説明

設定値管理装置、設定値管理方法及びプログラム

【課題】ロジック図に記載される既設の処理ロジックを別の処理ロジックに置き換える際に、各処理ロジックで必要とされる設定値を変換し、ロジック図の品質を向上する。
【解決手段】設定値管理装置20は、既設の第1の処理ロジックが表される第1のロジック図から生成され、第1の処理ロジックの処理順が示されるソースファイルより、第1の処理ロジックで用いられる第1の設定値を抽出して、第1の設定値を管理する設定値管理表に抽出した第1の設定値を書き込む。そして、設定値管理表から読み出した第1の設定値を、第1の処理ロジックから置き換えられる第2の処理ロジックが用いる第2の設定値に変換して、第2の設定値を設定値管理表に書き込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設定値管理装置、設定値管理方法及びプログラムに関する。例えば、プラント等の設備で用いられる処理ロジックを置き換え、この処理ロジックで用いられる設定値を管理する際に有用な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧延プラント、発電プラント等の各種プラントでは、デジタルデータを入出力するデジタル制御装置(コンピュータ)によって動作が制御されることが一般的であった。デジタル制御装置が実行するプログラムは、処理ロジックが記載されたロジック図に基づいてプログラム作成装置が作成していた。
【0003】
プログラム作成装置がロジック図からプログラムを作成する際には、ロジック図をモジュール分割した形で入力し、コンパイラでロジック図を解析して中間ソースプログラムを作成する。その後、中間ソースプログラムをリンカで解析した後、デジタル制御装置にローディングされることにより、デジタル制御装置がプログラムを実行することが可能となる。また、プログラムはロジック図の形式で監視画面に表示され、デジタル制御装置の動作の監視に利用されている。
【0004】
ここで、プラントでは、例えば、ボイラーやタービン等の設備で用いられる蒸気の温度を熱電対等のセンサで計測し、このセンサが出力する測定値を工学値変換して求めた工学値により設備の稼働状況を把握している。以下の説明では、所定の測定範囲内で測定される工学値を所定の範囲に均等に割り振ることを「正規化」と呼ぶ。例えば、工学値が0℃〜300℃の間で推移する場合に、正規化された設定値は0%〜100%の間で推移する。このように、工学値の下限値を0%とし、上限値を100%とするように百分率で求まる正規化された設定値を用いた処理ロジックにより設備の制御が行われる。
【0005】
近年は、情報処理の技術が発展したことに伴い、ネットワークで接続される多数のデジタル制御装置が自律して設備の動作を制御すると共に、デジタル制御装置同士がリアルタイムで正規化された設定値を取得することが可能な分散制御システムが構築されている。上述したように、分散制御システムでは、各設備が自律して動作を制御するため、設備毎にメンテナンス等を行うことが可能である。
【0006】
ここで、分散制御システムで用いられる処理ロジックを、新たに別の処理ロジックに置き換えて分散制御システムを更新する運用が行われる場合がある。この更新に際して、置き換え対象となる新たな処理ロジックについては、既設の処理ロジックが制御する動作をそのまま引き継ぐことにより、置き換え前後で同じ動作をすることが求められる。つまり、既設の処理ロジックが演算する工学値と、新たな処理ロジックが演算する工学値は同じであることが必要である。同様に正規化された設定値についても、既設の処理ロジックと新たな処理ロジックがそれぞれ演算する値が同じでなければならない。
【0007】
処理ロジックを置き換える際には、以下の手順で作業が行われる。始めに、作業者が既設の処理ロジックから予め正規化するための設定値を取得する。次に、作業者が設定値を目視確認しながら、新たな処理ロジックで用いられる設定値を手作業により計算する。そして、新たな処理ロジックに設定値を手作業で反映する。このような作業を経て処理ロジックの置き換えが完了していた。ここで目視確認には、処理ロジックの構成や計算した設定値等が記載されるロジック図が用いられていた。
【0008】
特許文献1には、処理ロジックを用いたプロセス制御を実行中に、プラントの運転制約条件データを設定変更とし、これにより制御特性を調整可能とする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−265201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、処理ロジックに入出力する設定値の数は多く、置き換え前後の処理ロジックから同じ出力結果を得るためには、出力結果の不整合が生じないように設定値を計算し、管理しなければならない。しかし、従来は処理ロジックの置き換えに際して作業者が人手により設定値を計算しており、作業量の多さから、作業者に大きな負担がかかっていた。また、設定値の計算間違いや誤記載等により、置き換えた処理ロジックを用いて行う制御時の品質が不安定となるため、このようなヒューマンエラーをなくす必要があった。
【0011】
本発明はこのような状況に鑑みて成されたものであり、更新前後の設定値を管理するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、既設の第1の処理ロジックが表される第1のロジック図から生成され、第1の処理ロジックの処理順が示されるソースファイルより、第1の処理ロジックで用いられる第1の設定値を抽出して、第1の設定値を管理する設定値管理表に抽出した第1の設定値を書き込む。
そして、設定値管理表から読み出した第1の設定値を、第1の処理ロジックから置き換えられる第2の処理ロジックが用いる第2の設定値に変換して、第2の設定値を設定値管理表に書き込むものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第1のロジック図に基づいて第1及び第2の設定値が書き込まれる設定値管理表の作成が自動的に行われる。このため、処理ロジックの置き換え前後で第1及び第2の設定値の不整合が生じないロジック図を作成することができるため、作業者が設定値の確認に要する負担を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態における既設ロジックの設定値と更新後ロジックの設定値の対応関係を管理する設定値変換管理ツールの内部構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施の形態における既設ロジック図の記載例を示す説明図である。
【図3】本発明の一実施の形態における既設ロジックと更新後ロジックにおけるマクロの機能例を示す説明図である。
【図4】本発明の一実施の形態における既設ソースファイルの記載例を示す説明図である。
【図5】本発明の一実施の形態における既設ソースファイルの設定値を、設定値管理表に書き込む機能の例を示す説明図である。
【図6】本発明の一実施の形態における更新後ロジック図の記載例を示す説明図である。
【図7】本発明の一実施の形態における設定値管理表の詳細なデータの例を示す説明図である。
【図8】本発明の一実施の形態における照合結果リストの記載例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態(以下、「本例」という。)について、添付図面を参照して説明する。本実施の形態では、プラント等の動作を制御するデジタル制御装置で用いられる処理ロジックの一部を置き換える際に、この処理ロジックで用いられる各種の設定値を管理して、置き換えられた処理ロジックに設定値を反映する設定値管理装置20に適用した例について説明する。なお、本例の設定値管理装置20は、プログラムを実行することにより、内部ブロックが連携して行う設定値管理方法を実現するものである。以下の説明では、既設の第1の処理ロジックを「既設ロジック」と呼び、既設ロジックを置き換えて更新した第2の処理ロジックを「更新後ロジック」と呼ぶ。
【0016】
図1は、既設ロジックの設定値と更新後ロジックの設定値の対応関係を管理する設定値管理装置20の内部構成例を示す。
設定値管理装置20は、既設ロジック及び更新後ロジックで用いられる設定値(工学値及び正規化値)を管理する設定値管理ツール21を備える。既設ロジック及び更新後ロジックでは、必要とされる工学値が正規化された設定値を入出力のパラメータとして処理に用いている。また、設定値管理装置20は、既設ロジック図D1から既設ソースファイルD2を生成するソースファイル生成部1を備えており、この既設ソースファイルD2が設定値管理ツール21に入力される。
【0017】
設定値管理ツール21は、既設ロジックが表される既設ロジック図D1(第1のロジック図)と、既設ロジックの処理順が示される既設ソースファイルD2(ソースファイル)を用いて、既設ロジックから更新後ロジックへの設定値の変換を管理する。また、設定値管理ツール21は、後述する正規化更新後ロジック図D3(第2のロジック図)、工学値化更新後ロジック図D4(第3のロジック図)を用いて、作業者の手動入力22で作成された更新後ロジックと、設定値管理ツール21が自動で作成した更新後ロジックの照合結果を表す照合結果リストD5を紙媒体等に印刷したり、不図示の表示装置の画面に表示したりする。これらのロジック図等の詳細な内容は後述する。
【0018】
また、設定値管理ツール21は、既設ソースファイルD2より既設ロジックで第1の設定値として用いられる既設正規化設定値(第1の正規化値)を抽出する既設ロジック設定値抽出部2と、既設ソースファイルD3の既設ロジックを更新後ロジックに変換して正規化更新後ロジック図D3を生成するコンバート部4と、既設ロジックの既設正規化設定値(第1の設定値)を既設工学値化設定値(第1の工学値)に変換する正規化工学値変換部7と、既設ロジックの既設工学値化設定値を更新後ロジックで用いられる更新後最終設定値(第2の工学値)に変換する既設更新後設定値変換部9を備える。正規化工学値変換部7と既設更新後設定値変換部9は、設定値管理表15から読み出した既設正規化設定値を、既設ロジックから置き換えられる更新後ロジックが用いる更新後最終設定値に変換して、更新後最終設定値を設定値管理表15に書き込む設定値変換部として用いられる。
【0019】
また、設定値管理ツール21は、コンバート部4によって生成された正規化更新後ロジック図D3に対し、更新後ロジックで用いられる更新後最終設定値(第2の工学値)を反映して、工学値化更新後ロジック図D4を生成する反映部11と、工学値化更新後ロジック図D4から更新後ロジックの第2の工学値をロジック図現在値として抽出する工学値抽出部として用いられる更新後ロジック現在値抽出部12と、更新後最終設定値とロジック図現在値を照合して照合結果を照合結果リストD5に出力する照合部14を備える。
【0020】
以下に、各部の動作例を説明する。
既設ロジック図D1は、既存のプラント等で用いられる処理ロジックを記載した図面であり、既設ソースファイルD2は、処理ロジックを処理順で列挙した図面である。既設ロジック図D1には、複数の処理を自動的に行うマクロの情報(以下、「マクロ情報」と略記する。)が、処理ロジックの一例として記載され、プラントの運用時には、この既設ロジック図D1に記載された制御論理に基づいて、プラントの運転状態やプロセス量が制御される。
【0021】
マクロ情報には、例えば、マクロ名やマクロに入出力するパラメータの入出力アドレス等があり、複数のマクロを組み合わせることによって、プラントで行われる各種の処理を表現している。なお、不図示のサーバ等に既設ロジック図D1が存在しない場合、または既設ロジックの仕様が不明である既設ロジック図D1に基づいて既設ロジックを求める際には、作業者が行う手動入力22の入力操作により既設ソースファイルD2を生成する。
【0022】
既設ロジック設定値抽出部2は、既設ソースファイルD2から既設ロジックで用いられる既設正規化設定値(第1の設定値)を抽出する既設ロジック設定値抽出機能を有する。このため、既設ロジック設定値抽出部2は、ソースファイル生成部1より入力する既設ソースファイルD2より、既設ロジックで用いられる既設正規化設定値を抽出して、既設正規化設定値を管理する設定値管理表15の既設正規化設定値フィールド6に既設正規化設定値を書き込む。併せて、既設ロジック設定値抽出部2は、既設ソースファイルD2から抽出したマクロの既設演算マクロ情報が、既設ロジックに関する情報として既設演算マクロ情報フィールド3に書き込む。
【0023】
コンバート部4は、既設ソースファイルD2から抽出した既設正規化設定値(第1の正規化値)を、正規化更新後ロジック図D3によって用いられる正規化された設定値(第2の正規化値)に変換するコンバート機能を有する。ここで、コンバート部4は、既設ソースファイルD2に表される既設ロジックで用いられる設定値が、正規化された既設正規化設定値である場合に、既設正規化設定値を更新後ロジックで用いられる第2の正規化値に変換する。そして、コンバート部4は、第2の正規化値を更新後ロジックに反映した正規化更新後ロジック図D3を生成すると共に、既設演算マクロ情報及び更新後演算マクロ情報並びに既設正規化設定値を設定値管理表15の更新後演算マクロ情報フィールド5に書き込む。
【0024】
ここで、コンバート部4のコンバート機能を用いない場合、既設ロジック設定値抽出部2は、設定値管理表15に設けられる既設演算マクロ情報フィールド3と既設正規化設定値フィールド6を自動生成する。そして、既設演算マクロ情報フィールド3と既設正規化設定値フィールド6に書き込まれる情報は、既設ソースファイルD2から既設ロジック設定値抽出部2を通して自動的に抽出される。このとき、既設ロジック設定値抽出部2は、コンバート部4のコンバート機能を用いない場合に、既設ソースファイルD2より抽出した既設ロジックに含まれるマクロのマクロ情報を設定値管理表15の既設演算マクロ情報フィールド3に書き込み、既設正規化設定値を既設正規化設定値フィールド6に書き込む。
【0025】
また、既設ロジック図D1に未知のフォーマットが使われており、既設ロジック設定値抽出部2が自動的に設定値を抽出することが困難である場合が想定される。この場合には、作業者が既設ソースファイルD2を目視で読み取り、作業者が行う手動入力22によって更新後演算マクロ情報が、更新後ロジックに関する情報として設定値管理表15の更新後演算マクロ情報フィールド5に書き込まれる。
【0026】
一方、コンバート部4のコンバート機能を用いる場合、コンバート部4は、設定値管理表15に設けられる既設演算マクロ情報フィールド3と更新後演算マクロ情報フィールド5と既設正規化設定値フィールド6を自動生成する。このとき、コンバート部4は、既設演算マクロ情報フィールド3に既設演算マクロ情報として、既設ロジックに含まれるマクロのマクロ情報を書き込み、更新後演算マクロ情報フィールド5に更新後演算マクロ情報として更新後ロジックに含まれるマクロのマクロ情報を書き込む。また、コンバート部4は、既設正規化設定値フィールド6に既設正規化設定値として既設ロジックに含まれるマクロで用いられる正規化された設定値(第1の正規化値)を書き込む。
【0027】
そして、正規化工学値変換部7は、設定値管理表15の既設正規化設定値フィールド6から読み出した既設正規化設定値を工学値に変換した既設工学値化設定値(第1の工学値)を設定値管理表15の既設工学値化設定値フィールド8に書き込む。
【0028】
次に、設定値管理表15に設けられる更新後最終設定値フィールド10には、既設演算マクロ情報フィールド3、更新後演算マクロ情報フィールド5及び既設工学値化設定値フィールド8から読み出された設定値を変換した工学値として、既設更新後設定値変換部9を通して更新後ロジックで用いられる更新後最終設定値(第2の工学値)が自動入力される。このとき、既設更新後設定値変換部9は、設定値管理表15から読み出した既設演算マクロ情報及び更新後演算マクロ情報並びに既設工学値化設定値に基づいて、既設工学値化設定値を更新後ロジックで用いられる更新後最終設定値(第2の工学値)に変換して、更新後最終設定値を設定値管理表15の更新後最終設定値フィールド10に書き込む。
【0029】
反映部11は、正規化更新後ロジック図D3に表される更新後ロジックに、設定値管理表15の更新後最終設定値フィールド10から読み出した更新後最終設定値(第2の工学値)を反映して、工学値化更新後ロジック図D4を生成する。このとき、反映部11は、コンバート部4によって生成された正規化更新後ロジック図D3に表され、更新後ロジックで用いられる正規化された第2の正規化値を、設定値管理表15から読み出した更新後最終設定値(第2の工学値)で反映した工学値化更新後ロジック図Dを生成する。ただし、正規化更新後ロジック図D3が存在しない場合には、工学値化更新後ロジック図D4は手動入力22で入力される。
【0030】
更新後ロジック現在値抽出部12は、反映部11によって生成され、又はコンバート部4を用いない場合に手動入力22によって生成された工学値化更新後ロジック図D4より抽出したロジック図現在値(第2の工学値)を現在値として設定値管理表15のロジック図現在値フィールド13に書き込む工学値抽出部として用いられる。
【0031】
照合部14は、更新後ロジック現在値抽出部12が抽出したロジック図現在値(第2の工学値)、及び既設更新後設定値変換部9によって変換され、更新後最終設定値フィールド10から読み出した更新後最終設定値(第2の工学値)を照合し、照合結果として照合結果リストD5を出力する。これにより、ユーザは手動入力22により作成した工学値化更新後ロジック図D4が自動的に生成された更新後ロジックで用いられる設定値と等しいか否かを見分けることができる。
【0032】
図2は、既設ロジック図D1の記載例を示す。
既設ロジック図D1には、既設ロジック及び既設ロジックに入出力するパラメータが記載されている。本例では、石灰石スラリ槽における上澄み水の流量を設定するために用いられる処理ロジックが各ブロック内の番号で示されるマクロの処理順と共に記載される。なお、上述した既設ロジックの一例として「既設マクロ」を定め、上述した更新後ロジックの一例として「更新後マクロ」定めている。
【0033】
本例では、図中に示される複数のマクロのうち、マクロ23に注目して、設定値等を説明する。マクロ23は、マクロ名が「AW」として表され、複数の入力値に基づいて所定の値を出力する機能を有する。図中に示したように、マクロ23には、ゲインG1〜G3にそれぞれ1.0,1.0,0が設定され、バイアスBに0が設定され、上限値HLに100が設定され、下限値LLに0が設定される。マクロ24は、複数のマクロの集合体である「大マクロ」であり、図5を参照して後述する。
【0034】
図3は、既設ロジックと更新後ロジックにおけるマクロの機能例を示す。本例では、マクロ23をマクロ25(後述する図5参照)で置き換えた例を説明する。図3Aは、既設ロジックにおけるマクロAW(以下、「既設AW」)の機能例を示し、図3Bは、更新後ロジックにおけるマクロAW(以下、「更新後AW」)の機能例を示し、図3Cは、更新後ロジックにおけるマクロLIM(以下、「更新後LIM」)の機能例を示す。
なお、更新後ロジックにおけるマクロ25(後述する図5参照)は、既設AWの機能を分割した更新後AWと更新後LIMによって、既設AWと等価な処理を行う。以下の説明で、HLは出力値Yの第1の閾値を表し、LLは出力値Yの第2の閾値を表す。そして、第1及び第2の閾値は、LL≦HLの関係を満たす。
【0035】
図3Aに示すように、既設ロジックにおけるマクロ23は、ゲインやバイアス付き加算器を有しており、3つの入力値X1〜X3が入力すると出力値Yを出力する。マクロ23は、既設AWが含まれる行に示した数式により、ゲインG1〜G3とバイアスBを定めており、出力値Yが求まる。この出力値Yは、LL≦Y≦HLの範囲内に収まるように値が制限される。
【0036】
図3Bに示すように、更新後ロジックにおけるマクロ25に含まれる更新後AWは、3つの入力値X1〜X3が入力すると出力値Yを出力する。マクロ25は、更新後AWが含まれる行に示した数式により、ゲインG1〜G3とバイアスBを定めており、出力値Yが求まる。この更新後AWが出力する出力値Yは値が制限されていない。
【0037】
図3Cに示すように、更新後ロジックにおけるマクロ25に含まれる更新後LIMは、入力値Xが入力すると出力値Yを出力する。この更新後LIMが出力する出力値Yは以下の3条件に示すように入力値Xに対して値が制限される。
(1)X>HLである場合、Y=HLとする。
(2)LL≦X≦HLである場合、Y=Xとする。
(3)X<LLである場合、Y=LLとする。
【0038】
図4は、既設ソースファイルD2の記載例を示す。
既設ソースファイルD2は、設定値管理装置20が管理する。単数又は複数の既設ソースファイルD2は、一時フォルダに配置されたコントローラ名フォルダにディレクトリ形式で格納される。既設ソースファイルD2には、マクロ名とマクロの入出力アドレス等のマクロ情報がマクロの処理手順と共に記載される。
【0039】
ここで、既設ソースファイルD2の先頭の1行目にはファイルのヘッダ情報が記載され、更新後におけるマクロのシート番号等が記載される。2行目には、マクロの統合又は分割時に値が設定される。そして、3行目以降には、図2に示すマクロの演算順を示すマクロ番号に合わせて、マクロ情報が記載される。
【0040】
図5は、既設ソースファイルD2に記載されているマクロの設定値を、設定値管理表15に書き込む機能の例を示す。
この書き込みは、既設ロジック設定値抽出部2が有する既設ロジック設定値抽出機能、又はコンバート部4が有するコンバート機能を用いて行われる。本例では、既設マクロにおける記号と同一の記号が、既設演算マクロ情報フィールド3と更新後演算マクロ情報フィールド5のマクロ内に存在する例を示す。
【0041】
既設ソースファイルD2には、既設のマクロ名を格納する既設マクロ名フィールドと、マクロで用いられる設定値の上限値又は下限値等を格納する記号フィールドと、設定値を格納する設定値フィールドを含む。既設ソースファイルD2の既設マクロ名フィールドには、図2のマクロ24を表す“DG2”というマクロの名称が書き込まれる。また、記号フィールドには、最上段のレコードから順に、“T”,“HH”,“LL”,“HH”,“LL”という記号が書き込まれる。ここで、“T”は、変化する設定値の刻み幅の最小値を表す。記号フィールドに書き込まれた記号に対応する設定値(第1の正規化値)は、既設正規化設定値フィールド6の設定値フィールドに書き込まれる。
【0042】
図1に示す既設演算マクロ情報フィールド3は、既設マクロ名フィールドと記号フィールドを含み、既設正規化設定値フィールド6は、設定値フィールドを含む。既設ソースファイルD2が既設ロジック設定値抽出部2又はコンバート部4を経ると、設定値フィールドにおける設定値(第1の正規化値)が並べ替えられる。本例では、予め並び順が決められている記号“HH”,“HH”,“LL”,“T”,“LL”に合わせて並び順が変えられた設定値(第1の正規化値)が、既設正規化設定値フィールド6に書き込まれる。
【0043】
具体的には、設定値管理表15内の順番(行順)を優先して、既設演算マクロ情報フィールド3に設定値格納する。例えば、既設マクロ101の設定値107〜111から抽出した設定値を、既設正規化設定値フィールド6の設定値118〜122へ格納する場合を検討する。このとき、既設ロジック設定値抽出部2又はコンバート部4を通して、既設マクロ101の記号102〜106と既設マクロ112の記号113〜117で一致する記号を見つけた後、記号に合わせて設定値を格納する。例えば、既設マクロ101の記号102(“T”)と既設マクロ112の記号116(“T”)が一致するため、既設マクロ101の設定値107(“1.0000”)は既設マクロ112の設定値121(“1.0000”)へ格納される。
【0044】
また、既設マクロ101の記号103(“HH”)と記号105(“HH”)のように同一記号である場合、既設ソースファイルD2における順番(行順)を優先して、設定値管理表15の既設演算マクロ情報フィールド3に設定値を格納する。このため、既設マクロ101の記号103(“HH”)の設定値108(“100.0000”)は、既設マクロ112の記号113(“HH”)の設定値118(“100.0000”)へ格納される。一方、既設マクロ101の記号105(“HH”)の設定値110(“50.0000”)は、既設マクロ112の記号114(“HH”)の設定値119(“50.0000”)へ格納される。
【0045】
図6は、工学値化更新後ロジック図D4の記載例を示す。
マクロ25に示すように、更新後マクロにおいては、図2に示したマクロ23に含まれるマクロAWが、マクロAW及びマクロLIMに分割される。ここでは、各パラメータも分割されて、マクロAW及びマクロLIMに振分けられていることが示される。図中に示したように、マクロ25の更新後AWには、ゲインG1〜G3にそれぞれ1.0,1.0,0.0が設定され、バイアスBに0.0[t/h(トン/時間)]が設定され、更新後LIMには、上限値HLに60.0[t/h]が設定され、下限値LLに0.0[t/h]が設定される。このように更新後AW、更新後LIMには、工学値に変換された設定値がマクロ25に反映される。
【0046】
図7は、設定値管理表15の詳細なデータの例を示す。
設定値管理表15は、設定値管理装置20が実行する表計算ソフトウェアを利用して、既設マクロの種類毎に予め作成した雛型シートに基づいて作成される。この表計算ソフトウェアでは、1ファイルに複数のシートを持つことができ、1つのシートが1種類の既設マクロと、これに対応する更新後マクロのマクロ情報を管理する。
【0047】
設定値管理ツール21は、図7に示すシート内の各フィールドに必要とされるパラメータを自動的に正規化値又は工学値に変換し、計算するための計算式としてシート内に設定されている。ここで既設マクロと更新後マクロで必要なパラメータの数が異なる場合には、設定値管理表15に任意の値を入力可能な空きセルを設定する。空きセルには、セルに入力される値としてゼロを表示しておく。ただし、データ自体が無いかを識別する為に、データが入力されていない空きセルにハイフン“−”を表示してもよい。
【0048】
更新後マクロで用いられる複数のマクロを組み合わせた大マクロを生成する場合、マクロを一意に認識するために振られる更新後マクロを表すマクロの認識ナンバーには、大マクロの認識ナンバーを設定する。ここで、大マクロ属性における”大マクロ名”に割り当てたマクロ名を設定する。
【0049】
なお、複数行で構成されるセルは、複数のセルを結合して1つのセルにするセル結合状態で作成されている。このようにセルを作成したのは、1つのマクロに割り当てられる行数を、「NO.」欄の占める行数で自動的に判断する必要があるからである。また、セル結合状態では、先頭行のセルに値が格納される為、セルから値を読み出したり、セルに値を書き込んだりする処理が容易である。また、小数点以下の桁数については、セルの表示形式が優先されるため、雛形シートに各セルの属性(表示形式)が正確に定義されていることが求められる。
【0050】
設定値管理表15には、図1で上述したように複数種類の列がさらに細分化されて表される。ここで、雛形シートには既設ロジックと更新後ロジックのマクロ名が設定される。そして、既設ロジック設定値抽出部2は、既設ソースファイルD2から抽出した設定値を既設演算マクロ情報フィールド3におけるループシート番号フィールドと、ブロック番号フィールドに書き込む。
【0051】
また、コンバート機能を用いる場合にコンバート部4は、更新後演算マクロ情報フィールド5のロジックシート番号フィールドと認識番号フィールドに更新後のマクロ情報を自動的に書き込む。ただし、コンバート機能を用いない場合には、作業者がマクロ情報を手動で入力する。また、既設工学値化設定値フィールド8と更新後最終設定値フィールド10には、それぞれ正規化工学値変換部7と既設更新後設定値変換部9を用いて自動入力される。そして、ロジック図現在値フィールド13には、工学値化更新後ロジック図D4から抽出された現在値が入力される。
【0052】
図8は、照合結果リストD5の記載例を示す。
照合結果リストD5には、更新後最終設定値フィールド10及びロジック図現在値フィールド13から読み出されたそれぞれのマクロ毎に相違点が、設定値管理表15に記載されたレコード順に記載される。そして、相違点が存在した場合には、何カ所の相違点が存在したかが記載され、全て一致した場合には、相違点がなかったことが記載される。
【0053】
以上説明した本実施の形態に係る設定値管理装置によれば、既設の処理ロジックが記載される既設ロジック図D1から生成された既設ソースファイルD2より抽出した設定値を設定値管理表15に書き込む。そして、設定値管理表15上で設定値変換を行った後、置き換えた処理ロジックに合わせて設定値を変換し、この変換した設定値を設定値管理表15が自動的に管理する。このため、設定値管理表15から正規化更新後ロジック図D3や工学値化更新後ロジック図D4を自動的に生成することができる。このように、設定値管理表15の作成からメンテナンスに至るまでの作業は自動的に行われるため、既設ロジックから更新後ロジックに処理ロジックを置き換える際に、設定値の確認に要する時間を低減すると共に、処理ロジックを置き換えた後に生成したロジック図の品質の向上を支援することができる。
【0054】
また、既設の処理ロジックにおいて正規化された設定値を工学値変換することで工学値を設定値管理表15に書込んだ後、この工学値を読み出して置き換える処理ロジックで用いられる設定値に変換して、この設定値を設定値管理表15に書き込む。このため、作業者は一目で置き換え前後における処理ロジックで用いられる設定値を確認し、適正な設定値であるかどうかを判断することができる。
【0055】
また、コンバート部4は、既設ソースファイルD2に表される処理ロジックを変換して正規化更新後ロジック図D3を生成する。そして、反映部11は、正規化更新後ロジック図D3から読み出した工学値を、更新後最終設定値フィールド10から読み出した設定値に反映した工学値化更新後ロジック図D4を生成する。このため、従来から存在するコンバート部4を用いて生成したロジック図を工学値が反映されたロジック図を容易に生成することができる。
【0056】
また、作業者の手動入力22により既設ロジック図D1から工学値を更新した工学値化更新後ロジック図D4を作成する場合がある。この場合には、自動的に設定値管理表15に反映された設定値に対して、工学値化更新後ロジック図D4から抽出した現在値を照合することにより、工学値化更新後ロジック図D4に誤って設定された設定値に誤りがないかどうかを把握することができる。また、設定値管理表15内の更新後最終設定値フィールド10に書き込まれた更新後最終設定値と、ロジック図現在値フィールド13に書き込まれたロジック図現在値が一致しているか照合する照合部14により、照合された結果が照合結果リストD5として自動生成される。このため、手動入力22によって作成された工学値化更新後ロジック図D4に記載された設定値の良否を適切に判断することができる。
【0057】
なお、上述した一実施の形態に係る設定値管理装置20は、発電所等のプラント以外にも送変電所、鉄道システム、スマートグリッドを用いた社会インフラ等に適用してもよい。この場合であっても既設の処理ロジックを別の処理ロジックに置き換える作業を正確に行うことができる。
【0058】
また、上述した実施の形態例における一連の処理は、ハードウェアにより実行することができるが、ソフトウェアにより実行させることもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、または、各種の機能を実行するためのプログラムをインストールしたコンピュータにより、実行可能である。例えば汎用のパーソナルコンピュータ等に所望のソフトウェアを構成するプログラムをインストールして実行させればよい。
【0059】
また、上述した実施の形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記録媒体を、システムあるいは装置に供給してもよい。また、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPU等の制御装置)が記録媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することによっても、機能が実現されることは言うまでもない。
【0060】
この場合のプログラムコードを供給するための記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
【0061】
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、上述した実施の形態の機能が実現される。加えて、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS等が実際の処理の一部又は全部を行う。その処理によって上述した実施の形態の機能が実現される場合も含まれる。
【0062】
また、本発明は上述した実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りその他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0063】
1…ソースファイル生成部、2…既設ロジック設定値抽出部、3…既設演算マクロ情報フィールド、4…コンバート部、5…更新後演算マクロ情報フィールド、6…既設正規化設定値フィールド、7…正規化工学値変換部、8…既設工学値化設定値フィールド、9…既設更新後設定値変換部、10…更新後最終設定値フィールド、11…反映部、12…更新後ロジック現在値抽出部、13…ロジック図現在値フィールド、14…照合部、15…設定値管理表、20…設定値管理装置、21…設定値管理ツール、22…手動入力、D1…既設ロジック図、D2…既設ソースファイル、D3…正規化更新後ロジック図、D4…工学値化更新後ロジック図、D5…照合結果リスト


【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設の第1の処理ロジックが表される第1のロジック図から生成され、前記第1の処理ロジックの処理順が示されるソースファイルより、前記第1の処理ロジックで用いられる第1の設定値を抽出して、前記第1の設定値を管理する設定値管理表に抽出した前記第1の設定値を書き込む抽出部と、
前記設定値管理表から読み出した前記第1の設定値を、前記第1の処理ロジックから置き換えられる第2の処理ロジックが用いる第2の設定値に変換して、前記第2の設定値を前記設定値管理表に書き込む設定値変換部と、を備える
設定値管理装置。
【請求項2】
さらに、前記ソースファイルに表される前記第1の処理ロジックで用いられる前記第1の設定値が、所定の測定範囲内で測定される工学値を前記所定の範囲に均等に割り振られる正規化された第1の正規化値である場合に、前記第1の正規化値を前記第2の処理ロジックで用いられる第2の正規化値に変換し、前記第2の正規化値を前記第2の処理ロジックに反映した第2のロジック図を生成すると共に、前記第1及び第2の処理ロジックに関する情報並びに前記第1の正規化値を前記設定値管理表に書き込むコンバート部を備える
請求項1記載の設定値管理装置。
【請求項3】
前記設定値変換部は、
前記設定値管理表から読み出した前記第1の正規化値を工学値に変換した第1の工学値を前記設定値管理表に書き込む正規化工学値変換部と、
前記設定値管理表から読み出した前記第1及び第2の処理ロジックに関する情報並びに前記第1の工学値に基づいて、前記第1の工学値を前記第2の処理ロジックで用いられる第2の工学値に変換して、前記第2の工学値を前記設定値管理表に書き込む更新後設定値変換部を備える
請求項2記載の設定値管理装置。
【請求項4】
さらに、前記コンバート部によって生成された前記第2のロジック図に表される第2の処理ロジックに、前記設定値管理表から読み出した前記第2の工学値を反映した第3のロジック図を生成する反映部を備える
請求項3記載の設定値管理装置。
【請求項5】
さらに、前記反映部によって生成され、又は前記コンバート部を用いない場合に手動入力によって生成された前記第3のロジック図より抽出した前記第2の工学値を前記設定値管理表に書き込む工学値抽出部と、
前記工学値抽出部が抽出した前記第2の工学値、及び更新後設定値変換部によって変換された前記第2の工学値を照合し、照合結果を出力する照合部を備え、
前記抽出部は、前記コンバート部を用いない場合に、前記ソースファイルより抽出した前記第1の処理ロジックに関する情報及び前記第1の正規化値を前記設定値管理表に書き込み、手動入力によって前記第2の処理ロジックに関する情報が前記設定値管理表に書き込まれる
請求項4記載の設定値管理装置。
【請求項6】
さらに、前記第1のロジック図から前記ソースファイルを生成し、前記ソースファイルを前記抽出部に供給するソースファイル生成部を備える
請求項5記載の設定値管理装置。
【請求項7】
既設の第1の処理ロジックが表される第1のロジック図から生成され、前記第1の処理ロジックの処理順が示されるソースファイルより、前記第1の処理ロジックで用いられる第1の設定値を抽出して、前記第1の設定値を管理する設定値管理表に抽出した前記第1の設定値を書き込むステップと、
前記設定値管理表から読み出した前記第1の設定値を、前記第1の処理ロジックから置き換えられる第2の処理ロジックが用いる第2の設定値に変換して、前記第2の設定値を前記設定値管理表に書き込むステップと、を含む
設定値管理方法。
【請求項8】
既設の第1の処理ロジックが表される第1のロジック図から生成され、前記第1の処理ロジックの処理順が示されるソースファイルより、前記第1の処理ロジックで用いられる第1の設定値を抽出して、前記第1の設定値を管理する設定値管理表に抽出した前記第1の設定値を書き込む手順、
前記設定値管理表から読み出した前記第1の設定値を、前記第1の処理ロジックから置き換えられる第2の処理ロジックが用いる第2の設定値に変換して、前記第2の設定値を前記設定値管理表に書き込む手順、を
コンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−3795(P2013−3795A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133573(P2011−133573)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】