説明

診断イメージング用のナノ粒子造影剤

1以上の双性イオン性部分で官能化されたナノ粒子(10)及び前記ナノ粒子を含む組成物が提供される。ナノ粒子(10)は、他のナノ粒子に比べ、体内への粒子の保持を最小にする特性を有している。ナノ粒子(10)は、本質的にシリカを含まないコア表面(30)を有するコア(20)と、コア表面(30)に結合したシェル(40)とを含んでいる。シェル(40)は、1以上のシラン官能化双性イオン性部分を含んでいる。さらに、前記ナノ粒子の製造方法及び診断剤としてのそれの使用方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、一般的にはX線/コンピューター断層撮影(CT)又は磁気共鳴イメージング(MRI)で使用するもののような診断イメージング用の造影剤に関する。さらに詳しくは、本願はナノ粒子系造影剤並びにかかる薬剤の製造方法及び使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床的に承認されている診断用造影剤は、ほとんどすべてが小分子系のものである。ヨウ素化芳香族化合物は標準的なX線又はCT用造影剤として役立ってきた一方、磁気共鳴イメージング用としてはGdキレートが使用されている。診断イメージングのために常用されているものの、小分子系造影剤は、血管壁からの漏れに原因する短い血中循環時間、低い感度、高い粘度及び高い重量オスモル濃度のような一定の欠点を有することがある。これらの化合物は、一般に、ある種の患者集団では腎合併症に関係していた。この部類の小分子系薬剤は急速に体外に排出されることが知られている結果、血管系の効果的なイメージングのために使用できる時間が限定されると共に、他の適用例に関してはこれらの薬剤を疾患部位に標的化することが困難になる。したがって、新規な部類の造影剤に対するニーズが存在している。
【0003】
ナノ粒子は、診断用及び治療用を含め、医学用途で使用するために広く研究されている。磁気共鳴イメージング用途及び薬物送達用途に関して臨床的に承認されているナノ粒子系薬剤はほんの僅かであるが、数百のかかる薬剤がなおも開発中である。現在使用されている小分子系薬剤に比べ、ナノ粒子は診断薬及び治療薬としての効力の点で有利であることを示す実質的な証拠が存在している。しかし、ナノ粒子薬剤のインビボでの生体分布及びクリアランスに対する粒度、構造及び表面特性の効果は十分には理解されていない。ナノ粒子は、その粒度に応じ、小分子に比べて長い時間にわたり体内に留まる傾向がある。造影剤の場合、いかなる器官に対しても短期又は長期毒性を引き起こすことなく、体外への薬剤の最大腎クリアランスを有することが好ましい。
【0004】
上記の事実に鑑みて、特に腎クリアランス及び毒性効果に関して改善された性質を有するナノ粒子系造影剤又はイメージング剤に対するニーズが存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/216239号明細書
【発明の概要】
【0006】
本発明は、新規な部類のX線、CT及びMRI用ナノ粒子系造影剤を提供する。本発明者らは、双性イオン性基(zwitterionic group)で官能化されたナノ粒子が意外にも小分子系造影剤に比べて改善されたイメージング特性を有することを見出した。本発明のナノ粒子は、他のナノ粒子に比べ、体内への粒子の保持を最小にする特性を有している。これらのナノ粒子は、確実な合成、コストの削減、画像コントラストの増強、血中半減期の増大及び毒性の低下の1以上の点で改善された性能及び利益をもたらすことができる。
【0007】
本発明は、ナノ粒子及び前記ナノ粒子を含む組成物に関する。さらに、本発明は前記ナノ粒子の製造方法及びそれの使用方法並びにそれの使用にも関する。
【0008】
かくして、本発明の一態様はナノ粒子に関する。かかるナノ粒子は、本質的にシリカを含まないコア表面を有するコアと、コア表面に結合したシェルとを含んでいる。シェルは、1以上のシラン官能化双性イオン性部分を含んでいる。一実施形態では、コアは遷移金属を含んでいる。別の実施形態では、コアは、酸化物、炭化物、硫化物、窒化物、リン化物、ホウ化物、ハロゲン化物、セレン化物、テルル化物及びこれらの組合せからなる群から選択される遷移金属化合物を含んでいる。一実施形態では、本発明は34以上の原子番号を有する金属を含んでいる。
【0009】
若干の実施形態では、ナノ粒子は、本質的にシリカを含まないコア表面を有する酸化タンタルコアと、コア表面に結合したシェルであって、1以上のシラン官能化双性イオン性部分を含むシェルとを含んでいる。かかるナノ粒子は約6nm以下の平均粒度を有している。
【0010】
若干の実施形態では、ナノ粒子は、本質的にシリカを含まないコア表面を有する超常磁性酸化鉄コアと、コア表面に結合したシェルであって、1以上のシラン官能化双性イオン性部分を含むシェルとを含んでいる。かかるナノ粒子は約50nm以下の平均粒度を有している。
【0011】
1以上の実施形態では、本発明は診断剤組成物に関する。かかる組成物は複数のナノ粒子を含み、複数のナノ粒子の1以上が本質的にシリカを含まないコア表面を有するコアとコア表面に結合したシェルとを含んでいる。シェルは、1以上のシラン官能化双性イオン性部分を含んでいる。若干の実施形態では、かかる組成物はさらに薬学的に許容されるキャリヤー及び任意には1種以上の賦形剤を含んでいる。
【0012】
本発明の一態様は、ナノ粒子の製造方法に関する。かかる方法は、(a)本質的にシリカを含まないコア表面を有するコアを用意する段階、及び(b)コア表面に結合したシェルであって、シラン官能化双性イオン性部分を含むシェルを配設する段階を含んでいる。
【0013】
本発明の別の態様は、診断剤組成物を被験体に投与する段階及びX線装置を用いて被験体のイメージングを行う段階を含んでなる方法に関する。診断剤組成物は複数のナノ粒子を含み、複数のナノ粒子の1以上がコア及びシェルを含んでいる。シェルは、1以上のシラン官能化双性イオン性部分を含んでいる。1以上の実施形態では、コアは酸化タンタルを含んでいる。
【0014】
若干の実施形態では、かかる方法は、診断剤組成物を被験体に投与する段階及び診断装置を用いて被験体のイメージングを行う段階を含んでいる。診断剤組成物は複数のナノ粒子を含んでいる。複数のナノ粒子の1以上は、本質的にシリカを含まないコア表面を有するコアと、コア表面に結合したシェルとを含んでいる。シェルは、1以上のシラン官能化双性イオン性部分を含んでいる。
【0015】
1以上の実施形態では、かかる使用方法はさらに、診断装置を用いて被験体への診断剤組成物の送達をモニターする段階、及び被験体を診断する段階を含んでいる。若干の実施形態では、診断装置は、磁気共鳴イメージング、光学イメージング、光学コヒーレンス断層撮影、X線断層撮影、コンピューター断層撮影、ポジトロン放出断層撮影及びこれらの組合せからなる群から選択されるイメージング方法を使用する。
【0016】
本発明の別の態様は、診断剤組成物として使用するための組成物の製造における、前述したナノ粒子10の使用に関する。
【0017】
本発明の上記その他の特徴、態様及び利点は、添付の図面を参照しながら以下の詳細な説明を読んだ場合に一層よく理解されよう。添付の図面中では、図面全体を通じて類似の部分は同一の符号で示されている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の若干の実施形態に従ってコア及びシェルを含んでなるナノ粒子の断面図である。
【図2】図2は、双性イオン性官能基を形成し得る有機酸及び有機塩基を記載している。
【図3A】図3Aは、コアと反応させることでシラン官能化双性イオン性部分を含むシェルを形成し得るシラン官能化双性イオン性部分を記載している。
【図3B】図3Bは、コアと反応させることでシラン官能化双性イオン性部分を含むシェルを形成し得るシラン官能化双性イオン性部分を記載している。
【図3C】図3Cは、コアと反応させることでシラン官能化双性イオン性部分を含むシェルを形成し得るシラン官能化双性イオン性部分を記載している。
【図3D】図3Dは、コアと反応させることでシラン官能化双性イオン性部分を含むシェルを形成し得るシラン官能化双性イオン性部分を記載している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の詳細な説明は例示的なものであり、本願の発明又は該発明の用途を限定するものではない。さらに、先行する発明の背景又は以下の詳細な説明中に示されるいかなる理論によっても限定されるものではない。
【0020】
本明細書及びそれに続く特許請求の範囲中では、言及される用語の数は以下の意味を有する。“a”、“an”及び“the”を伴う単数形で記載したものであっても、前後関係から明らかでない限り、複数の場合も含めて意味する。本明細書及び特許請求の範囲の全体を通じて使用される概略表現用語は、それが関係する基本機能の変化を生じることなしに変動することが許容される任意の数量表現を修飾するために適用できる。したがって、「約」のような用語で修飾された値は、明記された厳密な値に限定すべきでない。場合によっては、概略表現用語は値を測定するための計器の精度に対応することがある。同様に、「含まない(free)」という語句はある用語と組み合わせて使用することができるが、これは修飾された用語を含まないと見なされる限りは実質的でない数又は微小な量を含み得る。例えば、「溶媒を含まない」又は「無溶媒」及び類似の用語や語句は、溶媒化物質から実質的な量、一部又は全部の溶媒を除去した場合を表すことができる。
【0021】
本発明の1以上の実施形態は、図1に示されるようなナノ粒子に関する。ナノ粒子10は、本質的にシリカを含まないコア表面30を有するコア20を含んでいる。1以上の実施形態では、コア20は遷移金属、例えば遷移金属元素の化合物を含んでいる。ナノ粒子10はさらに、コア表面30に結合したシェル40(「コーティング」ともいう)を含んでいる。シェル40は、1以上のシラン官能化双性イオン性部分を含んでいる。コア表面30が本質的にシリカを含まないので、シラン官能化双性イオン性部分はシリカに結合せず、介在するシリカ層なしにコア20のコア表面30に結合する。シラン官能化双性イオン性部分は、シラン部分及び双性イオン性部分を含んでいる。本明細書中で使用する「双性イオン性部分」という用語は、電気的に中性であるが、相異なる原子上にある正及び負の形式電荷を運ぶ部分をいう。双性イオンは極性であり、通常は水に対する高い溶解性及び大抵の有機溶媒に対する不良な溶解性を有する。若干の実施形態では、「双性イオン性部分」は双性イオン性部分の前駆体をいう。かかる実施形態では、前駆体は二次的な又は後続の化学反応を受けて双性イオン性部分を生成する。
【0022】
本明細書中で使用する「ナノ粒子」とは、ナノメートルスケールの粒度、一般に1マイクロメートル未満の粒度を有する粒子をいう。一実施形態では、ナノ粒子は約50nm以下の粒度を有する。別の実施形態では、ナノ粒子は約10nm以下の粒度を有する。別の実施形態では、ナノ粒子は約6nm以下の粒度を有する。
【0023】
本発明の1以上の実施形態は、複数のナノ粒子を含んでなる組成物に関する。複数のナノ粒子は、メジアン粒度、平均粒径又は粒度、粒度分布、平均粒子表面積、粒子形状及び粒子断面形の1以上によって特徴づけることができる。さらに複数のナノ粒子は、数平均粒度及び重量平均粒度の両方によって特徴づけることができる粒度分布を有し得る。数平均粒度は、SN=Σ(sii)/Σni(式中、niは粒度siを有する粒子数である。)によって表すことができる。重量平均粒度は、SW=Σ(sii2)/Σ(sii)によって表すことができる。すべての粒子が同一の粒度を有する場合、SN及びSWは等しくなり得る。一実施形態では、ある粒度分布が存在し、SNはSWと異なることがあり得る。重量平均と数平均との比は、多分散性指数(SPDI)として定義できる。一実施形態では、SPDIは約1に等しいことがあり得る。他の実施形態では、SPDIはそれぞれ約1〜約1.2、約1.2〜約1.4、約1.4〜約1.6又は約1.6〜約2.0の範囲内にあり得る。一実施形態では、SPDIは約2.0を超える範囲内にあり得る。
【0024】
一実施形態では、複数のナノ粒子は正規分布、モノモーダル分布及びバイモーダル分布からなる群から選択される粒度分布を有し得る。一定の粒度分布は一定の利益を得るために有用であり得る。モノモーダル分布は、単一モードの回りに分布した粒度分布ということができる。別の実施形態では、2つの相異なる亜集団粒度範囲(バイモーダル分布)を有する粒子集団が組成物中に含まれていてもよい。
【0025】
ナノ粒子は各種の形状及び断面形を有し得るが、これは一部では粒子を製造するために使用する方法に依存し得る。一実施形態では、ナノ粒子は、球、棒、管、フレーク、繊維、板、ワイヤ、立方体又はホイスカーである形状を有していてよい。ナノ粒子は、上述の形状の2以上を有する粒子を含んでいてよい。一実施形態では、粒子の断面形は円形、楕円形、三角形、長方形又は多角形の1以上であってよい。一実施形態では、ナノ粒子は本質的に非球形粒子からなっていてよい。例えば、かかる粒子は、3つの主軸のすべてが相異なる長さを有するか、或いは扁平(oblate)又は扁長(prolate)回転楕円体であってよい楕円体の形態を有し得る。別法として、非球形ナノ粒子は薄層状の形態のものであってもよい。ここで薄層とは、1つの軸に沿った最大寸法が他の2つの軸の各々に沿った最大寸法より実質的に小さい粒子をいう。非球状ナノ粒子はまた、角錐又は円錐の切頭体の形状或いは細長い棒の形状を有していてもよい。一実施形態では、ナノ粒子は不規則な形状を有していてもよい。一実施形態では、複数のナノ粒子は本質的に球状のナノ粒子からなっていてよい。
【0026】
ナノ粒子の集団は、高い表面/体積比を有し得る。ナノ粒子は結晶質であっても非晶質であってもよい。一実施形態では、単一タイプ(粒度、形状など)のナノ粒子を使用してもよいし、或いは相異なるタイプのナノ粒子の混合物を使用してもよい。ナノ粒子の混合物を使用する場合、これらは組成物中に均質又は不均質に分布していてよい。
【0027】
一実施形態では、ナノ粒子は凝集体又は集塊体形成に対して安定であり得る。凝集体は互いに物理的に接触した2以上のナノ粒子を含み得る一方、集塊体は互いに物理的に接触した2以上の凝集体を含み得る。若干の実施形態では、ナノ粒子は強く集合及び/又は凝集しておらず、したがって粒子は組成物中に比較的容易に分散することができる。
【0028】
一実施形態では、コアは遷移金属を含み得る。本明細書中で使用する「遷移金属」とは、周期表3〜12族の元素をいう。特定の実施形態では、コアは、これらの遷移金属元素の1種以上を含む酸化物、炭化物、硫化物、窒化物、リン化物、ホウ化物、ハロゲン化物、セレン化物及びテルル化物のような1種以上の遷移金属化合物を含んでいる。したがって、本明細書中で「金属」という用語は、必ずしもゼロ原子価金属が存在することを意味せず、それどころか、この用語の使用は遷移金属元素を成分として含有する金属又は非金属物質の存在を意味している。
【0029】
若干の実施形態では、ナノ粒子は単一のコアを含み得る。若干の他の実施形態では、ナノ粒子は複数のコアを含み得る。ナノ粒子が複数のコアを含む実施形態では、コアは同一のものでも相異なるものでもよい。若干の実施形態では、ナノ粒子組成物は2以上のコアを含んでいる。他の実施形態では、ナノ粒子組成物の各々は単一のコアを含んでいる。
【0030】
若干の実施形態では、コアはただ1種の遷移金属化合物を含んでいる。別の実施形態では、コアは2種以上の遷移金属化合物を含んでいる。コアが2種以上の遷移金属化合物を含む実施形態では、遷移金属元素又は遷移金属陽イオンは同一の元素からなるものでも2種以上の原子からなるものでもよい。例えば、一実施形態では、コアは酸化タンタル又は酸化鉄のようなただ1種の化合物を含み得る。別の実施形態では、コアは2種以上の金属元素(例えば、酸化タンタル及び酸化ハフニウム、又は酸化タンタル及び窒化ハフニウム、又は鉄及びマンガンの酸化物)を含み得る。別の実施形態では、コアは同一金属元素の2種以上の化合物(例えば、酸化タンタル及び硫化タンタル)を含み得る。
【0031】
一実施形態では、コアはX線又はコンピューター断層撮影(CT)イメージングにおいてコントラスト増強を生み出す。通常のCTスキャナーは、約10keV〜約150keVという広い範囲のX線エネルギーを使用している。当業者であればわかるように、特定の物質を通過するX線の単位長さあたりの減衰量は、線形減衰係数として表される。CTイメージングにおいて典型的なX線エネルギースペクトルでは、物質の減衰は光電吸収効果及びコンプトン散乱効果によって支配される。さらに、線形減衰係数は、入射X線のエネルギー、(モル濃度に関係する)物質の密度及び物質の原子番号(Z)の関数であることが良く知られている。分子化合物又は異なる原子の混合物に関しては、「有効原子番号」Zeffを構成元素の有効原子番号の関数として計算することができる。化学式が知られている化合物の有効原子番号は、次の関係式から求められる。
【0032】
【数1】

式中、Zkは金属元素の原子番号、Pは金属元素の総量、Wfkは(モル濃度に関係する)分子の総分子量に対する金属元素の重量分率である。CTイメージングのための入射X線エネルギーの最適量は、撮影すべき対象物のサイズの関数であって、公称値から大きく変動することはないと予想される。また、造影剤材料の線形減衰係数が材料の密度に直線的に依存することも良く知られている。即ち、材料の密度を増大させたり、或いは造影剤のモル濃度を増大させたりすれば、線形減衰係数を増大させることができる。しかし、患者への造影剤材料の注射やそれに伴う毒性効果という実際上の側面から、達成し得るモル濃度には限界がある。したがって、造影剤候補材料を有効原子番号によって分けるのは妥当である。約50mMのモル濃度を有する典型的な材料の典型的なCTエネルギースペクトルに対するCTコントラスト増強のシミュレーションに基づけば、34以上の有効原子番号を有する材料は、約30ハウンスフィールド単位(HU)という概略コントラスト増強、即ち水より3%高いコントラストを与え得るものと推定される。したがって、特定の実施形態では、コアは34以上の有効原子番号を有する材料を含んでいる。例えば、Handbook of Medical Imaging, Volume 1. Physics and Psychophysics, Eds. J. Beutel, H.L. Kundel, R.L. Van Metter, SPIE Press, 2000の第1章を参照されたい。
【0033】
上述のように比較的高い原子番号を有する遷移金属を含むコアは、一定の望ましい特性を有する実施形態を提供し得る。かかる実施形態では、コアは実質的に放射線不透過性である。これは、コア材料が生体中に通例見出される物質より実質的に少ないX線しか通過させず、したがってかかる粒子をコンピューター断層撮影(CT)のようなX線イメージング技法での造影剤として有用なものにすることができる。このような特性を与え得る遷移金属元素の例には、タングステン、タンタル、ハフニウム、ジルコニウム、モリブデン、銀及び亜鉛がある。酸化タンタルは、X線イメージング用途で使用するのに適したコア組成物の1つの具体例である。1以上の実施形態では、ナノ粒子のコアは酸化タンタルを含み、ナノ粒子は約6nm以下の粒度を有している。この実施形態は、タンタル含有コアの高度の放射線不透過性及び例えば急速な腎クリアランスを助ける小さい粒度のため、X線を照射してイメージングデータを生成するイメージング技法での用途にとって特に魅力的であり得る。
【0034】
若干の実施形態では、ナノ粒子のコアは約30重量%以上の遷移金属材料を含んでいる。特定の実施形態では、コアは約50重量%以上の遷移金属材料を含んでいる。さらに別の実施形態では、コアは約75重量%以上の遷移金属材料を含んでいる。コア中に高い遷移金属材料含有量を有することは、高度の単位体積当たり放射線不透過性を有するナノ粒子を生み出し、それにより造影剤としての一層効率的な性能を付与する。
【0035】
別の実施形態では、コアは、例えば超常磁性挙動をはじめとする磁性挙動を示す材料を含んでいる。本明細書中で使用する「超常磁性材料」とは、キュリー温度又はネール温度未満の温度であっても常磁性と同様な挙動を示し得る材料をいう。使用可能な磁性又は超常磁性材料の例には、鉄、マンガン、銅、コバルト及びニッケルの1種以上を含む材料がある。一実施形態では、超常磁性材料は超常磁性酸化鉄を含んでいる。若干の実施形態では、本発明のナノ粒子は磁気共鳴(MR)造影剤として使用できる。これらのナノ粒子は、磁場に暴露されるとT2*、T2又はT1磁気共鳴信号を生じ得る。1以上の実施形態では、ナノ粒子のコアは超常磁性酸化鉄を含み、ナノ粒子は約50nm以下の粒度を有している。
【0036】
一実施形態では、ナノ粒子10はコア20を実質的に被覆するシェル40を含んでいる。このシェル40はコア20を安定化するために役立ち得る。即ち、シェル40は、あるコア20が隣接するコア20に接触するのを防止することで複数のかかるナノ粒子が本明細書中に記載したように凝集又は集合するのを防止し、或いは例えばインビボイメージング実験の時間スケール上での金属又は金属酸化物の浸出を防止することができる。一実施形態では、シェル40はコア20を安定化しかつかかる接触を防止するのに十分な厚さを有すればよい。一実施形態では、シェル40は約50nm以下の平均厚さを有する。別の実施形態では、シェル40は約3nm以下の平均厚さを有する。
【0037】
本明細書中で使用する「実質的に被覆する」という用語は、ナノ粒子の表面被覆パーセントが約20%を超えていることを意味する。表面被覆パーセントとは、シェルで被覆されたナノ粒子表面とシェルで被覆されていない表面積との比をいう。若干の実施形態では、ナノ粒子の表面被覆パーセントは約40%を超えることがある。
【0038】
若干の実施形態では、シェルは水溶性の向上を容易にし、凝集体形成を低減させ、集塊体形成を低減させ、ナノ粒子の酸化を防止し、コア−シェル物体の均一性を維持し、或いはナノ粒子に生体適合性を付与することができる。別の実施形態では、シェルを構成する材料はさらに特定の用途(例えば、特に限定されないが診断用途)に合わせて調整される他の材料を含むことができる。例えば、一実施形態では、ナノ粒子はさらに標的化リガンドで官能化することができる。標的化リガンドは、所望の器官、組織又は細胞に対するナノ粒子の標的化をもたらす分子又は構造であり得る。標的化リガンドには、特に限定されないが、タンパク質、ペプチド、抗体、核酸、糖誘導体及びこれらの組合せがある。若干の実施形態では、ナノ粒子はさらに標的化剤を含むことができる。その結果、造影剤として使用する場合、粒子は被験体の特定の罹患領域に対して標的化することができる。若干の実施形態では、ナノ粒子は血液プール剤として使用できる。
【0039】
コアを1以上のシェルで被覆することもできる。若干の実施形態では、複数のコアを同一のシェルで被覆することができる。一実施形態では、単一のシェルがナノ粒子組成物中に存在するすべてのコアを被覆することができる。若干の実施形態では、個々のコアを1以上のシェルで被覆することができる。別の実施形態では、ナノ粒子中に存在するすべてのコアを2
以上のシェルで被覆することができる。個々のシェルは同一の材料からなっていてもよいし、或いは2種以上の材料からなっていてもよい。コアを2以上のシェルで被覆し得る実施形態では、シェルは同一の材料又は異種の材料からなり得る。
【0040】
一実施形態では、シェルは1以上のシラン官能化双性イオン性部分を含んでいる。ここで、シラン官能化双性イオン性部分はシラン部分及び双性イオン性部分を含んでいる。若干の実施形態では、シラン官能化双性イオン性シェルのシラン部分はコアに直接結合している。
【0041】
一実施形態では、シェルは複数のシラン部分を含み、複数のシラン部分の1以上が1以上の双性イオン性部分で官能化されている。若干の実施形態では、シェルはシラン官能化双性イオン性部分及びシラン官能化非双性イオン性部分を含んでいる。かかる実施形態では、シラン官能化双性イオン性部分とシラン官能化非双性イオン性部分との比は約0.01〜約100である。若干の他の実施形態では、シラン官能化双性イオン性部分とシラン官能化非双性イオン性部分との比は約0.1〜約20である。
【0042】
若干の実施形態では、シェルは複数のシラン官能化双性イオン性部分を含んでいる。「複数のシラン官能化双性イオン性部分」という用語は、1つの特定のシラン部分が1以上の双性イオン性部分で官能化されてものの複数の例をいう。シラン部分は同一のものでも相異なるものでもよい。一実施形態では、各コアは複数のシラン官能化双性イオン性部分で包囲されていて、すべてのシラン部分は同一タイプのものである。別の実施形態では、各コアは複数のシラン官能化双性イオン性部分で包囲されていて、シラン部分は相異なるタイプのものである。一実施形態では、複数のシラン部分の各々が1以上の双性イオン性部分で官能化されている。一実施形態では、複数のシラン部分の1以上が双性イオン性部分で官能化されている結果、各ナノ粒子は平均して1以上の双性イオン性部分を含んでいる。1以上の実施形態では、各ナノ粒子は複数の双性イオン性部分を含んでいる。
【0043】
シェルが複数のシラン官能化双性イオン性部分を含む実施形態では、シラン部分及び双性イオン性部分は同一のものでも相異なるものでもよい。例えば、一実施形態では、すべてのシラン部分が同一のものであってよく、かつすべての双性イオン性部分が同一のものであってよい。別の実施形態では、シラン部分は同一のものであるが、双性イオン性部分は相異なるものである。例えば、シェルは2種のシラン官能化双性イオン性部分を含むことができる。第1のものは、タイプ1のシラン部分及びタイプ2の双性イオン性部分、又はタイプ2のシラン部分及びタイプ1の双性イオン性部分、又はタイプ2のシラン部分及びタイプ2の双性イオン性部分を含んでいる。1以上の実施形態では、シラン官能化双性イオン性部分は2以上の双性イオン性部分を含み得る。シラン官能化双性イオン性部分が2以上の双性イオン性部分を含む実施形態では、双性イオン性部分は同一のものでも相異なるものでもよい。
【0044】
若干の実施形態では、シラン官能化双性イオン性部分は、正に帯電した部分、負に帯電した部分、及び正に帯電した部分と負に帯電した部分との間に位置する第1のスペーサー基を含んでいる。正に帯電した部分は有機塩基から形成でき、負に帯電した部分は有機酸から形成できる。図2は、負に帯電した部分及び正に帯電した部分を形成できる例示的な有機酸及び塩基のリストを示している。
【0045】
若干の実施形態では、正に帯電した部分は、プロトン化第一アミン、プロトン化第二アミン、プロトン化第三アルキルアミン、プロトン化アミジン、プロトン化グアニジン類、プロトン化ピリジン類、プロトン化ピリミジン類、プロトン化ピラジン類、プロトン化プリン体、プロトン化イミダゾール類、プロトン化ピロール類、第四アルキルアミン又はこれらの組合せからなる。
【0046】
若干の実施形態では、負に帯電した部分は、脱プロトン化カルボン酸、脱プロトン化スルホン酸、脱プロトン化スルフィン酸、脱プロトン化ホスホン酸、脱プロトン化リン酸、脱プロトン化ホスフィン酸又はこれらの組合せからなる。
【0047】
1以上の実施形態では、第1のスペーサー基は、アルキル基、アリール基、置換アルキル基、置換アリール基、ヘテロアルキル基、ヘテロアリール基、カルボキシル基、エーテル、アミド、エステル、カルバメート、尿素、炭素原子数1〜10の直鎖アルキル基又はこれらの組合せからなる。
【0048】
若干の実施形態では、シラン官能化双性イオン性部分のケイ素原子は第2のスペーサー基を介して正又は負に帯電した部分に連結されている。若干の実施形態では、第2のスペーサー基は、アルキル基、アリール基、置換アルキル基、置換アリール基、ヘテロアルキル基、ヘテロアリール基、カルボキシル基、エーテル、アミド、エステル、カルバメート、尿素、炭素原子数1〜10の直鎖アルキル基又はこれらの組合せからなる。
【0049】
若干の実施形態では、シラン官能化双性イオン性部分は、図3A〜3Dに例示されているもののような前駆体トリアルコキシシランの加水分解生成物からなる。若干の実施形態では、前駆体トリアルコキシシランは、N,N−ジメチル−3−スルホ−N−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)プロパン−1−アミニウム、3−(メチル(3−(トリメトキシシリル)プロピル)アミノ)プロパン−1−スルホン酸、3−(3−(トリメトキシシリル)プロピルアミノ)プロパン−1−スルホン酸、2−(2−(トリメチルシリル)エトキシ(ヒドロキシ)ホスホリルオキシ)−N,N,N−トリメチルエタンアミニウム、2−(2−(トリメトキシシリル)エチル(ヒドロキシ)ホスホリルオキシ)−N,N,N−トリメチルエタンアミニウム、N,N,N−トリメチル−3−(N−3−(トリメトキシシリル)プロピオニルスルファモイル)プロパン−1−アミニウム、N−((2H−テトラゾール−5−イル)メチル)−N,N−ジメチル−3−(トリメトキシシリル)プロパン−1−アミニウム、N−(2−カルボキシエチル)−N,N−ジメチル−3−(トリメトキシシリル)プロパン−1−アミニウム、3−(メチル(3−(トリメトキシシリル)プロピル)アミノ)プロピオン酸、3−(3−(トリメトキシシリル)プロピルアミノ)プロピオン酸、N−(カルボキシメチル)−N,N−ジメチル−3−(トリメトキシシリル)プロパン−1−アミニウム、2−(メチル(3−(トリメトキシシリル)プロピル)アミノ)酢酸、2−(3−(トリメトキシシリル)プロピルアミノ)酢酸、2−(4−(3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル)ピペラジン−1−イル)酢酸、3−(4−(3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル)ピペラジン−1−イル)プロピオン酸、2−(メチル(2−(3−(トリメトキシシリル)プロピルウレイド)エチル)アミノ)酢酸、2−(2−(3−(トリメトキシシリル)プロピルウレイド)エチル)アミノ酢酸又はこれらの組合せからなる。
【0050】
複数のナノ粒子を含んでなる組成物は、診断剤組成物として使用できる。かくして、別の態様では、本発明は診断剤組成物に関する。かかる診断剤組成物は、前述した複数のナノ粒子10を含んでいる。一実施形態では、診断剤組成物はさらに、薬学的に許容されるキャリヤー及び任意には1種以上の賦形剤を含んでいる。一実施形態では、薬学的に許容されるキャリヤーは実質的に水であり得る。任意の賦形剤は、塩類、崩壊剤、結合剤、フィラー及び滑沢剤の1種以上からなり得る。
【0051】
小さい粒度は、例えば腎臓及び他の器官からのクリアランスを容易にする点で有利であり得る。一実施形態では、複数のナノ粒子は約50nm以下のメジアン粒度を有し得る。別の実施形態では、複数のナノ粒子は約10nm以下のメジアン粒度を有し得る。別の実施形態では、複数のナノ粒子は約6nm以下のメジアン粒度を有し得る。
【0052】
本発明の一態様は、ナノ粒子の製造方法に関する。一般に、1つの方法は、(a)本質的にシリカを含まないコア表面を有するコアを用意する段階、及び(b)コア表面に結合したシェルであって、シラン官能化双性イオン性部分を含むシェルを配設する段階を含んでいる。
【0053】
1以上の実施形態では、コアを用意する段階は、1種以上の遷移金属を含む第1の前駆体材料を用意することを含んでいる。一実施形態では、第1の前駆体材料は反応することで、1種以上の遷移金属を含むコアを生成する。一実施形態では、第1の前駆体材料は分解することでコアを生成する。別の実施形態では、第1の前駆体材料は加水分解することでコアを生成する。別の実施形態では、第1の前駆体材料は反応することでコアを形成する。ナノ粒子合成方法は当技術分野で公知であり、適当な材料からナノ粒子コアを製造するための任意適宜の方法が本方法での使用に適し得る。
【0054】
1以上の実施形態では、シェルを配設する段階は、シラン部分又はシラン部分の前駆体を含む材料のような第2の前駆体材料を用意することを含んでいる。シラン部分はコアと反応することで、シラン部分を含むシェルを形成し得る。若干の実施形態では、前駆体はコアと反応する前に加水分解反応を受けることができる。若干の実施形態では、シラン部分は1以上の双性イオン性部分又は1以上の双性イオン性部分前駆体で官能化することができる。シラン部分が1以上の双性イオン性部分で官能化される実施形態では、こうして形成されるシェルはシラン官能化双性イオン性部分を含んでいる。シラン部分が双性イオン性部分前駆体で官能化される実施形態では、こうして形成されるシェルは双性イオン性を有しないことがあるが、続いて適当な試薬と反応させることで前駆体を双性イオン性部分に転化できる。1以上の実施形態では、第2の前駆体材料はシラン官能化双性イオン性部分又はシラン官能化双性イオン性部分の前駆体(例えば、上述した前駆体トリアルコキシシランの1種以上)を含んでいる。
【0055】
段階の順序及び/又は組合せは様々に変化させ得ることが理解されよう。したがって、若干の実施形態に従えば、段階(a)及び(b)を逐次段階として実施することで、コア及び第2の前駆体材料からナノ粒子が形成される。限定ではなく例示を目的として示せば、若干の実施形態では、第1の前駆体材料は1種以上の遷移金属を含んでいる。この場合、コアは1種以上の遷移金属の酸化物を含み、段階(a)はさらに第1の前駆体材料の加水分解を含む。若干の実施形態に従えば、第1の前駆体材料は遷移金属のアルコキシド又はハライドを含み、加水分解プロセスは第1の前駆体材料をアルコール溶媒中で酸及び水と化合させることを含む。若干の実施形態では、シランは重合性の基を含むことができる。重合は、酸触媒縮合重合によって進行し得る。若干の他の実施形態では、シラン部分をコア上に物理的に吸着させてもよい。若干の実施形態では、シラン部分をさらに他のポリマーで官能化することができる。かかるポリマーは、水溶性かつ生体適合性のものであり得る。一実施形態では、かかるポリマーには、特に限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリメタクリレート、ポリビニルスルフェート、ポリビニルピロリジノン及びこれらの組合せがある。
【0056】
若干の実施形態では、コアは金属酸化物を含んでいる。一実施形態では、金属酸化物コアは、有機酸の存在下で金属アルコキシドを加水分解することで合成できる。若干の実施形態では、金属アルコキシドはタンタルアルコキシド(例えば、タンタルエトキシド)であり、有機酸はカルボン酸(例えば、イソ酪酸、プロピオン酸又は酢酸)であり、加水分解反応はアルコール溶媒(例えば、1−プロパノール又はメタノール)の存在下で実施することができる。
【0057】
別の実施形態では、コア及び第2の前駆体材料を互いに接触させることができる。一実施形態では、第2の前駆体材料は、有機官能性トリアルコキシシラン又は有機官能性トリアルコキシシランの混合物のようなケイ素含有化学種を含み得る。有機官能性トリアルコキシシランの1種以上が1以上の双性イオン性基又は双性イオン性基前駆体を含む結果、各ナノ粒子は平均して1以上の双性イオン性部分又は双性イオン性部分前駆体を含み得る。一実施形態では、各ナノ粒子は平均して複数の双性イオン性部分又は双性イオン性部分前駆体を含み得る。他の実施形態では、コアは1種以上のシラン部分を含む混合物で処理できる。一実施形態では、1つのシラン部分を双性イオン性部分又は双性イオン性部分前駆体で官能化しながら、第2のシラン部分はいかなる双性イオン性部分でも官能化しなくてよい。帯電したシラン部分は同時に又は逐次に添加できる。若干の実施形態では、双性イオン性部分又は双性イオン性部分前駆体で官能化された1種以上のシラン部分を、非双性イオン性部分で官能化されたコアに同時に又は逐次に添加することができる。
【0058】
一実施形態では、酸化タンタルコアを、第四級窒素原子及びスルホネート基又はカルボキシル基の両方(例えば、スルホベタイン基又はベタイン基)を含有するアルコキシシランと反応させることができる。一実施形態では、酸化タンタルコアを(RO)3Si(CH2xNR'2(CH2ySO3(式中、Rはアルキル基又はアリール基、xは1〜10、yは1〜10、R'はH、アルキル基又はアリール基である。)と反応させることができる。一実施形態では、Rはアルキル基(例えば、メチル又はエチル)、xは3、yは2〜5、R'はH又はアルキル基(例えば、メチル)である。
【0059】
一実施形態では、スルホベタイン官能化シランは、アルキルスルトン又はアルキルスルトンの混合物をアミン置換シランと開環反応させることで合成できる。別の実施形態では、アルキルスルトンの代わりにアルキルラクトン又はアルキルラクトンの混合物を使用することもできる。特定の実施形態では、シェルはスルホベタイン及びベタイン官能化シランの混合物を含んでいる。別の実施形態では、金属酸化物コアはスルホベタイン又はベタイン官能化シラン部分と反応し得るが、この場合にはスルホネート基又はカルボキシル基を化学的に保護することができる。
【0060】
別の実施形態では、酸化タンタルコアをアミン含有シラン(例えば、アミノ官能性トリアルコキシシラン)と反応させることで、アミン含有シランで官能化された酸化タンタルコアを形成できる。第2の段階では、シラン官能化コアを単離することができる。代替実施形態では、シラン官能化コアをインサイチュで使用することができる。シラン官能化コアをアルキルスルトン、アルキルラクトン、ハロアルキルカルボン酸又はエステル、アルキルスルトンの混合物、アルキルラクトンの混合物、ハロアルキルカルボン酸又はエステルの混合物、或いはアルキルスルトンとアルキルラクトンとの混合物と反応させることで、双性イオン性部分を形成できる。スルトン、ラクトン或いはスルトン及び/又はラクトンの混合物の量は、平均してナノ粒子1個当たり1以上の双性イオン性部分を与えるのに十分なものであればよい。アルキルスルトンの非限定的な例には、プロパンスルトン及びブチルスルトンがある。アルキルラクトンの非限定的な例には、プロパンラクトン及びブチルラクトンがある。
【0061】
一実施形態では、本方法はさらに複数のナノ粒子を分別する段階を含む。分別段階は、ナノ粒子を濾過することを含み得る。別の実施形態では、本方法はさらに複数のナノ粒子を精製する段階を含む。精製段階は、透析、接線流濾過、ダイアフィルトレーション
又はこれらの組合せの使用を含み得る。別の実施形態では、本方法はさらに精製ナノ粒子の単離を含む。
【0062】
上述した実施形態のいずれかと組み合わせて、若干の実施形態は、X線/コンピューター断層撮影又はMRI用の診断剤組成物を製造する方法に関する。かかる診断剤組成物は複数のナノ粒子を含んでいる。若干の実施形態では、複数のナノ粒子のメジアン粒度は約10nmを超えないのがよく、例えば約7nm以下であり、特定の実施形態では約6nm以下である。若干の実施形態に従えば、複数のナノ粒子の粒度はナノ粒子を哺乳動物の腎臓(例えば、ヒトの腎臓)から微粒子形態で実質的に排出可能にするように選択できることが理解されよう。
【0063】
若干の実施形態では、本発明は、本明細書中に記載した複数のナノ粒子を含む診断剤組成物の使用方法に関する。若干の実施形態では、本方法は、若干の例では生きている被験体(例えば、哺乳動物)であり得る被験体に診断剤組成物をインビボ又はインビトロで投与する段階、続いてX線/CT装置を用いて被験体の画像生成を行う段階を含んでなる。ナノ粒子は、上述したようにコア及びシェルを含み、シェルは1以上のシラン官能化双性イオン性部分を含んでいる。一実施形態では、コアは酸化タンタルを含んでいる。ナノ粒子は、各種の公知方法で被験体中に導入できる。被験体中にナノ粒子を導入するための方法の非限定的な例には、静脈内、動脈内又は経口投与、皮膚適用、及び筋肉、皮膚、腹腔或いは他の組織又は体腔中への直接注入がある。
【0064】
別の実施形態では、本方法は、診断剤組成物を被験体に投与する段階及び診断装置を用いて被験体のイメージングを行う段階を含んでなる。診断装置はイメージング方法を使用するが、その例には、特に限定されないが、MRI、光学イメージング、光学コヒーレンス断層撮影、X線断層撮影、コンピューター断層撮影、ポジトロン放出断層撮影及びこれらの組合せがある。かかる使用方法では、被験体に診断剤組成物を予め投与することもできる。診断剤組成物は、上述したように複数のナノ粒子10を含んでいる。
【0065】
一実施形態では、上述した診断造影剤の使用方法はさらに、診断装置を用いて被験体への診断剤組成物の送達をモニターする段階、及び被験体を診断する段階を含んでいる。この方法では、一般に医学診断イメージング装置の通常の動作に合わせて、データをコンパイルして分析することができる。診断剤組成物はX線又はCT造影剤(例えば、酸化タンタルコアを含む組成物)であり得る。診断剤組成物は、約100〜約5000ハウンスフィールド単位の範囲内のCT信号を与えることができる。別の例では、診断剤組成物はMRI造影剤(例えば、超常磁性酸化鉄コアを含む薬剤)であり得る。
【0066】
本発明の一実施形態は、本明細書中に記載したナノ粒子10(例えば、酸化タンタル又は酸化鉄コアを有するナノ粒子)が被験体内に分布した範囲を測定するための方法を提供する。被験体は、哺乳動物或いは組織試料又は細胞を含む生物学的材料であり得る。本方法はインビボ又はインビトロ方法であり得る。ナノ粒子は、各種の公知方法で被験体中に導入できる。被験体中にナノ粒子を導入するための方法の非限定的な例には、上述した公知方法のいずれかがある。一実施形態では、本方法は、(a)被験体中にナノ粒子を導入する段階、及び(b)被験体内におけるナノ粒子の分布を測定する段階を含んでなる。被験体内における分布は、前述したもののような診断イメージング技法を用いて測定できる。別法として、生物学的材料中におけるナノ粒子の分布は元素分析によって測定できる。一実施形態では、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)を使用することで、生物学的材料中におけるナノ粒子の濃度を測定できる。
【0067】
本発明の別の態様は、診断剤組成物として使用するための組成物の製造における、前述したナノ粒子10の使用に関する。
【0068】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を実証するために示される。当業者であれば、以下の実施例中に開示される方法は、単に本発明の例示的な形態を表すにすぎないことが理解されるはずである。しかし当業者であれば、本開示内容に照らせば、本発明の技術思想及び技術的範囲から逸脱することなく記載された特定の実施形態に数多くの変更を加えることができ、それでも同様又は類似の結果が得られることが理解されるはずである。
【実施例】
【0069】
本発明の実施は、以下の実施例からなお一層完全に理解されよう。これらの実施例は例示のみを目的として本明細書中に示されるものであって、決して本発明を限定するものと解すべきでない。
【0070】
実施例セクションで使用される略語は、以下に示す通りである。「mg」:ミリグラム、「mL」:ミリリットル、「mg/mL」:ミリグラム/ミリリットル、「mmol」:ミリモル、「μL」:マイクロリットル、「LC」:液体クロマトグラフィー、「DLS」:動的光散乱、「DI」:脱イオン水、「ICP」:誘導結合プラズマ。
【0071】
特記しない限り、すべての試薬用化学薬品は受け入れたままで使用し、すべての水溶液の調製にはミリポア(Millipore)水を使用した。
【0072】
実施例1
酸化タンタル系ナノ粒子の合成
段階1:N,N−ジメチル−3−スルホ−N−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)プロパン−1−アミニウムの合成
撹拌棒を含む500mL丸底フラスコに、トルエン(無水、250mL)、N,N−ジメチルアミノトリメトキシシラン(25g、121mmol)及び1,3−プロパンスルトン(13.4g、110mmol)を添加した。混合物を室温で4日間撹拌した。次いで、混合物を濾過して沈殿した生成物を単離し、続いてこれを新鮮な無水トルエン(2×60mL)で洗浄した。真空下で乾燥した後の白色粉末の収集は23.6gであった。
【0073】
段階2:N,N−ジメチル−3−スルホ−N−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)プロパン−1−アミニウムと酸化タンタル系コアとの反応
方法1:溶媒として1−プロパノール
撹拌棒を含む250mL三つ口丸底フラスコに1−プロパノール(73mL)を仕込み、次いでイソ酪酸(1.16mL、12.51mmol、Taに対して1.27eq)及びDI水(1.08mL、59.95mmol、Taに対して6.09eq)を添加して反応混合物を形成した。反応混合物中に窒素を20分間吹き込み、次いで撹拌しながら反応混合物にタンタルエトキシド(Ta(OEt)5)(2.55mL、4g、9.84mmol)を室温で15分かけて滴下した。Ta(OEt)5の添加中、反応混合物中への窒素の吹込みを続けた。Ta(OEt)5の添加が完了した後、上述した反応混合物を窒素下において室温で16時間撹拌した。
【0074】
反応混合物を室温で16時間撹拌し、次いで反応混合物からアリコート(1.5mL)を採取し、20mm濾過膜で濾過し、濾過段階の直後にDLSによって粒度を水中で(流体力学的半径として)測定した。平均粒度は約3.6nmと測定された。N,N−ジメチル−3−スルホ−N−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)プロパン−1−アミニウム(4.03g、12.23mmol、Taに対して1.24eq)を50mLのDI水に溶解した。この溶液を上述した反応混合物に数分かけて滴下した。無色で均質な反応混合物が直ちに濁った白色溶液に変化し、最終的にはシラン官能化双性イオン性部分の添加終了までに乳状溶液となった。添加が完了した後、フラスコに凝縮器を取り付け、反応混合物を窒素ブランケット下に保った。フラスコを75℃に予熱した油浴中に配置し、反応混合物を6時間撹拌した。反応混合物は一層透明になった。6時間後、反応混合物を空気ブランク下で室温に冷却した。1(M)NH4OHを用いて不均質な反応混合物をpH6〜7に中和した。反応混合物を空気ブランク下で第2の丸底フラスコに移した。反応混合物を第2のフラスコに移す際、ある量の白色物質がフラスコ内に残ったが、第2のフラスコには移さなかった(粗生成物A)。粗生成物Aを窒素流下で一晩乾燥した。他方、回転蒸発器を用いて第2のフラスコの溶液を50℃で蒸発させた。溶液の蒸発後に得られた乾燥白色残留物(粗生成物B)を窒素流下に一晩放置した。
【0075】
粗生成物Aを一晩乾燥した。この固体をDI水中に完全に溶解した。粗生成物BもDI水中に完全に溶解し、2種の溶液(粗生成物A及び粗生成物B)を合わせた(総量は60mLであった)。水溶液を450nm、200nm及び100nmの濾過膜で順次に濾過し、最後に20nmの濾過膜で濾過した。次いで、溶液をまずリン酸ナトリウム緩衝液を用いてpH7.0で透析し(10K分子量カットオフのスネークスキン再生セルロースチューブ)、次いでDI水中で3回透析した。
【0076】
最後に、ナノ粒子を凍結乾燥によって単離した。白色粉末の収量=1.748g(Taを基準にして収率38%)。ゼータ電位:(−)8.18mV。元素分析:38.3±0.3%Ta、4.8±0.1%Si。平均粒度はDLSによって8.9nmと測定された。ナノ粒子の純度は、液体クロマトグラフィー(LC)/誘導結合プラズマ(ICP)によって測定した。
【0077】
方法2:溶媒としてトリフルオロエタノール
撹拌棒を含む100mL三つ口丸底フラスコにトリフルオロエタノール(42mL)を仕込んだ。溶媒に窒素を吹き込みながら、注射器を用いてイソ酪酸(0.53mL、5.7mmol)を添加し、次いで水(0.13mL、7.4mmol)を添加した。連続的に窒素を吹き込みながら、溶液をさらに15分間撹拌した。注射器を用いてタンタルエトキシド(Ta(OEt)5)(2g、4.9mmol)を滴下した。僅かに濁った溶液を窒素下において室温で17時間撹拌した。N,N−ジメチル−3−スルホ−N−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)プロパン−1−アミニウム(実施例1、3.2g、9.8mmol)を水(15mL)に溶解した。この均質で無色の溶液を撹拌しながら空気下でタンタル含有反応混合物に手早く滴下した。フラスコに凝縮器を取り付け、次いで78℃に予熱した油浴中に配置した。この温度で6時間撹拌した後、無色で均質の反応混合物を室温に冷却した。水(20mL)を添加した後、回転蒸発器でトリフルオロエタノールを実質的に除去した。濃水酸化アンモニウムを用いて水溶液を中和し、次いで200nm、100nm及び20nmフィルターで順次に濾過した。次いで、3500MWカットオフの再生セルローススネークスキン透析チューブを用いて溶液を4回透析した。最初の透析は、50:50のDI水:pH7.0リン酸塩緩衝液中で実施した。以後の透析はDI水中で実施した。精製ナノ粒子生成物は水から単離しなかった。アリコートに関する%固形分試験を用いて、被覆ナノ粒子の収量が1.55gであることを決定した。平均粒度は動的光散乱によって1.6nmと測定された。
【0078】
実施例2
酸化タンタル系ナノ粒子の合成
段階1:2−(4−(3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル)ピペラジン−1−イル)酢酸エチルの合成
エチルアセトキシピペラジン(3.789g)の塩化メチレン(20mL)に(3−イソシアナトプロピル)トリメトキシシラン(4.106g)を添加した。溶液を16時間撹拌し、次いで溶媒を減圧下で除去して8.37gの物質を得、これをそれ以上精製せずに使用した。
【0079】
段階2:2−(4−(3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル)ピペラジン−1−イル)酢酸エチルと酸化タンタル系コアとの反応
500mL丸底フラスコに、n−プロパノール(99mL)、イソ酪酸(1.4mL)及び水(1.2mL)を仕込んだ。溶液を5分間撹拌し、次いでTa(OEt)5(5.37g)を溶液に滴下した。溶液を窒素下において室温で18時間撹拌した。次いで、全部で60mLのこの溶液を2−(4−(3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル)ピペラジン−1−イル)酢酸エチル(6.37g)に添加し、溶液を窒素下において100℃で2時間撹拌した。次いで、混合物を室温に冷却し、水(20mL)に添加し、混合物を室温で18時間撹拌した。次いで、全部で75mLの0.33N塩酸水溶液を添加し、溶液を60℃で6時間加熱した。次いで、混合物を室温に冷却し、250mLの28%アンモニア水を添加し、混合物を5日間撹拌した。アンモニア及びプロパノールを減圧下で除去し、次いで材料を3000MWカットオフの再生セルロース透析チューブに注入し、透析緩衝液を12時間ごとに交換しながら蒸留水に対して48時間透析した。次いで、溶液を30000MWカットオフの遠心フィルターで濾過することで、DLSにより測定して4.5nmの粒度を有する粒子を得た。
【0080】
実施例3
酸化鉄系ナノ粒子の合成
超常磁性酸化鉄ナノ粒子の合成
100mL三つ口丸底フラスコに706mgのFe(acac)3及び20mLの無水ベンジルアルコールを仕込んだ。溶液中に窒素を吹き込み、次いで窒素雰囲気下において165℃で2時間加熱した。次いで、溶液を室温に冷却し、その温度で貯蔵した。
【0081】
2−(4−(3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル)ピペラジン−1−イル)酢酸エチルと超常磁性酸化鉄との反応
ベンジルアルコール中の超常磁性酸化鉄ナノ粒子(5.58mg Fe/mL)の10mLアリコートを50mLのテトラヒドロフランで希釈した。2.00gの2−(4−(3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル)ピペラジン−1−イル)酢酸エチルを添加し、混合物を撹拌しながら60℃で2時間加熱し、次いで室温に冷却した。50mLの1.0M炭酸カリウム水溶液を添加した後、フラスコを密封し、撹拌しながら60℃で18時間加熱した。次いで、混合物を冷却して遠心分離し、水性層を10000MWカットオフの再生セルロース透析チューブに注入し、透析緩衝液を12時間ごとに交換しながら4リットルの10mMクエン酸ナトリウムに対して48時間透析した。最終容量は94mLであり、溶液1mL当たり全部で0.416mgの鉄を含んでいた。かかる物質は、動的光散乱により150mM塩化ナトリウム水溶液中で測定して8.4nmの平均粒度を有していた。
【0082】
N,N−ジメチル−3−スルホ−N−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)プロパン−1−アミニウムと超常磁性酸化鉄との反応
ベンジルアルコール中の超常磁性酸化鉄ナノ粒子(5.58mg Fe/mL)の16.75mLアリコートをテトラヒドロフランに添加して全容量を94.5mLにした。次いで、この溶液を3.1gのN,N−ジメチル−3−スルホ−N−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)プロパン−1−アミニウムと共に耐圧フラスコに添加し、混合物を撹拌しながら50℃で2時間加熱した。室温に冷却した後、全部で31mLのイソプロパノール及び76mLの濃水酸化アンモニウム水溶液(水中28%NH3)を添加し、次いでフラスコをを密封し、撹拌しながら50℃で18時間加熱した。混合物を冷却し、ヘキサン(100mL×3)で洗浄した。水性層を10000MWカットオフの再生セルロース透析チューブに注入し、4リットルの10mMクエン酸ナトリウムに対して18時間透析した。最終溶液は、溶液1mL当たり全部で0.67mgの鉄を含んでいた。かかる物質は9.2nmの粒度を有していた。
【0083】
水中でのナノ粒子の粒度及び安定性の測定
方法1からのナノ粒子(36.2mg)を2mLのDI水に溶解した。溶液を20nm濾過膜で濾過した。濾過段階の直後に、平均粒度を動的光散乱(DLS)により流体力学的半径として測定した。DLSによって定期的にモニターしながら、試料を37℃で15日間貯蔵した。結果を表1に示す。
【0084】
【表1】

実施例4
ナノ粒子の生体分布試験
体重150〜500グラムの範囲内のサイズを有する雄Lewisラットを用いてインビボ試験を実施した。ラットは標準的なハウジング内に収容し、食物及び水を随意に与えると共に、12時間昼夜照明サイクル下に置いた。生体分布試験のために使用したすべての動物は、他の点では未処置の健常被験体であった。
【0085】
ナノ粒子を水又は食塩水中のフィルター滅菌溶液として投与した。投与は、側尾静脈中に挿入した26Gカテーテルを通して、イソフルラン麻酔(導入4%、維持2%)下で実施した。注射量は注射液中のナノ粒子濃度及びラットのサイズに基づいて決定したが、一般に齧歯類血液量の10%未満であった。標的用量は、体重1kg当たり100mgのコア金属(例えば、タンタル)であった。注射後、動物を麻酔から解放し、悪影響に関する観察期間後に通常のハウジングに戻した。それから最小数分乃至最大6ヶ月の期間後に、ラットを安楽死させ、検査対象器官を回収し、秤量し、ICP分析によって総金属(例えば、タンタル)含有量を分析した。注射液の正確な濃度を求めるため、器官と共に注射物質の試料も分析に供した。これらのデータを総合することで、検査対象組織中に残留している注射用量のパーセント(「%ID」)を求めた。これらのデータは、%ID/器官又は%ID/組織1グラムとして報告された。実験は一般に各時点において四重反復試験ラットを用いて実施され、実験誤差(±標準偏差)を求めることができた。
【0086】
【表2】

表2は、静脈内注射から1週間後における、非双性イオン性コーティング(PHS)並びに双性イオン性コーティング(SZWIS及びCZWIS)を有する分別ナノ粒子の主要排出器官内の生体分布を示している。「ND」は「検出せず」を表している。
【0087】
器官当たりのタンタル保持量が、注射用量に対する分率として表2中に示されている。同等なサイズの非双性イオン性被覆ナノ粒子は、試験した双性イオン性コーティングのいずれよりも遙かに高いレベル(ほぼ1桁高いレベル)で保持されている。
【0088】
以上、本明細書中には本発明の若干の特徴のみを例示し説明してきたが、当業者には数多くの修正及び変更が想起されるであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は本発明の真の技術思想に含まれるこのような修正及び変更のすべてを包含することを理解すべきである。
【符号の説明】
【0089】
10 ナノ粒子
20 コア
30 コア表面
40 シェル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)本質的にシリカを含まないコア表面(30)を有するコア(20)と
b)コア表面(30)に結合したシェル(40)であって、1以上のシラン官能化双性イオン性部分を含むシェル(40)と
を含んでなるナノ粒子(10)。
【請求項2】
コア(20)が遷移金属又は遷移金属化合物を含む、請求項1記載のナノ粒子。
【請求項3】
コア(20)が酸化タンタルを含む、請求項2記載のナノ粒子。
【請求項4】
コア(20)が超常磁性材料を含む、請求項1記載のナノ粒子。
【請求項5】
コア(20)が超常磁性酸化鉄を含む、請求項4記載のナノ粒子。
【請求項6】
シラン官能化双性イオン性部分が、正に帯電した部分、負に帯電した部分、及び正に帯電した部分と負に帯電した部分との間に位置する第1のスペーサー基を含む、請求項1記載のナノ粒子。
【請求項7】
ナノ粒子(10)が約50nm以下の粒度を有する、請求項1記載のナノ粒子。
【請求項8】
複数のナノ粒子を含んでなる組成物であって、1以上が請求項1記載のナノ粒子(10)である、組成物。
【請求項9】
診断剤組成物として使用するための、請求項8記載の組成物。
【請求項10】
ナノ粒子(10)の製造方法であって、a)本質的にシリカを含まないコア表面(30)を有するコア(20)を用意する段階、及びb)コア表面(30)に結合したシェル(40)であって、シラン官能化双性イオン性部分を含むシェル(40)を配設する段階を含んでなる方法。
【請求項11】
コア(20)を用意する段階が、1種以上の遷移金属を含む第1の前駆体材料を用意することを含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
コア表面(30)に結合したシェル(40)を配設する段階が、第2の前駆体材料を用意し、第2の前駆体材料をコア(20)と反応させることで、コア(20)上に配設されたシェル(40)を形成することを含む、請求項10記載の方法。
【請求項13】
第2の前駆体材料がシラン部分を含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
複数のナノ粒子(10)を含む診断剤組成物を被験体に投与する段階、及び診断装置を用いて被験体のイメージングを行う段階を含んでなる使用方法であって、ナノ粒子(10)が
本質的にシリカを含まないコア表面(30)を有するコア(20)と
コア表面(30)に結合したシェル(40)であって、1以上のシラン官能化双性イオン性部分を含むシェル(40)と
を含む、使用方法。
【請求項15】
複数のナノ粒子(10)を含む診断剤組成物を被験体に投与する段階、及びX線装置を用いて被験体のイメージングを行う段階を含んでなる使用方法であって、ナノ粒子(10)が
コア表面(30)を有するコア(20)であって、酸化タンタルを含むコア(20)と
コア表面(30)に結合したシェル(40)であって、1以上のシラン官能化双性イオン性部分を含むシェル(40)と
を含む、使用方法。
【請求項16】
診断剤として使用するための診断剤組成物の製造における、請求項1記載のナノ粒子の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【公表番号】特表2012−513963(P2012−513963A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542782(P2011−542782)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067468
【国際公開番号】WO2010/076237
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】