送ベルトの駆動時にのみ前記潤滑剤供給用接触部を前記被検出部に接触させるので、前記搬送ベルトの停止時に前記潤滑剤供給用接触部が前記被検出部に接触することによって生じる潤滑剤溜まりの発生を回避できる。
【0015】
本発明の第4の態様に係る記録装置は、第2のまたは第3の態様に係る記録装置において、前記制御部は、前記記録手段による被記録媒体への記録実行中においては、前記潤滑剤供給用接触部を前記被検出部から離間させることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、制御部は、前記記録手段による被記録媒体への記録実行中においては、前記潤滑剤供給用接触部を前記被検出部から離間させるので、記録を実行中に前記潤滑剤供給用接触部が前記搬送ベルトに負荷を与えることがなく、搬送精度の低下に伴う記録品質の低下を防止することができる。
【0017】
本発明の第5の態様に係る記録装置は、第2から第4の態様のいずれかに係る記録装置において、前記搬送ベルトの蛇行を検出する蛇行検出手段を備え、前記制御部が、前記蛇行検出手段による前記搬送ベルトの蛇行検出に応じて、前記潤滑剤供給用接触部を前記被検出部に接触させることを特徴とする。
【0018】
前記被検出部が前記搬送ベルトの幅方向中央位置から側端側へ偏倚した位置に配置された構成において、前記被検出部と前記検出部との間の摩擦抵抗が増大すると、前記搬送ベルトに蛇行が生じる。本態様によれば、この蛇行を検出する蛇行検出手段を備え、前記制御部が、前記蛇行検出手段による前記搬送ベルトの蛇行検出に応じて、前記潤滑剤供給用接触部を前記被検出部に接触させるので、必要時にのみ潤滑剤が供給され、必要量以上の過剰な潤滑剤供給が防止される。
【0019】
従ってこれにより、搬送ベルトの周囲を潤滑剤で汚損することが防止される。また、過剰な潤滑剤の供給により、塵埃等を潤滑剤に取り込むことも回避できる。加えて、搬送ベルトの蛇行を解消させることができ、記録品質の低下を回避することができる。
【0020】
本発明の第6の態様に係る記録装置は、第2から第5の態様のいずれかに係る記録装置において、前記潤滑剤供給手段において前記潤滑剤供給用接触部を含む少なくとも一部の構成、または全部の構成が、着脱自在であることを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、前記潤滑剤供給手段において前記潤滑剤供給用接触部を含む少なくとも一部の構成、または全部の構成が、着脱自在であるので、前記潤滑剤供給用接触部の劣化に対し容易に対応可能となる。また特に前記潤滑剤供給用接触部には塵埃等が付着・堆積する虞があるが、容易に交換可能であるので、前記潤滑剤供給用接触部に付着した塵埃等が前記被検出部に再付着して検出精度の低下を招くことを回避できる。
【0022】
本発明の第7の態様に係る記録装置は、第1から第6の態様のいずれかに係る記録装置において、前記潤滑剤供給手段により供給された潤滑剤を回収する潤滑剤回収手段を備えていることを特徴とする。
【0023】
本態様によれば、記録装置は前記潤滑剤供給手段により供給された潤滑剤を回収する潤滑剤回収手段を備えているので、塵埃等の不純物が混入した潤滑剤を回収することができ、前記塵埃等の不純物により検出精度の低下を招くことを回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
[第1実施形態]
以下、図面に基づいて本発明の第1実施形態について説明する。図1(A)は本発明の第1実施形態に係る記録装置としてのインクジェットプリンタ(以下「プリンタ」と言う)1Aの要部平面図、図1(B)は同側面図、図2は搬送ベルト3の断面図、図3(A)は潤滑剤供給ローラ21の斜視図、図3(B)は潤滑剤供給ウェブ24の斜視図である。
【0025】
本実施形態に係るプリンタ1Aは、用紙幅をカバーする長さの記録ヘッド(記録手段)10を用いた所謂ラインヘッド方式を採用する高スループットインクジェットプリンタであり、インク吐出ヘッドを用紙幅方向に往復動させることなく、被記録媒体の一例としての記録用紙Pを搬送方向に移動しながら記録ヘッド10からインクを吐出して記録を実行する。
【0026】
より詳しくは、図1(A)、(B)に示すようにプリンタ1Aは搬送ベルト3の上流側にゲートローラ7を有し、このゲートローラ7により、搬送ベルト3に記録用紙Pを供給する前にスキューを除去した後、下流側の搬送ベルト3へと記録用紙Pを供給する。尚、符号9はゲートローラ7を駆動する駆動モータを示している。
【0027】
ゲートローラ7の下流側には、記録用紙Pを搬送方向(図1(A)では上方向、図1(B)では右方向)へ搬送する為の搬送面を形成する搬送ベルト3、およびこの搬送ベルト3を係回する複数のローラ(駆動ローラ4、従動ローラ5、6)により構成された搬送手段2が設けられている。尚、符号8は駆動ローラ4を駆動する駆動モータを、符号11は駆動モータ8をはじめプリンタ1Aの各種構成要素を制御する制御部を示している。
【0028】
搬送ベルト3は絶縁性ベルトであり、PETやポリイミド、フッ素系樹脂などの絶縁性樹脂で形成される。この搬送ベルト3は、図示を省略する帯電手段により帯電され、これにより搬送面上の記録用紙Pが搬送ベルト3に静電吸着されて、搬送方向へ確実に搬送される。
【0029】
搬送ベルト3の搬送面と対向する位置にはインクを吐出する記録ヘッド10が設けられている。この記録ヘッド10には、例えばイエロー、マゼンダ、シアン、ブラックなどの各色のインクノズル(図示せず)が、記録用紙Pの搬送方向に色毎にずらして配設されている。各インクノズル(図示せず)には、各色用のインクタンク(図示せず)からインク供給チューブ(図示せず)を介してインクが供給される。
【0030】
そして各インク吐出ノズルから必要量のインク滴が吐出されることにより、記録用紙P上に微小なインクドットが形成される。これを各色毎に行うことにより、搬送ベルト3に吸着された記録用紙Pを一度通過させるだけで、記録を完了させることができる。
【0031】
搬送ベルト3の用紙搬送方向と直交する方向(用紙幅方向)の一方側の端部には、搬送量検出手段15を構成する被検出部16が搬送ベルト3と一体的に設けられている。被検出部16は、搬送ベルト3の搬送方向に沿って連続して途切れることなく設けられており、この被検出部16と対向する位置には搬送量検出手段15を構成する検出部17が設けられている。
【0032】
被検出部16は、本実施形態では磁気記録層により構成され、この磁気記録層は被検出要素としてのS極、N極の各磁極が、搬送方向に所定ピッチで交互に配置されて形成されている。検出部17は、本実施形態では接触式の磁気再生用ヘッドで構成されており、搬送ベルト3の駆動に伴う被検出部16の磁極の変化(S、N、S、N・・・)を検出し、その検出感度に応じた出力レベル(振幅)の波形信号を出力する。制御部11は、このような被検出部16からの検出信号により、搬送ベルト3の搬送速度や搬送量を求めることができる。
【0033】
次に、搬送量検出手段15(検出部17)のやや上流側には、「潤滑剤供給用接触部」を形成する潤滑剤供給ローラ21と、電磁プランジャ23と、を備えて構成された潤滑剤供給手段20が設けられており、この潤滑剤供給手段20により、被検出部16に潤滑剤が供給されるようになっている。
【0034】
より具体的には、潤滑剤供給ローラ21は、電磁プランジャ23の動作により被検出部16に当接する位置と被検出部16から離間する位置とをとり得るように、図1(B)の上下方向に変位動作可能に設けられている。電磁プランジャ23は、制御部11からの指示により、潤滑剤供給ローラ21を被検出部16に当接させるよう押し出し、或いは潤滑剤供給ローラ21を被検出部16から離間させるよう引き込む。
【0035】
潤滑剤供給ローラ21は図3(A)に示すように回転軸21aを介してローラ支持部22に自由回転可能に軸支されている。このローラ支持部22は、板ばね等の弾性を有する材料により形成され、このローラ支持部22が奏する弾性力によって、潤滑剤供給ローラ21が被検出部16に弾接するようになっている。
【0036】
潤滑剤供給ローラ21は(特にその外周部は)、スポンジなどの多孔質材やフェルトなどの繊維材料などで形成することができ、このような材料で形成することにより、潤滑剤としてオイル、グリスなど湿式のものを用いることができる他、グラファイト(石墨)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン(PTA)、二硫化モリブデン、金属石鹸、などの乾式のものを用いた場合でも、良好な保持性を発揮することができる。尚、以下では「潤滑剤」とは上記の例をはじめとし、上記の例に限られず被検出部16と検出部17との間の摩擦抵抗を軽減し得るもの全てを含む意味で用いる。
【0037】
そして潤滑剤供給ローラ21が被検出部16に当接し且つ搬送ベルト3の動作に伴い従動回転することにより、被検出部16に潤滑剤が供給される。ここで、電磁プランジャ23は制御部11により制御され、制御部11は、電磁プランジャ23を制御することにより、潤滑剤供給ローラ21により潤滑剤が供給され得る状態と、潤滑剤が供給されない状態と、を切り換える。
【0038】
制御部11の制御により、被検出部16に潤滑剤(図2において符号Sで示す)が供給されると、被検出部16と検出部17との間に潤滑剤Sが介在していなかった状況においては潤滑剤Sが介在するようになり、或いは既に潤滑剤Sが介在していた場合には新たな潤滑剤Sが追加供給されることにより、被検出部16と検出部17との摩耗が確実に軽減され或いは防止される。
【0039】
またミストとなって浮遊するインクが被検出部16に付着すると、被検出部16が検出部17に貼り付いた状態となり、この状態から搬送ベルト3が動くことにより検出部17或いは被検出部16が破損する虞があるが、被検出部16と検出部17との間に潤滑剤Sが介在することにより、この様な不具合の発生も回避できる。
【0040】
更にインクが被検出部16上で硬化することによって、被検出部16上に凹凸が形成され、これにより検出部17を損傷させたり、被検出部16と検出部17との距離が不均一となって検出部17からの信号出力が低下したり、また検出部17と被検出部16との間で振動が発生して信号出力の変動を招く虞もあるが、この様な不具合の発生も回避できる。
【0041】
以上のように潤滑剤供給手段20は、被検出部16に潤滑剤Sを供給可能であればどのように構成されていても構わない。例えば、潤滑剤供給ローラ21に替えて、図3(B)に示すような固定ウェブ24により潤滑剤Sを供給することもできる。また、潤滑剤Sを貯留する貯留部(図示せず)と、当該貯留部から潤滑剤供給ローラ21に潤滑剤を供給する供給手段(図示せず)を設け、潤滑剤供給ローラ21に潤滑剤Sを必要に応じて補充する構成を採用することもできる。
【0042】
また制御部11が潤滑剤供給ローラ21を被検出部16に当接させるタイミングとして、例えば搬送ベルト3の駆動時にのみ潤滑剤供給ローラ21を被検出部16に当接させるようにすれば、搬送ベルト3の停止時に潤滑剤供給ローラ21が被検出部16に接触することによって生じる潤滑剤溜まりの発生を回避できる。
【0043】
また、記録用紙Pへの記録実行中においては、潤滑剤供給用ローラ21を被検出部16から離間させるようにすれば、記録を実行中に潤滑剤供給用ローラ21が搬送ベルト3に負荷を与えることがなく、搬送精度の低下に伴う記録品質の低下を防止することができる。
【0044】
また、例えばプリンタ1Aの電源投入時、或いは印刷ジョブの開始前などに、潤滑剤供給ローラ21を被検出部16に当接させて潤滑剤を供給する等、予め定められた所定のタイミングで潤滑剤を供給することができる。その他、搬送量検出手段15による検出不良(例えば、検出部17の出力低下や、パルス抜けなど)が発生した場合にのみ潤滑剤供給ローラ21を被検出部16に当接させて潤滑剤を供給する等、非定期的に潤滑剤を供給することもできる。
【0045】
こうすることにより、必要量以上の過剰な潤滑剤供給が防止され、搬送ベルト3の周囲を潤滑剤で汚損することが防止される。また、過剰な潤滑剤の供給により、塵埃等を潤滑剤に取り込むことも回避することができる。
【0046】
[第2実施形態]
続いて、図4を参照しながら本発明の第2実施形態について説明する。ここで図4(A)は本発明の他の実施形態に係るプリンタ1Bの要部平面図、図4(B)は同側面図である。尚、図4(A)、(B)において既に説明した実施形態と同一の構成要素には同一符号を付してあり、以下ではその説明は省略する。
【0047】
図4(A)、(B)に示すプリンタ1Bは、搬送量検出手段15(検出部17)の下流側に、潤滑剤回収ウェブ31と電磁プランジャ33とを備えて構成された潤滑剤回収手段30を備えており、この潤滑剤回収手段30により、被検出部16に供給された潤滑剤Sが回収されるようになっている。
【0048】
より具体的には、潤滑剤回収ウェブ31は、電磁プランジャ33の動作により被検出部16に当接する位置と被検出部16から離間する位置とをとり得るように、図4(B)の上下方向に変位動作可能に設けられている。電磁プランジャ33は、制御部11からの指示により、潤滑剤回収ウェブ31を被検出部16に当接させるよう押し出し、或いは潤滑剤回収ウェブ31を被検出部16から離間させるよう引き込む。
【0049】
潤滑剤回収ウェブ31はウェブ支持部32に支持されており、このウェブ支持部32は、板ばね等の弾性を有する材料により形成され、このウェブ支持部32が奏する弾性力によって、潤滑剤回収ウェブ31が被検出部16に弾接するようになっている。
【0050】
潤滑剤回収ウェブ31は、スポンジなどの多孔質材やフェルトなどの繊維材料など、被検出部16上の潤滑剤Sを回収可能なものであればどのようなものでも構わない。従って潤滑剤を吸収可能なウェブに換えて、ゴム材などで形成されたワイパーブレードを用いて、被検出部16上の潤滑剤Sをかき取るような構成であっても構わない。
【0051】
この潤滑剤回収ウェブ31は、制御部11により制御される電磁プランジャ33の動作により、被検出部16に接触し、或いは離間し、被検出部16に接触する位置では、被検出部16上の潤滑剤Sを回収する。
【0052】
この様に被検出部16上の潤滑剤Sを回収する手段を備えたことにより、塵埃等の不純物が混入した潤滑剤Sを回収することができ、塵埃等の不純物によって搬送量検出手段15による搬送ベルト3の動作検出精度が低下することを回避できる。
【0053】
尚、潤滑剤回収ウェブ31は、上記潤滑剤供給ローラ21と同期して被検出部16に対し進退動作するように構成しても良いし、潤滑剤供給ローラ21とは非同期で進退動作するように構成しても良い。
【0054】
潤滑剤回収ウェブ31を潤滑剤供給ローラ21と非同期で進退動作させる場合には、例えば潤滑剤供給ローラ21を被検出部16に接触させて潤滑剤を供給させる前に、潤滑剤回収ウェブ31を接触させ、これにより予め古い潤滑剤を回収すれば、塵埃等の不純物を含む古い潤滑剤が被検出部16に付着していない好ましい状態で潤滑剤を供給することができる。
【0055】
また、潤滑剤供給ローラ21と同様に、記録用紙Pへの記録実行中においては、潤滑剤回収ウェブ31を被検出部16から離間させるようにすれば、記録を実行中に潤滑剤回収ウェブ31が搬送ベルト3に負荷を与えることがなく、記録品質の低下を回避することができる。
【0056】
[第3実施形態]
続いて、図5を参照しながら本発明の第3実施形態について説明する。ここで、図5は本発明の他の実施形態に係るプリンタ1Cの側面図である。尚、図5においても、既に説明した実施形態と同一の構成要素には同一符号を付してあり、以下ではその説明は省略する。
【0057】
図5に示すプリンタ1Cは、プリンタ1Cの本体に対して着脱自在な潤滑剤供給カセット35と、押圧ローラ38と、従動ローラ39と、を備えて構成された潤滑剤供給手段20’を備えている。
【0058】
潤滑剤供給カセット35は、潤滑剤含浸リボン34と、潤滑剤含浸リボン34を供給する供給軸37とこれを巻き取る巻き取り軸36とを備えて構成されている。巻き取り軸36は図示を省略する駆動モータにより駆動され、供給軸34は、巻き取り軸36の回転による潤滑剤含浸リボン34の巻き取りに伴い従動回転する。
【0059】
押圧ローラ38と従動ローラ39は、ともに自由回転可能であり、押圧ローラ38は潤滑剤含浸リボン34に接して従動回転し、従動ローラ39は搬送ベルト3に接して従動回転する。潤滑剤供給カセット35がプリンタ1C本体に装着された際、押圧ローラ38は、従動ローラ39との間で搬送ベルト3の被検出部16と潤滑剤含浸リボン34とを挟圧し、これにより潤滑剤含浸リボン34から被検出部16へと潤滑剤が供給される。即ち、潤滑剤含浸リボン34が、被検出部16と接触して潤滑剤を供給する潤滑剤供給用接触部として機能する。
【0060】
尚、押圧ローラ38と従動ローラ39との間において、潤滑剤含浸リボン34は搬送ベルト3とは逆方向に移動するよう、巻き取り軸36の回転が制御される。これにより、被検出部16へ潤滑剤が供給されると同時に、搬送ベルト3上に付着した塵埃等の除去が行われ、即ち被検出部16への潤滑剤の供給と、被検出部16のクリーニングとが同時に行われる様になっている。
【0061】
尚、これとは逆に、押圧ローラ38と従動ローラ39との間において、潤滑剤含浸リボン34が搬送ベルト3と同じ方向に移動するように構成することもでき、この場合には、潤滑剤含浸リボン34が搬送ベルト3に殆ど搬送負荷を与えないという作用が得られる。この場合において、押圧ローラ38と従動ローラ39との間における搬送ベルト3の移動速度に対し、潤滑剤含浸リボン34の移動速度をやや遅く設定すれば、被検出部16へより確実に潤滑剤を付着させることができるとともに、被検出部16のクリーニング効果も得ることができる。
【0062】
そして本実施形態によれば、潤滑剤供給手段20’は、潤滑剤含浸リボン34を巻き取りながら搬送ベルト3に潤滑剤を供給するので、搬送ベルト3との接触部位が常にクリーンな状態に更新され、塵埃等が搬送ベルト3に再付着して検出部17による検出精度の低下を招くことを回避できる。また、潤滑剤供給カセット35が着脱自在であるので、塵埃等が付着した潤滑剤含浸リボン34を容易に交換することができ、また潤滑剤を容易に補充することができる。
【0063】
[第4実施形態]
続いて、図6を参照しながら本発明の第4実施形態について説明する。ここで、図6(A)は本発明の他の実施形態に係るプリンタ1Dの要部平面図であり、図6(B)は同側面図である。尚、図6においても、既に説明した実施形態と同一の構成要素には同一符号を付してあり、以下ではその説明は省略する。
【0064】
図6(A)、(B)において符号40は、搬送ベルト3の蛇行を検出する蛇行検出手段を示している。蛇行検出手段40は、搬送ベルト3の動作方向(用紙送り方向)に延びるスリットが搬送ベルト3の幅方向(用紙送り方向と直交する方向)に等間隔で複数形成されて成るリニアスケール41と、当該リニアスケール41を読み取る光学式センサ42とを備えて構成されている。
【0065】
従って搬送ベルト3が蛇行すると、リニアスケール41のスリットが光学式センサ42を横切り、光学式センサ42はこれに伴う波形信号を制御部11へと送信する。これにより制御部11は、搬送ベルト3の蛇行の有無、及び蛇行量を把握することが可能となる。
【0066】
本実施形態に係るプリンタ1Dは、蛇行検出手段40による搬送ベルト3の蛇行検出に応じて、潤滑剤供給手段20を制御する。即ち、搬送量検出手段15は、搬送ベルト3の幅方向中央位置から側端側へ偏倚した位置に配置されているので、被検出部16と検出部17との間の摩擦抵抗が増大すると、搬送ベルト3に蛇行が生じる。そこで搬送ベルト3の蛇行を検出した場合に、潤滑剤供給手段20を制御して、被検出部16と検出部17との間に潤滑剤を供給する。
【0067】
搬送ベルト3の蛇行検出は、例えばプリンタ1Dの電源投入後の初期化動作時や、印刷ジョブの開始前に、搬送ベルト3を所定量駆動することにより行うことができる。このとき搬送ベルト3の一定量以上の蛇行を検出すれば、潤滑剤供給手段20を制御して、蛇行量が一定量以下になるまで被検出部16へ潤滑剤を供給する。
【0068】
以上のように蛇行検出手段40を利用し、搬送ベルト3の蛇行検出に応じて潤滑剤供給ローラ21を被検出部16に接触させるので、必要時にのみ潤滑剤を供給することとなり、必要量以上の過剰な潤滑剤供給が防止される。従ってこれにより、搬送ベルト3の周囲を潤滑剤で汚損することが防止される。また、過剰な潤滑剤の供給により、塵埃等を潤滑剤に取り込むことも回避できる。加えて、搬送ベルト3の蛇行を解消させることができ、記録品質の低下を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】(A)は本発明の第1実施形態に係るプリンタの要部平面図、(B)は同側面図。
【図2】搬送ベルトの断面図。
【図3】(A)は潤滑剤供給ローラの斜視図、(B)は潤滑剤供給ウェブの斜視図。
【図4】(A)は本発明の第2実施形態に係るプリンタの要部平面図、(B)は同側面図。
【図5】本発明の第3実施形態に係るプリンタの側面図。
【図6】(A)は本発明の第4実施形態に係るプリンタの要部平面図、(B)は同側面図。
【符号の説明】
【0070】
1A、1B、1C、1D、 インクジェットプリンタ、2 搬送手段、3 搬送ベルト、4 駆動ローラ、5、6 従動ローラ、7 ゲートローラ、8、9 駆動モータ、10 記録ヘッド、11 制御部、15 搬送量検出手段、16 被検出部(磁気記録層)、17 検出部(磁気ヘッド)、20、20’ 潤滑剤供給手段、21 潤滑剤供給ローラ、22 ローラ支持部、23 電磁プランジャ、24 潤滑剤供給ウェブ、30 潤滑剤回収手段、31 潤滑剤回収ウェブ、32 ウェブ支持部、33 電磁プランジャ、34 潤滑剤含浸リボン、35 潤滑剤供給カセット、36 巻き取り軸、37 供給軸、38 押圧ローラ、39 従動ローラ、40 蛇行検出手段、41 リニアスケール、42 光学式センサ、P 記録用紙、S 潤滑剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体に記録を行う記録手段と、
搬送ベルトにより被記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記搬送ベルト上において被記録媒体の搬送方向に沿って被検出要素が配列されて成る被検出部、及び当該被検出部と接触し、前記搬送ベルトの動作に伴い前記被検出要素を検出する検出部、を備えて構成された検出手段と、
前記被検出部と前記検出部との間の摩擦を低減させる潤滑剤を前記検出手段に供給する潤滑剤供給手段と、
を備えたことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録装置において、前記被検出部に対して進退可能に設けられ、前記被検出部と接触する位置において前記被検出部に潤滑剤を供給する、前記潤滑剤供給手段を構成する潤滑剤供給用接触部と、
前記潤滑剤供給用接触部の前記被検出部に対する進退動作を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする記録装置。
【請求項3】
請求項2に記載の記録装置において、前記制御部が、前記搬送ベルトの駆動時にのみ前記潤滑剤供給用接触部を前記被検出部に接触させることを特徴とする記録装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の記録装置において、前記制御部は、前記記録手段による被記録媒体への記録実行中においては、前記潤滑剤供給用接触部を前記被検出部から離間させることを特徴とする記録装置。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1項に記載の記録装置において、前記搬送ベルトの蛇行を検出する蛇行検出手段を備え、
前記制御部が、前記蛇行検出手段による前記搬送ベルトの蛇行検出に応じて、前記潤滑剤供給用接触部を前記被検出部に接触させることを特徴とする記録装置。
【請求項6】
請求項2から5のいずれか1項に記載の記録装置において、前記潤滑剤供給手段において前記潤滑剤供給用接触部を含む少なくとも一部の構成、または全部の構成が、着脱自在であることを特徴とする記録装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の記録装置において、前記潤滑剤供給手段により供給された潤滑剤を回収する潤滑剤回収手段を備えていることを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−101522(P2009−101522A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−272779(P2007−272779)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】