説明

試験装置および試験方法

【課題】試験装置のウォームアップ期間を短縮する。
【解決手段】電源電力の投入後にウォームアップ動作を行い、被試験デバイスを試験する試験装置であって、被試験デバイスを試験する試験部と、それぞれ試験部内の異なる箇所の温度を検出する複数の温度センサと、試験装置に電源電力が投入された後に、複数の温度センサが検出するそれぞれの検出温度が予め定められた温度範囲内となったことを条件として、ウォームアップ動作の完了後に実行すべき試験動作を試験部に実行させる試験制御部とを備える試験装置を提供する。それぞれの検出温度と、温度範囲との比較結果に基づいて、複数の温度センサが設けられた試験部内のそれぞれの箇所の温度を制御する温度制御部を更に備えてよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験装置および試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップ等を試験する試験装置において、電源投入後に所定の時間ウォームアップする装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
特許文献1 特開平7−229938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述した試験装置において、ウォームアップ期間は予め設定された固定期間となる。このため、ウォームアップ期間の途中で試験装置が十分に暖機された場合であっても、設定された期間が終了するまでは、試験装置は次の動作に移行しない。このため、試験効率が低下してしまう。また、ウォームアップ期間中では試験装置が十分に暖機できなかった場合であっても、設定された期間が終了すると、試験装置は次の動作に移行する。このため、高精度に被試験デバイスを試験できない場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、電源電力の投入後にウォームアップ動作を行い、被試験デバイスを試験する試験装置であって、被試験デバイスを試験する試験部と、それぞれ試験部内の異なる箇所の温度を検出する複数の温度センサと、試験装置に電源電力が投入された後に、複数の温度センサが検出するそれぞれの検出温度が予め定められた温度範囲内となったことを条件として、ウォームアップ動作の完了後に実行すべき試験動作を試験部に実行させる試験制御部とを備える試験装置を提供する。
【0005】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】試験装置100の構成例を示す。
【図2】温度制御部20の構成例を示す。
【図3】ウォームアップ動作の完了後に実行すべきイニシャライズ動作の一例を説明する。
【図4】試験制御部10に含まれる機能ブロックの一例を示す。
【図5】時間算出部12の動作例を示す。
【図6】実行決定部14の動作例を示す。
【図7】個別回路24の他の構成例を示す。
【図8】値制御部36の動作例を示す。
【図9】試験装置100の他の構成例を示す。
【図10】診断部60の構成例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0008】
図1は、試験装置100の構成例を示す。試験装置100は、半導体チップ等の被試験デバイス200を試験する装置であって、試験制御部10、温度制御部20および試験部40を備える。本例の試験装置100は、電源電力が投入された後にウォームアップ動作を行う。ウォームアップ動作は、試験部40の論理回路等に電源電力を投入して、且つ、当該論理回路等を駆動するパターンを入力しない状態を指してよい。
【0009】
例えば試験装置100は、ウォームアップ動作を実行してから、試験装置100の内部回路の設定および校正等を行うイニシャライズ動作を実行する。また、試験装置100は、イニシャライズ動作を実行してから、被試験デバイス200への試験信号の生成および被試験デバイス200からの応答信号の測定を行うDUT試験を実行してよい。本例の試験装置100は、ウォームアップの期間を短縮することで、試験時間を短縮する。
【0010】
試験部40は、被試験デバイス200を試験する。例えば試験部40は、被試験デバイス200への試験信号を生成して、且つ、被試験デバイス200からの応答信号を測定する。試験部40の内部には、それぞれ異なる箇所の温度を検出する複数の温度センサ22が設けられる。
【0011】
それぞれの温度センサ22は、熱電対またはサーミスタ等のように温度に応じて特性値が変化する素子であってよく、発振回路等のように温度に応じて出力信号の周波数等の特性値が変化する回路であってもよい。それぞれの温度センサ22は、試験部40に含まれる回路素子のうち、温度に応じて特性が変化する素子の近傍に設けられる。例えば温度センサ22は、試験信号を出力するドライバ素子の周囲の、予め定められた範囲内に設けられる。温度センサ22は、温度測定の対象となる回路素子と同一のチップまたは基板に設けられることが好ましい。
【0012】
温度制御部20は、複数の温度センサ22が検出するそれぞれの検出温度を示すデータを受け取る。温度制御部20は、それぞれの検出温度と、予め設定される温度範囲との比較結果に基づいて、それぞれの温度センサ22が設けられた試験部40内のそれぞれの箇所の温度を制御する。つまり、温度制御部20は、それぞれの検出温度が、当該温度範囲内となるように、試験部40内のそれぞれの箇所を加熱または冷却する。
【0013】
試験部40内には、それぞれの温度センサ22が設けられた箇所の温度を制御する制御ユニットが設けられてよい。制御ユニットは、ヒータ等の加熱部を有してよい。また制御ユニットは、気体または液体等の冷媒を用いる冷却部を有してよい。冷却部は、冷却用の気体を対象箇所に吹き付けるファンであってよく、冷却用の液体を、対象箇所近傍を通過する経路に循環させる循環装置であってもよい。
【0014】
温度制御部20は、温度センサ22が設けられる箇所に対応する制御ユニットを、当該温度センサ22の検出温度に応じて制御する。温度制御部20は、温度センサ22の検出温度に応じて、対応するヒータに供給する電力を制御してよく、対応するファンの回転数を制御してよく、対応する循環装置における冷媒の単位時間あたりの流量を制御してもよい。
【0015】
より具体的には、温度制御部20は、検出温度が所定の温度範囲の上限を超えている場合、ファンの回転数若しくは循環装置における冷媒流量を増大させ、または、ヒータに供給する電力を低下させてよい。また、温度制御部20は、検出温度が所定の温度範囲の下限を下回っている場合、ファンの回転数若しくは循環装置における冷媒流量を低下させ、または、ヒータに供給する電力を増大させてよい。
【0016】
また、温度制御部20は、試験部40内の回路素子を動作させることで、当該回路素子が設けられた箇所の温度を制御してもよい。例えば温度制御部20は、温度センサ22の検出温度に応じて、当該温度センサ22に対応する回路素子に入力する信号の電圧値、電流値または周波数等を制御する。ここで、温度センサ22に対応する回路素子とは、温度センサ22から所定の距離内に設けられる1または複数の回路素子であってよい。
【0017】
試験制御部10は、試験装置100に電源電力が投入された場合に、試験装置100にウォームアップ動作を実行させる。本例の試験制御部10は、温度制御部20から、複数の温度センサ22が検出するそれぞれの検出温度が予め定められた温度範囲内となったか否かを示す信号を受け取る。試験制御部10は、それぞれの検出温度が予め定められた温度範囲内となったことを条件として、ウォームアップ動作の完了後に実行すべき試験動作を試験部40に実行させてよい。当該試験動作は、上述したイニシャライズ動作およびDUT試験である。試験制御部10は、全ての検出温度が温度範囲内となった場合に、イニシャライズ動作を実行させてよく、一部の検出温度が温度範囲内となった場合に、イニシャライズ動作の一部を実行させてもよい。
【0018】
本例の試験装置100によれば、試験部40内の各検出温度が、所定の温度範囲内となった場合に、ウォームアップ動作を完了させる。このため、ウォームアップ期間を短縮することができる。また、試験制御部10は、各検出温度の単位時間内における変化量に更に基づいて、ウォームアップ動作を完了させるか否かを判定してもよい。例えば試験制御部10は、それぞれの検出温度の当該変化量が所定の基準値以下となったことを更に条件として、ウォームアップ動作を完了させる。これにより、検出温度が安定したことを更なる条件として、ウォームアップ動作を完了させることができる。
【0019】
また、試験制御部10は、複数の温度センサ22が検出する複数の温度のうち、最大値および最小値の差分が、予め定められた基準値以下となることを更に条件として、ウォームアップ動作を完了させてもよい。これにより、試験部40内の温度分布が小さくなったことを更なる条件として、ウォームアップ動作を完了させることができる。
【0020】
本例においては、試験部40を、複数の回路ブロック42に区分して説明する。それぞれの回路ブロック42は、試験部40が有するべき機能の少なくとも一部を実行する。例えば回路ブロック42は、試験信号を生成する回路または応答信号を測定する回路の少なくとも一部である。
【0021】
回路ブロック42は、ブロック内の温度差が予め定められた基準値以下となるように概念的に区分けされたブロックであってよい。つまり、回路ブロック42は、対応する温度センサ22の検出温度により、ブロック全体の温度が推定される範囲を指してよい。1つの回路ブロック42は、1つのチップまたは基板内の所定の範囲を指してよい。それぞれの回路ブロック42には、少なくとも1つの温度センサ22が設けられる。温度制御部20は、それぞれの温度センサ22の検出温度に基づいて、対応する回路ブロック42の温度を制御してよい。
【0022】
図2は、温度制御部20の構成例を示す。本例の温度制御部20は、複数の個別回路24および全体判定部32を有する。個別回路24は、温度センサ22毎に設けられる。個別回路24は、比較器34および個別判定部30を有する。
【0023】
比較器34は、対応する温度センサ22の検出温度と、予め定められた上限値および下限値とを比較する。比較器34は、当該検出温度および上限値を比較する上限比較回路26と、当該検出温度および下限値を比較する下限比較回路28を有する。上限比較回路26は、検出温度が上限値を超えた場合に論理値1を示し、検出温度が上限値以下の場合に論理値0を示す冷却信号を出力する。温度制御部20は、冷却信号が論理値1を示す場合に、対応する回路ブロック42に対する冷却量を増大させ、または、加熱量を低減する。
【0024】
下限比較回路28は、検出温度が下限値より小さくなった場合に論理値1を示し、検出温度が下限値以上の場合に論理値0を示す加熱信号を出力してよい。温度制御部20は、加熱信号が論理値1を示す場合に、対応する回路ブロック42に対する加熱量を増大させ、または冷却量を低減する。
【0025】
個別判定部30は、冷却信号および加熱信号の論理値に基づいて、対応する検出温度が所定の温度範囲内か否かを判定する。例えば個別判定部30は、冷却信号および加熱信号の論理和が0を示す場合に、検出温度が所定の温度範囲内であると判定する。個別判定部30は、冷却信号および加熱信号の論理和を、全体判定部32に出力してよい。
【0026】
全体判定部32は、それぞれの個別判定部30における判定結果に基づいて、全ての検出温度が所定の温度範囲内となっているか否かを判定する。全体判定部32は、それぞれの個別判定部30が出力する論理値の論理和が0を示す場合に、全ての検出温度が所定の温度範囲内となったと判定してよい。
【0027】
全体判定部32は、全ての検出温度が所定の温度範囲内となっている場合に、その旨を試験制御部10に通知する。試験制御部10は、当該通知に応じて、ウォームアップ動作を完了する。このような構成により、ウォームアップ動作の期間を短縮することができる。
【0028】
図3は、ウォームアップ動作の完了後に実行すべきイニシャライズ動作の一例を説明する。本例のイニシャライズ動作は、複数の回路ブロック42のうちの一部の回路ブロック42で実行できる複数の部分動作を含む。例えば、イニシャライズ動作が、遅延素子において遅延設定および実際の遅延量との関係を取得する第1の部分動作と、ドライバ回路が信号を出力するタイミングを、当該遅延素子を用いて調整する第2の部分動作とを含む場合、第1の部分動作では、ドライバ回路を含む回路ブロック42を用いない。
【0029】
本例では、イニシャライズ動作に含まれる部分動作Aは、回路ブロック42−1および42−2を用いて実行され、部分動作Bは、回路ブロック42−1、42−2および42−3を用いて部分動作Aの後に実行され、部分動作Cは、全ての回路ブロック42を用いて部分動作Bの後に実行される。
【0030】
試験制御部10は、一部の回路ブロック42に対応する検出温度が所定の温度範囲内となったことを条件として、他の回路ブロック42に対応する検出温度が所定の温度範囲内となるのを待たずに、当該一部の回路ブロック42に部分動作を実行させてよい。例えば試験制御部10は、回路ブロック42−1および42−2に対応する検出温度が所定の温度範囲内となったことを条件として、他の回路ブロック42−3および42−4に対応する検出温度が所定の温度範囲内となるのを待たずに、回路ブロック42−1および42−2を用いて部分動作Aを実行させる。
【0031】
このような制御により、試験装置100は、全ての回路ブロック42のウォームアップ動作が完了するのを待たずにイニシャライズ動作を開始できる。このため、試験期間を更に短縮することができる。
【0032】
また、試験制御部10は、ウォームアップ動作が完了している回路ブロック42(例えば、対応する温度センサ22の検出温度が所定の温度範囲内となっている回路ブロック42を指す)により実行できる部分動作が複数存在する場合、いずれかの部分動作を選択して実行させる。このとき試験制御部10は、それぞれの回路ブロック42について予測される、ウォームアップ動作が完了までに要する時間に基づいて、いずれかの部分動作を選択してよい。
【0033】
図4は、試験制御部10に含まれる機能ブロックの一例を示す。試験制御部10は、時間算出部12および実行決定部14を含む。時間算出部12は、それぞれの温度センサ22が検出する検出温度の時間波形に基づいて、それぞれの温度センサ22が検出する温度が、所定の温度範囲内となるのに、あとどれだけの時間を要するかを算出する。
【0034】
実行決定部14は、現段階でウォームアップ動作が完了している回路ブロック42で実行できる、イニシャライズの部分動作が複数存在する場合に、いずれの部分動作を実行させるかを、ウォームアップ動作が完了していない回路ブロック42に対して時間算出部12が算出した時間に基づいて決定する。
【0035】
図5は、時間算出部12の動作例を示す。本例の時間算出部12は、電源投入後(T0)から現在(T1)までの、それぞれの検出温度の波形を多項式近似する。そして、近似した式に基づいて、T1以降の検出温度の変化を算出して、それぞれの温度センサ22が検出する温度が、所定の温度範囲内となるタイミングT2を算出する。これにより、それぞれの検出温度が所定の温度範囲内となるまでに要する時間T2−T1を算出できる。
【0036】
また、時間算出部12は、過去のウォームアップ動作において取得した検出温度の時系列データに基づいて、温度センサ22の検出温度が所定の温度範囲内となるまでに要する時間を推定してもよい。例えば時間算出部12は、過去の時系列データにおいて、現在の検出温度と同一の温度となった時刻と、検出温度が所定の温度範囲内となった時刻との差分を算出する。時間算出部12は、それぞれの温度センサ22について、過去の時系列データを格納してよい。
【0037】
図6は、実行決定部14の動作例を示す。本例の試験動作(イニシャライズ動作)は、回路ブロック42−1および42−2を用いて実行できる部分動作EおよびG、回路ブロック42−1、42−2および42−3を用いて実行できる部分動作F、ならびに、回路ブロック42−1、42−2および42−4を用いて実行できる部分動作Hを有する。なお、部分動作Fは、部分動作Eの後に実行され、部分動作Hは、部分動作Gの後に実行される。
【0038】
ここで、回路ブロック42−1および42−2のウォームアップ動作が完了すると、複数の部分動作(EおよびG)が実行可能となる。実行決定部14は、実行可能となった部分動作の後に実行すべき部分動作(FおよびH)に用いる回路ブロック42と、それぞれの回路ブロック42のウォームアップ動作が完了するまでに要する時間とに基づいて、いずれの部分動作(EおよびG)を実行するかを選択する。
【0039】
より具体的には、実行決定部14は、実行可能となった複数の部分動作(EおよびG)のうち、直後に実行すべき部分動作(FおよびH)が実行可能となるタイミングが早いほうを選択する。本例において、回路ブロック42−3のほうが、回路ブロック42−4よりもウォームアップ動作が早く完了すると予測される場合には、実行決定部14は、部分動作Eを実行させる。このような制御で、より効率よくイニシャライズ動作を完了させることができる。
【0040】
実行決定部14は、イニシャライズ動作に含まれるそれぞれの部分動作について、いずれの回路ブロック42が用いられるかを示す情報を予め格納する。また、実行決定部14は、個別判定部30から、ウォームアップ動作が完了している回路ブロック42の情報を取得する。
【0041】
図7は、個別回路24の他の構成例を示す。本例の個別回路24は、図2に関連して説明した個別回路24の構成に加え、値制御部36を更に有する。他の構成は、図2に関連して説明した個別回路24と同一であってよい。
【0042】
値制御部36は、試験部40のウォームアップ動作中に、比較器34に入力する上限値および下限値を制御する。例えば値制御部36は、試験装置100に電源電力が投入されてからの経過時間に応じて、比較器34に設定する上限値および下限値の少なくとも一方を制御する。
【0043】
図8は、値制御部36の動作例を示す。本例における値制御部36は、試験装置100に電源電力が投入されてからの経過時間に応じて、比較器34に入力する上限値を徐々に小さくする。電源電力が投入されてからしばらくは、試験部40の温度が全体的に低い場合があるので、電源電力の投入直後の上限値を高く設定することで、既に所定の温度範囲内(MAX〜MIN)まで昇温された回路ブロック42についても、加熱を継続することができる。このため、より効率よく試験部40全体の温度を上昇させることができる。
【0044】
また値制御部36は、試験装置100の周囲温度に応じて、比較器34に設定する上限値および下限値の少なくとも一方を制御してよい。値制御部36は、試験装置100の周囲温度がより低い場合には、比較器34に設定する上限値をより高く設定してよい。また、試験装置100の周囲温度がより高い場合には、比較器34に設定する下限値をより低く設定してよい。この場合においても、電源電力が投入されてからの経過時間に応じて、上限値および下限値を、所定の温度範囲の上限および下限(MAX、MIN)に徐々に近づけてよい。
【0045】
また値制御部36は、隣接する温度センサ22の検出温度に基づいて、それぞれの温度センサ22に対する上限値および下限値の少なくとも一方を制御してよい。ここで隣接する温度センサ22とは、隣接する回路ブロック42に設けられる温度センサ22を指してよく、予め定められた距離内に配置された温度センサ22を指してよく、また、最も近くに配置される温度センサ22を指してもよい。
【0046】
値制御部36は、それぞれの温度センサ22の検出温度が、所定の温度範囲内より低い場合に、当該温度センサ22に隣接する温度センサ22に対応する上限値を、所定の温度範囲の上限(MAX)よりも高く設定してよい。これにより、所定の温度範囲まで既に昇温された回路ブロック42を比較的に高温に維持することができ、隣接する回路ブロック42を効率よく昇温させることができる。
【0047】
図9は、試験装置100の他の構成例を示す。本例の試験装置100は、図1に関連して説明した試験装置100の構成に加え、診断部60を更に備える。他の構成は、図1から図8において説明した試験装置100と同一であってよい。
【0048】
診断部60は、試験動作(イニシャライズ動作)の実行前に、それぞれの検出温度に基づいて試験部40のそれぞれの箇所を診断する。例えば診断部60は、それぞれの検出温度が、予め定められた許容範囲外となった場合に、当該温度センサ22が設けられた回路ブロック42(または当該回路ブロック42の一部分)が正常でないと診断する。また、診断部60は、過去のウォームアップ動作時に検出した検出温度のデータと、今回検出した検出温度のデータとを比較して、それぞれの温度センサ22に対応する回路ブロック42を診断してよい。
【0049】
図10は、診断部60の構成例を示す。本例の診断部60は、データ蓄積部62およびデータ比較部64を有する。データ蓄積部62は、過去のウォームアップ動作における、それぞれの検出温度の時系列データを蓄積する。データ蓄積部62は、温度センサ22毎に、検出温度のデータを蓄積することが好ましい。
【0050】
データ比較部64は、新たに取得したそれぞれの検出温度のデータと、データ蓄積部62において対応するデータとを比較して、試験部40のそれぞれの箇所を診断する。本例のデータ比較部64は、それぞれの温度センサ22が今回検出した検出温度の時系列データと、それぞれの温度センサ22についてデータ蓄積部62が蓄積した時系列データとを比較する。
【0051】
データ比較部64は、今回検出した時系列データと、過去の時系列データの平均データとの相互相関関数を算出して、これらのデータの一致度を算出してよい。データ比較部64は、当該一致度が所定の許容範囲外である場合に、対応する回路ブロック42が正常でないと診断する。
【0052】
このような処理により、例えば配線の短絡または開放等が生じてしまい、通常とは異なる電流が流れているような回路ブロック42を、ウォームアップ動作中に検出することができる。データ比較部64は、正常でない回路ブロック42を示す情報を、試験制御部10に通知してよい。試験制御部10は、当該通知を受けた場合に、当該回路ブロック42を用いずに試験を実行してよく、また、使用者等にその旨を通知して試験を中断してもよい。
【0053】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0054】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0055】
10・・・試験制御部、12・・・時間算出部、14・・・実行決定部、20・・・温度制御部、22・・・温度センサ、24・・・個別回路、26・・・上限比較回路、28・・・下限比較回路、30・・・個別判定部、32・・・全体判定部、34・・・比較器、36・・・値制御部、40・・・試験部、42・・・回路ブロック、60・・・診断部、62・・・データ蓄積部、64・・・データ比較部、100・・・試験装置、200・・・被試験デバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源電力の投入後にウォームアップ動作を行い、被試験デバイスを試験する試験装置であって、
前記被試験デバイスを試験する試験部と、
それぞれ前記試験部内の異なる箇所の温度を検出する複数の温度センサと、
前記試験装置に電源電力が投入された後に、前記複数の温度センサが検出するそれぞれの検出温度が予め定められた温度範囲内となったことを条件として、前記ウォームアップ動作の完了後に実行すべき試験動作を前記試験部に実行させる試験制御部と
を備える試験装置。
【請求項2】
それぞれの前記検出温度と、前記温度範囲との比較結果に基づいて、前記複数の温度センサが設けられた前記試験部内のそれぞれの箇所の温度を制御する温度制御部を更に備える
請求項1に記載の試験装置。
【請求項3】
前記試験部は複数の回路ブロックを有し、
前記試験動作は、前記複数の回路ブロックのうちの一部の回路ブロックで実行できる部分動作を含み、
前記試験制御部は、前記一部の回路ブロックに対応する前記検出温度が前記温度範囲内となったことを条件として、他の回路ブロックに対応する前記検出温度が前記温度範囲内となるのを待たずに、前記一部の回路ブロックに前記部分動作を実行させる
請求項2に記載の試験装置。
【請求項4】
前記試験動作は、複数の前記部分動作を含み、
前記試験制御部は、
それぞれの前記検出温度の時間波形に基づいて、それぞれの温度センサが検出する温度が前記温度範囲内となるのに要する時間を算出する時間算出部と、
対応する前記検出温度が前記温度範囲内となった前記回路ブロックで実行できる前記部分動作が複数存在する場合に、前記検出温度が前記温度範囲内となっていない前記温度センサに対して前記時間算出部が算出した時間に基づいて、いずれの前記部分動作を実行させるかを決定する実行決定部と
を有する請求項3に記載の試験装置。
【請求項5】
前記温度制御部は、それぞれの前記検出温度と、予め定められた上限値および下限値とを比較する比較器を有し、前記比較器における比較結果に基づいて、前記試験部内のそれぞれの箇所の温度を制御する
請求項2から4のいずれか一項に記載の試験装置。
【請求項6】
前記温度制御部は、前記試験装置に電源電力が投入されてからの経過時間に応じて、前記比較器に設定する前記上限値および前記下限値の少なくとも一方を制御する値制御部を更に有する
請求項5に記載の試験装置。
【請求項7】
前記温度制御部は、前記試験装置の周囲温度に応じて、前記比較器に設定する前記上限値および下限値の少なくとも一方を制御する値制御部を更に有する
請求項5に記載の試験装置。
【請求項8】
前記温度制御部は、隣接する温度センサの前記検出温度に基づいて、それぞれの前記温度センサに対する前記上限値および下限値の少なくとも一方を制御する値制御部を更に有する
請求項5に記載の試験装置。
【請求項9】
前記試験動作の実行前に、それぞれの前記検出温度に基づいて前記試験部のそれぞれの箇所を診断する診断部を更に備える
請求項2から7のいずれか一項に記載の試験装置。
【請求項10】
前記診断部は、
過去の前記ウォームアップ動作における、それぞれの前記検出温度のデータを蓄積するデータ蓄積部と、
新たに取得したそれぞれの前記検出温度のデータと、前記データ蓄積部において対応する前記検出温度のデータとを比較して、前記試験部のそれぞれの箇所を診断するデータ比較部と
を有する請求項9に記載の試験装置。
【請求項11】
前記試験制御部は、前記複数の温度センサが検出する温度の最大値および最小値の差分が、予め定められた基準値以下となることを更に条件として、前記ウォームアップ動作の完了後に実行すべき動作を前記試験部に実行させる
請求項2から10のいずれか一項に記載の試験装置。
【請求項12】
電源電力の投入後に試験部のウォームアップ動作を行い、前記試験部により被試験デバイスを試験する試験方法であって、
前記試験部内の異なる箇所に、温度を検出する温度センサを設け、
前記試験部に電源電力が投入された後に、それぞれの前記温度センサが検出する検出温度が予め定められた温度範囲内となったことを条件として、前記ウォームアップ動作の完了後に実行すべき試験動作を前記試験部に実行させる試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−47598(P2012−47598A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189931(P2010−189931)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(390005175)株式会社アドバンテスト (1,005)
【Fターム(参考)】