説明

試験片切断装置

【課題】 ゴム素材Sの状態を撮像して検査測定する際のゴム素材内のフィラーの分散度評価を適切に行える試験片をゴム素材から切断する切断装置を提供すること。
【解決手段】 本発明の試験片切断装置100は、ゴム素材支持部10と、切断刃・切断刃取り付け板及び取手を備えたカッター部20と、カッター部の旋回支持部30と、カッター部が旋回昇降する際のカッターガイド部40と、切断する前記ゴム素材を押さえる押付部50と、切断する試験片の幅寸法を設定する幅寸法設定部60とを備えて構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム素材内の状態を検査測定するため、ゴム素材を切断して所定寸法の試験片を得るための切断用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
品質の良いゴムを得るためには、種々のフィラーを配合して均一に練り込む必要がある。ゴムの状態は、フィラーの分散度によって変化する。フィラーの分散度は、フィラーを練り込む時間やその時の発熱による温度あるいは装置の種類や構成更にポリマーの状態や添加するフィラーの状態、保管している温度や作業環境温度によって変化するので、所望の特性を持つゴムを得るためには、練り込む条件に配慮する必要がある。この混練された状態を評価するものとして、従来、フィラーを練り込んだ試験片を撮像し、所定の演算を用いてフィラーの分散度を算出する装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3266878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、試験片を撮像するには、評価用ゴム素材から切断して形成した試験片の切断面に、撮像できる測定部が形成されている必要がある。しかし、従来は、切断時の刃物の加圧によって測定部が乱れてしまう。そのため、特許文献1に記載の検査測定装置によって測定部を撮像して演算した場合、良好な演算結果や評価結果が得られないという問題があった。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、撮像によるフィラーの分散度評価を適切に行える試験片をゴム素材から切断する切断装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために本発明の試験片切断装置は、以下の特徴を有している。
ゴム素材から検査測定用の試験片を切断する切断装置であって、ゴム素材支持部と、切断刃・切断刃取り付け板及び取手を備えたカッター部と、カッター部の旋回支持部と、カッター部が旋回昇降する際のカッターガイド部と、切断する前記ゴム素材を押さえる押付部と、切断する試験片の幅寸法を設定する幅寸法設定部と、を備えたことを特徴としていえる。
【0006】
前記の試験片切断装置は、使用しない時は、前記カッター部を仮固定する仮固定部を備えた構成とすることもできる。
【0007】
前記の試験片切断装置は、前記支持部上に固定しない状態で載置するカッター受けを備える構成とすることもできる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の試験片切断装置によれば、切断するゴム素材を前記押付部で押さえ、カッター部をカッターガイド部でガイドして旋回下降し、さらにゴム素材の切断幅を設定部で設定し切断する。これによりゴム素材の切断面を波打つこと無く所定寸法幅で切断することができる。
またゴム素材を切断する際に、ゴム素材を押付部を手で押さえ、カッター部の取手を手で把持する。これにより切断時、両手を使用するので切断時、安全にゴム素材を切断することができる。
【0009】
前記試験片切断装置に前記カッター部を仮固定する仮固定部を備えた構成とすることにより、前記試験片切断装置を使用しない時は、仮固定部により、仮固定位置に固定することができるので、使用しない時でも安全である。
【0010】
前記試験片切断装置にてゴム素材を切断する際に、切断完了した際の切断刃が接触するカッター受けを設けている。このカッター受けを支持部上に設けている。ゴム素材を切断した際にカッター受けに傷が付着する。このカッター受けを固定しない状態で支持部上に設けているので、多数回切断作業を行った際に、このカッター受けの使用する向きの変更や交換が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の試験片切断装置にて切断するゴム素材S、および切断した試験片の説明図。
【図2】本発明の試験片切断装置の正面図。
【図3】本発明の試験片切断装置の平面図。
【図4】本発明の試験片切断装置の右側面図。
【図5】本発明のゴム切断装置による切断状況の説明図。
【図6】本発明の試験片切断装置のカッター部を仮固定した状態の説明図。
【図7】本発明の試験片切断装置の使用方法の説明図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を添付の図面を参照して説明する。
【0013】
<1>切断するゴム素材
まず、本発明の試験片切断装置により切断するゴム素材について説明する。ゴム素材Sは、図1(a)に示す板状を呈し厚さ10mm程度、奥行き30mm〜50mm程度、長さは適宜設定することができる。このゴム素材Sを本発明の試験片切断装置により図1(b)のように幅3mm程度の試験片(以後、試験片という)を切断する。
【0014】
ゴム素材Sは、未加硫ゴム又は加硫ゴムを主成分とし、更にフィラーを含有する。この主成分たる原料ゴムは、天然ゴムであってもよいし、NBR,EPDM、FKM,VMQ等の合成ゴムであってもよい。加硫ゴムにおける加硫剤は、硫黄、有機過酸化物、白金化合物等が用いられる。
【0015】
ゴム素材には各種フィラーが充填されている。フィラーとしてカーボンブラックが用いられている、但しフィラーはカーボンブラックに限らず、どのようなものでもよい。例えばフィラーとしては、ケイ酸、ケイ酸塩類あるいは炭酸塩類などのホワイトカーボンやハイスチレン樹脂、フェノール樹脂等の有機系充填剤が用いられていてもよい。また、ゴム素材には、硫化物、フィラー以外のどのような材質が混入されていてもよい。
【0016】
図1(a)のようなゴム素材から図1(b)の試験片を切断し、その測定面Kを使用してゴム素材のフィラーの分散状態等を検査装置にて検査測定および分析する。
【0017】
<2>切断装置の全体構造
本発明の切断装置の全体構成を図2、図3および図4により説明する。図2は本発明の切断装置の正面図であり、図3は本発明の切断装置の平面図であり、図4は本発明の切断装置の右側面図である。
切断装置100は、ゴム素材支持部10、カッター部20、カッター部の旋回支持部30、カッターガイド部40、前記ゴム素材を押さえる押付部50、および切断する試験片の幅寸法を設定する幅寸法設定部60を備えている。
【0018】
<3>ゴム素材支持部10
ゴム素材支持部は、本発明の切断装置で切断するゴム素材Sをセット支持する部分である。さらに本発明の切断装置の種々の構成部を支持する機能を有する。
ゴム素材支持部は、略矩形状のベースプレート11、カッター受け12.および脚部13で構成されておる。ベースプレートは、本発明の切断装置の各構成部の部材および切断するゴム素材Sを載置可能なサイズがあれば良い。ベースプレートの材質は、金属製であれば良く鋼板等を使用することができる。カッター受けは、切断するゴム素材を載置する部分であり、図2に示すように矩形状の薄板を使用している。ゴム素材Sを切断完了した時にカッターの切断刃21の刃部がこのカッター受けと接触する。したがってカッター受けの材質は、銅板としている。多数回使用するとカッター受けには刃の傷が付くので、使用回数により使用する方向を変更し使用する。このためカッター受けは固定しなくてもよいが、紛失防止のためにベースプレート11に皿ボルト等で固定する形態としても良い。脚部13は、ベースプレート11の下面の四隅に円柱状の樹脂または金属製の部材を取り付けている。また用途に応じて高さ調整機能を付与しても良い。
【0019】
<4>カッター部20
カッター部20は、切断刃21、切断刃取り付け板22、及び取手23を備えている。ゴム素材Sを切断する切断刃21は、本実施例では台形状の厚みが1mmの板状であり片刃である。切断時の詳細を説明する図5に示すように、切断するゴム素材Sに対して刃を配置している。切断刃の材質は、ステンレス等が使用される。この切断刃21は、切断刃取り付け板22に切断刃21を収納できる切断刃と同じ形状の溝を加工しボルト等で固定されている。また取手23は、カッター部20を操作者の手で握れる程度の寸法の握り24を切断刃取り付け板22の両面に取付けされている。
また切断刃取り付け板22の先端には、ゴム素材Sを切断する際にカッター部20を旋回中心Cを中心に旋回下降するための部材を取り付けするための図示しない孔C2が加工されている。
さらに切断刃取り付け板22の適宜の位置に、ゴム素材Sを切断する際にカッター部20を旋回中心Cを中心に旋回下降し切断する際にゴム素材の切断面が乱れないように、カッターガイド部40に沿って旋回下降できるようにガイドするための部材を取り付けするための図示しない孔H2が加工されている。
【0020】
<5>旋回支持部30
旋回支持部30は、カッター部20を旋回昇降する際の支持部である。カッターガイド部40のスタンドプレート41の旋回中心Cに相当する位置に、図示しない孔C4が加工されている。カッター取り付け板22の孔C2とスタンドプレートの孔C4に旋回ピン31を挿入しナット等で固定する。これにより、カッター部20は、旋回中心Cを中心に旋回昇降することができる。
【0021】
<6>カッターガイド部40
カッターガイド部40は、カッター部20を旋回昇降する際のガイド部である。ベースプレート11に直角にスタンドプレート41が設けられている。スタンドプレート41には、<5>で説明したようにカッター部20が旋回中心Cを中心に旋回できるような構成部材も取り付けされている。このスタンドプレート41は、後述する幅寸法設定部のストッパー61と切断するゴム素材が通過できるための孔D(図5参照)が設けられている。
カッター部20が旋回中心Cを中心に旋回昇降する時に、ゴム素材の切断面が乱れないように、カッター部20がガイドされて旋回昇降する。このようにするためにスタンドプレート41の側面に旋回中心Cを中心とする円弧状の長孔H4が加工されている。カッター取り付け板にもこの長孔H4に相当する位置に孔H2が加工されている。孔H2と長孔H4にガイドピン42を挿入しナット等で固定する。
またカッター部20を旋回中心Cに対して旋回昇降する際に、その旋回昇降動作を円滑にするために、旋回支持部の旋回ピン31とガイドピン42は、スタンドプレート41とカッター取り付け板22の間に同一厚みのワッシャーWが設けられている。
これによりカッター部20は、旋回中心Cを中心にスタンドプレート41の側面に沿って円滑に旋回下降する。その結果、ゴム素材の切断面が乱れることが無い。
【0022】
<7>押付部50
押付部50は、ベースプレート11に直角に設けられたスタンドプレート41に取り付けされおり、切断するゴム素材Sをカッター部20にて切断する際に固定する機能を有する。押付部50は、ガイドグロック51、ガイドバー52、スプリング53、トッププレート54、サイドプレート55、および押さえ部材56から構成されている。
ガイドブロック51は、図4に示すように、スタンドプレート41の側面に取り付けされている。ガイドブロック51には、2つの貫通孔が設けられ、2本のガイドバー52が上下動できるように挿入されている。また2本のガイドバー52の上端はトッププレート54の一辺に固定されている。ガイドブロックとトッププレートの間には2つのコイルスプリングがその内部にガイドバーが挿通するように設けられている。トッププレートの他辺にはサイドプレート55が設けられている。さらにサイドプレート55の下端には押さえ部材56が取り付けされえいる。この押さえ部材56で切断するゴム素材を押さえ固定し、カッター部20を旋回下降してゴム素材を切断する。
【0023】
<8>幅寸法設定部60
幅寸法設定部60は、ゴム素材Sの切断幅を設定する。幅寸法設定部60は、ストッパー61、クランプボルト62、およびスケール63から構成されている。図5に示すようにストッパー61の先端にゴム素材Sを押し付けカッター部20の切断刃21にてゴム素材を切断する。切断幅は、ストッパー61の位置を切断刃に対して直角に移動(図2及び図5の矢印X方向)させ、クランプボルト62にて固定することにより設定可能である。切断幅は、ストッパー61の他端の位置をスケール63にて読み取ることにより可能である。尚ストッパー61を直線的に移動させるために図示にないガイドピンが設けられている。
【0024】
<9>仮固定部70
仮固定部70は、本発明の切断装置を使用しない時に、カッター部20を仮固定するために設けられている。スタンドプレート41の側面に出し入れ可能なピン71が設けられている。切断装置を使用しない時は、図6に示す位置にカッター部20を仮固定する。図6の状態でカッター部20のカッター取り付け板22の側面にピン71が挿入できるような孔B2(図示しない)が加工されている。この孔B2に仮固定用のピン71の先端が挿入され仮固定される。
切断装置を使用する場合は、ピン71を引き抜くことよりカッター部20は、旋回下降が可能となる。ピン71は、仮固定する毎に抜き挿しすることは、ピンの紛失等が懸念される。このため本実施例では、ピンを抜く時はピン先端のノブ72を引き、ノブ72を回転するとピン71が抜かれた状態を保持できる形態のピンを使用している。
【0025】
<10>切断装置の使用方法
図5、図6および図7により切断装置の使用方法を説明する。操作者は、以下の手順にて操作しゴム素材Sを切断し試験片を得る。
1)図5に示すように幅寸法を設定するためにストッパー61を移動させクランプボルト62にてストッパー61を固定する。
2)図6のカッター部20の仮固定の状態からピン71を抜きカッター部20を図7の破線位置(図7の状態1)に引き上げる。
3)図5に示すように切断するゴム素材Sをカッター受け部12に載置しストッパー61に押し当てる。
4)ゴム素材Sを押付部50のトッププレート54を操作者が手で押さえ付けるとスプリング53が圧縮され押し付け部材56によりゴム素材Sは押し付けられる。
5)この状態で操作者がカッター部20を取手により切断刃がカッター受け12に当たるまで旋回下降することによりゴム素材は所定幅寸法に切断される。図7の状態2を経て図7の状態3となり試験片の切断が完了する。
以上の手順により試験片が得られる。
【0026】
本発明の切断装置を使用することにより、ゴム素材Sからゴムの状態を検査測定するために要求される凹凸や乱れの無い平滑な測定面を有する試験片を得ることができる。
【符号の説明】
【0027】
100 試験片切断装置
10 ゴム素材支持部
20 カッター部
30 カッター部の旋回支持部
40 カッターガイド部
50 前記ゴム素材を押さえる押付部
60 幅寸法設定部
70 仮固定部
C 旋回中心
K 測定面
S ゴム素材
W ワッシャー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム素材から検査測定用の試験片を切断する切断装置であって、
ゴム素材支持部と、
切断刃、切断刃取り付け板及び取手を備えたカッター部と、
カッター部の旋回支持部と、
カッター部が旋回昇降する際のカッターガイド部と、
切断する前記ゴム素材を押さえる押付部と、
切断する試験片の幅寸法を設定する幅寸法設定部と、
を備えたことを特徴とする試験片切断装置。
【請求項2】
前記ゴム切断装置を使用しない時は、前記カッター部を仮固定する仮固定部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の試験片切断装置。
【請求項3】
前記ゴム素材支持部上に固定しない状態で載置するカッター受けを備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の試験片切断装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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