説明

試料収容プレート

【課題】一枚のプレートでも、一度に、複数の試料に対する種々の相対湿度条件の影響を簡便に調べることができる試料収容プレートを開発すること。
【解決手段】複数のウエルが設けられたプレート部材と、前記プレート部材を覆うカバー部材と、前記プレート部材と前記カバー部材との間に介在し、前記各部材と密着可能な中間部材とを備え、前記中間部材には、二以上の孔が設けられ、該孔により、前記プレート部材に設けられた複数のウエルが、連続する二以上のウエルで構成される二以上の群に区分け可能となっていることを特徴とする試料収容プレート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料収容プレートに関する。
【背景技術】
【0002】
医薬化合物をはじめとする種々の化合物に対する相対湿度や溶媒蒸気の影響を調べ、化合物の安定性、吸湿性、吸着性、結晶形等の物理化学的性質等の変化を把握し、評価することは、開発すべき化合物を決定したり、化合物の保存条件等を決定したりするうえで、重要である。
【0003】
化合物等の試料に対する相対湿度の影響を調べる方法としては、例えばデシケータ内に、所定の相対湿度に調整可能な塩類の飽和水溶液と試料とを入れ、密閉後、略一定温度条件で、所定時間保管する方法が知られている(例えば非特許文献1参照。)。しかしながら、相対湿度条件を種々変えて試験を行う必要があり、相対湿度条件ごとにデシケータを用意する必要もあった。
【0004】
一方で、複数のウエルを備えたプレートが種々開発されており(例えば特許文献1〜3参照。)、かかるプレートを用いることにより、複数の試料に対する相対湿度や溶媒蒸気の影響を調べることもできる。例えば各ウエルに、試料を入れた後、プレートと、所定の相対湿度に調整可能な塩類の飽和水溶液とを、デシケータ内に入れ、密閉後、略一定温度条件で、所定時間保管することにより、複数の試料に対する前記所定の相対湿度の影響を調べることができる。しかしながら、この場合も、すべてのウエルの環境は同じであるため、一度に、複数の試料に対するある一つの相対湿度条件の影響は調べることはできるものの、一度に、複数の試料に対する複数の相対湿度条件の影響を調べることはできず、そのためには、プレートを条件の数だけ用意する必要があった。
【0005】
【特許文献1】特開2005−43236号公報
【特許文献2】特開平9−101302号公報
【特許文献3】特開平8−114596号公報
【非特許文献1】津田恭介・野上寿,「医薬品開発基礎講座IX 製剤設計法(2)」,初版,株式会社地人書館,昭和46年2月1日,384〜392頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような状況のもと、本発明者らは、一枚のプレートでも、一度に、複数の試料に対する種々の相対湿度条件の影響を簡便に調べることができる試料収容プレートを開発すべく検討したところ、複数のウエルが設けられたプレート部材と、前記プレート部材を覆うことが可能なカバー部材とを備えた試料収容プレートに、前記プレート部材と前記カバー部材との間に介在し、前記各部材と密着可能な中間部材とを備え、前記中間部材には、二以上の孔が設けられ、該孔により、前記プレート部材に設けられた複数のウエルが、連続する二以上のウエルで構成される二以上の群に区分け可能となっている新規な試料収容プレートを見出し、本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、複数のウエルが設けられたプレート部材と、前記プレート部材を覆うことが可能なカバー部材と、前記プレート部材と前記カバー部材との間に介在し、前記各部材と密着可能な中間部材とを備え、前記中間部材には、二以上の孔が設けられ、該孔により、前記プレート部材に設けられた複数のウエルが、連続する二以上のウエルで構成される二以上の群に区分け可能となっていることを特徴とする試料収容プレート等を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の試料収容プレートを用いることにより、複数の試料について、同時に種々の相対湿度条件の影響を調べることができる。また、相対湿度以外に、試料に対する溶媒蒸気の影響も調べることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
まず、本発明の試料収容プレートについて、図面に基づき説明する。図1に、本発明の試料収容プレートの一実施態様の概略図を示した。図2に、図1に示した試料収容プレートを、各部材を重ねた状態で、A−A’線に沿って切断した断面のうちの一つの群の拡大図を示した。
【0010】
図1に示した試料収容プレート1は、ウエル2が、縦8個×横12個の合計96個設けられたプレート部材3と、プレート部材3を覆うことが可能なカバー部材4と、プレート部材3とカバー部材4との間に介在し、前記各部材と密着可能な中間部材5とを備えている。
【0011】
ウエル2は、試料や水、溶媒等を収容可能であって、分析可能な量の試料等が収容可能であればよく、その容量は、通常0.001nL〜20mL、好ましくは1nL〜500μLである。
【0012】
図1に示した試料収容プレートでは、ウエル2の水平断面形状は円形であり、垂直断面形状は図2に示したように、長方形と半円形を組み合わせた形状であるが、かかるウエル2の水平および垂直断面形状は特に制限されず、例えば円形、楕円形、正方形、長方形、三角形、台形、半円形、半楕円形等およびこれらを組み合わせた形状等適宜選択すればよい。なお、水平または垂直断面形状が正方形等の角部を有する形状の場合には、角部に面取りを施したり、角部を丸めたりしてもよい。かかる水平および垂直断面の断面積も特に制限されない。かかるウエル2の垂直断面の最大横幅と高さについても、特に制限されないが、実用的な観点から、高さに対する最大横幅の比は、0.2〜1が好ましい。
【0013】
図1に示した試料収容プレートのウエル2の数は、縦8個×横12個の合計96個であるが、ウエル2の数はこれに制限されず、例えば縦6個×横8個の合計48個、縦6個×横10個の合計60個、縦6個×横12個の合計72個、縦16個×横24個の合計384個等適宜決めればよい。また、図1に示した試料収容プレートでは、ウエル2は、格子状に配置されているが、かかるウエル2の配置も特に制限されず、任意であるが、実用的には、図1に示したように、ウエル2を格子状に配置することが好ましい。
【0014】
プレート部材3は、試料、調湿剤および溶媒に対して安定な材質で形成された板状もしくは柱状の部材であり、ウエル2が複数設けられている。前記材質は、試料、調湿剤および溶媒の種類に応じて適宜選択すればよく、例えばステンレス、アルミ等の金属材料、例えばポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルペンテン、ポリメチルメタアクリレート等の樹脂材料、例えば石英ガラス等の無機材料等が挙げられる。また、例えば石英ガラス、ポリカーボネート等の光学的に透明な材料でプレート部材3が形成されている場合は、ウエル2内の試料を、目視、顕微鏡等により観察可能であり、また、ウエルごと後述する分析が可能な場合もあるという点で、好ましい。
【0015】
かかるプレート部材3は、その材質に応じて、例えば射出成形方法、溶接方法等公知の方法により製造される。
【0016】
プレート部材3の大きさや厚み、形状も特に制限されず、ウエル2の容量や数等に応じて適宜決めればよい。
【0017】
カバー部材4は、プレート部材3を覆うことが可能な部材であればよく、通常は板状の部材であり、その面積は、通常プレート部材の上面と略同一もしくは前記上面よりも大きくなっている。
【0018】
カバー部材4の厚みは特に制限されない。また、その材質も、水蒸気や溶媒蒸気等に対して安定な材質であればよく、例えばステンレス、アルミ等の金属材料、例えばポリカーボネート、ポリプロピレン等の樹脂材料、例えば合成ゴム、シリコンゴム等のゴム材料、例えば石英ガラス等の無機材料等が挙げられ、適宜選択すればよい。かかるカバー部材4も、上記プレート部材3と同様に、例えば石英ガラス、ポリカーボネート等の光学的に透明な材料で形成されている場合は、ウエル2内の試料を、上方から、目視、顕微鏡等により観察可能であり、また、ウエルごと後述する分析が可能な場合もあるという点で、好ましい。
【0019】
中間部材5には、二以上の孔6が設けられている。図1に示した試料収容プレートでは、32個の孔6が設けられている。かかる中間部材5をプレート部材3の上部に重ね合わせると、32個の孔6により、前記96個のウエル2が、横に連続する三個のウエル2で構成される32個の群に区分けされるようになっている。孔6の形状は、該孔6で区分けされた群を構成する二以上のウエルが連続しておれば特に制限されない。また、孔6の数も、群を構成するウエルの数も制限されない。ここで、連続するウエルとは、群を構成するそれぞれのウエルに隣接するウエルが少なくとも一つ存在することを意味する。プレート部材上に種々の中間部材を重ね、そのうちの一つの孔を上から見た図を図3に示した。図3(a)は、図1に示した試料収容プレートの孔6を上から見た図であり、群を構成するウエルは三個で、孔の形状は、横長の長方形と半円を組み合わせた形状である。図3(b)は、群を構成するウエルは四個で、孔の形状が正方形の例である。図3(c)は、群を構成するウエルは三個で、孔の形状がL字形の例である。図3(d)は、群を構成するウエルは五個で、孔の形状が十字形の例である。図3(e)は、図3(a)と同様の形状であるが、横幅が図3(a)に比べると短くなっており、ウエルの開口部の一部が中間部材で覆われた状態になっている。
【0020】
中間部材5は、プレート部材3とカバー部材4とに密着可能であって、水蒸気や溶媒蒸気等に対して安定な材質で形成されておればよく、通常は板状の部材である。前記材質としては、例えばステンレス、アルミ等の金属材料、例えばポリカーボネート、ポリプロピレン等の樹脂材料、例えば合成ゴム、シリコンゴム等のゴム材料、例えば石英ガラス等の無機材料等が挙げられ、適宜選択すればよい。かかる中間部材5の厚みは特に制限されない。
【0021】
プレート部材3と中間部材5とカバー部材4との位置を確実に一致させ、簡便に重ね合わせるため、各部材の適当な箇所に一つもしくは二以上の位置合わせ部を設けてもよい。かかる位置合わせ部の例を、図4に示した。図4(a)は、カバー部材4と中間部材5とに位置合わせ部を設けた場合の該位置合わせ部の拡大図であり、中間部材5に凸部7が、カバー部材4に、対応する凹部8が設けられている。図4(b)は、プレート部材3と中間部材5とに位置合わせ部が設けられた場合の該位置合わせ部の拡大図であり、プレート部材3に突起部9が、中間部材5に対応する貫通孔10が設けられている。
【0022】
プレート部材3上に中間部材5を載せ、さらにその上にカバー部材4を載せることで、各部材は密着するが、より密着性を高めるという点で、図5に示すような挟持部材11により、プレート部材3と中間部材5とカバー部材4とを挟持し、固定してもよい。挟持部材11は、各部材を挟持し、固定可能なものであれば特に制限されない。
【0023】
かかる中間部材5を、プレート部材3とカバー部材4との間に介在させると、中間部材5の孔6によって、ウエル2が二以上の群に区分けされ、区分けされた各群は、他の群から独立した状態になるため、それぞれの群を、他の群から独立した測定条件に設定することが可能となる。したがって、一つの試料収容プレートに、群の数に応じた数の測定条件を設定することができ、一度に複数条件の試験が可能となる。
【0024】
図6に、本発明の試料収容プレートの別の実施態様のプレート部材を示した。図6に示した試料収容プレートは、プレート部材3が、底板部材12と仕切り部材13と側壁部材14とに分離可能であり、仕切り部材13と4つの側壁部材14とを底板部材12上に積載することにより、縦6個×横10個の合計60個のウエル2が形成されるようになっている。図6では、仕切り部材13は、縦方向の仕切り部材と横方向の仕切り部材とが一体形成されているが、縦方向の仕切り部材と横方向の仕切り部材が分離可能に形成されていてもよい。また、底板部材12上に、仕切り部材13と側壁部材14とを、容易に積載するため、仕切り部材13および側壁部材14の底板部材12側の面の任意の位置に、底板部材12への差込部材を一つもしくは二つ以上設けるとともに、底板部材12に、該差込部材が差込可能な差込孔を設けてもよい。また、仕切り部材13と側壁部材14とを容易に接着可能なように、いずれか一方の部材に一つもしくは二以上の差込部材を、他方に差込部材が差込可能な差込孔を設けてもよい。
【0025】
試験終了後の試料を、X線回折測定法により分析する場合には、図1に示した実施態様では、試験終了後には、試料を取り出す必要があるが、図6に示した実施態様においては、試験終了後、カバー部材4と中間部材5と仕切り部材13と側壁部材14とを取り外すだけで、試料を取り出すことなく、底板部材12上に試験後の試料が載った状態のままで、X線回折測定を行うことが可能となる。
【0026】
続いて、本発明の試料収容プレートの使用方法の一つとして、試料に対する相対湿度の影響を調べる方法について、図1に示した試料収容プレートを例に取り、説明する。
【0027】
図7に、図1に示した試料収容プレートの一つの群の拡大断面図を示した。図7に示すように、一つの群を構成する3個のウエルのうち、左端のウエル2aに試験すべき試料20を入れ、右端のウエル2cに、所定の調湿剤21を入れる。ウエル内に試料20や調湿剤21を入れた後に、中間部材5とカバー部材4をプレート部材3上に重ねてもよいが、どのウエルが同じ群に属しているかが容易に判別しやすいという点で、プレート部材3と中間部材5とを重ね合わした状態で、試料や調湿剤をウエル内に入れることが好ましい。
【0028】
試料は、相対湿度の影響を調べたいものであれば特に制限されず、有機化合物であってもよいし、無機化合物であってもよい。かかる試料としては、例えば医薬や農薬等の原体やそれらの製剤、合成中間体、添加剤等が挙げられる。また、かかる試料は、液体であってもよいし、固体であってもよい。
【0029】
試料20の使用量は、試験終了後に分析が可能な量であればよく、ウエル2の容積に応じて適宜決めればよいが、実用的には、ウエル2の容積の2/3以下とすることが好ましく、1/2以下とすることがより好ましい。調湿剤21の使用量も、同じ群に属するウエル内の環境を略同一の相対湿度に調整可能な量であれば、特に限定されない。
【0030】
かかる試料20や調湿剤21はそのままウエル2に入れてもよいし、図8に示すようなウエル2内に挿置可能なセル22に試料20や調湿剤21を入れた後、当該セル22をウエル2内に入れてもよい。かかるセル22の材質は、試料20や調湿剤21に対して安定な材質であればよく、例えばステンレス、アルミ等の金属材料、例えばポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルペンテン、ポリメチルメタアクリレート等の樹脂材料、例えば石英ガラス等の無機材料等が挙げられる。図6に示すようなプレート部材3が底板部材12と仕切り部材13と側壁部材14とに分離可能となっている試薬収容プレートを用いる場合であって、試料20や調湿剤21が液体であるときには、セル22が用いられる。
【0031】
調湿剤21としては、同じ群に属するウエル内の環境を所定の相対湿度に調整可能なものであればよく、例えば水、塩類の飽和水溶液、脱水剤等が挙げられる。塩類の飽和水溶液としては、例えば「社団法人日本分析化学会編,分析化学実験ハンドブック,丸善株式会社発行,昭和62年5月30日,39頁」等に記載されている一定の湿度を与える塩類の飽和水溶液が挙げられ、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム・一水和物、水酸化カリウム等の飽和水溶液が例示できる。脱水剤としては、例えば五酸化二リン、シリカゲル、塩化カルシウム等が挙げられる。
【0032】
調湿剤21として、水を用いた場合には、その群に属する3つのウエル2a、2bおよび2c内の相対湿度は100%となり、相対湿度100%の環境下に試料が置かれた場合の影響を調べることができる。調湿剤として脱水剤を用いた場合には、その群に属する3つのウエル2a、2bおよび2c内の相対湿度は0%となり、相対湿度0%の環境下に試料が置かれた場合の影響を調べることができる。さらに、調湿剤として、塩類の飽和水溶液を用いた場合には、その群に属する3つのウエル2a、2bおよび2c内の相対湿度は、測定温度と用いた塩類の種類に応じた相対湿度に調整され、当該相対湿度の環境下に試料が置かれた場合の影響を調べることができる。例えば測定温度が20℃で、塩類の飽和水溶液として、塩化ナトリウムの飽和水溶液を用いた場合には、相対湿度75%の環境下に試料が置かれた場合の影響を調べることができ、塩化リチウム・一水和物の飽和水溶液を用いた場合には、相対湿度12%の環境下に試料が置かれた場合の影響を調べることができる(いずれの相対湿度も「社団法人日本分析化学会編,分析化学実験ハンドブック,丸善株式会社発行,昭和62年5月30日,39頁」に基づく。)。
【0033】
中央のウエル2bは何も入れないでおく。例えばウエル2aに試料を入れ、ウエル2bに調湿剤を入れる場合のように隣り合うウエルに、試料と調湿剤をそれぞれ入れてもよいが、この場合には、試料収容プレートを持ち運ぶ際等の振動により、試料と調湿剤とが直接接触する虞があるため、群を構成するウエルが3個以上で、かつ、ウエル2aとウエル2cのように、隣り合わないウエルがあるときには、試料を入れるウエルと調湿剤を入れるウエルとが隣り合わないようにすることが好ましい。
【0034】
その後、カバー部材4で覆い、試料収容プレートを、略一定温度に保たれた恒温槽に入れ、所定時間保持する。その後、試料を取り出して分析することにより、試料に対する相対湿度の影響を調べることができる。かかる分析方法としては、例えば試料の外観、結晶形状、結晶構造、重量、含水率、純度、分解物の有無等の試料の安定性に関する情報を得ることが可能な方法であればよく、例えばガスクロマトグラフィー(GC)法、液体クロマトグラフィー(LC)法、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法等のクロマトグラフィー法、例えばキャピラリー電気泳動(CE)法、例えば核磁気共鳴(NMR)スペクトル測定法、例えば赤外吸光(IR)スペクトル測定法、近赤外吸光(NIR)スペクトル測定法、ラマンスペクトル測定法等の分光学的分析法、例えばX線回折測定法等の回折法、例えばカールフィッシャー水分測定法、例えば目視観察法、顕微鏡観察法等の観察法、精密天秤等の重量測定器を用いた重量測定法、例えば示差走査熱分析、熱重量分析等の熱分析法、例えば元素分析法、例えば質量分析(MS)法、例えば液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)法、液体クロマトグラフィー−核磁気共鳴スペクトル(LC−NMR)法、例えばキャピラリー電気泳動−質量分析(CE−MS)法、ガスクロマトグラフィー−赤外吸光スペクトル測定(GC−IR)法、熱重量分析−質量分析(TG−MS)法等のオンライン構造解析法等が挙げられる。
【0035】
分析方法として、前記分光学的分析法を用いる場合には、試料を取り出すことなく、ウエルごと試料を分析することも可能である。また、図6に示す試料収容プレートを用いた場合であって、分析方法として、前記分光学的分析法やX線回折測定法を用いるときは、試験終了後、仕切り部材13と側壁部材14を取り除いた状態で、分析することもできる。
【0036】
なお、前記の使用方法の一例では、一つの群を構成する3個のウエルのうちの一つ(ウエル2a)に試験すべき試料20を入れ、残りの2つのウエルのうちの一つ(ウエル2c)に、所定の調湿剤21を入れているが、ウエル2bにも、別の試験すべき試料を入れて試験を行うことにより、異なる二つの試料について、同時に相対湿度の影響を調べることもできる。
【0037】
このように、図1で示した試料収容プレート1を用いることにより、一度に、最大で32の異なる相対湿度の試料に対する影響を試験をすることが可能である。
【0038】
また、前記調湿剤に代えて、各種溶媒を用いると、測定温度における各溶媒の蒸気圧に応じた量の溶媒蒸気が発生するため、上記した調湿剤の場合と同様に、試料に対する溶媒蒸気の影響を調べることもできる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されない。
【0040】
実施例1
インドメタシンγ晶を溶融させた後、液体窒素で急冷して、アモルファス状のインドメタシンを得た。
【0041】
図1に示したと同様の試料収容プレート(石英ガラス製プレート部材(サイズ 縦85mm×横128mm×高さ14.6mm;ウエル数 96;ウエルサイズと形状 直径7.1mm×深さ10.5mmの円柱状)、シリコンゴム製中間部材(厚さ 2mm;孔の数 32個;孔のサイズと形状 縦7mm×横20mmで、横に並んだ3個のウエルを一つの群に区分け可能)、石英ガラス製カバー部材)を用意した。
【0042】
上記で得たアモルファス状のインドメタシン約5mgを、この試料収容プレートの4つのウエル(それぞれのウエルが属する群は異なる)内に入れた。
【0043】
次に、アモルファス状のインドメタシンが入った各ウエルの二つ隣のウエルに、それぞれ塩化ナトリウムの飽和水溶液(相対湿度75%に調整可能な調湿剤)、塩化カリウムの飽和水溶液(相対湿度84%に調整可能な調湿剤)、五酸化二リン(相対湿度0%に調整可能な調湿剤)および水(相対湿度100%に調整可能な調湿剤)を所定量入れた。
【0044】
その後、プレート部材と中間部材とカバー部剤とを重ねた状態で、図5に示すような挟持部材で挟持し、固定した。
【0045】
その後、この試料収容プレートを、25±1℃で7日間静置させた。近赤外吸光装置(BUCHI製 NIRFlex N−400)のプローブ型検出器を用い、試料収容プレートの底面下部から、1日1回、各ウエル内のインドメタシンの近赤外吸光スペクトルを取得した。
【0046】
図9に、相対湿度0%に調整された群内のインドメタシンの近赤外吸光スペクトル(波長域:5000〜5090cm−1)を二次微分した結果を示した。図9より、インドメタシンγ晶に特徴的な5028cm−1付近のピークが日数の経過とともに強くなっており、相対湿度0%の条件下では、アモルファス状のインドメタシンからインドメタシンγ晶へ転移することが確認された。
【0047】
また、図10に、相対湿度75%、84%および100%に調整された群内のインドメタシンの近赤外吸光スペクトル(波長域:8550〜8650cm−1)を二次微分した結果を示した。図10より、インドメタシンα晶に特徴的な8616cm−1付近のピークが日数の経過とともに強くなっており、相対湿度75%以上の高湿度条件下では、アモルファス状のインドメタシンからインドメタシンα晶へ転移することが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の試料収容プレートの一実施態様の概略図である。
【図2】図1に示した試料収容プレートを、各部材を重ねた状態で、A−A’線に沿って切断した断面のうちの一つの群の拡大図である。
【図3】孔の形状の例を示した図である。
【図4】位置合わせ部の例を示した図である。
【図5】挟持部材で各部材を挟持した図である。
【図6】本発明の試料収容プレートの別の実施態様のプレート部材の概略図である。
【図7】本発明の試料収容プレートを用いて、試料に対する相対湿度の影響を調べる方法の一例を示した図である。
【図8】調湿剤を入れたセルの拡大図である。
【図9】相対湿度0%に調製された群内のインドメタシンの近赤外吸光スペクトル(波長域:5000〜5090cm−1)を二次微分した結果を示したグラフである。
【図10】相対湿度75%、84%および100%に調製された群内のインドメタシンの近赤外吸光スペクトル(波長域:8550〜8650cm−1)を二次微分した結果を示したグラフである。
【符号の説明】
【0049】
1・・・試料収容プレート、2・・・ウエル、3・・・プレート部材、4・・・カバー部材、5・・・中間部材、6・・・孔、7・・・凸部、8・・・凹部、9・・・突起部、10・・・貫通孔、11・・・挟持部材、12・・・底板部材、13・・・仕切り部材、14・・・側壁部材、2a〜2c・・・ウエル、20・・・試料、21・・・調湿剤、22・・・セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のウエルが設けられたプレート部材と、
前記プレート部材を覆うカバー部材と、
前記プレート部材と前記カバー部材との間に介在し、前記各部材と密着可能な中間部材とを備え、
前記中間部材には、二以上の孔が設けられ、該孔により、前記プレート部材に設けられた複数のウエルが、連続する二以上のウエルで構成される二以上の群に区分け可能となっていることを特徴とする試料収容プレート。
【請求項2】
プレート部材が、底板部材と仕切り部材と側壁部材とに分離可能であり、該仕切り部材と該側壁部材とを該底板部材上に積載することにより、前記複数のウエルが形成される請求項1に記載の試料収容プレート。
【請求項3】
請求項1または2に記載の試料収容プレートを用い、前記群を構成するウエルのうちの一つに調湿剤または溶媒を、残りのウエルのうちの少なくとも一つに試料をそれぞれ入れ、略一定温度で、所定時間前記試料収容プレートを保持した後、試料を取り出して分析することを特徴とする試料に対する相対湿度または溶媒蒸気の影響を調べる方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の試料収容プレートを用い、前記群を構成するウエルのうちの一つに調湿剤または溶媒を、残りのウエルのうちの少なくとも一つに試料をそれぞれ入れ、略一定温度で、所定時間前記試料収容プレートを保持した後、ウエルごと試料を分析することを特徴とする試料に対する相対湿度または溶媒蒸気の影響を調べる方法。
【請求項5】
請求項2に記載の試料収容プレートを用い、前記群を構成するウエルのうちの一つに調湿剤または溶媒を、残りのウエルのうちの少なくとも一つに試料をそれぞれ入れ、略一定温度で、所定時間前記試料収容プレートを保持した後、仕切り部材と側壁部材を取り除き、底板部材ごと試料を分析することを特徴とする試料に対する相対湿度または溶媒蒸気の影響を調べる方法。
【請求項6】
試料に対する相対湿度または溶媒蒸気の影響を調べるための試験用キットである請求項1または2に記載の試料収容キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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