説明

試料収納容器及び採血用容器

【課題】 何らの構造変更を要することなく既存の容器本体にICタグを容易に装着でき、かつ容器本体からのICタグの取り外しを容易にできるとともに、ICタグの再利用を可能にした試料収納容器を提供する。
【解決手段】 一端に開口13を有し他端が閉塞された試料収納用の容器本体11と、前記開口を密閉状態に封止する、樹脂フィルムに金属箔をラミネートしてなる封止用シート14と、前記封止用シート14上に積層接着された磁性体シート15と、前記磁性体シート15上に接着層16を介して剥離可能に接着され、ICタグ17を収納したICタグ収納体18とを備える構成にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用検査またはゲノム解析などに用いられる血液や尿などの試料を採取収納し保存するのに好適な試料収納容器及び採血針を組み合わせてなる採血用容器に関し、特に、容器内に収納された試料に関する情報の書き込み及び読み出しを非接触で行い得るICタグを備えた試料収納容器及び採血用容器の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
病院や診療所等において、患者の病気診断または検診者の健康診断に際しては、これら患者または検診者から採取した血液、尿、便、体液その他の検体試料を分析し検査する必要がある。
一方、採取した検体試料の保管には、プラスチックまたはガラスからなる専用の試料収納容器が用いられ、さらに、患者または検診者の氏名、年齢、性別、検査項目その他の検査に関する所要事項を記入した検査依頼票またはバーコードを印刷したラベルを容器に貼り付け、この検査依頼票またはバーコードラベルに基づいて容器を含めた検体の識別及び管理を行うようにしている。
【0003】
また、最近では、上記検査依頼票などのラベルを用いた方式のものに代えて、多量の情報を記憶できるICタグを試料収納容器に装着し、このICタグを利用して、容器を含めた検体を識別し管理するようにしている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−257573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、検査依頼票などのラベルを用いた従来の試料収納容器では、ラベルへの所要事項の記入やラベルの容器への貼り付け作業が必要になるため、これらのラベルの作成に時間がかかり、コスト高になるほか、容器及び検体がどの患者または検診者のものかを識別しようとすると、容器を保管用のトレイから取り出して確認する必要があるため、その識別作業が煩雑で面倒になるという問題がある。また、試料収納容器に貼り付けられた検査依頼票などのラベルは簡単に剥がすことができないため、ラベルが貼り付けられたまま試料収納容器を廃棄した場合、その廃棄過程でラベルから患者の病気または検診者の検診情報が第三者に漏れたり、盗まれたりする問題がある。
【0005】
また、従来のICタグを用いた試料収納容器では、ICタグを収納する収納体を設け、このICタグ収納体と容器本体の底部下面に互いに結合される結合部をそれぞれ設け、この両結合部を互いに結合することによりICタグを試料収納容器に装着する方式であるため、容器本体及びICタグ収納体を互いに結合できる専用の構造に形成する必要がある。このため、上記のようなICタグは既存の試料収納容器に利用することができず、コスト高になるという不具合があった。
【0006】
本発明は上記のような従来の問題点を解決するためになされたもので、何らの構造変更を要することなく既存の容器本体にICタグを容易に装着でき、かつ容器本体からのICタグの取り外しを容易にできるとともに、ICタグの再利用を可能にした試料収納容器及び採血針を組み合わせてなる採血用容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために本発明の試料収納容器は、一端に開口を有し他端が閉塞された試料収納用の容器本体と、前記開口を密閉状態に封止する、樹脂フィルムに金属箔をラミネートしてなる封止用シートと、前記封止用シート上に接着層を介して積層接着された磁性体シートと、前記磁性体シート上に接着され、ICタグを収納したICタグ収納体とを備え、前記磁性体シートを含む前記ICタグ収納体は前記接着層の部分から剥離可能に構成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1記載の試料収納容器において、前記容器本体は、前記開口の外周囲に外方へ突出してリング状に形成したフランジ部を有し、前記封止用シートは前記フランジ部の上端面に接着され、前記ICタグは、前記フランジ部の平面形状に対応してリング状に成形された発電兼用のアンテナコイル及び前記アンテナコイルに接続されたICチップを有し、前記ICタグ収納体は、前記アンテナコイルの平面形状に対応してドーナツ板状に形成され、かつ前記フランジ部の上端面に位置する前記封止用シートの上面箇所に前記磁性体シートが接着層を介して接着されるとともに前記アンテナコイルが実装される第1基板部及び前記第1基板部の周縁に該第1基板部から外方へ一体に突出して形成され前記ICチップが実装される第2基板部と、前記アンテナコイルを密封状態に覆うように前記第1基板部に固定されるドーナツ状の第1カバー部及び前記ICチップを密封状態に覆うように前記第2基板部に固定される第2カバー部を有するカバー部材とを備えることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2記載の試料収納容器において、前記第2基板部と前記第2カバー部は前記容器本体の転がり防止部を兼ねることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項2記載の試料収納容器において、前記ドーナツ状第1カバー部の中心穴部に臨む前記封止用シートの外表面に試料注入用の注射針結合部材が設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、採血用容器であって、一端に開口を有し他端が閉塞された採血用の容器本体と、前記開口を密閉状態に封止する、樹脂フィルムに金属箔をラミネートしてなる封止用シートと、前記封止用シート上に接着層を介して積層接着された磁性体シートと、前記磁性体シート上に接着され、ICタグを収納したICタグ収納体と、前記ICタグ収納体を含む前記容器本体の先端部分が係脱可能に嵌合されるホルダーと、前記ホルダーの先端部に装着され前記封止用シートを貫通して前記容器本体内に連通する採血針とを備え、前記磁性体シートを含む前記ICタグ収納体は前記接着層の部分から剥離可能に構成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明は、請求項5記載の採血用容器において、前記容器本体は、前記開口の外周囲に外方へ突出してリング状に形成したフランジ部を有し、前記封止用シートは前記フランジ部の上端面に接着され、前記ICタグは、前記フランジ部の平面形状に対応してリング状に成形された発電兼用のアンテナコイル及び前記アンテナコイルに接続されたICチップを有し、前記ICタグ収納体は、前記アンテナコイルの平面形状に対応してドーナツ板状に形成され、かつ前記フランジ部の上端面に位置する前記封止用シートの上面箇所に前記磁性体シートが接着層を介して接着されるとともに前記アンテナコイルが実装される第1基板部及び前記第1基板部の周縁に該第1基板部から外方へ一体に突出して形成され前記ICチップが実装される第2基板部と、前記アンテナコイルを密封状態に覆うように前記第1基板部に固定されるドーナツ状の第1カバー部及び前記ICチップを密封状態に覆うように前記第2基板部に固定される第2カバー部を有するカバー部材とを備えることを特徴とする。
【0013】
請求項7の発明は、請求項6記載の採血用容器において、前記第2基板部と前記第2カバー部は前記容器本体の転がり防止部を兼ねることを特徴とする。
請求項8の発明は、請求項6記載の採血用容器において、前記ドーナツ状第1カバー部の中心穴部に臨む前記封止用シートの外表面に前記採血針の基部が気密かつ水密に貫通され、かつ前記採血針の基部が抜き取られた時の貫通孔が自動的に閉鎖される物性の採血針結合部材が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の試料収納容器及び採血用容器によれば、容器本体の開口を封止する封止用シート上に接着層を介して接着した磁性体シート及びICタグ収納体を接着層の部分から剥離可能に構成にしたので、容器本体に何らの構造的変更を加える必要がなく、既存の容器本体にICタグを容易に装着できるとともに、ICタグ付きの試料収納容器及び採血用容器を低コストで提供でき、しかも、ICタグ収納部を接着層の部分で容器本体から分離できるため、ICタグを再利用することができる。
【0015】
また、本発明によれば、容器本体の開口を樹脂フィルムに金属箔をラミネートしてなる封止用シートにより封止したので、透湿度及び透気度がゼロで防湿及び防気に優れた試料収納容器を提供できる。しかも、本発明は、封止用シート上に接着層を介して接着した磁性体シートに、ICタグを収納したICタグ収納体を積層接着する構成にしたので、外部のリード/ライト用アンテナから発信された電波はICタグのアンテナコイルを横切って磁性体シートに引き寄せられ吸収されることになり、その結果、封止用シートに金属箔がラミネートされていても、アンテナコイルに到来した電波が金属箔によりアンテナコイル側へ反射されることがなくなるとともに、到来電波の反射に伴う電波の干渉もなくなり、リード/ライト用アンテナとICタグ用アンテナコイルとの間の電波の送受信が確実となって、ICタグへのアクセス及びデータの読み書きを正確に行うことができる。
【0016】
また、本発明の試料収納容器及び採血用容器によれば、第2基板部と第2カバー部が容器本体の転がり防止部を兼ねる構成にしたので、試料を収納した容器及び採血した容器を横に倒して作業台上においても、これらが作業台上を転がるのを未然に防止できる。
【0017】
また、本発明の採血用容器によれば、ICタグ収納体を含む容器本体の先端部分にホルダーが係脱可能に嵌合され、このホルダーの先端部に採血針が装着される構成になっているため、採血時にホルダーに対しICタグ収納体を含む容器本体を交換するだけで、同一のホルダー及び採血針を利用して複数本の容器に採血することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(実施の形態1)
次に、本発明にかかる試料収納容器の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、本発明の試料収納容器は、以下に説明する実施の形態に限定されるものではない。
【0019】
図1は本実施の形態1における試料収納容器の斜視図、図2は本実施の形態1における試料収納容器の分解斜視図、図3(A)は本実施の形態1におけるICタグ収納体を構成するカバー部材を裏から見た裏面図、図3(B)は本実施の形態1におけるICタグのアンテナコイル及びICチップを実装した基板部の平面図、図4は図1の4−4線に沿う拡大断面図、図5は本実施の形態におけるICタグを分離可能にした状態を示す試料収納容器の斜視図である。
【0020】
この実施の形態における試料収納容器10は、図1、図2、及び図4に示すように、上端に開口12及びこの開口12の周囲を囲むように外方へ突出して同心円に形成されたリング状のフランジ部13を有し、かつ下端が閉塞された、プラスチックまたはガラスからなる試料収納用のチューブ状を呈する容器本体11と、この容器本体11の開口12を密閉状態に封止する封止用シート14と、この封止用シート14上に接着層16を介して積層接着された磁性体シート15と、この磁性体シート15上に接着された、ICタグ17を収納するICタグ収納体18とを備え、磁性体シート15を含むICタグ収納体18は接着層16の部分から剥離可能に構成されている。
【0021】
前記封止用シート14は、ポリエチレン等の樹脂フィルムにアルミ箔や銅箔などの金属箔をラミネートして構成されるもので、図2及び図4に示すように、容器本体11の開口12を封止するようにフランジ部13の上端面13aに熱溶融性接着層などにより気密かつ水密に接着されたシール部材141と、このシール部材141の周縁から外方へ突出して設けられた封止用シート剥離用の突片142と、容器本体11の開口12と対向するシール部材141の外表面に形成された、生ゴム等からなる注射針結合部材143を備えている。
【0022】
また、磁性体シート15は、鉄やニッケルなどからなる磁性合金をポリエチレン等の樹脂フィルムの表面に蒸着または電着したものから構成される。そして、磁性体シート15は、前記フランジ部13の平面形状に対応してドーナツ板状に成形され、さらに、磁性体シート15の周縁には、前記封止用シート剥離用の突片142に対応して突片151が磁性体シート15と同一材質で形成されている。
【0023】
前記ICタグ17は、図3に示すように、前記フランジ部13の平面形状に対応してリング状に成形された所定径を有する発電兼用のアンテナコイル171、及びこのアンテナコイル171に接続されたICチップ172を有している。
【0024】
また、前記ICタグ収納体18は、図3及び図4に示すように、アンテナコイル171の平面形状に対応してドーナツ板状に形成され、かつフランジ部13の上端面13aに位置する封止用シート14の上面箇所に磁性体シート15が接着層16を介して接着されるとともにアンテナコイル171が実装される第1基板部181及び前記第1基板部181の周縁に該第1基板部181から外方へ一体に突出して形成され、ICチップ172が実装される第2基板部182と、アンテナコイル171をその上面側から密封状態に覆うようにして第1基板部181に固定されるドーナツ状の第1カバー部183a及びICチップ172をその上面側から密封状態に覆うようにして第2基板部182に固定される第2カバー部183bを有するカバー部材183とを備えている。
【0025】
また、容器本体11の上端側周から外方へ突出して設けられた第2基板部182と第2カバー部183bは、容器本体11の転がり防止部30を構成している。
【0026】
前記ICチップ154は、患者または検診者の氏名、年齢、性別、検査項目その他の検査に関する情報及び試料収納容器10の識別・管理情報を記憶するメモリを備え、このメモリは発電兼用のアンテナコイル1171を通して、外部のリード/ライト用アンテナ(図示せず)から非接触でアクセス可能に構成されているとともにメモリへのデータの読み書きが可能になっている。
【0027】
このようにICタグ17を収納したICタグ収納体18が接着層16により磁性体シート15上に剥離可能に接着された試料収納容器10において、その容器本体11内に血液、尿、体液その他の検体試料を注入する場合は、例えば検体試料を注射器で吸い込ませた後、この注射器の注射針をICタグ収納体18の中央部開口から差し込んで注射針結合部材143に突き刺して貫通させる。この状態で、注射器内の検体試料を容器本体11内に押し出し注入する。
【0028】
また、ICタグ17に検診者の氏名、年齢、性別、検査検体名や検査項目などの情報及び試料収納容器10の識別情報などを書き込む場合は、図示省略したデータ処理用のコンピュータで作成した上記情報に関するデータを図示省略の通信制御部を通してリード/ライト用アンテナに送る。ここで、リード/ライト用アンテナをICタグ17に近接させることにより、このリード/ライト用アンテナから送信される信号電波はICタグ17のアンテナコイル171で受信され、その受信信号をICチップ154に組み込まれた信号処理部でディジタル信号に変換する。このディジタルデータはICチップ154に組み込まれたメモリに記憶される。
【0029】
上記ICタグ17へのデータの書き込み時において、リード/ライト用アンテナから発信された電波はICタグ17のアンテナコイル171を横切って磁性体シート15に引き寄せられ吸収されるため、封止用シート14に金属箔がラミネートされていても、アンテナコイル171に到来した電波が金属箔によりアンテナコイル171側へ反射されることがない。その結果、反射に伴う電波の干渉もなくすことができる。
【0030】
また、図示省略したデータ処理用のコンピュータから通信制御部及びリード/ライト用アンテナICタグ17を通してアクセス指令がICタグ17に送信されると、この指令信号はアンテナコイル171を通してICチップ154で受信され、その指令信号に従ってICチップ154のメモリ部から記憶データが読み出され、そのデータはアンテナコイル171を通してリード/ライト用アンテナに送信される。そして、データ処理用のコンピュータ側では、リード/ライト用アンテナ及び通信制御部を通して取り込んだICタグ17の読み取りデータを処理する。
【0031】
次に、容器本体11からICタグ17を収納したICタグ収納体18を分離する場合について説明する。この場合は、図5に示すように、磁性体シート15を含めたICタグ収納体18を接着層16の部分から剥離する。すなわち、第2基板部182と第2カバー部183bからなる容器本体11の転がり防止部30を指先等で摘んで、図5の矢印A方向に引っ張ることでICタグ収納体18を容器本体11から容易に分離できる。
【0032】
このような本実施の形態にかかる試料収納容器10によれば、容器本体11の開口13を封止する封止用シート14上に接着層16を介して接着した磁性体シート15及びICタグ収納体18を接着層16の部分から剥離可能に構成にしたので、容器本体11に何らの構造的変更を加える必要がなく、既存の容器本体11にICタグ17を収納したICタグ収納体18を容易に装着できるとともに、ICタグ付きの試料収納容器を低コストで提供でき、しかも、ICタグ17を収納したICタグ収納体18を接着層16の部分で容器本体11から分離できるため、ICタグを再利用することができる。
【0033】
また、本実施の形態にかかる試料収納容器10によれば、容器本体11の開口13を樹脂フィルムに金属箔をラミネートしてなる封止用シート14により封止したので、透湿度及び透気度がゼロで防湿及び防気に優れた試料収納容器10を提供できる。しかも、本実施の形態1では、封止用シート14上に接着層16を介して接着した磁性体シート15上に、ICタグ17を収納したICタグ収納体18を積層接着する構成にしたので、外部のリード/ライト用アンテナから発信された電波はICタグ17のアンテナコイル171を横切って磁性体シート15に引き寄せられ吸収されることになるため、封止用シート14に金属箔がラミネートされていても、外部からアンテナコイルに到来した電波が金属箔によりアンテナコイル側へ反射されることがなくなり、到来電波の反射に伴う電波の干渉もなくなるほか、リード/ライト用アンテナとICタグ用アンテナコイルとの間の電波の送受信が確実となり、ICタグへのアクセス及びデータの読み書きを正確に行うことができる。
【0034】
また、本実施の形態にかかる試料収納容器10によれば、容器本体11の上端側周から外方へ突出して設けられた第2基板部182と第2カバー部183bは容器本体11の転がり防止部を構成するので、試料を収納した容器本体11を横に倒して作業台上においても、これらが作業台上を転がるのを未然に防止することができる。
【0035】
また、本実施の形態によれば、ICタグ175を含むICタグ収納体18と容器本体11とを容易に分離することができるため、試料収納容器の廃棄過程でICタグ175を含むICタグ収納体の管理を確実にでき、これにより、メモリに記憶された情報が第三者に漏れたり、盗まれたりするのを防止できるほか、医療廃棄物と電子部品との分別が容易になるという効果がある。
【0036】
(実施の形態2)
図6〜図8により本発明にかかる採血用容器の実施の形態2について説明する。
図6は本実施の形態における採血用容器の全体の構成を示す側面図、図7は図6の7−7線に沿う拡大断面図、図8は本実施の形態における採血用容器に適用されるホルダーの斜視図である。
【0037】
この実施の形態2に示す採血用容器において、上記実施の形態1に示す場合と同一の構成要素には同一符号付して説明すると、採血用容器100は、図1、図2及び図4に示すように、上端に開口12及びこの開口2の周囲を囲むように外方へ突出して同心円に形成されたリング状のフランジ部13を有し、かつ下端が閉塞された、プラスチックまたはガラスからなる試料収納用のチューブ状を呈する容器本体11と、この容器本体11の開口12を密閉状態に封止する封止用シート14と、この封止用シート14上に接着層16を介して積層接着された磁性体シート15と、この磁性体シート15上に接着された、ICタグ17を収納するICタグ収納体18と、このICタグ収納体18を含む前記容器本体11の先端部分に係脱可能に嵌合されるホルダー19と、このホルダー19の先端部に装着され、かつ封止用シート14を貫通して容器本体11内に連通する採血針20とを備え、前記磁性体シート15を含むICタグ収納体18は接着層16の部分から剥離可能に構成されている。
【0038】
前記封止用シート14は、上記実施の形態1に示す場合と同様にポリエチレン等の樹脂フィルムにアルミ箔や銅箔などの金属箔をラミネートしたものからなり、しかも、上記実施の形態1に示す場合と同様の構造と機能を有しているため、その詳細な構成説明は省略する。また、容器本体11の開口12と対向する封止用シート14の中央部の外表面には上記実施の形態1に示す場合と同様に、生ゴム等からなる注射針結合部材143が一体に設けられている。
【0039】
また、前記磁性体シート15も上記実施の形態1に示す場合と同様の構造と機能を有しているため、その詳細な構成説明は省略する。さらに、前記ICタグ17及びICタグ収納体18も上記実施の形態1に示す場合と同様の構造と機能を有しているため、その詳細な構成説明は省略する。また、ICタグ収納体18は、上記実施の形態1に示す場合と同様に、第2基板部182と第2カバー部183bからなる容器本体11の転がり防止部30を備えている。
【0040】
前記ホルダー19は、図6〜図8に示すように、上端面が閉鎖され下端が開放されて容器本体挿入開口191を有する筒状体を呈し、そして、下端外周には鍔部192が外方へ直角に突出して形成されており、さらに、ホルダー19の外周壁には、前記第2基板部182と第2カバー部183bからなる容器本体11の転がり防止部が出し入れ可能に案内される案内部193がホルダー19の容器本体挿入開口191からホルダー19の上端面に向け延在して形成されている。
【0041】
また、ホルダー19の上端面中央には、図7及び図8に示すように、採血針20の中空の支持基部201が貫通する穴194が形成され、さらにホルダー19の上端面には、上記穴194を挟んで一対の採血針取付穴195が形成されている。そして、この一対の採血針取付穴195には採血針支持部材21の係合部211が係止され、この採血針支持部材21の内部には、採血針支持部材21をホルダー19の上端面に安定して保持するための充填材22が充填されている。
【0042】
このように構成した採血針支持部材21の前記注射針結合部材143と対応する中心軸線部には前記採血針20の支持基部201が貫通支持されている。
前記採血針20は、図7に示すように、中空の支持基部201と、この支持基部201の上端に連通され、かつ該上端から上方へ直線状に延在する針部202と、支持基部201の下端に連通され、かつ該下端から下方へ直線状に延在して前記注射針結合部材143に貫通状態に刺し込まれる中空の細管203とから構成されている。
【0043】
このような採血用容器100を用いて採血を行う場合は、図7に示すように、ICタグ収納体18を含む容器本体11の先端部分を、容器本体11の転がり防止部が案内部193に案内されるようにしてホルダー19内に差し込むとともに、採血針20の細管203が注射針結合部材143に貫通状態に刺し込まれた状態に保持する。
このようにした採血用容器100の採血針20の針部202を採血者の静脈に差し込むことにより採血を行う。
【0044】
上記のような本実施の形態2にかかる採血用容器によれば、ICタグ収納体18を含む容器本体11の先端部分にホルダー19が係脱可能に嵌合され、このホルダー19の先端部に採血針20が装着される構成になっているため、採血時にホルダー19に対しICタグ収納体18を含む容器本体11を交換するだけで、同一のホルダー19及び採血針20を利用して複数本の容器に採血することができる。
【0045】
また、本実施の形態2にかかる採血用容器によれば、上記実施の形態1と同様に、容器本体の開口を封止する封止用シート上に接着層を介して接着した磁性体シート及びICタグ収納体を接着層の部分から剥離可能に構成にしたので、容器本体に何らの構造的変更を加える必要がなく、既存の容器本体にICタグを容易に装着できるとともに、ICタグ付きの試料収納容器及び採血用容器を低コストで提供でき、しかも、ICタグを接着層の部分で容器本体から分離できるため、ICタグを再利用することができる。
【0046】
また、本実施の形態2にかかる採血用容器によれば、上記実施の形態1と同様に、容器本体の開口を樹脂フィルムに金属箔をラミネートしてなる封止用シートにより封止したので、透湿度及び透気度がゼロで防湿及び防気に優れた採血用容器を提供できる。しかも、本実施の形態2では、上記実施の形態1と同様に、封止用シート上に接着層を介して接着した磁性体シート上に、ICタグを収納したICタグ収納体を積層接着する構成にしたので、外部のリード/ライト用アンテナから発信された電波はICタグのアンテナコイルを横切って磁性体シートに引き寄せられ吸収されることになり、その結果、封止用シートに金属箔がラミネートされていても、アンテナコイルに到来した電波が金属箔によりアンテナコイル側へ反射されることがなくなるとともに、到来電波の反射に伴う電波の干渉もなくなり、リード/ライト用アンテナとICタグ用アンテナコイルとの間の電波の送受信が確実となって、ICタグへのアクセス及びデータの読み書きを正確に行うことができる。
【0047】
さらに、本実施の形態2にかかる採血用容器によれば、上記実施の形態1と同様に、第2基板部と第2カバー部が容器本体の転がり防止部を兼ねる構成にしたので、試料を収納した容器及び採血した容器を横に倒して作業台上においても、これらが作業台上を転がるのを未然に防止できる。
【0048】
なお、本発明における容器本体11の形状及びICタグ17の形状は上記実施の形態に示すものに限定されるものではない。
また、本発明は、特許請求の範囲に記載された試料収納容器の要旨を逸脱しない範囲において、具体的な構成、機能、作用効果において、他の種々の形態によっても実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本実施の形態1における試料収納容器の斜視図である。
【図2】本実施の形態1における試料収納容器の分解斜視図である。
【図3】(A)は本実施の形態1におけるICタグ収納体を構成するカバー部材を裏から見た裏面図であり、B)は本実施の形態1におけるICタグのアンテナコイル及びICチップを実装した基板部の平面図である。
【図4】図1の4−4線に沿う拡大断面図である。
【図5】本実施の形態におけるICタグを分離可能にした状態を示す試料収納容器の斜視図である。
【図6】本実施の形態における採血用容器の全体の構成を示す側面図である。
【図7】図6の7−7線に沿う拡大断面図である。
【図8】本実施の形態における採血用容器に適用されるホルダーの斜視図である。
【符号の説明】
【0050】
10 試料収納容器
11 容器本体
12 開口
13 フランジ部
13a 上端面
14 封止用シート
15 磁性体シート
16 接着層
17 ICタグ
171 アンテナコイル
172 ICチップ
18 ICタグ収納体
181 第1基板部
182 第2基板部
183 カバー部材
183a 第1カバー部
183b 第2カバー部
19 ホルダー
20 採血針
30 注射針結合部材
100 採血用容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に開口を有し他端が閉塞された試料収納用の容器本体と、前記開口を密閉状態に封止する、樹脂フィルムに金属箔をラミネートしてなる封止用シートと、前記封止用シート上に接着層を介して積層接着された磁性体シートと、前記磁性体シート上に接着され、ICタグを収納したICタグ収納体とを備え、前記磁性体シートを含む前記ICタグ収納体は前記接着層の部分から剥離可能に構成されていることを特徴とする試料収納容器。
【請求項2】
前記容器本体は、前記開口の外周囲に外方へ突出してリング状に形成したフランジ部を有し、前記封止用シートは前記フランジ部の上端面に接着され、前記ICタグは、前記フランジ部の平面形状に対応してリング状に成形された発電兼用のアンテナコイル及び前記アンテナコイルに接続されたICチップを有し、前記ICタグ収納体は、前記アンテナコイルの平面形状に対応してドーナツ板状に形成され、かつ前記フランジ部の上端面に位置する前記封止用シートの上面箇所に前記磁性体シートが接着層を介して接着されるとともに前記アンテナコイルが実装される第1基板部及び前記第1基板部の周縁に該第1基板部から外方へ一体に突出して形成され前記ICチップが実装される第2基板部と、前記アンテナコイルを密封状態に覆うように前記第1基板部に固定されるドーナツ状の第1カバー部及び前記ICチップを密封状態に覆うように前記第2基板部に固定される第2カバー部を有するカバー部材とを備えることを特徴とする請求項1記載の試料収納容器。
【請求項3】
前記第2基板部と前記第2カバー部は前記容器本体の転がり防止部を兼ねることを特徴とする請求項2記載の試料収納容器。
【請求項4】
前記ドーナツ状第1カバー部の中心穴部に臨む前記封止用シートの外表面に試料注入用の注射針結合部材が設けられていることを特徴とする請求項2記載の試料収納容器。
【請求項5】
一端に開口を有し他端が閉塞された採血用の容器本体と、前記開口を密閉状態に封止する、樹脂フィルムに金属箔をラミネートしてなる封止用シートと、前記封止用シート上に接着層を介して積層接着された磁性体シートと、前記磁性体シート上に接着され、ICタグを収納したICタグ収納体と、前記ICタグ収納体を含む前記容器本体の先端部分が係脱可能に嵌合されるホルダーと、前記ホルダーの先端部に装着され前記封止用シートを貫通して前記容器本体内に連通する採血針とを備え、前記磁性体シートを含む前記ICタグ収納体は前記接着層の部分から剥離可能に構成されていることを特徴とする採血用容器。
【請求項6】
前記容器本体は、前記開口の外周囲に外方へ突出してリング状に形成したフランジ部を有し、前記封止用シートは前記フランジ部の上端面に接着され、前記ICタグは、前記フランジ部の平面形状に対応してリング状に成形された発電兼用のアンテナコイル及び前記アンテナコイルに接続されたICチップを有し、前記ICタグ収納体は、前記アンテナコイルの平面形状に対応してドーナツ板状に形成され、かつ前記フランジ部の上端面に位置する前記封止用シートの上面箇所に前記磁性体シートが接着層を介して接着されるとともに前記アンテナコイルが実装される第1基板部及び前記第1基板部の周縁に該第1基板部から外方へ一体に突出して形成され前記ICチップが実装される第2基板部と、前記アンテナコイルを密封状態に覆うように前記第1基板部に固定されるドーナツ状の第1カバー部及び前記ICチップを密封状態に覆うように前記第2基板部に固定される第2カバー部を有するカバー部材とを備えることを特徴とする請求項5記載の採血用容器。
【請求項7】
前記第2基板部と前記第2カバー部は前記容器本体の転がり防止部を兼ねることを特徴とする請求項6記載の採血用容器。
【請求項8】
前記ドーナツ状第1カバー部の中心穴部に臨む前記封止用シートの外表面に前記採血針の基部が気密かつ水密に貫通され、かつ前記採血針の基部が抜き取られた時の貫通孔が自動的に閉鎖される物性の採血針結合部材が設けられていることを特徴とする請求項6記載の採血用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−25144(P2009−25144A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−188354(P2007−188354)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(391006083)三光合成株式会社 (67)
【Fターム(参考)】