説明

試料測定方法及び試料測定装置

【課題】測定試料の性状を正確に評価することが可能なSPR現象を利用した試料測定方法及び試料測定装置を提供する。
【解決手段】一方の面に試料が接触する金属薄膜の他方の面に対して入射光を入射して全反射させた際の、表面プラズモン共鳴による反射光の減衰を観察する試料測定方法であって、前記金属薄膜に対する入射光の入射角を同一の入射角θとした条件下で、前記試料が基準試料であるときの反射率Cと、前記試料が測定試料であるときの反射率Sとを各々測定し、SからCを差し引いた差Dを用いて前記測定試料の性状を評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面プラズモン共鳴現象を利用して測定試料の性状を評価する試料測定方法及び試料測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光を金属薄膜に入射させるとき、入射角がある角度以上になると全反射する。全反射する場合、金属薄膜中に光がまったく入射しないわけではなく、金属薄膜にそって進むエバネッセント波が生じるという性質がある。このエバネッセント波の波数は光の入射角に依存している。一方、金属薄膜は、表面に誘電体があると素励起により表面プラズモンというエネルギー波が生じる。表面プラズモンの波数は金属薄膜に接する物質の屈折率に依存している。
このエバネッセント波と表面プラズモン波の波数が一致するとき、エバネッセント波は表面プラズモンの励起に使われ、反射光として計測される光量が減少する。この現象が表面プラズモン共鳴(SPR)現象である。
【0003】
上述のように、表面プラズモンの波数は金属薄膜に接する物質の屈折率に依存しているので、金属薄膜に接する物質の性状変化により屈折率が変化すると、表面プラズモンの波数が変化し、表面プラズモン共鳴現象の起こるエバネッセント波の波数が変化する。つまり、反射光強度の減少するエバネッセント波の波数が変化する。エバネッセント波の波数は光の入射角に依存するため、反射光強度の減少する入射角、すなわち表面プラズモン共鳴現象の生じる入射光の入射角(共鳴角)が変化する。したがって、この入射角すなわち共鳴角を読みとることにより金属薄膜に接する物質の性状(直接的には屈折率)を知ることができる。金属薄膜の表面に接する物質の屈折率が大きくなるほど共鳴角は大きくなる。また、屈折率は一般的に分子量が大きいほど大きい。
【0004】
このように、エバネッセント波に共鳴する現象がセンシング界面に接する物質の屈折率に依存して発生することから、試料そのものの屈折率変化や、金属薄膜に固定化した物質と試料中の検出対象成分や試薬成分とを反応させることによる金属薄膜界面の屈折率変化等を利用した試料の性状評価が可能である。そのため、SPR現象を利用した種々のSPR測定装置が提案されている(特許文献1、特許文献2)。
【0005】
SPR測定装置を利用した具体的な分析例としては、例えば抗体を金属薄膜等に予め固定化してその抗体と特異的に結合する抗原である薬物を測定することが試みられている。すなわち、抗体を固定化した金属薄膜等に薬物を含む試料液を接触させると、試料液中の薬物が抗体に結合して屈折率が変化する。従って、抗体が固定化されているが未だ薬物が結合していない時の共鳴角と、薬物が結合した後の共鳴角を比較すると、その変化から薬物の量を測定できる。逆に測定対象としての抗原である薬物を金属薄膜等に予め固定化してその薬物と特異的に結合する抗体との結合を試料液中の薬物と競合的に行わせ、試料液中の薬物を測定することも提案されている(特許文献3)。
【特許文献1】実公平7−3318号公報
【特許文献2】特開平7−159319号公報
【特許文献3】特開平10−221249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、金属薄膜に接する物質の屈折率変化によってもたらされる共鳴角の変化はごく僅かである。そのため、金属薄膜に接する物質の性状を正確に評価しようとすると、0.01°程度の角度分解能で共鳴角、すなわち、反射率が極小となる入射角(極小角度)を捉えることが必要である。
ところが、SPR現象を利用した従来の測定装置では、光学系のレンズの汚れやキズ、金薄膜厚さのムラなどにより、SPRカーブ(入射角を横軸とし、反射率を縦軸にとったカーブ)にノイズが生じ、微少な極小角度の変化を測定することが困難であった。
見かけ上ノイズが低減されたスムーズなSPRカーブを得ることは、移動平均を計算する等のデータ処理により可能であるが、その場合、却って誤差をもたらす場合もあり、精度の向上は困難であった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、測定試料の性状を正確に評価することが可能な試料測定方法及び試料測定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記の課題を達成するために鋭意検討した結果、共鳴角の変化と共鳴角付近の反射率の変化に相関関係があることを見いだした。さらに、光学系のレンズの汚れやキズ、金薄膜厚さのムラなどに基づくノイズは、入射光の入射角が同じであれば、金属薄膜に接する試料の性状にかかわらず同程度に出る傾向があり、同一の入射角において得られる反射率の変化は、ノイズの影響を受けにくいことを見いだした。
その結果、本発明者は以下の本発明に想到した。
【0008】
[1]一方の面に試料が接触する金属薄膜の他方の面に対して入射光を入射して全反射させた際の、表面プラズモン共鳴による反射光の減衰を観察する試料測定方法であって、
前記金属薄膜に対する入射光の入射角を同一の入射角θとした条件下で、前記試料が基準試料であるときの反射率Cと、前記試料が測定試料であるときの反射率Sとを各々測定し、SからCを差し引いた差Dを用いて前記測定試料の性状を評価することを特徴とする試料測定方法。
【0009】
[2]入射角θが、入射角を変化させたときにDの極大値Dmaxが得られる入射角θmax及び/又はDの極小値Dminが得られる入射角θminである[1]に記載の試料測定方法。
[3]n(nは2以上の正数)個の入射角θ〜θにおけるDであるD〜Dを用いて、前記測定試料の性状を評価する[1]に記載の試料測定方法。
[4]所定の範囲の入射角θα〜θβにおけるDの絶対値を積算した値を用いて、前記測定試料の性状を評価する[1]に記載の試料測定方法。
【0010】
[5]一方の面に試料が接触する金属薄膜と、該金属薄膜の他方の面側に配置された高屈折プリズムと、前記高屈折プリズムを通して前記金属薄膜に入射光を供給する光源と、前記金属薄膜からの反射光を前記高屈折プリズムを通して検出する検出器と、演算部とを備え、
前記演算部は、前記金属薄膜に対する入射光の入射角を同一の入射角θとした条件下で、前記試料が基準試料であるときに得られる反射率Cと、前記試料が測定試料であるときに得られる反射率Sとを各々記憶すると共に、SからCを差し引いた差Dを用いて前記測定試料の性状を評価することを特徴とする試料測定装置。
[6]前記金属薄膜の前記一方の面に、生化学物質が固定化されている[5]に記載の試料測定装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明の試料測定方法及び試料測定装置によれば、光学系のレンズの汚れやキズ、金薄膜厚さのムラなどに基づくノイズの影響を受けにくく、SPR現象を利用して測定試料の性状を正確に評価することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明に係る試料測定装置の一実施形態を示す構成図である。本実施形態に係る装置はクレッチマン配置と呼ばれる構成を取り、高屈折のプリズム1と、その一面に装着され金属薄膜が設けられている検出素子2と、プリズム1を通して検出素子2の金属薄膜に向けて光を照射する光源3と、プリズム1を通して金属薄膜で反射された反射光を検出する検出器4と、検出器4の信号が入力される演算部5と、金属薄膜に試料が接触する場としてのフローセル6とから基本的に構成されている。また、光源3と金属薄膜との間に偏光板7が配置されている。
【0013】
高屈折のプリズム1には、高屈折のものであれば特に限定されることはなく、各種のプリズム用材を使用することができる。このような高屈折プリズム用材としては、例えば、BK7(nd=1.5163)、SFL6(nd=1.80518)等が好適に使用されるが、その材質はガラスに限定されるものではなくプラスチック等であってもよい。また、その形状も特に限定はなく、半球状の他、三角形等のものが使用できる。
【0014】
検出素子2は、薄膜基板の一方の面に金属薄膜が設けられたものである。薄膜基板としては、カバーグラスと呼ばれるガラス製の薄膜やプラスチック製の薄膜等を使用することができる。金属薄膜としては薄膜化できるものであれば各種の金属を使用することができる。例えば、白金、金、銀、銅、ニッケル、鉄、アルミニウム、ステンレス等が含まれる。特に好ましい金属薄膜としては、金からなる金属薄膜が挙げられる。金属薄膜の厚みは、通常、25〜90nm、好ましくは40〜60nmである。金属薄膜は、薄膜基板の一面側に蒸着、コーティング等の手法により形成することができる。
【0015】
検出素子2は、金属薄膜が形成された面を外側としてプリズム1に装着される。装着の方法に特に限定はなく、マッチングオイルを用いて表面張力を利用して装着する他、接着による方法やアダプターを用いて圧接させる方法等種々の方法が採用できる。
【0016】
検出素子2の金属薄膜の試料と接する側(プリズム1と反対側)には、検出対象物質等に応じて適宜の生化学物質を固定してもよい。生化学物質としては、タンパク質、DNA、糖タンパク、糖脂質、細胞、ウイルス、細菌等が挙げられる。特に試料中の検出対象成分や試薬成分と抗原抗体反応が可能な生化学物質であることが好ましい。抗原抗体反応を利用することにより、選択性の高い定性、定量分析が可能となる。
生化学物質を金属薄膜に固定化する方法としては、抗原に蛋白質等を結合させて物理吸着させる方法や、抗原に金属表面に親和性を持つ官能基、例えばチオール基やジスルフィド基等を結合させてから金属に化学結合させる方法等が挙げられる。
【0017】
光源3としては、波長が200〜1,300nm、好ましくは400〜800nmの各種光源を使用することができる。例えば、650〜800nmの光を発光する発光ダイオードを好適に使用することができる。検出器4としては、例えば、フォトダイオード、リニアアレイ、CCDカメラ等を好適に使用できる。
偏光板7は、p偏光の光波を通過させるp偏光板である。表面プラズモンはp偏光の光波のみと結合するので、s偏光の光波の全部又は一部を除くことにより、SPR現象を高感度で捉えることができる。
【0018】
フローセル6は、試料を受け入れる容器であり、その内面には金属薄膜が露出している。フローセル6には入口と出口が設けられ、測定試料と基準試料の何れかが図示しないポンプ等によって循環ないし通過しながら金属薄膜に接するようになっている。
試料は液体でも気体でもよい。基準試料は、評価対象によって異なるが、例えば水溶液中の特定成分の濃度を測定する場合、純水等を用いることができる。また、抗原抗体反応のように、反応に時間を要する反応を利用する場合は、反応開始前(又は反応開始時)の試料を基準試料として用いることができる。
【0019】
演算部5は、検出器4から得られた反射率の情報に基づき、後述する具体的手順等により測定試料の性状を評価するものである。
なお、本発明において、反射率とは、文字通り反射率だけでなく、入射光強度が一定の場合の反射光強度も反射率であるとみなす。入射光強度が一定であれば、反射光強度は反射率に比例し、実質的に区別する意味がないからである。
また、本発明において評価とは、測定試料中の特定成分の濃度を求めるものの他、測定試料中の特定成分がある濃度を超えているか否かの判定のように二者択一的な判断等も含む概念である。また、評価すべき性状には、濃度だけでなく屈折率、分子量等の物性や反応の進行具合等も含まれる。
【0020】
なお、本発明の試料測定装置では、金属薄膜を薄膜基板上に設けたが、プリズムに直接蒸着してもよいし、プリズムに直接表面張力を利用する等の手段で装着してもよい。また、本実施形態におけるフローセルに変えて、バッチ式のセルを備えてもよい。この場合、金属薄膜がセルの底面位置で露出するようにして、これを構試料液等の入った容器に浸けて使用することが考えられる。
また、偏光板7は、光源3と金属薄膜との間に配置することに代えて、金属薄膜と検出器4との間に配置してもよい。さらに、s偏光の光波の全部又は一部が除去された光源を用いれば、偏光板7は不要である。
【0021】
また、本発明の試料測定方法には、クレッチマン配置に代えて、オットーの光学配置を利用した装置、回折格子を利用した装置、光ファィバーを利用した装置等、公知の種々の形態の表面プラズモン測定装置を用いることができる。
オットーの光学配置では、測定対象の溶液を挟んでプリズムと金属薄膜が配置される。回折格子を利用する場合には、回折格子の表面に金属薄膜が配置される。光ファィバーを利用する場合には、コア表面にコーティングした金属に試料を接触させることによって測定できる。
【0022】
[水溶液中の特定成分の濃度測定]
以下、図1の装置を用いて水溶液中の特定成分の濃度を求める種々の手順を、図2を参照しつつ説明する。
(第1の手順)
まず、フローセル6に基準試料である純水を導入し、入射角θを種々変化させながら反射率を測定し、基準試料の反射率Cのカーブを得、演算部5に記憶させる。次に、フローセル6に測定試料である水溶液(濃度未知)を導入し、入射角θを種々変化させながら反射率を測定し、水溶液の反射率Sのカーブを得、演算部5に記憶させる。
そして、演算部5において、入射角θ毎にSからCを差し引いた差Dを計算し、差Dの中で極大値Dmaxが得られる入射角θmaxを、微分演算等の手段により求め、そのときのDmaxをデータとして取得する。
次に、予め濃度既知の測定試料(標準溶液)で、上記と同様の手順で作成しておいた検量線(濃度と極大値Dmaxとの関係式)に照らして、Dmaxから当該測定試料中の特定成分の濃度を求める。
なお、入射角θmaxは、特定成分の濃度が変化しても通常殆ど変化しないが、若干でも変化する場合は、何れかの濃度の標準溶液で得た入射角θmaxを、その後の他の測定試料(他の濃度の標準試料、濃度未知の測定試料)についても入射角θmaxとみなして使用する。
【0023】
(第2の手順)
まず、フローセル6に基準試料である純水を導入し、入射角θを種々変化させながら反射率を測定し、基準試料の反射率Cのカーブを得、演算部5に記憶させる。次に、フローセル6に測定試料である水溶液(濃度未知)を導入し、入射角θを種々変化させながら反射率を測定し、水溶液の反射率Sのカーブを得、演算部5に記憶させる。
そして、演算部5において、入射角θ毎にSからCを差し引いた差Dを計算し、差Dの中で極小値Dminが得られる入射角θminを、微分演算等の手段により求め、そのときのDminをデータとして取得する。
次に、予め濃度既知の測定試料(標準溶液)で、上記と同様の手順で作成しておいた検量線(濃度と極小値Dminとの関係式)に照らして、Dminから当該測定試料中の特定成分の濃度を求める。
なお、入射角θminは、特定成分の濃度が変化しても通常殆ど変化しないが、若干でも変化する場合は、何れかの濃度の標準溶液で得た入射角θminを、その後の他の測定試料(他の濃度の標準試料、濃度未知の測定試料)についても入射角θminとみなして使用する。
【0024】
(第3の手順)
水溶液(濃度未知)について、第1の手順と同様にして得たDmaxと、第2の手順と同様にして得たDminの絶対値とを合計したDを求め、予め濃度既知の測定試料(標準溶液)で、同様の手順で作成しておいた検量線(濃度とDとの関係式)に照らして、Dから当該測定試料中の特定成分の濃度を求める。
【0025】
(第4の手順)
まず、フローセル6に基準試料である純水を導入し、入射角θを種々変化させながら反射率を測定し、基準試料の反射率Cのカーブを得、演算部5に記憶させる。次に、フローセル6に測定試料である水溶液(濃度未知)を導入し、入射角θを種々変化させながら反射率を測定し、水溶液の反射率Sのカーブを得、演算部5に記憶させる。
そして、演算部5において、入射角θα〜θβにおけるSからCを差し引いた差Dを計算し、これらのDの絶対値を積算した値D(入射角θα〜θβの範囲におけるCのカーブとSのカーブに挟まれた領域の面積に相当する。)を求める。
次に、予め濃度既知の測定試料(標準溶液)で、上記と同様の手順で作成しておいた検量線(濃度とDとの関係式)に照らして、Dから当該測定試料中の特定成分の濃度を求める。
【0026】
(その他の手順)
上記第1〜第3の手順においては、入射角θmax及び/又は入射角θminにおけるDを用いたが、CのカーブからSのカーブが乖離する範囲であれば、何れの入射角θにおけるDを用いてもよい。例えば、入射角θが基準試料の共鳴角である場合のDを用いることができる。
また、上記第2の手順においては、入射角θmax及び入射角θminにおける2つのDを用いたが、3以上の入射角θにおけるDを用いてもよい。
また、上記第4の手順においては、入射角θαと入射角θβを、各々CのカーブからSのカーブが乖離する範囲の下限と上限の入射角としたが、入射角θα〜θβの範囲は、より狭くてもよいし、より広くてもよい。
【0027】
[遅い反応を利用した濃度測定]
抗原抗体反応のように、反応に時間を要する反応を利用する場合は、反応開始前又は反応開始時の試料を基準試料とすることができる。
例えば、抗原を金属薄膜に固定しておき試料中の抗体濃度を測定する場合、試料をフローセルに循環させ、循環当初のSPRカーブを基準試料の反射率Cのカーブとし、その後、抗原抗体反応が終了してSPRカーブの変化が見られなくなったとき(定常状態)のSPRカーブを測定試料の反射率Sのカーブとすることができる。なお、循環開始から定常状態になるまでの時間は、抗原抗体の種類などにより一概には言えないが、一般的には1〜30分である。
得られた反射率Cのカーブと反射率Sのカーブから試料中の抗体濃度を求める手順は、上記[水溶液中の特定成分の濃度測定]において説明したのと同様であり、差Dの極大値Dmax、差Dの極小値Dmin、DmaxとDminの絶対値とを合計したD、入射角θα〜θβにおけるDの絶対値を積算した値D、その他種々の態様の差Dを用いて、試料中の抗体濃度を得ることができる。
【0028】
[反応の経時解析]
抗原抗体反応の進行具合を経時的に解析する場合などにも、反応開始前又は反応開始時の試料を基準試料とすることができる。
例えば、抗原を金属薄膜に固定しておき試料中の抗体との反応の進行具合を経時的に解析する場合、試料をフローセルに循環させ、循環当初のSPRカーブを基準試料の反射率Cのカーブとし、その後、所定時間毎(例えば1秒毎、30秒毎等)のSPRカーブを測定試料の反射率Sのカーブとすることができる。
得られた反射率Cのカーブと反射率Sのカーブから反応の進行具合を評価する手順は、上記[水溶液中の特定成分の濃度測定]において説明したのと同様であり、差Dの極大値Dmax、差Dの極小値Dmin、DmaxとDminの絶対値とを合計したD、入射角θα〜θβにおけるDの絶対値を積算した値D、その他種々の態様の差Dを用いて、所定時間毎における反応の進行具合を評価することができる。
【0029】
[その他の用途]
上記は、特定成分の濃度測定や反応の経時解析を例にとって説明したが、その他屈折率や分子量の測定等の場合も、測定試料と基準試料との性状が乖離するほどカーブCとカーブSが乖離する。したがって、特定成分の濃度測定や反応の経時解析以外の場合にも、上記と同様の手順により測定試料の性状を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る試料測定装置の一実施形態を示す構成図である。
【図2】本発明に係る試料測定方法を説明するための模式的データである。
【符号の説明】
【0031】
1…プリズム、2…検出素子、3…光源、4…検出器、
5…演算部、6…フローセル、7…偏光板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に試料が接触する金属薄膜の他方の面に対して入射光を入射して全反射させた際の、表面プラズモン共鳴による反射光の減衰を観察する試料測定方法であって、
前記金属薄膜に対する入射光の入射角を同一の入射角θとした条件下で、前記試料が基準試料であるときの反射率Cと、前記試料が測定試料であるときの反射率Sとを各々測定し、SからCを差し引いた差Dを用いて前記測定試料の性状を評価することを特徴とする試料測定方法。
【請求項2】
入射角θが、入射角を変化させたときにDの極大値Dmaxが得られる入射角θmax及び/又はDの極小値Dminが得られる入射角θminである請求項1に記載の試料測定方法。
【請求項3】
n(nは2以上の正数)個の入射角θ〜θにおけるDであるD〜Dを用いて、前記測定試料の性状を評価する請求項1に記載の試料測定方法。
【請求項4】
所定の範囲の入射角θα〜θβにおけるDの絶対値を積算した値を用いて、前記測定試料の性状を評価する請求項1に記載の試料測定方法。
【請求項5】
一方の面に試料が接触する金属薄膜と、該金属薄膜の他方の面側に配置された高屈折プリズムと、前記高屈折プリズムを通して前記金属薄膜に入射光を供給する光源と、前記金属薄膜からの反射光を前記高屈折プリズムを通して検出する検出器と、演算部とを備え、
前記演算部は、前記金属薄膜に対する入射光の入射角を同一の入射角θとした条件下で、前記試料が基準試料であるときに得られる反射率Cと、前記試料が測定試料であるときに得られる反射率Sとを各々記憶すると共に、SからCを差し引いた差Dを用いて前記測定試料の性状を評価することを特徴とする試料測定装置。
【請求項6】
前記金属薄膜の前記一方の面に、生化学物質が固定化されている請求項5に記載の試料測定装置。




【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−147311(P2007−147311A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−338475(P2005−338475)
【出願日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)
【Fターム(参考)】