説明

記録装置

【課題】衝打タイプの記録ヘッドの衝打により、記録媒体が衝打面保持部の衝打面以外の部位あるいは衝打面保持部の周辺部材に当たって付く傷を低減もしくは無くすことができる記録装置を提供する。
【解決手段】衝打タイプの裏面記録部20は、シートを保持する保持ユニット50と、保持ユニット50が保持する保持面(表面)と反対側となる面(裏面)に衝打により印刷を行う衝打タイプの衝打記録ヘッド51とを備える。保持ユニット50の搬送方向Yの下流側にはガイドローラー63が配置されている。衝打時にはシートは衝打面61aに当たるが、このときガイドローラー63の外周面にも当たるので、例えば保持部材61の衝打面61a以外の部分(例えば板金端部)にシートが強く当たることが回避される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝打タイプの記録ヘッドを備えた記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、記録媒体に記録を施す記録ヘッドを備えた記録装置として、インクジェット式プリンターが広く知られている(例えば特許文献1)。例えば、特許文献1のプリンターでは、搬送機構により搬送される記録媒体に対して、インクジェット式のプリントヘッドのノズルからインク(液体)を噴射してこの記録媒体に表面印刷を行い、さらにこの記録媒体の表面印刷面と反対側の面となる裏面に裏面印字ユニットによって印字を行う。裏面印字ユニットには、通常、ワイヤがインクリボンを介して記録媒体を衝打して印字を施す衝打タイプ(ドットインパクト方式)の記録ヘッドが採用されている。
【0003】
例えば特許文献2〜4には衝打タイプの記録ヘッドを備えたプリンターが開示されている。このプリンターでは、衝打タイプの記録ヘッドと印台(プラテン)とが対向して配置され、記録媒体は記録ヘッドと印台の衝打面との間の位置を搬送経路とするように案内される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−179415号公報
【特許文献2】特開平10−16325号公報(例えば図4)
【特許文献3】特開平5−69605号公報(例えば図1)
【特許文献4】特開平2−14172号公報(例えば図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献2、3に記載のプリンターでは、衝打タイプの記録ヘッドによる衝打の繰り返しによって、記録媒体が、印台の一部、あるいはその搬送経路よりも印台側に位置する周辺部材に繰り返し当たり、記録媒体の印台側の面を傷つけてしまうという問題があった。印台の一部としては、記録媒体を案内するため印台に設けられたガイド部などが挙げられ、周辺部材としては、記録媒体を案内するため印台の周辺に設けられたガイド部材(特許文献2)やフレーム部材(特許文献3、4)などが挙げられる。特に特許文献1に記載のプリンターでは、裏面印字ユニットが衝打する記録媒体の印台側の面がインクジェットで印刷された印刷面となるので、その印刷面に傷が付きその印刷品質が低下するという問題もある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、衝打タイプの記録ヘッドの衝打により、記録媒体が衝打面保持部の衝打面以外の部位あるいは衝打面保持部の周辺部材に当たって付く傷を低減もしくは無くすことができる記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様の一つは、記録装置において、記録媒体を搬送する搬送手段と、前記搬送手段により搬送される前記記録媒体に記録する衝打タイプの記録ヘッドと、前記記録ヘッドと前記記録媒体の搬送経路を挟んで対向する位置に前記記録媒体と間隔を置いて配置される衝打面を備える衝打面保持部と、前記衝打面より搬送方向下流側の位置に、前記搬送経路にある前記記録媒体に対して前記衝打面保持部と同じ側に間隔を置いて配置されるローラーと、を備えていることを要旨とする。
【0008】
上記構成によれば、記録ヘッドが衝打された際に記録媒体がローラーと衝打面とに当たってその衝打方法への変位が小さく抑えられ、記録媒体が衝打面保持部の衝打面以外の部分あるいは衝打面保持部の周辺部材に比較的強く接触することを防止できる。また、ローラーなので、搬送中の記録媒体が接触したときにローラーが連れ回りすることで、記録媒体の表面との接触抵抗が小さく抑えられる。よって、衝打時に記録媒体に付く傷を低減もしくは無くすことができる。
【0009】
本発明の態様の一つである記録装置では、前記ローラーの外周面と前記記録媒体との間の前記間隔が、前記衝打面と前記記録媒体との間の間隔より大きいことが好ましい。
上記構成によれば、ローラーの外周面と記録媒体との間の間隔が、衝打面と記録媒体との間の間隔より大きいことから、記録媒体がローラーに接触する頻度を低減できる。すなわち、記録ヘッドによる衝打の際には、記録媒体がローラーと接触して衝打面保持部の衝打面以外の部分あるいは周辺部材との接触が抑えられ、記録ヘッドによる衝打が行われないときは、記録媒体とローラーとの接触が極力抑えられる。
【0010】
本発明の態様の一つである記録装置では、前記ローラーが、前記記録媒体の幅方向における前記衝打面の配置領域を避けて配置されていることが好ましい。
上記構成によれば、搬送時の記録媒体の衝打面と接触する箇所がローラーとも接触することを回避し、記録媒体の同じ箇所が衝打面とローラーの両方に摺動し、記録媒体の特定箇所が集中的に傷付きやすくなる事態を回避できる。
【0011】
本発明の態様の一つである記録装置では、前記搬送手段により搬送される前記記録媒体を保持する媒体保持面を備える媒体支持部と、前記衝打タイプの記録ヘッドの搬送方向上流側に配置され、前記記録媒体の前記媒体保持面に保持される面と反対側の面に液体を噴射して記録する第2の記録ヘッドと、を更に備え、前記衝打タイプの記録ヘッドは、前記記録媒体に対して前記第2の記録ヘッドが記録する面と反対側の面に記録することが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、衝打タイプの記録ヘッドよりも搬送方向上流側に配置された第2の記録ヘッドが液体を噴射して記録媒体に記録した記録面が、衝打面保持部の衝打面以外の部位あるいは衝打面保持部の周辺部材と接触してその記録面に付く傷を低減もしくは無くすことができる。
【0013】
本発明の態様の一つである記録装置では、前記衝打面保持部は、前記記録媒体の搬送経路を横断するように架設された梁部材を備え、前記ローラーは前記梁部材の搬送方向下流側端側の位置に回転可能に設けられ、前記ローラーの外周面と前記記録媒体との間の前記間隔が、前記梁部材の底面と前記記録媒体との間の間隔より小さいことが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、梁部材の底面より下側に位置するローラーにより記録媒体が支持されるので、記録媒体が梁部材の底面に接触(摺動)する面積を小さく抑えることができ、記録媒体にこの種の摺動に起因する傷が付きにくくなる。
【0015】
本発明の態様の一つである記録装置では、前記ローラーよりも前記搬送方向下流側の位置には、前記衝打タイプの記録ヘッドの記録対象である前記記録媒体を挟持しつつ搬送する搬送ローラー対が配置され、前記ローラーは、前記記録媒体を前記搬送ローラー対の間へ案内するガイドローラーであることが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、記録媒体がローラー(ガイドローラー)の外周面に接触して案内されることにより、記録媒体の先端を搬送ローラー対の間へ案内することができる。
本発明の態様の一つである記録装置では、前記搬送ローラー対を構成するローラー部は回転軸の軸方向に間隔を置いて複数設けられ、前記ローラーは、前記記録媒体の幅方向において前記ローラー部の間隔と対応する位置に配置されるとともに、前記ローラーの軸線方向からの視方向において前記ローラー部と一部重複する状態に配置されていることが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、ローラーは、記録媒体の幅方向においてローラー部の間隔に対応する位置で、ローラーの軸線方向からの視方向においてローラー部と一部重複する状態で配置されているため、ローラーの外径を比較的大きくすることができる。よって、衝打時に記録媒体がローラーの外周面に接触したときのその外周面の曲率を大きくして記録媒体を一層傷付きにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】一実施形態におけるプリンターの概略構成を示す側断面図。
【図2】プリンターにおける保持ユニットとその周辺を示す斜視図。
【図3】保持ユニットの斜視図。
【図4】保持ユニットの正面図。
【図5】保持ユニットの平面図。
【図6】保持ユニットの底面図。
【図7】図2のA−A線断面図。
【図8】ガイドローラーの支持構造を示す模式正面図。
【図9】ガイドローラーの支持構造を示し、(a)は模式側面図、(b),(c)は模式正断面図。
【図10】ガイドローラーの動作を説明する模式正面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の記録装置をインクジェット式プリンターに具体化した一実施形態について、図面に従って説明する。
図1に示すように、記録装置の一例であるインクジェット式プリンター11(以下、単に「プリンター11」と称す。)は略直方体状の本体ケース12を備え、その本体ケース12には前壁(図1における左壁)に開口する排紙口12aと、排紙口12aから排出された印刷後のシートCSを載置可能な排紙部12b(排出トレイ)とが設けられている。本体ケース12内の図1における右端下部には、長尺状のシートST(例えば、連続紙)がロール状に巻回されてなるロール体RSが取着される給紙部13が設けられている。
【0020】
また、本体ケース12内には、給紙部13から排紙部12bに向かって延びる搬送経路に沿ってシートSTを搬送する搬送手段の一例としての搬送機構14が設けられている。また、本体ケース12内には、搬送経路の途中でシートSTの表面に対して液体としてのインクを噴射して表面印刷(表面記録)を施す表面記録部15と、表面印刷後のシートSTを所定長さのカットシートCS(単票紙)に切断するカッター16とが設けられている。
【0021】
シートSTの搬送経路におけるカッター16の下流側には、カットシートCSにおける表面印刷が施された記録面(表面)と反対側の面(裏面)に、衝打によって印字する裏面印刷処理を施す裏面記録部20が設けられている。また、シートSTの搬送経路における裏面記録部20の下流側には、カットシートCSにおける表面印刷処理が施された面である記録面(表面)に温風(加熱した空気)を吹き付けてインクを乾燥させる乾燥装置17が、搬送経路に沿って裏面記録部20と隣り合うように設けられている。
【0022】
さらに、シートSTの搬送経路における乾燥装置17の下流側には、カットシートCSのカール(巻きぐせ)を矯正するカール矯正機構18が設けられている。このカール矯正機構18は、カール矯正機能の他に搬送機能も備え、搬送機構14の一部を構成している。なお、本実施形態では、シートSTとカットシートCSが、記録媒体の一例を構成している。
【0023】
図1に示すように、給紙部13は、ロール体RSを回転可能に支持する回転軸19と、回転軸19を回転させる給送モーター(図示略)とを備えている。そして、給送モーターの駆動に伴って回転軸19が図1における反時計方向に回転することにより、ロール体RSからシートSTがその搬送経路の下流側に向かって繰り出される。
【0024】
搬送機構14は、シートST,CSを搬送経路の上流側から下流側に向かって搬送する回転駆動可能な複数の搬送ローラー21〜28と、搬送ローラー21〜28を回転駆動させるための動力源となる搬送モーター(図示略)と、各搬送ローラー21〜27との間でシートST,CSを挟持可能な従動ローラー31〜37とをそれぞれ備えている。
【0025】
そして、搬送モーターによる各搬送ローラー21〜27の回転駆動に伴って各従動ローラー31〜37が従動回転することにより、シートST,CSが搬送経路の上流側から下流側に向かって搬送される。なお、搬送ローラー26と対応する位置には、搬送経路の一部を形成するとともに、シートST,CSを支持可能な略平板状の搬送経路形成部材41が配置されている。
【0026】
搬送機構14の一部を構成するカール矯正機構18は、大径の搬送ローラー28と、搬送ローラー28に対して搬送経路の下流側に配置された小径の搬送ローラー27と従動ローラー37とからなるデカールローラー対DRとを備えている。そして、カール矯正機構18は、印刷中において、デカールローラー対DRを構成する従動ローラー37を、カールの向きと逆向きに湾曲させる矯正力をシートCSに付与する矯正位置に移動させることにより、シートCSにカール矯正処理を施す。
【0027】
なお、以下の説明において、互いに対をなす、搬送ローラー23と従動ローラー33を搬送ローラー対R1、搬送ローラー24と従動ローラー34を搬送ローラー対R2、搬送ローラー25と従動ローラー35を搬送ローラー対R3、搬送ローラー26と従動ローラー36を搬送ローラー対R4という。
【0028】
表面記録部15は、本体ケース12内における搬送経路の上側に、シートST,CSの搬送方向Yと直交する幅方向Xに沿って水平に延びる状態で架設されたガイド軸45と、ガイド軸45の長手方向(幅方向X)に沿って移動可能な状態でガイド軸45に支持されたキャリッジ46とを備えている。
【0029】
キャリッジ46には、搬送経路に対向する状態で第2の記録手段の一例としての液体記録ヘッド47が取り付けられている。液体記録ヘッド47には、インクを噴射する複数のノズル47aが設けられている。したがって、キャリッジ46がガイド軸45に沿って往復移動することにより、キャリッジ46と共に液体記録ヘッド47が幅方向Xに等しい主走査方向に往復移動する。
【0030】
また、表面記録部15は、液体記録ヘッド47と搬送経路を挟んで対向する位置に配置された媒体支持部の一例としての支持台48を備えている。支持台48は、その上面に開口する複数の吸引孔(図示略)を通じてシートSTに吸引力(負圧力)を付与してシートSTを支持台48の上面(媒体保持面)に吸着させる吸引機構49を内蔵している。そして、支持台48に支持されたシートSTの表面(図1では上面)に、キャリッジ46が主走査方向Xに移動する過程で液体記録ヘッド47がノズル47aからインクを噴射することで、シートSTにインクを付着させる表面印刷が施される。
【0031】
詳しくは、プリンター11は、ホスト装置(図示略)から印刷ジョブデータを受信する。そして、プリンター11が備える制御装置100は、印刷ジョブデータを入力すると、その中に含まれる印刷データを、液体記録ヘッド47の1走査分に相当する記録データごとに分割する。
【0032】
キャリッジ46が1走査する途中において液体記録ヘッド47は記録データに基づき選択されたノズル47aからインクを噴射して1パス分(1走査分)の表面印刷を行う。そして、1走査毎の表面印刷の合間に、シートSTが次パスの表面印刷位置まで搬送される。こうして表面記録部15では、液体記録ヘッド47が主走査方向Xに移動しながらインク滴を噴射することによる1パス分の帯状の画像の形成と、シートSTの間欠的な搬送とが交互に繰り返されることにより、シートSTの表面に印刷ジョブに基づく画像が形成される。なお、表面記録部15からカール矯正機構18に至る搬送経路において、支持台48の上面と搬送経路形成部材41の上面とを含む仮想平面が、印刷中のシートST,CSを搬送する搬送面となる。そして、シートST,CSが搬送面に案内されて搬送される経路が搬送経路となる。
【0033】
また、カッター16によるシートSTの切断は、搬送機構14によるシートSTの搬送を停止させた状態で行われる。カッター16は、搬送ローラー対R1,R2に両側を挟持されたシート部分の略中央を幅方向Xに作動して切断し、シートSTからカットシートCS(以下、単に「シートCS」ともいう。)を切り離す。なお、本実施形態では、表面印刷の過程でシートSTの搬送を停止したタイミングで、シートSTの切断を行う。
【0034】
乾燥装置17は、搬送方向Yにおいて搬送ローラー対R3,R4の間に挟まれた領域の上方位置に配置されている。乾燥装置17は、その下面に開口する吹出口17aを有し、搬送経路形成部材41の上面に支持されたシートCSの表面(印刷面)に吹出口17aから温風を吹き付けることで、シートCSにその表面のインクを乾燥させる乾燥処理を施す。
【0035】
乾燥装置17は幅方向XにシートCSの最大幅に対応する長さを有し、吹出口17aは乾燥装置17の長手方向(幅方向X)に沿ってシートCSの幅方向全域にわたる長さで延びる略矩形状に開口している。したがって、乾燥装置17は、シートCSの幅方向Xの全域に吹出口17aから温風を吹き付けることが可能となっている。そして、乾燥装置17は、内蔵するヒーター及びファンユニットのファン(いずれも図示略)が制御装置100により制御されることにより、その温度制御及び送風制御が行われる。なお、プリンター11を統括制御する制御装置100は、給送モーター及び搬送モーター等も駆動制御する。
【0036】
次に、裏面記録部20の構成について詳述する。
図1に示すように、裏面記録部20は、搬送経路におけるカッター16と乾燥装置17との間に位置している。裏面記録部20は、搬送経路の上側に配置されてシートCSの表面を保持する保持ユニット50と、搬送経路を挟んで保持ユニット50と対向するように配置された衝打タイプの記録ヘッド51(以下「衝打記録ヘッド51」ともいう。)とを備えている。衝打記録ヘッド51は、シートCSの裏面(下面)にインクリボン(図示略)を押し付けながら衝打してインクドットを形成する裏面印刷処理を施す所謂ドットインパクト方式のヘッドとして構成されている。
【0037】
図2に示すように、保持ユニット50は、搬送方向Yにおいて、シートCSを裏面記録部20へ送り込む搬送ローラー対R2と、シートCSを裏面記録部20から送り出す搬送ローラー対R3との間に挟まれた領域に、幅方向Xに延びる状態で架設されている。
【0038】
図2〜図7に示すように、保持ユニット50は、幅方向Xに延びるように架設された平板状の梁部材60と、梁部材60における長手方向の中央部に取着された2つの円柱状をなす金属製の保持部材61(図5〜図7参照(但し図7では1つのみ図示))と、梁部材60及び各保持部材61を上側から覆う合成樹脂製のカバー部材62とを備えている。
【0039】
図2〜図4に示すように、梁部材60の長手方向の両端部は、それぞれ上方に向かって直角に屈曲された後、さらに長手方向における外側に向かってそれぞれ直角に屈曲された支持板部60aとなっている。カバー部材62は、梁部材60の上側全体を覆うとともに、梁部材60と対応する形状をなしており、その長手方向の両端部に支持板部60aと対応する形状の支持板部62aを有している。
【0040】
図2に示すように、梁部材60及びカバー部材62の各両端部の支持板部60a,62aの各ねじ孔60b,62b(図3参照)に上側から挿通されたねじ70が、シートCSの搬送経路を挟んで幅方向両側に対峙する図2に示す左右のフレーム71に形成されたねじ孔(図示略)に螺着されている。これによりカバー部材62が梁部材60の上側全体を覆った状態にある保持ユニット50は、搬送方向Yにおいて、搬送ローラー対R2と搬送ローラー対R3との間に挟まれた領域に架設された状態で左右のフレーム71に組み付けられている。なお、ねじ70よりも保持ユニット50の長手方向の少し内側の位置に螺着されたねじ72と、不図示の係止爪と係止凹部との係止とによっても、梁部材60とカバー部材62は接合されている。
【0041】
梁部材60の組み付け状態において搬送方向Yの下流側端部となる前端縁部には、梁部材60の長手方向において各保持部材61の配置領域を避けた両側の位置に、図3〜図6に示すように、ローラーの一例として左右で対をなすガイドローラー63がそれぞれ配置されている。梁部材60の前端縁部にはガイドローラー63の組み付け位置と対応する位置に、左右一対の軸受部64が一体に形成されている。各ガイドローラー63は、軸受部64に回転可能に支持された支軸65と、支軸65に等間隔で回転可能に支持された4つのコロ66とをそれぞれ備えている。また、左右一対のガイドローラー63の間隔は、最小幅のシートCSが搬送された場合でも、各ガイドローラー63で最も内側に位置する一対のコロ66にその最小幅のシートCSが接触しうる長さに設定されている。なお、本実施形態のプリンター11は、どのサイズ(幅寸法)のシートST,CSもその幅中心を搬送経路幅の中心位置(センター基準位置)に揃えて幅方向にガイドされる不図示のガイド機構を備えている。
【0042】
そして、各ガイドローラー63は、裏面印刷の対象となるシートCSが搬送中に接触しても連れ回りすることで、シートCSとの間に発生する摩擦力を低減してシートCSの表面を保護するシート保護機能と、シートCSの先端を、搬送ローラー対R3を構成するローラー25,35間へ導くように案内するガイド機能とを有している。また、各ガイドローラー63は、表面記録部15による表面印刷でシートCSの表面に付着したインクが乾燥する過程で収縮してシートCSが上側へ反ろうとする場合でも、そのシート表面に接触して連れ回りすることで、その上側への反りを抑えつつシートCSを搬送方向Yの下流側へ案内する機能も有する。
【0043】
図4〜図6に示すように、各保持部材61は、梁部材60に対して長手方向(幅方向X)に並ぶとともに搬送方向Yに若干ずれるように配置されている。各保持部材61は、梁部材60に形成された貫通孔(図示略)にそれぞれ挿通され、それぞれの下端部が梁部材60の下面よりも下側に突出するように配置されている。
【0044】
さらに、図4〜図7に示すように、梁部材60上には、各保持部材61が挿通されるとともに各保持部材61の高さ位置(上下方向の位置)を調節可能な円環状の調節部材67がそれぞれ固着されている。
【0045】
図7に示すように、各調節部材67の周壁にはねじ孔68が形成され、このねじ孔68にはねじ69が螺合されている。そして、ねじ69を締めることで調節部材67が保持部材61の上下方向の移動を規制する一方、ねじ69を緩めることで調節部材67が保持部材61の上下方向の移動を許容する。すなわち、各調節部材67は、各保持部材61を梁部材60に対して所望の高さに調節可能にそれぞれ支持している。
【0046】
図4、図6及び図7に示すように、各保持部材61の下面は、シートCSの表面を保持した状態でシートCSの裏面に対して衝打記録ヘッド51による裏面印刷を施す場合に、衝打記録ヘッド51の衝打の衝撃をシートCS越しに受ける衝打面61aとされている。
【0047】
梁部材60の下面における各保持部材61と対応する位置には、搬送経路に沿って搬送されるシートCSを衝打面61aに案内するガイドフレーム75が各保持部材61の下端部を囲うようにそれぞれ設けられている。各ガイドフレーム75には、各保持部材61の衝打面61aを下側に露出させるための円形の貫通孔76(図6参照)がそれぞれ形成されている。
【0048】
図2〜図5及び図7に示すように、カバー部材62は、梁部材60の上側全体を覆った状態では、カバー部材62における各保持部材61と対応する長手方向の中央部には、各保持部材61を収容するための収容部77が設けられている。収容部77は、下側(梁部材60側)が開口する略四角箱状をなすとともに、カバー部材62における収容部77以外の部位に比べて盛り上がるように形成されている。そして、収容部77内に各保持部材61が収容されている。図7に示すように、収容部77は、搬送方向Yと平行な前後方向に対峙する前壁77a及び後壁77bを備える。前壁77a及び後壁77bは、前後方向において上側に向かうほど互いに近づくようにそれぞれ傾斜するとともに、収容部77の上壁77cはほぼ水平に延びている。
【0049】
図2〜図5及び図7に示すように、カバー部材62の収容部77における乾燥装置17側の位置には、複数(本実施形態では4つ)の開口部78が形成されている。各開口部78は、乾燥装置17側から温風を収容部77内に導入してその内部の保持部材61を温めるとともに梁部材60とカバー部材62との間に形成された通路を介して温風を、保持ユニット50の長手方向の両側に設けられた排気口からダクト(いずれも図示略)を通じてプリンター11の外部へ排気される。なお、衝打面61aが温められると、表面がインクで湿った状態のシートCSが、衝打面61aの熱によって乾きやすくなり、乾くことによって衝打面61aとシートCSの表面との摩擦力が低減されるため、裏面記録部20においてシートCSが円滑に搬送される。
【0050】
図2に示すように、シートCSの搬送経路における乾燥装置17とカバー部材62との間に配置された搬送ローラー対R3を構成する搬送ローラー25は、幅方向Xに延びる回転軸25aに複数(本実施形態では6つ)設けられている。各搬送ローラー25は、回転軸25aの軸方向における中央部を挟んだ両側に等間隔で3つずつ配置されている。同様に、搬送ローラー対R3を構成する従動ローラー35は、回転軸25aと平行に延びる回転軸35aに複数(本実施形態では6つ)設けられている。各従動ローラー35は、回転軸35aにおける各搬送ローラー25と上下方向に対応する位置にそれぞれ配置されている。
【0051】
この場合、図2に示すように、ガイドローラー63を構成する各コロ66は、搬送ローラー25間の軸方向の隙間に対応する位置に配置されている。このため、図7に示すように、従動ローラー35の回転軸35aの軸方向から見た断面において、コロ66(ローラー)の外周部と従動ローラー35(ローラー部)の外周部とが一部重複するように配置されている。このため、保持ユニット50が、小スペース化のためなどを理由に搬送ローラー対R3に比較的接近して配置される割に、コロ66の外径を比較的大きなサイズにすることが可能になっている。
【0052】
また、図7に示すように、ガイドローラー63(つまりコロ66)と、搬送ローラー対R2,R3に挟持されて搬送面に沿った位置にあるシートCSの表面(図7における二点鎖線)との間のギャップG2は、保持部材61の衝打面61aとシートCSの表面との間のギャップG1より大きな値に設定されている。さらに、ギャップG2は、梁部材60の底面とシートCSの表面との間のギャップG3よりも小さな値に設定されている。すなわち、3つのギャップG1〜G3は、G1<G2<G3の大小関係にある。
【0053】
図8に示すように、軸受部64は、2つの受け部64aと、2つの受け部64aの間に位置する1つの押え部64bとを備える。2つの受け部64aと1つの押え部64bとは、幅方向Xにコロ66の幅(軸線方向の長さ)よりも長い所定の間隔を開けてそれぞれ配置されている。図7及び図9(a)に示すように、受け部64aは、梁部材60の前端縁部から搬送方向Yへ延出するとともに断面L字状をなしている。また、押え部64bは、梁部材60の前端縁部から折り曲げられて上方向(Z方向)へ延出している。受け部64aの上方向(Z方向)に延出する部分と、押え部64bとの間には、搬送方向Yに支軸65の直径よりも若干長い間隔が確保されている。
【0054】
そして、図8及び図9(a)に示すように、支軸65は、断面L字状の受け部64aにおいてその下側から受けるように支持され、受け部64aの上方向に延出する部分と押え部64bとの間に挟まれることにより、搬送方向Yへの移動が規制された状態で保持されている。また、図8に示すように、カバー部材62の前端下部からは支軸65の両端と対応する位置に、一対の突起79が下方へ突出している。軸受部64に支持された状態の支軸65は、その両端が突起79に当たることでその軸方向への移動が規制されるようになっている。本例の場合、支軸65は、その軸方向へ僅かな移動が許容される。
【0055】
さらに、図9(a)に示すように、梁部材60とカバー部材62とが接合された状態において、前壁77aの下端部は、軸受部64を構成する受け部64aと押え部64bとの間の隙間に挿入されている。この場合、前壁77aの下端部は、支軸65から所定の隙間を隔てて位置するように位置設定されている。このため、支軸65は上下方向(Z方向)への僅かな変位が許容された状態にある。
【0056】
また、図9(b),(c)に示すように、コロ66は、円筒部66aと、円筒部66aの軸線方向(幅方向)の中央部に円筒部66aよりも短い幅でかつその中心に挿通孔66cが形成された円環状の支持部66bとを有している。すなわち、コロ66は、その軸線を通る断面形状が略H字型をなし、その軸線方向の両側(つまり支持部66bの両側)に一対の凹部80を有している。挿通孔66cは、支軸65の外径よりも大きなサイズに形成されている。このため、図9(b),(c)に示すように、コロ66は、その軸線が支軸65の軸線に対して所定の角度をなす姿勢になるまで、支軸65に対して傾くことが可能となっている。
【0057】
次に、プリンター11の作用について説明する。
さて、給紙部13のロール体RSから搬送経路の下流側に向かって繰り出されたシートST(連続紙)は、支持台48上で液体記録ヘッド47により表面印刷が施される。表面印刷後のシートSTは、搬送ローラー対R1によって搬送経路の下流側に搬送され、カッター16によって順次シートCS(単票紙)に切断される。切断後のシートCSは、搬送ローラー対R2によって裏面記録部20へ搬送される。なお、シートCSが比較的長い場合は、切断前のシートSTのまま裏面記録部20へ搬送され、裏面印刷後に切断される。
【0058】
裏面記録部20へ搬送されたシートCSは、表面(印刷面)が各保持部材61の衝打面61aによって保持されるとともに、裏面に衝打記録ヘッド51による衝打によって裏面印刷が施される。このとき、衝打記録ヘッド51による衝打の衝撃は、各保持部材61の衝打面61aによってシートCS越しに受け止められる。
【0059】
そして、裏面印刷後のシートCSは、搬送ローラー対R3によって乾燥装置17の下側の領域である乾燥領域へ搬送され、乾燥装置17の吹出口17aから吹き出される温風を受けて乾燥される。乾燥されたシートCSは、搬送ローラー対R4によって搬送経路の下流側に搬送され、カール矯正機構18によってカールが矯正された後、排紙口12aから排紙部12b上に排出される。
【0060】
このとき、裏面記録部20へ搬送されたシートCSは、搬送ローラー対R2に挟持されているものの、その先端が搬送ローラー対R3に到達していない段階では、カールによって上側へ反り気味の状態にある。そして、シートCSの先端が搬送ローラー対R3に到達する手前でガイドローラー63に当たって案内されることでローラー25,35間の隙間へスムーズに導入される。
【0061】
このとき、ガイドローラー63からシートCSの表面までのギャップG2が、梁部材60の底面とシートCSの表面までのギャップG3よりも小さく、ガイドローラー63が梁部材60の底面よりも下側に位置する。このため、シートCSの先端部が、ガイドローラー63を構成するコロ66に当たって搬送方向Yに斜め下方へ向かう経路で案内されるため、シートCSの先端部を搬送ローラー対R3の間に巧く導入することができる。
【0062】
また、衝打記録ヘッド51による衝打の際の衝撃がシートCSに加わったときには、シートCSはガイドローラー63のコロ66に当たる。コロ66の外周面は曲面であるため、シートCSはコロ66に当たっても傷付きにくい。特にコロ66は、従動ローラー35の間隔に相当する位置に、軸線方向からの視方向で従動ローラー35と一部重複するように配置され、比較的大きな直径のものが使用されている。このため、コロ66の外周面の曲率が比較的大きく、シートCSがコロ66に当たったときに傷付きにくい。また、搬送中のシートCSがコロ66に接触すると、コロ66が連れ回りするので、シートCSとコロ66との摩擦力も小さく済む。
【0063】
例えばコロを有するガイドローラーではなく、梁部材の金属板を曲げ加工して板状のガイド部を梁部材の前端縁部に延出させた従来の構成の場合、衝打記録ヘッドによる衝打の度にシートが板状のガイド部に当たり、これが原因でシートの表面の印刷面が傷付きやすかった。しかし、本実施形態では、衝打記録ヘッド51による衝打の際にシートCSは外周面が曲面となったコロ66に接触するうえ、その接触した際にコロ66が連れ回りするため、シートCSとコロ66との摩擦力が極めて低減され、シートCSの表面の印刷面が極めて傷付きにくくなる。この結果、表面印刷の品質の低下を極力抑えつつシートCSを搬送ローラー対R3の間へ搬送することができる。
【0064】
また、ガイドローラー63の下面からシートCSの表面までのギャップG2が、衝打面61aからシートCSの表面までのギャップG1よりも大きく設定されている。つまり、ガイドローラー63のコロ66の下端が衝打面61aよりも上方に位置する。このため、先端が上側へ反ったシートCSはコロ66に接触して搬送ローラー25,35間に案内できるうえ、そのときシートCSの先端がコロ66に当たる際の突入負荷を小さく抑えることができる。また、先端が上側に反っていないシートCS、及び搬送ローラー対R2,R3に挟持された状態で搬送されるシートCSなど搬送面に沿って搬送方向Yに比較的真っ直ぐ搬送されるシートCSについては、ガイドローラー63のコロ66に接触する頻度を極力低減できる。つまり、シートCSの表面の印刷面がコロ66に不要に接触する頻度を極力低減できる。よって、シートCSの表面とコロ66との接触摩擦に起因する印刷品質の低下を極力回避できる。
【0065】
また、ガイドローラー63は、幅方向Xにおいて保持部材61の配置領域を避けたその両側に配置されているので、衝打面61aと接触するシートCSの幅方向中央部分が、さらにガイドローラー63と接触することを避けることができる。すなわち、シートCSの幅方向Xにおける特定箇所が他の部位よりも集中的に保持ユニット50側と接触して傷付きやすくなることを回避できる。このようにシートCSの表面が衝打面61aと接触する箇所と、ガイドローラー63と接触する箇所が、幅方向Xにおいて異なる位置となるように接触箇所を幅方向Xに分散させているので、シートの特定箇所が衝打面61aとガイドローラー63との両方に接触してその接触箇所に傷が付きやすくなって表面印刷の品質が低下することを回避できるとともに、シートCSの幅方向中央部分の受ける接触摩擦力がシートCSの幅方向Xにおけるその他の部分の受ける接触摩擦力より高くなることを回避できる。
【0066】
さらに、ガイドローラー63の支軸65は上下方向に多少の変位が許容される状態で支持されているため、ガイドローラー63の支軸65は斜めに傾く姿勢をとることができる。また、コロ66の挿通孔66cが、支軸65の直径よりも大きな直径に形成されるとともに、コロ66の軸線方向両側に一対の凹部80が存在する。
【0067】
ところで、表面印刷後に裏面記録部20に搬送されてきたシートCSは、表面に付着しているインクの乾燥収縮により表面側へ反り気味となる場合がある。このとき、図10に示すように、シートCSはその幅方向Xの中央部で一番低い位置にある保持部材61の衝打面61aに当たり、その幅方向Xにおいて衝打面61aと当接した箇所の両側の部分がインクの乾燥収縮によって上側へ反り気味の状態になる場合がある。この場合、図10に示すように、ガイドローラー63の支軸65及び各コロ66はシートCSの反った表面に追従して傾きつつシートCSから受ける力により上方へ逃げるので、シートCSが各コロ66から受ける接触負荷が低減及び分散される。例えばコロが回転軸に固定されている構成であると、コロが図9(b),(c)に示す傾いた姿勢をとることができないので、コロのエッジがシートの表面に当たることにより、シートの表面の印刷面に傷が付くことになる。しかし、本実施形態のプリンター11によれば、この種の傷がシートCSに付くことを効果的に回避できる。
【0068】
以上、詳述した実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)保持ユニット50の底面側に衝打面61aよりも搬送方向下流側の位置にガイドローラー63を設けている。このため、衝打記録ヘッド51の衝打時の衝撃がシートCSに加わって、シートCSがガイドローラー63のコロ66に当たっても、シートCSはコロ66の曲面となった外周面に接触するので、シートCSの表面が傷付くことを効果的に回避できる。また、搬送中のシートCSがコロ66に当たったときにコロ66は連れ回りするので、シートCSは一層傷付きにくくなる。
【0069】
(2)保持ユニット50の長手方向(幅方向X)において保持部材61の配置領域を避けたその両側の領域にガイドローラー63を配置した。このため、シートCSにおける保持部材61の衝打面61aに摺動したシートCSの表面上の箇所が、さらにその搬送方向下流側でガイドローラー63にも摺動する事態を回避できる。よって、シートCSにおいて衝打面61aに接触する箇所と、各コロ66に接触する箇所とを分散でき、シートCSの特定箇所が集中的に接触することに起因する傷の発生を抑えることができる。
【0070】
(3)ガイドローラー63の外周面とシートCSの表面との間のギャップG2が、梁部材60の底面とシートCSの表面との間のギャップG3よりも小さくなるように設定した。このため、コロ66の下端が梁部材60の底面よりも下側に位置し、シートCSの先端部はコロ66に当たったときに斜め下側へ案内されるため、シートCSの先端を搬送ローラー対R3の間に巧く導入することができる。
【0071】
(4)ガイドローラー63の外周面とシートCSの表面との間のギャップG2が、衝打面61aとシートCSの表面との間のギャップG1よりも大きくなるように設定した。このため、コロ66の下端が衝打面61aよりも上方に位置するので、搬送ローラー対R2,R3に挟持された状態で搬送面に沿って真っ直ぐ搬送されるシートCSの表面(印刷面)が、コロ66に不要に接触する頻度を低減できる。よって、表面印刷の印刷面がコロ66と接触した際の摩擦などが原因で傷付き、印刷品質が低下する事態を回避できる。
【0072】
(5)コロ66の挿通孔66cが、支軸65の直径よりもかなり大きな径に形成されるとともに、コロ66の両側部に一対の凹部80が形成されている。また、支軸65の上下方向への僅かな変位が許容されている。このため、インクの乾燥収縮により表面側へ反り気味となったシートCSはその幅方向Xの中央部で一番位置の低い保持部材61の衝打面61aに当たり、幅方向Xにおいてその両側の部分が上側へ反り気味の状態にあっても、各コロ66はシートCSの反った表面に追従して図10に示すように傾く。よって、コロ66がシートCSに与える接触負荷が分散される。例えばコロが回転軸に固定されていると、幅方向外側の位置にあるコロほど接触負荷が高くなるとともに、コロがシートの反った面に追従できないため、コロのエッジがシートの反った表面に当たることになって、シートが傷付くことになるが、本実施形態によれば、この種の傷の発生を回避できる。
【0073】
なお、上記実施形態は以下の態様に変更してもよい。
・ガイドローラー63を保持ユニット50の長手方向全域に設けてもよい。
・ガイドローラーのローラー部分を、支軸を中心に回転可能なコロとしたが、回転軸に一体回転可能にローラー部が固定されたローラーとしてもよい。
【0074】
・ガイドローラー63を構成するコロ66の個数は、4個に限定されない。コロ66の数は1個、2個、3個でもよいし、さらに5個以上であってもよい。例えば1個であってもコロの軸長(幅)を長くすれば、シートの幅方向の必要な領域をコロにより案内できる。
【0075】
・コロの支軸を上下方向に変位可能な状態で支持したが、支軸は固定してもよい。
・ガイドローラーは、保持ユニット50のうちの一部ではなく、保持ユニット50と別部材の構成であってもよい。
【0076】
・第2の記録ヘッドは、液体記録ヘッド47のようなインクジェット方式に限定されず、例えば衝打タイプ(ドットインパクト方式)でもよい。
・液体噴射方式の第2の記録ヘッドを備えない記録装置、すなわちドットインパクト式プリンターに本発明を適用してもよい。この場合、衝打記録ヘッドによりシートの表面に印刷を施す構成でもよい。
【0077】
・ガイドローラーの配置領域は適宜変更してもよい。例えばシートを幅方向における一方の端部位置を基準に幅方向Xにガイドする構成においては、最小幅のシートが1つのコロと接触できる領域にガイドローラーを配置することが好ましい。
【0078】
・記録媒体を構成するシートST,CSは、紙以外に、プラスチックフィルムや金属箔などであってもよい。
・上記実施形態では、記録装置をインクジェット式プリンター11に具体化したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置を採用してもよい。液滴を噴射させる液体噴射ヘッド(第2の記録ヘッド)を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状体、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサー等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置においてさらに裏面印刷部を備えた構成の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0079】
11…記録装置の一例としてのインクジェット式プリンター、14…搬送手段の一例である搬送機構、15…表面記録部、20…裏面記録部、25…搬送ローラー、35…ローラー部の一例である従動ローラー、35a…回転軸、47…第2の記録ヘッドの一例である液体記録ヘッド、48…媒体支持部の一例である支持台、50…衝打面保持部の一例である保持ユニット、51…衝打タイプの記録ヘッドの一例である衝打記録ヘッド、60…梁部材、61…衝打面保持部の一例を構成する保持部材、61a…衝打面、62…カバー部材、63…ローラーの一例であるガイドローラー、64…軸受部、65…支軸、66…ローラーの一例を構成するコロ、ST,CS…記録媒体の一例であるシート、R3…搬送ローラー対、X…幅方向、Y…搬送方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により搬送される前記記録媒体に記録する衝打タイプの記録ヘッドと、
前記記録ヘッドと前記記録媒体の搬送経路を挟んで対向する位置に前記記録媒体と間隔を置いて配置される衝打面を備える衝打面保持部と、
前記衝打面より搬送方向下流側の位置に、前記搬送経路にある前記記録媒体に対して前記衝打面保持部と同じ側に間隔を置いて配置されるローラーと、
を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記ローラーの外周面と前記記録媒体との間の前記間隔が、前記衝打面と前記記録媒体との間の前記間隔より大きいことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記ローラーが、前記記録媒体の幅方向における前記衝打面の配置領域を避けて配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記搬送手段により搬送される前記記録媒体を保持する媒体保持面を備える媒体支持部と、
前記衝打タイプの記録ヘッドの搬送方向上流側に配置され、前記記録媒体の前記媒体保持面に保持される面と反対側の面に液体を噴射して記録する第2の記録ヘッドと、を更に備え、
前記衝打タイプの記録ヘッドは、前記記録媒体に対して前記第2の記録ヘッドが記録する面と反対側の面に記録することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記衝打面保持部は、前記記録媒体の搬送経路を横断するように架設された梁部材を備え、前記ローラーは前記梁部材の搬送方向下流側端側の位置に回転可能に設けられ、前記ローラーの外周面と前記記録媒体との間の前記間隔が、前記梁部材の底面と前記記録媒体との間の間隔より小さいことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記ローラーよりも前記搬送方向下流側の位置には、前記衝打タイプの記録ヘッドの記録対象である前記記録媒体を挟持しつつ搬送する搬送ローラー対が配置され、前記ローラーは、前記記録媒体を前記搬送ローラー対の間へ案内するガイドローラーであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項7】
前記搬送ローラー対を構成するローラー部は回転軸の軸方向に間隔を置いて複数設けられ、前記ローラーは、前記記録媒体の幅方向において前記ローラー部の間隔と対応する位置に配置されるとともに、前記ローラーの軸線方向からの視方向において前記ローラー部と一部重複する状態に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−86396(P2013−86396A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230014(P2011−230014)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】