説明

詰まった血管通路を突き抜けて進むためのカテーテルシステム及び方法

病的動脈の慢性完全閉塞あるいは他の頑強なアテローム性動脈硬化プラーク
を貫通するための、回転する切削ヘッドのカテーテルが開示されている。カテーテルの回転する切削ヘッドは、使用しないときには外側の保護シース内に安全に留まるように設計されている。外側の保護シースは1つ若しくはそれ以上の螺旋状のグロウブ又はスロットを有し、切削ヘッドは、これら螺旋状のグロウブ又はスロットに嵌合する突き出たブレード又は突出部を有している。内側のカテーテル又は切削ヘッドに取り付けられたワイヤへのトルクの適用が切削ヘッドに回転を加え、切削ヘッドの突き出たブレード又は突出部に対するシースの螺旋状のグロウブ又はスロットの力が、保護シースから外方へ切削ヘッドを前進させる。切削ヘッドは、伸長した時点で、自由に回転することができる。装置は、切削ヘッドを病気の部分に指向させるのにガイドワイヤを用いてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、詰まった血管通路を突き抜けて進むためのカテーテルシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば冠動脈疾患や末梢血管疾患などの数多くの血管の疾患は、動脈内における脂肪質のアテローム性動脈硬化沈着物(プラーク:plaque)の堆積によって引き起こされる。これらの沈着物は、前記特定の動脈によって供給される組織(tissue)への血流を制限する。このタイプの疾患に対する危険要因(リスクファクタ:risk factor)は、高齢,糖尿病,高血圧,肥満,喫煙履歴および高いコレステロールやトリグリセリド(triglyceride)を含んでいる。
【0003】
心臓の動脈内でこれらの沈着物が堆積すると、この問題は冠動脈疾患(CAD)と呼ばれる。例えば脚部などの手足の動脈内でこれらの沈着物が堆積すると、その状態は末梢動脈疾患(PAD)と呼ばれる。狭心症,心臓疾患および心臓発作などのCADの症状は良く知られている。PADの症状は、歩行時の痛みや治癒しない創傷を含み得る。もし、PADが治療されなければ、最終的には、重度の肢虚血(CLI),壊疽および手足の喪失を招き得る。大雑把に言えば、70歳を越える人口の約30%が、PADに苦しんでいる。
【0004】
動脈が完全に閉塞するポイントまでプラークが堆積すると、閉塞は慢性完全閉塞(CTO)と呼ばれる。CTOはCADの治療を混乱させることがある。というのは、突然の心筋の萎縮は突然死に至る場合があるからである。PAD患者に対して末梢動脈を塞ぐCTOも、やはり極めて深刻である。CTOに苦しむPAD患者は、死へ向かって悪循環に陥ることがよくある。末梢動脈におけるCTOは、解消するには手足の切断を要する手足の壊疽をもたらすことがよくある。手足の切断は、ひいては他の合併症を引き起こし、大雑把に言えば、PAD患者の約半数は、手足の切断後2年以内に亡くなっている。
【0005】
従って、CADと進行したPADの両方にとって、かかる閉塞の迅速な治療は重要である。ここで、侵襲性がより低い血管形成またはアテローム切除術による治療手当が数多くの利点を有している。これらの治療手当では、病気の動脈内にカテーテルが挿入され、閉塞した領域まで通される。そこで、膨らまされたカテーテル・バルーンからの圧力によって閉塞物が望ましくはより開放位置へ搾り出され(バルーン血管形成)、ステント(stent)によって開放された状態に維持されてもよく、或いは、その代わりに、医師がカテーテルを用いて動脈の内部からプラークを外科的に除去(アテローム切除術)してもよい。
【0006】
一例として、PADの治療に対しては、Fox Hollow (now ev3) SilverHawk(登録商標)カテーテル(特許文献1参照)のようなアテローム切除装置が、よく使用される。これらのカテーテルは、閉塞領域まで(通常、ガイドワイヤの助けをかりて)動脈を通すことができる。そこでは、医師は、通常、プラークの切れ端を薄く削り落とす度に、動脈の閉塞領域を貫通する多重の通路(multiple passes)を形成するようにカテーテルを位置させる。削られたプラークの切れ端は、装置の中空の突出部(ノーズ:nose)内に貯えられる。多重の通路を形成することにより、プラークを実質的に低減することができ、血液の循環が手足に対して回復され、ひいては手足が切断から救われる。
【0007】
しかしながら、プラークを効果的に処理するためには、最新のカテーテルは、動脈の閉塞領域を貫通して通される必要がある。これは、殆どのカテーテルの閉塞物を処理するのに用いられる動作部分(active portion)が、通常、カテーテルの先端部ではなくカテーテルの側部に配置されているためである。このことは、単純な機構上の必要性によるものである。カテーテルの先端部は非常に小さい表面積を有していなければならず、従って病気の動脈の非常に小さい部分しか処理できない。対照的に、カテーテルの側部は遙かに大きな表面積を有しており、従って、カテーテルの側部は、病気の動脈の側部に対して好適に順応する。従って、ステント,バルーン,アテローム切除術の切除具(cutting tool)等は、通常、カテーテルの側部に装備されている。カテーテルは、適切に機能するためには、動脈の詰まった部分を貫通して通されなければならない。
【0008】
動脈がプラークによって部分的にしか閉塞されていないときには、カテーテルは、通常、閉塞物を通り越して巧みに操作され、カテーテルの作動部分は動脈の疾患部分と接するように持ち来されることができる。しかしながら、CTOの場合のように、動脈が完全に塞がれているときには、この選択肢はもはや無理である。カテーテルの先端部は閉塞物に直面してぶつかり、それ以上の前進動作は阻止される。
【0009】
単純に典型的なカテーテルを強引に押し進めて閉塞物を通り越そうとすることは、通常、無理である。閉塞物は、典型的には、しばしば硬いカルシウムの沈着物をも同様に包含する、比較的頑丈な線維性の材料で構成されている。医師がガイドワイヤ若しくはカテーテルを強引に押し進めてかかる閉塞物を通り越そうとするとき、ガイドワイヤ若しくはカテーテル装置が、そうはならないで、動脈から出てしまい当該動脈の外側の管腔に入ってしまうことがよくある。このことは、動脈を更に損傷させ、医療手当を更に複雑にし、そして、成功の機会を減少させることになる。先に議論したように、このような医療手当の失敗の帰結は、高い死亡率をもたらす。従って、カテーテル及びガイドワイヤを、より容易に硬化したプラーク及びCTOを貫通して侵入できるようにする改良された方法は、高い医療上の重要性がある。
【0010】
当該技術分野の現況を旨く取り纏めたものが、Aziz及びRamsdaleによる非特許文献1の記事に見られる。
【0011】
硬化したプラークを突き破るための装置を製作する従前の試みには、Laryの特許文献2,Curryの特許文献3,Delaney等の特許文献4がある。
【0012】
特許文献2は、カテーテル・ハウジング内に収容された刃(ブレード:blade)が付いたヘッド部を特徴とする切歯カテーテル(incisor catheter)を教示しており、前記カテーテル・ハウジングには、ブレードが突き出る多数の溝部(スリット:slit)がある。ブレードは、プッシュプル・カテーテル(push-pull catheter)によって作動させられる。プッシュプル・カテーテルが押されると、ブレードの付いたヘッド部がハウジングのスリットを通って突き出し、ブレードが硬いプラーク物質と接するようになる。このブレードは回転することはなく、直線的な切削(カット:cut)をもたらすものである。
【0013】
特許文献3は、多種多様の詰まった(閉塞した)管に孔をあけるための、一般用途のカテーテル孔空け装置を教示している。この装置は、ドリルヘッドの先端を閉塞部の面にしっかりと固定し、ドリルヘッドが或る角度で面するように、ドリルヘッドに取り付けられた手綱(レイン:rein)を用いて当該ドリルヘッドを部分的に回転させるものである。
【0014】
特許文献4は、石灰化した血管閉塞部を化学的に処理するカテーテル装置を教示している。この装置は、石灰化した物質を化学的に溶解させる目的で、石灰化したプラークに酸性溶液やその他の流体を送給するための流体送給カテーテルである。
【0015】
CTO閉塞物を横切るための幾つかのカテーテルが、Cordis社,FlowCardia Technology社,Kensey Nash社およびその他の企業によって、現在、市販されている。a Johnson and Johnson CompanyのCordis社は、Frontrunner(登録商標)XP CTOカテーテルを製作している(以前は、LuMend社によって製作されていた)。このカテーテルは、特許文献5及びその他の特許でも議論されているが、カテーテルを横切るときに開閉する正面「顎部(ジョー:jaw)」を有している。ジョー自体は、切削することはなく、カテーテルが通過するときにCTOをこじ開けることを企図したものである。
【0016】
他のカテーテル装置は、CTOを横切るように指向したエネルギの様々な形態を用いている。例えば、カリフォルニア州サニーベールのFlowCardia Technology社は、特許文献6及びその他の特許において教示されているCrosserシステムを製作している。このシステムは、非切削カテーテル・ヘッドにエネルギを供給するために、超音波トランスデューサを用いている。このカテーテル・ヘッド自体は、比較的小径であり、何等の刃(ブレード)も有していない。より正確に言えば、このヘッドは、高速(超音波)振動を通じて、多種多様な異なる閉塞物を通って自身の道を押し進むことができる。
【0017】
ペンシルバニア州エクストンのKensey Nash社(前身は、Intraluminal Therapeutics, Inc.)は、Safe-Cross CTOシステムを製作している。このシステムは、特許文献7及び8において教示されているが、高周波(radiofrequency:RF)エネルギを利用している。カテーテル自体は、カテーテルの先端部が動脈の壁部近付くと感知し得る光学(近赤外線)センサにより、その動作が指示される。光学センサは、操作者(オペレータ:operator)に、カテーテルを如何に操作すべきかを報知し、RF切除(アブレーション:ablation)ユニットがオペレータを助勢して物質を切除し、閉塞領域を横切る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第6027514号明細書
【特許文献2】米国特許第5556405号明細書
【特許文献3】米国特許第6152938号明細書
【特許文献4】米国特許第6730063号明細書
【特許文献5】米国特許第6800085号明細書
【特許文献6】米国特許第7297131号明細書
【特許文献7】米国特許第6852109号明細書
【特許文献8】米国特許第7288087号明細書
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】「Heart」2005; 91; 42-48頁, Aziz及びRamsdaleによる「慢性完全閉塞−大きな現状打破を要する厳しい挑戦:トンネルの出口に光明は見えるか?」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
工夫に富んではいるが、これらの装置を用いた成功率は、望まれる率からはなお遙かに離れている。Aziz氏によれば、従来技術の装置を用いてのCTO克服の報告された最高の成功率は、56%から75%の範囲である。Aziz氏は、また、平均の成功率は50%から60%の範囲に過ぎないことも教示している。CTOが旨く除去できなかったことが患者の罹患率および死亡率に大きな否定的な影響を及ぼすので、更なる改良が望まれることは明白である。
【0021】
これら従来技術のCTO除去装置にまつわる別の問題は、CTOを貫通する小さな溝(チャンネル:channel)を単に切り出すだけでは、医療問題を全体的に解消するには十分ではないかも知れない、ということである。CTOを横切る装置が閉塞部のかなりの部分をも除去する(減量する)ことが時折ある。これは、先に議論したように、側部に装備されたステント,バルーン,アテローム切除術の切除具を備えたカテーテルが、動脈の損傷した部分にアクセスでき、より持続的な修復を行えるようにするためには、閉塞部のかなりの部分の除去が必要とされるからである。従って、他のタイプのカテーテルが通過できるようにするのに求められる、より相当な量のCTO減量を行うことができる改良されたCTO「障害物除去(unclogging)」装置も望まれている。
【0022】
このように、CTOを効果的に横切ることができ、より相当な量の硬化した若しくは石灰化したプラークを除去することができる装置に対するニーズが、依然としてある。かかる装置は、ステント及びその他の装置、例えばSilverHawkアテローム切除カテーテル,バルーン・カテーテル等の装置が、酷い閉塞状況でより成功して用いられることを、可能にすることであろう。このことは、ひいては、改善された患者の転帰ならびに患者の罹患率および死亡率の減少に繋がる。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、病気の動脈,静脈もしくは他の身体の管腔から、例えば、慢性完全閉塞,頑強なアテローム性動脈硬化プラーク,胆石,腎結石などの、頑強な物質を貫通して通路を創成するための、新規な回転式の切削ヘッド・カテーテルを教示するものである。このカテーテルの回転する切削ヘッドは、使用しないときには、外側保護シースヘッド(sheath head)内に存在するように設計されており、この鞘(シース:sheath)ヘッドは、カテーテルの遠位端部に装備されている。
【0024】
この外側保護シースヘッドは、1つ若しくはそれ以上の螺旋形の(helical)通路(グロウブ:grove)又は細長い穴部(スロット:slot)を包含しており、切削ヘッドは、これら螺旋形のグロウブ又はスロット内に嵌合する突出した刃(ブレード:blade)又は突起部を有している。(カテーテル若しくはワイヤ、或いは切削ヘッドに取り付けられたあらゆるトルク伝達機構である)内側のトルク伝達連結具(communicating connector)へのトルクの適用は、切削ヘッドに回転(スピン:spin)を加え、切削ヘッドの突出したブレード又は突起部に対するシースヘッドの螺旋形のグロウブの力は、切削ヘッドを保護シースから外方へ進行させる。一旦伸長すると、切削ヘッドは自由に回転することができる。
或る実施形態では、カテーテル及び切削ヘッド自体さえも、その中心部が中空であってもよく、装置は、カテーテル及び切削ヘッドを所望の位置へ向かわせるのにガイドワイヤを用いてもよい。その代わりに、ガイドワイヤが、カテーテル管(チューブ:tube)の外側に取り付けられたガイド部に取り付けられてもよい。少なくとも幾つかの実施形態では、シースヘッドは、動作停止装置(motion stop)として働き、切削ヘッドの前方への伸長を制限するように設計された、1つ若しくはそれ以上の(例えば機械的な障害物のような)動作停止要素を含んでいてもよい。
【0025】
切削ヘッドの突出ブレードの角度と特性に依存して、ブレードは、身体の管腔から閉塞物質を実際には取り除くことなく、単に閉塞物質を貫通して切削するように設計されてもよく、或いは、その代わりに、ブレードは、閉塞物質を貫通して切削するのと、その身体の管腔への繋がりを断つのと、両方を行うように設計され、それにより、身体の管腔から閉塞物質を取り除くようにしてもよい。この場合には、切削ヘッドは、閉塞部のかなりの部分を実際に除去(減量)するように働くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、ハンドル,カテーテル及びカテーテルヘッドを含むカテーテル装置の全体像を示している。
【図2】図2は、切削ヘッドがシースヘッドから外へ延びた状態でのカテーテルヘッドの外観を示している。
【図3】図3は、閉塞した動脈内で切削ヘッドが伸長しCTOプラーク内に切り込んだ状態での(ガイドワイヤに装備された)カテーテルヘッドの図を示している。
【図4】図4は、カテーテルヘッドのシースヘッドの保護覆いから螺脱する切削ヘッドのダイアグラムを示している。
【図5】図5は、カテーテルヘッドの保護シースヘッドの内部の格納位置にねじ込まれた切削ヘッドを示すカテーテルヘッドの拡大図を示している。
【図6】図6は、代替的な設計の突出ブレードを備えた切削ヘッドの拡大図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0027】
この議論を通じて、動脈、特に、冠動脈あるいは末梢四肢動脈から、頑強なアテローム性動脈硬化プラークを貫通して通路を創成するためのこの装置の適用が、頻繁に例として用いられるけれども、これらの特定の例は限定されることを意図したものでないことが理解されるべきである。
本技術のその他の適用には、装置が尿管を行き来するように意図されることになる腎結石の除去;装置が胆管を行き来するように意図されることになる胆石の除去;装置が尿道を行き来するように意図されることになる尿道の前立腺肥大閉塞の除去;装置が卵管を行き来するように意図されることになる閉塞した卵管の除去;血栓の治療,肺の中に閉じ込められた物質の除去、などがある。
一般に、人体の管腔内で場所を占めるあらゆる好ましからざる物質は、これらの技法によって外科的に除去することができる。同様に、殆どの例では人間の患者における適用が引き合いに出されているけれども、同じ技法が動物においても有用であることは明白である。
【0028】
螺旋状のドリルビット(drill bit)やセルフタッピングねじビット(self-tapping screw bit)は、ろう(ワックス:wax)のような柔らかい物質や岩のような頑強な物質を貫通するのに非常に有効であることが幅広く知られており、事実、かかる装置はこのような目的で広範に用いられている。ドリルビットは、効果的ではあるけれども、典型的には、力強いのと同時に大雑把であると考えられている。かつて電動ドリルを用いることを企図した者は誰もが証言し得るように、ドリル装置は、物質を除去するのには確かに有効ではあるが、繊細な血管手術、特に身体の奥深く隠れた部位での血管手術には、全体的に不向きであるように思える。
螺旋状のセルフタッピングねじビットは、若干異なるように設計されている。様々の物質を貫通して切削するのには正しく効果的ではあるけれども、ドリルビットは、物質を切削しその後その物質を除去するように構成されており、一方、セルフタッピングねじビットは、第一義的には、物質を貫通して通路を切削するために設計されている。何れのタイプの装置についても、問題は、切削あるいは閉塞物除去の効能ではない;問題は、周囲の動脈に不用意に損傷を及ぼすことを防止することである。
【0029】
しかしながら、驚いたことには、本発明は、そのような大雑把で力強い(パワフル:powerful)方法に対する先入観が克服され、そのような「ドリルビット」装置の大雑把で一見したところ圧倒的なパワーを制御するために、好適な保護および制御装置が考案されるならば、閉塞物を切削するときも除去するときも共にパワフルであって、しかも、動脈の壁部への好ましからざる損傷を回避するに十分な特別な、繊細な血管手術に好適なカテーテル「ドリルビット」装置が製作され得ることを、教示している。
【0030】
そして、本発明の第1の態様においては、「ドリルビット」状の物質除去装置(若しくは、セルフスレッディング螺旋ねじビット(self-threading helical screw bit))の優れた物質切削/除去特性が、かかるパワフルな切削装置が繊細な動脈や他の身体の管腔の範囲内で安全かつ効果的に用いられることができるようにする、好適な保護およびカテーテル誘導機構と組み合わされている。
【0031】
これを実行するためには、「ドリルビット」の切れ刃全体にわたって精密な制御を働かせる必要がある。ビット又は「切削ヘッド」は、カテーテルの先頭部分(ヘッド:head)が閉塞領域まで動脈にねじ込まれる間、動脈壁部に対する不用意な損傷を回避できるように、通常、動脈壁部との接触から被覆または遮蔽されるべきである。閉塞部に達すると、切削ヘッド(ビット)の切削部分は、関連した閉塞部切削活動を実行するのに必要な最小範囲までのみが、選択的に露出されるべきである。
切削ヘッドの回転方向は、随意的に変化させられることができ、例えば、ヘッドを反時計回り方向に回転させることによって障害物または閉塞物を貫通して鈍的切開を実行し、その後、組立体(アッセンブリ:assembly)全体を後退させる間は時計回り方向へ回転させられる。所望の切削が達成されると、切削ヘッドは迅速に保護シースに戻されなければならない。装置全体は、ミリメータ単位の直径の典型的な動脈内で操作され、カテーテル上でかなりの距離にわたって身体内へねじ込まれなければならない。
【0032】
これらの目的を達成する好適な技法が、以下の図面および例に教示されている。
【0033】
図1は、カテーテル本体(102),カテーテルハンドル(104)及びカテーテルヘッド(106)を含むカテーテル装置(100)の全体像を示している。カテーテル本体およびカテーテルヘッドは、また、しばしば切削ヘッドさえもが、しばしば中空で、ガイドワイヤ(不図示)を収容することができる。カテーテルヘッドの拡大図は、回転する切削ヘッド(108)を伸長した形態で示しており、カテーテルヘッド(106)の鞘(シース:sheath)部分(ここでは、このシースは「シースヘッド」と呼ばれる)伸長した外側も示されている。
【0034】
図2は、切削ヘッド(108)が伸長した状態でのカテーテルヘッド(106)のシースヘッド部分の外観を示している。この切削ヘッドは、通常、1つ若しくはそれ以上の突出した側部(サイド)ブレードを有している、つまり切れ刃(202)を備えており、また、これに加えて、多くの場合、先端部(204)にも同様に切れ刃(cutting edge)を備えている。カテーテルヘッド(106)のシース部分およびカテーテル(102)の中心部は、ガイドワイヤを収容するために中空であってもよい。幾つかの実施形態では、ガイドワイヤは、カテーテルヘッド(106)の側部において、側部の開口部(不図示)により、切削ヘッド(108)に先んじて、カテーテルヘッド(106)のシースヘッド部分から出て行く。他の実施形態では、切削ヘッド(108)は、それ自体が中空で、ガイドワイヤは、開口部(206)を通って切削ヘッド(108)の端末から出て行く。
【0035】
閉じた形態では、回転する切削ヘッド(108)はカテーテルヘッド(106)のシースヘッド部分の内部に引き込まれ、切削ヘッド(108)からの切れ刃つまり突出部(202)は、螺旋状のスロット又はグロウブ(208)内に嵌合する。この鞘に収められた形態は、突出する側部の切れ刃(202)及び先端の切れ刃(204)が、偶発的に動脈の壁部に接触することを防止する。
【0036】
図3は、閉塞した動脈(306)内のCTO(304)に切り込んでいる(切削ヘッドがシースヘッドから伸長した状態での)カテーテルヘッド(106)の図を示している。この例では、カテーテル及びカテーテルヘッドは、ガイドワイヤ(302)に取り付けられ、このガイドワイヤによって案内されているが、常にこうであるというものではない。
【0037】
明らかなように、切削ヘッドのような「ドリルヘッド/ねじ」の切れ刃は、動脈内壁(306)を容易に傷付け得る。偶発的な損傷(ダメージ:damage)を回避するためには、切削ヘッドの露出の範囲に対する精細な制御が必要である。このような精細な制御を成し遂げる方法が図4に示されている。
【0038】
図4は、どのようにして、切削ヘッド(108)がカテーテルヘッド(106)のシースヘッド部分の螺旋状のスロット又はグロウブ(208)から螺脱して、切れ刃(202)及び(204)を露出させるかについて、詳細の幾つかを示している。(402)においては、切削ヘッド(108)は、完全に露出して示されている。切削ヘッドは螺旋状のスロット(208)から完全に螺脱し、完全に伸長されている。切削ヘッド(108)上に取り付けられた突出する支柱つまりガイド(404)は、回転する切削ヘッドが、螺旋ねじ状のスロット(208)に対して出没するのを案内する役割を果たす。切削ヘッド(108)を、トルクを伝達する内部のカテーテルチューブ又はケーブル(408)と結合するカップリング(406)(トルク連絡コネクタ)は、カテーテルヘッド(106)のシースヘッド部分の最遠位位置に在る。
【0039】
(410)においては、切削ヘッドは、完全に引き込まれた位置で示されている。通常、切削ヘッドはこの完全引き込み位置に格納されており、その結果、動脈の非対象領域を損傷させることなく、ガイドワイヤを介して動脈内に導かれ、閉塞領域つまりプラーク領域に指向させられることができる。前記カップリング(406)はカテーテルヘッド(106)のシースヘッド部分の最遠位位置に在ること、及び、切削ヘッド(108)の突き出た切削ブレード(202)は螺旋ねじ状のスロット(208)内に完全にねじ込まれていることに留意すべきである。
【0040】
幾つかの状況では、閉塞部へ導くガイドワイヤ[図3の(302)]が既に導入されていよう。実際、アテローム切除術を施す従前の試みが既になされているかも知れず、この試みは、例えば硬いカルシウム沈積物で覆われたプラークなどの頑強なプラークであって、医師が、この頑強なプラークを突き破るのに既存の切削装置を使用する決断するかも知れない頑強なプラークによって、挫けてしまっているかも知れない。
【0041】
使用に際して、カテーテルヘッド(106)及びカテーテルチューブ(102)がガイドワイヤに取り付けられ、その後、適当な切り口を介して動脈内に導入される。カテーテルハンドル(104)は、身体(ボディ)の外部に残ることになる。閉塞部の位置は一般に既知であり、実際、閉塞部は、蛍光透視法その他の技法により撮像することができる。カテーテルヘッド(106)は、閉塞部に対して持ち来され、それから、操作者は、多くの場合、カテーテルハンドル(104)に装備された装置を介して、トルクを加える。このトルクは、通常、「トルク連絡コネクタ」と命名されている、内部のトルク伝導カテーテル又はワイヤ(408)を介して、カテーテルヘッド(106)に伝達される。通常、外側のカテーテル(102)は、トルクを伝えることはない。外側のカテーテル(102)は、ほぼ静止状態に維持され(つまり、回転せず)、同様に、カテーテルヘッド(106)のシースヘッド部分および螺旋ねじ状のスロット又はグロウブ(208)も回転しない。
【0042】
トルクは、カップリング(406)を介して切れ刃(108)に伝えられる。このトルクは、基本的には、突き出たブレードエッジ(202)の螺旋状のスロット又はグロウブ(208)に対する動作を通じて、カテーテルヘッド(106)のシースヘッド部分内の引き込み位置から切削ヘッド(108)を「螺脱(unscrew)」せしめる。この「螺脱する(unscrewing)」円状の動作は、曲がった矢印(412)で示されている。切削ヘッド(108)が螺脱するに連れて、当該切削ヘッドは、前進し始め、シースヘッドの保護覆いから突き出し始める。
【0043】
(420)においては、切削ヘッド(108)は、部分的に螺脱し、つまり、部分的に伸長した位置で、示されている。突き出たブレードエッジ(202)は螺旋状のシースヘッドねじ状スロット又はグロウブ(208)に対し相対的に移動していることに、留意すべきである。こうして、ブレードエッジ(202)は、今や、螺旋ねじ状スロット(208)から部分的に螺脱し、部分的に露出している。切削ヘッド(108)は、カテーテルヘッドのケーシングのシースヘッド部分つまり覆い(106)から突き出し、カップリング(406)は、カテーテルの遠位端部に向かって部分的に移動している。
【0044】
所望のときには、トルクの方向を反転することにより、切削ヘッドは再びシースヘッド内に引き込まれることは、明白である。カテーテルは、別の切削のために、別の箇所に移されることができ、切削ヘッドの伸長,切削および引き込みのプロセスは、必要に応じて何回も繰り返されることができる。
【0045】
このように、本発明は、目前の作業に必要なときにのみ、切削ヘッドを露出させることにより、「ドリルビット」切削ヘッドの力強い切削力を制御する。
【0046】
図5は、カテーテルヘッドの保護シースヘッド覆いの内部の格納位置にねじ込まれた切削ヘッドを示すカテーテルヘッドのシースヘッド部分の拡大図を示している。この角度は、螺旋ねじ状のスロット又はグロウブ(208)が容易に視認できるようにし、また、切削ヘッド(108)も、カテーテルヘッド(106)のシースヘッド部分の内側に視認することができる。
【0047】
図6は、渦巻状の突き出た切れ刃(202)を備えた代替的な設計の切削ヘッド(108)の拡大図を示している。
【0048】
カテーテルヘッド(106)のシースヘッド部分は、通常、直径が約1から2.2ミリメートルの間であり、カテーテル本体(102)は、典型的には、大凡で1から3ミリメートル(3−9フレンチ:French)の直径と、50から200cmの間の長さとを有している。シースヘッドは、例えば、硬質プラスチック,金属、或いは複合材料など、様々の材料から製作することができる。かかる材料の例としては、ニッケル・チタニウム(NiTi)鋼,プラチナ/イリジウム或いはステンレス鋼などが挙げられる。
【0049】
シースヘッド(106)は、切削ヘッドが回転するとき当該切削ヘッド(108)に前進動作をもたらすように設計されたスロット又はグロウブ(grove)を包含しているけれども、また、これらスロット又はグロウブは「螺旋状」の溝部またはスロットと呼ばれるけれども、シースヘッドの長さ及びカテーテルヘッド全長が短いなどの場合には、前記スロット又はグロウブは、必ずしも数学的に正確な螺旋形状でなくてもよい。実際には、数学的に純粋な螺旋形態とは何処か異なっている様々な形状であっても、十分であろう。一般に、スロット又はグロウブは、切削ヘッドに加えられるトルクが当該切削ヘッドに回転と前進の両方を生じせしめるようになったものでなければならず、このようなあらゆるスロット又はグロウブを、ここでは、「螺旋状」のスロット又はグロウブと指称する。
また、この議論に関して、「スロット(slot)」とは、中空のカテーテルヘッド(106)の内側から外側に開口する開口部であると見なされ、一方、「グロウブ(grove)」はライフル・グロウブ(rifle grove)に似ており、当該「グロウブ」は、中空のシースヘッドの内側から外側の全部にわたって広がるのではなく、シースヘッド材料の途中まで侵入しているに過ぎない。
【0050】
切削ヘッド(108)は、例えば鋼,炭化物あるいはセラミックのような材料で製作されることがよくある。切削ヘッドのブレード(202),(204)は、随意的に、タングステン・カーバイド,ME−92等で被覆(コーティング:coating)することによって硬化させることができる。この目的に好適な材料が、米国特許第4,771,774号明細書,同第5,312,425号明細書および同第5,674,232号明細書において教示されている。
ブレードの角度およびその設計は、当該ヘッドが、単に閉塞している材料を貫通して切削することだけを企図したものであるのか、閉塞部分を貫通して切削し且つ閉塞部分を実際に除去(減量)することを企図したものであるのか、に依って異なる。例えば、材料を除去することを企図したブレードは、塞いでいる材料と身体の管腔との間でリンク(link)としての役割を果たす傾向があるように、或る角度で曲がっているかも知れない。一方、切削だけを企図したブレードは、このようなリンクの役割を果たす傾向がない、代替的な角度を有することになろう。
【0051】
幾つかの実施形態においては、カテーテルは、2つの異なるチューブから出来ていてもよい。この構成では、フレキシブルな生体適合性のある材料で成ることが多い外側カテーテルチューブ(102)が在ってもよい。また、カテーテルハンドル(104)から(カップリング(406)を介して)切削ヘッド(108)にトルクを伝える機能のために選定された内側チューブ(408)も在ってもよい。
(「トルク伝達コネクタ」の一つの可能なタイプである)内側トルク伝達チューブは、外側カテーテルチューブに対し相対的に捩ることができ、その結果、ハンドル端部(104)で内側チューブにトルクが加えられると、切削ヘッド(108)は回転するが、外側カテーテルチューブに結合されたカテーテル・シースヘッド自体は概略的には静止状態に留まる。この代わりに、内側チューブ(408)に代えてケーブルが用いられてもよい。
【0052】
外側カテーテル本体(102)は、多くの場合、この目的のために押出成形された、例えば、ポリエステル,ポリテトラフルオロエチレン(PTFE),ポリウレタン,ポリビニールクロライド,シリコンラバー等の有機ポリマー材料で製作されてもよい。内側トルク伝動カテーテル(408)は、これらの材料で構成されてもよく、或いは、その代わりに、金属製のコイル,ワイヤ或いはフィラメントで構成されてもよい。
【0053】
多くの実施形態では、カテーテルは、約0.014インチ、或いは0.010インチから0,032インチの間の直径を有するモノレール式のガイドワイヤと互換性があるように設計されている。例えば、外側のカテーテルジャケットは、モノレール式のガイドワイヤ用に取り付けられた外部ガイドを有していてもよい。この場合には、ガイドワイヤは、カテーテルヘッドに先立って、或いはカテーテルヘッドを通る中程で、外部ガイドから出て行ってもよい。この代わりに、カテーテルが中空で、カテーテルの全長にわたってガイドワイヤを覆って配置されてもよい。
【0054】
カテーテルハンドル(104)は、通常、外側カテーテルチューブ(102)と内側チューブ又はケーブル(408)の両方に取り付けられることになろう。ハンドル(104)は、通常、操作者が内側トルク伝達チューブ又はケーブル(408)にトルクを加えることができるようにする、少なくともノブ,ダイヤル若しくはレバーを備えていよう。
幾つかの実施形態では、切削ヘッド(108)が、カテーテルヘッド(106)のシースヘッド部分に対して、どれだけ回転したか、若しくはどれだけ伸長したか、を測定するためにセンサが用いられてもよく、おそらく機械的もしくは電子的な計算および表示機構に支援されたこれらセンサは、切削ヘッドがどれだけ回転し、及び/又は伸長したかを操作者に示すことができる。
【0055】
幾つかの実施形態では、カテーテルハンドル(104)は、カテーテル先端部を手動で回転させ、前進/引き込み動作を行わせる、(例えば、歯車,トルク伝達バンド等の)機械的な機構に連結されたノブ或いはレバーを備えて設計されており、操作者は、これらノブ或いはレバーの穏やかでゆっくりした回転あるいは動作でもって、手動で先端部を制御する。
他の実施形態では、カテーテルハンドルは、ユーザが精密な制御されたやり方で切削ヘッドを回転させ前進させることができるようにする、例えば電子モータなどの機構、及び、例えばボタンや引き金などの制御手段を備えている。
この機構は、例えば、マイクロプロセッサ若しくはフィードバック制御のモータ,マイクロプロセッサ及びソフトウェアで構成され、当該ソフトウェアは、切削ヘッドの回転または伸長センサから情報を受け取り、この回転フィードバックデータを、ボタン又は引き金によってもたらされるオペレータの指示と関連付けて用い、オペレータの各命令に対して精密な量だけ切削ヘッドを前進または引き込ませる、ように作用する。
この方法は、オペレータに、内側トルク伝達チューブ又はケーブル(408)のバネ作用によって引き起こされるエラーについて、何等の心配もする必要を無くする。マイクロプロセッサ(又は他の回路)制御のモータは、自動的に、これらエラーを補償し、ボタン又はレバーを移動させ、正しいトルク量に矯正し、オペレータの更なる努力を要することなく、命令を実行することができる。
この代わりに、オペレータが、トルク伝達コネクタの回転と切削ヘッドの回転の差、或いは、切削ヘッドが前記中空のシースヘッドを出て行く程度の差を補償できるようにするために、例えば、バーニヤ(vernier)又は一連のガイドされたマーキング等の、マイクロプロセッサを用いない方法が、使用されてもよい。
【0056】
幾つかの実施形態では、カテーテルヘッドは、例えば、石灰化した物質を検出する超音波センサ,閉塞物または動脈壁を検出する光学(赤外線に近い)センサ、或いは医療的に関連のある他のセンサなど、追加的なセンサを備えていてもよい。これらのセンサを採用すると、幾つかの場合においては、これらのセンサ用の駆動機構をカテーテルハンドル(104)内に配置すると便利であるかもしれない。
【0057】
切削ヘッドの有効性を向上させる追加的な方法も、採用されてもよい。それ故に、切削ヘッドは、高周波(超音波)で振動し、無線周波数(RF)組織アブレーションを実行し、極端に熱い局部的な領域を創り出し、切削光線(例えば、レーザ光線あるいはエキシマレーザ光)或いは他の指向性のあるエネルギ手段を伝導する、ように構成されてもよい。
【0058】
切削ヘッドは、代替的な設計および材料で構成されていてもよく、これら設計および材料は、目前の特定の問題を取り上げるために選定されてもよい。一例として、石灰化された閉塞物に対して用いるのに適切な切削ヘッドは、石灰化されていない閉塞物に対して用いるのに適切な切削ヘッドとは、異なっているかも知れない。同様に、非常に繊維質の閉塞物に対して用いるのに適切な切削ヘッドは、繊維質が少なくより脂肪質の多い閉塞物に対しては余り適切ではないかも知れない。閉塞部の長さや大きさも、ヘッドの設計に影響を及ぼし得る。
【0059】
各々が異なるタイプの切削ヘッドで成る複合(マルチプル:multiple)カテーテルは、この種の問題を取り扱うための一つの方法であるかも知れないが、他の場合には、単一(シングル:single)カテーテルと、マルチプル切削ヘッド(108)と、随意的にはマルチプル・シースヘッド(106)とで成る一式(キット:kit)の方が、より費用効率が高いかも知れない。この種の状況では、切削ヘッド(108)は、カップリング(406)に対して、容易に取り付け及び取り外しされるように設計されてもよい。
医師は、蛍光透視法あるいはその他の技術により閉塞部を視認することができ、当面の問題に最も適した設計の切削ヘッド(及び組み合わされるシースヘッド)を装着するように選択することができる。この代わりに、工程中、使用に伴って、切削ヘッド(108)のブレード(202),(204)が、切れ味が鈍くなったり或いは欠けたりした場合には、医師は、残りのカテーテルを使用することを継続しながら、鈍くなった或いは欠損した切削ヘッド(108)を新しい切削ヘッドと取り替えるように選択することができる。
【0060】
幾つかの用途に対して、カテーテルを用いて、可視化する染料あるいは治療薬を閉塞部に対して供給することが、有益であるかも知れない。この場合には、外側カテーテル(102)と内側のトルクカテーテル(408)との間の空間部を通じて、或いは、この代わりに、トルクカテーテル(408)が中空であれば、トルクカテーテル(408)の内部を通じて、当該染料をカテーテルヘッドまで送ることにより、染料または治療薬を適用するようにしてもよい。切削ヘッド(108)が中空開口部(206)を有している場合には、たとえ切削ヘッド(108)が閉塞部を貫通して切削している最中であっても、閉塞部に対して染料または治療薬を直接に適用することもできる。
【0061】
適用するに有用な染料または治療薬の例としては、蛍光透視用のもの,超音波用のもの,MRI,蛍光性のもの,発光性の追跡(トラッキング:tracking)及び可視化染料,抗凝固剤(例えば、ヘパリン,低分子量ヘパリン),トロンビン阻害剤,抗血小板薬(例えば、シクロオキシナーゼ阻害剤,ADP受容体阻害剤,ホスホジエステラーゼ阻害剤,糖蛋白質IIB/IIIA阻害剤,アデノシン再摂取阻害剤),抗トロンボプラスチン薬,例えば血栓溶解剤(例えば、組織プラスミノーゲン活性化因子,ウロキナーゼ,ストレプトキナーゼ)などの抗凝血薬,リパーゼ,モノクローナル抗体などが挙げられる。
【0062】
幾つかの実施形態においては、X線不透過性の特徴(X線下では異なる外観)を有する材料であって、カテーテルヘッドの中空のシースヘッド部分を構成するのに用いられる材料とは異なる材料で、切削ヘッドを構成するのが有益であるかも知れない。このことは、医師が、蛍光透視法または他のX線画像技術により、切削ヘッドが正確にどれだけカテーテル・シースヘッドの外側へ前進しているかを、直接に可視化できるようにする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルチューブと回転可能な切削ヘッドとを備えたカテーテルであって;
前記回転可能な切削ヘッドは、前記カテーテルチューブ内に配置され;
前記回転可能な切削ヘッドに加えられるトルクは、前記切削ヘッドに前記カテーテルチューブとの相互作用を生じせしめ、前記切削ヘッドに回転と前記カテーテルチューブの少なくとも部分的に外側で前方への伸長を生じせしめる、
ことを特徴とするカテーテル。
【請求項2】
前記切削ヘッドは少なくとも一つの突出部を有し、前記カテーテルチューブは1つ若しくはそれ以上のスロット又はグロウブを有しており;
前記切削ヘッドの少なくとも一つの突出部と前記1つ若しくはそれ以上のスロット又はグロウブとの間での機械的な相互作用が、前記切削ヘッドに回転と前記カテーテルチューブの少なくとも部分的に外側での前方への伸長の両方を生じせしめる、
ことを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
1つ若しくはそれ以上のスロット又はグロウブの少なくとも幾つかは螺旋状である、ことを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記切削ヘッドの前方への伸長は、前記カテーテルチューブに取り付けられた1つ若しくはそれ以上の動作停止要素によって制限される、ことを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記切削ヘッドの前方への伸長は、前記カテーテルチューブによって制限されない、ことを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記カテーテルチューブは中空でトルク伝達コネクタを包含しており、該トルク伝達コネクタへのトルクの適用は前記回転可能な切削ヘッドを回転せしめる、ことを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項7】
手動の機構またはフィードバック制御される電子モータによって、トルクが前記トルク伝達コネクタに加えられる、ことを特徴とする請求項6に記載のカテーテル。
【請求項8】
前記中空のカテーテルチューブを通じて治療薬または可視化染料剤が投与される、ことを特徴とする請求項6に記載のカテーテル。
【請求項9】
前記中空のカテーテルチューブの内側にガイドワイヤがねじ込まれ、該ガイドワイヤは、前記回転可能な切削ヘッドの中心の開口部を通って前記中空のチューブから出て行く、ことを特徴とする請求項6に記載のカテーテル。
【請求項10】
前記カテーテルチューブの一部分のみが前記回転可能な切削ヘッドを包含し、前記カテーテルチューブの外側に取り付けられたガイド部を通ってガイドワイヤがねじ込まれ、該ガイドワイヤは、前記カテーテルチューブの前記回転可能な切削ヘッドを包含している部分より前で前記ガイド部を出て行く、ことを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項11】
前記回転可能な切削ヘッドは、1つ若しくはそれ以上のブレードエッジを有している、ことを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項12】
前記切削ヘッドの前記カテーテル外部への伸長の進展は、センサによってモニタされている、ことを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項13】
前記切削ヘッドの切削の有効性は、超音波振動,無線周波数(RF)エネルギー或いは光エネルギーによって向上させられる、ことを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項14】
前記切削ヘッドは、カテーテルのX線不透過性の特徴とは異なるX線不透過性の特徴を有している、ことを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項15】
前記カテーテルは、冠動脈或いは末梢肢動脈から頑強なアテローム性動脈硬化プラーク或いは慢性完全閉塞を除去するのに用いられる、ことを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項16】
前記カテーテルは、閉塞した冠動脈或いは末梢肢動脈に対する前治療として用いられ、その後、前記閉塞した動脈は、前記カテーテルの使用に続く、アテローム切除,ステント或いはバルーン血管形成を受ける、ことを特徴とする請求項14に記載のカテーテル。
【請求項17】
カテーテルチューブと;
前記カテーテルチューブの遠位部分に取り付けられた中空のシースヘッドと;
少なくとも部分的に前記中空のシースヘッド内部に配置されている回転可能な切削ヘッドと;を備え、
前記切削ヘッドの回転は、前記切削ヘッドに前記シースヘッドとの機械的な相互作用を生じせしめ、前記切削ヘッドに回転と前記中空のシースヘッドの更に外側での前進の両方を生じせしめる、
ことを特徴とするカテーテル。
【請求項18】
前記中空のシースヘッドは、開口部と1つ若しくはそれ以上の螺旋状のスロット又グロウブを有し;
前記回転可能な切削ヘッドは、前記螺旋状のスロット又グロウブと係合可能な少なくとも一つの突出部を有しており;
前記回転可能な切削ヘッドの少なくとも一つの突出部と前記1つ若しくはそれ以上の螺旋状のスロット又はグロウブとの間での機械的な相互作用が、前記切削ヘッドに回転と前記中空のシースヘッド内の開口部を通じての前進の両方を生じせしめる、
ことを特徴とする請求項16に記載のカテーテル。
【請求項19】
前記カテーテルチューブは中空でトルク伝達コネクタを包含しており、該トルク伝達コネクタへのトルクの適用は前記回転可能な切削ヘッドを回転せしめる、ことを特徴とする請求項16に記載のカテーテル。
【請求項20】
手動の機構またはフィードバック制御される電子モータによって、トルクが前記トルク伝達コネクタに加えられる、ことを特徴とする請求項18に記載のカテーテル。
【請求項21】
前記中空のカテーテルチューブを通じて治療薬または可視化染料剤が投与される、ことを特徴とする請求項18に記載のカテーテル。
【請求項22】
前記中空のカテーテルチューブの内側にガイドワイヤがねじ込まれ、該ガイドワイヤは、前記回転可能な切削ヘッドの中心の開口部を通って前記中空のチューブから出て行く、ことを特徴とする請求項18に記載のカテーテル。
【請求項23】
前記カテーテルチューブの外側に取り付けられたガイド部を通ってガイドワイヤがねじ込まれ、該ガイドワイヤは、前記中空のシースヘッドよりも前かで、若しくは前記中空のシースヘッドの側部の開口を通って、前記ガイド部を出て行く、ことを特徴とする請求項18に記載のカテーテル。
【請求項24】
前記回転可能な切削ヘッドは、1つ若しくはそれ以上のブレードエッジを有している、ことを特徴とする請求項16に記載のカテーテル。
【請求項25】
前記切削ヘッドの前記中空シースヘッド開口部の外部への前進の進展は、センサによってモニタされている、ことを特徴とする請求項16に記載のカテーテル。
【請求項26】
前記切削ヘッドの切削の有効性は、超音波振動,無線周波数(RF)エネルギー或いは光エネルギーによって向上させられる、ことを特徴とする請求項16に記載のカテーテル。
【請求項27】
前記切削ヘッドは、カテーテルのX線不透過性の特徴とは異なるX線不透過性の特徴を有している、ことを特徴とする請求項16に記載のカテーテル。
【請求項28】
前記カテーテルは、冠動脈或いは末梢肢動脈から頑強なアテローム性動脈硬化プラーク或いは慢性完全閉塞を除去するのに用いられる、ことを特徴とする請求項16に記載のカテーテル。
【請求項29】
前記カテーテルは、閉塞した冠動脈或いは末梢肢動脈に対する前治療として用いられ、その後、前記閉塞した動脈は、前記カテーテルの使用に続く、アテローム切除,ステント或いはバルーン血管形成を受ける、ことを特徴とする請求項26に記載のカテーテル。
【請求項30】
中空のカテーテルチューブと;
前記カテーテルチューブの遠位部分に取り付けられた中空のシースヘッドと;を備え、
前記中空のシースヘッドは、開口部と1つ若しくはそれ以上の螺旋状のスロット又グロウブを有し;
前記回転可能な切削ヘッドは、前記螺旋状のスロット又グロウブと係合可能な少なくとも一つの突出部を有しており;
トルク伝達コネクタであって、当該トルク伝達コネクタへの適用が前記回転可能な切削ヘッドに回転を生じさせる、トルク伝達コネクタを備え;
前記回転可能な切削ヘッドの少なくとも一つの突出部と前記1つ若しくはそれ以上の螺旋状のスロット又はグロウブとの間での機械的な相互作用が、前記切削ヘッドに回転と前記中空のシースヘッド内の開口部を通じての前進の両方を生じせしめる、
ことを特徴とするカテーテル。
【請求項31】
手動で、若しくはマイクロプロセッサ制御の電子モータによって、前記トルク伝達コネクタにトルクが加えられ、前記マイクロプロセッサ制御の電子モータは、前記電気モータの回転と前記切削ヘッドの回転との間の回転の差を補償する、ことを特徴とする請求項28に記載のカテーテル。
【請求項32】
前記中空のカテーテルチューブを通じて治療薬または可視化染料剤が投与される、ことを特徴とする請求項28に記載のカテーテル。
【請求項33】
前記中空のカテーテルチューブの内側にガイドワイヤがねじ込まれ、該ガイドワイヤは、前記回転可能な切削ヘッドの中心の開口部を通って前記中空のチューブから出て行く、ことを特徴とする請求項28に記載のカテーテル。
【請求項34】
前記カテーテルチューブの外側に取り付けられたガイド部を通ってガイドワイヤがねじ込まれ、該ガイドワイヤは、前記中空のシースヘッドよりも前かで、若しくは前記中空のシースヘッドの側部の開口を通って、前記ガイド部を出て行く、ことを特徴とする請求項28に記載のカテーテル。
【請求項35】
前記回転可能な切削ヘッドは、1つ若しくはそれ以上のブレードエッジを有している、ことを特徴とする請求項28に記載のカテーテル。
【請求項36】
前記切削ヘッドの前記中空シースヘッド開口部の外部への前進の進展は、センサによってモニタされている、ことを特徴とする請求項28に記載のカテーテル。
【請求項37】
前記切削ヘッドの切削の有効性は、超音波振動,無線周波数(RF)エネルギー或いは光エネルギーによって向上させられる、ことを特徴とする請求項28に記載のカテーテル。
【請求項38】
前記切削ヘッドは、カテーテルのX線不透過性の特徴とは異なるX線不透過性の特徴を有している、ことを特徴とする請求項28に記載のカテーテル。
【請求項39】
前記カテーテルは、冠動脈或いは末梢肢動脈から頑強なアテローム性動脈硬化プラーク或いは慢性完全閉塞を除去するのに用いられる、ことを特徴とする請求項28に記載のカテーテル。
【請求項40】
前記カテーテルは、閉塞した冠動脈或いは末梢肢動脈に対する前治療として用いられ、その後、前記閉塞した動脈は、前記カテーテルの使用に続く、アテローム切除,ステント或いはバルーン血管形成を受ける、ことを特徴とする請求項37に記載のカテーテル。
【請求項41】
血管腔内のアテローム性動脈硬化閉塞部または病変部を治療する方法であって、
前記血管腔を通ってカテーテルチューブを前記閉塞部または病変部へねじ込むステップと;
前記カテーテルチューブの内側に装備されたトルク伝達コネクタを回転させるステップと;を備え、
前記トルク伝達コネクタは、前記カテーテルチューブの遠位端部の中空シースヘッドの内部に装備された回転可能な切削ヘッドに結合され、前記シースヘッドは、前述の回転が無い場合には、前記回転可能な切削ヘッドを、前記血管腔および閉塞部または病変部に接触することから保護し;
前記回転可能な切削ヘッドと前記中空のシースヘッドとの間での機械的な相互作用が、前記切削ヘッドに回転と前記中空のシースヘッドからの少なくとも部分的に出て行くことの両方を生じせしめ、回転する回転可能な切削ヘッドが、前記閉塞部または病変部に接触し、当該閉塞部または病変部を切削できるようにする、
ことを特徴とする方法。
【請求項42】
前記中空のシースヘッドは、開口部と1つ若しくはそれ以上の螺旋状のスロット又グロウブを有し;
前記回転可能な切削ヘッドは、前記螺旋状のスロット又グロウブと係合可能な少なくとも一つの突出部を有しており;
前記回転可能な切削ヘッドの少なくとも一つの突出部と前記1つ若しくはそれ以上の螺旋状のスロット又はグロウブとの間での機械的な相互作用が、前記切削ヘッドに回転と前記中空のシースヘッド内の開口部を通じての前進の両方を生じせしめる、
ことを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記トルク伝達コネクタの回転は、前記トルク伝達コネクタの回転と前記切削ヘッドの回転の差を補償するように、或いは、前記切削ヘッドが前記中空のシースヘッドをから出ている程度を補償するように、調節される、ことを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記カテーテルチューブは中空である、ことを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項45】
前記中空のカテーテルチューブを通じて治療薬または可視化染料剤を投与するステップを更に備える、ことを特徴とする請求項42に記載の方法。
【請求項46】
前記カテーテルチューブは、ガイドワイヤを用いて、前記血管病変部を貫通してねじ込まれる、ことを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項47】
前記閉塞部または病変部は、前記回転可能な切削ヘッドに装着された1つ若しくはそれ以上のブレードエッジによって切削される、ことを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項48】
前記切削ヘッド,閉塞部または病変部に対して、超音波振動,無線周波数(RF)エネルギー或いは光エネルギーを適用するステップを更に備える、ことを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項49】
前記方法は、閉塞した冠動脈或いは末梢肢動脈を前治療するのに用いられ、その後、同じ工程中に、前記閉塞した動脈は、更に、アテローム切除,ステント或いはバルーン血管形成によって治療される、ことを特徴とする請求項39に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−518618(P2011−518618A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506458(P2011−506458)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際出願番号】PCT/US2009/041579
【国際公開番号】WO2009/132218
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(510281977)アビンガー・インコーポレイテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】Avinger, Inc.
【Fターム(参考)】