説明

記録装置

【課題】 排出口から被記録材の排出経路を介して記録実行手段へ手差しで被記録材を給送することを可能にする手差し給送装置を備えた記録装置において、手差し給送装置を介して被記録材を手差し給送する際に、その被記録材に折れ曲がりや損傷等が生ずる虞を低減させる。
【解決手段】 記録実行後の記録紙Pを排出するときには、第2排出駆動ローラー15を正転方向Dへ回転させる。その間は、第2排出駆動ローラー15の外周面が記録紙Pの排出経路に露出する状態が維持される。排出口5から記録紙Pの排出経路を介して記録実行手段へ厚紙等の記録紙Pを手差しで給送する際には、第2排出駆動ローラー15を逆転方向Eへ所定回転量だけ回転させる。それによって、第2排出駆動ローラー15の外周面の排出経路に露出する部分がローラーカバー25のカバー部253で覆われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録材の記録面に記録を実行する記録実行手段と、記録実行後の被記録材を排出口から排出する排出装置と、排出口から被記録材の排出経路を介して記録実行手段へ手差しで被記録材を給送することを可能にする手差し給送装置とを備えた記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるインクジェットプリンター等の記録装置には、普通紙や写真用紙等の被記録材を記録実行手段へ給送するための自動給送装置が設けられている。しかしボード紙や厚紙等の被記録材又はディスク用トレイ等は、撓ませることができないため、一般的な自動給送装置では記録実行手段へ給送することが困難な場合が多い。このような課題を解決可能な従来技術の一例としては、記録実行後の被記録材が排出される排出口から排出経路を介して、ボード紙や厚紙等の被記録材又はディスク用トレイ等を手差し挿入により記録実行手段へ給送することを可能にする手差し給送装置を備えた記録装置が公知である(例えば特許文献1を参照)。このような手差し給送装置を備えた記録装置によれば、自動給送装置では給送することが困難なボード紙や厚紙等の被記録材(以下、「厚紙等」という。)にも記録を実行することが可能になる。また、ディスク用トレイに装着した光ディスクのレーベル面に記録を実行することも可能になる。
【0003】
また記録装置には、記録実行後の被記録材を排出口から排出するための排出装置が設けられているのが通常である。一般的な記録装置の排出装置は、駆動力源の駆動力が伝達されて回転する排出駆動ローラーを有している。この排出駆動ローラーは、外周面と被記録材との接触面に高い摩擦力が作用するように、外周面の摩擦係数が高いゴムローラー等で構成されているのが一般的である。このような排出装置を備えた記録装置において記録実行後の被記録材は、排出経路に露出した排出駆動ローラーの外周面に接した状態で、その排出駆動ローラーが駆動力源の駆動力で回転することによって排出される(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−226590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の記録装置においては、手差し給送装置を介して厚紙等を手差し給送する際に、排出経路に露出している排出駆動ローラー(外周面の摩擦係数が高いゴムローラー)の外周面にその厚紙等の先端が引っ掛かってしまい、スムーズに手差し挿入をすることができない虞が生ずる。また、厚紙等の先端が排出駆動ローラーの外周面に引っ掛かった状態から無理に手差し挿入をしようとすると、その厚紙等の先端近傍に折れ曲がりや損傷、ローラー接触痕の付着等が生ずる虞がある。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、本発明に係る幾つかの態様が解決する課題は、排出口から被記録材の排出経路を介して記録実行手段へ手差しで被記録材を給送することを可能にする手差し給送装置を備えた記録装置において、手差し給送装置を介して被記録材を手差し給送する際に、その被記録材に折れ曲がりや損傷等が生ずる虞を低減させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、被記録材の記録面に記録を実行する記録実行手段と、記録実行後の被記録材を排出口から排出する排出装置と、前記排出口から被記録材の排出経路を介して前記記録実行手段へ手差しで被記録材を給送することを可能にする手差し給送装置と、を備えた記録装置であって、前記排出装置は、駆動力源の駆動力が伝達されて回転する排出駆動ローラーを有し、前記排出駆動ローラーの外周面が前記排出経路に露出する状態と、前記排出駆動ローラーの外周面の前記排出経路に露出する部分がローラーカバーで覆われる状態とを切換可能な構成である、ことを特徴とした記録装置である。
【0008】
排出口から被記録材の排出経路を介して記録実行手段へ手差しで被記録材を給送(以下、単に「手差し給送」という。)する際には、排出駆動ローラーの外周面の排出経路に露出する部分がローラーカバーで覆われる状態に切り換える。それによって、手差し給送装置を介して被記録材を手差し給送する際に、その被記録材が排出駆動ローラーの外周面に接しないようにすることができる。したがって、手差し給送装置を介して被記録材を手差し給送する際に、その被記録材が排出駆動ローラーの外周面に引っ掛かってしまうことを防止することができる。
【0009】
これにより本発明の第1の態様に記載の記録装置によれば、排出口から被記録材の排出経路を介して記録実行手段へ手差しで被記録材を給送することを可能にする手差し給送装置を備えた記録装置において、手差し給送装置を介して被記録材を手差し給送する際に、その被記録材に折れ曲がりや損傷等が生ずる虞を低減させることができるという作用効果が得られる。
【0010】
本発明の第2の態様は、前述した第1の態様に記載の記録装置において、前記排出装置は、前記排出駆動ローラーの外周面に被記録材が接した状態で前記排出駆動ローラーが正転方向へ回転することにより当該被記録材が排出される構成であり、前記排出駆動ローラーの軸部に、一定の回動抵抗をもって回動可能に前記ローラーカバーが軸支されており、前記ローラーカバーの回動範囲を規制する回動規制部を有し、前記排出駆動ローラーが正転方向に回転することによる前記ローラーカバーの正転方向への回動が前記回動規制部により規制された状態では、前記排出駆動ローラーの外周面が前記排出経路に露出し、前記排出駆動ローラーが逆転方向に回転することによる前記ローラーカバーの逆転方向への回動が前記回動規制部により規制された状態では、前記排出駆動ローラーの外周面の前記排出経路に露出する部分が前記ローラーカバーで覆われる、ことを特徴とした記録装置である。
【0011】
排出駆動ローラーを正転方向へ回転させるときには、排出駆動ローラーの外周面が排出経路に露出する状態となるので、排出経路において、記録実行後の被記録材が排出駆動ローラーの外周面に接することになる。したがって、その排出駆動ローラーの正転方向の回転により、その記録実行後の被記録材を排出することができる。他方、排出駆動ローラーを逆転方向へ回転させることによって、排出駆動ローラーの外周面の排出経路に露出する部分がローラーカバーで覆われるので、排出経路において、排出駆動ローラーの外周面に被記録材が接しないようにすることができる。したがって、手差し給送装置を介して被記録材を手差し給送する際に、その被記録材の先端が排出駆動ローラーの外周面に引っ掛かってしまうことを防止することができる。
【0012】
すなわち、本発明の第2の態様に記載の記録装置によれば、排出駆動ローラーの回転方向を切り換えることによって、排出駆動ローラーの外周面が排出経路に露出する状態と、排出駆動ローラーの外周面の排出経路に露出する部分がローラーカバーで覆われる状態とを自動的に切り換えることができる。
【0013】
本発明の第3の態様は、前述した第2の態様に記載の記録装置において、前記手差し給送装置は、手差しで被記録材を給送する際に当該被記録材を支持するための手差し給送用トレイが変位可能に設けられており、前記排出装置は、手差しで給送される被記録材を支持することが可能な位置へ前記手差し給送用トレイを変位させる操作に連動して、前記排出駆動ローラーが所定回転量だけ逆転方向へ回転する、ことを特徴とした記録装置である。
【0014】
このような特徴によれば、手差し給送用トレイを変位させる操作に連動して、排出駆動ローラーの外周面の排出経路に露出する部分がローラーカバーで覆われた状態となる。すなわち、被記録材を手差し給送する際に必要な操作に連動して、排出駆動ローラーの外周面の排出経路に露出する部分が自動的にローラーカバーで覆われた状態となる。したがって被記録材を手差し給送する際に、その被記録材の先端が排出駆動ローラーの外周面に引っ掛かってしまうことをより確実に防止することができる。
【0015】
本発明の第4の態様は、前述した第1〜第3の態様のいずれかに記載の記録装置において、前記ローラーカバーは、前記排出駆動ローラーの外周面の前記排出経路に露出する部分を覆う部分に、前記排出口から手差し給送される被記録材と係合して当該被記録材を前記記録実行手段へ案内する案内部が設けられている、ことを特徴とした記録装置である。
【0016】
このような特徴によれば、排出経路から記録実行手段へ手差し給送される被記録材をよりスムーズかつ確実に記録実行手段へ案内することができる。
【0017】
本発明の第5の態様は、前述した第1〜第4の態様のいずれかに記載の記録装置において、前記排出装置は、従動回転可能に支持され、排出すべき被記録材に接して当該被記録材を前記排出駆動ローラーの外周面に当接させる排出従動ローラーを有し、前記ローラーカバーは、前記排出駆動ローラーの外周面の前記排出経路に露出する部分を覆う部分の前記排出従動ローラーに対応する部分が切り欠かれている、ことを特徴とした記録装置である。
【0018】
このような特徴によれば、排出駆動ローラーの外周面の排出経路に露出する部分をローラーカバーが覆う際に、そのローラーカバーに排出従動ローラーが干渉することを回避することができる。すなわち記録装置の排出装置において、記録実行後の被記録材を排出する際における排出従動ローラーの機能と、被記録材を手差し給送する際におけるローラーカバーの機能とを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】インクジェットプリンターの外観斜視図。
【図2】インクジェットプリンターの要部側面図。
【図3】ローラーカバーが設けられている部分を拡大図示した斜視図。
【図4】排出駆動ローラーがローラーカバーで覆われている状態を図示した斜視図。
【図5】インクジェットプリンターの要部側面図。
【図6】インクジェットプリンターの排出装置近傍を拡大図示した要部側面図。
【図7】ローラーカバーの第2実施例を図示した斜視図。
【図8】ローラーカバーの第3実施例を図示した斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
尚、本発明は、以下説明する実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【0021】
<インクジェットプリンター1の構成>
まず、「記録装置」としてのインクジェットプリンター1の構成について、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、インクジェットプリンター1の外観斜視図である。
インクジェットプリンター1の外装10の前面側には、開閉カバー2、操作パネル4及び排出口5が設けられている。排出口5は、記録実行後の「被記録材」としての記録紙Pが排出され、開閉カバー2は、その排出口5を開閉可能に設けられている。操作パネル4は、インクジェットプリンター1を操作するための複数の操作ボタン及びインクジェットプリンター1の操作状態等を表示する表示部とを含む。またインクジェットプリンター1の後面側には、公知の自動給送装置により記録紙Pを給送する際に記録紙Pを載置するための給送用トレイ3が設けられている。
【0023】
排出口5の内側の下方には、第1トレイ部21及び第2トレイ部22からなる多段スライド構造体が配設されており、開閉カバー2は、その第2トレイ部22の先端に揺動可能に支持されている。記録紙Pに記録を実行する際には、まず開閉カバー2を符号Aで示した方向へ開き、その状態から開閉カバー2を符号Bで示した方向へ引くことにより第1トレイ部21及び第2トレイ部22を符号Bで示した方向へ引き出した状態とする。この状態おいて、排出口5から排出される記録実行後の記録紙Pは、開閉カバー2、第1トレイ部21及び第2トレイ部22により構成される排出トレイに積重される。
【0024】
また排出口5の上方には、手差し給送用トレイ23が変位可能に設けられている。「手差し給送装置」を構成する手差し給送用トレイ23は、排出口5から記録紙Pの排出経路を介して記録実行手段へ厚紙等の記録紙Pを手差しで給送する際に使用され、符号Cで示した方向へ引き出した状態で使用可能な状態となる。
【0025】
図2は、インクジェットプリンター1の要部側面図である。
インクジェットプリンター1は、記録紙Pに記録を実行する「記録実行手段」として、搬送駆動ローラー11、搬送従動ローラー12、記録紙支持部材13及びキャリッジ31を備えている。搬送駆動ローラー11は、外周面に高摩擦被膜が施されており、図示していない搬送用モーターの回転駆動力が伝達されて回転する。搬送従動ローラー12は、従動回転可能にローラーホルダー121に軸支され、ねじりコイルバネ122のばね力により搬送駆動ローラー11に当接する方向へ付勢されている。記録紙支持部材13は記録紙Pを裏面側から支持する。キャリッジ31の底部に設けられた記録ヘッド311のヘッド面と記録紙Pの記録面(記録が実行される面。以下同じ。)との間隔は、この記録紙支持部材13によって一定の間隔に維持される。
【0026】
キャリッジ31は、底部に記録ヘッド311が設けられており、キャリッジガイド軸32及びガイドフレーム33によって主走査方向Xへ往復動可能に支持されている。ここで主走査方向Xは、記録紙支持部材13に支持された状態の記録紙Pの記録面に沿って副走査方向Y(記録紙Pの搬送方向)と交差する方向である。キャリッジガイド軸32は、主走査方向Xに沿って配設された金属軸体からなる部品であり、キャリッジ31の軸受部312を軸支する。ガイドフレーム33は、金属板を曲げ加工等して形成された部品であり、主走査方向Xに沿って配設され、キャリッジ31の被当接部313と摺接係合する。キャリッジ31の背面には、公知のリニアスケールセンサー314が配設されている。
【0027】
キャリッジ31は、キャリッジ駆動用モーター34の駆動プーリー341と従動プーリー35との間に掛架された無端ベルト(図示せず)が連結されている。キャリッジ31は、キャリッジ駆動用モーター34の回転駆動力で無端ベルトを双方向回転させることによって主走査方向Xへ往復動する。記録ヘッド311は、記録紙支持部材13に支持された状態の記録紙Pの記録面にヘッド面が対面するようにキャリッジ31に搭載されている。記録ヘッド311のヘッド面には、記録紙Pの記録面にインクを噴射してドットを形成するための多数の噴射ノズルが配設されている(図示せず)。記録紙Pの記録面に噴射するためのインクは、インクチューブ36を介して記録ヘッド311に供給される。
【0028】
インクジェットプリンター1は、記録実行後の記録紙Pを排出する「排出装置」として、第1排出駆動ローラー14、第2排出駆動ローラー15、第1排出従動ローラー16、第2排出従動ローラー17及び第3排出従動ローラー18を備えている。
第1排出駆動ローラー14及び第2排出駆動ローラー15は、図示していない搬送用モーターの回転駆動力が伝達されて回転する。第1排出従動ローラー16、第2排出従動ローラー17及び第3排出従動ローラー18は、従動回転可能にローラー支持フレーム24に軸支されている。第1排出従動ローラー16は、第1排出駆動ローラー14より上流側に配設され、記録実行後の記録紙Pを第1排出駆動ローラー14の外周面へ案内する。第2排出従動ローラー17は、第1排出駆動ローラー14の外周面に当接可能な位置に配設され、記録実行後の記録紙Pを第1排出駆動ローラー14の外周面に当接させる。第3排出従動ローラー18は、第2排出駆動ローラー15の外周面に当接可能な位置に配設され、記録実行後の記録紙Pを第2排出駆動ローラー15の外周面に当接させる。
【0029】
このような構成のインクジェットプリンター1において記録紙Pは、搬送駆動ローラー11と搬送従動ローラー12とで挟持され、搬送駆動ローラー11の駆動回転によって記録紙支持部材13上を副走査方向Yへ搬送される。記録紙支持部材13上の記録紙Pは、キャリッジ31が主走査方向Xへ往復動しながら記録ヘッド311のヘッド面から記録面にインクを噴射してドットを形成する動作と、搬送駆動ローラー11の駆動回転により所定の搬送量で副走査方向Yへ搬送される動作とが交互に繰り返されることによって、記録面に記録が実行される。そして、記録面に記録が実行された記録紙Pは、第1排出駆動ローラー14及び第2排出駆動ローラー15の駆動回転によって、副走査方向Yへ搬送されて排出口5から排出され、排出トレイ(開閉カバー2、第1トレイ部21及び第2トレイ部22)に積重される。これらの一連の記録制御は、公知のマイコン制御回路を有する制御装置(図示せず)により実行される。
【0030】
<ローラーカバー25の第1実施例>
ローラーカバー25の第1実施例について、図3〜図6を参照しながら説明する。
図3は、第2排出駆動ローラー15のローラーカバー25が設けられている部分を拡大図示した斜視図である。図4は、第2排出駆動ローラー15の外周面がローラーカバー25で覆われている状態を図示した斜視図である。
【0031】
第2排出駆動ローラー15は、金属軸体からなるローラー軸151に一体に設けられたゴムローラーである。ローラー軸151は、図示していない搬送用モーターの回転駆動力が伝達されて回転し、それによって第2排出駆動ローラー15が回転する。また記録紙支持部材13には、記録実行後の記録紙Pを第2排出駆動ローラー15へ案内するリブ131が形成されている。このリブ131は、後述するようにローラーカバー25の「回動規制部」としても機能する。
【0032】
ローラーカバー25は、例えばプラスチック等の合成樹脂で形成されており、左軸受部251、右軸受部252及びカバー部253を有している。左軸受部251及び右軸受部252は、カバー部253の側部に設けられており、図示の如く優弧(長さが全円周の半分より大きい円弧)形状の軸受部である。左軸受部251及び右軸受部252の内径は、ローラー軸151の外径より僅かに小さくなっている。それによってローラーカバー25は、左軸受部251及び右軸受部252の弾性変形による締め付けによって、左軸受部251及び右軸受部252の内周面がローラー軸151の外周面に密着した状態でローラー軸151に軸支される。つまりローラーカバー25は、一定の回動抵抗をもってローラー軸151に軸支されている。この一定の回動抵抗は、ローラーカバー25が自重で回動せずに、ローラー軸151に対する回動位置が保持される程度であれば良い。カバー部253は、第2排出駆動ローラー15の軸方向の幅を超える幅を有し、図示の如く略半円弧形状をなしている。
【0033】
ローラーカバー25は、ローラー軸151が正転方向Dへ回転させることによって正転方向Dへ回動する。そして、カバー部253の正転方向側の端部254がリブ131に当接した時点で、正転方向Dへのローラーカバー25の回動が規制される。この状態においては、第2排出駆動ローラー15の外周面が記録紙Pの排出経路に露出する状態となる。また、正転方向Dへのローラーカバー25の回動はリブ131によって係止されるので、そのままローラー軸151を正転方向Dへ回転させ続けても、ローラーカバー25の左軸受部251及び右軸受部252内でローラー軸151が空転する状態となる。つまり第2排出駆動ローラー15を正転方向Dへ回転させている間は、第2排出駆動ローラー15の外周面が記録紙Pの排出経路に露出する状態が維持されることになる(図3)。
【0034】
他方、ローラーカバー25は、ローラー軸151が逆転方向Eへ回転させることによって逆転方向Eへ回動する。そして、カバー部253の逆転方向側の端部255がリブ131に当接した時点で、逆転方向Eへのローラーカバー25の回動が規制される。この状態においては、第2排出駆動ローラー15の外周面の排出経路に露出する部分がローラーカバー25のカバー部253で覆われる状態となる。また、逆転方向Eへのローラーカバー25の回動はリブ131によって係止されるので、そのままローラー軸151を逆転方向Eへ回転させ続けても、ローラーカバー25の左軸受部251及び右軸受部252内でローラー軸151が空転する状態となる。そのため第2排出駆動ローラー15を逆転方向Eへ回転させている間は、第2排出駆動ローラー15の外周面の排出経路に露出する部分がローラーカバー25のカバー部253で覆われる状態が維持されることになる(図4)。
【0035】
すなわちインクジェットプリンター1は、第2排出駆動ローラー15の外周面が排出経路に露出する状態と、第2排出駆動ローラー15の外周面の排出経路に露出する部分がローラーカバー25で覆われる状態とを切換可能に構成されている。そして、第2排出駆動ローラー15の外周面が排出経路に露出する状態と第2排出駆動ローラー15の外周面の排出経路に露出する部分がローラーカバー25で覆われる状態とは、第2排出駆動ローラー15の回転方向を切り換えることによって自動的に切り換えることができる。
【0036】
図5は、インクジェットプリンター1の要部側面図である。図6は、インクジェットプリンター1の排出装置近傍を拡大図示した要部側面図である。
【0037】
記録実行後の記録紙Pを排出するときには、第1排出駆動ローラー14及び第2排出駆動ローラー15を正転方向Dへ回転させる。第2排出駆動ローラー15を正転方向Dへ回転させている間は、第2排出駆動ローラー15の外周面が記録紙Pの排出経路Paに露出する状態が維持される。したがって記録実行後の記録紙Pは、第2排出駆動ローラー15の外周面に接することができるので、第2排出駆動ローラー15の正転方向Dへの回転によって副走査方向Yへ搬送されて排出される(図5(a)、図6(a))。
【0038】
他方、排出口5から記録紙Pの排出経路Paを介して記録実行手段へ厚紙等の記録紙Pを手差しで給送する際には、ユーザーは手差し給送用トレイ23を符号Cで示した方向へ引き出した状態とする。このとき、その手差し給送用トレイ23の変位に連動して、ローラー支持フレーム24が符号Fで示した方向へ変位する。この手差し給送用トレイ23の変位に連動してローラー支持フレーム24を変位させる機構としては、例えば手差し給送用トレイ23とローラー支持フレーム24とをギアリンク機構等を介して連結すれば良い。あるいは、手差し給送用トレイ23の変位を検出するセンサーを設け、そのセンサーの検出信号に基づいてモーターを回転させ、そのモーターの駆動力でローラー支持フレーム24を変位させる機構を設けても良い。
【0039】
そして、第2排出駆動ローラー15を逆転方向Eへ所定回転量だけ回転させる。この第2排出駆動ローラー15の逆転方向Eへの回転は、手差し給送用トレイ23を変位させる操作をセンサーで検出し、その操作に連動して制御装置により自動的に実行されるようにするのが好ましい。あるいはユーザーのボタン操作等によって実行されるようにしても良い。また所定回転量は、カバー部253の逆転方向側の端部255がリブ131に当接するのに充分な回転量とすれば良い。それによって、第2排出駆動ローラー15の外周面の排出経路Paに露出する部分がローラーカバー25のカバー部253で覆われる状態にすることができる(図5(b)、図6(b))。
【0040】
この状態においてユーザーは、厚紙等の記録紙Pを手差し給送用トレイ23に載置した状態から、その記録紙Pを手差し給送方向YRへ押し入れることができる。このとき、第2排出駆動ローラー15の外周面の排出経路Paに露出する部分がローラーカバー25のカバー部253で覆われているので、排出経路Paにおいて、その記録紙Pの先端が第2排出駆動ローラー15の外周面に接しないようにすることができる。したがって、手差し給送用トレイ23を用いて厚紙等の記録紙Pを手差し給送する際に、その記録紙Pが第2排出駆動ローラー15の外周面に引っ掛かってしまうことを防止することができる。それによって、手差し給送用トレイ23を用いて厚紙等の記録紙Pを手差し給送する際に、その記録紙Pに折れ曲がりや損傷等が生ずる虞を低減させることができる。
【0041】
<ローラーカバー25の第2実施例>
ローラーカバー25の第2実施例について、図7を参照しながら説明する。
図7は、ローラーカバー25の第2実施例を図示した斜視図である。
【0042】
第2実施例のローラーカバー25は、カバー部253の外周面に案内部256が形成されている。つまり第2実施例のローラーカバー25は、第2排出駆動ローラー15の外周面の排出経路に露出する部分を覆うカバー部253に案内部256が形成されている。この案内部256は、第2排出駆動ローラー15より副走査方向Yの下流側で排出経路を構成する案内斜面132に連続する案内面を構成する形状をなしている。
尚、それ以外の構成については、第1実施例と同様であるため説明を省略する。
【0043】
このような案内部256を設けることによって、手差し給送方向YRへ手差し給送される記録紙Pの先端が案内斜面132に摺接しながら押し入れられるときに、その案内斜面132とローラーカバー25との間の隙間にその記録紙Pの先端が入り込んで引っ掛かってしまう虞を低減させることができる。したがって、排出経路から記録実行手段へ手差し給送される記録紙Pをよりスムーズかつ確実に記録実行手段へ案内することができる。
【0044】
<ローラーカバー25の第3実施例>
ローラーカバー25の第3実施例について、図8を参照しながら説明する。
図8は、ローラーカバー25の第3実施例を図示した斜視図である。
【0045】
第3実施例のローラーカバー25は、カバー部253の第3排出従動ローラー18に対応する部分に切り欠き部257が形成されている。つまり第3実施例のローラーカバー25は、第2排出駆動ローラー15の外周面の排出経路に露出する部分を覆うカバー部253の第3排出従動ローラー18に対応する部分が切り欠かれている。
尚、それ以外の構成については、第1実施例と同様であるため説明を省略する。
【0046】
このような切り欠き部257を設けることによって、第2排出駆動ローラー15の外周面の排出経路に露出する部分をローラーカバー25のカバー部253が覆う際に、そのカバー部253に第3排出従動ローラー18が干渉することを回避することができる。それによって、手差し給送用トレイ23を使用した手差し給送時以外のタイミングで第2排出駆動ローラー15を逆転方向Eへ回転させても、ローラーカバー25に第3排出従動ローラー18が干渉することを確実に回避することができる。例えば、搬送駆動ローラー11、第1排出駆動ローラー14及び第2排出駆動ローラー15が共通のモーターの駆動力で回転するインクジェットプリンター1において、記録紙Pのスキュー取り動作等の際に搬送駆動ローラー11を逆転させるような場合である。また例えば、第1〜第3排出従動ローラー16〜18をレリースさせる機構を備えていないインクジェットプリンター1において、手差し給送用トレイ23を使用した手差し給送を行うような場合である。
【符号の説明】
【0047】
1 インクジェットプリンター、2 開閉カバー、5 排出口、23 手差し給送用トレイ、24 ローラー支持フレーム、25 ローラーカバー、151 ローラー軸、251 左軸受部、252 右軸受部、253 カバー部、254 カバー部の正転方向側の端部、255 カバー部の逆転方向側の端部、256 案内部、257 切り欠き部、P 記録紙、Pa 排出経路、YR 手差し給送方向、X 主走査方向、Y 副走査方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録材の記録面に記録を実行する記録実行手段と、
記録実行後の被記録材を排出口から排出する排出装置と、
前記排出口から被記録材の排出経路を介して前記記録実行手段へ手差しで被記録材を給送することを可能にする手差し給送装置と、を備えた記録装置であって、
前記排出装置は、駆動力源の駆動力が伝達されて回転する排出駆動ローラーを有し、
前記排出駆動ローラーの外周面が前記排出経路に露出する状態と、前記排出駆動ローラーの外周面の前記排出経路に露出する部分がローラーカバーで覆われる状態とを切換可能な構成である、ことを特徴とした記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録装置において、前記排出装置は、前記排出駆動ローラーの外周面に被記録材が接した状態で前記排出駆動ローラーが正転方向へ回転することにより当該被記録材が排出される構成であり、
前記排出駆動ローラーの軸部に、一定の回動抵抗をもって回動可能に前記ローラーカバーが軸支されており、
前記ローラーカバーの回動範囲を規制する回動規制部を有し、
前記排出駆動ローラーが正転方向に回転することによる前記ローラーカバーの正転方向への回動が前記回動規制部により規制された状態では、前記排出駆動ローラーの外周面が前記排出経路に露出し、
前記排出駆動ローラーが逆転方向に回転することによる前記ローラーカバーの逆転方向への回動が前記回動規制部により規制された状態では、前記排出駆動ローラーの外周面の前記排出経路に露出する部分が前記ローラーカバーで覆われる、ことを特徴とした記録装置。
【請求項3】
請求項2に記載の記録装置において、前記手差し給送装置は、手差しで被記録材を給送する際に当該被記録材を支持するための手差し給送用トレイが変位可能に設けられており、
前記排出装置は、手差しで給送される被記録材を支持することが可能な位置へ前記手差し給送用トレイを変位させる操作に連動して、前記排出駆動ローラーが所定回転量だけ逆転方向へ回転する、ことを特徴とした記録装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の記録装置において、前記ローラーカバーは、前記排出駆動ローラーの外周面の前記排出経路に露出する部分を覆う部分に、前記排出口から手差し給送される被記録材と係合して当該被記録材を前記記録実行手段へ案内する案内部が設けられている、ことを特徴とした記録装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の記録装置において、前記排出装置は、従動回転可能に支持され、排出すべき被記録材に接して当該被記録材を前記排出駆動ローラーの外周面に当接させる排出従動ローラーを有し、
前記ローラーカバーは、前記排出駆動ローラーの外周面の前記排出経路に露出する部分を覆う部分の前記排出従動ローラーに対応する部分が切り欠かれている、ことを特徴とした記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−104919(P2011−104919A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263666(P2009−263666)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】