説明

記録装置

【課題】キャリッジの移動動作に伴うインクミストの急激な排出を抑制しながらも、電子部品等の被放熱体を効率良く冷却すること。
【解決手段】インクジェットプリンター1は、装置外観を構成する筐体4の内側に、主走査方向に移動するキャリッジ13を備えている。筐体4の右側壁4aには、キャリッジ13に近い位置に第1通気口4cが、遠い位置に第2通気口4dが、それぞれ形成されている。第1通気口4cには、キャリッジ13が近づいた際に第1通気口4cを閉じ、キャリッジ13が遠ざかった際には少なくとも所定の間第1通気口4cを開く弁機構20が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録媒体に記録を行う記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ファクシミリやプリンターに代表される記録装置においては、装置内部の熱や水蒸気を外部に放出する為に、筐体(ハウジング)に開口や通気孔が形成されたものがある(特許文献1〜3)。この中で特許文献3に開示された記録装置は、インクジェット記録ヘッドを走査方向に移動させながら記録を行う所謂シリアル型のものであるが、電子部品冷却の為の吸排気経路を形成する吸気孔と排気孔とをハウジング側面に形成した上で、インク吐出に伴い発生したインクミストを、排気孔から排出する様に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−47589号公報
【特許文献2】特開2004−142192号公報
【特許文献3】特開2010−17935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献3記載の記録装置によれば、装置内部で生じたインクミストが排気孔から排出されるものの、インクジェット記録ヘッドを搭載したキャリッジの移動動作に伴い装置内部ではキャリッジが移動する先の空気が押される為、これによってインクミストが排気孔から一気に排出されてしまうと、排気孔外側の設置物(壁など)を著しく汚損してしまう虞がある。しかしながらその反面、排気孔を小さくしたり数を少なくしたりすると、装置内部の電子部品等の放熱に悪影響を与える。
【0005】
そこで本発明はこの様な状況に鑑みなされたものであり、その目的は、キャリッジの移動動作に伴うインクミストの急激な排出を抑制することにある。また本発明の他の目的は、キャリッジの移動動作に伴うインクミストの急激な排出を抑制しながらも、電子部品等の被放熱体を効率良く冷却することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為の、本発明の第1の態様に係る記録装置は、被記録媒体に記録を行う記録ヘッドと、前記記録ヘッドを備えるとともに、前記記録ヘッドの走査方向に往復動可能に設けられたキャリッジと、装置外観を構成する筐体と、を備え、前記キャリッジの移動方向に位置する、前記筐体を構成する少なくとも一方側の側壁には、第1通気口と、当該第1通気口よりも前記キャリッジから遠い第2通気口と、が形成されており、前記第1通気口には、前記キャリッジが前記第1通気口に近づいた際には前記第1通気口を閉じ、前記キャリッジが前記第1通気口から遠ざかった際には少なくとも所定の間前記第1通気口を開く弁機構が設けられていることを特徴とする。
【0007】
本態様によれば、キャリッジから近い位置に第1通気口が形成され、またキャリッジから遠い位置に第2通気口が形成されているが、前記第1通気口には、キャリッジが近づいた際には第1通気口を閉じ、キャリッジが遠ざかった際には少なくとも所定の間第1通気口を開く弁機構が設けられているので、キャリッジ移動領域周囲に存在するインクミストが、キャリッジに押されて第1通気口から急激に排出されることを防止できる。また、第2通気口は第1通気口よりもキャリッジから遠い位置に形成されているので、当該第2通気口からインクミストが急激に排出されることはない。
【0008】
また、第2通気口には弁機構が設けられていない為、第2通気口を介して装置内部の熱を排出することができ、また装置外部の空気を装置内部に取り入れることができる。しかも、第1通気口に設けられた弁機構はキャリッジが遠ざかる際には少なくとも所定の間開くので、第1通気口も利用して装置外部の空気を装置内部に取り入れることができ、以上により装置内部の放熱を促進することができる。
【0009】
本発明の第2の態様は、前記弁機構は、変形することにより前記第1通気口を開閉する、可撓性を有するシート材を備え、前記キャリッジが近づいた際には当該キャリッジから受ける風圧により前記シート材が前記第1通気口を閉じ、前記キャリッジが遠ざかった際には前記第1通気孔内外の圧力差によって少なくとも所定の間前記シート材が変形して前記第1通気口を開く構成を備えることを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、前記弁機構は、変形することにより前記第1通気口を開閉する、可撓性を有するシート材を備え、当該シート材の変形により前記第1通気口を開閉するので、前記弁機構を構造簡単にして低コストに構成することができる。
【0011】
本発明の第3の態様は、第1のまたは第2の態様において、前記キャリッジの動作によって前記一方側の側壁に沿って生じる空気の流路に、放熱を促進すべき被放熱体を配置したことを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、前記キャリッジの動作によって前記一方側の側壁に沿って生じる空気の流路に、放熱を促進すべき被放熱体を配置したので、被放熱体の放熱を効果的に行うことができる。
【0013】
本発明の第4の態様は、第3の態様において、前記被放熱体において前記筐体の一方側の側壁と前記キャリッジ側面との間に入り込む領域の大きさが、少なくとも前記キャリッジ側面の面積の1/2を超えない様に構成されていることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、前記被放熱体において前記筐体の一方側の側壁と前記キャリッジ側面との間に入り込む領域の大きさが、少なくとも前記キャリッジ側面の面積の1/2を超えない様に構成されているので、前記キャリッジ動作時に前記筐体の一方側側壁が前記キャリッジ側面から受ける風圧が確保される。即ち、前記筐体の一方側側壁に沿って生じる空気の流れが確保され、前記被放熱体の放熱を効果的に行うことができる。
【0015】
本発明の第5の態様は、第3のまたは第4の態様において、前記空気の流路方向における前記被放熱体の一方側の端部から、前記キャリッジの移動領域側に延びる遮蔽体を備えていることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、前記被放熱体において前記空気の流路方向における一方側の端部から前記キャリッジの移動領域側に延びる遮蔽体を備えているので、前記キャリッジの移動に伴う空気の流れが、前記被放熱体の両端側ではなく一方側端部を介して生じることとなる。従って前記空気の流れが強まり、前記被放熱体の放熱をより効果的に行うことができる。
【0017】
本発明の第6の態様は、第3から第5の態様のいずれかにおいて、前記弁機構が前記第1通気口を開いた際に、前記第1通気口から取り入れられた外気を前記被放熱体に沿って流す構成を備えていることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、前記弁機構が前記第1通気口を開いた際に、前記第1通気口から取り入れられた外気を前記被放熱体に沿って流す構成を備えているので、前記キャリッジが前記一方側側壁に近づいた際に加えて、前記キャリッジが前記一方側側壁から遠ざかる際にも前記被放熱体の放熱が促進され、前記被放熱体の放熱をより効果的に行うことができる。
【0019】
本発明の第7の態様は、第1から第6の態様のいずれかにおいて、前記第2通気口に、ミスト化した液体を捕捉するミスト捕捉部材が設けられていることを特徴とする。
本態様によれば、前記第2通気口に、ミスト化した液体を捕捉するミスト捕捉部材が設けられているので、前記第2通気口を介してインクミストが外部に排出されることを防止できる。
【0020】
本発明の第8の態様は、第1から第7の態様のいずれかにおいて、前記筐体を構成する一方側の側壁に加え、他方側の側壁にも前記第1通気口、前記第2通気口、前記弁機構、のこれらが設けられていることを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、記筐体を構成する一方側の側壁に加え、他方側の側壁にも前記第1通気口、前記第2通気口、前記弁機構、のこれらが設けられているので、装置内部の放熱をより一層効果的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るインクジェットプリンターを装置前方側から見た斜視図。
【図2】本発明に係るインクジェットプリンターの筐体の斜視図。
【図3】筐体側壁及び基板ユニットの断面図。
【図4】筐体側壁及び基板ユニットの断面図。
【図5】キャリッジと囲い部との位置関係を模式的に示した図。
【図6】筐体側壁及び基板ユニットの断面図。
【図7】筐体側壁及び基板ユニットの断面図。
【図8】筐体側壁及び基板ユニットの断面図。
【図9】筐体側壁及び基板ユニットの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明は、以下説明する実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることを前提として、以下本発明の一実施形態を説明するものとする。
【0024】
図1は、本発明に係る記録装置の一例としてのインクジェットプリンター1を、装置前方側から見た斜視図、図2はインクジェットプリンター1の装置外観を構成する筐体4の斜視図である(部品単体の斜視図)。また、図3、図4、図6〜図9は筐体4の一方側側壁である右側壁4a及び基板ユニット16の断面図である。尚、図3〜図9の左右方向がキャリッジ13の往復動方向であり、図3〜図9の上下方向が装置高さ方向(重力方向)である。尚、図3〜図9に示す各構成要素は、説明の便宜上模式的に描いている。
【0025】
図1において符号2は記録用紙にインクジェット記録を行う記録部を、符号3は記録部2の上部に設けられるスキャナ部を、それぞれ示しており、即ちインクジェットプリンター1はインクジェット記録機能に加えてスキャナ機能を備える複合機として構成されている。
【0026】
装置前面において符号5は記録用紙をセットする着脱可能な用紙カセット(不図示)を装着するカセット装着口であり、符号6は記録が行われた用紙が排出される用紙排出口であり、符号7は排出された記録用紙を受ける排紙受けトレイである。
【0027】
符号8は、紙ジャム発生時に用紙搬送路を露呈させる為の前面カバーであり、符号9は電源ボタンや各種印刷設定・記録実行を行う操作ボタン、印刷設定内容や印刷画像のプレビュー表示などを行う表示部、等を備えて成る操作パネルである。更に、装置後部において符号10は記録部2に用紙を給送する用紙給送部を、符号4は用紙給送部10にセットされる用紙を支持する用紙サポートを示している。即ち記録部2は、装置前方側からの用紙給送経路と、装置後方側からの用紙給送経路と、を備えている。
【0028】
符号4は、装置外観を構成する筐体を示しており、この筐体4は図2に示す様に右側壁4aと左側壁4bとを備え、全体が樹脂材料によって一体的に形成されている。そして右側壁4a、左側壁4bには、後に詳述するスリット状の第1通気口4cと第2通気口4dとが、装置前後方向に所定間隔を空けて複数形成されている。
【0029】
記録部3において、用紙に記録を行うインクジェット記録ヘッド14は図3に示す様にキャリッジ13の底部に設けられており、このキャリッジ13は用紙搬送方向と直交する方向(図3〜図9の左右方向:以下では「主走査方向」と言う)に往復動可能に設けられている。そしてインクジェット記録ヘッド14は、主走査方向に移動しながら用紙に対してインクを吐出することにより記録を行う。
【0030】
キャリッジ13の移動方向において筐体4の右側壁4aとキャリッジ13との間には、基板ユニット16が設けられている。基板ユニット16は、電子部品が取り付けられた回路基板17、及び当該回路基板17に対し右側壁4aの側に設けられた、電子部品の放熱を促進する為のヒートシンク18を備えて構成されている。
続いて、図3以降を参照しながら第1通気口4c、第2通気口4d、及び第1通気口4cに設けられる弁機構について説明する。
【0031】
<<第1実施形態>>
図3〜図5を参照しながら第1実施形態について説明する。図3及び図4において符号20は弁機構を示し、符号21は弁機構20を構成するシート材を示している。このシート材21は、変形可能なシート材であり、例えばポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルムなどを用いることができる。そしてこのシート材21は、第1通気口4cの上部において固定部21aで固定されている。尚、固定部21aは種々の固定手段、例えば接着、融着、ねじ、などの公知の固定手段で構成できる。
【0032】
さて、キャリッジ13が右側壁4aの側に近づいてくると、キャリッジ13の右側壁13aによって、キャリッジ移動方向の領域Aの空気が右側壁4a側に押される(図3)。尚この領域Aには、浮遊するインクミストが存在している。
【0033】
このとき、シート材21は、キャリッジ13から風圧を受ける為、図3に示す様に右側壁4aに密着した状態を維持し、弁機構20は第1通気口4cを閉じた状態となる。従ってキャリッジ13によって押された領域Aの空気は、矢印fで示す様にキャリッジ13から遠い側の第2通気口4dに向かって流れる。このとき生じる空気の流路にはヒートシンク18が配置されているので、これにより放熱を促進すべき被放熱体としてのヒートシンク18は、放熱が促進される。
【0034】
そして第2通気口4dには弁機構は設けられていない為、装置内部の熱は第2通気口4dから装置外部へ排出される。尚、図3〜図8において矢印f’は、第2通気口4d付近における空気の流れを示している。
【0035】
次に、キャリッジ13が右側壁4aから遠ざかると、第1通気口4cの内外圧力差(装置内側が装置外側より負圧ぎみになる)によってシート材21が変形し、図4に示す様に弁機構20は所定の間開いた状態となり、矢印fで示す様に第1通気口4cを介して装置外側から相対的に温度の低い空気が装置内部に取り込まれる。
【0036】
尚このとき、領域Aは負圧ぎみとなるので、弁機構が設けられていない第2通気口4dからも矢印f’で示す様に装置外側から装置内部へと空気が取り込まれる。そして第1通気口4cの内外圧力差が解消されると、シート材21は元に戻り、図3に示す状態となる。
【0037】
以上の様に、キャリッジ13から近い位置の第1通気口4cには、キャリッジ13が近づいた際に第1通気口4cを閉じ、キャリッジ13が遠ざかった際には少なくとも所定の間第1通気口4cを開く弁機構20が設けられているので、キャリッジ移動領域周囲(図3、図4では領域A)に存在するインクミストが、キャリッジ13に押されて第1通気口4cから急激に排出されることを防止できる。
【0038】
また弁機構20は、シート材21の変形により第1通気口4cを開閉する構成であるので、弁機構20を構造簡単にして低コストに構成することができる。
尚、シート材21は、複数形成された第1通気口4cの一つ一つに対して個別に設けられても良いし、幾つかの第1通気口4cに対して一枚のシート材21が設けられても良いし、全ての第1通気口4cに対して一枚のシート材21が設けられても良い。また、複数の第1通気口4cの中でも、キャリッジ13から遠い場所に位置する第1通気口4cに対して弁機構20を設けないこともできる。
【0039】
加えて本実施形態では、筐体4の右側壁4aと、キャリッジ13の右側面13aと、の間にヒートシンク18が入り込む領域の大きさが、キャリッジ13の右側面13aの面積の1/2を超えない様に構成されている(図3においてa<b)。これにより、キャリッジ動作時に筐体4の右側壁4aがキャリッジ13の右側面13aから受ける風圧が確保される。即ち、筐体4の右側壁4aに沿って生じる空気の流れが確保され、ヒートシンク18の放熱を効果的に行うことができる。尚、筐体4の右側壁4aと、キャリッジ13の右側面13aと、の間にヒートシンク18が入り込んでいなければ、右側壁4aがキャリッジ13から受ける風圧がより一層確保される。
【0040】
また本実施形態は、筐体4の右側壁4aに加え、左側壁4bにも第1通気口4c、第2通気口4d、弁機構20、のこれらが設けられているので(左側壁4bにおける弁機構20の図示は省略)、装置内部の放熱をより一層効果的に行うことができる。
【0041】
ところで、図2及び図5に示す様に筐体4には、囲い部4eが一体的に形成されている。この囲い部4eは、右側壁4f、左側壁4g、奥壁4h、のこれらを備えて構成されており、キャリッジ13との位置関係においては、図6に示す様にキャリッジ13の移動領域上部に位置している。
【0042】
この囲い部4aを構成する右側壁4f、左側壁4g、奥壁4h、のこれらは、紙ジャム処理時にユーザーが前面カバー8を開いて装置内部に手を差し入れる際に、装置内部の構成要素から保護する保護壁として機能する。即ち、装置内部にはシャープエッジを有する構成要素が配置されている為、ユーザーが紙ジャム処理の為に装置内部に手を差し入れた際に、上記シャープエッジに触れてしまう可能性があるが、上記囲い部4eによってこれが防止される。尚、囲い部4eの内壁には、複数のリブ4jが形成されており、これにより浮遊するインクミストが捕捉され、装置外部に排出されるインクミストの量を抑えることができる。また、リブ4jによってインクミストが捕捉されることで、装置内部でのミストの浮遊量も抑えることができる。
【0043】
そして、囲い部4eの右側壁4fによって、ヒートシンク18周囲の空間Aが狭められているので、ヒートシンク18に沿って生じる空気の流速を速めることができ、より効率的にヒートシンク18の放熱を促進できる。尚、図5はキャリッジ13が右側壁4aに近づく際の様子を示しているが、キャリッジ13が右側壁4aから遠ざかる際にも、ヒートシンク18に沿って生じる空気の流速が速められ、より効率的にヒートシンク18の放熱を促進できる。
【0044】
<<第2実施形態>>
図6に示す第2実施形態は、上述した第1実施形態との対比において、弁機構が異なる。即ち図6に示す弁機構22が上述した第1実施形態に係る弁機構20と異なるのは、シート材21の固定部21aが、第1通気口4cの下側に設けられている点である。
【0045】
これにより、キャリッジ13が右側壁4aから遠ざかると、第1通気口4cの内外圧力差によってシート材21が変形し、弁機構22は所定の間開いた状態となり、矢印fで示す様に第1通気口4cを介して装置外側から相対的に温度の低い空気が装置内部に取り込まれる(尚、キャリッジ13が右側壁4aに近づく際の空気の流れは図3と同様である)。尚、本実施形態では固定部21aを第1通気口4cの下側に設けたが、これに限られず、第1通気口4cの左側或いは右側(図6において紙面表裏方向)に設けることもできる。
【0046】
また、本実施形態では図6の矢印fで示す様に、弁機構22が第1通気口4cを開いた際に、第1通気口4cから取り入れられた外気をヒートシンク18に沿って流す。即ち、キャリッジ13が右側壁4aに近づくときのみならず、キャリッジ13が右側壁4aから遠ざかるときにおいても、第1通気口4cから取り入れられた外気がヒートシンク18に沿って流れるので、より効果的にヒートシンク18の放熱を促進することができる。尚、この様な効果を効率的に得る為には、ヒートシンク18の下端部よりも下側に第1通気口4cが位置していることが好ましい。
【0047】
<<第3実施形態>>
図7に示す第3実施形態では、第2通気口4dの内側に、インクミストを捕捉するミスト捕捉部材24が設けられている点が上述した第1、第2実施形態と異なる。これにより、第2通気口4dを介してインクミストが外部に排出されることを防止することができる。
【0048】
<<第4実施形態>>
図8及び図9に示す第4実施形態では、基板ユニット16’が上述した各実施形態と異なる。即ち、基板ユニット16’は、ヒートシンク18において空気の流路方向(矢印f)における一方側の端部(本実施形態では上端部)からキャリッジ13の移動領域側に延びる遮蔽体19を備えている。
【0049】
これにより、図8及び図9において矢印f示す様にキャリッジ13の移動に伴う空気の流れが、ヒートシンク18の両端側ではなく一方側端部を介して生じることとなる。即ち図8及び図9において矢印fr(破線)は、仮に遮蔽体19が設けられていない場合に生じる空気の流れであり、この様に仮に遮蔽体19が設けられていない場合には、ヒートシンク18の両端部を介して空気の流れが生じるので、ヒートシンク18に沿った一方側から他方側への空気の流れが弱まる。
【0050】
しかしながら遮蔽体19が設けられていることで、ヒートシンク18に沿った空気の流れが強まり、ヒートシンク18の放熱を効果的に行うことができる。尚、図8及び図9に示す実施形態では、図1に示した第1実施形態と異なり、右側壁4aと、キャリッジ13の右側面13aと、の間にヒートシンク18が入り込む領域の大きさが、キャリッジ13の右側面13aの面積の1/2を超えている。しかしながら、遮蔽体19が設けられていることで、キャリッジ13によって押される空気の流れが上述した様にヒートシンク18の下端部を介して生じることとなり、ヒートシンク18を効果的に冷却することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 インクジェットプリンター、2 記録部、3 スキャナ部、4 筐体、4a 右側壁、4b 左側壁、4c 第1通気口、4d 第2通気口、5 カセット装着口、6 用紙排出口、7 排紙受けトレイ、8 前面カバー、9 操作パネル、10 用紙給送部、4 用紙サポート、13 キャリッジ、14 インクジェット記録ヘッド、16 基盤ユニット、17 回路基板、18 ヒートシンク、19 遮蔽体、20 弁機構(第1実施形態)、21 シート材、21a 固定部、22 弁機構(第2実施形態)、24 ミスト捕捉部材、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体に記録を行う記録ヘッドと、
前記記録ヘッドを備えるとともに、前記記録ヘッドの走査方向に往復動可能に設けられたキャリッジと、
装置外観を構成する筐体と、を備え、
前記キャリッジの移動方向に位置する、前記筐体を構成する少なくとも一方側の側壁には、第1通気口と、当該第1通気口よりも前記キャリッジから遠い第2通気口と、が形成されており、
前記第1通気口には、前記キャリッジが前記第1通気口に近づいた際には前記第1通気口を閉じ、前記キャリッジが前記第1通気口から遠ざかった際には少なくとも所定の間前記第1通気口を開く弁機構が設けられている、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録装置において、前記弁機構は、変形することにより前記第1通気口を開閉する、可撓性を有するシート材を備え、
前記キャリッジが近づいた際には当該キャリッジから受ける風圧により前記シート材が前記第1通気口を閉じ、前記キャリッジが遠ざかった際には前記第1通気孔内外の圧力差によって少なくとも所定の間前記シート材が変形して前記第1通気口を開く構成を備える、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の記録装置において、前記キャリッジの動作によって前記一方側の側壁に沿って生じる空気の流路に、放熱を促進すべき被放熱体を配置した、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項4】
請求項3に記載の記録装置において、前記被放熱体において前記筐体の一方側の側壁と前記キャリッジ側面との間に入り込む領域の大きさが、少なくとも前記キャリッジ側面の面積の1/2を超えない様に構成されている、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の記録装置において、前記空気の流路方向における前記被放熱体の一方側の端部から、前記キャリッジの移動領域側に延びる遮蔽体を備えている、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項6】
請求項3から5のいずれか1項に記載の記録装置において、前記弁機構が前記第1通気口を開いた際に、前記第1通気口から取り入れられた外気を前記被放熱体に沿って流す構成を備えている、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の記録装置において、前記第2通気口に、ミスト化した液体を捕捉するミスト捕捉部材が設けられている、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の記録装置において、前記筐体を構成する一方側の側壁に加え、他方側の側壁にも前記第1通気口、前記第2通気口、前記弁機構、のこれらが設けられている、
ことを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−200922(P2012−200922A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65487(P2011−65487)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】