説明

記録装置

【課題】搬送ベルトの安定的な搬送が可能であり、高品位記録が可能な記録装置を提供すること。
【解決手段】記録装置のベルト搬送部20の端部にピニオンギア21―2と、搬送ベルトの片側端部にラック21―1を備えて、ピニオンギア21―2と同軸で回転するエンコーダを設け、このエンコーダで計測した搬送量によって吐出タイミングを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体上に画像を形成する記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のインクジェット記録装置について説明する。従来のインクジェット記録装置は、ホストパーソナルコンピュータから送信された画像データを演算処理部によって2値化し、その2値化された画像データに基づいて記録媒体上に記録ヘッドからインクを吐出して画像を記録している(特許文献1参照)。以下、本発明の特徴である画像作造部の送り制御機構に関する従来技術を説明する。特許文献2の図23に記載の構造では、記録ヘッド直下をタイミングベルトが搬送しており、これによりベルトの送り量を安定させ、スベリ無く搬送が行われている。また同文献の図10では、ベルトに搬送力を伝える駆動ローラにエンコーダを設置し駆動ローラの送り量を随時測定しながらベルトの搬送が行われている。また特許文献3では、ベルトの送り量を安定させるためにベルト両端部にリニアエンコーダを設けてベルトの安定走行を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−187320号公報
【特許文献2】特開2005−015227号公報
【特許文献3】特開2010−217301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし従来のベルト搬送構成では、ローラ間に荷担されたベルトには、スラスト方向の制御はされておらず、単に直進的に送ることだけを考慮した構造となっている。またベルトの送りを調整するにも、ベルトの送り量を直接検出するのではなく、極力滑りが発生しにくい構造を採用しつつ、ローラにエンコーダを設置して、ローラの回転量からベルトの送り量を間接的に推定する方法が採用されていた。しかし、滑りが発生しにくい構造であっても、完全に滑りを防止することはできず、ベルトとローラの間で滑りが生じた場合には、ベルトの正確な送り量を検出することができなかった。またタイミングベルトを用いて送りの際の滑りに対応している構造では、画像面に対してベルトの振動が伝わってしまい記録品位が低下するという問題が存在していた。
【0005】
よって本発明は、搬送ベルトの安定的な搬送が可能であり、高品位記録が可能な記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのため本発明の記録装置は、複数の吐出口が設けられた複数の記録ヘッドから、搬送ベルトに搭載されて搬送される記録媒体に対してインクを吐出して記録を行う記録装置において、前記搬送ベルトは無端ベルトであり、前記搬送ベルトの側端部には、該搬送ベルトの側端部全周に亘って設けられたラックと、該ラックの歯と噛み合うように、前記搬送ベルトの前記記録媒体の搬送面の法線方向に回転軸を有する複数のピニオンギアと、前記ラックを挟んで前記ピニオンギアと対向する位置には、前記ラックの歯が形成された面と対向する面に当接した複数の付き当てコロと、前記ピニオンギアと同軸で回転する複数のエンコーダと、を備え、前記ピニオンギアの回転軸と前記付き当てコロの回転軸とを含む面内に、前記記録ヘッドの前記吐出口の中心が設けられており、前記複数のエンコーダ間では、情報の伝達が可能であり、前記複数のエンコーダからの情報に基づいて、前記搬送ベルトの搬送量および前記インクの吐出のタイミングを制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば記録装置は、無端ベルトである搬送ベルトと、その搬送ベルトの側端部には側端部全周に亘って設けられたラックと、ラックの歯と噛み合うように、搬送ベルトの記録媒体の搬送面の法線方向に回転軸を有する複数のピニオンギアと、を備えている。また記録装置は、ラックを挟んでピニオンギアと対向する位置には、ラックの歯が形成された面と対向する面に当接した複数の付き当てコロと、ピニオンギアと同軸で回転する複数のエンコーダと、を備えている。そして記録装置は、ピニオンギアの回転軸と付き当てコロの回転軸とを含む面内に、記録ヘッドの吐出口の中心が設けられており、複数のエンコーダ間では、情報の伝達が可能である。記録装置は、これら複数のエンコーダからの情報に基づいて、搬送ベルトの搬送量およびインクの吐出タイミングを制御する。これによって、搬送ベルトの安定的な搬送が可能であり、高品位記録が可能な記録装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明を適用可能なインクジェット記録装置の内部が分かるように示した断面図である。
【図2】本実施形態を適用可能な記録装置のベルト搬送部と記録ヘッドユニットとを示した図である。
【図3】ベルト搬送部の搬送ベルトを外した斜視図である。
【図4】複数のラックピニオンユニットがベルト搬送部に設けられた状態を示した斜視図である。
【図5】ラックピニオンユニットにおけるスラスト力を説明するための図である。
【図6】搬送ベルトを示した斜視図である。
【図7】ラックピニオンユニットと記録ヘッドユニットとの位置関係を示した図である。
【図8】(a)、(b)は、ベルト搬送部のラックピニオンユニットを示した斜視図である。
【図9】(a)、(b)は、ベルト搬送部における、ラックピニオンユニットと記録ヘッドユニットとの位置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
<記録装置の全体構成>
本発明に係る装置は、インクジェット方式の記録装置でベルト搬送部に吸引搬送方式を用いる構成の装置である。図1は、本発明を適用可能なインクジェット記録装置(以下、単に記録装置ともいう)1の内部が分かるように示した断面図である。インクジェット記録装置1は、給紙部10、ベルト搬送部20、記録ヘッドユニット30、排紙部40等を備えたライン式の記録装置である。給紙部10は、複数の記録媒体を積層して収容する給紙トレイ11と、その給紙トレイ11から記録媒体を一枚ずつ取り出す取出手段12と、取出手段12によって取り出された記録媒体を挟持してベルト搬送部20に搬送する第一搬送ロー7ラ25とを備えている。なお本実施形態では、記録媒体としては、普通紙、再生紙、光沢紙、厚紙等からなるカットシート状のものを用いている。
【0010】
給紙部10の上方に配設されたベルト搬送部20は、第一搬送ローラ25から第二搬送ローラ27に向かって搬送された記録媒体をガイドする第一ガイド部材26を備えている。またベルト搬送部20は、第二搬送ローラ27から搬送された記録媒体を搭載して搬送方向(矢印X方向)に搬送させる環状の搬送ベルト(無端ベルト)21と、第二搬送ローラ27から搬送された記録媒体を搬送ベルト21上に押圧する押圧ローラ24を備えている。更にベルト搬送部20は、搬送ベルト21から排紙部40に搬送する第三搬送ローラ29を備えている。尚、搬送ベルト21は、複数の張架ローラ23と搬送ベルト21を回動させる駆動ローラ22によって張架される。搬送ベルト21によって搬送された記録媒体P1に画像を形成する画像記録位置には、インクを吐出して記録媒体P1上に画像を記録する記録ヘッドユニット30が備えられている。インクジェット方式によって記録媒体P1上に画像を記録する記録ヘッドユニット30は、搬送ベルト21の上部に配置され、搬送方向矢印Xに沿って画像領域が満足できるユニット数で配置される。各記録ヘッドユニット30内は、黒色のインクを吐出する記録ヘッドと、シアン色のインクを吐出する記録ヘッドと、マゼンダ色のインクを吐出する記録ヘッドと、イエロー色のインクを吐出する記録ヘッドの4色が1セットとなって構成されている。
【0011】
各記録ヘッドには、インクを記録媒体P1上に吐出する複数のノズルが設けられている。インクを記録媒体P1上に吐出する方法として、バブルジェット方式やピエゾ方式がある。バブルジェット方式とは、通電すると発熱する発熱ヒータを用いることで、発熱ヒータ近傍のインクを膜沸騰させ、ノズル内のインクをノズル吐出口からノズル外部に吐出する方法である。またピエゾ方式とは、電圧を加えると変形するピエゾ素子(圧電素子)を用いることで、ノズル内のインク容積を変化させ、ノズル内のインクを吐出口からノズル外部に吐出する方法である。
【0012】
上記方法によって、記録媒体P1上に記録ヘッドユニット30からインクを吐出し、記録媒体P1上に画像を記録する。その後、記録媒体P1は、排紙部40へ順次排出される。
【0013】
<記録装置の特徴的構成>
このような記録装置における画像形成プロセスの中で、カラー画像の色表現方法として、記録ヘッドから吐出された最初のインク滴上に次のインク滴を重ねて色を表現している。この際、最初のインク滴と後のインク滴がうまく重ならないと色の表現ができないため、搬送ベルト21は、吐出するタイミングに合わせて、一定の送り量で搬送されなければならない。
【0014】
図2は、本実施形態を適用可能な記録装置のベルト搬送部20と記録ヘッドユニット30とを示した図であり、図3は、ベルト搬送部20の搬送ベルト21を外した斜視図である。記録装置では、さらに搬送と直交するスラスト方向(矢印A方向)においても同様に搬送ベルト21の振れ(図2記載の点線)が発生しない構造でなくてはならない。しかしながら従来の記録装置においては、画像領域上流側搬送ローラから下流側搬送ローラまでの間で、搬送ベルト21の揺れ(図2記載の点線)を規制する構成にはなっていなかった。
【0015】
本発明の記録装置におけるベルト搬送部20の端部にピニオンギア21―2を備え、搬送ベルトの片側側端部全周にラック21―1を備えている(図3参照)。これらのラック21―1及びピニオンギア21―2の歯面形状は、インボリュート曲線をもちいた歯面形状である。ピニオンギア21―2は、ベルト搬送部20の端部で記録媒体吸着面(搬送面)に対して水平になるように設けられており、搬送ベルト21の記録媒体吸着面に沿って設けられたラック21−1と噛み合って従動するように構成されている。つまりピニオンギア21―2は、記録媒体吸着面の法線方向に、その回転軸を備えており、記録媒体吸着面と平行な面に沿って回転する。さらにラック21―1の背面であり、ピニオンギア21−2と対向する位置で、搬送ベルト21の端部およびラック21―1の背面と接する位置に、付き当てコロ21―3が当接するように設けられている。このラック21―1、ピニオンギア21―2、付き当てコロ21―3を1つのユニットであるラックピニオンユニット50として、画像形成の基準となる位置に複数配置している。
【0016】
図4は、複数のラックピニオンユニット50がベルト搬送部20に設けられた状態を示した斜視図である。なお、ラック21−1に関しては、通常、搬送ベルト21に設けられているため、単体で図のように存在することは無いが、ラックピニオンユニット50の構成の理解を容易にするために搬送ベルト21は不図示としている。図のように複数のラックピニオンユニット50がベルト搬送部20の端部に設けられている。
【0017】
図5は、ラックピニオンユニット50におけるスラスト力を説明するための図である。図の矢印Aはスラスト力を示しており、ピニオンギア21−2から付き当てコロ21−3に対して、ラック21−1を介してかかる力である。このスラスト力は、ラック−ピニオンギアのギア間の歯面で発生する力の分力である。
【0018】
図6は、搬送ベルト21を示した斜視図である。搬送ベルト21の片側側端部には、搬送ベルト21の全周に亘ってラック21−1が設けられており、ラック21−1の歯は、搬送ベルト21の端部から内側の記録媒体吸着面に向かって設けられている。
【0019】
図7は、ラックピニオンユニット50と記録ヘッドユニット30との位置関係を示した図である。ラックピニオンユニット50は、ベルト搬送部20の記録領域における、最上流側にある記録ヘッドのインク吐出口の中心位置を基準として、ピニオンギア21−2、付き当てコロ21−3間の中心線が重なる位置に配置されている。また本発明の記録装置においては、記録ヘッドユニット30は4色で1ユニット化されており、これが3ユニット配置されている。これに対しそれぞれの記録ヘッドユニット30の最上流位置の記録ヘッドにラックピニオンユニット50を配置している。
【0020】
図8(a)、(b)は、ベルト搬送部20のラックピニオンユニット50を示した斜視図である。また、図9(a)、(b)は、ベルト搬送部20における、ラックピニオンユニット50と記録ヘッドユニット30との位置を説明するための図である。図8(a)のように、ピニオンギア21−2の下部には、ピニオンギア21−2と同軸で回転するエンコーダ21―4が設けられている。このエンコーダ21−4の送り量が、搬送ベルト21の送り量となるので、滑りなどの外乱無しで搬送ベルト21の搬送量を計測することができる。そして、記録ヘッドユニット30における最上流側の記録ヘッド(1色目)で計測した送り量から、2色目、次いで3色目の記録ヘッドで搬送におけるズレが生じても、吐出タイミングの補正が可能となる。また本発明では、上流側におけるラックピニオンユニット50の補正値(情報)を下流側の各ラックピニオンユニット50に伝達している。このように、各ラックピニオンユニット50における上流側の記録ヘッドとの間での補正がリンクすることで、ラックピニオンユニット50間での記録においても補正が可能となり、その結果、画像幅全域での補正が可能となる。
【0021】
さらにピニオンギア21―2は、画像形成面に対して平行な面内で回転する構成であることから、記録の際に画像への振動の影響を与えない構成となっている。また、図8(b)のように、エンコーダ21―4の下部には、スラスト力を発生させるためにピニオンギア21−2と同軸上にブレーキ(トルクリミッタ)21−5を配置している。このブレーキ21−5による軸トルクをスラスト方向の分力よりも大きく設定することで、スラスト力を得る構造となっている。また、本実施形態の場合、スラスト力発生手法はブレーキ21−5によるものだが、それ以外にも、ピニオンギア21―2自体が駆動することでも同様のスラスト力を得ることができる。これにより搬送ベルト21は、図2のスラスト方向(矢印A方向)に対し付き当てコロ21―3によりスラスト方向位置を固定することができ、図7に記載の記録ヘッドの端部までの距離がブレることがない。また図9(b)に示すように、ラックピニオンユニット50の固定位置が、記録ヘッドユニット30における最上流側に配置された記録ヘッドのインク滴着弾位置である。そのため、それに続く3色の各記録ヘッドに関しても、スラスト方向の着弾位置制御が容易に制御可能となる。
【0022】
このように、記録装置のベルト搬送部20の端部にピニオンギア21―2と、搬送ベルトの片側端部にラック21―1を備えて、ピニオンギア21―2と同軸で回転するエンコーダを設け、このエンコーダで計測した搬送量によって吐出タイミングを制御する。これによって、搬送ベルトの安定的な搬送が可能であり、高品位記録が可能な記録装置を実現することができた。
【符号の説明】
【0023】
20 ベルト搬送部
21 搬送ベルト
21―1 ラック
21―2 ピニオンギア
21―3 コロ
21―4 エンコーダ
21―5 ブレーキ
30 記録ヘッドユニット
40 排紙部
50 ラックピニオンユニット
P1 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の吐出口が設けられた複数の記録ヘッドから、搬送ベルトに搭載されて搬送される記録媒体に対してインクを吐出して記録を行う記録装置において、
前記搬送ベルトは無端ベルトであり、前記搬送ベルトの側端部には、該搬送ベルトの側端部全周に亘って設けられたラックと、
該ラックの歯と噛み合うように、前記搬送ベルトの前記記録媒体の搬送面の法線方向に回転軸を有する複数のピニオンギアと、
前記ラックを挟んで前記ピニオンギアと対向する位置には、前記ラックの歯が形成された面と対向する面に当接した複数の付き当てコロと、
前記ピニオンギアと同軸で回転する複数のエンコーダと、を備え、
前記ピニオンギアの回転軸と前記付き当てコロの回転軸とを含む面内に、前記記録ヘッドの前記吐出口の中心が設けられており、
前記複数のエンコーダどうしの間では、情報の伝達が可能であり、
前記複数のエンコーダからの情報に基づいて、前記搬送ベルトの搬送量および前記インクの吐出のタイミングを制御することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記ピニオンギアの回転軸と前記付き当てコロの回転軸とを含む面内に設けられている前記吐出口の中心は、前記複数の記録ヘッドの前記記録媒体の搬送方向における最上流に位置する前記記録ヘッドの前記吐出口の中心であることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記ピニオンギアと同軸で回転する複数のエンコーダは、前記ピニオンギアと平行に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記ピニオンギアが前記ラックに従動の場合には、前記ピニオンギアの同軸上にブレーキが配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の記録装置。
【請求項5】
前記ラックの歯面形状は、インボリュート曲線をもちいた歯面形状であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の記録装置。
【請求項6】
前記ピニオンギアの歯面形状は、インボリュート曲線をもちいた歯面形状であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の記録装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−86411(P2013−86411A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230535(P2011−230535)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】