説明

試料ステージ装置、及び電子線装置

【課題】簡単で直感的な操作で試料を所望の姿勢及び位置に移動する。
【解決手段】走査電子顕微鏡10の多軸ステージ40を水平回転、傾斜、水平移動させるに際して、二次電子検出器20の信号から得られるSEM像から指定用画像を作成して画像表示装置61に表示しつつ、マウス62で指定用画像を回転、傾斜、水平移動させる操作を行う。座標生成手段52は現在の多軸ステージ40の座標を操作後の指定用画像に基づいて変換し、多軸ステージ駆動制御手段53は変換後の座標により多軸ステージ40を駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は試料ステージ装置及び電子線装置に係り、特に平面回転を含む複数の自由度を持ち、指定された座標に基づいて試料を所定の姿勢及び位置に保持する試料ステージ装置及びこの試料ステージ装置を備える電子線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上述のような電子線装置として5軸の自由度を持つ多軸ステージを備える走査電子顕微鏡がある(特許文献1参照)。この多軸ステージは、図8に示すように、試料220を前後左右方向(X,Y)、上下方向(Z)、平面回転(R)、傾斜(T)の5自由度で移動することができる機構を備える。このような多軸ステージを備える走査電子線装置によれば、試料を任意の姿勢及び位置で観察することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−319364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような走査電子顕微鏡では、観察している試料を回転させて、同一の観察領域を他の方向から観察したい場合等に試料の観察に手間と時間がかかるという問題がある。
【0005】
図9は従来の走査電子顕微鏡における観察状態を説明するための模式図である。図9(a)に示すように、試料のA方向からの傾斜観察像210が得られている場合、試料の上面211及び一方側面212が観察できる。このような状態から試料の他方側面213を観察したい場合、試料を回転すると共に傾斜を変更して、同図(a)に示したB方向からの観察を行う必要がある。この方向からの観察を行うことにより、図9(b)に示すように、試料の観察像210に上面211と他方側面213が表示され観察できる。
【0006】
しかし、このように試料の同一観察領域を異なる方向から観察するに際して、従来の走査電子顕微鏡にあっては、ユーザが試料を観察しつつ、試料を見失わない程度に少しずつ多軸ステージを前後左右方向(X,Y)、回転方向(R)及び傾斜方向(T)に駆動して、試料を移動させていく必要がある。一般に試料の観察位置は、多軸ステージの回転中心や傾斜軸から外れているため、多軸ステージの回転及び傾斜に伴い、前後左右方向に位置を調整しなければ、同一の領域を観察できない。このような操作は、観察が高倍率である場合や、観察する試料が大きなものである場合には特に煩雑な操作となる。
【0007】
そこで本発明は、簡単で直感的な操作で試料を所望の姿勢及び位置に移動することができる試料ステージ装置、及び電子線装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための請求項1の発明は、平面回転を含む複数の自由度を持ち、指定された姿勢及び位置座標に基づいて、試料を所定の姿勢及び位置に保持する多軸ステージと、初期状態で取得した試料の観察画像に基づいて、所望の姿勢及び位置での試料の撮影像を表示する指定用画像を生成する指定用画像生成手段と、前記指定用画像を表示する表示装置及びこの表示装置の操作画像上で試料の姿勢及び位置を指定するポインティングデバイスを備えた姿勢位置指定手段と、この姿勢位置指定手段で指定された指定用画像に基づいて前記多軸ステージの設定座標を生成する座標生成手段と、前記設定座標に基づいて前記多軸ステージを駆動制御する多軸ステージ駆動制御手段と、を備えることを特徴とする試料ステージ装置である。
【0009】
同じく請求項2の発明は、請求項1に記載の試料ステージ装置において、前記初期状態における試料の観察画像が、電子線が照射された試料から放出された荷電粒子に基づいて得られるものであることを特徴とする。
【0010】
同じく請求項3の発明は、請求項1に記載の試料ステージ装置において、前記初期状態における試料の観察画像が、試料の光学像であることを特徴とする。
【0011】
同じく請求項4の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の試料ステージ装置において、前記目標指定手段で指定された座標を1組又は複数組格納する座標格納手段を備え、多軸ステージ駆動制御手段は、前記座標格納手段に格納された座標に基づいて多軸ステージを駆動することを特徴とする。
【0012】
同じく請求項5の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載のであるものである試料ステージ装置において、多軸ステージが、傾斜、Y方向、X方向、Z方向、水平回転の5つの自由度を備えることを特徴とする。
【0013】
同じく請求項6の発明は、電子線を試料に走査する照射手段と、電子線が照射された試料からの荷電粒子に基づいて試料の情報を生成する試料情報生成手段と、請求項1から請求項5のいずれかに記載の試料ステージ装置とを備えることを特徴とする電子線装置である。
【0014】
同じく請求項7の発明は、請求項6に記載の電子線装置が走査型電子顕微鏡であることを特徴とする。
【0015】
同じく請求項8の発明は、請求項7に記載の電子線装置が光学顕微鏡を備えることを特徴とする。
【0016】
同じく請求項9の発明は、請求項6から請求項8のいずれかに記載の電子線装置において、指定された指定画像で特定される複数組の座標を格納する座標格納手段と前記複数の座標に基づいて設定された試料ステージ装置の各姿勢及び位置における試料の複数観察画像を格納する画像格納手段と、前記格納した複数の観察画像を連続して表示する連続表示手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、試料の操作画像を視認しつつ試料の観察姿勢及び位置を設定するだけで多軸ステージを所定の姿勢及び位置に設定することができるので、直感的で簡単な操作で所望の姿勢及び位置に試料を設定しその観察を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態例に係る走査電子顕微鏡の概略構成を示す模式図である。
【図2】同じく走査電子顕微鏡の制御系を示すブロック図である。
【図3】同じく走査電子顕微鏡の指定画像の生成及び撮像状態を示す模式図である。
【図4】同じく走査電子顕微鏡の指定用画像を示す模式図である。
【図5】同じく走査電子顕微鏡の観察の手順を示すフローチャートである。
【図6】同じく走査電子顕微鏡の試料姿勢及び位置の設定手順を示すフローチャートである。
【図7】同じく走査電子顕微鏡の画像表示手順を示すフローチャートである。
【図8】試料の移動自由度を示す模式図である。
【図9】従来の走査電子顕微鏡における観察状態を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下本発明を実施するための形態例に係る走査電子顕微鏡を図面に基づいて説明する。図1は実施の形態例に係る走査電子顕微鏡の概略構成を示す模式図である。この走査電子顕微鏡10は、光学顕微鏡30を同一の筐体に備え、試料18における観察領域のSEM像データと光学像データとを取得して表示するものである。まず走査電子顕微鏡10の基本的構成について説明する。
【0020】
走査電子顕微鏡10は、鏡筒11内上部の電子線源12から発生した電子線13を、コンデンサレンズ14で収束し、偏向コイル15で偏向して、対物レンズ16で収束及びフォーカスを調整し、試料室17内の試料18上を走査する。試料18は、多軸ステージ40に配置されている。この多軸ステージ40は、モーター、ネジ機構など公知の駆動機構を備え、試料18を前後左右方向(X,Y)、上下方向(Z)、水平回転(R)、X軸方向を軸とする傾斜(T)の5自由度(図8参照)で移動を行い、試料を指定の位置に移動及び水平回転できるほか、任意の角度に傾斜させることができる。この多軸ステージ40では、下段から傾斜機構41、Y方向移動機構42、X方向移動機構43、Z方向移動機構44、回転機構45が配置される。また、この多軸ステージ40は後述する制御部50(図2参照)で駆動制御される。
【0021】
そして、試料18から発生した2次電子、反射電子などの荷電粒子19は、二次電子検出器20で検出され、SEM画像表示制御手段55(図2参照)で電子線13の走査状態と同期処理されてSEM像データが得られ、SEM像が画像表示装置61(図2参照)に表示される。
【0022】
光学顕微鏡30は、光学鏡筒内に光学系を備えるほか、試料18を照明する光源、CCD撮像素子、CMOS素子等の電子撮像素子を内蔵し光学像データを出力する。そして、試料18の観察領域の拡大された光学像が画像表示装置61(図2参照)に表示される。ここで、光学顕微鏡30の光軸は前記走査電子顕微鏡10の光軸と試料18の観察領域で交差するよう所定の角度で傾けて配置されている。なお、光学顕微鏡30は、走査電子顕微鏡の光軸と一致するように配置してもよい。本実施の形態例では、互いの観察条件に悪影響を与えることがない。例えば電子線を通過させるため光学顕微鏡の光学系に貫通孔を形成すると、光学顕微鏡の光学像が部分的に暗くなるなどの悪影響が発生するが、本実施の形態例ではそのような影響を排除することができる。
【0023】
ここで、走査電子顕微鏡10と光学顕微鏡30の撮像倍率は、撮像の目的に応じて適宜変更できる。試料18の撮像位置を決定する場合には、光学顕微鏡30の撮像倍率を走査電子顕微鏡10の撮像倍率より小さくすることが好ましい。また、試料18は任意の角度に傾斜させて観察することができ、試料表面が、光学顕微鏡30の光軸に対して直交する方向に傾斜させると光学顕微鏡30で良好な光学像を取得できる。
【0024】
次に本実施の形態例に係る走査電子顕微鏡の制御について説明する。図2は実施の形態例に係る走査電子顕微鏡の制御系を示すブロック図である。走査電子顕微鏡10には、走査電子顕微鏡10の画像の表示制御を行うと共に多軸ステージ40の駆動制御を行う制御部50が接続される。また、この制御部50にはオペレーターが多軸ステージ40の姿勢及び位置を指定する姿勢位置指定手段60が接続される。姿勢位置指定手段60は、撮像画像や姿勢及び位置指定のための指定画像を表示する画像表示装置61と、オペレーターが画像表示装置61上の点を指定して処理を指定するポインティングデバイスであるマウス62と、テキスト及び数値を入力するキーボード63とを備える。なお、ポインティングデバイスとしては、マウス以外の例えばトラックボール等を使用できる。また、ない。テキスト及び数値入力デバイスもキーボード以外の手段を用いることができる。
【0025】
制御部50は、画像表示装置61に表示する指定用画像を生成する指定用画像生成手段51と、前記指定用画像に基づいて多軸ステージ40を駆動するための座標データ生成する座標生成手段52と、前記座標データに基づいて多軸ステージ40を駆動制御する多軸ステージ駆動制御手段53と、複数の座標データを格納する座標メモリー54と、二次電子検出器20からの信号に基づいて画像表示装置61にSEM画像を表示させるSEM画像表示制御手段55と、前記指定用画像生成手段51が生成した指定用画像データを格納する指定用画像メモリー56と、撮像した複数の画像を格納する撮像画像メモリー57とを備える。
【0026】
指定用画像生成手段51は、初期状態で取得したSEM画像に基づいて指定用画像を生成して指定用画像メモリー56に格納する。オペレーターは画像表示装置61に表示された前記指定用画像を観察しつつ、マウス62にて、この画像を指定して試料を目的の姿勢及び位置となるよう、水平回転(R)、傾斜(T)、平面位置(X,Y)、倍率の状態を指定する。指定用画像生成手段51は、この指定に基づいて、撮像画像メモリー57に格納された指定用画像を指定された状態に指定用画像を回転、傾斜、平面移動及び変倍して表示されるよう変換する。
【0027】
図3は実施形態例に係る走査電子顕微鏡の指定画像の生成及び撮像状態を示す模式図、図4は同じく走査電子顕微鏡の指定用画像を示す模式図である。指定用画像生成手段51は、まず当初のSEM像に基づいて指定用画像110を生成する。この例では、指定用画像110は試料を傾斜させた状態でA方向から撮像したものをそのまま使用している。なお、この指定用画像は、SEM像をそのまま使用するほか、細部を省略して模式的なものとすることができる。指定用画像110は、指定用画像メモリー56に格納される。この例では、指定用画像110には、上面111と、手前側である一方側面112が現れており、奥側である他方側面113は表示されていない。この指定用画像110は、指定用に使用され、所望の姿勢位置状態を示す目安となる
【0028】
指定用画像生成手段51は、姿勢位置指定手段60からの指定により、指定用画像メモリー56に格納された指定用画像110を変形させる。本実施形態例において、マウス62での指定できる処理は、水平回転移動、傾斜移動、平面移動、及び倍率変更とする。試料の回転はマウス62のホイールの回転、試料の傾斜はマウス右ドラッグ、平面移動はマウスの左ドラッグ、倍率変更はホイールの押下した状態での回転で行う。
【0029】
例えば、試料を矢印A方向から観察している状態(図3(a))から、試料を矢印B方向から観察、即ち試料を180°回転する場合(図3(b))、オペレーターはマウス62のホイールを回転させる。これに伴い指定用画像生成手段51は、指定用画像110を回転させ、オペレーターはこの画像(図3(c))を観察して所望の状態とする。ここで、指定用画像生成手段51は、指定用画像メモリー56に格納された指定用画像110を回転させたものであるので、表示される指定用画像110(図3(c))は、実際に観察される画像と異なり、一方側面112が現れたままで、他方側面113は表示されていない。なお、各移動及び倍率の変更の値をキーボード63から入力することによりSEM画像表示制御手段55に指定用画像110を生成させることができる。
【0030】
本例ではこの指定用画像110の表示状態に基づいて座標生成手段52が多軸ステージ40の各座標を生成して座標メモリー54に格納し、多軸ステージ駆動制御手段53がこの座標に基づいて多軸ステージ40を駆動する。
【0031】
多軸ステージ40が指定された座標に基づいて駆動された状態で、二次電子検出器20からの信号に基づいてSEM画像がSEM画像表示制御手段55により生成され、画像表示装置61に表示される(図3(d))。この観察像120では、上面121と回転前に奥側であったほか側面123が手前側に表示され、所望の回転後の観察像を得ることができる。
【0032】
指定用画像生成手段51は、回転移動、傾斜移動、位置移動及び倍率変更に際しても同様に指定用画像110を変更して画像表示装置61に表示する。図4は走査電子顕微鏡の指定用画像を示す模式図である。図4(a)は回転移動時における指定用画像110を、同(b)は傾斜移動時における指定用画像110を、同(c)は水平位置移動及び倍率変更時における指定用画像110を示している。
【0033】
具体的には、図4(a)に示す試料の回転時に、指定用画像生成手段51は指定用画像110を回転して表示する。また、同(b)に示す傾斜時に、指定用画像生成手段51は、指定用画像110をあたかも試料を傾斜したように指定用画像110を変形して表示する。さらに、同(c)に示す位置移動及び倍率変更時には、指定用画像生成手段51は、指定用画像110の大きさを変えると共に、全体視野115中の配置位置を表示する。
【0034】
次に座標生成手段52における座標の生成について説明する。座標生成手段52は、姿勢位置指定手段60で指定された指定用画像110の姿勢及び位置から下式に基づいて変換を行い、座標を出力する
【0035】
【数1】

【0036】
ここで、x,y,zは、現在の座標、φは傾斜角、θは回転角、X,Y,Zは変換後の座標を示している。この式は、多軸ステージ40を下方から傾斜機構41、Y方向移動機構42、X方向移動機構43、Z方向移動機構44、回転機構45の順に配置して構成した場合のものであり、これらの機構の配置順が変われば適宜変更する必要がある。
【0037】
制御部50は、CPU、ROM、RAM、HDD等を備えたコンピュータとして構成され、格納したソフトウエアをCPUで実行することにより、公知の手法で画像処理及び座標変換等を行い、前述した各手段の機能を実現する。また、これらの機能をハードウエアとして実装することもできる。
【0038】
次に実施の形態に係る走査電子顕微鏡10の撮像手順について説明する。図3は走査電子顕微鏡の観察の手順を示すフローチャート、図4は同じく走査電子顕微鏡の試料姿勢及び位置の設定手順を示すフローチャートである。
【0039】
この例では、初期位置及び姿勢での試料のSEM画像を取得し、この画像に基づいて作成された指示用画像を表示装置に表示しつつオペレーターがマウス操作で次回撮像する試料の姿勢及び位置を指定する。
【0040】
まず、現在の視野においてSEM画像表示制御手段55が二次電子検出器20からの信号に基づいてSEM像を生成し、座標生成手段52が多軸ステージ40の現在座標を取得する(SA1)。次いで指定用画像生成手段51がこのSEM像に基づいて指定用画像データを生成する。この指定用画像データは指定用画像メモリー56に格納され、この指定用画像データに基づいて画像表示装置61に指定用画像が表示される(SA2)。オペレーターはこの指定用画像を観察しつつマウス62を操作して、指定用画像を所望の状態になるよう水平回転移動、傾斜移動、平面移動、倍率変更の指定を行う(SA3)。
【0041】
このオペレーターによる指定に伴い、指定用画像生成手段51は、撮像画像メモリー57に格納された画像データを変更し(SA4)、指定用画像メモリー56に格納して画像表示装置61に表示する(SA5)。この指定用画像の変更に従って座標生成手段52は、座標の変換を行い(SA6)、座標メモリー54に格納する。
【0042】
指定用画像110により必要とする姿勢位置が定まると、オペレーターが所定キーボタンの押下、あるいはマウスによる特定個所のクリックを行う。これにより、試料の姿勢及び位置が確定してSEM画像の取得処理を開始する(SA7)。すると、多軸ステージ駆動制御手段53は、座標メモリー54に格納した座標に基づいて、多軸ステージ40を駆動して(SA8)を指定された姿勢及び位置に配置し、撮像が行われる(SA9)。この撮像された画像データは撮像画像メモリー57に格納され、指定用画像生成手段51に指定された姿勢及び位置のSEM画像が表示される。なお、撮像の前にオートフォーカスなどにより画像を鮮鋭にする処理を行宇ことができる。
【0043】
次に、マウス62による試料の姿勢及び位置の姿勢の指定について説明する。図6は実施形態に係る走査電子顕微鏡の試料姿勢及び位置の設定手順を示すフローチャートである。試料の姿勢及び位置の指定を行うに際しては、まず指定用画像を画像表示装置61に表示する(SB1)、そして、マウス62のホイールを回転して(SB2)、試料の回転移動を指定し(SB3)する。同様にマウス62を右ドラッグして(SB4)、試料の傾斜移動を指定する(SB5)。また、マウス62を左ドラッグして(SB6)、試料の平面移動を行う、そして、マウス62のホイールを押下しつつ回転して(SB8)、試料の回転を行う(SB9)。なお、これらの処理とマウスの操作との対応は任意に変更することができる。また、マウスに代えトラックボール等、他のポインティングデバイスを使用することができる。
【0044】
これらの指定により、指定用画像生成手段51により指定用画像が変更して画像表示装置61に表示され(SB10)、最終的にこの変更した状態に基づいて座標生成手段52が多軸ステージ40の座標を生成する(SB11)。
【0045】
本実施形態例に係る走査電子顕微鏡10は、試料の移動時に撮像した複数画像を連続的に表示することができる。図7は走査電子顕微鏡の画像表示手順を示すフローチャートである。このような処理は、試料の回転移動、傾斜移動、平面移動やそれらの組合わせに依る移動を行ったとき、移動中の観察像の変化を動画として表示するものである。
【0046】
この撮像処理では、まずオペレーターが指定用画像を見ながら試料を撮像する姿勢及び位置(回転、傾斜、水平位置、倍率等)を指定する(SC1)。そして、座標生成手段52が姿勢及び位置における多軸ステージ40の座標を算出して座標メモリー54に格納する。この処理(SC1、SC2)を所定の複数個所において行い(SC3)、得られた位置姿勢座標を座標メモリー54に順次格納していく。
【0047】
次いで、多軸ステージ駆動制御手段53が座標メモリー54に格納された複数の座標を参照して多軸ステージ40を駆動し、各座標においてSEM画像表示制御手段55が二次電子検出器20からの信号に基づいて撮像を行い(SC4)、画像データを撮像画像メモリー57に順次格納していく(SC5)。
【0048】
すべての撮像が終了すると、オペレーターの指示により、SEM画像表示制御手段55は連続表示手段として作動し、撮像画像メモリー57に格納した複数の画像を順次表示し(SC7、SC8)、処理は終了する。
【0049】
このようにして、走査電子顕微鏡10は、指定された複数の個所のSEM像を順次表示し、試料の観察像を動画として表示することができる。
【0050】
なお、前記実施形態例では、指示用画像をSEM像に基づいて生成したが、この指示画像は走査電子顕微鏡10に配置した光学顕微鏡30で得られる拡大像を基に生成することもできる。光学顕微鏡像に基づいて指示画像を生成すると、指示用画像をカラー像として表示でき、視認が容易になる。
【0051】
以上のように本実施形態に係る走査電子顕微鏡10は、画像表示された指示用画像をマウスで直感的に操作するだけで多軸ステージ40操作することができ、試料の所望の姿勢及び位置の拡大像を得ることができる。
【符号の説明】
【0052】
10 走査電子顕微鏡
11 鏡筒
12 電子線源
13 電子線
14 コンデンサレンズ
15 偏向コイル
16 対物レンズ
17 試料室
18 試料
19 荷電粒子
20 二次電子検出器
30 光学顕微鏡
40 多軸ステージ
41 傾斜機構
42 Y方向移動機構
43 X方向移動機構
44 Z方向移動機構
45 回転機構
50 制御部
51 指定用画像生成手段
52 姿勢位置座標生成手段
53 多軸ステージ駆動制御手段
54 位置姿勢座標メモリー
55 SEM画像表示制御手段
56 指定用画像メモリー
57 撮像画像メモリー
60 姿勢位置指定手段
61 画像表示装置
62 マウス
63 キーボード
110 指定用画像
111 上面
112 一方側面
113 他方側面
120 観察像
121 上面
123 他側面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面回転を含む複数の自由度を持ち、指定された姿勢及び位置座標に基づいて、試料を所定の姿勢及び位置に保持する多軸ステージと、
初期状態で取得した試料の観察画像に基づいて、所望の姿勢及び位置での試料の撮影像を表示する指定用画像を生成する指定用画像生成手段と、
前記指定用画像を表示する表示装置及びこの表示装置の操作画像上で試料の姿勢及び位置を指定するポインティングデバイスを備えた姿勢位置指定手段と、
この姿勢位置指定手段で指定された指定用画像に基づいて前記多軸ステージの設定座標を生成する座標生成手段と、
前記設定座標に基づいて前記多軸ステージを駆動制御する多軸ステージ駆動制御手段と、を備えることを特徴とする試料ステージ装置。
【請求項2】
前記初期状態における試料の観察画像が、電子線が照射された試料から放出された荷電粒子に基づいて得られるものであることを特徴とする請求項1に記載の試料ステージ装置。
【請求項3】
前記初期状態における試料の観察画像が、試料の光学像であることを特徴とする請求項1に記載の試料ステージ装置。
【請求項4】
前記目標指定手段で指定された座標を1組又は複数組格納する座標格納手段を備え、前記多軸ステージ駆動制御手段は、前記座標格納手段に格納された座標に基づいて多軸ステージを駆動することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の試料ステージ装置。
【請求項5】
多軸ステージが、傾斜、Y方向、X方向、Z方向、水平回転の5つの自由度を備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の試料ステージ装置。
【請求項6】
電子線を試料に走査する照射手段と、
電子線が照射された試料からの荷電粒子に基づいて試料の情報を生成する試料情報生成手段と、請求項1から請求項5のいずれかに記載の試料ステージ装置とを備えることを特徴とする電子線装置。
【請求項7】
走査型電子顕微鏡であることを特徴とする請求項6に記載の電子線装置。
【請求項8】
光学顕微鏡を備えることを特徴とする請求項7に記載の電子線装置。
【請求項9】
指定された指定画像で特定される複数組の座標を格納する座標格納手段と
前記複数の座標に基づいて設定された試料ステージ装置の各姿勢及び位置における試料の複数観察画像を格納する画像格納手段と、
前記格納した複数の観察画像を連続して表示する連続表示手段と、
を備えることを特徴とする請求項6から請求項8のいずれかに記載の電子線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−138219(P2012−138219A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288868(P2010−288868)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000220343)株式会社トプコン (904)
【Fターム(参考)】