説明

評価システム、評価方法、プログラム、記録媒体

【課題】地図データ上に、下水施設を構成するコンクリート構造物の劣化指標を表示し、合理的にコンクリート構造物のライフサイクルコストを検討する評価システムを提供する。
【解決手段】コンピュータ3の制御部7は、地図データベース501に登録される地図データ上に、下水施設に関する評価対象データベース503、下水施設の水質データ等を登録した下水環境データベース505、下水施設コンクリート配合データベース507等の下水施設のデータを重ねて表示する。さらに制御部7は、当該下水施設を構成するコンクリート構造物の劣化指標である硫化水素濃度と劣化深さとを算出して同地図上に表示させ、操作者が当該施設の維持管理方針を選定する検討資料を提供する。維持管理方針が決定されると、制御部7は、下水施設の補修工法の選定を行い、更にライフサイクルコストを算出して表示し、操作者が維持管理方針等を更に検討するための資料を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地域に布設されている下水施設を構成するコンクリート構造物の劣化を評価し、下水施設の維持管理のためのライフサイクルコストを定量的に評価するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下水管路をはじめとする下水施設のコンクリート構造物は、下水中から放散する硫化水素がコンクリート表面で硫酸となり、当該硫酸によるコンクリート腐食が原因で劣化することが知られている。そのため、コンクリート構造物の維持管理や材料開発等を行い、下水施設の劣化に対応する試みがなされている。
【0003】
例えば下水施設の維持管理は、設計の際に腐食領域を予測しておき、対策を講じる方法がある。また、既設の下水施設の延命対策としては、リスク評価とライフサイクルコスト(維持管理費用)をふまえた合理的な補修・改修計画の立案や実施が重要となる。
【0004】
下水施設は、例えば施設の建設年を基準にして定期的に補修を行ったり、実際にいくつかの下水施設におけるコンクリート構造物の劣化の目視検査や下水施設内部の水質検査を基にして、コンクリート構造物の劣化レベルを予測したりしていた。
【0005】
下水道施設におけるコンクリート内壁の防食及び補強工法として、例えば特許文献1がある。
【0006】
また、塩害やコンクリートの中性化によるコンクリート構造物の劣化を、有限要素法を用いて予測計算し、正確な劣化・予測計算の結果に基づいてライフサイクルコストを計算して評価する方法として、例えば特許文献2がある。
【0007】
【特許文献1】特開平08−113975号公報
【特許文献2】特開2004−233244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、下水施設のコンクリート構造物の劣化を算出して、補修に利用している例はない。また、コンクリート構造物の劣化予測に、硫化水素ガス濃度と劣化深さの関係を示すものがあるが、実際の下水の水質要因やコンクリートの配合要因などを反映することができず、汎用性に劣る欠点があった。
【0009】
また、下水施設の布設状況を地図上に表示し、更に当該地図上の施設を指定して、当該指定された下水施設のコンクリート構造物の劣化指標や、補修の指標となるライフサイクルコストなどを表示するシステムの事例はない。
【0010】
また、コンクリート構造物の維持管理方針、維持管理品質、内容、頻度等をパラメータとしてライフサイクルコストを比較検討できるシステムの事例はない。
【0011】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、地図データ上に、下水施設を構成するコンクリート構造物の劣化指標を表示し、合理的にコンクリート構造物のライフサイクルコストを検討する評価システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達成するための第1の発明は、地形データ、下水施設データ、下水環境データ、及び下水施設コンクリート配合データ等を登録したデータベースと、コンピュータとからなる評価システムであって、前記コンピュータは、前記地形データに基づいて表示する地図上に、前記下水施設データ、前記下水環境データ、及び前記下水施設コンクリート配合データに基づく情報を表示する手段と、前記地図上で選択される評価対象領域の前記下水施設データ、前記下水環境データ、及び前記下水施設コンクリート配合データに基づいて、前記評価対象領域の下水施設の劣化指標を算出する手段と、前記劣化指標を参照して指定される前記下水施設の維持管理方針を基にして、前記下水施設の補修工法を選定する手段と、前記維持管理方針と、前記選定される補修工法とを基にしてライフサイクルコストを算出する手段とを具備することを特徴とする評価システムである。
【0013】
地形データは、指定地域の道路、建築物、河川等、地図を表示するための背景地図データである。
下水施設データは、人孔の番号、形状、設置位置、接続等に関するデータと、管きょの番号、建設年、形状、かぶり、前記人孔との接続関係等に関するデータである。この下水施設データの人孔の設置位置情報と、管きょの接続関係の情報を利用して地図データ上に人孔と管きょを表示する。
下水環境データは、人孔などの下水施設の流量予測、水質調査等で得られるデータである。流量予測とは、管きょの布設状況と水深から流量を推定する。また、水質調査で得られるデータとは、溶存酸素濃度、硫化物濃度、BOD(Biochemical Oxygen Demand:生物化学的酸素要求量)等である。
下水施設コンクリート配合データは、下水施設の人孔や管きょが製造される際、使用されるコンクリートの配合に関するデータである。即ちコンクリートを作る際に配合するセメントと水の割合、砂(細骨材)と砕いた石や砂利(粗骨材)の量等に関するデータである。
劣化指標とは、下水等から発生する硫化水素濃度と、コンクリートの劣化深さである。
下水施設の維持管理方針は、下水施設の補修を行う時期に関するものであり、供用限界、点検時期、補修費用、耐用年数のいずれに重点を置くかにより、操作者が方針を選択する。
下水施設の補修工法は、劣化深さの割合や、劣化長さの割合の度合いにより、更生工法、部分更生工法、断面修復工法+防食被覆方向、防食被覆工法、補修なし、のいずれかが選択される。
ライフサイクルコストとは、対象の下水施設の劣化指標と、維持管理方針と、補修工法とから算出する維持管理・点検・補修に要するコストである。選択された対象領域の下水施設全体のライフサイクルコストの総計を算出し、下水施設の維持管理方針と補修工法の見直しや検討に利用する。
【0014】
第1の発明による評価システムは、地形データに基づいて表示する地図上に、下水施設データ、下水環境データ、及び下水施設コンクリート配合データに基づく情報を表示し、地図上で選択される評価対象領域の下水施設データ、下水環境データ、及び下水施設コンクリート配合データに基づいて、下水施設の劣化指標を算出する。更に本システムは、この劣化指標を参照して指定される下水施設の維持管理方針を基にして、下水施設の補修工法を選定する。更に本システムは、下水施設の維持管理方針と、選定される補修工法とを基にしてライフサイクルコストを算出する。
【0015】
地図上で下水施設が選択されると、選択された下水施設に関する下水施設データ、又は下水環境データ、又は下水施設コンクリート配合データのうちの少なくとも1の表示を行うようにしても良い。
地図で下水施設が選択されると、選択された下水施設に関する下水施設データ、又は下水環境データ、又は下水施設コンクリート配合データのうちの少なくとも1の訂正を行うようにしても良い。
下水施設の目視評価結果を、地図上に表示させるようにしても良い。また、目視評価結果を、下水施設の補修工法の選定に利用するようにしても良い。
【0016】
第1の発明では、地図上に、前記下水施設データ、前記下水環境データ、及び前記下水施設コンクリート配合データに基づく情報を表示し、訂正することができる。また、地図上で選択される評価対象領域の下水施設の劣化指標を算出し、これを基にして選択される下水施設の維持管理方針から補修工法を選定することができる。また、維持管理方針と、選定される補修工法とを基にしてライフサイクルコストを算出し下水施設の維持管理方針と補修工法の見直しや検討に利用できる効果がある。
【0017】
第2の発明は、地形データ、下水施設データ、下水環境データ、及び下水施設コンクリート配合データ等を登録したデータベースと、コンピュータとを用いた評価方法であって、前記コンピュータは、前記地形データに基づいて表示する地図上に、前記下水施設データ、前記下水環境データ、及び前記下水施設コンクリート配合データに基づく情報を表示する工程と、前記地図上で選択される評価対象領域の前記下水施設データ、前記下水環境データ、及び前記下水施設コンクリート配合データに基づいて、前記評価対象領域の下水施設の劣化指標を算出する工程と、前記劣化指標を参照して指定される前記下水施設の維持管理方針を基にして、前記下水施設の補修工法を選定する工程と、前記維持管理方針と、前記選定される補修工法とを基にしてライフサイクルコストを算出する工程とを具備することを特徴とする評価方法である。
【0018】
第3の発明は、前記コンピュータを、請求項1記載の評価システムとして機能させるためのプログラムである。
【0019】
第3の発明のプログラムは、コンピュータを請求項1記載の評価システムとして機能させるものであり、このプログラムをネットワークを介して流通させることもできる。
【0020】
第4の発明は、前記コンピュータを、請求項1記載の評価システムとして機能させるためのプログラムを記録した記録媒体である。
【0021】
第4の発明の記録媒体は、前記コンピュータを、請求項1記載の評価システムとして機能させるためのプログラムを記憶しており、この記録媒体を流通させることもできる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、地図データ上に、下水施設を構成するコンクリート構造物の劣化指標を表示し、合理的にコンクリート構造物のライフサイクルコストを検討する評価システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、図面に基づいて本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本実施の形態に係る劣化評価システム1の構成を示す図である。
【0024】
(1.構成)
(1−1.劣化評価システム1の構成)
劣化評価システム1は、コンピュータ3と、該コンピュータ3に接続されるデータベース5とから構成される。尚、必要に応じて、コンピュータ3をネットワーク等に接続して、他のコンピュータやサーバ、また他のデータベースとの間でデータ等をやりとりすることも可能である。
【0025】
コンピュータ3は、中央処理装置等の制御部7と、記憶メディア(フレキシブルディスクやCD−ROM等)の読み込み書き込みを行うメディア入出力部9と、ネットワーク等に接続するモデムやLANボード等の通信部11と、キーボード、マウス又はマイク等の入力部13と、プリンタ等の印刷部15と、CRTや液晶表示装置等の表示部17と、HDD(Hard Disc Drive)等の記憶部19とから構成され、それぞれがシステムバス21で接続されている
【0026】
データベース5は、地形データベース501、評価対象データベース503、下水環境データベース505、下水施設コンクリート配合データベース507等で構成され、システムバス21を介してコンピュータ3とのデータのやりとりが可能となっている。
【0027】
地形データベース501の内容は、ここでは表示していないが、地域の道路、建築物、河川、山等のデータで地図表示をする際に用いる。データとして、表示対象物の緯度データ、経度データ、及び標高データ等を有する。
【0028】
評価対象データベース503には、評価対象即ち下水施設に関するデータが登録される。即ち、人孔(マンホール)の番号、形状、設置位置、接続等に関するデータや、管きょの番号、建設年、形状、かぶり、前記人孔との接続関係等に関するデータである。下水施設の接続関係を照合して、下水施設を地図上に表示する際に利用するデータが登録される。
【0029】
後述するが、本システムの劣化評価等に用いるデータ項目として、図6に人孔に関する属性データ55の項目を示し、図7に管きょに関する属性データ57の項目を示すが、この項目のデータの一部は評価対象データベース503から引き出す。
【0030】
例えば図6の人孔に関する属性データ55の項目のうち、評価対象データベース503から引き出すデータは、人孔ごとの番号である人孔NO55−2、人孔の位置情報を示す平面座標x55−3、平面座標y55−4、地盤高55−5、及び管底高55−6、人孔の種類を示す人孔形式55−7、出口或いは入口かどうかを示す出入口コード55−8である。
【0031】
図7の管きょに関する属性データ57の項目のうち、評価対象データベース503から引き出すデータは、管きょの番号である管路名称57−3、建設年57−4、検討年57−5、上流人孔名称57−7、下流人孔名称57−9、断面形状57−10、管径57−11、内空高さ57−12、上流端管底高57−13、下流端管底高57−14、副管57−15、満管・半管57−16である。
【0032】
下水環境データベース505には、人孔などの下水施設の流量予測、水質調査等で得られるデータや、水温等のデータが登録される。図4に示す下水施設の環境調査項目45は、流量予測や水質検査で得られるデータであり、当該下水環境データベース505に登録される。流量47は、管きょの布設状況と水深より推定されるデータである。また、水質調査で得られるデータ項目として、溶存酸素濃度49、硫化物濃度51、BOD53(Biochemical Oxygen Demand:生物化学的酸素要求量)がある。
【0033】
上記図4に示す下水環境データベース505に登録されているデータは、劣化評価等に用いるデータとして、図6に示す人孔に関する属性データ55の項目、流量55−9、入口溶存酸素濃度55−10、入口硫化物濃度55−11、BOD55−12として用いる。また、図7に示す管きょに関する属性データ57の項目、水温57−17も、下水環境データベース505から引き出して劣化評価等のデータとして用いる。
【0034】
下水施設コンクリート配合データベース507には、下水施設に使用されるコンクリートの配合に関するデータが登録される。即ちコンクリートを作る際に配合するセメントと水の割合、砂(細骨材)と砕いた石や砂利(粗骨材)の量等に関するデータである。図7に示す管きょに関する属性データ57の項目のうち、1:W/C 2:Ccの選択57−22、値57−23、細骨材体積比Svol57−24、粗骨材体積比Gvol57−25等は、この下水施設コンクリート配合データベース507から引き出して使用する。尚、W/Cは、コンクリートの水セメント比(%)であり、Ccは、単位セメント量(Kg/m3)である。
【0035】
(1−2.コンクリート構造物の劣化について)
次に、図2を用いてコンクリート構造物の劣化進行過程について説明し、図3を用いて、下水施設のコンクリート劣化過程について説明する。
【0036】
図2に、2001年度に制定された土木学会コンクリート標準示方書「維持管理編」に示されたコンクリート構造物の劣化進行過程を示す。横軸方向は時間(年)27、縦軸上方は劣化深さ23、縦軸下方は性能低下25を示す。コンクリートの劣化進行は、鋼材腐食開始までを潜伏期29、鋼材腐食開始から腐食ひび割れ発生までを進展期31、腐食ひび割れ発生後を加速期33とする。下水施設におけるコンクリートの劣化は、微生物が関与して生化学的に腐食性物質(硫酸)を生成し、コンクリートを腐食させる。本システムではコンクリートが硫化物により腐食する劣化深さを予測算出し、維持管理方針を立てるものとする。
【0037】
図3は、下水施設の下水管35(管きょ)の劣化のメカニズムを示す図である。図3は、下水管35の断面図である。下水管35中の下水37や汚泥中に含まれている硫酸イオンが、硫酸塩還元細菌の作用で硫化水素に変化し、大気中に硫化水素ガス39として放散される。
【0038】
次に、硫化水素ガス39は、コンクリート表面の結露水に溶解し、溶解した硫化水素が硫黄酸化細菌によって硫酸41に変化する。生成した硫酸41がコンクリートを腐食させコンクリート劣化部43が形成される。このコンクリートの劣化の度合いは、発生する硫化水素濃度や劣化深さなどで把握することができる。
【0039】
本実施の形態では、前述したデータベース5の評価対象データベース503、下水環境データベース505、下水施設コンクリート配合データベース507に登録されているデータの中から必要なデータを用いて、管きょ内のコンクリートの劣化指標となる硫化水素濃度と、劣化深さを算出する。詳細については後述する。
【0040】
(2.処理手順)
図5に本実施の形態の評価システムの処理手順を示す。
【0041】
まず、下水施設の劣化評価を行う前に、データベース5に劣化評価に必要なデータを登録しておく。地形データベース501には、評価対象となる地域を地図表示するデータ(道路、建築物、河川等)を登録する。
【0042】
評価対象データベース503には、評価対象となる地域に布設されている下水施設のデータ(人孔の番号、形状、設置位置、接続等に関するデータと、管きょの番号、建設年、形状、かぶり、前記人孔との接続関係等に関するデータ等)を登録する。
【0043】
下水環境データベース505には、図4に示す、管きょの推定流量47と、水質検査を行い、その結果として溶存酸素濃度49、硫化物濃度51、BOD53のデータを登録する。
【0044】
下水施設コンクリート配合データベース507には、下水施設ごとのコンクリート配合に関するデータを登録する。また、下水施設コンクリート配合データベース507には、管きょのデータが予め建設年代および径ごとに整理されて登録されている。従って、本評価システムは、コンクリートの配合が不明な下水施設についても、下水施設コンクリート配合データベース507に登録された管きょの建設年代や径を基に、コンクリート配合の値を推定する機能を有する。尚、上記データベース5に登録されているデータは、図示していないが、ネットワーク等を介して別のデータベース等から引き出すようにしても良い。
【0045】
(2−1.設定)
まず、操作者が、コンピュータ3及び周辺機器等を起動し、本実施の形態の評価システムの実行を指示すると、コンピュータ3の制御部7は、当該システムに関する実行プログラムを記憶部19から読み出して実行を開始する。尚、当該実行プログラムを、各種記憶メディアに記憶させておき、制御部7は、メディア入出力部9を介して記憶メディアから実行プログラムを読み出すようにしても良い。
【0046】
操作者の指示に従って、制御部7は本実施の形態のシステムの各種設定を行う(ステップ1001)。次に制御部7が、CRTや液晶画面などの表示部17に、評価対象である下水施設の地域の地図を表示させる処理について説明する。
【0047】
まず、制御部7は、データベース5に登録されている評価対象データベース503、下水環境データベース505、及び下水施設コンクリート配合データベース507から、必要なデータを引き出して、図6に示す人孔に関する属性データ55と、図7に示す管きょに関する属性データ57とを作成する。
【0048】
更に制御部7は、人孔に関する属性データ55の項目のうち、人孔の位置情報を示す平面座標x55−3、平面座標y55−4から、地図データ上に当該人孔を配置する。また、管きょに関する属性データ57の上流人孔名称57−7、下流人孔名称57−9から、当該管きょの両端の人孔を特定し、地図データ上に配置する。また、後述の図9、図10、図15等のように縦断面を表示する際にはデータ(地盤高55−5、管底高55−6、上流端管底高57−13、下流端管底高57−14等)も参照する。
【0049】
このようにして、制御部7は、地形データベース501から読み出す地図データに、下水施設のデータ(人孔、及び管きょのデータ)を重ねて表示する。尚、制御部7は、地図データに人孔・管きょ布設状況を重ねたデータを、新しくデータベースとして登録するようにしても良い。
【0050】
尚、ここでは図示していないが、操作者は図8の人孔・管きょ布設状況表示画面59を表示させる際、表示地域を指定する方法として、住所を入力、緯度・経度情報を入力、代表的建築物名を入力、下水施設の番号を入力、など種々の入力方法を選択することができる。
【0051】
操作者は、表示部17に表示される人孔・管きょ布設状況表示画面59上でマウスやキーボードなどの入力部13から、劣化評価を行う評価領域を図8のように選択領域63として指定する(ステップ1002)。
【0052】
次に操作者は、表示部17に表示される図8の人孔・管きょ布設状況表示画面59で、人孔や管きょを指定して、属性データの設定を修正することができる(ステップ1003)。図9に人孔の入力データ修正画面67、図10に管きょの入力データ修正画面81を示す。
【0053】
操作者が、図8の人孔・管きょ布設状況表示画面59で、特定の人孔をクリックすると、新たなウインドウである人孔の入力データ修正画面67(図9)が開く。図9は、指定された人孔69−1の縦断図を示し、人孔データ表示部75で人孔69−1のデータ確認及びデータ修正を行うことができる。人孔データ表示部75に表示される項目は、人孔に関する属性データ55(図6)の項目に一致する。
【0054】
図9に示す人孔69−1の縦断図では、選択された人孔69−1を示す部分は、選択されていることが視覚的に判る様に、例えば赤色で表示される。操作者が「戻る」ボタン87を押すと、制御部7は人孔の入力データ修正画面67(図9)を閉じる。また制御部7は修正された人孔に関する属性データ55(図6)の内容を更新する。更に、制御部7は、データベース5に登録されている人孔に関するデータを更新するようにしても良い。
【0055】
また、操作者が、図8の人孔・管きょ布設状況表示画面59で、特定の管きょをクリックすると、新たなウインドウである管きょの入力データ修正画面81(図10)が開く。図10は、指定された管きょ73−1の縦断図を示し、管きょデータ表示部83で管きょ73−1のデータ確認及びデータ修正を行うことができる。管きょデータ表示部83に表示される項目は、管きょに関する属性データ57(図7)の項目に一致する。
【0056】
図10に示す管きょ73−1の縦断図では、選択された管きょ73−1を示す部分は、選択されていることが視覚的に判る様に、例えば赤色で表示される。操作者が「戻る」ボタン87を押すと、制御部7は管きょの入力データ修正画面81(図10)を閉じる。また制御部7は修正された管きょに関する属性データ57(図7)の内容を更新する。更に、制御部7はデータベース5に登録されている管きょに関するデータを更新するようにしても良い。
【0057】
ステップ1001の、評価領域の設定(ステップ1002)と下水施設の属性の設定(ステップ1003)が終了し、操作者が劣化評価を実行する指示を行うと(図示していない)、制御部7は次ステップの劣化評価(ステップ1004)を実行する。
【0058】
(2−2.劣化評価)
制御部7は、管きょ中に発生する硫化水素濃度79の算出(ステップ1005)と、管きょを構成するコンクリートの劣化深さ23の算出(ステップ1006)を行う。
【0059】
まず、硫化水素濃度79の算出方法について説明する。硫化水素の生成・放散には、溶存酸素の影響が大きく、下水中の溶存酸素濃度が設定値以下になると硫化物が生成し始める。次式は下水中に発生する硫化物の時間変化を示す。式(1)は管きょが自然流下管路の場合であり、式(2)は圧送管路の場合である。
d[S]/dt=Rsa−Rsc−Rsf・・・・(1)
d[S]/dt=R´ ・・・・(2)
ここで、Rsa:スライムで生成された硫化物によって、硫化物が増加する速度(水温、径深等の関数である)、Rsc:硫化物が下水中で酸化され減少する速度(水温、BOD、溶存酸素などの関数である)、Rsf:硫化水素の気相中への放散により下水中の硫化物が減少する速度(フルード数、エネルギー勾配、飽和度などの関数である)、R´:スライム及び下水中で生成された硫化物によって硫化物が増加する速度(硫化物フラックス係数、BOD、水温の関数である)。
【0060】
次に式(3)は、自然流下管路及び圧送管路における溶存酸素濃度の時間変化を示す。
dC/dt=R−R−R・・・・(3)
ここで、R:再曝気による酸素の溶解速度(水温、エネルギー勾配、溶存酸素などの関数であり、圧送管の場合R=0)、Rsa:下水中の微生物による酸素消費速度(水温、BOD、溶存酸素などの関数である)、Rsa:管壁のスライムによる酸素消費速度(水温、径深、流速などの関数である)。
【0061】
制御部7は、上記式(1)乃至式(3)に、図6の人孔に関する属性データ55の項目中のデータである、流量55−9、入口溶存酸素濃度55−10、入口硫化物濃度55−11、BOD55−12、及び図7の管きょに関する属性データ57の項目中のデータを入力し、管きょごとに内部の硫化水素濃度79を算出する。
【0062】
尚、制御部7は、1つの管きょの長さを例えば10分割し、当該管きょを流れる下水の流量等を反映させ、1つの管きょについて例えば10ポイントの硫化水素濃度79を算出する。
【0063】
次に、コンクリートの劣化深さの算出方法について説明する。硫化水素濃度79と、管内壁面に生成される硫酸41の濃度は比例関係にあると仮定し、コンクリート表面に硫酸イオン濃度C(mmol/L)を算出する関係式を式(4)に示す。
=k/CH2S・・・・(4)
ここで、k:硫酸生成に関する係数(k=0.5)、CH2S:気相中の硫化水素濃度79(ppm)
【0064】
また、硫酸によるコンクリート腐食モデルは、次の式(5)、式(6)に示す、カルシウムイオン(以下Ca2+)、硫酸イオン(SO2−)の質量保存側を基本とする。
【0065】
【数1】

【0066】
【数2】

【0067】
ここで、D:空隙水中のCa2+の拡散係数(cm/day)、D:空隙水中のSO2−の拡散係数(cm/day)、V1:Ca2+の空隙水での増減速度(mol/L/day)、V2:SO2−の空隙水での増減速度(mol/L/day)
【0068】
尚、V1、V2に示すイオンの増減は、(a)水酸化カルシウムの溶解・生成、(b)カルシウムシリケート水和物の溶解・生成、(c)石膏の溶解・生成、(d)エトリンガイトの生成、(e)エトリンガイトの石膏化、の5種類の反応によって決定されると仮定した。反応(a)、(b)、(c)は、式(7)に示すように溶解度積に対するイオン濃度の比率によって決定されると仮定した。反応(d)は、空隙中のCa2+、SO2−および固相中のモノサルフェート含有量によって反応速度が決定されるとし、反応(e)は液相中のSO2−が、1,500mg/L以上の時に反応が進み、その速度は一定と仮定した。
【0069】
【数3】

【0070】
ここで、k:反応速度、α:反応速度係数、Ksp:溶解度積を示す。また、配合、使用セメント種類、湿度の影響を加味し、かつコンクリートの空隙が溶解や析出反応によって増減し、さらに空隙の増減によってイオンの拡散係数も変化することとする。
【0071】
尚、制御部7は、1つの管きょの長さを例えば10分割し、当該1つの管きょについて例えば10ポイントの劣化深さ23を算出する。
【0072】
(2−3.評価結果表示)
制御部7は、評価結果として算出した硫化水素濃度79、及び劣化深さ23を表示する(ステップ1007)。制御部7が、硫化水素濃度79、及び劣化深さ23を表示部17に表示する画面を、図11乃至図15に、評価結果表示画面89−1〜89−5として示す。
【0073】
図11に示す評価結果表示画面89−1は、指定領域を平面93で表示したものであり、地図データ上に黒点表示で人孔69と、線状の管きょ73とが表示される。評価結果表示として、硫化水素濃度79−1の表示が指定されているので、制御部7は、管きょ73の色又は柄を、硫化水素濃度79の数値により色分けして表示する。例えば同一管きょを数分割(例えば10分割)して劣化評価を行っているので、同じ1つの管きょであっても、異なる複数の色で表示される場合がある。
【0074】
図12に示す評価結果表示画面89−2は、評価結果表示として、硫化水素濃度(最大)79−3の表示が指定されている。制御部7は、1つの管きょ73の硫化水素濃度79の最大値を、当該管きょ73の中央部に色分けした表示103部(丸印)で表示する。
【0075】
図13に示す評価結果表示画面89−3は、硫化水素濃度79を示す評価結果表示画面89−1の画面上で、任意の管きょ73の任意の位置がマウスなどでクリックされた際、制御部7は画面上に別のウインドウを開いて、管きょ73の劣化深さ表示部105を表示させる。このウインドウは、供用年数107に伴うコンクリート構造物の劣化深さ23をグラフで示す。
【0076】
図14に示す評価結果表示画面89−4は、任意の管きょ73がマウスなどでクリックされた際、制御部7は画面上に別のウインドウを開いて、管きょの評価結果表示部106を表示させる。このウインドウには、選択された管きょに関するデータが表示される。尚、このウインドウ内に、後述するライフサイクルコスト(以降LCC:Life Cycle Costとする)を表示させるようにしても良い。
【0077】
図15に示す評価結果表示画面89−5は、任意の複数の管きょ73や人孔69が操作者によって指定された際、制御部7が表示部17に表示させる画面を示す。図15は、縦断図の表示が指定され、また、表示項目77として、劣化深さ23が時期選択部108で2年後、5年後で指定された画面である。即ち、人孔69−2から人孔69−6間に布設された、管きょ73−2から管きょ73−5の2年後の劣化深さ23−1、及び5年後の劣化深さ23−2が示される。
【0078】
操作者は、算出された評価結果(硫化水素濃度79、劣化深さ23)をコンピュータ3の表示部17に表示させて、結果の検討を行う。評価に用いたデータを修正する場合(ステップ1008のYES)は、図9、図10の修正画面に戻り、入力データの修正を行う(ステップ1009)。制御部7は入力データの修正処理を行い、必要に応じてデータベース5のデータ更新を行い、劣化評価(ステップ1004)の処理に戻る。
【0079】
入力データの修正を行わない場合(ステップ1008のNO)、制御部7は、維持管理方針の選択処理(ステップ1010)を行う。
【0080】
維持管理方針の選択の説明を行う前に、図16に示す下水施設の目視評価109の表について説明する。本実施の形態では説明を省略したが、実際に下水施設の目視を行い、その結果を図16に示す下水施設の目視評価109に照合し、各管きょや各人孔ごとに劣化ランク111を付与しても良い。その場合、前述した評価結果表示画面89−1などに目視結果の表示項目を設け、劣化ランク111をランク別に色分けして表示するようにしても良い。
【0081】
目視評価の項目としては、腐食113の度合い、たるみ115、破損117の度合い、ひび割れ119・・・等がある。操作者は、硫化水素濃度79や劣化深さ23の他、目視評価の劣化ランク111を地図上に表示させて、維持管理方針の検討を行うようにしても良い。
【0082】
(2−4.維持管理方針)
次に、下水施設の維持管理方針について説明する。図17は、下水施設の維持管理方針133について、4通りの維持管理方針とその概要を示す図である。4通りの維持管理方針について図18乃至図21を参照しつつ説明する。
【0083】
図17において、下水施設の維持管理方針133は、供用限界による維持管理135、点検時期による維持管理137、補修費用による維持管理139、耐用年数による維持管理141に分類される。
【0084】
(2−4−1.供用限界による維持管理135)
供用限界による維持管理135は、供用限界の劣化深さを設定し、限界値に達した時点で補修を実施する維持管理方針である。図18は供用限界による維持管理135について説明する図である。図18の横軸は供用年数107を示し、上グラフの縦軸は劣化深さ23、下グラフの縦軸はLCC143を示す。尚、図19乃至図22における縦軸横軸も同様であるので、以降の縦軸横軸に関する説明は省略する。
【0085】
上グラフに示すように、供用限界による維持管理135は、劣化深さ23が予め設定している限界値147に達した時点で、下水施設の補修を行う。補修を行った際、補修コストが発生し、LCC143に一定額が加算される(下グラフ参照)。補修後、一定期間は補修効果145が持続する。その後、年数が経過し、補修効果が低減すると再び劣化が進行する。再度、劣化深さ23が限界値147に達すると、補修を行う。供用限界による維持管理135では、劣化深さ23が設定された値になったときに補修を行うので、補修費用は毎回ほぼ同じ(即ちLCCの増加量が同じ)であるという特徴がある。尚、実際には割引率(後述の式(8)に示す)などが考慮されるため、集計されるLCCの増分は変わってくる場合がある。
【0086】
(2−4−2.点検時期による維持管理137)
点検時期による維持管理137は、点検時期を設定し、点検時の劣化状態に応じて補修を実施する維持管理方針である。図19は点検時期による維持管理(その1)137−1について説明する図である。
【0087】
上グラフに示すように、点検時期による維持管理137は、予め点検時期151−1、151−2を設定しておき、補修を行う。それぞれ点検時期により、劣化深さ23が異なるので、補修費用も異なる。点検時期による維持管理(その1)137−1の場合、点検時期151の設定を誤ると、劣化が進み必要以上のコストを要する場合もある。
【0088】
図20は点検時期による維持管理(その2)137−2について説明する図である。この場合、点検時期153−1〜153−5が、補修効果155−1〜155−4の効果がまだ有効である時期に設定されているので、下水施設の劣化は、劣化深さ23として現れない。また、補修ごとにかかるコストは毎回ほぼ一定額増加していくという特徴がある。
【0089】
(2−4−3.補修費用による維持管理139)
補修費用による維持管理139は、年間の補修費用を設定し、費用の範囲内で、劣化が著しい順番に補修を実施する維持管理方針である。図21は補修費用による維持管理139について説明する図である。
【0090】
補修費用による維持管理139は、全体の下水施設の中で、劣化が著しい施設の順に補修の順番を付けて補修を実施するものであり、補修の順番の年157−1、157−2に当該施設の補修を行う。
【0091】
補修費用による維持管理139は、下水施設を管理する側の施設全体としての維持管理費用や維持管理計画を重視したものである。従って、補修順番が後回しになった施設では、劣化が進み、補修にコストがかかる場合なども考えられる。
【0092】
(2−4−4.耐用年数による維持管理141)
耐用年数による維持管理141は、施設の耐用年数を設定し、耐用年数に達した時点で補修を実施する維持管理方針である。図22は耐用年数による維持管理141について説明する図である。上グラフに示す耐用年数161−1は、この下水施設の耐用年数である。劣化深さ23が一定値になる時期を耐用年数161−1として設定し、この時点で補修を行う。
【0093】
補修工法に想定される補修工法耐用年数161−2、161−3を、更に図22に示す。この維持管理方法では、補修工法による補修効果163−1、163−2が持続していることにより、施設の劣化が進行しないうちに継続して補修を施すことができる。
【0094】
以上4通りの維持管理方針について説明したが、操作者(下水施設の維持管理方針を決定する者)が方針や予算等を考慮して、本実施の形態のシステム上で維持管理方針を設定する。即ち、図示していないが、操作者は、維持管理方針を選択し、コンピュータ3の入力部13から維持管理方針を入力指示する(ステップ1010)。
【0095】
(2−5.補修工法の分類と選定)
(2−5−1.補修工法の分類)
次に、下水施設の補修工法の分類について説明する。図23は、補修工法の分類165について説明する図である。図23には、補修工法別に、工法の概要と耐用年数を示す。
【0096】
更生工法167は、鞘管方式や複合管方式により、管きょを更生する工法である。即ち、管を新しくする工法であり、耐用年数は一例として50年である。
【0097】
部分更生工法169は、複合管方式や形成工法、リング工法などにより管きょを部分的に更生する工法である。管を部分的に新しくする工法であり、耐用年数は一例として50年である。
【0098】
断面修復工法+防食被覆工法171は、耐酸性モルタルなどによる断面修復の後、塗布型の防食被覆を施す工法である。管の痛んだ部分に施す工法であり、耐用年数は一例として10年である。
【0099】
防食被覆工法173は、塗布型の防食被覆を施す工法である。比較的劣化の浅い場合に施され、耐用年数は一例として10年である。
【0100】
(2−5−2.補修工法の選定)
コンピュータ3の制御部7は、操作者から維持管理方針が入力されると、施設ごとに図24に示す補修工法の選定175の図を参照して、自動的に補修工法の選定を行う。
【0101】
図24は、補修工法の選定175の一例を示す図であり、横軸は延長方向の劣化状態177、即ち人孔間の距離に対する劣化長さの割合(%)を示す。横軸は長さ方向の劣化割合を示す。縦軸は、断面の劣化状態179、即ちかぶりに対する劣化深さの割合(%)を示す。縦軸は、断面の劣化深さの割合を示す。
【0102】
例えば図24において、断面の劣化状態179が17%、延長方向の劣化状態177が45%である場合、補修工法は、丁度更生工法167と防食被覆工法173との境界に当たる。このように境界上に当たる場合、制御部7は、図24において、境界の上側、境界の右側にある工法を選定するものとする。尚、図24に示す各工法の境界や境界の数値等は、一例として示したものであり、数値や境界等の変更は可能である。
【0103】
コンピュータ3の制御部7は、算出した劣化指標と操作者が選定した維持管理方針から補修時期を算出し、更に図24を参照にして補修工法を選定する(ステップ1011)。
【0104】
(2−6.LCCの算出と集計)
次に、制御部7は、補修時期、補修工法を基にLCC143を算出する(ステップ1012)。即ち、制御部7は、個々の下水施設のLCCを合算することで、下水施設全体としてのLCC143を得る。図25に当該下水施設の、供用年数107に対するLCC143の関係を示す。集計A、集計B、集計Cは、例えば維持管理方針の違いによるLCC143を示す。尚、LCC143の評価式は、式(8)で表される。
【0105】
【数4】

【0106】
ここで、C(t)は点検コスト、C(t)は維持補修コスト、C(t)は点検・補修の間接損失コスト、tは経過時間(年)、rは割引率である。対象となる下水施設の構造物ごとの点検コストや維持補修コスト等は、評価対象ごとに算定式がある。
【0107】
制御部7は、表示部17にLCC143(図25に示す)を表示する。操作者が、下水施設(人孔や管きょ)のデータを修正したり、維持管理方針の選択を変更して、LCC143を再検討したい場合等は、ステップ1008に戻る(ステップ1013のNO)。
【0108】
操作者が本実施の形態のシステムを終了させる場合は、ステップ1013のYESに進み、処理を終了する。
【0109】
(3.効果等)
このように、本実施の形態では、地図データ上に検討対象となる下水施設を表示し、更に下水施設の劣化指標を視覚的に表示するので、下水施設の維持管理方針を合理的・効率的に検討できる効果がある。
【0110】
また、操作者が下水施設の維持管理方針を入力すると、本実施の形態では補修時期を算出し、自動的に補修工法を選定するので、複雑な下水施設に対しても簡単に補修のLCCの検討を行うことができる。
【0111】
また、個々の施設ごとのLCCを合算して、下水施設全体のLCCが簡単に算出されるので、操作者は個々の施設の維持管理方針等を更に検討し、何度でも納得ができるまで下水施設管理に関する検討(維持管理方針やLCC)を行うことができる。
【0112】
尚、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に限られるものではない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本実施の形態における劣化評価システム1の構成を示す図
【図2】コンクリート構造物の劣化進行過程を示す図
【図3】下水管35の劣化メカニズムを示す図
【図4】下水施設の環境調査項目45
【図5】劣化評価方法のフローチャート
【図6】人孔に関する属性データ55
【図7】管きょに関する属性データ57
【図8】人孔・管きょ布設状況表示画面59
【図9】人孔の入力データ修正画面67
【図10】管きょの入力データ修正画面81
【図11】評価結果表示画面89−1
【図12】評価結果表示画面89−2
【図13】評価結果表示画面89−3
【図14】評価結果表示画面89−4
【図15】評価結果表示画面89−5
【図16】下水施設の目視評価109
【図17】下水施設の維持管理方針133
【図18】供用限界による維持管理135
【図19】点検時期による維持管理(その1)137−1
【図20】点検時期による維持管理(その2)137−2
【図21】補修費用による維持管理139
【図22】耐用年数による維持管理141
【図23】補修工法の分類165
【図24】補修工法の選定175
【図25】供用年数107とLCC143の関係を示す図
【符号の説明】
【0114】
1………劣化評価システム
3………コンピュータ
5………データベース
7………制御部
9………メディア入出力部
11………通信部
13………入力部
15………印刷部
17………表示部
19………記憶部
21………システムバス
23………劣化深さ
25………性能低下
27………時間
29………潜伏期
31………進展期
33………加速期
35………下水管
37………下水
39………硫化水素ガス
41………硫酸
43………コンクリート劣化部
45………下水施設の環境調査項目
47………流量
49………溶存酸素濃度
51………硫化物濃度
53………BOD
55………人孔に関する属性データ
57………管きょに関する属性データ
59………人孔・管きょ布設状況表示画面
61………地図表示部
63………選択領域
65、69、69−1、69−2、69−3………人孔
67………人孔の入力データ修正画面
71………地表
73、73−1、73−2、73−3………管きょ
75………人孔データ表示部
77、91………表示項目
79………硫化水素濃度
81………管きょの入力データ修正画面
83………管きょデータ表示部
85、99………「表示」ボタン
87………「戻る」ボタン
89−1〜89−5………評価結果表示画面
93………「平面」表示ボタン
95………「縦断」表示ボタン
97………「時期」表示ボタン
101………「終了」ボタン
103………表示
105………管きょの劣化深さ表示部
106………管きょの評価結果表示部
107………供用年数
108………時期選択部
109………下水施設の目視評価
111………劣化ランク
113………腐食
115………たるみ
117………破損
119………ひび割れ
121………継ぎ目ずれ
123………浸入水
125………取付管突出
127………油脂付着
129………樹木根浸入
131………モルタル付着
133………下水施設の維持管理方針
135………供用限界による維持管理
137………点検時期による維持管理
139………補修費用による維持管理
141………耐用年数による維持管理
143………LCC(Life Cycle Cost)
145、149−1、149−2、155−1〜155−4、159、163−1、163−2………補修効果
147………限界値
151−1、151−2、153−1〜153−5………点検時期
157−1、157−2………補修の順番の年
161−1〜161−3………耐用年数
165………補修工法の分類
167………更生工法
169………部分更生工法
171………断面修復工法+防食被覆工法
173………防食被覆工法
175………補修工法の選定
177………延長方向の劣化状態
179………断面の劣化状態
181………補修なし
501………地形データベース
503………評価対象データベース
505………下水環境データベース
507………下水施設コンクリート配合データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地形データ、下水施設データ、下水環境データ、及び下水施設コンクリート配合データ等を登録したデータベースと、コンピュータとからなる評価システムであって、
前記コンピュータは、
前記地形データに基づいて表示する地図上に、前記下水施設データ、前記下水環境データ、及び前記下水施設コンクリート配合データに基づく情報を表示する手段と、
前記地図上で選択される評価対象領域の前記下水施設データ、前記下水環境データ、及び前記下水施設コンクリート配合データに基づいて、前記評価対象領域の下水施設の劣化指標を算出する手段と、
前記劣化指標を参照して指定される前記下水施設の維持管理方針を基にして、前記下水施設の補修工法を選定する手段と、
前記維持管理方針と、前記選定される補修工法とを基にしてライフサイクルコストを算出する手段と、
を具備することを特徴とする評価システム。
【請求項2】
前記コンピュータは、前記地図上で前記下水施設が選択されると、前記選択された下水施設に関する前記下水施設データ、又は下水環境データ、又は下水施設コンクリート配合データのうちの少なくとも1の表示を行う手段を具備することを特徴とする請求項1記載の評価システム。
【請求項3】
前記コンピュータは、前記地図上で前記下水施設が選択されると、前記選択された下水施設に関する前記下水施設データ、又は下水環境データ、又は下水施設コンクリート配合データのうちの少なくとも1の訂正を行う手段を具備することを特徴とする請求項1記載の評価システム。
【請求項4】
前記下水施設データは、
人孔の番号、形状、設置位置、接続等に関するデータと、
管きょの番号、建設年、形状、かぶり、前記人孔との接続関係等に関するデータと、であることを特徴とする請求項1記載の評価システム。
【請求項5】
前記下水環境データは、前記下水施設の流量予測、水質調査等で得られるデータであることを特徴とする請求項1記載の評価システム。
【請求項6】
前記下水施設コンクリート配合データは、前記下水施設を構成するコンクリート構造物のコンクリートの配合に関するデータであることを特徴とする請求項1記載の評価システム。
【請求項7】
前記コンピュータは、前記下水施設の目視評価結果を、前記地図上に表示させることを特徴とする請求項1記載の評価システム。
【請求項8】
前記目視評価結果を、前記下水施設の補修工法の選定に利用することを特徴とする請求項7記載の評価システム。
【請求項9】
前記劣化指標は、硫化水素濃度と劣化深さとであることを特徴とする請求項1記載の評価システム。
【請求項10】
前記維持管理方針は、前記下水施設の補修を行う時期に関し、前記下水施設の供用限界による維持管理方針、点検時期による維持管理方針、補修費用による維持管理方針、耐用年数による維持管理方針、に分類されることを特徴とする請求項1記載の評価システム。
【請求項11】
地形データ、下水施設データ、下水環境データ、及び下水施設コンクリート配合データ等を登録したデータベースと、コンピュータとを用いた評価方法であって、
前記コンピュータは、
前記地形データに基づいて表示する地図上に、前記下水施設データ、前記下水環境データ、及び前記下水施設コンクリート配合データに基づく情報を表示する工程と、
前記地図上で選択される評価対象領域の前記下水施設データ、前記下水環境データ、及び前記下水施設コンクリート配合データに基づいて、前記評価対象領域の下水施設の劣化指標を算出する工程と、
前記劣化指標を参照して指定される前記下水施設の維持管理方針を基にして、前記下水施設の補修工法を選定する工程と、
前記維持管理方針と、前記選定される補修工法とを基にしてライフサイクルコストを算出する工程と、
を具備することを特徴とする評価方法。
【請求項12】
前記コンピュータを、請求項1記載の評価システムとして機能させるためのプログラム。
【請求項13】
前記コンピュータを、請求項1記載の評価システムとして機能させるためのプログラムを記録した記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2006−118198(P2006−118198A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−306762(P2004−306762)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】