説明

記録装置

【課題】個々のノズル列に対して共通のタイミング信号、データ転送用クロック信号を使用して制御信号線数を抑えながら、同一ヘッド内でノズル列毎に記録用駆動と予備吐出用駆動を同時に制御することができる記録装置を提供すること。
【解決手段】個々のノズル列に対して共通のタイミング信号、データ転送用クロック信号を使用してデータを転送しつつ、マスク処理を行うことで、任意のノズル列に対して吐出を行なわなくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルからインクを吐出する際に分割駆動して記録を行う記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット記録装置が普及しつつあるが、特に高画質なフルカラー記録に対する要求が増大している。また、フルカラー記録に関しても、高速に記録を行うことが可能な記録装置が望まれている。複数色のインクを用いて記録を行う方式の一つとして、いわゆるシリアル方式が知られている。この方式は、各色のインクに対応した複数の記録ヘッドが、その記録ヘッドの移動方向である主走査方向に所定間隔で配列され、また各記録ヘッドにおける複数のインク吐出口(以下、「ノズル」と表記)は上記主走査方向とほぼ直角をなす副走査方向に配列される。例えば、インク色として、黒(K),シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)の4色を用いる場合、各インク色それぞれの記録ヘッドは、主走査方向にほぼ等間隔で配置される。そして記録の際には、これら複数の記録ヘッドの移動に伴い、配列の順序であるY,M,C,Kの順で、各記録ヘッドの吐出タイミングを所定間隔ずらしながら記録紙上のほぼ同位置にインクを吐出することでフルカラー記録を行うことが可能となる。
【0003】
近年のインクジェット記録装置では、記録可能な色空間を広げる為、上記K,C,M,Yのインク以外にグリーン(G)やレッド(R)といった特殊色のインクが使用される場合がある。また近年のインクジェット記録装置では、記録ヘッドのノズル数を増大し記録速度の向上が図られている。このような背景から、インクジェット記録装置の記録ヘッドは大型化し、それに伴って装置本体も大型化している。更に、記録に用いるインク数が増加することにより、記録ヘッドと装置本体に搭載された制御装置間とを繋ぐ信号線の数が増大している。
【0004】
ところで、上述したような記録動作の際、各記録ヘッドのノズルのうち、記録する文字、画像等によってはインクが吐出されないノズルも存在する。そのためインクが吐出されないノズルでは、インクの成分である水分がノズルから蒸発し、インクが増粘することがある。このようにインクが増粘した場合、吐出が不安定となり、最悪の場合不吐出となる場合がある。
【0005】
そこで、このような吐出不良を防止するため、特許文献1では、あるタイミングで記録ヘッドを非記録領域に移動し、所定個所にインク吐出を行なって、ノズル内部の増粘したインクを除去する、いわゆる予備吐出が行なわれている。
【0006】
また、近年のインクジェット記録装置ではノズルの微細化が進み、その結果、インクが吐出されない僅かな時間でも、インクの水分が蒸発して不吐出の要因となりうる。よって記録媒体への吐出(以下、出力結果が文字または画像に関係無く、「記録」と表記する)の直前まで予備吐出する手段が検討されており、特許文献2では、記録ヘッド加速中に予備吐出の駆動を行う方法が提案されている。また特許文献3では、同一の記録ヘッド内で、同じタイミングに、あるインク色は記録、あるインク色は予備吐出を行う構成によって、記録と予備吐出のタイミングを更に近付ける手段が提案されている。この手法は記録ヘッドの主走査方向のスキャン幅を短くする効果があり、装置の小型化、スループットアップにも寄与する。
【0007】
ところで、記録ヘッドは微小なノズル列の集合であるが、各ノズルへのインク流路太さによるインク流量制約から、全てのノズルを同時に吐出させる事が不可能な場合がある。その際にはノズルをいくつかのグループに分けて順次吐出を行うことで、インクの供給時間を確保する必要がある。このような記録ヘッドの駆動方法を「分割駆動」あるいは「時分割駆動」と呼称する。この駆動を行うことで、ノズル内部のインク挙動を安定化させる効果があり、安定した連続ノズル駆動にも役立つ。加えて吐出の周期、吐出ノズルパターンを適切に制御する事で安定した記録を行っている。
【0008】
一方、予備吐出動作では、通常の記録とは異なる駆動方法をとることで、その効果を高められる事が知られている。ここで駆動方法とは、予備吐出周期や予備吐出パターン(吐出ノズルパターン)、ノズル列の分割駆動パターンなどである。特許文献4では、記録媒体への吐出前に、ノズル列毎に予備吐出周期、予備吐出パターン等を適切に制御する方法が提案されている。また、通常の記録における分割駆動の目的のひとつが、ノズル内部のインク挙動の安定化であるのに対して、予備吐出では逆にインクを揺らすパターンで分割駆動することで予備吐出の効果を高める事が出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−164694号公報
【特許文献2】特開2001−113728号公報
【特許文献3】特許第03347402号明細書
【特許文献4】特許第03721585号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献3に示されるノズル列毎に記録用駆動や予備吐出用駆動を個別制御する場合、インク色数が増加しノズル列が増えると、これに伴って制御信号線数が増加する。その結果、記録装置本体の電気基板や装置本体と記録ヘッドとを接続するハーネスのコストが増大するという問題が発生する。そこで本発明は、個々のノズル列に対して共通のタイミング信号、データ転送用クロック信号を使用して制御信号線数を抑えながら、同一ヘッド内でノズル列毎に記録用駆動と予備吐出用駆動を同時に制御することができる記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そのため本発明の記録装置は、隣り合う所定数のノズルで構成された複数のグループを備えたノズル列を走査させて、記録媒体に対してインクを吐出する記録装置であって、前記ノズル列の走査方向の位置情報を取得する取得手段と、前記走査方向に関する前記ノズル列単位の駆動タイミングを定めるタイミング信号を生成するタイミング生成手段と、前記ノズル列の走査範囲に前記ノズルから吐出されたインクを回収する回収手段を備え、前記記録媒体を支持する支持手段と、前記記録媒体に対してインクを吐出するための第1のデータ生成処理と、前記開口部に対してインクを吐出するための第2のデータ生成処理を行い、吐出データを生成する第1生成手段と、第1の選択順序と第2の選択順序に従って、前記グループに属するノズルを選択する選択データを生成する第2生成手段と、前記選択データに基づいてノズルを選択し、選択したノズルに対して前記吐出データに基づいて駆動する駆動手段と、前記取得手段によって取得された位置情報と前記タイミング生成手段で生成したタイミング信号に基づいて、前記第1のデータ生成処理で生成された吐出データと前記第1の選択順序に従って生成された選択データを前記駆動手段へ転送する第1の転送処理、前記第2のデータ生成処理で生成された吐出データと前記第2の選択順序に従って生成された選択データを前記駆動手段へ転送する第2の転送処理、のいずれか一方を行う転送手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、
、個々のノズル列に対して共通のタイミング信号、データ転送用クロック信号を使用して制御信号線数の増加を抑制しつつ、同一ヘッド内でノズル列毎に記録用駆動と予備吐出用駆動をそれぞれ適切に行うことができる記録装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態の記録装置の記録ヘッドと予備吐出位置を示した図である。
【図2】図1の記録装置の吐出制御部と記録ヘッドの信号接続構成を示した図である。
【図3】吐出制御部内部のブロック構成を示した図である。
【図4】記録ヘッドが記録または予備吐出を行う様子を示した図である。
【図5】記録/予備吐出区間制御部が管理する情報の例を示した図である。
【図6】ノズル数15穴、分散駆動5分割の分散駆動パターン例を示した図である。
【図7】分散駆動パターン(選択順序)を示した図である。
【図8】第2の駆動モードの駆動制御を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、本実施形態のインクジェット記録装置の記録ヘッドと予備吐出位置を模式的に示した図である。記録ヘッド10は、所定数のノズルからなる一つまたは複数のノズル列20a、20b、20c、20d、20e、20fを搭載しており、各ノズル列は、各々一つまたは複数種類のインクを吐出する。記録ヘッド10は、矢印15に示される方向に双方向走査し、記録媒体14に対してインク吐出を行うことで記録を行う。ガイドレール11は、記録ヘッド10を移動可能に保持している。また、インクジェット記録装置は、不図示のエンコーダ手段を備え、ノズル列の走査方向への移動に伴って、ノズル列の位置情報信号を生成する。
【0015】
記録媒体14は、矢印16の方向に給紙され、記録ヘッド10の矢印15方向への走査と合わせて、記録媒体14の全面に記録を行う事が可能である。プラテン12は記録媒体14を支持し、記録ヘッド10はこのプラテン12上に予備吐出を行う事が可能となっている。このプラテン12には、走査中の記録ヘッド10が予備吐出する際にノズルから吐出されたインクを回収するために、ノズル列の走査範囲に予備吐出口(以下、開口部ともいう)13b、13cが備えられている。またプラテン12には、プラテン12上のする予備吐出とは異なる固定位置予備吐出用の予備吐出口(以下、開口部ともいう)13aが、図1に示すようにノズル列の走査範囲に一方の端部に配置されている。この開口部13aは、固定位置予備吐出の際にノズルから吐出されたインクを回収する回収手段である。
【0016】
領域17aは、記録ヘッド10が移動する事ができる範囲を示している。記録ヘッド10が走査中に固定位置予備吐出を行う場合には、領域17aにおける予備吐出口13側端部まで記録ヘッド10が移動し、予備吐出口13aの位置で予備吐出を行わなければならない。その際、予備吐出口13aまでの移動時間がスループットを増加させる要因となる。
【0017】
一方、領域17bは、固定位置予備吐出を行わず、プラテン12上にする予備吐出だけを行う場合の、記録ヘッド10の移動範囲である。本発明では記録と予備吐出とがノズル毎に駆動可能な為、記録ヘッド10は、領域17fまで移動しなくても領域17dおよび領域17eの範囲でプラテン12に対して予備吐出を行うことができる。その為、予備吐出時に毎回領域17fまで行かずに、領域17bの範囲で走査することで、走査幅縮小によるスループット向上が見込まれる。
【0018】
図2は、本実施形態を適用可能なインクジェット記録装置における、吐出制御部50と記録ヘッド10との信号接続構成を示した図である。吐出制御部50と、記録ヘッド10に搭載された複数のノズル列20aから20fとは、各ノズル列に対応したノズルデータ(吐出データ)を転送するデータ転送信号線40c(破線)で接続されている。さらに、吐出制御部50と、記録ヘッド10に搭載された複数のノズル列20aから20fとは、
と、各ノズル列に共通な吐出タイミング信号線40aと、各ノズル列に共通なデータ転送用クロック信号線40bとによって接続されている。
【0019】
図3は、吐出制御部50内部のブロック構成を示した図である。吐出制御部50は、吐出データ転送信号線40cと、ノズル列共通の吐出タイミング信号線40a、データ転送用クロック信号線40bとによって、記録ヘッド10の各ノズル列に接続されている。そして、吐出制御部50は、記録ヘッド10へのデータ転送・吐出タイミング生成部41、転送データをマスクするマスク制御部42、記録と予備吐出との区間をノズル列毎に管理する記録/予備吐出区間制御部43、記録用データ生成部45を備えている。さらに吐出制御部50は、記録/予備吐出区間によって転送データを切り替える転送データ切換制御部44、予備吐出用データ生成部46、記録用分散駆動パターン生成部47、予備吐出用分散駆動パターン生成部48、吐出周期指定値保持部49を備えている。本実施形態では、第1のデータ生成処理を行う記録用データ生成部45(第1生成手段)と第2のデータ生成処理を行う予備吐出用データ生成部46(第2生成手段)とが分かれて設けられている。このように構成された吐出制御部50は、上述したエンコーダ手段からの信号に基づいて、記録ヘッド10あるいはノズル列20の位置情報を取得する。
【0020】
図4は、記録ヘッド10がプラテン12上を図面右端から左端に向けて領域17bを走査する際に、各ノズル列が記録または予備吐出を行う様子を示した図である。ここで、吐出制御部50による吐出制御の例を示す。記録ヘッド10が領域17eから領域17cに遷移する際、各ノズル列が記録を行うグループと予備吐出を行うグループに分けられ、どの駆動タイミングで予備吐出あるいは記録を行うかについては、図3で示した記録/予備吐出区間制御部43が管理している。
【0021】
図5は、記録/予備吐出区間制御部43が管理する情報の例を示した図である。図5では、図面左端から右端に向かって時系列的な流れを示している。このときの様子は、図1では、記録ヘッド10が図面右から左へ移動しているものである。図5においてノズル列20a、20b、20c、20d、20e、20fの各ノズル列は、それぞれ30a、30b、30c、30d、30e、30fの間に開口部13bにインクを吐出する予備吐出を行う。ノズル列20a、20b、20c、20d、20e、20fは、それぞれ31a、31b、31c、31d、31e、31fの間に記録媒体14にインクを吐出する記録を行う。
【0022】
なお図4では、ノズル列20a、20b、20cが記録状態であり、ノズル列20d、20e、20fが予備吐出状態であり、これは図5におけるポジション17gにおけるタイミングである。記録/予備吐出区間制御部43は、各ポジションにおける各ノズルの駆動状態を転送データ切換制御部44に指示する。そして転送データ切換制御部44は、記録/予備吐出区間制御部43からの情報を基に、吐出データや分散駆動パターン、吐出周期を決定し記録ヘッド10にデータ転送(第1の転送処理、第2の転送処理)を行う。
【0023】
次に図6、図7を用いて分散駆動パターンについて説明する。ここでは、第1の駆動モード(例えば駆動周期7.5KHz)で駆動する場合について、隣り合う5つのノズルで構成されたノズルチップをノズルの配列方向に3つ配列させたノズル列の場合について説明する。
【0024】
図6は、ノズル数15穴、分散駆動5分割の場合の分散駆動パターン例を示した図であり、同一のノズル列において60a、60b、60c、60d、60eの順に、駆動するノズルが選択されることを示している。なお符号の62はノズル番号であり、符号63は5ノズル毎の分散駆動ブロック番号を示している。ノズルは、図において黒丸で示すように60a、60b、60c、60d、60eの各タイミングで、ブロック番号0、2、4、1、3の順(第2の選択順序)に1ノズルおきに選択される。また図6は、各ノズルチップにおいて、同じブロック番号のノズルが選択されていることを示す。そして、選択されたノズルに対応するノズルデータ(吐出データ)が有効であれば、駆動手段はそのノズルを駆動し、インクを吐出する。一方、選択されたノズルに対応するノズルデータ(吐出データ)が無効であれば、駆動手段はそのノズルを駆動されずインクは吐出しない。
【0025】
この駆動パターン(ノズルの選択順序)は、記録ヘッド10の特性等によって任意に設定されるべきものであり、図3の記録用分散駆動パターン生成部47、予備吐出用分散駆動パターン生成部48で各々生成される。なお、このようにパターン生成部を2つ備える構成に限定するものではなく、1つのパターン生成部が、記録用の駆動パターンと予備吐用の駆動パターンを生成する構成でも構わない。
【0026】
図7は、ブロック番号0、1、2、3、4の順(第1の選択順序)に連続して駆動した場合の分散駆動パターン(選択順序)を示した図である。例えば、図6の分散駆動パターンを予備吐出時、図7の分散駆動パターンを記録時に使用する場合、図3の記録用分散駆動パターン生成部47が、図7で示したパターン、予備吐出用分散駆動パターン生成部48が図6で示したパターンを生成する。
【0027】
転送データ切換制御部44は、記録/予備吐出区間制御部43から提供される記録区間と予備吐出区間情報とから分散駆動パターンを選択し、ノズル列毎に駆動パターン(選択データ)を各ノズル列に対して転送する。ここで分散駆動パターンは、記録と予備吐出とで各1つずつ、複数のノズル列をまとめた状態で設定してもよいし、ノズル列毎に各々独立して設定してもよい。
【0028】
ここで、図2の様に吐出タイミング信号をノズル共通で有する系であっても、吐出周波数をノズル毎に制御する方法について述べる。図3の吐出周期指定保持部49は、各ノズル毎に予備吐出時と記録時の吐出マスクタイミングを保持している。またマスク制御部42は、記録/予備吐出区間制御部43から提供される記録区間と吐出周期指定値保持部49とからのマスクタイミング情報を基に、転送データするデータに対して吐出の可否を決定するマスク処理を行う。このマスク処理を行うことにより、転送データのうち、吐出を否にするノズルに対応するデータを、ヌルデータ(ゼロデータ)に変換する。また記録用データ生成部45、予備吐出用データ生成部46、記録用分散駆動パターン生成部47、予備吐出用分散駆動パターン生成部48は、転送データ切換制御部44から吐出周期情報を受け取り、例えば2倍周期の場合は生成のタイミングを2倍に延ばす。
【0029】
つまり、吐出タイミング信号およびデータ転送用クロック信号は、各ノズル列共通に設けられており、それによって、少なくとも1つ以上のノズル列が記録動作を行う場合は、吐出周期は記録の駆動に従うこととなる。しかし、マスク制御部42によって任意のノズル列に対する転送データがマスク処理される事で、その任意のノズル列は任意のタイミングで吐出しないようにして吐出周期を擬似的に落とすことができる。その際、マスク制御部42は、前述のとおり吐出周期指定保持部49の設定を参照して、所定のノズル列に対して転送データをマスク処理する。すなわち、予備吐出周期を記録周期の2倍にしたい場合は、転送するデータを2回に1回マスクし、4倍にしたい場合には転送するデータを4回のうち3回マスクする。これによって、例えば4回に3回マスクを行う場合には、記録が4回吐出している間に予備吐出は1回だけ吐出を行い、タイミング制御信号線を共通で持ちながら、ノズル列単位で記録と予備吐出との周期を異ならせて、独立制御する事ができる。このような制御方法によって、吐出タイミング信号をノズル共通で有する系であっても、ノズル列ごとに異なる周波数で記録と予備吐出とを行うように制御することができる。
【0030】
図8は、第2の駆動モード(例えば駆動周波数16KHz)の駆動制御を示した図であり、上段と下段とで、異なる2つのノズル列を示している。上段は、予備吐出を行うノズル列の駆動順序を示しており、下段は、記録を行うノズル列の駆動順序を示している。尚、図8の上段のノズル列がグレー色になっている場合は、ノズルデータがマスク処理され、そのノズル列からは吐出しない事を示している。ここで示すように予備吐出を行うノズル列が2倍周期で駆動される場合、タイミング64aとタイミング64bとを見た場合、タイミング64bはマスク処理によって吐出されないため、分割駆動パターンおよびノズルデータ(吐出データ)は同一のものとしている。一方、図8の下段は、記録を行うノズル列であり、上段の予備吐出で用いるノズル列と同じタイミング信号によって制御され、これら記録に用いられるノズル列にはマスク処理は行われない(not masked)ことを示している。また、ノズルデータもタイミング毎に更新されるため、タイミングごとに駆動パターンは異なるものとなっている。この様にマスク処理を用いて制御することにより、同一のタイミング信号でも予備吐出と記録で各々に吐出周波数を変化させることが出来る。
【0031】
なお、予備吐出の周期は、ここに説明したような2倍周期に限定するものではなく、3倍周期や4倍周期でも、適宜設定してよい。
【0032】
以上、本発明のインクジェット記録装置の駆動方法について説明した。なお、本実施形態では、インクジェット記録装置として、記録媒体の給紙方向と記録ヘッドのスキャン動作方向が異なる形態の装置について述べたが、他の形態のインクジェット記録装置に適用してもよい。すなわち、記録媒体の給紙方向に対して記録媒体幅の記録ヘッドによってスキャン動作を行わず記録する方式(ラインプリンタ形態)でも適用可能である。
【0033】
このように、個々のノズル列に対して共通のタイミング信号、データ転送用クロック信号を使用してデータを転送する構成と、マスク処理の制御を行う構成を備えることで、任意のノズル列に対して吐出を行なわなくすることができる。これにより、記録とは異なる周期の予備吐出が可能となる。これによって記録時には記録に適した記録ヘッドの駆動方法を用い、予備吐出時には予備吐出に適した記録ヘッドの駆動方法を用いることができ、制御信号線数を抑えながら同一記録ヘッド内でノズル列毎に記録用駆動と予備吐用駆動を同時に制御することができる。
【符号の説明】
【0034】
10 記録ヘッド
12 プラテン
14 記録媒体
20 ノズル列
42 マスク制御部
43 記録/予備吐出区間制御部
50 吐出制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合う所定数のノズルで構成された複数のグループを備えたノズル列を走査させて、記録媒体に対してインクを吐出する記録装置であって、
前記ノズル列の走査方向の位置情報を取得する取得手段と、
前記走査方向に関する前記ノズル列単位の駆動タイミングを定めるタイミング信号を生成するタイミング生成手段と、
前記ノズル列の走査範囲に前記ノズルから吐出されたインクを回収する回収手段を備え、前記記録媒体を支持する支持手段と、
前記記録媒体に対してインクを吐出するための第1のデータ生成処理と、前記開口部に対してインクを吐出するための第2のデータ生成処理を行い、吐出データを生成する第1生成手段と、
第1の選択順序と第2の選択順序に従って、前記グループに属するノズルを選択する選択データを生成する第2生成手段と、
前記選択データに基づいてノズルを選択し、選択したノズルに対して前記吐出データに基づいて駆動する駆動手段と、
前記取得手段によって取得された位置情報と前記タイミング生成手段で生成したタイミング信号に基づいて、前記第1のデータ生成処理で生成された吐出データと前記第1の選択順序に従って生成された選択データを前記駆動手段へ転送する第1の転送処理、前記第2のデータ生成処理で生成された吐出データと前記第2の選択順序に従って生成された選択データを前記駆動手段へ転送する第2の転送処理、のいずれか一方を行う転送手段とを備えることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記第2の転送処理において、連続する複数のタイミング信号のうち、先のタイミング信号で転送される吐出データはインクの吐出を有効とするデータを含み、次のタイミングで転送される吐出データはインクの吐出を無効とするデータで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−158066(P2012−158066A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18945(P2011−18945)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】