記録装置
【課題】 キャリッジを利用した駆動力伝達切換機構を備えた記録装置において、記録装置が大型化する虞を低減させる。
【解決手段】 インクジェットプリンター50は、ドット形成領域X1と記録ヘッド保守領域X2との境界の近傍に駆動力伝達切換機構20が配設されている。そのため、駆動力伝達切換機構20を配設するためのスペースを記録ヘッド保守領域X2の外側に設ける必要がない。また、ドット形成領域X1と記録ヘッド保守領域X2との境界近傍においてキャリッジ10と駆動力伝達切換機構20とが係合することになるので、キャリッジ10の可動領域を記録ヘッド保守領域X2の外側に拡張する必要がなくなる。そして駆動力伝達切換機構20は、キャリッジ10による動作の前後で駆動力伝達の駆動OFF状態を維持する動作モードを有している。
【解決手段】 インクジェットプリンター50は、ドット形成領域X1と記録ヘッド保守領域X2との境界の近傍に駆動力伝達切換機構20が配設されている。そのため、駆動力伝達切換機構20を配設するためのスペースを記録ヘッド保守領域X2の外側に設ける必要がない。また、ドット形成領域X1と記録ヘッド保守領域X2との境界近傍においてキャリッジ10と駆動力伝達切換機構20とが係合することになるので、キャリッジ10の可動領域を記録ヘッド保守領域X2の外側に拡張する必要がなくなる。そして駆動力伝達切換機構20は、キャリッジ10による動作の前後で駆動力伝達の駆動OFF状態を維持する動作モードを有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定方向へ往復動可能に支持され、被記録材の記録面にドットを形成する記録ヘッドを搭載したキャリッジを備えた記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動力源の駆動力が被駆動機構へ伝達される状態と伝達されない状態とを切換可能な駆動力伝達切換機構を備えた記録装置において、駆動力伝達切換機構の切換動作にキャリッジを利用する記録装置が公知である。例えば、キャリッジでレバー等を押動してクラッチ機構を動作させることにより給紙機構の切換が可能になるプリンターが公知である(例えば、特許文献1を参照)。このようなキャリッジを利用した駆動力伝達切換機構によれば、駆動力伝達切換機構を動作させるための専用モーターが不要になるため、駆動力伝達切換機構を備えた記録装置をより低コストに実現することが可能になる。
【0003】
このようなキャリッジを利用した駆動力伝達切換機構を備えた従来の記録装置は、例えば、キャリッジの往復動方向における記録ヘッドのドット形成領域(被記録材の記録面にドットを形成する領域)に隣接して駆動力伝達切換機構が配設されているとともに、そのドット形成領域より外側へ移動可能にキャリッジの可動領域が拡張されている。このような記録装置においては、ドット形成領域の外側の拡張領域にキャリッジを移動させることによって、キャリッジと駆動力伝達切換機構とが係合し、その状態において駆動力伝達の切換動作が可能になる(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
また、いわゆるフラッシング動作やワイピング動作等の記録ヘッドの保守動作がドット形成制御の合間に行われる記録装置においては、ドット形成領域の外側にこれらの保守動作を行うための記録ヘッド保守領域が設けられる。したがって、このような記録装置において従来は、ドット形成領域外側の記録ヘッド保守領域のさらに外側に駆動力伝達切換機構を配設する必要があるとともに、そのドット形成領域の外側の記録ヘッド保守領域よりさらに外側へ移動可能にキャリッジの可動範囲を拡張する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように従来の記録装置は、被記録材に記録を実行するために必要なキャリッジの移動領域(ドット形成領域及び記録ヘッド保守領域)のさらに外側にキャリッジの可動領域を拡張し、その拡張領域においてキャリッジと駆動力伝達切換機構とが係合するように構成されている。つまり従来の記録装置は、記録制御中にキャリッジが移動する領域と、キャリッジを利用して駆動力伝達切換機構の切換動作を行う領域とが完全に分離されていて重なり合っていない。そのため従来の記録装置は、キャリッジの往復動作による記録制御とキャリッジを利用した駆動力伝達切換機構の切換制御とが干渉しないというメリットがある。
【0006】
しかしながら従来の記録装置は、被記録材に記録を実行するために必要なキャリッジの移動領域の外側に駆動力伝達切換機構が配設されている。そして、それに伴って、被記録材に記録を実行するために必要なキャリッジの移動領域のさらに外側にキャリッジの可動領域を拡張する必要がある。そのため従来の記録装置は、少なくともキャリッジの可動領域を拡張した分だけキャリッジの可動領域が長くなることになり、その結果、記録装置が大型化してしまうという課題が生ずることになる。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、本発明に係る幾つかの態様が解決する課題は、キャリッジを利用した駆動力伝達切換機構を備えた記録装置において、記録装置が大型化する虞を低減させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、所定方向へ往復動可能に支持され、被記録材の記録面にドットを形成する記録ヘッドを搭載したキャリッジと、前記キャリッジが係合することにより、駆動力源の駆動力が被駆動機構へ伝達される状態と伝達されない状態とを切換可能な駆動力伝達切換機構と、を備えた記録装置において、前記キャリッジの往復動方向の可動領域は、前記記録ヘッドにより被記録材の記録面にドットを形成するドット形成領域と、前記ドット形成領域に隣接して設けられる前記記録ヘッドの保守動作を行う記録ヘッド保守領域とを含み、前記駆動力伝達切換機構は、前記駆動力伝達状態が切り換わる切換動作モードと前記駆動力伝達状態が維持される維持動作モードとを有し、前記切換動作モードは、前記ドット形成領域から前記記録ヘッド保守領域内の第1切換位置にキャリッジが移動した後、当該キャリッジが前記ドット形成領域へ移動すると実行されるモードであり、前記維持動作モードは、前記ドット形成領域から前記記録ヘッド保守領域内の第2切換位置に前記キャリッジが移動した後、当該キャリッジが前記ドット形成領域へ移動すると実行されるモードである、ことを特徴とした記録装置である。
【0009】
ドット形成領域と記録ヘッド保守領域との境界近傍に駆動力伝達切換機構を配設すれば、従来よりも記録装置を小型化することが可能になる。他方、ドット形成領域と記録ヘッド保守領域との境界近傍においてキャリッジと駆動力伝達切換機構とが係合する構成を採用することに伴い、ドット形成制御の合間に行われる記録ヘッドの保守動作の際には、ドット形成領域から記録ヘッド保守領域へ一時的にキャリッジが移動するため、そのときに駆動ON/OFF切換が不必要に発生する虞が生ずることになる。
【0010】
このような記録実行中における不必要な駆動ON/OFF切換が発生することを回避するために、本発明に係る駆動力伝達切換機構は、維持動作モードを有している。そして、駆動力伝達切換機構を動作させる際のキャリッジの折り返し位置を第1切換位置又は第2切換位置のいずれの位置に設定するかによって、切換動作モード又は維持動作モードのいずれかの動作モードを選択することができる。
【0011】
そして、維持動作モードによれば、キャリッジの移動により駆動力伝達切換機構が動作しても、当該動作の前の駆動力伝達状態を維持することができる。したがって、記録実行中に駆動力伝達切換機構において不必要な駆動ON/OFF切換が発生することを回避することができる。例えば、いわゆるフラッシング動作やワイピング動作等の記録ヘッドの保守動作をドット形成制御の合間に行う場合には、ドット形成領域から記録ヘッド保守領域内の第2切換位置にキャリッジを移動させた後、当該キャリッジをドット形成領域へ移動させれば良い。キャリッジが駆動力伝達切換機構と係合しても、その前後で駆動力伝達状態が切り換わらずに維持される(維持動作モード)。したがって、記録実行中にフラッシング動作やワイピング動作等を行うために記録ヘッドを一時的に記録ヘッド保守領域に移動させた際に、駆動力伝達切換機構において不必要な駆動ON/OFF切換が発生することを回避することができる。
【0012】
これにより本発明の第1の態様に記載の記録装置によれば、キャリッジを利用した駆動力伝達切換機構を備えた記録装置において、記録装置が大型化する虞を低減できるという作用効果が得られる。
【0013】
本発明の第2の態様は、前述した第1の態様に記載の記録装置において、前記切換動作モードは、前記駆動力源の駆動力が前記被駆動機構へ伝達されない状態から伝達される状態へ切り換わるモードであり、前記維持動作モードは、前記駆動力源の駆動力が前記被駆動機構へ伝達されない状態から伝達されない状態を維持する維持動作モードであることを特徴とした記録装置である。
【0014】
このような特徴によれば、維持動作モードにおいては、キャリッジの移動により駆動力伝達切換機構が動作しても、駆動力源の駆動力が被駆動機構へ伝達されない状態を当該動作の前後で維持することができる。例えば、記録実行中の合間に記録ヘッドの保守動作を行っても、その動作の前後で、給送装置等が当該駆動力源の駆動力で動作しない状態を維持することができる。
【0015】
本発明の第3の態様は、所定方向へ往復動可能に支持され、被記録材の記録面にドットを形成する記録ヘッドを搭載したキャリッジと、駆動力源の駆動力が被駆動機構へ伝達される状態と伝達されない状態とを切換可能な駆動力伝達切換機構と、を備えた記録装置において、前記キャリッジの往復動方向の可動領域は、前記記録ヘッドにより被記録材の記録面にドットを形成するドット形成領域と、前記ドット形成領域に隣接して設けられる記録ヘッド保守領域とを含み、前記駆動力伝達切換機構は、フェースカム部材と、前記キャリッジの往復動方向へ移動可能に支持され、前記キャリッジと係合するフォロア部材とによるカムフォロア機構と、前記ドット形成領域側へ前記フォロア部材を付勢する付勢手段と、を有し、前記付勢手段による付勢力に抗して前記キャリッジで前記記録ヘッド保守領域側へ前記フォロア部材を押動した後、前記ドット形成領域側へ当該キャリッジが移動して前記フォロア部材から離間することにより動作し、前記フェースカム部材は、前記フォロア部材の凸部が摺接係合する第1カム溝、第2カム溝、第3カム溝及び第4カム溝を有し、前記キャリッジが、前記記録ヘッド保守領域側へ移動する際は、前記第1カム溝、前記第2カム溝、前記第3カム溝及び前記第4カム溝と前記凸部が順次係合し、前記第1カム溝の前記ドット形成領域側には、前記付勢力により前記凸部が係合される第1係止部が形成され、前記第1カム溝と前記第2カム溝との間には、前記付勢力により前記凸部が係合される第2係止部が形成され、前記第3カム溝と前記第2カム溝との間には、前記凸部の前記第3カム溝から第2カム溝への進入を規制する第1案内壁が形成され、前記第3カム溝は、第5カム溝により前記第1カム溝に案内され、前記第4カム溝と前記第3カム溝との間には、前記凸部の前記第4カム溝から第3カム溝への進入を規制する第2案内壁が形成され、前記第4カム溝は、第6カム溝により前記第2カム溝に案内され、前記キャリッジが、前記ドット形成領域側へ移動する際、前記第3カム溝に係合した前記凸部は、前記第1カム溝に案内され、前記第4カム溝に係合した前記凸部は、前記第2カム溝に案内され、前記フォロア部材の凸部が前記第1の係止部に係止された状態で前記駆動力源の駆動力が前記被駆動機構へ伝達され、前記フォロア部材の凸部が前記第2の係止部に係止された状態で前記駆動力源の駆動力が前記被駆動機構へ伝達されないことを特徴とした記録装置である。
【0016】
前記の通り、ドット形成領域と記録ヘッド保守領域との境界近傍に駆動力伝達切換機構が配設されているので、従来よりも記録装置を小型化することが可能になる。他方、ドット形成領域と記録ヘッド保守領域との境界近傍においてキャリッジと駆動力伝達切換機構とが係合する構成を採用したことに伴い、ドット形成制御の合間に行われる記録ヘッドの保守動作の際には、ドット形成領域から記録ヘッド保守領域へ一時的にキャリッジが移動するため、そのときに駆動ON/OFF切換が不必要に発生する虞が生ずることになる。
【0017】
駆動力伝達切換機構の動作は、付勢手段による付勢力に抗してキャリッジで記録ヘッド保守領域側へフォロア部材を押動した後、ドット形成領域側へ当該キャリッジが移動してフォロア部材から離間することにより行われる。
【0018】
まず、フォロア部材の凸部が第1係止部に係止された状態では、駆動力源の駆動力が被駆動機構へ伝達される状態(以下、「駆動ON状態」という。)になる。他方、フォロア部材の凸部が第2係止部に係止された状態では、駆動力源の駆動力が被駆動機構へ伝達されない状態(以下、「駆動OFF状態」という。)になる。したがって、第1カム溝の第1係止部に係止された状態のフォロア部材の凸部が第2カム溝に進入する位置まで、キャリッジを記録ヘッド保守領域側へ移動させた後、当該キャリッジをドット形成領域側へ移動させることによって、フォロア部材の凸部は第2係止部に係止された状態になり、駆動ON状態から駆動OFF状態へ移行させることができる。
【0019】
また、第2係止部に係止された状態(駆動OFF状態)のフォロア部材の凸部が第3カム溝に進入する位置まで、キャリッジを記録ヘッド保守領域側へ移動させた後、当該キャリッジをドット形成領域側へ移動させる。それによって、フォロア部材の凸部は、付勢手段による付勢力によって、第1案内壁により第3カム溝から第5カム溝へ案内され、第5カム溝により第1カム溝に案内されて第1係止部に到達し、第1係止部に係止された状態(駆動ON状態)になる。つまり、駆動OFF状態から駆動ON状態へ移行させることができる。
【0020】
さらに、第1係止部に係止された状態(駆動ON状態)のフォロア部材の凸部が第1カム溝から第2カム溝に進入し、さらに第3カム溝に進入する位置まで、キャリッジを記録ヘッド保守領域側へ移動させた後、当該キャリッジをドット形成領域側へ移動させる。それによって、フォロア部材の凸部は、付勢手段による付勢力によって、第1案内壁により第3カム溝から第5カム溝へ案内され、第5カム溝により第1カム溝に案内されて再び第1係止部に到達し、第1係止部に係止された状態(駆動ON状態)になる。つまり、動作の前後で駆動ON状態を維持することができる。
【0021】
さらに、第2係止部に係止された状態(駆動OFF状態)のフォロア部材の凸部が第2カム溝から第3カム溝に進入し、さらに第4カム溝に進入する位置まで、キャリッジを記録ヘッド保守領域側へ移動させた後、当該キャリッジをドット形成領域側へ移動させる。それによって、フォロア部材の凸部は、付勢手段による付勢力によって、第2案内壁により第4カム溝から第6カム溝へ案内され、第6カム溝により第2カム溝に案内されて再び第2係止部に到達し、第2係止部に係止された状態(駆動OFF状態)になる。つまり、動作の前後で駆動OFF状態を維持することができる。
【0022】
このように、駆動ON状態から駆動OFF状態へ移行させること、駆動OFF状態から駆動ON状態へ移行させること、動作の前後で駆動ON状態を維持すること、及び動作の前後で駆動OFF状態を維持することが、キャリッジの移動制御だけで自由自在に選択して行うことができる。つまり本発明の第3の態様に記載に記録装置は、ドット形成領域と記録ヘッド保守領域との境界近傍に駆動力伝達切換機構を配設することで記録装置の小型化を実現しつつ、不必要な駆動ON/OFF切換を発生させることなく、記録実行中における駆動力伝達切換機構の切換制御を自由自在に行うことができる。
【0023】
これにより本発明の第3の態様に記載の記録装置によれば、キャリッジを利用した駆動力伝達切換機構を備えた記録装置において、記録装置が大型化する虞を低減できるという作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】インクジェットプリンターを上面側から観た斜視図。
【図2】インクジェットプリンターの一部を拡大図示した斜視図。
【図3】駆動力伝達切換機構の近傍を前面側から拡大図示した斜視図。
【図4】駆動力伝達切換機構の近傍を背面側から拡大図示した斜視図。
【図5】駆動力伝達切換機構の要部を図示した斜視図。
【図6】一部を切り欠き図示したフェースカム部材の斜視図。
【図7】フェースカム部材の平面図及び断面図。
【図8】第1切換動作モードで動作する駆動力伝達切換機構の要部斜視図。
【図9】第2切換動作モードで動作する駆動力伝達切換機構の要部斜視図。
【図10】維持動作モードで動作する駆動力伝達切換機構の要部斜視図。
【図11】動作モードを模式的に図示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
<インクジェットプリンターの概略構成>
まず、本発明に係る「記録装置」としてのインクジェットプリンター50の概略構成について、図1を参照しながら説明する。
図1は、インクジェットプリンター50を上面側から観た斜視図である。
【0027】
インクジェットプリンター50の外装30は、インクジェットプリンター50の外観を構成する筐体である。外装30の前面側には、液晶表示部や操作ボタン等を含む操作部31が設けられている。給紙カセット32は、インクジェットプリンター50の内部に「被記録材」としての記録紙を装填するためのものであり、インクジェットプリンター50の前方側から挿抜可能に配設されている。また外装30の前面側には、記録実行後の記録紙が排出される排出口33が設けられている。排出口33の近傍には、スライド収納式の排出トレイ34が配設されている。
【0028】
インクジェットプリンター50の内部には、記録紙を副走査方向Yへ搬送する手段として、搬送駆動ローラー51及び複数の搬送従動ローラー52が配設されている。搬送駆動ローラー51は、図示していない搬送用モーターの回転駆動力が伝達されて回転する。搬送従動ローラー52は、従動回転可能に軸支され、図示していないばね等の付勢力で搬送駆動ローラー51の外周面に当接している。記録紙は、搬送駆動ローラー51と搬送従動ローラー52とで挟持された状態で、搬送駆動ローラー51の回転により副走査方向Yへ搬送される。
【0029】
搬送駆動ローラー51より副走査方向Yの下流側には、プラテン53が配設されている。プラテン53は、記録ヘッド(図示せず)により記録紙の記録面にドットを形成するドット形成領域X1を含む領域で、搬送駆動ローラー51の回転により副走査方向Yへ搬送される記録紙を摺接支持する。
【0030】
さらにインクジェットプリンター50の内部には、キャリッジ10が主走査方向Xへ往復動可能に支持されて配設されている。キャリッジ10の底部には、ヘッド面がプラテン53に対向する位置に前記の記録ヘッドが配設されている。キャリッジ10は、図示していない無端ベルト等の駆動力伝達手段により、図示していないキャリッジ用モーターの駆動力が伝達され、それによって主走査方向Xへ往復動する。キャリッジ10の位置制御は、公知のリニアエンコーダ(図示せず)の出力信号に基づいてキャリッジ用モーターの回転を制御することにより実行することができる。記録ヘッドのヘッド面には、記録紙の記録面にドットを形成するための多数のインク噴射ノズルが設けられている。記録ヘッドには、キャリッジ10に着脱可能に配設されるインクカートリッジ(図示せず)からインクが供給される。
【0031】
給紙カセット32の記録紙は、図示していない給送装置により搬送駆動ローラー51と搬送従動ローラー52とが当接する部分へ給送される。給送された記録紙は、搬送駆動ローラー51の回転によりプラテン53上を副走査方向Yへ搬送される動作と、主走査方向Xへ往復動する記録ヘッドからインクを噴射されて記録面にドットが形成される動作とが交互に繰り返されることによって記録が実行される。記録実行後の記録紙は、図示していない排出ローラー等で構成される排出装置によって、排出口33から排出される。記録紙の給送制御や搬送制御、キャリッジ10の位置制御、記録ヘッドからのインク噴射制御等は、図示していないマイコン制御回路等で構成された制御装置により実行される。
【0032】
つづいて、インクジェットプリンター50の概略構成について、図2を参照しながらさらに説明する。
図2は、インクジェットプリンター50の一部を拡大図示した斜視図である。
【0033】
キャリッジ10は、主走査方向Xへ往復動可能に、第1支持フレーム11及び第2支持フレーム12に支持されている。キャリッジ10の可動範囲は、ドット形成領域X1と記録ヘッド保守領域X2とを含む。ドット形成領域X1は、キャリッジ10を主走査方向Xへ往復動させながら記録ヘッドのヘッド面からインクを噴射して記録紙の記録面にドットを形成する領域である。記録ヘッド保守領域X2は、ドット形成領域X1の外側に設けられ、図示していないキャッピング装置が配設されている。
【0034】
記録ヘッド保守領域X2に設けられた公知のキャッピング装置は、記録ヘッドの保守を行うための装置であり、記録を実行しない待機時に記録ヘッドのヘッド面の乾燥を防止するためのキャップ、記録ヘッドのヘッド面の余分なインク等を除去するワイピング動作を行うためのワイパー等を有している(図示せず)。また記録実行中には一定のタイミングでフラッシング動作が行われる。このフラッシング動作は、記録実行中にキャリッジ10を記録ヘッド保守領域X2に一時的に移動させ、キャッピング装置のキャップにインクを噴射して打ち捨てる動作である。待機時に記録ヘッドをキャップで封止可能なキャリッジの停止位置は、ホームポジションとして規定される。
【0035】
そして、本発明に係るインクジェットプリンター50は、ドット形成領域X1と記録ヘッド保守領域X2との境界の近傍には、駆動力伝達切換機構20が配設されている。そのため、駆動力伝達切換機構20を配設するためのスペースを記録ヘッド保守領域X2の外側に設ける必要がない。また、ドット形成領域X1と記録ヘッド保守領域X2との境界近傍においてキャリッジ10と駆動力伝達切換機構20とが係合することになるので、キャリッジ10の可動領域を記録ヘッド保守領域X2の外側に拡張する必要がなくなる。したがって、その分だけ従来よりも小型化することが可能になる。
【0036】
<駆動力伝達切換機構20の構成>
つづいて、駆動力伝達切換機構20の構成について、図3〜図5を参照しながら説明する。
図3は、インクジェットプリンター50の駆動力伝達切換機構20の近傍を前面側から拡大図示した斜視図である。図4は、インクジェットプリンター50の駆動力伝達切換機構20の近傍を背面側から拡大図示した斜視図である。図5は、駆動力伝達切換機構20の要部を図示した斜視図である。
【0037】
インクジェットプリンター50は、「駆動力源」としての前記の搬送用モーターを備えている。この搬送用モーターは、例えばDCモーター等であり、搬送駆動ローラー51と前記の給送装置との共用の駆動力源である。搬送用モーターの回転駆動力は、搬送駆動ローラー51に対しては常に伝達可能であり、他方、前記の給送装置に対しては駆動力伝達切換機構20を介して伝達される。駆動力伝達切換機構20は、搬送用モーターの回転駆動力が「被駆動機構」としての給送装置へ伝達される状態と伝達されない状態とを切換可能であり、キャリッジ10が係合することにより動作する。
【0038】
駆動力伝達切換機構20は、フォロア部材21とフェースカム部材23とによるカムフォロア機構を有している。また駆動力伝達切換機構20は、フェースカム部材の支持部材22(以下、「カム支持部材22」という。)、第1コイルばね24、第1歯車25、第2歯車26、第3歯車27及び第2コイルばね28を含む。
【0039】
フォロア部材21は、主走査方向Xへ移動可能に、第1支持フレーム11の長溝111に支持されている。より具体的にはフォロア部材21は、第1支持フレーム11の長溝111にフォロア部材21のガイド部215、216が係合した状態で、主走査方向Xへ移動可能に支持される。「付勢手段」としての第1コイルばね24は、フォロア部材21のばね掛着部212に一端側が掛着され、他端側が第1支持フレーム11に掛着されている。それによって、フォロア部材21は、往路方向XL(主走査方向Xの一方側)へ付勢される。フォロア部材21の操作部211は、キャリッジ10でフォロア部材21を復路方向XR(主走査方向Xの他方側)へ押動するときにキャリッジ10が係合する。フォロア部材21の凸部213(以下、「フォロア凸部213」という。)は、フェースカム部材23のカム溝(後述)と係合する。
【0040】
カム支持部材22は、第1支持フレーム11に支持されている。フェースカム部材23は、主走査方向Xと交差する軸23eを中心として符号Cで示した方向へ揺動可能にカム支持部材22に支持された状態で、ドット形成領域X1と記録ヘッド保守領域X2との境界近傍に配設されている。第2コイルばね28は、フェースカム部材23の軸23eに環装され、フェースカム部材23に対して符号Dで示した方向の付勢力を作用させて、フェースカム部材23をフォロア部材21へ付勢する。
【0041】
第1歯車25は、フォロア部材21の腕部214に回転可能に支持されている。第2歯車26は、前記の給送装置へ回転駆動力を伝達するための歯車である。第3歯車27は、搬送用モーターの回転駆動力が常時伝達される歯車である。第2歯車26と第3歯車27との間で第1歯車25が両者と噛合する状態では、搬送用モーターの回転駆動力が給送装置へ伝達される。他方、その状態からフォロア部材21が復路方向XRへ移動すると、第1歯車25は、第2歯車26及び第3歯車27と噛合しない状態になる。この状態では、搬送用モーターの回転駆動力が給送装置へ伝達されない。
【0042】
<フェースカム部材23の構造>
つづいて、フェースカム部材23の構造について、図6及び図7を参照しながら説明する。
図6は、一部を切り欠き図示したフェースカム部材23の斜視図である。
図7は、フェースカム部材23の平面図及び断面図である。図7(a)は、フェースカム部材23の平面図であり、図7(b)は、フェースカム部材23のA−A矢視断面図であり、図7(c)は、フェースカム部材23のB−B矢視断面図である。
【0043】
フェースカム部材23は、フォロア凸部213が摺接係合するカム溝として、第1カム溝231、第2カム溝235、第3カム溝236、第4カム溝237、第5カム溝238及び第6カム溝239を有している。
【0044】
第1カム溝231は、ドット形成領域X1側の端部に第1係止部232が形成されている。第1カム溝231と第2カム溝235との間には、第2係止部234が形成されている。また第1カム溝231は、第1カム溝231の底面から第2係止部234の上端へ上り斜面となる斜面233が形成されている。第3カム溝236と第2カム溝235との間には、第3カム溝236から第2カム溝235へフォロア凸部213が進入することを規制する案内壁23c(第1案内壁)が形成されている。第4カム溝237と第3カム溝236との間には、第4カム溝237から第3カム溝236へフォロア凸部213が進入することを規制する案内壁23d(第2案内壁)が形成されている。
【0045】
第5カム溝238は、第3カム溝236から第2係止部234を迂回して第1カム溝231まで形成されている。第6カム溝239は、第4カム溝237から第3カム溝236を迂回して第2カム溝235まで形成されている。第5カム溝238と第1カム溝231との境界には、復路方向XRへ移動するフォロア凸部213が第1カム溝231から第5カム溝238へ進入しないように、フォロア凸部213を第2カム溝235へ案内する段差23aが設けられている。第6カム溝239と第2カム溝235との境界には、第2カム溝235から復路方向XRへ移動するフォロア凸部213が第6カム溝239へ進入しないように、フォロア凸部213を第3カム溝236へ案内する段差23bが設けられている。
【0046】
<駆動力伝達切換機構20の動作>
つづいて、駆動力伝達切換機構20の動作について、引き続き図6及び図7も参照しつつ、さらに図8〜図11を参照しながら説明する。
【0047】
駆動力伝達切換機構20の動作は、第1コイルばね24のばね力に抗してキャリッジ10でフォロア部材21を復路方向XR(記録ヘッド保守領域側)へ押動した後、キャリッジ10が往路方向XL(ドット形成領域側)へ移動してフォロア部材21から離間することにより行われる。そして駆動力伝達切換機構20は、キャリッジ10でフォロア部材21を復路方向XRへ押動するときに、どの位置まで復路方向XRへ押動するかによって、複数の動作モードのいずれかを選択することができる。
【0048】
図8は、駆動力伝達切換機構20の要部斜視図であり、第1切換動作モードで動作する状態を図示したものである。以下、駆動力伝達切換機構20の第1切換動作モードによる動作について説明する。
【0049】
フェースカム部材23の第1係止部232にフォロア凸部213が係止された状態では、第2歯車26及び第3歯車27と第1歯車25とが噛合した状態になる。この状態では、搬送用モーターの回転駆動力が給送装置へ伝達される駆動ON状態になる(図8(a))。
【0050】
この状態からキャリッジ10でフォロア部材21を復路方向XRへ押動していく。フォロア凸部213は、第1カム溝231に沿って復路方向XRへ進行し、上り斜面233を乗り越えて第2係止部234を通過し、第2カム溝235に沿って復路方向XRへ進行する。そして、フォロア凸部213が第2係止部234を通過してから第3カム溝236に進入する手前でキャリッジ10を停止させ、キャリッジ10を往路方向XLへ移動させる。フォロア凸部213は、第1コイルばね24のばね力によって第2カム溝235を往路方向XLへ進行し、第2係止部234に係止された状態になる(図7の符号M1)。この状態では、第2歯車26及び第3歯車27と第1歯車25とが噛合しないため、搬送用モーターの回転駆動力が給送装置へ伝達されない駆動OFF状態になる(図8(b))。
【0051】
すなわち第1切換動作モードは、駆動力伝達が駆動ON状態から駆動OFF状態へ移行する動作モードである。例えば、記録紙への記録実行中は、駆動力伝達切換機構20が駆動ON状態にあると、搬送用モーターが回転したときに給送装置が動作するため、記録紙への記録実行中に他の記録紙が給送されてしまい、記録紙の重送が生じてしまうことになる。したがって、記録紙の給送後、その記録紙に記録を開始する前に、第1切換動作モードによる動作を行えば良い。それによって、駆動力伝達切換機構20における給送装置への駆動力の伝達状態を駆動ON状態から駆動OFF状態へ移行させることができるので、上記のような記録紙の重送を回避することができる。
【0052】
図9は、駆動力伝達切換機構20の要部斜視図であり、第2切換動作モードで動作する状態を図示したものである。以下、駆動力伝達切換機構20の第2切換動作モードによる動作について説明する。
【0053】
フェースカム部材23の第2係止部234にフォロア凸部213が係止された状態(駆動OFF状態)から、キャリッジ10でフォロア部材21を復路方向XRへ押動していく。フォロア凸部213は、第2カム溝235に沿って復路方向XRへ進行し、第3カム溝236に進入する(図9(a))。そして、フォロア凸部213が第4カム溝237に進入する手前でキャリッジ10を停止させ、キャリッジ10を往路方向XLへ移動させる。それによってフォロア凸部213は、第1コイルばね24のばね力で往路方向XLへ進行していく。このときフォロア凸部213は、案内壁23cにより第3カム溝236から第5カム溝238へ案内され、それに応じてフェースカム部材23が符号C1で示した方向へ揺動する(図9(b))。第5カム溝238を経由することによって、フォロア凸部213が第2係止部234を迂回して第1カム溝231へ進入し、それに応じてフェースカム部材23が符号C2で示した方向へ揺動する。フォロア凸部213が第1係止部232に係止され、駆動ON状態になる(図9(c))。
【0054】
すなわち第2切換動作モードは、キャリッジ10による動作によって、駆動力伝達が駆動OFF状態から駆動ON状態へ移行する動作モードである。例えば、記録紙を給送するときには、第2切換動作モードによる動作を行えば良い。それによって、駆動力伝達切換機構20における給送装置への駆動力の伝達状態を駆動OFF状態から駆動ON状態へ移行させることができるので、搬送用モーターの回転駆動力で給送装置を動作させて記録紙を給送することが可能な状態になる。
【0055】
尚、上記の第1切換動作モードによる動作と第2切換動作モードによる動作を連続的に実行すれば、キャリッジ10の移動により駆動力伝達切換機構20が動作しても駆動力伝達の駆動ON状態を維持する動作モードを実現することができる。
【0056】
図10は、駆動力伝達切換機構20の要部斜視図であり、維持動作モードで動作する状態を図示したものである。以下、駆動力伝達切換機構20の維持動作モードによる動作について説明する。
【0057】
フェースカム部材23の第2係止部234にフォロア凸部213が係止された状態(駆動OFF状態)から、キャリッジ10でフォロア部材21を復路方向XRへ押動していく(図10(a))。フォロア凸部213は、第2カム溝235に沿って復路方向XRへ進行し、第3カム溝236を通過して第4カム溝237へ進入する(図10(b))。そして、フォロア凸部213が第4カム溝237へ進入した後、キャリッジ10を停止させ、キャリッジ10を往路方向XLへ移動させる。それによってフォロア凸部213は、第1コイルばね24のばね力で往路方向XLへ進行していく。このときフォロア凸部213は、案内壁23dにより第4カム溝237から第6カム溝239へ案内され、それに応じてフェースカム部材23が符号C2で示した方向へ揺動する(図10(c))。第6カム溝239を経由することによって、フォロア凸部213が第3カム溝236を迂回して再び第2カム溝235へ進入する。それによって、フォロア凸部213が再び第2係止部234に係止された状態になるため、駆動OFF状態が維持される(図10(a))。
【0058】
すなわち維持動作モードは、キャリッジ10による動作がなされても駆動力伝達の駆動OFF状態を維持する動作モードである。例えば、記録実行中に記録ヘッド保守領域X2に一時的に記録ヘッドを移動させてフラッシング動作やワイピング動作等を行う際には、駆動力伝達切換機構20が常に動作してしまうことになる。そこで、記録実行中にフラッシング動作やワイピング動作等を行う際には、この維持動作モードで駆動力伝達切換機構20が動作するように、キャリッジ10の移動制御を行えば良い。つまり、フラッシング動作やワイピング動作等の前後あるいはその動作中に、フォロア部材21のフォロア凸部213がフェースカム部材23の第4カム溝237に進入する位置までキャリッジ10を移動させれば良い。維持動作モードは、動作の前後で駆動力伝達の駆動OFF状態を維持することができるので、記録実行中にフラッシング動作やワイピング動作等を行った際に給送装置への駆動力の伝達状態が駆動ON状態になってしまうこと、すなわち不必要な駆動ON/OFF切換が発生することを回避することができる。
【0059】
図11は、動作モードを模式的に図示した説明図である。
【0060】
記録紙の給送動作を開始するときは、第2切換動作モードによる動作を行い、搬送用モーターの回転駆動力が給送装置へ伝達される状態にする(駆動OFF状態→駆動ON状態)。より具体的には、ドット形成領域X1から記録ヘッド保守領域X2内の切換位置P2(第1切換位置)にキャリッジ10を移動させた後、ドット形成領域X1へキャリッジ10を移動させる。この切換位置P2は、フォロア凸部213が第3カム溝236に位置する範囲で任意の位置に設定することができる。
【0061】
給送後の記録紙に記録を実行するときは、記録開始前に第1切換動作モードによる動作を行い、搬送用モーターの回転駆動力が給送装置へ伝達されない状態にする(駆動ON状態→駆動OFF状態)。より具体的には、ドット形成領域X1から記録ヘッド保守領域X2内の切換位置P1にキャリッジ10を移動させた後、ドット形成領域X1へキャリッジ10を移動させる。この切換位置P1は、フォロア凸部213が第2カム溝235に位置する範囲で任意の位置に設定することができる。
【0062】
記録実行中の合間にフラッシング動作又はワイピング動作を実行するときは、維持動作モードによる動作を行い、動作後も搬送用モーターの回転駆動力が給送装置へ伝達されない状態が維持されるようにする(駆動OFF状態→駆動OFF状態)。より具体的には、ドット形成領域X1から記録ヘッド保守領域X2内の切換位置P3(第2切換位置)にキャリッジ10を移動させた後、ドット形成領域X1へキャリッジ10を移動させる。この切換位置P3は、フォロア凸部213が第4カム溝237に位置する範囲で任意の位置に設定することができる。
【0063】
以上説明したように、駆動力伝達切換機構20の動作の際には、キャリッジ10の折り返し位置を切換位置P1〜P3のいずれの位置にするかによって、第1切換動作モード、第2切換動作モード又は維持動作モードのいずれかの動作モードを選択することができる。したがって、不必要な駆動ON/OFF切換を発生させることなく、記録実行中における駆動力伝達切換機構20の切換制御をキャリッジ10の移動制御だけで自由自在に行うことができる。
【0064】
つまり、本発明に係るインクジェットプリンター50は、ドット形成領域X1と記録ヘッド保守領域X2との境界近傍に駆動力伝達切換機構20を配設することでインクジェットプリンター50の小型化を実現しつつ、不必要な駆動ON/OFF切換を発生させることなく、記録実行中における駆動力伝達切換機構20の切換制御を自由自在に行うことができる。したがって本発明によれば、キャリッジ10を利用した駆動力伝達切換機構を備えた記録装置において、記録装置が大型化する虞を低減させることができる。
【0065】
<変形例>
本発明は、上記説明した実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【0066】
例えば、駆動力伝達切換機構を介して駆動力が伝達される「被駆動機構」としては、キャリッジの支持位置を変位させて記録ヘッドのヘッド面とプラテン53の支持面との間隔(PG)を自動的に切り換えるオートPG切換機構でも良い。あるいは、キャッピング装置のポンプ吸引切換機構やポンプON/OFF機構、複数のポンプの切換機構等でも良い。あるいは、光ディスクのラベル面に記録を実行するためのトレイを自動的に搬送するトレイ搬送装置でも良い。あるいは、記録紙のサイズ等に応じて複数の給送トレイを自動的に切り換えるトレイ切換機構でも良い。あるいは、両面記録を自動で行うための自動両面記録ユニット等でも良い。あるいは、ロール紙記録の際に記録後のロール紙を自動的に切断するロール紙切断装置でも良い。
【符号の説明】
【0067】
10 キャリッジ、20 駆動力伝達切換機構、21 フォロア部材、22 カム支持部材、23 フェースカム部材、24 第1コイルばね、25〜27 第1〜第3歯車、28 第2コイルばね、30 インクジェットプリンターの外装(筐体)、50 インクジェットプリンター、51 搬送駆動ローラー、52 搬送従動ローラー、53 プラテン、P1〜P3 切換位置、X 主走査方向、X1 ドット形成領域、X2 記録ヘッド保守領域、XL 往路方向、XR 復路方向、Y 副走査方向、
【先行技術文献】
【特許文献】
【0068】
【特許文献1】特開平6−87242号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定方向へ往復動可能に支持され、被記録材の記録面にドットを形成する記録ヘッドを搭載したキャリッジを備えた記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動力源の駆動力が被駆動機構へ伝達される状態と伝達されない状態とを切換可能な駆動力伝達切換機構を備えた記録装置において、駆動力伝達切換機構の切換動作にキャリッジを利用する記録装置が公知である。例えば、キャリッジでレバー等を押動してクラッチ機構を動作させることにより給紙機構の切換が可能になるプリンターが公知である(例えば、特許文献1を参照)。このようなキャリッジを利用した駆動力伝達切換機構によれば、駆動力伝達切換機構を動作させるための専用モーターが不要になるため、駆動力伝達切換機構を備えた記録装置をより低コストに実現することが可能になる。
【0003】
このようなキャリッジを利用した駆動力伝達切換機構を備えた従来の記録装置は、例えば、キャリッジの往復動方向における記録ヘッドのドット形成領域(被記録材の記録面にドットを形成する領域)に隣接して駆動力伝達切換機構が配設されているとともに、そのドット形成領域より外側へ移動可能にキャリッジの可動領域が拡張されている。このような記録装置においては、ドット形成領域の外側の拡張領域にキャリッジを移動させることによって、キャリッジと駆動力伝達切換機構とが係合し、その状態において駆動力伝達の切換動作が可能になる(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
また、いわゆるフラッシング動作やワイピング動作等の記録ヘッドの保守動作がドット形成制御の合間に行われる記録装置においては、ドット形成領域の外側にこれらの保守動作を行うための記録ヘッド保守領域が設けられる。したがって、このような記録装置において従来は、ドット形成領域外側の記録ヘッド保守領域のさらに外側に駆動力伝達切換機構を配設する必要があるとともに、そのドット形成領域の外側の記録ヘッド保守領域よりさらに外側へ移動可能にキャリッジの可動範囲を拡張する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように従来の記録装置は、被記録材に記録を実行するために必要なキャリッジの移動領域(ドット形成領域及び記録ヘッド保守領域)のさらに外側にキャリッジの可動領域を拡張し、その拡張領域においてキャリッジと駆動力伝達切換機構とが係合するように構成されている。つまり従来の記録装置は、記録制御中にキャリッジが移動する領域と、キャリッジを利用して駆動力伝達切換機構の切換動作を行う領域とが完全に分離されていて重なり合っていない。そのため従来の記録装置は、キャリッジの往復動作による記録制御とキャリッジを利用した駆動力伝達切換機構の切換制御とが干渉しないというメリットがある。
【0006】
しかしながら従来の記録装置は、被記録材に記録を実行するために必要なキャリッジの移動領域の外側に駆動力伝達切換機構が配設されている。そして、それに伴って、被記録材に記録を実行するために必要なキャリッジの移動領域のさらに外側にキャリッジの可動領域を拡張する必要がある。そのため従来の記録装置は、少なくともキャリッジの可動領域を拡張した分だけキャリッジの可動領域が長くなることになり、その結果、記録装置が大型化してしまうという課題が生ずることになる。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、本発明に係る幾つかの態様が解決する課題は、キャリッジを利用した駆動力伝達切換機構を備えた記録装置において、記録装置が大型化する虞を低減させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、所定方向へ往復動可能に支持され、被記録材の記録面にドットを形成する記録ヘッドを搭載したキャリッジと、前記キャリッジが係合することにより、駆動力源の駆動力が被駆動機構へ伝達される状態と伝達されない状態とを切換可能な駆動力伝達切換機構と、を備えた記録装置において、前記キャリッジの往復動方向の可動領域は、前記記録ヘッドにより被記録材の記録面にドットを形成するドット形成領域と、前記ドット形成領域に隣接して設けられる前記記録ヘッドの保守動作を行う記録ヘッド保守領域とを含み、前記駆動力伝達切換機構は、前記駆動力伝達状態が切り換わる切換動作モードと前記駆動力伝達状態が維持される維持動作モードとを有し、前記切換動作モードは、前記ドット形成領域から前記記録ヘッド保守領域内の第1切換位置にキャリッジが移動した後、当該キャリッジが前記ドット形成領域へ移動すると実行されるモードであり、前記維持動作モードは、前記ドット形成領域から前記記録ヘッド保守領域内の第2切換位置に前記キャリッジが移動した後、当該キャリッジが前記ドット形成領域へ移動すると実行されるモードである、ことを特徴とした記録装置である。
【0009】
ドット形成領域と記録ヘッド保守領域との境界近傍に駆動力伝達切換機構を配設すれば、従来よりも記録装置を小型化することが可能になる。他方、ドット形成領域と記録ヘッド保守領域との境界近傍においてキャリッジと駆動力伝達切換機構とが係合する構成を採用することに伴い、ドット形成制御の合間に行われる記録ヘッドの保守動作の際には、ドット形成領域から記録ヘッド保守領域へ一時的にキャリッジが移動するため、そのときに駆動ON/OFF切換が不必要に発生する虞が生ずることになる。
【0010】
このような記録実行中における不必要な駆動ON/OFF切換が発生することを回避するために、本発明に係る駆動力伝達切換機構は、維持動作モードを有している。そして、駆動力伝達切換機構を動作させる際のキャリッジの折り返し位置を第1切換位置又は第2切換位置のいずれの位置に設定するかによって、切換動作モード又は維持動作モードのいずれかの動作モードを選択することができる。
【0011】
そして、維持動作モードによれば、キャリッジの移動により駆動力伝達切換機構が動作しても、当該動作の前の駆動力伝達状態を維持することができる。したがって、記録実行中に駆動力伝達切換機構において不必要な駆動ON/OFF切換が発生することを回避することができる。例えば、いわゆるフラッシング動作やワイピング動作等の記録ヘッドの保守動作をドット形成制御の合間に行う場合には、ドット形成領域から記録ヘッド保守領域内の第2切換位置にキャリッジを移動させた後、当該キャリッジをドット形成領域へ移動させれば良い。キャリッジが駆動力伝達切換機構と係合しても、その前後で駆動力伝達状態が切り換わらずに維持される(維持動作モード)。したがって、記録実行中にフラッシング動作やワイピング動作等を行うために記録ヘッドを一時的に記録ヘッド保守領域に移動させた際に、駆動力伝達切換機構において不必要な駆動ON/OFF切換が発生することを回避することができる。
【0012】
これにより本発明の第1の態様に記載の記録装置によれば、キャリッジを利用した駆動力伝達切換機構を備えた記録装置において、記録装置が大型化する虞を低減できるという作用効果が得られる。
【0013】
本発明の第2の態様は、前述した第1の態様に記載の記録装置において、前記切換動作モードは、前記駆動力源の駆動力が前記被駆動機構へ伝達されない状態から伝達される状態へ切り換わるモードであり、前記維持動作モードは、前記駆動力源の駆動力が前記被駆動機構へ伝達されない状態から伝達されない状態を維持する維持動作モードであることを特徴とした記録装置である。
【0014】
このような特徴によれば、維持動作モードにおいては、キャリッジの移動により駆動力伝達切換機構が動作しても、駆動力源の駆動力が被駆動機構へ伝達されない状態を当該動作の前後で維持することができる。例えば、記録実行中の合間に記録ヘッドの保守動作を行っても、その動作の前後で、給送装置等が当該駆動力源の駆動力で動作しない状態を維持することができる。
【0015】
本発明の第3の態様は、所定方向へ往復動可能に支持され、被記録材の記録面にドットを形成する記録ヘッドを搭載したキャリッジと、駆動力源の駆動力が被駆動機構へ伝達される状態と伝達されない状態とを切換可能な駆動力伝達切換機構と、を備えた記録装置において、前記キャリッジの往復動方向の可動領域は、前記記録ヘッドにより被記録材の記録面にドットを形成するドット形成領域と、前記ドット形成領域に隣接して設けられる記録ヘッド保守領域とを含み、前記駆動力伝達切換機構は、フェースカム部材と、前記キャリッジの往復動方向へ移動可能に支持され、前記キャリッジと係合するフォロア部材とによるカムフォロア機構と、前記ドット形成領域側へ前記フォロア部材を付勢する付勢手段と、を有し、前記付勢手段による付勢力に抗して前記キャリッジで前記記録ヘッド保守領域側へ前記フォロア部材を押動した後、前記ドット形成領域側へ当該キャリッジが移動して前記フォロア部材から離間することにより動作し、前記フェースカム部材は、前記フォロア部材の凸部が摺接係合する第1カム溝、第2カム溝、第3カム溝及び第4カム溝を有し、前記キャリッジが、前記記録ヘッド保守領域側へ移動する際は、前記第1カム溝、前記第2カム溝、前記第3カム溝及び前記第4カム溝と前記凸部が順次係合し、前記第1カム溝の前記ドット形成領域側には、前記付勢力により前記凸部が係合される第1係止部が形成され、前記第1カム溝と前記第2カム溝との間には、前記付勢力により前記凸部が係合される第2係止部が形成され、前記第3カム溝と前記第2カム溝との間には、前記凸部の前記第3カム溝から第2カム溝への進入を規制する第1案内壁が形成され、前記第3カム溝は、第5カム溝により前記第1カム溝に案内され、前記第4カム溝と前記第3カム溝との間には、前記凸部の前記第4カム溝から第3カム溝への進入を規制する第2案内壁が形成され、前記第4カム溝は、第6カム溝により前記第2カム溝に案内され、前記キャリッジが、前記ドット形成領域側へ移動する際、前記第3カム溝に係合した前記凸部は、前記第1カム溝に案内され、前記第4カム溝に係合した前記凸部は、前記第2カム溝に案内され、前記フォロア部材の凸部が前記第1の係止部に係止された状態で前記駆動力源の駆動力が前記被駆動機構へ伝達され、前記フォロア部材の凸部が前記第2の係止部に係止された状態で前記駆動力源の駆動力が前記被駆動機構へ伝達されないことを特徴とした記録装置である。
【0016】
前記の通り、ドット形成領域と記録ヘッド保守領域との境界近傍に駆動力伝達切換機構が配設されているので、従来よりも記録装置を小型化することが可能になる。他方、ドット形成領域と記録ヘッド保守領域との境界近傍においてキャリッジと駆動力伝達切換機構とが係合する構成を採用したことに伴い、ドット形成制御の合間に行われる記録ヘッドの保守動作の際には、ドット形成領域から記録ヘッド保守領域へ一時的にキャリッジが移動するため、そのときに駆動ON/OFF切換が不必要に発生する虞が生ずることになる。
【0017】
駆動力伝達切換機構の動作は、付勢手段による付勢力に抗してキャリッジで記録ヘッド保守領域側へフォロア部材を押動した後、ドット形成領域側へ当該キャリッジが移動してフォロア部材から離間することにより行われる。
【0018】
まず、フォロア部材の凸部が第1係止部に係止された状態では、駆動力源の駆動力が被駆動機構へ伝達される状態(以下、「駆動ON状態」という。)になる。他方、フォロア部材の凸部が第2係止部に係止された状態では、駆動力源の駆動力が被駆動機構へ伝達されない状態(以下、「駆動OFF状態」という。)になる。したがって、第1カム溝の第1係止部に係止された状態のフォロア部材の凸部が第2カム溝に進入する位置まで、キャリッジを記録ヘッド保守領域側へ移動させた後、当該キャリッジをドット形成領域側へ移動させることによって、フォロア部材の凸部は第2係止部に係止された状態になり、駆動ON状態から駆動OFF状態へ移行させることができる。
【0019】
また、第2係止部に係止された状態(駆動OFF状態)のフォロア部材の凸部が第3カム溝に進入する位置まで、キャリッジを記録ヘッド保守領域側へ移動させた後、当該キャリッジをドット形成領域側へ移動させる。それによって、フォロア部材の凸部は、付勢手段による付勢力によって、第1案内壁により第3カム溝から第5カム溝へ案内され、第5カム溝により第1カム溝に案内されて第1係止部に到達し、第1係止部に係止された状態(駆動ON状態)になる。つまり、駆動OFF状態から駆動ON状態へ移行させることができる。
【0020】
さらに、第1係止部に係止された状態(駆動ON状態)のフォロア部材の凸部が第1カム溝から第2カム溝に進入し、さらに第3カム溝に進入する位置まで、キャリッジを記録ヘッド保守領域側へ移動させた後、当該キャリッジをドット形成領域側へ移動させる。それによって、フォロア部材の凸部は、付勢手段による付勢力によって、第1案内壁により第3カム溝から第5カム溝へ案内され、第5カム溝により第1カム溝に案内されて再び第1係止部に到達し、第1係止部に係止された状態(駆動ON状態)になる。つまり、動作の前後で駆動ON状態を維持することができる。
【0021】
さらに、第2係止部に係止された状態(駆動OFF状態)のフォロア部材の凸部が第2カム溝から第3カム溝に進入し、さらに第4カム溝に進入する位置まで、キャリッジを記録ヘッド保守領域側へ移動させた後、当該キャリッジをドット形成領域側へ移動させる。それによって、フォロア部材の凸部は、付勢手段による付勢力によって、第2案内壁により第4カム溝から第6カム溝へ案内され、第6カム溝により第2カム溝に案内されて再び第2係止部に到達し、第2係止部に係止された状態(駆動OFF状態)になる。つまり、動作の前後で駆動OFF状態を維持することができる。
【0022】
このように、駆動ON状態から駆動OFF状態へ移行させること、駆動OFF状態から駆動ON状態へ移行させること、動作の前後で駆動ON状態を維持すること、及び動作の前後で駆動OFF状態を維持することが、キャリッジの移動制御だけで自由自在に選択して行うことができる。つまり本発明の第3の態様に記載に記録装置は、ドット形成領域と記録ヘッド保守領域との境界近傍に駆動力伝達切換機構を配設することで記録装置の小型化を実現しつつ、不必要な駆動ON/OFF切換を発生させることなく、記録実行中における駆動力伝達切換機構の切換制御を自由自在に行うことができる。
【0023】
これにより本発明の第3の態様に記載の記録装置によれば、キャリッジを利用した駆動力伝達切換機構を備えた記録装置において、記録装置が大型化する虞を低減できるという作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】インクジェットプリンターを上面側から観た斜視図。
【図2】インクジェットプリンターの一部を拡大図示した斜視図。
【図3】駆動力伝達切換機構の近傍を前面側から拡大図示した斜視図。
【図4】駆動力伝達切換機構の近傍を背面側から拡大図示した斜視図。
【図5】駆動力伝達切換機構の要部を図示した斜視図。
【図6】一部を切り欠き図示したフェースカム部材の斜視図。
【図7】フェースカム部材の平面図及び断面図。
【図8】第1切換動作モードで動作する駆動力伝達切換機構の要部斜視図。
【図9】第2切換動作モードで動作する駆動力伝達切換機構の要部斜視図。
【図10】維持動作モードで動作する駆動力伝達切換機構の要部斜視図。
【図11】動作モードを模式的に図示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
<インクジェットプリンターの概略構成>
まず、本発明に係る「記録装置」としてのインクジェットプリンター50の概略構成について、図1を参照しながら説明する。
図1は、インクジェットプリンター50を上面側から観た斜視図である。
【0027】
インクジェットプリンター50の外装30は、インクジェットプリンター50の外観を構成する筐体である。外装30の前面側には、液晶表示部や操作ボタン等を含む操作部31が設けられている。給紙カセット32は、インクジェットプリンター50の内部に「被記録材」としての記録紙を装填するためのものであり、インクジェットプリンター50の前方側から挿抜可能に配設されている。また外装30の前面側には、記録実行後の記録紙が排出される排出口33が設けられている。排出口33の近傍には、スライド収納式の排出トレイ34が配設されている。
【0028】
インクジェットプリンター50の内部には、記録紙を副走査方向Yへ搬送する手段として、搬送駆動ローラー51及び複数の搬送従動ローラー52が配設されている。搬送駆動ローラー51は、図示していない搬送用モーターの回転駆動力が伝達されて回転する。搬送従動ローラー52は、従動回転可能に軸支され、図示していないばね等の付勢力で搬送駆動ローラー51の外周面に当接している。記録紙は、搬送駆動ローラー51と搬送従動ローラー52とで挟持された状態で、搬送駆動ローラー51の回転により副走査方向Yへ搬送される。
【0029】
搬送駆動ローラー51より副走査方向Yの下流側には、プラテン53が配設されている。プラテン53は、記録ヘッド(図示せず)により記録紙の記録面にドットを形成するドット形成領域X1を含む領域で、搬送駆動ローラー51の回転により副走査方向Yへ搬送される記録紙を摺接支持する。
【0030】
さらにインクジェットプリンター50の内部には、キャリッジ10が主走査方向Xへ往復動可能に支持されて配設されている。キャリッジ10の底部には、ヘッド面がプラテン53に対向する位置に前記の記録ヘッドが配設されている。キャリッジ10は、図示していない無端ベルト等の駆動力伝達手段により、図示していないキャリッジ用モーターの駆動力が伝達され、それによって主走査方向Xへ往復動する。キャリッジ10の位置制御は、公知のリニアエンコーダ(図示せず)の出力信号に基づいてキャリッジ用モーターの回転を制御することにより実行することができる。記録ヘッドのヘッド面には、記録紙の記録面にドットを形成するための多数のインク噴射ノズルが設けられている。記録ヘッドには、キャリッジ10に着脱可能に配設されるインクカートリッジ(図示せず)からインクが供給される。
【0031】
給紙カセット32の記録紙は、図示していない給送装置により搬送駆動ローラー51と搬送従動ローラー52とが当接する部分へ給送される。給送された記録紙は、搬送駆動ローラー51の回転によりプラテン53上を副走査方向Yへ搬送される動作と、主走査方向Xへ往復動する記録ヘッドからインクを噴射されて記録面にドットが形成される動作とが交互に繰り返されることによって記録が実行される。記録実行後の記録紙は、図示していない排出ローラー等で構成される排出装置によって、排出口33から排出される。記録紙の給送制御や搬送制御、キャリッジ10の位置制御、記録ヘッドからのインク噴射制御等は、図示していないマイコン制御回路等で構成された制御装置により実行される。
【0032】
つづいて、インクジェットプリンター50の概略構成について、図2を参照しながらさらに説明する。
図2は、インクジェットプリンター50の一部を拡大図示した斜視図である。
【0033】
キャリッジ10は、主走査方向Xへ往復動可能に、第1支持フレーム11及び第2支持フレーム12に支持されている。キャリッジ10の可動範囲は、ドット形成領域X1と記録ヘッド保守領域X2とを含む。ドット形成領域X1は、キャリッジ10を主走査方向Xへ往復動させながら記録ヘッドのヘッド面からインクを噴射して記録紙の記録面にドットを形成する領域である。記録ヘッド保守領域X2は、ドット形成領域X1の外側に設けられ、図示していないキャッピング装置が配設されている。
【0034】
記録ヘッド保守領域X2に設けられた公知のキャッピング装置は、記録ヘッドの保守を行うための装置であり、記録を実行しない待機時に記録ヘッドのヘッド面の乾燥を防止するためのキャップ、記録ヘッドのヘッド面の余分なインク等を除去するワイピング動作を行うためのワイパー等を有している(図示せず)。また記録実行中には一定のタイミングでフラッシング動作が行われる。このフラッシング動作は、記録実行中にキャリッジ10を記録ヘッド保守領域X2に一時的に移動させ、キャッピング装置のキャップにインクを噴射して打ち捨てる動作である。待機時に記録ヘッドをキャップで封止可能なキャリッジの停止位置は、ホームポジションとして規定される。
【0035】
そして、本発明に係るインクジェットプリンター50は、ドット形成領域X1と記録ヘッド保守領域X2との境界の近傍には、駆動力伝達切換機構20が配設されている。そのため、駆動力伝達切換機構20を配設するためのスペースを記録ヘッド保守領域X2の外側に設ける必要がない。また、ドット形成領域X1と記録ヘッド保守領域X2との境界近傍においてキャリッジ10と駆動力伝達切換機構20とが係合することになるので、キャリッジ10の可動領域を記録ヘッド保守領域X2の外側に拡張する必要がなくなる。したがって、その分だけ従来よりも小型化することが可能になる。
【0036】
<駆動力伝達切換機構20の構成>
つづいて、駆動力伝達切換機構20の構成について、図3〜図5を参照しながら説明する。
図3は、インクジェットプリンター50の駆動力伝達切換機構20の近傍を前面側から拡大図示した斜視図である。図4は、インクジェットプリンター50の駆動力伝達切換機構20の近傍を背面側から拡大図示した斜視図である。図5は、駆動力伝達切換機構20の要部を図示した斜視図である。
【0037】
インクジェットプリンター50は、「駆動力源」としての前記の搬送用モーターを備えている。この搬送用モーターは、例えばDCモーター等であり、搬送駆動ローラー51と前記の給送装置との共用の駆動力源である。搬送用モーターの回転駆動力は、搬送駆動ローラー51に対しては常に伝達可能であり、他方、前記の給送装置に対しては駆動力伝達切換機構20を介して伝達される。駆動力伝達切換機構20は、搬送用モーターの回転駆動力が「被駆動機構」としての給送装置へ伝達される状態と伝達されない状態とを切換可能であり、キャリッジ10が係合することにより動作する。
【0038】
駆動力伝達切換機構20は、フォロア部材21とフェースカム部材23とによるカムフォロア機構を有している。また駆動力伝達切換機構20は、フェースカム部材の支持部材22(以下、「カム支持部材22」という。)、第1コイルばね24、第1歯車25、第2歯車26、第3歯車27及び第2コイルばね28を含む。
【0039】
フォロア部材21は、主走査方向Xへ移動可能に、第1支持フレーム11の長溝111に支持されている。より具体的にはフォロア部材21は、第1支持フレーム11の長溝111にフォロア部材21のガイド部215、216が係合した状態で、主走査方向Xへ移動可能に支持される。「付勢手段」としての第1コイルばね24は、フォロア部材21のばね掛着部212に一端側が掛着され、他端側が第1支持フレーム11に掛着されている。それによって、フォロア部材21は、往路方向XL(主走査方向Xの一方側)へ付勢される。フォロア部材21の操作部211は、キャリッジ10でフォロア部材21を復路方向XR(主走査方向Xの他方側)へ押動するときにキャリッジ10が係合する。フォロア部材21の凸部213(以下、「フォロア凸部213」という。)は、フェースカム部材23のカム溝(後述)と係合する。
【0040】
カム支持部材22は、第1支持フレーム11に支持されている。フェースカム部材23は、主走査方向Xと交差する軸23eを中心として符号Cで示した方向へ揺動可能にカム支持部材22に支持された状態で、ドット形成領域X1と記録ヘッド保守領域X2との境界近傍に配設されている。第2コイルばね28は、フェースカム部材23の軸23eに環装され、フェースカム部材23に対して符号Dで示した方向の付勢力を作用させて、フェースカム部材23をフォロア部材21へ付勢する。
【0041】
第1歯車25は、フォロア部材21の腕部214に回転可能に支持されている。第2歯車26は、前記の給送装置へ回転駆動力を伝達するための歯車である。第3歯車27は、搬送用モーターの回転駆動力が常時伝達される歯車である。第2歯車26と第3歯車27との間で第1歯車25が両者と噛合する状態では、搬送用モーターの回転駆動力が給送装置へ伝達される。他方、その状態からフォロア部材21が復路方向XRへ移動すると、第1歯車25は、第2歯車26及び第3歯車27と噛合しない状態になる。この状態では、搬送用モーターの回転駆動力が給送装置へ伝達されない。
【0042】
<フェースカム部材23の構造>
つづいて、フェースカム部材23の構造について、図6及び図7を参照しながら説明する。
図6は、一部を切り欠き図示したフェースカム部材23の斜視図である。
図7は、フェースカム部材23の平面図及び断面図である。図7(a)は、フェースカム部材23の平面図であり、図7(b)は、フェースカム部材23のA−A矢視断面図であり、図7(c)は、フェースカム部材23のB−B矢視断面図である。
【0043】
フェースカム部材23は、フォロア凸部213が摺接係合するカム溝として、第1カム溝231、第2カム溝235、第3カム溝236、第4カム溝237、第5カム溝238及び第6カム溝239を有している。
【0044】
第1カム溝231は、ドット形成領域X1側の端部に第1係止部232が形成されている。第1カム溝231と第2カム溝235との間には、第2係止部234が形成されている。また第1カム溝231は、第1カム溝231の底面から第2係止部234の上端へ上り斜面となる斜面233が形成されている。第3カム溝236と第2カム溝235との間には、第3カム溝236から第2カム溝235へフォロア凸部213が進入することを規制する案内壁23c(第1案内壁)が形成されている。第4カム溝237と第3カム溝236との間には、第4カム溝237から第3カム溝236へフォロア凸部213が進入することを規制する案内壁23d(第2案内壁)が形成されている。
【0045】
第5カム溝238は、第3カム溝236から第2係止部234を迂回して第1カム溝231まで形成されている。第6カム溝239は、第4カム溝237から第3カム溝236を迂回して第2カム溝235まで形成されている。第5カム溝238と第1カム溝231との境界には、復路方向XRへ移動するフォロア凸部213が第1カム溝231から第5カム溝238へ進入しないように、フォロア凸部213を第2カム溝235へ案内する段差23aが設けられている。第6カム溝239と第2カム溝235との境界には、第2カム溝235から復路方向XRへ移動するフォロア凸部213が第6カム溝239へ進入しないように、フォロア凸部213を第3カム溝236へ案内する段差23bが設けられている。
【0046】
<駆動力伝達切換機構20の動作>
つづいて、駆動力伝達切換機構20の動作について、引き続き図6及び図7も参照しつつ、さらに図8〜図11を参照しながら説明する。
【0047】
駆動力伝達切換機構20の動作は、第1コイルばね24のばね力に抗してキャリッジ10でフォロア部材21を復路方向XR(記録ヘッド保守領域側)へ押動した後、キャリッジ10が往路方向XL(ドット形成領域側)へ移動してフォロア部材21から離間することにより行われる。そして駆動力伝達切換機構20は、キャリッジ10でフォロア部材21を復路方向XRへ押動するときに、どの位置まで復路方向XRへ押動するかによって、複数の動作モードのいずれかを選択することができる。
【0048】
図8は、駆動力伝達切換機構20の要部斜視図であり、第1切換動作モードで動作する状態を図示したものである。以下、駆動力伝達切換機構20の第1切換動作モードによる動作について説明する。
【0049】
フェースカム部材23の第1係止部232にフォロア凸部213が係止された状態では、第2歯車26及び第3歯車27と第1歯車25とが噛合した状態になる。この状態では、搬送用モーターの回転駆動力が給送装置へ伝達される駆動ON状態になる(図8(a))。
【0050】
この状態からキャリッジ10でフォロア部材21を復路方向XRへ押動していく。フォロア凸部213は、第1カム溝231に沿って復路方向XRへ進行し、上り斜面233を乗り越えて第2係止部234を通過し、第2カム溝235に沿って復路方向XRへ進行する。そして、フォロア凸部213が第2係止部234を通過してから第3カム溝236に進入する手前でキャリッジ10を停止させ、キャリッジ10を往路方向XLへ移動させる。フォロア凸部213は、第1コイルばね24のばね力によって第2カム溝235を往路方向XLへ進行し、第2係止部234に係止された状態になる(図7の符号M1)。この状態では、第2歯車26及び第3歯車27と第1歯車25とが噛合しないため、搬送用モーターの回転駆動力が給送装置へ伝達されない駆動OFF状態になる(図8(b))。
【0051】
すなわち第1切換動作モードは、駆動力伝達が駆動ON状態から駆動OFF状態へ移行する動作モードである。例えば、記録紙への記録実行中は、駆動力伝達切換機構20が駆動ON状態にあると、搬送用モーターが回転したときに給送装置が動作するため、記録紙への記録実行中に他の記録紙が給送されてしまい、記録紙の重送が生じてしまうことになる。したがって、記録紙の給送後、その記録紙に記録を開始する前に、第1切換動作モードによる動作を行えば良い。それによって、駆動力伝達切換機構20における給送装置への駆動力の伝達状態を駆動ON状態から駆動OFF状態へ移行させることができるので、上記のような記録紙の重送を回避することができる。
【0052】
図9は、駆動力伝達切換機構20の要部斜視図であり、第2切換動作モードで動作する状態を図示したものである。以下、駆動力伝達切換機構20の第2切換動作モードによる動作について説明する。
【0053】
フェースカム部材23の第2係止部234にフォロア凸部213が係止された状態(駆動OFF状態)から、キャリッジ10でフォロア部材21を復路方向XRへ押動していく。フォロア凸部213は、第2カム溝235に沿って復路方向XRへ進行し、第3カム溝236に進入する(図9(a))。そして、フォロア凸部213が第4カム溝237に進入する手前でキャリッジ10を停止させ、キャリッジ10を往路方向XLへ移動させる。それによってフォロア凸部213は、第1コイルばね24のばね力で往路方向XLへ進行していく。このときフォロア凸部213は、案内壁23cにより第3カム溝236から第5カム溝238へ案内され、それに応じてフェースカム部材23が符号C1で示した方向へ揺動する(図9(b))。第5カム溝238を経由することによって、フォロア凸部213が第2係止部234を迂回して第1カム溝231へ進入し、それに応じてフェースカム部材23が符号C2で示した方向へ揺動する。フォロア凸部213が第1係止部232に係止され、駆動ON状態になる(図9(c))。
【0054】
すなわち第2切換動作モードは、キャリッジ10による動作によって、駆動力伝達が駆動OFF状態から駆動ON状態へ移行する動作モードである。例えば、記録紙を給送するときには、第2切換動作モードによる動作を行えば良い。それによって、駆動力伝達切換機構20における給送装置への駆動力の伝達状態を駆動OFF状態から駆動ON状態へ移行させることができるので、搬送用モーターの回転駆動力で給送装置を動作させて記録紙を給送することが可能な状態になる。
【0055】
尚、上記の第1切換動作モードによる動作と第2切換動作モードによる動作を連続的に実行すれば、キャリッジ10の移動により駆動力伝達切換機構20が動作しても駆動力伝達の駆動ON状態を維持する動作モードを実現することができる。
【0056】
図10は、駆動力伝達切換機構20の要部斜視図であり、維持動作モードで動作する状態を図示したものである。以下、駆動力伝達切換機構20の維持動作モードによる動作について説明する。
【0057】
フェースカム部材23の第2係止部234にフォロア凸部213が係止された状態(駆動OFF状態)から、キャリッジ10でフォロア部材21を復路方向XRへ押動していく(図10(a))。フォロア凸部213は、第2カム溝235に沿って復路方向XRへ進行し、第3カム溝236を通過して第4カム溝237へ進入する(図10(b))。そして、フォロア凸部213が第4カム溝237へ進入した後、キャリッジ10を停止させ、キャリッジ10を往路方向XLへ移動させる。それによってフォロア凸部213は、第1コイルばね24のばね力で往路方向XLへ進行していく。このときフォロア凸部213は、案内壁23dにより第4カム溝237から第6カム溝239へ案内され、それに応じてフェースカム部材23が符号C2で示した方向へ揺動する(図10(c))。第6カム溝239を経由することによって、フォロア凸部213が第3カム溝236を迂回して再び第2カム溝235へ進入する。それによって、フォロア凸部213が再び第2係止部234に係止された状態になるため、駆動OFF状態が維持される(図10(a))。
【0058】
すなわち維持動作モードは、キャリッジ10による動作がなされても駆動力伝達の駆動OFF状態を維持する動作モードである。例えば、記録実行中に記録ヘッド保守領域X2に一時的に記録ヘッドを移動させてフラッシング動作やワイピング動作等を行う際には、駆動力伝達切換機構20が常に動作してしまうことになる。そこで、記録実行中にフラッシング動作やワイピング動作等を行う際には、この維持動作モードで駆動力伝達切換機構20が動作するように、キャリッジ10の移動制御を行えば良い。つまり、フラッシング動作やワイピング動作等の前後あるいはその動作中に、フォロア部材21のフォロア凸部213がフェースカム部材23の第4カム溝237に進入する位置までキャリッジ10を移動させれば良い。維持動作モードは、動作の前後で駆動力伝達の駆動OFF状態を維持することができるので、記録実行中にフラッシング動作やワイピング動作等を行った際に給送装置への駆動力の伝達状態が駆動ON状態になってしまうこと、すなわち不必要な駆動ON/OFF切換が発生することを回避することができる。
【0059】
図11は、動作モードを模式的に図示した説明図である。
【0060】
記録紙の給送動作を開始するときは、第2切換動作モードによる動作を行い、搬送用モーターの回転駆動力が給送装置へ伝達される状態にする(駆動OFF状態→駆動ON状態)。より具体的には、ドット形成領域X1から記録ヘッド保守領域X2内の切換位置P2(第1切換位置)にキャリッジ10を移動させた後、ドット形成領域X1へキャリッジ10を移動させる。この切換位置P2は、フォロア凸部213が第3カム溝236に位置する範囲で任意の位置に設定することができる。
【0061】
給送後の記録紙に記録を実行するときは、記録開始前に第1切換動作モードによる動作を行い、搬送用モーターの回転駆動力が給送装置へ伝達されない状態にする(駆動ON状態→駆動OFF状態)。より具体的には、ドット形成領域X1から記録ヘッド保守領域X2内の切換位置P1にキャリッジ10を移動させた後、ドット形成領域X1へキャリッジ10を移動させる。この切換位置P1は、フォロア凸部213が第2カム溝235に位置する範囲で任意の位置に設定することができる。
【0062】
記録実行中の合間にフラッシング動作又はワイピング動作を実行するときは、維持動作モードによる動作を行い、動作後も搬送用モーターの回転駆動力が給送装置へ伝達されない状態が維持されるようにする(駆動OFF状態→駆動OFF状態)。より具体的には、ドット形成領域X1から記録ヘッド保守領域X2内の切換位置P3(第2切換位置)にキャリッジ10を移動させた後、ドット形成領域X1へキャリッジ10を移動させる。この切換位置P3は、フォロア凸部213が第4カム溝237に位置する範囲で任意の位置に設定することができる。
【0063】
以上説明したように、駆動力伝達切換機構20の動作の際には、キャリッジ10の折り返し位置を切換位置P1〜P3のいずれの位置にするかによって、第1切換動作モード、第2切換動作モード又は維持動作モードのいずれかの動作モードを選択することができる。したがって、不必要な駆動ON/OFF切換を発生させることなく、記録実行中における駆動力伝達切換機構20の切換制御をキャリッジ10の移動制御だけで自由自在に行うことができる。
【0064】
つまり、本発明に係るインクジェットプリンター50は、ドット形成領域X1と記録ヘッド保守領域X2との境界近傍に駆動力伝達切換機構20を配設することでインクジェットプリンター50の小型化を実現しつつ、不必要な駆動ON/OFF切換を発生させることなく、記録実行中における駆動力伝達切換機構20の切換制御を自由自在に行うことができる。したがって本発明によれば、キャリッジ10を利用した駆動力伝達切換機構を備えた記録装置において、記録装置が大型化する虞を低減させることができる。
【0065】
<変形例>
本発明は、上記説明した実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【0066】
例えば、駆動力伝達切換機構を介して駆動力が伝達される「被駆動機構」としては、キャリッジの支持位置を変位させて記録ヘッドのヘッド面とプラテン53の支持面との間隔(PG)を自動的に切り換えるオートPG切換機構でも良い。あるいは、キャッピング装置のポンプ吸引切換機構やポンプON/OFF機構、複数のポンプの切換機構等でも良い。あるいは、光ディスクのラベル面に記録を実行するためのトレイを自動的に搬送するトレイ搬送装置でも良い。あるいは、記録紙のサイズ等に応じて複数の給送トレイを自動的に切り換えるトレイ切換機構でも良い。あるいは、両面記録を自動で行うための自動両面記録ユニット等でも良い。あるいは、ロール紙記録の際に記録後のロール紙を自動的に切断するロール紙切断装置でも良い。
【符号の説明】
【0067】
10 キャリッジ、20 駆動力伝達切換機構、21 フォロア部材、22 カム支持部材、23 フェースカム部材、24 第1コイルばね、25〜27 第1〜第3歯車、28 第2コイルばね、30 インクジェットプリンターの外装(筐体)、50 インクジェットプリンター、51 搬送駆動ローラー、52 搬送従動ローラー、53 プラテン、P1〜P3 切換位置、X 主走査方向、X1 ドット形成領域、X2 記録ヘッド保守領域、XL 往路方向、XR 復路方向、Y 副走査方向、
【先行技術文献】
【特許文献】
【0068】
【特許文献1】特開平6−87242号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向へ往復動可能に支持され、被記録材の記録面にドットを形成する記録ヘッドを搭載したキャリッジと、
前記キャリッジが係合することにより、駆動力源の駆動力が被駆動機構へ伝達される状態と伝達されない状態とを切換可能な駆動力伝達切換機構と、を備えた記録装置において、
前記キャリッジの往復動方向の可動領域は、前記記録ヘッドにより被記録材の記録面にドットを形成するドット形成領域と、前記ドット形成領域に隣接して設けられる前記記録ヘッドの保守動作を行う記録ヘッド保守領域とを含み、
前記駆動力伝達切換機構は、前記駆動力伝達状態が切り換わる切換動作モードと前記駆動力伝達状態が維持される維持動作モードとを有し、前記切換動作モードは、前記ドット形成領域から前記記録ヘッド保守領域内の第1切換位置にキャリッジが移動した後、当該キャリッジが前記ドット形成領域へ移動すると実行されるモードであり、
前記維持動作モードは、前記ドット形成領域から前記記録ヘッド保守領域内の第2切換位置に前記キャリッジが移動した後、当該キャリッジが前記ドット形成領域へ移動すると実行されるモードである、ことを特徴とした記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録装置において、前記切換動作モードは、前記駆動力源の駆動力が前記被駆動機構へ伝達されない状態から伝達される状態へ切り換わるモードであり、
前記維持動作モードは、前記駆動力源の駆動力が前記被駆動機構へ伝達されない状態から伝達されない状態を維持する維持動作モードであることを特徴とした記録装置。
【請求項3】
所定方向へ往復動可能に支持され、被記録材の記録面にドットを形成する記録ヘッドを搭載したキャリッジと、
駆動力源の駆動力が被駆動機構へ伝達される状態と伝達されない状態とを切換可能な駆動力伝達切換機構と、を備えた記録装置において、
前記キャリッジの往復動方向の可動領域は、前記記録ヘッドにより被記録材の記録面にドットを形成するドット形成領域と、前記ドット形成領域に隣接して設けられる記録ヘッド保守領域とを含み、
前記駆動力伝達切換機構は、フェースカム部材と、前記キャリッジの往復動方向へ移動可能に支持され、前記キャリッジと係合するフォロア部材とによるカムフォロア機構と、前記ドット形成領域側へ前記フォロア部材を付勢する付勢手段と、を有し、
前記付勢手段による付勢力に抗して前記キャリッジで前記記録ヘッド保守領域側へ前記フォロア部材を押動した後、前記ドット形成領域側へ当該キャリッジが移動して前記フォロア部材から離間することにより動作し、
前記フェースカム部材は、前記フォロア部材の凸部が摺接係合する第1カム溝、第2カム溝、第3カム溝及び第4カム溝を有し、
前記キャリッジが、前記記録ヘッド保守領域側へ移動する際は、前記第1カム溝、前記第2カム溝、前記第3カム溝及び前記第4カム溝と前記凸部が順次係合し、
前記第1カム溝の前記ドット形成領域側には、前記付勢力により前記凸部が係合される第1係止部が形成され、
前記第1カム溝と前記第2カム溝との間には、前記付勢力により前記凸部が係合される第2係止部が形成され、
前記第3カム溝と前記第2カム溝との間には、前記凸部の前記第3カム溝から第2カム溝への進入を規制する第1案内壁が形成され、前記第3カム溝は、第5カム溝により前記第1カム溝に案内され、
前記第4カム溝と前記第3カム溝との間には、前記凸部の前記第4カム溝から第3カム溝への進入を規制する第2案内壁が形成され、前記第4カム溝は、第6カム溝により前記第2カム溝に案内され、
前記キャリッジが、前記ドット形成領域側へ移動する際、
前記第3カム溝に係合した前記凸部は、前記第1カム溝に案内され、
前記第4カム溝に係合した前記凸部は、前記第2カム溝に案内され、
前記フォロア部材の凸部が前記第1の係止部に係止された状態で前記駆動力源の駆動力が前記被駆動機構へ伝達され、
前記フォロア部材の凸部が前記第2の係止部に係止された状態で前記駆動力源の駆動力が前記被駆動機構へ伝達されないことを特徴とした記録装置。
【請求項1】
所定方向へ往復動可能に支持され、被記録材の記録面にドットを形成する記録ヘッドを搭載したキャリッジと、
前記キャリッジが係合することにより、駆動力源の駆動力が被駆動機構へ伝達される状態と伝達されない状態とを切換可能な駆動力伝達切換機構と、を備えた記録装置において、
前記キャリッジの往復動方向の可動領域は、前記記録ヘッドにより被記録材の記録面にドットを形成するドット形成領域と、前記ドット形成領域に隣接して設けられる前記記録ヘッドの保守動作を行う記録ヘッド保守領域とを含み、
前記駆動力伝達切換機構は、前記駆動力伝達状態が切り換わる切換動作モードと前記駆動力伝達状態が維持される維持動作モードとを有し、前記切換動作モードは、前記ドット形成領域から前記記録ヘッド保守領域内の第1切換位置にキャリッジが移動した後、当該キャリッジが前記ドット形成領域へ移動すると実行されるモードであり、
前記維持動作モードは、前記ドット形成領域から前記記録ヘッド保守領域内の第2切換位置に前記キャリッジが移動した後、当該キャリッジが前記ドット形成領域へ移動すると実行されるモードである、ことを特徴とした記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録装置において、前記切換動作モードは、前記駆動力源の駆動力が前記被駆動機構へ伝達されない状態から伝達される状態へ切り換わるモードであり、
前記維持動作モードは、前記駆動力源の駆動力が前記被駆動機構へ伝達されない状態から伝達されない状態を維持する維持動作モードであることを特徴とした記録装置。
【請求項3】
所定方向へ往復動可能に支持され、被記録材の記録面にドットを形成する記録ヘッドを搭載したキャリッジと、
駆動力源の駆動力が被駆動機構へ伝達される状態と伝達されない状態とを切換可能な駆動力伝達切換機構と、を備えた記録装置において、
前記キャリッジの往復動方向の可動領域は、前記記録ヘッドにより被記録材の記録面にドットを形成するドット形成領域と、前記ドット形成領域に隣接して設けられる記録ヘッド保守領域とを含み、
前記駆動力伝達切換機構は、フェースカム部材と、前記キャリッジの往復動方向へ移動可能に支持され、前記キャリッジと係合するフォロア部材とによるカムフォロア機構と、前記ドット形成領域側へ前記フォロア部材を付勢する付勢手段と、を有し、
前記付勢手段による付勢力に抗して前記キャリッジで前記記録ヘッド保守領域側へ前記フォロア部材を押動した後、前記ドット形成領域側へ当該キャリッジが移動して前記フォロア部材から離間することにより動作し、
前記フェースカム部材は、前記フォロア部材の凸部が摺接係合する第1カム溝、第2カム溝、第3カム溝及び第4カム溝を有し、
前記キャリッジが、前記記録ヘッド保守領域側へ移動する際は、前記第1カム溝、前記第2カム溝、前記第3カム溝及び前記第4カム溝と前記凸部が順次係合し、
前記第1カム溝の前記ドット形成領域側には、前記付勢力により前記凸部が係合される第1係止部が形成され、
前記第1カム溝と前記第2カム溝との間には、前記付勢力により前記凸部が係合される第2係止部が形成され、
前記第3カム溝と前記第2カム溝との間には、前記凸部の前記第3カム溝から第2カム溝への進入を規制する第1案内壁が形成され、前記第3カム溝は、第5カム溝により前記第1カム溝に案内され、
前記第4カム溝と前記第3カム溝との間には、前記凸部の前記第4カム溝から第3カム溝への進入を規制する第2案内壁が形成され、前記第4カム溝は、第6カム溝により前記第2カム溝に案内され、
前記キャリッジが、前記ドット形成領域側へ移動する際、
前記第3カム溝に係合した前記凸部は、前記第1カム溝に案内され、
前記第4カム溝に係合した前記凸部は、前記第2カム溝に案内され、
前記フォロア部材の凸部が前記第1の係止部に係止された状態で前記駆動力源の駆動力が前記被駆動機構へ伝達され、
前記フォロア部材の凸部が前記第2の係止部に係止された状態で前記駆動力源の駆動力が前記被駆動機構へ伝達されないことを特徴とした記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−241011(P2010−241011A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93029(P2009−93029)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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