説明

試験測定装置及び信号デジタル化方法

【課題】ノイズを減らしながら広帯域入力信号をデジタル化する。
【解決手段】スプリッタ10は、特定帯域幅を有する入力信号12を複数の分配信号14及び16へと分配する。高調波ミキサ18及び24は、分配信号14及び16の夫々を、関連する高調波信号20及び26と混合し、関連する混合信号22及び28を生成する。デジタイザ30及び32は、夫々の混合信号22及び28をデジタル化する。高調波ミキサ18及び24に関する高調波信号の少なくとも1つの1次高調波は、デジタイザ30及び32の少なくとも1つの有効サンプル・レートと異なっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験測定装置に関し、特に、信号をデジタル化するデジタイザを含む試験測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル・オシロスコープのような試験測定装置で利用可能な帯域幅は、入力信号をデジタル化するアナログ・デジタル・コンバータ(ADC)によって制限される傾向にある。ADCの利用可能な帯域幅は、アナログ帯域幅未満か、又は、最大サンプル・レートの半分未満に制限される。既存のADCを用いて、より高い帯域幅の信号をデジタル化する種々の技術が開発されてきている。
【0003】
効率良く、より高いサンプル・レートを実現するためには、例えば、同期時間インタリーブを用いることができる。時間的なずれ(オフセット)をもって1つのサンプル期間中に1つの入力信号を複数のADCでサンプルするものである。デジタル化された複数の出力は、1つに合成されて、サンプル・レートは事実上掛け算されたものとなる。しかし、ADCのアナログ帯域幅が制限要因となれば、より高い帯域幅を実現するために、複数経路のインタリーブ・トラック・ホールド増幅回路のような高帯域幅フロント・エンドが必要となる。
【0004】
従来のトラック・ホールド増幅回路ベースのインタリーブ・システムでは、トラック・ホールド増幅回路をADCチャンネル帯域幅と同様か又はもっと遅いサンプル・レートでクロックすることとなるので、ADCには、ホールドされた値に安定する十分な時間がある。ADCは、各ホールド値をデジタル的に捕捉するために、トラック・ホールド増幅回路と同期してクロックされる。トラック・ホールド増幅回路におけるこうした制限は、回りまわって、ADCサンプル・レートを制限する。更には、ナイキスト・サンプリング定理を満たすため、ADCサンプル・レートは、ADCチャンネルの帯域幅の2倍よりも小さくされる。結果として、所望の性能を実現するには、多数の時間インタリーブADCチャンネルが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−510074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ADCチャンネルの個数が増加すると、全体的なコストと、システムの複雑さも増加する。例えば、フロント・エンド・チップは、望ましい値に達する正味の総合サンプル・レートを得るためには、今では、付加的なADC回路、クロック回路などを含んだより多数のADCチャンネルを駆動しなければならない。チップのサイズ及び複雑さは、通信パスがより長くなるという結果を生じ、それ故、寄生容量、電磁気的ノイズ、設計の困難さなどが増加する結果を生じる。
【0007】
他の技術では、入力信号の複数のサブ帯域(sub-bands)を、より低いサンプル・レートのADCを通過できる周波数範囲へとダウンコンバートさせるというものもある。言い換えると、広い入力帯域幅を、複数の低い帯域幅のADCチャンネルに分割させるというものである。デジタル化した後、これらサブ帯域は、それぞれの元の周波数範囲にデジタル的にアップコンバートされ、そして、入力信号を表すものに結合される。この技術の重大な欠点は、任意の入力信号の周波数の内容を1つだけのADCチャンネルに送って、その入力信号をデジタル化するときに、先天的にノイズというペナルティがあることである。再結合された出力は、1つのADCだけからの信号エネルギーを含むが、複数全てのADCからのノイズ・エネルギーを含み、それ故、信号対ノイズ比(SNR)を悪化させる。
【0008】
従って、非同期時間インタリーブ・アキテクチャの全ADCチャンネルによって、任意の周波数の入力信号をデジタル化し、それによってノイズのペナルティを回避するための改善されたデバイス及び方法へのニーズが残っている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の概念1は、試験測定装置であって、
特定帯域幅を有する入力信号を、該入力信号のほぼ全帯域幅を夫々含む複数の分配信号に分配するスプリッタと、
複数の上記分配信号の中の関連する1つの分配信号を関連する高調波信号と混合し、関連する混合信号を夫々生成する複数の高調波ミキサと、
複数の上記高調波ミキサの中の関連する1つの高調波ミキサの混合信号を夫々デジタル化するよう構成される複数のデジタイザとを具え、
複数の上記高調波ミキサに関連する高調波信号の少なくとも1つの1次高調波が、複数の上記デジタイザの少なくとも1つの有効サンプル・レートと異なっていることを特徴としている。
【0010】
本発明の概念2は、概念1の試験測定装置であって、複数の上記高調波ミキサに関連する高調波信号の少なくとも1つの上記1次高調波が、複数の上記デジタイザの少なくとも1つの上記有効サンプル・レートの整数倍又は約数ではないことを特徴としている。
【0011】
本発明の概念3は、概念1の試験測定装置であって、複数の上記高調波ミキサに関連する高調波信号の少なくとも1つの上記1次高調波が、複数の上記デジタイザの少なくとも1つの上記有効サンプル・レートと、複数の上記デジタイザの少なくとも1つの上記有効サンプル・レートの半分の間にあることを特徴としている。
【0012】
本発明の概念4は、概念1の試験測定装置であって、上記混合信号の夫々が、1つのサブ帯域の帯域幅内に、上記入力信号の少なくとも2つのサブ帯域を含むことを特徴としている。
【0013】
本発明の概念5は、概念4の試験測定装置であって、上記1つのサブ帯域がベースバンド・サブ帯域であることを特徴としている。
【0014】
本発明の概念6は、概念4の試験測定装置であって、上記混合信号の夫々が、上記1つのサブ帯域の帯域幅内に、入力信号の各サブ帯域を含むことを特徴としている。
【0015】
本発明の概念7は、概念1の試験測定装置であって、複数のデジタル・フィルタを更に具え、該デジタル・フィルタの夫々は、関連するデジタル化混合信号をフィルタ処理することで、上記デジタル化混合信号に関連する周波数応答が、関連する上記高調波信号の上記1次高調波の周波数の半分に関して、ほぼ相補的になるよう構成される。
【0016】
本発明の概念8は、概念7の試験測定装置であって、複数のデジタル高調波ミキサを更に具え、該デジタル高調波ミキサの夫々が、上記デジタル化混合信号に関連する上記高調波信号と周波数及び位相に関してほぼ同様のデジタル高調波信号と、関連するフィルタ処理デジタル化混合信号とを混合し、関連する再混合信号を生成するよう構成される。
【0017】
本発明の概念9は、概念8の試験測定装置であって、複数の上記デジタル高調波ミキサに関連する上記再混合信号を結合し、再構成入力信号にするよう構成される結合器を更に具えている。
【0018】
本発明の概念10は、概念8の試験測定装置であって、複数の上記高調波ミキサによって混合される上記高調波信号はアナログ高調波信号であり、上記デジタル高調波ミキサが、上記デジタル高調波信号の振幅及び位相を調整することによって、上記アナログ高調波信号中の位相及び振幅エラーを補償するよう構成されることを特徴としている。
【0019】
本発明の概念11は、概念1の試験測定装置であって、上記高調波信号の夫々は、1にサブ帯域の数の半分を加えて端数を切り捨てたものに等しい数の高調波を少なくとも含むことを特徴としている。
【0020】
本発明の概念12は、概念11の試験測定装置であって、複数の上記高調波は、1周期を上記サブ帯域の数で割った時間シフトだけ位相に関して間隔を空けられていることを特徴としている。
【0021】
本発明の概念13は、信号をデジタル化するための方法であって、
特定帯域幅を有する入力信号を、該入力信号のほぼ全帯域幅を夫々含む複数の分配信号に分配することと、
上記分配信号の夫々を関連する高調波信号と混合し、関連する混合信号を生成することと、
上記混合信号の夫々をデジタル化することとを具え、
複数の上記分配信号に関連する上記高調波信号の少なくとも1つの1次高調波が、上記混合信号のデジタル化で使用した有効サンプル・レートと異なることを特徴としている。
【0022】
本発明の概念14は、概念13の方法であって、複数の上記分配信号に関連する高調波信号の少なくとも1つの上記1次高調波が、上記混合信号のデジタル化で使用した有効サンプル・レートの整数倍又は約数ではないことを特徴としている。
【0023】
本発明の概念15は、概念13の方法であって、複数の上記分配信号に関連する高調波信号の少なくとも1つの上記1次高調波が、上記混合信号のデジタル化で使用した有効サンプル・レートと、上記混合信号のデジタル化で使用した有効サンプル・レートの半分の間にあることを特徴としている。
【0024】
本発明の概念16は、概念13の方法であって、上記混合信号の夫々が、1つのサブ帯域の帯域幅内に、上記入力信号の少なくとも2つのサブ帯域を含むことを特徴としている。
【0025】
本発明の概念17は、概念16の方法であって、上記1つのサブ帯域がベースバンド・サブ帯域であることを特徴としている。
【0026】
本発明の概念18は、概念16の方法であって、上記混合信号の夫々が、上記1つのサブ帯域の帯域幅内に、入力信号の各サブ帯域を含むことを特徴としている。
【0027】
本発明の概念19は、概念13の方法であって、デジタル化混合信号に関連する周波数応答が、関連する上記高調波信号の上記1次高調波の周波数の半分に関して、ほぼ相補的になるように、上記デジタル化混合信号の夫々をフィルタ処理することを更に具えている。
【0028】
本発明の概念20は、概念19の方法であって、フィルタ処理デジタル化混合信号の夫々を、上記デジタル化混合信号と関連する上記高調波信号と周波数及び位相に関してほぼ同様のデジタル高調波信号と混合し、関連する再混合信号を生成することを更に具えている。
【0029】
本発明の概念21は、概念20の方法であって、上記再混合信号を結合し、再構成入力信号にすることを更に具えている。
【0030】
本発明の概念22は、概念20の方法であって、
上記高調波信号はアナログ高調波信号であり、上記フィルタ処理デジタル化混合信号の夫々を上記デジタル高調波信号と混合することには、上記デジタル高調波信号の振幅及び位相を調整することによって、上記アナログ高調波信号中の位相及び振幅エラーを補償することを含むことを特徴としている。
【0031】
本発明の概念23は、概念13の方法であって、上記高調波信号の夫々は、1にサブ帯域の数の半分を加えて端数を切り捨てたものに等しい数の高調波を少なくとも含むことを特徴としている。
【0032】
本発明の概念24は、概念23の方法であって、複数の上記高調波は、1周期を上記サブ帯域の数で割った時間シフトだけ位相に関して間隔を空けられていることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、本発明の実施形態による高調波混合処理を用いた試験測定装置用ADCシステムのブロック図である。
【図2】図2は、再混合信号22のスペクトラム成分の例を表す。
【図3】図3は、フィルタ処理混合信号38のスペクトラム成分の例を表す。
【図4】図4は、フィルタ処理混合信号44のスペクトラム成分の例を表す。
【図5】図3は、再混合信号28のスペクトラム成分の例を表す。
【図6】図6は、再混合信号50のスペクトラム成分の例を表す。
【図7】図7は、再混合信号56のスペクトラム成分の例を表す。
【図8】図8は、再構成入力信号60のスペクトラム160を示す。
【図9A】図9Aは、図1の高調波ミキサの例のブロック図である。
【図9B】図9Bは、図1の高調波ミキサの例のブロック図である。
【図10】図10は、図1の高調波ミキサの例のブロック図である。
【図11】図11は、図1の高調波ミキサの例のブロック図である。
【図12】図12は、図1の高調波ミキサの例のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
この開示は、高調波混合処理(ミキシング)を用いた試験測定装置用のADCシステムの実施形態を記載している。
【0035】
図1は、本発明の実施形態による高調波混合処理を用いた試験測定装置用のADCシステムのブロック図である。この実施形態では、装置には、スプリッタ10があり、これは、特定の周波数を有する入力信号12を複数の分配(スプリット)信号14及び16に分配するよう構成され、分配信号の夫々は、入力信号12のほぼ全スペクトラムを含んでいる。スプリッタ10としては、入力信号12を複数の信号に分配できるのであれば、種々の回路があり得る。例えば、スプリッタ10は、抵抗分割回路としても良い。このように、入力信号12のほぼ全周波数成分が、分配信号14及び16の夫々に存在することができる。しかし、パスの個数、使用される高調波信号などによって、スプリッタ10の種々の分配信号の周波数応答は、異なることがある。
【0036】
分配信号14及び16は、高調波ミキサ18及び24に夫々入力される。高調波ミキサ18は、分配信号14を高調波信号20と混合(ミックス)し、混合信号22を生成するよう構成される。同様に、高調波ミキサ24は、分配信号16を高調波信号26と混合し、混合信号28を生成するよう構成される。
【0037】
本願では、高調波ミキサは、信号を複数の高調波と混合するように構成されるデバイスである。詳しくは後述するように、乗算又は混合処理は、高調波混合処理と関連して説明されるが、信号を複数の高調波と乗算する効果を持つデバイスは、高調波ミキサとして利用可能である。
【0038】
いくつかの実施形態では、複数の高調波は、0次の高調波、つまり、DC(直流)成分を含んでも良い。例えば、いくつかの実施形態では、高調波信号20は、数式1で表される信号としても良い。
【0039】
【数1】

【0040】
ここで、F1は、1次高調波を表し、tは時間を表す。このように、数式1の形式を有する信号は、DCと周波数F1において高調波を有する。
【0041】
高調波信号26は、数式2で表される信号としても良い。
【0042】
【数2】

【0043】
高調波信号20と同様に、高調波信号26は、DCと周波数F1において高調波を有する。しかし、周波数F1における1次高調波は、高調波信号20中の同様の1次高調波に比較して、180度位相がずれている。
【0044】
デジタイザ30は、混合信号22をデジタル化するよう構成される。同様に、デジタイザ32は、混合信号28をデジタル化するよう構成される。デジタイザ30及び32としては、種々のデジタイザがあり得る。図示せずも、デジタイザ30及び32の夫々は、必要に応じて、増幅回路、フィルタ、減衰回路などのアナログ回路を設けても良い。そのため、デジタイザ30に入力された混合信号22は、デジタル化される前に、増幅や減衰されたり、また、フィルタ処理されることがある。
【0045】
デジタイザ30及び32は、有効サンプル・レートで動作するよう構成される。いくつかの実施形態では、デジタイザ30は、1つのアナログ・デジタル・コンバータ(ADC)を含むとしても良い。しかし、別の実施形態では、デジタイザ30は、より低いサンプル・レートで動作するインタリーブされた複数のADCを含むとし、より高い有効サンプル・レートを実現するようにしても良い。
【0046】
高調波信号20及び26の少なくとも一方の1次高調波は、デジタイザ30及び32の少なくとも一方の有効サンプル・レートとは異なっている。例えば、高調波信号20の1次高調波F1は、34GHzということがあり得る。デジタイザ30のサンプル・レートは、50GS/sということがあり得る。このように、1次高調波F1は、有効サンプル・レートとは異なる。
【0047】
いくつかの実施形態では、高調波信号の1次高調波は、複数のデジタイザの少なくとも1つの有効サンプル・レートの整数倍又は約数である必要はない。言い換えると、いくつかの実施形態では、高調波ミキサに関連する高調波信号の1次高調波は、複数のデジタイザの少なくとも1つの有効サンプル・レートの整数倍又は約数ではない。
【0048】
いくつかの実施形態では、高調波信号の1次高調波は、複数のデジタイザの少なくとも1つの有効サンプル・レートと、複数のデジタイザの少なくとも1つの有効サンプル・レートの半分の間としても良い。具体的には、詳しくは後述するように、こうした周波数であれば、1次高調波の前後の高い周波数成分を、デジタイザ30のサンプル・レートの半分より低い周波数に混合処理により低下させることができる。そのため、こうした周波数成分であれば、デジタイザ30によって効果的にデジタル化できる。
【0049】
当然のことながら、入力信号12の全ての帯域が全てのパスを通過する。言い換えると、1つの入力信号12を処理するのに、2つ以上のチャンネルが組み合わせられた場合、各チャンネル又はパスは、入力信号12の全帯域幅を受ける。入力信号12は、全てのデジタイザを通って伝送されるので、信号対ノイズ比は、大幅に改善される。
【0050】
フィルタ36は、デジタイザ30からのデジタル化混合信号34をフィルタ処理するように構成しても良い。同様に、フィルタ42は、デジタイザ32からのデジタル化混合信号40をフィルタ処理するように構成しても良い。高調波ミキサ46及び52は、フィルタ処理混合信号38及び44を高調波信号48及び54と夫々混合(ミックス)するように構成される。いくつかの実施形態では、高調波信号48及び54は、対応する高調波信号20及び26と、周波数及び位相に関して、実質的に同様としても良い。高調波信号20及び26がアナログ信号である一方、高調波信号48及び54はデジタル信号であるが、これら高調波信号についての拡大縮小率(scaling factor)は、互いに同じか又は同様としても良い。出力信号50及び56は、再混合信号50及び56と呼ばれる。結合器(combiner)58は、再混合信号50及び56を結合し、再構成入力信号60にする。いくつかの実施形態では、結合器58は、単なる信号の加算以上のことを実施しても良い。例えば、平均化処理、フィルタ処理、拡大縮小処理などを、結合器58で実施しても良い。
【0051】
フィルタ36及び42、高調波ミキサ46及び52、高調波信号48及び54、結合器58、その他の関連する要素は、デジタル的に実現しても良い。例えば、好ましい適切な周辺デバイスと共に、デジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)、マイクロプロセッサ、プログラマブル・ロジック・デバイス、汎用プロセッサその他の処理システムを、デジタル化信号の処理機能を実現するために利用しても良い。こうした機能を実現するのに、完全に集積されたものから、完全なディスクリート部品までの間の種々なものが利用できる。
【0052】
何らかの形で、高調波信号20、26、48及び54の同期処理が用いられる。例えば、高調波信号20及び26の高調波は、デジタイザ30及び32の関するクロックにロックしてもよい。他の例では、高調波信号をデジタル化しても良い。そして、1次高調波を高調波信号48及び54を同期するのに利用できる。他の例では、混合信号22及び28の1つ以上に帯域外のトーン(tones)を加えても良い。34GHzの1次高調波を用いて、19.125GHz及び21.25GHzのトーン、つまり、34GHzの9/16及び10/16を混合信号22に加えても良い。これらトーンは、フィルタ36で結果的にもたらされるフィルタ処理の帯域幅、つまり、遷移帯域によって決まる約18GHzの外であるから、これらトーンは、再構築信号60に対する影響は無視できる。しかし、これらトーンは、ナイキスト周波数よりも小さい、つまり、50GS/sのサンプル・レートについての25GHzよりも小さいので、これらトーンは、フィルタ処理される前のデジタル化混合信号34を用いて取込むことができる。この技術を用いるかに関係なく、高調波信号20及び26並びにデジタル高調波信号48及び54間の位相及び周波数の関係は維持できる。
【0053】
図2〜図8は、図1の試験測定装置用のADCシステム中の種々の信号のスペクトラム成分の例を示している。図1及び図2を参照すると、スペクトラム100は、入力信号12の、よって、分配信号14のスペクトラムとしてあり得るものである。上述の数式1で定義される高調波信号の例を用いると、分配信号14のDC成分は、スペクトラム100で表されるように通過する。しかし、入力信号12中のスペクトラム100は、周波数F1で1次高調波とも混合される。結果として得られるスペクトラム102は、こうした混合処理の生成物である。こうして、混合信号22は、スペクトラム100及びスペクトラム102の成分を含む。ここにおいて、そして他の図において、スペクトラム成分は、分離し、重複するよう描かれているが、実際のスペクトラムは、スペクトラム100及び102を組み合わせたものである。
【0054】
図1及び図3を参照すると、スペクトラム110は、同様にして、入力信号12を高調波信号26のDC高調波と混合処理したことによる混合信号28の成分を表す。しかし、図2と対比して、スペクトラム112は、図2のスペクトラム102に比較して180度の位相差がある。上述のように、高調波信号26の1次高調波は、高調波信号20の1次高調波から180度位相がシフトしている。高調波信号26中の180度の位相シフトは、スペクトラム112における180度の位相シフトを誘発する。180度の位相差は、点線として示されている。
【0055】
図4及び図5は、フィルタ処理混合信号38及び44のスペクトラムを表す。いくつかの実施形態では、フィルタ処理は、対応するデジタイザ30及び32が固有に備えるフィルタ処理機能としても良く、フィルタ36及び42、その他の機能としても良い。図1では、フィルタ処理は、デジタイザ36及び42の後で行われるとして描かれているが、フィルタ処理は、他の位置で実行されても良い。例えば、フィルタ処理は、デジタル化する前に行っても良い。混合信号22及び28は、デジタイザ30及び32の有効サンプル・レートの半分に近いカットオフ周波数を有するローパス・フィルタで、フィルタ処理されるとしても良い。フィルタ36及び42のフィルタ処理を、こうした固有又は誘発されるフィルタ処理に加えても良い。
【0056】
いくつかの実施形態では、混合信号22及び28の正味のフィルタ処理は、高調波信号20及び26の1次高調波の周波数の約半分に関して、ほぼ相補的な周波数応答という結果が得られるようにしても良い。つまり、周波数F1/2よりあるオフセットだけ高い位置での周波数応答と、周波数F1/2よりあるオフセットだけ低い位置での周波数応答が加えられる。1つを例として用いたが、信号の拡大縮小処理などの要求に応じて、他の値を用いても良い。更には、上述の例は、理想的な場合として記述されている。つまり、実現されるフィルタ処理は、理想的でない成分、校正などを考慮して、異なる応答を持つようにしても良い。
【0057】
上述した34GHzのF1を用いた周波数応答の具体例では、周波数F1/2は17GHzとなる。DCから16GHzまでは、周波数応答は1となる。16から18GHzまでは、周波数応答は1からゼロまで線形に変化し、17GHzで1/2を通過する。
【0058】
図4の結果として得られるスペクトラム成分は、フィルタ処理混合信号38を表し、スペクトラム120で表されるスペクトラム100の低周波数部分と、スペクトラム122で表されるスペクトラム102の低周波数部分とを含む。混合処理によって、スペクトラム122は、周波数に関して反転しているが、スペクトラム100の高い方のサブ帯域の周波数成分を含むことに注意されたい。同様に、図5のスペクトラム成分130及び132は、図3のスペクトラム110及び112の低周波数成分に対応する。スペクトラム112の180度の位相関係は、スペクトラム132でも保持されている。
【0059】
従って、高調波混合処理を通して、入力信号の2つのサブ帯域は、サブ帯域のスパンがデジタイザ30及び32に関するナイキスト帯域を超えていたとしても、デジタル化される。この実施形態では、混合信号の夫々は、アナログ、デジタル、フィルタ処理されているのいずれであっても、入力信号12のサブ帯域夫々の成分を含んでいる。つまり、この例では、混合信号22及び28からフィルタ処理デジタル化混合信号38及び44までの信号の夫々が、スペクトラム100の低周波数サブ帯域及び高周波数サブ帯域の両方を含んでいる。
【0060】
具体的には、入力信号12の複数のサブ帯域は、ベ―スバンド・サブ帯域の帯域幅内に周波数シフトされている。いくつかの実施形態では、入力信号12のサブ帯域の夫々は、1つのサブ帯域の帯域幅内に周波数シフトされても良い。しかし、サブ帯域及び高調波信号の数によっては、各サブ帯域が各混合信号中に存在しないかもしれない。
【0061】
図6及び図7は、再混合信号50及び56のスペクトラムを表す。図1及び図6を参照すると、スペクトラムは、再混合信号50を表す。上述のように、フィルタ処理デジタル化混合信号38は、高調波ミキサ46において、高調波信号20と周波数及び位相に関して実質的に同様な高調波信号48と混合される。従って、図4のスペクトラムは、DC成分及び1次高調波と混合される。
【0062】
スペクトラム140及び142は、図4のスペクトラム120及び122をDC成分と混合することから生じるスペクトラムを表す。スペクトラム144は、スペクトラム120を1次高調波と混合した結果を表す。スペクトラム146及び148は、図4のスペクトラム122と1次高調波の混合処理を表す。
【0063】
同様に、図7は、再混合信号56のスペクトラムを表す。スペクトラム150及び152は、DC成分と図5のスペクトラムの混合処理を表す。スペクトラム154は、高調波信号54の1次高調波と図5のスペクトラム130の混合処理を表す。具体的には、高調波信号54の1次高調波は、相対的な180度位相シフトがあるので、得られるスペクトラム154も、点線で表される180度位相シフトがある。
【0064】
図5のスペクトラム132も高調波信号54の1次高調波と混合されるが、スペクトラム132には、180度の誘発された位相シフトが既にある。そのため、追加の180度位相シフトは、スペクトラム156及び158の実線で表される、事実上の0度の位相シフトという結果になる。
【0065】
図8は、図8の再構成入力信号60のスペクトラム160を示す。スペクトラム162及び164は、スペクトラム160を形成するサブ帯域の成分を表す。スペクトラム166は、図6及び図7に関して記述された混合処理から生じる付随の側波帯(サイドバンド)を表す。この実施形態では、スペクトラム166をフィルタ処理で除いても良いが、他の実施形態では、サブ帯域が1次高調波周波数F1を超えて広がっていることがある。そうした実施形態では、低周波数サブ帯域から生成されるスペクトラム166を、相殺する組合せを用いて除去するようにしても良い。
【0066】
再混合信号50及び56の成分の相対的な位相合わせによって、元々の周波数範囲にあるサブ帯域は、建設的に結合する一方、元々の周波数範囲にないサブ帯域は、相殺的に結合するように位相が合わせられる。図6〜図8を参照すると、結合した場合に、スペクトラム140及び150は建設的に結合し、スペクトラム162が得られる。スペクトラム142及び152は、スペクトラムが180度位相がずれているので、相殺的に結合する。こうして、ベースバンド・サブ帯域内のスペクトラムから残るサブ帯域は、元々のサブ帯域である。
【0067】
同様に、約F1/2からF1までのサブ帯域については、スペクトラム146及び156は建設的に結合してスペクトラム164となる一方、スペクトラム144及び154は相殺的に結合する。スペクトラム148及び158は建設的に結合してスペクトラム166となるが、これは、この場合では、おおよそ周波数F1より下の期待される入力信号周波数範囲を超えているので、フィルタ処理で除いても良い。
【0068】
スペクトラム162及び164で示されるように、周波数F1/2のあたりで遷移が生じる。この遷移は、図4及び図5を参照して上述したフィルタ処理の結果である。具体的には、スペクトラム162及びスペクトラム164の傾斜は、相補的である。そのため、スペクトラム162及び164の周波数成分が結合されると、スペクトラム160の中の得られる部分は、元の周波数スペクトラムとほぼ一致する。
【0069】
従って、入力信号12を種々の高調波信号と混合処理することによって、入力信号12のサブ帯域は、デジタイザのより低い帯域幅を通過できる。混合信号は、重複するサブ帯域を含んでいたとしても、複数の高調波信号の位相合わせ処理のために、これらサブ帯域は建設的及び相殺的に結合し、結合されたときに、上述のように、入力信号12をほぼ正確に表すものを生成する。
【0070】
図9〜図12は、図1の高調波ミキサの例のブロック図である。いくつかの実施形態では、ミキサは、分配信号14及び16を、夫々と対応する高調波信号20及び26と混合するために利用できる。全てポートにおいてDC及びベースバンド信号が通過できるミキサが、高調波ミキサとして利用できる。
【0071】
図9A及び図9Bは、高調波ミキサの例を示し、これらは、上述した高調波ミキサ18、24、46及び52の任意の1つ以上のものを表すとして良い。図9Aは、2出力時間インタリーブ・スイッチを示す。図9Bは、N出力時間インタリーブ・スイッチを示す。
【0072】
これら実施形態では、スイッチ180及び181は、入力信号182を受けるように構成される。2出力スイッチ180を使う場合、入力信号182は、制御信号188に応答して出力端子184及び186へとスイッチされる。N出力スイッチ181を使う場合では、入力信号182は、制御信号188に応答して、出力184、186から第N番出力187までへとスイッチされる。例えば、スイッチ181は、N投(N-throw)スイッチまでの3投スイッチ、4投スイッチなどでも良く、これは、入力信号182がその時間のN分の1を各ポイント、つまり、出力端子において過ごす。更なるパス及びサブ帯域が追加されたら、高調波信号の高調波が適切に位相整合されるようにしても良い。いくつかの実施形態では、高調波信号の相対的な位相シフトは、1周期をサブ帯域の数で割った時間シフトだけ位相に関して間隔を空けるようにしても良い。
【0073】
クロック・サイクル全体に比較してパルスが短くなれば、高調波の含有がもっと豊富になる。例えば、2出力又は3出力スイッチについては、0次高調波(DC)及び1次高調波が使用される。4出力又は5出力スイッチについては、0次高調波、1次高調波及び2次高調波を使用できる。6出力又は7出力スイッチについては、0次高調波、1次高調波、2次高調波及び3次高調波を使用できる。Nが増加するほどパルスが狭くなり、それによって、高調波の含有がもっと豊富なものを生成する。制御信号188は、1次高調波の基本周波数か、上述した他の適切な高調波周波数を有する信号としても良い。
【0074】
入力信号182の全帯域は、全パスを通過する、つまり、出力パスの夫々に行く(例えば、184、186から第N番出力187まで)
【0075】
例えば、スイッチ180を参照すると、制御信号188は、34GHzの基本周波数を有する矩形波としても良い。スイッチングの結果として、出力184は、制御信号の周期の半分の間は入力信号182を受け、周期の反対の半分の間は約ゼロである。事実上、出力184は、入力信号184に矩形波を乗算したものであり、34GHzでゼロと1の間を変動する。こうした矩形波は、数式3で表すことができる。
【0076】
【数3】

【0077】
数式3は、このような矩形波のテイラー級数展開である。DCと最初の2つの高調波を載せている。ここで、F1は、34GHzである。成分の振幅は異なるものの、数式1及び3は、類似する高調波を含んでいる。
【0078】
出力186は、出力184と同様であるが、入力信号182が出力186に送られる時間周期は、出力184に比較して反転している。その効果は、再度、入力信号182に、数式4で定義される矩形波を乗算したものと同様となる。
【0079】
【数4】

【0080】
数式3と同様に、数式4は、数式2に記載された高調波信号と類似する。このように、スイッチ180のスイッチングの乗算効果は、上述の分配信号を高調波信号に混合処理するのとほぼ同様である。加えて、この例では、スイッチは、スプリッタ10並びに高調波ミキサ18及び24の両方の役割もする。しかし、他の実施形態では、スイッチ180は、単極単投スイッチとして、1つの高調波ミキサとして作用するとしても良い。
【0081】
DC成分及び1次高調波の相対的な振幅は異なるが、こうしたバランスの悪さは、適切なパス中の補償フィルタを通すことで補正できる。例えば、上述した周波数F1/2及び周波数F1間のサブ帯域は、ベースバンド・サブ帯域に比べて、結合器58における再結合の間、異なる利得が適用されるようにしても良い。
【0082】
加えて、上記数式3及び4は、3次高調波も記載している。いくつかの実施形態では、3次高調波が望ましいことがある。しかし、もしなければ、こうした高調波の効果は、適切なフィルタ処理で補償できる。例えば、入力信号12は、周波数F1より上の周波数成分を除去するためにフィルタ処理されても良い。このため、3*F1の周波数で混合するような、こうした周波数成分は存在しないようになる。更には、デジタイザの前のフィルタ処理によって、エイリアシングによってデジタル化信号に影響を与えかねない任意の高次周波数成分を除去できる。
【0083】
アナログ不整合(ミスマッチ)が原因のインタリーブ・エラーの場合には、混合処理クロックの振幅及び位相についてハードウェアを調整しても良い。次に、その調整では、インタリーブ不整合(ミスマッチ)による疑似信号を最小化するよう校正しても良い。これに代えて、又は、上記やり方に加えて、ハードウェア不整合の特性を調べ、線形時間可変補正フィルタを用いて、インタリーブ疑似信号をキャンセルするようにしても良い。更に、場合によっては、スイッチが完璧には動作しないかもしれない。例えば、正常状態からずれたスイッチでは、1方向において他方向でよりも多くの時間を費やし、これによって、デューティー・サイクルにスキューを起こすことがある。デジタル高調波ミキサ46及び52は、アナログ高調波信号20又は26中に存在することがある位相及び振幅エラーを、デジタル高調波信号48又は54の振幅又は位相を微調整することによって、補償する構成しても良い。
【0084】
図10は、他の高調波ミキサの例である。スイッチング回路200は、2つの入力信号202及び204を、制御信号206に応答して、出力208及び210に交互にスイッチするように構成される。制御信号206は、スイッチング回路200の中のスイッチがスイッチ動作可能となるように、再度、矩形波又は他の同様な信号としても良い。制御信号206の半サイクルの間、入力信号202が出力208にスイッチされる一方、入力信号204は出力210にスイッチされる。残りの半サイクルの間は、入力信号202が出力210にスイッチされる一方、入力信号204は出力208にスイッチされる。
【0085】
いくつかの実施形態では、入力信号204は、入力信号202を反転及び拡大/縮小したものとしても良い。こうした上述の入力及びスイッチングの結果として、図9Aのスイッチ180に関して上述したレベルから、DCと他の高調波がバランスを取り戻す。例えば、入力信号204は、入力信号202の分数で且つ反転したものとしても良い。図9Aのスイッチ180を用いた1及び0の間のスイッチングに代えて、出力端子208及び210の有効出力は、例えば、1と(2− )/(2+ )の間でスイッチングするとしても良い。このように、複数の高調波間で所望のバランスとなるように、振幅及びDCレベルを希望に応じて調整しても良い。
【0086】
図11は、高調波ミキサの別の例を示す。高調波ミキサ170は、スプリッタ172、ミキサ175及び結合器177を含む。スプリッタ172は、入力信号171を信号173及び174として分配するよう構成される。信号174は、結合器177に入力される。信号174は他の信号と混合されないので、信号174は、上述の高調波ミキサのDC成分としての役割を果たす。
【0087】
信号173は、ミキサ175に入力される。信号176が、信号173と混合される。いくつかの実施形態では、信号176は、上述の周波数F1のような単一の高調波としても良い。もし追加の高調波を希望するなら追加のミキサを用意すれば良く、夫々の出力は結合器177で結合される。
【0088】
別の実施形態では、信号176が複数の高調波を含んでも良い。ミキサ175のポートの帯域幅が所望の周波数範囲を収容できる限り、1つのミキサ175を利用できる。しかし、上述の高調波信号のDC成分は、異なるパスによって結合器177に渡されるので、信号173及び176を受けるミキサのポートは、DCに至るまで動作する必要はない。従って、広く多種のミキサを用いることができる。信号179及び174が結合器177で結合された時点で、出力信号178は上述の混合信号とほぼ同様となり得る。
【0089】
いくつかの実施形態では、スプリッタ172は、入力信号171を対称に分配できるが、対称に分配する必要はない。スプリッタの信号174を出力する側は、上述のフィルタ処理カットオフ周波数以上の帯域幅を持つようにしても良い。スプリッタ172の信号173を出力する側は、信号176の高調波が中心に来る周波数範囲であって、上述のフィルタ処理カットオフ周波数の2倍以上の帯域幅を持つ周波数範囲を持つようにしても良い。言い換えると、スプリッタ172の周波数応答は、各パスについて等しい必要はなく、希望に応じて設定しても良い。
【0090】
図12は、図9Aの一般的な形態の高調波ミキサの別の例である。この実施形態では、高調波信号224は、トランス225を通して、ミキサと同様なヂオード・リング220に入力できる。入力信号222は、トランス225のタップに入力できる。従って、高調波信号224に応じて、入力信号222は、出力端子226及び228の間でスイッチされる。例えば、高調波信号224は、トランスの下部がプラスで上部がマイナスのときに左ダイオード227をオンにし、トランスの極性が反対のときに右ダイオード229をオンにする。このようにして、入力信号222は、出力端子228及び出力端子226に交互に送られる。いくつかの実施形態では、追加のダイオード・リングを用いて出力端子を終端したり、入力信号222のサブ帯域の反転部分を入れて、より高い利得を実現したり、図10の形態のように、複数の高調波のバランスの悪さを補償したりといったことなどを行うようにしても良い。
【0091】
いくつかの実施形態では、2つのパス及び重複する2つのサブ帯域が実現される。しかし、上述のように、任意の数のパス及びサブ帯域を用いても良い。このような実施形態では、使用する高調波の数は、1にサブ帯域の数の半分を加えて端数を切り捨てたものにでき、このとき、DCは、0次高調波として含まれる。例えば、3つのサブ帯域については、2つの高調波だけが利用できる。上記周波数範囲を例として用いると、1次高調波は、周波数F1よりも高い周波数をベースバンド・サブ帯域まで周波数シフトできる。高調波信号の複数の1次高調波は、120度の複数の相対位相シフトに位相を合わせるようにしても良い。
【0092】
従って、結合器58における結合処理中に、サブ帯域が適切な周波数範囲にあるときは、サブ帯域のスペクトラムは、0度の相対位相シフトのような同じ位相シフトを持つことになる。対照的に、適切でない周波数範囲にある1つのサブ帯域の3つの成分は、位相に関して互いに120度だけずれる。結果として得られるスペクトラムは、適切でないサブ帯域を除去するように相殺的に結合する。更にパスとサブ帯域が追加されたら、複数の高調波信号の高調波の位相を適切に合わせるようにしても良い。いくつかの実施形態では、高調波信号の相対的な位相シフトは、1周期をサブ帯域の数で割った時間シフトだけ位相に関して間隔を空けるようにしても良い。
【0093】
上述してきた実施形態では、デジタル化信号は、ほぼ直ぐに処理されるものとしたが、こうしたデジタル化後の処理は、希望があれば、遅らせることができる。例えば、デジタイザ30及び32からのデジタル化データは、後で処理するために、メモリに蓄積することができる。
【0094】
更には、デジタル的なフィルタ処理、混合処理及び結合処理は、別々の動作として説明してきたが、こうした動作を組み合わせて、他の機能などに組み入れても良い。加えて、上述の説明は、理想的な成分を仮定していたので、こうした処理に追加の補償を適切に導入し、理想的でない成分を補正するようにしても良い。更には、デジタル化信号を処理するとき、周波数範囲の変更、混合処理などは、そうした変化を表すのに、より高いサンプル・レートという結果になる。デジタル化信号は、必要に応じて、アップサンプル、補間などができる。
【0095】
他の実施形態では、コンピュータ読み出し可能な媒体上に記録されたコンピュータ読み出し可能なコードを含み、これは、実行されると、コンピュータに上述した動作のいずれかを実行させる。ここでは、コンピュータとは、コードを実行できる任意のデバイスである。マイクロプロセッサ、プログラマブル・ロジック・デバイス、マルチプロセッサ・システム、デジタル・シグナル・プロセッサ、パーソナル・コンピュータなどは、全てこうしたコンピュータの例である。コンピュータ読み出し可能な媒体は、有形のコンピュータ読み出し可能な媒体であり、これは、コンピュータ読み出し可能なコードを非一時的なやり方で蓄積するよう構成される。
【0096】
具体的な実施形態を説明してきたが、本発明の原理は、これら実施形態に限定されるものではないと理解されたい。以下の請求項に記載される本発明の原理から離れることなく、変形及び変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0097】
10 スプリッタ
12 入力信号
14 分配信号
16 分配信号
18 高調波ミキサ
20 高調波信号
22 混合信号
24 高調波ミキサ
26 高調波信号
28 混合信号
30 デジタイザ
32 デジタイザ
34 デジタル化混合信号
36 フィルタ
38 フィルタ処理デジタル化混合信号
40 デジタル化混合信号
42 フィルタ
44 フィルタ処理デジタル化混合信号
46 高調波ミキサ
48 高調波信号
50 再混合信号
52 高調波ミキサ
54 高調波信号
56 再混合信号
58 結合器
60 再構成入力信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定帯域幅を有する入力信号を、該入力信号のほぼ全帯域幅を夫々含む複数の分配信号に分配するスプリッタと、
複数の上記分配信号の中の関連する1つの分配信号を関連する高調波信号と混合し、関連する混合信号を夫々生成する複数の高調波ミキサと、
複数の上記高調波ミキサの中の関連する1つの高調波ミキサの混合信号を夫々デジタル化するよう構成される複数のデジタイザとを具え、
複数の上記高調波ミキサに関連する高調波信号の少なくとも1つの1次高調波が、複数の上記デジタイザの少なくとも1つの有効サンプル・レートと異なっていることを特徴とする試験測定装置。
【請求項2】
複数のデジタル・フィルタを更に具え、該デジタル・フィルタの夫々は、関連するデジタル化混合信号をフィルタ処理することで、上記デジタル化混合信号に関連する周波数応答が、関連する上記高調波信号の上記1次高調波の周波数の半分に関して、ほぼ相補的になるよう構成される請求項1の試験測定装置。
【請求項3】
複数のデジタル高調波ミキサを更に具え、該デジタル高調波ミキサの夫々が、上記デジタル化混合信号と関連する上記高調波信号と周波数及び位相に関してほぼ同様のデジタル高調波信号と、関連するフィルタ処理デジタル化混合信号とを混合し、関連する再混合信号を生成するよう構成される請求項2の試験測定装置。
【請求項4】
複数の上記デジタル高調波ミキサに関連する上記再混合信号を結合し、再構成入力信号にするよう構成される結合器を更に具える請求項3の試験測定装置。
【請求項5】
特定帯域幅を有する入力信号を、該入力信号のほぼ全帯域幅を夫々含む複数の分配信号に分配することと、
上記分配信号の夫々を関連する高調波信号と混合し、関連する混合信号を生成することと、
上記混合信号の夫々をデジタル化することとを具え、
複数の上記分配信号に関連する上記高調波信号の少なくとも1つの1次高調波が、上記混合信号のデジタル化で使用した有効サンプル・レートと異なることを特徴とする信号デジタル化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−247423(P2012−247423A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−119867(P2012−119867)
【出願日】平成24年5月25日(2012.5.25)
【出願人】(391002340)テクトロニクス・インコーポレイテッド (234)
【氏名又は名称原語表記】TEKTRONIX,INC.
【Fターム(参考)】