試料からの特定の配列を含む特異的mRNAを高効率に定量するための方法
【課題】
試料からの特定の配列を含む特異的mRNAを、簡単且つ再現性よく高効率に定量するための方法を提供する。
【解決手段】
a)前記試料を既知量の第2の特異的mRNAでスパイクするステップ、
b)前記試料からポリA mRNAを精製するステップ、
c)前記試料中の前記mRNAからcDNAを生成させるステップ、
d)前記試料中の第1の特異的mRNA及び第2の特異的mRNAの各々に対応するcDNAの量を定量するステップ、
e)前記第2の特異的mRNAの回収率を確定するステップ、及び
f)前記第2の特異的mRNAの回収率を適用して、第1の特異的mRNAの出発量を確定するステップ
を含む方法により、試料からの特定の配列を含む第1の特異的mRNAを定量する。
試料からの特定の配列を含む特異的mRNAを、簡単且つ再現性よく高効率に定量するための方法を提供する。
【解決手段】
a)前記試料を既知量の第2の特異的mRNAでスパイクするステップ、
b)前記試料からポリA mRNAを精製するステップ、
c)前記試料中の前記mRNAからcDNAを生成させるステップ、
d)前記試料中の第1の特異的mRNA及び第2の特異的mRNAの各々に対応するcDNAの量を定量するステップ、
e)前記第2の特異的mRNAの回収率を確定するステップ、及び
f)前記第2の特異的mRNAの回収率を適用して、第1の特異的mRNAの出発量を確定するステップ
を含む方法により、試料からの特定の配列を含む第1の特異的mRNAを定量する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全血からのmRNAの高効率な単離及び定量に関する。より詳しくは、本発明はオリゴ(dT)固定化マルチウェルプレートに取り付けられた白血球フィルターの組み合わせを用いて、mRNAを単離及び増幅するための方法及び装置に関する。
【0002】
本出願は、2003年4月24日付けで英語で出願され、且つ英語で公開されるものと思われる国際出願第PCTUS03/12895号の一部継続である、2003年10月30日付けで出願された米国特許出願第10/698,967号の一部継続であり、2002年4月24日付けで出願された仮出願第60/375,472号の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0003】
分子生物学の分野の研究により、細胞の遺伝的発生起源及び機能活性が、そのリボ核酸(RNA)の研究から推論され得ることが明らかになった。この情報は、感染を診断するため、癌遺伝子発現細胞の存在を検出するため、家族性障害を発見するため、宿主の防御機構の状態をモニターするため、及びHLA型又は他のマーカーの実体を調べるため、診療上有効に用いられ得る。RNAは、3種類の機能的に異なる形態:リボソームRNA(rRNA)、トランスファーRNA(tRNA)及びメッセンジャーRNA(mRNA)で存在する。安定なrRNA及びtRNAは、翻訳の触媒プロセスに関与し、mRNA分子は遺伝情報を伝達する。全RNAのわずか約1〜5%がmRNAで、約15%がtRNAで、及び約80%がrRNAで構成される。
【0004】
mRNAは、特に遺伝子のアップレギュレーション又はダウンレギュレーションを定量的に観察するために使用される場合は、重要な診断用ツールとなる。ヒト末梢血は、mRNAを解析するための優れた臨床材料である。例えば、血中における特定のキメラmRNAの検出は、異常細胞が存在することを示し、慢性骨髄性白血病(CML)の分子診断に使用される(非特許文献1及び2)。癌特異的mRNAを測定することにより、微小転移癌細胞も血中において検出することができる。癌特異的mRNAとしては、大腸癌に対する癌胎児性抗原(CEA)、前立腺癌に対する前立腺特異的抗原(PSA)、甲状腺癌に対するサイログロブリン(非特許文献3)、及び黒色腫に対するチロシナーゼ(非特許文献4)等を挙げることができる。さらに、これらの癌特異的mRNAのレベルは治療後に変化し得るため、特異的mRNAの定量は治療の追跡調査の際の有用な指標を提供する。
【0005】
血液は、白血球(およそ5000白血球/μL)に比べて無核赤血球(およそ500万細胞/μL)を大量に含むため、通常はmRNA解析の第1段階として、全血からの顆粒球又はリンパ球の単離が行われる。しかし、異なる試料間で白血球の特定のサブセットの回収が一致しないため、単離白血球の数は各試料について測定され、その測定結果は、血液1μL当たりのmRNA量としてではなく、白血球数当たりのmRNA量として表される。さらに、mRNA量は、長い単離プロセスの間に変化し得る。血液から癌細胞を単離するための方法は存在しないが、遺伝子増幅技術により、異なる遺伝子から成るプールからであっても特異的mRNAレベルの同定及び定量することが可能であるので、遺伝子特異的プライマー及び遺伝子特異的プローブが入手可能な場合には、全血はmRNA解析用の理想的な材料となる。
【0006】
科学界は、標準化の欠如のため、遺伝子発現分析における研究機関間及び実験間の変動という極めて大きい問題に直面している。近年の遺伝子増幅技術は絶対量の鋳型DNAを
供給しているが、各試料におけるRNA回収率及びcDNA合成効率の情報が欠如しているために、これらの値は元の材料中の遺伝子の量に換算することができない。総RNAはしばしば、mRNA定量のための標準化マーカーとして用いられ、その定量結果は通常総RNA量1μg当たりの遺伝子の量として表される。しかし、mRNAの割合は総RNAの1〜5%に過ぎず、総RNAの量が同一である場合であってもmRNA容量は変化するので、総RNA量はmRNA量を表わさない、ということが強調されねばならない。総RNA又はmRNAの収率も、用いられる方法によって大きく変化する。一旦RNAが抽出されると次の過程はcDNAの合成であるが、各実験において各々のRNA鋳型がcDNAの単一コピーを作製するか否かを現行方法は示唆していないため、この過程自体が不確実性を生じさせる可能性を持つ。このような問題を回避するために、標的遺伝子のデータを、ハウスキーピング遺伝子又はrRNAのデータと比較することによる相対的定量が広く使われている。しかし対照遺伝子の量は通常一貫せず、実験中に変わる可能性がある。さらに、各臨床検体が通常異なる時点で分析されるため、この変動は臨床的診断に重大な問題を提示する。
【0007】
全血はRNA分解酵素(顆粒球由来)及び無核赤血球を大量に含むため、全血から純粋なmRNAを単離することは非常に困難である。種々のRNA抽出法を全血に適用することができるが(非特許文献5〜7)、そのアッセイ手順は多大な労力を要し、数回の遠心分離が必要であり、リボヌクレアーゼ活性を失活させるために不可欠な慎重な取り扱いを伴う。
【0008】
従って、全血から大量のmRNAを単離及び定量するための、迅速且つ容易な方法及び装置が必要とされている。具体的には、回収の再現性を有し、途切れることなく遺伝子増幅へ移行するプロセスを有する、全血由来のmRNAを高効率に処理する技術が必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Kawasaki E.S., Clark S.S., Coyne M.Y., Smith S.D.,Champlin R ., Witte O.N., 及び McCormick F.P., 1988. in vitroで増幅された白血病 特異的mRNA配列の検出による慢性骨髄性白血病及び急性リンパ性白血病の診断 Pro c. Natl. Acad. Sci. USA 85:5698-5702
【非特許文献2】Pachmann K., Zhao S., Schenk T., Kantarjian H., El-Naggar A.K. , Siciliano M.J., Guo J.Q., Arlinghaus R.B., 及びAndreeff M. 2001. in si tu増幅により測定された個々の慢性骨髄性白血病細胞のbcr−able mRNA の発現 Br. J. Haematol. 112:749-59
【非特許文献3】Wingo S.T., Ringel M.D., Anderson J.S., Patel A.D., Lukes Y.D. , Djuh Y.Y., Solomon B., Nicholson D., Balducci-Silano P.L., Levine M.A., Fran cis G. L. 及びTuttle R.M. 1999. 健常被験体の末梢血中のサイログロブリンmRNA の定量的逆転写PCR測定 Clin. Chem. 45:785-89
【非特許文献4】Pelkey T. J., Frierson H.F. Jr. 及びBruns D.E. 1996 固形腫瘍由 来の循環腫瘍細胞及び微小転移の分子的及び免疫学的検出 Clin. Chem. 42:1369-81
【非特許文献5】de Vries T.J., Fourkour A., Punt C.J., Ruiter D.J. 及びvan Mu ijen G.N. 2000. 細胞調製チューブでの単核細胞回収後のチロシナーゼ及びMART− 1の逆転写ポリメラーゼ連鎖反応による末梢血中の黒色腫細胞の解析:全血グアニジニ ウムイソチオシアネートRNA単離法との比較 Melanoma Research 10:119-26
【非特許文献6】Johansson M., Pisa E.K., Tormanen V., Arstrand K. 及びKagedal Bl. 2000. 血中のチロシナーゼ転写物の定量解析 Clin. Chem. 46:921-27
【非特許文献7】Wingo S.T., Ringel M.D., Anderson J.S., Patel A.D., Lukes Y.D., Djuh Y.Y., Solomon B., Nicholson D., Balducci-Silano P. L., Levine M.A., Francis G.L. 及びTuttle R.M. 1999. 健常被験体の末梢血中のサイログロブリンmRNAの定量的逆転写PCR測定 Clin. Chem. 45:785-89
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、オリゴ(dT)固定化マルチウェルプレートに取り付けた白血球フィルターの組み合わせを用いて、回収の再現性を有する、全血から直接mRNAを単離及び定量するための高効率な方法及び装置を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、(a)全血を採取するステップ、(b)赤血球と血液成分とを全血から濾過により除去して、フィルターメンブレン上に白血球を得るステップ、(c)白血球を細胞溶解して、mRNAを含有する溶解物を生成させるステップ、(d)溶解物をオリゴ(dT)固定化プレートに移して、mRNAを捕捉するステップ、及び(e)mRNAを定量するステップを含む、全血中のmRNAを高効率に定量する方法を含む。
【0012】
本方法の好ましい一実施の形態では、白血球を採取する前に全血に抗凝血剤を添加する。捕捉される白血球の収量を増大させるため、複数のフィルターメンブレンを重ね合わせてもよい。フィルターメンブレン上に捕捉された白血球を、溶解緩衝液を用いて溶解し、白血球からmRNAを遊離させる。溶解物をオリゴ(dT)固定化プレートへ移すステップは、遠心分離、真空吸引、正圧を加える、又はエタノール洗浄に続く真空吸引により行われ得る。mRNAは、cDNAを作製すること、及びこのcDNAをPCRで増幅することにより定量される。特に好ましい実施の形態では、mRNAを定量するのにTaqMan PCRを用いて行われる。
【0013】
本発明の別の形態は、普遍的標準としての人工対照RNAの使用を含む。好ましい実施形態では、各試料中の標準RNAの回収率の測定することによって、遺伝子増幅の結果から、全血1μL当たりに存在するmRNAの量を確定することが可能になる。本発明の実施形態は、試料間及び実験間の変動係数を低くする。好ましい実施形態では、RNA回収、cDNA合成及び定量中の変動は最小限にされ得る。標準化対照RNAの使用は、より効率的なアッセイ、定量及び比較試験を可能にする。
【0014】
本発明の別の態様は、全血中のmRNAの高効率定量を実施するための装置であって、(a)複数の試料デリバリーウェル、該ウェルの下部にある白血球捕捉フィルター、及び該フィルターの下部にある、固定化されたオリゴ(dT)を含むmRNA捕捉ゾーンを有するマルチウェルプレート、並びに(b)該フィルタープレートを受容して、プレートとボックスとの間に密閉部を生じるようになっている真空ボックスを備える装置を含む。この装置の好ましい一実施形態では、白血球は、重ね合わせた複数のフィルターメンブレン上に捕捉される。この装置の別の好ましい実施形態では、真空ボックスが真空源を受容するようになっている。この装置の別の好ましい実施形態では、真空ボックスとマルチウェルプレートとの間にマルチウェルサポーターが挿入される。
【0015】
本発明の別の態様は、全血中のmRNAを高効率に定量するための装置、ヘパリン、低張緩衝液及び溶解緩衝液を含むキットを含む。
【0016】
本発明の別の態様は、血液試料、低張緩衝液及び溶解緩衝液を装置に添加するロボット、自動真空吸引装置及び自動遠心分離機、並びに自動PCR機を備える、全血中のmRNAを高効率に定量するための完全に自動化されたシステムを含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、オリゴ(dT)固定化マルチウェルプレートに取り付けた白血球フィルターの組み合わせを用いて、回収の再現性を有する、全血から直接mRNAを単離及び定量するための高効率な方法及び装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】高効率mRNA装置の分解図である。
【図2】白血球フィルター及びオリゴ(dT)固定化フィルターウェルを含む、高効率mRNA装置のマルチウェルプレートを示す図である。
【図3】新鮮血試料及び凍結血試料のフィルタープレート上での白血球捕捉効率を示すグラフである。
【図4】mRNA定量に対する、血液洗浄の回数の効果を示すグラフである。
【図5】mRNA定量に対する、細胞溶解前におけるフィルタープレートの最終処理の効果を示すグラフである。
【図6】溶解緩衝液がRNA分解酵素を阻害する程度を示すグラフである。
【図7】mRNAを定量するための逆転写酵素の最適濃度を示すグラフである。
【図8】mRNAを捕捉するためのPCRにおける、最適cDNA値を示すグラフである。
【図9】本発明のハイブリダイゼーションの動態を示すグラフである。
【図10】1ウェル当たりに使用された全血容量とmRNA定量との直線的な関係を示すグラフである。
【図11】最適グアニジンチオシアネート濃度を示すグラフである。
【図12】最適プロテイナーゼK濃度を示すグラフである。
【図13】アッセイの妥当性を示すグラフである。
【図14】合成スパイクRNAの回収率を示すグラフである。
【図15】特異的アンチセンスプライマー(NNN)及び固定化オリゴ(dT)からのcDNA合成を示す図である。
【図16】変性を伴う場合と伴わない場合の特異的プライム化RNAの回収率を示すグラフである。
【図17】特異的プライマーを用いた場合と用いない場合のRNAの増幅を示すグラフである。
【図18】Aは本発明の典型的mRNA捕捉スキームを示す図である。Bは種々のハイブリダイゼーション性能を示すグラフである。Cは総RNA及びポリ(A)RNAの種々の捕捉方法の効率を示すグラフである。Dは最適なPCRサイクル数を示すグラフである。EはRNAの捕捉のための溶解緩衝液の最適範囲を示すグラフである。
【図19】AはPCRサイクル数対種々の抗血液凝固剤を示すグラフである。BはPCRサイクル数対貯蔵時間を示すグラフである。CはPCRサイクル数対ハイブリダイゼーション温度を示すグラフである。DはPCRサイクル数対ハイブリダイゼーション時間を示すグラフである。EはPCRサイクル数対MMLVの単位を示すグラフである。FはPCRサイクル数対1ウェル当たりのcDNAのμLを示すグラフである。
【図20】Aはスパイク標準RNAに関するCt値を示すグラフである。Bはスパイク標準RNAに関する回収率を示すグラフである。Cは阻害剤dA20に関するCt値を示すグラフである。Dは阻害剤dA20に関する阻害率を示すグラフである。Eは血液1μL当たりのCt値を示すグラフである。Fは血液1μL当たりのmRNA回収率を示すグラフである。
【図21】mRNAの回収率対個々の被験者を示す。Aは種々の被験者間の標準RNAの回収率を示すグラフである。Bは種々の被験者間で回収された血液1μL当たりのCD4mRNA量を示すグラフである。Cは種々の被験者間で回収された血液1μL当たりのp21mRNA量を示すグラフである。Dは種々の被験者間で回収された血液1μL当たりのFasLmRNA量を示すグラフである。Eは種々の被験者間で回収された血液1μL当たりのLTC4SmRNA量を示すグラフである。
【図22】AはPMA及びCaIで刺激したヘパリン処理全血中のin vitroでのp21及びFas LのmRNAのレベルを示すグラフである。BはPMA−CaI刺激前に4℃で21時間保存したヘパリン処理全血中のin vitroでのmRNAのレベルを示すグラフである。C及びDは、基本レベルのmRNAの量に対する、PMA−CaI刺激後に誘導されるmRNAの量を表示して、各試料のin vitro応答性を示すグラフである。E及びFはそれぞれC及びDのグラフの回帰線を回転させてX軸としたグラフである。GはCと同じデータを、試料の倍増測定で表示したグラフである。HはDと同じデータを、試料の倍増測定で表示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[好ましい実施形態の詳細な説明]
本発明は、大容量の未調製の全血の解析を可能にし、白血球のみに由来するmRNAを解析する効率的な手段を提供する。該手段は、rRNA及びtRNAを除去し、mRNAのみを回収することができ、自動化に容易に適合され得る。本発明は、リアルタイムPCRを用いる絶対定量が可能であって、且つ変動係数が20〜25%の範囲の優れた再現性を有する感度の高い定量システムを提供する。さらにまた、本発明は種々の疾患標的に適用することができる(表1)。
【0020】
【表1】
【0021】
本発明は、なんら特定の機械的構造に限定されるものではない。しかし、図1及び図2は、本発明の高効率mRNA定量を実施するための好ましい構造を示す。真空ボックス10が、この構造の基礎を構成する。真空ボックスは、真空吸引に耐え得る充分強い任意の材料で作られたものであり得るが、その材料は使い捨てプラスチック材料が好ましい。真空ボックスは、真空吸引を行なうための真空源12を受容するようになっている。フィルタープラグ14は、真空ボックスの真空吸引装置アダプター内に配置される。真空ボックス10は、マルチウェルフィルタープレート40、又は任意選択でマルチウェルサポーター20とかみ合わせるための縁16を有することが好ましい。マルチウェルサポーター20は、任意選択でマルチウェルフィルタープレート40を支持するように、真空ボックスの上部の内側に設けられる。好ましくはシリコン系ゴム又は他の軟質プラスチックで構成される密封ガスケット30が、マルチウェルサポーターの上面に配置される。密封ガスケットの上部にマルチウェルフィルタープレート40が配置され、フィルタープレートは複数の試料ウェル46、試料デリバリーウェルの下に位置する複数の白血球捕捉フィルター42、及びフィルターの下にあるmRNA捕捉ゾーン44を備える。固定化オリゴ(dT)が、mRNA捕捉ゾーンのウェルに含まれている。
【0022】
好ましい一実施形態は、全血からmRNAを定量するための、簡単で再現性のある高効
率な方法を含む。迅速なプロトコルであるため、採血後のmRNAの副次的な誘発又は分解が最小限に抑えられ、96ウェルのフィルタープレート及びマイクロプレートの使用により、96個の試料を同時処理することができる。手順中の操作が最少であることから、定量の手段としてPCRを用いた場合であっても、試料間の変動が非常に少なく、変動係数(CV)値は30%未満である。
【0023】
一実施形態では、本方法は真空ボックスの作製を含む。好ましい一実施形態では、ポリアクリレートポリマーマトリックス(Red Z、セーフテック社(Safetec))等の血液カプセル封入体を真空ボックスに付加し、血液を固化させる。次いで、マルチウェルサポーターを真空ボックス内に配置する。次いで、シリコン系ゴム又は他の軟質プラスチック製の密封ガスケットをマルチウェルプレートサポーターの上面に配置する。フィルタープラグ(X−6953、60μ FilterPlugHDPE、ポレックスプロダクツグループ(Porex Products Groups))を真空ボックスの真空吸引装置アダプター内に配置する。
【0024】
この実施形態における方法は、フィルタープレートの作製を含む。白血球を捕捉するために、ガラス繊維膜又は白血球フィルターメンブレンのいずれかを使用することができる。マルチウェルフィルタープレートをガラス繊維膜又は白血球フィルターメンブレンを用いて作製することにより、複数の血液検体を同時に処理することができ、アッセイを簡素化することができる。白血球を捕捉するためのフィルターの例は、米国特許第4,925,572号及び同第4,880,548号に記載されており、これらの開示は参照により本明細書に援用される。一般に、繊維表面上への白血球の吸着は白血球を除去する機構であると考えられている。所与の重量の繊維の表面積は、その繊維の直径に反比例する。したがって、使用される繊維の直径が小さい場合、繊維が細いほど、より大きな吸着容量を有することが期待され、さらに所望の有効性を達成するのに必要な、繊維の重量として測定される量はより少ないことが期待される。ポリエステル、ポリアミド及びアクリル系繊維を含む一般に使用されるいくつかの繊維は、グラフト重合するために必要とされるレベルのγ線による分解に対して充分な耐性を有し、且つ利用可能なモノマーが反応できる構造を有するため、放射線グラフト重合するのに適している。PBTは、本発明の製造物の開発に使用されてきた主な樹脂であり、本実施例で使用される樹脂である。しかし、繊維化することができ、且つ1.5マイクロメートル以下の細い繊維から成るマット又は織物を形成することができる他の樹脂も存在し得、濡れの臨界表面張力が必要に応じて最適範囲に調整されているような産物は、フィルタープレートの効率的な製造に適しており、さらに小型の白血球除去装置の製造に適している可能性があることに注意されたい。同様にして、適切に処理されたガラス繊維が、効果的な装置を作製するために使用可能であり得る。CD4mRNAの吸着は、PBT系フィルターを使用した場合には、ガラス繊維系フィルターを使用した場合とは対照的に4倍まで有効である。フィルタープレートは真空ボックス内に配置される。別の好ましい実施形態では、全血から捕捉される白血球の量を増加させるために、複数のフィルターメンブレンを重ね合わせる。
【0025】
好ましい一実施形態では、フィルタープレートをプレートサポーター及び密封ガスケット上に配置する。別の好ましい実施形態では、フィルタープレートはプラスチック製粘着テープ(Bio−Rad 223−9444)で密封されており、テープをカットして所望数のウェルを利用可能にすることができる。別の好ましい実施形態では、試料が添加される各ウェルを低張緩衝液(200μLの5mM Tris、pH7.4)で洗浄する。
【0026】
本方法は、血液を採取すること、マルチウェルフィルタープレートへ血液を添加すること、並びに赤血球及び他の非白血球成分を除去することを含むことが好ましい。好ましい一実施形態では、抗凝血剤を含む血液採取用チューブ内に全血を吸引し、これにより白血球の濾過効率を増大することができる。抗凝血剤であるヘパリンは、白血球の濾過効率を
増大させるのに特に有効である。好ましい一実施形態では、血液試料を凍結してmRNAを破壊するRNA分解酵素を一部除去することができる。ウェルを低張緩衝液で洗浄し得る。フィルタープレート上の所望数のウェルに血液が添加されると、血液はフィルターメンブレンにより濾過される。濾過は、遠心分離、真空吸引又は正圧等の当業者に知られた任意の技術により行なわれ得る。
【0027】
特に好ましい一実施形態では、血液試料をフィルタープレートウェルに添加した後、真空吸引を開始する(6cmHg)。各ウェルを、何回か低張緩衝液で洗浄する(200μLの5mM Tris、pH7.4で12回)。別の好ましい実施形態では、試料の入った各ウェルをエタノールで洗浄して(200μLの100%エタノールで1回)フィルターメンブレンを乾燥させ、真空吸引する際の白血球捕捉効率を有意に増加させる。別の好ましい実施形態では、次に減圧を行う(20cmHgで>2分間)。
【0028】
本方法は、細胞溶解、並びにmRNAとmRNA捕捉ゾーン内に固定されたオリゴ(dT)とのハイブリダイゼーションを包含する。溶解緩衝液はフィルタープレートウェルに添加され(40μL/ウェル)、そしてインキュベーションを行い(室温で20分間)、捕捉された白血球からmRNAを溶出する。好ましい一実施形態では、マルチウェルフィルタープレートを、プラスチック袋中に密封し、遠心分離する(IEC MultiRF、2,000rpm、4℃で1分間)。次に溶解緩衝液を再び添加し(20μL/ウェル)、その後遠心分離する(IEC MultiRF、3,000rpm、4℃で5分間)。次にマルチウェルフィルタープレートを遠心分離機から取り出し、インキュベートする(室温で2時間)。
【0029】
好ましい実施形態に従うと、溶解緩衝液は、界面活性剤、塩、pH緩衝剤、グアニジンチオシアネート及びプロテイナーゼKを含む。
【0030】
溶解緩衝液の好ましい実施形態は少なくとも1つの界面活性剤を含有するが、1つより多くの界面活性剤を含有してよい。様々なタイプの細胞における異なる膜の種々のレベルの溶解を達成するために、異なる強度を有する界面活性剤濃度の種々の組合せを、当業者は利用し得る。例えばIGEPAL CA−630は、N−ラウロサルコシンより弱い界面活性剤であり、一実施形態では、IGEPAL CA−630単独で、細胞膜を溶解するのに十分であり得る。他の実施形態では、核膜の溶解を最適化するために、N−ラウロサルコシンのような強い界面活性剤を、1つ又は複数の弱界面活性剤と組合せて用いられ得る。界面活性剤は、少なくとも細胞の細胞膜を溶解するのに十分であることが好ましい。別の好ましい実施形態は、細胞の核中にかなりの量のmRNAが存在する場合、細胞の核膜を溶解するのに十分な界面活性剤を含む。状況によっては、細胞質mRNAのみを測定するのが望ましいが、他の状況では、細胞質及び核中のmRNAを測定することが望まれ得る。
【0031】
溶解緩衝液の強界面活性剤としては、好ましくはN−ラウロイルサルコシン、S.D.S.、デオキシコール酸ナトリウム及びヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
弱界面活性剤としては、IGEPAL CA−630、N−デカノイル−N−メチルグルカミン、オクチル−β−D−グルコピラノシド、又は当業者に既知のその他の界面活性剤が挙げられる。0.05〜2%の界面活性剤が溶解緩衝液中に用いられ得る。溶解緩衝液の特に好ましい一実施形態は、0.5%N−ラウロイルサルコシンを含む。溶解緩衝液の別の好ましい実施形態は、0.1〜2%IGEPAL CA−630を含有する。特に好ましい実施形態は、0.1%IGEPAL CA−630を含有する。
【0033】
塩及びキレート化剤の組合せも、溶解剤として役立ち得る。例えば75μMのNaCl及び24μMのNa−EDTAは、溶解剤として役立ち得る。溶解剤の実施形態は、当業者に既知のその他の溶解剤を含み得る。
【0034】
溶解緩衝液の塩は、mRNA−オリゴ(dT)ハイブリダイズ剤として作用する。塩は好ましくは、4×SSCを超えないストリンジェンシー(相補的DNA配列がハイブリダイズし合う厳密性)を有するべきであり、当業者により決定される。溶解緩衝液のその他の実施形態は、NaCl、又は当業者に既知のその他の塩を含む。
【0035】
溶解緩衝液ストックのpH緩衝液は、好ましくは7.0〜8.0のpHを保持する。一実施形態は、1mM〜100mMのTrisHCl、pH7.4を含む。特に好ましい実施形態では、pH緩衝液は、10mMのTrisHCl、pH7.4を含む。溶解緩衝液のその他の好ましい実施形態は、pH5.0の0.1Mのクエン酸−リン酸塩を0.03%のH2O2とともに含有する、当業者に既知のpH緩衝液を含む。
【0036】
溶解緩衝液の特に好ましい実施形態に従うと、グアニジンチオシアネートはRNA分解酵素の不活性化剤として役立つ。グアニジンチオシアネートは、通常有効であるのに不十分な濃度で従来技術において用いられてきた、ということを本発明者等は発見した。したがって、グアニジンチオシアネートの濃度は1.4Mより高いことが好ましい。高くても10Mというグアニジンチオシアネート濃度、さらに好ましくは2Mより高くない濃度を用いることができる。しかし図11から分かるように、1.7Mより高い濃度では、溶解緩衝液の効率は低減される。したがって好ましい実施形態は、約1.4〜約1.75Mのグアニジンチオシアネートを用いる。好ましい一実施形態は、1.7〜1.8Mのグアニジンチオシアネートを含む。下記の実施例4で実証されるように、1.791Mという特定濃度のグアニジンチオシアネートで、作業溶解緩衝液がストックから調製され得る。他の試薬が溶解緩衝液に添加される場合、グアニジンチオシアネートの濃度は希釈される。実施例4におけるように、55mlの他の試薬が1mlの緩衝液に添加される場合、好ましい溶解緩衝液は約1.61〜約1.71Mの濃度でグアニジンチオシアネートを含む。したがって好ましい実施形態は、約1.6〜約1.7Mの濃度でグアニジンチオシアネートを含む。
【0037】
特に好ましい実施形態は、RNA分解酵素の不活性化剤として20mg/mlのプロテイナーゼKをさらに含む。溶解緩衝液の好ましい一実施形態は、200μg/ml〜20mg/mlのプロテイナーゼKを含む。別の好ましい実施形態は、200μg/ml〜1.0mg/mlのプロテイナーゼKを含む。別の好ましい実施形態は、200μg/ml〜500μg/mlのプロテイナーゼKを含む。ドデシル硫酸ナトリウムも、RNA分解酵素の不活性化剤として役立ち得る。別の実施形態は、RNA分解酵素の不活性化剤として0.1〜10%の2−メルカプトエタノールを含む。特に好ましい一実施形態は、1%の2−メルカプトエタノールを含む。RNA分解酵素の不活性化剤の他の実施形態は、好ましくは、RNA分解酵素中のジスルフィド結合を低減する、当業者に既知の物質を含み得る。
【0038】
溶解緩衝液の好ましい実施形態は、Mg2+及びCa2+をキレート化するキレート化剤をさらに含む。好ましい一実施形態は、0.1mM〜5mMのEDTAを含む。特に好ましい実施形態は、1mMのEDTAを含む。溶解緩衝液ストックの他の好ましい実施形態は、当業者に既知のキレート化剤、例えばEDTMP、2,3−ジメルカプトプロパノール及びEGTAを含有するが、これらに限定されない。
【0039】
溶解緩衝液の好ましい実施形態は、tRNAを含み得るが、これは種々の供給源から得られ得、フィルタープレートへの血液由来DNA及びRNAの非特異的吸収を抑制するた
めに含まれる。さらにtRNAの存在は、血液由来RNAの分解を防止する。好ましい一実施形態では、作業溶解緩衝液のtRNAは、10mg/mlの大腸菌tRNAを含む。その他の実施形態は、当業者に既知の任意の供給源からのtRNAを含有し得る。
【0040】
溶解緩衝液の好ましい実施形態は、フィルタープレートへの血液由来DNA及びRNAの非特異的吸収を抑制するために添加される、多種多様な供給源からのDNAを含み得る。作業溶解緩衝液のDNAは、好ましくは10mg/mlの超音波処理サケ精子DNAを含む。他の実施形態では、他の生物体からのDNAが用いられ得る。
【0041】
溶解緩衝液の特に好ましい実施形態は、元の試料中の標的mRNAの明確な量を算定するためのスパイク対照RNAを含み得る。本発明の実施形態前には、研究機関間の変動及び標準化が欠如していたため、一実験における結果を他の実験の結果と比較することは困難であった。しかし本発明の好ましい実施形態では、標的mRNAの明確な量は、TaqManアッセイにより得られた値を各試料中のスパイク対照RNAの用量の回収率で割ることにより確定され得る。このような最も信頼のある定量は、以下に記載され、実施例5に例示されている。
【0042】
溶解緩衝液の好ましい実施形態は、1ウェル当たり10〜1e10コピー、さらに好ましくは1e5〜1e10コピーのスパイクRNAを含む。好ましい実施形態では、用いられる対照RNAの量は、少なくとも検出されるのに十分であるが、定量される標的mRNAの量を有意に妨害するほど多くはない。好ましい実施形態では、溶解緩衝液に添加される対照RNAは、ポリ(A)+RNAである。試験されている試料がヒト血液である特に好ましい実施形態では、対照RNAはヒト血液中に存在するRNAと相同でない。いくつかの好ましい実施形態では、対照RNAの配列は、標的mRNAと90%未満の相同性を有するか、又は標的mRNAと長さにおいて10%より大きい差を有する。他の好ましい実施形態では、対照RNAの配列は、標的mRNAと85%未満の相同性を有するか、又は標的mRNAと長さにおいて5%より大きい差を有する。さらなる実施形態では、対照RNAの配列は、標的mRNAと75%未満の相同性を有するか、又は標的mRNAと長さにおいて2%より大きい差を有する。代替的実施形態では、対照RNAの配列は、標的mRNAと65%未満の相同性を有するか、又は標的mRNAと長さにおいて1%より大きい差を有する。一実施形態では、対照RNAは好ましくは、PCRにより鋳型オリゴヌクレオチドを増幅することにより作られ得る。したがって正方向プライマー(配列番号10、配列番号11、配列番号15及び配列番号8)、逆方向プライマー(配列番号9、配列番号16及び配列番号9)及びTaqManプローブ(FAM−配列番号13−TAMRA、FAM−配列番号17−TAMRA、及びFAM−配列番号12−TAMRA)を、種々の対照RNAオリゴヌクレオチドを増幅するために用いることができる。代替的実施形態は、定量されるべき複数の異なる標的mRNAを用いることを包含する。さらなる実施形態は、複数の対照RNAを用いることを包含する。
【0043】
本方法はmRNAを定量することを含むが、これは、好ましい実施形態では、mRNAからのcDNA合成及びPCRを用いたcDNAの増幅を伴う。好ましい一実施形態では、マルチウェルフィルタープレートを、溶解緩衝液(150μL/ウェルで3回、手動)及び洗浄緩衝液(150μL/ウェルで3回、手動又はBioTek# G4)で洗浄する。次にcDNA合成緩衝液を、マルチウェルフィルタープレートに添加する(40μL/ウェル、手動又はI&J #6)。Axymat(アムジェン株式会社(Amgen)製AM−96−PCR−RD)を、マルチウェルフィルタープレート上に載せ、次にヒートブロック(37℃、VWR)上に載せ、インキュベートする(>90分)。次にマルチウェルフィルタープレートを遠心分離し得る(2,000rpm、4℃で1分間)。PCRプライマーが384ウェルPCRプレートに添加され、cDNAがマルチウェルフィルタープレートから384ウェルPCRプレートに移される。PCRプレートを遠心分離し(2,0
00rpm、4℃で1分間)、リアルタイムPCRを開始する(TaqMan/SYBER)。
【0044】
別の好ましい実施形態は、下記の実施例6で実証されるように、mRNAハイブリダイゼーション中又はcDNA合成中に特異的アンチセンスプライマーを添加することを含む。オリゴ(dT)及び特異的プライマー(NNNN)は、ポリA RNA上の異なる位置でのcDNAの伸長を同時に刺激する(図15)。特異的プライマー(NNNN)及びオリゴ(dT)は、図15に示されるように、増幅中のcDNAの形成を引き起こす。95℃で2分間各ウェルを加熱することにより、特異的プライマー由来cDNAがGenePlateから除去される場合でさえ、加熱変性プロセス(TaqMan定量的PCRを用いて)から得られる特異的CD4 cDNAの量は、非加熱のネガティブコントロールから得られる量と同様である(図16)。いかなる説明又は理論と結びつけずに考えると、このような結果に関して考え得る説明の1つは、オリゴ(dT)由来cDNAは増幅中にプライマー由来cDNAを置き換わり得る、というものである(図15)。加熱変性プロセスが完全に排除されるため、これは特に便利である。さらに、異なる標的のために複数のアンチセンスプライマーを添加することにより、各遺伝子がcDNAの一定分量から増幅され、そしてGenePlate中のオリゴ(dT)由来cDNAはその後の使用のために保存され得る。
【0045】
本発明の別の好ましい実施形態は、全血からのmRNAを高効率に定量するための装置を含む。該装置は、多数の試料デリバリーウェル、試料デリバリーウェルの下部の白血球捕捉フィルター、及び該フィルターの下部のmRNA捕捉ゾーン(mRNA捕捉ゾーンは、ウェル内のmRNA捕捉ゾーンに固定化されたオリゴ(dT)を含む)を備えるマルチウェルフィルタープレートを含む。白血球回収効率を高めるため、いくつかのフィルターメンブレンを重ね合わせることができる。マルチウェルプレートは真空ボックス上に取り付けられるが、真空ボックスはマルチウェルプレートを受容し、マルチウェルプレートと真空ボックスとの間に密封部が形成されるようになっている。該装置の好ましい一実施形態では、真空ボックスは、真空吸引を行なうための真空源を受容するようになっている。別の好ましい実施形態では、マルチウェルサポーターを、真空ボックス内のマルチウェルフィルタープレートの下方に配置する。該装置の別の好ましい実施形態では、シリコン系ゴム等の軟質プラスチック製であり得る密封ガスケットがマルチウェルサポーターとマルチウェルフィルタープレートとの間に挿入される。
【0046】
多数の慣用的増幅技法が本発明と一緒に用いられ得るが、本発明の特に好ましい一実施形態は、全血由来RNA及び対照RNAを用いてリアルタイム定量的PCR(TaqMan)を実行することを含む。ホランドらによるPNAS 88: 7276-7280 (1991)は、TaqManアッセイとして既知のアッセイを記載する。Taqポリメラーゼの5'→3'エキソヌクレアーゼ活性は、ポリメラーゼ連鎖反応産物検出系で用いられて、増幅と同時に特異的検出可能シグナルを生じる。3'末端で延長不可能であり、5'末端で標識され、且つ標的配列内でハイブリダイズするよう設計されたオリゴヌクレオチドプローブが、ポリメラーゼ連鎖反応アッセイに導入される。増幅途中でのポリメラーゼ連鎖反応産物鎖の一方とのプローブのアニーリングは、エキソヌクレアーゼ活性に適した基質を生じる。増幅中、Taqポリメラーゼの5'→3'エキソヌクレアーゼ活性は、プローブを非分解プローブと識別され得るより小さい断片に分解する。アッセイは高感度且つ特異的であり、そしてより厄介な検出方法を上回る顕著な改良を示す。このアッセイの一バージョンは、米国特許第5,210,015号(Gelfandら)にも記載されている(米国特許第5,210,015号(Gelfandら)及びHollandら、PNAS 88: 7276-7280 (1991))(これらは、参照により本明細書中に援用される)。
【0047】
さらに、Fisherらに対する米国特許第5,491,063号は、TaqMan型アッセ
イを提供する。フィッシャーらの方法は、発光標識で標識された一本鎖オリゴヌクレオチドプローブの切断を生じる反応を提供し、この場合、反応は、標識と相互作用して標識の発光を改質するDNA結合化合物の存在下で実行される。該方法は、プローブの分解に起因する標識プローブの発光の変化を利用する。該方法は、概して、オリゴヌクレオチドプローブの切断を生じる反応を利用するアッセイに、特に、ハイブリダイズしたプローブがプライマー伸長に付随して切断される均一増幅/検出アッセイに適用可能である。増幅標的の蓄積の同時検出と、標的配列の配列特異的検出を可能にする均一増幅/検出アッセイが提供される。米国特許第5,491,063号(Fisherら)は、参照により本明細書中に援用される。
【0048】
TaqMan検出アッセイは、古典的PCRアッセイを上回るいくつかの利点を提供する。第一に、TaqManアッセイは、PCRの感度を、標的配列中に存在する内部オリゴヌクレオチド配列のハイブリダイゼーションと組合せる。PCR後、試料をアガロースゲル上で分離する必要がなく、PCR産物の同一性を立証するために必要なその後のサザンブロット及びハイブリダイゼーション過程は排除される。PCR後になされるこれらのさらなる検査過程は、精確な同定のために容易に数日間費やし得る。TaqMan系を用いると、アッセイは2.5時間以内に完了する。さらに、該アッセイプロセスに含まれる方法論は、多数の試料の取扱いを効率的に且つ相互汚染を伴わずに可能にし、したがってロボットによるサンプリングに適合可能である。その結果、多数の試験試料を、TaqManアッセイを用いて非常に短期間で処理することができる。TaqMan系の別の利点は、多重化に関する潜在能力である。異なる蛍光レポーター色素を用いてプローブを構築し得るため、いくつかの異なるHIV系が同一PCR反応に併合され、それにより、試験の各々が個別に実施された場合に受ける労働コストを低減し得る。迅速で確実なデータの利点は、労働及びコスト効率と共に、本発明の特異的プライマーを利用するTaqMan検出系を、HIVの存在をモニタリングするための非常に有益な系にする。
【0049】
好ましい実施形態では、種々のmRNAを、各標的に関するプライマー及びプローブを単に変えることにより、定量することができる。最大生理活性を発揮するための重要因子の1つである細胞外Ca++をヘパリンが保持するため、薬剤作用を、白血球を単離することなく全血で分析し得る。
【0050】
本発明の好ましい実施形態では、既知量のスパイク標準RNAを用いることにより所定の試料の総効率を確定する能力は、用量非依存性且つ配列非依存性である実施形態に起因する。既知量の対照RNAの使用は、PCR測定値を、元の試料中の標的mRNAの量に変換させる。このような計算は、種々の遺伝子に関する全血1μL当たりのmRNAの存在の正常範囲を確定するために、長時間にわたって個体の大試料に関して用いられ得る。本発明の実施形態が所定時間で個体の全血を試験するために用いられる場合、正常範囲外のレベルを有する、疾患を示すmRNAの存在を示す結果は、疾患の存在を示唆し得る。本発明の実施形態は、様々な疾患の検出のためのアッセイとして用いられ得る。例えば疾患を示すmRNAは、多数の試料中のmRNAを最大所望レベルに誘導して、所定の試料のmRNAを測定し、そして試料のmRNAのレベルを検出して、それが最大レベルを下回るか否かを確定することにより検出され得る。同様に、本発明の実施形態は、治療内容の有効性を確定するに際してのアッセイとして用いられ得る。本発明の実施形態は、種々の量の酸化防止剤を用いて人々の試料のmRNAレベルが互いに比較される酸化ストレス試験においても同様に用いられ得る。
【0051】
別の好ましい実施形態は、全血からのmRNAを高効率に定量するためのキットを含む。該キットは、全血からのmRNAを高効率に定量するための装置、ヘパリン含有血液回収用チューブ、低張緩衝液及び溶解緩衝液を含む。
【0052】
別の好ましい実施形態は、血液試料、低張緩衝液及び溶解緩衝液を装置に添加するためのロボット、自動真空吸引装置及び遠心分離機、並びに自動PCR機を備える、全血中のmRNAを高効率に定量するための完全自動化システムを含む。
【実施例】
【0053】
<実施例1>
本発明の方法の種々のプロトコルを試験し、全血からβ−アクチンmRNA及びCD4mRNAを定量するために使用した。
【0054】
3種類の抗凝血剤:ACD、EDTA及びヘパリンを試験した結果、ヘパリンが最も高い白血球保持率をもたらした。ACD血を移入する際にLeukosorb膜が使用されているが、4層の膜を同時に使用しても、およそ15〜40%の白血球が通り抜けた。EDTA血について試験したが、吸着容量及び白血球保持についてはACD血の場合と同様であることがわかった。しかし、もっとも注目すべきは、ヘパリン血中の白血球の100%がLeukosorb膜上に捕捉されたことである。ヘパリン血由来の白血球を100%捕捉したことは、本発明を用いたmRNAの定量の信頼性を示す。これらのデータは、mRNAを正確に定量するにはヘパリン血を使用することが非常に適しているのに対し、大容量の血液を要し、さほど定量的な結果が必要とされない場合にはACD血が有用であることを示す。
【0055】
凍結血試料と新鮮血試料を用いた結果を比較した。図3に示されるように、凍結試料の漏出細胞(leaked cell)からよりも新鮮血の漏出細胞からのほうが、より多くのCD4mRNAが回収された。
【0056】
また、ガラス繊維フィルターの全血保持の有効性を、PBT系フィルターメンブレンの保持値と比較して調べた。表IIに示されるように、ガラス繊維膜は、膜を低張緩衝液(50mMのTris、pH7.4)で洗浄して赤血球を破裂させた場合でさえ、40μLの全血しか受容しなかった。しかし、Leukosorbフィルターは、表2に示されるように、ガラス繊維フィルターよりも有意に多くの量の全血を受容した。
【0057】
【表2】
【0058】
低張緩衝液による様々な回数の洗浄を施して、赤血球及び他の血液成分を除去した。図4に示されるように、試料を低張緩衝液で少なくとも3回洗浄すると、洗浄しない場合と比べて、捕捉されたCD4mRNAの量が2倍を超えた。また図4は、血液を低張緩衝液で12回洗浄したときに、最も多くのmRNAが捕捉されたことを示す。さらに最終CD4mRNA定量に関して、白血球を回収するための種々の方法、すなわち血液試料の真空吸引による方法、遠心分離による方法、並びにエタノール洗浄に続いて真空吸引による方法を比較した。図5は、真空吸引による方法が遠心分離による方法よりも良好なCD4mRNA定量をもたらすことを示し、且つ真空吸引前にエタノールで血液試料を洗浄する方法にすると、最も多くのmRNAが得られることを示す。
【0059】
白血球をガラス繊維膜又はLeukosorb膜上に捕捉し、低張緩衝液による様々な回数の洗浄を施して、赤血球及び他の血液成分を除去した。捕捉された白血球からmRNAを遊離させるため、溶解緩衝液(アールエヌエーチャー社(RNAture))をフィルタープレートに添加し(40μL/ウェル)、プレートを室温で20分間インキュベートした。好ましい実施形態において、溶解緩衝液中に増幅プライマーが含有される。図6は、溶解緩衝液がRNA分解酵素阻害に重要な役割を果たし、溶解緩衝液により失活したRNA分解酵素が好酸球中に充満していることを示す。次いで、マルチウェルフィルタープレートをプラスチック製バッグ内に密封し、遠心分離した(IEC MultiRF、2,000rpm、4℃で1分間)。次いで、溶解緩衝液を再度添加し(20μL/ウェル)、続いて遠心分離した(IEC MultiRF、3,000rpm、4℃で5分間)。次いで、マルチウェルフィルタープレートを遠心分離機から取り出し、室温で2時間インキュベートして、ポリ(A)+RNAテールと固定化オリゴ(dT)とをハイブリダイズさせた。次いで、マルチウェルフィルタープレートを150μLの溶解緩衝液で3回洗浄して残留リボヌクレアーゼを除去し、続いて150μLの洗浄緩衝液(BioTek#G4)で3回洗浄してcDNA合成の阻害因子をいくらか含有する溶解緩衝液を除去した。
【0060】
前述した最後の洗浄により、洗浄緩衝液はマルチウェルフィルタープレートから完全に除去され、予め混合したcDNA緩衝液40μLを添加することにより各ウェル内でcDNAを合成した。cDNA緩衝液は、5×第1鎖緩衝液(プロメガ社(Promega)製M531A、10mMのdNTP(プロメガ社製ストック、20×))、プライマー(5μM、#24)、RNasin(プロメガ社製N211A、400U/μL)、M−MLV逆転写酵素(プロメガ社製M170A、200U/μL)及びDEPC水から構成されることが好ましい。図7は、mRNAを定量するための最適MMLV濃度が50単位/ウェルであることを示す。
【0061】
Axymat(アムジェン社製AM−96−PCR−RD)をマルチウェルフィルタープレート上に配置し、次いでこれをヒートブロック(37℃、VWR)上に配置してインキュベートした(>90分)。次いで、マルチウェルフィルタープレートを遠心分離した(2,000rpm、4℃で1分間)。PCRプライマーを384ウェルPCRプレートに添加し、cDNAをマルチウェルフィルタープレートから384ウェルPCRプレートに移した。図8は、PCRのための最適cDNA値がおよそ2μL/ウェルであることを示す。PCRプレートを遠心分離し(2,000rpm、4℃で1分間)、リアルタイムPCRを開始した(TaqMan/SYBER)。本発明の方法は高いmRNA特異性を有し、TaqManqPCRでのCD4mRNAの増幅では、DNAコンタミネーションは検出されなかった(<10コピー/ウェル)。
【0062】
図9に示されるように、本発明はmRNA定量の変動係数が小さい。2時間のハイブリダイゼーションでは、従来のmRNA定量の変動係数がおよそ300%であるのに対して、該変動係数が13%未満であった。さらにまた、図10に示されるように、直線的な結
果は、捕捉されるmRNAの量が、1ウェル当たりに使用された全血の量に正比例することを示し、本発明が信頼性及び再現性のあるmRNAの定量法であることを示す。
【0063】
<実施例2>
50μLのヘパリンで処理したヒトの凍結血液をLeukosorbフィルタープレートに添加した。各ウェルを真空にし、150μLの5mMのTris、pH7.4及び150μLの100%エタノールで12回洗浄した。次に、1.707〜1.856Mのグアニジンチオシアネートを含有する40μLの溶解緩衝液をそのウェルに添加した。室温で15分間インキュベートした後、フィルタープレートをGenePlate上に配置し、2,000rpmで4℃にて1分間遠心分離した。さらに20μLの溶解緩衝液を加え、その試料を5分間遠心分離した。GenePlateを室温で2時間インキュベートした後、各ウェルを100μLの溶解緩衝液で3回洗浄し、その後150μLの洗浄緩衝液(10mMのTris、pH7.4、1mMのEDTA、pH8.0、0.5MのNaCl)で3回洗浄した。cDNAをGenePlateで合成し、2μLのcDNAをTaqManアッセイに用い、CD4を定量した。結果を図11に示す。
【0064】
<実施例3>
50μLのヘパリンで処理したヒトの凍結血液をLeukosorbフィルタープレートに添加した。各ウェルを真空にし、150μLの5mMのTris、pH7.4及び150μLの100%エタノールで12回洗浄した。次に、0〜0.5mg/mlのプロテイナーゼKを有する1.791Mのグアニジンチオシアネートを含有する40μLの溶解緩衝液をそのウェルに添加した。室温で15分間インキュベートした後、フィルタープレートをGenePlate上に配置し、2,000rpmで4℃にて1分間遠心分離した。さらに20μLの溶解緩衝液を添加し、5分間再度遠心分離した。GenePlateを室温で2時間インキュベートした後、各ウェルを100μLの溶解緩衝液で3回洗浄し、その後150μLの洗浄緩衝液(10mMのTris、pH7.4、1mMのEDTA、pH8.0、0.5MのNaCl)で3回洗浄した。cDNAをGenePlateで合成し、2μLのcDNAをTaqManアッセイに用い、CD4を定量した。結果を図12に示す。
【0065】
<実施例4>
溶解緩衝液ストック
0.5%N−ラウロイルサルコシン
4×SSC
10mMTrisHCl、pH7.4
1mMEDTA
0.1%IGEPAL CA−630
1.791Mグアニジンチオシアネート
作用溶解緩衝液
溶解緩衝液ストック 1ml
2−メルカプトエタノール 10μL
超音波処理されたサケ精子DNA(10mg/ml) 10μL
大腸菌tRNA(10mg/ml) 10μL
プロテイナーゼK(20mg/mlストック) 25μL(最終0.5mg/ml)
【0066】
<実施例5>
対照RNAの調製
対照RNAを合成するために、鋳型オリゴヌクレオチド(配列番号2及び配列番号4)並びにK562細胞由来のcDNA(アールエヌエーチャー社、Irvine, CA)を、T7−正方向プライマー(配列番号3、配列番号5及び配列番号6)及びdT40逆方向プライマ
ー(T40−配列番号1及びT40−配列番号7)を用いて、95℃で30秒間の変性、55℃で10秒間のアニーリング、その後72℃で20秒間の伸長をそれぞれ30サイクルで増幅した。オリゴヌクレオチドはIDT社(Coralville, IA)又はプロリゴ社(Proligo)(Boulder, CO)から購入した。配列は以下:
配列番号1:5'−GGGTG CTGTG CTTCT GTGAA C−3'
配列番号2:5'−GCCCC CTCAC TCCCA AATTC CAAGG CCCAG CCCTC ACACA TTGTT CACAG AAGCA CAGCA
CCC−3'
配列番号3:5'−GTAAT ACGAC TCACT ATAGG GGGAC AGCCC CCTCA CTCCC AAA−3'
配列番号4:5'−GAAGC GTGTG TCACT GTGTG TTTCC AAGGC CCAGC CCTCA CACAT TGTTC ACAGA AGCAC
AGCAC CC−3'
配列番号5:5'−GTAAT ACGAC TCACT ATAGG GGGAC GGAAG CGTGT GTCAC TGTGT GT−3'
配列番号6:5'−GTAAT ACGAC TCACT ATAGG GGGAC GCATT CCGCT GACCA TCAAT A−3'
配列番号7:5'−TCCAA CGAGC GGCTT CAC−3'
の通りである。
【0067】
RNAを、37℃で30分間in vitroでの転写システム(T7RiboMaxExpress、プロメガ社)により精製PCR産物から合成し、その後15分間DNアーゼ(1単位)処理を2回行った。精製RNA産物をヌクレアーゼ無含有水に懸濁し、その濃度を、標準として、rRNAを用いてRiboGreenアッセイ(分子プローブ)で測定した。品質をキャピラリー電気泳動チップ(iChip、日立化成工業株式会社(Hitachi Chemical)、東京、日本)で分析した。
【0068】
白血球の回収
静脈血試料を健常な成人の志願者(volunteer)から集めた。ガラス繊維フィルタープレート(アールエヌエーチャー社)及びLeukosorb膜(ポールライフサイエンス社(Pall Life Sciences)(Ann Arbor, MI))は、指定業者から入手した。特別注文の96ウェルLeukosorbフィルタープレートは、ワットマンポリフィルトロニクス社(Whatman-Polyfiltronics)(Clifton, NJ)により製造された。ヒト血液試料は、接触感染性物質と考えられるので、使い捨て真空管が設計され、且つ特別注文の製品は、アンブリットエンジニアリング社(Ambritt Engineering)(Santa Ana, CA)により製造された。フィルタープレートを使い捨て真空管上に配置し、200μLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS:インビトロジェン株式会社(Invitrogen)(Carlbad, CA))で2回洗浄した。減圧を止め、次に新鮮血試料又は解凍血試料(最大200μL/ウェル)をフィルタープレートに添加した。試料全てをフィルタープレートに分注した後、減圧濾過を14cmHgで開始し、その後PBS(200μL/ウェル)で12回洗浄した。最後の洗浄後、減圧をさらに5分間続け、膜を完全に乾燥させ、PBSの残量を膜から除去した。
【0069】
細胞溶解及びmRNA調製
フィルタープレートをブランクのマイクロプレート上に配置し、その後逆方向プライマー(最終濃度25nM)、定量標準として合成RNA、100μg/mLのサケ精子DNA(エッペンドルフ−5プライム社(Eppendorf-5 Prime)、Westbury, NY)、100μg/mLの大腸菌tRNA(株式会社シグマ(Sigma))、500μg/mLのプロテイナーゼK(ピアース社(Pierce)、Rockford, IL)、及び1:100に希釈された2−メルカプトエタノール(バイオ・ラッド社(BioRad)、Hercules, CA)を含む40μLの溶解緩衝液(アールエヌエーチャー社、Irvine, CA)を添加した。試料を室温で1時間イン
キュベートした。いくつかの実験(図14C及び図14D)で、様々な濃度のオリゴ−dA20を溶解緩衝液に添加した。次に、フィルタープレートをオリゴ(dT)固定化マイクロプレート(GenePlate、アールエヌエーチャー社)上に配置し、その後650×gで1分間遠心分離した。次に、20μLの溶解緩衝液を添加し、その後1,450×gで5分間遠心分離した。このプロセスの後、GenePlateの各ウェルにおける溶解緩衝液量はおよそ50μLであった。GenePlateをインキュベートした後、そのプレートを100μL無処理の溶解緩衝液で3回洗浄し、その後150μLの洗浄緩衝液(10mMのTris、pH7.4、1mMのEDTA、0.5MのNaCl)で3回洗浄した。
【0070】
cDNA合成
cDNAを、1×RT緩衝液、0.5mMのdNTP、15単位のrRNasin、及び37.5単位のMMLV逆転写酵素(プロメガ株式会社)を含有する30μLのcDNA緩衝液を添加することにより、GenePlateで合成した。試料を37℃で2時間インキュベートした。逆方向プライマーを溶解緩衝液に添加したため、プライマーをcDNA合成反応物には入れなかった。cDNAを合成した後、50μLのヌクレアーゼ無含有水を各ウェルに添加し、以下に記載するように2μLをTaqManアッセイに用いた。
【0071】
TaqManリアルタイムPCR
対照RNA用のプライマー及びTaqManプローブは、PrimerExpressバージョン2.0(アプライドバイオシステムズ(ABI)社(ABI)、Foster City, CA)により設計された。bcr−ablに、本発明者等は公示の配列を用いた。いくつかの実験では、HYBシミュレータ(アールエヌエーチャー社)を用いて、逆方向プライマーを設計した。正方向プライマー(配列番号10、配列番号11、配列番号15及び配列番号8)、逆方向プライマー(配列番号9及び配列番号16)、並びにTaqManプローブ(FAM−配列番号13−TAMRA、FAM−配列番号17−TAMRA及びFAM−配列番号12−TAMRA)を用いて、対照RNAを増幅した。血液試料中のCD4mRNAの量を測定するために、CD4及び対照RNAの両方を、単一ウェルのマルチプレックスPCRではなく、PCRプレートの別個のウェルで分析した。β−アクチンに関しては、市販のプライマー及びプローブが使用された(アプライドバイオシステムズ(ABI)社)。384ウェルPCRプレート(アプライドバイオシステムズ(ABI)社)に、2μLのcDNA、5μLのTaqManユニバーサルマスターミックス(アプライドバイオシステムズ(ABI)社)、1μLの5μM正方向プライマー、1μLの5μM逆方向プライマー、及び1μLの2μMTaqManプローブを混合した。PCRを、95℃で10分間を1サイクル、その後95℃で20秒間、その後55℃で20秒間、最後に60℃で1分間を45サイクルでABI PRISM 7900HT(アプライドバイオシステムズ(ABI)社)を用いて行った。そのデータをSDSバージョン2.0(アプライドバイオシステムズ(ABI)社)により解析した。いくつかの実験では、TaqManアッセイをGenePlate(オプチコン社(Opticon)、MJ Research)で直接行った。オリゴヌクレオチド(配列番号2、配列番号4及び配列番号14)、並びにPCR産物を、対照RNA用の定量標準として用いた。配列は以下:
配列番号8:5'−AAATG CCACA CGGCT CTCA−3'
配列番号9:5'−CAAGT GTCTT CGTGT CGTGG G−3'
配列番号10:5'−AGCCC CCTCA CTCCC AAA−3'
配列番号11:5'−AGCCC CCTCA CTCCC AAA−3'
配列番号12:5'−CAGTG GCTAG TGGTG GGTAC TCAAT GTGTA CTT−3'
配列番号13:5'−CCAAG GCCCA GCCCT CACAC A−3'
配列番号14:5'−CAGG GACAA ATGCC ACACG GCTCT CACC
A GTGGC TAGTG GTGGG TACTC AATGT GTACT
TTTGG GTTCA CAGAA GCACA GCACC CAGGG−3'
配列番号15:5'−CCACT GGATT TAAGC AGAGT TCAA−3'
配列番号16:5'−TCCAA CGAGC GGCTT CAC−3'
配列番号17:5'−CAGCG GCCAG TAGCA TCTGA CTTTG A−3'
の通りであった。
【0072】
データ解析
PCR産物の量を、各遺伝子に対する標準曲線を用いて求めた。つまり、TaqManの結果に、希釈係数(×40:80μLのcDNAのうち2μLをPCRに用い、×1.67:30μLのcDNAを1ウェル当たり50μLの溶解緩衝液から合成した)を掛けた。回収されたスパイクRNAをスパイクRNAの所定の量(通常は1つのウェル当たり107コピー)で割ることにより、各試料におけるスパイクRNAの回収率をさらに求めた。CD4mRNAに関しては、TaqManの結果に希釈係数を掛け、血量で割り、同じ試料中のスパイクRNAの回収率で割った。各血液試料をフィルタープレートの3ウェル(3連)に添加し、各遺伝子の1本鎖cDNA及び1本鎖PCR産物が各ウェルに生成された。
【0073】
アッセイの妥当性
ハイブリダイゼーションの動態を図13Aに示し、ハイブリダイゼーションは室温で2時間後にプラトーに達した。血液用量の依存性を図13Bに示し、CD4mRNAは0.05μLで検出され、対数スケールで最大200μLまで直線的に増加した。本発明者等は、ハイブリダイゼーション効率が15℃と25℃との間で劇的に変わったことも見出した(図13C)。図13Dに示されるように、CD4mRNAはヘパリンで処理された血液中で非常に安定であり、37℃では7時間まで又は4℃では一晩ほとんど変化しなかった。このことから、CD4は全血中の遺伝子発現解析に対して優れた対照であり得ることが示唆される。図13の結果は遺伝子数の平均値±標準偏差として表示された。閾値サイクル(Ct)のCVが1〜2%未満であったが、対数スケールから直線スケールへの変換によって、Ctが遺伝子数に換算された場合にCVはかなり増加した。しかし、図13に示されるように、出発材料が全血であった場合でも、CVは、10〜30%と低かった。
【0074】
定量化
本研究における定量の目的は、スパイク対照RNAを用いることにより、各試料の総アッセイ効率を求めることであるが、このスパイク対照RNAは元の試料中の標的mRNAの明確な量を計算するための基準としてさらに使用される。この原理は、RNAの回収が用量非依存的であり、且つその回収は種非依存的であるという2つの前提を含んでいる。つまり、回収率はmRNAのコピー数の多少にかかわらず一致し、また異なる配列間でも一致していなければならない。このような前提は、mRNA精製過程だけでなく、mRNAの定量化、すなわち細胞溶解からPCRまでのプロセス全てに当てはまる。最初の前提を確証するために、50μLの血液を添加した場合に様々な量の合成ポリ(A)+対照RNAを溶解緩衝液に添加し、Leukosorb膜に張り付けた(expose)。対照RNAがヒト血液だけからは増幅されなかったことを本発明者等が確認した後、対照RNAの回収率をTaqManアッセイで測定した。図14Aに示されるように、対照RNAの用量依存的回収が105〜109コピー/ウェルの試験範囲で観察された。同じデータを回収率に換算したところ、これらの値はほぼ20%と同様になった(図14B)。図14A及び図14Bのデータは、mRNA精製及びcDNA合成を含む全プロセスの要約であった。ハイブリダイゼーションの平衡条件のもと、解離定数(Kd)を以下のように計算した。
【0075】
Kd=[RNA]×[オリゴ−dT]/[RNA:オリゴ−dT];ここで[RNA]及
び[オリゴ−dT]は、RNA及びオリゴ−dT、それぞれの非結合状態の濃度を表し、且つ[RNA:オリゴ−dT]はオリゴ−dTとハイブリダイズしたRNAの濃度を表す。これは、[RNA:オリゴ−dT]は添加されるRNAの量によって変化することを意味する。実際、ハイブリダイズしたRNAをYoyo−1核酸色素で測定した時、[RNA:オリゴ−dT]は添加されたRNAの量に比例して増加した(Miura, Y., Ichikawa,
Y., T., Ogura, M.,deFries, R., Shimada, H., & Mitsuhashi, M. マイクロタイタープレート上での固定化オリゴ(dT)を用いた全mRNAの蛍光光度測定 Clin Chem. 42, 1758-64 (1996))しかし、図14Bに示される対照RNAが各ウェルにおいて全mRNAの非常に小さな画分であるため、対照RNAはこの範囲のKd値に事実上影響を与えてはいない。プライマーがcDNA合成の過程に含まれた場合、本発明者等は種内及び種間の再現性の問題にぶつかる。しかし、ハイブリダイゼーションの間にプライマーを加えることで再現性が向上し、プライマー配列が異なる場合でもハイブリダイズされる前のプライマーからcDNAが同様に合成されることが示唆される。回収率それ自体は試料中のmRNAの量に依存して個体間で変わることもあるが、図14A及び図14Bに示すように或る濃度における回収率は同じ試料内での他の濃度に対しても当てはめることができる。
【0076】
2つ目の前提、すなわち回収率が種非依存的であることを検証するために、3つの合成ポリ(A)+RNAを入れて、溶解緩衝液のオリゴ−dAによりハイブリダイゼーションを競合阻害させた。図14Bに示されるように、本発明者等は異なる量のRNAを意図的に使用したため、3つのスパイクRNA間、並びに標的ネイティブCD4mRNA間で回収されたRNAの量が変わった。しかし、RNA全てが、3×1012〜1015コピー/ウェルでオリゴ−dAにより阻害された(図14C)。興味深いことに、同じデータを合計割合に変換した場合、4つのRNA全てがほぼ3×1012コピー/ウェルのIC50と非常に類似した阻害曲線を示した(図14D)。このことから、本発明者等のシステムによるmRNAの精製は、ポリ(A)特異的、且つ配列非依存的であることが示唆される。図14Cに示されるように、1015コピーのオリゴ−dAが添加された後でも、多少の非特異的な活性が残ったままである。しかし、図14Dに示されるように、この非特異的な活性は総活性の5%に過ぎなかった。このように、非ポリ(A)配列はこのアッセイに重要な役割を果たしていないと思われる。図14B及び図14Cは、mRNA定量の全プロセスの要約であったため、これらのグラフは、配列が異なっていても標的遺伝子のアッセイ効率がスパイク合成RNAのアッセイ効率と一致することを示唆する。また、このことから、TaqManアッセイにより得られた値を各試料のスパイク対照RNAの単一用量の回収率で割ることにより、明確な量の標的mRNAが求められ得ることも示している。
【0077】
図13及び図14に示されるように、アッセイ内変動はおよそ10〜20%であった。アッセイ間の変動を査定するために、同じ個体からの新鮮血又は凍結血に加えて、一定分量の同じ凍結血を用いることにより7つの異なる実験を行った。各実験では、異なるフィルタープレート及びGenePlateを用いて、新鮮な材料を、溶解、cDNA合成及びPCR用に調製した。以下の表IIIに示されるように、対照RNAの回収率は4〜29%であった。本発明者らが、対照RNA回収率を考慮せずにCD4の量を比較した場合、これらの値は大きく変動した。しかし、各試料の回収率を調整した後、その値はアッセイ間のCVの7〜14%と非常に類似していた。
【0078】
【表3】
【0079】
図13A〜図13Dは、アッセイの妥当性を示す。TaqManアッセイを、ヘパリンで処理した50μLのヒト全血由来のcDNA(図13A、図13B、図13D)又は合成対照RNA(図13C)で行った。図13Aは、ハイブリダイゼーションの動態を示す。血液一定分量を−80℃で凍結した。同一の血液一定分量を異なる時間で解凍し、フィルタープレートに添加し、室温で30〜270分間の長さでハイブリダイゼーションを行った。図13Bは用量反応を示す。血液をPBSで10倍、100倍及び1,000倍に希釈し、50〜200μLの試料をフィルタープレートに添加した。図13Cはハイブリダイゼーション温度を示す。ハイブリダイゼーションは、4℃、15℃、25℃及び37℃で2時間行った。図13Dは、ヘパリンで処理した全血の安定性を示す。血液試料を様々な時間長で4℃又は37℃にて保存した後、各試料を別個に凍結した。試料を同時に解凍し、フィルタープレートに添加した。そのデータを平均値±標準偏差として表示した。
【0080】
図14A〜図14Dは、合成スパイクRNAの回収率を表す。図14A及び図14Bでは、0〜1010コピーのRNA34が各ウェルに添加された。mRNA精製及びcDNA合成を行った後、対照RNAの量をTaqManPCRで測定した。図14Aは、回収された対照RNAの量(コピー数)対添加された対照RNAの量を示す。図14Bは、回収率を示し、これは以下のように計算された。
【0081】
回収率=回収された対照RNAの量/添加された対照RNAの量×100
【0082】
図14C及び図14Dは、オリゴ−dAが存在する中での回収率を示す。50μLのヘパリンで処理した血液をLeukosorbフィルタープレートに添加した後、様々な量の対照RNA34(□)、対照RNA36(○)、及び対照bcr−abl(△)を含有する溶解緩衝液を0〜1015コピーのオリゴ−dA20とともに各ウェルに添加した。mRNA精製及びcDNA合成の後、対照RNAの量をTaqManPCRで測定した。図14Cは、回収されたRNAの量(コピー数)対オリゴ−dA20の量を示す。図14Dでは、合計割合を以下のように計算した。
【0083】
合計割合=オリゴ−dA20存在下での回収されたRNAの量/オリゴ−dA20非存在下での回収されたRNAの量×100
【0084】
<実施例6>
50μLのヘパリンで処理したヒト血液を、Leukosorb膜の4つの層を取り付けたフィルタープレートに添加した。血液を真空吸引して、150μLの5mMのTris、pH7.4で12回洗浄した。次にフィルタープレートをGenePlateに配置し、溶解緩衝液(CD4に関するアンチセンスプライマーありで又はなしで)40μLを各ウェルに添加した。遠心分離により、細胞溶解物をフィルタープレートからGenePlateに移した。このプロセスを、溶解緩衝液40μLを用いて1回反復した。GenePlateを室温で2時間インキュベートした後、各ウェルを溶解緩衝液100μLで3回洗浄し、その後、洗浄緩衝液150μLを3回添加した。cDNA合成緩衝液及び適切な酵素を添加することにより、GenePlateの各ウェル中でcDNAを合成した。37℃で2時間インキュベーション後、各ウェルを95℃の水150μLで3回洗浄した。次に、TaqManリアルタイムPCRにより、GenePlate中でCD4mRNAを検出した。
【0085】
オリゴ(dT)が特異的プライム化(NNNNによる)cDNAを置換するという仮説を実証するために、特異的プライマーを用いた場合又は用いない場合で、GenePlate中でcDNAを合成した。次にCD4遺伝子を、GenePlateから直接増幅した。図17に示されるように、両試料からCD4を増幅した。これは、上流cDNAが固
定化オリゴ(dT)由来cDNAから置換される、ということを示唆する。
【0086】
<実施例7>
全体的スキーム
図18Aに示されるように、全血をフィルタープレートに添加して、白血球を捕捉した(I)。フィルタープレートをリン酸緩衝生理食塩水(PBS、インビトロジェン株式会社)で洗浄後、赤血球及び血漿構成成分を除去する。このプロセスは、末梢血単核球(PBMC)の慣用的密度勾配分離の場合より簡単且つ高効率である。図18B(標準RNA(○)、CD4(●)、p21(黒三角)、FasL(◆)及びロイコトリエンC4合成酵素mRNA(LTC4S)(黒四角))に示すように、フィルタープレートのハイブリダイゼーション性能は、密度勾配法の場合よりわずかに良好であった。ロイコトリエンC4合成酵素(LTC4S)mRNAのレベルは、おそらくは顆粒球集団の排除のため、PBMC中で有意に低かった。しかし、p21 mRNAは、非常に長い分離プロセス中の二次誘導のため、PBMC中では有意により高かった(図22)。全血を遠心分離し、ペレットを低張溶液(10mMのKHCO3、15mMのNH4Cl、0.14mMのEDTA、pH7.2)中に懸濁して、赤血球を破裂させて、その後、即時遠心分離して、白血球を沈降させる別の方法を比較した(図18B:低張)。しかし、CD4、p21、FasL及びLTC4Sのレベルは全て、フィルタープレート法のレベルより低かった。
【0087】
図18A(II)に示されるように、次の過程は、フィルタープレートに溶解緩衝液を添加すること、及びmRNA精製のためにオリゴ(dT)固定化マイクロプレートに溶解物を移すことであった。このプロセスを評価するために、3つのその他の方法を比較用に用いた。フェノール/グアニジンイソシアネート(トリゾール、インビトロジェン株式会社)(図18C:P/GI)又はキット供給溶解緩衝液(RNeasy、キアゲン社(Qiagen))(図18C:シリカ)をフィルタープレートの各ウェルに添加し、その後、製品の使用説明書に従って、RNA(P/GI)を沈降させるか、又はスピンカラム(シリカ)からRNAを溶離した。ポリ(A)+RNAの直接精製のため、溶解緩衝液をフィルタープレートに添加し、そして溶解物をオリゴ(dT)固定化マイクロプレート(GenePlate、アールエヌエーチャー社)(図18C:dT MP)又はオリゴ(dT)セルロースを含有する真新しいマイクロチューブ(インビトロジェン株式会社)(図18C:dT C)に移した。P/GI、シリカ及びdT C法は、大量の単離PBMCをマイクロチューブ中で用いた場合、十分な性能を示したが、これらの方法は、50μLのみの血液を用いたフィルタープレート系に関しては、良好に作用しなかった(図18C)。さらに、細胞ペレットを管中で溶解する場合、機械強度(ボルテックス又はピペッティング)の程度はmRNAを放出するために重要であり、このプロセスが実質的変動を作り出す。しかし、フィルタープレート法を用いた場合、細胞は膜内に分散し、そして溶解緩衝液の添加は、いかなる付加的な機械力を必要とせずに作用するのに十分であった。
【0088】
溶解緩衝液は好ましくはプライマーの混合物を含有するため、2つの個々のハイブリダイゼーション反応が同時的に起こった(図18A)。1つは、固定化オリゴ(dT)及びmRNAのポリ(A)テール間で起きた。他方のハイブリダイゼーション反応は、特異的プライマーとmRNA中の適切な部位との間で起こった(図18A(II))。特異的プライマーの設計は重要であるが、十分なハイブリダイゼーション時間は、cDNA合成中の十分なプライマーハイブリダイゼーションの時間よりもアッセイをより再現可能にした。一見すると固定化オリゴ(dT)とのハイブリダイゼーションを介して固体表面に留められたcDNA−mRNA二重鎖のように見えた(図18A(II))。したがって95℃で5分間加熱することにより、cDNAを固体表面から除去した。しかし増幅された遺伝子の量は非加熱の対照の遺伝子の量に変化しなかった(図18D、挿入図)。cDNA−mRNA二重鎖が固体表面から何らかの形で除去されたか否かを試験するために、マイクロプレートをcDNA合成後に何度も水で洗浄し、そのままPCRに用いた。しかし、
ハイブリダイゼーション過程中に特異的プライマーを用いて又は用いずに、マイクロプレートから標的遺伝子を増幅することに成功した(図18D)。これらのデータは、特異的プライマー−プライマー化cDNAをオリゴ(dT)−プライマー化cDNAで置換し得る、ということを示唆する(図18A(III、IV))。これは、本系にとって好都合であるが、それは、溶液中のcDNAを遺伝子定量のために用いるからであり、マイクロプレートそれ自体は、検証、貯蔵及び将来の使用のためのcDNAバンクとして用い得るからである。
【0089】
溶解中及びその後のハイブリダイゼーションプロセス中のRNA安定性を確証するために、等量の標準RNAを含有する種々の濃度の溶解緩衝液を水又は濃縮好酸球抽出物で希釈した。図18Eに示されるように、好酸球抽出物それ自体は、それが洗浄緩衝液(10mMのTris、pH7.4、1mMのEDTA、0.5MのNaCl)を用いて懸濁された場合、標準RNA定量を大幅に無効にしたが、この場合、ハイブリダイゼーションの厳密性は大多数の溶解緩衝液構成成分なしで保持された。しかし好酸球抽出物を溶解緩衝液中に懸濁した場合、RNAは保持され、そして水希釈液の場合と同様であった(図18E)。広範囲の最適溶解緩衝液濃度(70〜120%)は、この系を強固で且つ再現可能にした。140%より高い溶解緩衝液濃度は、アッセイ能を有意に低減した。
【0090】
アッセイ最適化
図19A〜図19Fに示されるように(標準RNA(○)、CD4(●)、p21(黒三角)、FasL(◆)及びロイコトリエンC4合成酵素mRNA(LTC4S)(黒四角))、5つの異なる標的RNAの間で等しい実績を示す最適な再現可能条件を同定するために、試験を実行した。再現可能条件は、その後の遺伝子定量の段階にとって重要である。図19中の各データ点は、一定分量の同一血液三種(各々50μL)について単一の標準的実験を行った結果の平均±標準偏差(s.d.)である。しかし少なくとも2〜3回、各実験を再現した。まず3つの代表的抗血液凝固剤を試験した。ヘパリンはACD及びEDTAよりわずかに良好な性能を示したが、3つの抗血液凝固剤は全て許容可能である(図19A)。ACD及びEDTAは、多数の生理活性に関する重要な構成成分であるカルシウムをキレート化するため、全血がin vitroでの刺激のために用いられるこのプロジェクトにおいて、ヘパリンが抗血液凝固剤として選択された(図22)。
【0091】
血液採取後の全血の安定性の保持は、最重要関心事である。したがっていくつかの市販されている系(PAX遺伝子、プレアナリティックス社(PreAnalytix))は、血液が直ちに溶解され、放出されたRNAが比較的長期間にわたって安定化されるという特別な血液容器を用いる。しかし大容量の溶解物の操作は、系全体を問題の多いものにする。さらに、このプロジェクトの目標の1つがinvitroでの遺伝子誘導プロセスの前及び後のmRNAを定量することであるため(図22A〜図22H)、ヘパリン処理全血を4℃で保存し、mRNAレベルにおける変化を調べた。4つのネイティブ遺伝子(CD4、p21、FasL及びLTC4S)のレベルは血液採取後に安定でなかったが、このレベルは、血液を4℃で保存した場合はいつでも、2時間後に安定且つ一定になった(図19B)。
【0092】
オリゴ(dT)固体表面を用いたポリ(A)+mRNA調製は、通常は室温で実行される。しかし性能は20〜30℃の間で変化する(図19C)。短い合成RNAを用いた場合、20〜23℃間の差は有意であった(図19C)。したがってmRNA調製過程を4℃で実行した。ハイブリダイゼーションの長さも重大であった。いくつかのRNA(標準RNA及びFasL)は、2時間後にプラトーに達したが、一方、他のものは安定化するのに4〜8時間より長い時間を要した(図19D)。その結果、mRNA調製過程を4℃で一晩実行した。この条件に切り替えることにより、アッセイ間の変動を実質的に改良した。
【0093】
いかなる追加的プライマーも用いずに、cDNAを合成した(図18D)。短い合成RNA及び豊富なRNA(CD4)は少量の逆転写酵素しか要しなかったが、その他のRNA片は、プラトーに達するのに約100単位のMMLV逆転写酵素を要した(図19E)。興味深いことに、RNA分解酵素H-MMLV(Superscript、インビトロジェン株式会社)は、この系におけるネイティブMMLVと比較して、不十分な性能を示した。37℃で90分より長いインキュベーションは、試験した全てのRNA種に関して十分であった(データは示されていない)。
【0094】
その後のTaqManリアルタイムPCRに、溶液中のcDNAをそのまま用いた。アッセイは、PCRに移されるcDNAの量に比例して鋭敏になる。市販の緩衝液は、PCRを阻害するジチオトレイトール(DTT)を含有する。したがって図19Fに示されるように、最大cDNA容積は、PCR10μL当たり2μLであった。緩衝液からDTTを除去することにより、cDNAの容積はPCR10μL当たり4μLに増大した。
【0095】
定量
この研究の定量過程における目標は、既知量のスパイク標準RNA(これは、PCR結果を元の試料中の標的mRNAの量に変換するための基準としてさらに用いられる)を用いることにより、各試料における総アッセイ効率を確定することであった。原理は、以下の2つの前提に依存している:効率は、種々の存在量を有する類似するmRNAの試料間で同一であること(用量非依存性);及び効率は、異なるmRNA配列間で同一であること(配列非依存性)。第一の前提を確証するために、異なる量の合成RNA標準を溶解緩衝液に添加し、これを、50μLの血液を含有するフィルタープレートにさらした。標準RNAがヒト血液単独から増幅されなかったことを実証した後に、TaqManPCRにより標準RNAの回収率を確定した。図20Aに示されるように(標準RNA(○)、CD4(●)、p21(黒三角)、FasL(◆)及びロイコトリエンC4合成酵素mRNA(LTC4S)(黒四角))、標準RNAの用量依存性回収率を、104〜109分子ウェルの試験範囲で観察した。この範囲の標準RNAは50μLの血液中に存在する総mRNAの量と比較して十分に小さかったため、4つの他のネイティブmRNAのレベルは変わらないままであった(図20A)。同一データを回収率に変換した場合、これらの値は全て、約2〜3%で同様になった(図20B)。ハイブリダイゼーションの平衡条件下で、解離定数(Kd)を以下のように算定した:
Kd=[RNA]×[オリゴ(dT)]/[RNA:オリゴ(dT)]
(式中、[RNA]及び[オリゴ(dT)]はそれぞれ非結合状態のRNA及びオリゴ(dT)の濃度を表し、そして[RNA:オリゴ(dT)]はオリゴ(dT)とハイブリダイズしたRNAの濃度を表す)。これは、Kdがこの系において一定値として保持され、そして[RNA:オリゴ(dT)]は添加RNAの量によって変わる、ということを意味する(図20A)。実際、ハイブリダイズした全RNAをYoyo−1核酸色素により直接測定した場合、[RNA:オリゴ(dT)]は添加RNAの量に比例して増大した。これらのデータは、標準RNAの一濃度由来の回収率が、同一試料内のmRNAの任意の濃度に適用可能であり得る、ということも示唆する。
【0096】
第二の仮定に関しては、競合的阻害剤としてオリゴ(dA)を用いて、又は用いずに、ハイブリダイゼーションを実行した。図20Cに示されるように、5つの標的RNA全てのCt値は、1ウェル当たり3×1012分子より多い量でのオリゴ(dA)により有意に抑制されたが、これらのRNAの発現レベルは全て異なった。興味深いことに、同一データを抑制率に換算した場合、5つのRNAは全て、ほとんど同一の抑制曲線を示し、IC50は1ウェル当たり約3×1012〜1013分子であった(図20D)。これは、該系がポリ(A)特異的であり、且つ配列非依存性である、ということを示す。図20Cに示されるように、1015分子のオリゴ(dA)を添加した後でさえ、多少の非特異的活性が残存
した(標準RNA及びCD4)。しかし、図20Dに示されるように、Ct値(対数スケール)を分子数(直線スケール)に変換した場合、これらの非特異的活性は極わずかであった。したがって非ポリ(A)配列は、この系において主要な役割を持たないと考えられる。図20A〜図20DはmRNA定量の全プロセスの要約であったため、これらのデータは、任意の標的遺伝子の総アッセイ効率がスパイク標準RNAの場合と同一である、ということを示唆する。これは、実質的変動は慣用的総RNA精製方法において長RNAと短RNAとの間に存在するため、ポリ(A)+RNAに独特である(データは示されていない)。
【0097】
次の過程は、各ウェル中のRNAの量を血液1μL当たりのRNA量に換算することであった。図20Eに示されるように、4つのネイティブmRNAのCt値は、添加された血液の容積に応じて、ほぼ直線状に低減した。CD4のような十分なmRNAは、0.001μLの血液(1:105希釈液、100μL/ウェル)からでさえ検出可能であった(図20E)。溶解緩衝液中の標準RNAの量は同一であったため、血液容積が広範に変化した場合でも、標準RNAの回収率は変わらなかった(図20E)。Ct値は1ウェル当たり100μLより多い血液でプラトーに達した(図20E)が、これは、フィルタープレートからの白血球の漏出増大を示唆する。一旦同一データが血液1μL当たりの量に換算されると、該値は1ウェル当たり3〜50μLの血液で一貫しており(図20F)、これは4つのネイティブmRNA全てに関して言えることであった(図20F)。
【0098】
定量は、2つの個々の絶対値も頼っている:即ち、添加される標準RNAの量と、TaqManPCRにおける標準DNA鋳型の量である。標準RNA産物の純度を保証するために、RNAオリゴヌクレオチドをこのプロジェクトに用いた。100塩基長の長さを有するRNAオリゴヌクレオチドの合成は達成が困難であり得るが、RNAオリゴヌクレオチドは2つのプライマー部位、即ちTaqManプローブ部位及びポリ(A)テールを含むことが好ましいため、このような長さが望ましい。本発明の試験における合成RNAは、HPLC分析により86%の純度で、ダーマコン社(Dharmacon)により合成された。増幅曲線の勾配(PCR効率を示す)はオリゴヌクレオチドとcDNAとの間で同一であったため、HPLC精製DNAオリゴヌクレオチドも、TaqManPCRのための鋳型として用いた。1ウェル当たり106〜10分子のオリゴヌクレオチドを用いて、標準曲線を作成した。ストック溶液のμM濃度の106〜1012倍希釈中に、問題が発生した。TE又は水を希釈液として用いた場合、標準曲線は広範に、特に1ウェル当たり103分子未満で変化した。0.1%Tween20を含有するヌクレアーゼ無含有水に切り替えた後、この問題は完全に排除された。
【0099】
正常値の確定
健常被験者における血液1μL当たりのmRNAの対照値を確定するために、CD4、p21、FasL及びLTC4Sのレベルを、15の異なる実験により、2ヵ月にわたって52個体(54データ点。1個体は3回反復)から測定した。50μLの全血の3つの分割単位から、各データ点を得た。図21Aに示されるように、標準RNAの回収率は3.56±0.49%(CV=13.7%)であった。このCV値は従来の免疫測定法比べて非常に大きいが、それは、1サイクルの差によって生成物量が2倍(doubling)異なるPCRを用いるため、許容可能である。標準RNA回収率の値を用いて、各mRNAのデータを、ピコモル又はフェムトモルという分子数ではなく、血液1μL当たりの分子数に換算することに成功した。
【0100】
図21B〜図21Eに示されるように(標準RNA(○)、CD4(●)、p21(黒三角)、FasL(◆)及びロイコトリエンC4合成酵素mRNA(LTC4S)(黒四角))、CD4、p21、FasL及びLTC4SのmRNAの対照値は、それぞれ血液1μL当たり100,772±59,184(CV=58.7%)、1,692±858
(CV=50.7%)、17,841±12,190(CV=68.3%)及び42,058±22,521(CV=53.5%)分子であった。50%CVは、正常値がTaqManPCRにおける1つのCt内に存在する、ということを意味する。興味深いことに、平均±1s.d.値を各図でぼかし模様を入れた場合、いくつかの個体は高い値を表した(図21B〜図21E)。高いFasL mRNAレベルを示した一個体を、3回再現した(図21D)。低CV値と組合せたmRNAの正常値の確定、及び本発明の好ましい実施形態により得られる標準化は、当業者に既知の種々の疾患の検出のためのアッセイに用いられ得る。
【0101】
in vitro応答性
モデル系としてのホルボール12−ミリステート13−アセテート(PMA)及びカルシウムイオノフォアA23187(CaI)(株式会社シグマ)に対する白血球応答性を査定するために、p21及びFasL mRNAのレベルを定量した(図22)。他の好ましい実施形態では、種々の生理活性因子、例えば放射線、紫外線、酸化的ストレス、オゾン、温度、機械的ストレス、化学物質、ペプチド、ホルモン、タンパク質、抗原、抗体、薬剤、小分子化合物、毒性物質、環境性刺激、細胞間連絡、感染性作因及びアレルゲン(これらに限定されない)による刺激に応答して、種々の型のmRNAを分析し得る。該系は、人工溶液中の単離白血球懸濁液というよりむしろヘパリン処理全血を用いたため、結果は、生理学的に正確な条件を反映した。図22Aに示されるように、p21及びFasLのmRNAレベルはともに、PMA及びCaIの刺激時に急速に増大し、そして約10倍増を伴って、90〜120分後にプラトーに達した。p21における増大は、FasLの場合よりもはるかに速かった(図22A)。p21のレベルはいかなる刺激もなしに37℃でのインキュベーションによってもわずかに増大されたが、一方、FasLは変化しないままであった(図22A)。興味深いことに、ヘパリン処理全血を4℃で21時間保存した場合でも、応答性は保存され(図22B)、このことは機能的分子分析時に大きな柔軟性を提供する。
【0102】
mRNA発現の増加又は低下を分析する際に、倍増は一般的に用いられるパラメーターである。しかし図22C〜図22Dに示されるように、PMA−CaI刺激後に誘導されるp21及びFasLのmRNAの量は、mRNAの基本レベルの量に応じて、直線的に増大した。したがって倍増測定は、試料が正常集団とかけ離れた2つ以上の標準偏差を示した場合(図22C)でも、回帰線上に存在する異常試料を同定することはできなかった(図22G)。倍増測定は、回帰線(図22D)から離れて存在する異常試料を同定した(図22H)。図22C〜図22Dの二次元グラフは、両方の場合において、通常試料と異常試料を明確に区別した。図22C〜図22Hにおいて、各データ点は、三回の測定の平均である。グラフを単純にするために、標準偏差は示さなかった。しかし、X及びY軸の両方における平均±2s.d.を有するぼかし模様域(図22C〜図22D)が上左及び下右隅にオープンスペースを含有するため、これらの隅に位置する異常試料は同定が困難であった。回帰線に対してX軸を回転させることにより(図22E〜図22F)、ぼかし模様域のサイズを最小化した。これらのグラフ(図22E〜図22F)は、正常集団外の異常試料を検出するためのより良好な方法を提供する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、全血からのmRNAの高効率な単離及び定量に関する。より詳しくは、本発明はオリゴ(dT)固定化マルチウェルプレートに取り付けられた白血球フィルターの組み合わせを用いて、mRNAを単離及び増幅するための方法及び装置に関する。
【0002】
本出願は、2003年4月24日付けで英語で出願され、且つ英語で公開されるものと思われる国際出願第PCTUS03/12895号の一部継続である、2003年10月30日付けで出願された米国特許出願第10/698,967号の一部継続であり、2002年4月24日付けで出願された仮出願第60/375,472号の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0003】
分子生物学の分野の研究により、細胞の遺伝的発生起源及び機能活性が、そのリボ核酸(RNA)の研究から推論され得ることが明らかになった。この情報は、感染を診断するため、癌遺伝子発現細胞の存在を検出するため、家族性障害を発見するため、宿主の防御機構の状態をモニターするため、及びHLA型又は他のマーカーの実体を調べるため、診療上有効に用いられ得る。RNAは、3種類の機能的に異なる形態:リボソームRNA(rRNA)、トランスファーRNA(tRNA)及びメッセンジャーRNA(mRNA)で存在する。安定なrRNA及びtRNAは、翻訳の触媒プロセスに関与し、mRNA分子は遺伝情報を伝達する。全RNAのわずか約1〜5%がmRNAで、約15%がtRNAで、及び約80%がrRNAで構成される。
【0004】
mRNAは、特に遺伝子のアップレギュレーション又はダウンレギュレーションを定量的に観察するために使用される場合は、重要な診断用ツールとなる。ヒト末梢血は、mRNAを解析するための優れた臨床材料である。例えば、血中における特定のキメラmRNAの検出は、異常細胞が存在することを示し、慢性骨髄性白血病(CML)の分子診断に使用される(非特許文献1及び2)。癌特異的mRNAを測定することにより、微小転移癌細胞も血中において検出することができる。癌特異的mRNAとしては、大腸癌に対する癌胎児性抗原(CEA)、前立腺癌に対する前立腺特異的抗原(PSA)、甲状腺癌に対するサイログロブリン(非特許文献3)、及び黒色腫に対するチロシナーゼ(非特許文献4)等を挙げることができる。さらに、これらの癌特異的mRNAのレベルは治療後に変化し得るため、特異的mRNAの定量は治療の追跡調査の際の有用な指標を提供する。
【0005】
血液は、白血球(およそ5000白血球/μL)に比べて無核赤血球(およそ500万細胞/μL)を大量に含むため、通常はmRNA解析の第1段階として、全血からの顆粒球又はリンパ球の単離が行われる。しかし、異なる試料間で白血球の特定のサブセットの回収が一致しないため、単離白血球の数は各試料について測定され、その測定結果は、血液1μL当たりのmRNA量としてではなく、白血球数当たりのmRNA量として表される。さらに、mRNA量は、長い単離プロセスの間に変化し得る。血液から癌細胞を単離するための方法は存在しないが、遺伝子増幅技術により、異なる遺伝子から成るプールからであっても特異的mRNAレベルの同定及び定量することが可能であるので、遺伝子特異的プライマー及び遺伝子特異的プローブが入手可能な場合には、全血はmRNA解析用の理想的な材料となる。
【0006】
科学界は、標準化の欠如のため、遺伝子発現分析における研究機関間及び実験間の変動という極めて大きい問題に直面している。近年の遺伝子増幅技術は絶対量の鋳型DNAを
供給しているが、各試料におけるRNA回収率及びcDNA合成効率の情報が欠如しているために、これらの値は元の材料中の遺伝子の量に換算することができない。総RNAはしばしば、mRNA定量のための標準化マーカーとして用いられ、その定量結果は通常総RNA量1μg当たりの遺伝子の量として表される。しかし、mRNAの割合は総RNAの1〜5%に過ぎず、総RNAの量が同一である場合であってもmRNA容量は変化するので、総RNA量はmRNA量を表わさない、ということが強調されねばならない。総RNA又はmRNAの収率も、用いられる方法によって大きく変化する。一旦RNAが抽出されると次の過程はcDNAの合成であるが、各実験において各々のRNA鋳型がcDNAの単一コピーを作製するか否かを現行方法は示唆していないため、この過程自体が不確実性を生じさせる可能性を持つ。このような問題を回避するために、標的遺伝子のデータを、ハウスキーピング遺伝子又はrRNAのデータと比較することによる相対的定量が広く使われている。しかし対照遺伝子の量は通常一貫せず、実験中に変わる可能性がある。さらに、各臨床検体が通常異なる時点で分析されるため、この変動は臨床的診断に重大な問題を提示する。
【0007】
全血はRNA分解酵素(顆粒球由来)及び無核赤血球を大量に含むため、全血から純粋なmRNAを単離することは非常に困難である。種々のRNA抽出法を全血に適用することができるが(非特許文献5〜7)、そのアッセイ手順は多大な労力を要し、数回の遠心分離が必要であり、リボヌクレアーゼ活性を失活させるために不可欠な慎重な取り扱いを伴う。
【0008】
従って、全血から大量のmRNAを単離及び定量するための、迅速且つ容易な方法及び装置が必要とされている。具体的には、回収の再現性を有し、途切れることなく遺伝子増幅へ移行するプロセスを有する、全血由来のmRNAを高効率に処理する技術が必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Kawasaki E.S., Clark S.S., Coyne M.Y., Smith S.D.,Champlin R ., Witte O.N., 及び McCormick F.P., 1988. in vitroで増幅された白血病 特異的mRNA配列の検出による慢性骨髄性白血病及び急性リンパ性白血病の診断 Pro c. Natl. Acad. Sci. USA 85:5698-5702
【非特許文献2】Pachmann K., Zhao S., Schenk T., Kantarjian H., El-Naggar A.K. , Siciliano M.J., Guo J.Q., Arlinghaus R.B., 及びAndreeff M. 2001. in si tu増幅により測定された個々の慢性骨髄性白血病細胞のbcr−able mRNA の発現 Br. J. Haematol. 112:749-59
【非特許文献3】Wingo S.T., Ringel M.D., Anderson J.S., Patel A.D., Lukes Y.D. , Djuh Y.Y., Solomon B., Nicholson D., Balducci-Silano P.L., Levine M.A., Fran cis G. L. 及びTuttle R.M. 1999. 健常被験体の末梢血中のサイログロブリンmRNA の定量的逆転写PCR測定 Clin. Chem. 45:785-89
【非特許文献4】Pelkey T. J., Frierson H.F. Jr. 及びBruns D.E. 1996 固形腫瘍由 来の循環腫瘍細胞及び微小転移の分子的及び免疫学的検出 Clin. Chem. 42:1369-81
【非特許文献5】de Vries T.J., Fourkour A., Punt C.J., Ruiter D.J. 及びvan Mu ijen G.N. 2000. 細胞調製チューブでの単核細胞回収後のチロシナーゼ及びMART− 1の逆転写ポリメラーゼ連鎖反応による末梢血中の黒色腫細胞の解析:全血グアニジニ ウムイソチオシアネートRNA単離法との比較 Melanoma Research 10:119-26
【非特許文献6】Johansson M., Pisa E.K., Tormanen V., Arstrand K. 及びKagedal Bl. 2000. 血中のチロシナーゼ転写物の定量解析 Clin. Chem. 46:921-27
【非特許文献7】Wingo S.T., Ringel M.D., Anderson J.S., Patel A.D., Lukes Y.D., Djuh Y.Y., Solomon B., Nicholson D., Balducci-Silano P. L., Levine M.A., Francis G.L. 及びTuttle R.M. 1999. 健常被験体の末梢血中のサイログロブリンmRNAの定量的逆転写PCR測定 Clin. Chem. 45:785-89
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、オリゴ(dT)固定化マルチウェルプレートに取り付けた白血球フィルターの組み合わせを用いて、回収の再現性を有する、全血から直接mRNAを単離及び定量するための高効率な方法及び装置を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、(a)全血を採取するステップ、(b)赤血球と血液成分とを全血から濾過により除去して、フィルターメンブレン上に白血球を得るステップ、(c)白血球を細胞溶解して、mRNAを含有する溶解物を生成させるステップ、(d)溶解物をオリゴ(dT)固定化プレートに移して、mRNAを捕捉するステップ、及び(e)mRNAを定量するステップを含む、全血中のmRNAを高効率に定量する方法を含む。
【0012】
本方法の好ましい一実施の形態では、白血球を採取する前に全血に抗凝血剤を添加する。捕捉される白血球の収量を増大させるため、複数のフィルターメンブレンを重ね合わせてもよい。フィルターメンブレン上に捕捉された白血球を、溶解緩衝液を用いて溶解し、白血球からmRNAを遊離させる。溶解物をオリゴ(dT)固定化プレートへ移すステップは、遠心分離、真空吸引、正圧を加える、又はエタノール洗浄に続く真空吸引により行われ得る。mRNAは、cDNAを作製すること、及びこのcDNAをPCRで増幅することにより定量される。特に好ましい実施の形態では、mRNAを定量するのにTaqMan PCRを用いて行われる。
【0013】
本発明の別の形態は、普遍的標準としての人工対照RNAの使用を含む。好ましい実施形態では、各試料中の標準RNAの回収率の測定することによって、遺伝子増幅の結果から、全血1μL当たりに存在するmRNAの量を確定することが可能になる。本発明の実施形態は、試料間及び実験間の変動係数を低くする。好ましい実施形態では、RNA回収、cDNA合成及び定量中の変動は最小限にされ得る。標準化対照RNAの使用は、より効率的なアッセイ、定量及び比較試験を可能にする。
【0014】
本発明の別の態様は、全血中のmRNAの高効率定量を実施するための装置であって、(a)複数の試料デリバリーウェル、該ウェルの下部にある白血球捕捉フィルター、及び該フィルターの下部にある、固定化されたオリゴ(dT)を含むmRNA捕捉ゾーンを有するマルチウェルプレート、並びに(b)該フィルタープレートを受容して、プレートとボックスとの間に密閉部を生じるようになっている真空ボックスを備える装置を含む。この装置の好ましい一実施形態では、白血球は、重ね合わせた複数のフィルターメンブレン上に捕捉される。この装置の別の好ましい実施形態では、真空ボックスが真空源を受容するようになっている。この装置の別の好ましい実施形態では、真空ボックスとマルチウェルプレートとの間にマルチウェルサポーターが挿入される。
【0015】
本発明の別の態様は、全血中のmRNAを高効率に定量するための装置、ヘパリン、低張緩衝液及び溶解緩衝液を含むキットを含む。
【0016】
本発明の別の態様は、血液試料、低張緩衝液及び溶解緩衝液を装置に添加するロボット、自動真空吸引装置及び自動遠心分離機、並びに自動PCR機を備える、全血中のmRNAを高効率に定量するための完全に自動化されたシステムを含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、オリゴ(dT)固定化マルチウェルプレートに取り付けた白血球フィルターの組み合わせを用いて、回収の再現性を有する、全血から直接mRNAを単離及び定量するための高効率な方法及び装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】高効率mRNA装置の分解図である。
【図2】白血球フィルター及びオリゴ(dT)固定化フィルターウェルを含む、高効率mRNA装置のマルチウェルプレートを示す図である。
【図3】新鮮血試料及び凍結血試料のフィルタープレート上での白血球捕捉効率を示すグラフである。
【図4】mRNA定量に対する、血液洗浄の回数の効果を示すグラフである。
【図5】mRNA定量に対する、細胞溶解前におけるフィルタープレートの最終処理の効果を示すグラフである。
【図6】溶解緩衝液がRNA分解酵素を阻害する程度を示すグラフである。
【図7】mRNAを定量するための逆転写酵素の最適濃度を示すグラフである。
【図8】mRNAを捕捉するためのPCRにおける、最適cDNA値を示すグラフである。
【図9】本発明のハイブリダイゼーションの動態を示すグラフである。
【図10】1ウェル当たりに使用された全血容量とmRNA定量との直線的な関係を示すグラフである。
【図11】最適グアニジンチオシアネート濃度を示すグラフである。
【図12】最適プロテイナーゼK濃度を示すグラフである。
【図13】アッセイの妥当性を示すグラフである。
【図14】合成スパイクRNAの回収率を示すグラフである。
【図15】特異的アンチセンスプライマー(NNN)及び固定化オリゴ(dT)からのcDNA合成を示す図である。
【図16】変性を伴う場合と伴わない場合の特異的プライム化RNAの回収率を示すグラフである。
【図17】特異的プライマーを用いた場合と用いない場合のRNAの増幅を示すグラフである。
【図18】Aは本発明の典型的mRNA捕捉スキームを示す図である。Bは種々のハイブリダイゼーション性能を示すグラフである。Cは総RNA及びポリ(A)RNAの種々の捕捉方法の効率を示すグラフである。Dは最適なPCRサイクル数を示すグラフである。EはRNAの捕捉のための溶解緩衝液の最適範囲を示すグラフである。
【図19】AはPCRサイクル数対種々の抗血液凝固剤を示すグラフである。BはPCRサイクル数対貯蔵時間を示すグラフである。CはPCRサイクル数対ハイブリダイゼーション温度を示すグラフである。DはPCRサイクル数対ハイブリダイゼーション時間を示すグラフである。EはPCRサイクル数対MMLVの単位を示すグラフである。FはPCRサイクル数対1ウェル当たりのcDNAのμLを示すグラフである。
【図20】Aはスパイク標準RNAに関するCt値を示すグラフである。Bはスパイク標準RNAに関する回収率を示すグラフである。Cは阻害剤dA20に関するCt値を示すグラフである。Dは阻害剤dA20に関する阻害率を示すグラフである。Eは血液1μL当たりのCt値を示すグラフである。Fは血液1μL当たりのmRNA回収率を示すグラフである。
【図21】mRNAの回収率対個々の被験者を示す。Aは種々の被験者間の標準RNAの回収率を示すグラフである。Bは種々の被験者間で回収された血液1μL当たりのCD4mRNA量を示すグラフである。Cは種々の被験者間で回収された血液1μL当たりのp21mRNA量を示すグラフである。Dは種々の被験者間で回収された血液1μL当たりのFasLmRNA量を示すグラフである。Eは種々の被験者間で回収された血液1μL当たりのLTC4SmRNA量を示すグラフである。
【図22】AはPMA及びCaIで刺激したヘパリン処理全血中のin vitroでのp21及びFas LのmRNAのレベルを示すグラフである。BはPMA−CaI刺激前に4℃で21時間保存したヘパリン処理全血中のin vitroでのmRNAのレベルを示すグラフである。C及びDは、基本レベルのmRNAの量に対する、PMA−CaI刺激後に誘導されるmRNAの量を表示して、各試料のin vitro応答性を示すグラフである。E及びFはそれぞれC及びDのグラフの回帰線を回転させてX軸としたグラフである。GはCと同じデータを、試料の倍増測定で表示したグラフである。HはDと同じデータを、試料の倍増測定で表示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[好ましい実施形態の詳細な説明]
本発明は、大容量の未調製の全血の解析を可能にし、白血球のみに由来するmRNAを解析する効率的な手段を提供する。該手段は、rRNA及びtRNAを除去し、mRNAのみを回収することができ、自動化に容易に適合され得る。本発明は、リアルタイムPCRを用いる絶対定量が可能であって、且つ変動係数が20〜25%の範囲の優れた再現性を有する感度の高い定量システムを提供する。さらにまた、本発明は種々の疾患標的に適用することができる(表1)。
【0020】
【表1】
【0021】
本発明は、なんら特定の機械的構造に限定されるものではない。しかし、図1及び図2は、本発明の高効率mRNA定量を実施するための好ましい構造を示す。真空ボックス10が、この構造の基礎を構成する。真空ボックスは、真空吸引に耐え得る充分強い任意の材料で作られたものであり得るが、その材料は使い捨てプラスチック材料が好ましい。真空ボックスは、真空吸引を行なうための真空源12を受容するようになっている。フィルタープラグ14は、真空ボックスの真空吸引装置アダプター内に配置される。真空ボックス10は、マルチウェルフィルタープレート40、又は任意選択でマルチウェルサポーター20とかみ合わせるための縁16を有することが好ましい。マルチウェルサポーター20は、任意選択でマルチウェルフィルタープレート40を支持するように、真空ボックスの上部の内側に設けられる。好ましくはシリコン系ゴム又は他の軟質プラスチックで構成される密封ガスケット30が、マルチウェルサポーターの上面に配置される。密封ガスケットの上部にマルチウェルフィルタープレート40が配置され、フィルタープレートは複数の試料ウェル46、試料デリバリーウェルの下に位置する複数の白血球捕捉フィルター42、及びフィルターの下にあるmRNA捕捉ゾーン44を備える。固定化オリゴ(dT)が、mRNA捕捉ゾーンのウェルに含まれている。
【0022】
好ましい一実施形態は、全血からmRNAを定量するための、簡単で再現性のある高効
率な方法を含む。迅速なプロトコルであるため、採血後のmRNAの副次的な誘発又は分解が最小限に抑えられ、96ウェルのフィルタープレート及びマイクロプレートの使用により、96個の試料を同時処理することができる。手順中の操作が最少であることから、定量の手段としてPCRを用いた場合であっても、試料間の変動が非常に少なく、変動係数(CV)値は30%未満である。
【0023】
一実施形態では、本方法は真空ボックスの作製を含む。好ましい一実施形態では、ポリアクリレートポリマーマトリックス(Red Z、セーフテック社(Safetec))等の血液カプセル封入体を真空ボックスに付加し、血液を固化させる。次いで、マルチウェルサポーターを真空ボックス内に配置する。次いで、シリコン系ゴム又は他の軟質プラスチック製の密封ガスケットをマルチウェルプレートサポーターの上面に配置する。フィルタープラグ(X−6953、60μ FilterPlugHDPE、ポレックスプロダクツグループ(Porex Products Groups))を真空ボックスの真空吸引装置アダプター内に配置する。
【0024】
この実施形態における方法は、フィルタープレートの作製を含む。白血球を捕捉するために、ガラス繊維膜又は白血球フィルターメンブレンのいずれかを使用することができる。マルチウェルフィルタープレートをガラス繊維膜又は白血球フィルターメンブレンを用いて作製することにより、複数の血液検体を同時に処理することができ、アッセイを簡素化することができる。白血球を捕捉するためのフィルターの例は、米国特許第4,925,572号及び同第4,880,548号に記載されており、これらの開示は参照により本明細書に援用される。一般に、繊維表面上への白血球の吸着は白血球を除去する機構であると考えられている。所与の重量の繊維の表面積は、その繊維の直径に反比例する。したがって、使用される繊維の直径が小さい場合、繊維が細いほど、より大きな吸着容量を有することが期待され、さらに所望の有効性を達成するのに必要な、繊維の重量として測定される量はより少ないことが期待される。ポリエステル、ポリアミド及びアクリル系繊維を含む一般に使用されるいくつかの繊維は、グラフト重合するために必要とされるレベルのγ線による分解に対して充分な耐性を有し、且つ利用可能なモノマーが反応できる構造を有するため、放射線グラフト重合するのに適している。PBTは、本発明の製造物の開発に使用されてきた主な樹脂であり、本実施例で使用される樹脂である。しかし、繊維化することができ、且つ1.5マイクロメートル以下の細い繊維から成るマット又は織物を形成することができる他の樹脂も存在し得、濡れの臨界表面張力が必要に応じて最適範囲に調整されているような産物は、フィルタープレートの効率的な製造に適しており、さらに小型の白血球除去装置の製造に適している可能性があることに注意されたい。同様にして、適切に処理されたガラス繊維が、効果的な装置を作製するために使用可能であり得る。CD4mRNAの吸着は、PBT系フィルターを使用した場合には、ガラス繊維系フィルターを使用した場合とは対照的に4倍まで有効である。フィルタープレートは真空ボックス内に配置される。別の好ましい実施形態では、全血から捕捉される白血球の量を増加させるために、複数のフィルターメンブレンを重ね合わせる。
【0025】
好ましい一実施形態では、フィルタープレートをプレートサポーター及び密封ガスケット上に配置する。別の好ましい実施形態では、フィルタープレートはプラスチック製粘着テープ(Bio−Rad 223−9444)で密封されており、テープをカットして所望数のウェルを利用可能にすることができる。別の好ましい実施形態では、試料が添加される各ウェルを低張緩衝液(200μLの5mM Tris、pH7.4)で洗浄する。
【0026】
本方法は、血液を採取すること、マルチウェルフィルタープレートへ血液を添加すること、並びに赤血球及び他の非白血球成分を除去することを含むことが好ましい。好ましい一実施形態では、抗凝血剤を含む血液採取用チューブ内に全血を吸引し、これにより白血球の濾過効率を増大することができる。抗凝血剤であるヘパリンは、白血球の濾過効率を
増大させるのに特に有効である。好ましい一実施形態では、血液試料を凍結してmRNAを破壊するRNA分解酵素を一部除去することができる。ウェルを低張緩衝液で洗浄し得る。フィルタープレート上の所望数のウェルに血液が添加されると、血液はフィルターメンブレンにより濾過される。濾過は、遠心分離、真空吸引又は正圧等の当業者に知られた任意の技術により行なわれ得る。
【0027】
特に好ましい一実施形態では、血液試料をフィルタープレートウェルに添加した後、真空吸引を開始する(6cmHg)。各ウェルを、何回か低張緩衝液で洗浄する(200μLの5mM Tris、pH7.4で12回)。別の好ましい実施形態では、試料の入った各ウェルをエタノールで洗浄して(200μLの100%エタノールで1回)フィルターメンブレンを乾燥させ、真空吸引する際の白血球捕捉効率を有意に増加させる。別の好ましい実施形態では、次に減圧を行う(20cmHgで>2分間)。
【0028】
本方法は、細胞溶解、並びにmRNAとmRNA捕捉ゾーン内に固定されたオリゴ(dT)とのハイブリダイゼーションを包含する。溶解緩衝液はフィルタープレートウェルに添加され(40μL/ウェル)、そしてインキュベーションを行い(室温で20分間)、捕捉された白血球からmRNAを溶出する。好ましい一実施形態では、マルチウェルフィルタープレートを、プラスチック袋中に密封し、遠心分離する(IEC MultiRF、2,000rpm、4℃で1分間)。次に溶解緩衝液を再び添加し(20μL/ウェル)、その後遠心分離する(IEC MultiRF、3,000rpm、4℃で5分間)。次にマルチウェルフィルタープレートを遠心分離機から取り出し、インキュベートする(室温で2時間)。
【0029】
好ましい実施形態に従うと、溶解緩衝液は、界面活性剤、塩、pH緩衝剤、グアニジンチオシアネート及びプロテイナーゼKを含む。
【0030】
溶解緩衝液の好ましい実施形態は少なくとも1つの界面活性剤を含有するが、1つより多くの界面活性剤を含有してよい。様々なタイプの細胞における異なる膜の種々のレベルの溶解を達成するために、異なる強度を有する界面活性剤濃度の種々の組合せを、当業者は利用し得る。例えばIGEPAL CA−630は、N−ラウロサルコシンより弱い界面活性剤であり、一実施形態では、IGEPAL CA−630単独で、細胞膜を溶解するのに十分であり得る。他の実施形態では、核膜の溶解を最適化するために、N−ラウロサルコシンのような強い界面活性剤を、1つ又は複数の弱界面活性剤と組合せて用いられ得る。界面活性剤は、少なくとも細胞の細胞膜を溶解するのに十分であることが好ましい。別の好ましい実施形態は、細胞の核中にかなりの量のmRNAが存在する場合、細胞の核膜を溶解するのに十分な界面活性剤を含む。状況によっては、細胞質mRNAのみを測定するのが望ましいが、他の状況では、細胞質及び核中のmRNAを測定することが望まれ得る。
【0031】
溶解緩衝液の強界面活性剤としては、好ましくはN−ラウロイルサルコシン、S.D.S.、デオキシコール酸ナトリウム及びヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
弱界面活性剤としては、IGEPAL CA−630、N−デカノイル−N−メチルグルカミン、オクチル−β−D−グルコピラノシド、又は当業者に既知のその他の界面活性剤が挙げられる。0.05〜2%の界面活性剤が溶解緩衝液中に用いられ得る。溶解緩衝液の特に好ましい一実施形態は、0.5%N−ラウロイルサルコシンを含む。溶解緩衝液の別の好ましい実施形態は、0.1〜2%IGEPAL CA−630を含有する。特に好ましい実施形態は、0.1%IGEPAL CA−630を含有する。
【0033】
塩及びキレート化剤の組合せも、溶解剤として役立ち得る。例えば75μMのNaCl及び24μMのNa−EDTAは、溶解剤として役立ち得る。溶解剤の実施形態は、当業者に既知のその他の溶解剤を含み得る。
【0034】
溶解緩衝液の塩は、mRNA−オリゴ(dT)ハイブリダイズ剤として作用する。塩は好ましくは、4×SSCを超えないストリンジェンシー(相補的DNA配列がハイブリダイズし合う厳密性)を有するべきであり、当業者により決定される。溶解緩衝液のその他の実施形態は、NaCl、又は当業者に既知のその他の塩を含む。
【0035】
溶解緩衝液ストックのpH緩衝液は、好ましくは7.0〜8.0のpHを保持する。一実施形態は、1mM〜100mMのTrisHCl、pH7.4を含む。特に好ましい実施形態では、pH緩衝液は、10mMのTrisHCl、pH7.4を含む。溶解緩衝液のその他の好ましい実施形態は、pH5.0の0.1Mのクエン酸−リン酸塩を0.03%のH2O2とともに含有する、当業者に既知のpH緩衝液を含む。
【0036】
溶解緩衝液の特に好ましい実施形態に従うと、グアニジンチオシアネートはRNA分解酵素の不活性化剤として役立つ。グアニジンチオシアネートは、通常有効であるのに不十分な濃度で従来技術において用いられてきた、ということを本発明者等は発見した。したがって、グアニジンチオシアネートの濃度は1.4Mより高いことが好ましい。高くても10Mというグアニジンチオシアネート濃度、さらに好ましくは2Mより高くない濃度を用いることができる。しかし図11から分かるように、1.7Mより高い濃度では、溶解緩衝液の効率は低減される。したがって好ましい実施形態は、約1.4〜約1.75Mのグアニジンチオシアネートを用いる。好ましい一実施形態は、1.7〜1.8Mのグアニジンチオシアネートを含む。下記の実施例4で実証されるように、1.791Mという特定濃度のグアニジンチオシアネートで、作業溶解緩衝液がストックから調製され得る。他の試薬が溶解緩衝液に添加される場合、グアニジンチオシアネートの濃度は希釈される。実施例4におけるように、55mlの他の試薬が1mlの緩衝液に添加される場合、好ましい溶解緩衝液は約1.61〜約1.71Mの濃度でグアニジンチオシアネートを含む。したがって好ましい実施形態は、約1.6〜約1.7Mの濃度でグアニジンチオシアネートを含む。
【0037】
特に好ましい実施形態は、RNA分解酵素の不活性化剤として20mg/mlのプロテイナーゼKをさらに含む。溶解緩衝液の好ましい一実施形態は、200μg/ml〜20mg/mlのプロテイナーゼKを含む。別の好ましい実施形態は、200μg/ml〜1.0mg/mlのプロテイナーゼKを含む。別の好ましい実施形態は、200μg/ml〜500μg/mlのプロテイナーゼKを含む。ドデシル硫酸ナトリウムも、RNA分解酵素の不活性化剤として役立ち得る。別の実施形態は、RNA分解酵素の不活性化剤として0.1〜10%の2−メルカプトエタノールを含む。特に好ましい一実施形態は、1%の2−メルカプトエタノールを含む。RNA分解酵素の不活性化剤の他の実施形態は、好ましくは、RNA分解酵素中のジスルフィド結合を低減する、当業者に既知の物質を含み得る。
【0038】
溶解緩衝液の好ましい実施形態は、Mg2+及びCa2+をキレート化するキレート化剤をさらに含む。好ましい一実施形態は、0.1mM〜5mMのEDTAを含む。特に好ましい実施形態は、1mMのEDTAを含む。溶解緩衝液ストックの他の好ましい実施形態は、当業者に既知のキレート化剤、例えばEDTMP、2,3−ジメルカプトプロパノール及びEGTAを含有するが、これらに限定されない。
【0039】
溶解緩衝液の好ましい実施形態は、tRNAを含み得るが、これは種々の供給源から得られ得、フィルタープレートへの血液由来DNA及びRNAの非特異的吸収を抑制するた
めに含まれる。さらにtRNAの存在は、血液由来RNAの分解を防止する。好ましい一実施形態では、作業溶解緩衝液のtRNAは、10mg/mlの大腸菌tRNAを含む。その他の実施形態は、当業者に既知の任意の供給源からのtRNAを含有し得る。
【0040】
溶解緩衝液の好ましい実施形態は、フィルタープレートへの血液由来DNA及びRNAの非特異的吸収を抑制するために添加される、多種多様な供給源からのDNAを含み得る。作業溶解緩衝液のDNAは、好ましくは10mg/mlの超音波処理サケ精子DNAを含む。他の実施形態では、他の生物体からのDNAが用いられ得る。
【0041】
溶解緩衝液の特に好ましい実施形態は、元の試料中の標的mRNAの明確な量を算定するためのスパイク対照RNAを含み得る。本発明の実施形態前には、研究機関間の変動及び標準化が欠如していたため、一実験における結果を他の実験の結果と比較することは困難であった。しかし本発明の好ましい実施形態では、標的mRNAの明確な量は、TaqManアッセイにより得られた値を各試料中のスパイク対照RNAの用量の回収率で割ることにより確定され得る。このような最も信頼のある定量は、以下に記載され、実施例5に例示されている。
【0042】
溶解緩衝液の好ましい実施形態は、1ウェル当たり10〜1e10コピー、さらに好ましくは1e5〜1e10コピーのスパイクRNAを含む。好ましい実施形態では、用いられる対照RNAの量は、少なくとも検出されるのに十分であるが、定量される標的mRNAの量を有意に妨害するほど多くはない。好ましい実施形態では、溶解緩衝液に添加される対照RNAは、ポリ(A)+RNAである。試験されている試料がヒト血液である特に好ましい実施形態では、対照RNAはヒト血液中に存在するRNAと相同でない。いくつかの好ましい実施形態では、対照RNAの配列は、標的mRNAと90%未満の相同性を有するか、又は標的mRNAと長さにおいて10%より大きい差を有する。他の好ましい実施形態では、対照RNAの配列は、標的mRNAと85%未満の相同性を有するか、又は標的mRNAと長さにおいて5%より大きい差を有する。さらなる実施形態では、対照RNAの配列は、標的mRNAと75%未満の相同性を有するか、又は標的mRNAと長さにおいて2%より大きい差を有する。代替的実施形態では、対照RNAの配列は、標的mRNAと65%未満の相同性を有するか、又は標的mRNAと長さにおいて1%より大きい差を有する。一実施形態では、対照RNAは好ましくは、PCRにより鋳型オリゴヌクレオチドを増幅することにより作られ得る。したがって正方向プライマー(配列番号10、配列番号11、配列番号15及び配列番号8)、逆方向プライマー(配列番号9、配列番号16及び配列番号9)及びTaqManプローブ(FAM−配列番号13−TAMRA、FAM−配列番号17−TAMRA、及びFAM−配列番号12−TAMRA)を、種々の対照RNAオリゴヌクレオチドを増幅するために用いることができる。代替的実施形態は、定量されるべき複数の異なる標的mRNAを用いることを包含する。さらなる実施形態は、複数の対照RNAを用いることを包含する。
【0043】
本方法はmRNAを定量することを含むが、これは、好ましい実施形態では、mRNAからのcDNA合成及びPCRを用いたcDNAの増幅を伴う。好ましい一実施形態では、マルチウェルフィルタープレートを、溶解緩衝液(150μL/ウェルで3回、手動)及び洗浄緩衝液(150μL/ウェルで3回、手動又はBioTek# G4)で洗浄する。次にcDNA合成緩衝液を、マルチウェルフィルタープレートに添加する(40μL/ウェル、手動又はI&J #6)。Axymat(アムジェン株式会社(Amgen)製AM−96−PCR−RD)を、マルチウェルフィルタープレート上に載せ、次にヒートブロック(37℃、VWR)上に載せ、インキュベートする(>90分)。次にマルチウェルフィルタープレートを遠心分離し得る(2,000rpm、4℃で1分間)。PCRプライマーが384ウェルPCRプレートに添加され、cDNAがマルチウェルフィルタープレートから384ウェルPCRプレートに移される。PCRプレートを遠心分離し(2,0
00rpm、4℃で1分間)、リアルタイムPCRを開始する(TaqMan/SYBER)。
【0044】
別の好ましい実施形態は、下記の実施例6で実証されるように、mRNAハイブリダイゼーション中又はcDNA合成中に特異的アンチセンスプライマーを添加することを含む。オリゴ(dT)及び特異的プライマー(NNNN)は、ポリA RNA上の異なる位置でのcDNAの伸長を同時に刺激する(図15)。特異的プライマー(NNNN)及びオリゴ(dT)は、図15に示されるように、増幅中のcDNAの形成を引き起こす。95℃で2分間各ウェルを加熱することにより、特異的プライマー由来cDNAがGenePlateから除去される場合でさえ、加熱変性プロセス(TaqMan定量的PCRを用いて)から得られる特異的CD4 cDNAの量は、非加熱のネガティブコントロールから得られる量と同様である(図16)。いかなる説明又は理論と結びつけずに考えると、このような結果に関して考え得る説明の1つは、オリゴ(dT)由来cDNAは増幅中にプライマー由来cDNAを置き換わり得る、というものである(図15)。加熱変性プロセスが完全に排除されるため、これは特に便利である。さらに、異なる標的のために複数のアンチセンスプライマーを添加することにより、各遺伝子がcDNAの一定分量から増幅され、そしてGenePlate中のオリゴ(dT)由来cDNAはその後の使用のために保存され得る。
【0045】
本発明の別の好ましい実施形態は、全血からのmRNAを高効率に定量するための装置を含む。該装置は、多数の試料デリバリーウェル、試料デリバリーウェルの下部の白血球捕捉フィルター、及び該フィルターの下部のmRNA捕捉ゾーン(mRNA捕捉ゾーンは、ウェル内のmRNA捕捉ゾーンに固定化されたオリゴ(dT)を含む)を備えるマルチウェルフィルタープレートを含む。白血球回収効率を高めるため、いくつかのフィルターメンブレンを重ね合わせることができる。マルチウェルプレートは真空ボックス上に取り付けられるが、真空ボックスはマルチウェルプレートを受容し、マルチウェルプレートと真空ボックスとの間に密封部が形成されるようになっている。該装置の好ましい一実施形態では、真空ボックスは、真空吸引を行なうための真空源を受容するようになっている。別の好ましい実施形態では、マルチウェルサポーターを、真空ボックス内のマルチウェルフィルタープレートの下方に配置する。該装置の別の好ましい実施形態では、シリコン系ゴム等の軟質プラスチック製であり得る密封ガスケットがマルチウェルサポーターとマルチウェルフィルタープレートとの間に挿入される。
【0046】
多数の慣用的増幅技法が本発明と一緒に用いられ得るが、本発明の特に好ましい一実施形態は、全血由来RNA及び対照RNAを用いてリアルタイム定量的PCR(TaqMan)を実行することを含む。ホランドらによるPNAS 88: 7276-7280 (1991)は、TaqManアッセイとして既知のアッセイを記載する。Taqポリメラーゼの5'→3'エキソヌクレアーゼ活性は、ポリメラーゼ連鎖反応産物検出系で用いられて、増幅と同時に特異的検出可能シグナルを生じる。3'末端で延長不可能であり、5'末端で標識され、且つ標的配列内でハイブリダイズするよう設計されたオリゴヌクレオチドプローブが、ポリメラーゼ連鎖反応アッセイに導入される。増幅途中でのポリメラーゼ連鎖反応産物鎖の一方とのプローブのアニーリングは、エキソヌクレアーゼ活性に適した基質を生じる。増幅中、Taqポリメラーゼの5'→3'エキソヌクレアーゼ活性は、プローブを非分解プローブと識別され得るより小さい断片に分解する。アッセイは高感度且つ特異的であり、そしてより厄介な検出方法を上回る顕著な改良を示す。このアッセイの一バージョンは、米国特許第5,210,015号(Gelfandら)にも記載されている(米国特許第5,210,015号(Gelfandら)及びHollandら、PNAS 88: 7276-7280 (1991))(これらは、参照により本明細書中に援用される)。
【0047】
さらに、Fisherらに対する米国特許第5,491,063号は、TaqMan型アッセ
イを提供する。フィッシャーらの方法は、発光標識で標識された一本鎖オリゴヌクレオチドプローブの切断を生じる反応を提供し、この場合、反応は、標識と相互作用して標識の発光を改質するDNA結合化合物の存在下で実行される。該方法は、プローブの分解に起因する標識プローブの発光の変化を利用する。該方法は、概して、オリゴヌクレオチドプローブの切断を生じる反応を利用するアッセイに、特に、ハイブリダイズしたプローブがプライマー伸長に付随して切断される均一増幅/検出アッセイに適用可能である。増幅標的の蓄積の同時検出と、標的配列の配列特異的検出を可能にする均一増幅/検出アッセイが提供される。米国特許第5,491,063号(Fisherら)は、参照により本明細書中に援用される。
【0048】
TaqMan検出アッセイは、古典的PCRアッセイを上回るいくつかの利点を提供する。第一に、TaqManアッセイは、PCRの感度を、標的配列中に存在する内部オリゴヌクレオチド配列のハイブリダイゼーションと組合せる。PCR後、試料をアガロースゲル上で分離する必要がなく、PCR産物の同一性を立証するために必要なその後のサザンブロット及びハイブリダイゼーション過程は排除される。PCR後になされるこれらのさらなる検査過程は、精確な同定のために容易に数日間費やし得る。TaqMan系を用いると、アッセイは2.5時間以内に完了する。さらに、該アッセイプロセスに含まれる方法論は、多数の試料の取扱いを効率的に且つ相互汚染を伴わずに可能にし、したがってロボットによるサンプリングに適合可能である。その結果、多数の試験試料を、TaqManアッセイを用いて非常に短期間で処理することができる。TaqMan系の別の利点は、多重化に関する潜在能力である。異なる蛍光レポーター色素を用いてプローブを構築し得るため、いくつかの異なるHIV系が同一PCR反応に併合され、それにより、試験の各々が個別に実施された場合に受ける労働コストを低減し得る。迅速で確実なデータの利点は、労働及びコスト効率と共に、本発明の特異的プライマーを利用するTaqMan検出系を、HIVの存在をモニタリングするための非常に有益な系にする。
【0049】
好ましい実施形態では、種々のmRNAを、各標的に関するプライマー及びプローブを単に変えることにより、定量することができる。最大生理活性を発揮するための重要因子の1つである細胞外Ca++をヘパリンが保持するため、薬剤作用を、白血球を単離することなく全血で分析し得る。
【0050】
本発明の好ましい実施形態では、既知量のスパイク標準RNAを用いることにより所定の試料の総効率を確定する能力は、用量非依存性且つ配列非依存性である実施形態に起因する。既知量の対照RNAの使用は、PCR測定値を、元の試料中の標的mRNAの量に変換させる。このような計算は、種々の遺伝子に関する全血1μL当たりのmRNAの存在の正常範囲を確定するために、長時間にわたって個体の大試料に関して用いられ得る。本発明の実施形態が所定時間で個体の全血を試験するために用いられる場合、正常範囲外のレベルを有する、疾患を示すmRNAの存在を示す結果は、疾患の存在を示唆し得る。本発明の実施形態は、様々な疾患の検出のためのアッセイとして用いられ得る。例えば疾患を示すmRNAは、多数の試料中のmRNAを最大所望レベルに誘導して、所定の試料のmRNAを測定し、そして試料のmRNAのレベルを検出して、それが最大レベルを下回るか否かを確定することにより検出され得る。同様に、本発明の実施形態は、治療内容の有効性を確定するに際してのアッセイとして用いられ得る。本発明の実施形態は、種々の量の酸化防止剤を用いて人々の試料のmRNAレベルが互いに比較される酸化ストレス試験においても同様に用いられ得る。
【0051】
別の好ましい実施形態は、全血からのmRNAを高効率に定量するためのキットを含む。該キットは、全血からのmRNAを高効率に定量するための装置、ヘパリン含有血液回収用チューブ、低張緩衝液及び溶解緩衝液を含む。
【0052】
別の好ましい実施形態は、血液試料、低張緩衝液及び溶解緩衝液を装置に添加するためのロボット、自動真空吸引装置及び遠心分離機、並びに自動PCR機を備える、全血中のmRNAを高効率に定量するための完全自動化システムを含む。
【実施例】
【0053】
<実施例1>
本発明の方法の種々のプロトコルを試験し、全血からβ−アクチンmRNA及びCD4mRNAを定量するために使用した。
【0054】
3種類の抗凝血剤:ACD、EDTA及びヘパリンを試験した結果、ヘパリンが最も高い白血球保持率をもたらした。ACD血を移入する際にLeukosorb膜が使用されているが、4層の膜を同時に使用しても、およそ15〜40%の白血球が通り抜けた。EDTA血について試験したが、吸着容量及び白血球保持についてはACD血の場合と同様であることがわかった。しかし、もっとも注目すべきは、ヘパリン血中の白血球の100%がLeukosorb膜上に捕捉されたことである。ヘパリン血由来の白血球を100%捕捉したことは、本発明を用いたmRNAの定量の信頼性を示す。これらのデータは、mRNAを正確に定量するにはヘパリン血を使用することが非常に適しているのに対し、大容量の血液を要し、さほど定量的な結果が必要とされない場合にはACD血が有用であることを示す。
【0055】
凍結血試料と新鮮血試料を用いた結果を比較した。図3に示されるように、凍結試料の漏出細胞(leaked cell)からよりも新鮮血の漏出細胞からのほうが、より多くのCD4mRNAが回収された。
【0056】
また、ガラス繊維フィルターの全血保持の有効性を、PBT系フィルターメンブレンの保持値と比較して調べた。表IIに示されるように、ガラス繊維膜は、膜を低張緩衝液(50mMのTris、pH7.4)で洗浄して赤血球を破裂させた場合でさえ、40μLの全血しか受容しなかった。しかし、Leukosorbフィルターは、表2に示されるように、ガラス繊維フィルターよりも有意に多くの量の全血を受容した。
【0057】
【表2】
【0058】
低張緩衝液による様々な回数の洗浄を施して、赤血球及び他の血液成分を除去した。図4に示されるように、試料を低張緩衝液で少なくとも3回洗浄すると、洗浄しない場合と比べて、捕捉されたCD4mRNAの量が2倍を超えた。また図4は、血液を低張緩衝液で12回洗浄したときに、最も多くのmRNAが捕捉されたことを示す。さらに最終CD4mRNA定量に関して、白血球を回収するための種々の方法、すなわち血液試料の真空吸引による方法、遠心分離による方法、並びにエタノール洗浄に続いて真空吸引による方法を比較した。図5は、真空吸引による方法が遠心分離による方法よりも良好なCD4mRNA定量をもたらすことを示し、且つ真空吸引前にエタノールで血液試料を洗浄する方法にすると、最も多くのmRNAが得られることを示す。
【0059】
白血球をガラス繊維膜又はLeukosorb膜上に捕捉し、低張緩衝液による様々な回数の洗浄を施して、赤血球及び他の血液成分を除去した。捕捉された白血球からmRNAを遊離させるため、溶解緩衝液(アールエヌエーチャー社(RNAture))をフィルタープレートに添加し(40μL/ウェル)、プレートを室温で20分間インキュベートした。好ましい実施形態において、溶解緩衝液中に増幅プライマーが含有される。図6は、溶解緩衝液がRNA分解酵素阻害に重要な役割を果たし、溶解緩衝液により失活したRNA分解酵素が好酸球中に充満していることを示す。次いで、マルチウェルフィルタープレートをプラスチック製バッグ内に密封し、遠心分離した(IEC MultiRF、2,000rpm、4℃で1分間)。次いで、溶解緩衝液を再度添加し(20μL/ウェル)、続いて遠心分離した(IEC MultiRF、3,000rpm、4℃で5分間)。次いで、マルチウェルフィルタープレートを遠心分離機から取り出し、室温で2時間インキュベートして、ポリ(A)+RNAテールと固定化オリゴ(dT)とをハイブリダイズさせた。次いで、マルチウェルフィルタープレートを150μLの溶解緩衝液で3回洗浄して残留リボヌクレアーゼを除去し、続いて150μLの洗浄緩衝液(BioTek#G4)で3回洗浄してcDNA合成の阻害因子をいくらか含有する溶解緩衝液を除去した。
【0060】
前述した最後の洗浄により、洗浄緩衝液はマルチウェルフィルタープレートから完全に除去され、予め混合したcDNA緩衝液40μLを添加することにより各ウェル内でcDNAを合成した。cDNA緩衝液は、5×第1鎖緩衝液(プロメガ社(Promega)製M531A、10mMのdNTP(プロメガ社製ストック、20×))、プライマー(5μM、#24)、RNasin(プロメガ社製N211A、400U/μL)、M−MLV逆転写酵素(プロメガ社製M170A、200U/μL)及びDEPC水から構成されることが好ましい。図7は、mRNAを定量するための最適MMLV濃度が50単位/ウェルであることを示す。
【0061】
Axymat(アムジェン社製AM−96−PCR−RD)をマルチウェルフィルタープレート上に配置し、次いでこれをヒートブロック(37℃、VWR)上に配置してインキュベートした(>90分)。次いで、マルチウェルフィルタープレートを遠心分離した(2,000rpm、4℃で1分間)。PCRプライマーを384ウェルPCRプレートに添加し、cDNAをマルチウェルフィルタープレートから384ウェルPCRプレートに移した。図8は、PCRのための最適cDNA値がおよそ2μL/ウェルであることを示す。PCRプレートを遠心分離し(2,000rpm、4℃で1分間)、リアルタイムPCRを開始した(TaqMan/SYBER)。本発明の方法は高いmRNA特異性を有し、TaqManqPCRでのCD4mRNAの増幅では、DNAコンタミネーションは検出されなかった(<10コピー/ウェル)。
【0062】
図9に示されるように、本発明はmRNA定量の変動係数が小さい。2時間のハイブリダイゼーションでは、従来のmRNA定量の変動係数がおよそ300%であるのに対して、該変動係数が13%未満であった。さらにまた、図10に示されるように、直線的な結
果は、捕捉されるmRNAの量が、1ウェル当たりに使用された全血の量に正比例することを示し、本発明が信頼性及び再現性のあるmRNAの定量法であることを示す。
【0063】
<実施例2>
50μLのヘパリンで処理したヒトの凍結血液をLeukosorbフィルタープレートに添加した。各ウェルを真空にし、150μLの5mMのTris、pH7.4及び150μLの100%エタノールで12回洗浄した。次に、1.707〜1.856Mのグアニジンチオシアネートを含有する40μLの溶解緩衝液をそのウェルに添加した。室温で15分間インキュベートした後、フィルタープレートをGenePlate上に配置し、2,000rpmで4℃にて1分間遠心分離した。さらに20μLの溶解緩衝液を加え、その試料を5分間遠心分離した。GenePlateを室温で2時間インキュベートした後、各ウェルを100μLの溶解緩衝液で3回洗浄し、その後150μLの洗浄緩衝液(10mMのTris、pH7.4、1mMのEDTA、pH8.0、0.5MのNaCl)で3回洗浄した。cDNAをGenePlateで合成し、2μLのcDNAをTaqManアッセイに用い、CD4を定量した。結果を図11に示す。
【0064】
<実施例3>
50μLのヘパリンで処理したヒトの凍結血液をLeukosorbフィルタープレートに添加した。各ウェルを真空にし、150μLの5mMのTris、pH7.4及び150μLの100%エタノールで12回洗浄した。次に、0〜0.5mg/mlのプロテイナーゼKを有する1.791Mのグアニジンチオシアネートを含有する40μLの溶解緩衝液をそのウェルに添加した。室温で15分間インキュベートした後、フィルタープレートをGenePlate上に配置し、2,000rpmで4℃にて1分間遠心分離した。さらに20μLの溶解緩衝液を添加し、5分間再度遠心分離した。GenePlateを室温で2時間インキュベートした後、各ウェルを100μLの溶解緩衝液で3回洗浄し、その後150μLの洗浄緩衝液(10mMのTris、pH7.4、1mMのEDTA、pH8.0、0.5MのNaCl)で3回洗浄した。cDNAをGenePlateで合成し、2μLのcDNAをTaqManアッセイに用い、CD4を定量した。結果を図12に示す。
【0065】
<実施例4>
溶解緩衝液ストック
0.5%N−ラウロイルサルコシン
4×SSC
10mMTrisHCl、pH7.4
1mMEDTA
0.1%IGEPAL CA−630
1.791Mグアニジンチオシアネート
作用溶解緩衝液
溶解緩衝液ストック 1ml
2−メルカプトエタノール 10μL
超音波処理されたサケ精子DNA(10mg/ml) 10μL
大腸菌tRNA(10mg/ml) 10μL
プロテイナーゼK(20mg/mlストック) 25μL(最終0.5mg/ml)
【0066】
<実施例5>
対照RNAの調製
対照RNAを合成するために、鋳型オリゴヌクレオチド(配列番号2及び配列番号4)並びにK562細胞由来のcDNA(アールエヌエーチャー社、Irvine, CA)を、T7−正方向プライマー(配列番号3、配列番号5及び配列番号6)及びdT40逆方向プライマ
ー(T40−配列番号1及びT40−配列番号7)を用いて、95℃で30秒間の変性、55℃で10秒間のアニーリング、その後72℃で20秒間の伸長をそれぞれ30サイクルで増幅した。オリゴヌクレオチドはIDT社(Coralville, IA)又はプロリゴ社(Proligo)(Boulder, CO)から購入した。配列は以下:
配列番号1:5'−GGGTG CTGTG CTTCT GTGAA C−3'
配列番号2:5'−GCCCC CTCAC TCCCA AATTC CAAGG CCCAG CCCTC ACACA TTGTT CACAG AAGCA CAGCA
CCC−3'
配列番号3:5'−GTAAT ACGAC TCACT ATAGG GGGAC AGCCC CCTCA CTCCC AAA−3'
配列番号4:5'−GAAGC GTGTG TCACT GTGTG TTTCC AAGGC CCAGC CCTCA CACAT TGTTC ACAGA AGCAC
AGCAC CC−3'
配列番号5:5'−GTAAT ACGAC TCACT ATAGG GGGAC GGAAG CGTGT GTCAC TGTGT GT−3'
配列番号6:5'−GTAAT ACGAC TCACT ATAGG GGGAC GCATT CCGCT GACCA TCAAT A−3'
配列番号7:5'−TCCAA CGAGC GGCTT CAC−3'
の通りである。
【0067】
RNAを、37℃で30分間in vitroでの転写システム(T7RiboMaxExpress、プロメガ社)により精製PCR産物から合成し、その後15分間DNアーゼ(1単位)処理を2回行った。精製RNA産物をヌクレアーゼ無含有水に懸濁し、その濃度を、標準として、rRNAを用いてRiboGreenアッセイ(分子プローブ)で測定した。品質をキャピラリー電気泳動チップ(iChip、日立化成工業株式会社(Hitachi Chemical)、東京、日本)で分析した。
【0068】
白血球の回収
静脈血試料を健常な成人の志願者(volunteer)から集めた。ガラス繊維フィルタープレート(アールエヌエーチャー社)及びLeukosorb膜(ポールライフサイエンス社(Pall Life Sciences)(Ann Arbor, MI))は、指定業者から入手した。特別注文の96ウェルLeukosorbフィルタープレートは、ワットマンポリフィルトロニクス社(Whatman-Polyfiltronics)(Clifton, NJ)により製造された。ヒト血液試料は、接触感染性物質と考えられるので、使い捨て真空管が設計され、且つ特別注文の製品は、アンブリットエンジニアリング社(Ambritt Engineering)(Santa Ana, CA)により製造された。フィルタープレートを使い捨て真空管上に配置し、200μLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS:インビトロジェン株式会社(Invitrogen)(Carlbad, CA))で2回洗浄した。減圧を止め、次に新鮮血試料又は解凍血試料(最大200μL/ウェル)をフィルタープレートに添加した。試料全てをフィルタープレートに分注した後、減圧濾過を14cmHgで開始し、その後PBS(200μL/ウェル)で12回洗浄した。最後の洗浄後、減圧をさらに5分間続け、膜を完全に乾燥させ、PBSの残量を膜から除去した。
【0069】
細胞溶解及びmRNA調製
フィルタープレートをブランクのマイクロプレート上に配置し、その後逆方向プライマー(最終濃度25nM)、定量標準として合成RNA、100μg/mLのサケ精子DNA(エッペンドルフ−5プライム社(Eppendorf-5 Prime)、Westbury, NY)、100μg/mLの大腸菌tRNA(株式会社シグマ(Sigma))、500μg/mLのプロテイナーゼK(ピアース社(Pierce)、Rockford, IL)、及び1:100に希釈された2−メルカプトエタノール(バイオ・ラッド社(BioRad)、Hercules, CA)を含む40μLの溶解緩衝液(アールエヌエーチャー社、Irvine, CA)を添加した。試料を室温で1時間イン
キュベートした。いくつかの実験(図14C及び図14D)で、様々な濃度のオリゴ−dA20を溶解緩衝液に添加した。次に、フィルタープレートをオリゴ(dT)固定化マイクロプレート(GenePlate、アールエヌエーチャー社)上に配置し、その後650×gで1分間遠心分離した。次に、20μLの溶解緩衝液を添加し、その後1,450×gで5分間遠心分離した。このプロセスの後、GenePlateの各ウェルにおける溶解緩衝液量はおよそ50μLであった。GenePlateをインキュベートした後、そのプレートを100μL無処理の溶解緩衝液で3回洗浄し、その後150μLの洗浄緩衝液(10mMのTris、pH7.4、1mMのEDTA、0.5MのNaCl)で3回洗浄した。
【0070】
cDNA合成
cDNAを、1×RT緩衝液、0.5mMのdNTP、15単位のrRNasin、及び37.5単位のMMLV逆転写酵素(プロメガ株式会社)を含有する30μLのcDNA緩衝液を添加することにより、GenePlateで合成した。試料を37℃で2時間インキュベートした。逆方向プライマーを溶解緩衝液に添加したため、プライマーをcDNA合成反応物には入れなかった。cDNAを合成した後、50μLのヌクレアーゼ無含有水を各ウェルに添加し、以下に記載するように2μLをTaqManアッセイに用いた。
【0071】
TaqManリアルタイムPCR
対照RNA用のプライマー及びTaqManプローブは、PrimerExpressバージョン2.0(アプライドバイオシステムズ(ABI)社(ABI)、Foster City, CA)により設計された。bcr−ablに、本発明者等は公示の配列を用いた。いくつかの実験では、HYBシミュレータ(アールエヌエーチャー社)を用いて、逆方向プライマーを設計した。正方向プライマー(配列番号10、配列番号11、配列番号15及び配列番号8)、逆方向プライマー(配列番号9及び配列番号16)、並びにTaqManプローブ(FAM−配列番号13−TAMRA、FAM−配列番号17−TAMRA及びFAM−配列番号12−TAMRA)を用いて、対照RNAを増幅した。血液試料中のCD4mRNAの量を測定するために、CD4及び対照RNAの両方を、単一ウェルのマルチプレックスPCRではなく、PCRプレートの別個のウェルで分析した。β−アクチンに関しては、市販のプライマー及びプローブが使用された(アプライドバイオシステムズ(ABI)社)。384ウェルPCRプレート(アプライドバイオシステムズ(ABI)社)に、2μLのcDNA、5μLのTaqManユニバーサルマスターミックス(アプライドバイオシステムズ(ABI)社)、1μLの5μM正方向プライマー、1μLの5μM逆方向プライマー、及び1μLの2μMTaqManプローブを混合した。PCRを、95℃で10分間を1サイクル、その後95℃で20秒間、その後55℃で20秒間、最後に60℃で1分間を45サイクルでABI PRISM 7900HT(アプライドバイオシステムズ(ABI)社)を用いて行った。そのデータをSDSバージョン2.0(アプライドバイオシステムズ(ABI)社)により解析した。いくつかの実験では、TaqManアッセイをGenePlate(オプチコン社(Opticon)、MJ Research)で直接行った。オリゴヌクレオチド(配列番号2、配列番号4及び配列番号14)、並びにPCR産物を、対照RNA用の定量標準として用いた。配列は以下:
配列番号8:5'−AAATG CCACA CGGCT CTCA−3'
配列番号9:5'−CAAGT GTCTT CGTGT CGTGG G−3'
配列番号10:5'−AGCCC CCTCA CTCCC AAA−3'
配列番号11:5'−AGCCC CCTCA CTCCC AAA−3'
配列番号12:5'−CAGTG GCTAG TGGTG GGTAC TCAAT GTGTA CTT−3'
配列番号13:5'−CCAAG GCCCA GCCCT CACAC A−3'
配列番号14:5'−CAGG GACAA ATGCC ACACG GCTCT CACC
A GTGGC TAGTG GTGGG TACTC AATGT GTACT
TTTGG GTTCA CAGAA GCACA GCACC CAGGG−3'
配列番号15:5'−CCACT GGATT TAAGC AGAGT TCAA−3'
配列番号16:5'−TCCAA CGAGC GGCTT CAC−3'
配列番号17:5'−CAGCG GCCAG TAGCA TCTGA CTTTG A−3'
の通りであった。
【0072】
データ解析
PCR産物の量を、各遺伝子に対する標準曲線を用いて求めた。つまり、TaqManの結果に、希釈係数(×40:80μLのcDNAのうち2μLをPCRに用い、×1.67:30μLのcDNAを1ウェル当たり50μLの溶解緩衝液から合成した)を掛けた。回収されたスパイクRNAをスパイクRNAの所定の量(通常は1つのウェル当たり107コピー)で割ることにより、各試料におけるスパイクRNAの回収率をさらに求めた。CD4mRNAに関しては、TaqManの結果に希釈係数を掛け、血量で割り、同じ試料中のスパイクRNAの回収率で割った。各血液試料をフィルタープレートの3ウェル(3連)に添加し、各遺伝子の1本鎖cDNA及び1本鎖PCR産物が各ウェルに生成された。
【0073】
アッセイの妥当性
ハイブリダイゼーションの動態を図13Aに示し、ハイブリダイゼーションは室温で2時間後にプラトーに達した。血液用量の依存性を図13Bに示し、CD4mRNAは0.05μLで検出され、対数スケールで最大200μLまで直線的に増加した。本発明者等は、ハイブリダイゼーション効率が15℃と25℃との間で劇的に変わったことも見出した(図13C)。図13Dに示されるように、CD4mRNAはヘパリンで処理された血液中で非常に安定であり、37℃では7時間まで又は4℃では一晩ほとんど変化しなかった。このことから、CD4は全血中の遺伝子発現解析に対して優れた対照であり得ることが示唆される。図13の結果は遺伝子数の平均値±標準偏差として表示された。閾値サイクル(Ct)のCVが1〜2%未満であったが、対数スケールから直線スケールへの変換によって、Ctが遺伝子数に換算された場合にCVはかなり増加した。しかし、図13に示されるように、出発材料が全血であった場合でも、CVは、10〜30%と低かった。
【0074】
定量化
本研究における定量の目的は、スパイク対照RNAを用いることにより、各試料の総アッセイ効率を求めることであるが、このスパイク対照RNAは元の試料中の標的mRNAの明確な量を計算するための基準としてさらに使用される。この原理は、RNAの回収が用量非依存的であり、且つその回収は種非依存的であるという2つの前提を含んでいる。つまり、回収率はmRNAのコピー数の多少にかかわらず一致し、また異なる配列間でも一致していなければならない。このような前提は、mRNA精製過程だけでなく、mRNAの定量化、すなわち細胞溶解からPCRまでのプロセス全てに当てはまる。最初の前提を確証するために、50μLの血液を添加した場合に様々な量の合成ポリ(A)+対照RNAを溶解緩衝液に添加し、Leukosorb膜に張り付けた(expose)。対照RNAがヒト血液だけからは増幅されなかったことを本発明者等が確認した後、対照RNAの回収率をTaqManアッセイで測定した。図14Aに示されるように、対照RNAの用量依存的回収が105〜109コピー/ウェルの試験範囲で観察された。同じデータを回収率に換算したところ、これらの値はほぼ20%と同様になった(図14B)。図14A及び図14Bのデータは、mRNA精製及びcDNA合成を含む全プロセスの要約であった。ハイブリダイゼーションの平衡条件のもと、解離定数(Kd)を以下のように計算した。
【0075】
Kd=[RNA]×[オリゴ−dT]/[RNA:オリゴ−dT];ここで[RNA]及
び[オリゴ−dT]は、RNA及びオリゴ−dT、それぞれの非結合状態の濃度を表し、且つ[RNA:オリゴ−dT]はオリゴ−dTとハイブリダイズしたRNAの濃度を表す。これは、[RNA:オリゴ−dT]は添加されるRNAの量によって変化することを意味する。実際、ハイブリダイズしたRNAをYoyo−1核酸色素で測定した時、[RNA:オリゴ−dT]は添加されたRNAの量に比例して増加した(Miura, Y., Ichikawa,
Y., T., Ogura, M.,deFries, R., Shimada, H., & Mitsuhashi, M. マイクロタイタープレート上での固定化オリゴ(dT)を用いた全mRNAの蛍光光度測定 Clin Chem. 42, 1758-64 (1996))しかし、図14Bに示される対照RNAが各ウェルにおいて全mRNAの非常に小さな画分であるため、対照RNAはこの範囲のKd値に事実上影響を与えてはいない。プライマーがcDNA合成の過程に含まれた場合、本発明者等は種内及び種間の再現性の問題にぶつかる。しかし、ハイブリダイゼーションの間にプライマーを加えることで再現性が向上し、プライマー配列が異なる場合でもハイブリダイズされる前のプライマーからcDNAが同様に合成されることが示唆される。回収率それ自体は試料中のmRNAの量に依存して個体間で変わることもあるが、図14A及び図14Bに示すように或る濃度における回収率は同じ試料内での他の濃度に対しても当てはめることができる。
【0076】
2つ目の前提、すなわち回収率が種非依存的であることを検証するために、3つの合成ポリ(A)+RNAを入れて、溶解緩衝液のオリゴ−dAによりハイブリダイゼーションを競合阻害させた。図14Bに示されるように、本発明者等は異なる量のRNAを意図的に使用したため、3つのスパイクRNA間、並びに標的ネイティブCD4mRNA間で回収されたRNAの量が変わった。しかし、RNA全てが、3×1012〜1015コピー/ウェルでオリゴ−dAにより阻害された(図14C)。興味深いことに、同じデータを合計割合に変換した場合、4つのRNA全てがほぼ3×1012コピー/ウェルのIC50と非常に類似した阻害曲線を示した(図14D)。このことから、本発明者等のシステムによるmRNAの精製は、ポリ(A)特異的、且つ配列非依存的であることが示唆される。図14Cに示されるように、1015コピーのオリゴ−dAが添加された後でも、多少の非特異的な活性が残ったままである。しかし、図14Dに示されるように、この非特異的な活性は総活性の5%に過ぎなかった。このように、非ポリ(A)配列はこのアッセイに重要な役割を果たしていないと思われる。図14B及び図14Cは、mRNA定量の全プロセスの要約であったため、これらのグラフは、配列が異なっていても標的遺伝子のアッセイ効率がスパイク合成RNAのアッセイ効率と一致することを示唆する。また、このことから、TaqManアッセイにより得られた値を各試料のスパイク対照RNAの単一用量の回収率で割ることにより、明確な量の標的mRNAが求められ得ることも示している。
【0077】
図13及び図14に示されるように、アッセイ内変動はおよそ10〜20%であった。アッセイ間の変動を査定するために、同じ個体からの新鮮血又は凍結血に加えて、一定分量の同じ凍結血を用いることにより7つの異なる実験を行った。各実験では、異なるフィルタープレート及びGenePlateを用いて、新鮮な材料を、溶解、cDNA合成及びPCR用に調製した。以下の表IIIに示されるように、対照RNAの回収率は4〜29%であった。本発明者らが、対照RNA回収率を考慮せずにCD4の量を比較した場合、これらの値は大きく変動した。しかし、各試料の回収率を調整した後、その値はアッセイ間のCVの7〜14%と非常に類似していた。
【0078】
【表3】
【0079】
図13A〜図13Dは、アッセイの妥当性を示す。TaqManアッセイを、ヘパリンで処理した50μLのヒト全血由来のcDNA(図13A、図13B、図13D)又は合成対照RNA(図13C)で行った。図13Aは、ハイブリダイゼーションの動態を示す。血液一定分量を−80℃で凍結した。同一の血液一定分量を異なる時間で解凍し、フィルタープレートに添加し、室温で30〜270分間の長さでハイブリダイゼーションを行った。図13Bは用量反応を示す。血液をPBSで10倍、100倍及び1,000倍に希釈し、50〜200μLの試料をフィルタープレートに添加した。図13Cはハイブリダイゼーション温度を示す。ハイブリダイゼーションは、4℃、15℃、25℃及び37℃で2時間行った。図13Dは、ヘパリンで処理した全血の安定性を示す。血液試料を様々な時間長で4℃又は37℃にて保存した後、各試料を別個に凍結した。試料を同時に解凍し、フィルタープレートに添加した。そのデータを平均値±標準偏差として表示した。
【0080】
図14A〜図14Dは、合成スパイクRNAの回収率を表す。図14A及び図14Bでは、0〜1010コピーのRNA34が各ウェルに添加された。mRNA精製及びcDNA合成を行った後、対照RNAの量をTaqManPCRで測定した。図14Aは、回収された対照RNAの量(コピー数)対添加された対照RNAの量を示す。図14Bは、回収率を示し、これは以下のように計算された。
【0081】
回収率=回収された対照RNAの量/添加された対照RNAの量×100
【0082】
図14C及び図14Dは、オリゴ−dAが存在する中での回収率を示す。50μLのヘパリンで処理した血液をLeukosorbフィルタープレートに添加した後、様々な量の対照RNA34(□)、対照RNA36(○)、及び対照bcr−abl(△)を含有する溶解緩衝液を0〜1015コピーのオリゴ−dA20とともに各ウェルに添加した。mRNA精製及びcDNA合成の後、対照RNAの量をTaqManPCRで測定した。図14Cは、回収されたRNAの量(コピー数)対オリゴ−dA20の量を示す。図14Dでは、合計割合を以下のように計算した。
【0083】
合計割合=オリゴ−dA20存在下での回収されたRNAの量/オリゴ−dA20非存在下での回収されたRNAの量×100
【0084】
<実施例6>
50μLのヘパリンで処理したヒト血液を、Leukosorb膜の4つの層を取り付けたフィルタープレートに添加した。血液を真空吸引して、150μLの5mMのTris、pH7.4で12回洗浄した。次にフィルタープレートをGenePlateに配置し、溶解緩衝液(CD4に関するアンチセンスプライマーありで又はなしで)40μLを各ウェルに添加した。遠心分離により、細胞溶解物をフィルタープレートからGenePlateに移した。このプロセスを、溶解緩衝液40μLを用いて1回反復した。GenePlateを室温で2時間インキュベートした後、各ウェルを溶解緩衝液100μLで3回洗浄し、その後、洗浄緩衝液150μLを3回添加した。cDNA合成緩衝液及び適切な酵素を添加することにより、GenePlateの各ウェル中でcDNAを合成した。37℃で2時間インキュベーション後、各ウェルを95℃の水150μLで3回洗浄した。次に、TaqManリアルタイムPCRにより、GenePlate中でCD4mRNAを検出した。
【0085】
オリゴ(dT)が特異的プライム化(NNNNによる)cDNAを置換するという仮説を実証するために、特異的プライマーを用いた場合又は用いない場合で、GenePlate中でcDNAを合成した。次にCD4遺伝子を、GenePlateから直接増幅した。図17に示されるように、両試料からCD4を増幅した。これは、上流cDNAが固
定化オリゴ(dT)由来cDNAから置換される、ということを示唆する。
【0086】
<実施例7>
全体的スキーム
図18Aに示されるように、全血をフィルタープレートに添加して、白血球を捕捉した(I)。フィルタープレートをリン酸緩衝生理食塩水(PBS、インビトロジェン株式会社)で洗浄後、赤血球及び血漿構成成分を除去する。このプロセスは、末梢血単核球(PBMC)の慣用的密度勾配分離の場合より簡単且つ高効率である。図18B(標準RNA(○)、CD4(●)、p21(黒三角)、FasL(◆)及びロイコトリエンC4合成酵素mRNA(LTC4S)(黒四角))に示すように、フィルタープレートのハイブリダイゼーション性能は、密度勾配法の場合よりわずかに良好であった。ロイコトリエンC4合成酵素(LTC4S)mRNAのレベルは、おそらくは顆粒球集団の排除のため、PBMC中で有意に低かった。しかし、p21 mRNAは、非常に長い分離プロセス中の二次誘導のため、PBMC中では有意により高かった(図22)。全血を遠心分離し、ペレットを低張溶液(10mMのKHCO3、15mMのNH4Cl、0.14mMのEDTA、pH7.2)中に懸濁して、赤血球を破裂させて、その後、即時遠心分離して、白血球を沈降させる別の方法を比較した(図18B:低張)。しかし、CD4、p21、FasL及びLTC4Sのレベルは全て、フィルタープレート法のレベルより低かった。
【0087】
図18A(II)に示されるように、次の過程は、フィルタープレートに溶解緩衝液を添加すること、及びmRNA精製のためにオリゴ(dT)固定化マイクロプレートに溶解物を移すことであった。このプロセスを評価するために、3つのその他の方法を比較用に用いた。フェノール/グアニジンイソシアネート(トリゾール、インビトロジェン株式会社)(図18C:P/GI)又はキット供給溶解緩衝液(RNeasy、キアゲン社(Qiagen))(図18C:シリカ)をフィルタープレートの各ウェルに添加し、その後、製品の使用説明書に従って、RNA(P/GI)を沈降させるか、又はスピンカラム(シリカ)からRNAを溶離した。ポリ(A)+RNAの直接精製のため、溶解緩衝液をフィルタープレートに添加し、そして溶解物をオリゴ(dT)固定化マイクロプレート(GenePlate、アールエヌエーチャー社)(図18C:dT MP)又はオリゴ(dT)セルロースを含有する真新しいマイクロチューブ(インビトロジェン株式会社)(図18C:dT C)に移した。P/GI、シリカ及びdT C法は、大量の単離PBMCをマイクロチューブ中で用いた場合、十分な性能を示したが、これらの方法は、50μLのみの血液を用いたフィルタープレート系に関しては、良好に作用しなかった(図18C)。さらに、細胞ペレットを管中で溶解する場合、機械強度(ボルテックス又はピペッティング)の程度はmRNAを放出するために重要であり、このプロセスが実質的変動を作り出す。しかし、フィルタープレート法を用いた場合、細胞は膜内に分散し、そして溶解緩衝液の添加は、いかなる付加的な機械力を必要とせずに作用するのに十分であった。
【0088】
溶解緩衝液は好ましくはプライマーの混合物を含有するため、2つの個々のハイブリダイゼーション反応が同時的に起こった(図18A)。1つは、固定化オリゴ(dT)及びmRNAのポリ(A)テール間で起きた。他方のハイブリダイゼーション反応は、特異的プライマーとmRNA中の適切な部位との間で起こった(図18A(II))。特異的プライマーの設計は重要であるが、十分なハイブリダイゼーション時間は、cDNA合成中の十分なプライマーハイブリダイゼーションの時間よりもアッセイをより再現可能にした。一見すると固定化オリゴ(dT)とのハイブリダイゼーションを介して固体表面に留められたcDNA−mRNA二重鎖のように見えた(図18A(II))。したがって95℃で5分間加熱することにより、cDNAを固体表面から除去した。しかし増幅された遺伝子の量は非加熱の対照の遺伝子の量に変化しなかった(図18D、挿入図)。cDNA−mRNA二重鎖が固体表面から何らかの形で除去されたか否かを試験するために、マイクロプレートをcDNA合成後に何度も水で洗浄し、そのままPCRに用いた。しかし、
ハイブリダイゼーション過程中に特異的プライマーを用いて又は用いずに、マイクロプレートから標的遺伝子を増幅することに成功した(図18D)。これらのデータは、特異的プライマー−プライマー化cDNAをオリゴ(dT)−プライマー化cDNAで置換し得る、ということを示唆する(図18A(III、IV))。これは、本系にとって好都合であるが、それは、溶液中のcDNAを遺伝子定量のために用いるからであり、マイクロプレートそれ自体は、検証、貯蔵及び将来の使用のためのcDNAバンクとして用い得るからである。
【0089】
溶解中及びその後のハイブリダイゼーションプロセス中のRNA安定性を確証するために、等量の標準RNAを含有する種々の濃度の溶解緩衝液を水又は濃縮好酸球抽出物で希釈した。図18Eに示されるように、好酸球抽出物それ自体は、それが洗浄緩衝液(10mMのTris、pH7.4、1mMのEDTA、0.5MのNaCl)を用いて懸濁された場合、標準RNA定量を大幅に無効にしたが、この場合、ハイブリダイゼーションの厳密性は大多数の溶解緩衝液構成成分なしで保持された。しかし好酸球抽出物を溶解緩衝液中に懸濁した場合、RNAは保持され、そして水希釈液の場合と同様であった(図18E)。広範囲の最適溶解緩衝液濃度(70〜120%)は、この系を強固で且つ再現可能にした。140%より高い溶解緩衝液濃度は、アッセイ能を有意に低減した。
【0090】
アッセイ最適化
図19A〜図19Fに示されるように(標準RNA(○)、CD4(●)、p21(黒三角)、FasL(◆)及びロイコトリエンC4合成酵素mRNA(LTC4S)(黒四角))、5つの異なる標的RNAの間で等しい実績を示す最適な再現可能条件を同定するために、試験を実行した。再現可能条件は、その後の遺伝子定量の段階にとって重要である。図19中の各データ点は、一定分量の同一血液三種(各々50μL)について単一の標準的実験を行った結果の平均±標準偏差(s.d.)である。しかし少なくとも2〜3回、各実験を再現した。まず3つの代表的抗血液凝固剤を試験した。ヘパリンはACD及びEDTAよりわずかに良好な性能を示したが、3つの抗血液凝固剤は全て許容可能である(図19A)。ACD及びEDTAは、多数の生理活性に関する重要な構成成分であるカルシウムをキレート化するため、全血がin vitroでの刺激のために用いられるこのプロジェクトにおいて、ヘパリンが抗血液凝固剤として選択された(図22)。
【0091】
血液採取後の全血の安定性の保持は、最重要関心事である。したがっていくつかの市販されている系(PAX遺伝子、プレアナリティックス社(PreAnalytix))は、血液が直ちに溶解され、放出されたRNAが比較的長期間にわたって安定化されるという特別な血液容器を用いる。しかし大容量の溶解物の操作は、系全体を問題の多いものにする。さらに、このプロジェクトの目標の1つがinvitroでの遺伝子誘導プロセスの前及び後のmRNAを定量することであるため(図22A〜図22H)、ヘパリン処理全血を4℃で保存し、mRNAレベルにおける変化を調べた。4つのネイティブ遺伝子(CD4、p21、FasL及びLTC4S)のレベルは血液採取後に安定でなかったが、このレベルは、血液を4℃で保存した場合はいつでも、2時間後に安定且つ一定になった(図19B)。
【0092】
オリゴ(dT)固体表面を用いたポリ(A)+mRNA調製は、通常は室温で実行される。しかし性能は20〜30℃の間で変化する(図19C)。短い合成RNAを用いた場合、20〜23℃間の差は有意であった(図19C)。したがってmRNA調製過程を4℃で実行した。ハイブリダイゼーションの長さも重大であった。いくつかのRNA(標準RNA及びFasL)は、2時間後にプラトーに達したが、一方、他のものは安定化するのに4〜8時間より長い時間を要した(図19D)。その結果、mRNA調製過程を4℃で一晩実行した。この条件に切り替えることにより、アッセイ間の変動を実質的に改良した。
【0093】
いかなる追加的プライマーも用いずに、cDNAを合成した(図18D)。短い合成RNA及び豊富なRNA(CD4)は少量の逆転写酵素しか要しなかったが、その他のRNA片は、プラトーに達するのに約100単位のMMLV逆転写酵素を要した(図19E)。興味深いことに、RNA分解酵素H-MMLV(Superscript、インビトロジェン株式会社)は、この系におけるネイティブMMLVと比較して、不十分な性能を示した。37℃で90分より長いインキュベーションは、試験した全てのRNA種に関して十分であった(データは示されていない)。
【0094】
その後のTaqManリアルタイムPCRに、溶液中のcDNAをそのまま用いた。アッセイは、PCRに移されるcDNAの量に比例して鋭敏になる。市販の緩衝液は、PCRを阻害するジチオトレイトール(DTT)を含有する。したがって図19Fに示されるように、最大cDNA容積は、PCR10μL当たり2μLであった。緩衝液からDTTを除去することにより、cDNAの容積はPCR10μL当たり4μLに増大した。
【0095】
定量
この研究の定量過程における目標は、既知量のスパイク標準RNA(これは、PCR結果を元の試料中の標的mRNAの量に変換するための基準としてさらに用いられる)を用いることにより、各試料における総アッセイ効率を確定することであった。原理は、以下の2つの前提に依存している:効率は、種々の存在量を有する類似するmRNAの試料間で同一であること(用量非依存性);及び効率は、異なるmRNA配列間で同一であること(配列非依存性)。第一の前提を確証するために、異なる量の合成RNA標準を溶解緩衝液に添加し、これを、50μLの血液を含有するフィルタープレートにさらした。標準RNAがヒト血液単独から増幅されなかったことを実証した後に、TaqManPCRにより標準RNAの回収率を確定した。図20Aに示されるように(標準RNA(○)、CD4(●)、p21(黒三角)、FasL(◆)及びロイコトリエンC4合成酵素mRNA(LTC4S)(黒四角))、標準RNAの用量依存性回収率を、104〜109分子ウェルの試験範囲で観察した。この範囲の標準RNAは50μLの血液中に存在する総mRNAの量と比較して十分に小さかったため、4つの他のネイティブmRNAのレベルは変わらないままであった(図20A)。同一データを回収率に変換した場合、これらの値は全て、約2〜3%で同様になった(図20B)。ハイブリダイゼーションの平衡条件下で、解離定数(Kd)を以下のように算定した:
Kd=[RNA]×[オリゴ(dT)]/[RNA:オリゴ(dT)]
(式中、[RNA]及び[オリゴ(dT)]はそれぞれ非結合状態のRNA及びオリゴ(dT)の濃度を表し、そして[RNA:オリゴ(dT)]はオリゴ(dT)とハイブリダイズしたRNAの濃度を表す)。これは、Kdがこの系において一定値として保持され、そして[RNA:オリゴ(dT)]は添加RNAの量によって変わる、ということを意味する(図20A)。実際、ハイブリダイズした全RNAをYoyo−1核酸色素により直接測定した場合、[RNA:オリゴ(dT)]は添加RNAの量に比例して増大した。これらのデータは、標準RNAの一濃度由来の回収率が、同一試料内のmRNAの任意の濃度に適用可能であり得る、ということも示唆する。
【0096】
第二の仮定に関しては、競合的阻害剤としてオリゴ(dA)を用いて、又は用いずに、ハイブリダイゼーションを実行した。図20Cに示されるように、5つの標的RNA全てのCt値は、1ウェル当たり3×1012分子より多い量でのオリゴ(dA)により有意に抑制されたが、これらのRNAの発現レベルは全て異なった。興味深いことに、同一データを抑制率に換算した場合、5つのRNAは全て、ほとんど同一の抑制曲線を示し、IC50は1ウェル当たり約3×1012〜1013分子であった(図20D)。これは、該系がポリ(A)特異的であり、且つ配列非依存性である、ということを示す。図20Cに示されるように、1015分子のオリゴ(dA)を添加した後でさえ、多少の非特異的活性が残存
した(標準RNA及びCD4)。しかし、図20Dに示されるように、Ct値(対数スケール)を分子数(直線スケール)に変換した場合、これらの非特異的活性は極わずかであった。したがって非ポリ(A)配列は、この系において主要な役割を持たないと考えられる。図20A〜図20DはmRNA定量の全プロセスの要約であったため、これらのデータは、任意の標的遺伝子の総アッセイ効率がスパイク標準RNAの場合と同一である、ということを示唆する。これは、実質的変動は慣用的総RNA精製方法において長RNAと短RNAとの間に存在するため、ポリ(A)+RNAに独特である(データは示されていない)。
【0097】
次の過程は、各ウェル中のRNAの量を血液1μL当たりのRNA量に換算することであった。図20Eに示されるように、4つのネイティブmRNAのCt値は、添加された血液の容積に応じて、ほぼ直線状に低減した。CD4のような十分なmRNAは、0.001μLの血液(1:105希釈液、100μL/ウェル)からでさえ検出可能であった(図20E)。溶解緩衝液中の標準RNAの量は同一であったため、血液容積が広範に変化した場合でも、標準RNAの回収率は変わらなかった(図20E)。Ct値は1ウェル当たり100μLより多い血液でプラトーに達した(図20E)が、これは、フィルタープレートからの白血球の漏出増大を示唆する。一旦同一データが血液1μL当たりの量に換算されると、該値は1ウェル当たり3〜50μLの血液で一貫しており(図20F)、これは4つのネイティブmRNA全てに関して言えることであった(図20F)。
【0098】
定量は、2つの個々の絶対値も頼っている:即ち、添加される標準RNAの量と、TaqManPCRにおける標準DNA鋳型の量である。標準RNA産物の純度を保証するために、RNAオリゴヌクレオチドをこのプロジェクトに用いた。100塩基長の長さを有するRNAオリゴヌクレオチドの合成は達成が困難であり得るが、RNAオリゴヌクレオチドは2つのプライマー部位、即ちTaqManプローブ部位及びポリ(A)テールを含むことが好ましいため、このような長さが望ましい。本発明の試験における合成RNAは、HPLC分析により86%の純度で、ダーマコン社(Dharmacon)により合成された。増幅曲線の勾配(PCR効率を示す)はオリゴヌクレオチドとcDNAとの間で同一であったため、HPLC精製DNAオリゴヌクレオチドも、TaqManPCRのための鋳型として用いた。1ウェル当たり106〜10分子のオリゴヌクレオチドを用いて、標準曲線を作成した。ストック溶液のμM濃度の106〜1012倍希釈中に、問題が発生した。TE又は水を希釈液として用いた場合、標準曲線は広範に、特に1ウェル当たり103分子未満で変化した。0.1%Tween20を含有するヌクレアーゼ無含有水に切り替えた後、この問題は完全に排除された。
【0099】
正常値の確定
健常被験者における血液1μL当たりのmRNAの対照値を確定するために、CD4、p21、FasL及びLTC4Sのレベルを、15の異なる実験により、2ヵ月にわたって52個体(54データ点。1個体は3回反復)から測定した。50μLの全血の3つの分割単位から、各データ点を得た。図21Aに示されるように、標準RNAの回収率は3.56±0.49%(CV=13.7%)であった。このCV値は従来の免疫測定法比べて非常に大きいが、それは、1サイクルの差によって生成物量が2倍(doubling)異なるPCRを用いるため、許容可能である。標準RNA回収率の値を用いて、各mRNAのデータを、ピコモル又はフェムトモルという分子数ではなく、血液1μL当たりの分子数に換算することに成功した。
【0100】
図21B〜図21Eに示されるように(標準RNA(○)、CD4(●)、p21(黒三角)、FasL(◆)及びロイコトリエンC4合成酵素mRNA(LTC4S)(黒四角))、CD4、p21、FasL及びLTC4SのmRNAの対照値は、それぞれ血液1μL当たり100,772±59,184(CV=58.7%)、1,692±858
(CV=50.7%)、17,841±12,190(CV=68.3%)及び42,058±22,521(CV=53.5%)分子であった。50%CVは、正常値がTaqManPCRにおける1つのCt内に存在する、ということを意味する。興味深いことに、平均±1s.d.値を各図でぼかし模様を入れた場合、いくつかの個体は高い値を表した(図21B〜図21E)。高いFasL mRNAレベルを示した一個体を、3回再現した(図21D)。低CV値と組合せたmRNAの正常値の確定、及び本発明の好ましい実施形態により得られる標準化は、当業者に既知の種々の疾患の検出のためのアッセイに用いられ得る。
【0101】
in vitro応答性
モデル系としてのホルボール12−ミリステート13−アセテート(PMA)及びカルシウムイオノフォアA23187(CaI)(株式会社シグマ)に対する白血球応答性を査定するために、p21及びFasL mRNAのレベルを定量した(図22)。他の好ましい実施形態では、種々の生理活性因子、例えば放射線、紫外線、酸化的ストレス、オゾン、温度、機械的ストレス、化学物質、ペプチド、ホルモン、タンパク質、抗原、抗体、薬剤、小分子化合物、毒性物質、環境性刺激、細胞間連絡、感染性作因及びアレルゲン(これらに限定されない)による刺激に応答して、種々の型のmRNAを分析し得る。該系は、人工溶液中の単離白血球懸濁液というよりむしろヘパリン処理全血を用いたため、結果は、生理学的に正確な条件を反映した。図22Aに示されるように、p21及びFasLのmRNAレベルはともに、PMA及びCaIの刺激時に急速に増大し、そして約10倍増を伴って、90〜120分後にプラトーに達した。p21における増大は、FasLの場合よりもはるかに速かった(図22A)。p21のレベルはいかなる刺激もなしに37℃でのインキュベーションによってもわずかに増大されたが、一方、FasLは変化しないままであった(図22A)。興味深いことに、ヘパリン処理全血を4℃で21時間保存した場合でも、応答性は保存され(図22B)、このことは機能的分子分析時に大きな柔軟性を提供する。
【0102】
mRNA発現の増加又は低下を分析する際に、倍増は一般的に用いられるパラメーターである。しかし図22C〜図22Dに示されるように、PMA−CaI刺激後に誘導されるp21及びFasLのmRNAの量は、mRNAの基本レベルの量に応じて、直線的に増大した。したがって倍増測定は、試料が正常集団とかけ離れた2つ以上の標準偏差を示した場合(図22C)でも、回帰線上に存在する異常試料を同定することはできなかった(図22G)。倍増測定は、回帰線(図22D)から離れて存在する異常試料を同定した(図22H)。図22C〜図22Dの二次元グラフは、両方の場合において、通常試料と異常試料を明確に区別した。図22C〜図22Hにおいて、各データ点は、三回の測定の平均である。グラフを単純にするために、標準偏差は示さなかった。しかし、X及びY軸の両方における平均±2s.d.を有するぼかし模様域(図22C〜図22D)が上左及び下右隅にオープンスペースを含有するため、これらの隅に位置する異常試料は同定が困難であった。回帰線に対してX軸を回転させることにより(図22E〜図22F)、ぼかし模様域のサイズを最小化した。これらのグラフ(図22E〜図22F)は、正常集団外の異常試料を検出するためのより良好な方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料からの特定の配列を含む第1の特異的mRNAを定量する方法であって、
a)前記試料を既知量の第2の特異的mRNAでスパイクするステップ、
b)前記試料からポリA mRNAを精製するステップ、
c)前記試料中の前記mRNAからcDNAを生成させるステップ、
d)前記試料中の第1の特異的mRNA及び第2の特異的mRNAの各々に対応するcDNAの量を定量するステップ、
e)前記第2の特異的mRNAの回収率を確定するステップ、及び
f)前記第2の特異的mRNAの回収率を適用して、第1の特異的mRNAの出発量を確定するステップ
を含む方法。
【請求項2】
第3の特異的mRNAを定量することをさらに含む、請求項1に記載の方法であって、a)前記試料を既知量の第2の特異的mRNAでスパイクするステップ、
b)前記試料からポリA mRNAを精製するステップ、
c)前記試料中の前記mRNAからcDNAを生成させるステップ、
d)前記試料中の第3の特異的mRNA及び第2の特異的mRNAの各々に対応するcDNAの量を定量するステップ、
e)前記第2の特異的mRNAの回収率を確定するステップ、及び
f)前記第2の特異的mRNAの回収率を適用して、第3の特異的mRNAの出発量を確定するステップ
を含む方法。
【請求項3】
前記第2の特異的mRNAの配列が前記第1の特異的mRNAと異なる、請求項1または2の方法。
【請求項4】
前記第2の特異的mRNAの配列が前記第1の特異的mRNAと90%未満の相同性を有するか、又は長さにおいて少なくとも10%の差を有する、請求項3の方法。
【請求項5】
異なる配列を有する複数の第1及び/又は第2の特異的mRNAを提供することをさらに含む、請求項1〜4のいずれかの方法。
【請求項6】
前記試料からのポリA mRNAの精製ステップが、該ポリA mRNAをオリゴ(dT)とハイブリダイズさせることを含む、請求項1〜5のいずれかの方法。
【請求項7】
前記オリゴ(dT)が固定されている、請求項1〜6のいずれかの方法。
【請求項8】
前記第2の特異的mRNAが精製前に試料に添加される、請求項1〜7のいずれかの方法。
【請求項9】
前記試料が全血である、請求項1〜8のいずれかの方法。
【請求項10】
前記試料及び前記第2の特異的mRNAを濾過装置のウェルに添加することをさらに含む、請求項1〜9のいずれかの方法。
【請求項11】
前記試料からのポリA mRNAの精製が、ウェルに溶解緩衝液を添加することを含む、請求項1〜10のいずれかの方法。
【請求項12】
前記濾過装置がフィルターメンブレンであり、該フィルターメンブレンがマルチウェル
フィルタープレートに取り付けられるか、又はフィルターメンブレンがPBT繊維膜である、請求項10の方法。
【請求項13】
前記全血から白血球以外の血液成分を除去して白血球を得ることをさらに含む、請求項12の方法。
【請求項14】
前記全血が濾過前に凍結されるか、又は濾過前に抗血液凝固剤が試料に添加される、請求項10の方法。
【請求項15】
10〜1e10コピーのスパイク対照RNAがフィルタープレートに添加され、前記スパイク対照RNAはポリ(A)+RNAである、請求項1〜14のいずれかの方法。
【請求項16】
前記白血球が、重ね合わせた複数のフィルターメンブレン上に捕捉される、請求項12の方法。
【請求項17】
前記フィルターメンブレン上の白血球を低張緩衝液で洗浄して、赤血球及びその他の血液成分を更に除去することを含み、該フィルターメンブレンを乾燥することを含み、該フィルターメンブレンがエタノールで洗浄され、乾燥するまで真空吸引に付される、請求項12の方法。
【請求項18】
マルチウェルフィルタープレートがマルチウェルオリゴ(dT)固定化プレートを含み、更に溶解物をオリゴ(dT)固定化プレートへ移すことを含む、請求項12の方法。
【請求項19】
前記溶解物をオリゴ(dT)固定化プレートへ移すステップが遠心分離、真空吸引又は正の加圧を含む、請求項18の方法。
【請求項20】
前記mRNAの定量ステップが、特異的mRNAのcDNA合成及び該cDNAの増幅、更にmRNAを定量するステップ中に特異的アンチセンスプライマーを添加することを含む、請求項1〜19のいずれかの方法。
【請求項21】
前記mRNAからのcDNAの生成ステップが、前記第1の特異的mRNA及び前記第2の特異的mRNAへPCRプライマーを添加することを含み、更にプローブ分子を供給すること含む、請求項1〜20のいずれかの方法。
【請求項22】
cDNAの定量ステップが、PCRによる増幅を含む、請求項1〜21のいずれかの方法。
【請求項1】
試料からの特定の配列を含む第1の特異的mRNAを定量する方法であって、
a)前記試料を既知量の第2の特異的mRNAでスパイクするステップ、
b)前記試料からポリA mRNAを精製するステップ、
c)前記試料中の前記mRNAからcDNAを生成させるステップ、
d)前記試料中の第1の特異的mRNA及び第2の特異的mRNAの各々に対応するcDNAの量を定量するステップ、
e)前記第2の特異的mRNAの回収率を確定するステップ、及び
f)前記第2の特異的mRNAの回収率を適用して、第1の特異的mRNAの出発量を確定するステップ
を含む方法。
【請求項2】
第3の特異的mRNAを定量することをさらに含む、請求項1に記載の方法であって、a)前記試料を既知量の第2の特異的mRNAでスパイクするステップ、
b)前記試料からポリA mRNAを精製するステップ、
c)前記試料中の前記mRNAからcDNAを生成させるステップ、
d)前記試料中の第3の特異的mRNA及び第2の特異的mRNAの各々に対応するcDNAの量を定量するステップ、
e)前記第2の特異的mRNAの回収率を確定するステップ、及び
f)前記第2の特異的mRNAの回収率を適用して、第3の特異的mRNAの出発量を確定するステップ
を含む方法。
【請求項3】
前記第2の特異的mRNAの配列が前記第1の特異的mRNAと異なる、請求項1または2の方法。
【請求項4】
前記第2の特異的mRNAの配列が前記第1の特異的mRNAと90%未満の相同性を有するか、又は長さにおいて少なくとも10%の差を有する、請求項3の方法。
【請求項5】
異なる配列を有する複数の第1及び/又は第2の特異的mRNAを提供することをさらに含む、請求項1〜4のいずれかの方法。
【請求項6】
前記試料からのポリA mRNAの精製ステップが、該ポリA mRNAをオリゴ(dT)とハイブリダイズさせることを含む、請求項1〜5のいずれかの方法。
【請求項7】
前記オリゴ(dT)が固定されている、請求項1〜6のいずれかの方法。
【請求項8】
前記第2の特異的mRNAが精製前に試料に添加される、請求項1〜7のいずれかの方法。
【請求項9】
前記試料が全血である、請求項1〜8のいずれかの方法。
【請求項10】
前記試料及び前記第2の特異的mRNAを濾過装置のウェルに添加することをさらに含む、請求項1〜9のいずれかの方法。
【請求項11】
前記試料からのポリA mRNAの精製が、ウェルに溶解緩衝液を添加することを含む、請求項1〜10のいずれかの方法。
【請求項12】
前記濾過装置がフィルターメンブレンであり、該フィルターメンブレンがマルチウェル
フィルタープレートに取り付けられるか、又はフィルターメンブレンがPBT繊維膜である、請求項10の方法。
【請求項13】
前記全血から白血球以外の血液成分を除去して白血球を得ることをさらに含む、請求項12の方法。
【請求項14】
前記全血が濾過前に凍結されるか、又は濾過前に抗血液凝固剤が試料に添加される、請求項10の方法。
【請求項15】
10〜1e10コピーのスパイク対照RNAがフィルタープレートに添加され、前記スパイク対照RNAはポリ(A)+RNAである、請求項1〜14のいずれかの方法。
【請求項16】
前記白血球が、重ね合わせた複数のフィルターメンブレン上に捕捉される、請求項12の方法。
【請求項17】
前記フィルターメンブレン上の白血球を低張緩衝液で洗浄して、赤血球及びその他の血液成分を更に除去することを含み、該フィルターメンブレンを乾燥することを含み、該フィルターメンブレンがエタノールで洗浄され、乾燥するまで真空吸引に付される、請求項12の方法。
【請求項18】
マルチウェルフィルタープレートがマルチウェルオリゴ(dT)固定化プレートを含み、更に溶解物をオリゴ(dT)固定化プレートへ移すことを含む、請求項12の方法。
【請求項19】
前記溶解物をオリゴ(dT)固定化プレートへ移すステップが遠心分離、真空吸引又は正の加圧を含む、請求項18の方法。
【請求項20】
前記mRNAの定量ステップが、特異的mRNAのcDNA合成及び該cDNAの増幅、更にmRNAを定量するステップ中に特異的アンチセンスプライマーを添加することを含む、請求項1〜19のいずれかの方法。
【請求項21】
前記mRNAからのcDNAの生成ステップが、前記第1の特異的mRNA及び前記第2の特異的mRNAへPCRプライマーを添加することを含み、更にプローブ分子を供給すること含む、請求項1〜20のいずれかの方法。
【請求項22】
cDNAの定量ステップが、PCRによる増幅を含む、請求項1〜21のいずれかの方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2010−162050(P2010−162050A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106455(P2010−106455)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【分割の表示】特願2006−538406(P2006−538406)の分割
【原出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【出願人】(500294958)ヒタチ ケミカル リサーチ センター インコーポレイテッド (27)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【分割の表示】特願2006−538406(P2006−538406)の分割
【原出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【出願人】(500294958)ヒタチ ケミカル リサーチ センター インコーポレイテッド (27)
【Fターム(参考)】
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