説明

設備保全システム

【課題】 プラント監視システムなどのリアルタイム系データベースからオンラインで故障情報を取り込み、それぞれの対処方法を選択方式により入力するインターフェースにより、自動的に故障データベースが生成されるとともに容易にFMEAシートも生成でき、そのFMEAシートによる設備保全システムを得る。
【解決手段】 機能故障モード影響解析(FMEA:Failure Mode and Effects Analysis)シートに、設備保全個所の特定、保全計画の立案、予防保全及び事後保全の実施からなる保全機能を加えたもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プロセス監視システムなどのリアルタイム系データベースからのオンライン情報を元に生成した機能故障モード影響解析(FMEA:Failure Mode and Effects Analysis)シートを使用した設備保全システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に設備保全システムは、保全箇所の特定及びそれに基づく保全計画の立案、並びに予防保全の実施及び事後保全の実施とがなされ、その結果がデータベースに記録・保管され、その後の保全管理業務に再利用されるワークフローからなる。この保全個所の特定や保全計画の立案は、通常、経験則に則って行うシステムが多く、計画保全を最適に立案するための最適化ツールを使用する技術もあるが、プロセス監視システムとは別にオフラインで設置されるため、設備管理台帳の生成や保全実績の反映など労力が必要となっている。その代表的な従来技術として、設備保全個所の特定の工程、保全計画の立案工程、予防保全および事後保全の実施工程からなるプラント設備保全の最適化システムにおいて、プラント機器材料の経年劣化に対して材料劣化・腐食傾向等を高度技術で解析し、定量的に評価を行うとともに、機能故障モード影響解析による動機器の故障に対する定量的評価を行う手段、前記定量的評価に基づいて保全個所を定量的に特定する手段、影響度評価手法を用いて故障の発生頻度とその故障発生による影響度を設定し、(頻度*影響度)をリスクとして評価する手段を備えた設備保全の最適化システムがある(例えば、特許文献1参照)。また、他の従来技術として、FMEAシートの作成時において、FMEAシート作成に関する所定のデータをデータベースから検索するとともに、この検索されたデータを、ユーザによるデータ入力の候補とする。データベースに登録されていない新規なデータはユーザからの入力を受け付け、作成中のFMEAシートに反映させるとともに、データベースに登録する。FMEAシート作成に関する所定のデータを故障メカニズムとし、故障メカニズムを、部品の仕様である部品仕様と、部品が置かれる環境である部品環境(ストレス)とに分解するFMEAシステムがある(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002-123314号公報
【特許文献2】特開2003-36278号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の設備保全システムは、経験則のみで保全作業が計画され実施されており、機能故障モード影響解析(FMEA)を用いて定量的評価を行うことで、設備保全の最適化を図ってはいるが、実際のプラント監視システムなどのリアルタイム系データベースとは独立したオフライン系のシステムとなっているため、設備機器管理台帳作成や保全実績の反映など、労力が必要となっている。また、FMEAシートの生成時においても、ノウハウの蓄積などはオフライン系のシステムとなっており、手作業でデータベースを生成しなければならないなどの問題があった。
【0005】
また、保全管理には、PDCA(Plan Do Check Action)のサイクルを確実に実施する活動が重要であるが、上記のように基盤作りに大変な労力を費やしており、オフライン系であるが故に、徐々に使われなくなることが多かった。
【0006】
特許文献1に記載の設備保全の最適化システムは、FMEA手法の利用をしているが、その作成方法については言及されていない。
【0007】
また、特許文献2に記載のFMEAシステムは、ノウハウを蓄積してきたデータベースを元にFMEAを簡単に作成できる構造ではあるが、プラント監視システムなどのリアルタイム系データベースからのオンライン故障情報を蓄積し、FMEAを作成し、設備保全に利用するようなシステムになっていない。
【0008】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、プラント監視システムなどのリアルタイム系データベースからオンラインで故障情報を取り込み、それぞれの対処方法を選択方式により簡単に入力するインターフェースにより、自動的に故障データベースが生成されるとともに容易にFMEAシートも生成でき、そのFMEAシートによる設備保全システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係るFMEAシートを使用した設備保全システムにおいては、機能故障モード影響解析(FMEA:Failure Mode and Effects Analysis)シートに、設備保全個所の特定、保全計画の立案、予防保全及び事後保全の実施からなる保全機能を加えたものである。
【0010】
また、FMEA(機能故障モード影響解析)シート生成に用いられる各種データが登録されたデータベースを備え、FMEAシート生成対象である装置を選定し、装置の故障モードを抽出し、故障モードの故障メカニズムを検討するFMEAシートを生成するためにユーザにより用いられる保全管理システムの一部であるFMEAシート生成システムであって、FMEAシートの生成時において、FMEAシート生成に関する所定のデータをデータベースから検索する検索手段と、データベースから検索されたデータをユーザによるデータ入力の候補とするデータ入力候補手段と、データベースに登録されていない新規なデータのユーザからの入力を受け付ける新規データ受付手段と、新規データを生成中のFMEAシートに反映させる新規データ反映手段と、新規データをデータベースに登録する新規データ登録手段とを備えるものである。
【0011】
また、FMEA(機能故障モード影響解析)シート生成に用いられる各種データが登録されたデータベースを生成するためのデータベースを備え、プロセス監視システムなどのリアルタイム系データベースよりFMEAシート生成対象である装置を選定し、装置の故障モード、故障原因、復旧処置を抽出する手段と、抽出したデータからFTA(Fault Tree Analysis)図を生成するためにユーザにより用いられる保全管理システムの一部であるFTA図生成システムであって、FTA図の生成時において、FTA図生成に関する所定のデータをデータベースから検索する検索手段と、データベースから検索されたデータをユーザによるデータ入力の候補とするデータ入力候補手段と、データベースに登録されていない新規なデータのユーザからの入力を受け付ける新規データ受付手段と、新規データを生成中のFTA図に反映させる新規データ反映手段と、新規データをデータベースに登録する新規データ登録手段とを備えるものである。
【0012】
また、プロセス監視システムなどのリアルタイム系データベースに対し、装置の故障モード、故障原因、復旧処置などを入力し、この入力情報をデータベースに格納する格納手段を備えるものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、プロセス監視システムのリアルタイム系データベース情報をもとにFTA図を自動生成し、FTA図をもとに日々の改善活動で真因を導き出してFTA図データベースを生成し、そのFTA図データベースをもとにFMEA図を自動生成し、FMEA図をもとに日々の改善活動で対策案を導き出してFMEAデータベースを生成し、そのFMEAの対策案をそのまま保全管理指標として用いることで、専用の設備保全システムを導入しなくても、日々の業務に密着した設備保全システムとして運用することができ、ひいては、対象プロセスの生産性向上に大きく貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
実施の形態1.
図1はこの発明を実施するための実施の形態1における設備保全システムの全体構成を示すシステム構成図である。
図1に示すように、この実施の形態1におけるFMEAシートによる保全管理システムは、FTA(Fault Tree Analysis)図生成部2及びFTA図データベース6を備えたFTA図作成システムと、FMEAシート生成部3及びFMEAデータベース7を備えたFMEAシート作成システムと、保全通知部4を備えた保全システムとで構成される。また、FMEAシートによる保全管理システムの元となるシステムとして、装置停止情報入力部1、リアルタイムデータベース5及び故障発生時データベース生成処理部8を備えたプロセス監視システムがある。
【0015】
次に、この実施の形態1のFMEAシートによる保全管理システムの動作について、図2〜図5に基づいて説明する。
【0016】
図2はプロセス監視システム上で実行する装置停止情報入力画面10を示している。プロセス監視を行っている信号で故障が発生した場合に、故障発生時データベース生成処理8によりリアルタイムデータベース5内に1項目データが追加され、監視画面上に通知される。監視員は故障原因対策後に、担当者を選択し、装置停止情報入力画面10を表示すると、この画面上に発生時刻11、故障装置12、故障の現象13、復旧時刻17及び担当者名18があらかじめ表示される。故障モード14は、既にリアルタイムデータベース5に登録済みの故障の場合はプルダウン選択で、新規故障の場合は直接入力を行う。同様に処置16についても、既にリアルタイムデータべース5に登録済みの処置の場合はプルダウン選択で、新規処置の場合は直接入力を行う。原因15については、その場で原因が判るものは直接入力し、不明な場合は、後日実施する改善活動の中で真因を追究するため、ここでの入力の必要はない。その他19については、改善活動の参考になる項目をメモ入力する。
【0017】
図3はこの実施の形態1のFMEAシートによる保全管理システムのFTA図生成部2を示している。FTA図20を生成したい装置名11とカレンダ指定による検索範囲選択により、FTA図20が生成される。FTA図20はFTA図データベース6に保存されているため、装置名11とカレンダ指定による検索範囲選択が一致していれば、過去のデータをベースにリアルタイムデータベース5からの検索を行い(検索手段)、データベースから検索されたデータをユーザによるデータ入力の候補とする(データ入力候補手段)。該当データがない場合は、リアルタイムデータベース5から新規でFTA図20の生成を行う。このようにFTA図20は常に自動生成されるわけではないため、一旦FTA図データベース6に作成されていればデータ入力候補手段により追記されていき、該当データがない場合は新規生成される(新規データ受付手段、新規データ反映手段及び新規データ登録手段)。また、予め手入力でFTA図データベースを作成しておくことも可能である。図3に示すFTA図20は左から、装置名11、故障モード14、故障原因15、処置16、その他19の順にツリー状に表示される。そして、改善活動の中でFTA図20を元に、例えば未入力の故障モード22、未入力の故障原因23、未入力の処置24等の追求を行う。その際、その他19にコメントの記入があれば真因追究に大いに役立つので、前記装置停止情報入力画面10では極力情報を入力しておくことが大事である。
【0018】
図4はこの実施の形態1のFMEAシートによる保全管理システムのFMEAシート生成部3を示している。FMEAシート30を生成したい装置名11の検索範囲選択により、FMEAシート30が生成される。FMEAシート30はFMEAデータベース7に保存されているため、装置名11のデータベースが存在していれば、過去のデータをベースにFTA図データベース6からの検索を行い(検索手段)、データベースから検索されたデータをユーザによるデータ入力の候補とする(データ入力候補手段)。ここで差異があれば反映するが、該当データがない場合は、FMEAデータベース7から新規でFMEAシート30の生成を行う。このようにFMEAシート30は常に自動生成されるわけではないため、一旦FMEAデータベース7に作成されていればデータ入力候補手段により追記されていき、該当データがない場合は新規生成される(新規データ受付手段、新規データ反映手段及び新規データ登録手段)。また、予め手入力でFMEAデータベースを作成しておくことも可能である。通常のFMEAシート30では保全管理システムとして、また、改善活動としても使いづらいため、この実施の形態1のFMEAシート30のような形に、通常のFMEAシートの項目名を置き換え、最後に保全管理データ39を追加したFMEAシート30としている。FTA図20の、装置名11、故障モード14、故障原因15、処置16、担当18がそのままFMEAシート30の各項目と対応している。改善活動の中で、影響範囲31より深刻度32を、処置16により頻度33を、現状の管理指標34より検出度35を、深刻度32と頻度33と検出度35とにより優先度36を、それぞれ算出して、優先度36の高い故障モード14から対策案37の検討を行う。例えば、30日に1度交換していた部品が原因で故障が発生していた場合、適正な交換周期を導き出して、保全管理データ39を生成する。検討の実施状況は処置状況38で確認することができる。
【0019】
図5はこの実施の形態1のFMEAシートによる保全管理システムの保全通知部4を示している。FMEAシート生成部3で生成した保全データ39を元に、各機器の運転状態のモニタリングや、運転信号の積算を行い、交換時期などの保全情報40をプロセス監視システムに表示することで、保全管理システムとして運用を行う。
【0020】
以上のように、この実施の形態1のFMEAシートによる設備保全システムにより、実際のプラントに応じたFTA図やFMEAシートが一括で自動生成されるだけでなく、改善活動の中で知らず知らずのうちに見直しがされ充実化されていくとともに、その結果が保全管理として活用されるシステムとなるものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施の形態1における設備保全システムの全体構成を示すシステム構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1における設備保全システムのプロセス監視システムでの装置停止情報入力画面図を示す。
【図3】この発明の実施の形態1おける設備保全システムのFTA図を示す。
【図4】この発明の実施の形態1おける設備保全システムのFMEAシート図を示す。
【図5】この発明の実施の形態1おける設備保全システムの保全通知画面図を示す。
【符号の説明】
【0022】
1 装置停止情報入力部
2 FTA図生成部
3 FMEAシート生成部
4 保全通知部
5 プロセス監視システムのリアルタイムデータベース
6 FTA図作成システムのFTA図データベース
7 FMEAシート作成システムのFMEAデータベース
8 故障発生時データベース生成処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備保全個所の特定、保全計画の立案、予防保全及び事後保全の実施が行われる設備保全システムにおいて、
機能故障モード影響解析(FMEA:Failure Mode and Effects Analysis)シートに、設備保全個所の特定、保全計画の立案、予防保全及び事後保全の実施からなる保全機能を加えたことを特徴とするFMEAシートを使用した設備保全システム。
【請求項2】
FMEA(機能故障モード影響解析)シート生成に用いられる各種データが登録されたデータベースを備え、FMEAシート生成対象である装置を選定し、前記装置の故障モードを抽出し、前記故障モードの故障メカニズムを検討するFMEAシートを生成するためにユーザにより用いられる保全管理システムの一部であるFMEAシート生成システムであって、
前記FMEAシートの生成時において、FMEAシート生成に関する所定のデータを前記データベースから検索する検索手段と、
前記データベースから検索されたデータをユーザによるデータ入力の候補とするデータ入力候補手段と、
前記データベースに登録されていない新規なデータの前記ユーザからの入力を受け付ける新規データ受付手段と、
前記新規データを生成中のFMEAシートに反映させる新規データ反映手段と、
前記新規データを前記データベースに登録する新規データ登録手段と
を備えることを特徴とする設備保全システム。
【請求項3】
FMEA(機能故障モード影響解析)シート生成に用いられる各種データが登録されたデータベースを生成するためのデータベースを備え、プロセス監視システムなどのリアルタイム系データベースよりFMEAシート生成対象である装置を選定し、前記装置の故障モード、故障原因、復旧処置を抽出する手段と、前記抽出したデータからFTA(Fault Tree Analysis)図を生成するためにユーザにより用いられる保全管理システムの一部であるFTA図生成システムであって、
前記FTA図の生成時において、FTA図生成に関する所定のデータを前記データベースから検索する検索手段と、
前記データベースから検索されたデータをユーザによるデータ入力の候補とするデータ入力候補手段と、
前記データベースに登録されていない新規なデータの前記ユーザからの入力を受け付ける新規データ受付手段と、
前記新規データを生成中のFTA図に反映させる新規データ反映手段と、
前記新規データを前記データベースに登録する新規データ登録手段と
を備えることを特徴とする設備保全システム。
【請求項4】
プロセス監視システムなどのリアルタイム系データベースに対し、装置の故障モード、故障原因、復旧処置などを入力し、この入力情報をデータベースに格納する格納手段を備えることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の設備保全システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−4219(P2006−4219A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−180568(P2004−180568)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(501137636)東芝三菱電機産業システム株式会社 (904)
【Fターム(参考)】