説明

試薬保冷庫及びこれを備えた分析装置

【課題】内部の温度を均一にできるよう冷気を広く循環させることができる試薬保冷庫を提供する。
【解決手段】本発明の試薬保冷庫10は、試薬容器19の収容スペースを内部に有する保冷庫本体21と、保冷庫本体21の内部の空気を冷却する冷却部23と、保冷庫本体21の内面に向けて吹き付ける空気流を生成し、保冷庫本体21内で冷気を循環させる送風部24と、を備える。保冷庫本体21内の内面は、空気流が吹き付けられる被吹付領域Aの中央側からその周囲へ向かって、前記内面の高さが漸次低くなるように傾斜する傾斜面49を有していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試薬を収納した試薬容器を収容して保冷する試薬保冷庫及びこの試薬保冷庫を備えた分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検体と試薬とを混和して調製された測定試料を分析する検体分析装置が知られている。この検体分析装置において、試薬は、試薬容器に収納された状態で所定の試薬保冷庫内に収容され、この試薬保冷庫内において劣化防止のために所定の温度で保冷されている。
下記特許文献1には、試薬保冷庫を備えた自動分析装置が開示されている。この自動分析装置の試薬保冷庫は、有底円筒形状の試薬ケースと、この試薬ケースの上部開口を塞ぐ試薬カバーと、試薬ケース内に設けられ、複数の試薬容器を載置する試薬ディスクと、試薬ケースの底面を冷却する冷却部と、試薬ケース内で冷気を循環させるファンとを備えている。ファンは、試薬ケース内の略中央に配置され、試薬ケース内の底面へ向けて下方へ略垂直に空気流を吹き付けることで、試薬保冷庫内で冷気を循環させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−8611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
検体分析装置の試薬保冷庫には複数の試薬容器が収容されており、全ての試薬容器を均一な温度で保冷するためには、試薬保冷庫の内部全体に広く冷気を循環させることが要求される。しかし、特許文献1に記載された分析装置では、ファンによって生成された空気流が試薬ケースの底面中央に向けて略垂直に吹き付けられるので、水平方向外方への冷気の拡がりが不十分となり、試薬庫内の中央領域と水平方向外側領域とで温度差が生じやすくなる。
【0005】
本発明は、上述のような実情に鑑みてなされたものであり、内部の温度を均一にできるよう冷気を広く循環させることができる試薬保冷庫及びこれを備えた分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の第1の観点に係る試薬保冷庫は、
試薬容器の収容スペースを内部に有する保冷庫本体と、
前記保冷庫本体の内部の空気を冷却する冷却部と、
前記保冷庫本体の内面に向けて吹き付ける空気流を生成し、前記保冷庫本体内で冷気を循環させる送風部と、を備えており、
前記内面は、前記空気流が吹き付けられる被吹付領域の中央側からその周囲に向かって、前記内面の高さが漸次低くなるように傾斜する傾斜面を有していることを特徴とする。
【0007】
本発明の試薬保冷庫においては、送風部によって保冷庫本体の内面に吹き付けられた空気流は、当該内面の被吹付領域に設けられた傾斜面により当該被吹付領域を中心に外側へ向きが変えられ、当該内面に沿って拡散される。したがって、保冷庫本体内の外側まで空気流を行き渡らせて広く冷気を循環させることが可能となり、保冷庫本体内の温度の均一化を図ることができる。
【0008】
(2)前記送風部から空気流が吹き付けられる前記内面が円形状に形成されており、前記送風部は、前記内面の中心線上に配置されており、前記被吹付領域は、前記内面の中心にあることが好ましい。
この構成によれば、空気流が吹き付けられる領域から試薬保冷庫の内面の端部までの距離を均一にすることができ、試薬保冷庫内に空気流を均一に行き渡らせることができる。
【0009】
(3)前記内面は、前記被吹付領域より径方向外側にも傾斜面を有していることが好ましい。
この構成によれば、送風部によって生成された空気流は、被吹付領域に形成された傾斜面に吹き付けられることによって径方向外方へ向きが変えられ、さらに被吹付領域より径方向外側の傾斜面によって径方向外方への拡散が促進される。したがって、保冷庫本体内のより径方向外側の領域へ広く冷気を循環させることが可能となる。
【0010】
(4)前記被吹付領域より外側の傾斜面は、前記被吹付領域の傾斜面より緩やかになるように形成されていることが好ましい。
この構成によれば、送風部から直接的に空気流が吹き付けられる被吹付領域やその付近の傾斜面が急傾斜に形成されることで、空気流の向きをより確実に径方向外方へ変えることができる。
【0011】
(5)前記内面には、前記被吹付領域から径方向外方へ向けて延び、前記空気流を径方向に案内するガイド部材が設けられていることが好ましい。
この構成によれば、被吹付領域に吹き付けられることによって径方向外方へ向きが変えられた空気流をガイド部材によって効率よく径方向外方へ導くことができ、保冷庫本体内のより径方向外側の領域まで空気流を行き渡らせることが可能となる。
【0012】
(6)前記保冷庫本体内に複数の試薬容器を並べた状態で配置する試薬配置部を更に備えており、
前記内面には、前記被吹付領域から径方向外方へ流れる前記空気流の方向を、複数の前記試薬容器の間へ向けた方向に変更する風向変更部材が設けられていることが好ましい。
この構成によれば、複数の試薬容器の間に流れる空気流を生成し、試薬を効率よく冷却することができる。
【0013】
(7)前記試薬配置部は、複数の前記試薬容器を、前記被吹付領域を中心として径方向に複数列で環状に並べて配置し、
前記風向変更部材は、前記被吹付領域から径方向外方へ流れる前記空気流の方向を、前記試薬容器の径方向の列間に向けた方向へ変更することが好ましい。
このような構成によって、複数列の試薬容器の列間に向けて空気流を送り、効率よく試薬を冷却することができる。
【0014】
(8)前記風向変更部材は、前記被吹付領域から径方向外方へ流れる空気流に直交する方向に対して傾斜していることが好ましい。
この構成によれば、風向変更部材は、複数の試薬容器間へ流れる空気流を生成しつつも、径方向外方へも空気流が流れるのを許容し、保冷庫本体内のより径方向外側の領域へ空気流を行き渡らせることができる。
【0015】
(9)前記送風部が、前記保冷庫本体内の底面に向けて下方に空気流を吹き付けるように構成されている場合、前記冷却部は、前記保冷庫本体内の底面を冷却するように構成され、前記保冷庫本体内の底面に形成された前記傾斜面の低位側には、結露水を収集する結露水収集部が設けられていることが好ましい。
冷却部によって冷却された保冷庫本体内の底面に空気流が吹き付けられると、当該底面において結露が発生するが、底面に付着した結露水は傾斜面に沿って流れるため、低位側の結露水収集部に収集することができる。
【0016】
(10)本発明の第2の観点に係る分析装置は、上述の(1)〜(9)のいずれかに記載された試薬保冷庫を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、保冷庫本体内で冷気を広く循環させ、内部の温度を均一にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る試薬保冷庫を備えた検体分析装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示される検体分析装置の概略構成図である。
【図3】試薬保冷庫の内部を示す平面図である。
【図4】試薬保冷庫の概略的な断面図である。
【図5】保冷庫本体内の底面を示す平面図である。
【図6】試薬保冷庫の要部を拡大して示す断面図である。
【図7】ガイド部材及び風向変更部材の作用を説明する斜視図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る試薬保冷庫を示す概略的な断面図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態に係る試薬保冷庫を示す概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔第1の実施の形態〕
以下、添付図面を参照しつつ、本発明に係る検体分析装置の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係る試薬保冷庫を備えた検体分析装置の全体構成を示す斜視図である。
【0020】
検体分析装置1は、例えば、血液凝固測定装置、免疫分析装置、又は生化学分析装置であり、人体から採取した検体と試薬とを混和して調製された測定試料に対して所定の測定を行い、その測定結果をもとに検体の分析を行う装置である。検体分析装置1は、測定装置2と、この測定装置2に電気的に接続された制御装置4とから構成されている。また、測定装置2の内部には、試薬が収納された複数の試薬容器を収容し、保冷するための試薬保冷庫10が設けられている。
【0021】
図2は、図1に示される検体分析装置の概略構成図である。検体分析装置1の測定装置2は、前記試薬保冷庫10の他、検体供給部12、搬送駆動部13、分注部14、測定部15、制御回路16等を備えている。検体供給部12は、検体を収納した検体容器(試験管等)が保持された検体ラックがセットされ、この検体ラックを搬送することによって各検体容器を所定の分注位置に位置づける機能を有している。また、搬送駆動部13は、試薬保冷庫10内に収容された試薬容器を搬送して所定の分注位置に位置づける機能を有している。
【0022】
分注部14は、測定試料を調製するために、所定の分注位置に位置づけられた検体容器や試薬容器から検体や試薬を分注する機能を有する。測定部15は、検体と試料とが混和されることによって調製された測定試料に対して所定の測定を行う機能を有している。制御回路16は、CPU、ROM,RAM等のメモリー、通信インタフェース等を備えており、検体供給部12、試薬保冷庫10、搬送駆動部13、分注部14、及び測定部15等の動作を制御するとともに、制御装置4に通信可能に接続され、制御装置4との間で各種情報の送受信を行う機能を有している。
【0023】
図1に示されるように、制御装置4は、パーソナルコンピュータ401(PC)等からなり、制御部4aと、表示部4bと、情報を入力するためのキーボード4cとを含んでいる。制御部4aは、測定装置2の制御回路16に当該測定装置2の動作開始信号を送信するとともに、測定装置2で得られた測定結果についての情報を分析するための機能を有している。また、表示部4bは、制御部4aで得られた分析結果等を表示する機能を有している。
【0024】
図3は、試薬保冷庫の内部を示す平面図、図4は、試薬保冷庫の概略的な断面図である。
試薬保冷庫10は、測定試料の調製に使用される試薬を収納した試薬容器19を低温の状態、例えば約10℃で冷蔵保存する。試薬は、低温で保存されることによって変質が抑制される。
【0025】
試薬保冷庫10は、内部に試薬容器19の収容スペースを有する保冷庫本体21と、保冷庫本体21の内部に配置され、複数の試薬容器19を所定の配列で配置する試薬配置部22と、保冷庫本体21の内部の空気を冷却する冷却器(冷却部)23と、保冷庫本体21の内部の空気を循環させる送風ファン(送風部)24とを有している。
【0026】
保冷庫本体21は、円板状の底壁26と、この底壁26の外周から上方へ立ち上がる周壁27とによって有底円筒状に形成されたケース28と、このケース28の上方開口を開閉可能に閉鎖する蓋(上壁)29とを有する。ケース28と蓋29によって囲まれた密閉空間が冷却室とされ、この冷却室内に試薬配置部22が設けられている。ケース28の底壁26は、外側層31と内側層32との2層構造に形成されている。外側層31は、発泡スチロール等の熱伝導性の低い材質で形成され、内側層32は、アルミニウム等の熱伝導性の高い材質で形成されている。周壁27及び蓋29は、外側層31と同様に、熱伝導性の低い発泡スチロール等の材質で形成されている。
【0027】
試薬配置部22は、保冷庫本体21の中心軸線Oを中心とする円環形状の第1試薬ホルダー34と、この第1試薬ホルダー34の径方向外側に、当該第1試薬ホルダー34と同心円状に配置された円環形状の第2試薬ホルダー35とを備えている。第1試薬ホルダー34および第2試薬ホルダー35には、それぞれ、試薬容器19を保持するための溝状又は穴状の複数の第1保持部36及び第2保持部37が円環状に並べて形成されている。そして、第1保持部36及び第2保持部37にそれぞれ試薬容器19を挿入することによって、当該試薬容器19が第1試薬ホルダー34及び第2試薬ホルダー35に保持される。
【0028】
本実施の形態の試薬配置部22は、大小2種類の試薬容器19a,19bを配置することが可能なように構成されており、第1試薬ホルダー34は大きい試薬容器19aを配置するために使用され、第2試薬ホルダー35は小さい試薬容器19bを配置するために使用される。試薬容器19aは、試薬容器19bよりも背が高く、前後の長さ(ホルダー径方向の長さ)が長く形成されている。また、第1試薬ホルダー34及び第2試薬ホルダー35は、大小の試薬容器19a,19bの上端の高さがほぼ一致するように各試薬容器19a,19bを配置している。
【0029】
図4に示されるように、第1試薬ホルダー34及び第2試薬ホルダー35は、それぞれ円環状の第1回転テーブル38及び第2回転テーブル39によって下側から支持されている。第1回転テーブル38及び第2回転テーブル39の下部には、円環状の第1リングギヤ40及び第2リングギヤ41が設けられ、この第1リングギヤ40及び第2リングギヤ41は、それぞれ図示しないベアリングやローラによって、保冷庫本体21の底壁26から上方に離れた位置に回転自在に支持されている。また、この第1リングギヤ40及び第2リングギヤ41には、保冷庫本体21の底壁26に回転自在に支持された第1駆動ギヤ42及び第2駆動ギヤ43が噛み合っており、この第1駆動ギヤ42及び第2駆動ギヤ43は、前述の搬送駆動部13(図2参照)を構成するステッピングモータ等によって回転駆動される。
【0030】
第1リングギヤ40及び第2リングギヤ41は、保冷庫本体21の中心軸線Oを中心としてそれぞれ時計方向および反時計方向の両方に独立して回転することが可能である。そして、この第1リングギヤ40及び第2リングギヤ41の回転によって、第1試薬ホルダー34及び第2試薬ホルダー35がそれぞれ回転し、これらに保持された各試薬容器19が所定の分注位置に搬送される。
【0031】
なお、図示はしていないが、保冷庫本体21の蓋29には、所定の分注位置に搬送された試薬容器19から試薬を吸引するために分注部14のピペットが挿入される吸引孔や、試薬ホルダーに対する試薬容器19の補充や交換を行うために部分的に開閉可能な開閉部等が形成される。
【0032】
図4に示されるように、保冷庫本体21の底壁26を構成する内側層32は、外側層31の一部が切り欠かれることによって、その下面の一部が下方に露出している。そして、内側層32の露出面に冷却器23が設けられている。本実施の形態では、3個の冷却器23が、保冷庫本体21の中心軸線Oを中心に周方向等間隔(120°間隔)に配置される(図5参照)。
【0033】
本実施の形態の冷却器23は、ペルチェ素子を用いたものであり、通電されることによって内側層32から熱を奪い、当該内側層32を冷却する。冷却器23は、熱伝導性の高い内側層32を直接的に冷却することによって、この内側層32を冷却媒体として用い、保冷庫本体21内の空気を冷却するように構成されている。なお、冷却器23としては、ペルチェ素子を用いたものに限らず、例えば伝熱層を空冷または水冷によって冷却する構成であってもよい。
【0034】
送風ファン24は、保冷庫本体21の中心軸線O上であって、保冷庫本体21の底壁26及び蓋29から上下方向に離れた位置に配置されている。そして、送風ファン24は、上方から吸い込んだ空気を下方へ吹き出すことによって、下方へ向けて流れる空気流を生成する。送風ファン24によって生成された空気流は、保冷庫本体21内の底面(底壁26の上面)の中央部に吹き付けられる。底壁26の内側層32は、冷却器23によって直接冷やされているので、この内側層32に直接空気流を吹き付けることによって、保冷庫本体21内の空気を効率よく冷却することができる。また、複数の冷却器23が、中心軸線Oを中心に等間隔で配置されているので、周方向に関して保冷庫本体21内の空気をほぼ均等に冷却することができる。なお、冷却器23は、3個に限らず、1個、2個、又は4個以上設けてもよい。冷却器23が1個である場合には、底壁26の中央部を冷却することが好ましい。
【0035】
図5は、保冷庫本体内の底面を示す平面図である。図6は、試薬保冷庫の要部を拡大して示す断面図である。
図4〜図6に示されるように、保冷庫本体21内の底面(底壁26の上面)は、中心軸線O上の中央部からその径方向外方へ向かって下り勾配で傾斜する傾斜面49,50に形成されている。具体的に、保冷庫本体21内の底面の中心軸線O上には、上方に突出する円錐台形状の第1突出部48が形成されている。この第1突出部48の頂面は略水平な平坦面で、外周面が径方向外側ほど低位となる傾斜面(第1の傾斜面)49に形成されている。さらに、第1突出部48よりも径方向外側は、第1の傾斜面49よりも緩やかに傾斜する第2の傾斜面50に形成され、この第2の傾斜面50は、保冷庫本体21内の底面のほぼ径方向外端部にまで到っている。
【0036】
第1の傾斜面49は、その少なくとも一部又は全部が、送風ファン24によって空気流が直接的に吹き付けられる領域(被吹付領域)Aに形成されている(図4参照)。したがって、保冷庫本体21内の底面に吹き付けられた空気流は、第1の傾斜面49によって径方向外方へ向く流れに方向が変更される(図4及び図6の矢印a1参照)。また、第1の傾斜面49によって方向が変更された空気流は、第2の傾斜面50に沿ってさらに径方向外側へ流れ(矢印a2参照)、保冷庫本体21の周壁27にまで到る。
【0037】
周壁27に到達した空気流は、周壁27に沿って上方へ向きが変えられ(矢印a3参照)、周壁27に沿って上方へ流れる。その後、空気流は蓋29によって向きが変えられて保冷庫本体21の中心軸線Oへ向かう流れとなり(矢印a4参照)、送風ファン24によって吸い込まれた後(矢印a5参照)、再び下方へ吹き出される。
【0038】
以上のような流れa1〜a5によって、冷却器23によって冷却された空気(冷気)が保冷庫本体21の内部全体を循環し、保冷庫本体21の内部全体の温度を均一に維持する。
なお、保冷庫本体21は、底壁26の内側層32のみが熱伝導性の高い材質で形成され、周壁27や蓋29は熱伝導性の低い材質により形成されているので、周壁27や蓋29における結露の発生を防止することができ、試薬容器に結露水が付着することが防止できる。
【0039】
図3及び図4に示されるように、送風ファン24の外周部には、円盤状の仕切り板52が設けられている。この仕切り板52は、第1,第2試薬ホルダー34,35に配置されている試薬容器19よりもやや下側に配置され、第1試薬ホルダー34に接近する位置にまで径方向外方へ延びている。この仕切り板52によって、送風ファン24から下方へ吹き出した空気流が、第1試薬ホルダー34の径方向内側を短絡して送風ファン24に直接吸い込まれないように制御される。
【0040】
図4〜図6に示されるように、保冷庫本体21内の底面には、空気流を径方向外方へ導く複数のガイド部材53が設けられている。このガイド部材53は薄板材からなり、底面から上方に突出するとともに、第1突出部48の外周面(第1の傾斜面)49から放射状に径方向外方へ延びている。また、ガイド部材53は、第1の傾斜面49及び第2の傾斜面50の範囲全体にわたって形成されている。
【0041】
上述のように送風ファン24によって第1の傾斜面49に吹き付けられた空気流は、当該第1の傾斜面49によって径方向外方へ向きが変えられた後も、周壁27に到るまで径方向外方(放射方向)への流れが維持されるようにガイド部材53によって方向が制御される。したがって、空気流をより確実に保冷庫本体21の周壁27にまで到らせることができ、冷気をより広い範囲で循環させることができる。
【0042】
図6に示されるように、ガイド部材53は、径方向内側寄りの部分53aが第1突出部48と同程度に高く形成され、径方向外側寄りの部分53bが、内側寄りの部分53aよりも低く形成されている。したがって、送風ファン24によって生成された空気流は、第1の傾斜面49に吹き付けられた直後に背の高いガイド部材53の部分53aによって確実に径方向外方へ流れるように方向が制御される。
【0043】
ガイド部材53は、底壁26の内側層32と同様にアルミニウム等の熱伝導性の高い材質から形成されており、冷却器23によって直接的に冷却される。そのため、送風ファン24によって生成された空気流は、ガイド部材53に触れることによって結露し、ガイド部材53には結露水が付着する。
ガイド部材53の背の高い部分53aは、第1試薬ホルダー34よりも径方向内側の範囲に設けられている。そして、この背の高い部分53aは当然に面積も広くなるため、空気の結露が促進される。したがって、送風ファン24から吹き出された空気は、第1試薬ホルダー34の下方領域に到るまでにガイド部材53の背の高い部分53aによって十分に除湿され、湿度の低い状態で保冷庫本体21内を循環することになる。したがって、試薬容器19の表面や周壁27、蓋29等で結露が生じるのを防止することができる。
【0044】
なお、保冷庫本体21の底壁26やガイド部材53に付着した結露水は、第1の傾斜面49及び第2の傾斜面50に沿って径方向外側に流れる。そして、保冷庫本体21の底壁26の第2の傾斜面50よりも径方向外側には、下方に凹む凹溝54が全周に形成されており、結露水は、この凹溝54内に収集されるようになっている。したがって、凹溝54は、結露水収集部を構成し、第1の傾斜面49及び第2の傾斜面50は、空気流を制御するだけでなく、結露水を凹溝54へ導く水勾配としての機能をも有している。
【0045】
なお、凹溝54には、一又は複数のドレン孔55が形成され、このドレン孔55は、排水チューブ56を介して吸引装置(図示略)が接続されている。そして、一定の時間毎に吸引装置を作動させることによって凹溝54に貯まった結露水を排出することができるように構成されている。
【0046】
図5に示されるように、各ガイド部材53の径方向外端部には、ほぼ周方向に突出する風向変更部材57が設けられている。図7は、ガイド部材53及び風向変更部材57の作用について説明する斜視図である。この風向変更部材57は、ガイド部材53に沿って径方向外方へ流れる空気流の方向を上向きの流れ(矢印a6参照)に変更するものである。そして、図5に示されるように、風向変更部材57は、試薬容器19aの列と試薬容器19bの列との径方向の間に配置されている。したがって、この風向変更部材57によって上向きに方向が変えられた空気流は、図4及び図6にも示されるように、試薬容器19aと試薬容器19bとの間に導かれ(矢印a6参照)、当該間を通って保冷庫本体21内の上部側へ流れる。このような流れa6を生成することによって試薬容器19a,19bをより効率よく冷却することができる。
【0047】
なお、風向変更部材57は、ガイド部材53に対して直交、すなわち、径方向外側へ向かう空気流に対して直交していることが、当該空気流を上向きに変更するうえで最も好ましいが、本実施の形態の風向変更部材57は、図5及び図7に示すように、ガイド部材53に直交するのではなく、90°よりもやや大きい角度α(図7参照)で交差している。これは、風向変更部材57にあたった空気流を完全に上向きに変更するのではなく、空気流が径方向外側へ向けて斜めに流れるのを許容し、保冷庫本体21の周壁27にまで到る空気流の量を確保するためである。また、周方向に隣接する2つのガイド部材53に形成された各風向変更部材57の間には、隙間tが形成されており、この隙間tが空気流の流通口となって空気流が径方向外方へ流れるようになっている(矢印a7参照)。これによっても、保冷庫本体21の周壁27にまで到る空気流の量を十分に確保することができる。
【0048】
〔第2の実施の形態〕
図8は、本発明の第2の実施の形態に係る試薬保冷庫を示す概略的な断面図である。
本実施の形態の試薬保冷庫10には、蓋29の内面(下面)の中心軸線O上に、下方に突出する第2突出部58が形成されている。この第2突出部58は、円錐台形状で、頂面が略水平な平坦面であり、外周面が径方向外側へ向けて漸次低くなる傾斜面(第3の傾斜面)59に形成されている。この第2突出部58は、底壁26に形成された第1突出部48に上下方向に対向し、実質的に第1突出部48を上下反転させた形状に形成されている。また、蓋29の下面は、第2突出部58を除き、略水平な面に形成されている。
【0049】
本実施の形態では、第2突出部58によって、空気流を適切に送風ファン24に導き(矢印a5参照)、より円滑に冷気を循環させることができる。
なお、図8に示されるように、底壁26と周壁27との境界部や、周壁27と蓋29との境界部には、これら境界部において空気流の方向をより円滑に変えるために、アール形状の導風部60を形成することが好ましい。
【0050】
〔第3の実施の形態〕
図9は、本発明の第3の実施の形態に係る試薬保冷庫10を示す概略的な断面図である。
本実施の形態の試薬保冷庫10は、送風ファン24によって生成される空気流が上向きとされている点で第1、第2の実施の形態と異なっている。したがって、本実施の形態には、試薬保冷庫10の蓋29の内面に、第1の傾斜面49を有する第1突出部48が形成され、第2の傾斜面50も形成されている。また、図示はしていないが、蓋29の内面には、第1の実施の形態で説明したガイド部材53や風向変更部材57等が設けられる。したがって、空気流の方向が逆であることを除き、第1,第2の実施の形態と略同様の作用効果を奏する。
また、本実施の形態の試薬保冷庫10は、底壁26の上面の中心軸線O上に、第2の実施の形態で説明した第2突出部58が形成されている。したがって、空気流を適切に送風ファン24に導き、より円滑に冷気を循環させることができる。
【0051】
本発明は、上記実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で適宜変更することが可能である。
例えば、保冷庫本体21内の底面に形成された第1の傾斜面49と第2の傾斜面50とは、同一の傾斜角度であってもよい。すなわち、保冷庫本体21内の底面は、第1の傾斜面49と第2の傾斜面50との区別無く、一様な傾斜角度の傾斜面に形成されていてもよい。
【0052】
また、保冷庫本体21内の底面には、空気流の被吹付領域Aのみに傾斜面が形成されていてもよい。すなわち、当該底面には第1の傾斜面49のみが形成され、その径方向外側が略水平な面であってもよい。この場合、凹溝54は、第1の傾斜面49の径方向外側に隣接して形成すればよい。
【0053】
上記実施の形態では、第1の傾斜面49を有する第1突出部48が円錐台に形成されていたが、外周面が多角形状の角錐台に形成されていてもよい。また、突出部は、先端が尖った円錐形状又は角錐形状に形成されていてもよい。第2,第3の実施の形態で示した第2突出部58についても、角錐台形状、円錐形状、角錐形状に形成されていてもよい。
【0054】
保冷庫本体21は、円柱形状(円筒形状)に限らず、立方体、直方体形状等であってもよい。また、上記実施の形態の送風ファン24は、保冷庫本体21内の底壁26又は蓋29の内面に対して空気流を吹き付けるものであったが、周壁(側壁)27の内面に空気流を吹き付けるものであってもよい。また、送風部24は、保冷庫本体21外の空気を取り入れて保冷庫本体21の内面に吹き付けるように構成されていてもよい。
【0055】
本発明は、試薬保冷庫10に収容される試薬容器19の形状や大きさによって何ら限定されるものではない。例えば、試薬容器19は、円筒形状のボトルであってもよいし、収容される全ての試薬容器19の形状が同一であってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1: 検体分析装置
10: 試薬保冷庫
19: 試薬容器
21: 保冷庫本体
22: 試薬配置部
23: 冷却器(冷却部)
24: 送風ファン(送風部)
26: 底壁
49: 第1の傾斜面
50: 第2の傾斜面
53: ガイド部材
54: 凹溝(結露水収集部)
57: 風向変更部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬容器の収容スペースを内部に有する保冷庫本体と、
前記保冷庫本体の内部の空気を冷却する冷却部と、
前記保冷庫本体の内面に向けて吹き付ける空気流を生成し、前記保冷庫本体内で冷気を循環させる送風部と、を備えており、
前記内面は、前記空気流が吹き付けられる被吹付領域の中央側からその周囲に向かって、前記内面の高さが漸次低くなるように傾斜する傾斜面を有していることを特徴とする試薬保冷庫。
【請求項2】
前記送風部から空気流が吹き付けられる前記内面が円形状に形成されており、
前記送風部は、前記内面の中心線上に配置されており、
前記被吹付領域は、前記内面の中心にある請求項1に記載の試薬保冷庫。
【請求項3】
前記内面は、前記被吹付領域より径方向外側にも傾斜面を有している請求項2に記載の試薬保冷庫。
【請求項4】
前記被吹付領域より外側の傾斜面は、前記被吹付領域の傾斜面より緩やかになるように形成されている請求項3に記載の試薬保冷庫。
【請求項5】
前記内面には、前記被吹付領域から径方向外方へ向けて延び、前記空気流を径方向に案内するガイド部材が設けられている請求項2〜4のいずれかに記載の試薬保冷庫。
【請求項6】
前記保冷庫本体内に複数の試薬容器を並べた状態で配置する試薬配置部を更に備えており、
前記内面には、前記被吹付領域から径方向外方へ流れる前記空気流の方向を、複数の前記試薬容器の間へ向けた方向に変更する風向変更部材が設けられている請求項1〜5のいずれかに記載の試薬保冷庫。
【請求項7】
前記試薬配置部は、複数の前記試薬容器を、前記被吹付領域を中心として径方向に複数列で環状に並べて配置し、
前記風向変更部材は、前記被吹付領域から径方向外方へ流れる前記空気流の方向を、前記試薬容器の径方向の列間に向けた方向へ変更する請求項6に記載の試薬保冷庫。
【請求項8】
前記風向変更部材は、前記被吹付領域から径方向外方へ流れる前記空気流に直交する方向に対して傾斜している請求項6又は7に記載の試薬保冷庫。
【請求項9】
前記送風部は、前記内面としての前記保冷庫本体内の底面に向けて下方に空気流を吹き付けるように構成されており、
前記冷却部は、前記保冷庫本体内の底面を冷却するように構成されており、
前記保冷庫本体内の底面に形成された前記傾斜面の低位側には、結露水を収集する結露水収集部が設けられている請求項1〜8に記載の試薬保冷庫。
【請求項10】
請求項1〜9に記載の試薬保冷庫を備えている分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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